(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】繊維製品の極細繊維放出の低減のための皮膜形成性オルガノポリシロキサンの使用
(51)【国際特許分類】
C11D 3/37 20060101AFI20240628BHJP
C11D 1/38 20060101ALI20240628BHJP
C11D 1/62 20060101ALI20240628BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20240628BHJP
D06M 13/184 20060101ALI20240628BHJP
D06M 13/292 20060101ALI20240628BHJP
D06M 13/262 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C11D3/37
C11D1/38
C11D1/62
D06M15/643
D06M13/184
D06M13/292
D06M13/262
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501793
(86)(22)【出願日】2021-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2021069424
(87)【国際公開番号】W WO2023284944
(87)【国際公開日】2023-01-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ、ブレーム
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル、ホルバート
【テーマコード(参考)】
4H003
4L033
【Fターム(参考)】
4H003AE05
4H003AE08
4H003DA01
4H003DC02
4H003EB06
4H003EB07
4H003EB37
4H003ED02
4H003ED29
4H003FA15
4L033AB04
4L033AC15
4L033BA17
4L033BA29
4L033BA39
4L033CA59
(57)【要約】
【課題】繊維製品の極細繊維の放出を低減する方法の提供
【解決手段】繊維製品が、(A)少なくとも0.1質量部及び多くとも10.0質量部の皮膜形成性オルガノポリシロキサン、(B)少なくとも1質量部及び多くとも20質量部のカチオン性界面活性剤、及び(C)少なくとも30質量部及び多くとも99質量部の水を含む組成物(Z)で洗濯工程前に前処理される、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製品の洗濯工程中の極細繊維の放出を低減する方法であって、
前記繊維製品が、
(A)少なくとも0.1質量部及び多くとも10.0質量部の皮膜形成性オルガノポリシロキサン、
(B)少なくとも1質量部及び多くとも20質量部のカチオン性界面活性剤、及び
(C)少なくとも30質量部及び多くとも99質量部の水
を含む組成物(Z)で洗濯工程前に前処理される、方法。
【請求項2】
前記皮膜形成性オルガノポリシロキサン(A)が水性エマルションの形態で使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物(Z)が、皮膜形成性オルガノポリシロキサン(A)の水中油型エマルションを含み、前記皮膜形成性オルガノポリシロキサン(A)が、
(i)100質量部のアミノアルキル基含有ポリオルガノシロキサン(P)であって、20℃で液体であり、一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)及び(IIb)の単位から選択される単位を少なくとも80mol%含むアミノアルキル基含有ポリオルガノシロキサン(P)
R
1
2SiO
(2/2) (Ia),
R
1
aR
2SiO
(3-a)/2 (Ib),
R
3
3SiO
(1/2) (IIa),
R
3
2R
4SiO
(1/2) (IIb),
[式中、
aは0又は1であり、
R
1は1~40個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、
R
2は一般式(III)のアミノアルキル基であり、
-R
5-NR
6R
7 (III),
{式中、
R
5は1~40個の炭素原子を有する二価の炭化水素基であり、
R
6は1~40個の炭素原子を有する一価の炭化水素基、水素、又はアルカノイル基であり、
R
7は一般式(IV)の基であり、
-(R
8-NR
6)
xR
6 (IV),
(式中、
xは0~40の整数であり、
R
8は一般式(V)の二価の基であり、
-(CR
9R
9-)
y (V),
式中、
yは1~6の整数であり、
R
9は水素又は1~40個の炭素原子を有する炭化水素基であり、)}
R
3は1~40個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、
R
4は-OR又は-OH基であり、
Rは1~40個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、
ただし、前記ポリオルガノシロキサン(P)において、一般式(IIa)及び(IIb)の単位の合計に対する一般式(Ia)及び(Ib)の単位の平均比が0.5~500であり、ポリオルガノシロキサン(P)が少なくとも0.1mequiv/gの平均アミン価を有する。]、
(ii)前記ポリオルガノシロキサン(P)100質量部を基準として1~80質量部のケイ素化合物(D)であって、
一般式(VI)のテトラアルコキシシリケートであるシリケート化合物(D1)、
R
10O
4Si (VI),
一般式(VII)及び(VIII)の単位を少なくとも80mol%含み、一般式(VII)の単位を少なくとも2つ含む、ポリシリケート化合物(D2)
R
10O
3Si
1/2 (VII),
R
10O
2Si
2/2 (VIII),
(式中、
R
10は1~18個の炭素原子を有する非置換炭化水素基である。)、
一般式(IX)及び(X)の単位を少なくとも80mol%含むMQシリコーン樹脂(D3)
R
11
3SiO
1/2 (IX),
SiO
4/2 (X),
(式中、
R
11は、R
1又はR
4について与えられた意味を有し、
一般式(IX)及び(X)の単位の比率は、0.5~2.0であり、前記基R
11の多くとも10質量%が-OR及び-OH基である。)、並びに
(D1)、(D2)及び(D3)の任意の所望の割合の混合物
から選択されるケイ素化合物(D)
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記基R
1及びR
3がメチル基である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記基Rがメチル基である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリシリケート化合物(D2)が、一般式(VII)及び(VIII)の単位を少なくとも90mol%含み、及びその残りの単位が一般式(XI)及び(XII)
R
10OSiO
3/2 (XI),
SiO
4/2 (XII),
(式中、R
10は請求項10で与えられた意味を有する)
の単位である、請求項3、4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記MQシリコーン樹脂(D3)が25℃で1000mPa・sより大きい粘度(25℃、せん断速度10(1/s)で測定)を有するか又は固体である、請求項3、4又は5に記載の方法。
【請求項8】
前記カチオン性界面活性剤(B)が
(B1)第4級アルキル-、アルケニル-、ヒドロキシアルキル-及びアルキルベンゼンアンモニウム塩、
(B2)アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリニウム塩、及びアルキルオキサゾリニウム塩、及び
(B3)エステル/アミド含有第4級アンモニウム塩
の群より選ばれる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記皮膜形成性オルガノポリシロキサン(A)の水中油型エマルションが、モノアルコール又はポリアルコール、非プロトン性エーテル、又は炭素原子数7までのアルキル基を有するモノ-、ジ-若しくはトリアルコキシアルキルエーテルから選択される有機溶媒又は溶媒混合物(L)を含む、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膜形成性オルガノポリシロキサンによる前処理により、繊維製品の洗濯工程における極細繊維の放出を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの処方物は、特定の利益を得るために「消費者製品」に使用される。例えば、特定の柔らかさ、触感の改善、しわの減少などである。
【0003】
典型的には、この種の処方物は、一般に少なくとも2つの長鎖アルキル又はアルケニル鎖を有する水不溶性の第4級アンモニウム化合物からなる。より優れた生分解性のため、カルボキシル基などの官能基で中断された長鎖アルキル基又はアルケニル基を有する第4級アンモニウム化合物に対する関心が高まっている。この種の化合物は古くから知られており、例えばUS3915867に記載されている。
【0004】
また、カチオン性乳化剤と官能基化ポリジオルガノシロキサン、例えばアミノ官能基化ポリジオルガノシロキサン、4級官能基化ポリジオルガノシロキサン又はヒドロキシプロピルアミノ官能基化ポリジオルガノシロキサンとの組み合わせからなる処方物も知られている。この種の処方物は、例えばWO2011/123727A2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US3915867号公報
【特許文献2】WO2011/123727A2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マイクロプラスチックの環境中への放出は、最も緊急な環境問題のひとつである。マイクロプラスチックのかなりの部分は、例えばポリエステル生地の極細繊維で構成されており、日常的な着用時、特に洗濯時に放出される。
【0007】
記載された問題と可能な解決策については、特に、N.J. Lant et al. in PLoS ONE 15(6): e0233332.https:// doi.org/10.1371/journal.pone.0233332 (June 5, 2020)によってまとめられている。この論文は、柔軟剤が極細繊維の放出に直接的な影響を与えないことを示している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、繊維製品の洗濯工程中の極細繊維の放出を低減する方法であって、
前記繊維製品が
(A)少なくとも0.1質量部及び多くとも10.0質量部の皮膜形成性オルガノポリシロキサン、
(B)少なくとも1質量部及び多くとも20質量部のカチオン性界面活性剤、及び
(C)少なくとも30質量部及び多くとも99質量部の水
を含む組成物(Z)で洗濯工程前に前処理される、方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
驚くべきことに、皮膜形成性オルガノポリシロキサンとカチオン性界面活性剤を含む前記組成物(Z)は、洗濯工程における極細繊維の放出に対して有益な、すなわち低減効果を有することが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(組成物(Z))
少なくとも0.25質量部、より好ましくは少なくとも0.4質量部、好ましくは多くとも5質量部、より好ましくは多くとも3質量部の皮膜形成性オルガノポリシロキサン(A)を含む組成物を使用することが好ましい。
【0011】
前記組成物は、好ましくは少なくとも1.5質量部、より好ましくは少なくとも2.5質量部、そして好ましくは多くとも15質量部、より好ましくは多くとも10質量部のカチオン性界面活性剤(B)を含む。
【0012】
前記組成物は、好ましくは少なくとも45質量部、より好ましくは少なくとも60質量部、そして好ましくは多くとも97質量部、より好ましくは多くとも95質量部の水(C)を含む。
【0013】
(皮膜形成性オルガノポリシロキサン(A))
前記皮膜形成性オルガノポリシロキサン(A)は、好ましくは水性エマルションの形態で使用される。
【0014】
前記組成物(Z)は、好ましくは、皮膜形成性オルガノポリシロキサン(A)の水中油型エマルションを含み、前記オルガノポリシロキサン(A)は、
(i)100質量部のアミノアルキル基含有ポリオルガノシロキサン(P)であって、20℃で液体であり、一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)及び(IIb)の単位から選択される単位を少なくとも80mol%含むアミノアルキル基含有ポリオルガノシロキサン(P)
R1
2SiO(2/2) (Ia),
R1
aR2SiO(3-a)/2 (Ib),
R3
3SiO(1/2) (IIa),
R3
2R4SiO(1/2) (IIb),
[式中、
aは0又は1であり、
R1は1~40個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、
R2は一般式(III)のアミノアルキル基であり、
-R5-NR6R7 (III),
{式中、
R5は1~40個の炭素原子を有する二価の炭化水素基であり、
R6は1~40個の炭素原子を有する一価の炭化水素基、水素、又はアルカノイル基であり、
R7は一般式(IV)の基であり、
-(R8-NR6)xR6 (IV),
(式中、
xは0~40の整数であり、
R8は一般式(V)の二価の基であり、
-(CR9R9-)y (V),
式中、
yは1~6の整数であり、
R9は水素又は1~40個の炭素原子を有する炭化水素基であり、)}
R3は1~40個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、
R4は-OR又は-OH基であり、
Rは1~40個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、
ただし、前記ポリオルガノシロキサン(P)において、一般式(IIa)及び(IIb)の単位の合計に対する一般式(Ia)及び(Ib)の単位の平均比が0.5~500であり、ポリオルガノシロキサン(P)が少なくとも0.1mequiv/gの平均アミン価を有する。]、
(ii)前記ポリオルガノシロキサン(P)100質量部を基準として1~80質量部のケイ素化合物(D)であって、
一般式(VI)のテトラアルコキシシリケートであるシリケート化合物(D1)、
R10O4Si (VI),
一般式(VII)及び(VIII)の単位を少なくとも80mol%含み、一般式(VII)の単位を少なくとも2つ含む、ポリシリケート化合物(D2)
R10O3Si1/2 (VII),
R10O2Si2/2 (VIII),
(式中、
R10は1~18個の炭素原子を有する非置換炭化水素基である。)、
一般式(IX)及び(X)の単位を少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも95mol%含むMQシリコーン樹脂(D3)
R11
3SiO1/2 (IX),
SiO4/2 (X),
(式中、
R11は、R1又はR4について与えられた意味を有し、
一般式(IX)及び(X)の単位の比率は、0.5~2.0、好ましくは0.5~1.5、特に好ましくは0.6~1.0の範囲であり、前記基R11の多くとも10質量%、好ましくは多くとも3質量%、より好ましくは多くとも2.5質量%が-OR及び-OH基である。)、並びに
(D1)、(D2)及び(D3)の任意の所望の割合の混合物
から選択されるケイ素化合物(D)
を含む。
【0015】
本方法で好ましく使用されるのは、皮膜形成性オルガノポリシロキサン(A)の水中油型エマルションであり、このエマルションはさらに
(iii)プロトン化剤(S),
(iv)水(W),
(v)多くとも5質量部の乳化剤(E),及び
(vi)少なくとも5質量部の有機溶媒又は溶媒混合物(L)
を含んでいてもよい。
【0016】
(カチオン性界面活性剤(B))
前記組成物(Z)は、好ましくは、
(B1)第4級アルキル-、アルケニル-、ヒドロキシアルキル-及びアルキルベンゼンアンモニウム塩、特にアルキル基が6~24個の炭素原子を有するもの、特にハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩及び酢酸塩、
(B2)アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリニウム塩及びアルキルオキサゾリニウム塩、特にアルキル鎖の炭素原子数が18までのもの、特にハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩及び酢酸塩、
(B3)エステル/アミド含有第4級アンモニウム塩、特にアルキルエステル基、アルケニルエステル基、アルキルアミド基又はアルケニルアミド基を有し、そのアルキル基が6~24個の炭素原子を有するもの、特にハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩及び酢酸塩。
の群から選択されるカチオン性界面活性剤(B)を含む。
【0017】
エステル/アミド含有第4級アンモニウム界面活性剤(B3)が好ましい。
【0018】
前記組成物(Z)に使用される前記カチオン性界面活性剤は、一種類の界面活性剤であってもよいが、複数種類の界面活性剤であってもよい。
【0019】
界面活性剤(B1)の例としては
(a)モノアルキル-第4級アンモニウム塩、例えば
- ベヘニルトリメチルアンモニウム塩
- ステアリルトリメチルアンモニウム塩
- セチルトリメチルアンモニウム塩、及び
- 水素化トール油アルキルトリメチルアンモニウム塩
並びに
(b)ジアルキル-第4級アンモニウム塩、例えば
- ジアルキル(C14-C18)ジメチルアンモニウムクロリド
- ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド
- ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、及び
- ジセチルジメチルアンモニウムクロリド
- ジオレイルジメチルアンモニウムクロリド(Witco CorporationからAdogen(R) 472の商品名で入手可能)
である。
【0020】
式(B2)の界面活性剤の一例は
- 1-メチル-1-ステアロイルアミドエチル-2-ステアロイルイミダゾリニウムメチルサルフェート(Witco CorporationからVarisoft(R)の商品名で入手可能)
である。
【0021】
界面活性剤(B3)の例としては
- N,N-ビス(ステアロイルオキシエチル)-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド、
- N,N-ビス(タロイルオキシエチル)-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド、
- N,N-ビス(ステアロイルオキシエチル)-N-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルアンモニウムメチルサルフェート、
- N,N-ビス[エチル(タロエート)]-N-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルアンモニウムメチルサルフェート、
- ジ脂肪酸アミドアミン系製品、たとえば
[アルキル/アルケニル-C(O)-NH-CH2CH2-N(CH3)(CH2CH2OH)-CH2CH2-NH-C(O)-アルキル/アルケニル]+CH3SO4
-
(例えば、Witco CorporationからVarisoft(R) 222 LTの商品名で入手可能な製品)
である。
【0022】
好ましい前記組成物(Z)を使用することにより、繊維製品、特にポリエステルを含有する繊維製品の場合、極細繊維の放出を著しく低減することが可能になる。同時に、好ましい前記組成物(Z)の使用は、処理された繊維製品の防汚性の向上だけでなく、柔らかさの著しい改善を達成する。
【0023】
前記アルキル基R、R1及びR3は、直鎖状、環状、分岐状、飽和又は不飽和であってよい。好ましくは、前記アルキル基R、R1及びR3は、独立して、1~18個の炭素原子、特に1~6個の炭素原子を有し、特に好ましくは、メチル基又はエチル基である。特に好ましい基R、R1及びR3は、メチル基である。
【0024】
前記二価の炭化水素基R5は、直鎖状、環状、分岐状、芳香族、飽和又は不飽和であってよい。前記基R5は、好ましくは1~6個の炭素原子を有し、特に好ましくはアルキレン基、特にプロピレン基である。
【0025】
前記一価の炭化水素基R6は、直鎖状、環状、分岐状、芳香族、飽和又は不飽和であってよい。前記基R6は、好ましくは1~6個の炭素原子を有し、特に好ましくは1~6個の炭素原子を有するアルキル基又はアルカノイル基である。特に好ましい置換基R6は、水素、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基及びアセチル基である。
【0026】
前記一価の炭化水素基R9は、直鎖状、環状、分岐状、芳香族、飽和又は不飽和であってよい。前記基R9は、好ましくは1~6個の炭素原子を有し、特に好ましくは1~6個の炭素原子を有するアルキル基である。特に好ましい置換基R9は、水素、メチル基、エチル基及びシクロヘキシル基である。
【0027】
xは好ましくは0~18、特に好ましくは0~6、特に1~3の値を有する。
【0028】
特に好ましい基R2は、-CH2N(R6)2,-(CH2)3N(R6)2,-(CH2)3N(R6)(CH2)2N(R6)2、特にアミノプロピル基、アミノエチルアミノプロピル基及びシクロヘキシルアミノプロピル基である。
【0029】
前記ポリオルガノシロキサン(P)は、好ましくは、式(Ia)、(Ib)、(IIa)及び(IIb)の少なくとも3単位、特に少なくとも10単位、好ましくは多くとも1000単位、特に多くとも500単位から構成される。
前記ポリオルガノシロキサン(P)は、好ましくは3~1000繰り返し単位、特に10~500繰り返し単位の鎖長を有する。
【0030】
前記ポリオルガノシロキサン(P)の粘度は、好ましくは1~100,000mPa・s、特に10~10,000mPa・sである(25℃、せん断速度10(1/s))。
【0031】
単位(Ib)の数に対する単位(Ia)の数の比は、前記ポリオルガノシロキサン(P)が少なくとも0.1mequiv/gのポリオルガノシロキサン(P)、好ましくは少なくとも0.15mequiv/gのポリオルガノシロキサン(P)のアミン価を有するように選択される。前記ポリオルガノシロキサン(P)のアミン価は、好ましくは多くとも7mequiv/g、特に好ましくは多くとも2mequiv/g、特に多くとも0.6mequiv/gである。
【0032】
前記ポリオルガノシロキサン(P)は、好ましくは、式(IIa)の単位のみを有するか、式(IIb)の単位のみを有するか、又は式(IIa)及び(IIb)の単位の組み合わせのいずれかを有する。
【0033】
前記ポリオルガノシロキサン(P)は、加水分解や平衡化などの既知の化学的方法によって製造される。
【0034】
前記テトラアルコキシシリケート(D1)及び前記ポリシリケート化合物(D2)の前記一価の炭化水素基R10は、直鎖状、環状、分岐状、芳香族、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。前記基R10は、好ましくは1~6個の炭素原子を有し、特に好ましくはアルキル基及びフェニル基である。特に好ましい基R10は、メチル、エチル及びプロピルである。
【0035】
前記ポリシリケート化合物(D2)は、好ましくは、一般式(VII)及び(VIII)の単位を少なくとも90mol%、特に少なくとも95mol%含有する。
【0036】
前記ポリシリケート化合物(D2)の残りの単位は、例えば、一般式(XI)及び(XII)の単位であってもよい。
R10OSiO3/2 (XI),
SiO4/2 (XII),
(式中、R10は上記の意味を持つ。)
【0037】
好ましくは、前記MQシリコーン樹脂(D3)は、25℃において、1000mPa・sより大きい粘度を有するか、又は固体である。これらの樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ポリスチレン標準に基づく)によって測定される重量平均分子量は、好ましくは200~200000g/mol、特に1000~200000g/molである。
【0038】
本発明に従って使用される前記MQシリコーン樹脂(D3)は、好ましくは、温度25℃、圧力101.325kPaでベンゼンに少なくとも100g/lの範囲で可溶である。
【0039】
ポリオルガノシロキサン(P)100質量部を基準として、前記の皮膜形成性オルガノポリシロキサン(P)の水中油型エマルションは、好ましくは3~50質量部、特に好ましくは5~30質量部の前記シリケート化合物(D1)若しくは(D2)又は前記オルガノポリシロキサン樹脂(D3)からなる。
【0040】
(プロトン化剤(S))
前記プロトン化剤(S)は、好ましくは、モノプロトン性又はポリプロトン性の、水溶性又は水不溶性の、有機酸又は無機酸である。
【0041】
適切なプロトン化剤(S)の例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、マロン酸、クエン酸、塩酸、硫酸、リン酸、又はそれらの混合物である。好ましいプロトン化剤は、ギ酸、酢酸、硫酸又は塩酸である。特に好ましくは酢酸である。
前記プロトン化剤は一般に原液のまま、又は水溶液の形態で添加される。
前記プロトン化剤は、好ましくは、前記基R2の塩基性窒素原子1mol当たりプロトン0.05~2molの量で添加される。
前記プロトン化剤は、好ましくは、前記水中油型エマルションが3.5から7.0の範囲のpH、好ましくは3.5から6.0の範囲のpH、特に好ましくは3.5から5.0の範囲のpHに達するような量で添加される。
【0042】
本発明の文脈では、前記pHは好ましくは20℃で米国薬局方USP 33に準拠した電極を用いて測定される。
【0043】
(水(C))
前記水は脱塩水又は含塩水であり、好ましくは脱塩水である。
【0044】
(乳化剤(E))
本方法で好ましく使用される前記皮膜形成性オルガノポリシロキサン(A)の水中油型エマルションは、オルガノポリシロキサン(A)100質量部を基準として、好ましくは多くとも3質量部、特に好ましくは多くとも1質量部、特に多くとも0.1質量部の乳化剤を含む。
使用される乳化剤(E)は、現在までに知られている全てのイオン性乳化剤及び非イオン性乳化剤であってよく、単独でも、種々の乳化剤の混合物としても使用することができ、これらの乳化剤を使用して水性分散体、特にオルガノポリシロキサン(A)の水性エマルションを製造することも現在までに可能である。
【0045】
アニオン性乳化剤の例は以下の通りである:
1. アルキル硫酸塩、特に8~18個の炭素原子の鎖長を有するもの、疎水性基中に8~18個の炭素原子を有し、1~40個のエチレンオキシド(EO)又はプロピレンオキシド(PO)単位を有するアルキル及びアルカリールエーテル硫酸塩。
2. スルホネート、特に8~18個の炭素原子を有するアルキルスルホネート、8~18個の炭素原子を有するアルキルアリールスルホネート、4~15個の炭素原子を有する一価アルコール又はアルキルフェノールとのスルホスクシン酸のタウリド、エステル及びモノエステル;これらのアルコール又はアルキルフェノールは、任意に、1~40個のEO単位でエトキシル化されていてもよい。
3. アルキル、アリール、アルカリール又はアラルキル基中に8~20個の炭素原子を有するカルボン酸のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩。
4. リン酸部分エステル及びそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、特に有機基中に8~20個の炭素原子を有するアルキル及びアルカリールホスフェート、アルキル又はアルカリール基中に8~20個の炭素原子及び1~40個のEO単位を有するアルキルエーテル及びアルカリールエーテルホスフェート。
【0046】
非イオン性乳化剤の例は以下の通りである:
5. 重合度500~3000の、酢酸ビニル単位を5%~50%、好ましくは8%~20%含むポリビニルアルコール。
6. アルキルポリグリコールエーテル、好ましくは5~40個のEO単位と8~20個の炭素原子のアルキル基を有するもの。
7. アルキルアリールポリグリコールエーテル、好ましくは5~40個のEO単位と8~20個の炭素原子のアルキル及びアリール基を有するもの。
8. エチレンオキシド/プロピレンオキシド(EO/PO)ブロックコポリマー、好ましくは8~40個のEO又はPO単位を有するもの。
9. 炭素原子数8~22のアルキル基を有するアルキルアミンと、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドとの付加生成物。
10. 6~24個の炭素原子を有する脂肪酸。
11. 一般式R*-O-ZOのアルキルポリグリコシド(式中、R*は平均8~24個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和アルキル基であり、ZOは平均o=1~10個のヘキソース単位若しくはペントース単位を有するオリゴグリコシド基又はそれらの混合物である)。
12. 天然物質及びその誘導体、例えばレシチン、ラノリン、サポニン、セルロース、セルロースアルキルエーテル、カルボキシアルキルセルロースで、アルキル基がそれぞれ4個までの炭素原子を有するもの。
13. 極性基を含有する直鎖状オルガノ(ポリ)シロキサン、特にO、N、C、S、P、Siの元素を含有するもの、特に24個までの炭素原子を有するアルコキシ基及び/又は40個までのEO基及び/又はPO基を有するもの。
【0047】
カチオン性乳化剤の例は以下の通りである:
14. 8~24個の炭素原子を有する第1級、第2級及び第3級脂肪アミンと酢酸、硫酸、塩酸及びリン酸との塩。
15. 第4級アルキル及びアルキルベンゼンアンモニウム塩、特にアルキル基が6~24個の炭素原子を有するもの、特にハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩及び酢酸塩。
16. アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリニウム塩、アルキルオキサゾリニウム塩、特にアルキル鎖の炭素原子数が18までのもの、特にハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩。
【0048】
特に好適な両性乳化剤は以下の通りである:
17. 長鎖置換を有するアミノ酸、例えばN-アルキルジ(アミノエチル)グリシン又はN-アルキル-2-アミノプロピオン酸塩。
18. ベタイン類、例えばC8-C18アシル基を有するN-(3-アシルアミドプロピル)-N,N-ジメチルアンモニウム塩及びアルキルイミダゾリウムベタイン類。
【0049】
乳化剤として好ましいのは、非イオン性乳化剤、特に上記6.で挙げたアルキルポリグリコールエーテル、及びカチオン性乳化剤、特に上記15.で挙げた第4級アルキル-及びアルキルベンゼンアンモニウム塩である。前記乳化剤は、上記の乳化剤の1種から構成されていても、2種以上の上記の乳化剤の混合物から構成されていてもよく、純粋な形態で、又は1種以上の乳化剤の水若しくは有機溶媒中の溶液として使用することができる。
【0050】
(有機溶媒又は溶媒混合物(L))
本発明による方法において好ましく使用される前記皮膜形成性オルガノポリシロキサン(A)の水中油型エマルションは、モノアルコール又はポリアルコール、非プロトン性エーテル、又は炭素原子数7までのアルキル基を有するモノ-、ジ-若しくはトリ-アルコキシアルキルエーテルから選択される有機溶媒又は溶媒混合物(L)を含む。
【0051】
モノアルコール又はポリアルコールの例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチルグリコール、ヘキシレングリコール、ヘプチレングリコール、オクチレングリコール、グリセロールなどが挙げられる。
【0052】
非プロトン性エーテルの例としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0053】
モノ-、ジ-又はトリアルコキシアルキルエーテルは、エチレングリコールエーテル、プロピレングリコールエーテル又はブチレングリコールエーテルなどのグリコールエーテルである。
エチレングリコールエーテルの例は以下の通りである。
- エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルグリコール、2-メトキシエタノール、CH3-O-CH2CH2-OH),
- エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルグリコール、2-エトキシエタノール、CH3CH2-O-CH2CH2-OH)
- エチレングリコールモノプロピルエーテル(2-プロポキシエタノール、CH3CH2CH2-O-CH2CH2-OH)
- エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(2-イソプロポキシエタノール、(CH3)2CH-O-CH2CH2-OH)
- エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(2-ブトキシエタノール、CH3CH2CH2CH2-O-CH2CH2-OH)
- エチレングリコールモノフェニルエーテル(2-フェノキシエタノール、C6H5-O-CH2CH2-OH)
- エチレングリコールモノヘキシルエーテル(2-ヘキシルオキシエタノール、C6H11-O-CH2CH2-OH)
- エチレングリコールモノベンジルエーテル(2-ベンジルオキシエタノール、C6H5CH2-O-CH2CH2-OH)
- ジエチレングリコールモノメチルエーテル[2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、メチルカルビトール、CH3-O-CH2CH2-O-CH2CH2-OH]
- ジエチレングリコールモノエチルエーテル[2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、カルビトールセロソルブ、CH3CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-OH]
- ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル[2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール、CH3CH2CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-OH]
- トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(ブチルトリグリコール)
- ジエチレングリコールジエチルエーテル(ジエチルカルビトール)
- ジブチレングリコールジブチルエーテル(ジブチルカルビトール)
【0054】
プロピレングリコールエーテルの例は以下の通りである。
- プロピレングリコールモノメチルエーテル(1-メトキシ-2-プロパノール)
- プロピレングリコールモノエチルエーテル(エトキシプロパノール)
- プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(1-ブトキシ-2-プロパノール)
- プロピレングリコールモノヘキシルエーテル(1-ヘキソキシ-2-プロパノール)
- ジプロピレングリコールモノエチルエーテル
- ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル
- ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル
- トリプロピレングリコールモノメチルエーテル
- トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル
- トリプロピレングリコールジメチルエーテル
【0055】
ブチレングリコールエーテルの例は以下の通りである。
- ブチレングリコールモノメチルエーテル(1-メトキシ-2-プロパノール)
- ブチレングリコールモノブチルエーテル(エトキシプロパノール)
【0056】
溶媒又は溶媒混合物(L)の好ましい例は、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチルグリコール、ヘキシレングリコール、ヘプチレングリコール、グリセロール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル又はジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルである。
【0057】
溶媒又は溶媒混合物(L)の特に好ましい例は、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチルグリコール、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル又はジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルである。
【0058】
本方法で好ましく使用される前記皮膜形成性オルガノポリシロキサン(A)の水中油型エマルションは、オルガノポリシロキサン(A)100質量部を基準として、好ましくは10~150質量部、特に好ましくは20~120質量部、40~100質量部の溶媒又は溶媒混合物(L)を含む。
【0059】
[製造方法]
本方法で好ましく使用される水中油型エマルションは、ポリオルガノシロキサン(P)、シリケート化合物(D1)、ポリシリケート化合物(D2)又はMQ樹脂(D3)、プロトン化剤(S)、水(W)、任意に乳化剤(E)、有機溶媒(L)、及び任意にさらなる成分の組み合わせを混合することによって製造される。前記混合は、好ましくは10~80℃、特に好ましくは15~40℃の温度及び好ましくは900~1100hPaの圧力で行われる。しかしながら、前記混合は、より高い圧力又はより低い圧力で実施することもできる。
好ましい手順では、前記ポリオルガノシロキサン(P)と前記シリケート化合物(D1)、ポリシリケート化合物(D2)又はMQ樹脂(D3)とを予備混合する。この予備混合物を、プロトン化剤(S)、水(W)、任意に乳化剤(E)、有機溶媒(L)、及び任意に更なる成分の混合物に取り込み、その後さらに水で希釈して水中油型エマルションを形成する。
前記製造はバッチ式でも連続式でもよい。
【0060】
オルガノポリシロキサンのエマルションを製造する技術は知られている。したがって、強力な混合及び分散は、ローター-ステーター攪拌装置、コロイドミル、高圧ホモジナイザー、マイクロチャネル、メンブレン、ジェットノズルなど、又は超音波を用いて行うことができる。
【0061】
前記水中油型エマルションは、あらゆる比率で水で希釈することができる。前記エマルションは、好ましくは少なくとも10.0質量部、特に少なくとも100.0質量部、好ましくは多くとも5000質量部、特に多くとも1000質量部の量の水を含むことができる。
【0062】
前記の水の含有量に関係なく、前記水中油型エマルションは透明から不透明な液体であり、25℃で、10(1/s)のせん断速度で、好ましくは5~10000mPa・s、特に好ましくは5~1000mPa・s、特に10~500mPa・sの粘度を有する。
【0063】
[用途]
任意の所望の繊維、特に天然繊維、合成繊維、機能性素材の処理と含浸が特に好ましい。
【0064】
前記組成物(Z)は、好ましくは、市販の洗濯機における洗濯工程中に、特に柔軟仕上げ剤コンパートメントに添加することによって使用される。これは、洗濯サイクルで洗濯物を洗浄し、布地柔軟化サイクルで前記組成物(Z)と接触させることを含む。これにより、前記繊維製品は、前記皮膜形成性オルガノポリシロキサン(A)で含浸され、その結果、その後の洗濯工程において、繊維製品、特にポリエステルを含有する繊維製品からの極細繊維の放出が低減される。
【0065】
さらに、前記組成物(Z)は、洗濯工程における極細繊維の放出を低減するように繊維製品、特にポリエステルを含有する繊維製品を含浸させるために使用することができるだけではない。むしろ、前記組成物(Z)は、他の効果、例えば、熱、日光、特に紫外線照射、酸化剤又は酸性環境のような環境影響に対する耐性も達成することができ、その結果、織物を着用する際にも極細繊維の放出が低減される。同時に、前記組成物(Z)の使用は、処理された繊維製品の防汚性の向上と同様に、柔らかさの著しい改善を達成する。
【実施例】
【0066】
以下の例において、部及びパーセントの数値は、特に断らない限り、全て質量基準である。別段の記載がない限り、以下に続く例は、周囲の大気の圧力、すなわち約1000hPaで、室温、すなわち約20℃、又は追加の加熱若しくは冷却なしに室温で反応物の組み合わせで確立される温度で実施される。
【0067】
粘度は、DIN EN ISO 3219:1994及びDIN 53019に準拠したAnton Paar社製レオメーター「MCR 302」で、開角2°のコーンプレートシステム(CP50-2コーン)を使用して測定した。装置はPhysikalisch-Technischen Bundesanstalt(ドイツ国立計量研究所)の標準オイル10000で校正された。測定温度は25.00℃±0.05℃、測定時間は3分である。粘度の数値は、独立して実施された3回の個々の測定の算術平均値である。動的粘度の測定不確かさは1.5%である。せん断速度勾配は粘度の関数として選択され、各粘度数値について個別に与えられている。
【0068】
アミン価は、KOH何mmolが測定対象物質1gに相当するかを示している。アミン価はDIN 16945-Version 1989-03に従って決定される。
【0069】
例:
試験例で使用したアミノアルキル基含有ポリジメチルシロキサン(P-1)は、982mPa・sの粘度(25℃、せん断速度10(1/s))及び0.287mmol/gのアミン価を有する、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン単位及びジメチルシロキサン単位からなる混合ヒドロキシ-/メトキシジメチルシリル末端コポリマーである。
【0070】
試験例で使用したシリケート化合物(D-1)は、一般式(VI)のテトラエトキシシリケートと、一般式(VII)の単位を2個と一般式(VIII)の単位を1~7個有するポリシリケート化合物(ここで、R10はエチル基である)との混合物であり、SiO2含有量が40質量%である。
【0071】
試験例で使用したMQシリコーン樹脂(D-3)は、20℃で固体であり、一般式(IX)及び(X)の単位を0.37~0.63の割合で含み、分子量Mn=2700g/mol(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン標準に基づく重量平均分子量)を有するシリコーン樹脂である。
【0072】
さまざまな処方物の製造:
【0073】
[例1:皮膜形成性オルガノポリシロキサンの水中油型エマルションE1]
13.6gのアミノアルキル基含有ポリジメチルシロキサン(P-1)と3.4gのMQシリコーン樹脂(D-3)の混合物17.0gを、室温で撹拌しながら、脱塩水7.0g、エチレングリコールモノブチルエーテル(BASF社から市販)7.0g、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(BASF社から市販)2.9g、及び0.13gの酢酸(Brenntag社から市販の80%水溶液)に加え、次にさらに脱塩水65.97gを加えて撹拌する。無色透明のエマルジョン(E1)が得られる。
エマルションE1は、皮膜形成性オルガノポリシロキサンA1を17質量%含む。
【0074】
[例2:皮膜形成性オルガノポリシロキサンの水中油型エマルションE2]
7.0gの脱塩水、12.0gのn-ブチルグリコール(Sigma-Aldrich社からEthylene glycol butyl etherの商品名で入手可能)及び0.4gの酢酸(Brenntag社から入手可能な80%水溶液)を室温で最初に充填し、混合する。16.1gのアミノアルキル基含有ポリジメチルシロキサン(P-1)と0.9gのシリケート化合物(D-1)の混合物17.0gと脱塩水63.6gを順次撹拌する。半透明無色のエマルション(E2)が得られる。
エマルションE2は、皮膜形成性オルガノポリシロキサンA2を17質量%含む。
【0075】
[例3:(非発明)直鎖状オルガノポリシロキサンの水中油型エマルションVE3]
7.0gの脱塩水、4.0gのLutensol TO 8の商品名で市販されているオクタエトキシル酸イソトリデシル(BASF社製)、2.0gのLutensol TO 5の商品名で市販されているペンタエトキシル酸イソトリデシル(BASF社製)及び0.4gの酢酸(Brenntag社から入手可能な80%水溶液)を室温で最初に充填し、混合する。34.0gのアミノアルキル基含有ポリジメチルシロキサン(P-1)及び52.6gの脱塩水を順次撹拌する。半透明で白っぽいエマルション(VE3)が得られる。
エマルション(VE3)は皮膜形成性オルガノポリシロキサンを含まない。
【0076】
[例4]
(A) 皮膜形成性オルガノポリシロキサン、
(B) カチオン性界面活性剤、及び
(C) 水
を含む組成物
Z1、
Z2(本発明)、及び組成物
VZ3、
VZ4(非発明)。
【表1】
【0077】
(本発明及び非発明の)処方物は、水を50℃に加熱することにより製造される。あらかじめ50℃で溶融し、激しく撹拌したカチオン性界面活性剤を、この温度で激しく撹拌しながら添加する。攪拌は、均質な混合物になるまで続ける。混合物を30℃に冷却し、水中油型エマルションE1、E2又はVE3及びさらなる成分を添加する。VZ4については、カチオン性界面活性剤とさらなる成分のみが配合される。
【0078】
[例5]
以下の実験のために、50mlの組成物Z1、Z2、VZ3及びVZ4を脱塩水で希釈して、使用濃度の2000mlにする。
【0079】
黒色の、坪量270g/m2の100%ポリエステル織布を使う。
この織布を、洗濯機(Miele Softtronic W 1935)で40℃、メイン洗濯プログラム、洗剤なしで予備洗濯する。その後、直径113mmの円形に打ち抜く。ほつれを防ぐため、端は炎で溶かす。
打ち抜かれたポリエステル織布を、希釈組成物Z1、Z2、VZ3又はVZ4で前処理する。この前処理は、いずれの場合も織布1枚をビーカーに平らに入れ、19mlの希釈組成物Z1、Z2、VZ3、VZ4又はブランク値(BL)としての水だけとともに手で撹拌し、2つのローラーの間で絞り、一晩ライン乾燥させることによって行う。最後に、市販のアイロンを使ってアイロンをかける(約20秒、合成プログラム)。
【0080】
洗濯サイクルをシミュレートするため、実験をLinitester(リニテスター)装置(Hanau社製)で行う。そのために、200mlの洗濯液(アリエール液体洗剤4gを1リットルの水に溶かしたもの)、20個のスチールボール、前処理したポリエステル織布を金属ビーカーに入れ、リニテスター装置内で60℃で90分間処理する。
丸い濾紙(VWR社製、直径55mm、孔径31~50μm)を備えたブフナー漏斗を使って洗浄液をろ過する。織布を100mlの水ですすぎ、すすぎ水を同じフィルターでろ過する。
濾紙を撮影し、濾過された極細繊維の数を電子的に評価する(画像処理ソフトImageJ);濾紙上の極細繊維が占める面積を出力とする。
結果は12回の個別測定の平均である。
【表2】
【0081】
表2から明らかなように、組成物Z1及びZ2を使用すると、ブランク値BL(仕上げなし)又はVZ4(カチオン界面活性剤のみによる仕上げ)と比較して、ポリエステル織布からの極細繊維の放出が低減される。皮膜形成性ポリシロキサンを含まない処方物VZ3を使用した場合、ブランク値BL及び組成物Z1及びZ2を使用した場合と比較して、著しくより多くの極細繊維が放出される。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製品の洗濯工程中の極細繊維の放出を低減する方法であって、
前記繊維製品が、
(A)少なくとも0.1質量部及び多くとも10.0質量部の皮膜形成性オルガノポリシロキサン、
(B)少なくとも1質量部及び多くとも20質量部のカチオン性界面活性剤、及び
(C)少なくとも30質量部及び多くとも99質量部の水
を含む組成物(Z)で洗濯工程前に前処理される、方法。
【請求項2】
前記皮膜形成性オルガノポリシロキサン(A)が水性エマルションの形態で使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物(Z)が、皮膜形成性オルガノポリシロキサン(A)の水中油型エマルションを含み、前記皮膜形成性オルガノポリシロキサン(A)が、
(i)100質量部のアミノアルキル基含有ポリオルガノシロキサン(P)であって、20℃で液体であり、一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)及び(IIb)の単位から選択される単位を少なくとも80mol%含むアミノアルキル基含有ポリオルガノシロキサン(P)
R
1
2SiO
(2/2) (Ia),
R
1
aR
2SiO
(3-a)/2 (Ib),
R
3
3SiO
(1/2) (IIa),
R
3
2R
4SiO
(1/2) (IIb),
[式中、
aは0又は1であり、
R
1は1~40個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、
R
2は一般式(III)のアミノアルキル基であり、
-R
5-NR
6R
7 (III),
{式中、
R
5は1~40個の炭素原子を有する二価の炭化水素基であり、
R
6は1~40個の炭素原子を有する一価の炭化水素基、水素、又はアルカノイル基であり、
R
7は一般式(IV)の基であり、
-(R
8-NR
6)
xR
6 (IV),
(式中、
xは0~40の整数であり、
R
8は一般式(V)の二価の基であり、
-(CR
9R
9-)
y (V),
式中、
yは1~6の整数であり、
R
9は水素又は1~40個の炭素原子を有する炭化水素基であり、)}
R
3は1~40個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、
R
4は-OR又は-OH基であり、
Rは1~40個の炭素原子を有する非置換アルキル基であり、
ただし、前記ポリオルガノシロキサン(P)において、一般式(IIa)及び(IIb)の単位の合計に対する一般式(Ia)及び(Ib)の単位の平均比が0.5~500であり、ポリオルガノシロキサン(P)が少なくとも0.1mequiv/gの平均アミン価を有する。]、
(ii)前記ポリオルガノシロキサン(P)100質量部を基準として1~80質量部のケイ素化合物(D)であって、
一般式(VI)のテトラアルコキシシリケートであるシリケート化合物(D1)、
R
10O
4Si (VI),
一般式(VII)及び(VIII)の単位を少なくとも80mol%含み、一般式(VII)の単位を少なくとも2つ含む、ポリシリケート化合物(D2)
R
10O
3Si
1/2 (VII),
R
10O
2Si
2/2 (VIII),
(式中、
R
10は1~18個の炭素原子を有する非置換炭化水素基である。)、
一般式(IX)及び(X)の単位を少なくとも80mol%含むMQシリコーン樹脂(D3)
R
11
3SiO
1/2 (IX),
SiO
4/2 (X),
(式中、
R
11は、R
1又はR
4について与えられた意味を有し、
一般式(IX)及び(X)の単位の比率は、0.5~2.0であり、前記基R
11の多くとも10質量%が-OR及び-OH基である。)、並びに
(D1)、(D2)及び(D3)の任意の所望の割合の混合物
から選択されるケイ素化合物(D)
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記基R
1及びR
3がメチル基である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記基Rがメチル基である、請求項
3に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリシリケート化合物(D2)が、一般式(VII)及び(VIII)の単位を少なくとも90mol%含み、及びその残りの単位が一般式(XI)及び(XII)
R
10OSiO
3/2 (XI),
SiO
4/2 (XII),
(式中、R
10は請求項
3で与えられた意味を有する)
の単位である、請求項
3に記載の方法。
【請求項7】
前記MQシリコーン樹脂(D3)が25℃で1000mPa・sより大きい粘度(25℃、せん断速度10(1/s)で測定)を有するか又は固体である、請求項
3に記載の方法。
【請求項8】
前記カチオン性界面活性剤(B)が
(B1)第4級アルキル-、アルケニル-、ヒドロキシアルキル-及びアルキルベンゼンアンモニウム塩、
(B2)アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリニウム塩、及びアルキルオキサゾリニウム塩、及び
(B3)エステル/アミド含有第4級アンモニウム塩
の群より選ばれる、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記皮膜形成性オルガノポリシロキサン(A)の水中油型エマルションが、モノアルコール又はポリアルコール、非プロトン性エーテル、又は炭素原子数7までのアルキル基を有するモノ-、ジ-若しくはトリアルコキシアルキルエーテルから選択される有機溶媒又は溶媒混合物(L)を含む、請求項
2に記載の方法。
【国際調査報告】