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特表2024-524616チップスケール慣性センサおよび慣性測定ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】チップスケール慣性センサおよび慣性測定ユニット
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/00 20130101AFI20240628BHJP
   G01C 19/72 20060101ALI20240628BHJP
   G01C 19/5635 20120101ALI20240628BHJP
【FI】
G01C19/00 Z
G01C19/72 C
G01C19/5635
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501121
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 GB2022051671
(87)【国際公開番号】W WO2023281242
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】2109942.9
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523359582
【氏名又は名称】ゼロ・ポイント・モーション・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Zero Point Motion Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,イン・リア
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105BB04
2F105BB07
2F105CC04
2F105DD01
2F105DE01
2F105DE05
2F105DE25
(57)【要約】
慣性センサおよび慣性測定ユニットが提供される。一例では、チップスケール慣性センサは、軸を中心とした慣性センサの回転速度を検出するためのものである。慣性センサは、上記軸を中心とした慣性センサの第1の回転速度を検出するための光学振動ジャイロスコープを備える。光学振動ジャイロスコープは、第1の回転速度に対応する主信号を出力するように構成される。慣性センサは、上記軸を中心とした慣性センサの第2の回転速度を同時に検出するための光学サニャックジャイロスコープをさらに備える。光学サニャックジャイロスコープは、第2の回転速度に対応する補助信号を出力するように構成される。慣性センサは、主信号および補助信号に基づいて1つまたは複数の入力を受信するように構成されたマイクロコントローラをさらに備える。マイクロコントローラは、1つまたは複数の入力に基づいて、上記軸を中心とした慣性センサの補正された第1の回転速度を決定するようにさらに構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップスケール慣性センサであって、軸を中心とした前記慣性センサの回転速度を検出するためのものであり、前記慣性センサは、
前記軸を中心とした前記慣性センサの第1の回転速度を検出するための光学振動ジャイロスコープであって、前記光学振動ジャイロスコープは、前記第1の回転速度に対応する主信号を出力するように構成されている、光学振動ジャイロスコープと、
前記軸を中心とした前記慣性センサの第2の回転速度を同時に検出するための光学サニャックジャイロスコープであって、前記光学サニャックジャイロスコープは、前記第2の回転速度に対応する補助信号を出力するように構成されている、光学サニャックジャイロスコープと、
前記主信号および前記補助信号に基づいて1つまたは複数の入力を受信し、
前記1つまたは複数の入力に基づいて、前記軸を中心とした前記慣性センサの補正された第1の回転速度を決定するように構成されている、マイクロコントローラと
を備える、チップスケール慣性センサ。
【請求項2】
前記光学振動ジャイロスコープおよび前記光学サニャックジャイロスコープは、同じ光源から光を受け取る、請求項1に記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項3】
前記光学振動ジャイロスコープおよび前記光学サニャックジャイロスコープに伝送するために前記光源からの前記光を分割するためのビームスプリッタをさらに備える、請求項2に記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項4】
前記光学振動ジャイロスコープおよび前記光学サニャックジャイロスコープに光を伝送するための光源をさらに備える、先行する請求項のいずれかに記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項5】
前記光学振動ジャイロスコープおよび前記光学サニャックジャイロスコープから伝送されている光を検出するための少なくとも1つの検出器をさらに備え、前記マイクロコントローラは、前記少なくとも1つの検出器から前記1つまたは複数の入力を受信する、先行する請求項のいずれかに記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項6】
前記1つまたは複数の入力に基づいて、補正された第1の回転速度を決定することは、前記第1の回転速度を前記第2の回転速度と比較することと、前記比較に基づいて、前記補正された第1の回転速度を決定することとを含む、先行する請求項のいずれかに記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項7】
前記第1の回転速度を前記第2の回転速度と比較することは、前記光学振動ジャイロスコープの短期誤差および長期誤差を決定するために前記主信号と前記補助信号との間の差を算出することを含み、
前記比較に基づいて、前記補正された第1の回転速度を決定することは、前記主信号を補正して前記短期誤差および長期誤差を除去することを含む、請求項6に記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項8】
前記誤差は、前記慣性センサの線形加速度および/または長期ドリフトに起因する、請求項7に記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項9】
前記第1の回転速度を前記第2の回転速度と比較することは、前記主信号が飽和しているか否かを決定することを含み、
前記主信号が飽和している場合、前記補正された第1の回転速度は、前記補助信号のみを使用して決定される、請求項6~8のいずれかに記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項10】
前記光学振動ジャイロスコープおよび光学サニャックジャイロスコープは、同じチップ上に作製される、先行する請求項のいずれかに記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項11】
前記マイクロコントローラは、前記比較に基づいて前記光学振動ジャイロスコープを再較正するために前記光学振動ジャイロスコープの試験質量を作動させるためのフィードバック信号を出力するようにさらに構成されている、請求項6~10のいずれかに記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項12】
前記フィードバック信号は、前記試験質量を静電的に作動させるために前記光学振動ジャイロスコープの電極に出力される、請求項11に記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項13】
前記光学サニャックジャイロスコープは、光を時計回りおよび反時計回りに伝播させるためのコイル状または螺旋状導波路構造を備え、前記センサの前記回転は、時計回りおよび反時計回りに伝播する前記光の光路長の変化を引き起こす、先行する請求項のいずれかに記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項14】
前記コイル状または螺旋状導波路構造は、コイル状光ファイバ、コイル状導波路、螺旋状導波路、およびマイクロディスクのうちの1つの形態である、請求項13に記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項15】
前記コイル状または螺旋状導波路構造の直径は、ミリメートルまたはセンチメートル程度である、請求項13または14に記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項16】
前記マイクロコントローラは、ドリフトによる前記光の周波数変化を低減するように、前記光学サニャックジャイロスコープによって出力される前記補助信号に基づいて、前記時計回りおよび反時計回りに伝播する光の前記周波数を制御する、請求項13~15のいずれかに記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項17】
前記光学サニャックジャイロスコープおよび光学振動ジャイロスコープは、ケイ素または窒化ケイ素から作成される、先行する請求項のいずれかに記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項18】
前記光学振動ジャイロスコープは、
1つまたは複数の微小共振器であって、各微小共振器は、対応する光共振をサポートする、微小共振器と、
前記1つまたは複数の微小共振器に隣接して、かつ不連続に懸架された微小電気機械慣性試験質量であって、前記試験質量は慣性力の印加下で偏向可能である、微小電気機械慣性試験質量と、
前記光学振動ジャイロスコープに伝送されている光を対応する微小共振器の内外に結合するための1つまたは複数の光カプラと、
前記1つまたは複数の光カプラによって前記1つまたは複数の微小共振器から受け取られる光を検出するための1つまたは複数の検出器と
を備え、
前記試験質量と少なくとも1つの微小共振器との間の間隔の変化は、前記微小共振器の光共振特性の変化を引き起こす、先行する請求項のいずれかに記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項19】
前記光学振動ジャイロスコープは、前記試験質量の偏向に静電力で反作用するための1つまたは複数の電極をさらに備え、
前記マイクロコントローラは、
前記光学振動ジャイロスコープが前記軸を中心とした前記慣性センサの前記第1の回転速度を検出することができるように、前記試験質量を前記軸に垂直な第1の方向に固定周波数で振動させるように前記1つまたは複数の電極の前記静電力を制御し、
前記1つまたは複数の検出器から電気信号を受信し、
前記固定周波数における前記第1の方向に垂直な第2の方向における前記試験質量と前記1つまたは複数の微小共振器との間の前記間隔の変化に応答して、前記1つまたは複数の微小共振器の前記光共振特性の変化を検出し、
前記1つまたは複数の微小共振器の前記光共振特性の変化に基づいて、前記軸を中心とした前記慣性センサの前記第1の回転速度を決定する
ようにさらに構成されている、請求項18に記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項20】
前記マイクロコントローラは、前記比較に基づいて前記光学振動ジャイロスコープを再較正するために前記1つまたは複数の電極の前記静電力を制御するようにさらに構成されている、請求項19に記載のチップスケール慣性センサ。
【請求項21】
慣性測定ユニットであって、
それぞれの軸を中心とした回転速度を検出するための複数のチップスケール慣性センサであって、各慣性センサは、
前記軸を中心とした前記慣性センサの第1の回転速度を検出するための光学振動ジャイロスコープであって、前記光学振動ジャイロスコープは、前記第1の回転速度に対応する主信号を出力するように構成されている、光学振動ジャイロスコープと、
前記軸を中心とした前記慣性センサの第2の回転速度を同時に検出するための光学サニャックジャイロスコープであって、前記光学サニャックジャイロスコープは、前記第2の回転速度に対応する補助信号を出力するように構成されている、光学サニャックジャイロスコープと
を備える、複数のチップスケール慣性センサと、
コントローラであって、各慣性センサについて、
前記慣性センサの前記主信号および前記補助信号に基づいて1つまたは複数の入力を受信し、
前記1つまたは複数の入力に基づいて、それぞれの前記軸を中心とした前記慣性センサの補正された第1の回転速度を決定する
ように構成されている、コントローラと
を備える、慣性測定ユニット。
【請求項22】
前記慣性測定ユニットは、第1の軸における第1の慣性センサの回転速度を検出するための第1のチップスケール慣性センサと、前記第1の軸に垂直な第2の軸における第2の慣性センサの回転速度を検出するための第2のチップスケール慣性センサと、前記第1の軸および前記第2の軸に垂直な第3の軸における第3の慣性センサの回転速度を検出するための第3のチップスケール慣性センサとを備え、
前記コントローラは、各慣性センサについて決定されている、前記補正された第1の回転速度に基づいて前記慣性測定ユニットの総回転速度を決定するようにさらに構成されている、請求項21に記載の慣性測定ユニット。
【請求項23】
請求項1~20のいずれかに記載のチップスケール慣性センサ、または、請求項21または22に記載の慣性測定ユニットを備えるチップ。
【請求項24】
軸を中心とした慣性センサの回転速度を決定するためのマイクロコントローラによって実施される方法であって、
前記軸を中心とした前記慣性センサの第1の回転速度を検出するための光学振動ジャイロスコープから出力される主信号、および、前記軸を中心とした前記慣性センサの第2の回転速度を同時に検出するための光学サニャックジャイロスコープから出力される補助信号に基づいて1つまたは複数の入力を受信することと、
前記1つまたは複数の入力に基づいて、前記軸を中心とした前記慣性センサの補正された第1の回転速度を決定することと
を含む、方法。
【請求項25】
1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、前記1つまたは複数のプロセッサに請求項24に記載の方法を実施させる命令を格納しているコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、一般に、チップスケール慣性センサおよび慣性測定ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
回転速度の検出は、例えばデバイスの向きを正確に追跡することによって、デバイスの機能を強化するためにますます利用されている。回転速度を検出する振動ジャイロスコープは、測位、ナビゲーションおよび回転監視などの多くの大容量用途に使用されている。
【0003】
振動ジャイロスコープは、回転速度に非常に敏感であり、したがって精密な測定値を提供する。しかしながら、これらのジャイロスコープの長期安定性能は、g感度としても知られる、振動に対する感度および重力を含む線形加速度によって制限される。これは、ジャイロスコープの出力におけるノイズ寄与を増大させ、出力の正確度を低下させる。振動ジャイロスコープはまた、感知範囲の低下を被る可能性がある。
【0004】
本発明の実施形態の目的は、当技術分野で知られている1つまたは複数の問題を少なくとも軽減することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
本発明の一態様によれば、チップスケール慣性センサが提供される。チップスケール慣性センサは、軸を中心とした慣性センサの回転速度を検出するためのものである。慣性センサは、上記軸を中心とした慣性センサの第1の回転速度を検出するための光学振動ジャイロスコープを備える。光学振動ジャイロスコープは、第1の回転速度に対応する主信号を出力するように構成される。慣性センサは、上記軸を中心とした慣性センサの第2の回転速度を同時に検出するための光学サニャックジャイロスコープをさらに備える。光学サニャックジャイロスコープは、第2の回転速度に対応する補助信号を出力するように構成される。慣性センサは、主信号および補助信号に基づいて1つまたは複数の入力を受信するように構成されたマイクロコントローラをさらに備える。マイクロコントローラは、1つまたは複数の入力に基づいて、上記軸を中心とした慣性センサの補正された第1の回転速度を決定するようにさらに構成される。
【0006】
振動ジャイロスコープは高感度であり、機械ジャイロスコープであるが、振動、加速度、g感度、および交差軸効果などの望ましくない運動の影響を受けやすい。任意の加速度が、振動ジャイロスコープをずらし、回転速度測定値を歪める。さらに、振動および線形加速度に対する感度は、検出される回転誤差を経時的に増大させる大きいバイアスドリフトをもたらし、不正確な読み値をもたらす。
【0007】
逆に、現行のチップスケール光学サニャックジャイロスコープは、サイズが小さく、共振の光線幅を減少させるエッチングの側壁粗さによって制限されるため、感度が低い。しかしながら、光学サニャックジャイロスコープは静止しているため、機械的誤差の影響を受けにくい。これは、光学サニャックジャイロスコープが線形加速度に敏感でなく、機械的効果による長期ドリフトを被らないことを意味する。
【0008】
光学振動ジャイロスコープと光学サニャックジャイロスコープの両方を備える慣性センサを提供することによって、光学振動ジャイロスコープの高感度出力を維持することができ、光学サニャックジャイロスコープの安定出力を使用して光学振動ジャイロスコープの出力の誤差を低減することができる。したがって、光学サニャックジャイロスコープの安定性を光学振動ジャイロスコープの感度と組み合わせて、より長い持続時間にわたって正確なままである高感度ハイブリッドジャイロスコープ読み値を提供することができる。
【0009】
特に、光学サニャックジャイロスコープの出力は、光学振動ジャイロスコープの出力における誤差を低減するために、光学振動ジャイロスコープの出力を補正するために使用することができる。このような補正は、光学振動ジャイロスコープの出力に存在するg感度および振動の影響を低減し、光学振動ジャイロスコープの長期安定性能を改善する。したがって、光学振動ジャイロスコープと光学サニャックジャイロスコープとの組み合わせは、振動、衝撃、交差軸効果および線形加速度などの光学振動ジャイロスコープ内の効果に起因する誤差に対して高感度で正確かつロバストな慣性センサの出力における回転速度測定値の提供を可能にする。
【0010】
光学振動ジャイロスコープと光学サニャックジャイロスコープとを組み合わせることの別の利点は、光学振動ジャイロスコープが、閉ループシステムについては約300度/秒、開ループシステムについては100度/秒の低い感知範囲を有することができ、一方、光学サニャックジャイロスコープは、1000度/秒を超える著しく大きい感知範囲を有することができることである。光学サニャックジャイロスコープの感知帯域幅は、光キャビティ内を伝播する光子の往復時間によって制限される。これは非常に高速であるため、限界は、キロヘルツよりも大きくすることができる取得速度によって、または帯域幅を100Hzに近づけて設定することができる(ノイズを低減するための)最適な平均化時間によって設定される。したがって、慣性センサの回転速度が光学振動ジャイロスコープによって検出される回転速度を超える場合、代わりに光学サニャックジャイロスコープの出力を使用して回転速度を検出することができる。これにより、慣性センサの感知範囲が拡大する。
【0011】
純粋に電気機械的な振動ジャイロスコープではなく光学振動ジャイロスコープを使用することにより、ノイズの大幅な低減、ひいてはセンサの感度の増大が可能になる。さらに、2つの光学ジャイロスコープを実装することにより、両方のジャイロスコープが光学部品を共有することができる。両方のジャイロスコープはまた、光共振の信号対雑音増幅能力を利用することができる。
【0012】
純粋に電気機械的な振動ジャイロスコープは、光学振動ジャイロスコープよりも大きい感知範囲を提供することができるが、上述の理由から、光学振動ジャイロスコープと光学サニャックジャイロスコープとの組み合わせは、電気機械的な振動ジャイロスコープによって達成可能な感知範囲を超えて慣性センサの感知範囲を拡張し、純粋に電気機械的な振動ジャイロスコープによって提供される一切の利点に対抗する。
【0013】
したがって、本発明の特徴の組み合わせは、大きい感知範囲を有する高感度で正確かつコンパクトな慣性センサを提供する。
【0014】
光学振動ジャイロスコープと光学サニャックジャイロスコープは両方とも、同じ軸を中心とした慣性センサの回転速度を検出する。したがって、ジャイロスコープは、慣性センサの同じ回転速度を検出することになり、したがって、検出されている回転速度の任意の差は、ジャイロスコープの一方または両方における制限に起因する。
【0015】
マイクロコントローラは、主信号および補助信号を受信することができる。マイクロコントローラは、慣性センサから、補正された第1の回転速度に対応する出力信号を出力することができる。補正された第1の回転速度は、例えば誤差を除去するかまたは少なくとも低減するために補正された第1の回転速度であってもよい。したがって、出力信号は補正された主信号であってもよい。
【0016】
光学振動ジャイロスコープおよび光学サニャックジャイロスコープは、同じ光源から光を受け取ることができる。
【0017】
2つの光学ジャイロスコープを実装することにより、両方のジャイロスコープが光源を共有することができ、これにより、慣性センサを備えるチップ内で必要とされる構成要素の数、ひいては消費される空間およびエネルギーが低減される。さらに、同じ光源を共有することにより、両方のジャイロスコープにおいて同じ特性を有する光を利用することが可能になる。
【0018】
光源は、レーザであってもよい。光学振動ジャイロスコープおよび/または光学サニャックジャイロスコープによって受け取られる光は、広帯域光であってもよい。あるいは、光学振動ジャイロスコープおよび/または光学サニャックジャイロスコープによって受け取られる光は、コヒーレントな単一周波数光であってもよい。
【0019】
チップスケール慣性センサは、光学振動ジャイロスコープおよび光学サニャックジャイロスコープに伝送するために光源からの光を分割するためのビームスプリッタまたは方向性結合器をさらに備えることができる。
【0020】
チップスケール慣性センサは、光学振動ジャイロスコープおよび光学サニャックジャイロスコープに光を伝送するための光源をさらに備えることができる。
【0021】
光源を備える慣性センサは、ファイバを通じて外部光源を慣性センサに接続することに関連する一切の結合損失を排除する。さらに、センサ内に集積された光源を有することは、エネルギー効率およびエネルギー比例性を提供する。
【0022】
チップスケール慣性センサは、光学振動ジャイロスコープおよび光学サニャックジャイロスコープから伝送されている光を検出するための少なくとも1つの検出器をさらに備えてもよく、マイクロコントローラは、少なくとも1つの検出器から1つまたは複数の入力を受信する。
【0023】
慣性センサは、光学振動ジャイロスコープから伝送されている光を検出するための検出器と、光学サニャックジャイロスコープから伝送されている光を検出するための検出器とを備えてもよい。主信号は、光学振動ジャイロスコープから検出器に伝送される光であってもよい。補助信号は、光学サニャックジャイロスコープから検出器に伝送される光であってもよい。
【0024】
1つまたは複数の入力に基づいて、補正された第1の回転速度を決定することは、第1の回転速度を第2の回転速度と比較することと、比較に基づいて、補正された第1の回転速度を決定することとを含むことができる。
【0025】
第1の回転速度を第2の回転速度と比較することにより、検出されている回転における任意の誤差の検出が可能になる。次いで、このような誤差を低減するために、補正された第1の回転速度を決定することができる。特に、回転の平均を求めるのではなく第1の回転速度を補正することによって、光学振動ジャイロスコープの感度が維持され、一方で比較によって検出されるその出力の任意の誤差が低減される。
【0026】
第1の回転速度を第2の回転速度と比較することは、光学振動ジャイロスコープの短期誤差および長期誤差を決定するために主信号と補助信号との間の差を算出することを含むことができる。比較に基づいて、補正された第1の回転速度を決定することは、主信号を補正して短期誤差および長期誤差を除去することを含む。
【0027】
光学サニャックジャイロスコープは、線形加速度などの短期誤差および長期誤差の原因に対する感度が低いため、光学振動ジャイロスコープによって出力される主信号と光学サニャックジャイロスコープによって出力される補助信号とを比較すると、光学振動ジャイロスコープの短期誤差および長期誤差が明らかになる。次いで、これらの誤差を主信号から除去することができる。したがって、光学サニャックジャイロスコープを使用するそのような較正は、その感度を維持しながら、光学振動ジャイロスコープの短期および長期安定性能を改善する。
【0028】
誤差は、慣性センサの線形加速度および/または長期ドリフトに起因し得る。
誤差は、振動および/または機械的に誘発されるドリフトの他の原因に起因し得る。
【0029】
誤差は、光学振動ジャイロスコープに影響を及ぼすが光学サニャックジャイロスコープには影響を及ぼさない要因に起因し得、結果、それらのジャイロスコープの出力を比較することによってそのような誤差を識別することが可能であり、したがって、そのような誤差の除去が可能になり、慣性センサの出力の正確度が向上する。
【0030】
第1の回転速度を第2の回転速度と比較することは、主信号が飽和しているか否かを判定することを含むことができる。主信号が飽和している場合、補正された第1の回転速度は、補助信号のみを使用して決定され得る。
【0031】
光学振動ジャイロスコープは、300度/秒の低感知範囲を有することができる。したがって、光学振動ジャイロスコープから出力される主信号は、回転速度が光学振動ジャイロスコープの感知範囲を上回るために飽和する可能性がある。しかしながら、光学サニャックジャイロスコープは1000度/秒を超える著しく大きい感知範囲を有することができるため、補助信号は飽和する可能性がより低く、大きい回転速度を正確に検出することができる可能性がより高い。したがって、主信号が飽和している場合、光学サニャックジャイロスコープによって出力される補助信号を使用して、補正された回転速度を提供することができる。このような場合、主信号は飽和しているため使用されない。
【0032】
したがって、慣性センサの回転速度が光学振動ジャイロスコープの感知範囲内にあるとき、補正された回転速度は、光学振動ジャイロスコープによって検出される第1の回転速度の補正バージョンであってもよく、これは高感度である。慣性センサの回転速度が光学振動ジャイロスコープの感知範囲を上回る場合、補正された回転速度は光学サニャックジャイロスコープによって検出されている第2の回転速度に基づくことができるため、それは、慣性センサによって依然として検出することができる。主信号が飽和したときに、補正された回転速度が光学サニャックジャイロスコープによって出力される補助信号に基づくことを可能にすることによって、センサの感知範囲が増大される。これは、より高い感知範囲を有する慣性センサを提供する。さらに、これは、感度と感知範囲との間の共通のトレードオフを排除し、高感知範囲を有する高感度慣性センサを提供する。
【0033】
光学振動ジャイロスコープおよび光学サニャックジャイロスコープは、同じチップ上に作製されてもよい。これにより、コンパクトな慣性センサが提供される。さらに、これは、ジャイロスコープ間の相対運動の可能性がより低く、したがってジャイロスコープが同じ量だけ回転される可能性がより高いため、較正中の誤差の可能性を低減する。これにより、長期および短期の影響による光学振動ジャイロスコープの出力の誤差を正確に求めて除去することができる。
【0034】
マイクロコントローラは、比較に基づいて光学振動ジャイロスコープを再較正するために光学振動ジャイロスコープの試験質量を作動させるためのフィードバック信号を出力するようにさらに構成することができる。
【0035】
例えば、光学振動ジャイロスコープの各出力に同じ誤差が存在する場合、これは、光学振動ジャイロスコープの試験質量が初期較正中とは異なる場所にあることに起因すると判定することができる。したがって、再較正は、光学振動ジャイロスコープの出力に存在する誤差を低減するために、試験質量を作動させて、初期較正中に試験質量をその位置に戻す。必要な再較正は、光学振動ジャイロスコープの出力の誤差から決定することができる。したがって、再較正は、光学振動ジャイロスコープの出力の誤差を低減し、したがってマイクロコントローラによって必要とされる出力の補正を低減し、慣性センサの速度を増大させ、慣性センサの出力の誤差の可能性を低減する。
【0036】
フィードバック信号は、試験質量を静電的に作動させるために光学振動ジャイロスコープの電極に出力することができる。
【0037】
光学サニャックジャイロスコープは、光を時計回りおよび反時計回りに伝播させるためのコイル状または螺旋状導波路構造を備えることができ、センサの回転は、時計回りおよび反時計回りに伝播する光の光路長の変化を引き起こす。
【0038】
コイル状または螺旋状導波路構造は、したがって光学振動ジャイロスコープと同じチップに集積することができるコンパクトな光学サニャックジャイロスコープを提供する。
【0039】
慣性センサの回転速度は、時計回りおよび反時計回りに伝播する光の光路長の変化に基づいて、光学サニャックジャイロスコープによって検出することができる。
【0040】
時計回りおよび反時計回りに伝播する光の干渉の変化を検出することによって、または、時計回りおよび反時計回りに伝播する光の共振周波数の異なるシフトによって生じる時計回りおよび反時計回りに伝播する光の共振周波数の差を検出することによって、時計回りおよび反時計回りに伝播する光の光路長の変化から、慣性センサの回転速度を検出することができる。例えば、慣性センサの回転により、時計回りに伝播する光の共振周波数が第1の方向にシフトし、反時計回りに伝播する光の共振周波数が第1の方向とは反対の第2の方向にシフトし、時計回りに伝播する光および反時計回りに伝播する光の共振周波数に差が生じる。
【0041】
コイル状または螺旋状導波路構造は、コイル状光ファイバ、コイル状導波路、螺旋状導波路、およびマイクロディスクのうちの1つの形態であってもよい。
【0042】
コイル状または螺旋状導波路構造の直径は、ミリメートルまたはセンチメートル程度であってもよい。例えば、コイル状または螺旋状導波路の直径は、約2cmであってもよい。小さい直径は、したがって光学振動ジャイロスコープと同じチップに集積することができるコンパクトな光学サニャックジャイロスコープを提供する。
【0043】
マイクロコントローラは、ドリフトによる光の周波数変化を低減するように、光学サニャックジャイロスコープによって出力される補助信号に基づいて、時計回りおよび反時計回りに伝播する光の周波数を制御することができる。したがって、フィードバックを使用して、光学サニャックジャイロスコープの正しい出力を維持することができる。光学サニャックジャイロスコープの正しい出力を維持することによって、それを光学振動ジャイロスコープからの出力と比較した場合、それは光学振動ジャイロスコープからの出力にある可能性がより高い。これにより、誤差のより正確な補正が保証され、慣性センサの補正された第1の回転速度の正確度が増大する。
【0044】
光学サニャックジャイロスコープは、時計回りに伝播する光と反時計回りに伝播する光との間に90度の位相シフトが存在するように、コイル状または螺旋状導波路構造内に伝播する前に、時計回りまたは反時計回りのいずれかに90度伝播するように光をシフトするための移相器をさらに備えることができる。
【0045】
光学サニャックジャイロスコープおよび光学振動ジャイロスコープは、ケイ素または窒化ケイ素から作成されてもよい。これにより、特にジャイロスコープが同じチップ上に作製される場合、作製プロセスが単純化される。したがって、これは、同じチップ上のジャイロスコープの集積を容易にする。
【0046】
光学振動ジャイロスコープは、1つまたは複数の微小共振器を備えることができ、各微小共振器は対応する光共振をサポートする。光学振動ジャイロスコープは、1つまたは複数の微小共振器に隣接して、かつ不連続に懸架された微小電気機械慣性試験質量をさらに備えることができ、試験質量は慣性力の印加下で偏向可能である。光学振動ジャイロスコープは、光学振動ジャイロスコープに伝送されている光を対応する微小共振器の内外に結合するための1つまたは複数の光カプラをさらに備えることができる。光学振動ジャイロスコープは、1つまたは複数の光カプラによって1つまたは複数の微小共振器から受け取られる光を検出するための1つまたは複数の検出器をさらに備えることができる。試験質量と少なくとも1つの微小共振器との間の間隔の変化は、その微小共振器の光共振特性の変化を引き起こす可能性がある。
【0047】
回転速度を感知するために光学系を使用することによって、高感度測定が提供される。光学機械的読み取り機構に共振光を使用すると、試験質量の運動が共振条件をシフトさせ、ノイズではなく信号を増幅するため、さらに高い感度が提供される。
【0048】
光学振動ジャイロスコープは、試験質量の偏向に静電力で反作用するための1つまたは複数の電極をさらに備えることができる。マイクロコントローラは、光学振動ジャイロスコープが上記軸を中心とした慣性センサの第1の回転速度を検出することができるように、試験質量を第1の方向に固定周波数で振動させるように1つまたは複数の電極の静電力を制御するようにさらに構成することができる。マイクロコントローラは、1つまたは複数の検出器から電気信号を受信するようにさらに構成することができる。マイクロコントローラは、固定周波数における第1の方向に垂直な第2の方向における試験質量と1つまたは複数の微小共振器との間の間隔の変化に応答して、1つまたは複数の微小共振器の光共振特性の変化を検出するようにさらに構成することができる。マイクロコントローラは、1つまたは複数の微小共振器の光共振特性の変化に基づいて、上記軸を中心とした慣性センサの第1の回転速度を決定するようにさらに構成することができる。
【0049】
光学振動ジャイロスコープのこの構成は、以下の利点を提供する。キャビティ強化型光学機械的読み取り機構と試験質量の静電作動との組み合わせは、純粋に電気機械的なジャイロスコープ(読み取りと作動の両方が電極を使用して実行される)および純粋に光学的なジャイロスコープ(読み取りと作動の両方が光学的手段によって制御される)よりも大きい利点を提供する。特に、試験質量の作動のためだけに電圧を利用し、感知のためには電圧を利用しないことにより、ノイズの大幅な低減、ひいてはジャイロスコープの感度の増大が可能になる。作動のために電圧を使用することはまた、これは作動のために光学手段を使用するときには不可能であるが、電圧を効果的かつ効率的に使用して作動させることができるため、大きい試験質量を高い光パワーを必要とせずに使用することを可能にする。さらに、光学機械的読み取り機構に共振光を使用すると、試験質量の運動が共振条件をシフトさせ、ノイズではなく信号を増幅するため、さらに高い感度が提供される。
【0050】
光学振動ジャイロスコープにおける(1つまたは複数の電極を使用した)試験質量の静電作動と組み合わせた(1つまたは複数の微小共振器および1つまたは複数の光カプラを使用した)試験質量の変位の光学機械的感知の組み合わせは、試験質量のサイズを損なうことなく、容量性感知に基づくジャイロスコープと比較して、改善された感度および改善された信号対雑音比を有するハイブリッド光学電気機械ジャイロスコープを提供する。そのようなジャイロスコープは、慣性力に対する大きい機械的応答のために大きい試験質量を作動させる能力を保持する。
【0051】
光学振動ジャイロスコープのハイブリッド性は、改善された感度および改善された応答の両方を提供する。これは、すべての光学ジャイロスコープで不可能なことである。このような改善された応答は、ジャイロスコープ感度を効果的に調節または較正するために重要である。実際、試験質量の十分な作動を提供することによって、試験質量のドリフト、例えば熱誘起ドリフト、または非線形応答をより良好に制御することができるように、閉ループ動作を効果的に実装することができる。これにより、ジャイロスコープは、位置付け誤差により遭遇しにくくなる。さらに、位置付け誤差が発生した場合、本明細書に記載の慣性センサは、光学サニャックジャイロスコープの出力を使用してそのような誤差を補正することができる。したがって、そのような光学振動ジャイロスコープを備える慣性センサは、誤差の可能性を低減し、誤差が発生したときに誤差を補正し、高正確度のセンサを提供する。
【0052】
光学振動ジャイロスコープの光学読み取り機構および閉ループ動作と光学サニャックジャイロスコープとの組み合わせは、感度、制御、および長期安定性の最良のバランスを可能にして、必要な測定値を達成するために精密に制御することができる高感度で安定した慣性センサを提供する。
【0053】
マイクロコントローラは、比較に基づいて光学振動ジャイロスコープを再較正するために1つまたは複数の電極の静電力を制御するようにさらに構成することができる。したがって、試験質量が経時的にドリフトしている場合、これは、光学サニャックジャイロスコープの出力を使用して光学振動ジャイロスコープの出力において検出することができ、光学振動ジャイロスコープの出力がもはやそのような誤差を出力しないか、または出力する誤差をより小さくするように、光学振動ジャイロスコープの電極を使用して補正することができる。したがって、光学振動ジャイロスコープの長期および短期誤差を、出力においてだけでなく、光学サニャックジャイロスコープの出力を使用して光学振動ジャイロスコープ内でも補正することができる。光学振動ジャイロスコープの誤差を、その機械的応答を能動的に規制することによって低減することにより、計算的に補正する必要がある誤差の可能性が低減されるとともに、規制されていない機械的応答の増加が最小限に抑えられる。これにより、慣性センサの出力の正確度が向上し、感知速度が向上する。
【0054】
本発明の別の態様によれば、慣性測定ユニットが提供される。慣性測定ユニットは、それぞれの軸を中心とした回転速度を検出するための複数のチップスケール慣性センサを備える。各慣性センサは、上記軸を中心とした慣性センサの第1の回転速度を検出するための光学振動ジャイロスコープを備える。光学振動ジャイロスコープは、第1の回転速度に対応する主信号を出力するように構成される。各慣性センサは、上記軸を中心とした慣性センサの第2の回転速度を同時に検出するための光学サニャックジャイロスコープをさらに備える。光学サニャックジャイロスコープは、第2の回転速度に対応する補助信号を出力するように構成される。慣性測定ユニットは、各慣性センサについて、慣性センサの主信号および補助信号に基づいて1つまたは複数の入力を受信するように構成されたコントローラをさらに備える。コントローラは、各慣性センサについて、1つまたは複数の入力に基づいて、それぞれの軸を中心とした慣性センサの補正された第1の回転速度を決定するようにさらに構成される。
【0055】
慣性センサとは別個にコントローラを設けることによって、コントローラをすべての慣性センサにわたって共有することができ、各慣性センサに必要な回路および慣性測定ユニットの回路が低減され、結果として、慣性測定ユニットの電力およびスペースが低減される。
【0056】
慣性測定ユニットは、第1の軸における第1の慣性センサの回転速度を検出するための第1のチップスケール慣性センサと、第1の軸に垂直な第2の軸における第2の慣性センサの回転速度を検出するための第2のチップスケール慣性センサと、第1の軸および第2の軸に垂直な第3の軸における第3の慣性センサの回転速度を検出するための第3のチップスケール慣性センサとを備えることができる。コントローラは、各慣性センサについて決定された補正された第1の回転速度に基づいて慣性測定ユニットの総回転速度を決定するようにさらに構成することができる。
【0057】
3つの軸すべての回転速度を検出することにより、慣性測定ユニットの任意の回転を検出することが可能になり、これは、慣性測定ユニットの正確な位置および動きを監視するのに有益である。
【0058】
本発明の別の態様によれば、チップが提供される。チップは、本明細書に記載のようなチップスケール慣性センサまたは本明細書に記載のような慣性測定ユニットを備える。
【0059】
本発明の別の態様によれば、方法が提供される。この方法は、軸を中心とした慣性センサの回転速度を決定するためのマイクロコントローラによって実施される。本方法は、上記軸を中心とした慣性センサの第1の回転速度を検出するための光学振動ジャイロスコープから出力される主信号、および、上記軸を中心とした慣性センサの第2の回転速度を同時に検出するための光学サニャックジャイロスコープから出力される補助信号に基づいて1つまたは複数の入力を受信することを含む。本方法は、1つまたは複数の入力に基づいて、上記軸を中心とした慣性センサの補正された第1の回転速度を決定することをさらに含む。
【0060】
本発明の別の態様によれば、コンピュータ可読媒体が提供される。コンピュータ可読媒体は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、1つまたは複数のプロセッサに本明細書に記載のような方法を実施させる命令を格納している。
【0061】
光学振動ジャイロスコープの試験質量は、1ミクロンを超える平均厚さを有することができる。
【0062】
光学振動ジャイロスコープの試験質量は、数十または数百ミクロン程度の平均厚さを有することができる。
【0063】
光学振動ジャイロスコープの試験質量は、微小共振器よりも著しく大きくすることができる。試験質量は、10ミクロン以上の平均厚さを有することができる。試験質量は、500ミクロン未満の平均厚さを有することができる。試験質量は、20~30ミクロンの平均厚さを有することができる。試験質量は、微小共振器よりも著しく厚くすることができ、例えば100倍厚くすることができる。試験質量は、微小共振器よりも大きい表面積を有することができる。試験質量の表面積は、1ミリメートル×1ミリメートル未満とすることができる。試験質量の表面積は、約250ミクロン×250ミクロンとすることができる。微小共振器の直径は、約100ミクロンとすることができる。試験質量のサイズを大きくすることによって、光学振動ジャイロスコープの回転速度に対する応答の改善が提供される。
【0064】
光学振動ジャイロスコープは、少なくとも2つの微小共振器、少なくとも2つの光カプラ、および少なくとも2つの検出器を備えることができる。試験質量と2つの微小共振器のうちの第1の微小共振器との間の第1の間隔の変化、および試験質量と2つの微小共振器のうちの第2の微小共振器との間の第2の間隔の変化は、2つの微小共振器の光共振特性に差動変化を引き起こす可能性がある。
【0065】
光学振動ジャイロスコープの試験質量は、第1の微小共振器と第2の微小共振器との間に懸架されてもよい。
【0066】
光学振動ジャイロスコープの試験質量は、突出部を含むことができ、突出部は、第1の微小共振器と第2の微小共振器との間に位置する。突出部は、第1の微小共振器および/または第2の微小共振器から漏れた光子を案内するための光チャネルとして作用することができる。これにより、光子が突出部によって吸収または伝送されるため、ジャイロスコープの感度が強化される。
【0067】
光学振動ジャイロスコープの試験質量は、1つまたは複数の追加の突出部をさらに含むことができ、1つまたは複数の追加の突出部は各々、2つの微小共振器の間に位置する。
【0068】
光学振動ジャイロスコープの電極のうちの少なくとも2つは各々、ジャイロスコープに対して静止しているフィンガを含むことができ、試験質量は、ジャイロスコープに対して可動なフィンガを含むことができ、試験質量の可動フィンガは、試験質量のフィンガと少なくとも2つの電極とが互いに噛み合うように、少なくとも2つの電極の静止フィンガの間に配置される。
【0069】
フィンガの運動は、フィンガの動きが全体としての試験質量の動きをもたらすように、試験質量の運動に強く結合される。したがって、電極の静止フィンガは、試験質量のフィンガの動きを制御し、結果として試験質量の動きを制御するために使用される。フィンガは、試験質量に対して静止するように、試験質量に一体であるか、または試験質量に堅固に固定されてもよい。あるいは、試験質量のフィンガは、例えばカンチレバーモードのように、それ自体の機械的自由度(複数可)を有してもよい。しかしながら、試験質量のフィンガは、試験質量全体の位置を動かすかまたは維持するためにのみ使用されるように配置構成されてもよい。
【0070】
光学振動ジャイロスコープの1つまたは複数の微小共振器は、試験質量から半径方向に分離されてもよい。
【0071】
光学振動ジャイロスコープの1つまたは複数の電極および/または1つまたは複数の微小共振器は、ジャイロスコープに対して固定されてもよい。
【0072】
光学振動ジャイロスコープの1つまたは複数の微小共振器は、ウィスパリングギャラリーモード共振器であってもよい。
【0073】
光学振動ジャイロスコープの1つまたは複数の微小共振器は各々、使用時にその微小共振器の縁部を越えて延在するエバネッセント場を有することができる。エバネッセント場が微小共振器の縁部を越えて延在する量は、光カプラに結合される光の波長のサイズに基づき得る。エバネッセント場は、使用時にその微小共振器の縁部を超えて少なくとも1ミクロン延在することができる。これは、光カプラに結合される光の波長が1550nmである場合に特に効果的なジャイロスコープを提供する。
【0074】
光学振動ジャイロスコープの試験質量は、1つまたは複数の微小共振器の各々より大きくすることができる。
【0075】
光学振動ジャイロスコープの光共振特性の変化は、光共振のシフトおよび/または光共振の広がりであり得る。
【0076】
光学振動ジャイロスコープの1つまたは複数の微小共振器は各々、異なる光共振を有し得る。
【0077】
本明細書に提示された教示に照らして、これらの発明が関連する当業者には、本明細書に記載された発明の多くの修正および他の実施形態が想起されよう。したがって、本明細書の開示は、本明細書に開示された特定の実施形態に限定されるものではないことが理解されよう。さらに、本明細書で提供される説明は、要素の特定の組み合わせの文脈で例示的な実施形態を提供するが、ステップおよび/または機能は、本発明の範囲から逸脱することなく代替の実施形態によって提供されてもよい。
【0078】
図面の簡単な説明
次に、本発明の実施形態が、例としてのみ、添付の図面を参照しながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1】例示的な慣性センサの概略図である。
図2】例示的な慣性センサの概略図である。
図3】光学サニャックジャイロスコープの動作および光学サニャックジャイロスコープの例示的な出力を示す図である。
図4】例示的な光学サニャックジャイロスコープを示す図である。
図5】例示的な光学振動ジャイロスコープの図である。
図6図5の光学振動ジャイロスコープの光学機械要素および光学振動ジャイロスコープの例示的な出力の図である。
図7】例示的な光学振動ジャイロスコープならびに回転前および回転中の光学振動ジャイロスコープの例示的な出力の図である。
図8】閉ループフィードバックシステムを実装する例示的な慣性センサの概略図である。
図9】一例による慣性センサのジャイロスコープの図である。
図10】例示的な閉ループフィードバックシステムを示す図である。
図11】光学振動ジャイロスコープおよび光学サニャックジャイロスコープの出力の誤差の例を示す図である。
図12】光学振動ジャイロスコープ、光学サニャックジャイロスコープ、および慣性センサの例示的な出力を示す図である。
図13】例示的な慣性測定ユニットのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
本明細書および図面全体を通して、同様の参照符号は同様の部分を指す。
詳細な説明
様々な実施形態が下記に説明されるが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、これらの実施形態の変形が、特許請求の範囲によってのみ限定されるべき本発明の範囲内に十分に含まれ得る。
【0081】
以下では、回転速度を検出するためのチップスケール慣性センサについて説明する。例示的な光学サニャックジャイロスコープおよび光学振動ジャイロスコープが提供されているが、本明細書に記載の慣性センサは、当業者に理解されるような、他の光学サニャックジャイロスコープおよび光学振動ジャイロスコープによって実装されてもよい。
【0082】
詳細な説明を読むと理解されるように、チップスケール慣性センサは、チップに適合するのに十分に小さい慣性センサである。チップのサイズは様々であり得るが、その面積は典型的には1mm~600mmに及ぶ。したがって、いくつかの例では、チップスケールは600mmより小さくてもよい。チップは、集積回路(IC)としても知られている。本明細書全体を通して、慣性センサおよびチップスケール慣性センサは、チップスケール慣性センサを意味するために交換可能に使用される。
【0083】
詳細な説明を読むと理解されるように、回転速度の検出を可能にする光学サニャックジャイロスコープ内の構造は、任意のサニャック構造であってもよい。コイル状または螺旋状導波路は、サニャック構造の一例である。
【0084】
詳細な説明を読むと理解されるように、信号が飽和していることは、検出上限に達しており、任意選択的に超えていることを意味する。例えば、回転速度を測定するために、(光学振動ジャイロスコープによって出力されるような)主信号が飽和していることは、慣性センサの回転速度が光学振動ジャイロスコープの検出限界に達しているかまたはそれを超えていることを意味する。飽和は、主信号において、光学振動ジャイロスコープが出力することができる最大の可能な信号として発生し得る。飽和は、慣性センサの実際の回転速度にもはや対応しない主信号をもたらす。これは、検出限界以上の任意の回転速度が同じ主信号を提供することになるためである。光学振動ジャイロスコープの例示的な検出限界は、300度/秒である。
【0085】
詳細な説明を読むと理解されるように、微小共振器は、光共振をサポートする閉回路物体である。光共振をサポートする微小共振器とは、微小共振器の閉回路に入射する光が、微小共振器内の建設的干渉および全内部反射によって少なくとも1つの共振周波数において増幅されることを意味する。微小共振器の例示的な材料は、ケイ素、シリカ、窒化ケイ素、および結晶性フッ化物を含む。微小共振器の例示的な直径は、ミクロンから数百ミリメートルに及ぶ。
【0086】
詳細な説明を読むと理解されるように、試験質量は、MEMSセンサにおいて使用するための機械的構造を指す。試験質量の例示的な材料は、ケイ素および石英である。
【0087】
詳細な説明を読むと理解されるように、光カプラは、微小共振器の内外に光を結合する手段である。光カプラは、導波路であってもよい。光カプラは、導波路に取り付けられてもよい。光カプラは、光源からの光を微小共振器に案内することができる。光カプラは、微小共振器からの光を検出器に案内することができる。光カプラは、埋め込み型導波路、リッジ導波路、またはリブ導波路であってもよい。光カプラは、微小共振器と同時に作製されてもよい。
【0088】
詳細な説明を読むと理解されるように、光共振特性の変化は、光共振の特性の任意の変化である。光共振特性の変化は、光共振特性のライン形状の変化、例えばピーク振幅の減少であってもよい。光共振特性の変化は、光共振のロケーションの変化であってもよい。
【0089】
図1は、例示的な慣性センサ100の概略図を示す。慣性センサ100は、軸を中心とした慣性センサの回転速度を検出するためのものである。慣性センサ100は、上記軸を中心とした慣性センサ100の第1の回転速度を検出するための光学振動ジャイロスコープ104を備える。光学振動ジャイロスコープ104は、第1の回転速度に対応する主信号を出力するように構成される。慣性センサ100は、上記軸を中心とした慣性センサ100の第2の回転速度を同時に検出するための光学サニャックジャイロスコープ106をさらに備える。光学サニャックジャイロスコープ106は、第2の回転速度に対応する補助信号を出力するように構成される。慣性センサ100は、主信号および補助信号に基づいて1つまたは複数の入力を受信するように構成されたマイクロコントローラ108をさらに備える。マイクロコントローラ108は、1つまたは複数の入力に基づいて、上記軸を中心とした慣性センサの補正された第1の回転速度を決定するようにさらに構成される。マイクロコントローラ108は、慣性センサ100(図示せず)から補正された第1の回転速度を出力することができる。
【0090】
光学振動ジャイロスコープ104および光学サニャックジャイロスコープ106は、ハイブリッドチップを生成するために同じチップ上に作製することができる。実際、光学振動ジャイロスコープ104および光学サニャックジャイロスコープ106は、共通の基板上に作製されてもよい。光学振動ジャイロスコープ104および光学サニャックジャイロスコープ106は、慣性センサ100が回転されるときに、慣性センサ100、光学振動ジャイロスコープ104および光学サニャックジャイロスコープ106が同じ回転速度で回転するように、慣性センサ100内に固定される。したがって、上記ジャイロスコープのうちの1つの回転速度の検出は、慣性センサ100の回転速度の検出と同じである。
【0091】
光学振動ジャイロスコープ104および光学サニャックジャイロスコープ106は、下記に詳細に説明するように、慣性センサ100の回転速度を独立して検出することができる。マイクロコントローラ108は、光学振動ジャイロスコープによって出力される主信号および光学サニャックジャイロスコープによって出力される補助信号に基づく1つまたは複数の入力を受信することができる。例えば、マイクロコントローラ108は、主信号および補助信号を受信することができる。次いで、マイクロコントローラ108は、光学振動ジャイロスコープ104および光学サニャックジャイロスコープ106の出力に基づく1つまたは複数の入力を比較して、慣性センサ100の真の回転速度を求めることができる。これは、光学サニャックジャイロスコープ106によって出力される補助信号が、振動および線形加速度からの偽の読み値を含まないためである。
【0092】
例えば、主信号と補助信号とを比較するときに、マイクロコントローラが、光学振動ジャイロスコープ104から出力される主信号が光学サニャックジャイロスコープ106から出力される補助信号よりも大きい回転速度に対応することを発見した場合、マイクロコントローラは、回転速度の差が光学振動ジャイロスコープ104の誤差によるものであると決定することができ、したがって主信号の誤差を除去して、慣性センサ100の出力において補正された主信号を提供することができる。マイクロコントローラ108は、主信号と補助信号との間の差、または検出されている第1の回転速度と第2の回転速度との間の差として、誤差を算出してもよい。マイクロコントローラ108は、複数の主信号および補助信号に基づいて誤差を算出してもよい。例えば、マイクロコントローラ108は、補正された第1の回転速度を決定するために、検出されている第1の回転速度と第2の回転速度との間の差の平均をとることができる。
【0093】
別の例では、信号を比較するときに、マイクロコントローラが、光学振動ジャイロスコープ104から出力される主信号が光学サニャックジャイロスコープ106から出力される補助信号よりもはるかに小さい回転速度に対応し、光学振動ジャイロスコープ104によって検出されている第1の回転速度がジャイロスコープ104によって検出可能な最大回転速度であることを発見した場合、マイクロコントローラは、光学振動ジャイロスコープ104が飽和していると判定することができ、したがって慣性センサ100から補助信号を出力することができる。
【0094】
ジャイロスコープからの出力を比較した後、補正された第1の回転速度を提供するために光学振動ジャイロスコープ104の出力の誤差を補正することに加えて、マイクロコントローラ108は、光学振動ジャイロスコープ104内のドリフトを低減し、その結果、光学振動ジャイロスコープ104の出力における誤差を低減するために、光学振動ジャイロスコープ104にフィードバック信号を提供することができる。マイクロコントローラ108はまた、サニャックジャイロスコープから生じない情報に基づいて光学振動ジャイロスコープ104内のドリフトを低減するためのフィードバック機構を実装することができる。
【0095】
図2は、例示的な慣性センサ200の概略図を示す。慣性センサ200は、図1の慣性センサ100の一例である。慣性センサ200は、図1の光学振動ジャイロスコープ104の一例である光学振動ジャイロスコープ204と、図1の光学サニャックジャイロスコープ106の一例である光学サニャックジャイロスコープ206と、図1のマイクロコントローラ108の一例であるマイクロコントローラ208とを備える。慣性センサ200は、光源202および2つの光検出器210,212をさらに備える。ジャイロスコープ、光源202、および検出器210,212の間の接続の例を示すために、光学振動ジャイロスコープ204および光学サニャックジャイロスコープ206の例示的な内部構成要素が図2に示されている。これらの内部構成要素については、下記により詳細に説明する。
【0096】
光源202は、光学振動ジャイロスコープ204および光学サニャックジャイロスコープ206に光を伝送するためのものである。同じ光源202が、両方のジャイロスコープに光を伝送するために使用される。光源は、ビームスプリッタ214または方向性結合器によって2つの部分に分割され、第1の部分は光学振動ジャイロスコープ204に伝送され、第2の部分は光学サニャックジャイロスコープ206に伝送される。共振の変化を使用して両方のジャイロスコープによって回転速度を検出することができるため、光源から出力される光は、両方のジャイロスコープによる回転速度の検出を可能にするために光共振にわたって走査することができる。あるいは、固定波長の光を使用することができ、回転による各ジャイロスコープ内の光の強度変化を検出することができる。
【0097】
マイクロコントローラ108は、例えば、光源を安定化するように光源202を制御することができる。光源202は、レーザであってもよい。マイクロコントローラ108は、レーザを安定化するためにレーザ安定化技法を使用することができる。このようなレーザ安定化技法は、出力強度および周波数の低ノイズおよび低ドリフトを提供することによって、慣性センサ200の出力の安定性を改善する。他の例では、光源102は、慣性センサ200の外部にあってもよい。
【0098】
光検出器210は光学振動ジャイロスコープ204から光を受け取り、光検出器212は光学サニャックジャイロスコープ206から光を受け取る。次いで、光検出器は、マイクロコントローラ208に信号を出力する。次いで、マイクロコントローラ208は、これらの信号に基づいて、上記軸を中心とした慣性センサ200の補正された第1の回転速度を決定する。次いで、マイクロコントローラ208は、慣性センサ200からの出力として、補正された第1の回転速度を提供することができる。マイクロコントローラはまた、下記にさらに説明するように、光学振動ジャイロスコープ204および光学サニャックジャイロスコープ206を制御して、それらが正しく機能していることを保証し、誤差を低減することができる。
【0099】
一例では、光学振動ジャイロスコープ204から光検出器210によって受け取られる光は主信号であり、光学サニャックジャイロスコープ206から光検出器212によって受け取られる光は補助信号である。この例では、光検出器210,212からマイクロコントローラ208に出力される信号は、1つまたは複数の入力である。別の例では、光検出器210は光学振動ジャイロスコープ204に組み込まれてもよく、光検出器212は光学サニャックジャイロスコープ206に組み込まれてもよい。この例では、光学振動ジャイロスコープ204によって出力される主信号は、光学振動ジャイロスコープ204に組み込まれた光検出器210によって出力される信号であってもよく、光学サニャックジャイロスコープ206によって出力される補助信号は、光学サニャックジャイロスコープ206に組み込まれた光検出器212によって出力される信号であってもよい。この例では、1つまたは複数の入力は主信号および補助信号である。
【0100】
図3は、光学サニャックジャイロスコープの動作および光学サニャックジャイロスコープの例示的な出力を示す。図3に関連して説明される光学サニャックジャイロスコープは、図2の光学サニャックジャイロスコープ206および図1の光学サニャックジャイロスコープ106の一例である。光学サニャックジャイロスコープは、光ファイバジャイロスコープであってもよい。理解を容易にするために、図3の略図AにX、Y、およびZ軸が示されており、略図Aと略図Bの両方に適用される。しかしながら、方向X、Y、およびZは理解のために提供されており、回転がZ軸を中心としたジャイロスコープの説明が下記に提供されているが、光学サニャックジャイロスコープは、Z軸を中心とした回転速度を測定するためにのみ利用されることに限定されないことを理解されたい。さらに、回転が時計回りである場合のジャイロスコープの説明を下記に提供するが、光学サニャックジャイロスコープは同様に反時計回りの回転を測定することができる。
【0101】
【数1】
【0102】
図A300は、静止しているときの光学サニャックジャイロスコープを示す。略図A300の軸は、光学サニャックジャイロスコープがX-Y平面内にあり、Z軸が実質的に光学サニャックジャイロスコープの中心を通ることを示しており、そのため、Z軸を中心とした回転は、光が略図Aおよび略図Bの両方で時計回り(CW)302または反時計回り(CCW)304に伝播するように示されている方向における回転である。略図A300に示すように、時計回り(CW)302および反時計回り(CCW)304に伝播する光は、光学サニャックジャイロスコープが静止しているときに同じ光路長を有する。
【0103】
図B310は、時計回り方向にZ軸を中心に回転しているときの光学サニャックジャイロスコープを示す。略図Bに示すように、時計回り302に伝播する光の光路長は、ジャイロスコープが静止していたときから延長されており、反時計回り304に伝播する光の光路長は、ジャイロスコープが静止していたときから短縮されている。したがって、この例では、光学サニャックジャイロスコープがZ軸を中心に時計回り方向に回転しているため、時計回りに伝播する光302は、反時計回りに伝播する光304よりも大きい経路長を有する。経路長間の差のサイズは、回転速度に基づく。あるいは、ジャイロスコープがZ軸を中心に反時計回り方向に回転している場合、時計回りに伝播する光302は、反時計回りに伝播する光304よりも小さい経路長を有する。
【0104】
時計回りおよび反時計回りに伝播する光の光路長の変化からZ軸を中心とした回転速度を検出する1つの方法は、時計回りおよび反時計回りに伝播する光の間の位相差を検出することである。この差は、時計回りおよび反時計回りに伝播する光の共振周波数のシフトが異なることに起因して生じる。これは、共振周波数にわたって光を光学サニャックジャイロスコープに伝送するレーザを走査し、1つまたは複数の光検出器によって共振周波数の結果として生じる周波数差を検出することによって検出することができる。グラフC320は、時計回りおよび反時計回りに伝播する光の共振周波数のシフトを示す。時計回りおよび反時計回りに伝播する光は、本来、共振曲線326を有する。ジャイロスコープがZ軸を中心に時計回りに回転されると、時計回りに伝播する光の共振周波数は、その新しい共振曲線322によって示されるように、より高い波長にシフトする。さらに、反時計回りに伝播する光の共振周波数は、その新しい共振曲線324によって示されるように、より低い波長にシフトする。あるいは、ジャイロスコープがZ軸を中心に反時計回り方向に回転している場合、時計回りに伝播する光の共振周波数はより低い波長にシフトし、反時計回りに伝播する光の共振周波数はより高い波長にシフトする。したがって、時計回りおよび反時計回りの両方に伝播する光の共振周波数のシフトの量および方向は、Z軸を中心とした回転速度に対応する。したがって、時計回りおよび反時計回りの両方に伝播する光の共振周波数を検出して、光学サニャックジャイロスコープの回転速度を決定することができる。
【0105】
時計回りおよび反時計回りに伝播する光の光路長の変化からZ軸を中心とした回転速度を検出する別の方法は、光の干渉の変化を検出することである。グラフD330は、反時計回りに伝播する光と反時計回りに伝播する光の両方を同時に受け取る光検出器によって得ることができる、干渉読み値として知られる対向伝播光場の干渉パターンを示している。時計回りおよび反時計回りに伝播する光の光モードは、互いに干渉し、0度の回転速度の周りにコサイン形状の応答334を生成する。そのような干渉パターンを測定するのを助けるために、光学サニャックジャイロスコープは、時計回りに伝播する光または反時計回りに伝播する光のいずれかを90度シフトするために、サニャック構造の前に移相器をさらに備えることができる。時計回りに伝播する光または反時計回りに伝播する光のいずれかを90度シフトさせることによって、干渉パターンは、コサイン形状の応答ではなく、0度/秒の周りにサイン形状の応答を有する。
【0106】
グラフD330は、コサイン形状の応答を提供する位相シフト334を有せず、サイン形状の応答を提供する90度位相シフト332を有する干渉読み取りパターンを示す。グラフに示すように、90度位相シフトがあるとき、0度の回転速度の直前および直後に、線形読み値がある。約0度の回転速度のこの線形読み値は、干渉パターンの動きの検出を容易にし、Z軸を中心とした回転速度に対応するいずれかの方向への干渉パターンの動きを可能にする。さらに、サイン形状の応答は非対称であり、これは、0を上回る回転速度の応答が0を下回る回転速度の応答と異なることを意味し、結果、検出時に負符号および正符号の回転を区別することができる。
【0107】
検出器は、光学サニャックジャイロスコープからの光、例えば干渉パターンまたは共振の差を検出し、検出に基づいてマイクロコントローラに信号を送信することができる。信号に基づいて、マイクロコントローラは、光学サニャックジャイロスコープおよび/または光源にフィードバックを提供することができる。特に、マイクロコントローラは、ドリフトによる光の周波数変化を低減するように、光学サニャックジャイロスコープによって出力される補助信号に基づいて、時計回りおよび反時計回りに伝播する光の周波数を制御することができる。したがって、光学サニャックジャイロスコープの出力も補正することができる。
【0108】
光学サニャックジャイロスコープは、光を時計回りおよび反時計回りに伝播させることができる任意のサニャック構造を備えることができる。光学サニャックジャイロスコープは、光を時計回りおよび反時計回りに伝播させるためのコイル状または螺旋状導波路構造を備えることができる。例えば、光学サニャックジャイロスコープは、光ファイバのコイル状片、長方形導波路から直接チップ上に作成された螺旋もしくはコイル、またはオンチップのバルクマイクロディスク構造であってもよい。マイクロディスク構造の場合、サニャックジャイロスコープは、マイクロディスクにエバネッセント結合を提供する導波路をさらに備えてもよい。これらのサニャック構造はチップスケールであり、そのため、光学振動ジャイロスコープと同じチップに集積することができる。特に、コイル状または螺旋状導波路構造の直径は、ミリメートルまたはセンチメートル程度であってもよい。図4は、例示的な光学サニャックジャイロスコープを示す。これらの光学サニャックジャイロスコープは、図1の光学サニャックジャイロスコープ106または図2の光学サニャックジャイロスコープ206の例であり、図3に関連して説明したように動作することができる。これらのジャイロスコープはすべて、異なるサニャック構造を備える。イメージAは、単一層からエッチングされた導波路構造を備える平面螺旋ジャイロスコープ400である。イメージBは、トロイドの形状の微小共振器ジャイロスコープ402であるが、このタイプのジャイロスコープはまた、ディスク形状であってもよい。イメージCは、多層に巻かれた光ファイバであるコイル状ファイバジャイロスコープ404である。
【0109】
光学サニャックジャイロスコープは、可動部を有せず、したがって、高い安定性および広い感知範囲を有する。経時的に、正確度のドリフトは非常に小さく、そのため、光学サニャックジャイロスコープは、著しい長期ドリフトなしに長い時間期間にわたって使用することができ、したがって、振動ジャイロスコープの誤差をリセットするために使用することができる。
【0110】
図5は、例示的な光学振動ジャイロスコープ500の略図を示す。光学振動ジャイロスコープ500はまた、微小光学電気機械システム(MOEMS)振動ジャイロスコープとしても知られている。図5は、理解のためにX-Y軸を示しているが、光学振動ジャイロスコープ500は、これらの軸における動きに限定されない。光学振動ジャイロスコープ500は、図2の光学振動ジャイロスコープ204および図1の光学振動ジャイロスコープ104の一例である。
【0111】
光学振動ジャイロスコープ500は、光共振をサポートする微小共振器502を備える。光学振動ジャイロスコープ500は、微小共振器502に隣接して、かつ不連続に懸架された微小電気機械慣性試験質量504をさらに備える。すなわち、試験質量504は、微小共振器502に近いが微小共振器502から距離/間隔「d」(図5において512としてラベリングされている)だけ離間するように、光学振動ジャイロスコープ500内に配置構成される。試験質量504は、慣性力の印加下で偏向可能である。すなわち、慣性力の影響下で、試験質量504と502との間の間隔512は一時的に変化し得る。ジャイロスコープ500の回転は、ジャイロスコープ500への慣性力の印加を引き起こす。光学振動ジャイロスコープ500は、試験質量504の偏向に静電力で反作用するための電極506をさらに備える。光学振動ジャイロスコープ500は、微小共振器502の内外に光を結合するための光カプラ508をさらに備える。光学振動ジャイロスコープ500は、光カプラ508によって微小共振器502から受け取られる光を検出するための検出器510をさらに備える。試験質量504と微小共振器502との間の間隔「d」512の変化は、その微小共振器502の光共振特性の変化を引き起こす。
【0112】
光学振動ジャイロスコープ500は、慣性力に応答して動くときの試験質量504の変位に基づいて回転によって引き起こされる慣性力を検出する。より詳細には、図5の光学振動ジャイロスコープ500は以下のように動作する。光学振動ジャイロスコープ500が、例えば慣性センサの一部として回転すると、光学振動ジャイロスコープ500は特定の角度まで回転する。試験質量は、アンカー516に接続された、この例ではばねである懸架手段514によって懸架される。試験質量504は、回転速度によって引き起こされる慣性力に応答し、慣性力のサイズおよび方向に基づいて変位される。試験質量504の変位は、回転速度によって引き起こされる慣性力に比例し得る。この変位は、試験質量504と微小共振器502との間の間隙「d」512を変化させ、これは、その微小共振器502の光共振特性の変化を引き起こす。光カプラ508は、微小共振器504から光を受け取り、微小共振器504に光を結合する。微小共振器504の光共振特性の変化に基づいて、微小共振器504から結合される光の1つまたは複数の特性が変化し、そのような変化が検出器510において検出される。検出器510における伝送出力のこの変化は、試験質量の変位に関連し、したがって、回転に起因して光学振動ジャイロスコープ500が経験する慣性力を計算するために使用することができる。したがって、微小共振器504、光カプラ508、検出器510、試験質量504、ばね514、およびアンカー516は共にジャイロスコープの光学機械的読み取り機構を形成し、検出器510における光透過の検出される変化に基づいて慣性力、したがって回転速度の決定を可能にする。ジャイロスコープ500は、ジャイロスコープ500の機械的品質係数、したがって感度を高めるために、真空内で駆動およびパッケージングされてもよい。
【0113】
試験質量504の動きを制御することができるように、電極506が設けられ、電極506に電圧を印加することができる。電極506は、印加電圧に起因する静電力を出力して試験質量504を作動させるように構成される。静電力のサイズは、印加電圧のサイズに基づく。作動のサイズは静電力のサイズに基づくため、作動のサイズは印加電圧にも基づき、電極506に印加電圧を変えることによって制御することができる。したがって、電極506は、印加電圧からの静電力を使用して試験質量504を動かすことによって、微小共振器に対する試験質量504の位置を変化させることができる。そのような作動は、容量性作動と呼ばれることがある。電極506は、ジャイロスコープ500に対して固定されてもよい。電極は、試験質量をX方向および/またはY方向に動かすことができ、XおよびY方向は図5に指示されている。電極はまた、試験質量をZ方向に動かすことができる(図示せず)。
【0114】
試験質量504は、それに慣性力が及ぼされていないときのジャイロスコープ500の他の構成要素に対するその初期位置である初期位置を有する。回転速度の算出における初期位置の使用は、図6に関連して下記に説明される。しかしながら、試験質量504が慣性力によって複数回変位すると、試験質量は非線形に応答し始め、経時的にドリフトする可能性がある。ドリフトは、試験質量が変位された後にその初期位置に戻らない場合である。したがって、ドリフトは、それに慣性力が及ぼされていないときに試験質量のロケーションの変化を引き起こす。ドリフトのサイズは、それに慣性力が及ぼされていないときの試験質量とその初期位置との間の距離である。時間が経つにつれて、ドリフトが増大し、そのため、試験質量位置とその初期位置との間の距離が増大する。回転速度算出は、その初期位置からの試験質量位置変化に基づくため、試験質量のドリフトは、光学振動ジャイロスコープの出力において長期誤差を引き起こす。
【0115】
ドリフトは、振動および線形加速度に対する試験質量504の感度に起因し得る。ドリフトは、試験質量に対する熱変化に起因し得、熱的に誘発され得る、すなわち、ジャイロスコープの温度変化に起因し得る。ドリフトは、非対称な作製または減衰に起因し得る。
【0116】
ドリフトによって引き起こされる誤差を除去するために、ドリフトは、光学振動ジャイロスコープ500の出力および光学サニャックジャイロスコープの出力を使用して決定することができる。次いで、決定されたドリフトを算出中に利用して、光学振動ジャイロスコープ500の出力を補正することができる。付加的または代替的に、ドリフトは、初期位置に近づくように、下記に説明するように試験質量を作動させることによって低減することができる。したがって、両方のジャイロスコープ出力の使用は、光学振動ジャイロスコープの出力の誤差を低減するのを助ける。
【0117】
光学振動ジャイロスコープ500は、試験質量を作動させる電極506のフィードバック機構を使用して閉ループシステムを実装する。電極506の作動力を使用して、試験質量をその初期位置に能動的に復元し、線形性および感知範囲を拡張し、ドリフトを低減または反作用することができる。電極506からの作動力は、試験質量504が最適なセンサ測定値を提供する位置にあることを保証するためにフィードバックを使用して調整することができる。したがって、電極506は、ジャイロスコープの長期安定性を改善させる。電極506はまた、試験質量504の任意の振動を減衰させるために使用されてもよい。電気機械的制御と組み合わされた光学機械的読み取りは、高感度光学振動ジャイロスコープ500を提供する。ドリフトを決定するための光学サニャックジャイロスコープと、ドリフトに基づいて試験質量を作動させるための電極506との組み合わせは、ジャイロスコープの長期安定性をさらに改善する。
【0118】
光学振動ジャイロスコープ500の各構成要素のうちの1つのみが図5に示されているが、光学振動ジャイロスコープ500は複数の各構成要素を備えてもよい。光学振動ジャイロスコープ500は、複数の微小共振器502、電極504、ばね514、アンカー516、および光カプラ508を備えることができる。微小共振器は、ジャイロスコープ500に対して固定されてもよい。図5では、試験質量504は、微小共振器502から半径方向に位置付けられているが、試験質量504は、微小共振器502に対して他の位置に位置してもよい。
【0119】
試験質量504の変位によって光共振特性が変化する。光共振特性の変化は、微小共振器に対して動く試験質量に応答した、共振波長のシフトおよび/または光共振の曲線の広がりもしくは深化であり得る。シフトは、漸進的に赤色離調または青色離調のいずれかになるようにいずれの方向にも起こり得る。広がりまたは深化は、図6に関連して下記に説明するように、例えば、散逸または散乱光学機械的結合などの、光学損失の変化に起因する。
【0120】
図5に示すように、試験質量は、ばねの形態の懸架手段514を使用して懸架されてもよい。ばねの一端は、アンカー516に接続されることによってジャイロスコープに対して固定され、ばねの他端は、試験質量に接続され、試験質量を懸架する。ばね514は、試験質量504の変位を可能にする。ばね514およびアンカー516がこの図に示されているが、当業者には、ばね514およびアンカー516の代わりに他のタイプの懸架手段を光学振動ジャイロスコープ500内で使用することができることが明らかであろう。
【0121】
微小共振器502は、試験質量504の偏向がその微小共振器502の光共振特性の変化を引き起こすように、試験質量504の近くに配置される。
【0122】
電極506によって提供される静電作動は、下記にさらに説明するように、コントローラ(図5には示されていない)によって制御することができる。光学振動ジャイロスコープ500はコントローラを備えてもよく、または、コントローラは光学振動ジャイロスコープ500の外部にあってもよい。例えば、図1のマイクロコントローラ108または図2のマイクロコントローラ208は、電極506によって提供される静電作動を制御することができる。
【0123】
図5の電圧源によって示されるように、電圧が電極506に印加される。アンカーは、印加電圧が電極506とアンカー516との間の電位差となるように接地することができる。印加電圧は、試験質量504の偏向に反作用するために必要な静電力に基づいて変化し得る。したがって、図5には電圧源が示されているが、代わりに、上述のコントローラ(図5には示されていない)によって電圧が印加されてもよい。
【0124】
検出器510は、光信号を電気信号に変換する任意のデバイスであってもよい。検出器510は、光検出器であってもよい。検出器510は、ジャイロスコープによって感知される慣性力を算出するために光信号を処理するためのプロセッサを備えることができる。検出器510は、その入力として光カプラ508および微小共振器502から光信号を受信し、慣性力測定値を出力することができる。あるいは、上述のコントローラ(図5には図示せず)を使用して、検出器510によって検出されている光信号に基づいて慣性力を算出してもよい。図5の光学振動ジャイロスコープ500は検出器510を備えるが、代わりに、図2の慣性センサ200内の検出器210によって示されるように、検出器はジャイロスコープの外側にあってもよい。
【0125】
光カプラ508は、導波路に結合することができる。光カプラ508は、光が導波路から微小共振器502に結合され、微小共振器502から導波路に結合されるように、微小共振器502に近接近して配置構成された導波路であってもよい。光源(図5には示されていない)からの光は、光カプラ508に入力され、微小共振器502に出入りして検出器510に伝送され得る。光学振動ジャイロスコープは、光源を備えてもよい。あるいは、光源は、光学振動ジャイロスコープの外部にあってもよく、図2の慣性センサ200に示すように、光学振動ジャイロスコープと光学サニャックジャイロスコープの両方に光を伝送してもよい。光カプラ508に入力される光は、広帯域光であってもよく、または、コヒーレントな単一周波数光であってもよい。
【0126】
試験質量504は、例えばY軸に沿って、微小共振器に向かって、または微小共振器から外方に変位する。試験質量504は、付加的または代替的に、例えばX軸に沿って、微小共振器に対して横方向に変位されてもよい。試験質量はシリコンから作成されてもよい。
【0127】
図5に示す微小共振器502はリング共振器であるが、この微小共振器は、ディスク微小共振器またはレーストラック微小共振器などの別のタイプの微小共振器502と置き換えることができる。
【0128】
図5に示す微小共振器502は、ジャイロスコープが使用されているときに微小共振器502の縁部を越えて延在するエバネッセント場の少なくとも一部分を有する。エバネッセント場は、微小共振器502の縁部から1ミクロンだけ延在することができる。実質的に微小共振器502の縁部から延在するエバネッセント場は、エバネッセント場と試験質量504との間の相互作用が増大するにつれてジャイロスコープの感度を強化する。
【0129】
微小共振器502は、ウィスパリングギャラリーモード微小共振器であってもよい。微小共振器がウィスパリングギャラリーモード微小共振器である場合、それは、ウィスパリングギャラリーモード光共振として光を捕捉し、その縁部を越えて延在するエバネッセント場を有する。試験質量504が変位すると、それは、エバネッセント場と相互作用し、それがエバネッセント場と相互作用するときに微小共振器の特性を改変し、微小共振器の有効屈折率を変化させる。この変化は、微小共振器のウィスパリングギャラリーモード光共振をシフトさせる。したがって、試験質量504がウィスパリングギャラリーモード微小共振器のエバネッセント場内で動くと、微小共振器の光共振が摂動され、光共振の特性が変化する。
【0130】
【数2】
【0131】
【数3】
【0132】
【数4】
【0133】
【数5】
【0134】
【数6】
【0135】
検出器510において得られる透過強度の測定値は、透過率の変化を求めるために以前の値または基準値と比較することができる。これにより、光共振の変化を検出することができる。光共振の変化は、試験質量の変位を示す。したがって、光共振の変化の検出から、試験質量に対する慣性力を計算することができる。次いで、ジャイロスコープの回転速度を慣性力から決定することができる。
【0136】
要約すると、ジャイロスコープの回転中に加えられる慣性力は、試験質量の変位を引き起こす可能性があり、変位は慣性力のサイズおよび方向に基づく。試験質量504の変位、およびその結果としての試験質量504と微小共振器502との間の距離の変化は、結合速度および微小共振器502の屈折率の変化を引き起こし、離調の変化を引き起こす。離調の変化は、導波路カプラの出力におけるキャビティ内電磁場および光強度を変化させる。その結果、微小共振器502の光共振周波数の変化は、検出器510において検出可能である。図6のグラフ650は、そのような変化を示している。
【0137】
【数7】
【0138】
光カプラ508において検出されている伝送出力を使用して試験質量504の変位から慣性力を検出するために、スケール係数、例えば1ナノメートルの変位当たりの透過率の変化を規定することができる。透過率と変位との間の関係は、図6に関連して上記で提供されており、透過率、したがってスケール係数が結合速度および離調に基づくことを示している。
【0139】
慣性力を測定するために、均衡位置を決定することができる。これは、試験質量504がその初期位置にあるときの試験質量504と微小共振器502との間の分離距離であり得るか、またはそれに対応し得る。次いで、均衡位置の周りの小さい運動を検出することができる。そのような小さい運動は均衡位置の周りで検出されるため、応答はこれらの運動に対して実質的に線形である。
【0140】
しかしながら、試験質量504の初期位置は経時的に変化し得、これにより均衡位置が変化する。異なる均衡位置では、光学機械的結合速度は、共振器の周りのエバネッセント場の指数関数的強度分布に起因して異なる。したがって、試験質量の初期位置が変化すると、均衡位置が変化し、その結果、ジャイロスコープ500のスケール係数が変化する。閉ループ動作は、初期位置、したがってスケール係数の維持を試行する。さらに、光学振動ジャイロスコープの出力と光学サニャックジャイロスコープの出力との比較を使用して、初期位置の維持を試行することができる。これは、比較により初期位置の変化による任意の誤差を検出することができるためである。次いで、検出されている誤差に基づいて試験質量を作動させて、それを初期位置に戻すことができる。
【0141】
図7は、例示的な光学振動ジャイロスコープ700ならびに回転前および回転中の光学振動ジャイロスコープ700の例示的な出力の略図を示す。光学振動ジャイロスコープ700は、図5の光学振動ジャイロスコープ500の一例である。光学振動ジャイロスコープ700は、図5の光学振動ジャイロスコープ500の構成要素を備える。光学振動ジャイロスコープ700は、図5の元のばね514、アンカー516、および電極506に対して垂直に動作する別のばね514、アンカー516、および電極506をさらに備える。
【0142】
回転速度は、振動ジャイロスコープ構造に対するコリオリ効果を使用して感知される。したがって、光学振動ジャイロスコープ700は、コリオリジャイロスコープとしても知られている場合がある。回転速度を測定するために、試験質量504は、周波数Ωで振動するように、例えばX軸に沿って第1の方向に駆動される。コリオリ効果により、Z軸を中心とした回転は周波数ΩにおけるY軸に沿った変位を生じる。次いで、回転速度は、周波数ΩにおけるY軸での試験質量504の振動の振幅の変化を求めることによって決定することができる。
【0143】
イメージA710は、ジャイロスコープ700が回転していないとき、例えばジャイロスコープ700が静止しているときの光学機械要素を示し、イメージB720は、ジャイロスコープ700がZ軸を中心に回転しているときの光学機械要素を示す。方向X、Y、およびZは理解のために提供されており、ジャイロスコープは、Z軸を中心とした回転速度を測定するためにのみ利用されることに限定されないことを理解されたい。
【0144】
【数8】
【0145】
【数9】
【0146】
【数10】
【0147】
【数11】
【0148】
【数12】
【0149】
微小共振器と試験質量との間の距離の変化は、検出器における光カプラからの伝送出力を変化させる微小共振器の共振周波数特性の変化を引き起こす。図6に関連して説明したように、検出器における透過率の変化から、共振周波数の変化を検出することができる。共振周波数の変化は試験質量の変位に基づくため、周波数Ωでの信号の振幅の変化を決定することができ、したがってコリオリ力を決定することができ、その結果、回転速度を測定することができる。
【0150】
光学振動ジャイロスコープ700は、同時に垂直方向に実施される感知モードおよび駆動モードを有する。光学振動ジャイロスコープ700では、Y軸に沿って感知モードが実施され、X軸に沿って駆動モードが実施される。したがって、概念的には、光学振動ジャイロスコープ700は、互いに垂直で共通の試験質量を有する図5の2つの光学振動ジャイロスコープ500と同等とすることができ、X軸に沿って延伸する光学振動ジャイロスコープの主目的は駆動であり、Y軸に沿って延伸する他の光学振動ジャイロスコープの主目的は感知である。X軸に沿って延伸する光学振動ジャイロスコープの場合、その目的は感知ではなく駆動であるため、微小共振器502および光カプラ508は任意選択であり、イメージA710およびB720には示されていない。
【0151】
アンカー516、ばね514、および電極506の各々の第1のものは駆動モードに使用され、アンカー516、ばね504、および電極506の各々の第2のものは、微小共振器502および光カプラ508に加えて、感知モードに使用される。駆動モードがX軸に沿っているため、試験質量の右側の電極514は、周波数Ωで振動するように試験質量を駆動するためのものであり、図中の試験質量の右側のばね514およびアンカー516は、そのような振動を可能にするために試験質量504がX方向において自由に動くことを可能にする。上述したように、光学振動ジャイロスコープは、試験質量が正しい周波数で駆動されていることを感知するために、試験質量の左側に光カプラ508および微小共振器502をさらに備えることができる。試験質量の右側の電極506はまた、図5に関連して説明したように、ノイズおよびドリフトを低減するためのものであってもよい。
【0152】
【数13】
【0153】
Y軸に沿った試験質量504の変位は、試験質量504と試験質量504の下方の微小共振器502との間の間隔を変化させる。これにより、試験質量504の下方の微小共振器502の光共振特性が変化し、その結果、検出器(図示せず)によって微小共振器の下方の光カプラ508から検出される伝送出力が変化する。
【0154】
上記で言及したように、試験質量の上部および/または試験質量の右側の電極506は、ジャイロスコープ700の出力に誤差を引き起こすノイズおよびドリフトを低減するように制御される。光学サニャックジャイロスコープおよび光学振動ジャイロスコープの出力を比較することにより、電極506によって低減され得るようにドリフトのサイズを決定することが可能になる。したがって、サニャック読み取りは、コリオリメカニズムによって引き起こされる有害な誤差を最小限に抑える。
【0155】
図8は、閉ループフィードバックシステムを実装する例示的な慣性センサ800の概略図を示す。慣性センサ800は、図1の慣性センサ100および図2の慣性センサ200の一例である。閉ループフィードバックシステムは、光学振動ジャイロスコープ804のための閉ループフィードバック808と、光学サニャックジャイロスコープ806のための閉ループフィードバック810とを備える。閉ループフィードバック808の構成要素は、光学振動ジャイロスコープ804内にあってもよく、または、光学振動ジャイロスコープ804の外部にあり、ただし、センサ800内にあってもよい。閉ループフィードバック810の構成要素は、光学サニャックジャイロスコープ806内にあってもよく、または、光学サニャックジャイロスコープ806の外部にあり、ただし、センサ800内にあってもよい。光学振動ジャイロスコープ804は、図では、任意選択の微小共振器502および光カプラ508を有する図7の光学振動ジャイロスコープ700であるように示されている。光学サニャックジャイロスコープ806は、コイル状導波路構造を有するように図に示されている。しかしながら、光学振動ジャイロスコープ804は任意の光学振動ジャイロスコープであってもよく、光学サニャックジャイロスコープ806は任意の光学サニャックジャイロスコープであってもよいことが明らかであろう。
【0156】
慣性センサ800は、光学振動ジャイロスコープ804から光を受け取るための2つの光検出器812,826を備える。光源802からの光は、試験質量504の左および下方の光カプラ508に入力されるように分割される。
【0157】
第1の光検出器812は、試験質量が正しい周波数で駆動されていることを感知するために、試験質量の左側の光カプラ508を介して微小共振器502から光を受け取るためのものである。第2の光検出器826は、試験質量504のY軸に沿った変位によって引き起こされる微小共振器502の光共振特性の変化を感知し、したがって回転速度を測定するために、試験質量の下方の光カプラ508を介して微小共振器502から光を受信し、のものである。
【0158】
したがって、第1の光検出器812の出力は、アナログ-デジタル変換器814によってデジタル出力に変換される。次いで、アナログ-デジタル変換器814から出力されるデジタル信号は、試験質量が駆動モードコントローラ816によって正しい周波数で駆動されている場合に受信されるはずである信号と比較される。比較に基づいて、駆動モードコントローラ816は、試験質量が正しい周波数で駆動されていることを保証するために駆動信号の任意の誤差を補正するためにデジタルフィードバック信号を出力する。このデジタルフィードバック信号は、デジタル-アナログ変換器818によりアナログ信号に変換される。次いで、デジタル-アナログ変換器818は、電極の電圧を制御し、したがって駆動信号を制御するために、変換されたアナログ信号を試験質量504の右側の電極506に提供する。
【0159】
第2の光検出器826の出力は、アナログ-デジタル変換器824によってデジタル出力に変換される。次いで、アナログ-デジタル変換器824から出力されるデジタル信号は、例えばドリフトに起因する測定値の任意の誤差を決定するために、センスモードコントローラ822に入力される。この決定に基づいて、センスモードコントローラ822は、図5に関連して上述したように、試験質量を作動させることによって測定値の誤差を低減するためのデジタルフィードバック信号を出力する。このデジタルフィードバック信号は、デジタル-アナログ変換器820によりアナログ信号に変換される。次いで、デジタル-アナログ変換器820は、電極の電圧を制御し、したがってそれに応じて試験質量を作動させるために、変換されたアナログ信号を試験質量504の上方の電極506に提供する。
【0160】
また、センスモードコントローラ822は、センサ800の回転速度を決定するために、センサ800の回転速度に対応する、光カプラ508からの検出されている伝送出力に基づく信号をデジタル信号プロセッサ828に出力する。
【0161】
慣性センサ800は、光学サニャックジャイロスコープ806から光を受け取るための光検出器832を備える。光源802からの光は、時計回りおよび反時計回りの両方に伝播する光がサニャック構造に入力されるように、方向性結合器844によって分割される。例えば、結合器844は、入力レーザ光の一部分を取り出し、それを時計回りの光共振に送ることができ、入力レーザ光の残りは反時計回りの光共振である。時計回りまたは反時計回りのいずれかに伝播する光は、図3に関連して説明したように、サニャック構造に入る前に移相器846によって位相シフトされる。次いで、サニャック構造から出力される光は、方向性結合器844を通って伝播して光検出器832に戻る。あるいは、時計回りおよび反時計回りに伝播する光が方向性結合器内で干渉し、この干渉信号が光検出器832に送られてもよい。
【0162】
光検出器832の出力は、アナログ-デジタル変換器834によってデジタル出力に変換される。次いで、アナログ-デジタル変換器834から出力されるデジタル信号は、入力光の周波数または位相の任意の誤差を決定するために、コントローラ836に入力される。この決定に基づいて、コントローラ836は、入力光の誤差を低減し、移相器を使用して、図3に関連して説明したサイン形状の応答を維持するためのデジタルフィードバック信号を出力する。このデジタルフィードバック信号は、デジタル-アナログ変換器838によりアナログ信号に変換される。次いで、デジタル-アナログ変換器838は、バイアス信号842と組み合わされる、変換されたアナログ信号を提供する。バイアス信号842は、位相シフトを最初に90度に設定するために移相器846によって必要とされる電圧を提供する。変換されたアナログ信号は、この電圧に加算されるか、または、この電圧から減算され、得られた信号は、入力光の誤差を低減するために90度位相シフトを維持するために移相器846に提供される。
【0163】
コントローラ836はまた、センサ800の回転速度に対応する、光学サニャックジャイロスコープからの検出されている伝送出力に基づく信号をデジタル信号プロセッサ828に出力する。
【0164】
したがって、デジタル信号プロセッサ828は、光学振動ジャイロスコープ804および光学サニャックジャイロスコープ806の両方からセンサ800の回転速度に対応する信号を受信する。次いで、デジタル信号プロセッサ828は、信号に基づいて光学振動ジャイロスコープから出力される信号の誤差を決定し、2つの信号に基づいて光学振動ジャイロスコープ804によって得られる回転速度を補正する。デジタル信号プロセッサ828は、相互相関、平均化、および/または重み付けを使用して誤差を決定することができる。次いで、補正された回転速度は、慣性センサ800によって出力830される。補正の決定は、図1に関連して上述した。
【0165】
図1のマイクロコントローラ108または図2のマイクロコントローラ208は、駆動モードコントローラ816、センスモードコントローラ822、コントローラ836およびデジタル信号処理828の役割を果たすことができる。
【0166】
光源802もまた、閉ループフィードバックに接続することができる。例えば、光源802がレーザである場合、レーザ安定化制御経路(図示せず)を使用して、光源802の安定性を維持することができる。レーザ安定化技術は既知であり、そのため、これ以上は説明しない。
【0167】
図9は、慣性センサの例示的な光学振動ジャイロスコープ900および例示的な光学サニャックジャイロスコープ950の略図を示す。光学振動ジャイロスコープ900は、図1の光学振動ジャイロスコープ104、図2の光学振動ジャイロスコープ204、および図7の光学振動ジャイロスコープ700の一例である。光学サニャックジャイロスコープ950は、図1の光学サニャックジャイロスコープ106および図2の光学サニャックジャイロスコープ206の一例である。この例では、両方のジャイロスコープは、同じ基板上に、および/または同じ作製プロセスを使用して作製することができる。
【0168】
光学振動ジャイロスコープ900は、フレーム904のように作用する外側微小電気機械慣性試験質量と、内側微小電気機械慣性試験質量954とを備える。外側試験質量フレーム904は、この例ではそれぞれのアンカー916に接続された外側試験質量フレーム904の可撓性部分である4つの懸架手段934によって懸架される。アンカー916は、光学振動ジャイロスコープ900に対して固定されている。外側試験質量フレーム904のこれらの可撓性部分は、ばねとして挙動することができる。懸架手段934は、X方向の剛性は高いが、Y方向に屈曲可能である。したがって、外側試験質量フレーム904は、Y方向に動くように抑制される。内側試験質量954は、この例では内側試験質量954の可撓性部分である2つの懸架手段944によって懸架され、内側試験質量954の外側から外側試験質量フレーム904の内側に接続される。内側試験質量954のこれらの可撓性部分は、ばねとして挙動することができる。懸架手段944は、Y方向の剛性は高いが、X方向に屈曲可能である。したがって、内側試験質量954は、外側試験質量フレーム904に対してY方向に動くことを抑制され、したがって外側試験質量フレーム904と共にY方向に動く。内側試験質量954は、外側試験質量フレーム904に対してX方向に動くことができる。したがって、X方向における外側試験質量フレーム904の懸架手段934の剛性により、内側試験質量954のみが、回転が加えられているときに生成されるX軸コリオリ力を受ける。
【0169】
光学振動ジャイロスコープ900はまた、4つの微小共振器902を備える。内側試験質量954は、微小共振器902のうちの2つに隣接して、かつ不連続に懸架され、外側試験質量フレーム904は、他の2つの微小共振器902に隣接して、かつ不連続に懸架される。光学振動ジャイロスコープ900は、対応する微小共振器902の内外に光を結合するための4つの光カプラ908をさらに備える。光は、図9に示される矢印によって示すように光カプラに入り、対応する微小共振器に入出力され、次いで検出器に出力される。
【0170】
光学振動ジャイロスコープ900は、外側試験質量フレーム904のY方向における偏向に静電力で反作用するための4つの電極906をさらに備える。外側試験質量フレーム904の上方には2つの電極906があり、外側試験質量フレーム904の下方には2つの電極があり、結果、外側試験質量フレーム904の対向する両側に静電力を印加して、外側試験質量フレーム904の動きまたは位置の維持を精密に制御することができる。光学振動ジャイロスコープ900は、内側試験質量954のX方向における偏向に静電力で反作用するための2つの電極946をさらに備える。6つの電極906の各々は、2つのフィンガを含み、互いに噛み合っている。
【0171】
光学振動ジャイロスコープ900は、図7に関連して上記で説明したように、同時に実施される感知モードおよび駆動モードを有する。図9に示すように、駆動モードはY軸に沿っており、感知モードはX軸に沿っている。懸架手段944,934の向きは、上述したように、内側試験質量954および外側試験質量フレーム904の進行方向を抑制し、その結果、駆動モードは感知モードに交差結合せず、コリオリ効果は駆動モードに結合しない。
【0172】
駆動モードに関して、外側試験質量フレーム904の上部および下部にある4つの電極906は、周波数Ωで振動するようにフレーム904を駆動するためのものである。外側試験質量フレーム904と内側試験質量954とを接続する懸架手段944は、Y方向に剛性であり、したがって、外側試験質量フレーム904から内側試験質量954へと振動を通過させる。したがって、振動エネルギーは、内側試験質量がコリオリ効果を受けるように、外側試験質量フレーム904から内側試験質量954に移転される。外側試験質量フレーム904の上部および底部の突出部の両側の微小共振器902およびそれらの対応する光カプラ908は、試験質量フレーム904が正しい周波数で駆動されていることを感知するためのものである。
【0173】
【数14】
【0174】
外側試験質量フレーム904がY方向に周波数Ωで駆動されているとき、振動エネルギーは、懸架形状のためにX軸に動くように抑制されている内側試験質量954に伝達される。ジャイロスコープ900が回転すると、内側試験質量954はコリオリ効果によって周波数ΩでX軸に沿って偏向する。次いで、図7に関連して説明したのと同じように、内側試験質量の中央柱の左右の微小共振器902を使用して回転速度を検出することができる。
【0175】
図9は、試験質量の周りの特定の位置に配置構成されている互いに噛み合う電極によって実施される静電作動を示しているが、静電作動は、試験質量に対するXおよびY方向の力を生成する任意の方法で配置構成することができる。
【0176】
図9に示される配置構成は、ばねを駆動方向またはセンス方向のいずれかにおいて非常に剛性になるように調節することができる2つのフレームを使用するため、センス方向および駆動方向における振動の交差軸結合を減少させるという利点を提供する。
【0177】
図9は、内側試験質量954および外側試験質量フレーム904を有する光学振動ジャイロスコープ900を示しているが、ジャイロスコープは単一の試験質量を有することができ、ディスクタイプ半球システムまたは音叉構造などの他の方法で設計することができる。
【0178】
光学振動ジャイロスコープ900の場合、微小共振器902の配置に起因して、試験質量904の動きは、試験質量904と微小共振器902との間の間隔を差動的に変化させる。各光カプラ908から出力される光の異なる変化を比較することにより、差動出力を決定することができる。そのような差動出力は、差動に焦点を合わせているため、試験質量の変化に起因して、例えば熱膨張に起因して生じる誤差を除去する。したがって、図9の光学振動ジャイロスコープ900の配置構成は、ドリフトおよび温度オフセットを低減することによって読み取りを大幅に改善する差動動作を可能にする。
【0179】
一対の検出器が、差動出力を決定するために検出信号に対して差動測定を実行することができる。差動測定は、一対の検出器のうちの第1の検出器から受信される信号を、一対の検出器のうちの第2の検出器から受信される信号と比較することによって実施される。差動出力を得るために、慣性センサは、A1 962とラベル付けされた光学振動ジャイロスコープ900の光カプラ908の出力およびA2 964とラベル付けされた光学振動ジャイロスコープ900の光カプラ908の出力から光を受け取るための第1の検出器対を備えることができる。第1の検出器対は、X方向に沿った動きのための差動出力を得ることができる。慣性センサは、B1 966とラベル付けされた光学振動ジャイロスコープ900の光カプラ908の出力およびB2 968とラベル付けされた光学振動ジャイロスコープ900の光カプラ908の出力から光を受け取るための第2の検出器対を備えることができる。第2の検出器対は、Y方向に沿った動きのための差動出力を得ることができる。
【0180】
光学サニャックジャイロスコープ950は、サニャック構造と、サニャック構造の内外に光を結合するための2つの光カプラとを備える。図3に関連して上述したように、回転速度を検出するために、一方の光カプラは光を時計回り方向にサニャック構造に結合し、他方の光カプラは光を反時計回り方向にサニャック構造に結合する。光カプラのうちの一方は、以前に説明したように、その光カプラおよびサニャック構造を通じて伝播する光の位相を90度シフトさせるために位相変調器952に接続される。サニャック構造から光カプラに結合される光は、ジャイロスコープの回転に起因して光路長が異なる。慣性センサは、C1 970とラベル付けされた光学サニャックジャイロスコープ950の光カプラの出力およびC2 972とラベル付けされた光学サニャックジャイロスコープ950の光カプラ908の出力から光を受け取るための第3の検出器対を備えることができる。この検出器対は、差動出力を決定するために検出信号に対して差動測定を実行することができる。例えば、検出器が各光カプラ内を伝播する光の共振のシフトを検出している場合、差動測定は、共振間の周波数差を示し、例えば周囲温度の変化に起因する、同じ方向に両方の共振を動かす可能性がある任意の共通の誤差を排除する。
【0181】
図10は、慣性センサと共に使用するための例示的な制御ループフィードバックシステムを示す。制御ループシステムは、慣性センサの光学振動ジャイロスコープのセンスモードおよび駆動モードのための閉ループ制御と、慣性センサの光学サニャックジャイロスコープのための閉ループ制御とを備える。閉ループ制御は、ジャイロスコープの外部にあるものとして下記に説明されるが、それは、ジャイロスコープ内のコントローラによって実装されてもよい。閉ループ制御は、センサのマイクロコントローラ、例えば図1のマイクロコントローラ108または図2のマイクロコントローラ208によって実装されてもよい。
【0182】
光学振動ジャイロスコープのセンスモードおよび駆動モードのための閉ループ制御は、機械的応答を規制するために使用される。光学振動ジャイロスコープがそのZ軸1020を中心に回転されるとき、ジャイロスコープは感知モードと駆動モードの両方にある。閉ループフィードバックを実施するコントローラは、駆動モードおよび感知モードのための別個の閉ループ制御を有する。駆動モードのための閉ループ制御は、駆動モード振動振幅を所与の基準設定点と比較して規制することによって静電力1022を調整するために閉ループフィードバックを使用して振幅を安定に保つためのものである。感知モードのための閉ループ制御は、ジャイロスコープ出力を監視し、周波数Ωにおける振幅の変化を見つけ、静電作動1046を使用してそのような変化に反作用するためのものである。
【0183】
駆動モードでは、試験質量は、静電作動1022を使用してX方向1084に周波数Ωで駆動される。光学振動ジャイロスコープにはX方向に駆動力が及ぼされ、ジャイロスコープは出力電圧Vを出力する。光学振動ジャイロスコープの出力電圧は、駆動モードの閉ループ制御のためにコントローラに入力される。出力電圧は、電圧をデジタル信号に変換するためにコントローラ内のアナログ-デジタル変換器(ADC)1028に入力され、デジタル信号プロセッサ(DSP)1030を使用してフィルタリングされる。次いで、信号は、所与の基準点と比較することができる駆動モード振動振幅を得るために復調1032される。特に、復調信号は、振動の振幅および振動の周波数に対するオフセットに関する情報を抽出するために使用され、これらはその後、閉ループ制御からのフィードバックによって補正することができる。閉ループ制御1034は、駆動モード振動振幅を所与の基準設定点と比較し、安定性を維持するためにジャイロスコープの必要な作動を決定する。閉ループ制御1034は、正しい振動1084を維持するために、変調器1026およびデジタル-アナログ変換器(DAC)1024を介して、X軸における静電作動1022のための光学振動ジャイロスコープの関連電極に駆動信号を送信する。周波数をロックしたままにし、システムの他の部分で使用される周波数基準を生成するデジタル制御発振器1008に接続された位相ロックループ(PLL)1006もある。回転速度に対するジャイロスコープの感度を増大するために、駆動力が非常に正確であり、安定したピーク振幅および周波数を有する振動を生成することが重要である。
【0184】
感知モードでは、Z軸1020を中心とした光学振動ジャイロスコープの回転により、Y軸に沿って試験質量に力が及ぼされる。ジャイロスコープは、出力電圧Vを出力する。ジャイロスコープの出力電圧は、感知モードのための閉ループ制御のためにコントローラに入力される。出力電圧は、デジタル信号に変換するためにADC1036に入力され、DSP1038を使用してフィルタリングされる。次いで、信号は、回転速度に比例し、回転速度に応答して生じるコリオリの振幅を表す同相速度を得るために復調1040される。復調器1040はまた、周波数不整合に関連する誤差を表す直交信号を出力する。次いで、閉ループ制御1042は、同相速度を使用して回転速度に対応する信号を決定し、デジタル信号プロセッサ1080に出力1052する。また、閉ループ制御1042は、直交信号および同相速度を抑圧するための補正信号を出力する。補正信号は変調1050され、DAC1048を通じて、Y軸1046における静電作動のための光学振動ジャイロスコープの関連電極への電圧信号に変換される。
【0185】
慣性センサの光学サニャックジャイロスコープの閉ループ制御は、入力対向伝播光場を90度シフトに保ち、レーザをドリフトすることなく共振にロックし続けるように移相器を調節するために使用される。Z軸1060を中心とした光学サニャックジャイロスコープの回転は、時計回りおよび反時計回りに伝播する光の光路長の変化を引き起こし、これは、時計回りおよび反時計回りに伝播する光の共振間の位相差または光の干渉読み取りからの出力強度の変化を検出することによって検出することができる。移相器1062は、バイアス信号1064を使用して、サニャック構造を通じて時計回りまたは反時計回りのいずれかに伝播する光の位相を90度シフトさせる。次いで、光学サニャックジャイロスコープの出力は、時計回りおよび反時計回りに伝播する光の周波数差または光の干渉の変化を検出するために、検出器1066によって検出される。検出器は、回転速度に対応するアナログ信号を出力し、この信号は、ADC1068によってデジタル信号に変換され、復調1070されて、干渉パターンまたは共振の差に対応する信号、ならびに周波数および/または位相に関連する誤差信号が得られる。これらは比例積分(PI)コントローラ1072に送られ、これは回転速度に対応する信号をデジタル信号プロセッサ1080に出力1078する。PIコントローラ1072はまた、DAC1076を使用してサニャックジャイロスコープまたは入力光源にフィードバック信号を印加することによって、またはバイアス信号1064を修正することによって、入力光の任意のドリフトを補正する。
【0186】
デジタル信号プロセッサ1080は、光学振動ジャイロスコープおよび光学サニャックジャイロスコープからの出力を受信する。デジタル信号プロセッサ1080は、これらの出力を比較して、光学振動ジャイロスコープの出力の任意の誤差を決定する。次いで、デジタル信号プロセッサ1080は、光学振動ジャイロスコープの出力を補正して誤差を低減し、光学振動ジャイロスコープの補正された出力1082を慣性センサから出力する。
【0187】
図11は、光学振動ジャイロスコープおよび光学サニャックジャイロスコープの出力の誤差の例を示す。グラフA1100は、アラン偏差とサンプリング時間との関係を示す。アラン偏差は、ノイズ寄与、および、それらが例えば短期的または長期的にセンサ出力に影響を与えるときの指標を提供する。破線は光学振動ジャイロスコープのノイズを示し、点線は光学サニャックジャイロスコープのノイズを示す。グラフA1100に示すように、サンプリング時間が増大するにつれて、光学振動ジャイロスコープは、試験質量のドリフトによって引き起こされるはるかに大きい誤差を有する。逆に、光学サニャックジャイロスコープは、より低い長期ドリフトを有する。したがって、光学サニャックジャイロスコープは、光学振動ジャイロスコープを補正することができる安定した低ドリフト信号を提供する。さらに、サンプリング時間1における2つのジャイロスコープのアラン偏差の差は、光学振動ジャイロスコープがより低いノイズ密度を有することを示し、これは、光学振動ジャイロスコープが短期間により低いノイズレベルを有し得ることを意味する。これらの曲線はまた、光学サニャックジャイロスコープの曲線がより低い最小値を有するため、光学サニャックジャイロスコープがより低いバイアス不安定性を有し得ることを示している。
【0188】
グラフB1150は、ジャイロスコープが時間的に静止しているときに蓄積される回転誤差を示す。破線は光学サニャックジャイロスコープの回転誤差を示し、点線は光学振動ジャイロスコープの回転誤差を示す。グラフB1150に示すように、時間が増大するにつれて、光学振動ジャイロスコープの誤差は、光学サニャックジャイロスコープの誤差よりもはるかに高い速度で増大する。したがって、光学サニャックジャイロスコープの使用は、光学振動ジャイロスコープの回転誤差の蓄積を低減することによって長期安定性に利益をもたらすことができる。グラフB1150はまた、光学サニャックジャイロスコープがより高いノイズ量(短期誤差)で始動し得るが、より低い長期誤差を有することを示している。
【0189】
したがって、これらのグラフは、経時的な光学振動ジャイロスコープの誤差が光学サニャックジャイロスコープの誤差よりもはるかに大きくなる可能性があり、したがって、光学サニャックジャイロスコープの出力を使用して光学振動ジャイロスコープの出力を補正すると、センサの出力信号の誤差が減少し、回転速度のより正確な決定が提供されることを示している。
【0190】
図12は、光学振動ジャイロスコープ、光学サニャックジャイロスコープ、および慣性センサの例示的な出力を示す。グラフA1200は、光学振動ジャイロスコープの出力を線として示し、光学サニャックジャイロスコープの出力をボックスとして示しており、この出力がより多くのノイズを有することを示している。光学振動ジャイロスコープの出力は線形ではなく、光学振動ジャイロスコープに対する振動または線形加速度の望ましくない影響に起因して誤差が生じる最小値および最大値を含む。光学振動ジャイロスコープは動きの測定に依拠するため、このグラフに示されているように、任意の振動または線形加速度が誤った読み値を生成する。グラフに示すように、光学サニャックジャイロスコープは、そのような望ましくない影響を受けず、回転速度の変化に線形的に応答する。したがって、光学サニャックジャイロスコープは誤った読み値を提供しないため、光学振動ジャイロスコープによって生成された誤った読み値を除去するために利用することができる。グラフBは、慣性センサの出力を示しており、光学振動ジャイロスコープの出力を光学サニャックジャイロスコープの出力によって較正することによって光学振動ジャイロスコープの出力における誤差の除去に成功したことを示している。
【0191】
図13は、例示的な慣性測定ユニット(IMU)1300のブロック図を示す。IMU1300は、複数のチップスケール慣性センサ1302と、コントローラ1304とを備える。図13は、3つの慣性センサ1302を示しており、慣性センサ1302のうちの1つが破線で示されており、これが任意選択であることを示している。IMU1300には3つのセンサ1302が示されているが、IMU1300はより多くのまたはより少ない慣性センサを備えてもよい。
【0192】
各慣性センサ1302は、上記軸を中心とした慣性センサの第1の回転速度を検出するための光学振動ジャイロスコープを備える。光学振動ジャイロスコープは、第1の回転速度に対応する主信号を出力するように構成される。各慣性センサ1302は、上記軸を中心とした慣性センサの第2の回転速度を同時に検出するための光学サニャックジャイロスコープをさらに備える。光学サニャックジャイロスコープは、第2の回転速度に対応する補助信号を出力するように構成される。
【0193】
慣性測定ユニット1300は、各慣性センサ1302について、慣性センサ1302の主信号および補助信号に基づいて1つまたは複数の入力を受信するように構成されたコントローラ1304をさらに備える。コントローラ1304は、各慣性センサ1302について、1つまたは複数の入力に基づいて、それぞれの軸を中心とした慣性センサ1302の補正された第1の回転速度を決定するようにさらに構成される。
【0194】
コントローラ1304は、本明細書に記載の任意のマイクロコントローラの動作を実施することができる。各慣性センサ1302は、図1の慣性センサ100、図2の慣性センサ200、または図8の慣性センサ800であってもよい。IMU1300のコントローラ1304はすべてのセンサ1302の間で共有され得るため、各慣性センサ1302は、マイクロコントローラなしで図1の慣性センサ100、図2の慣性センサ200、または図8の慣性センサ800の要素を含むことができる。
【0195】
慣性測定ユニット1300は、第1の軸における第1の慣性センサの回転速度を検出するための第1のチップスケール慣性センサ1302と、第1の軸に垂直な第2の軸における第2の慣性センサの回転速度を検出するための第2のチップスケール慣性センサ1302と、第1の軸および第2の軸に垂直な第3の軸における第3の慣性センサの回転速度を検出するための第3のチップスケール慣性センサ1302とを備えることができる。コントローラ1304は、各慣性センサ1302について決定された補正された第1の回転速度に基づいて慣性測定ユニット1300の総回転速度を決定するようにさらに構成することができる。
【0196】
例えば、3つの慣性センサ1302は、X軸を中心とした回転速度を検出するためのセンサ1302と、Y軸を中心とした回転速度を検出するためのセンサ1302と、Z軸を中心とした回転速度を検出するためのセンサ1302とを備えることができる。これにより、3D方位追跡のための3自由度を提供することが可能になる。
【0197】
本明細書に記載の方法の多くの変形形態が当業者には明らかであろう。
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)に開示されている各特徴は、特に明記しない限り、同じ、同等、または同様の目的を果たす代替的な特徴に置き換えることができる。したがって、特に明記しない限り、開示された各特徴は、一般的な一連の同等または類似の特徴の一例にすぎない。
【0198】
本発明は、任意の前述の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規なもの、もしくは任意の新規な組み合わせ、またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスのステップの任意の新規なもの、もしくは任意の新規な組み合わせに及ぶ。特許請求の範囲は、前述の実施形態だけでなく、特許請求項の範囲内に入る任意の実施形態も包含すると解釈されるべきである。
図1
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【国際調査報告】