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特表2024-524681アルミニウムアノード、アルミニウム電気化学セル、及びアルミニウムアノードを備える電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】アルミニウムアノード、アルミニウム電気化学セル、及びアルミニウムアノードを備える電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/06 20060101AFI20240628BHJP
   H01M 4/46 20060101ALI20240628BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H01M4/06 S
H01M4/46
H01M12/08 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501868
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 US2022037120
(87)【国際公開番号】W WO2023287976
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/222,205
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510238959
【氏名又は名称】イーグルピッチャー テクノロジーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カルピンスキー アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
5H032
5H050
【Fターム(参考)】
5H032AA01
5H032AS02
5H032BB02
5H032BB04
5H032EE02
5H032HH01
5H032HH04
5H032HH06
5H050AA19
5H050BA20
5H050CA12
5H050CB11
5H050DA03
5H050FA03
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA07
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA15
(57)【要約】
アルミニウム電気化学セル用のアノードであって、1マイクロメートル~60マイクロメートルの粒径を有するアルミニウム合金を含み、アルミニウム合金が、それぞれアルミニウム合金の総重量をベースとして98重量パーセント~99.999重量パーセントのアルミニウムと、0.001重量パーセント~2重量パーセントのマグネシウム、ガリウム、スズ又はそれらの組合せを含有するドーパントとを含み、鉄、銅、ケイ素、亜鉛及びニッケルが、アルミニウム合金中に存在する場合、それぞれ独立して、アルミニウム合金の総重量をベースとして0.001重量パーセント未満の量で含まれ、アノードの空隙率が、アノードの総体積をベースとして0.1%~60%である、を有するアノード。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム電気化学セル用のアノードであって、前記アノードが、
1マイクロメートル~60マイクロメートルの粒径を有するアルミニウム合金を含み、前記アルミニウム合金が、それぞれ前記アルミニウム合金の総重量をベースとして98重量パーセント~99.999重量パーセントのアルミニウムと、0.001重量パーセント~2重量パーセントのマグネシウム、ガリウム、スズ又はそれらの組合せを含むドーパントとを含み、鉄、銅、ケイ素、亜鉛及びニッケルが、前記アルミニウム合金中に存在する場合、それぞれ独立して、前記アルミニウム合金の総重量をベースとして0.001重量パーセント未満の量で含まれ、
前記アノードの空隙率が、前記アノードの総体積をベースとして0.1%~60%である、アノード。
【請求項2】
前記アルミニウム合金が、それぞれ前記アルミニウム合金の総重量をベースとして0.1重量パーセント~1重量パーセントのマグネシウムと、0.01重量パーセント~0.15重量パーセントのスズとを含む、請求項1に記載のアノード。
【請求項3】
前記アルミニウム合金が0.0005重量パーセント~0.01重量パーセントのガリウムを更に含む、請求項2に記載のアノード。
【請求項4】
前記アルミニウム合金がアスペクト比1~10の粒子を含む、請求項1に記載のアノード。
【請求項5】
前記アルミニウム合金が20マイクロメートル~60マイクロメートルの粒径を有し、前記アノードの空隙率が前記アノードの総体積をベースとして40%~60%である、請求項1に記載のアノード。
【請求項6】
バインダーを更に含み、前記バインダーが前記アノードの総重量をベースとして0.1重量パーセント~5重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載のアノード。
【請求項7】
200m/g~800m/gの比表面積を有する、請求項1に記載のアノード。
【請求項8】
請求項1に記載のアノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードとの間の電解質と、
を備える電気化学セル。
【請求項9】
前記電解質が水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸アルミニウム又はそれらの組合せを含む、請求項8に記載の電気化学セル。
【請求項10】
前記電解質がスズ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム又はそれらの組合せを更に含む、請求項9に記載の電気化学セル。
【請求項11】
前記カソードが空気と接触するように構成される、請求項8に記載の電気化学セル。
【請求項12】
前記カソードが酸素と接触するように構成される、請求項8に記載の電気化学セル。
【請求項13】
前記カソードが過酸化水素と接触するように構成される、請求項8に記載の電気化学セル。
【請求項14】
前記カソードが金属酸化物を含む、請求項8に記載の電気化学セル。
【請求項15】
前記金属酸化物が、1マイクロメートル~10マイクロメートルの粒径を有する酸化銀を含む、請求項14に記載の電気化学セル。
【請求項16】
請求項8に記載のセルを複数備えるアルミニウム電池。
【請求項17】
前記セルがバイポーラ構成を有する、請求項16に記載の電池。
【請求項18】
アルミニウム電気化学セル用のアノードを製造する方法であって、
バインダー及び液状媒体を含む液体を準備することと、
アルミニウムと、マグネシウム、ガリウム、スズ又はそれらの組合せを含むドーパントとを含み、且つ1マイクロメートル~60マイクロメートルの粒径を有するアルミニウム合金を前記液体と接触させて、スラリーを形成することと、
前記スラリーを基板上に配置することと、
前記スラリーを熱処理して、前記液状媒体を除去し、電極前駆体を形成することと、
前記電極前駆体を熱処理して、アルミニウム電気化学セル用のアノードを形成することと、
を含む、方法。
【請求項19】
アルミニウム電気化学セル用のアノードを製造する方法であって、
バインダー及び液状媒体を含む液体を準備することと、
アルミニウムと、マグネシウム、ガリウム、スズ又はそれらの組合せを含むドーパントとを含み、且つ1マイクロメートル~60マイクロメートルの粒径を有するアルミニウム合金を前記液体と接触させて、スラリーを形成することと、
前記スラリーを基板上に配置することと、
前記スラリーを第1の温度で熱処理して、前記液状媒体を除去し、電極前駆体を形成することと、
前記電極前駆体を第2の温度で熱処理して、アルミニウム電気化学セル用のアノードを形成することと、
を含み、前記第1の温度が前記第2の温度よりも低い、方法。
【請求項20】
アルミニウム電気化学セル用のアノードを製造する方法であって、
アルミニウムと、マグネシウム、ガリウム、スズ又はそれらの組合せを含むドーパントとを含み、且つ1マイクロメートル~60マイクロメートルの粒径を有するアルミニウム合金を準備することと、
前記アルミニウム合金を基板上に配置することと、
前記アルミニウム合金を圧縮して、アノードを形成することと、
を含む、方法。
【請求項21】
前記圧縮が500℃~1,200℃の温度にて1メガパスカル~1ギガパスカルで熱間圧接することを含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年7月15日に出願された米国特許出願第63/222,205号に対する優先権を主張し、その内容全体が引用することによって本明細書の一部をなす。
【0002】
本開示は、アルミニウムアノード、アルミニウムアノードを備える電気化学セル、及びアルミニウムアノードを備える電池に関する。
【背景技術】
【0003】
アルミニウム空気電池は、様々な用途、特に長期のスタンバイに続く高率放電が望ましい用途に対して関心が持たれている。それにもかかわらず、アルミニウム空気電気化学セル用の改良された材料が依然として必要とされている。
【0004】
以下、例として添付の図面を参照しながら本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】開示のアノードを備えるアルミニウム空気電気化学セルの実施形態の断面図である。
図2】開示のアルミニウム合金を含むアノライトを含むアルミニウム空気電気化学セルの実施形態の断面図である。
図3】バイポーラセルの実施形態の相互参照断面図である。
図4】モノポーラ構成とバイポーラ構成とを比較する概略図である。
図5】実施例のアルミニウム空気電気化学セルの放電プロファイルを示す図である。
【発明の概要】
【0006】
アルミニウム電気化学セル用のアノードであって、アノードが、1マイクロメートル~50マイクロメートルの粒径を有するアルミニウム合金を含み、アルミニウム合金が、それぞれアルミニウム合金の総重量をベースとして98重量パーセント~99.999重量パーセントのアルミニウムと、0.0001重量パーセント~1重量パーセントのマグネシウム、ガリウム、スズ又はそれらの組合せを含むドーパントとを含み、鉄、銅、ケイ素、亜鉛及びニッケルが、アルミニウム合金中に存在する場合、それぞれ独立して、アルミニウム合金の総重量をベースとして0.001重量パーセント未満の量で含まれ、アノードの空隙率が、アノードの総体積をベースとして0.1%~50%である、アノードが提供される。
【0007】
一態様において、上記のアノードと、カソードと、アノードとカソードとの間の電解質とを備える電気化学セルが提供される。
【0008】
一態様において、アルミニウム電気化学セル用のアノードを製造する方法であって、アルミニウムと、マグネシウム、ガリウム、スズ又はそれらの組合せを含むドーパントとを含み、且つ1マイクロメートル~60マイクロメートルの粒径を有するアルミニウム合金を液体と接触させてスラリーを形成することと、スラリーを基板上に配置することと、スラリーを熱処理して、液状媒体を除去し、電極前駆体を形成することと、電極前駆体を熱処理して、アルミニウム電気化学セル用のアノードを形成することとを含む、方法が提供される。
【0009】
アルミニウム電気化学セル用のアノードを製造する別の方法において、当該方法は、バインダー及び液状媒体を含む液体を準備することと、アルミニウムと、マグネシウム、ガリウム、スズ又はそれらの組合せを含むドーパントとを含み、且つ1マイクロメートル~60マイクロメートルの粒径を有するアルミニウム合金を液状媒体と接触させて、スラリーを形成することと、スラリーを基板上に配置することと、スラリーを第1の温度で熱処理して、液状媒体、任意にバインダーを除去し、電極前駆体を形成することと、電極前駆体を第2の温度で熱処理して、アルミニウム電気化学セル用のアノードを形成することとを含み、第1の温度は、第2の温度よりも低い。
【0010】
別の態様において、アルミニウム電気化学セル用のアノードを製造する方法は、アルミニウムと、マグネシウム、ガリウム、スズ又はそれらの組合せを含むドーパントとを含み、且つ1マイクロメートル~60マイクロメートルの粒径を有するアルミニウム合金を準備することと、アルミニウム合金を基板上に配置することと、アルミニウム合金を圧縮して、アノードを形成することとを含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[詳細な説明]
アルミニウム電気化学セルは、好適な電解質を介した反応性アルミニウム合金アノードとカソード、例えば空気カソード、との電気化学的結合によって電気を作り出す。
【0012】
一態様において、アルミニウム電気化学セルはアルミニウム空気電気化学セルである。図1はアルミニウム空気セルの概略図を示す。アルミニウム空気セル100は、アルミニウムアノード105と、電解質110と、空気カソード120と、高分子膜135とを備えることができる。一態様において、電解質110と空気カソード120との間に任意のコーティング又は膜115を設けてもよい。また、空気カソード120に触媒125を設けてもよく、或る特定の添加剤130が電解質に含まれていてもよい。
【0013】
アルミニウム電気化学セルは、アルミニウム空気セルであってもよく、カソード活物質として酸素を使用するように構成されていてもよく、アルミニウム酸素セルであってもよい。アルミニウム空気セル又はアルミニウム酸素セルについては、カソードは、酸素を含むガス、例えば空気に対して透過性であるのが望ましく、水性電解質に対して実質的に不透過性である。理論に束縛されることを望むものではないが、アルミニウム空気セル又はアルミニウム酸素セルにおいて、
4Al +6HO +3O →4Al(OH)
の正味の化学反応が起こることが理解される。
【0014】
酸素がMnO、H、酸化銀又はそれらの組合せ等の酸化剤によって供給されるアルミニウム電気化学セルも開示される。例えば、酸化剤が酸化銀であるセルにおいて、全体的なセル反応は、
Al +3/2AgO + 3/2HO → Al(OH)+ 3/2Ag
として表すことができる。
【0015】
現在まで、市販のアルミニウム合金アノードにはモノリシックアルミニウム合金が使用されていた。理論に束縛されることを望むものではないが、アルミニウム合金粒子は、焼結が難しいため、好適なアルミニウム合金アノードの製造が困難であることが理解される。
【0016】
驚くべきことに、選択されたアルミニウム合金を焼結して、電気化学セルにおけるアノードとしての使用に適した特性を有するアノードを得ることができることが発見された。
【0017】
一態様において、アルミニウム合金は、アルミニウムと適量の好適な金属とを含む。合金は、Alに加えてMg、Sn、Hg、Ga、In、Th又はそれらの組合せを含み得る。アルミニウム及びスズを含む合金の使用が挙げられる。アルミニウム、スズ、マグネシウム、ガリウム又はそれらの組合せを含むアルミニウム合金の使用が挙げられる。
【0018】
一態様において、アルミニウム合金は、アルミニウム合金の総重量をベースとして98重量パーセント(重量%)~99.999重量%、99重量%~99.99重量%又は99重量%~99.4重量%のアルミニウムを含む。
【0019】
一態様において、アルミニウム合金は、アルミニウムと、0.001重量%~2重量%、0.01重量%~1重量%、0.05重量%~0.8wt.%又は0.1重量%~0.8重量%のマグネシウム、スズ、ガリウム又はそれらの組合せを含むドーパントとを含む。マグネシウムの含有量は、存在する場合、アルミニウム合金の総重量をベースとして0.1重量%~2重量%、0.1重量%~1.5重量%、0.1重量%~1重量%又は0.2重量%~0.8重量%である。スズの含有量は、存在する場合、アルミニウム合金の総重量をベースとして0.001重量%~0.5重量%、0.005重量%~0.2重量%、又は0.01重量%~0.15重量%、又は0.05重量%~0.1重量%である。ガリウムの含有量は、存在する場合、アルミニウム合金の総重量をベースとして0.0005重量%~0.01重量%、0.0005重量%~0.005重量%、0.007重量%~0.003重量%である。
【0020】
マグネシウム、スズ及びガリウムを含むアルミニウム合金が挙げられる。マグネシウム、スズ及びガリウムの総含有量は、アルミニウム合金の総重量をベースとして0.001重量%~2重量%、0.01重量%~1重量%、0.05重量%~0.8wt.%又は0.1重量%~0.8重量%である。それぞれアルミニウム合金の総重量をベースとして、マグネシウムは0.1重量%~1重量%又は0.45重量%~0.55重量%の量で含まれ、スズは0.01重量%~0.15重量%又は0.06重量%~0.08重量%の量で含まれ、ガリウムは0.0005重量%~0.01重量%、0.0005重量%~0.005重量%、0.0007重量%~0.003重量%の量で含まれる。
【0021】
幾つかの元素が合金において避けられ、又は好ましくは存在しない。一態様において、Fe、Cu、Si、Zn及びニッケルは、存在する場合、それぞれ独立して、アルミニウム合金の総重量をベースとして0.001重量%(すなわち10ppm)未満、5ppm未満又は1ppm未満の量でアルミニウム合金に含まれる。一態様において、Fe、Cu、Si及びZnの任意の組合せの総含有量は、アルミニウム合金の総重量をベースとして0.001重量%未満、5ppm未満又は1ppm未満である。
【0022】
一態様において、アルミニウム合金は、1マイクロメートル~60マイクロメートル、40マイクロメートル~60マイクロメートル、2マイクロメートル~25マイクロメートル、4マイクロメートル~20マイクロメートル又は5マイクロメートル~15マイクロメートルの粒径を有する粒子を含む。本明細書において使用される場合、「粒径」は、球状粒子の場合は粒子直径、又は非球状粒子の場合は最長寸法を指す。粒径は、例えばレーザー光散乱又は走査電子顕微鏡法によって決定し得る。
【0023】
一態様において、アルミニウム合金アノードは、100m/g~10,000m/g、200m/g~5,000m/g又は200m/g~800m/gの比表面積を有する。比表面積は、例えば窒素吸着によって決定し得る。
【0024】
アルミニウム合金は、任意の好適な形状を有する粒子を含むことができる。粒子は球状、繊維、ワイヤ若しくは針のような円柱状、又はフレーク若しくはディスクのような板状であってもよい。好ましくは、アルミニウム合金の粒子は、1対10又は2対10又は3対10のアスペクト比を有し得る。
【0025】
アルミニウムアノードは、バインダーを更に含んでいてもよい。バインダーは、アルミニウム合金粒子の表面上に存在していてもよい。一態様において、バインダーは、隣接した合金粒子の間にある。
【0026】
バインダーは熱可塑性であってもよい。熱可塑性ポリマーの例は、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリアクリル酸、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリベンゾオキサゾール、ポリフタリド、ポリアセタール、ポリ無水物、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリビニルハライド、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスルホネート、ポリスルフィド、ポリチオエステル、ポリスルホン、ポリスルホンアミド、ポリ尿素又はフッ素化ポリマーである。上述の熱可塑性ポリマーの少なくとも1つを含む組合せを使用してもよい。
【0027】
バインダーは熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。熱硬化性ポリマーの例としては、エポキシポリマー、不飽和ポリエステルポリマー、ポリイミドポリマー、ビスマレイミドポリマー、ビスマレイミドトリアジンポリマー、シアン酸エステルポリマー、ビニルポリマー、ベンゾオキサジンポリマー、ベンゾシクロブテンポリマー、アクリルポリマー、アクリレートポリマー、メタクリレートポリマー、ポリアルキド、フェノール-ホルムアルデヒドポリマー、ノボラックポリマー、レゾールポリマー、メラミン-ホルムアルデヒドポリマー、尿素-ホルムアルデヒドポリマー、ポリヒドロキシメチルフラン、ポリイソシアネート、ジアリルフタレートポリマー、トリアリルシアヌレートポリマー、トリアリルイソシアヌレートポリマー又は不飽和ポリエステルイミドが挙げられる。上述の熱硬化性ポリマーの少なくとも1つを含む組合せをバインダーとして使用してもよい。
【0028】
一態様において、バインダーは、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との組合せを含み得る。ブロックコポリマーの使用が挙げられる。
【0029】
バインダーとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ラテックス、ポリエチレン又はそれらの組合せの使用が挙げられる。
【0030】
バインダーは、アルミニウムアノードの総重量をベースとして0.1重量%~5重量%、0.2重量%~3重量%又は0.5重量%~1重量%の量でアルミニウムアノードに含まれ得る。
【0031】
アノードは、アノードの総体積をベースとして0.01%~50%、0.5%~25%又は1%~10%の空隙率を有し得る。空隙率は、例えばアルキメデス法によって決定し得る。
【0032】
アルミニウム空気電気化学セルにおけるカソードは、雰囲気又は酸素源、及びセルの水性電解質にそれぞれ曝される対向面を有する多孔性シート状部材、例えばカーボンペーパーとし得る。セル動作中に、カソード内で酸素が還元される一方でアノードのアルミニウムが酸化されて、アノードとカソードとの間に接続された外部回路を通る使用可能な電流の流れがもたらされる。カソードには、導電性要素、例えばカーボンペーパーに接合された金属タブが組み込まれていることが望ましく、これに外部回路を接続し得る。
【0033】
一態様において、カソード120は、カソード120の表面上に設けられ得る触媒金属層を備えていてもよい。例えば、触媒金属層を表面145上に設けてもよく、又は炭素マトリックスの間隙面に設けてもよい。触媒金属層を堆積させる任意の好適な方法を用いて、触媒金属層をカソード上に設けることができる。
【0034】
一例において、カソード120は、触媒層又は触媒コーティングメッシュ構造であり得る構造125を備えていてもよい。構造125は、金属メッシュ又はポリマーメッシュであってもよい。幾つかの例において、メッシュは貴金属、例えば銀で形成されていてもよい。一態様において、メッシュ125は、金属コーティングナイロンメッシュであってもよい。他の任意の好適な触媒を用いて、カソードでの酸素の還元を更に促進し得る。幾つかの例において、触媒を多孔性カソード120上に直接コーティングしてもよく、又は例えば酸素透過性接着剤で接着することによってカソードに取り付けることができる付加的な構成要素125として提供してもよい。一態様において、構造125は、好適な酸素透過性接着剤を用いてカソード120に接合される複数の触媒金属コーティング粒子であってもよい。幾つかの例において、カソードは、複数の炭素粒子と触媒金属コーティング粒子とを接合することによって形成してもよい。一態様において、構造125は、多孔性カソード120の反対側、例えば内表面140に隣接して設けてもよい。
【0035】
電解質110は、特定の用途においてアノード105で使用される特定の材料に適切であり得るように選択し得る。電解質は流動していても又は静止していてもよい。一態様において、電解質110は、アノード105の酸化を促進するように構成された任意の好適な塩基、酸又は塩の溶液であり得る。幾つかの例において、電解質110を液体(例えば水溶液)として提供してもよく、又はゲル層(例えばハイドロポニックゲル(hydroponic gel)電解質)として提供してもよい。一態様において、電解質110は、限定されるものではないが、カリウム、ナトリウム、カルシウム、アルミニウム、アンモニウム及び/又は他のイオンを含む電解質塩を含んでいてもよい。電解質塩の例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸アルミニウム又はそれらの組合せが挙げられる。電解質塩の濃度は、水又はブライン等の水性媒体中で1モル/リットル(M)~10M、2M~9M又は3M~8Mであり得る。
【0036】
電解質は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスズ酸塩、クエン酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、ハロゲン化物又はそれらの組合せ等の添加剤を含んでいてもよい。スズ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、フッ化ナトリウム又はそれらの組合せの使用が挙げられる。上述の少なくとも1つを含む組合せを使用してもよい。添加剤の含有量は、電解質の総重量をベースとして0.0001重量%~0.01重量%、0.0005重量%~0.005重量%であり得る。電解質の総重量をベースとして0.001重量%~0.01重量%の量のスズ酸ナトリウムの使用が挙げられる。態様においては、電解質は海水を含み、電解質が海水を含む態様においては、電解質は、クエン酸ナトリウム等のクエン酸塩を更に含む。塩化ナトリウム、例えば海水を含む電解質の使用が挙げられる。電解質の総重量をベースとして、0.1重量%~5重量%又は0.5重量%~5重量%の塩化ナトリウム及び0.1重量%~20重量%又は1重量%~10重量%のクエン酸ナトリウムの使用が開示される。電解質の総重量をベースとして18重量%のクエン酸ナトリウムと3重量%のNaClとを含む電解質も挙げられる。10M、2M~9M又は3M~8Mの水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はそれらの組合せと、電解質の総重量をベースとして0.001重量%~0.01重量%の量のスズ酸ナトリウムとを含む水性電解質が更に挙げられる。
【0037】
アノード105が粒子状で設けられる例においては、アノード105を例えば電解質110に浸漬して、ペーストを形成してもよい。アノード105が多孔性構造として実装される態様においては、電解質110は、アノード105の細孔に浸透し、表面領域の接触の増加をもたらすように配置してもよい。
【0038】
態様においては、固体電解質又はゲル電解質の使用が望ましい場合がある。例えば、僅かな蒸気圧、漏出の低い確率又は非常に低い可能性を有する電解質が用途に利益をもたらす場合がある。
【0039】
電池内の電解質は、
【0040】
【化1】
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して非イオン性置換基を含む)のような構造を有するカチオンを含むイオン液体電解質を含んでいてもよい。電解質は、AlCl 、CFSO 、B(CO 、N(SOCFCF 、N(SOCF 、N(SOF) 、PF 、BF 及びBF4-x(C2n+1)x(式中、x=1、2又は3であり、n=1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である)を含むアニオンを含んでいてもよい。
【0041】
一態様において、電池内の電解質は、高い誘電率を有する有機溶媒に溶解したイオン成分を含む。一態様において、有機溶媒はカーボネート又はスルホンであり、プロピレンカーボネート、エチルメチルスルホン、エチルメトキシエチルスルホン、メトキシエチルメチルスルホン又はそれらの組合せを含み得る。
【0042】
電解質複合体の使用も開示される。複合体は、例えば米国特許第10,553,901号明細書(その内容全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に開示されているようにポリマー、ドーパント及びイオン源を含み得る。
【0043】
一態様において、ポリマーは共役ポリマーである。ポリマーの非限定的な例としては、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリ(p-フェニレンオキシド)(PPO)、液晶ポリマー(例えば結晶性ポリエステル)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリピロール、ポリアニリン又はポリスルホンが挙げられる。上述のポリマーのいずれかのモノマーを含むコポリマーの使用も開示される。混合物を使用してもよい。例えば、p-ヒドロキシ安息香酸のコポリマーが挙げられる。ポリフェニレンスルフィドの使用も挙げられる。
【0044】
ドーパントは、電子受容体又は酸化体であってもよい。代表的な電子ドーパントとしては、キノン、例えば「DDQ」としても知られる2,3-ジシアノ-5,6-ジクロロジシアノキノン(CCl)、クロラニルとしても知られるテトラクロロ-1,4-ベンゾキノン(CCl)、TCNEとしても知られるテトラシアノエチレン(C)、三酸化硫黄(「SO」)、オゾン(三酸素又はO)、酸素(O、空気を含む)、二酸化マンガン(「MnO」)を含む遷移金属酸化物、又は任意の好適な電子受容体、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0045】
イオン源はLiO、LiOH、LiNO、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiB(C、「LiBOB」)、リチウムトリフルオロメタンスルホネート(リチウムトリフレート、LiCFS)、LiPF(リチウムヘキサフルオロホスフェート)、LiBF(リチウムテトラフルオロボレート)、LiAsF(リチウムヘキサフルオロアルセネート)又はそれらの組合せを含み得る。これらの化合物の水和形態(例えば一水和物)を、化合物の取扱いを簡単にするために使用することができる。無機酸化物、塩化物及び水酸化物は、合成中に解離して少なくとも1つのアニオン性拡散イオン及びカチオン性拡散イオンを生じるという点で好適なイオン化合物である。LiO、NaO、MgO、CaO、ZnO、LiOH、KOH、NaOH、CaCl、AlCl、MgCl、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)又はそれらの組合せの使用が挙げられる。
【0046】
一態様において、電解質/アノードアセンブリと、カソードとの間に分離膜115を設けてもよい。膜115は、ガス及びイオンの交換に適するように選択することができる。また、例えば流動電解質セルにおいて電解質の移動が望まれる場合、スクリーン、例えばメッシュを使用することができる。スクリーンは、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン又はそれらの組換えを含み得る。市販のポリエチレンスクリーンの一例はVEXARである。一態様において、膜115は多孔質膜であってもよく、例えば電解質の蒸発を防ぐために好適な空隙率を有し得る。一態様において、アノードを構造的に支持するために、任意の膜115を、アノード/電解質アセンブリを囲む及び/又は含むように設けてもよい。理解されるように、膜115は、使用される場合、所望の透過性、例えば所望されるガス/液体及び/又はイオンの交換、並びにセルの所望の形状をもたらすのに望ましい構造的機能性を与えるように選択的に調整することができる。このため、一態様において、電解質/アノードアセンブリと空気カソードとの間に、ガス及びイオンの交換に適した膜115を設けてもよい。
【0047】
電気化学セルは、高分子膜135を備えていてもよく、これは選択透過性膜であってもよく、アノード-カソードアセンブリの外表面に配置することができる。一態様において、膜135を電気化学セル100の外表面150に沿って設けてもよい。一態様において、表面145は電気化学セルの外表面であってもよい。一態様において、膜135は電気化学セル100の外周の一部又は全部に広がっていてもよい。理解され得るように、中央のアノードが電解質及び空気カソードに浸漬し、及び/又は取り囲まれる両面構成を実装することができる。
【0048】
一態様において、膜135はガス透過性膜であってもよい。例えば、酸素又は他のガスが膜135を通り抜けるのを可能にする一方で、水等の液体が膜135を透過するのを防ぐことができる。幾つかの例において、膜は多孔性であってもよく、細孔径は、部分的に、遮断されるか又は膜を通り抜けることが望まれる分子の分子サイズをベースとしたものであり得る。幾つかの例において、膜135の透過性は、或る特定の分子が膜を透過するのを可能にする一方で、或る特定の他の分子が膜を透過するのを防ぐように調整することができる。幾つかの例において、膜135は疎水性材料でコーティングされるか、又は疎水性材料を含むことができる。幾つかの例において、膜135は、例えばエチレン等のポリマーから形成され得る。
【0049】
理解され得るように、膜135は、特定の用途に適し得る厚さを有するように選択することができる。膜135は、酸素透過性微孔性ポリエチレン膜を含み得る。酸素透過性膜は、カソード120でのガス交換を促進するために周囲空気と空気カソード120との間に配置することができる。
【0050】
態様においては、電気化学(electrical electrochemical)セルは、例えば米国特許第5,434,020号明細書(その内容全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に開示されているように流動構成を備えていてもよい。流動構成を有するセルを図2に示す。テーパー状電気化学セル40では、ギャップ(又はセル幅)寸法42が変化する。アルミニウム合金の電気化学的に活性な粒子44が、アノード集電体52と多孔性電気絶縁セパレーター54との間に含まれ、セパレーター54は、内部集電体57を有するガス拡散カソード、例えば空気カソード56に接続している。酸素を含むガス、例えば空気は、取込み口46から流れ込み、空気カソード56に隣接する空気流チャンバ48を通り、空気出口50から流れ出る。正電流リード58及び負電流リード60が、それぞれカソード集電体57及びアノード集電体52に接続される。粒子床62には電解質溶液が浸透し、電解質溶液は通例、セル40の狭い方の端64から入り、広い方の端66から出る。逆の流れも可能である。
【0051】
セルはモノポーラ構成又はバイポーラ構成を有し得、静止アノライト若しくは流動アノライト、及び/又は静止カソライト若しくは流動カソライトを有し得る。バイポーラ流動アナライトを有するセルを図3に示す。モノポーラ構成も挙げられ、当業者であれば過度な実験なしに提供することができる。モノポーラ構成及びバイポーラ構成を図4に示す。
【0052】
図3に示すように、セル390はバイポーラ電気直列接続用に構成され、並列又は直列に接続し得るテーパー状又はV字形の単機能セルを有する。バイポーラセルにおいては、電流の流れは、セル全体を通して電極と実質的に垂直である。電流は、セル本体を通り、外部リード又はバスを使用することなく、電気的に直列に接続された隣接セルへと流れる。明確にするために、図3の寸法(特に要素96と要素94との間のテーパー角度(included angle))は大幅に強調されている。
【0053】
アノード材料は、開示のアルミニウム合金粒子を含む。アルミニウム粒子は、アルカリ又はハロゲン化物の溶液又は懸濁液中であってもよい。
【0054】
粒子392が、ニッケルで電気めっきした銅のシートのような導電性伝達プレート394と、湿潤性膜(例えばポリマーファブリック)のような非電子導電性の多孔性電極間セパレーター396との間に含まれる。ポリエチレンメッシュ、例えばVEXARの使用が挙げられる。金属スクリーン(例えば、ニッケルめっき銅スクリーン又は展伸有孔金属シート)のようなアノード集電体398が、セパレーター396に支えられ、粒子392と電気的に接触する。
【0055】
アノード集電体398は、垂直な金属製又は金属化プラスチックリブ3100にスポット溶接又ははんだ付けすることができる。リブ3100は、アノード室3102の寸法を画定し、アノード集電体398と伝導性伝達プレート394との間に低抵抗の電子導電性パスをもたらす。リブ3100は、電解質が流れることができる穴3104を有する一連の有孔縦長プレートである。スクリーン又は無孔リブを含む、リブ3100の他の機能設計が可能である。線接触リブは、空気電極の縁の周辺伝導性フレームで補完することができ、フレームは、空気電極の内部の金属製集電体にはんだ付けすることができる。
【0056】
電解質は、電解質取込みマニホールド3106からセル390に入り、セルの空洞又は粒子392の粒子床を含むアノード室3102を通って拡散し、電解質排出口3108から出る。電解質の流れは、図示のように下から上であっても、又は代替的には上から下であってもよい。
【0057】
セパレーター396の反対側は、内部集電体(図示せず)を有する空気電極のようなガス拡散電極3110に支えられる。空気電極3110は、酸化体チャンバ、例えば空気流チャンバ3112の表面を形成し、酸化体、例えば空気電極3110の乾燥側の空気の循環を可能にするように設けられる。空気は、空気取込み口3114から入り、チャンバ3112を循環し、空気出口3116から出る。空気電極3110は、導電性リブ3118の格子に支持され、これが空気電極3110と伝導性伝達プレート3120とを接続する。
【0058】
リブ3118と空気電極3110の乾燥伝導側との間の電気的接触は、粒子床の質量から生じる、リブ3118と空気電極3110との間の圧縮力によって維持される。この場合も、リブ3118は、ガス通路として機能する穴3122を有する一連の有孔縦長プレートである。空気電極3110の電流は、伝導性格子を通って伝達プレート3120へと流れ、伝達プレート3120を通って、この伝達プレートによって囲まれた隣接アノード室(図示せず)へと流れる。広い表面(すなわち、空気電極3110及び伝達プレート94,120)の間のテーパー角度は、約0.1°~3°の範囲であるのが好ましい。
【0059】
図3は、アノード室3102に重力によって連続的に供給される未消費の粒子392のホッパー又はリザーバ3124として機能するオーバーレイ部分を有する電気化学セル390を示す。セル390のリザーバ3124部分は、粒子392のより大部分を収容するために幅が拡大され、ブリッジングを防ぎ、セル390への粒子392の自由な流れを可能にするために、好ましくは供給粒子392の直径の5倍よりも大きい幅を有する。粒子392及び電解質のスラリーは、開口部3126を通って管又は導管3128からリザーバ3124へと移送され、これにより機械的再補給動作中のスラリー混合物の高速移送が可能になる。このダクト3128は、放電中は空である。セル390は、好ましくはポリマー(例えば、中空ガラス球を充填した射出成形ポリプロピレン、塩素化ポリ塩化ビニル又はエポキシ樹脂)で形成される非伝導性ハウジング3130に収容される。
【0060】
カソライトが流動する構成も挙げられる。流動カソライト構成の詳細は、上に開示した流動アノライト構成と類似していてもよく、当業者であれば過度な実験なしに決定することができる。
【0061】
アルミニウムアノードを製造する方法も開示する。
【0062】
一態様においては、アルミニウム合金粒子の粒子は、バインダーを用いて接合されていてもよい。アルミニウム電気化学セル用のアノードを製造する方法は、バインダー及び液状媒体とを含む液体を準備することと、アルミニウムと、マグネシウム、ガリウム、スズ又はそれらの組合せを含むドーパントとを含み、且つ1マイクロメートル~50マイクロメートルの粒径を有するアルミニウム合金を液体と接触させて、スラリーを形成することと、スラリーを基板上に配置することと、スラリーを熱処理して、液状媒体を除去し、電極前駆体を形成することと、電極前駆体を熱処理して、アルミニウム電気化学セル用のアノードを形成することとを含み得る。液体の除去に適した温度は、10℃~200℃又は20℃~100℃であり得る。また、電極前駆体の熱処理は、100℃~500℃又は200℃~400℃で熱処理することを含んでいてもよい。
【0063】
液状媒体は水を含んでいてもよい。この態様においては、液状媒体は、任意の好適な有機溶媒、例えばプロピレンカーボネート等のカーボネート、又はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を含み得る。水と有機溶媒との組合せを使用することができる。
【0064】
一態様において、アノードは、アルミニウム合金粒子を圧縮してアノードを形成することによって形成することができる。アノードを製造する方法は、アルミニウムと、マグネシウム、ガリウム、スズ又はそれらの組合せを含むドーパントとを含み、且つ1マイクロメートル~50マイクロメートルの粒径を有するアルミニウム合金を準備することと、アルミニウム合金を基板上に配置することと、アルミニウム合金を圧縮してアノードを形成することとを含み得る。圧縮は、粒子を接合するのに適した圧力、例えば1メガパスカル~1ギガパスカルの圧力で圧縮することを含んでいてもよい。
【0065】
一態様において、温度と圧力との組合せを使用してもよい。この態様においては、粒子を熱プレスにおいて好適な温度、例えば500℃~1,300℃、600℃~1,200℃又は700℃~1,100℃にて好適な圧力、例えば1メガパスカル~1ギガパスカルでプレスすることができる。
【0066】
一態様において、アルミニウム電気化学セル用のアノードを製造する方法であって、バインダー及び液状媒体を含む液体を準備することと、アルミニウムと、マグネシウム、ガリウム、スズ又はそれらの組合せを含むドーパントとを含み、且つ1マイクロメートル~50マイクロメートルの粒径を有するアルミニウム合金を液体と接触させて、スラリーを形成することと、スラリーを基板上に配置することと、スラリーを熱処理して液状媒体を除去し、電極前駆体を形成することと、電極前駆体を、例えば500℃~1,300℃、600℃~1,200℃又は700℃~1,100℃で熱処理して、アルミニウム電気化学セル用のアノードを形成することとを含む、方法が開示される。
【実施例
【0067】
アルミニウムと、0.07重量%のスズと、0.5重量%のマグネシウムと、0.001重量%のガリウムとを含み、0.00001重量%未満の鉄、銅、ケイ素、亜鉛及びニッケルの総含有量を有するアルミニウム合金を、光散乱によって決定される40マイクロメートル~60マイクロメートルの粒径を有する粒子の形態で準備した。アルミニウム合金をバインダーと合わせ、得られたものを加熱基板上に配置し、500℃の温度で30分間、50メガパスカルで圧縮してアノードを得た。アノードは、アルキメデス法によって決定されるように、アノードの総体積をベースとして40%~60%の空隙率を有していた。
【0068】
アノードを、45重量%のKOHとスズ酸ナトリウムとを含むアルカリ性電解質、及び酸化銀カソードを有するアルミニウム空気電気化学セルにおいて放電させた。結果を図5に示す。
【0069】
アルミニウム電気化学セル用のアノードであって、アノードが、1マイクロメートル~60マイクロメートルの粒径を有するアルミニウム合金を含み、アルミニウム合金が、それぞれアルミニウム合金の総重量をベースとして98重量パーセント~99.999重量パーセントのアルミニウムと、0.001重量パーセント~2重量パーセントのマグネシウム、ガリウム、スズ又はそれらの組合せを含むドーパントとを含み、鉄、銅、ケイ素、亜鉛及びニッケルが、アルミニウム合金中に存在する場合、それぞれ独立して、アルミニウム合金の総重量をベースとして0.001重量パーセント未満の量で含まれ、アノードの空隙率が、アノードの総体積をベースとして0.1%~60%であるアノードが開示される。
【0070】
アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間の電解質とを備える電気化学セルが開示される。
【0071】
セルを複数備えるアルミニウム電池が開示される。
【0072】
アルミニウム電気化学セル用のアノードを製造する方法であって、バインダー及び液状媒体を含む液体を準備することと、アルミニウムと、マグネシウム、ガリウム、スズ又はそれらの組合せを含むドーパントとを含み、且つ1マイクロメートル~60マイクロメートルの粒径を有するアルミニウム合金と、バインダー及び液状媒体を含む液体とを接触させて、スラリーを形成することと、スラリーを基板上に配置することと、スラリーを熱処理して、液状媒体を除去し、電極前駆体を形成することと、電極前駆体を熱処理して、アルミニウム電気化学セル用のアノードを形成することとを含む、方法が開示される。
【0073】
アルミニウム電気化学セル用のアノードを製造する方法であって、バインダー及び液状媒体を含む液体を準備することと、アルミニウムと、マグネシウム、ガリウム、スズ又はそれらの組合せを含むドーパントとを含み、且つ1マイクロメートル~60マイクロメートルの粒径を有するアルミニウム合金を液体と接触させて、スラリーを形成することと、スラリーを基板上に配置することと、スラリーを第1の温度で熱処理して、液状媒体及び任意にバインダーを除去し、電極前駆体を形成することと、電極前駆体を第2の温度で熱処理して、アルミニウム電気化学セル用のアノードを形成することとを含み、第1の温度が第2の温度よりも低い、方法が開示される。
【0074】
アルミニウム電気化学セル用のアノードを製造する方法であって、アルミニウムと、マグネシウム、ガリウム、スズ又はそれらの組合せを含むドーパントとを含み、且つ1マイクロメートル~60マイクロメートルの粒径を有するアルミニウム合金を準備することと、アルミニウム合金を基板上に配置することと、アルミニウム合金を圧縮して、アノードを形成することとを含む、方法が開示される。
【0075】
上述の実施形態のいずれにおいても、バインダーは、アノードの総重量をベースとして0.1重量パーセント~5重量パーセントの量で存在していてもよく、アノードは、200m/g~800m/gの比表面積を有する。電解質は水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム又はそれらの組合せを含んでいてもよく、任意に、電解質はスズ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム又はそれらの組合せを更に含んでいてもよい。カソードは、空気と接触するように構成されていてもよく、カソードは、酸素と接触するように構成されていてもよく、カソードは、過酸化水素と接触するように構成されていてもよい。セルはバイポーラ構成を有していてもよく、カソードは金属酸化物を含んでいてもよく、金属酸化物は酸化銀、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化カドミウム又はそれらの組合せを含んでいてもよく、金属酸化物は、0.1マイクロメートル~10マイクロメートルの粒径を有していてもよく、金属酸化物は、1マイクロメートル~10マイクロメートルの粒径を有する酸化銀を含んでいてもよい。圧縮は、500℃~1,200℃の温度にて1メガパスカル~1ギガパスカルで熱間圧接することを含んでいてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】