(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】適応型交流サーボモーター電流制御方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
H02P 29/40 20160101AFI20240628BHJP
【FI】
H02P29/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501846
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 CN2021108876
(87)【国際公開番号】W WO2023004618
(87)【国際公開日】2023-02-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524015647
【氏名又は名称】天津賽象科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TIANJIN SAIXIANG TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】NO.9, Hitech Developing 4th RD. (Huanwai) Huayuan Industry Zone Xiqing District, Tianjin 300392, China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】▲ちょ▼ 啓平
(72)【発明者】
【氏名】張 建浩
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501BB08
5H501DD04
5H501GG01
5H501GG05
5H501HB07
5H501HB08
5H501JJ03
5H501JJ04
5H501JJ23
5H501JJ24
5H501JJ25
5H501LL22
5H501LL35
(57)【要約】
【要約】 本発明は適応型交流サーボモーター電流制御方法及びシステムを開示する。該方法は、元の三相交流モーター電流を取得するステップと、前記元の三相交流モーター電流を電流ベクトル変換モジュールに入力して、第1目標データを生成するステップと、前記第1目標データを電流制御ループに入力すると同時に、第1目標データを時間微分して第2目標データを生成するステップと、前記第2目標データと電流制御ループの出力を増分型逆動力学制御モジュールに同時に入力するステップとを含む。増分型逆動力学制御モジュールの出力を電流ベクトル逆変換モジュールに入力するステップとを含む。本発明によれば、コントローラのパラメータ設定に必要なモーターモデルが不要であり、それにより、従来技術における、モーターのモデル同定、特にオンラインモデル同定がシステムの複雑さを大幅に増加させ、且つモデル同定が、正確なモデルとモデルパラメータが取得できるのを確保できず、ファジー制御、スライディングモード制御、ニューラルネットワークに基づいた制御、及びモデル規範形適応制御が、アルゴリズムの安定性及びいずれの動作条件の負荷干渉環境下での安定した動作を確保できないという技術的課題を解決した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
適応型交流サーボモーター電流制御方法であって、
元の電流を取得するステップと、
前記元の電流を電流ベクトル変換モジュールに入力して、第1目標データを生成するステップと、
前記第1目標データを電流制御ループに入力すると同時に、第1目標データを時間微分して第2目標データを生成するステップと、
前記第2目標データと電流制御ループの出力を増分型逆動力学制御モジュールに同時に入力し、且つ前記増分型逆動力学制御モジュールの出力を前記電流ベクトル逆変換モジュールに入力するステップとを含む、ことを特徴とする適応型交流サーボモーター電流制御方法。
【請求項2】
前記元の電流は元の三相交流モーター電流である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記増分型逆動力学制御モジュールの表現式は、
であり、
ただし、Δu
dとΔu
qはd軸とq軸の制御増分であり、v
dとv
qは逆動力学制御中の仮想制御変数であり、
はサンプリング点での電流i
dとi
qの時間微分であり、u
dとu
qはd軸とq軸の制御出力の現在のサンプリング値であり、u
d0、u
q0はそれぞれd軸とq軸の制御出力の前回のサンプリング値であり、L
dはd軸インダクタンスであり、L
qはq軸インダクタンスである、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記交流サーボモーター制御は、回転速度制御ループ、回転角位置制御ループを更に含む、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
適応型交流サーボモーター電流制御システムであって、サンプリングモジュールと、電流ベクトル変換モジュールと、電流制御モジュールと、増分型逆動力学モジュールとを含み、
サンプリングモジュールは、元の電流を取得し、
電流ベクトル変換モジュールは、前記元の電流を電流ベクトル変換モジュールに入力して、第1目標データを生成し、
電流制御モジュールは、前記第1目標データを電流制御ループに入力すると同時に、第1目標データを時間微分して第2目標データを生成し、
増分型逆動力学モジュールは、前記第2目標データと電流制御ループの出力を増分型逆動力学制御モジュールに同時に入力し、前記増分型逆動力学制御モジュールの出力を前記電流ベクトル逆変換モジュールに入力する、ことを特徴とする適応型交流サーボモーター電流制御システム。
【請求項6】
不揮発性記憶媒体であって、前記不揮発性記憶媒体は記憶されるプログラムを含み、前記プログラムが実行されると、不揮発性記憶媒体が配置される機器が請求項1~5のいずれか一項に記載の方法を実行するように制御する、ことを特徴とする不揮発性記憶媒体。
【請求項7】
電子装置であって、プロセッサとメモリを含み、前記メモリにコンピュータ可読命令が記憶され、前記プロセッサは前記コンピュータ可読命令を実行することに用いられ、前記コンピュータ可読命令が実行されると、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法が実行される、ことを特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモーター制御の分野に関し、具体的には、適応型交流サーボモーター電流制御方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
インテリジェント技術の発展に伴い、人々の生活、仕事、学習の中でインテリジェント機器がますます使用されており、インテリジェント技術の使用により、人々の生活の質が向上し、学習と仕事の効率が向上している。モーター制御の分野では、モーターシステムは本質的に非線形で、時変的及び不確実なシステムであり、制御システムの設計は、非線形適応型制御アルゴリズムを使用する必要がある。
【0003】
現在、すべてのモーターのサーボ制御システムのアルゴリズムは、従来のPID制御アルゴリズムを使用する。PID制御アルゴリズムは、線形系に基づいた制御アルゴリズムであり、PIDアルゴリズムを利用して非線形サーボモーターを制御する場合、PIDの比例パラメータ、積分パラメータ及び微分パラメータを設定する方法は問題となっている。モーターシステムに非線形性、時変性及び不確実性があるため、モーターの非線形モデル又は線形化モデルをオフライン又はオンラインで同定することは必要である。得られたモーターモデルはPIDパラメータをリアルタイム又は段階的に設定することに用いられる。従来のPIDアルゴリズムのパラメータは、制御プロセス全体で定数である。実際の応用において、被制御システム全体は予め予測できないものであり、このため、固定のPIDパラメータはシステムの最適な制御効果を達成することができない。モデル同定を利用すると、比較的良好な制御精度を達成できるが、モデル同定、特にオンラインモデル同定は、システムの複雑さを大幅に増加させ、且つモデル同定は、正確なモデルとモデルパラメータが常に取得できるのを確保できず、このような制御システムは認定を受けるのが困難である。同様に、ファジー制御、スライディングモード制御、ニューラルネットワークに基づいた制御、モデル規範形適応制御等の他の適応型又はインテリジェントアルゴリズムも、アルゴリズムの安定性及びいずれの動作条件の負荷干渉環境下での安定した動作を確保できないという問題がある。
上記問題に対して、現在、効果的な解決手段は提案されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施例は、適応型交流サーボモーター電流制御方法及びシステムを提供し、従来技術における、モーターのモデル同定、特にオンラインモデル同定がシステムの複雑さを大幅に増加させ、且つモデル同定が、正確なモデルとモデルパラメータが取得できるのを確保できず、ファジー制御、スライディングモード制御、ニューラルネットワークに基づいた制御、及びモデル規範形適応制御が、アルゴリズムの安定性及びいずれの動作条件の負荷干渉環境下での安定した動作を確保できないという技術的課題を少なくとも解決する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施例の一態様によれば、本発明は適応型交流サーボモーター電流制御方法を提供し、以下を含む。
【0006】
適応型交流サーボモーター電流制御方法であって、
元の電流を取得するステップと、
前記元の電流を電流ベクトル変換モジュールに入力して、第1目標データを生成するステップと、
前記第1目標データを電流制御ループに入力すると同時に、第1目標データを時間微分して第2目標データを生成するステップと、
【0007】
前記第2目標データと電流制御ループの出力を増分型逆動力学制御モジュールに同時に入力し、前記増分型逆動力学制御モジュールの出力を前記電流ベクトル逆変換モジュールに入力するステップとを含む、ことを特徴とする。
更に、前記元の電流は元の三相交流モーター電流である。
更に、前記増分型逆動力学制御モジュールの表現式は、
であり、
【0008】
ただし、Δu
dとΔu
qはd軸とq軸の制御増分であり、v
dとv
qは逆動力学制御中の仮想制御変数であり、
はサンプリング点での電流i
dとi
qの時間微分であり、u
dとu
qはd軸とq軸の制御出力の現在のサンプリング値であり、u
d0、u
q0はそれぞれd軸とq軸の制御出力の前回のサンプリング値であり、L
dはd軸インダクタンスであり、L
qはq軸インダクタンスである。
更に、前記交流サーボモーター制御は、回転速度制御ループ、回転角位置制御ループを更に含む。
【0009】
本発明の第2態様は、適応型交流サーボモーター電流制御システムを提供し、サンプリングモジュールと、電流ベクトル変換モジュールと、電流制御モジュールと、増分型逆動力学モジュールとを含み、
サンプリングモジュールは、元の電流を取得し、
電流ベクトル変換モジュールは、前記元の電流を電流ベクトル変換モジュールに入力して、第1目標データを生成し、
電流制御モジュールは、前記第1目標データを電流制御ループに入力すると同時に、第1目標データを時間微分して第2目標データを生成し、
【0010】
増分型逆動力学モジュールは、前記第2目標データと電流制御ループの出力を増分型逆動力学制御モジュールに同時に入力し、前記増分型逆動力学制御モジュールの出力を前記電流ベクトル逆変換モジュールに入力する。
【0011】
本発明は不揮発性記憶媒体を更に開示し、前記不揮発性記憶媒体は記憶されるプログラムを含み、前記プログラムが実行されると、不揮発性記憶媒体が配置される機器が上記のいずれか一項に記載の方法を実行するように制御する。
【0012】
更に、本発明は電子装置を更に開示し、プロセッサとメモリを含み、前記メモリにコンピュータ可読命令が記憶され、前記プロセッサは前記コンピュータ可読命令を実行することに用いられ、前記コンピュータ可読命令が実行されると、上記のいずれか一項に記載の方法が実行される。
【0013】
本発明の実施例の別の態様によれば、不揮発性記憶媒体を更に提供し、前記不揮発性記憶媒体は記憶されるプログラムを含み、前記プログラムが実行されると、不揮発性記憶媒体が配置される機器が適応型交流サーボモーター電流制御方法を実行するように制御する。
【0014】
本発明の実施例の別の態様によれば、電子装置を更に提供し、プロセッサとメモリを含み、前記メモリにコンピュータ可読命令が記憶され、前記プロセッサは前記コンピュータ可読命令を実行することに用いられ、前記コンピュータ可読命令が実行されると、適応型交流サーボモーター電流制御方法が実行される。
【0015】
本発明の実施例では、電流の時間微分で所要のモーターシステムモデルを置き換えることにより、逆動力学制御におけるシステムモデルが必要となくなり、それにより、従来技術における、モーターのモデル同定、特にオンラインモデル同定がシステムの複雑さを大幅に増加させ、且つモデル同定が、正確なモデルとモデルパラメータが取得できるのを確保できず、ファジー制御、スライディングモード制御、ニューラルネットワークに基づいた制御、及びモデル規範形適応制御が、アルゴリズムの安定性及びいずれの動作条件の負荷干渉環境下での安定した動作を確保できないという技術的課題を解決した。
【図面の簡単な説明】
【0016】
ここで説明される図面は、本発明の更なる理解を提供することに用いられ、本願の一部を構成するものであり、本発明の例示的な実施例及びその説明は本発明を解釈することに用いられ、本発明を不当に限定するものではない。
【
図1】本発明の実施例に係る適応型交流サーボモーター電流制御方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の実施例に係る適応型交流サーボモーター電流制御システムの構造ブロック図である。
【
図3】従来の交流サーボモーター電流制御の原理ブロック図である。
【
図4】本発明の実施例に係る適応型電流ベクトル制御の原理ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
当業者が本発明の解決手段をより良好に理解できるために、以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的解決手段を明瞭で完全に説明する。明らかなように、説明される実施例は本発明の実施例の一部だけであり、全ての実施例ではない。本発明における実施例に基づき、当業者が創造的な労働を必要とせずに得られる全ての他の実施例は、本発明の保護範囲に属する。
【0018】
説明する必要があるものとして、本発明の明細書、特許請求の範囲及び上記図面における「第1」、「第2」等の用語は、類似するオブジェクトを区別するためのものであり、特定の順序又は前後順序を説明することに用いられるわけではない。このように使用されるデータは、ここで説明される本発明の実施例が、本明細書に図示され又は説明されるもの以外の順序で実施できるように、適切な場合に交換可能であることを理解されたい。また、用語「含む」、「有する」及びそれらの任意の変形は、非排他的な包含物をカバーすることを意図し、例えば、一連のステップ又はユニットを含むプロセス、方法、システム、製品又は機器は、明瞭に示されるそれらのステップ又はユニットに限定されず、明瞭に示されていない又はこれらのプロセス、方法、製品又は機器に固有の他のステップ又はユニットを含んでもよい。
【0019】
本発明の実施例によれば、適応型交流サーボモーター電流制御方法の方法実施例が提供され、説明する必要があるものとして、図面のフローチャートに示されるステップは、一セットのコンピュータ実行可能命令等のコンピュータシステムで実行でき、且つ、フローチャートに論理的な順序が示されているが、場合によって、示され又は説明されるステップをここでの順序と異なる順序で実行してもよい。
【0020】
図1は本発明の実施例に係る適応型交流サーボモーター電流制御方法のフローチャートであり、
図1に示すように、該方法は、
三相交流モーター電流である元の電流を取得するステップS100と、
前記元の三相交流モーター電流を電流ベクトル変換モジュールに入力して、第1目標データを生成するステップS200と、
前記第1目標データを電流制御ループに入力すると同時に、第1目標データを時間微分して第2目標データを生成するステップS300と、
【0021】
前記第2目標データと電流制御ループの出力を増分型逆動力学制御モジュールに同時に入力し、前記増分型逆動力学制御モジュールの出力を電流ベクトル逆変換モジュールに入力するステップS400とを含む。
【0022】
図2は本発明の実施例に係る適応型交流サーボモーター電流制御システムの構造ブロック図であり、
図2に示すように、該システムは、元の電流取得モジュールと、電流制御モジュールと、電流時間微分モジュールと、電流制御モジュールと、増分型逆動力学モジュールとを含み、
【0023】
元の電流取得モジュールは、元の三相交流モーター電流を取得し、
電流制御モジュールは、前記元の三相交流モーター電流を電流ベクトル変換モジュールに入力して、第1目標データを生成し、
電流時間微分モジュールは、第1目標データを時間微分して第2目標データを生成し、
【0024】
電流制御モジュールは、前記第1目標データと求められる第1目標データとを比較し、その結果を電流制御モジュールに入力し、
具体的に、前記電流制御モジュールは比例、積分、微分の機能を有し、
【0025】
増分型逆動力学モジュールは、前記第2目標データと電流制御モジュールの出力を増分型逆動力学制御モジュールに同時に入力し、増分型逆動力学制御モジュールの出力を電流ベクトル逆変換モジュールに入力する。
【0026】
又は、前記システムは、サンプリングモジュールと、電流ベクトル変換モジュールと、電流制御モジュールと、増分型逆動力学モジュールとを含み、
サンプリングモジュールは、元の電流を取得し、
電流ベクトル変換モジュールは、前記元の電流を電流ベクトル変換モジュールに入力して、第1目標データを生成し、
電流制御モジュールは、前記第1目標データを電流制御ループに入力すると同時に、第1目標データを時間微分して第2目標データを生成し、
【0027】
増分型逆動力学モジュールは、前記第2目標データと電流制御ループの出力を増分型逆動力学制御モジュールに同時に入力し、前記増分型逆動力学制御モジュールの出力を前記電流ベクトル逆変換モジュールに入力する。
【0028】
電流ベクトル変換モジュールと電流ベクトル逆変換モジュールは、電流ベクトル制御理論に基づいて、交流電流の制御が直流電流の制御と同じくらい容易になるように変換し、先ず、交流電流を直流電流に変換し(電流ベクトル変換モジュール)、直流電流の環境下で制御を実現し、次に、直流電流を交流電流に変換し(電流ベクトル逆変換モジュール)、交流モーターを制御する(
図3を参照)。電流ベクトル変換モジュールは、Clarke変換とPark変換を含む(
図3を参照)。電流ベクトル逆変換モジュールは、Park逆変換、空間ベクトル帯域幅変調、及びClarke逆変換(三相インバーター)を含む(
図3を参照)。
前記増分型逆動力学制御モジュールの表現式は、
であり、
【0029】
ただし、Δu
dとΔu
qはd軸とq軸の制御増分であり、v
dとv
qは逆動力学制御中の仮想制御変数であり、
はサンプリング点での電流i
dとi
qの時間微分であり、u
dとu
qはd軸とq軸の制御出力の現在のサンプリング値であり、u
d0、u
q0はそれぞれd軸とq軸の制御出力の前回のサンプリング値であり、L
dはd軸インダクタンスであり、L
qはq軸インダクタンスである。
【0030】
具体的に、
図4に示すように、
図4は本発明の実施例に係る適応型電流ベクトル制御の原理ブロック図であり、本発明の実施例の上記適応型交流サーボモーター電流制御システムにおける数学モデルは、電流モデル、速度モデル、位置モデルを含み、上記3つの数学モデルは以下の通りである。
電流モデル:
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
上記式(1)~(4)において、変数及びパラメータの定義については、id、iqはd軸及びq軸の電流、Ldはd軸インダクタンス、Lqはq軸インダクタンス、ωmは回転子の角速度、pは磁極数、TLは未知の負荷トルク入力、Bは未知の抵抗係数、Jは慣性モーメント、Rは未知の等価インピーダンス、θはモーターの回転子回転角、ψmは永久磁石の磁束、udとuqはd軸とq軸の制御入力である。
【0036】
説明する必要があるものとして、永久磁石同期電動機(permanent-magnetsynchronousmotor)は、永久磁石同期モーターであり、PMSMと略称されて、回転子が巻線の代わりに永久磁石を使用する同期電動機を指す。永久磁石同期電動機は、磁束方式により、半径方向、軸方向又は横方向に分けられ、素子の配置によって決められ、様々な永久磁石同期電動機の効率、体積、重量及び動作速度は異なる。永久磁石同期モーターの動作原理は電気励磁同期モーターと同じであるが、それは永久磁石による磁束で後者の界磁巻線の励磁を置き換え、モーター構造がよりシンプルになる。PMSMは、永久磁石によって励磁されて同期回転磁界を発生させる同期モーターであり、永久磁石は回転子として回転磁界を発生させ、三相固定子巻線は回転磁界の作用下で電機子反作用により、三相対称電流を誘導する。このとき、回転子の運動エネルギーが電気エネルギーに変換され、PMSMは発電機(generator)として使用され、この他、固定子側に三相対称電流が導入されると、三相固定子の空間位置が120離れているため、三相固定子電流は空間に回転磁界を発生させ、回転子は回転磁界で電磁力の作用により移動し、このとき、電気エネルギーは運動エネルギーに変換され、PMSMはモーター(motor)として使用される。
【0037】
未知のパラメータと入力(B,R,TL)が存在するため、電流モデルと速度モデルが非線形で不確実であり、線形系に基づいたPID制御は高性能を確保できない。PIDは、Proportional(比例)、Integral(積分)、Differential(微分)の略称である。文字通り、PID制御アルゴリズムは、比例、積分及び微分の3つの段階を組み合わせて一体にした制御アルゴリズムであり、連続システムにおける技術が最も成熟し、応用が最も広い制御アルゴリズムであり、該制御アルゴリズムは20世紀30年代~40年代に登場し、制御対象モデルが明瞭に理解されていない場合に適用できる。実際の操作経験と理論分析により、このような制御規則で多くの産業プロセスを制御すると、比較的に満足する効果を達成できることが分かる。PID制御の本質は、入力された偏差値に基づき、比例、積分、微分の関数関係に従って演算し、演算結果を出力の制御に用いることであり、また、PID制御において、閉ループ制御は、制御対象の出力フィードバックに基づき校正する制御方式であり、それは、実際と計画との偏差が測定された場合に、定数又は基準に従って補正を行う。例えば、モーターの回転速度を制御すると、回転速度を測定するセンサが存在し、且つ結果を制御回路にフィードバックする必要がある。閉ループ制御アルゴリズムと言えば、閉ループ制御アルゴリズム中の最も簡単なPIDを言わざるを得ない。PIDは、比例(Proportion)、積分(Integral)、微分(Differential coefficient)の略称であり、それぞれ3つの制御アルゴリズムを表す。この3つのアルゴリズムを組み合わせることで、被制御対象の偏差を効果的に補正し、安定した状態に達成させることができる。
【0038】
本発明の実施例は、ガスケード逆動力学制御原理を採用し、システムの完全な線形化を得るための逆動力学制御に必要な非線形動力学及び運動学モデルが必要とされなくなる。その実施例の具体的な実現ステップについては、先ず、式1と式2を利用して適時にサンプリングして逆動力学制御を取得する。
【0039】
【0040】
【0041】
式(5)と(6)におけるv
dとv
qは逆動力学制御中の仮想制御変数であり、
はサンプリング点での電流i
dとi
qの時間微分であり、u
dとu
qはd軸とq軸の制御出力の現在のサンプリング値であり、u
d0、u
q0はそれぞれd軸とq軸の制御出力の前回のサンプリング値であり、i
q0とi
d0はd軸とq軸の電流の前回のサンプリング値である。すべてのサーボモーターは、高速サンプリング(10kHz)条件下で、増分型逆動力学電流制御を得ることができる。
【0042】
また、本発明の実施例の電流ベクトル変換制御、すなわち、高性能永久磁石同期モーターの制御理論及び方法については、例えば、同期角速度ω1で回転する座標系M、Tにおいて、M軸が常に回転子の鎖交磁束ベクトルと同じ方向を向いていると、非同期モーターのトルクはM軸における固定子電流の成分i_M1によって決められ、非同期モーターの回転子の鎖交磁束はT軸における固定子電流の成分i_T1によって決められ、i_M1とi_T1をそれぞれ制御することによって、トルクと鎖交磁束の制御の完全な非干渉を実現する。
【0043】
この結果は、d軸とq軸の電流i
dとi
qを測定して電流の時間微分
を計算することで得られた制御アルゴリズムが、複雑で不確実な(R)の電流モデルを回避することを示している。電流導関数は、モデルを置き換えて、逆動力学コントローラにおいてコントローラ適応の役割を果たす。増分制御Δu
dとΔu
qの適用により、電流システムは完全に線形化、定常化及び非干渉され、Δu
dとΔu
qの逆動力学仮想制御は固定パラメータのPID制御を採用できる。
【0044】
【0045】
式(1)と式(2)の相対次数がいずれも1であるため、式(9)と式(10)はPI制御に簡略化できる。
【0046】
【0047】
ただし、KPd、KId及びKDdはd軸のPID制御係数であり、KPq、KIq及びKDqはq軸のPID制御係数であり、iddとiqdはd軸とq軸の制御期待値であり、回転速度制御ループによって与えられる。
【0048】
本発明の実施例は以下の特徴を有する。1、モーターモデルの適応型制御を必要としない。2、非線形制御である。3、制御システムは不確実なシステムパラメータに敏感ではない。4、制御システムは不確実な外部干渉に敏感ではない。5、制御システムは、いずれの現実的な干渉負荷条件下でも閉ループの安定性と高性能制御を確保する。6、制御アルゴリズムはシンプルで実現されやすい。
【0049】
上記実施例により、従来技術における、モーターのモデル同定、特にオンラインモデル同定がシステムの複雑さを大幅に増加させ、且つモデル同定が、正確なモデルとモデルパラメータが取得できるのを確保できず、ファジー制御、スライディングモード制御、ニューラルネットワークに基づいた制御、及びモデル規範形適応制御が、アルゴリズムの安定性及びいずれの動作条件の負荷干渉環境下での安定した動作を確保できないという技術的課題を解決した。
上記の本発明の実施例の番号は説明するためのもの過ぎず、実施例の優劣を表すものではない。
【0050】
本発明の上記実施例では、各実施例の説明についてはそれぞれ重点を置き、ある実施例で詳しく説明していない部分については、他の実施例の関連する説明を参照できる。
【0051】
本願により提供される幾つかの実施例では、開示される技術的内容は、他の方式で実現できることを理解されたい。上記の説明される装置の実施例は例示的なものだけであり、例えば、前記ユニットの分割は、ただロジック機能の分割で、実際に実現するときに他の分割方式があってもよく、例えば、複数のユニット又はアセンブリを組み合わせてもよいし、別のシステムに組み込んでもよい。又は幾つかの特徴を無視してもよいし、又は実行しなくてもよい。また、示したか又は検討した相互間の結合又は直接的な結合又は通信接続は、幾つかのインタフェース、ユニット又はモジュールを介する間接的な結合又は通信接続であってもよく、電気的、又は他の形式であってもよい。
【0052】
分離部材として説明された前記ユニットは、物理的に別個のものであってもよいし、そうでなくてもよい。ユニットとして示された部材は、物理的ユニットであってもよいし、そうでなくてもよい。すなわち、同一の位置に位置してもよいし、複数のユニットに分布してもよい。実際の需要に応じてそのうちの一部又は全てのユニットを選択して本実施例の技術的手段の目的を実現することができる。
【0053】
また、本願の各実施例における各機能ユニットは1つの処理ユニットに集積されてもよいし、各ユニットが物理的に別個のものとして存在してもよいし、2つ以上のユニットが1つのユニットに集積されてもよい。上記集積したユニットは、ハードウェアの形式で実現されてもよく、ソフトウェア機能ユニットの形式で実現されてもよい。
【0054】
前記集積されたユニットはソフトウェア機能ユニットの形式で実現され、且つ独立した製品として販売又は使用されるとき、コンピュータにより読み取り可能な記憶媒体内に記憶されてもよい。このような理解のもと、本発明の技術的解決手段は、本質的に、又は、従来技術に対して貢献をもたらした部分又は該技術的解決手段の全部又は一部は、ソフトウェア製品の形式で具現することができ、このようなコンピュータソフトウェア製品は、記憶媒体に記憶され、コンピュータ装置(パソコン、サーバ、又はネットワーク装置等)に、本発明の各実施例に記載の方法の全部又は一部のステップを実行させるための幾つかの命令を含む。上記の記憶媒体は、USBメモリ、読み出し専用メモリ(ROM、Read-Only Memory)、ランダムアクセスメモリ(RAM、Random Access Memory)、モバイルディスク、磁気ディスク又は光ディスク等の、プロクラムコードを記憶できる様々な媒体を含む。
【0055】
なお、上記の内容は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者であれば、本発明の原理から逸脱することなく、様々な改良や修正を行うことができ、これらの改良や修正も本発明の保護範囲と見なされるべきである。
【国際調査報告】