(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】三水酸化アルミニウム組成物
(51)【国際特許分類】
C01F 7/022 20220101AFI20240628BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240628BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240628BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20240628BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C01F7/022
C08L101/00
C08K3/22
C09K21/02
C09K5/14 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501678
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2022069267
(87)【国際公開番号】W WO2023285353
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524013311
【氏名又は名称】アンカーポート エヌ.ブイ.
(71)【出願人】
【識別番号】524013322
【氏名又は名称】シベルコ ドイチュラント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】アラム、 クアディーア
(72)【発明者】
【氏名】クレウセン、 ジェラルドゥス ランバルトゥス
(72)【発明者】
【氏名】ネムニク―ミュラー、 ターニャ
(72)【発明者】
【氏名】マリナ―バルビエ、 サラ ルイザ
【テーマコード(参考)】
4G076
4H028
4J002
【Fターム(参考)】
4G076AA10
4G076AC04
4G076BC08
4G076CA26
4G076DA02
4G076DA05
4G076DA20
4H028AA12
4J002AA001
4J002AE031
4J002BB021
4J002CD001
4J002CF001
4J002CP031
4J002DE146
4J002FD136
4J002GC00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ01
(57)【要約】
本発明は三水酸化アルミニウム組成物に関する。本発明はまた、三水酸化アルミニウム組成物を形成する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
50~500μmの最大寸法を有する、第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子50重量%~85重量%と;
50μm未満の最大寸法を有する、第二の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子15重量%~50重量%と;任意選択で
不可避不純物と
を含む(またはからなる)、三水酸化アルミニウム組成物。
【請求項2】
前記第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子が:50~300μm;または75~250μm;または100~150μm(プラスまたはマイナス50μm)の最大寸法を有する、請求項1に記載の三水酸化アルミニウム組成物。
【請求項3】
前記第二の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子が:40μm未満;または30μm未満(プラスまたはマイナス5μm)の最大寸法を有する、請求項1または請求項2に記載の三水酸化アルミニウム組成物。
【請求項4】
前記第一の複数の粉砕ATH粒子が:
25~40μm;または25~35μm;または31~33μm;または32μmのD10;および/または
90~110μm;または100~104μm;または102μmのD50;および/または
200~300μm;または200~220μm;または210μmのD97
を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の三水酸化アルミニウム組成物。
【請求項5】
前記第二の複数の粉砕ATH粒子が:
1.0~4.0μm;または1.0~2.0μm;または1.5μmのD10;および/または
6~12μm;または8μmのD50;および/または
25~40μm;または30~34μm;または32μmのD97
を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の三水酸化アルミニウム組成物。
【請求項6】
前記三水酸化アルミニウム組成物が:
1~3μm;または2μmのD10;および/または
20~24μm;または21.86μmのD50;および/または
180~220μm;または198μmのD97
を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の三水酸化アルミニウム組成物。
【請求項7】
前記第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子が:76mm
3/g以下;または76mm
3/g~50mm
3/g;または76mm
3/g~65mm
3/gの総累積体積を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の三水酸化アルミニウム組成物。
【請求項8】
前記第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子が:3m
2/g以下;または2.95m
2/g以下;または3m
2/g~1m
2/g;または2.95m
2/g~2.8m
2/gの比表面積を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の三水酸化アルミニウム組成物。
【請求項9】
前記三水酸化アルミニウム組成物が:60~85重量%;または65~80重量%;または70~80重量%;または55~65重量%の前記第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の三水酸化アルミニウム組成物。
【請求項10】
前記三水酸化アルミニウム組成物が:15~40重量%;または20~35重量%;または20~30重量%;または35~45重量%の前記第二の複数の粉砕ATH粒子を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の三水酸化アルミニウム組成物。
【請求項11】
前記第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子が300μmの最大寸法を有し;かつ
第二の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子が30μmの最大寸法を有する、
請求項1~10のいずれか一項に記載の三水酸化アルミニウム組成物。
【請求項12】
前記三水酸化アルミニウム組成物中、前記第一の複数の三水酸化アルミニウム粒子対前記第二の複数の三水酸化アルミニウム粒子の前記比が(重量%で):12.5(第一):3.5(第二)、各々に関して、プラスまたはマイナス2.5;または8(第一):1.5(第二)、各々に関して、プラスまたはマイナス0.5;または10(第一):5(第二)、各々に関して、プラスまたはマイナス1;または4(第一):2.2(第二)、各々に関して、プラスまたはマイナス0.5である、請求項1~11のいずれか一項に記載の三水酸化アルミニウム組成物。
【請求項13】
前記第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子対前記第二の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子の前記比が:前記三水酸化アルミニウム組成物における40%v/v以下の空隙(または孔);または前記三水酸化アルミニウム組成物における34%v/v以下の空隙(または孔)を生じる、請求項1~12のいずれか一項に記載の三水酸化アルミニウム組成物。
【請求項14】
前記三水酸化アルミニウム組成物が、2.42g/cm
3(プラスまたはマイナス0.2g/cm
3)の密度を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の三水酸化アルミニウム組成物。
【請求項15】
前記三水酸化アルミニウム組成物が、前記第一の複数の粉砕ATH粒子および前記第二の複数の粉砕ATH粒子の両方に関して、均一な粒子分布を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の三水酸化アルミニウム組成物。
【請求項16】
前記三水酸化アルミニウム組成物中の前記粒子が、0.1~305μmの最大寸法分布を有する、請求項1~15に記載のいずれか一項の三水酸化アルミニウム組成物。
【請求項17】
三水酸化アルミニウム組成物を作製するためのプロセスであって、以下の工程:
50重量%~85重量%の、50~500μmの最大寸法を有する第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子を提供する工程と;
15重量%~50重量%の、50μm未満の最大寸法を有する第二の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子を提供する工程と;
前記第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子および前記第二の複数の粉砕三水酸化アルミニウムを混合する工程と
を含む、プロセス。
【請求項18】
前記三水酸化アルミニウム組成物において、前記第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子および/または前記第二の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子が、請求項1~16のいずれか一項におけるものである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記混合工程が:25℃で0.1~8時間;または25℃で0.3~4時間;または25℃で0.5~2時間;または25℃で均一な粒子分布を持つ混合物が形成されるまで、行われる、請求項17または18に記載のいずれかのプロセス。
【請求項20】
前記混合物中の前記第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子対前記第二の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子の前記比が(重量%で):12.5(第一):3.5(第二)、各々に関して、プラスまたはマイナス2.5;または8(第一):1.5(第二)、各々に関して、プラスまたはマイナス0.5;または10(第一):5(第二)、各々に関して、プラスまたはマイナス1;または4(第一):2.2(第二)、各々に関して、プラスまたはマイナス0.5である、請求項17~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
難燃剤としておよび/または熱管理充填剤として使用するための、請求項1~16のいずれか一項の三水酸化アルミニウム組成物。
【請求項22】
ポリマーおよび請求項1~16のいずれか一項に記載の三水酸化アルミニウム組成物を含むポリマー複合物。
【請求項23】
前記ポリマーが、シリコーン、エポキシ、ポリエステル、ポリエチレンワックスおよび/またはポリオールで形成されたポリマーであり;任意選択で、前記ポリマーが熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーである、請求項22に記載のポリマー複合物。
【請求項24】
前記ポリマー複合物が(重量%で):
50~90の請求項1~16のいずれか一項に記載の三水酸化アルミニウム組成物と;
10~50のポリマーとを;または
60~80の請求項1~16のいずれか一項に記載の三水酸化アルミニウム組成物と;
20~40のポリマーとを
含む、請求項22または請求項23に記載のポリマー複合物。
【請求項25】
前記ポリマー複合物が:2~7W/mK;2~4W/mK;または2.5~3W/mK;または2.6~2.9W/mK;または2.8~2.9W/mKの熱伝導率を有する、請求項22~24のいずれか一項に記載のポリマー複合物。
【請求項26】
前記ポリマー複合物が:13Pa・s以下;または11Pa・s以下;または9Pa・s以下の粘度を有する、請求項22~25のいずれか一項に記載のポリマー複合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三水酸化アルミニウム組成物に関する。本発明はまた、三水酸化アルミニウム組成物を形成する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
三水酸化アルミニウム(ATH)は、限定されるわけではないが、ワイヤ、ケーブル、家具、輸送、電気製品および建築材料を含む、広範囲の材料において、難燃剤として、一般的に用いられる。典型的には、ATHは、シリコーン、エポキシ、ポリエステルおよび/またはポリオールから形成されるポリマーマトリックス中の(すなわちポリマーを含む複合物(composite)中の)熱伝導性充填剤として用いられる。
【0003】
ATHは、白色粉末であり、望ましい熱放散特性、好ましい密度(典型的には2.42g/cm3プラスまたはマイナス0.2g/cm3)および電流に関して非伝導性の性質を有するため、ATHは好ましい難燃剤である。
【0004】
ATH組成物には、2つ以上の異なる物理的特性(例えば2つ以上の異なる粒子サイズ、2つ以上の異なる粒子サイズ分布および/または2つ以上の異なる形態)を持つATHが含まれうる。2つ以上の異なる物理的特性を持つATH粒子の組み合わせは、生じたATH組成物がポリマーマトリックス中で用いられる場合、すなわちポリマー複合物に含まれる場合、熱伝導率および粘度に関して、優れた特性を提供する。
【0005】
1つの既知のATH組成物は、Nabaltec AGによって製造されるAPYRAL(商標) 20Xである。APYRAL(商標) 20Xは、粉砕(ground)ATH粒子および沈殿ATH粒子の両方の組み合わせであると考えられる。APYRAL(商標) 20Xは、ポリマー複合物中で用いられた際、有益な粘度特性および熱伝導特性を有する。
【0006】
有益な熱伝導特性および有益な粘度特性を有するATH組成物に関する必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、既知のATH組成物を全体としてまたは部分的に置き換えるために使用可能なATH組成物に関する。
【0008】
本発明のATH組成物は、既知のATH組成物と同じまたは類似の物理的特性を好適に有する。
【0009】
本発明は、少なくとも2つの異なる物理的特性を持つ粉砕ATH粒子の組み合わせを含むATH組成物に関する。新規ATH組成物は、既知のATH組成物に比較して、有益な熱伝導率を好適に有し、既知のATH組成物と同じまたは類似の物理的特性を好適に維持する。
【0010】
本発明の代表的な特徴を以下の条項に示し、これらの条項は単独であるか、あるいは本明細書の本文および/または図面に開示される1つ以上の特徴との任意の組み合わせで組み合わされることも可能である。
【0011】
本発明の第一の態様において:
50~500μmの最大寸法を有する、第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子50重量%~85重量%と;
50μm未満の最大寸法を有する、第二の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子15重量%~50重量%と;任意選択で(optionally)
不可避不純物と
を含む(またはからなる)、三水酸化アルミニウム組成物を提供する。
【0012】
好ましくは、第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子は:50~300μm;または75~250μm;または100~150μm(プラスまたはマイナス50μm)の最大寸法を有する。
【0013】
さらに好ましくは、第二の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子は:40μm未満;または30μm未満(プラスまたはマイナス5μm)の最大寸法を有する。
【0014】
好適には、第一の複数の粉砕ATH粒子は:
25~40μm;または25~35μm;または31~33μm;または32μmのD10;および/または
90~110μm;または100~104μm;または102μmのD50;および/または
200~300μm;または200~220μm;または210μmのD97
を有する。
【0015】
好ましくは、第二の複数の粉砕ATH粒子は:
1.0~4.0μm;または1.0~2.0μm;または1.5μmのD10;および/または
6~12μm;または8μmのD50;および/または
25~40μm;または30~34μm;または32μmのD97
を有する。
【0016】
さらに好ましくは、三水酸化アルミニウム組成物は:
1~3μm;または2μmのD10;および/または
20~24μm;または21.86μmのD50;および/または
180~220μm;または198μmのD97
を有する。
【0017】
好ましくは、第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子は:76mm3/g以下;または76mm3/g~50mm3/g;または76mm3/g~65mm3/gの総累積体積を有する。
【0018】
さらに好ましくは、第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子は:3m2/g以下;または2.95m2/g以下;または3m2/g~1m2/g;または2.95m2/g~2.8m2/gの比表面積を有する。
【0019】
好適には、三水酸化アルミニウム組成物は:60~85重量%;または65~80重量%;または70~80重量%;または55~65重量%の第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子を含む。
【0020】
好ましくは、三水酸化アルミニウム組成物は:15~40重量%;または20~35重量%;または20~30重量%;または35~45重量%の第二の複数の粉砕ATH粒子を含む。
【0021】
さらに好ましくは:第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子は300μmの最大寸法を有し;かつ第二の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子は30μmの最大寸法を有する。
【0022】
好適には、三水酸化アルミニウム組成物中の第一の複数の三水酸化アルミニウム粒子対第二の複数の三水酸化アルミニウム粒子組成物の比は(重量%で):12.5(第一):3.5(第二)、各々に関して、プラスまたはマイナス2.5;または8(第一):1.5(第二)、各々に関して、プラスまたはマイナス0.5;または10(第一):5(第二)、各々に関して、プラスまたはマイナス1;または4(第一):2.2(第二)、各々に関して、プラスまたはマイナス0.5である。
【0023】
好ましくは、第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子対第二の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子組成物の比は:三水酸化アルミニウム組成物中の40%v/v以下の空隙(または孔);または三水酸化アルミニウム組成物中の34%v/v以下の空隙(または孔)を生じる。
【0024】
さらに好ましくは、三水酸化アルミニウム組成物は、2.42g/cm3(プラスまたはマイナス0.2g/cm3)の密度を有する。
【0025】
好適には、三水酸化アルミニウム組成物は、第一の複数の粉砕ATH粒子および第二の複数の粉砕ATH粒子の両方に関して、均一な粒子分布を有する。
【0026】
好ましくは、三水酸化アルミニウム組成物中の粒子は、0.1~305μmの最大寸法分布を有する。
【0027】
本発明のさらなる態様にしたがって、三水酸化アルミニウム組成物を作製するためのプロセスであって、以下の工程:
50重量%~85重量%の、50~500μmの最大寸法を有する第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子を提供する工程と;
15重量%~50重量%の、50μm未満の最大寸法を有する第二の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子を提供する工程と;
第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子および第二の複数の粉砕三水酸化アルミニウムを混合する工程と
を含む、プロセスを提供する。
【0028】
好ましくは、三水酸化アルミニウム組成物において、第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子および/または第二の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子は、請求項1~14のいずれか一項におけるものである。
【0029】
さらに好ましくは、混合工程は:25℃で0.1~8時間;または25℃で0.3~4時間;または25℃で0.5~2時間;または25℃で均一な粒子分布を持つ混合物が形成されるまで、行われる。
【0030】
好適には、混合物中の第一の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子対第二の複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子の比は(重量%で):12.5(第一):3.5(第二)、各々に関して、プラスまたはマイナス2.5;または8(第一):1.5(第二)、各々に関して、プラスまたはマイナス0.5;または10(第一):5(第二)、各々に関して、プラスまたはマイナス1;または4(第一):2.2(第二)、各々に関して、プラスまたはマイナス0.5である。
【0031】
本発明のさらなる態様にしたがって、三水酸化アルミニウム組成物は、難燃剤としておよび/または熱管理充填剤として使用するためのものである。
【0032】
本発明のさらなる態様にしたがって、ポリマーおよび本発明の三水酸化アルミニウム組成物を含むポリマー複合物(polymer composite)を提供する。
【0033】
好ましくは、ポリマーは、シリコーン、エポキシ、ポリエステル、ポリエチレンワックスおよび/またはポリオールで形成されたポリマーであり;任意選択で、ポリマーは熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーである。
【0034】
さらに好ましくは、ポリマー複合物は(重量%で):
50~90の請求項1~14のいずれか一項の三水酸化アルミニウム組成物と;
10~50のポリマーとを;または
60~80の請求項1~14のいずれか一項の三水酸化アルミニウム組成物と;
20~40のポリマーとを
含む。
【0035】
好適には、ポリマー複合物は:2~7W/mK;2~4W/mK;または2.5~3W/mK;または2.6~2.9W/mK;または2.8~2.9W/mKの熱伝導率を有する。
好ましくは、ポリマー複合物は:13Pa・s以下;または11Pa・s以下;または9Pa・s以下の粘度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本開示の実施形態は、付随する図であって、同様の数字がいくつかの図面に渡って同様の要素を示し、例としての実施形態が示される、前記図に関連して、この後により詳細に記載されるであろう。しかし、請求項の実施形態は、多くの異なる型で具体化されることも可能であり、本明細書に示される実施形態に限定されると見なされてはならない。付随する図は、本開示の多様な他の態様のシステム、方法および実施形態の多様な実施形態を例示する。一般の当業者は誰でも、図面中に例示される要素の境界(例えばボックス、ボックス群、または他の形状)は、境界の一例に相当することを認識するであろう。いくつかの例において、1つの要素は多数の要素として設計されてもよいし、または多数の要素は1つの要素として設計されてもよい可能性もある。いくつかの例において、1つの要素の内部構成要素として示される要素は、別のものの外部構成要素として実装されてもよく、その逆であってもよい。さらに、要素は、原寸に比例して描かれていない可能性もある。以下の図に関連して、限定されず、かつ包括的でない説明が記載される。図面中の構成要素は、必ずしも原寸に比例せず、その代わり、原理を例示するに際して、強調がなされる。
【0037】
【
図1】
図1は、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子の形態を示す、走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図2】
図2は、第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子の形態を示すSEM画像である。
【
図3】
図3は、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子(ATHE1、ATHE2およびATHE3組成物中に含まれる第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子;粗Aと称される)の孔サイズ分布である。
【
図4】
図4は、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子(BORATHERM(商標)SG-200LVS組成物中に含まれる第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子;粗Bと称される)の孔サイズ分布である。
【
図5】
図5は、
図3の第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子(粗A)の形態を示すSEM画像である。
【
図6】
図6は、
図4の第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子(粗B)の形態を示すSEM画像である。
【
図7】
図7は、累積曲線としての(100まで付加される)例示的なATH組成物の粒子寸法分布をプロットするグラフである。
【
図8】
図8は、
図7と同じATH組成物の粒子寸法分布をプロットするグラフであり、粒子寸法分布は、相対分布として示される。
【
図9】
図9は、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子対第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子の異なる比を含む、本発明の3つの異なるATH組成物の粘度のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
単語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、および「含む(including)」、並びにそれらの他の型は、意味が同等であると意図され、これらの単語のいずれか1つに続く単数または複数の項目が、こうした単数または複数の項目の包括的な列挙であるとは意味されず、あるいは列挙される単数または複数の項目にのみ限定されると意味されない点で、無制限であると意図される。該用語は、他の特徴、工程または成分の存在を排除するとは解釈されないものとする。本明細書および付随する請求項で用いられるように、単数形「a」、「an」および「the」には、文脈が明らかに別に指示しない限り、複数の参照物が含まれることにもまた注目しなければならない。本明細書記載のものと類似のまたは同等の任意のシステムおよび方法が本開示の実施形態の実施または試験において用いられうるが、好ましいシステムおよび方法をここで記載する。
【0039】
本発明を記載するために用いられる用語のいくつかを以下に示す:
【0040】
「三水酸化アルミニウム(ATH)」は、化学式Al(OH)3を持つ無機鉱物を指す。三水酸化アルミニウムは、天然には、ギブサイトとして、かつ3つのより稀な多形体:バイヤライト、ドイレイトおよびノルドストランダイトとして、主に存在する。三水酸化アルミニウムはまた、水酸化アルミニウムとも称されうる。
【0041】
「APYRAL(商標) 20X」は、現在Nabaltec AGによって販売されている製品を指す。APYRAL(商標) 20Xは、粉砕三水酸化アルミニウムおよび沈殿三水酸化アルミニウムの組み合わせである。APYRAL(商標) 20Xは、ポリマー複合物中で用いられた際、有用な粘度特性および熱伝導特性を有する。
【0042】
「バイヤー(Bayer)プロセス」は、三水酸化アルミニウムがボーキサイトおよび水酸化ナトリウムから形成されるプロセスを指す。該プロセスは、270℃までの温度で、水酸化ナトリウム中にボーキサイトを溶解する工程を含む。赤泥(bauxite tailings)として知られる廃棄物固体が除去され、アルミン酸ナトリウムの残存溶液から三水酸化アルミニウムが沈殿する。
【0043】
「ボーキサイト」は、赤みがかった粘度材料から形成される岩を指す。ボーキサイトは、主に、アルミナ、シリカ、酸化鉄および酸化チタンを含む。
【0044】
「BORATHERM(商標)SG-200LVS」は、Sibelco(商標)によって製造されるATH製品を指す。BORATHERM(商標) SG-200LVSは、2つの異なる種類の粉砕ATH粒子の混合物を含む。
【0045】
「D10」は、粒子混合物中の粒子の最大寸法の累積分布の10%での粒子最大寸法を指す。
【0046】
「D50」は、粒子混合物中の粒子の最大寸法の累積分布の50%での粒子最大寸法を指す。D50は時に、粒子サイズ分布中の最大寸法中央値と称される。
【0047】
「D97」は、粒子混合物中の粒子の最大寸法の累積分布の97%での粒子最大寸法を指す。
【0048】
「難燃剤(flame retardant)」は、出火を防止しうるかまたは火炎の広がりを遅延させうる組成物を指す。
【0049】
「粉砕三水酸化アルミニウム」は、赤泥から沈殿し、続いてミリングおよび/またはシービング操作によって粒子サイズ減少を経ている三水酸化アルミニウム粉末を指す。粉砕三水酸化アルミニウムは、しばしば、300μm未満の最大寸法に粒子をすりつぶすグラインダーによって形成される。グラインダーの例には、ジェットミル、ボールミルおよびローラーミルが含まれる。
【0050】
「最大寸法」は、任意の特定の粒子の最長横断寸法を指す。本発明の組成物にしたがった三水酸化アルミニウム粒子は、限定されるわけではないが:概して(完全ではないが)球状、棒状、円筒状、円錐状、立方体状、直方体、四面体または不規則な三次元形状を含む、多様な形状を有しうる。
【0051】
「OCTEO」は、現在Evonik Operations GmbHによって販売されている製品を指す。Dynasylan(登録商標)OCTEOは、モノマの中鎖N-オクチルトリエトキシシランである。Dynasylan(登録商標)OCTEOは、適合性改善目的のため、無機充填剤上に疎水性を生じさせる表面修飾剤である。
【0052】
「沈殿三水酸化アルミニウム」は、2回の沈殿を経たATHを指す。最初は、赤泥から沈殿され;その後、粒子形態およびサイズを調節するために再沈殿される。沈殿ATHは、粉砕ATHよりも形成がより困難であり、より高価である。
【0053】
「SEM」は、走査型電子顕微鏡を指す。走査型電子顕微鏡の限定されない例は、JEOL(商標)によって販売されるJSM-IT800である。
【0054】
「比表面積」は、材料の単位質量あたりの固体表面の面積を指す。比表面積は、任意選択で、Pascal 100シリーズ(Thermo Electronによって販売される)および/またはPascal 240シリーズ(Thermo Electronによって販売される)を用いて、水銀圧入ポロシメトリーによって測定されうる。
【0055】
「総累積体積」は、圧増加に伴い、物質(例えば水銀)によって占有される単位質量あたりの総累積孔体積を指す。総累積体積は、任意選択で、Pascal 100シリーズ(Thermo Electronによって販売される)および/またはPascal 240シリーズ(Thermo Electronによって販売される)を用いて、水銀圧入ポロシメトリーによって測定されうる。
【0056】
「不可避不純物」は、組成物の特性に影響を及ぼさない、組成物中に存在する成分を指す。不可避不純物は、組成物中に:5重量%未満;または4重量%未満;または3重量%未満;または2重量%未満;または1重量%未満;または0.5重量%未満;または0.1重量%未満で存在する。
【0057】
「%v/v」は、体積/体積パーセンテージを指す。例えば、組成物が40%v/v以下の空隙(または孔)を含む場合、組成物100mLごとに、40mL以下の空隙(または孔)がある。
【0058】
「重量%」は、組成物100グラムごとの、組成物の成分のグラムでの重量パーセンテージを指す。例えば、組成物が10重量%の成分Aを含む場合、組成物100gごとに10gの成分Aがある。
【0059】
三水酸化アルミニウム組成物(ATH組成物)の組成
【0060】
本発明の例において、三水酸化アルミニウム(ATH)組成物は、粉砕ATHから形成される。粉砕ATHは、沈殿ATHよりもより複雑でない製造プロセスによって形成される。沈殿ATHは、ATH粒子の形態に対する制御を伴って形成可能であるため、以前は、粉砕ATHおよび沈殿ATHの両方が使用された。本発明者らは、驚くべきことに、粉砕ATH(のみ、すなわちいかなる沈殿ATHも含まず)を使用して、有益なATH組成物を作製可能であることを見出した。
【0061】
本発明のこの例において、ATH組成物は、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子および第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子を含む。
【0062】
任意選択で、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子の粒子は、コーティングを含んでもよく、第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子は、コーティングを含んでもよく、または第一の(粗い)複数の、および第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子は、コーティングを含んでもよい。コーティングは:脂肪酸および/または有機シランの1つ以上を含んでもよい。コーティングは、分散、レオロジーおよび/または界面適合性を提供するために含まれてもよい。
【0063】
本発明のいくつかの例において、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子は、50~500μm、50~300μm、または75~250μm、または100~150μm(プラスまたはマイナス50μm)の最大寸法を有する。
【0064】
本発明のいくつかの例において、第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子は、50μm未満、または40μm未満、または30μm未満(プラスまたはマイナス5μm)の最大寸法を有する。第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子は、0.5μmより大きい、または1μmより大きい最大寸法を有しうる。
【0065】
本発明のいくつかの例において、ATH組成物は、200μm(プラスまたはマイナス50μm)の最大寸法の第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子および30μm(プラスまたはマイナス5μm)の最大寸法の第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子を含む。
【0066】
本発明のいくつかの例において、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子は:25~40μm、または25~35μm、または31~33μm、または32μmのD10;および90~110μm、または100~104μm、または102μmのD50;および200~300μm、または200~220μm、または210μmのD97を有する。
【0067】
本発明のいくつかの例において、第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子は:1.0~4.0μm、または1.0~2.0μm、または1.5μmのD10;および6~12μm、または8μmのD50;および25~40μm、または30~34μm、または32μmのD97を有する。
【0068】
本発明のいくつかの例において、ATH組成物は:1~3μm、または2μmのD10;および20~24μm、または21.86μmのD50;および180~220μm、または198μmのD97を有する。
【0069】
本発明のいくつかの例において、ATH組成物は、0.1~305μmの最大寸法分布を有するATH粒子を含む。
【0070】
本発明のいくつかの例において、ATH組成物は、50~85重量%、または60~85重量%、または65~80重量%、または70~75重量%の第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子を含む。
【0071】
本発明のいくつかの例において、ATH組成物は、15~50重量%、または15~40重量%、または20~35重量%、または25~30重量%の第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子を含む。
【0072】
本発明のいくつかの例において、ATH組成物中の第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子対第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子の(重量)比は:それぞれ、12.5(粗い):3.5(細かい)、またはそれぞれ、8(粗い):1.5(細かい)、またはそれぞれ、10(粗い):5(細かい)、またはそれぞれ、4(粗い):2.2(細かい)、各々に関して、プラスまたはマイナス0.5である。
【0073】
本発明のいくつかの例において、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子対第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子の比は:ATH組成物中の40%v/v以下の空隙(または孔);または34%v/v以下の空隙(または孔)を生じる。
【0074】
好適には、本発明のATH組成物は、既知のATH組成物と同じまたは類似の物理的特性を有する。
【0075】
本発明のいくつかの例において、該ATH組成物は、ポリマーマトリックス中にある際、好適には、既知のATH組成物と比較して、有益な熱伝導率を有する。好ましくは、ATH組成物(直鎖非反応性ポリジメチルシロキサンを含むポリマーマトリックス中にある際;ポリマー中のATH組成物の装填は、12.5%ポリマーを伴い、87.5重量%ATH組成物である)の熱伝導率は、2.6~2.9W/mK(または2.8~2.9W/mK)である。好適には、改善された熱伝導率は、ATH組成物のレオロジー特性および熱特性を補助する(すなわち熱放散が改善される)。例えば、より好ましい熱伝導率は、より熱エネルギーを伝え、したがって有益な難燃剤または耐熱剤(heat retardant)として作用するATH組成物を生じる。
【0076】
本発明のいくつかの例において、該ATH組成物は、ポリマーマトリックス中にある際、既知のATH組成物と比較して、好適に、有益な粘度を有する。任意選択で、ATH組成物の粘度は、13Pa・s以下、または11Pa・s以下、または9Pa・s以下、または8~9Pa・sである。好適には、粘度の改善は、本発明のATH組成物に関して、より優れた流動特性、例えば自己平滑化(self-levelling)挙動を生じる。
【0077】
本発明のいくつかの例において、ATH組成物は、2.42g/cm3(プラスまたはマイナス0.2g/cm3)の有益な密度を有する。
【0078】
三水酸化アルミニウム組成物(ATH組成物)の形成
【0079】
本発明のいくつかの例において、ATHは、バイヤープロセスを経たボーキサイトから調達される。
【0080】
ATH組成物は、異なる粉砕ATH粒子から形成される。
【0081】
ATH組成物は、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子および第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子を含む。混合前に、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子および第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子は、別個に(所望のサイズに)シービングされ、望ましくない不純物が除去される。次いで、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子および第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子が混合される。
【0082】
第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子および第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子は:25℃で0.1~8時間;または25℃で0.3~4時間;または25℃で0.5~2時間;または25℃で均一な粒子分布を持つ混合物が形成されるまで混合される。
【0083】
混合物中の第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子対第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子の比は:それぞれ、12.5(細かい):3.5(粗い);またはそれぞれ、8(粗い):1.5(細かい);またはそれぞれ、10(細かい):5(粗い);またはそれぞれ、4(粗い):2.2(細かい)である。
【0084】
混合工程は、任意の既知の混合法を用いる。例えば、混合は、水平シャフトミキサー中、低剪断混合を使用してもよい。いくつかの例において、混合は、Gebrueder Loedige Maschinenbau GmbHによって販売される水平リボンミキサーで行われる。
【0085】
生じた混合物は、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子および第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子の両方に関して、均一な粒子分布を有する。均一な粒子分布を有することによって、すべてのサイズのATH粒子がよく混合される。
【0086】
好適には、混合は、生じるATH組成物が、0.1~500μmの広い粒子寸法分布を有する粒子で形成されるようにする。これは、第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子が砕けやすいため、混合工程中に、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子が、第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子のデアグロメレーションを補助することに起因する。理論によって束縛されることは望ましくないが、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子および第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子を含むことによって、異なる粒子サイズの有益なパッキングが導かれ、有益な粘度、密度および熱伝導特性が導かれると考えられる。
【0087】
好適には、混合作用は:ATH組成物中、40%v/v以下の空隙(または孔);またはATH組成物中、34%v/v以下の空隙(または孔)を有する、コンパクトなATH組成物を生じる。その結果、ATH組成物は、ポリマーマトリックス中で、高い充填剤装填を形成することが可能である。
【0088】
好適には、混合作用は、所定のポリマーマトリックスに関して、13Pa・s以下;または11Pa・s以下;または9Pa・s以下の粘度を有するATH組成物を生じる。生じるATH組成物は、自由流動性である。
【実施例】
【0089】
以下は、表および図面に関連して、本発明の利点を論じる、限定されない例である。本明細書に示される実施例は、限定されない例であり、他のありうる例の中の単なる例である。
【0090】
実施例1:出発材料の比較
【0091】
以下の限定されない例は、各々、本発明のATH組成物中に含まれる、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子対第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子の形態を比較する。
【0092】
図1は、1つの限定されない例における第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子の形態を示すSEM画像である。
図1に示されるように、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子の形態はコンパクトで密であり、表面上により少ない孔を有する。
【0093】
図2は、1つの限定されない例における第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子の形態を示すSEM画像である。
図2に示されるように、第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子の形態はサイズがより小さく、粒子のアグロメレーションを含む。
【0094】
図1および2を比較すると、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子の形態は、第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子の形態よりも、有意によりコンパクトでありおよび/または均一である。
【0095】
好適には、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子および第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子からATH組成物を形成することを通じて、ATH組成物は、三水酸化アルミニウム組成物中に40%v/v以下の空隙(または孔)を伴って形成されうる。
【0096】
実施例2:粗分画材料の比較
【0097】
以下の限定されない実施例は、各々、本発明のATH組成物中に含まれうる、2つの粗分画材料(粗Aおよび粗B)の形態を比較する。第一の粗い材料(粗A)は、例のATHE1、ATHE2およびATHE3組成物中に含まれる一方、第二の粗い材料(粗B)は、BORATHERM(商標) SG-200LVS組成物中に含まれる。
【0098】
図3は、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子(ATHE1、ATHE2およびATHE3組成物中に含まれる第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子;粗A)の孔サイズ分布である。
【0099】
図4は、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子(BORATHERM(商標) SG-200LVS組成物に含まれる第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子;粗B)の孔サイズ分布である。
【0100】
図3および4に示されるように、粗Bの孔サイズ分布は、粗Aの孔サイズ分布よりも大きい。
図3および4の孔サイズ分布は、Pascal 100シリーズおよびPascal 240シリーズ(Thermo Electronによって販売される)を用いた水銀圧入ポロシメトリーによって決定された。
【0101】
表1:粗Aおよび粗Bの総累積体積および総比表面積
【表1】
【0102】
好適には、粗Aを含むATH組成物の形成を通じて、三水酸化アルミニウム組成物中、40%v/v以下の孔(または空隙)で、ATH組成物を形成することが可能である。
【0103】
【0104】
【0105】
好適に、粗Aの形態は、粗Bがよりコンパクトでなく、かつ小粒子および大粒子で構成される、より均一でない形態を提示するのに比較して、より大きな粒子で構成される。さらに、粗Bは、より損傷を受けた縁を伴う形態を提示し、より多孔性であり、より高い比表面積を生じる。理論によって束縛されることは望ましくないが、76mm3/g以下の総累積体積を持つ、第一の(粗い)複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子を含む三水酸化アルミニウム組成物は、三水酸化アルミニウム組成物中、40%v/v以下の孔(または空隙)のATH組成物を提供すると考えられる。さらに、理論によって束縛されることは望ましくないが、3m2/g以下の比表面積を持つ、第一の(粗い)複数の粉砕三水酸化アルミニウム粒子を含む三水酸化アルミニウム組成物は、三水酸化アルミニウム組成物中、40%v/v以下の孔(または空隙)のATH組成物を提供すると考えられる。
【0106】
好適には、粗Aである第一の(粗い)複数を含むATH組成物、およびこれらのATH組成物を含むポリマー複合物を形成することを通じて、比較的高い熱伝導率値が得られる。
【0107】
実施例3:ATH組成物中の粒子の最大寸法分布
【0108】
以下の限定されない例は、本発明のATH組成物中の粒子の最大寸法分布を比較する。
【0109】
図7は、100まで付加される累積分布の関数として、ATHE2と称される、一例のATH組成物中の粒子に関する最大寸法サイズの分布を示す。ATHE2において、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子対第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子の比は(重量%で)、70(粗い):30(細かい)である。
図8は、相対分布の関数として、ATHE2中の粒子の最大寸法分布を示す。
図7および8の最大寸法分布は、HELOSレーザー回折装置(Sympatec GmbHによって販売される)を用いて決定された。
【0110】
各サンプルを水中に分散させ(攪拌および超音波処理を用いる)、レーザー回折を用いて、粒子の最大寸法分布を決定した。HELOSレーザー回折装置(Sympatec GmbHによって販売される)を測定に用いた。Mieの散乱理論を散乱データに適用して、ATHE2内の粒子の最大寸法を決定した。
【0111】
図7および8に示されるように、ATHE2中の粒子が0.1~305μmの広い最大寸法分布を有する、ユニークな最大寸法分布が達成される。この結果は、混合工程中に第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子が破砕され、第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子がデアグロメレーションされることに起因しうる。
【0112】
実施例4:ATH組成物の物理的特性に対する、第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子対第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子の比の影響の分析
【0113】
以下の限定されない例は、ATH組成物中の第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子対第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子の比の変化から生じる物理的特性における変化を分析する。
【0114】
3つの異なるATH組成物を調製した。各組成物中の第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子対第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子の比は、それぞれ(重量%で):60(粗い):40(細かい)(ATHE1);70(粗い):30(細かい)(ATHE2);および80(粗い):20(細かい)(ATHE3)であった。
【0115】
既知のATH組成物は、APYRAL(商標) 20XおよびBORATHERM(商標)SG-200LVSであった。
【0116】
本発明の3つの異なるATH組成物(ATHE1、ATHE2およびATHE3)ならびに既知のATH組成物APYRAL(商標) 20XおよびBORATHERM(商標) SG-200LVSを、個々にシロキサンに添加して、複合物を形成した(各々別個に)。複合物は、各ATH組成物を70重量%含み、残りはシロキサンであった。用いたシロキサンは、10m/sの剪断率で、30℃でおよそ500mm2/sの粘度を有するポリジメチルシロキサンであった。粘度測定を行う前に、各ATH組成物を3000rpmで1分間、高速二重非対称遠心分離機によってシロキサンマトリックス中によく分散させ、次いで、30℃で10分間、オーブン中で落ち着かせた。粘度測定を行う前に、スパチュラでの手動攪拌によって、ビルドアップ構造を除去した。
【0117】
スピンドルNR-52を有するBrookfieldコーン/プレート粘度計を用いて、各溶液(ATH組成物を含むシロキサン)の粘度を測定した。
【0118】
図9は、記載されるシロキサン中にある際の、本発明の3つの異なるATH組成物(ATHE1、ATHE2およびATHE3)の粘度および既知のATH組成物、APYRAL(商標) 20Xの粘度をプロットする。
図9に示されるように、70:30(ATH2)および80:20(ATHE3)の比を有する本発明のATH組成物の粘度は、既知のATH組成物APYRAL(商標) 20Xの粘度よりも低い。好適には、より低い粘度は、本発明のATH組成物に関して(シロキサンマトリックス中にある際)、より優れた流動特性、例えば自己平滑化挙動を生じる。
【0119】
表2Aおよび2Bは、本発明の3例のATH組成物(ATHE1、ATHE2およびATHE3)と、既知のATH組成物APYRAL(商標) 20XおよびBORATHERM(商標) SG-200LVSに関して、密度および熱容量を比較する。
【0120】
表2A:シロキサンポリマーとの複合物中にある際の、本発明の3例のATH組成物(ATHE1、ATHE2およびATHE3)と、既知のATH組成物に関する密度および熱容量の比較。(熱拡散率を正確に測定し;密度および熱容量は、サンプルの既知の特性に基づいたおよその測定である)。
【表2A】
【0121】
表2B:シロキサンポリマーとの複合物中にある際の、本発明の3例のATH組成物(ATHE1、ATHE2およびATHE3)と、既知のATH組成物に関する密度および熱容量の比較。(これらは、表2Aのおよその測定後に行われた、熱拡散率、密度および熱容量すべてに関する正確な測定である)。
【表2B】
【0122】
表2Aおよび2Bに示されるように、シロキサンポリマーとの複合物中にある際、本発明のATH組成物は、既知のATH組成物と類似の密度および熱容量特性を有する。
【0123】
実施例5:本発明のATH組成物と既知のATH組成物の熱伝導率の比較
【0124】
以下の限定されない例は、本発明のATH組成物と既知のATH組成物の熱伝導率を比較する。
【0125】
3つの異なるATH組成物を作製した。各組成物中の第一の(粗い)複数の粉砕ATH粒子対第二の(細かい)複数の粉砕ATH粒子の比は、それぞれ(重量%で):60:40(ATHE1);70:30(ATHE2);および80:20(ATHE3)であった。
【0126】
用いた既知のATH組成物は、APYRAL(商標) 20XおよびBORATHERM(商標)SG-200LVSであった。
【0127】
本発明の3つの異なるATH組成物(ATHE1、ATHE2およびATHE3)および既知のATH組成物を、個々にシロキサンに添加して、複合物を形成した。複合物は、各ATH組成物を87.5重量%含み、残りはシロキサンであった。熱伝導率測定を行う前に、各ATH組成物を3000rpmで1分間、高速二重非対称遠心分離機によってシロキサンマトリックス中によく分散させ、次いで、測定を行う前に冷却した。
【0128】
C-Therm Technologies Ltdによって販売される、Trident(商標)熱伝導率測定装置を取り付けた修飾一時的平面熱源センサー(modified transient plane source sensor)を用いて、各複合物の熱拡散率を測定した。密度および熱容量とともに、これらの熱拡散率値を後に用いて、複合物の熱伝導率を得た。熱拡散率値を表1に示す。熱伝導率は、各場合で、以下の等式を用いて計算した:
【0129】
【0130】
式中、eは熱拡散率であり、λは熱伝導率であり、ρは複合物の密度であり、Cpは所定の温度での複合物の比熱容量である。
【0131】
表3は、記載されるシロキサンマトリックス中(すなわちシロキサンポリマーを含む複合物中)にある際の、本発明のATH組成物、ならびに既知のATH組成物APYRAL(商標) 20XおよびBORATHERM(商標)SG-200LVSの熱伝導率を示す。
【0132】
表3A:シロキサンポリマーとの複合物中にある際の、本発明のATH組成物、ならびに既知のATH組成物APYRAL(商標) 20XおよびBORATHERM(商標)SG-200LVSの熱伝導率。(これらは、表2A由来のデータを用いたおよその測定である)。
【表3A】
【0133】
表3B:シロキサンポリマーとの複合物中にある際の、本発明のATH組成物、ならびに既知のATH組成物APYRAL(商標) 20XおよびBORATHERM(商標)SG-200LVSの熱伝導率。(これらは、表2B由来のデータを用いた正確な測定である)。
【表3B】
【0134】
本発明のATH組成物は、改善された(より高い)熱伝導率値を有し、これはATH組成物のレオロジー特性および熱特性を好適に補助する。この例のATH組成物のより高い熱伝導率は、ポリマーマトリックス中の充填剤装填レベルが最小限に維持されることが可能であり、より低い密度のポリマー複合物を導くことを意味する。
【0135】
実施例6:既知のATH組成物への本発明のATH組成物の粒子最大寸法分布の比較
【0136】
以下の限定されない例は、既知のATH組成物と、この例のATH組成物の成分の粒子最大寸法分布を比較する。
【0137】
既知のATH組成物は、BORATHERM(商標) SG-200LVSであった。
【0138】
各サンプルを水中に分散させ(攪拌および超音波処理を用いる)、レーザー回折を用いて、ATH粒子の最大寸法分布を決定した。HELOSレーザー回折装置(Sympatec GmbHによって販売される)を測定に用いた。Mieの散乱理論を散乱データに適用して、ATHE1、ATHE2およびATHE3内の成分の粒子の最大寸法を決定した。
【0139】
粒子最大寸法分布を表4に示す。
【0140】
表4:既知のATH組成物と比較した、本発明のATH組成物(ATHE1、ATHE2およびATHE3)の成分の粒子最大寸法分布
【表4】
【0141】
表4に示されるように、本発明のATH組成物の成分は、異なる粒子最大寸法分布を有する。異なる粒子最大寸法分布は、本発明のATH組成物におけるATH粒子の有益なパッキングを提供する。
【0142】
実施例7:熱可塑性ポリマーマトリックスにおける、既知のATH組成物と、本発明のATH組成物の熱伝導率の比較
【0143】
以下の限定されない例は、異なるポリマーマトリックス中でのコンパウンディングに際する、既知のATH組成物APYRAL(商標) 20Xと本発明の70:30(ATHE2)ATH組成物の熱伝導率における変化を比較する。各サンプルを、個々に、1%OCTEOでコーティングした。次いで、各サンプルをポリエチレンワックス(PEワックス)マトリックスに添加して、複合物を形成した。複合物は、各ATH組成物を87.5重量%で含んだ。
【0144】
熱伝導率測定を行う前に、各ATH組成物をポリエチレンワックス中によく分散させた。ポリエチレン複合物に関して、ATH組成物は、ポリマーの融解状態で分散された。その後、混合物を3000rpmで1分間、高速二重非対称遠心分離機によってよく分散させた。次いでどちらのシステムも、測定を行う前に冷却した。
【0145】
実施例5におけるものと同じアプローチを用いて、複合物の熱拡散率を測定した。
【0146】
表5は、ポリエチレンワックス中、本発明のATH組成物70:30(ATHE2)および既知のATH組成物APYRAL(商標) 20Xに関する密度および熱容量を比較する。
【0147】
表5:ポリエチレンワックスを含む複合物中にある際の、本発明のATH組成物70:30(ATHE2)および既知のATH組成物APYRAL(商標) 20Xに関する密度および熱容量の比較。
【表5】
【0148】
表5に示されるように、本発明のATH組成物は、ポリエチレンワックスを含む複合物中にある際、既知のATH組成物と比較して、わずかにより低い密度およびわずかにより高い熱容量特性を有する。
【0149】
表6は、記載されるポリエチレンワックス中にある際の、本発明のATH組成物70:30(ATHE2)および既知のATH組成物APYRAL(商標) 20Xの熱伝導率を示す。
【0150】
表6:ポリエチレンワックスを含む複合物中にある際の、本発明のATH組成物70:30(ATHE2)および既知のATH組成物APYRAL(商標) 20Xの熱伝導率。
【表6】
【0151】
本発明のATH組成物70:30(ATHE2)およびAPYRAL(商標) 20Xは、ポリエチレンワックス中でブレンドされた際、比較的高い熱伝導率を示す。
【0152】
本明細書および請求項で用いられる際、用語「含む(comprises)」および「含む(comprising)」およびその変形は、明記される特徴、工程または整数が含まれることを意味する。該用語は、他の特徴、工程または成分の存在を排除するとは解釈されないものとする。
【0153】
前述の説明、または以下の請求項、または付随する図に開示され、特定の型で、あるいは開示される機能を実行するための手段、または開示される結果を達成するための方法もしくはプロセスに関して表現される特徴は、適切であるように、別個に、またはこうした特徴の任意の組み合わせで、その多様な型で、本発明を実現するために利用されうる。
【国際調査報告】