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特表2024-524602皮膚科学的組成物および皮膚T細胞リンパ腫に対する治療方法
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  • 特表-皮膚科学的組成物および皮膚T細胞リンパ腫に対する治療方法 図1
  • 特表-皮膚科学的組成物および皮膚T細胞リンパ腫に対する治療方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】皮膚科学的組成物および皮膚T細胞リンパ腫に対する治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/122 20060101AFI20240628BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20240628BHJP
【FI】
A61K31/122
A61P7/00
A61P17/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K41/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500631
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 US2022036551
(87)【国際公開番号】W WO2023283444
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】63/219,765
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510141730
【氏名又は名称】ソリジェニックス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(72)【発明者】
【氏名】ドニーニ,オレオラ
(72)【発明者】
【氏名】シュトラウベ,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】シェーバー,クリストファー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA11
4C084MA02
4C084MA28
4C084MA63
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA511
4C084ZA512
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB24
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA48
4C206MA83
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA51
4C206ZA89
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
有効量のヒペリシンと可視光線力学療法の一種との組み合わせからなる皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の治療方法。前記有効量のヒペリシンは、1%未満のヒペリシンを含む軟膏であることが好ましい。前記光線力学療法の一種は、可視光投与量の漸増を含む、ことがより好ましい。必要に応じて、前記可視光投与量の漸増は約5J/cmから、最大投与量の約12J/cmまで増加させる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のヒペリシン投与と可視光線力学療法の一種との組み合わせからなる皮膚T細胞リンパ腫の治療方法。
【請求項2】
前記有効量のヒペリシンは、1%未満のヒペリシンを含む軟膏である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光線力学療法の一種は、可視光投与量の漸増を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記可視光投与量の漸増は約5J/cmから、最大投与量の約12J/cmまで増加させる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記可視光投与量の漸増は、約1週間から約3週間で、約1J/cm増加させる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記可視光投与量の漸増は、約12J/cmまで、または病変部の軽い紅斑が観察されるまで継続する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記有効量のヒペリシン軟膏を少なくとも週1回投与する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記有効量のヒペリシン軟膏を少なくとも週2回投与する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒペリシン軟膏を塗布した後、覆った状態で12~24時間皮膚に吸収させ、その後光照射を行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記有効量のヒペリシンおよび前記可視光線力学療法の一種を週2回、少なくとも6週間継続して投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記有効量のヒペリシンが前記可視光線力学療法の一種よりも頻繁に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記有効量のヒペリシンが前記可視光線力学療法の一種よりも少ない頻度で投与される、請求項1に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2021年7月8日に出願された米国仮出願第63/219765号に基づく優先権を主張する米国特許出願である。
【発明の分野】
【0002】
本発明は、皮膚T細胞リンパ腫の治療のための皮膚科学的組成物およびその投与方法の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒペリシンは、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)を含むリンパ球浸潤を伴う様々な炎症性皮膚疾患を治療する可能性のある光線力学的薬剤として知られている。光が照射されると、ヒペリシンは酸素を一重項状態に励起し、スーパーオキシドラジカルを生成し、このスーパーオキシドラジカルが、タンパク質中のトリプトファンイミダゾール基の酸化や、生物システム内の脂肪酸の酸化を引き起こし、最終的には細胞のアポトーシスを引き起こす。ヒペリシンは約500~650nMの波長の光、即ち、電磁スペクトルの黄色~赤色領域の光で最も活性化される(Meruelo et al, 1988、Thomas et al、1992、 Lavie et al、1989、Head et al、2006).
【0004】
重要なことは、ヒペリシンは健康な細胞よりも悪性細胞に優先的に取り込まれ、さらに悪性T細胞にも取り込まれることで、局所的な用途に加えて、CTCLにおける使用において有意な選択性が可能となることである(Fox et al、1998、Xu et al、2019)。
【0005】
光活性化ヒペリシン局所投与が、リンパ球浸潤を特徴とする炎症性皮膚疾患の治療に臨床的利益をもたらすメカニズムには、一重項酸素の発生とアポトーシスが含まれる。これは、光線力学療法に用いられる5-アミノレブリン酸やその他のポルフィリンなど、炎症性皮膚疾患の治療に臨床的有効性が知られている他の薬剤と同様のメカニズムである。通常、活性酸素種を介するアポトーシスは、主に内在性(ミトコンドリア)経路を介して実行される。これは、FASやTRAILを含む外因性アポトーシス経路(死受容体を介するアポトーシス経路)に欠陥があることがしばしば示されるCTCLのような疾患にとって、特に有利である。また、抗腫瘍活性のメカニズムに関する研究では、ヒペリシンがシャペロンタンパク質である熱ショックタンパク質90に結合し、そのユビキチン化につながることが示されている(Barliya et al、2011)。これにより、細胞増殖経路を制御するいくつかの重要なクライアントタンパク質が破壊され、その結果、それらの安定化が阻害され、急速に分解、除去され、最終的に細胞死に至る。さらに、ヒペリシンは強力なタンパク質キナーゼC阻害剤として知られており、それによって細胞シグナル伝達機構を破壊し、アポトーシスを誘導する(Barliya et al、2011、Chan et al、2009、Dzurova et al、2014、Kocanova et al、2006、Takahashi et al、1989、Zhang et al、1997)。
【0006】
患者におけるCTCLの治療は、主に疾患の程度と生活の質(QOL:Quolity of Life)への影響によって決定される。疾患が主に皮膚に限局している早期疾患は予後が良好であり、一次治療として皮膚に向けた治療が最も多く用いられる。早期疾患(IA期~IIA期)の治療での皮膚に対する治療としては、外用コルチコステロイド、外用メクロレタミン、外用ベキサロテン、紫外線(UV)療法などがある。全身皮膚電子線治療(TSEBT)や局所表在放射線治療も、皮膚に対する治療と考えられている。長期にわたり完全な寛解が得られているものの、疾患の治癒は不明である。
【0007】
疾患の進行期(MF病期IIB~IVB、病期SS)では治療が無効となることが多く、予後不良である。治療は通常は全身に対して行い、腫瘍量の減少、疾患の進行の遅延、および生活の質の維持が目標となる。現在のアプローチには免疫生物学的療や標的治療があるが、臨床効果の持続期間は短いことが多く、現在までに観察された延命効果はわずかであった。
【0008】
具体的にCTCLの治療に承認されている治療法は、主に進行期/晩期疾患の患者(CTCL患者の約5%)を対象としている。最近EMAに承認されたポテリジオ(登録商標)(モガムリズマブ)は、他の全身療法が無効である場合に適応となる。この製品には、皮膚反応、輸注反応、造血幹細胞移植(HST)の合併症、腫瘍崩壊症候群、大細胞転化、心臓疾患、下痢、上気道感染症、血小板減少症などの重大な警告と使用上の注意がある。病期IIB以上の患者の治療には、ロフェロンA(登録商標)(インターフェロンアルファ-2A)を使用することができる。この製品には、精神疾患、感染症、骨髄抑制、内分泌、肝機能、自己免疫への影響など、重大な警告が伴う。
【0009】
前向き皮膚リンパ腫国際予後指数(PROCLIPI)のデータベースは、主にMFの疾患経過と予後因子を調査している。しかしながら、この国際登録簿から最近発表された分析では、(i)病期分類に従った一次治療アプローチの違いを特定すること、(ii)全身に対する一次治療アプローチに関連するパラメータ、および(iii)奏効率と生活の質の指標に焦点が当てられている(Quaglino et al、2021)。
【0010】
本解析では、17カ国の41施設から募集した合計395名の患者(IA期50%、IB期42%、IIA期8%)を対象とした。ヨーロッパの施設が患者の88%を占めた。最も一般的な一次治療は皮膚に向けた治療(322例、81.5%)であり、全身治療を受けた割合は少なかった(44例、11.1%)。解析の結果、全身治療は、臨床病期が高く、プラークが存在する患者、修正重大度重み付け評価ツール(mSWAT:modified Severity Weighted Assessment Tool)が高い患者、毛包向性MFの患者における使用に関連することが示された。
【0011】
皮膚に対する一次治療の全奏効率(ORR)は、全身療法と比較して有意に良好であった(73%対57%、P=0.027)。健康に関する生活の質(HRQoL)は、治療に反応を示す患者においても、疾患が安定している患者においても有意に改善することが明らかになり、治療効果の評価に生活の質の測定を取り入れることの重要性が浮き彫りになった。今後の治療ガイドラインでは、プラークの存在や毛包向性MFといった高リスクの疾患特性に加え、生活の質の評価も取り上げるべきであると結論づけられた(Quaglino et al、2021)。
【0012】
現在、当技術分野では以下のような皮膚に対する治療法が知られている。
ステロイド:疾患の初期にはコルチコステロイドが用いられ、疾患のより進行した病期では補助療法として用いられることが多い。アポトーシスの促進、リンパ球内皮への付着に対する影響、サイトカイン、付着分子、成長因子の産生低下を伴う転写因子(核因子-kBと活性化タンパク質-1)の下方制御など、複数の効果がある。局所ステロイドは紅皮症性CTCLの紅斑、鱗屑、掻痒症を減少させる。通常、高力価のステロイドが必要で、1~2ヵ月以上の使用はできない。長期使用には、皮膚萎縮、色素沈着低下、線条、副腎抑制を伴う全身吸収の可能性などの副作用を伴う。
メクロレタミン:局所用ナイトロジェンマスタード(塩酸メクロレタミン)(NM)はアルキル化剤である。NMの局所投与は、一般的に疾患の初期段階に用いられ、DNA損傷を誘発することによって作用する。Ledaga(登録商標)は、成人患者における菌状息肉症型皮膚T細胞リンパ腫(MF型CTCL)の局所治療に承認されている。しかし、1年後に完全な奏効(CR)を維持した患者はわずか11%であった。皮膚クリアランスには6ヵ月以上の治療期間が必要となることが多く、その後維持療法が行われることが一般的だが、長期に亘る維持療法が再発を減少させるという証拠はない。一般的に、灼熱感、掻痒症、刺激性またはアレルギ性接触皮膚炎などの皮膚副作用があり、治療の中止に至ることが多い。非黒色腫皮膚がん(NMSC)の発症リスクはわずかながら(1~5%)増加する。患者はまた、治療を受けた皮膚が家族と接触しないようにしなければならず、これが重大な親密さの問題につながる。
ベキサロテン:ベキサロテンは合成レチノイドで、経口剤(即ち、カプセル剤)はレチノイドX受容体(RXR)アイソフォームに選択的に結合し、細胞の分化に影響を与え、アポトーシスを誘導する。局所用ベキサロテン1%ゲルは、米国では、早期のCTCL治療に承認されているが(1日4回まで)、EUでは承認されておらず、局所細胞のアポトーシスも誘発する可能性がある。局所用ベキサロテンは1日2回が推奨され、高い頻度での刺激が確認されている。多くの患者(IA-IIA期)で中央値20週間の治療後に奏効が認められた(ORR、63%;CR、21%)。長期の治療は刺激によって制限される。CTCLにおける使用は、有効性が限定的であり、アクセシビリティの問題も伴うため、全体として限定的である。
光線力学療法:ソラレンと長波長紫外線(UVA)を併用した療法(PUVA)は、早期CTCLにおいて確立された利益をもたらし、皮膚を長波長紫外線(320~400nm)に対して感作させる8-メトキシソラレン(8-MOP)を経口投与し、腫瘍細胞のアポトーシスおよびDNA損傷を誘発し、ケラチノサイトのサイトカイン産生を抑制し、ランゲルハンス細胞を枯渇させる。PUVAは乾癬に対しては承認されているが、CTCLに対しては承認されていない。最初のUVA照射量は約0.5J/cm2であり、耐えられる程度に増量し、CRが達成されるまで週3回投与する。白内障予防のため、治療開始後12~24時間は適切な眼の保護が必要となる。維持療法は、寛解を維持するために4~6週間に1回の治療(薬剤+紫外線曝露)へと徐々に減らすことができる。CRは早期MF患者の最大71.4%で報告されている。PUVAは、腫瘍の病期/紅皮症性および毛包向性のMFではそれほど効果的ではない。PUVAの一般的な副作用には、紅斑、光線皮膚炎、掻痒症、吐き気などがあり、用量の減量/中断により対処する。PUVAの反復使用は、二次性黒色腫、光老化、皮膚損傷の重大なリスクのために制限されている。PUVAには、黒色腫と白内障のリスクに関するブラックボックス警告がある。
光線療法:短波長紫外線(UVB)もまた、腫瘍細胞のアポトーシスを誘発することで、腫瘍性T細胞の増殖を抑制する可能性が高い。ナローバンド(NB)UVB(311nm)は、PUVAに比べて発癌作用が少ないため、効果は低いものの、早期CTCLではより頻繁に使用されている。しかし、PUVA、NB UVB共に皮膚がんの発生率が増加する。病期IA/IBのMFおよび類乾癬では、CRRは54.2%から91%であり、プラーク疾患に比べてパッチよりも高い効力を示した。NB UVBの長期的リスクには、光老化と光発癌がある。
【0013】
早期CTCLに対する上記の治療法には、非限定的に以下の重大な限界がある。
(1)局所ステロイドの長期使用は、深刻な皮膚萎縮と全身的なステロイド吸収の後遺症を引き起こす可能性がある。有効性も急速に低下し、CTCLと診断された患者のほとんどが局所ステロイドの効果がなくなる。
(2)ベキサロテンのような局所または全身性のレチノイドは、未知のメカニズムに反応し、臨床効果がさまざまであり、高価で、皮膚刺激が強く、他の全身合併症を起こすことがある。経口剤では、高脂血症、膵炎、先天性欠損症などの全身に及ぶ副作用がある。
(3)局所メクロレタミンは、早期CTCLに対しある程度有効であるが、強力なアルキル化剤であるため、高い割合の患者で重篤な皮膚過敏症反応を引き起こし、その後の使用が中止される。局所用メクロレタミンの使用には、社会的孤立や親密さの問題も伴う。
(4)PUVAはCTCL患者には承認されていない。かつては比較的無害な光線と考えられていたUVAは、現在ではUVBと同様にDNAに有害な影響を及ぼし、他の皮膚がんを発症するリスクが高まることされている。ソラレンは局所投与も経口投与もできるが、最も多く使用されるのは経口投与である。そのため、患者は日光への露出を制限しなければならないが、これは非常に不便なことである。重要なことに、上記の一般的な副作用に加えて、ソラレンは変異原性でもあり、光損傷、扁平上皮がん、および悪性黒色腫を引き起こす可能性があり、慢性的な使用によってこれらのリスクが増加する可能性がある。
(5)NB UVBを含む光線療法は、PUVAのような光線力学療法と比較すると有効性がやや低いが、依然、光発癌や光老化を含む光損傷のリスク増加を伴う。また、NB UVBはプラークやより厚い損傷、および/またはより深い病変(例えば、毛包向性CTCL)に対しては効果が低いと考えられている。
【0014】
現在の早期CTCLの管理は不十分であり、患者は短期的および長期的な毒性のリスクにさらされ、これら毒性には深刻な衰弱、および生死に関わる可能性があると当技術分野では理解されている。現在利用可能な皮膚に対する治療をもってしても、患者は毒性のために複数の治療を繰り返すことが多い。
【0015】
患者の7~14%を占める経過観察(Quaglino et al、2012、Quaglino et al、2021)は、局所コルチコステロイドや化学療法の長期使用、PUVAによる治療など、現在利用可能な治療法のリスクや副作用に患者をさらすことに抵抗があるためと考えられる。早期CTCLの治療に対するこのような慎重なアプローチは、患者を予後がより悪く(皮膚病変の程度が増すにつれて生存率は低下する)より重症の病期へと進行を早め、さらに加速させる危険性がある。
【0016】
要約すると、疾患の早い病期と診断された患者は、局所コルチコステロイド、化学療法クリーム(クロルメチン、メクロレタミン[Ledaga(登録商標)])、光線療法(PUVAなどの紫外線療法)、放射線療法(従来の局所的な放射線療法またはTSEBT)を含む皮膚に対する治療法で主に管理される。特定の光線力学療法や光線療法は、幅広く使用されているが、CTCLに対しては承認されていない。早期MFと診断された患者は、リンパ腫に特定の治療を行わずに疾患を積極的にモニタリングする経過観察を行う場合がある。この場合、患者は専門医による定期的な検診を受けなければならず、治療は症状を軽減するための保湿クリームや入浴用皮膚軟化剤の使用に限定される。このアプローチは、利用可能な方法や治療法の限界や潜在的な毒性を示しており、早期CTCLに対する安全で有効な治療法の必要性を強調している。
【0017】
当技術分野には、CTCL治療のための、光線力学療法と組み合わせる安定した形態の組成物の必要性が残されている。
【0018】
【発明の概要】
【0019】
本発明は、有効量のヒペリシンと可視光線力学療法の一種との組み合わせからなる皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の治療方法を提供する。前記有効量のヒペリシンは、1%未満のヒペリシンを含む軟膏であることが好ましい。前記光線力学療法の一種は、可視光投与量の漸増を含む、ことがより好ましい。必要に応じて、前記可視光投与量の漸増は約5J/cmから、最大投与量の約12J/cmまで増加させる。
【0020】
一態様では、前記可視光投与量の漸増は、約1週間から約3週間で、約1J/cm増加させる。必要に応じて、前記可視光投与量の漸増は、約12J/cmまで、または病変部の軽い紅斑が観察されるまで継続する。
【0021】
一態様では、前記有効量のヒペリシン軟膏を少なくとも週1回投与する。別の態様では、前記有効量のヒペリシン軟膏を少なくとも週2回投与する。前記軟膏の塗布後、覆った状態で12~24時間皮膚に吸収させ、その後光照射を行う。
【0022】
別の態様では、ヒペリシン軟膏の塗布と光治療を週2回、少なくとも6週間継続する。
【0023】
別の実施の形態では、前記有効量のヒペリシンが前記可視光線力学療法の一種よりも頻繁に投与される。別の実施の形態では、前記有効量のヒペリシンが前記可視光線力学療法の一種よりも少ない頻度で投与される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下の図は本発明の例示であり、参照により本開示に組み込まれる。
図1図1は、本発明の好ましい実施の形態をサポートする第III相試験の概要を示す図である。
図2図2は、経時的(ITT)な患者の成功率(ベースラインから50%以上のCAIL[Cumulative Composite Assessment of Index Lesion Severity]の改善)を示す図である。
【0025】
【発明の詳細な説明】
【0026】
ヒペリシンの局所塗布と通常の蛍光灯のを組み合わせることで、早期CTCLの治療に革命をもたらす可能性がある。好ましい実施の形態において、本発明は、潜在的に癌を引き起こすUV光を使用しないCTCLの光線力学療法を提供する。
【実施例
【0027】
以下の実施例は、本発明の様々な実施の形態を例示するものであり、かかる実施例に基づいて範囲を限定することを意味するものではない。
【0028】
A.第III相試験:試験設計
本試験は、米国の37の試験センタに169名の被験者を登録した、CTCLにおける多施設共同の第III相二重盲検プラセボ対照無作為化試験である。166名の被験者に試験薬が投与され、治療企図(ITT)集団が形成された。本試験では、0.25%局所用ヒペリシンを18~24時間閉塞した後、可視光線を5J/cm2から最大耐容量(≦12J/cm2)まで漸増投与した場合の有効性と安全性を、最大3サイクルの治療で評価した。
【0029】
組み入れ基準を満たし、且つ除外基準のいずれにも該当しない患者を、本発明の好ましい実施の形態の0.25%軟膏(HyB)またはプラセボ対照軟膏を投与する群に2:1で無作為に割り付けた。2つの治療群のベースライン特性は均衡していた。
【0030】
すべての患者は可視光線治療を受け、5J/cm2から開始し、軽度の紅斑が観察されるまで隔週の診察ごとに試験者が1J/cm2ずつ増量できるものとした(最大光線投与量は12J/cm2)。各サイクルの治療は6週間行い、光により誘発された紅斑が消退し、最大病変効果が明らかになるように2週間の休息期間の後、病変スコアを再評価した。サイクル1(盲検化)とサイクル2(クロスオーバ設計、全被験者にHyBを投与)はいずれも5J/cm2の光量レベルで開始された。サイクル3は任意であり、(サイクル1およびサイクル2で治療された3つの指標病変とは対照的に)患者が全ての病変を治療できる思いやりのある使用タイプのサイクルと考えられ、光線量はサイクル1、および/または、サイクル2で得られた最大値から引き継がれた。非盲検サイクルにおける安全性と治療効果の評価は、光によって誘発された紅斑が落ち着くまで2週間の休息期間を置いた後、24週目に行われた(図1)。
【0031】
調査対象集団の主な人口統計は、以下にさらに示すように、表1および表2に記載する。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
有害事象により中止された患者は2例のみであった。両患者ともHyB治療を受けている間(1.7%)に光線療法で許容できない灼熱感を覚え、試験から離脱した。サイクル2でHyBを投与されたプラセボ患者のうち、灼熱感ために離脱した患者はいなかった(HyBを投与された患者の離脱率は1.2%)。
【0035】
本試験の主な有効性評価項目は、サイクル1(第8週目)の評価終了時の指標病変重症度の複合評価(CAILS:Compositive Assessment of Index Lesion Severity)スコアを、ベースラインのCAILSスコアで除した比が、将来を見越して選択した治療指標病変3例の累積合計スコアの≦50%である(CAILSスコアが≧50%減少したと)定義される治療効果を得た患者の割合とした。本試験の観察段階であるサイクル2の部分では、治療成功例用に同様の二次評価項目が使用された(ベースラインと比較して、サイクル2の終了後の指標病変3例の累積CAILSスコアの≧50%の改善)。CAILSスコアは、CTCL研究における病変重症度の標準的な測定法であり、各指標病変の紅斑スコア、鱗屑スコア、プラーク隆起スコア、病変表面積スコアを評価することにより算出される。各評価と各評価病変の合計スコアは、症例報告書(CRF)に記録された。CAILSの総スコアは、すべての評価病変のスコアを合計して算出した。
【0036】
主な二次評価項目には、奏効期間、改善度、再発までの期間、安全性の評価が含まれる。
【0037】
B.第II相試験:有効性の結果
3つの指標病変を合計した累積CAILS(Olsen et al、2011)スコアが、ベースラインに対して少なくとも50%減少した場合、患者はレスポンダとみなされた。サイクル1終了時、患者の16.4%がレスポンダとしてみなされ(対して、プラセボ群4%、p=0.04)、うち2人が完全なレスポンダであった(表3)。
【0038】
【表3】
【0039】
HyBを投与された110人の患者のうち7名の完全なレスポンダを含む、40%がサイクル1と2の両方を通じてレスポンダであると判定され、より長期の治療の後に反応がかなり改善することが判明した([p<0.0001対プラセボ)(表1)。これは、HyBによる治療をサイクル2まで継続した患者110人の奏効が15.5%から40%に増加したことを表している。サイクル1のプラセボからサイクル2のHyBに切り替えた患者の奏効率が22.2%であったことは注目に値し、HyBで治療されたサイクル1の患者で観察された急速な奏効との一貫性を示している。
【0040】
長期治療への影響を評価するため、任意でサイクル3(非盲検の思いやりのある使用タイプ)まで治療を継続した。3サイクルすべてにおいて投与を受けた患者78人では、治療効果のさらなる増大が認められ、これら患者のうち奏効率はサイクル2の40%からサイクル3の48.7%に上昇した。しかし、すべての患者が継続を選択したわけではないので、サイクル3の結果には選択バイアスがあることに留意すべきである。経時的な奏効率の増加は、図2に明確に示されている。
【0041】
急速な奏効率(6週間で16.4%)は、累積CAILSスコアの平均24%の改善を含む、より広い奏効率と組み合わされている(サイクル1の全被験者に亘って、「成功」の定義に満たないとしても、多くの患者において病変の改善が見られたことを示している)。CAILS病変スコアの平均減少率は、サイクル2以降はベースラインより37%増加した。この急速な反応により、HyBによる治療を継続するか、代替療法を試すかの迅速な意思決定が可能になり、効果が現れるまでに数カ月を要することが多い他の治療法とHyBを差別化することができる。
【0042】
サンプル数が少ないため統計学的に有意ではなかったが、HyBに対する治療効果は患者集団間で同様であった(表4)。過去の罹病期間や前治療の回数に関係なく、治療は同様に有効であった(表5)。過去の罹病期間と前治療回数の変動は、いずれも全体の臨床集団を代表するものである。このように、HyBは早期疾患を有する患者に対して、過去の患者の経過に関係なく、また有害事象の発生率も非常に低い、皮膚に対する治療の可能性を提供する。
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
奏功期間は、53%の患者で追跡期間中も持続し、効果の中央値は不明であった。ロジスティック回帰分析によると、奏効期間はHyB療法のサイクル数と統計学的に有意な相関があり、治療サイクルの多い患者ほど奏効が持続した(p=0.0128)。
【0046】
有効反応は病変単位でも観察され、さらに病変はその厚さによって特徴付けられ、この早期段階の患者集団ではパッチ(厚さ=0)とプラーク(厚さ>0)の両方が発生することが示された。この分析の結果、HyBはパッチとプラークの両方に有効であることが示され(表6)、他の皮膚に対する治療(例えばNB UVB)が主にパッチに有効であることが知られていることから、これも差別化の特徴である。従って、HyBは少なくとも厚いプラーク病変にも、薄いパッチ病変と同様に有効であることが示唆され、皮膚浸透深度が浅いために制限されるUV療法に比べ、より広範囲の疾患に治療を適用することができる。
【0047】
【表6】
【0048】
毛包向性MFを含む、より治療が困難なCTCL患者においても有効性が認められたことは注目に値する。このより進行の速いMFでは、悪性細胞は毛包周囲の皮膚深層に存在する(Metha-Shah et al, 2020)。ヒペリシンは波長500~650nmで最大吸収を示し、可視スペクトルのこの部分は紫外線よりもかなり深く透過することが知られている(Gokdemir et al、2006、Ash et al、2017)。毛包向性MFの治療について、現在全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)ガイドラインは、利用可能な皮膚に対する療法が有効性に乏しいため、全身療法に移行することを推奨している(Mehta-Shah et al、2020)。ヒペリシンの吸収スペクトルと本研究で観察された臨床効果から、HyBはこのCTCLの変異型を有する一部の患者に代替療法を提供することが示唆される。これにより、費用のかかる危険な全身療法を避けることができる患者が現れるかもしれない。事実、HyBによるサイクル2の治療が終了した時点で、すべてのタイプの病変で統計的に有意、且つ、同程度の奏効率が示された(表6参照)。これは、以前に報告された、厚い乾癬病変における軟膏形態のヒペリシンの有効性の減少を考えると、予想外の奏効であった(Rook et al)。
【0049】
サイクル3実施中、サイクル3の5週目と6週目の2回の光治療セッション終了後30分以内に、最初の29人の患者から血漿サンプルを採取し、すべての病変部へのHyB局所投与後の循環血漿中のヒペリシン濃度を測定した。このサイクルでは患者がより多くの体表面積を治療するため、全身吸収はこの治療期間に最も高くなると予想され、このサイクルの終了時にヒペリシンの血清濃度が得られた。循環する血漿レベルはいずれも検出されなかった。生物分析法の定量下限は0.005μg/ml(または5ng/ml)であった。このように、HyBは可視光線と薬物物質を組み合わせた標的光線療法であり、悪性T細胞に優先的に吸収され、局所治療後の循環レベルは検出されないことが示されている。これは、局所投与後にヒペリシンが循環していなことの最初の実証である。
【0050】
C.第II相試験:安全性プロフィール
これまでの安全性プロフィールは良好で、最も一般的な有害事象(AE)は塗布部位の灼熱感/チクチク感に関するものであった。この種の有害事象はCTCLによくみられ、HyBによる発生率と重症度は他の治療法(例えばメクロレタミン)に比べて有意に低い。
【0051】
重篤な有害事象は7人の患者から8例報告された。薬剤投与部位の疼痛と紅斑を除いて、HyB群で報告された重篤な有害事象は、プラセボ群と比較して一貫した明らかな増加は認められなかった。試験薬に関連する可能性がある(HyB投与患者の11%に発生)または関連する(HyB投与患者の15%に発生)と考えられる有害事象は、主に、掻痒症、高色素沈着、灼熱感、疼痛、刺激感などの皮膚反応、並びに、一般的な適用手順における投与部位の疼痛や掻痒症などであった。
【0052】
本試験中に5件の重篤な有害事象(SAE)が発生し、うち一件はプラセボ投与のサイクル1の患者で発生した。残りの4件のSAEのうち、2件は直近のHyB局所投与から2週間以上経過後に発生した。残りの2件の重篤な有害事象は、サイクル1にプラセボを投与され、サイクル2にHyBを投与され、サイクル3にHyBの継続投与を選択した患者において、サイクル3で発生した。5件の重篤な有害事象のうち、4件はCTCLとは無関係の基礎疾患または薬剤に関連したものと考えられた。重篤な有害事象はすべて消失し、いずれもHyB治療とは関係ないと考えられた。重篤な有害事象には一貫したパターンがなく、試験で報告された有害事象で多く見られたカテゴリで重篤な有害事象が発生したわけでもないことから、重篤な有害事象は散発的で無関係な事象であることが示唆された。
【0053】
試験中の死亡例はなかった。血液学的、臨床化学的パラメータに臨床的に意義のある変化はなかった。一部の患者ではバイタルサインに有意な変化が記録される可能性があったが、それらは上昇(例:血圧上昇)と下降(例:血圧下降)の両方向に同様に分布しており、試験薬との明らかな相関は認められなかった。
【0054】
HyBと可視光の有望な安全性プロフィールは、黒色腫や非黒色腫皮膚がんのリスクにつながる突然変異誘発を伴うメクロレタミンの局所投与やUVAを伴うソラレン経口投与など、CTCLの初期段階の治療に現在用いられているいくつかの標準的治療法の適用とは著しく対照的である(Nijsten et al、2003、Vonderheid et al、1989)。
【0055】
発生率が3%を超える各治療期間について、器官別大分類(SOC:System Organ Class)別および優先用語別の有害事象発生率を表7にまとめた。治療中に発生した有害反応(TEAE:Treatment Emergent Adverse Event)は全体の69.9%の患者で報告され、HyBを投与された患者では67.1%であった。HyBを投与された患者で最も多く報告されたTEAEは、SOCの皮膚および皮下組織障害(29.8%)、感染症(Infection)および感染症(Infestation)(26.7%)、一般障害および投与部位状態(23.6%)であった。
【0056】
【表7】
【0057】
HyBを投与された患者の5%以上で報告されたTEAEは、投与部位の疼痛(9.9%)、掻痒症(7.5%)、上気道感染症(7.5%)、ウイルス性上気道感染症(6.8%)、頭痛(6.2%)、投与部位の掻痒症(5.6%)、疲労感(5.0%)であった(表7)。
【0058】
サイクル1では、HyBを投与された患者の方がプラセボを投与された患者よりも高い割合で適用部位の事象が報告された。これらの事象には、投与部位の疼痛(6.9%対4.0%)、投与部位の掻痒症(4.3%対2.0%)、適用部位の知覚鈍麻(5.2%対0%)、投与部位の紅斑(1.7%対0%)、投与部位の温感(0.9%対0%)、投与部位反応(0.9%対0%)、投与部位の刺激感(0.9%対0%)が挙げられる。プラセボを投与された患者の高い割合で報告された唯一の投与部位の事象は、投与部位の変色であり、HyBを投与された患者には見られなかったのに対し、0.9%の患者にみられた。
【0059】
投与部位の反応を報告した患者の割合は、サイクル2およびサイクル3のHyBへの曝露によって増加することはなかった。
【0060】
要約すると、本研究は、HyBを週2回、6週間周期で投与することで以下のことが可能であることを示している。
(1)迅速な治療反応を誘導すること(治療後6週間以内)、
(2)治療開始12週間以内に最大40%の治療効果が得られ、治療開始18週間で49%の治療効果が得られること、
(3)早期CTCLで発生するパッチとプラークの両方に同様の効力があること、
(4)循環濃度のヒペリシンへの曝露を最小限にすること、
(5)安全で忍容性が高いこと。
【0061】
本発明のHyBの実施の形態は、CTCL治療に対する現在の最新技術に比べて実質的な改善を意味する。表8に示すように、早期CTCLに対して承認された代替療法の臨床試験で公表されたデータと比較すると、HyBを使用することには大きな利点がある。HyBは、プラークとパッチの疾患、および皮膚深部に病変を有するCTCLの変種において予想外の有効性を示した。HyBは、既存の治療法に比べてさまざまな利点をもたらすことが期待され、したがって、早期CTCLにおいてまだ満たされていないニーズに対応する可能性がある。
【0062】
【表8】
【0063】
HyBは、他の承認された早期CTCL治療薬と比較して同等以上の有効性を示し、より迅速な反応を示す。HyB治療の有効性と安全性の結果は、あまり厳密でない試験設計を用いた難治性早期CTCLの治療において、承認された治療法で報告された結果よりも一般的に優れており、忍容性が高く、離脱率が低い。
【0064】
上記実施例に記載されたプラセボ対照の極めて重要な第3相試験において、HyBは8週間後(サイクル1:6週間の治療と2週間の「休息期間」)の奏効率が16%であり、16週目(サイクル2、サイクル1でHyBを投与された患者)の奏効率が最大40%であり、24週目(サイクル3、3つのサイクルすべてでHyBを投与された患者)の奏効率は49%であり、長期間の治療が成功率を飛躍的に高めることを示した。
【0065】
メクロレタミンや外用・経口(高用量)ベキサロテンなどの承認された治療薬では、24週時点で同等の奏効率が得られているが、これらの承認を支持する主要な試験の大部分では、充分な対照群がいない(即ち、患者が何らかの活性薬剤を使用しており、治療効果が期待できる)ため、患者バイアスが内在する試験設計の恩恵を受けていることは注目に値する。これに対して、HyB試験の奏効率はプラセボ対照の設定で厳密に定義され、試験に参加し続けるために患者が必要とするロジスティックな誓約(例えば、サイクル3を完了した場合、最大24週間、週2回、アクセスの悪い現場、つまり診療所に通う必要がある)とプラセボを投与される可能性のために、6週間の治療後のHyBの完全な影響は控えめである可能性が高い。プラセボ対照試験の使用は、治療の有用性を評価する上で患者や医師の信頼性を高める。
【0066】
何よりも、プラセボ対照臨床試験において、これほどの短期間(即ち、6週間の治療)で同等以上の奏効率(即ち、16%)を示す有効性を示した先行治療薬はないということが重要である。メクロレタミンゲル(薬局で調製されたメクロレサミン製剤と中央で調製されたメクロレサミン製剤の非劣性試験)では、1日1回の治療を少なくとも8週間継続しないと奏効がみられず、奏効率16%に達するにはほぼ13週間の継続治療が必要であった(Lessin et al、2013)。16週後の奏効率は20%であったのに対し、HyBは40%であった。ベキサロテンゲルもまた、16%に達するまでに、少なくとも60日(9週間の継続投与)かかった(Heald et al、2003)。
【0067】
この迅速な反応プロファイルは、早期CTCL集団にとって極めて有意義である。治療担当医は通常、治療に対する患者の反応を評価し、治療を継続する場合と他の治療法に移行する場合の危険度と受益度との割合を結論づけるまで、数ヵ月を要する。より早い時点で有意な結果が得られることで、医師は治療プロセスの早い段階でこうした判断を下すことができるようになる。
【0068】
HyBは安全であり、既存の治療と比較して有意に良好な忍容性を示す。標的治療と可視赤黄色スペクトルの光を用いた標的光線治療を併用することで、安全性プロフィールは非常に良好となる。ヒペリシンは変異原性はなく、はるかに高用量で静脈内投与した場合でも、光活性に関するもの以外に重大な有害事象を引き起こさない(Gulick et al、1999、 Jacobson et al、2001)。したがって、この化合物自体は良性である。何よりも、最大18週間(36回)の治療後でさえ、複数の身体領域にわたって、ヒペリシンの血中への全身吸収が観察されないことが重要である。これは、黒色腫や非黒色腫皮膚がんのリスクにつながる突然変異誘発を伴うメクロレタミンやPUVAなどの標準的な治療法とは著しく対照的である。
【0069】
HyBの安全性データを他の皮膚に対する治療法の入手可能なデータ(表9)と比較すると、試験中止に至った事象の発生率は著しく低く、全体として、HyB療法はベキサロテンゲルやメクロレタミンゲルと比較して皮膚の有害事象が少ない。
【0070】
【表9】
【0071】
HyBによる重篤な有害事象の発生率は4%(HyBを投与した患者161人中7例)であり、試験薬との関連は1例のみであった。これに対して、局所用ベキサロテンは、24~26%の治療が制限される中等度から重度の毒性事象と関連しており、局所要メクロレタミンは、10%超の接触アレルギ性皮膚炎と、50%超の局所皮膚反応を記録した。経口ベキサロテンには、高脂血症、甲状腺機能低下症、皮膚そう痒症や、掻痒症、発疹、その他の皮膚障害を含む皮膚に関連する問題の発生率の上昇など、多くの全身的副作用が追加されている。また、メクロレタミンの治療は、治療部位を他の人と接触させることができないため、患者にとって親密さの面でも大きな問題となった。3つの治療法すべてからの離脱率は、HyB第III相試験で見られた離脱率よりも有意に高かった。
【0072】
以上より、リンパ系細胞における光活性化ヒペリシンによる細胞増殖およびアポトーシス死の抑制を示す生体内のデータは、既存の臨床第1相、第2相および第3相の結果と併せて、局所的に適用された光活性化ヒペリシンに対する皮膚光線過敏反応、およびプラークや治療が困難な毛包向性病変を含むCTCL患者の活動性皮膚病変の消失を示した。上記の実施例で記載したCTCLにおける無作為化プラセボ対照第3相試験の非常に有望で統計的に有意な有効性データは、ヒペリシンおよび可視光の良好な安全性プロフィールと組み合わせることで、CTCL患者において皮膚病変を標的とする光活性化ヒペリシンが効果的な治療戦略となり、既存の選択肢よりも安全性と忍容性が改善する可能性があることを示してる。
【0073】
上記の研究結果から得られる総合的な利点は、既存の記録されている技術と比較して以下のような改善点がある。
1.6週間以内の治療効果は16%であった。
2.治療期間が長くなるにつれて治療効果が向上し、12週で40%、18週で49%であった。
3.皮膚に対する療法が有効である限り、患者の罹病期間に関係なく治療は有効である。
4.治療は、患者がこれまでに試した治療法の数に関係なく有効である。
5.治療効果は患者に対する治療期間が長いほど持続するので、治療期間が長ければ長いほど、病変が再び劇的に増大するまでの期間も長くなる。
6.治療はパッチにもプラークにも同様に有効である。これまでの研究では、軟膏は乾癬の厚い病変には効果が薄いとされていたので、これは予想外であった。
7.具体的な治療計画は週2回で、より長期間治療する機会もある。
8.ヒペリシン軟膏は、治療中の離脱率が非常に低く(5%)、これは他の皮膚に対する療法よりかなり低い。
【0074】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形は複数形を含むものとする。記載内容に明確な別段の定めがない限り、単数形「a」、「an、及び「the」には複数の指示対象が含まれる。また、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連のあらゆる要素を指すと理解すべきである。本明細書に例示的に記載された発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素(複数可)、制限(複数可)がない場合にも、好適に実施することができる。したがって、例えば、「comprising」、「including」、「containing」などの用語は、限定することなく広義に解釈されるものとする。さらに、本明細書で使用される用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、このような用語および表現の使用には、示され、且つ、説明された将来の同等物またはその一部を除外する意図はなく、請求される発明の範囲内で様々な変形例が可能であることが認識される。したがって、本発明は好ましい実施の形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、当業者であれば本開示の発明を変更および改変することができ、そのような変更および改変も本開示の発明の範囲内であると考えられることを理解されたい。本明細書では、本発明を広く一般的に説明した。一般的な開示の範囲に含まれる、より狭い種や亜属のグループもまた、これらの発明の一部である。これには、但し書きまたは否定的な限定を付した各発明の一般的な説明が含まれ、除外された材料がその中に具体的に存在するか否かにかかわらず、あらゆる主題をその属から除外する。さらに、本発明の特徴または態様がマーカッシュグループに関して説明される場合、当業者は、それによって、本発明が、マーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関しても説明されることを認識するであろう。また、上記の説明は例示を意図したものであり、制限的なものではないことを理解されたい。上記の説明を読めば、多くの実施の形態が当業者には明らかとなるであろう。したがって、本発明の範囲は、上記の説明を参照して判断されるべきではなく、添付の特許請求の範囲を参照して、当該特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲とともに判断されるべきである。当業者であれば、記載された本発明の具体的な実施の形態に相当する多くの均等物を認識するか、または日常的な実験以上のことを行わずに確認することができるであろう。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることを意図している。

図1
図2
【国際調査報告】