(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】大容量の安定なレバミピド点眼剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4704 20060101AFI20240628BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240628BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240628BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240628BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61K31/4704
A61K9/08
A61K47/38
A61K47/18
A61K47/04
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/24
A61P27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501882
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 KR2022010217
(87)【国際公開番号】W WO2023287199
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0092223
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519209897
【氏名又は名称】ダエウー ファーマシューティカル インダストリー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DAEWOO PHARMACEUTICAL IND. CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】リム, チャン ペク
(72)【発明者】
【氏名】ド, ヒョン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ボ ラム
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヒョ チョル
(72)【発明者】
【氏名】ジ, ヨン フン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD22
4C076DD22Z
4C076DD30Z
4C076DD38D
4C076DD42Z
4C076DD43
4C076DD43Z
4C076DD51
4C076DD51Z
4C076DD63
4C076DD67D
4C076EE32Q
4C076FF14
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4C076GG41
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4C086AA01
4C086BC28
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA02
4C086NA03
4C086ZA33
(57)【要約】
本発明は、大容量の安定なレバミピド点眼剤を製造する方法に関し、より詳しくは、本発明は、レバミピド又はその薬学的に許容される塩を、pHが11以上であり、水の量が特定容積以上に調節された水溶液を用いて可溶化及び/又はpH7~8になるように調整することによって、製造工程時間を短縮し、かつ大容量の安定なレバミピド点眼組成物を製造する方法に関するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)安定化剤として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択されたセルロース誘導体に塩基を加え、85容積%以上の水に溶解して、pH11を超える水溶液を得る工程;
(ii)前記工程(i)で得られた水溶液に、有効成分としてレバミピド又はその薬学的に許容される塩を加えた後、可溶化する工程;
(iii)前記工程(ii)で得られた水溶液に、アミノカプロン酸、ホウ酸及びそれらの混合物からなる群から選択された緩衝剤、及びソルビトール、マンニトール、デキストロース、スクロース、グリセリン及びそれらの混合物からなる群から選択された浸透圧調節剤を加えて溶解した後、酸(acid)でpH7~8に調整する工程;及び
(iv)前記工程(iii)で得られた水溶液を滅菌する工程;
を含むレバミピド点眼組成物の製造方法。
【請求項2】
(i)安定化剤として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択されたセルロース誘導体に塩基を加え、60容積%以上の水に溶解して、pH11を超える水溶液を得る工程;
(ii)前記工程(i)で得られた水溶液に、有効成分としてレバミピド又はその薬学的に許容される塩を加えた後、可溶化する工程;
(iii)前記工程(ii)で得られた水溶液に、アミノカプロン酸、ホウ酸及びそれらの混合物からなる群から選択された緩衝剤、及びソルビトール、マンニトール、デキストロース、スクロース、グリセリン及びそれらの混合物からなる群から選択された浸透圧調節剤を加えて溶解した後、水を加えて水溶液の85容積%以上になるようにした後、酸(acid)でpH7~8に調整する工程;及び
(iv)前記工程(iii)で得られた水溶液を滅菌する工程;
を含むレバミピド点眼組成物の製造方法。
【請求項3】
前記工程(i)において、安定化剤を70~100℃の高温水に溶解することを特徴とする請求項1又は2に記載のレバミピド点眼組成物の製造方法。
【請求項4】
前記工程(i)において、pH12以上の水溶液を得ることを特徴とする請求項1又は2に記載のレバミピド点眼組成物の製造方法。
【請求項5】
前記工程(i)において、88~92容積%の水を用いて水溶液を得ることを特徴とする請求項1に記載のレバミピド点眼組成物の製造方法。
【請求項6】
前記工程(iii)において、水を加えて水溶液の88~92容積%になるようにすることを特徴とする請求項2に記載のレバミピド点眼組成物の製造方法。
【請求項7】
前記工程(i)において、塩基が水、酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のレバミピド点眼組成物の製造方法。
【請求項8】
前記工程(i)において、安定化剤が、0.1~1w/v%の濃度で用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載のレバミピド点眼組成物の製造方法。
【請求項9】
前記工程(ii)において、有効成分としてレバミピド又はその薬学的に許容される塩が、1~2w/v%の濃度で用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載のレバミピド点眼組成物の製造方法。
【請求項10】
前記工程(iii)において、緩衝剤が、0.1~2w/v%の濃度で用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載のレバミピド点眼組成物の製造方法。
【請求項11】
前記工程(iii)において、浸透圧調節剤が、1~5w/v%の濃度で用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載のレバミピド点眼組成物の製造方法。
【請求項12】
前記工程(iii)において、酸が、塩酸、クエン酸、酒石酸及びコハク酸からなる群から選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載のレバミピド点眼組成物の製造方法。
【請求項13】
前記工程(iii)において、キレート剤がさらに溶解されることを特徴とする請求項1又は2に記載のレバミピド点眼組成物の製造方法。
【請求項14】
前記キレート剤が、エデト酸、クエン酸、メタリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、リンゴ酸、酒石酸、フィチン酸、そのアルカリ金属塩及び水和物からなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載のレバミピド点眼組成物の製造方法。
【請求項15】
前記キレート剤が、0.01~0.1w/v%の濃度で用いられることを特徴とする請求項13に記載のレバミピド点眼組成物の製造方法。
【請求項16】
前記工程(iv)において、滅菌が、フィルターでろ過することによって行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のレバミピド点眼組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大容量の安定なレバミピド点眼剤を製造する方法に関し、より詳しくは、本発明は、レバミピド又はその薬学的に許容される塩を、pHが11以上であり、水の量が特定容積以上に調節された水溶液を用いて可溶化及び/又はpH7~8になるように調整することによって、製造工程時間を短縮し、かつ大容量の安定なレバミピド点眼組成物を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国内のドライアイ患者は毎年増加し、2004年度110万人から2014年214万人に増加する傾向にあり、これにより多くの患者が日常生活に不便を経験しており、生活の質が低下し、ひどくなると視力が損なわれる苦痛を受けている。ドライアイの原因は様々であるが、治療剤は限られている。ドライアイ治療剤としては、免疫抑制剤であるシクロスポリン、粘液質分泌を促進するDiquasol(登録商標)とレバミピド、ドライアイ防止及び上皮細胞の治癒を促進するヒアルロン酸点眼液などが販売されている。
【0003】
このうち、レバミピドはムチンを促進し、粘液を分泌してドライアイに効果があると言われており、現在、日本でMucostar(登録商標)UD2%懸濁点眼液として販売されている。この製品は、白色の懸濁剤になっている製品で、懸濁剤で発生する灼熱感、チクチク感、目のかすみなどの副作用が発生する問題があった。また、製造においても溶液状態の製剤と比較して、ろ過滅菌や蒸気滅菌ができず、滅菌に必要な工程設計が複雑になり、無菌性の品質管理と保証に多くの困難があった。これを克服するために、点眼に安全で有効な新しい溶液状態の点眼液の開発が必要である。
【0004】
このような溶液状態の点眼液に対する先行文献として、最初にレバミピド点眼剤を開発した大塚製薬が出願した特許文献1には、溶液状態の製造について開示しているが、別途の溶解添加剤を用いて、当該点眼液がpH8.3~9.3であり、点眼投与時に刺激感と粘膜損傷が懸念される条件として記載されている。
【0005】
通常の点眼剤のpHは8を越えないことが好ましく、体液と同じpH7~pH8の範囲が生体適合性である。レバミピドは、水ではほとんど溶けず、pHが塩基性に高くなるほど溶解度が増加し、溶解しやすい。しかし、塩基性で可溶化されたレバミピドは、生体範囲のpHに下げると、急激な溶解度低下によって沈殿が発生する。
【0006】
特許文献2には、レバミピドを含む水溶液の安定性維持のために、粘度増強剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、等張化剤としてグリコール類を、緩衝剤として無機塩を使用する組成物が開示されている。しかし、特許文献2の組成物も弱アルカリ性で溶解され、長時間放置すると沈殿物が形成される問題があった。
【0007】
特許文献3には、アミノ酸と溶解補助剤であるポリビニルピロリドンとマクロゴールなどを使用して製造した水溶液状態の点眼液組成物を開示されている。しかし、主な添加剤であるマクロゴールは、点眼剤として使用され難い。マクロゴールは通常、難溶性物質の可溶化に使用されているが、点眼用途として使用するばあい、眼粘膜に刺激感を与える可能性がり、少量しか使用できず、安全性の側面から使用を排除するのが良い。特に、ドライアイのように再発しやく、長期間使用しなければならない製剤では、マクロゴールの使用を排除するのが好ましい。
【0008】
このような副作用を最小限に抑えるために、特許文献4には、レバミピドを塩基とともに水で、pH8.5以上で溶解させた後、再結晶防止剤としてシクロデキストリン類を使用してレバミピドを包接し、透明な溶液状態を維持しながら可溶化する製剤方法が開示されている。シクロデキストリンは、USPに封鎖剤(sequestering agent)で紹介されている。欧州FDAで許可されたVoltarenという製品は、ヒドロキシプロピルγ-シクロデキストリンを使用し、含量は2%を使用し、Indocid製品は、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを主成分とモル比で25倍、すなわち、主成分0.1%の場合、4.3%のシクロデキストリンを使用することが記載されている(特許文献5参照)。しかし、Jansen Tらの文献では、シクロデキストリン類が5%以上で角膜に毒性を引き起こす可能性があり、眼科用製剤には適していないと明らかにしている(非特許文献1)。
【0009】
特許文献4は、シクロデキストリンがレバミピド又はその薬学的に許容される塩の1.5~6倍の重量比で使用され、3%から12%が使用されると記載している。これは3%以上でのシクロデキストリン類の医薬品賦形剤としてのデータがないため、追加の毒性データを提出しなければならないという問題があった。また、実施例でもpHは8以上に製造することにより、生体適合性の問題を依然として抱えていることがわかる。前記発明は、水溶液状態の点眼液を開示しているが、その水溶液状態の安定性試験を一部の条件に対して限られた期間のみ行ったため、完全な溶液状態の安定化を達成したと評価することは困難がある。従って、当該発明から十分に安全で安定した点眼用水溶液が開発される必要がある。
【0010】
また、特許文献6にもシクロデキストリン類とアミノ酸を使用した水溶液点眼組成物が記載されているが、前記発明と同じ問題を抱えていた。
【0011】
一方、本発明者らは、セルロース誘導体が難溶性レバミピドを可溶化させた後、生体適合のpH範囲に調整しても、長期間安定した状態を維持できることを見出し、セルロース誘導体類を安定化剤として選択してレバミピドをpH10~11で可溶化する発明を完成し、特許文献7として登録された。しかし、特許文献8の発明では、100L以上の大容量で生産する場合、レバミピドの可溶化時間が長くなり、製造単価上昇の重要な要因となることが分かった。そこで、レバミピドの可溶化時間を短縮し、効率的に安定した水溶性点眼液を製造できる方法の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国 特開第1999-0064187号
【特許文献2】WO 2008/074853号
【特許文献3】韓国 特開第10-2011-0027786号
【特許文献4】韓国 特開第10-2017-0022598号
【特許文献5】US 08/706,268
【特許文献6】韓国 特開第10-2017-0039347号
【特許文献7】韓国 特許第10-1840256号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Lens Eye Toxic Res. 1990;7(3-4):459-68.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明の目的は、生産工程時間を短縮し、かつ大容量の安定なレバミピド点眼組成物を製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記技術的課題を解決するために、本発明は、(i)安定化剤として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択されたセルロース誘導体に塩基を加え、85容積%以上の水に溶解して、pH11を超える水溶液を得る工程;(ii)前記工程(i)で得られた水溶液に、有効成分としてレバミピド又はその薬学的に許容される塩を加えた後、可溶化する工程;(iii)前記工程(ii)で得られた水溶液に、アミノカプロン酸、ホウ酸及びそれらの混合物からなる群から選択された緩衝剤、及びソルビトール、マンニトール、デキストロース、スクロース、グリセリン及びそれらの混合物からなる群から選択された浸透圧調節剤を加えて溶解した後、酸(acid)でpH7~8に調整する工程;及び(iv)前記工程(iii)で得られた水溶液を滅菌する工程;
を含むレバミピド点眼組成物の製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、(i)安定化剤として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択されたセルロース誘導体に塩基を加え、60容積%以上の水に溶解して、pH11を超える水溶液を得る工程;(ii)前記工程(i)で得られた水溶液に、有効成分としてレバミピド又はその薬学的に許容される塩を加えた後、可溶化する工程;(iii)前記工程(ii)で得られた水溶液に、アミノカプロン酸、ホウ酸及びそれらの混合物からなる群から選択された緩衝剤、及びソルビトール、マンニトール、デキストロース、スクロース、グリセリン及びそれらの混合物からなる群から選択された浸透圧調節剤を加えて溶解した後、水を加えて水溶液の85容積%以上になるようにした後、酸(acid)でpH7~8に調整する工程;及び(iv)前記工程(iii)で得られた水溶液を滅菌する工程;を含むレバミピド点眼組成物の製造方法を提供する。
【0017】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0018】
本発明では、別途の可溶化剤や溶解補助剤を使用せず、レバミピドを可溶化するための塩基性物質を使用して、水溶液をpH11が超えるように調整した後、レバミピドを水溶液状態で溶解し、人体に無害な安定化剤、緩衝剤及びノニオン性浸透圧調節剤を使用し、水が水溶液の85容積%以上を占める水溶液をpH7~8に調整することによって、レバミピド点眼組成物を製造する。
【0019】
本発明の一側面によれば、(i)安定化剤として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択されたセルロース誘導体に塩基を加え、85容積%以上の水に溶解して、pH11を超える水溶液を得る工程;(ii)前記工程(i)で得られた水溶液に、有効成分としてレバミピド又はその薬学的に許容される塩を加えた後、可溶化する工程;(iii)前記工程(ii)で得られた水溶液に、アミノカプロン酸、ホウ酸及びそれらの混合物からなる群から選択された緩衝剤、及びソルビトール、マンニトール、デキストロース、スクロース、グリセリン及びそれらの混合物からなる群から選択された浸透圧調節剤を加えて溶解した後、酸(acid)でpH7~8に調整する工程;及び(iv)前記工程(iii)で得られた水溶液を滅菌する工程;を含むレバミピド点眼組成物の製造方法が提供される。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(i)において、安定化剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methylcellulose, hypromellose)、メチルセルロース(methylcellulose)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropyl cellulose)及びヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose)からなる群から選択されたセルロース誘導体に塩基(base)を加え、水溶液全容積に対して、85容積%以上の水に溶解して、pH11を超える水溶液を得る。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(i)において、安定化剤を高温、例えば、70~100℃の水に溶解していてもよい。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(i)において、安定化剤を高温水に溶解した後、25~30℃に冷却してから塩基を加える。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(i)において、安定化剤としてセルロース誘導体に塩基を加え、88容積%以上の水に溶解していてもよい。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(i)において、安定化剤としてセルロース誘導体に塩基を加え、90容積%以上の水に溶解していてもよい。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(i)において、安定化剤としてセルロース誘導体に塩基を加え、88~92容積%の水に溶解していてもよい。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(i)において、安定化剤としてセルロース誘導体に塩基を加え、90容積%の水に溶解していてもよい。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(i)で塩基(base)は少ない量で効果的に可溶化を達成するができるものが使用され、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)のように点眼剤に適したものが使用されてもよいが、これらに限定されない。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(i)において、pH12以上の水溶液を得ることができる。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(i)において、安定化剤は、0.1~1w/v%の濃度で用いられてもよい。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(ii)において、工程(i)で得られた水溶液に、有効成分としてレバミピド又はその薬学的に許容される塩を加えた後、可溶化する。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、前記レバミピドの薬学的に許容される塩は、当技術分野で公知され通常的に使用されるものを含み、これによる特別な制限はない。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(ii)において、有効成分としてレバミピド又はその薬学的に許容される塩は、1~2w/v%の濃度で用いられてもよい。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、工程(ii)で得られた水溶液に、アミノカプロン酸、ホウ酸及びそれらの混合物からなる群から選択された緩衝剤、及びソルビトール、マンニトール、デキストロース、スクロース、グリセリン及びそれらの混合物からなる群から選択された浸透圧調節剤を加えて溶解した後、酸(acid)でpH7~8に調整する。
【0034】
本発明において、緩衝剤は、レバミピド又はその薬学的に許容される塩を可溶化状態として生体適合性のあるpH範囲で保管時に維持できるように働く。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、緩衝剤は、0.1~2w/v%の濃度で用いることができる。
【0036】
本発明において、浸透圧調節剤は点眼剤の浸透圧調節のために使用される。本発明において、NaCl、KClなどの電解質性浸透圧調節剤が多量使用される場合、保管中にレバミピドと塩を形成して沈殿物を形成しやすくなるため、その使用は排除される。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、浸透圧調節剤は1~5w/v%の濃度で用いることができる。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、pHを7~8に調整するための酸には、例えば、塩酸、クエン酸、酒石酸又はコハク酸が使用されるが、これらに限定されない。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、キレート剤をさらに溶解することができる。本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、キレート剤は、例えば、エデト酸、クエン酸、メタリン酸(metaphosphoric acid)、ピロリン酸(pyrophosphoric acid)、ポリリン酸(polyphosphoric acid)、リンゴ酸、酒石酸、フィチン酸(phytic acid)、又はそのアルカリ金属塩又は水和物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、キレート剤は、0.01~0.1w/v%の濃度で用いることができる。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、防腐剤(preservative)をさらに溶解することができる。
【0042】
本発明において、防腐剤は、添加時に有効成分であるレバミピド又はその薬学的に許容される塩の結晶化が生じて懸濁化が起こらず、防腐効果に優れた任意のものが挙げられるが、これによる特別な制限はない。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、防腐剤は、メチルパラベン(methylparaben)、エチルパラベン(ethylparaben)、プロピルパラベン(propylparaben)及びそれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、防腐剤は、0.002~0.1w/v%又は0.002~0.05w/v%の濃度で用いることができる。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iv)において、工程(iii)で得られた水溶液を滅菌して、レバミピド点眼組成物を製造する。本発明において、工程(iii)で得られた水溶液を滅菌することは、当該技術分野で公知されて通常的に使用されるものによって行うことができ、例えば、高温滅菌、赤外線滅菌又は無菌ろ過によってことができる。本発明の一実施形態によれば、前記工程(iv)において、滅菌は、フィルターでろ過することによって行うことができる。
【0046】
本発明の他の側面によれば、(i)安定化剤として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択されたセルロース誘導体に塩基を加え、60容積%以上の水に溶解して、pH11を超える水溶液を得る工程;(ii)前記工程(i)で得られた水溶液に、有効成分としてレバミピド又はその薬学的に許容される塩を加えた後、可溶化する工程;(iii)前記工程(ii)で得られた水溶液に、アミノカプロン酸、ホウ酸及びそれらの混合物からなる群から選択された緩衝剤、及びソルビトール、マンニトール、デキストロース、スクロース、グリセリン及びそれらの混合物からなる群から選択された浸透圧調節剤を加えて溶解した後、水を加えて水溶液の85容積%以上になるようにした後、酸(acid)でpH7~8に調整する工程;及び(iv)前記工程(iii)で得られた水溶液を滅菌する工程;を含むレバミピド点眼組成物の製造方法が提供される。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(i)において、安定化剤として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methylcellulose, hypromellose)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択されたセルロース誘導体に塩基(base)を加え、水溶液の全容積に対して、60容積%以上の水に溶解して、pH11を超える水溶液を得る。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(i)において、安定化剤を高温、例えば、70~100℃の水に溶解することができる。本発明の一実施形態によれば、前記工程(i)において、安定化剤を高温水に溶解した後、25~30℃に冷却してから塩基を加えることができる。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(i)には、塩基(base)は少ない量で効果的に可溶化が達成できるものを使用でき、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)のように点眼剤に適したものを使用できるが、これらに限定されない。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(i)において、pH12以上の水溶液を得ることができる。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(i)において、安定化剤は0.1~1w/v%の濃度で用いることができる。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(ii)において、工程(i)で得られた水溶液に、有効成分としてレバミピド又はその薬学的に許容される塩を加えた後、可溶化する。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、前記レバミピドの薬学的に許容される塩は、当該技術分野で公知されて通常的に使用されるものを含み、これによる特別な制限はない。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(ii)において、有効成分としてレバミピド又はその薬学的に許容される塩は、1~2w/v%の濃度で用いることができる。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、工程(ii)で得られた水溶液に、アミノカプロン酸、ホウ酸及びそれらの混合物からなる群から選択された緩衝剤、及びソルビトール、マンニトール、デキストロース、スクロース、グリセリン及びそれらの混合物からなる群から選択された浸透圧調節剤を加えて溶解した後、水を加えて水溶液の85容積%以上になるようにした後、酸(acid)でpH7~8に調整する。
【0056】
本発明において、緩衝剤は、レバミピド又はその薬学的に許容される塩を可溶化状態として生体適合性のpH範囲で保管時に維持できるように働く。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、緩衝剤は、0.1~2w/v%の濃度で用いることができる。
【0058】
本発明において、浸透圧調節剤は、点眼剤の浸透圧調節のために使用される。
【0059】
本発明において、NaCl、KClなどの電解質性浸透圧調節剤が多量使用される場合、保管中にレバミピドと塩を形成して沈殿物を形成しやすくなるため、その使用は排除される。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、浸透圧調節剤は、1~5w/v%の濃度で用いることができる。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、緩衝剤及び浸透圧調節剤を加えて溶解した後、水を加えて水溶液の88容積%以上になるようにすることができる。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、緩衝剤及び浸透圧調節剤を加えて溶解した後、水を加えて水溶液の90容積%以上になるようにすることができる。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、緩衝剤及び浸透圧調節剤を加えて溶解した後、水を加えて水溶液の88~92容積%になるようにすることができる。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、緩衝剤及び浸透圧調節剤を加えて溶解した後、水を加えて水溶液の90容積%になるようにすることができる。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、pHを7~8に調整するための酸(acid)には、例えば、塩酸、クエン酸、酒石酸又はコハク酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、キレート剤をさらに溶解することができる。本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)には、キレート剤は、例えば、エデト酸、クエン酸、メタリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、リンゴ酸、酒石酸、フィチン酸(phytic acid)、又はそのアルカリ金属塩又は水和物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、キレート剤は0.01~0.1w/v%の濃度で用いることができる。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、防腐剤をさらに溶解することができる。本発明において、防腐剤は添加時に有効成分であるレバミピド又はその薬学的に許容される塩の結晶化が生じ、懸濁化が起こらず、防腐効果に優れた任意のものを使用でき、これによる特別な制限はない。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、防腐剤は、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン及びそれらの混合物からなる群から選択されるものが使用できるが、これらに限定されない。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iii)において、防腐剤は0.002~0.1w/v%又は0.002~0.05w/v%の濃度で用いることができる。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、前記工程(iv)において、工程(iii)で得られた水溶液を滅菌して、レバミピド点眼組成物を製造する。本発明において、工程(iii)で得られた水溶液を滅菌することは、当該技術分野で公知されて通常的に使用されるものによって行くことができ、例えば、高温滅菌、赤外線滅菌又は無菌ろ過によって行うことができる。本発明の一実施形態によれば、前記工程(iv)において、滅菌は、フィルターでろ過することによって行うことができる。
【発明の効果】
【0072】
本発明の製造方法によれば、レバミピド点眼組成物を大容量で製造際、品質と安定性を維持し、さらに生産時間及び生産単価を減少させて経済的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】レバミピド点眼剤の使い捨て及び複数回用の充填後の写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、実施例は、本発明の理解を助けるために例示するものであり、これにより本発明の範囲が制限されるものではない。
【実施例】
【0075】
実施例1~4及び比較例1~4:
下記表1及び2の条件で以下の方法を通じて実施例1~4及び比較例1~4のレバミピド点眼液を製造した。
(1)80℃の水80L又は90LにHPMC2910を添加した後、溶解して冷却した。
(2)前記(1)で得られた溶液に、NaOH溶液又は粉末を加え、撹拌しながらそれぞれpH10~11、pH11~12、pH12以上になるように調節した。
(3)前記(2)溶液に、有効成分としてレバミピドを加えて溶解後、添加剤(緩衝剤、浸透圧調節剤及びキレート剤)を加え、pHを7~8になるように調整した。
(4)前記(3)で得られた透明な溶液に水を加え、全容積を100Lに合わせて製造した。
【0076】
【0077】
【0078】
実験例1:性状変化の測定
韓国薬局方に準じて長期保存試験及び加速試験を行ったとき、長期保存試験は、24~36カ月まで安定しなければならなく、加速試験条件に応じて6カ月まで安定しなければならない。可溶化したレバミピド水溶液点眼剤は、pH6.8以下で過飽和状態が崩れる可能性があるため、レバミピド水溶液点眼剤の場合、pH6.8~8.0を長期間維持する必要がある。比較例1~比較例4及び実施例1~実施例4の製造後の長期保存試験及び加速試験によるpH変化を測定し、その結果を表3に示した。
【表3】
【0079】
表3に示すように、比較例1及び比較例3の場合は、生体に適したpH7~8に補正した後、安定性試験中にpHが安定化しないことが確認されており、一方、比較例2及び比較例4の場合は、安定性試験でpHが安定化することが確認された。
【0080】
実験例2:初期の水使用量及びpHによるレバミピド可溶化時間
比較例1~4及び実施例1~4の製造中に有効成分であるレバミピドが完全に可溶化する時間を測定し、その結果を表4に示した。
【表4】
【0081】
前記表4に示すように、初期の水の量とは関係なく、レバミピドの可溶化時間はpHによって可溶化する時間が変化することが分かった。
【0082】
実験例3:pH補正時の安定化時間の測定
比較例1~比較例4及び実施例1~実施例4のpH補正時の有効成分(レバミピド)の安定化時間を測定するために、10分ごとに検体を採取し、pH測定器を使用して測定した。各検体は5分間測定し、pHが変化しない時間を測定し、結果を表5に示した。
【表5】
【0083】
前記表5に示すように、pH補正時の初期水量が80%のとき、過飽和状態であるレバミピドの可溶化状態が不安定になり、安定化するのに時間が長くかかることが分かった。
【0084】
実験例4:初期水量の変化及びpH補正前の水量の変更時の安定化時間の測定
安定化剤を溶解する初期水量を変化させる代わりにpHを7~8に補正する前に、様々な水量で添加した場合の有効成分(レバミピド)の安定化時間を測定し、その結果を表6に示した。
【表6】
【0085】
前記表6に示すように、pH補正時の初期水量が少なくともpH7~8に補正前に水を添加して容積が90容積%以上である場合、安定化時間が減少することが分かった。
【国際調査報告】