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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】一体型希釈冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/12 20060101AFI20240628BHJP
   F25D 3/10 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
F25B9/12
F25D3/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501142
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 US2022036531
(87)【国際公開番号】W WO2023283431
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】63/219,795
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/319,248
(32)【優先日】2022-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524009680
【氏名又は名称】メイベル クアンタム インダストリーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MAYBELL QUANTUM INDUSTRIES,INC.
(71)【出願人】
【識別番号】524009716
【氏名又は名称】オガンド ドス サントス アラン、ジョン
【氏名又は名称原語表記】OGANDO DOS SANTOS ALLAN,John
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ティルマン-ディック、コーバン アイ.
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン、カイル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】オガンド ドス サントス アラン、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チュー、ブライアン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】バイアーズ、ジョナサン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハリス、スティーブン ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ズルタク、ヨハンナ
(72)【発明者】
【氏名】プラント、タイラー ジェームズ
【テーマコード(参考)】
3L044
【Fターム(参考)】
3L044AA04
3L044BA07
3L044DA02
(57)【要約】
改良型の、使い勝手のよい、一体型希釈冷凍機のためのシステム及び技法を提供する。改良型希釈冷凍機は、複数の温度まで冷却されるように構成された複数の熱化板を含み、複数の熱化板のうちの第1熱化板は一体型熱交換器を備え、一体型熱交換器は、第1熱化板に形成されたチャネルを含み、チャネルは、希釈冷凍機の運転中に第1熱化板を通してヘリウムが流れるのを可能にするように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
希釈冷凍機であって、
複数の温度まで冷却されるように構成された複数の熱化板
を備え、
前記複数の熱化板のうちの第1熱化板が一体型熱交換器を備え、
前記一体型熱交換器が、前記第1熱化板に形成されたチャネルを含み、
前記チャネルが、前記希釈冷凍機の運転中、ヘリウムが前記第1熱化板を通って流れるのを可能にするように構成されている、希釈冷凍機。
【請求項2】
前記一体型熱交換器が付加製造により形成されている、請求項1に記載の希釈冷凍機。
【請求項3】
前記第1熱化板が、着脱式部分をさらに備え、前記着脱式部分が前記一体型熱交換器を含む、請求項1又は2に記載の希釈冷凍機。
【請求項4】
前記第1熱化板の前記着脱式部分に着脱可能に連結された交換可能な希釈インサートをさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項5】
前記希釈インサートが、
前記希釈冷凍機の凝縮ラインと、
前記複数の熱化板のうちの3つの熱化板と、
に着脱可能に連結される、請求項1~4のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項6】
前記希釈インサートが、HeとHeとの混合物からHe蒸気を分溜することにより冷却を行うように構成された分溜器を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項7】
前記複数の熱化板のうちの最も低温の熱化板に熱的に連結された試験容積と、
前記最も低温の熱化板よりも温度の高い第2熱化板に連結された分溜器であって、HeとHeとの混合物からHe蒸気を分溜することにより冷却を行うように構成された分溜器と、
前記第2熱化板と前記最も低温の熱化板との間に配置された連続型熱交換器と、
をさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項8】
前記複数の熱化板のうちの熱化板に熱的に連結された少なくとも1つの熱交換器をさらに備え、前記少なくとも1つの熱交換器がナノ材料を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項9】
前記ナノ材料が、少なくとも1つ又はナノワイヤ、ナノフォーム、ナノペレット及び/又はナノチューブを含む、請求項8に記載の希釈冷凍機。
【請求項10】
前記ナノ材料が、銅ナノワイヤ、銀ナノワイヤ、金ナノワイヤ、白金ナノワイヤ、ポリマーナノワイヤ、カーボンナノワイヤ及び/又は炭素繊維ナノワイヤのうちの1つ又は複数を含むナノワイヤを含む、請求項8又は9に記載の希釈冷凍機。
【請求項11】
前記少なくとも1つの熱交換器が、希釈冷凍機の混合室内に配置された熱交換器及び/又は分離型熱交換器のうちの1つを含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項12】
前記複数の熱化板のうちの最も低温の熱化板にヘリウムを輸送するように構成された凝縮ラインと、
前記凝縮ラインに沿って前記最も低温の熱化板の前に配置された分溜器と、
前記凝縮ラインに沿って前記分溜器と前記最も低温の熱化板との間に配置された熱交換器と、
前記熱交換器から戻りヘリウム混合物を前記分溜器に移送し、前記分溜器の上方の位置で前記凝縮ライン内のヘリウム混合物の温度を低下させるように構成された熱交換ラインと、
をさらに備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項13】
前記凝縮ラインに沿って前記分溜器の前に配置されたジュール-トムソン膨張機をさらに備え、
前記熱交換ラインが、前記ジュール-トムソン膨張機よりも前の位置で前記凝縮ライン内の前記ヘリウム混合物の温度を低下させるように構成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項14】
前記複数の熱化板のうちの最も低温の熱化板にヘリウムを輸送するように構成された凝縮ラインと、
前記凝縮ラインに沿って配置された高表面積材料であって、前記希釈冷凍機のクールダウンサイクル中、前記輸送されたヘリウムを前記高表面積材料に吸着させるように構成された高表面積材料と、
をさらに備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項15】
前記高表面積材料の第1端部が、第1ヒートスイッチにより、前記複数の熱化板のうちの温度が高い方の熱化板に切替可能に熱的に連結されており、
前記高表面積材料の前記第1端部とは反対側の第2端部が、第2ヒートスイッチにより、前記複数の熱化板のうちの温度が低い方の熱化板に切替可能に熱的に連結されている、
請求項14に記載の希釈冷凍機。
【請求項16】
前記高表面積材料に熱的に連結された少なくとも1つのヒータをさらに備え、前記ヒータが、前記高表面積材料を加熱することにより、前記吸着したヘリウムが、前記高表面積材料から放出され、前記複数の熱化板のうちの温度が高い方の熱化板と前記複数の熱化板のうちの温度が低い方の熱化板との間で移動することにより冷却されるようにするように構成されている、請求項14又は15に記載の希釈冷凍機。
【請求項17】
前記凝縮ラインに沿って前記温度が高い方の熱化板と前記高表面積材料との間に配置された第1弁と、
前記凝縮ラインに沿って前記高表面積材料と前記温度が低い方の熱化板との間に配置された第2弁と、
をさらに備え、
前記第1弁及び前記第2弁が、前記第1弁が閉じられ、前記第2弁が開かれると、前記高表面積材料に吸着したヘリウムが、前記温度が高い方の熱化板から前記温度が低い方の熱化板へ輸送されるように構成されている、請求項14~16のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項18】
前記高表面積材料が、活性炭又は金属粉末のうちの一方を含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項19】
ヘリウム入口から前記複数の熱化板のうちの最も低温の熱化板までヘリウムを輸送するように構成された凝縮ラインと、
前記凝縮ラインに沿って配置された第1ヘリウムフィルタと、
前記凝縮ラインに沿って前記第1ヘリウムフィルタと並列に配置された第2ヘリウムフィルタと、
前記凝縮ラインに沿って前記第1ヘリウムフィルタと前記第2ヘリウムフィルタとの間でヘリウムの流れを切り替えるように構成された少なくとも1つの弁と、
をさらに備える、請求項1~18のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項20】
前記第1ヘリウムフィルタ及び/又は前記第2ヘリウムフィルタがチャコールトラップを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項21】
前記第1ヘリウムフィルタと前記ヘリウム入口との間に配置された第1向流熱交換器と、
前記第2ヘリウムフィルタと前記ヘリウム入口の間に配置された第2向流熱交換器と、
をさらに備える、請求項1~20のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項22】
前記複数の熱化板のうちの最も低温の熱化板にヘリウムを輸送するように構成された凝縮ラインと、
前記凝縮ラインに沿って配置されたジュール-トムソン膨張機と、
前記凝縮ラインに沿って前記ジュール-トムソン膨張機と並列に配置されたバイパスであって、前記輸送されたヘリウムが、閾値を超え且つ300K未満の温度を有する場合に、前記輸送されたヘリウムが前記ジュール-トムソン膨張機をバイパスするのを可能にするように構成されたバイパスと、
をさらに備える、請求項1~21のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項23】
前記バイパスが材料を含み、前記材料が、前記輸送されたヘリウムが閾値を超え且つ300K未満の温度を有する場合に、前記輸送されたヘリウムが前記材料を通して拡散するのを可能にするように構成されている、請求項1~22のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項24】
前記材料がポリマーを含む、請求項23記載の希釈冷凍機。
【請求項25】
第1温度まで冷却されるように構成された第1熱ステージと、
前記第1温度よりも低い第2温度まで冷却されるように構成された第2熱ステージと、
前記第1熱ステージ及び第2熱ステージを収容する真空チャンバと、
前記第1熱ステージを前記真空チャンバから吊り下げるように構成された第1懸架システムと、
前記第2熱ステージを前記第1熱ステージから独立して前記真空チャンバから吊り下げるように構成された第2懸架システムと、
を備える希釈冷凍機。
【請求項26】
前記第1懸架システムが、前記第1熱ステージを前記真空チャンバに堅固に連結するように構成されたロッドを備える、請求項25に記載の希釈冷凍機。
【請求項27】
前記ロッドが炭素繊維又はステンレス鋼を含む、請求項26に記載の希釈冷凍機。
【請求項28】
前記第2懸架システムが、前記第2熱ステージを前記真空チャンバに移動可能に連結するように構成された1つ又は複数のばねを備える、請求項25~27のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項29】
前記1つ又は複数のばねが、異なる荷重下で一定の張力を提供するように構成されたばねを含む、請求項28に記載の希釈冷凍機。
【請求項30】
前記1つ又は複数のばねが、
第1軸に沿って前記第2熱ステージの防振を提供するように構成された第1ばねと、
前記第1軸に垂直な平面内で前記第2熱ステージの防振を提供するように構成された第2ばねと、
を含む、請求項28又は29に記載の希釈冷凍機。
【請求項31】
前記第1ばねが板ばねを含む、請求項30に記載の希釈冷凍機。
【請求項32】
前記板ばねがステンレス鋼及び/又はばね鋼を含む、請求項31記載の希釈冷凍機。
【請求項33】
前記板ばねが2枚のばね板を備え、前記板ばねの張力が、前記2枚のばね板の長さに基づいて決定される、請求項31又は32記載の希釈冷凍機。
【請求項34】
前記板ばねが2枚のばね板を備え、前記板ばねの張力が、前記2枚のばね板の予張力付与に基づいて決定される、請求項31~33のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項35】
前記第2ばねが軟性ロッドを含む、請求項30~34のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項36】
前記第1ばねが、前記軟性ロッドにより前記第2熱ステージに連結されている、請求項35に記載の希釈冷凍機。
【請求項37】
前記軟性ロッドがポリマーを含む、請求項35又は36に記載の希釈冷凍機。
【請求項38】
前記ポリマーがデルリン(Delrin)を含む、請求項37に記載の希釈冷凍機。
【請求項39】
前記第1温度と前記第2温度との間の第3温度まで冷却されるように構成された第3熱ステージをさらに備え、
前記第1懸架システムが、前記第3熱ステージを前記第1熱ステージから吊り下げるようにさらに構成されている、請求項25~38のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項40】
前記第2温度よりも低い第4温度まで冷却されるように構成された第4熱ステージと、
前記第4熱ステージを前記第2熱ステージから吊り下げるように構成された第3懸架システムと、
をさらに備える、請求項25~39のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項41】
前記第3懸架システムが、前記第4熱ステージを前記第2熱ステージに堅固に連結するように構成されたロッドを含む、請求項40に記載の希釈冷凍機。
【請求項42】
前記第2懸架システムが、前記第2熱ステージを前記真空チャンバに移動可能に連結するように構成された1つ又は複数のばねを含む、請求項40又は41に記載の希釈冷凍機。
【請求項43】
前記1つ又は複数のばねが、
第1軸に沿って前記第2熱ステージの防振を提供するように構成された第1ばねと、
前記第1軸に垂直な平面内で前記第2熱ステージの防振を提供するように構成された第2ばねと、
を含む、請求項42に記載の希釈冷凍機。
【請求項44】
前記第1懸架システムが、前記第1熱ステージを前記真空チャンバに堅固に連結するように構成されたロッドを含む、請求項40~43のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項45】
少なくとも1つの実質的に平面の面を含む外側真空チャンバと、
前記外側真空チャンバの内部へのアクセスを提供するように構成された、前記少なくとも1つの実質的に平面における開口部と、
を備える希釈冷凍機。
【請求項46】
前記外側真空チャンバ内に収容された試料ステージをさらに備え、前記開口部が、前記外側真空チャンバを通して前記試料ステージにアクセスを提供するように構成されている、請求項45に記載の希釈冷凍機。
【請求項47】
前記外側真空チャンバ内に収容された1つ又は複数の輻射シールドをさらに備え、前記1つ又は複数の輻射シールドの前記試料ステージに近接する部分が、前記試料ステージへのアクセスを提供するために摺動可能及び/又は取外し可能である、請求項45又は46に記載の希釈冷凍機。
【請求項48】
前記少なくとも1つの実質的に平面の面が、前記希釈冷凍機を支持する床の平面に垂直な平面内に配置された第1面を含む、請求項45~47のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項49】
前記少なくとも1つの実質的に平面の面が、
前記希釈冷凍機を支持する床の平面に垂直な面内に配置された第1面と、
前記床の平面に平行な面内に配置された第2面であって、前記第1面及び前記第2面が直方体として配置されている、第2面と、
を含む、請求項45~48のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項50】
前記開口部が密閉開口部を含む、請求項45~49のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項51】
前記開口部がヒンジ式ドアを含む、請求項45~50のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項52】
前記外側真空チャンバ内に収容された1つ又は複数の輻射シールドをさらに備え、前記1つ又は複数の輻射シールドの前記ヒンジ式ドアに近接する部分が、前記外側真空チャンバの前記内部へのアクセスを提供するように摺動可能及び/又は取外し可能である、請求項51に記載の希釈冷凍機。
【請求項53】
前記開口部がロードロックをさらに備える、請求項45~52のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項54】
前記外側真空チャンバが、
第1セクションと、
前記第1セクションから吊り下げられた第2セクションと、
を含む、請求項45~53のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項55】
前記第1セクションが、一体化クランプ及び/又はカムにより前記第2セクションに連結されている、請求項54に記載の希釈冷凍機。
【請求項56】
前記外側真空チャンバの前記第1及び/又は第2セクションが、前記外側真空チャンバの内部へのアクセスを提供するように、前記希釈冷凍機から少なくとも部分的に取り外されるように構成されている、請求項54又は55に記載の希釈冷凍機。
【請求項57】
前記外側真空チャンバの前記第1セクション及び/又は第2セクションを上昇及び/又は下降させるように構成された外部システムをさらに備える、請求項54~56のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項58】
前記外部システムが、前記第1及び/又は第2セクションを上昇及び/又は下降させるように構成された空気圧及び/又は液圧装置を含む、請求項57に記載の希釈冷凍機。
【請求項59】
前記外部システムが、前記第1及び/又は第2セクションを上昇及び/又は下降させるように構成されたねじ機構を含む、請求項57又は58に記載の希釈冷凍機。
【請求項60】
前記外側真空チャンバが、サーバラック型コンテナ内に収まるように構成されている、請求項45~59のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項61】
前記サーバラック型コンテナが、市販のサーバラックインフラストラクチャと一体化するように構成されている、請求項60に記載の希釈冷凍機。
【請求項62】
前記サーバラック型コンテナが19インチ(48.26センチメートル)サーバラックである、請求項60又は61に記載の希釈冷凍機。
【請求項63】
前記サーバラック型コンテナが、一体化水平面を含む外部ハウジングを含む、請求項60~62のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項64】
前記一体化水平面が、使用されていないときに収納されるように構成されている、請求項63に記載の希釈冷凍機。
【請求項65】
2つ以上の極低温装置に熱的に連結され、前記2つ以上の極低温装置に第1冷却ステージを提供するように構成された予冷システムを備える、分散型冷凍システム。
【請求項66】
前記予冷システムに熱的に連結された前記2つ以上の極低温装置をさらに備える、請求項65に記載の分散型冷凍システム。
【請求項67】
前記2つ以上の極低温装置が少なくとも1つの希釈冷凍機を含む、請求項65又は66に記載の分散型冷凍システム。
【請求項68】
前記2つ以上の極低温装置が、希釈冷凍機、低温顕微鏡システム、He冷凍システム及び/又は超伝導CMOSシステムのうちの2つ以上を含む、請求項65~67のいずれか一項に記載の分散型冷凍システム。
【請求項69】
前記第1冷却ステージが5K以下の温度を有する、請求項65~68のいずれか一項に記載の分散型冷凍システム。
【請求項70】
前記予冷システムが極低温冷却システムを含む、請求項65~69のいずれか一項に記載の分散型冷凍システム。
【請求項71】
前記極低温冷却システムがパルス管を含む、請求項70に記載の分散型冷凍システム。
【請求項72】
前記極低温冷却システムがブレイトン(Brayton)クライオクーラを含む、請求項70に記載の分散型冷凍システム。
【請求項73】
前記極低温冷却システムがヘリウム液化システムを含む、請求項70に記載の分散型冷凍システム。
【請求項74】
前記2つ以上の極低温装置が、1K以下の温度に達するように構成された第2冷却ステージを有する希釈冷凍機を含む、請求項65~73のいずれか一項に記載の分散型冷凍システム。
【請求項75】
前記第2冷却ステージが、100mK以下の温度に達するように構成されている、請求項65~74のいずれか一項に記載の分散型冷凍システム。
【請求項76】
1つ又は複数のサーバラックに組み込まれるように構成されている、請求項65~75のいずれか一項に記載の分散型冷凍システム。
【請求項77】
前記予冷システムが、第1サーバラックに組み込まれており、
前記2つ以上の極低温装置が、前記第1サーバラックとは異なる第2サーバラックに組み込まれている、請求項76に記載の分散型冷凍システム。
【請求項78】
前記予冷システムが、第1サーバラックに組み込まれており、
前記2つ以上の極低温装置が希釈冷凍機を含み、前記希釈冷凍機が、前記第1サーバラックとは異なる第2サーバラックに組み込まれている、請求項76に記載の分散型冷凍システム。
【請求項79】
前記2つ以上の極低温装置から前記予冷システムに熱を伝達するように構成された熱的連結構成要素をさらに備える、請求項65~78のいずれか一項に記載の分散型冷凍システム。
【請求項80】
前記熱的連結構成要素が1つ又は複数の充填ラインを含む、請求項79に記載の分散型冷凍システム。
【請求項81】
前記熱的連結構成要素が1つ又は複数のヒートパイプを含む、請求項79に記載の分散型冷凍システム。
【請求項82】
前記1つ又は複数のヒートパイプが、1つ又は複数の自励振動型ヒートパイプを含む、請求項81に記載の分散型冷凍システム。
【請求項83】
前記熱的連結構成要素が超流動ループを含む、請求項79に記載の分散型冷凍システム。
【請求項84】
前記熱的連結構成要素が1つ又は複数の真空断熱パイプを含む、請求項79~83のいずれか一項に記載の分散型冷凍システム。
【請求項85】
複数の温度まで冷却されるように構成された複数の熱ステージを備える希釈冷凍機であって、
前記複数の熱ステージのうちの最も低温の熱ステージが、前記複数の熱ステージのうちのより温度の高い熱ステージの上方に配置されて、前記最も低温の熱ステージが前記希釈冷凍機を支持する床から最も遠くに位置決めされるようになっている、希釈冷凍機。
【請求項86】
前記最も低温の熱ステージの上方に配置されるとともに前記最も低温の熱ステージに熱的に連結された脱混合室と、
前記脱混合室よりも前記床から遠くに配置された混合室と、
前記脱混合室から前記混合室にHeを輸送するように構成されたファウンテンポンプと、
をさらに備える、請求項85に記載の希釈冷凍機。
【請求項87】
前記脱混合室から前記混合室に輸送される際のHeを冷却するように構成された熱交換器をさらに備える、請求項86に記載の希釈冷凍機。
【請求項88】
He-He混合物からHe蒸気を分溜することにより冷却を提供するように構成された分溜器をさらに備え、前記分溜器が、前記分溜器の前記床から最も遠い面以外の前記分溜器の面を通って前記分溜器に入るパイプを備える圧送ポートを備える、請求項85~87のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項89】
前記パイプが前記分溜器の前記床に最も近い面から前記分溜器に入る、請求項88に記載の希釈冷凍機。
【請求項90】
前記パイプがトラップに連結されており、前記トラップが、
Pトラップと、
前記Pトラップから超流動Heを除去するように構成されたスーパーリークと、
を含む、請求項88又は89に記載の希釈冷凍機。
【請求項91】
前記パイプが、液体Heフィルムが前記パイプの出口内にはい上がるのを防止するように構成されたバリアを備える、請求項88~90のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項92】
前記バリアが、前記パイプの前記出口に1つ又は複数のナイフエッジを含む、請求項91に記載の希釈冷凍機。
【請求項93】
前記バリアが、前記パイプの外面にリングバリアを含む、請求項91又は92に記載の希釈冷凍機。
【請求項94】
前記バリアが、前記パイプの内面のリングバリアを含む、請求項91~93のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項95】
前記バリアがヒータを含む、請求項91~94のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項96】
He/He混合物を冷却するように構成された第1インピーダンスステージと、
前記第1インピーダンスステージを通過する前の前記He/He混合物を冷却するように構成された熱交換ステージと、
前記第1インピーダンスステージから受け取った前記He/He混合物からHeを分溜するように構成された分溜器と、
をさらに備える、請求項85~95のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項97】
前記熱交換ステージが、前記混合室から前記分溜器に低温のHeを戻すことにより、前記He/He混合物を冷却するように構成されている、請求項96に記載の希釈冷凍機。
【請求項98】
前記複数の熱ステージを収容する外側真空チャンバと、
前記希釈冷凍機の前記最も低温の熱ステージへのアクセスを提供するように構成された、前記外側真空チャンバの表面を貫通する開口部と、
をさらに備える、請求項85~97のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項99】
前記開口部が、前記外側真空チャンバの上面に近接して配置されている、請求項98に記載の希釈冷凍機。
【請求項100】
前記開口部が密閉開口部を含む、請求項98又は99に記載の希釈冷凍機。
【請求項101】
前記開口部がヒンジ式ドアを含む、請求項98~100のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項102】
前記外側真空チャンバが、サーバラック型コンテナ内に収まるように構成されている、請求項98~101のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【請求項103】
前記サーバラック型コンテナが、市販のサーバラックインフラストラクチャと一体化するように構成されている、請求項102に記載の希釈冷凍機。
【請求項104】
前記サーバラック型コンテナが19インチ(48.26センチメートル)サーバラックである、請求項102又は103に記載の希釈冷凍機。
【請求項105】
前記複数の熱ステージのうちの1つの熱ステージを約4Kまで冷却するように構成されたパルス管をさらに備える、請求項85~104のいずれか一項に記載の希釈冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一体型希釈冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
希釈冷凍機は、約2mK~1Kの温度までの冷却を提供するためにHe及びHeの同位体の混合の熱に依拠する極低温装置である。従来の希釈冷凍機、すなわち「湿式」希釈冷凍機は、He/He混合物を4K未満にさらに冷却する前に、液体窒素槽及びHe槽を使用して、He/He混合物を予冷する。最新の希釈冷凍機、すなわち「乾式」希釈冷凍機は、極低温液体槽ではなく、クライオクーラ等の装置を使用して、He/He混合物を予冷する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一体型希釈冷凍機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
いくつかの実施形態は、希釈冷凍機であって、複数の温度まで冷却されるように構成された複数の熱化板を備え、複数の熱化板のうちの第1熱化板が一体型熱交換器を備え、一体型熱交換器が、第1熱化板に形成されたチャネルを含み、チャネルが、希釈冷凍機の運転中、ヘリウムが第1熱化板を通って流れるのを可能にするように構成されている、希釈冷凍機に関する。
【0005】
いくつかの実施形態では、一体型熱交換器は、付加製造により形成されている。
いくつかの実施形態では、第1熱化板は、着脱式部分をさらに備え、着脱式部分は一体型熱交換器を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、第1熱化板の着脱式部分に着脱可能に連結された交換可能な希釈インサートをさらに備える。
いくつかの実施形態では、希釈インサートは、希釈冷凍機の凝縮ラインと、複数の熱化板のうちの3つの熱化板とに着脱可能に連結される。
【0007】
いくつかの実施形態では、希釈インサートは、HeとHeとの混合物からHe蒸気を分溜することにより冷却を行うように構成された分溜器を備える。
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、複数の熱化板のうちの最も低温の熱化板に熱的に連結された試験容積と、最も低温の熱化板よりも温度の高い第2熱化板に連結された分溜器であって、HeとHeとの混合物からHe蒸気を分溜することにより冷却を行うように構成された分溜器と、第2熱化板と最も低温の熱化板との間に配置された連続型熱交換器とをさらに備える。
【0008】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、複数の熱化板のうちの熱化板に熱的に連結された少なくとも1つの熱交換器をさらに備え、少なくとも1つの熱交換器はナノ材料を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、ナノ材料は、少なくとも1つ又はナノワイヤ、ナノフォーム、ナノペレット及び/又はナノチューブを含む。
いくつかの実施形態では、ナノ材料は、銅ナノワイヤ、銀ナノワイヤ、金ナノワイヤ、白金ナノワイヤ、ポリマーナノワイヤ、カーボンナノワイヤ及び/又は炭素繊維ナノワイヤのうちの1つ又は複数を含むナノワイヤを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの熱交換器は、分離型(discrete)熱交換器、及び/又は希釈冷凍機の混合室内に配置された熱交換器のうちの1つを含む。
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、複数の熱化板のうちの最も低温の熱化板にヘリウムを輸送するように構成された凝縮ラインと、凝縮ラインに沿って最も低温の熱化板の前に配置された分溜器と、凝縮ラインに沿って分溜器と最も低温の熱化板との間に配置された熱交換器と、熱交換器から戻りヘリウム混合物を分溜器に移送し、分溜器の上方の位置で凝縮ライン内のヘリウム混合物の温度を低下させるように構成された熱交換ラインとをさらに備える。
【0011】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、凝縮ラインに沿って分溜器の前に配置されたジュール-トムソン膨張機をさらに備え、熱交換ラインは、ジュール-トムソン膨張機よりも前の位置で凝縮ライン内のヘリウム混合物の温度を低下させるように構成されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、複数の熱化板のうちの最も低温の熱化板にヘリウムを輸送するように構成された凝縮ラインと、凝縮ラインに沿って配置された高表面積材料であって、希釈冷凍機のクールダウンサイクル中、輸送されたヘリウムを高表面積材料に吸着させるように構成された高表面積材料とをさらに備える。
【0013】
いくつかの実施形態では、高表面積材料の第1端部は、第1ヒートスイッチにより、複数の熱化板のうちの温度が高い方の熱化板に切替可能に熱的に連結されており、高表面積材料の第1端部とは反対側の第2端部は、第2ヒートスイッチにより、複数の熱化板のうちの温度が低い方の熱化板に切替可能に熱的に連結されている。
【0014】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、高表面積材料に熱的に連結された少なくとも1つのヒータをさらに備え、ヒータは、高表面積材料を加熱することにより、吸着したヘリウムが、高表面積材料から放出され、複数の熱化板のうちの温度が高い方の熱化板と複数の熱化板のうちの温度が低い方の熱化板との間で移動することにより冷却されるようにするように構成されている。
【0015】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、凝縮ラインに沿って温度が高い方の熱化板と高表面積材料との間に配置された第1弁と、凝縮ラインに沿って高表面積材料と温度が低い方の熱化板との間に配置された第2弁とをさらに備え、第1弁及び第2弁は、第1弁が閉じられ、第2弁が開かれると、高表面積材料に吸着したヘリウムを、温度が高い方の熱化板から温度が低い方の熱化板へ輸送させるように構成されている。
【0016】
いくつかの実施形態では、高表面積材料は、活性炭又は金属粉末のうちの一方を含む。
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、ヘリウム入口から複数の熱化板のうちの最も低温の熱化板までヘリウムを輸送するように構成された凝縮ラインと、凝縮ラインに沿って配置された第1ヘリウムフィルタと、凝縮ラインに沿って第1ヘリウムフィルタと並列に配置された第2ヘリウムフィルタと、凝縮ラインに沿って第1ヘリウムフィルタと第2ヘリウムフィルタとの間でヘリウムの流れを切り替えるように構成された少なくとも1つの弁とをさらに備える。
【0017】
いくつかの実施形態では、第1ヘリウムフィルタ及び/又は第2ヘリウムフィルタは、チャコールトラップを含む。
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、第1ヘリウムフィルタとヘリウム入口との間に配置された第1向流熱交換器と、第2ヘリウムフィルタとヘリウム入口の間に配置された第2向流熱交換器とをさらに備える。
【0018】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、複数の熱化板のうちの最も低温の熱化板にヘリウムを輸送するように構成された凝縮ラインと、凝縮ラインに沿って配置されたジュール-トムソン膨張機と、凝縮ラインに沿ってジュール-トムソン膨張機と並列に配置されたバイパスであって、輸送されたヘリウムが閾値を超え且つ300K未満の温度を有する場合に、輸送されたヘリウムがジュール-トムソン膨張機をバイパスするのを可能にするように構成されたバイパスとをさらに備える。
【0019】
いくつかの実施形態では、バイパスは材料を含み、材料は、輸送されたヘリウムが閾値を超え且つ300K未満の温度を有する場合に、輸送されたヘリウムが材料を通して拡散するのを可能にするように構成されている。いくつかの実施形態では、材料はポリマーを含む。
【0020】
いくつかの実施形態は、第1温度まで冷却されるように構成された第1熱ステージと、第1温度よりも低い第2温度まで冷却されるように構成された第2熱ステージと、第1熱ステージ及び第2熱ステージを収容する真空チャンバと、第1熱ステージを真空チャンバから吊り下げるように構成された第1懸架システムと、第2熱ステージを第1熱ステージから独立して真空チャンバから吊り下げるように構成された第2懸架システムとを備える希釈冷凍機に関する。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1懸架システムは、第1熱ステージを真空チャンバに堅固に連結するように構成されたロッドを備える。
いくつかの実施形態では、ロッドは炭素繊維又はステンレス鋼を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、第2懸架システムは、第2熱ステージを真空チャンバに移動可能に連結するように構成された1つ又は複数のばねを備える。
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のばねは、異なる荷重下で一定の張力を提供するように構成されたばねを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のばねは、第1軸に沿って第2熱ステージの防振を提供するように構成された第1ばねと、第1軸に垂直な平面内で第2熱ステージの防振を提供するように構成された第2ばねとを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1ばねは板ばねを含む。
いくつかの実施形態では、板ばねは、ステンレス鋼及び/又はばね鋼を含む。
いくつかの実施形態では、板ばねは2枚のばね板を備え、板ばねの張力は、2枚のばね板の長さに基づいて決定される。
【0025】
いくつかの実施形態では、板ばねは2枚のばね板を備え、板ばねの張力は、2枚のばね板の予張力付与に基づいて決定される。
いくつかの実施形態では、第2ばねは軟性ロッドを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1ばねは、軟性ロッドにより第2熱ステージに連結されている。
いくつかの実施形態では、軟性ロッドはポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーはデルリン(Delrin)を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、第1温度と第2温度との間の第3温度まで冷却されるように構成された第3熱ステージをさらに備え、第1懸架システムは、第3熱ステージを第1熱ステージから吊り下げるようにさらに構成されている。
【0028】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、第2温度よりも低い第4温度まで冷却されるように構成された第4熱ステージと、第4熱ステージを第2熱ステージから吊り下げるように構成された第3懸架システムとをさらに備える。
【0029】
いくつかの実施形態では、第3懸架システムは、第4熱ステージを第2熱ステージに堅固に連結するように構成されたロッドを含む。
いくつかの実施形態では、第2懸架システムは、第2熱ステージを真空チャンバに移動可能に連結するように構成された1つ又は複数のばねを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のばねは、第1軸に沿って第2熱ステージの防振を提供するように構成された第1ばねと、第1軸に垂直な平面内で第2熱ステージの防振を提供するように構成された第2ばねとを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1懸架システムは、第1熱ステージを真空チャンバに堅固に連結するように構成されたロッドを含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの実質的に平面の面を含む外側真空チャンバと、外側真空チャンバの内部へのアクセスを提供するように構成された、少なくとも1つの実質的に平面における開口部とを備える希釈冷凍機に関する。
【0032】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、外側真空チャンバ内に収容された試料ステージをさらに備え、開口部は、外側真空チャンバを通して試料ステージにアクセスを提供するように構成されている。
【0033】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、外側真空チャンバ内に収容された1つ又は複数の輻射シールドをさらに備え、1つ又は複数の輻射シールドの試料ステージに近接する部分は、試料ステージへのアクセスを提供するために摺動可能及び/又は取外し可能である。
【0034】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの実質的に平面の面は、希釈冷凍機を支持する床の平面に垂直な平面内に配置された第1面を含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの実質的に平面の面は、希釈冷凍機を支持する床の平面に垂直な面内に配置された第1面と、床の平面に平行な面内に配置された第2面であって、第1面及び第2面が直方体として配置されている、第2面とを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、開口部は密閉開口部を含む。
いくつかの実施形態では、開口部はヒンジ式ドアを含む。
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、外側真空チャンバ内に収容された1つ又は複数の輻射シールドをさらに備え、1つ又は複数の輻射シールドのヒンジ式ドアに近接する部分は、外側真空チャンバの内部へのアクセスを提供するように摺動可能及び/又は取外し可能である。
【0036】
いくつかの実施形態では、開口部はロードロックをさらに備える。
いくつかの実施形態では、外側真空チャンバは、第1セクションと、第1セクションから吊り下げられた第2セクションとを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、第1セクションは、一体化クランプ及び/又はカムにより第2セクションに連結されている。
いくつかの実施形態では、外側真空チャンバの第1及び/又は第2セクションは、外側真空チャンバの内部へのアクセスを提供するように、希釈冷凍機から少なくとも部分的に取り外されるように構成されている。
【0038】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、外側真空チャンバの第1セクション及び/又は第2セクションを上昇及び/又は下降させるように構成された外部システムをさらに備える。
【0039】
いくつかの実施形態では、外部システムは、第1及び/又は第2セクションを上昇及び/又は下降させるように構成された空気圧及び/又は液圧装置を含む。
いくつかの実施形態では、外部システムは、第1及び/又は第2セクションを上昇及び/又は下降させるように構成されたねじ機構を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、外側真空チャンバは、サーバラック型コンテナ内に収まるように構成されている。
いくつかの実施形態では、サーバラック型コンテナは、市販のサーバラックインフラストラクチャと一体化するように構成されている。
【0041】
いくつかの実施形態では、サーバラック型コンテナは19インチ(48.26センチメートル)サーバラックである。
いくつかの実施形態では、サーバラック型コンテナは、一体化水平面を含む外部ハウジングを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、一体化水平面は、使用されていないときに収納されるように構成されている。
いくつかの実施形態は、2つ以上の極低温装置に熱的に連結され、2つ以上の極低温装置に第1冷却ステージを提供するように構成された予冷システムを備える、分散型冷凍システムに関する。
【0043】
いくつかの実施形態では、分散型冷凍システムは、予冷システムに熱的に連結された2つ以上の極低温装置をさらに備える。
いくつかの実施形態では、2つ以上の極低温装置は、少なくとも1つの希釈冷凍機を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、2つ以上の極低温装置は、希釈冷凍機、低温顕微鏡システム、He冷凍システム及び/又は超伝導CMOSシステムのうちの2つ以上を含む。
いくつかの実施形態では、第1冷却ステージは5K以下の温度を有する。
【0045】
いくつかの実施形態では、予冷システムは極低温冷却システムを含む。
いくつかの実施形態では、極低温冷却システムはパルス管を含む。
いくつかの実施形態では、極低温冷却システムはブレイトン(Brayton)クライオクーラを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、極低温冷却システムはヘリウム液化システムを含む。
いくつかの実施形態では、2つ以上の極低温装置は、1K以下の温度に達するように構成された第2冷却ステージを有する希釈冷凍機を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、第2冷却ステージは、100mK以下の温度に達するように構成されている。
いくつかの実施形態では、分散型冷凍システムは、1つ又は複数のサーバラックに組み込まれるように構成されている。
【0048】
いくつかの実施形態では、予冷システムは、第1サーバラックに組み込まれており、2つ以上の極低温装置は、第1サーバラックとは異なる第2サーバラックに組み込まれている。
【0049】
いくつかの実施形態では、予冷システムは、第1サーバラックに組み込まれており、2つ以上の極低温装置は希釈冷凍機を含み、希釈冷凍機は、第1サーバラックとは異なる第2サーバラックに組み込まれている。
【0050】
いくつかの実施形態では、分散型冷凍システムは、2つ以上の極低温装置から予冷システムに熱を伝達するように構成された熱的連結構成要素をさらに備える。
いくつかの実施形態では、熱的連結構成要素は1つ又は複数の充填ラインを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、熱的連結構成要素は1つ又は複数のヒートパイプを含む。
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のヒートパイプは、1つ又は複数の自励振動型(pulsed)ヒートパイプを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、熱的連結構成要素は超流動ループを含む。
いくつかの実施形態では、熱的連結構成要素は1つ又は複数の真空断熱パイプを含む。
いくつかの実施形態は、複数の温度まで冷却されるように構成された複数の熱ステージを備える希釈冷凍機であって、複数の熱ステージのうちの最も低温の熱ステージが、複数の熱ステージのうちのより温度の高い熱ステージの上方に配置されて、最も低温の熱ステージが希釈冷凍機を支持する床から最も遠くに位置決めされるようになっている、希釈冷凍機に関する。
【0053】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、最も低温の熱ステージの上方に配置されるとともに最も低温の熱ステージに熱的に連結された脱混合室と、脱混合室よりも床から遠くに配置された混合室と、脱混合室から混合室にHeを輸送するように構成されたファウンテンポンプとをさらに備える。
【0054】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、脱混合室から混合室に輸送される際のHeを冷却するように構成された熱交換器をさらに備える。
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、He-He混合物からHe蒸気を分溜することにより冷却を提供するように構成された分溜器をさらに備え、分溜器は、分溜器の床から最も遠い面以外の分溜器の面を通って分溜器に入るパイプを備える圧送ポートを備える。
【0055】
いくつかの実施形態では、パイプは、分溜器の床に最も近い面から分溜器に入る。
いくつかの実施形態では、パイプはトラップに連結されており、トラップは、Pトラップと、Pトラップから超流動Heを除去するように構成されたスーパーリークとを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、パイプは、液体Heフィルムがパイプの出口内にはい上がるのを防止するように構成されたバリアを備える。
いくつかの実施形態では、バリアは、パイプの出口に1つ又は複数のナイフエッジを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、バリアは、パイプの外面にリングバリアを含む。
いくつかの実施形態では、バリアは、パイプの内面のリングバリアを含む。
いくつかの実施形態では、バリアはヒータを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、He/He混合物を冷却するように構成された第1インピーダンスステージと、第1インピーダンスステージを通過する前のHe/He混合物を冷却するように構成された熱交換ステージと、第1インピーダンスステージから受け取ったHe/He混合物からHeを分溜するように構成された分溜器とをさらに備える。
【0059】
いくつかの実施形態では、熱交換ステージは、混合室から分溜器に低温のHeを戻すことにより、He/He混合物を冷却するように構成されている。
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、複数の熱ステージを収容する外側真空チャンバと、希釈冷凍機の最も低温の熱ステージへのアクセスを提供するように構成された、外側真空チャンバの表面を貫通する開口部とをさらに備える。
【0060】
いくつかの実施形態では、開口部は、外側真空チャンバの上面に近接して配置されている。
いくつかの実施形態では、開口部は密閉開口部を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、開口部はヒンジ式ドアを含む。
いくつかの実施形態では、外側真空チャンバは、サーバラック型コンテナ内に収まるように構成されている。
【0062】
いくつかの実施形態では、サーバラック型コンテナは、市販のサーバラックインフラストラクチャと一体化するように構成されている。
いくつかの実施形態では、サーバラック型コンテナは19インチ(48.26センチメートル)サーバラックである。
【0063】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機は、複数の熱ステージのうちの1つの熱ステージを約4Kまで冷却するように構成されたパルス管をさらに備える。
添付図面は縮尺通りに描かれるように意図されていない。図面において、さまざまな図に示されている同一又はほぼ同一の各構成要素は、同様の数字で表されている。明瞭にするため、すべての図面においてすべての構成要素に符号が付されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、クローズドサイクル希釈冷凍機の概略図である。
図2】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、図1の希釈冷凍機内のヘリウム洗浄装置の概略図である。
図3】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、図1の希釈冷凍機におけるクールダウンターボチャージャ装置の概略図である。
図4】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、第2音波効果を用いてHeとHeとを分離する装置を含む分溜器の概略図である。
図5A】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、図1の希釈冷凍機用の取外し可能な希釈インサートの例示的な構成要素を示す。
図5B】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、図5Aの取外し可能な希釈インサートの例示的な熱化板インサートの図である。
図5C】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、ヘリウム流のためのチャネルを示す例示的な一体型熱交換器の断面図である。
図5D】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、一体型熱交換器で使用される高表面積材料の画像である。
図5E】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、図1の希釈冷凍機の連続型熱交換器及び分離型熱交換器の例示的な実施態様である。
図6A】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、例示的なHeフィルム分離装置の概略図である。
図6B】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、例示的なHeフィルム分離装置の概略図である。
図6C】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、例示的なHeフィルム分離装置の概略図である。
図6D】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、例示的なHeフィルム分離装置の概略図である。
図6E】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、例示的なHeフィルム分離装置の概略図である。
図6F】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、例示的なHeフィルム分離装置の概略図である。
図7A】熱交換器で使用される焼結金属粒子の画像である。
図7B】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、熱交換器で使用されるナノワイヤの画像である。
図7C】本明細書に記載のいくつかの実施形態による、熱交換器で使用されるナノクラスタの画像である。
図7D】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、熱交換器で使用される異なるナノペレットの画像を含む。
図8A】本明細書に記載のいくつかの実施形態による、図1の希釈冷凍機で使用される例示的な防振システムの概略図である。
図8B】本明細書で説明するいくつかの実施形態による、図8Aの防振システムで使用される例示的なばねを示す。
図9】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、真空チャンバの一部を上昇及び下降させるように構成された例示的な外部支持ラック及び一体化リフトの側面図である。
図10A】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、真空チャンバの工具不要の組立てと試験容積へのアクセスとを提供するように構成された要素を含む、図1の希釈冷凍機の例示的な実施態様の側面図である。
図10B】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、真空チャンバの工具不要の組立てを提供するように構成された、それぞれ開位置及び閉位置にある一体化ラッチの図である。
図10C】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、真空チャンバの工具不要の組立てを提供するように構成された、それぞれ開位置及び閉位置にある一体化ラッチの図である。
図11】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、希釈冷凍機を支持するように構成されたハウジングの外観図である。
図12A】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、反転型希釈冷凍機の概略図である。
図12B】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、反転型希釈冷凍機の例示的な構成要素の概略図である。
図12C】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、反転型希釈冷凍機の例示的な構成要素の概略図である。
図13】本明細書に記載するいくつかの実施形態による、分散型冷却システムの概略図である。
図14】本明細書に記載する技術の態様を実装することができる、例示的なコンピューティングデバイスを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
希釈冷凍機は、約2mK~1Kの温度までの冷却を可能にすることができる極低温装置であり、こうした極めて低い温度を必要とする種々の用途に使用されている。例えば、希釈冷凍機は、他の用途もあるがとりわけ、量子コンピューティング(例えば、超伝導量子コンピューティング技術及び量子ビット)及び低温物性物理学研究をサポートするために使用することができる。
【0066】
上述したように、希釈冷凍機は、冷却を提供するためにHe及びHeの同位体の混合の熱に依拠する。約870mK未満に冷却されると、He/He混合物は自発的な相分離を起こして、Heに富む相(「濃厚」相)とHeに乏しい相(「希薄」相)とを形成する。これらの2つの相は、希釈冷凍機の最も低温の部分である混合室内で平衡に維持され、相境界によって分離される。混合室では、Heは、濃厚相から相境界を通って希薄相に移動する際に希釈され、この吸熱希釈プロセスに必要な熱が、希釈冷凍機の冷却力を提供する。
【0067】
しかしながら、従来の希釈冷凍機には、多くの欠点及び不具合な点がある可能性がある。例えば、湿式希釈冷凍機は、著しい量の液体寒剤を必要とし、その維持と供給にはコストがかかる。別の例として、乾式希釈冷凍機は、クライオクーラシステムによってもたらされる望ましくない機械的振動を受ける可能性があり、且つ/又はクライオクーラに電力を供給するために大量のエネルギーを消費する可能性がある。
【0068】
従来の希釈冷凍機はまた、通常、大きい設置面積を占め、これは、複数の希釈冷凍機を必要とする用途での使用を不可能にする場合がある。例えば、従来の乾式希釈冷凍機1台には、通常、約27.87平方メートル(約300平方フィート)と約3.66メートル(約12フィート)~約4.27メートル(約14フィート)の天井高とが必要である。このスペースは、希釈冷凍機本体によって占有されるだけでなく、ポンプ、圧縮機、水冷システム及び/又はクライオクーラシステム等の補助システムをサポートするためにも必要とされる。
【0069】
本発明者らは、量子コンピューティング及び他の量子技術が容易にスケーラブルであるためには、量子技術産業において、信頼性が高く、使いやすく、メンテナンスが容易であり、コンパクトな希釈冷凍機が必要とされていることを認識及び理解した。したがって、本発明者らは、市販のサーバラックインフラストラクチャ(例えば、19インチ(48.26センチメートル)サーバラック)と一体化することができる、希釈冷凍機及び分散型冷却システムを開発した。さらに、本発明者らは、希釈冷凍機のメンテナンスを容易にし、機械的ポンプを使用せずに希釈冷凍機の冷却を高速化し、希釈冷凍機の試験容積への機械的振動の伝達を低減させるように、本明細書に記載する多くの特徴を開発した。
【0070】
I.改良型クローズドサイクル希釈冷凍機
図1は、本明細書に記載するいくつかの実施形態による、乾式クローズドサイクル希釈冷凍機100の概略図である。いくつかの実施形態では、希釈冷凍機100は、室温(例えば、約300K)の外側真空チャンバ106と、減少する温度間隔(例えば、約50K、9~10K、3K等)で保持される複数の熱ステージ108a~108f(例えば、熱化板)とを含む。例えば、第1熱ステージ108aは約50Kであってもよく、第2熱ステージ108bは約9~10Kであってもよく、第3熱ステージ108cは約3~4Kであってもよく、第4熱ステージ108dは約800mKであってもよく、第5熱ステージ108eは約100mKであってもよく、第6熱ステージ108fは約10mKであってもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機100は、He/Heガス混合物を(例えば、100kPa(1バール)又は100kPa(1バール)に近い圧力まで加圧する)加圧するポンプシステム102を含むことができる。He/Heガス混合物は、1つ又は複数の入口から外側真空チャンバ106に入ることができ、その後、凝縮ライン102aを通って内側熱ステージ108a~108fを通過することができる。He/He混合ガスは、その冷却機能を果たした後、戻りライン102bを通ってポンプシステムに戻ることができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、He/He混合物は、凝縮ライン102aに沿って熱ステージ108a~108fを通過する前に精製することができる。希釈冷凍機を流れるヘリウム中の汚染物質は、いくつかの構成要素(例えば、ジュール-トムソン膨張機、又は熱交換器の毛細管)を詰まらせ、性能の低下又はシステムの故障をもたらす可能性がある。従来、汚染物質がシステムに混入するリスクを軽減するために、ヘリウムは希釈冷凍機の希釈ユニットに入る前に、まず活性炭が充填された外部「洗浄トラップ」に通される。これらの外部トラップは、液体窒素で取り囲み、頻繁な間隔で再充填しなければならず、これには、ユーザによるメンテナンス及び相互作用が必要である。
【0073】
本発明者らは、液体窒素の再充填を必要としない受動的ヘリウムフィルタが、希釈冷凍システムのユーザエクスペリエンスを向上させ、メンテナンスの頻度を低減させることができることを認識及び理解した。したがって、いくつかの実施形態では、希釈冷凍機100は、1つ又は複数のヘリウム洗浄装置110を含む。いくつかの実施形態では、希釈冷凍機100は、2つ以上のヘリウム洗浄装置110を含む場合、ヘリウムの流れを単一のヘリウム洗浄装置110に向けるように構成された切替システム109をさらに含むことができる。
【0074】
図2は、本明細書に記載するいくつかの実施形態によるヘリウム洗浄装置110の概略図を示す。ヘリウム洗浄装置110は、外側真空チャンバ106の外側に配置されている切替システム109によってポンプシステム102に連結することができる。切替システム109は、1つ又は複数のヘリウム適合弁を含むことができる。切替システム109は、ヘリウム洗浄装置110の各々の間でヘリウムの流れを切り替えるように構成することができる。このように、希釈冷凍機が運転中である間、一方のヘリウム洗浄装置110を、積極的にヘリウムを濾過するために使用することができ、一方で、他方のヘリウム洗浄装置を(例えば、加熱し、不純物を汲み出すことにより)洗浄することができ、希釈冷凍機100の無期限の運転が可能になる。
【0075】
いくつかの実施形態では、ヘリウム洗浄装置110は、向流熱交換器110aと、トラップ110bと、弱熱接触部110c(例えば、ガスギャップ熱交換器、低熱伝導性アタッチメント等)とを含む。向流熱交換器110a及び弱熱接触部110cは、希釈冷凍機100に対するヘリウム洗浄装置110の熱負荷を低減させることができ、ヘリウム洗浄装置110における極低温弁の使用をなくすことができる。トラップ110bは、例えば、希釈冷凍機100内の非ヘリウム不純物を捕捉するように構成された高表面積材料(例えば、木炭、活性炭及び/又は金属粉末)を含むことができる。
【0076】
図1に戻ると、いくつかの実施形態では、希釈冷凍機100は、クールダウンターボチャージャ装置111を含むことができる。乾式希釈冷凍機は、従来、補助圧縮機を使用して温かいヘリウムの流れを可能にするが、ヘリウムは、最初に高いインピーダンスを有し、そうした動きに抵抗する。補助圧縮機からの余分な圧力もまたヘリウムを加圧し、これにより、ヘリウムは、より高い温度で等エンタルピー膨張及び冷却を開始する圧力に達する。こうした補助的な機械式圧縮機ポンプは、コストが高く、信頼性に問題が生じやすく、頻繁に漏れが発生し、経時的に性能が低下する可能性がある。本発明者らは、別法として補助的な機械式ポンプを使用することなく、クールダウン中に希釈冷凍機を通してヘリウムを脈動させることができ、それにより、より迅速でより効率的なクールダウンプロセスが可能になることを認識及び理解した。
【0077】
図3は、本明細書に記載するいくつかの実施形態によるクールダウンターボチャージャ装置111の概略図を示す。クールダウンターボチャージャ装置111は、ある体積の高表面積材料111aと、ヒータ111bと、第1弁111cと、第2弁111dとを含むことができる。第1弁111c及び第2弁111dは、例えば、真空チャンバ106の内部に位置するコールドバルブであってもよい。別の例として、第1弁111c及び第2弁111dは、真空チャンバ106の外部に位置する室温バルブであってもよい。いくつかの実施形態では、ヒータ111b並びに第1弁111c及び第2弁111dは、コントローラ330に通信可能に連結することができる。コントローラ330は、例えば、本明細書の図14に関連して記載するようなコンピュータであり得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、クールダウンターボチャージャ装置111は、熱ステージに(例えば、熱化板に)熱的に連結することができる。図3の例では、高表面積材料111aは、第2熱ステージ108bに熱的に連結されているが、高表面積材料111aは、いくつかの実施形態では別の熱ステージ(例えば、第1熱ステージ108a)に熱的に連結することができることが認識されるべきである。
【0079】
別法として、いくつかの実施形態では、クールダウンターボチャージャ装置111は、複数の熱ステージに(例えば、2つ以上の熱ステージ108a~108fにわたって)熱的に連結してもよい。こうした実施形態では、高表面積材料111aの逐次的な加熱及び冷却は、ヒートスイッチによって調節することができる。例えば、クールダウンターボチャージャ装置111は、温度が高い方の熱ステージと温度が低い方の熱ステージとの間で切替可能に熱的に連結して、クールダウンターボチャージャ装置111が、温度が高い方の熱ステージ又は温度が低い方の熱ステージのいずれかに熱的に連結することができるようにすることができる。クールダウンターボチャージャ装置111が、温度が高い方の熱ステージに熱的に連結されると、高表面積材料111aは、いかなる吸着されたヘリウムも放出することができる。クールダウンターボチャージャ装置111が、温度が低い方の熱ステージに熱的に連結されると、ヘリウムは高表面積材料111aに吸着し始める。このように、凝縮ライン102aを通るヘリウムの逐次的なフラッシングを実施することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、高表面積材料111aは、クールダウンプロセス中にヘリウムが高表面積材料111aに吸着するような、多孔質且つ/又はテクスチャ加工された表面を有する材料を含むことができる。例えば、高表面積材料111aは、活性炭、金属粉末(例えば、銅又は銀粉末)、及び/又はナノ構造(例えば、ナノワイヤ、ナノ粒子等)で形成された複合材料を含むことができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、クールダウンターボチャージャ装置111は、ヒータ111bの動作と協働する弁111c、111dの逐次的な開閉を使用して動作させることができる。例えば、ヘリウムを高表面積材料111aに吸着させるために、第1弁111cを閉じて、ヘリウムが希釈冷凍機100の下方のステージに流れるのを防止することができ、第2弁111dを開いて、ヘリウムが高表面積材料111aに到達するようにすることができる。測定された圧力又は温度に応答して、又はコントローラ330によって生成されたタイミング信号に応答して、コントローラ330により、第1弁111cを閉じることができ、第2弁111dを開けることができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、十分なヘリウムが高表面積材料111aに吸着した後、第2弁111dを閉じることができ、第1弁111cが開けることができる。測定された温度又は圧力に応答して、及び/又はコントローラ330によって生成されたタイミング信号に応答して、第1弁111c及び第2弁111dを開閉することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、第2弁111dが閉じられ、第1弁111cが開かれると、ヒータ111bもまた、コントローラ330によって生成された信号に応答して、同じか又は同様の時点で、高表面積材料111aを加熱するようにすることができる。例えば、ヒータ111bは、ヒータ111bを通る電流の流れによって高表面積材料111aを加熱するようにされる抵抗ヒータであり得る。ヒータ111bからの熱に応答して、高表面積材料111aに吸着したヘリウムは、次いで高表面積材料111aから放出される、予備軍として作用することができる。この吸着したヘリウムの放出により、凝縮ライン102aの残りの部分における圧力を上昇させることができ、圧力の上昇により、希釈冷凍機100の冷却を速めるための等エンタルピー膨張の開始を可能にすることができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、ヘリウムが高表面積材料111aから放出されると、コントローラ330によって、第1弁111cを閉じることができ、第2弁111dを開けることができ、ヒータ111bをオフにすることができ、これにより、新たなヘリウムが高表面積材料111aに吸着することができる。コントローラ330は、弁111c、111dを定期的に(例えば、一定の時間間隔で、不規則な時間間隔で、試験容積の温度によって決まる時間間隔で、試験容積の圧力によって決まる時間間隔で)開閉し、ヒータ111bを動作させてヘリウム取入経路をフラッシングするように構成することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ330は、高表面積材料111aから凝縮ライン102aを通してヘリウムを「脈動させ」て、希釈冷凍機が冷却されるように構成することができる。
【0085】
図1に戻ると、希釈冷凍機の運転中、第1熱ステージ108aから混合室122まで凝縮ライン102aに沿って移動するHe/He混合物を、徐々に冷却することができる。第1熱ステージにおいて、最初に、ヘリウムを約50Kまで冷却することができる。He/He混合物は、クールダウンターボチャージャ装置を出た後、次にクライオクーラ104によって冷却することができる。クライオクーラ104の一部は、いくつかの実施形態では、外側真空チャンバ106の外側に部分的に配置することができる。パッド及び/又は他の任意の好適な防振技法を含むことができる防振ステージ105によって、外側真空チャンバ106からクライオクーラ104に振動が伝わらないようにすることができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、クライオクーラ104は、クライオクーラ支持体103に結合することができる。クライオクーラ支持体103は、いくつかの実施形態では、例えば、圧縮機及び/又は圧縮システムであり得る。クライオクーラ支持体103は、いくつかの実施形態では、希釈冷凍機100に空冷を提供するように構成された冷却部材103aを含むことができる。冷却部材103aは、非限定的な例として、クライオクーラ支持体103及び/又はクライオクーラ104によって発生する廃熱を除去するように構成された、冷却フィン、ファン及び/又はヒートパイプであり得る。
【0087】
冷却部材103aは、従来のクローズドサイクル希釈冷凍機とは対照的であり、従来のクローズドサイクル希釈冷凍機は、通常、一体化されたクライオクーラによって発生する廃熱を除去するために水冷に依拠する。しかしながら、クライオクーラの水冷には、希釈冷凍機と併せて、大型且つ/又は高価な水冷システムを設置する必要がある。さらに、こうした水冷システムは、通常、より安価であり電子機器に危険(例えば、冷却剤の漏れ、浸水等)をもたらさないため通常空冷に依拠する商用コンピューティング施設とは、一体化されることはない。したがって、本発明者らは、希釈冷凍機のクライオクーラから熱を除去するために空冷を使用することにより、希釈冷凍機を製造するコストを削減し、それらが商用コンピューティング施設での使用されるのを可能にすることができることを認識した。
【0088】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機100は、希釈冷凍機を支持する床の下に配置されたプレナム(図示せず)の上方に配置することができる。プレナムは、空冷を提供するために冷却部材103aに空気流を供給することができる。いくつかの実施形態では、冷却部材103aは、プレナムから空気を引き込むように構成された入口及び/又はルーバを含むことができる。別法として又はさらに、いくつかの実施形態では、希釈冷凍機100は、冷却部材103a、クライオクーラ支持体103及び/又はクライオクーラ104から熱を除去し、希釈冷凍機100に起こる振動を最小限にするように配置された、配管及び/又はヒートパイプ(図示せず)を含む施設内に配置することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、He/He混合物は、クライオクーラ104によって2つのステップで冷却することができる。凝縮ライン102aは、凝縮ライン102a内のHe/He混合物とクライオクーラ104との間で熱交換を行うために、クライオクーラ104の2つの部分の周囲に巻き付けることができる。第1ステップでは、クライオクーラ104により、He/He混合物を約10Kまで冷却することができる。第2ステップでは、クライオクーラ104により、He/He混合物を約3~4Kまで冷却することができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、He/He混合物は、クライオクーラ104によって冷却された後、第3熱ステージ108cを通過することができる。第3熱ステージ108cは、いくつかの実施形態では、後の熱ステージ108d~108fに防振を提供するために、クライオクーラ104に熱的に連結するが機械的に切り離すことができる。非限定的な例として、いくつかの実施形態では、第3熱ステージ108cは、第3熱ステージ108cとクライオクーラ104との間の熱的連結を維持するように構成された銅編組、ヒートストラップ又は他の吊下げ構成要素により、クライオクーラから機械的に切り離してもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、He/He混合物は、第3熱ステージ108cを通過した後、一次インピーダンスステージ112に入ることができる。一次インピーダンスステージ112は、He/He混合物の温度及び/又は圧力を低下させるように構成されたジュール-トムソン膨張機であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、He/He混合物は、一次インピーダンスステージ112に入る前に約3~5Kである場合があり、一次インピーダンスステージ112を出た後に約1Kである場合がある。
【0092】
いくつかの実施形態では、一次インピーダンスステージ112は、光ファイバケーブルから形成されたジュール-トムソン膨張機であり得る。従来、ジュール-トムソン膨張機は、引っ張ることにより製造される金属管として形成される場合がある。しかしながら、こうした金属製のジュール-トムソン膨張機は、不規則性の問題がある場合があり、且つ/又は、装置の冷却力を低下させる大きい直径を有する場合がある。中空コア光ファイバケーブルにより、ジュール-トムソン膨張機に必要な狭い開口部を確実に且つ再現可能に提供することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機100は、希釈冷凍機100のクールダウンの速度を上昇させるように構成されたバイパス装置113aを含むことができる。例えば、希釈冷凍機の初期クールダウン中、希釈冷凍機内のジュール-トムソン膨張機のインピーダンスが大きいことと、温かく、密度の低い、粘性のある循環ヘリウムとにより、ヘリウム流量が低い可能性がある。このヘリウム流量の低下により、冷凍機の下方部分の冷却速度が低下する。この影響に対処するため、従来は、ジュール-トムソン膨張機の上方の凝縮ライン上のある位置にニードル弁を組み込んで、最初に温かいヘリウムガスのインピーダンスを、低下させる場合がある。しかしながら、ニードル弁は、経時的に故障する可能性がある機械部品を含む。本発明者らは、ニードル弁等の機械部品に頼ることなくヘリウム流量を改善することができることを理解及び認識した。
【0094】
いくつかの実施形態では、バイパス装置113aは、一次インピーダンスステージ112と並列に凝縮ライン102aに沿って、一次インピーダンスステージ112をバイパスする(例えば、He/He混合物が一次インピーダンスステージ112の周りを流れるのを可能にする)バイパスライン113b上に配置することができる。バイパス装置113aは、閾値温度値を超える温度でヘリウムが材料を通って拡散するのを可能にするように構成された、真空対応材料のシートを含むことができる。例えば、バイパス装置113aは、約40K~300Kの範囲内、50K~300Kの範囲内、80K~300Kの範囲内、100K~300Kの範囲内、150Kからの範囲内、又はこれらの範囲内の任意の範囲内の温度で、He/He混合物がバイパス装置113aを通って拡散するのを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、バイパス装置113aは、真空対応ポリマー材料のシートを含むことができる。例えば、バイパス装置113aは、いくつかの非限定的な例として、カプトン(Kapton)、PEEK及び/又はマイラー(mylar)のシートで形成してもよい。したがって、バイパス装置113aは、He/He混合物が温かいときに、一次インピーダンスステージ112の高インピーダンスを回避するのを可能にし、それにより、ヘリウム流量及び希釈冷凍機100の冷却速度を上昇させる。希釈冷凍機100が十分に(例えば、閾値温度値未満まで)冷却されると、He/He混合物は、バイパス装置113aを通って拡散しなくなり、代わりに一次インピーダンスステージ112を通って流れるようになる。
【0095】
いくつかの実施形態では、He/He混合物は、一次インピーダンスステージ112又はバイパス装置113aを出た後、第4熱ステージ108dを通過して分溜器114に入る。分溜器114は、流入するHe/He混合物が分溜器114を通る凝縮ライン102aを通過する際に冷却する、液体He/Heの異なる混合物を収容することができる。いくつかの実施形態では、凝縮ライン内のHe/He混合物は、分溜器114によって約400~900mKまで冷却することができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、分溜器114は、分溜器内のHe蒸発を促進するために第2音波を使用するように構成された膜を含むことができる。第2音波は、超流動ヘリウムに存在する超流動現象であり、例えば、多孔質膜が振動するか、又は加熱されたワイヤが超流動ヘリウムの浴内で循環する場合に、生成される可能性がある。2流体モデルは、混合物中の超流動ヘリウムが膜を通って移動する一方で、ヘリウム浴の非超流動成分は多孔質膜をそれほど容易に通過することができないことを規定している。超流動ヘリウムでは、これによりエンタルピー又は温度の波が引き起こされる。ヘリウム混合物においても同様に、非超流動Heは振動膜によって優先的に押すことができるが、超流動Heは比較的静止したままである。本発明者らは、この第2音波現象を分溜器114内で実装して、より低い温度でHeの蒸発速度を上昇させ、分溜器内の液体ヘリウム混合物の上方の蒸気中のHeの濃度を低下させることができることを認識及び理解した。
【0097】
図4は、本明細書に記載するいくつかの実施形態による、第2音波効果を使用してHeとHeとを分離する装置を含む分溜器400の概略図である。分溜器400は、いくつかの実施形態では、希釈冷凍機100の分溜器114として実装することができる。分溜器400は、固定面402と、多孔質の可動膜404とを含むことができる。多孔質膜404をZ方向に沿って振動させて、分溜器内にHeの定在濃度波を引き起こして、He濃度の低い領域406とHe濃度の高い領域408とがあるようにすることができる。定在波は、He濃度の高い領域408が分溜器の出口に隣接して配置されるように調整することができ、それによってHeの精製を改善することができる。
【0098】
図1に戻ると、いくつかの実施形態では、He/He混合物は、分溜器114を出た後、凝縮ライン102aを通って二次インピーダンスステージ116に流れることができる。二次インピーダンスステージ116は、液体He/Heのみが希釈冷凍機100のさらに下流に進むことと、(例えば、分溜器114内の閾値圧力を維持することにより)分溜器114内のガスキャビテーションが生じないこととを確実にするように構成することができる。したがって、二次インピーダンスステージ116は、気体He/Heの潜熱による下流の冷却負荷を低減させることができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、He/He混合物は、二次インピーダンスステージ116を出た後、第1熱交換器118に流れ込むことができる。第1熱交換器118は、連続型熱交換器であってもよい。例えば、第1熱交換器118は、向流熱交換器(例えば、チューブインチューブ(tube-tube)熱交換器)、クロス向流熱交換器、及び/又は並流熱交換器であり得る。第1熱交換器118の出口において、凝縮ライン102a内のHe/He混合物は、約20mKの温度まで冷却することができる。
【0100】
従来のクローズドサイクル希釈冷凍機では、凝縮ライン内のHe/He混合物は、分溜器に入る前に、通常、第1インピーダンスステージを通過しなければならない。この第1インピーダンスステージは、通常、ジュール-トムソン冷凍機として知られる独立した冷凍ステージとして作用し、そこでは、He/He混合物は、等エンタルピー膨張によって冷却される。He/He混合物の膨張による冷却力を制御するために、凝縮ライン内のHe/He混合物の圧力は、通常、外部圧縮機によって上昇させる。
【0101】
本発明者らは、第1インピーダンスステージに入る前にHe/He混合物の温度を低下させることにより、より低い圧力差を使用しながら、同じ冷却効果(例えば、He/He混合物は、第1インピーダンスステージを通過した後、同じベース温度に達することができる)を達成できることを認識及び理解した。こうした構成は、希釈冷凍機の効率を向上させ、第1インピーダンスステージの前にHe/He混合物を加圧する必要性を低減させるか又はなくすことができる。さらに、本発明者らは、第1インピーダンスステージの前にHe/He混合物から除去された熱を分溜器に戻すことができ、それにより、分溜器に存在する異なるHe/He混合物の蒸気圧を上昇させるとともにその蒸発を可能にするための分溜器内の補助ヒータの必要性をなくすか又は低減させることができることを認識した。
【0102】
したがって、いくつかの実施形態では、希釈冷凍機100は、入ってくる凝縮ライン102aから、第1熱交換器118から分溜器114に輸送されている戻りヘリウム混合物に熱を伝達するように構成された、熱交換ライン117を含むことができる。熱交換ライン117は、一次インピーダンスステージ112の上方の位置で凝縮ライン102aを冷却することができる。次いで、熱交換ライン117は、一次インピーダンスステージ112に入る前に、凝縮ライン102a内のHe/He混合物を冷却する。その後、熱交換ライン117内の温度が上昇した混合物は、分溜器114に輸送される。
【0103】
入ってくるHe/He混合物を一次インピーダンスステージ112に入る前に冷却することにより、一次インピーダンスステージ112は、蒸気状態ではなく液体状態のHeの割合が高いHe/He混合物を排出する。したがって、追加の熱交換ライン117を含むことにより、一次インピーダンスステージ112をより効率的にすることができる。さらに、この効率の向上により、補助圧力(例えば、外部圧縮機)の必要性がなくなるか又は軽減され、循環するヘリウム混合物のフローインピーダンスを低下させることができる。これは、より小型の(すなわち、より低出力の)パルス管又は他のクライオクーラを含む、より小型の希釈冷凍機の複雑性及びサイズを低減させるのに特に有用である。
【0104】
いくつかの実施形態では、He/He混合物は、第1熱交換器118を出た後、第5熱ステージ108eを通過し、連続型熱交換器119に入る。連続型熱交換器119は、向流熱交換器(例えば、チューブインチューブ熱交換器)、クロス向流熱交換器及び/又は並流熱交換器であり得る。連続型熱交換器119は、第5熱ステージ108eの下方に配置されている。第5熱ステージ108eは、約100~200mKの温度に冷却されるように構成された中間コールドプレート(ICP)であり得る。連続型熱交換器は、通常、分離型熱交換器よりも効率的であるが、約80mKの温度未満では効率が低下する。しかしながら、第5熱ステージ108eの下方に連続型熱交換器119を追加することにより、希釈冷凍機を冷却するプロセスの間、第5熱ステージ108eがより大きい冷却力で動作するのを可能にすることができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、He/He混合物は、連続型熱交換器119を出た後、分離型熱交換器120に入る。分離型熱交換器120は、いくつかの実施形態では、焼結ナノ粒子で形成することができる。別法として又はさらに、いくつかの実施形態では、分離型熱交換器120は、本明細書において図7A図7Dに関連して説明するように、焼結ナノワイヤで形成することができる。分離型熱交換器120は、He/He混合物を約10~20mK未満の温度までさらに冷却するように構成することができる。
【0106】
本発明者らは、さらに、ユーザが希釈冷凍機100の部品を(例えば、メンテナンスのため、希釈冷凍機100の特性を変更するため、及び/又は技術革新が開発されるに従い希釈冷凍機100をアップグレードするため)容易に取り替えることができるようにすることにより、ユーザエクスペリエンスを向上させることができることを認識及び理解した。本発明者らは、それに応じて、容易に取り外して交換される取替可能な希釈インサートを開発した。図5Aは、本明細書に記載するいくつかの実施形態による、図1の希釈冷凍機100用の取外し可能な希釈インサート540の例示的な構成要素を示す。
【0107】
いくつかの実施形態では、取外し可能な希釈インサート540は、熱ステージ108d、108e及び108fにそれぞれ取外し可能に連結された着脱式プレート540a、540b、540cを含む。図5Aの例に示すように、着脱式プレート540a、540b、540cは、機械的締結具(例えば、ボルト及び/又はねじ)を使用して取外し可能に連結することができる。いくつかの実施形態では、取外し可能な希釈インサート540は、取外し可能な希釈インサート540の交換をさらに簡略化するために、分溜器(例えば、フランジ)の上方に凝縮ライン102aへの着脱式接続部540dをさらに含む。
【0108】
図5Bは、本明細書に記載するいくつかの実施形態による、図5Aの取外し可能な希釈インサートの着脱式プレート540bの詳細な図である。着脱式プレート540bは、いくつかの実施形態では、ヘリウムが着脱式プレート540bを通って流れるのを可能にする流入口A及び流出口Bを含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、着脱式プレート540a、540b及び/又は540cは、一体型熱交換器を含むことができる。いくつかの実施形態では、一体型熱交換器は、図5Bの着脱式プレート540bを通る断面を示す図5Cの例によって示すように、着脱式プレート540a及び/又は540bに形成されたチャネル542であり得る。チャネル542は、高表面積を有するように構成することができる。ヘリウムが着脱式プレート540a及び/又は540bのチャネル542を通って流れるのを可能にすることにより、ヘリウムの冷却速度を上昇させることができる。いくつかの実施形態では、チャネル542は、機械加工、溶接により、且つ/又は付加製造技法(例えば、3次元印刷技法)により、形成することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、一体型熱交換器は、着脱式プレート540cに形成された高表面積材料構造であってもよい。例えば、一体型熱交換器は、図5Dの例に示すように、格子構造であってもよい。格子構造は、非限定的な例として、約400μm~約1000μmの範囲の周期性を有する正方格子構造であり得る。例えば、格子構造は、約600μmの周期性を有することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、格子構造は、付加製造技法(例えば、3次元印刷技法)を使用して製造することができる。格子構造は、一体型熱交換器を通過するヘリウム混合物と接触する材料の表面積を増加させ、それにより熱交換を改善するように、粗い表面テクスチャを有するように製造することができる。いくつかの実施形態では、格子構造は金属で形成することができる。非限定的な例として、格子構造は、銅、銀及び/又はアルミニウムで形成してもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、希釈インサート540は、図1の希釈冷凍機100に関連して説明したように、1つ又は複数の熱交換器を含むことができる。図5Eは、本明細書に記載するいくつかの実施形態による、連続型熱交換器119及び分離型熱交換器120の例示的な実施態様を示す。図5Eに示すように、ヘリウムは、第5熱ステージ108eに結合された着脱式プレート540bから連続型熱交換器119に流れ込み、続いて分離型熱交換器120及び着脱式プレート540cに流れ込む。
【0113】
極低温冷却器の冷凍サイクルは、通常、システム全体の熱の流れを制御する方法を使用する。この制御は、システム内の構成要素間を熱的に接続するか又は接続を切る、超伝導体、ガスギャップ又は他の機構(すなわち、ヒートスイッチ)を用いて達成することができる。1つの一般的なタイプのヒートスイッチであるガスギャップは、通常、2つの高表面積の物体を含み、それらの間に、ガスで充填される小さい間隙がある。システムがある一定の温度未満になると、導電性ガスがヒートスイッチの表面積に吸着し、真空を引き起こして、表面間の熱伝達を低減させる。別の一般的なタイプのヒートスイッチは超伝導スイッチであり、そこでは、材料が、超伝導転移を通過して熱伝導率を低下させる。
【0114】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機100は、希釈冷凍機100の熱ステージ間に複合ガスギャップ及び/又は超伝導ヒートスイッチをさらに含むことができる。図5Eの例は、熱ステージ108eと熱ステージ108fとの間に熱的に連結された、こうした複合ガスギャップ及び超伝導ヒートスイッチ550を示す。複合ガスギャップ及び超伝導ヒートスイッチ550は、熱的に連結される熱ステージの目標温度よりも高い温度で超伝導になる超伝導材料(例えば、アルミニウム、チタン)と、熱ステージ間の断熱を促進するガスギャップヒートスイッチとの両方を含む。
【0115】
図1に戻ると、He/He混合物は、分離型熱交換器120を出た後、第6熱ステージ108fを通過し、混合室122に入る。混合室122では、He原子を濃厚相から希薄相に圧送する(すなわち、Heと混合する)ことができる。この混合により、Heは濃厚相から希薄相への相転移を通過する際に冷却され、この吸熱相転移により、希釈冷凍機100の最終冷却力が得られる。
【0116】
いくつかの実施形態では、混合室122に、試験容積124(例えば、試料ステージ又はプレート)を熱的に連結し、これを、試料及び/又は量子デバイスを支持するように構成することができる。試験容積124が混合室122に熱的に連結されているため、試料及び/又は量子デバイスは、混合室の温度又はその近くで保持することができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、希釈冷凍機100が運転中でないとき、真空チャンバ106の開口部及びドア125を通して、ユーザは試験容積124にアクセスすることができる。ドア125は、いくつかの実施形態では、(例えば、機械的締結具で固定された)取外し可能なパネルであってもよく、又は、(例えば、本明細書の図10Aの例に示すように)締付ハンドルを使用してユーザが開くことができるヒンジ式ドアであってもよい。
【0118】
図1の例に示すように、希釈冷凍機100のいくつかの構成要素は、熱ステージに熱的に連結し、熱ステージの片側(例えば、上又は下側)に配置することができる。例えば、分溜器114は、第4熱ステージ108dの下面に配置されているように示す。本明細書に記載する技術の態様はこの点で限定されないため、いくつかの実施形態では、こうした構成要素は、関連する熱ステージのいずれの側に配置してもよいことが理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態では、分溜器114は、第4熱ステージ108dの上面に配置してもよい。別の例として、いくつかの実施形態では、ヘリウム洗浄装置110は、第1熱ステージ108aの下面に配置してもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、He/He混合物は、希薄相に入った後、混合室122から出て、希釈冷凍機100を通って戻り、戻りライン102bを通って外側真空チャンバ106から出るように圧送することができる。低温及び低圧では、Heは厚く可動性のあるフィルムを形成し、このフィルムは、重力に逆らう方向への移動を含む、表面を横切る長距離移動を行うことができる。このヘリウムのはい上がりの結果、Heが希釈冷凍システムの望ましくない(例えば、断熱領域間の間隙をまたぐ)部分に入り込む可能性がある。図6A~6Fは、本明細書に記載するいくつかの実施形態による、例えば混合室122及び/又は分溜器114の出口に実装することができる、例示的なHe分離装置の概略図である。
【0120】
図6Aは、いくつかの実施形態における、希薄相ヘリウム混合物(例えば、He/He混合物)の浴602を含む冷却ステージ600(例えば、分溜器、混合室等)を示す。バリア606がヘリウムのはい上がりを防止しない限り、Heは、出口パイプ(例えば、分溜器圧送出口パイプ、混合室出口パイプ)内にはい上がり、冷却ステージ600から出る可能性がある。図6Aの例では、バリア606は、ヘリウムが低圧圧送出口を通って冷却ステージ600から出るのを防止するように構成された、直角表面における鋭利な縁部を含む。
【0121】
図6B図6D及び図6Eの例に、Heのはい上がりを防止するように構成されたバリアの他の実施形態を示す。図6Bの例では、ナイフエッジ609を有するリング608が、HeがHe出口から出るのを防止するように構成されている。いくつかの実施形態では、リング608は、はい上がるHeが超流動相から離脱するようにし、それによりはい上がりを軽減するように構成された、加熱装置(例えば、抵抗加熱器又は他の任意の好適な加熱器)を含むことができる。
【0122】
図6C図6D及び図6Eの例では、HeがHe出口から出るのを防止するために、垂直ナイフエッジが使用されている。いくつかの実施形態では、図6Cの例において、ナイフエッジ610は、出口パイプの外周にある。別法として、図6Dの例に示すように、出口パイプの内周にナイフエッジ611を面取りしてもよい。さらに、図6Eの例に示すように、出口パイプの外周及び内周の両方にナイフエッジ612を面取りしてもよい。
【0123】
いくつかの実施形態では、図6Fの例に示すように、He出口は、Pトラップ621を含むことができ、Pトラップ621は、He622をPトラップ621の下面に収集するように構成されている。He出口は、通常の又は超流動HeがPトラップ621から出るのを可能にするように構成された通常のリーク又はスーパーリーク624を含むことができ、ポンプ626(例えば、ファウンテンポンプ)が、HeをPトラップ621から離れる方向に輸送することができる。いくつかの実施形態では、出口パイプの内面にさらなるバリア627が存在してもよい。例えば、バリア627は、リングとして構成してもよい。いくつかの実施形態では、バリア627は、Heが出口から出るのをさらに防止するための加熱装置を含むことができる。
【0124】
本発明者らは、ナノ材料が、典型的な分離型熱交換器に使用される従来の焼結金属粉末(例えば、銀及び/又は銅粉末)と比較して利点を提供できることを認識及び理解した。したがって、本発明者らは、ナノ材料の大きい表面積、高い機械的接触強度、及びナノワイヤ間の良好なネック成長により、効率的な熱交換を提供するナノ材料熱交換器を開発した。
【0125】
典型的な分離型熱交換器は、一般的に、焼結金属粉末(例えば、銀及び/又は銅粉末)から作製される。図7Aにこうした焼結微粒子の一例を示す。しかしながら、サブケルビン温度で効率的な熱交換を行うためには、熱交換器材料に関して多くの要素が正確でなければならない。熱交換材料は、大きい表面積を有し、液体ヘリウムと熱交換材料との間に高い機械的且つ/又は熱的接触を提供し、良好なネック成長を可能にし、液体ヘリウムが熱交換器を通って移動するための空間を熱交換材料内部に提供するべきである。
【0126】
図7Bは、熱交換器で使用されるナノワイヤを含むナノ材料の画像を示す。図7Cは、熱交換器で使用されるナノクラスタを含むナノ材料の画像を示す。図7Dは、本明細書に記載するいくつかの実施形態による、熱交換器で使用されるナノペレット形状の異なる例を含むナノ材料の画像を示す。これらのナノ材料は、希釈冷凍機100において、分離型熱交換器120内及び/又は(例えば、混合室122中に存在する)ブロック熱交換器内で実装することができる。図7B図7Dは、ナノ材料の形状の例を示すが、分離型熱交換器で使用されるナノ材料の実施形態は、そのように限定されないことが理解されるべきである。例えば、ナノ材料は、別法として、ナノフォーム、ナノチューブ、及び/又は他の任意の適切なナノ形状であってもよい。
【0127】
いくつかの実施形態では、こうしたナノ材料ベースの熱交換器は、焼結によってナノ材料を接合することにより形成することができる。例えば、ナノ材料は、化学的沈殿物として、且つ/又は電子堆積若しくは電気めっき技法によって形成することができる。ナノ材料を成長させるか又は付着させるために、(例えば、核生成部位を含む)粗面を有する基板を提供することができる。いくつかの実施形態では、熱交換器は、加熱及び/又は圧縮下で製造することができる。ナノ材料は、ナノワイヤ熱交換器を形成するために焼結プロセス中に圧縮状態で保持することができる。いくつかの実施形態では、基板は、巨視的構造(例えば、格子又は一連のポスト)でパターン化してもよい。いくつかの実施形態では、基板は管であってもよく、管の内面又は外面にナノ材料を付着させてもよい。いくつかの実施形態では、基板は、基板に付着するナノ材料よりも低い熱伝導率を有する材料で形成してもよい。
【0128】
いくつかの実施形態では、ナノ材料は、限定されないが、銅、銀、真空対応ポリマー、炭素及び/又は炭素繊維を含む、真空対応材料の選択肢のうちの1つから形成することができる。例えば、ナノ材料は、銅ナノワイヤ、銀ナノワイヤ、金ナノワイヤ、白金ナノワイヤ、ポリマーナノワイヤ、カーボンナノワイヤ及び/又は炭素繊維ナノワイヤのうちの少なくとも1つを含むナノワイヤであってもよい。
【0129】
II.防振の改善
サブケルビン温度で行われる多くの試験は、周囲環境と希釈冷凍機の冷却システムポンプ及び部品との両方からの振動ノイズの影響を受けやすい。さらに、サブケルビン温度では、機械的振動が熱負荷を発生させ、希釈冷凍機の冷却力を低下させるか、又は希釈冷凍機の電気入力及び/又は出力に摩擦帯電ノイズを発生させる可能性がある。本発明者らは、防振を改善することにより、希釈冷凍機の冷却力及び他の性能特性(例えば、磁束の乱れ)を改善することができることを認識及び理解した。したがって、本発明者らは、下部熱ステージ108d~108fを上部熱ステージ108a~108cから機械的に切り離すように構成された防振構成要素を開発した。
【0130】
図8Aは、本明細書に記載するいくつかの実施形態による、防振を提供するように構成された機械的要素を含む希釈冷凍機100の別の概略図を示す。防振要素は、第1懸架システム832、少なくとも1つの第2懸架システム840及び第3懸架システム834を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、第1懸架システム832は、第1熱ステージ108a、第2熱ステージ108b及び/又は第3熱ステージ108cを外側真空チャンバ106の上面から吊り下げるように構成することができる。第1懸架システム832は、第1、第2及び/又は第3熱ステージ108a~108cを外側真空チャンバ106の上面に堅固に結合するように構成された1つ又は複数のロッドを含むことができる。ロッドは、高いばね定数を有する材料で形成することができる。例えば、ロッドは、炭素繊維及び/又はステンレス鋼で形成してもよい。
【0132】
いくつかの実施形態では、第2懸架システム840は、第4熱ステージ108d、第5熱ステージ108e及び/又は第6熱ステージ108fを外側真空チャンバ106の上面から独立して吊り下げるように構成することができる。下部熱ステージ108d~108fのこの独立した懸架は、上部熱ステージ108a~108cから下部熱ステージ108d~108fに振動が伝わらないようにし、それにより下部熱ステージ108d~108fの防振を改善する。
【0133】
いくつかの実施形態では、第2懸架システム840は、1つ又は複数のばね842、ロッド843及び/又はコネクタ844を含むことができる。図8Aの例は、1つの第2懸架システム840のみを示すが、いくつかの実施形態では、複数の第2懸架システム840を使用して下部熱ステージ108d~108fを懸架してもよいことが認識されるべきである。例えば、いくつかの実施形態では、2つ、3つ又は4つのそうした第2懸架システム840があってもよい。
【0134】
いくつかの実施形態では、ばね842は、異なる荷重下で(例えば、ばね842からぶら下がる異なる減衰質量に対して)一定のばね張力を提供するように構成することができる。図8Bにばね842の一例を示す。ばね842は、いくつかの実施形態では、懸架板ばねであってもよく、剛性部分842cによって下部たわみ部842bから分離された上部たわみ部842aを含むことができる。ばね842は、上部たわみ部842a及び下部たわみ部842bのたわみによってたわみ、(例えば、希釈冷凍機100を支持する床の平面に対して垂直な)Z軸に沿って下部熱ステージ108d~108fに防振を提供することができる。いくつかの実施形態では、ばね842のばね定数は、上部たわみ部842a及び/又は下部たわみ部842bに予張力を付与することによって決定することができる。別法として又はさらに、ばね842のばね定数は、上部たわみ部842a及び/又は下部たわみ部842bの長さを変更することによって決定してもよい(例えば、たわみ部842a、842bの長さが長いほど低いばね定数を有する)。
【0135】
いくつかの実施形態では、ばね842は、ロッド843によって第3熱ステージ108dに連結することができる。ロッド843は、低いばね定数を有する軟性ロッドであってもよい。例えば、ロッド843は、いくつかの実施形態では、ポリマー(例えば、デルリン(DELRIN))から形成してもよい。ロッド843は、その軟性により、X-Y平面において(例えば、希釈冷凍機100を支持する床の平面に平行であるとともにZ軸に垂直な平面において)、下部熱ステージ108d~108fに防振を提供することができる。
【0136】
いくつかの実施形態では、コネクタ844は、第4熱ステージ108dの懸架に安定性を提供するために、三角形の構成で配置することができる。コネクタ844は、高いばね定数を有するように構成された材料から作製することができる。例えば、コネクタ844は、ステンレス鋼及び/又は炭素繊維で形成してもよい。
【0137】
いくつかの実施形態では、第3懸架システム834は、第4熱ステージ108dから第5熱ステージ108e及び第6熱ステージ108fを吊り下げるように構成することができる。このように、3つの下部熱ステージ108d~108fは、すべて、第2懸架システム840を使用して真空チャンバ106の上面から吊り下げることができる。第3懸架システム834は、第5熱ステージ108e及び/又は第6熱ステージ108fを第4熱ステージ108dに堅固に結合するように構成された1つ又は複数のロッドを含むことができる。ロッドは、高いばね定数を有する材料で形成することができる。例えば、ロッドは、いくつかの実施形態では、炭素繊維及び/又はステンレス鋼で形成してもよい。
【0138】
図8Aの例は、第1懸架システム832及び第3懸架システム834がロッドから形成されているように示すが、いくつかの実施形態では、本開示の態様はこの点で限定されないため、第1懸架システム832及び/又は第3懸架システム834は可撓性ばねから形成してもよいことを理解されるべきである。さらに、図8Aの例は、第2懸架システム840がばねから形成されているように示すが、いくつかの実施形態では、本開示の態様はこの点で限定されないため、第2懸架システム840はロッドから形成してもよいことが理解されるべきである。
【0139】
III.一体型希釈冷凍機
従来の希釈冷凍機技術では、特注の浮き基礎、高い天井及び/又はアクセス穴等、広いスペース及び高価な支持インフラストラクチャを必要とすることが多い。これらのインフラストラクチャ要件は、低温で動作する量子技術のスケーラビリティを低下させる可能性がある。非限定的な例として、いくつかの量子コンピューティング技術の採用は、大型希釈冷凍機の使用が必要であることにより制限される可能性がある。本発明者らは、希釈冷凍機のサイズ及びインフラストラクチャ要件を低減させることにより、量子技術のスケーラビリティを可能にすることができることを認識及び理解した。本発明者らはさらに、希釈冷凍機を商用コンピューティングインフラストラクチャ(例えば、商業サーバインフラストラクチャ)と一体化させることにより、希釈冷凍機、及び希釈冷凍機に依存する関連量子技術のスケーラビリティを、さらに可能にすることができることを理解した。こうした一体型希釈冷凍機は、電気通信ネットワークにより容易に組み込むことができ、既存の電気通信熱除去アーキテクチャを使用することができ、光ファイバネットワーク及びシステムと一体化することができる。
【0140】
図9は、本明細書に記載するいくつかの実施形態による、例示的な外部支持ラック950の側面図である。いくつかの実施形態では、外部支持ラック950は、希釈冷凍機100を希釈冷凍機100の下方の床から吊り下げることにより、希釈冷凍機100を支持することができる。図9の例に示すように、外部支持ラック950は、防振構成要素954によって真空チャンバ106の上面の一部に結合されて、希釈冷凍機100を床から吊り下げるアーム952を含むことができる。いくつかの実施形態では、防振構成要素954は、エアピストン、電磁ダンパ及び/又はばねであり得る。
【0141】
いくつかの実施形態では、外部支持ラック950は、希釈冷凍機100の輸送を補助するように構成されたキャスタ(図示せず)を含むことができる。キャスタは、希釈冷凍機100が輸送されていない且つ/又は運転中であるときに、キャスタの車輪が外部支持ラック950を支持する床に接触しないように、格納可能であり得る。
【0142】
いくつかの実施形態では、外部支持ラック950は、床支持体958をさらに含む。床支持体958は、希釈冷凍機100が輸送されていないときに、外部支持ラック950から延びるように構成することができる。床支持体958は、例えば、ねじを使用することにより、外部支持ラック950から延びることができる。床支持体958を使用して、外部支持ラック950を床から離して持ち上げ且つ/又は水平にし、且つ/又は外部支持ラック950のキャスタを床から持ち上げることができる。いくつかの実施形態では、床支持体958を使用して、平坦でない床面の場合に外部支持ラック950の位置決めを修正することができる。
【0143】
いくつかの実施形態では、外部支持ラック950は、希釈冷凍機100の外側真空チャンバ106の外部にある追加の構成要素を支持することができる。例えば、外部支持ラック950は、希釈冷凍機100の運転をサポートするように構成された圧縮機、ポンプ及び/又は冷却機器を収容することができる。別法として、これらの外部構成要素は、いくつかの実施形態では、希釈冷凍機100と隣接する(例えば、希釈冷凍機100とは異なる)サーバラック型コンテナ及び/又は支持ラック950に収容してもよい。
【0144】
いくつかの実施形態では、外部支持ラック950は、本明細書に記載するいくつかの実施形態による、真空チャンバ106の工具不要の組立及び/又は分解、並びに試験容積へのアクセスを提供するように構成された要素を含むことができる。図9の例に示すように、真空チャンバ106は、3つのセクション、すなわち、第1セクション106aと、第1セクション106aから吊り下げられた第2セクション106bと、第2セクション106bから吊り下げられた第3セクション106cとを含む。本明細書に記載する技術は、3つのセクションに限定されるものではなく、真空チャンバは、いくつかの実施形態では、1つ、2つ、4つ、5つ又は6つのセクションを有してもよいことが理解されるべきである。
【0145】
いくつかの実施形態では、真空チャンバ106は、1つ又は複数の実質的に平面の面を有することができる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の実質的な平面の面のうちの少なくとも1つは、希釈冷凍機を支持する床の平面に対して垂直な平面内に配置することができる。図9の例に示すように、セクション106a~106cは、各々、組み立てられたときに真空チャンバ106が直方体を形成するように配置されるように、少なくとも4つの実質的に平面の面を有することができる。いくつかの実施形態では、真空チャンバ106は、床の平面に平行な面内に配置され、セクション106a~106cの表面によって形成された直方体を閉じるように配置された、2つの実質的に平面の面を含むことができる。いくつかの実施形態では、後に説明するように、真空チャンバ106は、実質的に平面の面のうちの少なくとも1つに、ドア1070によってアクセス可能な開口部を有することができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、真空チャンバ106の3つのセクション106a~106cは、希釈冷凍機100の内部部分へのアクセスを提供するために、部分的に又は完全に取外し可能であり得る。例えば、真空チャンバ106の3つのセクション106a~106cは、いくつかの実施形態では、取外し可能なパネル(例えば、サイドパネル、フレームに取り付けられたパネル等)を含むことができる。3つのセクション106a~106cは、希釈冷凍機100のユーザが、希釈冷凍機100の上方及び下方に大きい隙間を必要とすることなく(例えば、高い天井又は希釈冷凍機100の下に穴を必要とすることなく)、希釈冷凍機100から真空チャンバ106を取り外すことができるように構成することができる。
【0147】
いくつかの実施形態では、外部支持ラック950は、希釈冷凍機100の組立、分解及び/又はメンテナンス中に真空チャンバの3つのセクション106a~106cを支持するように構成された、一体化リフト956aを含むことができる。一体化リフト956aは、真空チャンバのセクション106a~106cを上昇及び/又は下降させるように構成することができる。例えば、一体化リフト956aは、3つのセクション106a~106cの一部(例えば、フランジ)を支持するように構成されたアーム956bを上昇及び/又は下降させるように構成することができる。いくつかの実施形態では、一体化リフト956aは、(例えば、ねじ及び/又はケーブルを使用して)手動で操作することができる。いくつかの実施形態では、一体化リフト956aは、電動機械(例えば、空気圧又は液圧装置)を使用して操作することができる。
【0148】
いくつかの実施形態では、外部支持ラック950は、1つ又は複数のカート957を含むことができる。カート957は、手動で又は一体化リフト956aを使用することにより下降したときに、セクション106a~106cのうちの1つ又は複数を受けるように構成することができる。例えば、一体化リフト956aを使用して、第3セクション106cをカート957上に下降させることができる。その後、希釈冷凍機100のユーザに希釈冷凍機100の内部構成要素の下の空間を提供するために、カート957を使用して、方向Cに沿って第3セクション106cを輸送することができる。
【0149】
いくつかの実施形態では、一体化リフト956aは、外部支持ラック950に取外し可能に結合することができる。例えば、一体化リフト956aは、外部支持ラック950から摺動可能に取外し可能であり得る(例えば、方向Cに沿って外側に水平に摺動する)。一体化リフト956aの取外しは、(例えば、希釈冷凍機100のメンテナンス中に)ユーザに余分なスペースを提供するために望まれる場合がある。
【0150】
いくつかの実施形態では、真空チャンバ106の3つのセクション106a~106cは、一体化クランプ及び/又はカムによって互いから吊り下げることができる。こうした一体化クランプ及び/又はカムは、ユーザが、いかなる追加の工具も使用することなく、3つのセクション106a~106cのうちの2つのセクションを合わせて緩めるか又は締め付けるのを可能にするように構成することができる。図10A図10Cは、一体化カム1060の一例を示し、図10Bは、開位置にある一体化カム1060を示し、図10Cは、閉位置にある一体化カム1060を示す。
【0151】
いくつかの実施形態では、一体化カム1060は、ユーザが3つのセクション106a~106cのうちの2つのセクションを合わせて締め付けるか又は離れるように緩めるのを可能にする、ハンドル1062を含む。ハンドル1062は、バー1066に接続するように構成されている2つのラッチ1064に連結されている。ハンドル1062及びラッチ1064は、カム1068によって真空チャンバ106の一セクションにヒンジ式に連結されており、カム1068は、締付動作及び緩め動作を行う必要な可動範囲を提供する。
【0152】
いくつかの実施形態では、真空チャンバ106の3つのセクション106a~106c間の接続点に圧縮層を含めて、適切な真空安全シールを確保することができる。例えば、セクション106a~106c間に、ゴムOリング、銅又はインジウムガスケット、又は他の真空安全圧縮層を配置することができる。
【0153】
図10Aに戻ると、いくつかの実施形態では、真空チャンバ106は、希釈冷凍機100内の内部容積へのアクセスを提供する外部開口部を含むことができる。例えば、開口部は、希釈冷凍機100の試料ステージ若しくは試験容積、又は希釈冷凍機100の他の任意の内部部分へのアクセスを提供することができる。いくつかの実施形態では、開口部は密閉シールによって封止することができる。いくつかの実施形態では、開口部は、図10Aの例に示すように、ドア1070によって封止してもよい。ドア1070は、例えば手動で係合及び係合解除することができるヒンジ及び/又はクランプを使用して、封止することができる。いくつかの実施形態では、ロードロックによって、開口部にドア1070を連結してもよい。
【0154】
いくつかの実施形態では、ドア1070は、希釈冷凍機100の(熱ステージ108a~108fのうちの1つ又は複数に熱的に連結することができる)内側輻射シールド(図示せず)のすべてを通してアクセスを提供して、ユーザが試験容積にアクセスすることができるようにすることができる。例えば、ユーザがドア1070を開けると内側輻射シールドが摺動するか又は他の方法で移動してユーザに希釈冷凍機の内部部分へのアクセスを提供するように、内側輻射シールド(図示せず)の一部をドア1070に連結してもよい。いくつかの実施形態では、内側輻射シールドの一部は、ドア1070を通して取外し可能であり、且つ/又はドア1070を通して摺動可能であってもよい。
【0155】
いくつかの実施形態では、外部支持ラック950は、サーバラック型コンテナと一体化されるように構成することができる。例えば、外部支持ラック950は、希釈冷凍機100を市販のサーバラックインフラストラクチャ(例えば、サーバラック)と一体化するように構成してもよい。いくつかの実施形態では、外部支持ラック950は、希釈冷凍機100を19インチ(48.26センチメートル)サーバラックと一体化するように構成してもよい。
【0156】
いくつかの実施形態では、外部支持ラック950及び希釈冷凍機100は、外側ハウジング内に収容することができる。図11に、外側ハウジング1100の一例を示す。いくつかの実施形態では、外側ハウジング1100は、一体化水平面1110を含むことができる。例えば、一体化水平面1110は、ユーザが希釈冷凍機とインタラクトするときにデスク又は支持面として使用することができる。一体化水平面1110は、使用されていないとき(図11の例に示すように)折り畳むか又はスライドさせることにより、収納されるように構成することができる。いくつかの実施形態では、外側ハウジング1100は、希釈冷凍機100のメンテナンスのための関連部品及び/又は工具を収納するための1つ又は複数の収納場所(例えば、引出し、棚)をさらに含むことができる。
【0157】
いくつかの実施形態では、外側ハウジング1100は、開口部1120を通して希釈冷凍機100の試験容積へのアクセスを提供するドア1125をさらに含むことができる。例えば、ドア1125は、開いて、真空チャンバ106、及び真空チャンバ106の内部の輻射シールドを通して、試験容積へのアクセスを提供することができる。いくつかの実施形態では、真空チャンバ外装及び/又は輻射シールドをドア1125に連結して、ユーザが、ドア1125を開けたときに真空チャンバ外装106及び/又は輻射シールドを開けるようにしてもよい。いくつかの実施形態では、輻射シールドは、別法として、ユーザが、必要に応じて試験容積へのアクセスを妨げなくなるように輻射シールドを移動させることができるように、摺動可能に且つ/又はヒンジ式に移動可能であってもよい。
【0158】
いくつかの実施形態では、ハウジング1100は、消音を行うようにさらに構成することができる。例えば、ハウジング1100は、受動的消音を行うための消音材を含むことができる。別法として又はさらに、ハウジング1100は、システムの機能的構成要素によって発生する音の相殺的干渉の放出を通じて能動的消音を提供するように構成された、オーディオ機器(例えば、スピーカ)を含んでもよい。
【0159】
IV.反転型希釈冷凍機
従来、希釈冷凍機は、温度が高い方の熱ステージがシステムの上部に向かって位置決めされ、He/He混合物が希釈冷凍機の底部に進むに従って熱ステージが徐々に低温になるように向けられている。本発明者らは、最も低温のステージがシステムの最上部(例えば、床から最も遠く)に配置される反転した形状が、試験容積をユーザがよりアクセスしやすくすることにより希釈冷凍機の操作及び使用を簡素化し、従来の希釈冷凍機と比較して熱力学的品質の改善を提供することができることを認識及び理解した。したがって、本発明者らは、反転型乾式希釈冷凍機を開発した。
【0160】
図12Aは、本明細書に記載するいくつかの実施形態による、反転型希釈冷凍機1200の概略図である。反転型希釈冷凍機1200は、希釈冷凍機1200を通してHe/He混合物を循環させるように構成されたポンプシステム1202を含むことができる。反転型希釈冷凍機1200は、クライオクーラ1204も含むことができる。クライオクーラは、本明細書においてクライオクーラ支持体103に関連して記載説明したように、クライオクーラ支持体(図示せず)に連結することができる。
【0161】
いくつかの実施形態では、反転型希釈冷凍機1200は、外側真空チャンバ1206と、外側真空チャンバ1206の内部に配置された一連の熱ステージ1208a~1208fとを含むことができる。一連の熱ステージ1208a~1208fは、本明細書において図1に関連して説明した熱ステージ108a~108fと同じか又は同様の温度で保持することができる。
【0162】
いくつかの実施形態では、反転型希釈冷凍機1200は、反転型希釈冷凍機1200の最も低温のステージへのアクセスを容易にするために、外側真空チャンバ1206内の且つ/又は内側輻射シールドを貫通する開口部を含むことができる。いくつかの実施形態では、開口部は、密閉シール、及び/又は反転型希釈冷凍機1200が運転中であるときに外側真空チャンバ内の真空に耐えることができる開口機構1225を含むことができる。例えば、開口機構1225は、ヒンジ式ドア及び/又は取外し可能なパネルを含むことができる。
【0163】
いくつかの実施形態では、反転型希釈冷凍機1200は、希釈冷凍機の長さに沿って(例えば、真空チャンバ1206内から第6熱ステージ1208f内まで)配置された、複数の構成要素を含むことができる。それらの構成要素は、最も低温の熱ステージである混合室1222が、より温度の高い熱ステージ(例えば、分溜器1214、インピーダンスステージ1212及び1216、熱交換器1218、1219、1220等)の上方に配置されるように配置することができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、反転型希釈冷凍機1200は、混合室1222に連結された脱混合室1224を含む。いくつかの実施形態では、脱混合室1224は、熱交換器1223(例えば、並流熱交換器)によって混合室1222に熱的に連結してもよい。脱混合室1224は、Heを脱混合室1224から混合室1222に輸送して、混合室1222に追加の冷却を提供するように、混合室1222に流体的に接続することができる。脱混合室1224は、さらに、分溜器1214と混合室1222との間に形成される濃度勾配を緩和するために、Heが脱混合室1224に注入されるようにしてHeとHeの並流を提供することができる。
【0165】
図12B及び図12Cは、本明細書に記載するいくつかの実施形態による、反転型希釈冷凍機の例示的な内部構成要素の概略図である。図12B及び図12Cの例示的な構成要素は、図12Aの反転型希釈冷凍機1200内(例えば、第3熱ステージ1208c内)で実装することができることが理解されるべきである。
【0166】
図12Bの例に示すように、いくつかの実施形態では、反転型希釈冷凍機は、Heを分溜器1214から脱混合室1224に輸送するように構成されたHeライン1226を含むことができる。いくつかの実施形態では、Heライン1226は、Heの脱混合室1224への輸送を補助するように構成されたポンプ1228を含むことができる。ポンプ1228は、いくつかの実施形態では、例えば、ファウンテンポンプであってもよい。別法として又はさらに、Heライン1226は、脱混合室1224に移動する際のHeを冷却するための追加の熱交換器を含むことができる。
【0167】
図12Cの例に示すように、いくつかの実施形態では、反転型希釈冷凍機は、一次インピーダンスステージ1212の前に、流入するHe/He混合物を冷却するように構成された熱交換ステージ1230を含むことができる。図1の説明から理解されるはずであるように、こうした構成は、第1インピーダンスステージの効率を向上させ、且つ/又は流入するHe/He混合物の加圧の必要性をなくすか又は低減させることができる。
【0168】
V.分散型冷却
希釈冷凍機は、一般に、He/He混合ガスを5K未満に予備冷却するための一体型クライオクーラ(例えば、パルスチューブ又はギフォード-マクマホン(Gifford-McMahon)型クライオクーラ等)を含む。従来、1つの希釈冷凍機は、これらのクライオクーラのうちの少なくとも1つと対になっており、希釈冷凍機は、冷却システムを共有しない。こうした小規模の希釈冷凍システムは、通常、より大規模でより高出力の極低温冷却システムと比べて比較的非効率的である(例えば、4Kでの冷却力1ワット当たりにより多くの電力を必要とする)低出力の極低温冷却システムに依拠している。本発明者らは、単一の高効率冷却システムを希釈冷凍機等の複数の極低温システムに熱的に連結して、この第1ステージの冷却を複数の極低温システムに分散させることができることを認識及び理解した。したがって、こうした分散型冷却により、複数の極低温システムにわたって冷却効率を向上させることができる。
【0169】
図13は、本明細書に記載するいくつかの実施形態による、分散型冷却システム1300の概略図である。分散型冷却システム1300は、複数のハウジング1305を含むことができる。いくつかの実施形態では、ハウジング1305は、サーバラック型コンテナ(例えば、市販のサーバラックインフラストラクチャ、19インチ(48.26センチメートル)サーバラック)であり得る。
【0170】
図13の例に示すように、各ハウジング1305は、冷却システム1310又は極低温装置1320を含むことができる。いくつかの実施形態では、極低温装置1320及び/又は冷却システム1310は、ハウジング1305内でグループ化することができることが理解されるべきである。図13は、冷却システム1310に連結された3つの極低温装置1320を示すが、いくつかの実施形態では、本開示の態様はそのように限定されないため、冷却システム1310に連結された2つ、4つ、10、又は何十もの極低温装置1320があり得ることがさらに理解されるべきである。
【0171】
いくつかの実施形態では、冷却システム1310は、極低温装置1320の第1ステージを少なくとも5Kの温度まで且つ/又は約4~5Kの温度まで冷却するように構成された極低温冷却システムであり得る。いくつかの実施形態では、冷却システム1310は、パルス管であり得る。例えば、冷却システム1310は、パルス管、ヘリウム液化システム及び/又はブレイトン(Brayton)クライオクーラであり得る。
【0172】
いくつかの実施形態では、冷却システム1310は、複数の極低温装置1320に熱的に連結することができる。冷却は、冷却ライン1312によって冷却システム1310から極低温装置1320に分散させることができる。さらに、熱は、戻りライン1314によって極低温装置1320から冷却システムに戻すことができる。冷却ライン1312及び/又は戻りライン1314は、液体及び/又は気体ヘリウムを移送するように構成されたラインであり得る。例えば、冷却ライン1312及び/又は戻りライン1314は、輸送されるヘリウムの温度を維持するために真空断熱されたパイプであってもよい。いくつかの実施形態では、冷却ライン1312及び/又は戻りライン1314は、充填ライン、ヒートパイプ(例えば、従来のヒートパイプ及び/又は自励振動型ヒートパイプ)、及び/又は超流動ループであってもよい。
【0173】
いくつかの実施形態では、極低温装置1320は、5K以下の温度に達するように構成された任意の好適な冷凍システムを含むことができる。いくつかの実施形態では、極低温装置1320は、1つ又は複数の希釈冷凍機(例えば、1K未満の温度に達するように構成された、本明細書に記載する希釈冷凍機100)を含むことができる。別法として又はさらに、極低温装置1320は、希釈冷凍機以外の極低温システム(例えば、走査型トンネル顕微鏡又は原子間力顕微鏡システム等の顕微鏡システム、He冷凍システム、超伝導CMOSシステム等)を含んでもよいことが理解されるべきである。
【0174】
図14に示す実施形態では、コンピュータ1400は、1つ又は複数のプロセッサを有する処理装置1401と、例えば揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリを含むことができる非一時的コンピュータ可読記憶媒体1402とを含む。メモリ1402は、本明細書に記載する機能のうちの任意のものを実行するように処理装置1401をプログラムする、1つ又は複数の命令を格納することができる。コンピュータ1400は、システムメモリ1402に加えて、記憶装置1405(例えば、1つ又は複数のディスクドライブ)等の他のタイプの非一時的コンピュータ可読媒体も含むことができる。記憶装置1405は、メモリ1402にロードすることができる、1つ又は複数のアプリケーションプログラム及び/又はアプリケーションプログラムによって使用されるリソース(例えば、ソフトウェアライブラリ)も格納することができる。
【0175】
コンピュータ1400は、図14に示すデバイス1406及び1407等、1つ又は複数の入力デバイス及び/又は出力デバイスを有することができる。これらのデバイスは、とりわけ、ユーザインタフェースを提示するために使用することができる。ユーザインタフェースを提供するために使用することができる出力デバイスの例としては、出力を視覚的に提示するためのプリンタ又は表示画面、及び出力を可聴的に提示するためのスピーカ又は他の音声発生デバイスが挙げられる。ユーザインタフェースに使用することができる入力デバイスの例としては、キーボード、並びにマウス、タッチパッド及びデジタイジングタブレット等のポインティングデバイスが挙げられる。別の例として、入力デバイス1407は、オーディオ信号を取り込むマイクロフォンを含むことができ、出力デバイス1406は、認識されたテキストを視覚的にレンダリングする表示画面、及び/又は可聴的にレンダリングするスピーカを含むことができる。
【0176】
図14に示すように、コンピュータ1400は、さまざまなネットワーク(例えば、ネットワーク1420)を介する通信を可能にするために、1つ又は複数のネットワークインタフェース(例えば、ネットワークインタフェース1410)も備えることもできる。ネットワークの例としては、エンタープライズネットワーク又はインターネット等、ローカルエリアネットワーク又は広域ネットワークが挙げられる。こうしたネットワークは、任意の好適な技術に基づくことができ、任意の適切なプロトコルに従って動作することができ、無線ネットワーク、有線ネットワーク、又は光ファイバネットワークを含むことができる。こうしたネットワークは、アナログネットワーク及び/又はデジタルネットワークを含むことができる。
【0177】
上述した実施形態のさまざまな態様は、単独で、組み合わせて、又は前述したものに記載した実施形態で具体的に考察しなかった種々の配置で、使用することができ、したがって、前述した説明に記載したか又は図面に図示した構成要素の詳細及び配置への適用において限定されない。例えば、1つの実施形態に記載する態様は、他の実施形態に記載する態様と任意の方法で組み合わせることができる。
【0178】
本明細書で定義及び使用するすべての定義は、辞書の定義、参照により援用される文書における定義、及び/又は定義された用語の通常の意味よりも優先されると理解されるべきである。
【0179】
本明細書及び特許請求の範囲で使用する「一、ある(a、an)」という不定冠詞は、反対の意味での明確な指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0180】
本明細書及び特許請求の範囲において使用する「及び/又は」という句は、そのように結合された要素の「いずれか一方又は両方」、すなわち、ある場合には連言的に存在し、他の場合には選言的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「及び/又は」とともに列挙する複数の要素も、同様に、すなわち、そのように結合された要素のうちの「1つ又は複数」を意味すると解釈されるべきである。「及び/又は」節によって具体的に特定された要素以外の他の要素は、具体的に特定された要素に関連するか否かにかかわらず、任意選択的に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」に対する言及は、「備える、含む(comprising)」等の非限定的な(open-ended)文言と組み合わせて使用される場合、1つの実施形態では、Aのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、Bのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、A及びBの両方(任意選択的に他の要素を含む)等を指すことができる。
【0181】
本明細書及び特許請求の範囲において使用する場合の、1つ又は複数の要素のリストに関する「少なくとも1つ」という句は、要素のリストにおける要素のうちの任意の1つ又は複数のから選択されるが、要素のリストにおいて具体的に列挙されたありとあらゆる要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含む必要はなく、要素のリストにおける要素の任意の組合せを除外するものではない、少なくとも1つの要素を意味するように理解されるべきである。この定義は、「少なくとも1つ」という句が指す要素のリスト内で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定された要素に関連するか否かにかかわらず、任意選択的に存在し得ることも考慮する。したがって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は、等価的に、「A又はBのうちの少なくとも1つ」、又は、等価的に、「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態では、Bが存在しない(任意選択的にB以外の要素を含む)、任意選択的に2つ以上を含む、少なくとも1つのA、別の実施形態では、Aが存在しない(任意選択的にA以外の要素を含む)、任意選択的に2つ以上を含む、少なくとも1つのB、さらに別の実施形態では、任意選択的に2つ以上を含む、少なくとも1つのA、及び任意選択的に2つ以上を含む、少なくとも1つのB(任意選択的に他の要素を含む)等を指すことができる。
【0182】
特許請求の範囲において、請求項要素を修飾する「第1」、「第2」、「第3」等の順序を示す用語を使用することは、それ自体、1つの請求項要素の別の請求項要素に対するいかなる優先順位、優先度若しくは順序、又は方法の行為が実行される時間的順序も意味するものではなく、それらの用語は、単に、ある名称を有する1つの請求項要素を、(順序を示す用語を使用するが)同一の名称を有する別の請求項要素から識別して、それらの請求項要素を識別するための標識として使用される。
【0183】
特許請求の範囲において、同様に上記明細書において、「備える」、「含む」、「運ぶ」、「有する」、「収容する」、「含む」、「保持する」、「からなる」等のすべての移行句は、非限定的である、すなわち、含むが限定されない、を意味するように理解されるべきである。「~からなる」、「~から本質的になる」という移行句のみが、それぞれ限定的(closed)又は半限定的(semi-closed)移行句であるものとする。
【0184】
「ほぼ」、「約」及び「実質的に」という用語は、いくつかの実施形態では目標値の±20%以内、いくつかの実施形態では目標値の±10%以内、いくつかの実施形態では目標値の±5%以内、いくつかの実施形態では目標値の±2%以内を意味するために使用することができる。「ほぼ」、「約」及び「実質的に」という用語は、目標値を含んでもよい。
【0185】
このように少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様について説明したが、当業者にはさまざまな改変、変更及び改良が容易に想到されることが理解されるべきである。こうした改変、変更及び改良は、本開示の一部であるように意図され、本明細書に記載する原理の趣旨及び範囲内であるように意図されている。したがって、前述の説明及び図面は、単に例示としてのものである。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14
【国際調査報告】