(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】霊芝胞子油およびその抗癌関連倦怠感薬の調製における使用
(51)【国際特許分類】
A61K 36/074 20060101AFI20240628BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240628BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240628BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240628BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240628BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240628BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240628BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240628BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240628BHJP
A61K 9/02 20060101ALI20240628BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240628BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61K36/074
A61P35/00
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/16
A61K9/14
A61K9/06
A61K9/10
A61K9/08
A61K9/02
A61K9/12
A61K9/70 401
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501638
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 CN2022106599
(87)【国際公開番号】W WO2023001161
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】202110830365.7
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520169753
【氏名又は名称】広州白雲山漢方現代薬業有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGZHOU HANFANG PHARMACEUTICAL CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.8 Wenquan Avenue,Conghua Guangzhou City,Guangdong 510970 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 菊妍
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼ 文▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】蔡 ▲鴻▼▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】李 菁
(72)【発明者】
【氏名】袁 ▲誠▼
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼ ▲亜▼明
(72)【発明者】
【氏名】曹 霖
(72)【発明者】
【氏名】唐 ▲順▼之
(72)【発明者】
【氏名】毛 禹康
(72)【発明者】
【氏名】王 国▲財▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 琴
【テーマコード(参考)】
4C076
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA01
4C076AA06
4C076AA11
4C076AA22
4C076AA25
4C076AA29
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA72
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB17
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4C076BB29
4C076BB31
4C076CC27
4C076FF67
4C088AA06
4C088AC18
4C088BA04
4C088CA10
4C088CA11
4C088CA14
4C088MA13
4C088MA17
4C088MA23
4C088MA28
4C088MA31
4C088MA32
4C088MA35
4C088MA37
4C088MA41
4C088MA43
4C088MA52
4C088MA56
4C088MA60
4C088MA63
4C088MA66
4C088NA06
4C088ZB26
(57)【要約】
霊芝胞子油およびその抗癌関連倦怠感薬の調製における使用である。上記霊芝胞子油は、トリグリセリドの含有量が90%よりも大きく、霊芝トリテルペノイド系化合物が未検出である。上記霊芝胞子油は、超臨界二酸化炭素抽出を行い、シリカゲルカラムを介して、石油エーテル-酢酸エチルの混合溶液で溶出させ、減圧下で濃縮して、真空乾燥することにより得られる。上記霊芝胞子油は、癌による倦怠感を有意に改善し、良好な安全性を有することを見出したため、抗癌関連倦怠感薬の調製に適用可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
霊芝胞子油であって、
霊芝胞子油において、霊芝トリテルペノイド系化合物が未検出である
ことを特徴とする霊芝胞子油。
【請求項2】
トリグリセリド系成分の含有量が90%よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の霊芝胞子油。
【請求項3】
請求項1に記載の霊芝胞子油の調製方法であって、
A、霊芝胞子を細胞壁破壊し、造粒して乾燥し、超臨界二酸化炭素抽出を行い、胞子油粗体を得るステップと、
B、適量のシリカゲルを取り、石油エーテル-酢酸エチルの混合溶液で溶解し、湿式法でカラムに充填し、溶出カラムを得るステップと、
C、前記胞子油粗体を前記溶出カラムに導入し、常圧で前記石油エーテル-酢酸エチルの混合溶液で溶出させ、溶出液を回収して合わせ、減圧下で濃縮して溶媒を除去した後、真空乾燥することにより、前記霊芝胞子油を得るステップと、を含む
ことを特徴とする霊芝胞子油の調製方法。
【請求項4】
前記胞子油粗体と前記シリカゲルとの質量比は、1:10~40であることを特徴とする請求項1に記載の霊芝胞子油の調製方法。
【請求項5】
前記石油エーテル-酢酸エチルの混合溶液において、石油エーテルと酢酸エチルとの体積比は、8.5~9.5:0.5~1.5である
ことを特徴とする請求項1に記載の霊芝胞子油の調製方法。
【請求項6】
前記石油エーテル-酢酸エチルの混合溶液において、石油エーテルと酢酸エチルとの体積比は、9.2:0.8である
ことを特徴とする請求項5に記載の霊芝胞子油の調製方法。
【請求項7】
前記溶出カラムのカラム内径と充填高さとの比が1:10~20であることを特徴とする請求項1に記載の霊芝胞子油の調製方法。
【請求項8】
請求項1に記載の霊芝胞子油の抗癌関連倦怠感薬の調製における使用。
【請求項9】
請求項1に記載の霊芝胞子油を含有する薬剤であって、
薬学的に許容される担体をさらに含有する
ことを特徴とする薬剤。
【請求項10】
錠剤、カプセル剤、トローチ剤、顆粒剤、粉末剤、丸剤、散剤、軟膏剤、丹剤、懸濁剤、溶液剤、注射剤、坐剤、クリーム剤、噴霧剤、点滴剤、貼付剤のいずれかである
ことを特徴とする請求項1に記載の霊芝胞子油の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬技術分野に関し、具体的に霊芝胞子油およびその抗癌関連倦怠感薬の調製における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌関連倦怠感(cancer-related fatigue、CRF)は、腫瘍患者の最も一般的な症状の1つであり、腫瘍治療における最も一般的な副作用である。全米総合癌情報ネットワーク(NCCN)によれば、癌関連倦怠感を「最近の活動に合致しない、癌または癌治療に関連した、日常生活機能の妨げとなるほどの、つらく持続する主観的な感覚で、身体的、感情的かつ/または認知的倦怠感または消耗感」と定義されている。国際疾病分類(ICD)によれば、癌関連倦怠感の症状を、非特異的脱力感、虚弱、全身衰弱、眠気、疲労などと説明されている。統計によると、癌関連倦怠感の症状は、腫瘍患者の75%以上に見られる。しかしながら、現在、癌関連倦怠感のメカニズムに関する明確な結論がなく、癌関連倦怠感に対する治療薬も存在しない。
【0003】
古代の漢方医学の文献には、「癌関連倦怠感」という記録はなく、ほとんどが「虚労」と表現されている。『素問・通評虚実論』には、「精気奪われれば則ち虚す」とあり、虚労の最初の定義と考えられる。『金匱要略・虚労篇』には、労傷により臓腑経絡、陰陽血気ともに虚し、一連の労傷症状がいずれも虚労だと考えている。現代漢方医学の絶え間ない発展を経て、一般的に癌関連倦怠感の多くは、情志失調、癌毒素の侵入、飲食不節などによって気、血、津液が損傷され、臓腑の気を損傷させ、長期にわたって回復しないことに起因すると考えられている。したがって、癌関連倦怠感の治療は、主に腫瘍そのものに基づき、臓腑の血気陰陽の虚実の違いによって弁証的に治療し、扶正▲去▼邪を主な治療原則とし、正気を扶助するとともに邪気を取り除き、疲労の原因をできる限り排除することに加えて、全体的な調整も重視すべきである。
【0004】
霊芝は、「仙草」とも呼ばれるほど漢方薬の中でも珍品とされており、心神不寧、不眠、動悸、肺虚、咳喘息、虚労、息切れ、食欲不振などに用いられる。霊芝胞子は、霊芝の完熟期に傘部から飛び出す極めて小さな胞子で、霊芝の生殖細胞であり、霊芝のすべての遺伝子活性成分を持っている。現代の薬理学的研究により、霊芝胞子は、抗腫瘍、免疫調節、血糖降下、血脂降下、抗炎症、抗酸素欠乏、ラジカル消去などの効能がある。霊芝胞子油は、霊芝胞子を細胞壁破壊や超臨界二酸化炭素抽出により得られる脂溶性活性物質であり、現代の研究によると、抗腫瘍、免疫強化、肝臓保護などの効能を有することがわかった。
【0005】
従来の研究では、霊芝の主な有効成分が霊芝トリテルペノイド系化合物であると一般的に考えられており、霊芝の効能に関する研究では、霊芝トリテルペノイドに重点が置かれている。そのため、従来の胞子油では、一般的に霊芝トリテルペノイド系化合物の割合が高く、その含有量が10~30%にも達する。しかしながら、割合が最も大きいトリグリセリド系化合物のような胞子油のうちのその他の成分に対する組成研究や効能分析は、まだ報告されていない。一方、霊芝による疲労回復効果に関する従来の研究は、生理的疲労の回復に焦点が当てられており、病理的疲労、特に癌関連倦怠感に対する回復効果はほとんど報告されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、霊芝胞子油およびその抗癌関連倦怠感薬の調製における使用を提供することを目的とする。上記の理由および必要性に基づき、霊芝胞子油が抗癌関連倦怠感の新規効能を有することを見出し、そして霊芝胞子油の薬剤としての新たな用途、すなわち癌関連倦怠感の治療または予防のための薬剤の調製における使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、以下の技術案を用いる。
【0008】
霊芝胞子油は、霊芝トリテルペノイド系化合物が未検出である。
【0009】
好ましくは、前記霊芝胞子油におけるトリグリセリド系成分の含有量が90%よりも大きい。
【0010】
本発明に係る霊芝胞子油は、トリグリセリドの含有量が90%よりも大きく、エルゴステロールの含有量が0%~0.5%で、霊芝トリテルペノイド系化合物が未検出である。現在、ほとんどの研究では、霊芝胞子油の免疫増強効果および抗腫瘍効果を霊芝トリテルペノイド系化合物の豊富さに起因しているとし、そのため霊芝胞子油に対する組成研究では、霊芝トリテルペノイド系化合物の豊富さに重点が置かれている。従来の研究結果によれば、トリテルペノイド系化合物の含有量の減少につれて、胞子油の様々な効果も弱まるか、またはなくなると想定されている。
【0011】
しかしながら、本発明は、病理的疲労、特に癌関連倦怠感に対し、霊芝胞子油におけるトリグリセリド系成分の含有量を90%よりも大きくすることで、優れた抗癌関連倦怠感効果があることを研究によって予想外に見出した。特に、霊芝トリテルペノイド系化合物を含有する胞子油に比べて、より優れた抗癌関連倦怠感効果が得られ、癌関連倦怠感による精神的疲労と肉体的疲労の緩和を以前には想像できなかったぐらい有意に改善することができる。
【0012】
前記霊芝胞子油の調製方法は、A、霊芝胞子を細胞壁破壊し、造粒して乾燥し、超臨界二酸化炭素抽出を行い、胞子油粗体を得るステップと、B、適量のシリカゲルを取り、石油エーテル-酢酸エチルの混合溶液で溶解し、湿式法でカラムに充填し、溶出カラムを得るステップと、C、前記胞子油粗体を前記溶出カラムに導入し、常圧で前記石油エーテル-酢酸エチルの混合溶液で溶出させ、溶出液を回収して合わせ、減圧下で濃縮して溶媒を除去した後、真空乾燥することにより、前記霊芝胞子油を得るステップと、を含む。
【0013】
測定により、この霊芝胞子油は、トリグリセリドの含有量が90%よりも大きく、エルゴステロールの含有量が0%~0.5%で、トリテルペノイドが未検出である。このプロセスによれば、トリテルペノイド系化合物をほとんど含有しない胞子油が得られる一方、実際にトリテルペノイド系化合物が濃縮されており、トリテルペノイド系含有量の高い他の新規製品を得ることが期待される。
【0014】
好ましくは、前記胞子油粗体と前記シリカゲルとの質量比は、1:(10~40)である。
【0015】
好ましくは、前記石油エーテル-酢酸エチルの混合溶液において、石油エーテルと酢酸エチルとの体積比は、(8.5~9.5):(0.5~1.5)である。
【0016】
好ましくは、前記石油エーテル-酢酸エチルの混合溶液において、石油エーテルと酢酸エチルとの体積比は、9.2:0.8である。
【0017】
好ましくは、前記溶出カラムのカラム内径と充填高さとの比が1:(10~20)である。
【0018】
前記霊芝胞子油の抗癌関連倦怠感薬の調製における使用である。
【0019】
前記霊芝胞子油を含有する薬剤は、薬学的に許容される担体をさらに含有する。
【0020】
好ましくは、前記薬剤は、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、顆粒剤、粉末剤、丸剤、散剤、軟膏剤、丹剤、懸濁剤、溶液剤、注射剤、坐剤、クリーム剤、噴霧剤、点滴剤、貼付剤のいずれかである。
【発明の効果】
【0021】
従来技術に比べて、本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0022】
本発明は、トリテルペノイド系化合物以外の霊芝成分に対し実験、研究した結果、トリグリセリドの含有量が90%よりも大きく、エルゴステロールの含有量が0%~0.5%の胞子油が、担がんマウスに対して有意な抗倦怠感効果を有することを見出した。霊芝トリテルペノイド系化合物を含有する胞子油に比べて、本発明に係る霊芝胞子油は、癌関連倦怠感による精神的疲労と肉体的疲労の緩和を有意に改善することを予想外に見出し、癌患者の日常生活の質を有意に改善することが期待される。また、本発明に係る霊芝胞子油と化学療法剤群を併用した動物の死亡や有意な体重減少が示されず、担がんマウスの摂餌量にも影響しないことから、霊芝胞子油の動物に対する安全性が良好であることが示された。本発明に係る霊芝胞子油は、抗癌関連倦怠感薬の調製に適用可能である。また、単離されたトリテルペノイド系化合物の濃縮により、トリテルペノイド系含有量の高い他の新規製品の開発も期待される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】効果例4のヒト胃がん細胞移植マウスモデルの体重の平均値の経時変化図である。
【
図2】効果例4のヒト胃がん細胞移植マウスモデルの1日摂取量の平均値の経時変化図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の目的、技術案および利点をより詳しく説明するために、以下、図面と具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに説明する。
【0025】
実施例1
霊芝胞子を細胞壁破壊し、造粒して乾燥し、超臨界二酸化炭素抽出を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて吸着分離することにより、霊芝胞子油を得た。分離工程は以下の通りである。適量のシリカゲルを取り、石油エーテル:酢酸エチル=9.2:0.8(体積比)の溶液で溶解し、湿式法でカラムに充填し、カラム内径と充填高さとの比を1:10とする。胞子油とシリカゲルとの質量比が1:28となるように胞子油を導入し、常圧で石油エーテル:酢酸エチル=9.2:0.8(体積比)の溶液で溶出させ、溶出液を回収して合わせ、減圧下で濃縮して溶媒を除去した後、真空乾燥することにより、胞子油サンプルを得た。
【0026】
この霊芝胞子油におけるトリグリセリドの含有量が90%よりも大きく、エルゴステロールの含有量が0%~0.5%で、霊芝トリテルペノイド系化合物が未検出である。
【0027】
実施例2
霊芝胞子を細胞壁破壊し、造粒して乾燥し、超臨界二酸化炭素抽出を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて吸着分離することにより、霊芝胞子油を得た。分離工程は以下の通りである。適量のシリカゲルを取り、石油エーテル:酢酸エチル=9.2:0.8(体積比)の溶液で溶解し、湿式法でカラムに充填し、カラム内径と充填高さとの比を1:13とする。胞子油とシリカゲルとの質量比が1:28となるように胞子油を導入し、常圧で石油エーテル:酢酸エチル=9.2:0.8(体積比)の溶液で溶出させ、溶出液を回収して合わせ、減圧下で濃縮して溶媒を除去した後、真空乾燥することにより、胞子油サンプルを得た。
【0028】
この霊芝胞子油におけるトリグリセリドの含有量が90%よりも大きく、エルゴステロールの含有量が0%~0.5%で、霊芝トリテルペノイド系化合物が未検出である。
【0029】
実施例3
霊芝胞子を細胞壁破壊し、造粒して乾燥し、超臨界二酸化炭素抽出を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて吸着分離することにより、霊芝胞子油を得た。分離工程は以下の通りである。適量のシリカゲルを取り、石油エーテル:酢酸エチル=9.2:0.8(体積比)の溶液で溶解し、湿式法でカラムに充填し、カラム内径と充填高さとの比を1:15とする。胞子油とシリカゲルとの質量比が1:28となるように胞子油を導入し、常圧で石油エーテル:酢酸エチル=9.2:0.8(体積比)の溶液で溶出させ、溶出液を回収して合わせ、減圧下で濃縮して溶媒を除去した後、真空乾燥することにより、胞子油サンプルを得た。
【0030】
この霊芝胞子油におけるトリグリセリドの含有量が90%よりも大きく、エルゴステロールの含有量が0%~0.5%で、霊芝トリテルペノイド系化合物が未検出である。
【0031】
実施例4
霊芝胞子を細胞壁破壊し、造粒して乾燥し、超臨界二酸化炭素抽出を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて吸着分離することにより、霊芝胞子油を得た。分離工程は以下の通りである。適量のシリカゲルを取り、石油エーテル:酢酸エチル=9.2:0.8(体積比)の溶液で溶解し、湿式法でカラムに充填し、カラム内径と充填高さとの比を1:15とする。胞子油とシリカゲルとの質量比が1:30となるように胞子油を導入し、常圧で石油エーテル:酢酸エチル=9.2:0.8(体積比)の溶液で溶出させ、溶出液を回収して合わせ、減圧下で濃縮して溶媒を除去した後、真空乾燥することにより、胞子油サンプルを得た。
【0032】
この霊芝胞子油におけるトリグリセリドの含有量が90%よりも大きく、エルゴステロールの含有量が0%~0.5%で、霊芝トリテルペノイド系化合物が未検出である。
【0033】
実施例5
霊芝胞子を細胞壁破壊し、造粒して乾燥し、超臨界二酸化炭素抽出を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて吸着分離することにより、霊芝胞子油を得た。分離工程は以下の通りである。適量のシリカゲルを取り、石油エーテル:酢酸エチル=9.3:0.7(体積比)の溶液で溶解し、湿式法でカラムに充填し、カラム内径と充填高さとの比を1:15とする。胞子油とシリカゲルとの質量比が1:35となるように胞子油を導入し、常圧で石油エーテル:酢酸エチル=9.3:0.7(体積比)の溶液で溶出させ、溶出液を回収して合わせ、減圧下で濃縮して溶媒を除去した後、真空乾燥することにより、胞子油サンプルを得た。
【0034】
この霊芝胞子油におけるトリグリセリドの含有量が90%よりも大きく、エルゴステロールの含有量が0%~0.5%で、霊芝トリテルペノイド系化合物が未検出である。
【0035】
実施例6
霊芝胞子を細胞壁破壊し、造粒して乾燥し、超臨界二酸化炭素抽出を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて吸着分離することにより、霊芝胞子油を得た。分離工程は以下の通りである。適量のシリカゲルを取り、石油エーテル:酢酸エチル=9.2:0.8(体積比)の溶液で溶解し、湿式法でカラムに充填し、カラム内径と充填高さとの比を1:15とする。胞子油とシリカゲルとの質量比が1:33となるように胞子油を導入し、常圧で石油エーテル:酢酸エチル=9.2:0.8(体積比)の溶液で溶出させ、溶出液を回収して合わせ、減圧下で濃縮して溶媒を除去した後、真空乾燥することにより、胞子油サンプルを得た。
【0036】
この霊芝胞子油におけるトリグリセリドの含有量が90%よりも大きく、エルゴステロールの含有量が0%~0.5%で、霊芝トリテルペノイド系化合物が未検出である。
【0037】
実施例7
霊芝胞子を細胞壁破壊し、造粒して乾燥し、超臨界二酸化炭素抽出を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて吸着分離することにより、霊芝胞子油を得た。分離工程は以下の通りである。適量のシリカゲルを取り、石油エーテル:酢酸エチル=9.0:1.0(体積比)の溶液で溶解し、湿式法でカラムに充填し、カラム内径と充填高さとの比を1:17とする。胞子油とシリカゲルとの質量比が1:35となるように胞子油を導入し、常圧で石油エーテル:酢酸エチル=9.0:1.0(体積比)の溶液で溶出させ、溶出液を回収して合わせ、減圧下で濃縮して溶媒を除去した後、真空乾燥することにより、胞子油サンプルを得た。
【0038】
この霊芝胞子油におけるトリグリセリドの含有量が90%よりも大きく、エルゴステロールの含有量が0%~0.5%で、霊芝トリテルペノイド系化合物が未検出である。
【0039】
実施例8
霊芝胞子を細胞壁破壊し、造粒して乾燥し、超臨界二酸化炭素抽出を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて吸着分離することにより、霊芝胞子油を得た。分離工程は以下の通りである。適量のシリカゲルを取り、石油エーテル:酢酸エチル=9.5:0.5(体積比)の溶液で溶解し、湿式法でカラムに充填し、カラム内径と充填高さとの比を1:10とする。胞子油とシリカゲルとの質量比が1:10となるように胞子油を導入し、常圧で石油エーテル:酢酸エチル=9.5:0.5(体積比)の溶液で溶出させ、溶出液を回収して合わせ、減圧下で濃縮して溶媒を除去した後、真空乾燥することにより、胞子油サンプルを得た。
【0040】
この霊芝胞子油におけるトリグリセリドの含有量が90%よりも大きく、エルゴステロールの含有量が0%~0.5%で、霊芝トリテルペノイド系化合物が未検出である。
【0041】
実施例9
霊芝胞子を細胞壁破壊し、造粒して乾燥し、超臨界二酸化炭素抽出を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて吸着分離することにより、霊芝胞子油を得た。分離工程は以下の通りである。適量のシリカゲルを取り、石油エーテル:酢酸エチル=8.5:1.5(体積比)の溶液で溶解し、湿式法でカラムに充填し、カラム内径と充填高さとの比を1:20とする。胞子油とシリカゲルとの質量比が1:40となるように胞子油を導入し、常圧で石油エーテル:酢酸エチル=8.5:1.5(体積比)の溶液で溶出させ、溶出液を回収して合わせ、減圧下で濃縮して溶媒を除去した後、真空乾燥することにより、胞子油サンプルを得た。
【0042】
この霊芝胞子油におけるトリグリセリドの含有量が90%よりも大きく、エルゴステロールの含有量が0%~0.5%で、霊芝トリテルペノイド系化合物が未検出である。
【0043】
効果例1
霊芝胞子油によるヒト肺がん細胞移植マウスモデルの抗倦怠感効果
1.実験動物
半分が雄、半分が雌のSPFグレードのヌードマウス計32匹を用意し、SPF動物実験ハウスのヌードマウス室で、室温16~26℃、相対湿度40%~70%、12時間明・12時間暗のサイクルの条件で、自由摂取させて飼育した。
【0044】
2.実験材料
被験物質1(市販の霊芝トリテルペノイド系成分を含有する霊芝胞子油)と、被験物質2(本発明による霊芝胞子油、トリグリセリドの含有量が90%よりも大きく、エルゴステロールの含有量が0%~0.5%で、霊芝トリテルペノイド系化合物未検出)とを、投与前に対応する濃度の溶液になるようにコーン油で調製した後、直ちに使用した。
細胞株:ヒト肺がん細胞株NCI-H460である。
【0045】
3.実験方法
(1)担がんヌードマウスモデルの作成
NCI-H460細胞を必要量まで培養し、消化して計数した後、0.15ml/匹でヌードマウスの右上肢近傍に接種してモデルを作成し(ブランク対照群では接種せず)、腫瘍サイズが100mm3程度に達した後、ヌードマウスを、ブランク対照群(Control)、腫瘍モデル群(Model)、被験物質1群(Sample1)、被験物質2群(Sample2)の4群、各8匹、半分が雄、半分が雌となるようにランダムに分けた。
【0046】
(2)投与方法
投与経路:被験物質1、被験物質2、コーン油を強制経口投与した。
週ごと投与頻度:被験物質1、被験物質2、コーン油を1日1回投与した。
投与周期:被験物質1、被験物質2、コーン油を4週間連続投与した。
投与量:被験物質10mL/kg。
投与容量:0.1mL/体重10g、即ち10mL/kgで投与した。
【0047】
(3)尾懸垂試験
投与後28日目に、担がんマウスの尾懸垂試験を行った。マウスの尾(尾の先端から2cmの部位)を試験機器にテープで固定し、マウスを吊り下げることで、マウスが異常な姿勢を克服しようともがき続け、完全にもがくのをやめて静止した状態を「無動」とし、6分間中のマウスの無動時間を記録した。
【0048】
4.実験結果
表3は結果を示す。投与後28日目には、腫瘍モデル群の担がんマウスは、ブランク対照群よりも平均無動時間が有意に高く、両群間に有意差があった(P<0.05)。被験物質1群と被験物質2群の担がんマウスは、腫瘍モデル群よりも平均無動時間が有意に低く、両群と腫瘍モデル群との間にいずれも有意差があった(P<0.05)。被験物質2群の担がんマウスは、被験物質1群よりも平均無動時間が有意に低く、両群間に有意差があった(P<0.05)。
【0049】
【0050】
尾懸垂試験では、マウスは、異常な姿勢をとっているため、これを克服するために精神的、肉体的に可能な限りもがき続ける。つまり、マウスが終始倦怠感を感じなければ、理論的な無動時間は0である。逆にマウスがもがいてる中に精神的、肉体的な倦怠感を感じれば、もがくのをやめて休憩に入り、その時間が記録される。したがって、平均無動時間が長いほど、その間にマウスが倦怠感を精神的、肉体的により感じることになる。
【0051】
尾懸垂試験の結果、被験物質1および被験物質2の投与は、担がんマウスの無動時間を有意に短縮し、且つ被験物質2は、被験物質1よりも担がんマウスの無動時間をさらに有意に短縮し、ひいては腫瘍のないマウス(ブランク対照群)のレベルまで短縮した。これは、本発明によるトリテルペノイドを含まない霊芝胞子油が、霊芝トリテルペノイド系化合物を含有する胞子油に比べて、担がんマウスに対して有意な抗倦怠感効果を有し、ひいては癌のない状態のレベルに達するため、癌関連倦怠感による精神的疲労と肉体的疲労の緩和を有意に改善することを示した。
【0052】
これにより、本発明によるトリテルペノイドを含まない霊芝胞子油のみを用いて、さらなる薬物併用効果実験および安全性実験を行った。
【0053】
効果例2
霊芝胞子油による肝臓がん細胞移植マウスモデルの抗倦怠感効果
1.実験動物
雌のSPFグレードの昆明マウス計40匹を用意し、SPF動物実験ハウスのマウス室で、室温16~26℃、相対湿度40%~70%、12時間明・12時間暗のサイクルの条件で、自由摂取させて飼育した。
【0054】
2.実験材料
被験物質(本発明による霊芝胞子油)を、投与前に対応する濃度の溶液になるようにコーン油で調製した後、直ちに使用した。化学療法剤(シクロホスファミド、バッチ番号:8D231A、200mg/バイアル、Baxter Oncology GmbH製)を、投与前に対応する濃度の溶液になるように生理食塩水で調製した後、直ちに使用した。
細胞株:マウス肝臓がん細胞株H22である。
【0055】
3.実験方法
(1)担がんマウスモデルの作成
H22細胞を必要量まで培養し、消化して計数した後、0.1ml/匹でマウスの右上肢近傍に接種してモデルを作成し、腫瘍サイズが100mm3程度に達した後、マウスを、モデル対照群(Control)、シクロホスファミド群(CTX)、霊芝胞子油群(GLSO)、シクロホスファミド+霊芝胞子油群(CTX+GLSO)の4群、各10匹にランダムに分けた。
【0056】
(2)投与方法
投与経路:霊芝胞子油を強制経口投与し、シクロホスファミドを尾静脈投与した。
週ごと投与頻度:1日1回、5日間連続投与した後、2日間休薬した。
投与周期:3週間連続投与した。
投与量:霊芝胞子油10mL/kg、シクロホスファミド30mg/kg。
投与容量:0.1mL/体重10g、即ち10mL/kgで投与した。
【0057】
(3)限界遊泳試験
投与後13、20日目に、担がんマウスの限界遊泳試験をそれぞれ行った。水深30cm以上、水温25±1℃の水箱に担がんマウスを入れて遊泳させた。担がんマウスの泳ぎ始めてから力尽きに至るまでの時間を記録した。実験の全過程で各担がんマウスの四肢を終始動かしたままとし、四肢を動かさずに水面に浮いた場合は、木の棒で水面付近をかき混ぜた。担がんマウスが10s以上水没して単独で浮き上がらなかった場合を力尽きと判定した。平均遊泳時間が360sを超えた場合、360sで統計する。
【0058】
4.実験結果
表1は結果を示す。投与後13、20日目には、霊芝胞子油のみを投与した担がんマウスは、モデル群よりも平均遊泳時間が有意に高く、両群間に有意差があった(P<0.05)。投与後13、20日目には、シクロホスファミドと霊芝胞子油を併用投与した担がんマウスは、モデル群よりも平均遊泳時間が有意に高く、両群間に有意差があった(P<0.05)。
【0059】
【0060】
その結果、霊芝胞子油は、担がんマウスの限界遊泳時間を有意に延長した。これは、本発明による霊芝胞子油が肝臓がんの担がんマウスに対して有意な抗倦怠感効果を有することを示した。
【0061】
効果例3
霊芝胞子油によるヒト胃がん細胞移植マウスモデルの抗倦怠感効果
1.実験動物
雌のSPFグレードのヌードマウス計40匹を用意し、SPF動物実験ハウスのヌードマウス室で、室温16~26℃、相対湿度40%~70%、12時間明・12時間暗のサイクルの条件で、自由摂取させて飼育した。
【0062】
2.実験材料
被験物質(本発明による霊芝胞子油)を、投与前に対応する濃度の溶液になるようにコーン油で調製した後、直ちに使用した。化学療法剤(オキサリプラチン、バッチ番号:190911AM、50mg/バイアル、江蘇恒瑞医薬股フン有限公司製)を、投与前に対応する濃度の溶液になるように生理食塩水で調製した後、直ちに使用した。
細胞株:ヒト胃がん細胞株MNK45である。
【0063】
3.実験方法
(1)担がんヌードマウスモデルの作成
MNK45細胞を必要量まで培養し、消化して計数した後、0.1ml/匹でヌードマウスの右上肢近傍に接種してモデルを作成し、腫瘍サイズが100mm3程度に達した後、ヌードマウスを、モデル対照群(Control)、化学療法剤群(Oxaliplatin)、化学療法剤+被験物質群(Oxaliplatin+Sample)、化学療法剤+コーン油群(Oxaliplatin+Oil)の4群、各10匹にランダムに分けた。
【0064】
(2)投与方法
投与経路:被験物質とコーン油を強制経口投与し、オキサリプラチンを尾静脈投与した。
週ごと投与頻度:被験物質とコーン油を1日1回、5日間連続投与した後、2日間休薬した。オキサリプラチンを週に2回、それぞれ1日目と4日目に投与した。
投与周期:化学療法剤を6週間投与し、被験物質とコーン油を6週間投与した後、試験終了まで継続して投与した。
投与量:被験物質10mL/kg、オキサリプラチン2mg/kg。
投与容量:0.1mL/体重10g、即ち10mL/kgで投与した。
【0065】
(3)限界遊泳試験
投与後37、49日目に、担がんマウスの限界遊泳試験をそれぞれ行った。水深30cm以上、水温25±1℃の水箱に担がんマウスを入れて遊泳させた。担がんマウスの泳ぎ始めてから力尽きに至るまでの時間を記録した。実験の全過程で各担がんマウスの四肢を終始動かしたままとし、四肢を動かさずに水面に浮いた場合は、木の棒で水面付近をかき混ぜた。担がんマウスが10s以上水没して単独で浮き上がらなかった場合を力尽きと判定した。平均遊泳時間が360sを超えた場合、360sで統計する。
【0066】
4.実験結果
表2は結果を示す。投与後37日目には、化学療法剤のオキサリプラチンと霊芝胞子油を併用投与した担がんマウスは、モデル群よりも平均遊泳時間が有意に高く、両群間に有意差があった(P<0.05)。化学療法剤を休薬した1週間後、即ち投与後49日目には、担がんマウスは、モデル群よりも平均遊泳時間が有意に高く、有意差があった(P<0.05)。
【0067】
【0068】
その結果、被験物質の投与は、担がんマウスの限界遊泳時間を有意に延長した。これは、本発明による霊芝胞子油が担がんマウスに対して有意な抗倦怠感効果を有することを示した。
【0069】
効果例4
霊芝胞子油の生体内安全性の検討
1.霊芝胞子油が担がんマウスの体重に影響しない
図1は結果を示す。霊芝胞子油とオキサリプラチンとの併用投与後、担がんマウスの有意な体重減少が見られなかった。
【0070】
2.霊芝胞子油が担がんマウスの摂餌量に影響しない
図2は結果を示す。霊芝胞子油とオキサリプラチンとの併用投与後、担がんマウスの有意な摂餌量減少が見られなかった。
【0071】
以上により、本発明に係る霊芝胞子油は、担がんマウスに対して有意な抗倦怠感効果を有する。また、本発明に係る霊芝胞子油と化学療法剤群を併用した動物が死亡や有意な体重減少が示されず、担がんマウスの摂餌量にも影響しないことから、霊芝胞子油の動物に対する安全性が良好であることが示された。本発明に係る霊芝胞子油は、抗癌関連倦怠感薬の調製に適用可能である。
【0072】
以上開示したものは、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。本発明の請求項に対する均等置換は、本発明の範囲に属するものである。
【国際調査報告】