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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】機能的反応層ヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/06 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
A42B3/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501710
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2022069697
(87)【国際公開番号】W WO2023285576
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】21185448.4
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21185689.3
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21187554.7
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21187556.2
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21188100.8
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21195162.9
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22152819.3
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22152820.1
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22153059.5
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22153062.9
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22154594.0
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22160362.4
(32)【優先日】2022-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22164237.4
(32)【優先日】2022-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521527945
【氏名又は名称】ヘクサー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】スパイサー,ロビン
(72)【発明者】
【氏名】レヴィー,アダム
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】クック,ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
3B107
【Fターム(参考)】
3B107AA01
3B107BA05
3B107DA01
(57)【要約】
本発明は、ヘルメット(1)に関し、ヘルメット(1)は:ヘルメット(1)の外面を形成する第1の層(10)と、第2の層(30)と、第1の層(10)と第2の層(30)との間に挟まれた反応層(20)とを備え、それにより、前記反応層(20)は複数の剛性のボール(2)を備え、複数の剛性のボール(2)は、ヘルメット(1)が予め決定される閾値より大きい強度の衝撃を受けるとすぐに第1の層(10)が第2の層(30)上で転動することを可能にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- ヘルメット(1)の外面を形成する第1の層(10)、
- 第2の層(30)、及び
- 第1の層(10)と第2の層(30)との間に挟まれる反応層(20)、
を備えるヘルメット(1)。
【請求項2】
前記反応層は、ヘルメット(1)の通常の使用の間に剛性を維持し、かつ第2の層(30)の外面(30a)上を衝撃閾値にて転動するように構成される複数の剛性のボール(2)を備える、請求項1に記載のヘルメット。
【請求項3】
ボール(2)は、第1の層(10)の内面(10a)の領域の10%~50%に相当する領域を占めるように、好ましくは15%~30%、好ましくは約20%に相当する領域を占めるように、第1の層(10)の前記内面(10a)に沿って分布する、請求項2に記載のヘルメット。
【請求項4】
剛性のボール(2)は、脆性破壊を受けるように構成される接着剤(22)を介して基材フィルム(21)に接着(結合)されている、請求項2又は3に記載のヘルメット。
【請求項5】
基材フィルム(21)は200μmより薄い厚さを備える、請求項4に記載のヘルメット。
【請求項6】
基材フィルム(21)は、前記複数のボール(2)と反対に面する基材フィルム(21)の側面に配置される好ましくは感圧接着剤からなる接着層(23)を備える、請求項4又は5に記載のヘルメット。
【請求項7】
反応層(20)は、第1の層及び第2の層(10,30)に接着される膜(20)であり、膜(20)は、前記基材フィルム(21)及びその上に配置される複数のボール(2)を備える、請求項4、又は請求項4を参照する限りにおいて請求項5又は6に記載のヘルメット。
【請求項8】
膜(20)は、基材フィルム(21)の前記接着層(23)を介して第2の層(30)の外面(30a)に接着されている、請求項6又は7に記載のヘルメット。
【請求項9】
膜(20)は、接着層(14)を介して、好ましくは熱軟化性接着剤を備える接着層(14)を介して、第1の層(10)の内面(10a)に接着されている、請求項7又は8に記載のヘルメット。
【請求項10】
第1の層(10)は、シート(11)と、シート(11)の内面に配置されるカラー層(12)と、カラー層(12)に配置される保護層(13)とを備え、膜(20)を第1の層(10)の内面に接着する前記接着層(14)は、保護層(13)に接着されている、請求項9に記載のヘルメット。
【請求項11】
保護層(13)は耐熱性インク層である、請求項10に記載のヘルメット。
【請求項12】
保護層(13)はプラスチック層である、請求項10に記載のヘルメット。
【請求項13】
保護層(13)は、0.1mm未満の厚さ及び/又は20MPaより大きい降伏強度を備える、請求項10~12のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項14】
保護層(13)は、第1の層(10)の材料の熱膨張と5%未満の差である熱膨張を有する、請求項10~13のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項15】
第1の層(10)は、外側シート(11)と内側シート(110)とを備えるツインシートアセンブリである、請求項1~9のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項16】
ツインシートアセンブリ(10)の内側シート(110)は穿孔されている、請求項15に記載のヘルメット。
【請求項17】
外側シートと内側シート(11,110)との間に、カラー層(12)と接着層(140)とが配置されており、特にカラー層(12)が外側シート(11)に配置され、かつ内側シート(110)が接着インク層(140)を介して外側シート(11)に接着されている、請求項15又は16に記載のヘルメット。
【請求項18】
ヘルメット(1)はエネルギー吸収層(40)を備え、第2の層(30)の内面(30b)は接着層(33)によってエネルギー吸収層(40)に接着されている、請求項1~17のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項19】
第2の層(30)は、エネルギー吸収層(40)の部分が第1の層(10)に向かって延びる凹部及び/又は貫通孔を備え、エネルギー吸収層(40)の前記部分は、第1の層(10)に接着されている、請求項18に記載のヘルメット。
【請求項20】
第2の層(30)の外面は、第1の層(10)の内面と第2の層(30)の前記外面との間の分離を低減するように、それぞれの凹部及び/又は貫通孔の周囲で局所的に上方に湾曲し、特にエネルギー吸収層(40)の製造中に前記内面と外面との間の容積部へのエネルギー吸収層(40)の流出を回避するために、湾曲する、請求項19に記載のヘルメット。
【請求項21】
反応層(20)は、第1の層と第2の層(10,30)との間の前記複数のボール(2)のうちのボール(2)の転動によって第1の層(10)と第2の層(30)との間の相対移動を容易にするように構成されており、前記ボール(2)の転動は、ボール(2)と、第1の層(10)の内面(10a)若しくは第1の層(10)に接続された内面(10a)との間、又はボール(2)と、第2の層(30)の外面(30a)若しくは第2の層(30)に接続された外面(30a)との間で、0.0001~0.2の範囲の低い転がり抵抗を提供し、特に0.03~0.05、特に0.025~0.04の範囲の低い転がり抵抗を提供する、請求項1~20のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項22】
第1の層(10)の内面(10a)と第2の層(30)の外面(30a)とが互いに対して同心である、請求項1~21のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項23】
膜(20)又は反応層(20)は、第1の層(10)の内面に対して合同である、請求項1~22のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項24】
第2の層(30)は、第1の層(10)が第2の部分の一部分に突き当たるのを避けるために、第1の層(10)を第2の層(30)と反対側に湾曲させるための少なくとも1つの傾斜部を形成する、請求項1~23のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項25】
第2の層(30)及び/又はエネルギー吸収層(40)に対して前記エッジ部分(80)の上を相対的に移動する場合に、第1の層(10)のトレーリングエッジ(10g)が前記エッジ部分(80)に引っ掛かるのを防止するように、エネルギー吸収層(40)及び/又は第2の層(30)は、面取りされた又は丸みを帯びたエッジ部(80a)を有するエッジ部分(80)を備える、請求項1~24のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項26】
反応層のボール(2)の転動を始動するのに必要な接線力が約0.1kNであるように、又はボール(2)の転動を始動するための衝撃力(F)によって導入されるエネルギーが2.5Jを超える必要があるように、反応層(20)は第1の層(10)を保持するように構成されている、請求項1~25のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項27】
第2の層(30)の外面(30a)は、前記複数のボール(2)のうちのボール(2)の転動に抵抗をもたらす複数の突起を備える、請求項1~26のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項28】
第1の層(10)は、ヘルメット(1)の後部からヘルメット(1)の前部に向かう第1の方向(D1)の斜めの衝撃の間、第1の層(10)の前部分(101)を所定位置に留まらせるエネルギー吸収層(40)に接続される前部分(101)を備え、一方で、前部分(101)に接続されている第1の層(10)の残りの部分(102)は、第2の層(30)から分離され、かつヘルメット(1)の前部からヘルメット(1)の後部に向かう第2の方向(D2)の斜めの衝撃の間、前部分(101)は、エネルギー吸収層(40)から外れるように構成されているか、又は第1の層(10)の残りの部分は、第1の層(10)の前部分から引き裂かれるように構成されている、請求項1~27のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項29】
前記前部分(101)は、開口部(103)を備えるタブを形成し、タブは、エネルギー吸収層(40)に埋め込まれており、エネルギー吸収層(40)の部分(400)は、前記部分(400)が第1の方向(D1)の前記斜めの衝撃時にタブを所定の位置に保持し、かつ好ましくは、第2の方向(D2)の前記斜めの衝撃時にタブを解放するように破壊されるように、前記開口部(103)を通って延びる、請求項28に記載のヘルメット。
【請求項30】
第1の層(10)への衝撃力に対して、第1の層(10)は、形状変形し、かつ第2の層(30)に対して相対的に移動するように構成されている、請求項1~29のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項31】
第1の層(10)はエッジ領域(10b)を備え、エッジ領域(10b)は、第1の層(10)から第2の層(30)への半径方向の力(F)の伝達を抑制するように構成されている、請求項1~30のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項32】
前記エッジ領域(10b)は、第2の層(30)の外面の法線に対して角度(x)で延びる第1の層(10)の部分によって形成され、前記角度(x)は、20°~80°の範囲内であり、好ましくは30°~70°、好ましくは40°~60°、好ましくは40°~50°の範囲内である、請求項31に記載のヘルメット。
【請求項33】
第1の層(10)は、圧縮可能な中間層(4)によって第2の層(30)の外面(30a)に接続されるエッジ領域(10b)を備え、特に第1の層(10)から第2の剛性の層への半径方向の力(F)の伝達を抑制するために、エッジ領域(10b)を備える、請求項1~30のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項34】
第1の層(10)は、ヘルメット(1)を装着している人の頭部の回転運動を低減するために、第1の層(10)への衝撃の結果としてエネルギーを蓄積及び放出するように構成されている、請求項1~33のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項35】
第1の層(10)は、衝撃の間に第2の層(30)に対してその形状を変化させるように構成されており、特に第1の層(10)はオーセティック構造を備える、請求項1~34のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項36】
第1の層(10)は、衝撃の間にヘルメット(1)を旋回させ、それによってヘルメット(1)を装着している人の頭部の回転運動を低減させるように成形されている、請求項1~35のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項37】
第1の層(10)は、衝撃の間に第1の層(10)の自由な移動が抑制されるように、衝撃の間に変形するように構成されており、特に前記変形は、ボール(2)を第2の層(30)の外面(30a)に接着する接着剤(22)の剥離を引き起こす、請求項1~36のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項38】
第1の層(10)は、前記旋回を支持するための座屈部(5)を備える、請求項36に記載のヘルメット。
【請求項39】
衝撃時に座屈部(5)は扁平になり、かつ幅が増大するように構成され、その結果、前記座屈部の境界領域(50)の並進移動によりボール(2)の転動が引き起こされる、請求項2又は請求項37に記載のヘルメット。
【請求項40】
ヘルメット(1)とヘルメット(1)を装着している人の頭部で構成される系の質量中心(C)までの距離(A)を法線力が備えるように、座屈部(5)は、第1の層(10)に作用する衝撃の前記法線力の再方向付けをもたらすように構成されている、請求項38に記載のヘルメット。
【請求項41】
第1の層(10)、特に座屈部(5)は、ヘルメット(1)の隣接構造との機械的相互作用による第1の層(10)の幾何学的なロックを防止するために、衝撃時に変形するように構成されており、特に、ヘルメット(1)の隣接構造と絡み合うようにならないように、第1の層(10)の変形、特に座屈部(5)の変形により、第1の層(10)のエッジ領域(51)を反応層(20)から浮き上がらせる、請求項1~40のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項42】
第1の層(10)の内面(10a)は、衝撃の間、第2の層(30)の外面(30a)と合同になるように構成され、特に接触前の衝撃及び滑りの継続時間を増加させるように、合同になるように構成されている、請求項1~41のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項43】
第1の層(10)は、単に第1の層(10)の内面(10a)の1つ又は複数の制限された部分のみを介して反応層(20)に接触し、特に前記部分(複数可)は、第1の層(10)の周縁部に配置されている、請求項1~42のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項44】
前記部分(複数可)は、第1の層(10)の隣接部分と比較して高められた剛性を備え、特に、第1の層(10)と第2の層(30)との間の相対的な移動を容易にするのに必要な反応層の領域を減少させるように、高められた剛性を備える、請求項43に記載のヘルメット。
【請求項45】
第1の層(10)は射出成型された第1の層(10)であり、及び/又は第2の層(30)は射出成型された第2の層(30)である、請求項1~44のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項46】
第1の層(10)の内面の部分は、第2の層(30)の外面の部分に接着されている、請求項1~45のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項47】
第1の層(10)は、コネクタ(6)によって第2の層(30)に接続され、それぞれのコネクタ(6)は、第1の層(10)の内面(10a)から突出し、かつコネクタ(6)の末端部分(60)により第2の層(30)の関連する貫通開口部(300)を通って延び、末端部分(60)は、第1の層(10)を第2の層(30)に接続するように第2の層(30)と係合し、それぞれのコネクタ(6)は、第1の層(10)を第2の層(30)から解放する前記衝撃の閾値にて破壊されるように構成されている、請求項1~46のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項48】
前記第1の層は、前記ヘルメットに衝突する面を、その上をボールが転動することを可能にするように平滑にするように構成される犠牲層であり、犠牲層は、斜め衝撃の間に前記ヘルメットから完全に又は部分的に解放されるように構成され、かつ特に、衝撃の間に前記衝突する面に対して相対的に並進しないように構成されている、請求項1~47のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項49】
各ボールを解放するのに必要なエネルギーは、ボール1個当たり0.005ジュール~0.5ジュールの範囲内である、請求項1~48のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項50】
複数の第1の層(10)、及びそれぞれの第1の層(10)と第2の層(30)との間に挟まれる反応層(20)を備える、ヘルメット。
【請求項51】
ヘルメットを製造するための方法、特にサイクリング用ヘルメット(1)、特に請求項1~50のいずれか一項に記載のヘルメット(1)を製造するための方法であって、前記方法は、以下の工程:
(a)第1の層(10)とその上に配置される接着層(14)とを提供する工程、
(b)第2の層(30)とその上に配置される接着層(33)とを提供する工程、
(c)接着剤(22)を用いて膜(20)の基材フィルム(21)に接着される複数のボールを備える膜(20)を提供する工程であり、基材フィルム(21)は、前記複数のボールと反対側に面する側面に接着層(23)を備える、前記工程、
(d)膜(20)を第2の層(30)の外面(30a)に配置し、かつ基材フィルム(21)の前記接着層(23)を介して膜(20)を第2の層(30)に接着する工程、
(e)第1の層(10)、第2の層(30)、及び膜(20)をモールドのキャビティ内に配置する工程であって、膜(20)は第1の層と第2の層(10,30)との間に配置される、前記工程、及び
(f)ヘルメット(1)のエネルギー吸収層(40)を形成するために、第2の層(30)に配置される接着層(33)に隣接するキャビティ内に材料を提供する工程であり、エネルギー吸収層(40)は、第2の層(30)に配置される前記接着層(33)を介して第2の層(30)の内面(30b)に接着され、かつ複数のボール(2)を、第1の層(10)に配置される前記接着層(14)を介して第1の層(10)に接着する、前記工程、
を含む、前記方法。
【請求項52】
第1の層(10)に配置される接着層(14)は熱軟化性接着層(14)であり、及び/又は第2の層(30)に配置される接着層(33)は熱軟化性接着層(33)であり、及び/又は基材フィルムの接着層(23)は感圧接着剤を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
工程(a)における第1の層(10)を提供することには、シート(11)を提供することと、シート(11)上にカラー層(12)を適用することとを含み、ここでその後に好ましくはカラー層(12)上に光にじみ防止ベースコートを適用し、カラー層(12)上に保護層(13)を適用し、かつ第1の層(10)上に前記接着層(14)を配置することには、保護層(13)上に前記接着層(14)を配置することを含む、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項54】
工程(b)における第2の層(30)を提供することには、シート(31)を提供することと、第2の層(30)のシート(31)上にカラー層(32)を適用することとを含み、ここでその後に好ましくはカラー層32上に光にじみ防止ベースコートを適用し、かつ第2の層(30)上に前記接着層(33)を配置することには、第2の層(30)のカラー層(32)上に前記接着層(33)を配置することを含む、請求項51~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
膜(20)を提供する工程(c)には、最上層(70)と裏打ち部(71)とを備える積層体(7)をキスカットすることによって基材フィルム(21)を提供することを含み、基材フィルム(21)は、最上層(70)からキスカットされ、その結果、基材フィルム(21)は、裏打ち部(71)上及び最上層(70)の周囲部分(72)内に配置され、特に、基材フィルム(21)は、第2の層(30)の外面(30a)の対応する部分の形状に適合されている細長い形状を備える、請求項51~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
工程(c)は:
- 前記周囲部分(72)を除去すること、
- 前記接着剤(22)の点(ドット)を基材フィルム(21)上に配置すること、及び
- 前記複数のボールのうちの1つのボール(2)を接着剤(22)のそれぞれの点上に配置して、これらのボール(2)を基材フィルム(21)に接着させること、
をさらに含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
工程(c)は:
- 前記接着剤(22)の層を基材フィルム(21)上に適用すること、
- 前記周囲部分(72)を除去すること、及び
- 前記複数のボール(2)を前記接着剤(22)の層上に配置し、これらのボール(2)を基材フィルム(21)に接着させること、
をさらに含む、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
第2の層(30)は、材料を第1の層(10)と接着するように第1の層(10)に向かって延びるようにする凹部及び/又は貫通孔を備える、請求項51~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
衝撃時に人の頭部を保護するためのヘルメット(B100)であって、ヘルメット(B100)は外面を備え、ヘルメット(B100)は、前記衝撃時にヘルメット(B100)の外面に作用する衝撃力により生じるヘルメット(B100)を装着している人の頭部の負の回転を低減するように構成されている、前記ヘルメット(B100)。
【請求項60】
前記負の回転は、法線成分が前記外面に対して垂直に延びる衝撃力の法線成分(F)と、前記頭部とヘルメット(B100)とによって形成されるアセンブリの質量中心(B90)と法線成分(F)との間の第1のレバーアームベクトル(L)との外積に対応する負のトルク(B2)から生じる、請求項59に記載のヘルメット(B100)。
【請求項61】
前記負の回転を低減させるために、ヘルメット(B100)は少なくとも1つの運動抑制要素(B70)を備える、請求項59又は60に記載のヘルメット(B100)。
【請求項62】
前記ヘルメット(B100)は、前記外面を形成する少なくとも1つの外側保護層(B12)と、内層(B11)とを備え、前記衝撃時に人の頭部の正の回転を低減するために、少なくとも1つの外側保護層(B12)が内層(B11)に対して相対的に移動するように構成されている、請求項59~61のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項63】
前記正の回転は、前記負の回転とは反対であり、前記衝撃時にヘルメット(B100)の外面に作用する接線摩擦力(F)と、質量中心(B90)に対する前記法線成分(F)に平行に延びる第2のレバーアームベクトル(L)との外積に対応する正のトルク(B1)から生じる、請求項62に記載のヘルメット(B100)。
【請求項64】
少なくとも1つの運動抑制要素(B70)は、前記衝撃時に負のトルク(B2)が正のトルク(B1)を打ち消して、ヘルメット(B100)及び頭部の角回転速度が-15rad/s~+15rad/sの範囲になるように適合され、好ましくは-10rad/s~+10rad/s、より好ましくは-5rad/s~+5rad/sの範囲になるように、適合されている、請求項60~63のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項65】
少なくとも1つの運動抑制要素(B70)は、内層(B11)と少なくとも1つの外側保護層(B12)との間に配置されている、請求項59~64のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項66】
運動抑制要素(B70)は運動抑制層(B13)を備えるか、又は運動抑制層(B13)である、請求項61~65のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項67】
運動抑制層(B13)は、内層(B11)及び/又は少なくとも1つの外側保護層(B12)と一体的に形成されている、請求項66に記載のヘルメット(B100)。
【請求項68】
運動抑制層(B13)は、衝撃力により変形するように構成されている、請求項66又は67に記載のヘルメット(B100)。
【請求項69】
内層(B11)と少なくとも1つの外側保護層(B12)との間に配置される中間層(B14)をさらに備え、前記中間層(B14)は、内層(B11)と少なくとも1つの外側保護層(B12)との間の相対運動を促進するように構成されている、請求項62~68のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項70】
運動抑制層(B13)は、運動抑制層(B13)と、以下の層:内層(B11)、中間層(B14)、少なくとも1つの外側保護層(B12)、のうちの少なくとも1つとの間に配置される可撓性層(B15)を備え、特に布地又はウェビングを備える、請求項66~69のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項71】
可撓性層(B15)は、衝撃時に中間層(B14)の運動を打ち消すように構成されている、請求項70に記載のヘルメット(B100)。
【請求項72】
以下の層:内層(B11)、少なくとも1つの外側保護層(B12)、運動抑制層(B13)、中間層(B14)、のうちの少なくとも1つは、複数の積層された副層を備える、請求項62~71のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項73】
運動抑制層(B13)は、中間層(B14)内に少なくとも部分的に配置されている、請求項66~72のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項74】
中間層(B14)は、以下の層:内層(B11)、運動抑制層(B13)、少なくとも1つの外側保護層(B12)、のうちの少なくとも1つと一体的に形成されている、請求項69~73のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項75】
中間層(B14)及び/又は運動抑制層(B13)は、転動可能要素(B20)を備え、前記転動可能要素(B20)は、衝撃時に少なくとも1つの外側保護層(B12)に対して相対的に内層(B11)の運動を促進するように構成されている、請求項69~74のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項76】
中間層(B14)及び/又は運動抑制層(B13)は、衝撃時に破損するように構成される破壊要素を備え、それにより、少なくとも1つの外側保護層(B12)に対して相対的に内層(B11)の運動を促進するように、転動可能要素(B20)が、内層(B11)及び少なくとも1つの外側保護層(B12)と相互作用することを可能にする、請求項75に記載のヘルメット(B100)。
【請求項77】
内層(B11)及び少なくとも1つの外側保護層(B12)とともに、運動抑制層(B13)は、少なくとも1つの容積部(B50)内に転動可能要素(B20)の少なくとも一部分を閉じ込めるために、少なくとも1つの容積部(B50)を画定する、請求項75又は76に記載のヘルメット(B100)。
【請求項78】
転動可能要素(B20)の弾性は、以下の層:内層(B11)、中間層(B14)、少なくとも1つの外側保護層(B12)、運動抑制層(B13)、のうちの少なくとも1つの弾性よりも低いか、又は高い、請求項75~77のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項79】
前記低い弾性率は3GPa未満のヤング率に相当する、請求項78に記載のヘルメット(B100)。
【請求項80】
中間層(B14)と少なくとも1つの外側保護層(B12)及び/又は内層(B11)との間の転がり抵抗係数は0.2未満である、請求項69~79のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項81】
運動抑制層(B13)と、中間層(B14)又は少なくとも1つの外側保護層(B12)又は内層(B11)との間の摩擦係数は、中間層(B14)と、少なくとも1つの外側保護層(B12)又は内層(B11)との間の摩擦係数と異なる、請求項66~80のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項82】
中間層(B14)又は運動抑制層(B13)と、少なくとも1つの外側保護層(B12)又は内層(B11)との間の摩擦係数は0.8未満である、請求項66~81のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項83】
運動抑制層(B13)は粘性の流体又はゲル(B60)を備える、請求項66~82のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項84】
粘性の流体又はゲル(B60)は、0.001Pa s~10Pa sの範囲内の粘度を備える、請求項83に記載のヘルメット(B100)。
【請求項85】
前記運動抑制層は非ニュートン流体又はゲル(B61)を備える、請求項66~82のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項86】
運動抑制要素(B70)を形成する個々の運動抑制要素(B70)は、衝撃によって引き起こされる所定の破断力により破断するように構成され、かつ個々の運動抑制要素(B70)の幾何学的特徴、特に直径、幅、又は長さは、個々の運動抑制要素(B70)を破断するのに必要な個々の破断力を表し、前記破断力は、衝撃時にヘルメット(B100)の負の回転を打ち消す、請求項59~85のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項87】
運動抑制要素(B70)は、少なくとも1つの外側保護層(B12)によって画定される側方表面領域の総計の80%未満を占める、請求項62~86のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項88】
運動抑制要素(B70)は、円柱、円錐、角錐、立方体、切頭円錐のうちの少なくとも1つとして形成される、請求項59~87のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項89】
運動抑制要素(B70)は、側方接触表面領域を介して少なくとも1つの外側保護層(B12)と内層(B11)とに接触し、側方接触表面領域と側方表面領域の総計との比は0.05~0.5の範囲内である、請求項62~88のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項90】
運動抑制層(B13)は、以下の層:内層(B11)、中間層(B14)、少なくとも1つの外側保護層(B12)、のうちの少なくとも2つと一体的に形成されているコネクタ(B80)を備える、請求項66~89のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項91】
前記コネクタ(B80)は、衝撃時に変形及び/又は破断するように構成されている、請求項90に記載のヘルメット(B100)。
【請求項92】
運動抑制層(B13)は複数のコネクタ(B80)を備え、前記コネクタ(B80)は衝撃時に同時に及び/又は順次的に変形及び/又は破断するように構成されている、請求項91に記載のヘルメット(B100)。
【請求項93】
複数のコネクタ(B80)を形成する個々のコネクタ(B80)は、個々の破断力を備え、前記個々の破断力は、少なくとも2つの値をとり、かつ前記破断力は、衝撃時のヘルメット(B100)の負の回転を打ち消す、請求項92に記載のヘルメット(B100)。
【請求項94】
コネクタ(B80)は接着剤を備えるか、又は接着剤である、請求項90~93のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項95】
コネクタ(B80)は、内層(B11)及び/又は少なくとも1つの外側保護層(B12)とは異なる弾性又は剛性を有する、請求項90~94のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項96】
コネクタ(B80)は、熱可塑性プラスチック、エラストマー、セラミック、又は金属のうちの少なくとも1つを含む、請求項90~95のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項97】
運動抑制層(B13)は、プラスチック材料、弾性材料、ポリマー、金属のうちの少なくとも1つを含む、請求項59~96のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項98】
運動抑制層(B13)は、ヘルメット(B100)の負の回転の低減が衝撃の方向、特に接線摩擦力(F)の方向、に依存するように構成されている、請求項66~97のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項99】
第1の軸の周りのヘルメット(B100)の回転をもたらす衝撃時の負の回転の減少が、第2の軸の周りのヘルメット(B100)の回転をもたらす衝撃時の負の回転の減少よりも大きくなるように、運動抑制層(B13)は構成されている、請求項98に記載のヘルメット(B100)。
【請求項100】
第1の軸はヘルメット(B100)を装着している人の頭部内の冠状面を通って延び、かつ第2の軸はヘルメット(B100)を装着している人の頭部内の矢状面を通って延びる、請求項99に記載のヘルメット(B100)。
【請求項101】
以下の層:内層(B11)、中間層(B14)、運動抑制層(B13)、外側保護層(B12)、のうち少なくとも2つは、衝撃時の負の回転を低減するように幾何学的及び/又は機械的にロックされるように構成されている、請求項62~100のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項102】
運動抑制要素(B70)又は運動抑制層(B13)がない場合、衝撃時、ヘルメット(B100)は負の回転を経験することになるか、又は正の回転の所定の正の閾値を超えることになる、請求項61~101のいずれか一項に記載のヘルメット(B100)。
【請求項103】
剛性のボール(2)は互いに分離されており、特にボール(2)の転動時にボール(2)の間の接触を低減させるように、互いに分離されている、請求項1~102のいずれか一項に記載のヘルメット(1、B100)。
【請求項104】
剛性のボール(2)は互いに間隔を置いて配置されており、特にボール(2)の転動時にボール(2)の間の接触を低減させるように、互いに間隔を置いて配置されている、請求項1~58のいずれか一項に記載のヘルメット(1)。
【請求項105】
基材フィルム(21)は、その上にインク着色染料が適用されており、及び/又は加工中のボール(2)の移動を防止するために剛性である、請求項1~58のいずれか一項に記載のヘルメット(1)。
【請求項106】
第1の層(10)が衝撃の間に撓むように構成されている、請求項1~58のいずれか一項に記載のヘルメット(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃緩和構造体に関し、特にヘルメット、特にサイクリング用ヘルメットに関し、並びにそのような衝撃緩和構造体、特にヘルメットを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人又は物体が十分に大きい衝撃を受けると、人への傷害又は物体への損傷が発生する可能性がある。損傷又は傷害を与える可能性のある衝撃からの保護を提供するヘルメットを製造するために多大の開発努力が費やされてきた。
【0003】
自転車などのスポーツをすることにより負う可能性のある頭部外傷は、重大な脳損傷の一般的な原因となる。
【0004】
脳外傷は、頭部への集中的な衝撃、頭蓋内での突然の加速又は減速、又は衝撃と移動との両方の組み合わせのいずれかの結果として発生する可能性がある。したがって、衝撃保護具は、頭部への衝撃による脳損傷を防ぐ上で重要である。
【0005】
ヘルメットの形態の頭部保護具は、衝撃時(衝撃の間)にユーザーの頭部にかかる力を軽減するように設計されている。一般に、ヘルメットは、衝撃時にヘルメットが受ける力の一部を吸収するように設計された少なくとも1つの衝撃吸収層を備える。
【0006】
ただし、ヘルメットは、衝撃時に直線力と接線力との両方に対して適切な保護をもたらさないことが多い。斜めの衝撃が一般的であるため、衝撃は多くの場合、直線成分と接線成分との両方が含まれる。特に、斜めの衝撃とは、衝突時に例えば舗装路に当たるヘルメットの外面に作用する力が、衝撃の位置で前記外面に対して接線方向に延びる成分を含むことを意味する。
【0007】
残念なことに、このような接線方向の力は特に脳の回転加速度をもたらし、これが架橋静脈破裂に関係している。その結果、硬膜下血腫及びびまん性軸索損傷の原因となる可能性がある。衝撃時の接線力はまた、頚椎損傷の原因となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のことから、本発明が解決しようとする課題は、ヘルメットを装着している人のヘルメット/頭部に作用する接線力を含む斜めの衝撃に関連する上述の傷害を軽減することができる改良されたヘルメットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1の特徴を有する衝撃緩和構造体、特にヘルメット、及び請求項51の特徴を有する方法によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明によるヘルメットの一実施形態を示す。
図2図2は、図1に示した細部の別の実施形態を示す。
図3図3は、本発明によるヘルメットの一実施形態の断面図を示し、それぞれの第1の層は、ヘルメットのエネルギー吸収層に埋め込まれた前部分を備える。
図4図4は、本発明によるヘルメットの2つの実施形態の詳細を示し、ここでヘルメットの第1の層のカラー層への反応層のボールの過剰な圧入を防止するための保護層が設けられており、(A)及び(C)は、モールドのキャビティ内で熱及び圧力を適用する前の状況を示し、(B)及び(D)は、ボールが接着層に埋め込まれたが、それぞれの保護層によってそれ以上の侵入が防止されたヘルメットの成型後の状況を示す((A)及び(B):カラー層の最上部における保護層;(C)及び(D):ツインシートアセンブリの下部シートによって形成された保護層)。
図5図5は、反応層/膜のボールを保持するための基材フィルムをキスカットする一実施形態を示す。
図6図6は、反応層/膜をヘルメットの第2の層の外面に接着(結合)する一実施形態を示す。
図7図7は、本発明によるヘルメットの一実施形態を示し、ここでヘルメットの2つの隣接する第1の層はそれぞれ、前記第1の層が互いに相対的に移動する際に、前記第1の層の相互固定に向けて、対向するエッジ部において面取りを備える。
図8図8は、本発明によるヘルメットの一実施形態を示し、ここで第1の層から第2の層まで延びるコネクタによって、第1の層はヘルメットの第2の層に接続されている。
図9図9は、衝撃時に座屈機能によってヘルメットの反応層を始動させることができる、本発明によるヘルメットの一実施形態を示す。
図10図10は、衝撃時に第1の層の座屈特徴によって第1の層のエッジ部分を持ち上げることを可能にする、本発明によるヘルメットの一実施形態を示す。
図11図11は、衝撃時にヘルメットの旋回を可能にする本発明によるヘルメットの一実施形態を示す。
図12図12は、衝撃時の第1の層の変形により、第1の層の所望の方向への解放を可能にする、本発明によるヘルメットの一実施形態を示す。
図13図13は、ヘルメットの一実施形態を示し、ここで第1の層は、ヘルメットとヘルメットを装着している頭部から構成される系の質量中心によって引き起こされるモーメントを変えるために、ヘルメットにかかる法線力の方向を変えることを実現するように構成されている。
図14図14は、2つの層が接する第1の層から第2の層への半径方向の力の伝達を低減することを可能にする、本発明によるヘルメットの一実施形態を示す。
図15図15は、前記半径方向の力を低減するための別の実施形態を示す。
図16図16は、第1の層のエッジがエッジ部分に引っ掛かるのを防止するために、面取り又は丸みを帯びた前記エッジ部分を有するヘルメットの一実施形態を示す。
図17図17は、物体に衝突したときのヘルメットの正のトルク及び負のトルクに対応する、関連する力及びレバーアームベクトルの概略図である。
図18a図18a~図18cは、ヘルメットを装着している人が物体に衝突する様々な衝撃シナリオを示し、ここで結果として生じる力により、頭部とヘルメットとの正の回転(シナリオ図18c)、頭部とヘルメットの負の回転(シナリオ図18b)及びゼロ回転の理想的なケース(シナリオ図18a))が引き起こされる。
図18b図18a~図18cは、ヘルメットを装着している人が物体に衝突する様々な衝撃シナリオを示し、ここで結果として生じる力により、頭部とヘルメットとの正の回転(シナリオ図18c)、頭部とヘルメットの負の回転(シナリオ図18b)及びゼロ回転の理想的なケース(シナリオ図18a))が引き起こされる。
図18c図18a~図18cは、ヘルメットを装着している人が物体に衝突する様々な衝撃シナリオを示し、ここで結果として生じる力により、頭部とヘルメットとの正の回転(シナリオ図18c)、頭部とヘルメットの負の回転(シナリオ図18b)及びゼロ回転の理想的なケース(シナリオ図18a))が引き起こされる。
図19a図19aは、少なくとも1つの外側保護層、運動抑制層、及び内層を備える、本発明の第6の態様によるヘルメットの一実施形態を示す。
図19b図19bは、運動抑制層の様々な運動抑制要素を示す。
図20図20は、本発明の第6の態様によるヘルメットの一実施形態を示し、ここで少なくとも1つの外側保護層は、運動抑制層と一体的に形成されている。
図21図21は、流体又はゲルを備える、本発明の第6の態様によるヘルメットの一実施形態を示す。
図22図22は、可撓性層を備える、本発明の第6の態様によるヘルメットの一実施形態を示す。
図23図23は、少なくとも1つのコネクタを備える、本発明の第6の態様によるヘルメットの一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のこの第1の態様の好ましい実施形態は、対応する従属請求項に記載され、以下に説明される。さらに、本発明のさらなる態様を以下に記載する。
【0012】
請求項1によれば、ヘルメット、特にサイクリング用ヘルメットが開示されており、前記ヘルメット、特にサイクリング用ヘルメットは、以下を備える:
- ヘルメットの外面を形成する第1の層、
- 第2の層;及び
- 前記第1の層と前記第2の層との間に挟まれる反応層であり、かつ好ましくは前記第1の層及び前記第2の層に接続される、前記反応層。
【0013】
以下では、本発明を主にヘルメットに関して記載する。しかしながら、本発明の第2の態様によれば、衝撃緩和構造体が開示される。本発明の基本原理はヘルメットだけに適用されるものではなく、衝撃緩和構造体に一般に適用されるものであるため、本発明のすべての実施形態及び態様において、ヘルメットという概念をより一般的な概念の衝撃緩和構造体に置き換えることができる。例えば、ヘルメットとは別に、このような衝撃緩和構造体としては、自動車のバンパー、ガードレール、塗装面(例えば自動車の重要な場所の塗装面)、自動車のボディ部分(例えば自動車のボディ)、防護アーマーなどを挙げることができる。
【0014】
以下では、第1の層の特徴が記載され、並びに反応層及び第2の層とのその相互作用が記載される。しかしながら、ヘルメットは、好ましくは、ヘルメットの第2の層上に並べて配置できるいくつかのそのような第1の層と、それぞれの第1の層とその下の第2の層との間に配置される対応する数の反応層とを備えることに留意すべきである。したがって、1つの第1の層を参照して以下に説明するすべての特徴及び実施形態は、ヘルメットが複数の第1の層及び反応層(これは膜を形成することができる。下記参照)を備える実施形態にも適用される。さらに、すべての実施形態において、第2の層は一体的に形成することができるが、並んで配置された複数のシート(特にエネルギー吸収層上に配置。下記参照)によって形成することもできる。
【0015】
さらに、一実施形態によれば、これらの隣接する第1の層/パネルは、(それぞれの傾斜部を越えて)第1の層の方向及び自由な移動を容易にする傾斜部を有するように成形することができる。
【0016】
好ましい実施形態によれば、第1の層及び第2の層は剛性の層であり、前記剛性は特に前記層の材料(弾性率)及び形状に起因する。剛性の高い材料は、弾性変形することなく高荷重に耐えることができる。典型的には、ポリカーボネートの薄いシートを前記層の基礎として使用することができ、これにより、人の頭部の形状に適合した湾曲した構成に配置される際に十分な剛性構造が得られる。
【0017】
ヘルメットの好ましい実施形態によれば、反応層は、特にヘルメットの通常の使用中に剛性を保ち、かつ第2の層の外面上(いわゆるB面)を衝撃閾値にて転動するように構成された複数の剛性のボール(例えば球状体)を備える。つまり、斜めの衝撃(例えば、ヘルメットと頭部とが地面にぶつかる)により、所定の接線力が第1の層に作用し、所定の閾値力を超えた場合、前記転動が開始されることを意味する。
【0018】
この文脈では、第2の層の外面上で「転動する」とは、ボールと第2の層の外面との間に中間層を配置することができるため、ボールと第2の層の外面との間に接触があることを必ずしも意味しない。したがって、「~上を転動する」とは、このような中間層の上を転動することも含まれる。特に、以下にさらに説明するとおり、ボールは、ボールが接着剤によって接着(結合)され得る基材フィルムを備える膜であり得る反応層の一部を形成し、前記基材フィルムは、接着層によって第2の層の外面に接着され得る。したがって、ここでは、ボールが基材フィルム及び前記接着剤の上を転動し得る。
【0019】
さらに、ボールは球である必要はなく、完全な球形から外れていてもよい。したがって、本発明によるボールの概念には転動可能要素が含まれ、かつボールは転動可能要素とも呼ぶことができる。
【0020】
さらに、第1の層及び/又は第2の層は、均質な層である必要はなく、それぞれ異なる材料及び/又は互いの上に積層された層からなり得る。
【0021】
好ましい実施形態では、ボールはポリカーボネートで形成することができる。別の実施形態によれば、ボールは以下の材料の1つで形成することができる:ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)。これらの材料はそれぞれ、本明細書で説明するヘルメットの他のすべての実施形態と組み合わせて使用することができる。
【0022】
好ましくは、一実施形態によれば、剛性のボールは、0.5~10GPaの範囲のヤング率(弾性率)を備える材料から形成される。
【0023】
特に、好ましい実施形態によれば、ボールは0.5~5mmの範囲の直径を備え、特に直径は2mmである。
【0024】
ヘルメットの好ましい実施形態によれば、ボールは、第1の層の内面に沿って、前記内面の領域の10%~50%、好ましくは15%~30%、好ましくは約20%に相当する領域を占めるように分布する。
【0025】
特に、ボールの充填密度は低いほど製品重量に有利である。特に20%の密度(ボールで占められた表面領域)は下限に近く、これより密度が低い場合、これらの隣接するボールの間にて第1の層の内面が手で押し下げることが可能であり得る。したがって、ボールの充填密度と第1の層の内面及び第2の層の外面の剛性との間には逆相関がある。
【0026】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、反応層のボールは、脆性破壊を受けるように構成される接着剤を介して基材フィルムに接着される。基材フィルムはポリマー、特にPVC、で形成することができる。好ましい実施形態によれば、接着剤は、以下の接着剤のうちの1種である:シアノアクリレート、ポリ酢酸ビニル(PVA)、エポキシ。
【0027】
一実施形態によれば、反応層中の剛性のボールは、主に脆性破壊に基づく接着剤を介して基材フィルムに接着される。
【0028】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、基材フィルムは200μmより薄い厚みを備える。
【0029】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、基材フィルムは、前記複数のボールと反対を向く基材フィルムの側面に配置された感圧接着剤から好ましくはなる接着層を備える。
【0030】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、反応層は、第1の層及び第2の層に接着された膜であるか、又はそれを備え、前記膜は、前記基材フィルム及びその上に配置された複数のボールを備える。特に、前記膜は、湿潤用途及び乾燥用途の両方のビニルを含む。
【0031】
さらに好ましくは、前記膜又は基材フィルムは、基材フィルムの前記感圧接着剤からなる前記接着層を介して第2の層の外面に接着される。
【0032】
さらに、一実施形態において、前記膜又は複数のボールは、接着層、好ましくは熱軟化性接着剤を含む(又は熱軟化性接着剤からなる)接着層を介して、第1の層の内面(いわゆるA面)に接着される。特に、前記接着剤は高温成型中に活性になり、それ故、ヘルメットの一部が形成されるモールド内で、反応層のボールを第1の層の内面に接着させることができる。
【0033】
さらに、一実施形態では、第1の層は、シート(ポリカーボネート(PC)などのプラスチック材料から好ましくは形成されるシート)と、前記シートの内面上に配置されるカラー層(例えば、着色インク層)と、前記カラー層上に配置される保護層と、を備え、前記膜を前記第1の層の内面に接着する前記接着層は、前記保護層に接着される。光にじみ防止コート(light bleed preventing coat)(下記も参照)などのさらなるコートを、保護層がカラー層/さらなるコート上に配置される前に、カラー層に適用することができる。
【0034】
しかしながら、本発明のさらに好ましい実施形態によれば、膜を使用する代わりに、接着剤、特にPVA(ポリ(ビニルアルコール))を含む接着剤を用いて、ボールを第2の層の外面に(例えば直接的に)接着することができる。
【0035】
特に、すべての実施形態において、第2の層の外面は、外側、すなわち、本ヘルメットを装着している人の頭部の反対を向いており、前記第1の層(複数可)の内面は、ヘルメットを装着している前記人の頭部の方を向いている。
【0036】
本ヘルメットの好ましい実施形態では、保護層は、耐熱性インク層である。特に、耐熱性インク層は、カラー層(例えば着色インク層)又はコーティングされたカラー層(上記参照)上にスクリーン印刷又はUV印刷することができる。
【0037】
本ヘルメットのさらなる実施形態によれば、保護層は、ポリマー層であり、特にポリ塩化ビニル層である。PVCの代わりにPCなどの他の材料を使用することもできる。
【0038】
さらに、好ましくは、それぞれの保護層は、本ヘルメットの一実施形態によれば、0.1mm未満の厚さ及び/又は20MPaより大きい降伏強度を備える。
【0039】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、保護層は、第1の層の材料の熱膨張と5%未満の差の熱膨張を有する。
【0040】
本ヘルメットのさらに別の実施形態によれば、第1の層は、特に同時に熱成形される外側シートと内側シートとを備えるツインシートアセンブリであり、ここで両シートは好ましくはポリカーボネート(PC)からなる。
【0041】
好ましくは、一実施形態において、ツインシートアセンブリの内側シートは穿孔されており、特に、この成形体の負圧が外側シートを通って通過することを可能にし、それにより、内側シートだけが成形体上に引き下げられるわけではないようにする。
【0042】
さらに、一実施形態では、外側シートと内側シートとの間に、カラー層(特に着色インク層)と接着層(特に接着インク層)とが配置され、特にカラー層が外側シート上に配置され、かつ内側シートが接着インク層及びカラー層を介して外側シートに接着される。
【0043】
さらに、本発明によるヘルメットの好ましい実施形態によれば、本ヘルメットはエネルギー吸収層を備え、第2の層の内面が接着層(例えば、アクリルックス(acrilux))によってエネルギー吸収層に接着されている。このような接着剤は、空気力学的直径が10μm未満の粒子を1%以上含有する粉末状の二酸化チタン(CAS 13463-67-7)を25%~30%含むことができる。さらに、接着剤(例えばacrilux)は、25%~30%の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オン;ジアセトンアルコール(CAS 123-42-2)を含むことができる。さらに、接着剤(例えばacrilux)は15%~20%の1-メトキシ-2-プロパノール;モノプロピレングリコールメチルエーテル(CAS 107-98-2)を含有することができる。
【0044】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、第2の層は、エネルギー吸収層の部分(例えば貫通溶接部)が第1の層に向かって延びる凹部(例えば第2の層のエッジ部)及び/又は貫通孔を備え、エネルギー吸収層の前記部分は第1の層に接着(貫通溶接)されている。特に、第1の層は、その上に配置される前記接着層(例えば熱軟化性接着剤)を備え、エネルギー吸収層の前記部分は、前記接着層を介して第1の層に接着され得る。あるいは、前記接着層を完全に又は部分的に省略することができ、かつエネルギー吸収層の前記部分を第1の層に接着することができる(すなわち、中間層としての前記接着層なしで接着することができる)。
【0045】
好ましい実施形態によれば、好ましくは、第2の層の外面は、第1の層の内面と第2の層の前記外面との間の分離を低減するように、特に、エネルギー吸収層の製造中に前記内面と前記外面との間の容積部へのエネルギー吸収層の流出を回避するように、それぞれの凹部及び/又は貫通孔の周囲で局所的に上方に曲がる。
【0046】
好ましい実施形態によれば、エネルギー吸収層は、ポリスチレン、好ましくは発泡ポリスチレン(EPS)、又はポリウレタン、特に発泡ポリウレタン(EPU)、又はポリプロピレン、特に発泡ポリプロピレン(EPP)を含む。エネルギー吸収層が好ましくはインモールド成型(下記も参照)を用いて第1の層及び第2の層並びに中間反応層(例えば膜)に隣接して形成される成型(moldig)プロセスの場合、エネルギー吸収層用の材料は、バルク材料(例えばペレットの形態)としてモールドのキャビティ内に提供することができる。
【0047】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、反応層は、第1の層と第2の層との間(すなわち、A面とB面との間)における前記複数のボールのうちのボールの転動によって、第1の層と第2の層との間の相対移動を容易にするように構成されており、前記ボールの転動は、ボールと第1の層の内面若しくは第1の層に接続された内面との間、又はボールと第2の層の外面若しくは第2の層に接続された外面との間で、0.0001~0.2の範囲、好ましくは0.02~0.05の範囲、好ましくは0.025~0.04の範囲の低い転がり抵抗(rolling resistance)を提供し、特に前記範囲は、より低い転がり抵抗を有する界面に適用される。特に好ましい転がり抵抗は約0.025である。別の特に好ましい転がり抵抗は約0.04である。
【0048】
転がり抵抗は、ボールが実際に接触する面に関することに留意されたい。したがって、第1の層とボールとの間に中間層が存在する場合、ボールは第1の層に接続された表面(すなわち、それぞれの中間層によって形成された表面)上を転動する。同様に、第2の層とボールとの間に中間層が存在する場合、ボールは第2の層に接続された表面(すなわち、それぞれの中間層によって形成された表面)上を転動する。
【0049】
好ましくは、A面とB面との間のボールの転動は、運動のうち極めて低い運動抵抗(resistance-to-motion:RTM)(この文脈では転がり抵抗であるが、摩擦又は他の機械的/幾何学的抵抗でもよい)を提供する。しかし、転動を採用したからといって、本質的に動きがより起こりやすくなるわけではなく、単に下限が下がるだけであり、他の動きを阻害するメカニズム(すなわち、第1の層と第2の層とを初期に接続している接着剤及び/又はコネクタ)が支配的な要因となり得る。
【0050】
特に、衝撃を受ける表面(例えば舗装路にぶつかる第1の層)と、ヘルメットを装着している人の頭部に対して固定されている第2の層との間の相対運動が促進されるため、外傷性脳損傷(traumatic brain injury:TBI)のリスクが低減される。
【0051】
好ましくは、第1の層の内面(A面)と第2の層の外面(B面)との間の離間(分離)は、可能な限り一定のままである。もし、ボールが前記内面と前記外面の間の離間がより狭い領域の方へ転がり込むことを必要とする衝撃が発生した場合、ボールが詰め込まれ、RTMは上昇するであろう。特に、一実施形態によれば、典型的な衝撃の際、前記離間は20%未満、特に15%未満、特に10%未満、好ましくは5%未満変化する。
【0052】
本発明の好ましい実施形態によれば、反応層のボールは、0.7を超える真円度、より好ましくは0.8を超える真円度、より好ましくは0.9を超える真円度、より好ましくは0.95を超える真円度、より好ましくは0.97を超える真円度、より好ましくは0.99を超える真円度を備える物体(特に円形体又は楕円体)である。好ましくは、一実施形態では、ボールは球状体である。
【0053】
ボールが回転することができるボールの回転軸に直交して延びるボールの断面に関して、真円度は、断面に内接する円の面積と断面を取り囲む円の面積(すなわち、断面内に収まり、及び断面を取り囲むのにちょうど十分な円の最大サイズと最小サイズ)との比として定義される。
【0054】
一実施形態によれば、ボールは好ましくは一定の直径及び/又は容積を備える。別の実施形態によれば、ボールは異なる直径及び/又は容積を備える。
【0055】
さらに別の実施形態によれば、ボールは中実体又は中空体でもよい。
【0056】
さらに、第2の層が第1の層、特に第1の層の下を相対的に移動するとき、第2の層の外面と第1の層の内面は、好ましくは合同(congruent)関係を維持する。したがって、好ましい実施形態によれば、第1の層の内面(A面)と第2の層の外面(B面)とは、互いに対して同心である。
【0057】
衝撃の間、所定の合同性及び同心度係数に影響を与えるのに十分であるA面及び/又はB面を扁平にするのに十分なエネルギーが生じ得る。B面を硬くすると、(特に)変形の大きさが低減する。さらに、B面がA面の下を移動すると、ボールが転動して離れてB面が露出するようになり得る。この露出部分が衝突面と接触可能である場合に、せん断力が伝達され、RTMが飛躍的に増大する。この問題は、衝撃を受けやすい場所をすべて反応層により保護することを確保することで軽減できる。好ましい実施形態によれば、第1の層(複数可)及び反応層(複数可)は、したがって、第2の層の外面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%をカバーする。
【0058】
本発明によるヘルメットのさらに別の好ましい実施形態によれば、膜又は反応層は、第1の層の内面と合同である。
【0059】
特に、衝撃の力が十分に広い領域に広がらない場合、反応層の局所的な負荷がその後に大きくなりすぎることがあり、これはボールの扁平化及び/又は第1の層の内面及び/又は第2の層の外面などの隣接する表面へのボールの圧入につながる可能性がある。これはRTMの増大につながる可能性がある。このようなことが起こらないように、第1の層の内面及び第2の層の外面の下層部分のそり及び起伏は、点荷重がより少なくなるように、可能な限り低減することが好ましい。好ましくは、いずれの点においても、前記内面及び/又は前記外面の前記部分の曲率半径は、40mmより大きく、好ましくは60mmより大きく、好ましくは80mmより大きく、好ましくは100mmより大きい。
【0060】
特に、第2の層の外面が第1の層の内面の下で移動する際に、第1の層の内面が第2の層の外面の非合同部分に突き当たり始め得る。第1の層の内面が反対に曲がるのを促すように第2の層の外面がこれらの位置で傾斜していない場合、第1の層の内面が、その後ロック(固定)され得、RTMが上昇するであろう。
【0061】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、第2の層は、第1の層が第2の部分の一部分に突き当たるのを避けるために、第1の層が第2の層から離れるように曲げるための少なくとも一つの傾斜部(ramp)を形成する。これはエッジランピングとも呼ばれる。
【0062】
エッジランピングと似ているが、後方(トレーリング(trailing))方向において、第1の層の内面が第2の層の外面の細部に引っ掛かる可能性があり、RTMの上昇を引き起こし得る。これはエッジフッキングとも呼ばれる。したがって、一実施形態では、ヘルメット形状が硬い又は鋭いトレーリングエッジ(trailing edge)を有さないことを確保することによって、これを防止する。
【0063】
特に、一実施形態によれば、エネルギー吸収層及び/又は第2の層は、前記エッジ部分の上のエネルギー吸収層及び/又は第2の層に対して移動する際に第1の層のトレーリングエッジが前記エッジ部分に引っ掛かるのを防止するために、面取り又は丸みを帯びたエッジを有するエッジ部分を備える。
【0064】
特に、一実施形態によれば、反応層は、反応層のボールの転動を始動するのに必要な接線力が約0.1kNであるように、又は、衝撃力(F)によって導入されるエネルギーがボールの転動を始動するためには2.5ジュールの閾値を超えなければならないように、第1の層を保持するように構成されている。
【0065】
さらに、典型的なシナリオでは、脳に作用するせん断力を低減させるという目標は、反応層のRTMを減少することに直接的に相関し得る。しかし、RTMが十分に低くなると、逆相関が現れ始め、その場合、RTMが低くなるにつれて、脳に作用するせん断力が上昇する。これは、斜めの衝撃中にヘルメットに2つのモーメントが作用するためであり、1つは静止した地面に対する頭部のねじれの慣性の間で生成される正のモーメントであり、もう1つは地面の法線力に対するねじれの質量中心によって生成される負のモーメントである。つまり、頭部への結果として生じるモーメントが最も小さくなる(せん断力が最も小さくなる)のは、正のモーメントと負のモーメントが等しくなる場合である。RTMが十分に低くなると、正のモーメントはゼロになる傾向があり、負のモーメントが頭部の主要なモーメントになる。これは、RTMを単に可能な限り減少させるだけでなく、制御する必要性につながる。
【0066】
そのような好ましい実施例/実施形態の1つには、第2の層の外面にスピードバンプを付けることであり、これにより転動をわずかに抑制する。これらのスピードバンプは、RTMを調整するために高さ及び頻度を変えることができる。スピードバンプは、様々な方向で重なり合うことができ、様々な衝撃方向に別々に影響を与えることができる。したがって、本ヘルメットのさらに好ましい実施形態によれば、第2の層の外面は、前記複数のボールの転動を抑制する波形構造、すなわちスピードバンプ、を形成する複数の突起(特に第2の層と一体化)を備える。
【0067】
特に、特定の衝撃方向については、第1の層が、本ヘルメットを装着している人の顔に向かって移動することがある。これにより、感じられる危険と実際の危険との両方に対処することに対して、顔面/眼球の裂傷、目に当たる小さな粒子などがもたらされる可能性がある。したがって、本ヘルメットは、好ましくは、対応する剥離機構を備える。この機構は、第2の層に接着されている第1の層の最前部により、斜めの衝撃を受ける間に第1の層のリーディングエッジ(leading edge)がその場に留まるようにさせ、第1の層の残りの部分がそれ自体の上に折り曲げられるようにするものである。好ましくは、この折り曲げとは、第1の層のリーディングエッジが鋭角ではなく、湾曲していることを意味する。この湾曲外形は、放出されるボールを保持することもでき、シールドのように機能することもできる。
【0068】
特に、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、第1の層は、ヘルメットの後部からヘルメットの前部に向かう第1の方向の斜めの衝撃の間、第1の層の前部が所定の位置に留まるようにするエネルギー吸収層に接続される前部分を備え、一方で、前部分に正続されている第1の層の残りの部分は、第2の層から分離され(かつ特にそれ自体の上に折り曲げられ)、かつヘルメットの前部からヘルメットの後部に向かう第2の方向の斜めの衝撃の間、前部分がエネルギー吸収層から外れるように構成されているか、又は第1の層の残りの部分が第1の層の前部分から引き裂かれるように構成されている。
【0069】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、前記前方部分は、開口部を備えるタブを形成し、タブは、エネルギー吸収層(特に、ヘルメット/エネルギー吸収層の前方部分)に埋め込まれ、エネルギー吸収層の一部分は、前記部分が第1の方向の前記斜めの衝撃時にタブを所定の位置に保持して第2の方向の前記斜めの衝撃時にタブを解放するように破壊されるように、前記開口部を通って延在する。
【0070】
特に、これを達成するために、前部分/タブは、第1の層の残りの部分としてより薄い断面を有することができ、及び/又は第1の層は、所定の破壊点を備えることができる。
【0071】
衝撃の間に放出されるボールに関連付けられる感じられる危険と実際の危険とを減らすもう1つの方法は、RTMの増加がないことを保証しながら、ボールの粘着性をできるだけ高めることである。
【0072】
本発明によるヘルメットの好ましい実施形態によれば、ボールと第1の層の内面又は第1の層に接続される内面との間の接着(結合)の第1の強度は、ボールと第2の層の外面又は第2の層に接続される外面との間の接着の第2の強度とは異なる。好ましい実施形態によれば、特に第2の層により多くのボールを保持するように、第2の強度はより大きい。好ましくは、第2の強度は第1の強度の少なくとも2倍の大きさであり、特に少なくとも3倍、特に少なくとも8~20倍の大きさである。
【0073】
さらに、第1の層及びヘルメットのエッジ仕上げは、一般に好ましくは、日常使用中の引っ掛かりを避けるように設計されている。突出部の長さ、角度、及び厚さにより、より大きな幾何学的なロック(固定)が引き起こされ得る。
【0074】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、第1の層に衝撃力が加わると、第1の層は形状が変形し、第2の層に対して相対的に移動するように構成されている。
【0075】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、第1の層は、特に第1の層が第2の層に接するか、又は第2の層に連結されるエッジ領域を備え、エッジ領域は、第1の層に作用する半径方向の力の第1の層から第2の層への伝達を低減するように構成されている。
【0076】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、前記エッジ領域は、第2の層の外面の法線に対して角度(x)で延びる第1の層の一部分によって形成され、前記角度(x)は、20°~80°、好ましくは30°~70°、好ましくは40°~60°、好ましくは40°~50°の範囲内である。特に、前記角度xの余弦(cos(x))は、(与えられた材料特性に対して)伝達可能な荷重の大きさを決定する。この角度が小さすぎると、衝撃力のかなりの部分が、反応層、特に膜、ではなく、第2の剛性の層の外面に直接伝達され、高い摩擦が生じる。角度が大きすぎると、力の大部分が中間層に伝わり、中間層が外面に対して相対的に移動可能になる。
【0077】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、第1の層は、特に、第1の層に作用する半径方向の力の第1の層から第2の層への伝達を低減するために、圧縮可能な中間層によって第2の剛性の層の外面に接続されるエッジ領域を備える。例えば、中間層は発泡テープ、又は容易に変形する他の媒体とすることができる。
【0078】
さらに、ヘルメットの好ましい実施形態によれば、第1の層は、ヘルメットを装着している人の頭部の回転運動を減少させるために、第1の層への衝撃の結果としてエネルギーを蓄積及び放出するように構成されている。
【0079】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、第1の層は、衝撃の間に第2の層に対してその形状を変化させるように構成され、特に第1の層はオーセティック構造を備える。
【0080】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、第1の層は、衝撃の間にヘルメットを旋回させ、それによってヘルメットを装着している人の頭部の回転運動を低減させるように成形される。
【0081】
さらに、本ヘルメットのさらに別の好ましい実施形態によれば、第1の層は、衝撃の間に第1の層の自由な移動が抑制されるように衝撃の間に変形するように構成されており、特に前記変形は、特に前記基材フィルム及びその接着層を介して、ボールを第2の層の外面に接着している接着剤の剥離を引き起こす。
【0082】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、第1の層は、前記旋回を支持するための座屈部(buckling)を備える。特に、座屈部は丸い形状又はくさび形状であり得る。特に、前記座屈部は、衝撃下、特に斜めの衝撃の下で、飛び移り(スナップスルー)(snap-through)するように構成することができる。
【0083】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、衝撃の間に、座屈部は扁平になり、かつ幅が広がるように構成され、その結果、座屈部の境界領域が並進移動し、これによりボールが転動するようにさせる。
【0084】
これは、反応層が作動できる時間を長くするために使用できる。特に、第1の層が変形すると、第2の層と相対的に動くことも可能である。これにより、反応層が働く時間が長くなり、必要とする反応層がより少なくなり得、より軽量になるか、あるいはより優れた動態制御となる可能性がある。
【0085】
さらに有利なことに、この外郭構造が変形するにつれて幅が大きくなり、第1の層と第2の層の間の露出を低減するのに役立つ。好ましくは、第1の層の内面は、転動性能をより良好にするために半球状である必要がある。ヘルメットが衝突時に衝撃を受ける第1の層の外側表面は、美的又は空気力学的な理由から半球状であることを望まない可能性があるが、上述の座屈部(複数可)などの他の機能的特徴を備え得る。
【0086】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、座屈部は、法線力がヘルメットとヘルメットを装着している人の頭部とで構成される系の質量中心までの距離を備えるように、第1の層に作用する衝撃の法線力の再方向付けを提供するように構成されている。
【0087】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、第1の層、特に座屈部は、ヘルメットの隣接構造との機械的相互作用による第1の剛性の層の幾何学的ロックを防止するために衝撃時に変形するように構成されており、特に、第1の剛性の層の変形、特に座屈部の変形は、ヘルメットの隣接構造と絡み合うようにならないように第1の剛性の層のエッジ領域を反応層から浮き上がらせる。
【0088】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、第1の剛性の層の内面は、衝撃の間、第2の剛性の層の外面と合同になるように構成され、それにより、特に、接触前の滑り及び衝撃の時間を長くするようにする。
【0089】
さらに、特に、第1の層は、衝撃の間に弾性変形及び/又は塑性変形及び/又は破砕可能である。さらに、第1の層は、変形を許容するための少なくとも1つのリリーフカット及び/又は少なくとも1つの構造要素を備えることができる。
【0090】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、第1の層は、単に第1の層の内面の局所的な部分(すなわち、第1の剛性の層の内面の領域よりも小さい領域を含む前記部分)を介して、反応層(特に膜)と接触し、特に前記部分は第1の層の周縁部に配置される。
【0091】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、前記局所的な部分(複数可)は、特に第1の層と第2の層との間の相対的な移動を容易にするために必要な反応層の領域が減少するように、第1の層の隣接部分と比較して剛性が増大されている。
【0092】
好ましくは、本ヘルメットはサイクリング用ヘルメットである。しかし、本発明の技術及びその変形は、他のヘルメットにも適用できる。EPSインモールド成型ではなく射出成型で作られたヘルメットも同様である。特に、本ヘルメットはオートバイ用ヘルメットでもあり得る。このようなヘルメットの場合、衝撃速度が高いほど、反応層又は膜のボールの転動を促進する始動力をより高くすることができる。これにより、ヘルメットの製造時及び日常使用時の耐久性が向上する。
【0093】
特に、本発明の一実施形態では、例えばポリカーボネートなどで形成されたシート上に第1の層(複数可)を置く代わりに、第1の層(複数可)と第2の層とは、射出成型された第1の層と第2の層とすることができる。
【0094】
先行する請求項のいずれか一項に記載のヘルメットは、それぞれの第1の層が射出成型された第1の層であり、及び/又は第2の層が射出成型された第2の層である。
【0095】
オートバイ用ヘルメットなどのヘルメットの射出成型は、そのようなヘルメットの重量要件がサイクリング用ヘルメットに関するものよりも厳しくないことと、衝撃が直線的であることにより利用可能である。
【0096】
先行する請求項のいずれか一項に記載のヘルメットは、それぞれの第1の層の内面の部分が、第2の層の外面の部分に接着されている。
【0097】
特に、一実施形態によれば、それぞれの第1の層の内面の部分は、両面接着テープによって第2の層の外面の部分に接着される。好ましくは、内面の前記部分は、第1の層の内面のエッジ部分である。さらに好ましくは、外面の前記部分は、第2の層の外面のエッジ部分である。
【0098】
先行する請求項のいずれか一項に記載のヘルメットは、第1の層がコネクタによって第2の層に接続され、それぞれのコネクタが、第1の層の内面から突出し、かつコネクタの末端部により関連する第2の層の貫通開口部を通って延び、末端部が第1の層を第2の層に接続するように第2の層と係合して(ここで、末端部は、好ましくは、貫通開口部のエッジ領域の背後に係合するノーズ(nose)を備え)、それぞれのコネクタが、前記衝撃閾値で破壊されて第1の層を第2の層から解放するように構成されている。
【0099】
さらに、本ヘルメットの好ましい実施形態によれば、第1の層は、ヘルメットの第1の層の外面に衝突する表面を平滑にして、ボールが犠牲層上を転動することができるように構成される犠牲層である。好ましくは、犠牲層は、斜めの衝撃の間、ヘルメットから完全に解放されるか、又はヘルメットから部分的に解放されるように構成され、かつ特に、前記衝撃の間、衝撃面に対して相対的に並進しない(すなわち、衝撃面に固着する)ように構成されている。部分的に解放されるとは、ヘルメットが、例えばつなぎ綱などの、解放後も犠牲層をヘルメットに接続する構造を備えていることを特に意味する。
【0100】
本発明によるヘルメットのさらに別の好ましい実施形態によれば、それぞれのボールを放出するのに必要なエネルギーは、ボール1個当たり0.005ジュール~0.5ジュールの範囲内である。
【0101】
本ヘルメットは、複数の第1の層と、それぞれの第1の層と第2の層との間に挟まれる(かつ第1の層と第2の層とに接続される)反応層とを備える。
【0102】
特に、上述のとおり、それぞれの反応層は、ヘルメットの通常の使用中に剛性を保ち、かつ第2の層の外面上を衝撃閾値で転動するように構成される複数の剛性のボールを備える。さらに、それぞれの反応層は、上記のとおり膜とすることができ、これについても以下にさらに詳述する。
【0103】
さらに好ましくは、それぞれの第1の層と関連する反応層(又は膜)は細長い形状を備え、かつ好ましくはヘルメットの横軸方向に並んで配置され、かつ好ましくはヘルメットの縦(長手方向)軸に沿って(すなわちヘルメットの背面から前面に向かって)延び、ヘルメットの垂直軸はヘルメットを装着している人の頭部に対して本質的に垂直である。
【0104】
第1の層は互いに隣接して配置されている。特に、これは、隣接する第1の剛性の層が互いに接触するエッジ部分を備えることを意味する。
【0105】
さらに、前記複数の第1の層のそれぞれの第1の層は、上述した第1の層に関して本明細書に記載される実施形態に従って構成され得るが、これについては以下でさらに簡単に繰り返す。
【0106】
好ましくは、一実施形態によれば、剛性のボールは、上記の範囲のヤング率(弾性率)を備える材料から形成される。
【0107】
特に、好ましい実施形態によれば、ボールは上記の範囲の直径を備える。
【0108】
さらに、特に、ボールは、それぞれの第1の層の内面に沿って、それぞれの第1の層の前記内面の領域の10%~30%、好ましくは約20%に相当する領域を占めるように分布する。
【0109】
さらに好ましくは、剛性のボールは、脆性破壊を受けるように構成される接着剤を介して、対応する反応層の基材フィルムに接着される。特に、それぞれの基材フィルムは200μmより薄い厚みを備える。
【0110】
特に、それぞれの基材フィルムは、好ましくは、前記複数のボールと反対に面するそれぞれの基材フィルムの側面に配置される感圧接着剤からなる接着層を備える。
【0111】
さらに、それぞれの反応層は、好ましくは、第1の層及び第2の層に接着した膜であり(又は膜からなり)、それぞれの膜は、それぞれの基材フィルム及びその上に配置されるそれぞれの複数のボールを備える。好ましくは、上記のとおり、それぞれの膜又は基材フィルムは、それぞれの基材フィルムの前記感圧接着剤からなる前記接着層を介して、第2の層の外面に接着される。
【0112】
さらに、好ましくは、それぞれの膜又はそのそれぞれの複数のボールは、特に高温成型中に、接着層、好ましくは熱軟化性接着剤を備えるか、又はそれからなる接着層を介して、第1の層の内面(A面)に接着される。
【0113】
特に、上記のとおり、それぞれの第1の層は、シート(それぞれのシートは、好ましくは、ポリカーボネート(PC)などのプラスチック材料から形成されるもの)と、それぞれのシートの内面上に配置されるカラー層(例えば、着色インク層)と、カラー層上に配置される保護層と、を有し得、それぞれの膜をそれぞれの第1の層の内面に接着する前記接着層は、それぞれの保護層に接着される。
【0114】
特に、すべての実施形態において、それぞれの第1の層の内面は、ヘルメットを着用する前記人の頭部の側を向いている。
【0115】
さらに、特に、それぞれの保護層は、耐熱性インク層とすることができる(耐熱性インク層は、カラー層(例えば、着色インク層)上にスクリーン印刷又はUV印刷することができる)。さらに、あるいは、それぞれの保護層は、上記の層の1つであることができる。さらに、特に、それぞれの保護層は、0.1mm未満の厚さ及び/又は20MPaより大きい降伏強度を備え得る。さらに、特に、それぞれの保護層は、それぞれの第1の層の材料の熱膨張と5%未満の差の熱膨張を有することができる。
【0116】
さらに、あるいは、上記のとおりのツインシートアセンブリでもあり得るそれぞれの第1の層は、外側シート及び内側シート(例えば同時に熱成形されるもの)を備え、両方のシートが好ましくはポリカーボネート(PC)からなり、それぞれのツインシートアセンブリの内側シートが穿孔されている(上記も参照)。
【0117】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、第1の層は、布地によって形成され得るか、又は布地を備え得る。特に、本発明によるヘルメットのすべての実施形態において、第1の層は、そのような布地で形成され得るか、又はそのような布地を備え得る。
【0118】
本発明によるヘルメットの別の好ましい実施形態によれば、それぞれの第1の層と関連する反応層(特にそれぞれの膜の形態のもの)とは、交換可能なユニットを形成する。特に、斜めの衝撃の後、それぞれの膜、及びまだ部分的に接続されている場合にはそれぞれの第1の層は、(例えば手動で)除去され、かつ第1の層と膜とで構成される交換ユニットによって交換されるように構成されており、交換ユニットは第2の層の外面に接続される(特に接着層によって第2の層の外面に接着される)。したがって、本発明の第3の態様は、第1の層と膜とを備える交換ユニットにも関する。第1の層と膜とは、本方法と本ヘルメットとに関連して本明細書で記載されるとおりさらに特徴付けることができる。さらに、本発明の第4の態様は、本発明によるヘルメットと、本発明による少なくとも1つの交換ユニットとを備えるシステムに関する。ヘルメットに関する本発明の第5の態様によれば、ヘルメットが開示され、ヘルメットは、ヘルメットの外面を形成する第1の層と、第2の層とを備え、斜めの衝撃の下で、第1の層は、第2の層に対して移動することができ、特に、第2の層は、第1の層の下で移動することができる。
【0119】
第5の態様によるヘルメットの好ましい実施形態によれば、第1の層は、第2の層の面側(face side)(面側は第2の層の厚さ方向に延在する)に配置され、かつしたがって、第2の層に引っ掛かることなく面側に沿ってスライドすることが可能である角度のついたエッジ部分を備える。
【0120】
さらに、第5の態様によるヘルメットの好ましい実施形態によれば、ヘルメットはエネルギー吸収層を備え、第2の層はエネルギー吸収層上に配置される。
【0121】
さらに、第5の態様によるヘルメットの好ましい実施形態によれば、エネルギー吸収層は、エネルギー吸収層の周縁部に向かって上方に傾斜し、かつ第1の層の角度のついたエッジ部分の外面と同一平面である外面を提供する隆起した境界部分を備える。
【0122】
第5の態様によるヘルメットのさらに別の好ましい実施形態によれば、第2の層は、エネルギー吸収層の周縁部に向かって上方に傾斜する隆起した境界部分を覆うエッジ部分を備え、好ましくは、第2の層のエッジ部分は、第1の層の外面と同一平面である外面を提供する。
【0123】
さらに、本発明の上述した第5の態様によるヘルメットは、本明細書に記載したとおり、第1の層と第2の層との間に挟まれた反応層を備えることができる。特に、本発明の第5の態様によるヘルメットは、請求項1~58に記載された特徴、本明細書に記載された対応する実施形態、及び本明細書に記載されたヘルメットの他のすべての特徴によってさらに特徴付けることができる。
【0124】
さらに、本発明の第1の態様によれば、方法が開示され、すなわち、ヘルメット、特にサイクリング用ヘルメット、特に本明細書に記載され、かつ請求される本発明によるヘルメットを製造するための方法が開示され、前記方法は、以下の工程を含む:
(a)第1の層と、その上に配置される接着層とを提供する工程、
(b)第2の層と、その上に配置される接着層とを提供する工程、
(c)接着剤を用いて膜の基材フィルムに接着される複数のボールを備える膜を提供する工程(接着剤は、好ましくは脆性破壊を受けるように構成される)であって、基材フィルムは、前記複数のボールから反対側に面する側面に接着層を備える、前記工程、
(d)膜を第2の剛性の層の外側に配置し、かつ基材フィルムの前記接着層を介して膜を第2の層に接着する工程、
(e)第1の層、第2の層、及び膜をモールドのキャビティ内に配置する工程であって、膜が第1の層と第2の層との間に配置される、前記工程、及び
(f)第2の層上に配置される接着層に隣接するキャビティ内に材料を提供し、前記ヘルメットのエネルギー吸収層を形成する工程であって、エネルギー吸収層は、第2の層上に配置される前記接着層を介して第2の層の内面に接着され、複数のボールを第1の層上に配置される前記接着層を介して第1の層に接着する、前記工程。
【0125】
特に、本方法の好ましい実施形態によれば、工程f)は、エネルギー吸収層を形成するために、第2の層上に配置される接着層に隣接するキャビティ内に加熱された材料を提供すること、及びキャビティを加圧することを含み、ここでエネルギー吸収層は、第2の層上に配置される前記接着層を介して第2の層の内面に接着され、複数のボールを第1の層上に配置される前記接着層を介して第1の層に接着する。加熱された材料は、一実施形態では、キャビティ内の材料を加熱することによって、又は加熱された材料、特に溶融した材料、をモールドのキャビティに射出することによって提供することができる。
【0126】
さらに、すべての実施形態において、第2の層は一体的に形成することができるが、エネルギー吸収層上に並んで配置される複数のシートによって形成することもできる。
【0127】
方法の好ましい実施形態によれば、第1の層上に配置される接着層が熱軟化性接着層であり(工程a))、及び/又は第2の層上に配置される接着層は熱軟化性接着層であり(工程b))、特にacriluxなどの接着剤インクであり、及び/又は基材フィルムの接着層は感圧接着剤を含む。
【0128】
特に、本方法の好ましい実施形態において、前記材料はバルク材であり、特にペレットの形態のものであり、特に前記材料はポリスチレン(PS)、特に発泡ポリスチレン(EPS)である。
【0129】
特に、前記材料は、キャビティ内で過熱水蒸気によって、特に約2barで、特に4分~5分の時間スパンで加熱され、これにより、ボールを第1の層に、及び第2の層をエネルギー吸収層に、接着するための熱軟化性接着層も軟化する。
【0130】
さらに、本方法の好ましい実施形態によれば、工程(a)において第1の層を提供することには、第1の層のベース構造としてシートを提供することと、シート上にカラー層を適用することと(好ましくは、シート上に着色インクを印刷、例えばスクリーン印刷することによって適用すること)を含み、ここでその後、好ましくは光にじみ防止ベースコートをカラー層上に適用し、任意にカラー層上に(特に光にじみ防止ベースコート上に)保護層を適用し、特に保護層は、上述した層のうちの1つであり、特に架橋ポリマーバリアコートであり、かつ第1の層上に前記接着層を配置することは、保護層上に前記接着層を配置することを含む。
【0131】
特に、本方法の一実施形態によれば、シートは熱成形され、シート(又は第1の層)の所望の輪郭を実現するためにトリミングされる。シートは、前記カラー層、特に光にじみ防止ベースコート、保護層、及び接着層を適用した後、熱成形し、トリミングすることができる。
【0132】
特に、第1の層のシートはポリカーボネート(PC)で作成することができる。
【0133】
さらに、方法の好ましい実施形態によれば、工程(b)において第2の層を提供することには、(第2の層のベース構造として)シートを提供することと、第2の層のシート上にカラー層を適用することと(好ましくは、シート上に着色インクを印刷すること、例えばスクリーン印刷することによって適用すること)を含み、その後、好ましくは、カラー層上に光にじみ防止ベースコートを適用し、かつ第2の層上に前記接着層を配置することには、カラー層上、特に光にじみ防止ベースコート上に前記接着層を配置することを含む。
【0134】
特に、本方法の一実施形態によれば、第2の層のシートは熱成形され、シート(又は第1の層)の所望の輪郭を実現するためにトリミングされる。シートは、前記カラー層、特に光にじみ防止ベースコート、保護層、及び接着層を適用した後、熱成形され、トリミングすることができる。
【0135】
特に、第2の層のシートはポリカーボネート(PC)で作成することができる。
【0136】
上記のとおり、本ヘルメットは複数の第1の層を備えることができる。この場合、上記の工程(a)は、前記複数の第1の層を提供することを含む(各第1の層は、第1の層に関して上記のとおり提供することができる)。
【0137】
さらに、本方法の好ましい実施形態によれば、膜を提供する工程(c)は、最上層と裏打ち部とを含む積層体をキスカット(kiss cutting)することによって基材フィルムを提供することを含み、基材フィルムは最上層からキスカットされ、その結果、基材フィルムは裏打ち部及び最上層の周囲部分に配置され、特に、基材フィルムは、第2の層の外面の対応する部分の形状に適合する細長い形状を備える。
【0138】
本方法の好ましい実施形態によれば、工程(c)はさらに以下を含む:
- 前記周囲部分(ネガティブウェブとも表記)を除去すること、
- 前記接着剤の点(ドット)(好ましくは直径約2mm)を配置すること、特に繰り返しパターン又は所望のパターンで、基材フィルム上に配置すること、及び
- 前記複数のボールのうちの1つのボールを接着剤のそれぞれの点上に配置し、この接着剤を硬化させるか、又は硬化可能にさせることにより、ボールを基材フィルムに接着させること。
【0139】
本方法の好ましい別の実施形態によれば、工程(c)はさらに以下を含む:
- 基材フィルム上に前記接着剤の層を適用すること、
- 接着剤が固まる前に、前記周囲部分(ネガティブウェブとも表記する)を除去すること、及び
- 前記複数のボールを前記接着剤の層上に繰り返し又は所望のパターンで配置し、かつ前記接着剤を硬化させるか又は硬化可能にさせてボールを基材フィルムに接着させること。
【0140】
さらに、方法の好ましい実施形態によれば、第2の層は、第1の層上に配置される前記接着層を介して第1の層と接着する(すなわち、貫通溶着する)ために、材料を加熱し、かつキャビティを第1の層に向かって加圧する際に材料の一部が延びる凹部(例えば、エッジ部)及び/又は貫通孔を備える。一実施形態では、第1の層上に配置される接着層は部分的又は完全に省略され、凹部及び/又は貫通孔を通って延びる材料の前記部分は、第1の層に接着する(例えば、中間的な別個の接着層なしで接着する。上記も参照)。したがって、上述の工程a)及びf)において、前記接着層は全く使用されないか、又は単にボールを第1の層に接着するためにのみ使用され得る。
【0141】
好ましい実施形態によれば、基材フィルムはポリマー、特にPVCから形成される。上記を参照。
【0142】
一旦冷却されると、完全に形成されたヘルメット本体は、好ましくはキャビティから取り出され、付属品が加えられ、その後包装することができる。
【0143】
さらに、本発明及び本明細書に記載のその実施形態による方法では、接着剤、特にPVAを含む接着剤を使用して、ボールを第2の層の外面に(特に直接)接着することができ、すなわち、基材フィルムを省略することができる。
【0144】
さらに、本発明及び本明細書に記載されるその実施形態による方法において、ボールは、第2の層の外面が形状に形成される前に、(膜を介してであれ直接的であれ)第2の層Bの外面に接着され得る。
【0145】
さらに、第6の態様によれば、本発明は、請求項59の特徴によるヘルメット、特にサイクリング用ヘルメットに関する。
【0146】
特に、本発明の第6の態様は、ヘルメット、特に負の回転を減少させる運動抑制層を備えるヘルメットに関する。
【0147】
物体へのヘルメットの衝撃、特に自転車事故における路上又は他の種類の地形に対するヘルメットの衝撃において、物体の特定の衝撃位置から垂直に方向付けられる衝撃力の法線成分Fは、一般に、ヘルメットを装着している人の頭部の質量中心と一致しない。これにより、法線力と頭部の質量中心との間の変位は、法線力と第1のレバーアームとの積が頭部の第1の負のトルクを引き起こす第1のレバーアームベクトルLを表す。他の力が存在しない場合、負の回転方向を有する頭部の負の回転が引き起こされる。
【0148】
しかしながら、物体と外層との間の摩擦又は転がり抵抗などの抵抗力により、外層は接線摩擦力Fがかかる。接線摩擦力の方向と質量中心の間の変位は、接線摩擦力と第2のレバーアームベクトルの積がヘルメットと頭部とに第2の、正のトルクをもたらす第2のレバーアームベクトルLを表す。正のトルクは、衝撃力の法線成分と第1のレバーアームベクトルとによって引き起こされる負のトルクとは反対方向に方向付けられる。
【0149】
それぞれのトルクの大きさに応じて、衝撃時に頭部は正(摩擦力の方向に沿う)又は負(摩擦力の方向と反対)のいずれかに回転する。
【0150】
どちらの場合も、衝撃時の頭部の正味の回転が、人の脳と頸部とに深刻な損傷を与えることが知られている。
【0151】
通常、先行技術のヘルメットは、ヘルメットを形成する様々な層の間の抵抗力が比較的大きいため、正の回転を行う。しかしながら、最近のヘルメットの開発により、今では衝撃時のヘルメットの負の回転を特徴とする形態への抵抗力の低減がなされている。
【0152】
本発明の目的は、特にコスト効率よく製造できる、特に前述した負の回転の問題に関して、安全特性を高めたヘルメットを提供することである。この目的は、請求項59の特徴を有するデバイスによって達成される。
【0153】
有利な実施形態は、対応する従属請求項に記載されている。
【0154】
本発明は、第6の態様によれば、衝撃時に人の頭部を保護するためのヘルメットを開示し、ヘルメットは外面を備え、ヘルメットは、前記衝撃時にヘルメットの外面に作用する衝撃力によって生じる、ヘルメットを装着している人の頭部の負の回転を低減するように構成されている。
【0155】
上述のとおり、頭部の負の回転は、衝撃力の法線成分と、衝撃力の法線成分と質量中心との間の変位に対応する第1のレバーアームベクトルとによって引き起こされる負のトルクに沿って方向付けられる。したがって、負の回転は、衝撃時に外面に作用する接線摩擦力と、質量中心に対する衝撃力の法線成分に平行に伸びる第2のレバーアームベクトルとの外積によって生成される正のトルクとは反対の方向に方向付けられる。本発明の文脈において、「質量中心(center of mass)」という用語は、ヘルメットとヘルメットを装着している人との質量中心、特にヘルメットとヘルメットを装着している人の頭部との質量中心を指す。
【0156】
先行技術のヘルメットは通常、ヘルメットの外面と人の頭部との間の比較的高い摩擦に起因する正の回転を特徴とするが、十分に低い摩擦層を適用すると、負の回転がもたらされる可能性がある。いずれの種類の回転も人の頭部及び頸部に有害であるため、本発明は、ヘルメットの回転、特に負の回転を低減するために、ヘルメットに少なくとも1つの運動抑制要素を導入することを提案する。
【0157】
本発明の第6の態様の実施形態によれば、ヘルメットは、内層と、少なくとも1つの外側保護層とをさらに備えてもよく、衝撃時にヘルメットを装着している人の頭部の正の回転を低減するために、少なくとも1つの外側保護層は、内層に対して相対的に移動するように構成されてもよい。好ましくは、前記内層は、エネルギー吸収層を形成するように、エネルギー吸収要素及び/又はエネルギー吸収材料を備え得る。
【0158】
内層と少なくとも1つの外側保護層との間の運動が、ヘルメットの負の回転をもたらすのに十分低い摩擦によって特徴付けられる場合、運動抑制要素は、ヘルメットの負の回転を低減するように構成され得る。
【0159】
本発明の第6の態様の別の実施形態によれば、運動抑制要素は、ヘルメットの負の回転を有利に減少させて、ヘルメットを着用する人の頭部及び頸部の保護を提供するように、ヘルメット、特に内層及び少なくとも1つの外側保護層、に追加の摩擦量を導入するために使用することができる。
【0160】
運動抑制要素は、好ましくは、衝撃時に頭部とヘルメットとが-15rad/s~+15rad/s、好ましくは-10rad/s~+10rad/s、より好ましくは-5rad/s~+5rad/sの範囲の角速度を経験するように、負のトルクが正のトルクを打ち消すように適合される。
【0161】
本発明の第6の態様の実施形態によれば、運動抑制要素は、内層と少なくとも1つの外側保護層との間に配置することができる。この実施形態では、前記抑制層は、有利には、内層と少なくとも1つの外側保護層との間の摩擦量を制御するように、内層と少なくとも1つの外側保護層との両方と相互作用することができ、それによって、衝撃力によるヘルメットの負の回転を低減させる。
【0162】
この目的のため、運動抑制要素はまた、運動抑制層を備えるか、又は運動抑制層であってもよい。
【0163】
本発明の第6の態様の別の実施形態によれば、運動抑制層は、内層及び/又は少なくとも1つの外側保護層と一体的に形成されてもよい。運動抑制層を内層及び/又は少なくとも1つの外側保護層と一体的に形成することは、ヘルメットの製造コスト及び製造時間の削減に有利に貢献する。
【0164】
本発明の第6の態様の別の実施形態によれば、運動抑制層は、衝撃力によって変形するように構成することができる。特に、運動抑制層の変形は、例えば、ヘルメットの負の回転を打ち消すために使用され得る対応する圧縮力又はせん断力により付随して起こる圧縮又は伸張であってもよい。
【0165】
本発明の第6の態様の別の実施形態によれば、ヘルメットは、内層と少なくとも1つの外側保護層との間に配置される中間層を追加的に備えることができ、前記中間層は、内層と少なくとも1つの外側保護層との間の相対運動を促進するように構成されている。特に、中間層は、衝撃時にヘルメットの正味の負の回転を引き起こすように十分に低い摩擦係数、転がり抵抗係数などを有する内層及び少なくとも1つの外側保護層との界面を備える低摩擦層とすることができる。中間層の選択に応じて、運動抑制層は、衝撃時にヘルメットの正味の回転が最小になるように、特に負の回転が最小になるように、結果として生じる様々な層間の正味の摩擦力を補償するように適合させることができる。
【0166】
本発明の第6の態様の別の実施形態によれば、運動抑制層は、運動抑制層と、以下の層:内層、中間層、少なくとも1つの外側保護層、のうちの少なくとも1つとの間に配置される可撓性層、特に布地又はウェビングを備える。衝撃時に可撓性層内に生じる圧縮力又はせん断力は、内層と少なくとも1つの外側保護層との間の相対運動、及び特にヘルメットの負の回転を打ち消すために使用することができる。運動抑制層は、代替的に、運動抑制層と、以下の層:内層、中間層、少なくとも1つの外側保護層、のうちの少なくとも1つとの間に配置される可撓性界面を備えてもよい。
【0167】
本発明の第6の態様の別の実施形態によれば、以下の層の少なくとも1つは、複数の積層された副層を備えてもよい:内層、少なくとも1つの外側保護層、運動抑制層、中間層。前述の層は、代替的に又は追加的に、それぞれの層に沿って延びるそれぞれの平面内に本質的に配置される、複数の互いに接続されたシェルセグメントも備えてもよい。
【0168】
本発明の第6の態様の別の実施形態によれば、運動抑制層は、中間層内に少なくとも部分的に配置され得る。このように、追加的な摩擦を導入する前記抑制層は、結果として生じる正味の摩擦、特に内層と少なくとも1つの外側保護層との間の正味の摩擦、を微調整することができるように、摩擦を低減するために使用される中間層と直接相互作用することができる。
【0169】
本発明の第6の態様の別の実施形態によれば、中間層は、以下の層:内層、運動抑制層、少なくとも1つの外側保護層、のうちの少なくとも1つと一体的に形成されていてもよい。運動抑制層を内層及び/又は少なくとも1つの外側保護層と一体的に形成することは、ヘルメットの製造コスト及び製造時間の削減に有利に貢献する。
【0170】
本発明の第6の態様の別の実施形態によれば、中間層及び/又は運動抑制層は、転動可能要素を備えてもよく、前記転動可能要素は、衝撃力に対して、少なくとも1つの外側保護層に対する内層の運動を促進するように構成されている。特に、転動可能要素は、例えばロール、ビーズなどであってもよい。転動可能要素は、例えば、0.1mm~4mm、特に1mm~2mmの円直径を備えることができ、円直径とは、転動可能要素の円形断面を指す。転動可能要素は、中間層と内層及び/又は少なくとも1つの外側保護層との間の摩擦力及び転がり抵抗の実質的な低減に有利に寄与する。転動可能要素の選択によっては、運動抑制層は、衝撃時にヘルメットの正味の回転が最小になるように、特に負の回転が最小になるように、様々な層間の結果として生じる正味の摩擦力を補償するように適合させることができる。
【0171】
さらに、中間層及び/又は運動抑制層は、衝撃力によって破損するように構成される破壊要素を備えていてもよく、これにより、少なくとも1つの外側保護層に対する内層の運動を促進するように、転動可能要素が内層及び少なくとも1つの外側保護層と相互作用することが可能になる。
【0172】
本発明の第6の態様の別の実施形態によれば、内層及び少なくとも1つの外側保護層とともに、運動抑制層は、少なくとも1つの容積部内に転動可能要素の少なくとも一部を閉じ込めることができるように、少なくとも1つの容積部を区切ることができる。このように、特に異なる数及び/又は異なる形状の転動可能要素を有する複数の容積部もまた、様々な層間の、特に衝撃時の内層と少なくとも1つの外側保護層との間の、結果として生じる正味の摩擦を微調整するために使用することができる。
【0173】
本発明の第6の態様の別の実施形態によれば、転動可能要素、内層、中間層、少なくとも1つの外側保護層及び運動抑制層は、より低い剛性又はより大きい剛性を備えていてもよく、転動可能要素の剛性は、以下の層:内層、中間層、少なくとも1つの外側保護層、運動抑制層、のうちの少なくとも1つの剛性よりも低いか、又は大きい。転動可能要素と様々な層との間に異なる剛性を選択することにより、衝撃時のヘルメットの正味の回転を最小にすることができるように、特に負の回転を最小にすることができるように、様々な層間の摩擦、特に転がり抵抗、を制御することができる。例えば、転動可能要素は、上述した様々な層の少なくとも1つよりも大きな剛性を備えることができる。あるいは、転動可能要素は、上述の様々な層の少なくとも1つよりも低い弾性を備えることができる。これにより、弾性率の差は、転がり抵抗を変化させるパラメータを表す。例えば、低い弾性率は3GPa未満のヤング率に相当し得る。
【0174】
例えば、中間層、特に転動可能要素を備える中間層と、少なくとも1つの外側保護層及び/又は内層との間の転がり抵抗係数は、0.2未満であってもよい。
【0175】
任意に、運動抑制層と、中間層、特に転動可能要素を備える中間層、又は少なくとも1つの外側保護層若しくは内層との間の摩擦係数は、中間層と少なくとも1つの外側保護層若しくは内層との間の摩擦係数と異なっていてもよい。このように、運動抑制層は、好ましくは、上記の様々な層を備えるヘルメットに摩擦量を導入するために使用することができる。
【0176】
例えば、中間層又は運動抑制層と、少なくとも1つの外側保護層又は内層との間の摩擦係数は、0.8未満であってもよい。
【0177】
本発明の第6の態様の別の実施形態によれば、運動抑制層は、粘性の流体又はゲルを備えることができる。粘性の流体及び/又はゲルは、好ましくは、上記の様々な層にせん断応力、特に内層と少なくとも1つの外側保護層との間にせん断応力、を導入するように構成され得る。粘性の流体又はゲルは、好ましくは、中間層、特に任意に転動可能要素を備える低摩擦中間層と組み合わせて使用することができ、粘性の流体又はゲルは、追加的なせん断応力を生じさせる粘性と、摩擦を減少させる中間層との相互作用が、衝撃時にヘルメットの最小の正味の回転をもたらすように、特に最小の負の回転をもたらすように選択することができる。好ましくは、粘性の流体及び/又はゲルは、粘性の流体又はゲルを保持するように、少なくとも内層及び外層保護層によって囲まれる漏れのない容積部に配置され得る。
【0178】
例えば、粘性の流体又はゲルは、0.001Pa s~10Pa sの範囲内の粘度を備えることができる。
【0179】
本発明の第6の態様の別の実施形態によれば、運動抑制層は、非ニュートン流体又はゲルを備えることができる。このように、流体又はゲルの粘度は、せん断応力に依存する可能性があり、これは、衝撃時にヘルメットの正味の回転が最小になるように、特に負の回転が最小になるように、追加的なせん断応力を生み出す流体又はゲルと摩擦を減少させる中間層との相互作用を微調整するための別のパラメータとして有利に使用することができる。
【0180】
本発明の第6の態様の別の実施形態によれば、運動抑制層は運動抑制要素を備え得る。運動抑制要素は、好ましくは、内層と少なくとも1つの外側保護層との間の相対運動を抑制するように構成されている。運動抑制要素は、衝撃時のヘルメットの正味の回転を最小にすることができるように、特に負の回転を最小にすることができるように、中間層と組み合わせて、特に転動可能要素を備える中間層と組み合わせて、有利に使用することができる。
【0181】
この目的のため、運動抑制要素を形成する個々の運動抑制要素は、衝撃力によって破断するように構成することができる。この目的のために、幾何学的特徴、特に個々の抑制要素の直径、幅又は長さは、個々の抑制要素を破断させるのに必要な個々の破断力を表すことができ、この破断力は、衝撃力よるヘルメットの負の回転を打ち消す。
【0182】
例えば、運動抑制要素は、少なくとも1つの外側保護層によって画定される側方表面領域の総計の80%未満を占めることができる。
【0183】
運動抑制要素は、例えば、円柱、円錐、角錐、立方体、切頭円錐のうちの少なくとも1つとして形成することができる。
【0184】
任意に、運動抑制要素は、側方接触表面領域を介して少なくとも1つの外側保護層及び内層と接触してもよく、側方接触表面領域と側方表面領域の総計との比は、例えば0.05~0.5の範囲内である。
【0185】
本発明の第6の態様の別の実施形態によれば、運動抑制層は、内層、中間層、少なくとも1つの外側保護層のうちの少なくとも2つの間に一体的に形成された1つ又は複数のコネクタを備え得る。
【0186】
前記1つ又は複数のコネクタは、ヘルメットの負の回転を打ち消すように、衝撃力より同時に及び/又は順次、変形及び/又は破断するように構成することができる。これらのコネクタは、好ましくは、中間層、特に転がり可能な要素を備える中間層と組み合わせて使用することができ、摩擦を導入するコネクタと摩擦を低減する中間層の選択は、衝撃時のヘルメットの最小の正味の回転、特に最小の負の回転、を実現するように適合させることができる。
【0187】
この目的のため、複数のコネクタを形成する個々のコネクタは、個々の破断力を備えることができ、個々の破断力は、少なくとも2つの値をとる。このように、衝撃時のヘルメットの正味の回転を最小にすることができるように、特に負の回転を最小にすることができるように、運動抑制層内で、適合された変形特性又は破断特性を有する複数の個別のコネクタを使用することができる。
【0188】
例えば、コネクタは、接着剤、熱可塑性プラスチック、エラストマー、セラミック、又は金属を備え得るか、又はそれであり得る。
【0189】
好ましくは、コネクタは、内層及び/又は少なくとも1つの外側保護層とは異なる弾性を有することができる。コネクタと内層及び/又は少なくとも1つの外側保護層との間の弾性の差は、コネクタと内層及び/又は少なくとも1つの外側保護層との間の摩擦及び/又は転がり抵抗を変化させるために有利に使用され得る。
【0190】
ここでもまた運動抑制層について言及すると、運動抑制層は、以下のうちの少なくとも1つを備え得る:プラスチック材料、弾性材料、ポリマー、金属。
【0191】
本発明の第6の態様の別の実施形態によれば、運動抑制層は、ヘルメットの負の回転の低減が衝撃力の方向に依存するように構成され得る。この目的のために、例えば、特に異なる個別の破断力を備える、複数の前記コネクタ又は抑制要素を使用することができる。
【0192】
このように、運動抑制層は、第1の軸の周りのヘルメットの回転をもたらす衝撃力による負の回転の減少が、第2の軸の周りのヘルメットの回転をもたらす衝撃力による負の回転の減少よりも大きくなるように構成することができる。
【0193】
例えば、第1の軸はヘルメットを装着している人の頭部内の冠状面を通ることができ、第2の軸はヘルメットを装着している人の頭部内の矢状面を通ることができる。ほとんどの衝撃は、矢状面に比べ、冠状面を通る軸を中心とした頭部とヘルメットとのより強い(負の)回転を引き起こすため、第1の軸と第2の軸とのこの選択は、ヘルメットの正味の回転、特に負の回転、を減少させることに有利に寄与し得る。
【0194】
好ましくは、運動抑制層は、衝撃力による少なくとも1つの外側保護層に対する内層の運動を、15rad/s未満の絶対回転速度に制限するように構成され得、ここで、回転速度は、正であっても負であってもよい。
【0195】
本発明の第6の態様のさらに別の実施形態によれば、以下のうちの少なくとも2つが、衝撃時の負の回転を低減するように、幾何学的及び/又は機械的にロックされるように構成され得る:内層、中間層、運動抑制層、外側保護層。この目的のために、内層、中間層、運動抑制層及び/又は外側保護層は、これらの層のうちの少なくとも2つの層間の幾何学的ロックを促進する幾何学的特徴を備え得、例えば、衝撃時に係合する少なくとも2つの層の各々に一対のインターロックセグメントなどを備え得る。
【0196】
本発明の第6の態様の別の実施形態によれば、運動抑制要素又は運動抑制層がない場合、衝撃時に、ヘルメットは負の回転を経験するか、又は予め定義された正の回転の閾値を超えるであろう。
【0197】
特に、本発明の態様の例示的な実施形態を、図と併せて以下に説明する。図は特許請求の範囲に添付され、本発明の示される態様及びその実施形態の個々の特徴を説明する文章が付されている。図に示され、及び/又は図の文章に記載される個々の特徴は、本発明によるデバイスに関する特許請求の範囲に(分離された態様でも)組み込むことができる。さらに、特定の態様に関連して開示される特徴は、あらゆる賢明な方法で本発明の他の態様の実施形態と組み合わせることができる。
【0198】
以下では、本発明の例示的な実施形態並びにさらなる特徴及び利点を、図を参照して以下に説明する。
【0199】
図1は、本発明によるヘルメット1の一実施形態を示している。それによれば、ヘルメットは、ヘルメット1の外面を形成する少なくとも1つの第1の層10、好ましくは複数の第1の層を備え、そこに衝撃、特に斜めの衝撃が発生し得、すなわち外面に対して接線方向に作用する力成分を有する衝撃が発生し得る。
【0200】
ヘルメット1は、第2の層30と、反応層20とをさらに備え、各反応層は、関連する第1の層10と第2の層30との間に挟まれている。ヘルメットが単一の第1の層10を備える場合、ヘルメットはその下に単一の反応層20だけを備えることができる。以下では、本発明を複数の第1の層10の状況で説明する。図1に示すとおり、第1の層10は、好ましくは縦形状を備え、ヘルメット1の縦軸Xに沿って延びる。さらに、好ましくは、第1の層10は、ヘルメット1の横軸Yの方向に並んで配置される。さらに、第1の層10は、好ましくは、第1の層10用の適切な材料を選択することによって達成することができる剛性の第1の層10として構成され、第1の層10の形状が湾曲する間の形状は前記剛性の一因である。特に、第1の層10はポリカーボネートから形成することができ、0.25mm~20mm、好ましくは0.4mm~1mmの範囲の厚さを備えることができる。さらに、第1の層10は、縦軸Xの方向及び横軸Yの方向の曲率をそれぞれ備えることができる。第1の層について、他の材料も考えられる。同様に、第1の層10のように、第1の層10の下に配置される第2の層30も、好ましくは、上述の意味で剛性を有するように適合される。さらに、第2の層30は、特にヘルメット1の外面の法線方向(例えばヘルメットの垂直軸に沿う)の衝撃のエネルギーを吸収するように構成されるエネルギー吸収層40上に配置される。エネルギー吸収層40は、発泡ポリスチレン(EPS)から形成することができ、接着層(33)(例えば、acrilux又は他の適切な熱軟化性接着剤)によって第2の層の内面30bに接着することができる。
【0201】
第2の層20は、好ましくは0.25mm~20mmの範囲の厚さを備え、かつポリカーボネートから形成することもできる。図1に示すとおり、ヘルメットは、ヘルメット1を装着している人の頭部の換気を可能にするために、層10、20、40を貫通して延びる貫通開口部8を備えることができる。このような貫通開口部8は、それぞれの貫通開口部のいずれかの側面にて第1の層10によって挟まれ得る。
【0202】
好ましくは、それぞれの反応層20は、ヘルメット1の通常の使用中(衝撃が生じないとき)に剛性のままであり、第2の層30の外面30a(B面とも表記される)上を衝撃閾値で転動するように構成される複数のボール2(例えば、好ましくは剛性の球状体の形態のもの)を備える。
【0203】
衝撃閾値は、斜めの衝突時にそれを超える場合にボール2に転動を引き起こす、第1の層10に対する所定の接線力に相当する。好ましい実施形態では、ボールは約2mmの直径を備える。さらに、ボールは、本明細書に記載の充填密度を備えることができる。好ましくは、それぞれの反応層20は、反応層のボール2の転動を始動するのに必要な接線力が約0.1kN(又はそれ以上)となるように、それぞれの第1の層10を保持するように構成されている。
【0204】
好ましくは、図1に示されるとおり、それぞれの反応層20(図1にはそのような反応層20の1つのみ示されるが、そのような反応層20はそれぞれの第1の層10の下に存在する)は、ボール2を備える膜20として形成され、ヘルメット1の製造中に便利な様式で取り扱うことができる。
【0205】
特に、図1及び図2の詳細で示すとおり、それぞれの膜20は、基材フィルム21と、その上に配置される複数のボール2とを備える。特に、ボール2は、接着剤22を介して基材フィルム21に接着されており、この接着剤22は、好ましくは、前記衝撃閾値を超える場合にボールが基材21上/第2の層30上を転動することができるように脆性破壊を受けるように構成されている。好ましくは、基材フィルム21は200μmより薄い厚みを備え、かつPVCなどのポリマーで形成することができる。その他の素材も考慮可能である。さらに、基材フィルム21は、ボール2の反対側に面する基材フィルム21の側面に配置される感圧接着剤(pressure sensitive adhesive:PSA)などの接着層23を備えることが可能である。これにより、図6に示すとおり、膜を第2の層30上に手動又は自動のいずれかで(例えば適切な機械で)容易に配置し、そこにボール2を有するそれぞれの膜20を第2の層30に接着することができる。
【0206】
さらに、膜20は、例えばエネルギー吸収層40の形成中に、それぞれの膜20のボール2に接着するそれぞれの第1の層10に適用される接着層14によって、それぞれの第1の層10の内面10aに接着することができる。このために、接着層14は熱軟化性接着剤を備えることが可能である。
【0207】
さらに、図4に示すとおり、それぞれの第1の層10は、好ましくは、製造中に熱軟化性接着層14へのボール2の過度の圧入を防止する方式で形成される。このために、図4(A)及び(B)に示すとおり、それぞれの第1の層10は、好ましくはポリカーボネート(PC)などのプラスチック材料から形成されるシート11と、シート11の内面に配置される少なくとも1つのカラー層12(例えば着色インク層)、任意に少なくとも1つのカラー層12に適用される光にじみ防止ベースコート、及びカラー層12(又はベースコート)上に配置される保護層13を備え、膜20/ボール2を第1の層10の内面10aに接着する前記接着層14は保護層13上に配置される。これにより、保護層13は、モールド内でヘルメット1を成形する際に、ボール2が加熱された軟質接着層14を通ってカラー層12に入り込むことなく、保護層13によってそのようなことを阻止することが実現される(図13(B)参照)。また、シート11に透明な材料を使用した場合には、ボール2が外部から見えることも防止することができる。保護層13は、例えば、上記の材料から形成することができ、好ましくは、0.1mm未満の厚さ及び/又は20MPaより大きい降伏強度を備える。
【0208】
あるいは、図4(C)及び(D)に示すとおり、第1の層10は、同時に熱成形可能な外側シート11及び内側シート110を備えるツインシートアセンブリとすることができ、両シート11、110は、好ましくはポリカーボネートからなる。ここで、外側シート11と内側シート110との間には、少なくとも1つのカラー層12(特に着色インク層)と接着層140(特に粘着インク層)とが配置されており、接着層140は、少なくとも1つのカラー層12を介して内側シート110と外側シートとを接着している。これよりボール2の侵入障壁が内側シート110によって形成され、すなわち、モールド内でボール2は軟化した接着層14を圧入することができるが、内側シート110によってさらなる層への入り込みは防止され(図4参照)(D))、よって、これにより、第1の層10の保護層が形成される。
【0209】
さらに、図1図2及び図7の詳細に示されるとおり、ヘルメット1は、好ましくは、ヘルメット1の部分、特に第2の層30又は隣接する第1の層10又は他の構造体に対する第1の層10の突き当たりを回避するために、それぞれの第1の層10を第2の層30から離れるように曲げさせる傾斜(ramp)特徴を備える。
【0210】
図1の詳細に示されるとおり、第1の層10は、第2の層30の薄い面側30c上に配置され、かつしたがって第2の層30に引っ掛かることなく面側30cに沿って滑ることができる角度のついたエッジ部分10bを備える。さらに、好ましくは、エネルギー吸収層40は、エネルギー吸収層40の周縁部に向かって上に傾斜し、隣接する第1の層10の角度の付いたエッジ部分10bの外面10cと同一平面となる外面40bを提供する隆起した境界部40aを備える。角度のついたエッジ部分10bは、第1の層10の隣接部分への丸い移行部を有することもできる。
【0211】
図2に示すこのエッジの末端部の変更例では、第2の層30は、エネルギー吸収層40の周縁部に向かって上方向に傾斜する隆起した境界部分40aを覆うエッジ部分30dを備える。ここで、第2の層30のエッジ部分30dは、隣接する第1の層10の外面10cと同一平面の外面30eを提供する。
【0212】
さらに、図7に示されるとおり、ヘルメット1は、2つの隣接する第1の層10を備えることができ、2つの第1の層10は、好ましくは、隣接するエッジ部分10dを備え、各エッジ部10dは、好ましくは、斜めに衝撃を受ける第1の層10が隣接する第1の層10と絡み合うことなく隣接する第1の層10の最上部でより容易に移動することを可能にする面取り部10eを備える。あるいは、又はさらに、第2の層30は、隣接する第1の層10のエッジ部10dの下方に、例えば凹部又は圧入の形態の、傾斜領域9を備えることができ、したがって、斜めに衝撃を受ける第1の層のエッジ部10dが上方に持ち上げられ、それぞれの隣接する第1の層10及びそのエッジ部10dの上を移動することを可能にする。
【0213】
さらに、図16に示すとおり、エネルギー吸収層40及び/又は第2の層30は、第1の層10のトレーリングエッジ部(trailing edge)10gが第2の層30/エネルギー吸収層40に対して方向D3での第1の層の相対移動を引き起こす斜めの衝撃の後に第2の層及び/又はエネルギー吸収層に対する前記エッジ部分80上に移動する場合に、前記エッジ部分80に引っ掛かるのを防ぐために面取りされるか、又は丸みを帯びたエッジ部80aを有するエッジ部分80を備えることができる。図16(A)は衝撃前の状況を示し、図16(B)は斜めの衝撃後の第1の層10と第2の層30の相対的な移動を示す。前記エッジ部10gは、方向D3に対してトレーリングエッジ部とも表記される。さらに、第1の層10の内面上で、第1の層10は、エッジ部10gがエッジ部分80上を滑らかに移動することを可能にするためのフィレット(fillet)81を備えることができる。
【0214】
さらに、特定の衝撃方向に対しては、第1の層10は、ヘルメット1を装着している人の顔に向かって(例えば、縦軸Xの方向に、及び第2の層30の湾曲に従って下方に、図1を参照)移動することがある。このような状況を回避するために、それぞれの第1の層10(又は第1の層10の少なくとも一部)は、図3に示すとおり、ヘルメット1の後部からヘルメット1の前部に向かう第1の方向D1の斜めの衝撃の間、第1の層10の前部分101が所定位置に留まるように、エネルギー吸収層40に埋め込まれる前部分101を備え、一方で、前部分101に接続される第1の層10の残りの部分102は、実線矢印で示すように、第2の層30から分離され、それ自体の上に折り曲げられ得る。しかしながら、ヘルメット1の前方からヘルメット1の後方へ向かう第2の方向D2への斜めの衝撃の間、前記前部分101は、ヘルメット1から完全に分離するように、エネルギー吸収層40から(及びヘルメットから)外れるようにすることができる。あるいは、第1の層10の残りの部分102は、例えば所定の破断点に沿って、第1の層10の前部分から引き裂かれるように構成することができる。
【0215】
特に、前部分102は、開口部103を備えるタブ102とすることができ、このタブ102は、エネルギー吸収層40の前部分に埋め込まれ、それによりエネルギー吸収層40の一部分400が前記開口部103を通って拡張するようにし、第1の方向D1における前記斜めの衝撃時にタブ102を所定の位置に保持するようになっている。部分400は、第2の方向D2への前記斜めの衝撃時に、タブ102を解放するために破壊されるように構成され得る。あるいは、第1の層10の残りの部分102は、タブ102から離れるように(例えば、所定の破壊点で、上記参照)破壊され得る。特に、前部/タブ101は、第1の層10の残りの部分102よりも薄い断面を有することができる。
【0216】
さらに、図14に示すとおり、ヘルメットの第1の層10は、好ましくは、エッジ末端部を備え、すなわち、第1の層10から第2の層(30)への(例えば衝撃時にそれぞれの第1の層10に作用する)半径方向の力Fの伝達を低減するように構成されるエッジ領域10bを備える。言い換えれば、内層及び外層10、30が接する領域は、半径方向の力の伝達を抑制することが好ましい。仮にこの箇所で衝撃が起こり、隣接するボール2ではなく接合部により荷重がかかった場合、接合部が支える荷重の大きさに比例して、層間の相対的な移動が制限されることになるであろう。したがって、それぞれのエッジ領域10bは、第2の層30の外面30aの法線Nに対して角度xで延びる角度のついたエッジ領域10bとすることができ、前記角度xは、好ましくは20°~80°、好ましくは30°~70°、好ましくは40°~60°、好ましくは40°~50°の範囲内である。特に、cos(x)は(与えられた材料特性に対して)伝達可能な荷重の大きさを決定する。角度xが小さすぎると、衝撃力のかなりの部分が反応層20ではなく第2の層30に直接伝わり、高い摩擦が生じる。一方、角度xが大きすぎると、力の大部分が反応層20に伝達され、反応層20が第2の層30に対して相対的に移動することを可能にする。
【0217】
あるいは、図15に示すとおり、それぞれの第1の層10は、特に、第1の層10から第2の層30へ第1の層10に作用する半径方向の力Fの前記伝達を抑制するために、圧縮可能な中間層4によって第2の層30の外面30aに接続されるエッジ領域10bを備えることができる。例えば、中間層4は、発泡テープ又は容易に変形する他の媒体とすることができる。
【0218】
さらに、図9は、本発明によるヘルメット1の実施形態を示しており、ここでは、それぞれの第1の層10は、衝撃の間に、第1の層10の自由な移動が抑制されるように衝撃の間に変形するように構成されており、特に、前記変形は、ボール2を第2の層30の外面30aに(例えば、前記基材フィルム21及びその接着層23を介して)接着する接着剤22の剥離を引き起こす。
【0219】
図9の(A)~(D)に示すとおり、斜めの衝撃時には、凸状座屈部(convex buckle)5が扁平化し、幅が大きくなるように構成されており、その結果、座屈部の境界領域50が並進移動し、ボール2が転動するようになる。これは、反応層20を始動するさらなる形態である。第1の層10が変形すると、下向きの力が並進移動を引き起こし、ボールの転動が次いで引き起こされるため、反応層20を始動する。
【0220】
さらに、このメカニズムにより、反応層20が作動できる時間が長くなる。第1の層10が変形すると、第2の層30に対して相対的に移動することも可能である。これにより、反応層20が作用する時間が長くなる。したがって、必要とされる反応層20はより少なくなり得、これは重量が軽くなることを意味する。さらに、座屈部5により、第2の層30の露出を防ぐことができる。第1の層10が変形して座屈部5が扁平になると、その幅が大きくなり、これにより隣接する第1の層10の間の露出を低減するのに役立つ。
【0221】
さらに、図10は、それぞれの第1の層10の座屈部5の変形型を示しており、ここでは、座屈部5は、ヘルメット1の隣接する構造体に絡まることによってそれぞれの第1の層10の幾何学的ロックを防止するように、衝撃時に変形するように構成されている。したがって、座屈部5は、座屈部5に衝撃が加わると、それぞれの第1の層10のエッジ部領域51が浮き上がるように適合されている。隆起されたエッジ領域51に起因して、エッジ領域51が隣接構造物のエッジに突き当たるリスクが大幅に低減される。したがって、座屈部5がない場合に起こり得るせん断運動とは異なる剥離運動により、幾何学的なロックが防止される。
【0222】
特に、それぞれの第1の層10は、前記旋回を支持するための少なくとも1つの座屈部5を備える。特に、座屈部5は円形又はくさび形である。
【0223】
図11に示すとおり、それぞれの第1の層10に設けられた座屈部5は、ヘルメットを装着している人の頭部の回転運動を低減するように、衝撃時にヘルメット1を旋回させるために利用することもできる。特に、座屈部5はくさび形状を有することができ、衝撃時に変形しないように硬く作られているが、座屈部の先端と衝撃面との間の接触点を中心にヘルメット1と頭部との回転を開始させる。
【0224】
さらに、図12に示すとおり、座屈部5はまた、特定の方向への解放を実現するために利用することもできる。第1の層は、例えば衝撃時に座屈部を変形させることでエネルギーを蓄えるので、これは特定の方向にエネルギーを放出することができ、頭部への運動を制御するのに有益であり得る。
【0225】
さらに、図13に示すとおり、再方向付けされた法線力N1が、座屈部5への斜めの衝撃時にヘルメットの回転に対して作用する非ゼロのレバーアーム(応力中心距離)(lever arm)Aを導入するヘルメット1とヘルメット1を着用する人の頭部とで構成される系の質量中心Cまでの距離Aを備えるように、第1の層10に作用する衝撃の法線力N1の再方向付けを達成するように、座屈部5の形状を適合させることができる。
【0226】
図13に示すとおり、座屈部5がない場合、N1のレバーアームは質量中心Cを通って直進するためゼロである。変形可能なくさび形座屈部5がある場合、N2のレバーアームは質量中心CとN2との間の垂直距離であるAである。
【0227】
上述の実施形態では、それぞれの第1の層10は、例えば接着剤によって第2の層30に接続される。しかしながら、さらに、又はあるいは、それぞれの第1の層10は、図8に示すとおり、コネクタ6によって第2の層30に接続することもできる。それぞれのコネクタ6は、それぞれの第1の層10の内面10aから突出し、コネクタ6の末端部60により第2の層30の会合する貫通開口部300を通って延びることができ、末端部60は、第1の層10を第2の層20に接続するために第2の層30と係合する。特に、末端部60は、第1の層10を第2の層30に接続するために、貫通開口部300のエッジ領域301の背後に係合するように構成されるノーズ61を備えることができる。さらに、コネクタ6は、第1の層10を第2の層30から解放し、特にボール2の転動を可能にするように、規定される衝撃閾値にて破壊されるように構成されている。
【0228】
本発明の方法の一実施形態に従って図1に示すヘルメット1を製造するために、第1の層10、第2の層(複数可)30及び中間反応層20は、以下のように提供することができる。
【0229】
特に、第2の層30を提供するために、平坦なシート31は、着色インク32、光にじみ防止ベースコート、特に保護層、及びインモールド成型中に第2の層30をエネルギー吸収層40(例えばEPS製)に接着するように設計された接着(結合)剤インク(接着層)33を用いて内面にスクリーン印刷することができる。特に、平坦なシート31は(例えば、ヘルメット1の所望の形状に適合するように)熱成形及びトリミングされる。
【0230】
同様に、第1の層10を設けるために、平坦なシート11は、着色インク12、光にじみ防止ベースコート、ボール2が外側から見えるのを防止するための架橋ポリマーバリアコート(保護層)13、及び第1の層10をボール2に接着するために特別に配合された熱軟化性接着剤インク(接着層)14で内面にスクリーン印刷することができる。平坦なシートは(例えば、ヘルメット1の所望の形状に適合するように)熱成形及びトリミングされる。
【0231】
さらに、それぞれの反応層/膜20を提供するために、基材フィルム21(例えばPVC製)は、図5及び6に示すとおり、第2の層30の形状に応じた細長い一片にキスカットされる。
【0232】
特に、図5に示すとおり、基材フィルム21を提供することは、最上層70及び裏打ち部71を備える積層体7を(例えば、工具3を用いて)キスカットすることを含み、基材フィルム21は、最上層70からキスカットされ、その結果、基材フィルム21は、裏打ち部71及び周囲部分72(いわゆるネガティブウェブ(negative web))上に配置される。このネガティブウェブ72は除去され、基材フィルム21は、基材フィルム21に繰り返しパターンで適用される小さな約2mmの接着剤22の点(ドット)によりインデックス付けされる。ボール2は接着剤22の各点に配置される。接着剤は硬化し、ボール2と基材フィルム21を接着する。
【0233】
製造された膜20は、第2の層30の外面30aにステッカー(decal)のように貼られ、それを表面30aの細部及びエッジ部に対してインデックス付けする。
【0234】
その後、第1の層10と第2の層30との両方をインモールド成型機のモールドのキャビティ内に配置する。ヘルメットはEPSの埋め戻しによって形成され、エネルギー吸収層40が得られる。温度、圧力、及び特に(熱伝導を良くするための)水分の組み合わせにより、ボール接着インク14をボール2に接着させ、第1の層10を第2の層30及び膜サブアセンブリ20に接続させ、さらに第2の層30の内側30bのEPS接着インク33を第2の層30をエネルギー吸収層40に接着させる。
【0235】
冷却後、完全に成形されたヘルメット本体はインモールド成型機から取り出され、付属品が付加され、包装される。
【0236】
あるいは、点状の接着剤22を適用する代わりに、前記接着剤22の層を基材フィルム21上に適用することもできる。次に、接着剤22が固まる前にネガティブウェブ72が除去され、ボール2が前記接着剤22の層上に所望のパターンで配置される。その後、ボール2を基材フィルム21に接着させるように、接着剤を硬化させるか、又は硬化を可能にさせる。
【0237】
図17は、衝撃時に発生する人の頭部及び/又は頸部にかかる回転力の問題を示している。一般に、物体に対するヘルメットB100の衝撃、特に自転車事故における道路又は他の種類の地形に対するヘルメットB100の衝撃は、物体の特定の衝撃位置から垂直に向かう衝撃力の法線成分Fを引き起こす。図17に示す例では、物体は、ヘルメットB100が鉛直下方に衝突する斜めの平面で表され、その結果、斜めの衝撃が生じる。ここで示されるとおり、法線力は、一般に、ヘルメットB100を装着している人の頭部の質量中心と一致しない。法線成分と、ヘルメットB100とヘルメットB100を装着している人の頭部とのアセンブリの質量中心B90との間のゼロでない変位は、それによる第1のレバーアームベクトルLを表し、法線成分と第1のレバーアームとの積は、頭部とヘルメットB100のゼロでない負のトルクB2を引き起こす。他の力が存在しない場合、負の回転方向による頭部の負の回転が引き起こされるであろう。
【0238】
物体とヘルメットB100の外層との間の摩擦及び転がり抵抗などのその他の抵抗力により、ヘルメットB100の外面には、図17に示すような接線方向の摩擦力Fがかかる。質量中心B90と接線摩擦力との間の変位は、頭部及びヘルメットB100に対する正のトルクB1に対応する第2のレバーアームベクトルと接線摩擦力との積を有する第2のレバーアームベクトルLを表す。正のトルクB1は、法線成分と第1のレバーアームベクトルによって引き起こされる負のトルクB2とは反対の方向に方向付けられる。
【0239】
負の回転をもたらすのに必要とされるヘルメットB100の外面と使用者の頭部との間の十分に低い摩擦の次に、衝撃時に頭部とヘルメットB100との負の回転を観察するために必要とされる第2の要件が存在する:鉛直下向きの衝撃(図17に示すもの)の場合、質量中心B90は衝撃力の法線成分よりも上にある必要があることであり、そうでなければ、質量中心B90が衝撃力の法線成分よりも下にあると正のトルクにさらに寄与する結果となり、正の回転を強化するためである。鉛直上向きの衝撃(ヘルメットを装着している人が橋などの障害物に衝突したときに起こりうるもの)ではその逆が当てはまり、質量中心B90が衝撃力の法線成分より下にある必要がある(図17では図示せず)。しかしながら、この第2の要件は、質量中心B90をヘルメットから離れて身体に向かって移動させる、ヘルメットを装着している人の体の重さのために一般に満たされる。
【0240】
理想的には、正と負のトルクB1、B2が相殺され、図18aのシナリオに描かれているように、頭部と頸部にゼロ回転が発生し、頭部全体とヘルメットB100が全体として斜面の下方にスライドする。
【0241】
正及び負のトルクB1、B2の大きさに応じて、衝撃時、頭部とヘルメットB100とは、正(摩擦力による正のトルクB1の方向に沿う。図18cに示すシナリオ)、又は負(法線成分による負のトルクB2の方向に沿う。摩擦力の方向とは逆。図18bに示すシナリオ)のいずれかに回転する。
【0242】
どちらの場合も、衝撃時の頭部の正味の回転が、人の脳と頸部とに深刻な損傷を与えることが知られている。
【0243】
ここで図19aを参照すると、本発明によるヘルメットB100は、内層B11、少なくとも1つの外側保護層B12、及び運動抑制層B13を備え、少なくとも1つの外側保護層B12への衝撃時に、少なくとも1つの外側保護層B12は、内層B11に対して移動するように構成され、運動抑制層B13は、衝撃の際に生じるヘルメットB100の負の回転を低減するように構成されている。
【0244】
好ましくは、前記内層B11は、エネルギー吸収層を形成するように、エネルギー吸収要素及び/又はエネルギー吸収材料を備え得る。
【0245】
上述のとおり、ヘルメットB100の負の回転の状況では、様々な層間の十分に低い摩擦、特に少なくとも1つの外側保護層B12から内層B11への十分に低い摩擦伝達が必要である。この目的のため、ヘルメットB100は、少なくとも1つの外側保護層B12と内層B11との間の摩擦を低減するように構成される中間層B14をさらに備えることができる。例えば、図19aに示すとおり、中間層B14は、衝撃時に少なくとも1つの外側保護層B12と内層B11との間の運動を促進することによって実質的により低い摩擦及び/又は転がり抵抗に寄与する転動可能要素B20を備えてもよい。
【0246】
前記転動可能要素B20は、例えばロール、ビーズ等であってよく、特に0.1mm~4mm、特に1mm~2mmの円直径を有するものであってよく、ここで円直径は転動可能要素B20の円形断面を指す。
【0247】
本発明によれば、前記抑制層は、衝撃時に生じるヘルメットB100の負の回転を低減するように構成されている。この目的のために、前記抑制層は、特に図19aに示す転動可能要素B20と組み合わせて、次いで少なくとも1つの外側保護層B12と内層B11との間の摩擦を増加させる抑制要素を備えることができる。少なくとも1つの外側保護層B12と内層B11との間の結果として生じる正味の摩擦は、好ましくは、衝撃時のヘルメットB100の回転、特に負の回転が減少するように選択される。
【0248】
本発明の一実施形態によれば、以下のもののうち少なくとも1つは、複数の積層された副層を備えてもよい:内層B11、少なくとも1つの外側保護層B12、運動抑制層B13、中間層B14。前述の層はまた、あるいは又はさらに、それぞれの層に沿って延びるそれぞれの平面内に本質的に配置される、複数の互いに接続されるシェルセグメントを備え得る。
【0249】
図19aに示される実施形態に示されるとおり、運動抑制層13又は運動抑制要素B70は、少なくとも1つの外側保護層B12と内層B11との間に配置される中間層B14内に少なくとも部分的に配置され得、これは、衝撃時のヘルメットB100の回転、特に負の回転を最小限に抑えるために、摩擦低減中間層B14と摩擦増加運動抑制層B13との相互作用を微調整することに有利に寄与する。
【0250】
さらに図19aを参照すると、運動抑制層B13は、内層B11及び少なくとも1つの外側保護層B12とともに、少なくとも1つの容積部B50に回転可能な要素B20の少なくとも一部を閉じ込めるように、少なくとも1つの容積部B50を区切ることができる。この実施形態では、特に、転動可能要素B20の異なる数及び/又は異なる幾何学的形状を有する複数の容積部B50もまた、様々な層の間、特に衝撃時の内層B11と少なくとも1つの外側保護層との間、の結果として生じる正味の摩擦を微調整するために使用することができる。
【0251】
本発明の第6の態様の別の実施形態では、回転可能要素B20、内層B11、中間層B14、少なくとも1つの外側保護層B12、及び運動抑制層B13は、より低い又はより大きな弾性を備え、ここで回転可能要素B20の弾性は、内層B11、中間層B14、少なくとも1つの外側保護層B12、運動抑制層B13のうちの少なくとも1つの弾性よりも低いか、又は高い。様々な弾性を微調整することにより、衝撃時のヘルメットB100の回転、特に負の回転を制御するように、内層B11と少なくとも1つの外側保護層B12との間の所望の正味の摩擦を実現することができる。
【0252】
例えば、より低い弾性率は3GPa未満のヤング率に相当し得る。
【0253】
例えば、中間層B14と、少なくとも1つの外側保護層B12及び/又は内層B11との間の転がり抵抗係数は、0.2未満であってもよい。
【0254】
例えば、中間層B14又は運動抑制層B13と、少なくとも1つの外側保護層B12又は内層B11との間の摩擦係数は、0.8未満であってもよい。
【0255】
図19bは、様々な運動抑制要素B70を示す。例えば、この運動抑制要素B70には、円柱、円錐、角錐、立方体、切頭円錐を含み得る。
【0256】
この運動抑制要素B70は、好ましくは、内層B11と少なくとも1つの外側保護層B12との間の相対運動を抑制するように構成されている。運動抑制要素B70は、衝撃時のヘルメットB100の最小の正味の回転、特に最小の負の回転を実現するように、中間層B14と組み合わせて、特に転動可能要素B20を備える中間層B14と組み合わせて、有利に使用することができる。運動抑制層B13の特定の形状の選択は、それによって、中間層B14と、少なくとも1つの外層若しくは内層B11との間の摩擦又は転がり抵抗の量を制御する手段を意味する。
【0257】
図20は、本発明の第6の態様の別の実施形態を示し、運動抑制層B13は、少なくとも1つの外側保護層B12と一体的に形成されている。この目的のため、一体的に接続される2つの層は、少なくとも1つの外側保護層B12で示されるヘルメットB100の外側シェルを形成することができ、一方で、外側シェルと内層B11との間に配置される中間層B14の運動を抑制する運動抑制要素B70をさらに備える。図20に示すとおり、中間層B14は好ましくは転動可能要素B20を備える。運動抑制層B13を内層B11及び/又は少なくとも1つの外側保護層B12と一体的に形成することは、ヘルメットB100の製造コスト及び製造時間の削減に有利に貢献する。
【0258】
しかしながら、この実施形態は、運動抑制層B13と少なくとも1つの外側保護層B12とのみの一体的な接続に限定されず、少なくとも1つの外側保護層B12、運動抑制層B13、中間層B14、内層B11のうちの少なくとも2つの間の一体的な接続の任意の形態を指す。
【0259】
図21は、本発明の第6の態様の別の実施形態を示しており、ここで運動抑制層B13が粘性の流体又はゲルB60を備える。粘性の流体又はゲルB60は、好ましくは、上記の様々な層にせん断応力、特に内層B11と少なくとも1つの外側保護層B12との間のせん断応力、を導入するように構成され得る。図21に示すとおり、粘性の流体又はゲルB60は、好ましくは、転動可能要素B20と組み合わせて使用することができ、粘性の流体又はゲルB60は、追加的なせん断応力を生じる粘性と、摩擦を減少させる中間層B14との相互作用により、衝撃時にヘルメットB100の正味の回転が最小になるように、特に負の回転が最小になるように選択することができる。好ましくは、粘性の流体又はゲルB60は、粘性の流体又はゲルB60を保持するように、少なくとも内層B11及び外側保護層B12によって囲まれる漏れのない容積部に配置され得る。
【0260】
例えば、粘性の流体又はゲルB60は、0.001Pa s~10Pa sの範囲内の粘度を備えることができる。
【0261】
本発明の第6の態様の別の実施形態によれば、運動抑制層B13は、非ニュートン流体又はゲルB61を備えることができる。このように、流体又はゲルB60、B61の粘度は、せん断応力に依存する可能性があり、これは、衝撃時にヘルメットB100の最小の正味の回転、特に最小の負の回転、を達成するように、追加のせん断応力を生じる流体又はゲルB60、B61と、摩擦を減少させる中間層B14との相互作用を微調整するための別のパラメータとして有利に使用され得る。
【0262】
図22は、本発明の第6の態様の別の実施形態を示し、運動抑制層B13は、可撓性層B15、特に布地又はウェビング、を備える。中間層B14、特に転動可能要素B20は、例えば可撓性層B15に埋め込むことができる。衝撃時に、可撓性層B15内で生じた結果として得られる圧縮力又はせん断力は、ヘルメットB100の内層B11と少なくとも1つの外層保護層B12との間の相対運動、及び特に負の回転を打ち消すために使用され得る。このようにして、転動可能要素B20によって提供される低摩擦又は転がり抵抗は、内層B11と少なくとも1つの外側保護層B12との間の結果として得られる正味の摩擦を微調整するように、可撓性層B15によって部分的に補償することができる。
【0263】
しかしながら、この実施形態は、運動抑制層B13と中間層B14との間にのみに配置される可撓性層B15に限定されず、以下の層:少なくとも1つの外側保護層B12、運動抑制層B13、中間層B14、内層B11、のうちの少なくとも2つのいずれかの間に配置される可撓性層を指す。
【0264】
図23は、本発明の第6の態様の別の実施形態を示し、運動抑制は、少なくとも1つの外側保護層B12と内層B11との間に配置されるコネクタB80を備える。
【0265】
好ましくは、前記1つ又は複数のコネクタB80は、ヘルメットB100の負の回転を打ち消すように、衝撃時に同時に及び/又は順次的に、変形及び/又は破断するように構成され得る。
【0266】
コネクタB80は、好ましくは、中間層B14、特に転動可能要素B20を備える中間層B14、と組み合わせて使用され得、ここで摩擦を導入するコネクタB80及び摩擦を低減する中間層B14の選択は、衝撃時のヘルメットB100の最小の正味の回転、特に最小の負の回転、を実現するように適合され得る。
【0267】
この目的のため、複数のコネクタB80を形成する個々のコネクタB80は、個々の破断力を備えることができ、個々の破断力は、少なくとも2つの値をとる。このように、衝撃時のヘルメットB100の最小の正味の回転、特に最小の負の回転を実現するために、運動抑制層B13内で、適合された変形特性又は破断特性を有する複数の個々のコネクタB80を使用することができる。
【0268】
例えば、コネクタB80は、接着剤、熱可塑性プラスチック、エラストマー、セラミック、又は金属を備え得るか、又はそれであり得る。
【0269】
しかしながら、この実施形態は、少なくとも1つの外側保護層B12と内層B11との間にのみ配置されるコネクタB80に限定されず、以下の層:少なくとも1つの外側保護層B12、運動抑制層B13、中間層B14、内層B11、のうちの少なくとも2つのいずれの間に配置されるコネクタB80を指す。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18a
図18b
図18c
図19a
図19b
図20
図21
図22
図23
【国際調査報告】