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特表2024-524673医療システム、及び、医療システムのインプラントと器具との適合性をチェックする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】医療システム、及び、医療システムのインプラントと器具との適合性をチェックする方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/00 20160101AFI20240628BHJP
   A61B 17/128 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61B34/00
A61B17/128
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501826
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2022069881
(87)【国際公開番号】W WO2023285662
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】102021118400.2
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521389815
【氏名又は名称】エースクラップ・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Aesculap AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】プライル,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ショルテン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルマン,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ハップレ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ベガー,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ,ピルミン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD03
4C160DD19
4C160DD29
4C160MM33
4C160NN04
(57)【要約】
少なくとも2つの互いに異なるインプラントと、少なくとも2つの互いに異なる器具とを備える医療システムを改良するために、少なくとも2つの互いに異なる器具の各々は、少なくとも2つの互いに異なるインプラントのうち適合性があり且つ関連するインプラントと協働するように構成され、前記医療システムは、顕微鏡視野を画定する顕微鏡と、顕微鏡視野内に一緒に配置される少なくとも2つの互いに異なる器具のうちの1つと少なくとも2つの互いに異なるインプラントのうちの1つとの適合性を自動的にチェックするための適合性チェック装置と、を備えることが提案される。更に、医療システムのインプラントと器具との適合性をチェックする方法が提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの互いに異なるインプラント(16)と、少なくとも2つ の互いに異なる器具(18)とを備える医療システム(10)であって、
前記少なくとも2つの互いに異なる器具(18)の各々は、前記少なくとも2つの互いに異なるインプラント(16)のうち適合性があり且つ関連するインプラント(16)と協働するように構成され、
前記医療システム(10)は、
顕微鏡視野(14)を画定する顕微鏡(12)と、
顕微鏡視野(14)内に一緒に配置されている前記少なくとも2つの互いに異なる器具(18)のうちの1つと前記少なくとも2つの互いに異なるインプラント(16)のうちの1つとの適合性を自動的にチェックするための適合性チェック装置(36)と、
を備えている、医療システム。
【請求項2】
前記顕微鏡(12)は、光学顕微鏡(12)又はデジタル顕微鏡(12)の形態で構成されている、請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記顕微鏡(12)は、光学顕微鏡イメージセンサ(42)、特に、CCDセンサ又はCMOSセンサで構成されている、請求項2に記載の医療システム。
【請求項4】
前記適合性チェック装置(36)は、光学コード(46)を検出するための光学検出装置(38)を備え、
前記光学検出装置(38)は、検出視野(40)を画定し、前記顕微鏡視野(14)と前記検出視野(40)とが少なくとも部分的に重なる、
請求項1~3のいずれか1つに記載の医療システム。
【請求項5】
前記顕微鏡視野(14)と前記検出視野(40)との重なりは、約50%から100%の範囲、特に約80%から100%の範囲、好ましくは約95%から100%の範囲である、請求項4に記載の医療システム。
【請求項6】
前記光学検出装置(38)は、少なくとも1つの光学イメージセンサ(44)、特にCCDセンサ又はCMOSセンサを備える、請求項4又は5に記載の医療システム。
【請求項7】
顕微鏡イメージセンサ(42)が前記光学イメージセンサ(44)を定義又は形成する、請求項6に記載の医療システム。
【請求項8】
前記少なくとも2つの互いに異なるインプラント(16)及び前記少なくとも2つの互いに異なる器具(18)はそれぞれ、少なくとも1つの光学コード(46)を含み、前記少なくとも2つの互いに異なるインプラントの光学コード(46)は異なり、前記少なくとも2つの互いに異なる器具(18)の光学コード(46)は異なる、請求項1~7のいずれか1つに記載の医療システム。
【請求項9】
互いに適合性があり且つ互いに協力することが意図されている前記インプラント(16)の少なくとも1つの光学コード(46)と前記器具(18)の少なくとも1つの光学コード(46)とが同一である、請求項8に記載の医療システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの光学コード(46)は、バーコード、データマトリックスコード(58)、QRコード、形状コード(60)、又はカラーコード(48)の形態で構成されている、請求項8又は9に記載の医療システム。
【請求項11】
前記適合性チェック装置(36)は、前記顕微鏡視野(14)内の器具(18)及び/又はインプラント(16)を自動的に判定するための画像処理装置(52)を備えている、請求項1~10のいずれか1つに記載の医療システム。
【請求項12】
前記画像処理装置(52)は、検出視野(40)及び/又は前記顕微鏡視野(14)の画像から器具(18)及び/又はインプラント(16)の少なくとも1つのコード(46)を読み出すように構成されている、請求項11に記載の医療システム。
【請求項13】
前記適合性チェック装置(36)は、適合性チェックの結果を表示するための表示装置(54)を備え、
前記表示装置は、前記顕微鏡のディスプレイの形態、又は、外部のディスプレイの形態で、ハイブリッド手術室においては一対のデータゴーグル又は音声出力によって構成されている、請求項1~12のいずれか1つに記載の医療システム。
【請求項14】
前記顕微鏡(12)は、前記顕微鏡視野(14)の画像を表示するための顕微鏡表示装置(30)を備え、
前記顕微鏡表示装置(30)は、前記表示装置(54)を備える、請求項13に記載の医療システム。
【請求項15】
前記少なくとも2つのインプラント(16)は、医療用クリップ(24)の形態で構成され、前記少なくとも2つの器具(18)は、クリップアプリケータ(20)の形態で構成されている、請求項1~14のいずれか1つに記載の医療システム。
【請求項16】
前記少なくとも2つの器具(18)は、前記少なくとも2つのインプラント(16)の1つと係合可能な器具端部(22)を有し、前記少なくとも1つの光学コード(46)は、前記器具端部(22)上又は前記器具端部(22)の領域に配置又は構成されている、請求項8~14のいずれか1つに記載の医療システム。
【請求項17】
少なくとも2つの互いに異なるインプラント(16)と、少なくとも2つの互いに異なる器具(18)とを備える医療システム(10)におけるインプラント(16)と器具(18)との適合性をチェックする方法であって、
前記少なくとも2つの互いに異なる器具(18)の各々は、前記少なくとも2つの互いに異なるインプラント(18)のうち適合性があり且つ関連するインプラント(16)と協働するように構成され、
前記医療システム(10)のインプラント(16)と器具(18)との適合性は、前記インプラント(16)と前記器具(18)とが顕微鏡(12)の顕微鏡視野(14)内に一緒に配置されたときに自動的にチェックされる、方法。
【請求項18】
前記医療システム(10)の前記インプラント(16)及び前記器具(18)は、光学コード(46)を有し、前記顕微鏡視野(14)内に一緒に配置された前記インプラント(16)の光学コード(46)と前記器具(18)の光学コードとの比較によって適合性がチェックされる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記比較の結果は、光学的及び/又は音響的に出力される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項17~19のいずれか1つに記載の方法を実施するための、請求項1~16のいずれか1つに記載のシステムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの互いに異なるインプラントと、少なくとも2つの互いに異なる器具とを備える医療システムに関し、少なくとも2つの互いに異なる器具の各々は、少なくとも2つの互いに異なるインプラントのうち適合性が有り且つ関連するインプラントと協働するように構成されている、医療システムに関する。
【0002】
本発明は、更に、少なくとも2つの互いに異なるインプラントと、少なくとも2つの互いに異なる器具とを備える医療システムにおけるインプラントと器具との適合性を自動的にチェックするための方法に関し、少なくとも2つの互いに異なる器具の各々は、少なくとも2つの互いに異なるインプラントのうち適合性が有り且つ関連するインプラントと協働するように構成されている、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
前述したタイプの医療システムは、特に神経外科で使用される。これらは、動脈瘤クリップの形態をした複数の異なる医療用クリップを備える。特に、医療用クリップは、適用症例に応じて異なる形状に形成され、異なる閉鎖力を有し、異なる材料、例えばチタンやPhynoxで作製されている。医療用クリップは、デリケートであり、確実な埋め込みのためには、例えば一対の鉗子やペンチのような任意の器具を用いた不定形の方法を適用することはできないので、特にクリップに依存し、クリップと協同して異なる器具が利用される。これは、器具とクリップとが協働する際に器具によるクリップの損傷を避けるために、器具とクリップとが相互に適合することが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、医療システムを確実に利用することができるように改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、医療システムが、顕微鏡視野を画定する顕微鏡と、顕微鏡視野内に一緒に配置される少なくとも2つの互いに異なる器具のうちの1つと少なくとも2つの互いに異なるインプラントのうちの1つとの適合性を自動的にチェックするための適合性チェック装置と、を備えるという点で、本発明に係る冒頭で述べたタイプの医療システムによって達成される。
【0006】
既知の医療システムの開発案により、特に、使用者が埋込に使用する器具と埋込用のインプラントとが互いに適合しているか否かを、簡単な方法で確実に確認することが可能になる。このチェックは、システムが自動的に行う。このためには、器具とインプラントとが顕微鏡の視野内に一緒に配置されていればよい。適合性チェック装置は、例えば、それぞれの形状及び/又はサイズ、或いは、インプラント及び/又は器具を特徴付ける識別情報(例えばコード)から、インプラント及び器具を認識することができる。ここで注意すべきことは、顕微鏡を使用してインプラントを埋め込む医療システムにおいて、外科医は、埋め込むべきインプラントと既に係合した状態で手渡された器具を受け取ることが多いということである。外科医は、執刀中に顕微鏡の画像のみを観察し、視線は、手術部位に向けたままであるため、手渡された器具とそこに保持されているインプラントとが適合しているかどうかを、手渡された器具を直接見ながら確認することはできない。提案されたシステムでは、特に、インプラントと器具とを顕微鏡の視野に入れたときに、システムを使って、特に自動化された方法でチェックすることができる。従って、関連するインプラントの最終的な埋込の前に、特に、補助者から外科医に手渡された器具とインプラントとの組み合わせが、本当に協働のためのものであるかどうかを確認することができる。
【0007】
顕微鏡は光学顕微鏡やデジタル顕微鏡の形態で構成されていることが好ましい。顕微鏡がどのようなタイプであるかは、互換性チェックの性能にとって最終的には重要ではない。それは、システムの互換性チェック装置によって自動的に行われる。従って、例えば、既に使用されている医療システムにも簡単に後付けすることができる。
【0008】
顕微鏡は、光学顕微鏡イメージセンサを備えていると有利である。特に、これは、CCDセンサ又はCMOSセンサの形態で構成されてもよい。これらのタイプの顕微鏡イメージセンサは、特にデジタル顕微鏡に使用されるが、デジタルカメラを接続できる光学顕微鏡に使用されてもよい。このようにして、光学顕微鏡を後付けすることができる。このような光学顕微鏡イメージセンサにより、顕微鏡視野のデジタル画像を生成、保存し、更に処理することができる。これは、顕微鏡視野に見えるインプラントや器具の刻印やコードなどのデータを読み取るために使用することもできる。
【0009】
更なる好適な実施形態によれば、適合性チェック装置が、光学コードを検出するための光学検出装置を備え、当該光学検出装置が検出視野を画定し、顕微鏡視野と検出視野とが少なくとも部分的に重なることを提供する。光学検出装置は、特に、検出視野の画像を生成することを可能にする。検出視野と顕微鏡視野とが重なる場合、顕微鏡視野の少なくとも一部を光学検出装置で捕捉することができる。例えば、顕微鏡イメージセンサを備えていない光学顕微鏡、すなわちデジタル画像捕捉装置を備えていない光学顕微鏡が使用される場合、検出視野の画像を光学検出装置で取得することができ、前記提案される構成の結果、顕微鏡視野の少なくとも一部も取得することができる。従って、例えば光学顕微鏡に適合性チェック装置を装備するように、従来の医療システムを改造することが可能である。
【0010】
器具とインプラントとの適合性を確実に確認するためには、顕微鏡視野と検出視野との重なりが約50%から100%の範囲にあると有利である。特に、前記重なりは、約80%から100%の範囲である。好ましくは、前記重なりは、約95%から100%の範囲である。顕微鏡視野と検出視野との重なりが大きいほど、顕微鏡視野内の全ての対象物をより確実に捕捉し、適合性をチェックすることができる。理想的には、顕微鏡視野内にある全ての部品が検出視野内でも確実に認識できるように、前記重なりは、十分に大きいことが望ましい。
【0011】
検出視野の画像を迅速且つ簡単に評価するために、光学検出装置が少なくとも1つの光学イメージセンサを備えていると有利である。光学イメージセンサは、CCDセンサ又はCMOSセンサであってもよい。光学イメージセンサは、例えば、光学顕微鏡に接続されるカメラに設けてもよい。前述したように、光学顕微鏡は、簡単に後付けすることができる。更に、デジタル記録は、容易に評価することができ、例えば、そこにある物体やコードを容易に識別することができる。
【0012】
顕微鏡イメージセンサが光学イメージセンサを定義又は形成する場合、特にコンパクトな医療システムを提供することができる。このようにして、特に、検出視野と顕微鏡視野とが完全に、すなわち100%重なることが達成される。言い換えれば、この場合、適合性チェック装置は、顕微鏡視野と一致する検出視野を生成するために顕微鏡イメージセンサを使用する。
【0013】
少なくとも2つの互いに異なるインプラントと、少なくとも2つの互いに異なる器具とは、それぞれ少なくとも1つの光学コードを有し、少なくとも2つの互いに異なるインプラントの光学コードは異なり、少なくとも2つの互いに異なる器具の光学コードは異なることが好ましい。記載された方法でインプラント及び器具を符号化することにより、使用者は、それらを標的化された方法で区別することができる。これにより、特に、光学コードによって、器具のサイズ又は例えば顎の形状を符号化することができる。例えば、医療用クリップなどのインプラントの場合、そのサイズ、例えば、閉鎖力、材質などを符号化することができる。光学コードによって、例えば光学コードが単純なカラーコードであれば、簡単で冗長な適合性チェックを視覚によって行うこともできる。従って、例えば、外科医を補助する人は、器具及びインプラントのカラーコードを比較することにより、器具とインプラントとが適合しているか否かを直ちに認識することができる。
【0014】
インプラントと器具とが互いに互換性があり、協働することを意図している場合、少なくとも1つの光学コードは同一であることが好ましい。それにより、システムによる自動的な適合性チェックとは別に、使用者は、器具とインプラントとを観察することによって、純粋に光学的に簡単な目視チェックを行うこともできる。また、器具とインプラントとの組み合わせが全く適合性がないか否か、例えば、製造者によって許可されているか否かを直接認識することができる。しかしながら、互いに互換性のある器具とインプラントとが同一のコードを有することは絶対条件ではない。互換性は、特に、異なるコードでも発生し、互換性チェックは、これらのコードの比較によって行われ、その互換性は、対応するテーブルに格納される。
【0015】
少なくとも1つの光学コードが、バーコード、データマトリックスコード、QRコード(登録商標)、形状コード、又はカラーコードの形態で構成されている場合、簡単な方法で、器具及びインプラントを自動的に認識することができる。従って、例えば、検出視野のデジタル取得から、バーコード、データマトリックスコード、QRコード、形状コード、又はカラーコードを容易に認識することができる。形状コードは、特に、インプラント及び/又は器具自体、又は少なくともその一部の形状によって定義することができる。この場合、付加的なコードは絶対に必要なものではない。コードは、インプラント及び器具自体によって定義される。各インプラント及び/又は各器具は、2以上の光学コードを有してもよい。本明細書では、特に、前述のコード形式の組み合わせが含まれてもよい。少なくとも1つの光学コード、特にデータマトリックスコード及び/又は前述の光学コードの他の選択肢は、インプラントの埋込中、特に医療用クリップの適用中に、ナビゲーション用途及び/又は拡張現実用途のマーカーとして使用することもできる。特に、インプラントや関連器具などの非可視構造を表現することができる。特に、医療用クリップ、関連するクリップ適用器具、及びクリップが適用される血管構造を表現することができる。特に、形状認識によって、クリップのクリップレセプタクル(クリップ塗布具の顎部にも指定される)への着座に関して、例えば医療用クリップとクリップ適用器具との協働要素、特に相互に隣接する表面領域を評価することが更に可能である。
【0016】
好ましくは、適合性チェック装置は、顕微鏡視野内の器具及び/又はインプラントを自動的に判定するための画像処理装置を備える。画像処理装置は、特に、検出視野内の器具及び/又はインプラントを自動的に判定するように構成されてもよい。画像処理装置により、特に、顕微鏡視野及び/又は検出視野の記録された画像内の光学コードを簡単な手段で評価することができる。これにより、例えば、外科手術の記録や、使用されたインプラントや器具の追跡調査など、プロセスの最適化が可能になる。
【0017】
画像処理装置は、検出視野及び/又は顕微鏡視野の画像から器具及び/又はインプラントの少なくとも1つのコードを読み出すように構成されることが好ましい。この種の画像処理装置により、特に、器具及びインプラントをそのコードから認識することができ、場合によっては、どの器具及び/又はインプラントが関与しているかをユーザに示すこともできる。また、コードは、記憶されたコードとの比較によって画像から容易に抽出することができる。
【0018】
好ましくは、適合性チェック装置は、適合性チェックの結果を表示するための表示装置を備える。これは、例えば、画像スクリーンを含んでもよい。また、表示装置は、インプラントと器具とが適合するか否かを音響的にユーザに伝達するための音響表示装置の形態で構成されてもよい。表示装置は、顕微鏡のディスプレイの形態で構成されても、顕微鏡とは独立した外部ディスプレイの形態で構成されてもよい。例えば、ハイブリッド手術室において、表示装置は、データゴーグルを備えてもよいし、音声出力を備えてもよい。
【0019】
顕微鏡が顕微鏡視野の画像を表示するための顕微鏡表示装置を備え、当該顕微鏡表示装置が表示装置を備えることが有利である。それにより、医療システムを特にコンパクトに構成することができる。例えば、表示装置は、顕微鏡表示装置のウィンドウ又はサブ領域の形態で構成することができる。それにより、必要に応じて、適合性チェックの結果を、顕微鏡表示装置に表示された顕微鏡画像に重ね合わせることができる。従って、顕微鏡表示装置上で顕微鏡視野の画像(例えば手術部位)を見た外科医は、表示された器具とそれによって保持されたインプラントとが適合しているか否かを直接重ね合わせて受け取ることができる。
【0020】
更に好適な実施形態によれば、少なくとも2つのインプラントが医療用クリップの形態で構成され、少なくとも2つの器具がクリップ適用器具の形態で構成されることが提供される。特に、医療用クリップは、動脈瘤クリップの形態で構成されてもよい。アプリケータとしても知られるクリップ適用器具は、例えば、人又は動物の体内の中空器官上の膨出部を治療するために医療用クリップを適用するため、医療用クリップと協働する。
【0021】
少なくとも2つの器具は、少なくとも2つのインプラントのうちの1つと係合可能な器具端部を備え、少なくとも1つの光学コードは、器具端部上又は器具端部の領域に配置又は構成されていることが好ましい。顕微鏡視野内に配置される器具の器具端部がインプラントと係合する場合、インプラント上のコードも器具上のコードも互いに空間的に近接して配置することができ、それによって容易に捕捉することができる。
【0022】
序文に記載された目的は、インプラントと医療システムの器具とが顕微鏡視野内に一緒に配置されたときに、インプラントと器具との適合性が自動的にチェックされるという点で、本発明に係る序文に記載されたタイプの方法により更に達成される。
【0023】
上記で詳細に説明したように、器具とインプラントとが相互に適合しているか否かは、全ての場合において使用者が一目で認識できるとは限らないので、器具とインプラントとが使用される場合、それによって更なる保証が達成される。従って、この種の方法は、特定のインプラントを、そのインプラント用として意図されていない器具で埋め込むことを抑えるのに役立つ。
【0024】
医療システムのインプラントと器具とが光学コードを有し、顕微鏡視野内に一緒に配置されたインプラントの光学コードと器具の光学コードとの比較によって互換性がチェックされることが好ましい。この種の方法においては、必ずしもコード表を用意する必要はない。特に、事前にコード表に記憶されていない新しい器具及びインプラントの互換性もチェックすることができる。互換性は、特に、器具及びインプラントの光学コードが同一である場合に存在する。
【0025】
本方法を確実に使用するためには、比較結果が出力されると有利である。特に、これは光学的及び/又は音響的に行われる。例えば、不適合は、警告音又は適切なアナウンスによって外科医に通知することができる。
【0026】
更に、前述の方法の1つを実施するための前述のシステムの1つの使用が提案される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面と併せてより詳細に説明する。
【0028】
図1】医療システムの例示的な実施形態を概略的に示す図である。
図2】医療システムの例示的な実施形態の機能を概略的に示す図である。
図3】医療システムの更なる例示的な実施形態の機能を示す概略図である。
図4】顕微鏡視野と検出視野との重なりを概略的に示す図である。
図5】相互に適合する器具及びインプラントを概略的に示す図である。
図6】相互に適合しない器具及びインプラントを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、医療システム10の例示的な実施形態が概略的に示されている。
【0030】
医療システム10は、顕微鏡視野14を画定する顕微鏡12を備えている。医療システム10は、更に、2以上の互いに異なるインプラント16と、2以上の互いに異なる器具18とを備えている。器具18及びインプラント16は、互換性がある場合、意図されたように互いに協力するように構成されている。
【0031】
図1には、クリップアプリケータ20の形態をした器具18の一例が概略的に示されている。この器具18は、医療用クリップ24の形態をしたインプラント16を、遠位器具端部22で受け入れて保持する。医療用クリップ24は、クリップアプリケータ20を用いて開かれ、例えば、中空器官、特に血管28の形態で、動脈瘤とも呼ばれる膨出部26に適用されることができる。
【0032】
図1に概略的に示されるように、顕微鏡12は、デジタル顕微鏡の形態で構成されている。顕微鏡12は、顕微鏡視野14の画像が表示されるスクリーン32の形態をした顕微鏡表示装置30を備えている。器具18を扱う外科医34は、スクリーン32上でインプラント16の適用を監視する。
【0033】
図2は、適合性チェック装置36を備える医療システム10の例示的な実施形態を概略的に示している。これは、顕微鏡視野14内に一緒に配置されている器具18とインプラント16との適合性を自動的にチェックすることを目的としている。
【0034】
適合性チェック装置36は、光学検出装置38を備えている。これは、検出視野40を画定する。この例示的な実施形態において顕微鏡12とは独立して設けられた検出装置38は、顕微鏡視野14と検出視野40とが少なくとも半分ずつ重なるように配置されている。従って、顕微鏡視野14と検出視野40との重なりは、少なくとも約50%の領域にある。
【0035】
図2に概略的に表された顕微鏡12は、光学顕微鏡イメージセンサ42を備えている。これは、CCDセンサ又はCMOSセンサの形態で構成されている。
【0036】
光学検出装置38は、光学イメージセンサ44を備えている。これは、CCDセンサ又はCMOSセンサとして構成されている。
【0037】
医療システム10の互いに異なるインプラント16及び互いに異なる器具18は、それぞれ光学コード46を備えている。これは、カラーコード48の形態で構成されている。図2の例示的な実施形態において、インプラント16は、着色されている。器具18では、器具端部22の領域に配置された器具18の構成要素がカラーコード48で識別される。図2の例示的な実施形態において、前記構成要素は、クリップアプリケータ20として構成された器具18のロックねじ50である。
【0038】
光学検出装置38は、光学コード46を検出するように構成されている。これは、光学検出装置38が光学イメージセンサ44で検出視野40の画像を取得することで可能となる。適合性チェック装置36は、画像処理装置52を備えている。これにより、器具18及びインプラント16を、検出視野40及び検出視野40と重なる顕微鏡視野14の領域内に捕捉することができる。
【0039】
図2の例示的な実施形態において、画像処理装置52は、検出視野40の画像から器具18及びインプラント16の光学コード46を読み出すように構成されている。従って、画像処理装置52は、器具18及びインプラント16のカラーコード48を認識するように構成されている。
【0040】
適合性チェックの結果を表示するために、適合性チェック装置36は、表示装置54を備えている。図2に示す医療システム10の例示的な実施形態において、顕微鏡表示装置30は、表示装置54を備えている。これは、スクリーン32上に表示された顕微鏡視野14の画像に重畳されたウィンドウの形態で実現される。表示装置54には、器具18及びインプラント16のカラーコード48が一致するか否かが、(図示しない態様においては)テキスト形式で、又は、例えば信号表示で表される。図2に示す例示的な実施形態は、そのケースである。
【0041】
顕微鏡イメージセンサ42で作成された顕微鏡視野14の画像は、演算装置56で処理され、顕微鏡表示装置30に表示される。
【0042】
図3には、医療システム10の更なる例示的な実施形態が概略的に示されている。この例示的な実施形態において、光学検出装置38は、顕微鏡12に組み込まれている。顕微鏡イメージセンサ42は、光学イメージセンサ44を形成する。
【0043】
適合性チェック装置36は、特に、顕微鏡12と、顕微鏡表示装置30に含まれる表示装置54とを備えている。顕微鏡イメージセンサ42で作成された顕微鏡視野14の画像は、演算装置56に組み込まれた画像処理装置52で処理され、顕微鏡表示装置32に表示される。互換性チェックの結果は、特に、図2の例示的な実施形態に関連して上述したように、説明的なテキストの形態で、及び/又は、信号表示の形態で、スクリーン32上に表示される。
【0044】
図3に示す概略的で例示的な実施形態において、光学コード46は、器具18及びインプラント16に、具体的にはデータマトリックスコード58の形態で設けられている。
【0045】
画像処理装置52は、顕微鏡イメージセンサ42によって取得された顕微鏡視野14の画像から器具18及びインプラント16の光学コード46を抽出し、それらを互いに比較するように構成されている。
【0046】
医療システムの図2の例示的な実施形態及び図3の例示的な実施形態の両方は、任意選択で、顕微鏡視野14の画像及び/又は検出視野40の画像から形状コードを抽出するように構成されている。形状コード60は、インプラント16自体及び器具18自体によって定義される。特に、両方の例示的な実施形態は、インプラント16上及び器具18上の異なるコード46を認識することもできる。これにより、インプラント16及び器具18の両方における2つの光学コード46のチェック中に、冗長な互換性情報項目が得られるので、インプラント16及び器具18のより信頼性の高いチェックも可能になる。
【0047】
図3の例示的な実施形態において、光学コード46は、装置18上のロックねじ50の遠位側に配置され、それにより器具端部22の領域に配置されている。
【0048】
図4は、顕微鏡視野14と検出視野40との重なりを模式的に示している。互換性チェックを実施するためには、インプラント16と器具18とは、顕微鏡視野14と検出視野40とに同時に配置され、インプラント16上と器具18上の両方の光学コード46を同時に捕捉できなければならない。これにより、捕捉された光学コード46の両方を適合性チェック装置36で比較し、2つの光学コード46が同一であればインプラント16と器具18との適合性を自動的に確認し、2つの光学コード46が異なれば警告を出力することができる。
【0049】
図5及び図6には、これら2つの選択肢、すなわち、インプラント16と器具18との適合性と非適合性とが模式的に表されている。
【0050】
図5においては、器具18とインプラント16の両方に、それぞれ2つの光学コード46が設けられており、具体的には、1つはカラーコード48として、もう1つはデータマトリックスコード58として設けられている。更に、器具18の形状及びインプラント16の形状を任意に捕捉し、適合性をチェックすることができる。
【0051】
図5の例では、2つの光学コード46が一致している。図6の例では、カラーコード48及びデータマトリックスコード58の両方が異なっている。従って、図5による状況では、器具18とインプラント16との互換性を確認することができるが、図6の例では、互換性が否定される。例えば、警告を出力することができる。
【0052】
図示されていない代替的で例示的な実施形態においては、バーコード又はQRコードの形態の更なる光学コードを代替的又は追加的に提供することができる。
【0053】
光学コード46では、特にインプラントのサイズ、例えば3つの異なるサイズ系統、具体的には「スタンダード」、「ミニ」、「ロング」を区別することができる。これらの3つのサイズ系統には、互換性のある3つの関連器具18が対応する。例えば、「標準」は青色、「ミニ」は赤色、「ロング」は緑色など、適切なカラーコードによって3つのサイズを符号化することができる。
【0054】
カラーコードは、特に、体内に最後まで残るインプラント、例えば動脈瘤クリップシステムの永久的なクリップ、又は一時的なインプラント、例えばそのような動脈瘤クリップシステムの一時的なクリップを互いに区別するために使用することができる。特に、サイズに関するカラーコードに加えて、「永久的」又は「一時的」という情報に関するカラーコードを捕捉することができる。
【0055】
データマトリックスコードによって、器具18及びインプラント16に関する異なる情報項目、例えば、製造日、クリップの閉鎖力、クリップの材質などを、器具18及び/又はインプラント16に直接符号化して保存することができる。データマトリックスコードに符号化された情報は、特に、外科的介入の追跡及び記録に使用することもできる。従って、説明した医療システム10の例示的な実施形態においては、器具18とインプラント16との適合性をチェックできるだけでなく、確立された情報をプロセスの最適化に使用することもできる。例えば、特定のインプラント16が埋め込まれたときに自動的にリオーダープロセスを起動することが可能である。更に、埋め込まれたインプラントを患者識別カードに直接割り当てることもできる。更に、どのタイプのインプラント16が永久的に埋め込まれ、どの一時的なインプラント16が使用されたかを、幾度も確立することができる。
【0056】
インプラント16及び器具18は、説明した医療システム10の例示的な実施形態によって、特に術中及び準備過程でも追跡することができる。これは、ユーザへのサービスであり、製造業者へのデータ収集システムの提供であり、登録データの取得及び臨床研究での使用を可能にする。
【0057】
図2の例示的な実施形態において、検出装置38は、顕微鏡12とは別に構成されている。これは、任意の所望のデジタルカメラの形態で実現することができる。例えば、手術室においては、ナビゲーションカメラやカメラ一体型のデータゴーグルをこの目的に使用することができる。
【0058】
また、表示装置54を顕微鏡表示装置30に統合するために、付加的なスクリーンを設けてもよい。適合性チェックの結果は、外科医が装着する一対のデータゴーグルに表示してもよいし、音声出力によって音響的に行ってもよい。
【0059】
説明したような医療システム10の例示的な実施形態は、一緒に使用されるべき器具18とインプラント16とが互いに適合するか否かを自動的にチェックすることを容易にすることができる。これにより、特に、不適合な器具18の使用によるインプラント16の損傷を回避することができるので、この情報は非常に重要である。
【符号の説明】
【0060】
10 医療システム
12 顕微鏡
14 顕微鏡視野
16 インプラント
18 器具
20 クリップアプリケータ
22 器具端部
24 医療用クリップ
26 膨出部
28 血管
30 顕微鏡表示装置
32 スクリーン
34 外科医
36 適合性チェック装置
38 検出装置
40 検出視野
42 顕微鏡イメージセンサ
44 光学イメージセンサ
46 光学コード
48 カラーコード
50 ロックねじ
52 画像処理装置
54 表示装置
56 演算装置
58 データマトリックスコード
60 形状コード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】