(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ヘルメットの対向する層の機械的なロックを低減するためのスペーサーを備えるヘルメット、特にサイクリング用ヘルメット、及び幾何学的なロックを低減したヘルメット
(51)【国際特許分類】
A42B 3/06 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
A42B3/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501706
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2022069698
(87)【国際公開番号】W WO2023285577
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521527945
【氏名又は名称】ヘクサー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】スパイサー,ロビン
(72)【発明者】
【氏名】レヴィー,アダム
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】クック,ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
3B107
【Fターム(参考)】
3B107AA01
3B107AA04
3B107DA01
(57)【要約】
ヘルメット(1)であって:外面(3a、31a)を備える内層(3)、及び内層(3)上に配置される外側保護層(2)を備え、外側保護層(2)は、内層(3)の外面(3a、31a)に面する内面(2a)を備え、外側保護層(2)の外面に沿った少なくとも接線方向の力成分を有する衝撃力の下で、外側保護層(2)は、内層(3)の対向する外面(3a、31a)に対して相対的に移動するように構成され、外側保護層(2)の内面(2a)は、内層(3)に対する外側保護層(2)の前記相対的な移動時に内層(3)と外側保護層(2)との間の機械的なロックを低減するための複数のスペーサ(4、40)によって内層の外面(3a、31a)から分離される、前記ヘルメット(1)。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメット(1)であって:
- 外面(3a、31a)を備える内層(3)、及び
- 内層(3)に配置される外側保護層(2)であり、外側保護層(2)は、内層(3)の外面(3a、31a)に面する内面(2a)を備え、外側保護層(2)の外面に沿った少なくとも接線方向の力成分を有する衝撃力の下で、外側保護層(2)は、内層(3)の対向する外面(3a、31a)に対して相対的に移動するように構成されている、前記外側保護層(2)、
を備え、
ここで、外側保護層(2)の内面(2a)は、内層(3)に対する外側保護層(2)の前記相対的な移動時に、内層(3)と外側保護層(2)との間の機械的なロックを低減するように構成される複数のスペーサ(4、40)によって、内層の外面(3a、31a)から分離されている、
前記ヘルメット(1)。
【請求項2】
スペーサ(4)により、内層(3)の外面(3a、31a)と外側保護層(2)の内面(2a)との間に中空の隙間(5)が形成されている、請求項1に記載のヘルメット。
【請求項3】
スペーサ(4、40)は、外側保護層(2)の内面(2a)と一体的に形成され、かつ内層(3)の外面(3a、31a)に向かって突出している、請求項1又は2に記載のヘルメット。
【請求項4】
スペーサ(4、40)は、内層(3)の外面(3a、31a)と一体的に形成され、かつ外側保護層(2)の内面(2a)に向かって突出している、請求項1又は2に記載のヘルメット。
【請求項5】
スペーサ(4)は、内層(3)の外面(3a、31a)と外側保護層(2)の内面(2a)との間に配置される別個の要素である、請求項1又は2に記載のヘルメット。
【請求項6】
外側保護層(2)は、内層(3)上に並んで配置される複数のシェルを備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項7】
外側保護層(2)は、互いに積み重なって配置される複数の副層を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項8】
スペーサ(4、40)のサイズ及び/又は外側保護層(2)に沿ったスペーサ(4、40)の分布は異なる、請求項1~7のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項9】
外側保護層(2)は、0.05mm~10mmの範囲の厚さ(T)を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項10】
外側保護層(2)の前記相対的な移動は、外側保護層(2)の折り曲がり、外側保護層(2)のヒンジング、外側保護層(2)のクランピングのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項11】
前記外側保護層は前記内層に拘束されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項12】
内層(3)はエネルギー吸収層(30)を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項13】
ヘルメット(1)は、内層(3)の部分を形成する中間層(31)を備え、中間層(31)は、エネルギー吸収層(30)と外側保護層(2)との間に配置されている、請求項12に記載のヘルメット。
【請求項14】
中間層(31)はエネルギー吸収層(30)に固定されているか、又は支持されている、請求項13に記載のヘルメット。
【請求項15】
中間層(31)は低摩擦層である、請求項13又は14に記載のヘルメット。
【請求項16】
中間層(31)は、衝撃時に回転するように構成されるか、又は衝撃時にエネルギー吸収層(30)に埋め込まれるように構成される複数の要素を備え、特に転動要素を備える、請求項13に記載のヘルメット。
【請求項17】
前記要素はスペーサーによって形成されているか、又は前記要素はスペーサーに対して別個の要素である、請求項16に記載のヘルメット。
【請求項18】
外側保護層(2)は、以下の材料:熱可塑性材料、金属、のうちの1つから形成されるか、又はそれを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項19】
それぞれのスペーサ(4)は、内層(3)の外面(3a、31a)又は外側保護層(2)の内面(2a)の点状の突出部によって形成されている、請求項1~18のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項20】
それぞれのスペーサ(4)は細長いリブを形成している、請求項1~18のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項21】
それぞれのスペーサー(4)はテーパー状である、請求項1~20のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項22】
それぞれのスペーサ(4)は、円柱、円錐、角錐、立方体、切頭円錐のうちの1つとして形成されている、請求項1~20のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項23】
それぞれのスペーサ(4)は、周方向に丸みを帯びたエッジ部(4b)を有する面側(face side)(4a)を備える、請求項1~22のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項24】
それぞれのスペーサ(4)は、衝撃時にヘルメット(1)の対向する層(3)に埋め込まれるように構成されている、請求項1~23のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項25】
外側保護層(2)の内面(2a)は波形であり、それにより、球状の曲率を備え、かつ内層(3)の対向する表面領域(31a)に対して同心である複数の表面領域(20)を形成するようにする、請求項1~24のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項26】
ヘルメット(B1)であって:
- 外面を備える内層(B3)、及び
- 内層(B3)に配置される外側保護層(B2)であり、外側保護層(B2)は、少なくとも2つのセクション(B21、B22)を備え、各セクション(B21、B22)は、内層(B3)の外面部分(B31、B32)に面する内面(B21a、B22a)を備え、それぞれのセクション(B21、B22)の外面に沿った少なくとも接線方向の力成分を有する衝撃力(F
T)に曝される際に、それぞれのセクション(B21、B22)は、内層(B3)の対向する外面部分(B31、B32)に対して相対的に移動し、かつ他のセクション(B32、B31)から分離するように構成されている、前記外側保護層(B2)、
を備え、ここで
各セクション(B21、B22)の内面(B21a、B22a)は、球状の曲率を備え、かつ内層(B3)の対向する外面部分(B31、B32)と同心である少なくとも1つの領域(R)を備える、
前記ヘルメット(B1)。
【請求項27】
それぞれのセクション(B21、B22)の内面(B21a、B22a)の前記領域(R)は、それぞれのセクション(B21、B22)の内面(B21a、B22a)全体に対応するか、又はそれぞれのセクション(B21、B22)の内面(B21a、B22a)の前記領域は、それぞれのセクション(B21、B22)の内面(B21a、B22a)の少なくとも10%を占め、特に少なくとも20%、特に少なくとも30%、特に少なくとも40%、特に少なくとも50%、特に少なくとも60%、特に少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に少なくとも90%を占める、請求項26に記載のヘルメット。
【請求項28】
内面(B21a、B22a)は複数の切り離された領域を備え、各領域は球状の曲率を備え、かつ内層(B3)の対向する外面部分(B31、B32)と同心であり、特に、それぞれ2つの隣接する領域間の移行領域は非球状の曲率を備える、請求項26又は27に記載のヘルメット。
【請求項29】
各セクション(B21、B22)はエッジ領域(B210、B220)を備える、請求項26~28のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項30】
それぞれのセクション(B21、B22)が前記衝撃力(F
T)下で対向する外面部分(B31、B32)に対して相対的に移動し、かつ少なくとも1つの他のセクション(B32、B31)から分離する場合に、それぞれのセクション(B21、B22)の引っかかりを防止するように、少なくとも2つのセクション(B21、B22)のエッジ領域(B210、B220)は、少なくとも2つのセクション(B20、B21)の間に平滑な移行領域(B4)を形成するように互いに接続されている、請求項29に記載のヘルメット。
【請求項31】
前記2つのエッジ領域(B210、B220)は、互いに一体的に接続されているか、又は接続手段によって互いに接続されており、特に、正の接続、フォースロック接続、物質間接着(結合)、溶接接続のうちの少なくとも1つによって互いに接続され;及び/又はそれぞれのエッジ領域は、前記ヘルメットのエネルギー吸収層に接着され、特に溶接されている、請求項30に記載のヘルメット。
【請求項32】
それぞれのエッジ領域(B210、B220)は、それぞれのセクション(B21、B22)が前記衝撃力(F
T)下で対向する外面部分(B31、B32)に対して相対的に移動し、かつ少なくとも1つの他のセクション(B32、B31)から分離する場合に、それぞれのセクション(B21、B22)の引っかかりを防止するために、衝撃力(F
T)下で降伏するように構成され;及び/又は少なくとも2.5Jのエネルギー閾値を超える衝撃力(F
T)によってエネルギーが導入される場合に、それぞれのセクション(B21、B22)は、対向する外面部分(B31、B32)に対して相対的に移動し、かつ少なくとも1つの他のセクション(B32、B31)から分離する、請求項29~31のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項33】
それぞれのエッジ領域(B210、B220)の降伏をもたらすために、それぞれのエッジ領域(B210、B220)は、それぞれのセクション(B21、B22)の隣接する中央部分の厚さよりも薄い厚さを備える、請求項32に記載のヘルメット。
【請求項34】
それぞれのエッジ領域(B210、B220)の降伏をもたらすために、それぞれのエッジ領域は、それぞれのセクション(B21、B22)の隣接する中央部分の材料よりも柔らかい材料から形成されている、請求項32又は33に記載のヘルメット。
【請求項35】
それぞれのエッジ領域(B210、B220)の降伏をもたらすために、それぞれのエッジ領域(B210、B220)は凹部及び/又は穿孔を備える、請求項32~34のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項36】
それぞれのセクション(B21、B22)の外面に沿った少なくとも接線方向の力成分を有する衝撃力(F
T)に曝される際に、それぞれのセクション(B21、B22)は、内層(B3)の対向する外面部分(B31、B32)に対して移動距離(d)を移動するように構成されており、かつそれぞれのセクション(B21、B22)は、移動距離(d)の方向における幅(w)、並びに移動距離(d)の方向に対して角度(θ)で延びる張り出し長さ(l)を備え、前記幅(w)と前記張り出し長さ(l)との合計は、好ましくは移動距離(d)よりも大きい、請求項26~35のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項37】
外側保護層(2、B2)は、前記衝撃力の下で破砕して、前記外側保護層[又はその断片]と内層(3、B3)の外面(3a、31a)との相対的な移動を可能にするように構成されている、請求項1~36のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項38】
外側保護層(2、B2)は、内層(B3)の外面(3a、31a)から機械的なロックを解除するように構成されている[特に非破壊的な様式で、例えば前記保護層と前記内層との間の摩擦ロック及び/又は正の接続を解除するように構成されている]、請求項1~37のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項39】
外側保護層(B2)は、内層(3、B3)に接着剤を介して接続されており、かつ前記衝撃力の下で内層(3、B3)から分離するように構成されている、請求項1~37のいずれか一項に記載のヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメット、特にサイクリング用ヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなヘルメットは、外面を備える内層と、内層に配置される外側保護層とを備えることができ、外側保護層は、内層の外面に面する内面を備え、外側保護層の外面に沿った少なくとも接線方向の力成分を有する衝撃力の下で、外側保護層は、内層の対向する外面に対して相対的に移動するように構成されている。
【0003】
このような相対的な移動により、頭部への接線方向の衝撃により懸念されるであろう人(例えばサイクリスト)の頭部の回転を決定的に緩和することができ、それに応じて傷害のリスクを低減することができる。
【0004】
したがって、衝撃時に互いに相対的に移動するこのような層のアセンブリに関して、層間の移動を制限し、ひいてはヘルメットを装着している人に重傷を負わせるリスクの高い頭部の回転を引き起こす可能性のある、層間の機械的なロック(固定)を避けることが最も重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、前記層の機械的なロックの可能性を低減するヘルメットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴を有するヘルメットによって解決される。本発明のこの第1の態様の好ましい実施形態は、従属請求項に記載され、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、ヘルメットの外側保護層に一体的に接続され、かつヘルメットの内層に面するスペーサーを備え、内層は、エネルギー吸収層の上に支持される中間層を備える、本発明の第1の態様によるヘルメットの一実施形態を示す。
【
図2】
図2は、ヘルメットの外側保護層に一体的に接続され、かつヘルメットの内層に面するスペーサーを備え、内層は、エネルギー吸収層上に配置かつ固定される中間層を備える、本発明の第1の態様によるヘルメットの一実施形態を示す。
【
図3】
図3は、
図2の実施形態の変更型を示し、それぞれのスペーサーは、エネルギー吸収層から突出し、かつ中間層から外側保護層に向かって突出する中間層の部分によって覆われる突出部を備える。
【
図4】
図4(A)~(F)は、本発明の第1の態様の実施形態による別個のスペーサーの様々な可能な形状を示す。
【
図5】
図5は、ヘルメットの外側保護層とヘルメットの内層との間の隙間に配置される別個のスペーサーを備える、本発明の第1の態様によるヘルメットの一実施形態を示す。
【
図6】
図6は、波形の外側保護層に一体的に接続されている2つの異なる長さのスペーサーを備える、本発明の第1の態様によるヘルメットの一実施形態を示す。
【
図7】
図7は、スペーサーが内層の突出部であり、点状の実装面積を備える、本発明の第1の態様によるヘルメットの実施形態を示す。
【
図8】
図8は、スペーサーが細長い構造体である、第1の態様による別の実施形態を示す。
【
図9】
図9は、スペーサーが衝撃時に内層の表面に埋め込まれるようになるように構成されている、本発明の第1の態様によるヘルメットの一実施形態を示す。
【
図10】
図10は、人により装着されるヘルメットに作用する力を示す。特に、接線方向の摩擦力(本明細書では衝撃力とも表記)により、重傷を負わせる可能性があるヘルメット及び人の頭部にもたらされる危険な回転が生じる。
【
図11】
図11は、内層(B)に対して移動する単一シェルのヘルメットの外側保護層(A)を示す。また、(C)は、下にあるヘルメットの内層の外面に対して球状及び同心ではない内面を備えた外側保護層を示しており、これにより、接線力の下で内層に対して保護層が移動する能力が著しく低下する(
図10を参照)。
【
図12】
図12は、本発明によるヘルメットの一実施形態の、衝撃前(A)と、接線衝撃下でヘルメット着用者の頭部に過度の回転が導入されるのを防止するために、外側保護層のセクションの1つの内層に対しての移動を引き起こす衝撃後(B)とを示す概略断面図である。
【
図13】
図13は、外側保護層(又はそのセクション)への接線方向の衝撃、及びその衝撃の間の移動距離に沿ったこの層/セクションの移動を示す。
【
図14】
図14は、外側保護層のセクションの幅及び張り出し長さの概略図を示す。
【
図15】
図15は、張り出し長さと張り出し長さの角度θの関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
請求項1によれば、ヘルメット、特にサイクリング用ヘルメットが開示され、前記ヘルメットは:
- 外面を備える内層、及び
- 前記内層上に配置される外側保護層であって、前記外側保護層は、前記内層の外面に面する内面を備え、前記外側保護層の外面に沿った少なくとも接線方向の力成分を有する衝撃力の下で、前記外側保護層は、内層の対向する外面部分に対して相対的に移動するように構成されている、前記外側保護層、
を備え、
- ここで、前記外側保護層の内面は、前記内層に対する前記外側保護層の前記相対的な移動時に前記内層と前記外側保護層との間の機械的なロックを低減するように構成される複数のスペーサーによって前記内層の外面から分離される。
【0009】
特に、第1の態様による本発明の文脈において、機械的なロックとは、2層間のあらゆる機械的相互作用、特に、保護層が内層又は関係する他の層と衝突して、それにより内層に対する外側保護層の所望の移動が妨げられる(かつしたがって、ヘルメットを装着している人の傷害を防止する点で効果が低くなる)ような、2層間のあらゆる種類の相互作用、を意味すると理解される。
【0010】
言い換えれば、幾何学的構造(スペーサー)は、機械的なロックを防止するために、前記外側保護層と前記内層との間にスタンドオフを提供する。幾何学的構造/スペーサーは、層間に配置される別体であってもよいが、層と一体的に形成されるか、又は他としては層と接続され得る、層の一方の突出部であってもよい。この点で、波形の表面はまた、(表面/各層と一体的に形成される)複数のスペーサーを提供することもできる。
【0011】
本発明の第1の態様の一実施形態によれば、スペーサーにより、内層の外面と外側保護層の内面との間に中空の隙間が形成される。好ましくは、2つの外側保護層と内層との間のこの隙間又はスタンドオフは、好ましくは0.5mmより大きく、特に1mmより大きく、特に5mmより大きい。一実施形態では、隙間は10mmより小さい。
【0012】
さらに、本発明の第1の態様の一実施形態では、スペーサーは外側保護層の内面と一体的に形成され、内層の外面に向かって突出している。
【0013】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、スペーサーは、内層の外面と一体的に形成され、外側保護層の内面に向かって突出している。
【0014】
本発明の第1の態様のさらに別の代替の実施形態によれば、スペーサーは、内層の外面と外側保護層の内面との間に配置される(外側保護層及び内層に関して)別個の要素である。
【0015】
さらに、本発明の第1の態様の一実施形態では、外側保護層は、内層上に並んで配置される複数のシェルを備える。さらに、隣接するシェルが重なっている可能性もある。
【0016】
さらに、本発明の第1の態様の一実施形態によれば、外側保護層(又は外側保護層のそれぞれのシェル)は、互いに積み重なって配置される複数の副層を備える。さらに、副層は、隣接する副層と重なる可能性がある。
【0017】
本明細書で記載する他の層もまた、原理的には副構造を備えることができ、必ずしも均質な層を形成する必要はない。
【0018】
本発明の第1の態様のさらなる実施形態によれば、スペーサーのサイズ及び/又は外側保護層に沿ったスペーサーの分布は異なる。しかしながら、スペーサーを外側保護層に沿って等間隔に配置することも可能である。
【0019】
さらに、本発明の第1の態様の一実施形態では、外側保護層は、0.05mm~10mmの範囲の厚さを備える。
【0020】
さらに、接線方向の衝撃時の内層に対する外側保護層の移動は、異なる特性を持ち得る。特に、内層に対する外側保護層の前記相対的な移動は、外側保護層の折り曲げ、外側保護層のヒンジング(hinging)、外側保護層のクランプリング(crumpling)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0021】
さらに、前記相対的な移動に関して、外側保護層は、特に、外側保護層又はその構成要素の移動を制限するように構成される少なくとも1つのテザー(例えば、紐又は弾性バンド)によって、実施形態に従って内層に拘束される。
【0022】
本発明の第1の態様の一実施形態において、内層はエネルギー吸収層を備えるか、又はエネルギー吸収層として形成され得る。エネルギー吸収層は、発泡ポリスチレン(特にEPS、すなわち発泡ポリスチレン)、又は例えばEPSと同様の特性を提供する同様の化合物若しくは発泡体を含み得る。
【0023】
ヘルメットを装着している人の頭部に面する側面には、ヘルメットの適合性を調整するため、あるいは快適性のために、裏地層又は裏地要素を配置することができることに留意されたい。
【0024】
さらに、本発明の第1の態様の一実施形態によれば、ヘルメットは、内層の一部を形成する中間層を備え、中間層は、エネルギー吸収層と外側保護層との間に配置される。特に、中間層は、エネルギー吸収層に固定されているか、又は内層の上に支持されている。支持具(suspension)は剛性構造によって実現できるが、中間層とエネルギー吸収層との間に液体を配置することによっても実現できる。
【0025】
さらに、本発明の第1の態様の一実施形態では、中間層は、衝撃時に回転するように構成され、又は衝撃時にエネルギー吸収層に埋め込まれる複数の要素(例えば転動要素)を備える。特に、前記要素はスペーサーによって形成される。あるいは、前記要素はスペーサーに対して別個の要素である。
【0026】
さらに、本発明の第1の態様の一実施形態では、外側保護層は剛性材料で形成されている。特にこの材料は、エネルギー吸収層を形成する材料よりも硬い。特に、外側保護層の前記材料は、以下の材料:熱可塑性材料、金属、のうちの1つを含むか、又はそれである。
【0027】
さらに、本発明の第1の態様の一実施形態によれば、それぞれのスペーサーは、内層の外面又は外側保護層の内面の点状、又は柱状の突出部によって形成される。つまり、それぞれのスペーサーは、むしろ外側保護層/内層の表面に沿って局在している。
【0028】
しかしながら、本発明の第1の態様の別の実施形態において、それぞれのスペーサーは、細長い湾曲したリブ(rib)として設計することもでき、それぞれのリブ/スペーサーの長手方向におけるリブ/スペーサーの長さは、長手方向に直交して延びる平面におけるリブの直径よりも著しく大きい。
【0029】
さらに、それぞれのスペーサー(例えば、点状/柱状のスペーサー又はリブ形状スペーサー)はテーパー状(taper)であり得る。
【0030】
特に、それぞれのスペーサーが別体によって形成されている場合、それぞれのスペーサーは、円柱、円錐、角錐、立方体、切頭円錐のうちの1つとして形成される。その他の形状も考えられる。特に、それぞれのスペーサーは、対向する層に対して丸みを帯びた接触面を設けるために、円周方向に丸みを帯びたエッジ部を有する面側(face side)を備える。
【0031】
さらに、本発明の第1の態様の一実施形態において、それぞれのスペーサーは、衝撃時にヘルメットの対向する層(対向する層は、内層、特に中間層又はエネルギー吸収層、であり得る)に埋め込まれるように構成されている。
【0032】
本発明の第1の態様のさらに別の実施形態によれば、外側保護層の内面は波形であり、それにより、球状の曲率を備え、かつ内層の対向する表面領域に対して同心である複数の表面領域を内面が形成するようにする。言い換えれば、スタンドオフを変化させることにより、対応する球面形状上で波状の表面を移動(特にスライド)させることを可能にする。
【0033】
さらに、本発明の第2の態様は、ヘルメット、特にサイクリング用ヘルメット、特に幾何学的なロックが低減されるヘルメットに関する。この第2の態様については後述する。
【0034】
本発明の第2の態様の目的は、特にコスト効率よく製造できる、安全性を高めたヘルメットを提供することである。
【0035】
特に、本発明の第2の態様は、保護層の外面に沿った接線方向の力成分を備える保護層に作用する衝撃力の下で、内層に対して移動可能な外側保護層を備えるヘルメットを改良することを目的とする。
【0036】
本発明の第2の態様によるヘルメットの特定の目的は、ヘルメットの外側保護層の個々のセクションが、接線方向の衝撃力の下でこれらのセクションが移動する場合に、幾何学的なロック(固定)/キャッチ(引っかかり)を防止することである。単一シェルのヘルメット(すなわち、単一の一枚岩の外側保護層を備えるヘルメット)では、干渉することなく内層の対向する半球状の外面上を移動することができるように保護層全体の内面が半球状である必要がある。
【0037】
これらの目的は、請求項26の特徴を有するデバイスによって達成される。
【0038】
本発明のこの第2の態様の実施形態は、対応する従属請求項に記載され、以下に説明される。
【0039】
請求項26によれば、ヘルメットが開示され、前記ヘルメットは:
- 外面を備える内層、及び
- 前記内層上に配置される外側保護層であり、前記外層(外側層)は、少なくとも2つのセクションを備え、各セクションは、前記内層の外面部分に面する内面を備え、それぞれのセクションの外面に沿って少なくとも接線方向の力成分を有する衝撃力に曝される際に、それぞれのセクションは、前記内層の前記対向する外面部分に対して相対的に移動し、かつ少なくとも1つの他のセクションから(特に前記内層から)分離するように構成されている、前記外側保護層、
を備え、
ここで各セクションの前記内面は、球状の曲率を備え、かつ前記内層の前記対向する外面部分と同心である少なくとも1つの領域を備える。
【0040】
好ましくは、各セクションの内面の主要部分(特に、それぞれのセクションのエッジ領域又はそれぞれのセクションの内面に形成された凹部を除く)は、全体的に球状に湾曲しており、かつ内層の対向する外面部分と実質的に同心である。
【0041】
同様に、好ましくは、内層の対応する外面部分もまた球状に湾曲しており、接線方向の衝撃に応答して下にある内層の外面部分上でそれぞれのセクションが移動(特にスライド/転動)可能になっている。
【0042】
本発明の第2の態様の一実施形態によれば、それぞれのセクションの内面の前記少なくとも1つの領域は、それぞれのセクションの内面全体に対応する。あるいは、それぞれのセクションの内面の前記少なくとも1つの領域は、それぞれのセクションの内面の総領域の少なくとも5%に相当し、特に少なくとも10%、特に少なくとも20%、特に少なくとも30%、特に少なくとも40%、特に少なくとも50%、特に少なくとも60%、特に少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に少なくとも90%に相当する。
【0043】
さらに、本発明の第2の態様の一実施形態によれば、内面は、複数の切り離された領域を備え、各領域は、球状の曲率を備え、かつ内層の対向する外面部分と同心であり、ここで特にそれぞれの2つの隣接する領域の間の移行領域は、非球状の曲率を備える。特に、それぞれのセクションの内面の前記切り話された領域は、それぞれのセクションの内面の総領域の少なくとも5%に相当し、特に少なくとも10%、特に少なくとも20%、特に少なくとも30%、特に少なくとも40%、特に少なくとも50%、特に少なくとも60%、特に少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に少なくとも90%に相当する。
【0044】
さらに、本発明の第2の態様の一実施形態によれば、外側保護層の各セクションはエッジ領域を備える。
【0045】
特に、本発明の第2の態様の一実施形態では、それぞれのセクションが前記衝撃力の下で内層の対向する外面部分に対して相対的に移動し、かつ少なくとも1つの他のセクションから分離する際に、それぞれのセクションの幾何学的なロック/キャッチ(引っかかり)を防止するために、外側保護層の少なくとも2つのセクションの間に平滑な移行領域を形成するように、少なくとも2つのセクションのエッジ領域が互いに接続されている。しかしながら、一実施形態によれば、外側保護層のセクションは、互いに隣接して配置され得るか、又は互いに間隔をあけて配置され得る別個のパネルによって形成することもできる。
【0046】
本発明の第2の態様の一実施形態によれば、少なくとも2つのセクションのエッジ領域は、互いに一体的に接続されている。特に他の適切な接続手段、例えば正の接続、フォースロック接続、物質間結合(接着)、溶接接続/溶接線も使用できる。さらに、それぞれのエッジ領域は、内層又はエネルギー吸収層に接着、特に溶着することができる。内層は、エネルギー吸収層とすることができ、又はそれを備えることができる(これは他の実施形態にも当てはまる)。
【0047】
さらに、本発明の第2の態様のさらに別の実施形態によれば、それぞれのエッジ領域は、それぞれのセクションが前記衝撃力の下で内層の対向する外面部分に対して相対的に移動し、かつ少なくとも1つの他のセクションから分離する際に、それぞれのセクションの引っかかりを防止するために、衝撃力の下で降伏するように構成される。特に、少なくとも2.5ジュールのエネルギー閾値を超える衝撃力によってエネルギーが導入される場合、それぞれのセクションは対向する外面部分に対して相対的に移動し、かつ少なくとも1つの他のセクションから分離する。
【0048】
特に、各セクションのエッジ領域は、少なくとも2つのセクション間の移行領域の曲率のレベルにわずかに反比例して降伏する必要があり、すなわち、より平滑にすれば、必要な降伏は少なくなる。
【0049】
さらに、本発明の第2の態様の一実施形態では、それぞれのエッジ領域の降伏をもたらすために、それぞれのエッジ領域は、それぞれのセクションの隣接する中央部分の厚さよりも薄い厚さを備える。
【0050】
さらに、本発明の第2の態様の一実施形態によれば、それぞれのエッジ領域の降伏をもたらすために、それぞれのエッジ領域は、それぞれのセクションの隣接する中央部分の材料よりも柔らかい材料から形成される。
【0051】
さらに、本発明の第2の態様の一実施形態では、それぞれのエッジ領域の降伏をもたらすために、それぞれのエッジ領域は、凹部及び/又は穿孔を備える。
【0052】
特に、内層は、ヘルメットを装着している人の頭部を保護するために、ヘルメットに作用する機械的な力を散逸させ、かつ吸収するように構成されるエネルギー吸収層であるか、又はエネルギー吸収層を備えることができる。このように、エネルギー吸収層は、頭部に最も近い位置に配置されるヘルメットの最内層を形成してもよい。エネルギー吸収層は特に、比較的に柔らかい材料、すなわち中間層及び/又は外側保護層の材料よりも柔らかい材料を備える。
【0053】
エネルギー吸収層は、発泡ポリスチレン(特にEPS、すなわち発泡ポリスチレン)、又は例えばEPSと同様の特性を提供する同様の化合物若しくは発泡体を含み得る。
【0054】
ヘルメットを装着している人の頭部に面する側面には、ヘルメットの適合性を調整するため、あるいは快適性のために、裏地層又は裏地要素を配置することができることに留意されたい。
【0055】
エネルギー吸収層は、複数の副層を備えてもよい。このような副層は、互いに積み重ねることができ、及び/又は横方向に並べて配置することができる。
【0056】
同様に、外側保護層及び/又はその個々のセクション(及びまたヘルメットの他の層)は、互いに積み重ねることができ、かつ/又は横方向に並べて配置することができる複数の副層を備えることができる。
【0057】
特に、外側保護層(特にそのセクション)は、内層/エネルギー吸収層とは異なる材料を含み得る。
【0058】
特に、内層はヘルメットの中間層を備えることができ、中間層はエネルギー吸収層と外側保護層との間に配置することができる。
【0059】
特に、本発明の第2の態様の一実施形態では、中間層はヘルメットの最も剛性で最も硬い層である。
【0060】
さらに、内層は、外側保護層が衝撃時に内層に対して転動する球体上を移動できるように、球体を備える反応層とすることができる。
【0061】
本発明の第2の態様の別の実施形態によれば、中間層は、外側保護層が衝撃力に曝される場合に外側保護層が移動し得る低摩擦表面を提供するように形成及び設計される。
【0062】
特に、低摩擦は、中間層を外側保護層/外側保護層のセクションよりも硬く形成することによって達成される。
【0063】
中間層は、ポリカーボネートを含むか、又はポリカーボネートからなり得る。
【0064】
中間層は、物質間結合(接着)によってエネルギー吸収層に接続されてもよく、例えば、エネルギー吸収層に恒久的に取り付けられるように、エネルギー吸収層に接着されてもよい。特に、中間層は、外側保護層の変形を引き起こす衝撃力が加わっても、エネルギー吸収層に取り付けられた状態を維持するように構成されている。
【0065】
特に、外側保護層は、エネルギー吸収層とは反対に面する中間層の側面に配置される(ここで、中間層は、保護層のセクションが配置される外面部分を形成する)。外側保護層は、ヘルメットの最外層を形成してもよい。
【0066】
衝撃力の曝露は、ヘルメットで保護されている人の頭部が、接線方向の力成分がヘルメットにせん断応力を引き起こすような物体にぶつかるような事故の際に起こりうる。せん断応力を低減するために、衝撃によって影響を受ける外側保護層のセクション(複数可)は、内層に対して(特に中間層に対して)解放され、かつ外側保護層のそれぞれのセクションに作用する接線力に従って内層に対して相対的に移動するように構成されている。
【0067】
特に、外側保護層(又はそのセクション)は、コネクタ、又は物質間結合(接着)、又は他の適切な手段によって、内層(例えば、エネルギー吸収層)又は中間層に接続することができる。
【0068】
特に、コネクタは衝撃力への曝露時に破損又は変形し、それにより、外側保護層がエネルギー吸収層に対して塑性変形することが可能になる。
【0069】
さらに、本発明の第2の態様の一実施形態によれば、それぞれのセクションの外面に沿った少なくとも接線方向の力成分を有する衝撃力に曝される際に、それぞれのセクションは、内層の対向する外面部分に対して相対的に移動距離を移動するように構成され、かつそれぞれのセクションは、移動距離の方向に幅を備え、並びに移動距離の方向に対してある角度で延びる張り出し長さを備え、前記幅と前記張り出し長さとの合計は、好ましくは、移動距離よりも大きい。
【0070】
さらに、以下の実施形態も本発明の両態様に適用される。
【0071】
特に、好ましい一実施形態では、外側保護層は、前記衝撃力の下で破砕して、外側保護層(又はその断片)と内層の外面との相対的な移動を可能にするように構成されている。
【0072】
さらに、好ましい一実施形態では、外側保護層は、特に非破壊的な様式に、例えば保護層と内層との間の摩擦ロック及び/又は正の接続を解除することによって、内層から機械的にロックを解除するように構成されている。
【0073】
さらに、好ましい一実施形態では、外側保護層は、接着剤を介して内層に接続され、かつ前記衝撃力下で内層から分離するように、特に完全に分離する(すなわち離れて移動する)ように構成されている。
【0074】
さらに、例示的な実施形態を、図と併せて以下に説明する。さらに、本発明の特定の態様と併せて本明細書に開示された特徴は、あらゆる賢明な方法で本発明の他の態様の実施形態と組み合わせることができる。
【0075】
以下では、本発明の第1及び第2の態様による本発明の実施形態、並びに第1及び第2の態様による本発明のさらなる特徴及び利点を、図を参照して記載する。図は特許請求の範囲に添付され、示された実施形態の個々の特徴及び本発明の態様を説明する文章が付されている。図に示され、及び/又は図の前記文章に記載される個々の特徴は、本発明によるデバイスに関する特許請求の範囲に(分離された様式でも)組み込むことができる。
【0076】
図1は、本発明の第1の態様によるヘルメット1の一実施形態の概略断面を示す。ヘルメット1は、外面31aを備える内層3と、内層3上に配置される外側保護層2とを備え、外側保護層2は、内層3の外面31aに面する内面2aを備え、外側保護層2の外面に沿った少なくとも接線方向の力成分を有する衝撃力Fの下で、外側保護層2は、内層3の対向する外面31aに対して相対的に移動するように構成されている。特に、内層3は、エネルギー吸収層30、及び外側保護層2とエネルギー吸収層30との間に配置される中間層31を備える。特に、中間層31は、エネルギー吸収層の上に支持することができる(例えば、中間層31とエネルギー吸収層30との間に配置される液体層及び/又は剛性の取り付け構造を使用して支持することができる)。さらに、本発明によれば、外側保護層2の内面2aは、内層3/中間層31に対する外側保護層2の前記相対的な移動Mの際に内層3と外側保護層2との間の機械的なロックを低減するための複数のスペーサー4によって内層3(ここでは中間層31)の外面31aから分離されている。スペーサー4によるスタンドオフにより、2つの層2及び31の間の機械的なロックのリスクは著しく低減される。特に、スペーサー4は外側保護層2と一体的に形成され、かつ対向する内層3/中間層に向かってテーパー状であり得る。
【0077】
図2は、
図1に示した実施形態の変更型を示す概略断面図を示し、ここでは
図2とは対照的に、中間層31がエネルギー吸収層30に接着されている。
【0078】
図3は、本発明の第1の態様によるヘルメットのさらなる実施形態の概略断面を示す。
図1及び2とは対照的に、それぞれのスペーサーは、内層3と一体的に形成されており、それぞれのスペーサー4は、中間層の部分によって覆われているエネルギー吸収層の突出部を備える。特に、それぞれのスペーサー4は外側保護層2に向かってテーパー状である。
【0079】
図4は、可能なスペーサー形状の断面図を示す。
図4によれば、それぞれのスペーサー4は、三角形の断面を備え得、又は角錐若しくは円錐(A)とし得る。さらに、それぞれのスペーサー4は、(B)に示すとおり、切頭円錐として形成することができる。さらに、それぞれのスペーサー4は、(C)~(F)に示すとおり立方体として形成することができ、又は矩形断面を備えることができる。さらに、(C)~(F)に示すとおり、それぞれのスペーサー4は、対向する層と接触するための面側4aを備えることができ、面側4aは、丸みを帯びたエッジ部分4b、特に円周方向に丸みを帯びたエッジ部分4bを有することができる。
【0080】
図4に示す形状は、本明細書で記載する層2、3、31のうちの1つに一体的に形成されるスペーサー4にも適用できる。さらに、それぞれの細長いスペーサー4(
図8参照)は、
図4に示す形状のうちの1つに対応する断面を備えることができる。
【0081】
図5は、ヘルメット1の外側保護層2とヘルメット1の内層3との間の隙間に配置される(例えばそれぞれ矩形断面を有する)別個のスペーサー4を備える、本発明の第1の態様によるヘルメット1の一実施形態を示す。特に、外側保護層2は、外側保護層2の内面2aから突出する突出部200を備えることができ、それぞれの突出部200は、2つの隣接するスペーサー4の間の隙間に延在する。
【0082】
図6は、波形の外側保護層2に一体的に接続される2つの異なる長さのスペーサー4、40を備える、本発明の第1の態様によるヘルメット1の一実施形態を示す。特に、外側保護層2の内面2aは波形であり、それにより、内面2aが互いに間隔をあけて配置され、かつ球状の曲率を備え、かつ内層3の対向する表面領域31aに対して同心である、複数の表面領域20を形成するようにする。
【0083】
図7は、スペーサー4が内層3の突出部であり、点状の実装面積を備える、本発明の第1の態様によるヘルメット1の一実施形態を示す。
【0084】
これとは対照的に、
図8は、スペーサー4が細長い構造として形成されている別の実施形態の図を示す。特に、スペーサーは、内層3と一体的に形成され得る細長い湾曲したリブ4として形成することができる。好ましくは、リブ4はヘルメット1の長手方向Lに沿って延びる。
【0085】
最後に、
図9は、それぞれのスペーサー4は、別体4として形成され、かつ外側保護層2と内層3(例えばエネルギー吸収層)との間に配置されている、本発明の第1の態様によるヘルメット1の一実施形態を示す。特に、それぞれのスペーサー4は、衝撃時に内層3に埋め込まれるように構成されている。特に、それぞれのスペーサー4は、そのより大きい面側を前方にして内層3に埋め込まれるように構成されている。
【0086】
特に、本発明の第1の態様は、ヘルメットの2つの層の間にスペーサーを使用することに関する。本明細書で記載のスペーサーは、適切な様式で組み合わせることもできる。すなわち、外側保護層と内層の間に、異なる形状のスペーサーを組み合わせて使用することもできる。
【0087】
本発明の第2の態様の特定の目的は、
図10に示すとおり、接線衝撃F
T下でのヘルメットB1の外側保護層B2の幾何学的なロックを防止することである。
【0088】
このような保護層B2のロック又は引っかかりが発生する場合、保護層B2は、ヘルメットB1の内層B3に対して干渉なく移動することが妨げられ、これにより重傷を負うリスクがあるヘルメットB1及びヘルメットB1を装着している人の頭部の回転が引き起こされる。
【0089】
図11に示すとおり、ヘルメットB1の内層B3上に配置される本質的に半球状の外側保護層B2を備える単一シェルのヘルメットB1の場合、
図11(C)に模式的に描かれているとおり、単一の外側シェルB2が内層B3の外面に対して十分な球面曲率及び同心度を備えていない場合には、接線衝撃時に必要な移動(
図11(A)に示す移動)が著しく妨げられ得る。
【0090】
図12は、外側保護層B2の各セクション/パネルB21、B22が衝撃の間に隣接するものから分離することができる、本発明の第2の態様によるヘルメット1の一実施形態を示す。特に、各セクションB21、B22は、球状に湾曲しており、それぞれのセクション/パネルB21、B22が配置される内層B3の関連する外面部分B31、B32に関して同心である。好ましくは、セクションB21、B22のエッジ領域B210、B220の間に形成される移行領域B4は、引っかかりを防止するために十分に平滑である(
図12の詳細(C)を参照)。したがって、各セクションB21、B22が球面曲率及び下の表面部分B31、B32に対する同心度の条件を満たしているために、各セクション/パネルB21、B22に対して妨げのない補償移動が可能になる。簡単にするために、
図12では2つのセクションB21、B22のみを示す。しかしながら、一般に、本発明の枠組みでは、このようなセクションを複数、特に2つ以上設けることができる。
【0091】
さらに、各セクション/パネルB21、B22のエッジ領域B210、B220は、好ましくは、2つの球状に湾曲したセクションB21、B22の間の平滑のレベルに反比例して(又は移行領域B4の湾曲のレベルに比例して)わずかに降伏することができる。-平滑が大きければ(湾曲より少なければ)、必要な降伏が少ない(降伏は、エッジ領域B210、B220のより薄い材料の選択、エッジ領域B210、B220のより弱い材料、及び/又はセクションB21、B22に形成される凹部又は穿孔からもたらされ得るが、もちろん、前記降伏を達成するための手段は組み合わせることができる)。
【0092】
好ましくは、上記の考慮事項に加えて、セクション/パネルB21、B22は、衝撃が起こり得る範囲を越えて十分に広域の領域をカバーする。セクションB21、B22が移動すると、内層B3(外面部分B31、B32)が露出するようになることがあり、この露出面B31、B32が外側保護層B2の衝撃を受けたセクションB21、B22に直接接触する場合に、相対的な移動システムの効果の低下をもたらし得る。
【0093】
さらに、
図13は、外側保護層B2への接線衝撃を示し、この間に、外側保護層B2又はそのセクションB22が移動方向に移動距離dを移動することを示す。また、内層B3上の層B2/セクションB22の移動を改善するための球体を備える中間層B20も示されている。
【0094】
さらに、
図14は、移動距離dの方向の幅wと、移動距離dの方向に対して角度θで延びる張り出し長さlとを備える外側保護層B2のセクションB22の概略図を示す。
【0095】
図15は、張り出し長さlと張り出し長さlの角度θの関係を示す。特に幾何学的なロックは、負のドラフト角度(draft angle)により引き起こされ、これは、特に本質的に完全な球面層を持つことで対処できるが、
図15に示す角度θと張り出し長さlとの間の放物線関係を利用することでも対処できる。一例として、対向する層B2、B3(又はB21、B22、B3)の良好な移動特性を有するために、これは角度θが45°に等しい場合に約10mm以下の張り出し長さを有し、角度θが90°に等しい場合に1mm以下の張り出し長さを有する。
【0096】
さらに、
図14に関して、外側保護層B2(又はそのセクションB21、B22)と内層B3(中間層B20)との間の効果的な移動を確保するために、幅wと張り出し長さlとの合計は、移動距離dよりも大きいことが好ましい。
【国際調査報告】