(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】鋳造品の寸法均一性を推定するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
B22D 13/12 20060101AFI20240628BHJP
B22D 13/10 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B22D13/12
B22D13/10 505A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501570
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 US2022036656
(87)【国際公開番号】W WO2023287691
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515255434
【氏名又は名称】ユナイテッド・ステイツ・パイプ・アンド・ファンドリー・カンパニー・エル・エル・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワッツ,ケネス・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ホルツ,ステファニー・アール
(57)【要約】
鋳造プロセスが完了したほぼ直後に、溶融鉄から鋳造されたパイプなどの遠心鋳造された物体の壁厚の均一性の推定を提供するための方法および装置に関する。パイプの長さに沿った壁厚を推定するために、鋳型に入った溶融金属の経時的な体積が決定され、鋳造機位置および速度データと相関される。したがって、プロセス欠陥が即座に識別され、修正処置がとられることが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属が、取鍋から、回転する円筒形の鋳型の長手方向軸線に関して直線状に移動可能な樋を有する鋳造機へ、流れで鋳込まれる遠心鋳造プロセスで形成される物体の壁厚を推定する方法であって、前記方法は、
(a)取鍋から鋳込まれた流れのサンプルと関連した溶融金属の体積を決定するステップと、
(b)決定された体積を鋳型上の長手方向位置と相関させるステップと、
(c)鋳型の所定の長さにわたってステップ(a)および(b)を繰り返すステップと、
(d)長さにおける各位置の鋳物の壁の厚さを計算するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
決定するステップは、
(a)流れのサンプルの面積を計測することと、
(b)面積に、所定の長さと関連した流れの長さを乗算することと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
計測するステップは、サンプルの直径を計測することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
直径は、マシンビジョン装置を用いて計測される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
流れの長さは、所定の長さと関連した金属の体積を、所定の長さ内の各サンプルの計測された面積の和で除算することによって決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
所定の長さと関連した体積は、所定の長さと関連した重量から計算される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
重量は、鋳造プロセス完了後の物体の計測された重量から決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
相関させるステップは、
鋳造機の位置データを受信することと、
流れサンプルを、鋳型の長手方向軸線上の鋳造機の位置と関連付けることであって、関連付けは、決定された体積の鋳込と樋から鋳型への体積の分配との間の遅延を調整することと、
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
相関させるステップは、
鋳造機の位置データを受信することと、
流れサンプルを、鋳型の長手方向軸線上の鋳造機の位置と関連付けることであって、関連付けは、決定された体積の鋳込と樋から鋳型への体積の分配との間の遅延を調整することと、
を含む請求項2に記載の方法。
【請求項10】
物体はパイプであり、所定の長さは、ベル、バレル、およびスピゴットからなるグループから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
溶融金属が、取鍋から、回転する円筒形の鋳型の長手方向軸線に関して線形に移動可能な樋を有する鋳造機へ、流れで鋳込まれる遠心鋳造プロセスで形成される物体の、パイプ壁厚の均一性を推定する方法であって、
取鍋から鋳込まれた流れの複数のサンプルの直径を取得することと、
鋳造中に、鋳型の長手方向軸線に関する鋳造機の位置データを受信することと、
各サンプルの直径を、鋳造機の位置と関連付けることであって、関連付けは、サンプルの鋳込と樋から鋳型へのサンプルの分配との間の遅延を調整することと、
関連付けられた位置および直径データを使用して、鋳造機の速度を、サンプルの直径から決定された流れの直径と比較することと、
を含む方法。
【請求項12】
比較をオペレータに表示することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
比較に応答して、流れの直径または鋳造機の速度のうちの少なくとも一方を調整することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
流れの直径は、取鍋からの鋳込速度を変更することによって調整される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
調整するステップは手作業で実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
表示するステップは、鋳造機速度および流れ直径の各々をグラフィック形態で表示することを含み、各グラフィック形態は、共通パラメータを有し、パラメータの特性は、速度と直径との間の相対的変化が所定の範囲内にあるときに、速度と直径との間で均一である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
パラメータは線であり、特性は線の傾きである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
取鍋から、樋から鋳型に溶融金属を配設するために回転鋳型に対して位置決めされた樋へ鋳込まれた溶融金属から遠心鋳造された物体の壁厚の均一性の推定を決定するための装置であって、前記装置は、
前記取鍋から鋳込まれた溶融金属の流れの画像を取得するように位置決めされた画像取得装置と、
前記樋または鋳型の少なくとも一方に結合された駆動システムと、
前記駆動システムを制御し、前記鋳型に対する前記樋の移動を示すデータを受信するためのコントローラと、
前記画像取得装置からの画像データを使用して、取鍋から鋳込まれた溶融金属の体積を前記鋳型の位置データと経時的に相関させ、前記相関から壁厚均一性の推定を決定するようにプログラムされているプロセッサと、
を備える装置。
【請求項19】
前記プロセッサと動作的に通信しているグラフィックディスプレイをさらに備え、前記プロセッサは、前記ディスプレイ上で均一性のインジケータを提供するようにさらにプログラムされている、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
溶融金属が前記樋を出る時を検出するように位置決めされたセンサをさらに備え、前記センサが、前記プロセッサと動作的に通信している、請求項18に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年7月12日出願で、現在係属中の米国特許出願第17/373,145号の優先権および利点を述べている。
【0002】
本発明は、一般に金属物体の遠心鋳造の分野に関し、より詳しくは鉄パイプの遠心鋳造の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
金属物体の遠心鋳造のプロセス、特に鉄パイプの遠心鋳造のプロセスはよく知られており、百年もの間実践されてきた。遠心鋳造機は、樋などの運搬システムと、回転鋳型とを含む。溶融鉄は、機械取鍋から樋内に鋳込まれる。樋は、回転鋳型の内部に、一般的には軸線方向に延在する。この鋳型の一端は、通常、いわゆるパイプのベルと呼ばれる形状に正確に成形するために砂中子などの中子を含む。パイプの反対の端部は、スピゴットと称され、その間の細長い部分はバレルである。溶融鉄は、重力の影響下において樋に流れ落ちる。鋳型および樋は、鋳型に鉄を満たすために、互いに対して、典型的にベル端からバレルに沿ってスピゴットへ移動される。鋳型が回転すると、遠心力がその鉄を鋳型の周方向に比較的均一に配設する。典型的に、鋳造機は、必要に応じて鉄を配設するために、当該技術分野で知られているように、油圧もしくは他の機械的手段によって移動される。
【0004】
装入混合物(すなわち、くず鉄などの鋳造のための原材料源)、コークス、および溶鉱炉操作の変化は、溶融鉄の温度および化学組成の変動をもたらす。溶融鉄の含有量のばらつきは、溶融鉄の液相停止温度および流動性にも現れ、これらは各パイプが鋳造される溶融鉄の摩擦力、表面張力、熱拡散性のばらつきを次々と引き起こし、それによってそれら自体が鋳込温度に基づいて鋳込間でばらつきを生じ得ることとなる。この全てが、結果として、鋳型への鉄の流量のムラをもたらす。溶融鉄含有量のばらつきは、リサイクルまたはスクラップ源からの材料を使用する設備において、費用効果的に排除することができない。
【0005】
鋳造プロセスは、大まかには同時に発生するが互いに独立して制御される2つの操作によって統御されると考えることができる。一方の操作では、鉄を鋳込むために機械取鍋を傾斜させ、他方では鋳型における鉄の分配を可能にするために、樋に対して鋳型を動かす。鋳造のために鋳込まれた溶融鉄の全体量、したがってパイプの重量は、取鍋の操作によって決定される。鋳型内における鉄の分配は、第一に鋳型の動き、第二に取鍋操作によって決定される。本出願人は、樋に対する鋳型の動きを制御することに関する米国特許第8,733,424号明細書、第8,910,669号明細書、第8,960,263号明細書を取得した。これらの特許は、充填混合物および鋳込温度における変動性に起因する溶融鉄の流動性を変化させる鋳造機のパラメータおよび動きを制御するための装置および方法を開示する。
【0006】
機械取鍋操作の動作に関して、機械取鍋を傾斜させることに関連したパラメータに対する制御は、機械取鍋鋳込速度、機械取鍋切り返し位置、およびスピゴットチェック位置を含む。例えば、機械取鍋鋳込速度は、取鍋から鋳込まれている溶融鉄の流量を設定する。溶融鉄が鋳造サイクル中に機械取鍋から鋳込まれるとき、注ぎ口において終端し、そこから鉄が鋳型に分配される樋を鉄が(典型的に重力下で)横切る間に遅延が存在する。この遅延は、樋のサイズおよび長さ、流量、ならびに他の要因に基づいて変化するが、その持続時間は、鋳造サイクルの持続時間全体と比較して顕著である。例えば、実際の鋳造時間が15秒であるプロセスにおいて、取鍋からの鉄の鋳込から樋の注ぎ口を出るまでの遅延は、4秒であり得る。したがって、この遅延は、機械取鍋に関連する制御のいかなる変更も「その場で」行うことを困難にする。
【0007】
機械取鍋は、取鍋の回転角度が等しいとき同量の溶融鉄を供給するよう線形鋳込装置となるように設計される。しかしながら、経時的に、取鍋は、その鋳込特性において非線形となる場合がある。取鍋鋳込における非線形性は、取鍋の寸法のばらつきによって引き起こされる場合がある。スラグ、すなわち溶融鉄中に溶解している粘性のセラミック物質は、取鍋内の溶液および堆積物から生じ得る。スラグは、取鍋の様々な場所に堆積し、多くの形態における非線形鋳込を引き起こし得る。鋳込線形性の各変化は僅かであり、経時的に悪化する。これは、取鍋鋳込速度制御(機械取鍋の傾斜角度)が全く変化していないにもかかわらず、鉄の体積的な流量を減少させる場合がある。
【0008】
鋳込における非線形性の一形態は、取鍋のリップ領域におけるスラグ蓄積からのものである。これは、鋳造サイクルの開始時点における溶融鉄量の減少を引き起こす場合がある。初期の低体積流量は、ベルの壁厚を予想した壁厚よりも薄くする。これは、鋳込速度の増加によってオフセット可能であり、さらにパイプの重量およびその長さ全体にわたるパイプ壁の厚さも増加させる。鋳造機(鋳型)の動きもまた、パイプ壁の均一性を回復させるように調整され得る。
【0009】
鋳込における非線形性の別の形態は、取鍋のティーポット領域におけるスラグ蓄積からのものである。これは、鋳造サイクルの終了時の溶融鉄量の減少を引き起こし得る。鋳造サイクルの終了時の溶融鉄量が不十分であると、スピゴットにおいてパイプ壁が薄くなることとなる。スピゴットの壁厚は、取鍋切り返し位置制御を変更することによって増加させることができ、それによって取鍋がより長い時間にわたって鋳込むことができる。鋳込時間が長くなると、パイプのスピゴット端部への溶融鉄の量が増加し、そこでの厚さが増加する。
【0010】
鋳込における非線形のばらつきは、セラミック取鍋のライニング材料の浸食によって発生させられる場合がある。この浸食によって、取鍋のあらゆる領域における寸法を変化させ得る。この非線形性が高まると、パイプの壁厚の均一性が多くの形態で変化する可能性がある。多くの場合、パイプ壁厚が十分に均一でない場合の唯一の改善策は、機械取鍋を交換することである。
【0011】
要するに、溶融鉄の化学含有量、鋳込温度の変化および取鍋鋳込特性の線形性の変化によってもたらされる変動によって、結果の均一性、および仕様の固守は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)によって制御される油圧システムを用いても達成が困難な場合がある。鋳造オペレータは、単純に、鋳造機制御を調整するために、壁厚均一性に影響する鉄もしくは鋳込特性の変化をタイムリーに検出できない。その代わり、今までは、鉄パイプが遠心鋳造機で鋳造されるとき、その壁厚均一性についてのフィードバックが鋳造後の何時間も鋳造機オペレータに提供されず、これは、その厚さが通常超音波厚さ測定器で測定可能となる前にパイプが典型的にアニールおよび処理(ある時間にわたる)を完了しなければならないためである。
【0012】
鋳造装置は異なる速度で動作し得るが、一例では、パイプは、1フィートあたり0.75秒の速度で鋳造される。したがって、20フィートの長さのパイプは、鋳造に15秒のみを必要とし得る。最初のパイプがアニールされ、壁厚の超音波計測のために十分に冷却される前に、数百本のパイプが鋳造され得ることは明らかであろう。さらに、鋳造パラメータのうちの1つが誤差の修正を試みて変更されるとき、その変更が所望の修正をもたらすか、またはパイプ壁厚のばらつきが増加したかを判定可能になる前にさらに数時間必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第8,733,424号明細書
【特許文献2】米国特許第8,910,669号明細書
【特許文献3】米国特許第8,960,263号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、鋳造プロセスの完全性に最も近いパイプ壁厚の均一性の正確な推定を提供する装置および方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施形態は、それらの必要性を満たすが、全ての実施形態が各々の必要性を満たすわけではないことを理解されたい。一実施形態は、溶融金属が、取鍋から、回転する円筒形の鋳型の長手方向軸線に関して直線移動可能な樋を有する鋳造機へ流れで鋳込まれる、遠心鋳造プロセスで形成される物体の壁厚を推定する方法を含む。この実施形態では、取鍋から鋳込まれた流れのサンプルと関連した溶融金属の体積が決定され、鋳型上の長手方向位置と相関される。取鍋から鋳込まれたときの溶融鉄流の画像がマシンビジョン装置によって取得され、各サンプルの断面積が決定される。物体の全体の体積は、鋳造直後のその重量と、鋳造された材料の密度とから決定される。この体積は、流れの長さを決定するために、各サンプルの面積の和で除算される。この長さに1つのサンプルの面積を乗算することによって、そのサンプルと関連する溶融鉄の体積が得られる。各サンプルの体積は、このようにして決定され、鋳型上のその位置と相関される。この相関は、鋳造機の移動を制御および記録するコントローラから得られた位置データに基づく。増分の体積およびそれらの関連する位置データを使用して、次いで、物体の長さにわたる壁厚が計算され、表示され得る。
【0016】
別の実施形態では、流れサンプルの直径またはそれらの体積が経時的な鋳造機の速度と相関され、表示され得る。これらの変数間の関係は、壁厚の均一性を示す。
【0017】
本発明の別の実施形態は、取鍋から、樋から鋳型に溶融金属を配設するために、回転鋳型に対して位置決めされた樋へ鋳込まれた溶融金属から、遠心鋳造された物体の均一性壁厚の推定を決定するための装置を備える。この実施形態では、装置は、取鍋から鋳込まれた溶融金属の流れの画像を取得するように位置決めされた画像取得装置と、樋または鋳型の少なくとも一方に結合された駆動システムと、駆動システムを制御し、鋳型に対する樋の移動を示すデータを受信するためのコントローラと、画像取得装置からの画像データを使用して、取鍋から鋳込まれた溶融金属の体積を、その体積が鋳造された鋳型の位置データと経時的に相関させ、相関から壁厚均一性の推定を決定するようにプログラムされたプロセッサと、を含む。好ましい実施形態では、装置は、プロセッサと動作的に通信しているグラフィックディスプレイをさらに含み、プロセッサは、ディスプレイ上で均一性のインジケータを提供するようにさらにプログラムされている。装置は、溶融金属が樋を出る時を検出するように位置決めされたセンサをさらに含んでもよく、センサは、プロセッサと動作的に通信している。
【0018】
特定の実施形態および添付図面を参照して、本発明を一例としてのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の装置の一実施形態の一部を形成する鋳造機の例示的な実施形態を示す図である。
【
図2】
図1の実施形態から鋳造されたパイプの一例を示す図である。
【
図3】本発明の装置の一実施形態のブロック図である。
【
図4】
図3の実施形態のカメラおよび取鍋の例示的な配置の図である。
【
図5】
図4のカメラなどのマシンビジョンシステムによって取得された溶融鉄の流れの例示的な画像である。
【
図6A】経時的な溶融鉄の体積および鋳造機位置をプロットした例示的なグラフである。
【
図6B】経時的な溶融鉄の体積および鋳造機位置をプロットした例示的なグラフである。
【
図6C】経時的な鋳造機速度をプロットした例示的なグラフである。
【
図7】本発明の方法の一実施形態による、パイプ壁厚均一性をプロットした例示的なグラフである。
【
図8】本発明の方法の一実施形態による、鉄流の断面積に対して鋳造機速度をプロットした例示的なグラフである。
【
図9】本発明の方法の一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、一定の壁厚とともに均一な直径を有するように指定された鉄パイプの遠心鋳造の例示的な適用に関して、本発明の特定の実施形態を説明する。本発明の実施形態は、パイプの長さに沿って様々な壁厚を有する、様々な(先細になる)直径または断面プロファイル(例えば、六角形)のパイプを生成するために容易に適用され得る。また、本発明の実施形態は、鉄に関して本開示で説明するような関係の代わりに、他の合金についての知られている治金関係を使用することによって、そのような合金の溶融金属からなる任意の物体の遠心鋳造に関して実践され得ることを理解されたい。さらに、鉄に対する言及は、典型的にはある量の炭素、ケイ素、およびリンを含有するが、その特性に影響し得るある量の他の元素もしくは化合物も含有し得る、鉄の合金に対する言及として理解されたい。本発明の方法および装置の実施形態は、鋳造プロセスにおいてバッチ間で変化する組成もしくは未知の組成を有する鉄もしくは他の溶融金属からの所望の許容範囲内の鋳造された物体に適することが理想的である。
【0021】
図1は、本発明の装置の例示的な実施形態の一部を示す図である。
図1に示すように、鋳造機5は、当該技術分野で知られている典型的な遠心鋳造機であり、ある量の溶融鉄を鋳型20に運ぶための搬送システム10を備えており、鋳型20は、鋳造プロセス中にモーター60によって回転される。好ましい実施形態では、搬送システム10は、溶融鉄を収容する機械取鍋もしくは他の容器25と、U字形樋30とを備える。機械取鍋25は、好ましくは、回転度ごとに一定体積の鉄を分配する。しかしながら、本発明の実施形態は、鋳込間でばらつきのない鋳込プロファイルを提供する限り、任意の種類の取鍋もしくは分配容器とともに使用可能であることに留意されたい。「取鍋」もしくは「機械取鍋」なる用語は同義であり、鋳造用の溶融金属の分配のために使用される任意の容器を指すものとする。樋30は、僅かに下向きに角度が付けられており、鋳型20の内部に軸線方向に延在し、注ぎ口35で終端する。機械取鍋25が傾けられると、溶融鉄は溶融鉄流75として、重力の影響下で、取鍋25のリップ27から(
図4に示す通り)樋30を下降し、注ぎ口35から出て、鋳型20へ流れる。鋳型20は、駆動システム40に取り付けられている。
【0022】
駆動システム40は、搬送システム10の固定端部(すなわち注ぎ口35)に対して固定可動域内で鋳型を前後に動かすためのアクチュエータ45を備える。アクチュエータ45は、鋳型20を動かすための当該技術分野で知られている任意の種類のアクチュエータでもよく、油圧、電気モーター、エンジンもしくはモーターへと連結したベルトもしくはチェーン駆動の機械、これらの組み合わせ、または鋳型を動かすための当該技術分野で知られている他の手段を含み得る。或る実施形態では、搬送システム10は、所定位置に固定されたままである鋳型20に対して、駆動システム40によって長手方向に移動される。本開示では、鋳造機速度もしくは鋳造機移動なる用語は、駆動システム40によって駆動されたときの樋30に対する鋳型20の移動(もしくはその速度)を指し、その内部で一方または両方の部品が他方に対して移動する装置を説明し得る。
【0023】
同様に、機械取鍋25は、当該技術分野で知られている任意の種類のアクチュエータを含む傾斜システム42に結合され、アクチュエータは、油圧、電気モーター、ねじ駆動、エンジンもしくはモーターと機械的に連結したベルトもしくはチェーン駆動、これらの任意の組み合わせ、または当該技術分野で知られている他の手段を含み、任意の所望の角度だけ機械取鍋を制御可能に回転または傾斜させ、そうでなければ溶融鉄流75を所定の鋳込速度(典型的には、傾斜度ごとに均一)でそのリップ27(
図4に示す通り)から鋳込ませ、機械取鍋を鋳込位置からその初期の直立位置もしくは鋳込位置へ戻す。
【0024】
図3の実施形態に示すように、駆動システム40および傾斜システム42の各々は、それらの間のコマンドおよびデータの転送のためにコンピュータ55と動作的に通信しているプログラマブルロジックコントローラ(PLC)50によって制御されることが好ましい。コンピュータ55は、データを直接もしくは間接的に受信し、そのデータを処理し、本明細書で説明する方法の計算および他のステップを実行することができる任意の計算システムを指すために本明細書では広く使用されており、適切なソフトウェアを用いてプログラムされたローカルのスタンドアロン汎用コンピュータ、例えばネットワークを介してサーバと通信可能で、それらの間でタスクもしくはストレージを分割する汎用コンピュータ、鋳造場所から離れており、通信ネットワークを介して適切なデータを受信するクラウドベースのプロセッサ、モバイルデバイスもしくは手持ち式デバイス、特定用途向けコンピューティングデバイス、または上記の任意の組み合わせを含み得る。PLC50は、位置、速度、および加速度を含む、鋳造機の経時的な移動を制御し、エンコードする。PLC50からコンピュータ55に提供されたデータは、樋30に対する鋳型20の経時的な位置データ、樋30に対する鋳型20の速度、および機械取鍋25の経時的な傾斜範囲もしくは傾斜度を含み得る。
【0025】
それによって、例示的なプロセスでは、機械取鍋25は、所定の持続時間にわたって所定の程度だけ傾斜されて、溶融鉄を搬送システム10によって回転鋳型20に分配する。機械取鍋25の傾斜は、典型的に単一の連続的な動きで反転されて、溶融鉄が鋳込まれない初期位置もしくは静止位置まで戻る。鋳型20は、溶融鉄が例えば壁厚を含む所定の仕様を有する鋳造された物体(図示するように、パイプ)を提供するために意図された体積において鋳型の長さに沿って配設されるように、搬送システム10に対して移動される。
【0026】
実施形態100は、機械取鍋25から鋳込まれた溶融鉄流75の体積を計測するための機器をさらに備える。好ましい実施形態では、この機器は、マシンビジョン装置、例えば、機械取鍋25のリップ27を出た後、および樋30に到達する前の鉄流75の画像を表すデータを取得するように、
図4に示すように位置決めされた、本明細書ではカメラ65と称される画像取得装置である。さらに好ましい実施形態では、カメラ65は、Cognex Model821-10020-IRマシンビジョンシステムでもよい。カメラ65は、所定の時間間隔で鉄流75の一連の画像を取得し、それらの画像(または具体的には、それらを表すデータ)をコンピュータ55に提供するように構成されている。カメラ65によって取得された鉄流の例示的な画像を
図5に示す。コンピュータ55は、
図5に示すように、カメラ65で取得された画像から鉄流の直径を取得するソフトウェア、例えば(そのマシンビジョンシステムとともに提供される)Cognex In-Sight Exploreを含む。代替の実施形態は、例えば、連続的もしくはほぼ連続的なビデオフィードを所望のフレームレート(32フレーム/秒など)でコンピュータ55に提供し、コンピュータ55は、画像処理ソフトウェアを実行して、継続的に、もしくは任意の所望の時間間隔、もしくはその映像からのある時点に、鉄流の直径もしくは断面積を決定することなどによって鉄流の体積を計算し得る。
【0027】
図2は、
図1に示すような遠心鋳造機によって鋳造された、当業界では典型的なプロファイルの例示的な鉄パイプ500を示す図である。そのようなパイプのために、鋳造プロセスは5つの主ステップに分割され得る。それらのステップを示すデータを
図6A~
図6Cに示す。詳しくは、
図6Aは、カメラ65によって経時的に取得されたときの機械取鍋取鍋25から鋳込まれた鉄流75の直径をプロットした鋳込曲線100によって示されるような機械取鍋25の動作と、同じ時間軸上で鋳型20のベル端部からの注ぎ口35の位置をプロットした位置曲線200によって示されるような鋳造機5の動作とを反映している。上述したように、溶融鉄が機械取鍋25から鋳込まれた時から鋳型20に入った時までに時間遅延が存在する。
図6Bでは、鋳込曲線100は、この遅延によって時間軸上でオフセットされており、したがって
図6Bは、鋳型20に入る鉄の体積を、その時点の鋳型の位置と相関させている。
図6Cでは、曲線300および鋳込曲線100によって示された鋳造機の速度が経時的にプロットされており、この場合も鋳込曲線100は、溶融鉄が機械取鍋25を出る時と鋳型20に入る時との間の遅延によってオフセットされている。
【0028】
最初に、機械取鍋25は、所望の鋳込流量を得るために所定の位置まで傾けられる。鋳型20は、鋳型のベル部分における樋30の注ぎ口35と位置合わせされる。処理時間における効率性のため、これは、鉄流が機械取鍋25から鋳込を開始して、樋まで移動するときになされ得る。好ましくは、光電センサなどのセンサは、溶融鉄が樋30の注ぎ口35を出る時を検出する。溶融鉄が樋30の注ぎ口35を出るとき、鋳型20は、
図6A~
図6Cでそれぞれ110、210、および310と表記された曲線の部分に示すように、パイプ鋳型のベルがほぼ充填されるまで静止したままである。この期間は、フラグ遅延時間と称される。この例示的なプロセスでは、当該技術分野で知られているように、所望のパイプ仕様に従った寸法を有する砂中子が、鋳造機に取り付けられた機械的アームであるコアセッターによって鋳型の端部の所定位置に保持される。(このコアセッターはまた、溶融鉄が樋30の注ぎ口35を出たのを検出するセンサのための台としても機能し得る)。パイプのベルは、砂中子とパイプ鋳型との間に形成された高精度で画定された空洞内で鋳造される。所与の砂中子の仕様に対して、このベルを画定する空洞は、鋳造サイクル間で所定かつ一定の容積を有する。したがって、ベルの重量は、同様に一定であり、標準ベル重量と称される。この段階において、鋳込曲線100で示すように、溶融鉄の体積は、より一定の体積に到達するまで、溶融鉄流が最初に取鍋を出るときに増加する。
【0029】
次に、「フラグ」と表記された点において、鋳造機は、それぞれ120、220、および320と表記されたベル加速段階に入り、一定の速度まで加速する。次に、鉄流がほぼ一定の体積に達すると、溶融鉄がパイプのバレルに対応する鋳型の長さに沿ってほぼ均一に配設されるように、鋳造機は、130、230、および330と表記された段階中に鋳型をほぼ一定の速度で移動させる。この段階の終了に向かって、点135、235、335の近くに示すように、機械取鍋は傾き返され、これは通常「機械取鍋切り返し位置」と称され、鉄流の直径(およびその結果的に得られた体積)はすぐに減少するが、溶融鉄は樋30から鋳型20へ流れ続ける。機械がスピゴットと称されるバレルの端部に接近すると、機械は、スピゴット減速段階140、240、および340において減速して停止する。これは、パイプのスピゴット端部近くのバレルの一部分の充填に対応する。最後に、150、250、および350と表記されたスピゴットチェック段階中に、溶融金属の樋30の注ぎ口35から鋳型20への鋳込が停止するまで、鋳造機が鋳型20の端部付近で停止される時点に対応する遅延が発生する。この時間区分、150、250、350は、スピゴットチェック時間もしくは休止時間と称される。次いで、鋳造機は、鋳型の終端点に移動する。
【0030】
特にリサイクル材料を原料とした溶融鉄の所与の鋳込の実際の鉄分配フロー曲線は、予測するのが難しく、溶融鉄のバッチ間で変化する。その結果、所与の仕様セットの精密公差内で物体を鋳造することが困難な場合がある。一実施形態では、鋳造対象の物体は、そのバレルおよびスピゴットにわたって均一な壁厚を有するパイプである。壁厚は、鋳型への鉄分配の関数であり、したがって単位距離あたりで分配された鉄の体積は、均一な壁厚のパイプを提供するためには、鋳型の長さにわたって一定でなければならない。均一性壁厚(もしくは他の所望の仕様)は、所望の仕様を達成するために、鋳造機5の相対運動の、必要とされる加速度、減速度、および速度を鋳型20の体積的な分配要件に正確に関連付ける伝達関数に従って、鋳型20に対する運搬システム10の移動によって制御可能である。これは、出願人によって所有される上記で参照された特許において説明されている。壁厚もまた、機械取鍋からの鋳込速度、フラグ遅延時間、機械取鍋切り返し位置、およびスピゴットチェックもしくは休止時間の影響を受け、これらすべては鋳込の非線形性の影響を受ける。
【0031】
本発明の方法の一実施形態では、経時的な鋳造機の位置(したがってその速度)および鉄流75の体積に対応するデータが記録される。上記で説明した装置の実施形態では、鋳造機を経時的に表すデータはPLC50によって取得され(PLC50は、さらにその移動も制御し)、鉄流はカメラ65によって記録される。この実施形態では、コンピュータ55におけるソフトウェアは、カメラによって取得された画像データから鉄流の直径を抽出し、所定の間隔で、例えば0.1秒ごとに報告する。さらに、物体(例示的な鉄パイプなど)の鋳造の完了に際して、物体は、鋳型から放出され、その重量が秤70によって取得される。
【0032】
遠心鋳造された物体の壁厚の均一性を推定するため、本発明の方法の好ましい実施形態のさらなるステップを
図9に示す。これらのステップは、コンピュータ55によって実行されるソフトウェアにプログラムされることが好ましい。ステップ400で、鋳造データが取得される。具体的には、ステップ410で、鋳造されているパイプの外径と、
図2に示すプロファイルを有する例示的なパイプの場合、標準ベル重量とがメモリ(コンピュータ55がアクセス可能な当該技術分野で知られている任意のメモリまたは記憶媒体)から読み出される。ステップ420で、鋳造機位置データおよびパイプ重量がPLC50から受信される。代替的に、或る実施形態では、秤70は、データリンクを介してコンピュータ55に対して直接に重量を伝達してもよく、またはこの重量は、秤70上の視覚的な表示値を観察しているオペレータによってコンピュータ55に手作業で入力されてもよい。さらに他の実施形態では、パイプの標準重量がメモリから読み出され、以下のステップで説明する計算で使用される。パイプの実際の重量が計測された後、パイプ壁の計算された厚さは、実測値対標準値比率によって調整される。
【0033】
ステップ430で、鉄流の体積を経時的に表すデータがカメラ65から受信される。好ましい実施形態では、このデータは経時的な鉄流の画像を含み、この画像は、所望もしくは所定の間隔で、例えば毎秒10サンプルで鉄流のサンプルの直径を返すようにコンピュータ55内のソフトウェアによって処理される。他の実施形態では、データは、鉄流の連続的なビデオフィードでもよく、このデータは、経時的な鉄流の関連寸法を決定するためにコンピュータ55によってさらに処理される。さらなる実施形態では、カメラ65は、各画像を処理し、経時的な鉄流の直径、面積、または体積のうちの任意の1つを表すデータを伝達する。
【0034】
ステップ440で、秤70によって計測されたときのパイプの重量は、以下の式に従って体積に変換される。
【数1】
ここで、Vは体積、Wは鋳造された物体の計測重量、dは鋳造される材料の密度、この場合は溶融鉄の密度(0.238lbs/in
3)である。
【0035】
次に、ステップ450で、鉄流サンプルデータは、鋳造機位置データと相関される。上述したように、鉄流の任意のサンプルに関して、鉄流が取鍋を出る時(画像が取得された時)から樋を出る時までに遅延が存在する。それに応じて、各サンプルSは、サンプルを、サンプルが樋30を出て鋳型20に入った時の(鋳型20に対する)樋30の位置と相関させることによって、サンプルが鋳造されるパイプの長手方向位置Pと関連付けられる。好ましい実施形態では、鋳造機位置データPおよび鉄流画像データSは、同じ間隔、例えば毎秒10サンプルで同時にサンプリングされる。さらに、上述したように、センサは溶融鉄が樋30の注ぎ口35を出る時点を記録し、フラグと称される、鋳造機5が最初に移動した時点も既知であり、PLC50から取得される。溶融鉄が樋30の注ぎ口35を出る時から鋳造機5が最初に移動する時までの期間は、フラグ遅延時間と称される。フラグ時間の最も近いときに取得された鉄流サンプルおよびフラグ時間での鋳造機位置Pは、鉄流サンプルを鋳造機位置と整合させるように互いに関連付けられている。それに応じて、同じ時間間隔で取得されることが好ましいフラグ後の鉄流サンプルデータおよび鋳造機位置データが関連付けられる。鋳造機が静止しているときに、フラグ前に取得された鉄流サンプルは、パイプのベルと関連付けられる。例えば、例示的なプロセスにおいてフラグ遅延時間が2秒であり、サンプルが0.1秒ごとに取得される場合、最初の20サンプルは、ベルを形成するために砂中子と鋳型との間に鋳込まれた鉄の体積を表し、同様に標準ベル重量に対応する。
【0036】
ステップ460で、各鉄流サンプルの溶融鉄の体積が計算される。好ましい実施形態では、各サンプルの鉄流の断面積が決定される。例えば、各鉄流サンプルの直径が、鉄流の画像データから測定または決定され得る。次いで、面積が以下のように計算される。
【数2】
ここで、Aはサンプルのための鉄流の断面積であり、Dはサンプルの鉄流の直径である。次に、全サンプルの計算された断面積が合計される。鉄流の長さは、パイプの体積をこの合計で除算することによって決定される。
【数3】
ここで、Lは鉄流の長さ、Vはパイプの体積、nはサンプルSの数、Aは1~nの各サンプルSの面積である。次いで、各サンプルの溶融鉄の体積が決定されることができる。
ΔV
S=L×A
S
ここでΔV
Sはサンプル1~nのサンプルSの体積、Lは鉄流の長さ、Aはサンプルの断面積である。
【0037】
ステップ470で、サンプルは、対象のパイプの各部分と関連付けられ、それによって各区分の壁厚が計算され得る。
図2に示すような例示的なパイプ500は3つの異なる部分であるベル510、バレル530、およびスピゴット550を有する。ステップ450で鋳造機位置データ(したがってパイプの長手方向位置P)と相関されたサンプルを用いて、各区分と関連付けられたサンプルが識別され、分離される。例えば、n個のサンプルのセットにおいて、最初のx個のサンプルがベル510のための長手方向位置と関連付けられるとすると、サンプルyからサンプルnのサンプルは、スピゴット550のためのパイプ500上の長手方向位置と関連付けられ、したがって、その間のサンプルは、バレル530のためのパイプ500上の長手方向位置、すなわち、x+1からy-1と関連付けられる。
【0038】
上述のように、樋30は、ベル510およびスピゴット550が鋳造される時間の少なくとも一部の間は鋳型20に対して移動されない。バレル部分530のために、樋30は、鋳型20に対して継続的に移動する。鋳造機位置データを使用して、バレル550が鋳造されている間の時間増分dtにおいて鋳造機が移動する増分の長さdlが決定される。好ましい実施形態では、流量データが位置データとして同じ間隔でサンプリングされるため、dtはまた各鉄流サンプルと関連した時間増分を表す。
【0039】
パイプ500のベル510の推定壁厚は、以下の式に従って計算される。
【数4】
ここで、th
bellはベルの厚さ、ODはパイプの標準外径(鋳型20によって制御される)、xはベルと関連したサンプルの数、dV
iは1番目のサンプルからx+1番目のサンプルの各サンプルの体積、V
std_bellは標準ベル体積、P
1は1番目のサンプルの位置、P
xはx番目のサンプルの位置である。式(1)は、ベルが充填され、鋳造機が静止している期間に関連するので、零による除算を避けるためにフラグ後のその最初の移動に際して機械の位置P
x+1が式(1)で使用され、この時間増分に対応する体積は、同様に体積の合計に含まれる。
【0040】
パイプ500のバレル530の推定壁厚は、以下の式に従って計算される。
【数5】
ここで、th
barrelはバレルの厚さ、ODはパイプの標準外径(鋳型20によって制御される)、tはバレルが鋳造されている時間(すなわち、バレルと関連したサンプル(すなわち、式(1)または式(3)に含まれないサンプル)が及ぶ期間)、dVは各時間増分dt中の鉄の流れの体積、dlは鋳造機が時間増分dtにおいて移動する増分の長さである。
【0041】
パイプ500のスピゴット550の推定壁厚は、以下の式に従って計算される。
【数6】
ここで、th
spigotはスピゴットの厚さ、ODはパイプの標準外径(鋳型20によって制御される)、nはサンプルの総数(スピゴットと関連した最後のサンプルの番号でもある)、yはスピゴットに関連した最初のサンプルの番号、dVはy-1番目からn番目のサンプルの各サンプルの体積、P
yはy番目のサンプルの位置、P
nはn番目のサンプルの位置である。式(3)は、スピゴットが充填され、鋳造機が静止している期間に関連するので、零による除算を避けるためにスピゴットチェック位置前のその最後の移動に際して機械の位置P
y-1が式(3)で使用され、この時間増分に対応する体積は、同様に体積の合計に含まれる。
【0042】
有益なことに、上記の計算の結果として得られるデータは、パイプが鋳造された直後にパイプ壁厚均一性に関するフィードバックを提供するための様々なやり方で使用または表示されることができ、むしろ、パイプが物理的に計測された場合、冷却およびアニールプロセス後に数時間待つ必要がない。例えば、式(1)、(2)、および(3)から計算された厚さのプロットは、パイプ壁厚の均一性のグラフィック図を提供する。
図7は、壁厚の均一性の例示的なプロットである。許容可能な厚さの上限および下限は、パイプ壁が仕様を満たしていないかどうか、さらに満たしていない場合を示すように追加されてもよく、他の視覚インジケータがオペレータおよびプロセスを監視している任意の人に対して、パイプが仕様を満たしていないかどうかについて警告し得る。警報は、壁厚が仕様を満たしていないと判定された時の厚さのグラフィック表示使用の有無にかかわらず、システム自体(例えば、コンピュータ55上で実行されているソフトウェア)にプログラムされ得る。
【0043】
また、壁厚のばらつきは、
図6Cまたは
図8に示すように、経時的な鉄流の直径もしくは面積と、経時的な鋳造機の速度とをプロットすることによって一貫して示され、予測され得る。それらの図に示すように、鋳込曲線100および速度曲線300が時間的に整合されているとき、一定速度段階330中の鋳込曲線100および速度曲線300の傾きの差は、鋳造された結果としてもたらされたパイプの壁厚において均一性が欠如していることを示す。
【0044】
パイプ壁厚の均一性が鋳造段階において定量化され、好ましくは図的に表示される場合、均一性を回復するように、1つ以上の連続した鋳造サイクルに対して機械取鍋鋳込のための制御に対する調整がなされ得る。これらの調整は、鋳込速度および機械取鍋がその鋳込位置にある時を調整するために、機械取鍋の回転速度を変更することを含む。加えて、速度、ベル加速度、スピゴット減速度、およびスピゴットチェック時間を含む鋳造機(鋳型)移動はまた、パイプ壁の均一性を回復するように調整され得る。例えば、パイプ壁がバレルの先端付近で薄くなっている場合、ベル加速曲線はそれに応じて調整され得る。同様に、取鍋のティーポット部分の変更の結果としてもたらされた何らかの非線形モダリティが、壁厚増加を引き起こし、その後にバレルの特定の長さにわたるパイプ壁の壁厚減少が一貫して発生した場合、鋳込における非線形をオフセットするために、鋳造機速度は増加され、その後、減少され得る。どのような調整が誤差の修正を試みるために行われても、本発明の実施形態によって提供されるパイプ壁厚の推定される均一性は、ほんの数秒もしくは数分後の次の鋳造サイクルにおいて、その調整の有効性に関するフィードバックを提供し、アニールおよび従来の計測技術後に場合によっては数時間待つ必要はない。
【0045】
加えて、繰り返される鋳造サイクルにわたるパイプ壁厚データを検査することによって、鋳込における非線形性の早期検出および、その非線形性を引き起こす特定の条件の識別が可能になり得る。したがって、これは、仕様を満たさない多数のパイプが鋳造される前に、その非線形性が修正されることを可能にする。経時的な集約データの分析は、通常は欠陥を引き起こす程度に進行するまで検出できない取鍋条件における変化および傾向を明らかにできる。
【0046】
本発明が、その特定の好ましい実施形態を参照して説明および図示されたが、他の実施形態も可能である。したがって、上記説明は、全ての点において例示的および非限定的であると考えられる。したがって、本発明は、特許請求の範囲およびそれらに相当するものを参照して定義されるべきであり、特許請求の範囲の趣旨および範囲は、本明細書に含まれる好ましい実施形態の記載に限定されるべきではない。
【国際調査報告】