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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】皮膚保湿用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/55 20060101AFI20240628BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 8/72 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61K8/55
A61K8/34
A61K8/72
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501149
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 US2022036653
(87)【国際公開番号】W WO2023287690
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/220,888
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516011671
【氏名又は名称】オキュソフト インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】OCuSOFT,Inc.
【住所又は居所原語表記】30444 SW Freeway Rosenberg TEXAS 77471 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】サルカール、パラミタ
(72)【発明者】
【氏名】スミス、トロイ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC171
4C083AC441
4C083AD011
4C083AD041
4C083AD211
4C083AD331
4C083AD571
4C083AD572
4C083AD621
4C083AD641
4C083AD661
4C083BB04
4C083BB60
4C083DD08
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083DD41
4C083DD45
(57)【要約】
(a)1つ以上のリン脂質;(b)複数の粘滑剤;(c)1つ以上のポリマー保湿剤;(d)1つ以上の保存剤;(e)1つ以上のビタミン;および(f)水性ビヒクルを含む、局所皮膚保湿用組成物。保湿用組成物は、80mOsm/kg~500mOsm/kgの範囲の浸透圧を有することができる。組成物は、顔に使用するために、特に、眼瞼を含む繊細な眼の領域の上および周囲に適用するために構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚保湿用組成物であって:
0.01%~10%のホスファチジルコリンと、プロピレングリコールとグリセロールとの混合物と、ポリマー保湿剤と、精製水と、
を含む組成物。
【請求項2】
0.1%~5%w/wのホスファチジルコリンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
0%~5%w/wのプロピレングリコールおよび0%~5%w/wのグリセロールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマー保湿剤が、ヒアルロン酸ナトリウム、シロキクラゲ多糖およびポリエチレングリコール(PEG)-400から本質的になる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
0.005%~10%w/wの前記ポリマー保湿剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ビタミンの混合物をさらに含み、前記ビタミンが、ビタミンAおよびその誘導体、ビタミンCおよびその誘導体、ビタミンEおよびその誘導体ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
0.001%~1.5%w/wのビタミンA、0.001%~1.5%w/wのビタミンCおよび0.005%~1.5%w/wのビタミンEを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
0.05%~2%w/wの保存剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記保存剤がフェノキシエタノールである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
非イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
0.05%~10%w/wのポリソルベート20をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
60%~98%w/wの精製水を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、複数のリポソームに封入されているか、または複数のリポソームで分散されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、80mOsm/kg~500mOsm/kgの範囲の浸透圧および4.0~7.0の範囲のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、液体、スプレー、ミスト、ゲル、クリームまたはローションの形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が皮膚に対して非刺激性であり、眼組織に対して非毒性であるように構成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
皮膚保湿用キットであって:
スプレーボトルと;
請求項1に記載の組成物と、
を含み、前記スプレーボトルが前記組成物を保持するように構成されている、皮膚保湿用キット。
【請求項18】
前記スプレーボトルが、1回の噴霧につき160μL以下の用量を分配するように構成されている、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
皮膚保湿用キットであって:
ワイプと;
請求項1に記載の組成物と、
を含み、前記ワイプが前記組成物で予め湿らされている、キット。
【請求項20】
皮膚を保湿する方法であって:
請求項1に記載の組成物を提供するステップであって、前記組成物がリポソーム担体中に封入されている/リポソーム担体で分散されている、ステップと、
所望の量の前記組成物を、それを必要とする皮膚に局所的に適用するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、皮膚、具体的には顔、眼瞼および眼領域のための保湿用組成物、ならびにそのような組成物を調製および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外皮系は、ヒトの身体の最も外側の層を形成する器官の集合である。外皮系は、皮膚およびその付属体を含む。皮膚は、外部環境と内部環境との間の物理的障壁として作用し、保護および維持する役割を果たす。皮膚はまた、水分バランスを維持し、より深部の組織を保護し、体温を調節し、疼痛、感覚、圧力、および温度を検出する働きをする。一般に、皮膚は身体の平衡を維持するのを助ける。
【0003】
眼/眼領域の周囲の皮膚は、身体の他の部分の皮膚よりも薄く、身体の他の部分の皮膚ではクッションとなる脂肪を欠いているため、独特である。それは水分を容易に保持することができず、非常に乾燥しやすい。処置されないままの皮膚の乾燥は、不快感、刺激、炎症、およびかゆみをもたらし得る。皮膚の乾燥はまた、弾力性にも影響を与え、早期老化やシワの原因となる。
【0004】
加えて、眼領域は刺激物に対して非常に脆弱である。これらの刺激物としては、限定されるものではないが、環境の不均衡および生理学的状態が挙げられる。このような刺激物は、眼領域における皮膚乾燥によって引き起こされる不快感および刺激を悪化させ得る。
【0005】
乾燥し刺激を受けた皮膚は保湿剤で処置される。保湿剤は、極端な乾燥が生じる機会を減少させることができ、皮膚の不快感および刺激に対抗することができる。多くの場合、保湿剤は、眼領域への適用に適さない成分および化学物質を含有する。例えば、ヒドロコルチゾンクリームは、顔を含む皮膚の刺激を治療するために使用することができる。しかしながら、ヒドロコルチゾンクリームは一般に、眼瞼または眼領域に使用するには刺激が強すぎる。したがって、この感受性が、乾燥肌、不快感、炎症を和らげる一方で眼領域に適用するのに十分なマイルドさを有する、主要成分の即効性かつ鎮静作用を有する送達を見出すことを困難にしている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、皮膚保湿用組成物(skin moisturizing composition)は、ホスファチジルコリンと、プロピレングリコールとグリセロールとの混合物と、ポリマー保湿剤と、精製水とを含む。組成物は、複数のリポソームに封入することができる。ポリマー保湿剤は、本質的にヒアルロン酸ナトリウムからなる。組成物は、ビタミンの混合物をさらに含み、同ビタミンは、ビタミンAおよびその誘導体、ビタミンCおよびその誘導体、ビタミンEおよびその誘導体ならびにそれらの混合物からなる群より選択される。組成物は、0.001~5.0%w/wの保存剤、例えば2-フェノキシエタノールをさらに含む。組成物は、ポリソルベート20などの非イオン性界面活性剤をさらに含む。組成物は、皮膚に対して非刺激性であり、かつ眼組織に対して非毒性であるように構成される。
【0007】
一実施形態によれば、皮膚保湿用組成物は:0.01%~10%w/wのホスファチジルコリン;0%~5%w/wのプロピレングリコールおよび0%~5%w/wのグリセロール;0.005%~10%w/wのポリマー保湿剤;0.001%~1.5%w/wのビタミンA、0.001%~1.5%w/wのビタミンCおよび0.005%~1.5%w/wのビタミンE;0.05%~10%w/wのポリソルベート20および60%~98%w/wの精製水、を含む。組成物は、80mOsm/kg~500mOsm/kgの範囲の浸透圧および4.0~7.0の範囲のpHを有する。
【0008】
組成物は、液体、スプレー、ミスト、ゲル、クリームまたはローションの形態である。1つ以上の実施形態において、組成物はリポソームスプレーであり、同リポソームスプレーは組成物を封入するリポソーム担体を含む。あるいは、組成物をリポソームで分散させることができる(dispersed with liposomes)。
【0009】
別の実施形態において、皮膚保湿用キットはスプレーボトルを含み、スプレーボトルは、ホスファチジルコリン;プロピレングリコールとグリセロールとの混合物;ポリマー保湿剤;および精製水を含む組成物を含む。スプレーボトルは、リポソームスプレーとして組成物を分配する(dispenses)。1つ以上の実施形態において、1回の噴霧につき、160μL以下の用量が分配される。
【0010】
別の実施形態によれば、皮膚を保湿するための方法は、ホスファチジルコリン;プロピレングリコールとグリセロールとの混合物;ポリマー保湿剤;および精製水を含む組成物を提供することを含む。組成物は、リポソーム担体中に封入されるか、またはリポソーム担体で分散させる。所望量の組成物を、それを必要とする皮膚に局所的に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用される「発明」、「本発明(present invention)」、「本発明(instant invension)」という用語および語句、ならびに同様の用語および語句は、非限定的であり、本願の主題を任意の単一の実施形態に限定することを意図するものではなく、むしろ、記載される全ての可能な実施形態を包含する。
【0012】
本明細書において使用される場合、全ての重量百分率(wt.%)は、特に明記しない限り、スキンケア組成物の総重量%に基づく。加えて、全ての組成の百分率は、特に明記しない限り、100重量%に等しい合計に基づく。
【0013】
開示される組成物およびそれらの使用のための方法は、本明細書を通して開示される成分または工程のいずれかを「含む(comprise)」、「から本質的になる(consist essentially of)」、または「のみからなる(consist of)」ことができる。本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、用語「含む(comprising)」(および「含む(comprise)」および「含む(comprises)」など、comprisingの任意の形態)、「有する(having)」(および「有する(have)」および「有する(has)」など、havingの任意の形態)、「含む(including)」(および「含む(includes)」および「含む(include)」など、includingの任意の形態)、または「含有する(containing)」(および「含有する(contains)」および「含有する(contain)」など、containingの任意の形態)は、包括的またはオープンエンドであり、本発明の成分を含むことができ、本明細書に記載される他の成分または要素を除外するものではない。特許請求の範囲および/または明細書において用語「含む(comprising)」と併せて使用される場合の単語「a」または「an」の使用は、「1つ」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは2つ以上」の意味とも一致する。本明細書で使用される場合、「本質的に~からなる(consist essentially of)」とは、本発明が、特許請求の範囲に列記される成分に加えて成分を含み得るが、追加の成分が、特許請求される本発明の基本的かつ新規な特徴を実質的に変更しない場合のみであることを意味する。一般に、このような追加物は、全く存在しなくてもよいし、微量でのみ存在してもよい。しかしながら、組成物の有用性(有用性の程度とは対照的に)が維持される限り、本発明の基本的かつ新規な特徴を実質的に変更し得る物質を約10重量%まで含むことが可能であり得る。
【0014】
本明細書に列挙される全ての範囲は、2つの値「の間」の範囲を列挙するものを含む端点を含む。「約(about)」、「概して(generally)」、「実質的に(substantially)」などの用語は、それが絶対的ではないように用語または値を修飾するものとして解釈されるべきである。そのような用語は、それらの用語が当業者によって理解されるように、状況およびそれらが修飾する用語によって定義される。1つの非限定的な実施形態において、この用語は、5%以内であると定義される。「実質的に」という用語およびその変形は、当業者によって理解されるように大部分が指定されたものであるが、必ずしもすべてが指定されたものではないものとして定義され、1つの非限定的な実施形態において、実質的には、0.01%~5%内の範囲を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、組成物の「有効量」という用語は、所望の生物学的応答を引き出すのに十分な量を指す。当業者によって理解されるように、物質の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、患者などの因子に依存して変化し得る。有効量および臨床的効果という用語は、本明細書において互換的に使用され得る。例えば、組成物の有効量/臨床的有効量は、皮膚湿潤を促進し、皮膚の刺激および不快感を治療するために使用することができる量である。
【0016】
本明細書は、本発明を特に指摘し、明確に主張する特許請求の範囲で締めくくられているが、本発明は、以下の説明からよりよく理解されると考えられる。
眼領域の非常に過敏な性質(一般に顔の皮膚よりもさらに過敏である)は、眼の周りで使用される任意の組成物の製剤化における主要な関心事である。一実施形態によれば、保湿用組成物(「組成物」)は、環境の不均衡および生理学的状態の悪化の影響を最小限に抑えながら、眼の周囲(眼領域(ocular region))の皮膚の乾燥、刺激、および不快感を治療するように構成される。この組成物は、少なくとも1つのリン脂質および1つ以上のビタミンを活性薬学的成分(API)として有する水性ビヒクルを含有する。組成物は、少なくとも2種の粘滑剤(demulcents)(局所的に使用される場合、皮膚軟化剤(emollients)とも呼ばれる)、1種または複数種のポリマー保湿剤、保存剤および界面活性剤の混合物をさらに含む。組成物は、典型的には、リポソーム担体中への封入/リポソーム担体での分散によって送達される。リポソームは、少なくとも1つの脂質二重層を有する球状小胞である。リポソームは、APIの能力を増強する特殊な送達ビヒクルである。
【0017】
リン脂質は、組成物中で分散剤として使用され、乾燥し刺激を受けた皮膚を治療することを目的とする任意の活性成分を封じ込めるためのバリアを皮膚に提供する。リン脂質は、親水性頭部および疎水性尾部を有するものとして記載されている脂質または脂肪分子の一種である。この二重の性質は、リン脂質が水を引きつけ、それを吸収することを意味し、それは皮膚を水和された状態に保つのに重要な成分である。リン脂質は、皮膚にバリアを提供し、皮膚の天然脂質を模倣することによって第2の皮膚と非常によく似た働きをして、皮膚に加えられた任意の製品を封じ込める。このようにして、リン脂質は、水和成分が皮膚に浸透するのを助けることができ、活性成分が皮膚の深部に確実に送達されることを可能にする。さらに、リン脂質は水分を保持するのに役立ち、それによって皮膚の乾燥を減少させることができる。リン脂質は、2つの脂肪酸、リン酸基、およびグリセロール分子から構成される。リン脂質は、単純脂質および他の脂溶性細胞成分とは区別される複雑な脂質である。
【0018】
組成物は、少なくとも1つのリン脂質を有する。1つ以上の実施形態において、リン脂質はホスファチジルコリンである。しかしながら、リン脂質は、限定されるものではないが、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、セラミド、スフィンゴミエリン、スフィンゴ脂質、ならびにそれらの誘導体および混合物からなる群より選択することができる。組成物中の少なくとも1つのリン脂質の総濃度は、0.01%~10%w/wの範囲である。1つ以上の実施形態において、組成物中のホスファチジルコリンの総濃度は、0.1%~5%w/wの範囲である。
【0019】
組成物は、1つ以上のビタミンをさらに含む。好適なビタミンとしては、ビタミンAおよびその誘導体、ビタミンB複合体、ビタミンCおよびその誘導体、ならびにビタミンEおよびその誘導体が挙げられる。これらは、組成物中で独立して、または他のものと組み合わせて使用することができる。
【0020】
ビタミンAは、レチノール、パルミチン酸レチニル、およびいくつかのプロビタミンAカロテノイド、例えばβ-カロテンを含む一群の不飽和栄養有機化合物である。皮膚において、レチノールはレチンアルデヒドに、次いでレチノイン酸に変換され、レチノイン酸は皮膚の表皮および真皮層の両方における細胞プロセスを調節する。ビタミンAは、新しい皮膚細胞の産生を刺激する。ビタミンAの非存在下では、皮膚は過度に乾燥し得る。乾燥との闘いを助けることに加えて、ビタミンAはまた、ざ瘡および小じわを治療するために使用され得る。「ビタミンAおよびその誘導体」という用語はさらに、トレチノインとしても知られるオールトランスレチノイン酸、およびその異性体、例えば13-シスレチノイン酸、イソトレチノイン、およびそれらのそれぞれの誘導体を含む。一実施形態において、組成物中のビタミンAおよびその誘導体の総濃度は、0.001%~1.5%w/wの範囲である。1つ以上の実施形態において、組成物は、0.005%~0.5%w/wの範囲のビタミンAを含む。
【0021】
ビタミンB複合体は、チアミン、パンテノール、葉酸、シアノコバラミン、メチルコバラミン、ナイアシンおよびビオチンを含む水溶性ビタミンのクラスである。ビタミンB複合体は、乾燥肌を保湿するために使用することができる。ビタミンB複合体は、乾燥との闘いを助けることに加えて、小じわおよびくすみを治療するためにも使用することができる。
【0022】
ビタミンCは、天然水溶性ビタミンであり、必須栄養素であり、皮膚中のフリーラジカルを捕捉することによって環境のストレス要因または不均衡から保護し、コラーゲン産生を促進し、皮膚に支持および構造を与える抗酸化剤である。純粋な形態はL-アスコルビン酸である。ビタミンCは、皮膚を含む身体の全ての部分における組織の成長および修復に必要である。用語「ビタミンCおよびその誘導体」は、リン酸アスコルビルナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸レチニル、アスコルビン酸テトラヘキシルデシル、およびリン酸アスコルビルマグネシウムをさらに含む。一実施形態において、組成物中のビタミンCおよびその誘導体の総濃度は、0.001%~1.5%w/wの範囲である。1つ以上の実施形態において、組成物は、0.005%~0.5%w/wの範囲でビタミンCを含む。
【0023】
ビタミンEは、4つのトコフェロールおよび4つのトコトリエノールを含む8つの脂溶性化合物の群である。純粋な形態はα-トコフェロールである。ビタミンEは抗酸化剤であり、炎症を軽減し、細胞のターンオーバーおよび再生を促進することによって乾燥肌の治療を助ける。「ビタミンEおよびその誘導体」という用語はさらに、合成酢酸トコフェリル、リノール酸トコフェリル、ソルビン酸トコフェロール、およびトコフェリルの他のエステルを含む。一実施形態において、組成物中のビタミンEおよびその誘導体の総濃度は、0.005%~1.5%w/wの範囲である。1つ以上の実施形態において、組成物は、0.01%~0.5%w/wの範囲でビタミンEを含む。
【0024】
皮膚の含水量を調節し、皮膚バリアを乾燥から保護するために、1つ以上のポリマー保湿剤が組成物中で使用される。好適なポリマー保湿剤としては、限定されるものではないが、ヒアルロン酸およびその誘導体、PEG-400、PEG-600、PEG-1200など、シロキクラゲ多糖(tremella fuciformis polysaccharide)(TFPS)、コンドロイチン-4-硫酸およびコンドロイチン-6-硫酸などの多糖、およびアルギン酸、ならびにそれらの混合物および誘導体を挙げることができる。これらは、組成物中で独立して、または他のものと組み合わせて使用することができる。組成物中の1つ以上のポリマー保湿剤のそれぞれの総濃度は、0.005%~10%w/wの範囲である。
【0025】
ヒアルロン酸は、水をコラーゲンに結合させ、それによって皮膚を保湿するのを助けることができる二糖ポリマー分子である。用語「ヒアルロン酸およびその誘導体」は、エステル化誘導体およびケイ素誘導体、第一級もしくは第二級アルコール基の単一もしくは複数のエステル、またはヒアルロン酸の酸官能基を含み、炭素系鎖を有する任意の誘導体を意味する。ヒアルロン酸のナトリウム塩-ヒアルロン酸ナトリウムは、組成物において使用される例示的なヒアルロン酸誘導体である。一実施形態において、組成物は、0.01%~0.5%のヒアルロン酸ナトリウムを含む。
【0026】
PEG(ポリエチレングリコール)は、皮膚軟化剤として、乳化剤として、および他の成分を皮膚のより深部に送達するのを助けることができる担体として使用することができる石油系化合物である。さらに、PEGは抗菌特性を有する。抗菌活性は、組成物の総濃度、1つ以上の界面活性剤の存在、およびpHに依存して変化する。ポリエチレングリコールの重量およびサイズが大きすぎて皮膚の表面を越えて浸透することができないので、これらの化合物を皮膚軟化剤として使用して、皮膚の軟化および保湿を助けることができる。一実施形態において、組成物は、0%~5%のPEG-400を含む。
【0027】
シロキクラゲ多糖は、中国のSilver Earキノコの食用子実体から抽出される糖分子である。その糖成分にはグルクロン酸が含まれ、これもヒアルロン酸の重要な成分の1つである。ヒアルロン酸と同様に、シロキクラゲ多糖は、水分をコラーゲンに結合させ、それによって皮膚を保湿するのを助ける。一実施形態において、組成物は、0.01%~0.5%のシロキクラゲ多糖を含む。
【0028】
アルギン酸またはアルギンは、褐藻類の細胞壁中に広く分布している多糖である。用語「アルギン酸およびその誘導体」は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ヒドロゲル、アルギン酸プロピレングリコール、ならびに他の共役塩基、塩、およびエステルをさらに含む。アルギン酸塩は、典型的には増粘剤または乳化剤として使用されるが、保水性を有することも知られている。
【0029】
組成物は、グリセリン、プロピレングリコール、鉱油、中鎖トリグリセリド、ヤシ油、ならびにそれらの誘導体および混合物からなる群より選択される1つまたは複数の潤滑剤および皮膚軟化剤(粘滑剤)をさらに含むことができる。他の皮膚軟化剤としては、コロイド状オートミール、尿素、ソルビトール、ナッツオイルおよび誘導体、バラ抽出物などの花抽出物または果実抽出物、液体ポリオール、中鎖ジグリセリド、およびシリコーン油を挙げることができる。
【0030】
皮膚軟化剤は、典型的には、皮膚を滑らかにすることによって作用し、水が蒸発するのを困難にし、それによって皮膚を湿った状態に保つ。結果として、組成物中に少なくとも1種の粘滑剤または皮膚軟化剤を含めることは、組成物が眼領域をより柔らかく、より水和させることを助ける。例示的な実施形態において、組成物は、組成物中に少なくとも2種の粘滑剤を含むことができる。例えば、組成物は、約0%~約5%w/wのプロピレングリコールおよび約0%~約5%w/wのグリセリンまたはグリセロールを含むことができる。
【0031】
プロピレングリコールは、眼および眼領域に対して非毒性である。プロピレングリコールは、皮膚に水分を引き寄せ、その結果、皮膚を水和および保湿することによって保湿剤として作用する。プロピレングリコールはまた、製品製剤中の物質を溶解して、それらを適切に混合および相互作用させるためにも使用される。プロピレングリコールは、皮膚上に油性層を形成し、水分損失を防ぐので、組成物において使用される。さらに、プロピレングリコールは、組成物の厚さを減少させるために使用することができ、というのは、組成物が皮膚にわたってより良好に広がるのを助け、組成物の成分がいかに良好に吸収されるかを改善するからである。同様に、グリセロールもまた、眼および眼領域に対して非毒性であることが知られている。グリセロールは皮膚軟化剤として作用して、皮膚を軟化させ、鎮静させる。一実施形態において、組成物は、0%~2.00%のプロピレングリコールおよび0%~2.00%のグリセロールを含む。
【0032】
1つ以上の保存剤も組成物中で使用される。眼領域は非常に過敏である性質のために、全ての保存剤は、十分に多い量で使用される場合、眼または眼領域に対して刺激物として作用する。眼用保湿組成物の一態様は、非常に低濃度、好ましくは1.5%w/w未満の保存剤を含有することである。
【0033】
保存剤としては、限定されるものではないが、フェノキシエタノール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、パラベン(例えば、プロピルパラベンおよびブチルパラベン)、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、レブリン酸、ロイコノストック(Leuconostoc)/ラディッシュルート発酵濾液およびアニス酸、およびこれらの混合物および誘導体が挙げられる。
【0034】
組成物は、広範囲の微生物に対して有効である非常に低濃度の保存剤を含有する。フェノキシエタノールは、低用量で、広範囲の微生物に対して有効な保湿剤用の有効な保存剤であることが示されている。一実施形態において、組成物中で使用されるフェノキシエタノールの総濃度は、0.05%~2%w/wの範囲である。別の実施形態において、組成物は、0.10%~1.00%の2-フェノキシエタノールを含む。フェノキシエタノールの有効用量を低減させるために、組成物のいくつかの実施形態において、少量のロイコノストック/ラディッシュルート発酵濾液が添加される。ロイコノストック/ラディッシュルート発酵濾液は、伝統的な韓国料理であるキムチを作るために使用されてきた乳酸菌であるロイコノストックキムチ(Leuconostoc kimchii)で発酵させたダイコンに由来する天然の保存剤である。発酵プロセスの間に、顕著な抗菌特性を有するペプチドが細菌から分泌される。ロイコノストック/ラディッシュルート発酵濾液は、水溶性であり、天然に由来し、実質的に無臭であり、比較的熱に安定であり(60℃または140°Fまで)、広範囲の抗菌活性を有し、4%w/w未満の濃度で刺激となる可能性が低いかまたは全くないと一般に認められている。ロイコノストック/ラディッシュルート発酵濾液を眼用皮膚保湿製品中の保存剤として使用する利点は非常に多い。この成分は、それ自体が保湿剤およびコンディショナーであるので、非毒性の保存剤として働くのみならず、組成物の鎮静保湿効果にも寄与する。
【0035】
水性ビヒクルは、脱イオン水または精製水USPであり得る。組成物は、60%~98%の水を含むことができる。組成物は、生理学的に適合性であり、等浸透圧である。しかしながら、1つ以上の実施形態において、他の水性ビヒクル(例えば、水性果実抽出物または水性花抽出物)が使用され得る。水性ビヒクルは、必要に応じて、浸透圧およびpHを調整するための1つ以上の成分を含む。浸透圧は、糖、グリセリン、プロピレングリコールおよび同様の成分を用いて調整することができる。これらは、組成物中で独立して、または他のものと組み合わせて使用することができる。組成物の浸透圧は、約80mOsm/kg~約500mOsm/kgに調整することができる。
【0036】
組成物を噴霧形態で送達するために、1つ以上の界面活性剤が必要とされ得る。界面活性剤の乳化特性は、組成物の分離を防止する。適切な界面活性剤としては、限定されるものではないが、非イオン性界面活性剤が挙げられ、ポリソルベート20、ポリソルベート60およびポリソルベート80を含むポリオキシエチレン修飾脂肪酸エステルおよびエーテル、糖ベースの界面活性剤、すなわちグルコシド、ならびにPEG化ヒマシ油およびその誘導体を挙げることができる。特定の実施形態において、組成物中の1つ以上の界面活性剤の総濃度は、0.05%~10%w/wの範囲である。一実施形態において、組成物は、0.1%~5%のポリソルベート20を含む。
【0037】
組成物は、1つ以上の塩をさらに含むことができる。例えば、塩としては、限定されるものではないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ナトリウムおよび/またはカリウムの一塩基性および二塩基性リン酸塩、塩化カルシウム、クエン酸ナトリウム、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。最適には、組成物のpHは3.0~9.0に維持される。好ましくは、組成物のpHは4.0~7.0である。
【0038】
組成物は、増粘剤、抗酸化剤、キレート剤、浸透圧調節剤、緩衝剤、感覚剤(sensory agents)、およびこれらの混合物からなる群より選択される1つ以上の成分をさらに含むことができる。増粘剤としては、限定されるものではないが、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびCarbopol(登録商標)が挙げられる。抗酸化剤としては、限定されるものではないが、緑茶抽出物および紅茶抽出物などのポリフェノール、レスベラトロール、コエンザイムQ10、ならびにクルクミンが挙げられる。キレート剤としては、限定されるものではないが、EDTA四ナトリウムおよびテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンが挙げられる。緩衝剤としては、限定されるものではないが、重炭酸ナトリウム、酢酸、アジピン酸、ホウ酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、尿酸、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、リン酸アンモニウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、ジメチルMeA、エタノールアミン、トリエタノールアミン、およびトロメタミンが挙げられる。感覚剤としては、限定されるものではないが、ハッカ抽出物、スペアミント抽出物または青りんご抽出物が挙げられる。
【0039】
組成物は、スプレー、ミスト、液体、ゲル、クリーム、ローションを使用して、または布製ワイプなどの予め湿らせたワイプを介して分配され得る液体または半固体の剤形で提供することができる。
【0040】
1つ以上の実施形態において、保湿用組成物は、すぐに使用できるリポソームスプレーとして送達される。リポソームスプレーは、本明細書に開示される保湿用組成物の一実施形態が、微小な球状リポソーム小胞内に封入されるか、または分散された、水和および保湿スプレーである。リポソーム小胞は当技術分野で公知である。
【0041】
例示的な実施形態において、リポソーム小胞は、リン脂質、すなわちホスファチジルコリン;ビタミン、すなわちビタミンA、ビタミンC、ビタミンE;少なくとも2種の粘滑剤、すなわちプロピレングリコールおよびグリセロール/グリセリンの混合物;ヒアルロン酸ナトリウム、シロキクラゲ多糖およびPEG-400を含むポリマー保湿剤;保存剤、すなわちフェノキシエタノール;および界面活性剤、すなわちポリソルベート20を水性ビヒクル中に有する組成物を封入する。この実施形態において、リン脂質は約0.05%~10.00%の範囲であり得、ビタミンは0.005%~5.00%の範囲であり得、粘滑剤は0%~5.00%の範囲であり得、ポリマー保湿剤は約0.005%~10.00%の範囲であり得、保存剤は0.05%~2.00%の範囲であり得、界面活性剤は0.05%~10.00%の範囲であり得、水/脱イオン水は、合計を100%とする適量であり得る。あるいは、組成物をリポソーム小胞で分散させることができる。
【0042】
本願の発明者らは、リポソームスプレーで送達されるプロピレングリコールおよびグリセリンなどの2種の粘滑剤の混合物の使用が新規であると考える。2つの粘滑剤は、安全かつ有効であり、ポリマー性保湿剤(例えば、ヒアルロン酸)と組み合わせて、より良好な皮膚被覆率および眼領域の皮膚のより長い保湿を提供する。
【0043】
別の実施形態において、キットが提供される。例えば、本発明の組成物をキットに含めることができる。キットは、容器、例えばボトル、例えばスプレーボトル、加圧容器、チューブ、または組成物を保持する(hold)または保持する(retain)ための任意の他の好適なディスペンサーを含むことができる。容器は、スプレー、ポンプ、または圧搾機構を有することができる。例示的な実施形態において、キットには、リポソームスプレーとして所望量または予め決められた量の組成物を分配するためのスプレーボトルが含まれる。1つ以上の実施形態において、スプレーボトルは、1回の噴霧につき、160μL以下の用量を分配する。他の実施形態において、容器を圧搾して所望の量の組成物を分配することができる。さらに別の実施形態において、組成物を含浸させた1つ以上のワイプ(例えば、布製ワイプ)を含むキットが提供される。さらに別の実施形態において、1つ以上のワイプと、組成物を含む容器とを含むキットが提供される。組成物は、使用前にワイプに適用することができる。
【0044】
本明細書に開示されるキットは、容器/ワイプのための容器または包装の表面に単語または記号を識別することを含むことができる。キットは、容器に含まれる任意の他の組成物の使用を含む、キット構成要素を使用するための説明書も含むことができる。説明書は、組成物の適用、使用または保存に関する説明を含むことができる。
【0045】
さらに別の実施形態において、特に顔、眼瞼、および眼領域周辺の皮膚乾燥を治療する方法は、本明細書に開示される1つ以上の実施形態に従う組成物を提供することを含む。治療有効量の組成物を顔および眼の周囲の無傷の皮膚に局所的に適用して、乾燥した皮膚に即時のおよび長期の鎮静作用を提供することができる。組成物は、個人の必要に応じて1日に数回投与することができる。組成物はまた、必要に応じて、病院、診療所において患者によって、および在宅医療提供者によって投与され得る。
【0046】
別の実施形態において、保湿用組成物を製造する方法は、ヒアルロン酸ナトリウムなどのポリマー保湿剤の必要量と水との混合物を調製することを含む。必要量のヒアルロン酸ナトリウムと、シロキクラゲ多糖およびPEG-400を含む他の保湿剤とを、均質な溶液が形成されるまで、必要量の水に1つずつゆっくり添加する。混合は、少なくとも10~30分間、または全ての薬剤が完全に分散/溶解するまで継続することができる。混合物は、保湿剤の分散を助けるために、約25℃~70℃の温度に温めることができる。必要量のグリセリンおよびプロピレングリコールを混合物に撹拌しながら添加する。この混合物を、所定の時間、中程度から強度の撹拌下でリン脂質分散液と合わせる。リン脂質分散液は、ホスファチジルコリンならびにビタミンA、CおよびEの混合物を含むことができる。フェノキシエタノールおよび他の保存剤を合わせた混合物に添加して、最終的な所望の重量とする。均質な分散液が形成されるまで、さらに所定の時間撹拌を続ける。この分散液をポリソルベート20で滴定して、所望の表面張力を有する組成物を得る。
【0047】
組成物は、分配のための好適なディスペンサーまたは容器に入れることができる。あるいは、組成物は、リポソーム担体中に封入され得るか、またはリポソーム担体で分散され、そしてリポソームスプレーとして送達されてもよい。リポソームスプレーは、スプレーノズルから均一に分散させることができる。組成物が実質的に同等であることにより、皮膚の被覆、ならびにリン脂質、粘滑剤およびビタミンの皮膚への送達が促進される。
【0048】
本明細書に開示される皮膚保湿用組成物の一実施形態(化合物Dとして特定される)を、眼におけるその化学的安全性、ならびにヒト皮膚に対するその刺激および感作性(sensitization)について試験した。眼用皮膚保湿組成物の化学的安全性を、EpiOcular(商標)試験法を用いて試験し、皮膚の刺激および感作を、反復傷害試験パッチを用いて評価した。この試験方法では、三次元の操作されたヒト組織様構造物を使用した。基本的に、50μlの組成物を組織の表面に均一な層で適用した。次いで、組成物を除去し、組織を通常の組織培養条件下で回復させた。次いで、この培地を、黄色のテトラゾリウム色素MTT3-(4,5-ジメチルチアゾール-イル)-2,3-ジフェニルテトラゾリウムブロミドを含む組織培養培地と交換し、そしてそれは、その不溶性の紫色のホルマザン化合物に還元された。この暗紫色の化合物は、生細胞に蓄積したが、死細胞には蓄積しなかった。細胞を洗浄した後、還元された紫色の化合物をイソプロパノールに可溶化し、プレートリーダーを用いて570nm(OD570)での光学密度を読み取ることによって定量した。結果が対照のOD570の60%より大きい場合、その物質は分類されないと考えられ、OD570が対照のOD570の60%以下である場合、その物質は刺激物として分類される。本発明の保湿用組成物のいくつかの試料を、この方法を用いて試験し、対照の99.0%に等しい平均OD570を与え、したがって非刺激性として分類した。
【0049】
23個の試験試料を用いて保湿用組成物の化学的安全性も試験して、ヒト対象の皮膚に繰り返し適用した後の組成物の皮膚刺激および感作性(接触アレルギー)の可能性を決定した。73人の対象が試験に登録され、63人の対象が試験を完了した。約0.02~0.05mlの組成物試験材料を7.5mmのペーパーディスク上に分配した。材料を含有するパッチを、皮膚または背中の肩甲骨内領域に直接貼り付けた。パッチは、最初の適用後48時間、その位置に維持された。その後、一連の8~9回の連続24時間曝露を、3回/週で3週間連続して行った。試料の適用前後の各試験部位を、訓練を受けた実験室人員によって評価した。0(反応なし)~4(紅斑、硬結および水疱)のスケールについて、試験を完了した63人の対象のいずれも、試験の経過中にいかなる種類のいかなる反応も有さなかった。
【0050】
ホスファチジルコリン、プロピレングリコール、グリセロール、ヒアルロン酸のナトリウム塩、ビタミンAおよびその誘導体、ビタミンCおよびその誘導体、ビタミンEおよびその誘導体、2-フェノキシエタノール、ポリソルベート20および精製水を有するリポソームスプレー組成物製品を、有効性について試験した。既知の皮膚過敏症や現在の皮膚疾患のない成人対象が試験に登録された。対象は、眼を閉じた状態で、眼瞼に直接噴霧することによって製品を適用するように告げられた。対象は、1日8時間の間に必要な回数だけ製品を使用するように助言され、1日の間にスプレーを何回使用したかを追跡するように求められた。彼らは、1~5のスケールで様々な属性に対する調査質問表上の製品の評価を記録するように求められた。試験デザイン、アンケート、患者スクリーニングおよび結果の集計は、テキサス州の調剤薬局によって行われた。結果は以下のように要約することができる。22人の対象が試験に参加し、21人が完全な評価を完了した。回答者の大部分(86%)は、製品を肯定的にレビューした。90%超が製品の冷却効果と爽快感を感じ、80%超が鎮静効果と保湿効果があったことを認めた。
【0051】
本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明において様々な修正および変形を行うことができることが当業者には明らかであろう。本発明の他の実施形態は、本明細書を考慮し、本明細書に開示される本発明を実施することから、当業者には明らかであろう。明細書および実施例は例示的なものにすぎないと考えられることが意図されている。
【国際調査報告】