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特表2024-524690アデノシン誘導体を含む胆管炎(CHOLANGITIS)または胆管炎による肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物
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  • 特表-アデノシン誘導体を含む胆管炎(CHOLANGITIS)または胆管炎による肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】アデノシン誘導体を含む胆管炎(CHOLANGITIS)または胆管炎による肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20240628BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240628BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P1/16
A61K47/38
A61P17/04
A61P3/06
A61P19/10
A61P1/02
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501896
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 KR2022001293
(87)【国際公開番号】W WO2023286963
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0092863
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520188684
【氏名又は名称】フューチャー・メディシン・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FUTURE MEDICINE CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヒョクウ
(72)【発明者】
【氏名】アン,サンヨプ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヒョンドク
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ユンピョ
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ソンウク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC16
4C076EE32
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB07
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA68
4C086ZA75
4C086ZA89
4C086ZA97
4C086ZB26
4C086ZC33
(57)【要約】
本発明は胆管炎(cholangitis)または胆管炎による肝疾患の予防または治療に有用に使用され得るアデノシン誘導体を含む薬学的組成物に関し、前記組成物は、化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体とを含む。前記化学式1は明細書に詳細に記述される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、
薬学的に許容可能な担体と、を含む、
胆管炎(cholangitis)または胆管炎による肝疾患の予防及び/または治療用の薬学的組成物。
【化1】
化学式1
(前記式において、
AはOまたはSであり、
Rは非置換のC~Cのアルキル;一つ以上のC~C10のアリールに置換されたC~Cのアルキル;非置換のベンジル;ハロゲン及びC~Cのアルコキシからなる群より選択される一つ以上に置換されたベンジル;またはヒドロキシカルボニル(hydroxycarbonyl)に置換されたベンジルであり、
YはHまたはハロゲン元素である。)
【請求項2】
前記化学式1において、
前記AはOまたはSであり、
前記Rはメチル;エチル;プロピル;ナフチルメチル;ベンジル;ハロゲン及びC~Cのアルコキシからなる群より選択される一つ以上に置換されたベンジル;またはトルイル酸(toluic acid)であり、
前記YはHまたはClである、
請求項1に記載の胆管炎または胆管炎による肝疾患の予防及び/または治療用の薬学的組成物。
【請求項3】
前記化学式1において、
前記AはSであり、
前記Rはメチル、エチル、1-ナフチルメチル、ベンジル、2-クロロベンジル、3-フルオロベンジル、3-クロロベンジル、3-ブロモベンジル、3-ヨードべジル、2-メトキシ-5-クロロベンジル、2-メトキシベンジル、または3-トルイル酸であり、
前記YはClである、
請求項2に記載の胆管炎または胆管炎による肝疾患の予防及び/または治療用の薬学的組成物。
【請求項4】
前記化学式1は下記化学式Aである、
請求項3に記載の胆管炎または胆管炎による肝疾患の予防及び/または治療用の薬学的組成物。
【化2】
化学式A
【請求項5】
前記胆管炎は胆汁うっ滞性疾患(Cholestasis)である、
請求項1に記載の胆管炎または胆管炎による肝疾患の予防及び/または治療用の薬学的組成物。
【請求項6】
前記胆汁うっ滞性疾患は、原発性胆汁性胆管炎(Primary biliary cholangitis、PBC)、原発性硬化性胆管炎(Primary sclerosing cholangitis、PSC)、胆嚢炎(cholecystitis)、薬物誘発性胆汁うっ滞、肝臓移植後の胆汁うっ滞、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(progressive familial intrahepatic cholestasis、PFIC)、アラジール症候群(Alagille Syndrome、ALGS)、胆道閉鎖症(biliary atresia)、妊娠性肝内胆汁うっ滞症(intrahepatic cholestasis of pregnancy、ICP)、胆石症(cholelithiasis)、伝染性胆管炎(infectious cholangitis)、ランゲルハンス細胞組織球症に関連する胆管炎(cholangitis associated with Langerhans cell histiocytosis)、非症候群性導管減少(non-syndromic ductal paucity)、及び総非経口栄養関連胆汁うっ滞(total parenteral nutrition-associated cholestasis)からなる群より選択される一つ以上を含む、
請求項5に記載の胆管炎または胆管炎による肝疾患の予防及び/または治療用の薬学的組成物。
【請求項7】
前記胆汁うっ滞性疾患は、胆汁うっ滞性疾患による合併症を更に含むが、前記合併症は、痒み症、高コレステロール血症、Sicca症候群、Raynaud症候群、骨粗鬆症、潰瘍性大腸炎、及び大腸がんからなる群より選択される一つ以上を含む、
請求項6に記載の胆管炎または胆管炎による肝疾患の予防及び/または治療用の薬学的組成物。
【請求項8】
前記胆管炎による肝疾患は、肝線維症(liver fibrosis)、肝硬変症(liver cirrhosis)、及び肝炎(hepatitis)のうち一つ以上を含む、
請求項1に記載の胆管炎または胆管炎による肝疾患の予防及び/または治療用の薬学的組成物。
【請求項9】
前記組成物を投与した個体の肝組織または血液内のAST、ALT、AAR、ヒアルロン酸、及びヒドロキシプロリンのうち一つ以上の数値を下げ得る、
請求項1に記載の胆管炎または胆管炎による肝疾患の予防及び/または治療用の薬学的組成物。
【請求項10】
経口投与剤として剤形化される、
請求項1に記載の胆管炎または胆管炎による肝疾患の予防及び/または治療用の薬学的組成物。
【請求項11】
前記経口投与剤はメチルセルロース(Methyl cellulose、MC)を更に含む、
請求項10に記載の胆管炎または胆管炎による肝疾患の予防及び/または治療用の薬学的組成物。
【請求項12】
前記経口投与剤は、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩が粉末状態でカプセル剤内に充填されているものである、
請求項10に記載の胆管炎または胆管炎による肝疾患の予防及び/または治療用の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は胆管炎または胆管炎による肝疾患の予防または治療に有用に使用され得るアデノシン誘導体を含む薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
胆管炎は胆管系統に発生する急性または慢性の炎症疾患であって、胆管内部の炎症によって下部胆道が閉鎖されたら胆汁がうっ滞することで発生し得る。胆汁がうっ滞された環境で特定の胆汁酸が肝臓に蓄積したら、肝臓の損傷を誘発し得る炎症反応が発生する。
【0003】
特に、胆管炎の一種であって希少疾患である原発性胆汁性胆管炎(Primary biliary cholangitis、PBC;または原発性胆汁性肝硬変(Primary biliary cirrhosis))は、胆汁の分泌に影響を及ぼす自己免疫性慢性肝疾患であって、大人の慢性胆嚢炎に関連して最も頻発する疾患である。PBCは肝臓の胆管を囲む胆管細胞という上皮細胞の損傷を特徴とするが、胆管が損傷することで胆汁うっ滞を引き起こし、胆汁が肝臓に蓄積されたら炎症反応が起こって肝線維症、肝硬変症などの肝臓の損傷を誘発する。
【0004】
現在公開されているPBCの治療剤としてはUDCA(Ursodeoxycholic acid)とOCA(Obeticholic acid)があり、これらはいずれも胆管細胞の炎症性胆汁うっ滞性損傷を予防するのに使用される合成胆汁酸である。しかし、患者の最大50%はUDCA治療の4ヶ月後には効果を経験することができず、OCAは肝硬変患者に急性肝不全を誘発する恐れがあって、末期肝損傷患者への使用が制限されている。
【0005】
一方、アデノシン(adenosine)は一般にストレス領域に蓄積され、アデノシン受容体(Adenosine Receptor、AR)と相互作用するが、このようなアデノシン受容体は炎症性肝組織で発現が上向きに調節されると考えられるG結合タンパク質受容体として知られている。Aアデノシン受容体(AAR)調節経路の下流成分は炎症及び線維症の経路に寄与し得るため、アデノシンの経路はPBCの線維性及び炎症性側面に関連し得る。
【0006】
そこで、本発明者らは、PBCのような胆管炎の予防及び治療剤としてAAR拮抗薬(antagonist)及び作用薬(agonist)を最初に研究し、特定のアデノシン誘導体化合物が胆管炎及び胆管炎による肝損傷に効能があることを発見することで本発明を完成した。
【0007】
Aguilar,M.T.,&Chascsa,D.M.(2020).Update on Emerging Treatment Options for Primary Biliary Cholangitis.Hepat Med,12,69-77.doi:10.2147/HMER.S205431
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、胆管炎または胆管炎による肝疾患を予防または治療し得るアデノシン誘導体を含む薬学的組成物を提供することである。
【0009】
本発明の課題は上述した技術的課題に限らず、言及されていない他の技術的課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための本発明の一実施例による胆管炎または胆管炎による肝疾患の予防及び/または治療用の薬学的組成物は、下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体とを含む。
【化1】
前記式において、AはOまたはSであり、Rは非置換のC~Cのアルキル;一つ以上のC~C10のアリールに置換されたC~Cのアルキル;非置換のベンジル;ハロゲン及びC~Cのアルコキシからなる群より選択される一つ以上に置換されたベンジル;またはヒドロキシカルボニル(hydroxycarbonyl)に置換されたベンジルであり、YはHまたはハロゲン元素である。
【0011】
前記化学式1において、前記AはOまたはSであり、前記Rはメチル;エチル;プロピル;ナフチルメチル;ベンジル;ハロゲン及びC~Cのアルコキシからなる群より選択される一つ以上に置換されたベンジル;またはトルイル酸(toluic acid)であり、YはHまたはClであり得る。
【0012】
前記化学式1において、前記AはSで、前記Rはメチル、エチル、1-ナフチルメチル、ベンジル、2-クロロベンジル、3-フルオロベンジル、3-クロロベンジル、3-ブロモベンジル、3-ヨードべジル、2-メトキシ-5-クロロベンジル、2-メトキシベンジル、または3-トルイル酸であり、前記YはClであり得る。
【0013】
前記化学式1は下記化学式Aであり得る。
【化2】
学式A
【0014】
前記胆管炎は胆汁うっ滞性疾患(Cholestasis)であり得る。
前記胆汁うっ滞性疾患は、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(Primary sclerosing cholangitis、PSC)、胆嚢炎(cholecystitis)、薬物誘発性胆汁うっ滞、肝臓移植後の胆汁うっ滞、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(progressive familial intrahepatic cholestasis、PFIC)、アラジール症候群(Alagille Syndrome、ALGS)、胆道閉鎖症(biliary atresia)、妊娠性肝内胆汁うっ滞症(intrahepatic cholestasis of pregnancy、ICP)、胆石症(cholelithiasis)、伝染性胆管炎(infectious cholangitis)、ランゲルハンス細胞組織球症に関連する胆管炎(cholangitis associated with Langerhans cell histiocytosis)、非症候群性導管減少(non-syndromic ductal paucity)、及び総非経口栄養関連胆汁うっ滞(total parenteral nutrition-associated cholestasis)からなる群より選択される少なくとも一つ以上を含み得る。
【0015】
前記胆汁うっ滞性疾患は、胆汁うっ滞性疾患による合併症を更に含むが、前記合併症は、痒み症、高コレステロール血症、Sicca症候群、Raynaud症候群、骨粗鬆症、潰瘍性大腸炎、及び大腸がんからなる群より選択される一つ以上を含み得る。
【0016】
前記胆管炎による肝疾患は、肝線維症(liver fibrosis)、肝硬変症(liver cirrhosis)、及び肝炎(hepatitis)のうち一つ以上を含み得る。
【0017】
前記組成物を投与した個体の肝組織または血液内のAST、ALT、AAR、ヒアルロン酸、及びヒドロキシプロリンのうち一つ以上の数値を下げ得る。
前記薬学的組成物は経口投与剤として剤形化され得る。
前記経口投与剤はメチルセルロース(Methyl cellulose、MC)を更に含み得る。
前記経口投与剤は、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩が粉末状態でカプセル剤内に充填されているものであり得る。
その他の実施例の具体的な事項は詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施例によるアデノシン誘導体は、胆管炎及びそれによる肝線維症のような間損傷を改善する効果があるため、このようなアデノシン誘導体を含む薬学的組成物は胆管炎または胆管炎による肝疾患の予防または治療剤として使用され得る。
【0019】
また、経口投与の際に薬物の吸収に優れ、体内毒性が殆どないため生体にやさしく、経口投与剤として剤形化する際に保管安定性に優れるため、胆管炎または胆管炎による肝疾患の予防または治療のための経口投与剤として使用され得る。
【0020】
本発明に実施例による効果は以上で例示した内容に限らず、より多様な効果が本明細書内に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実験例1における実験動物G1乃至G4群の血清ALT、AST、ALP、GGT、及びT-BILを測定した結果を示すグラフである。
図2】実験例1における実験動物G1乃至G4群のActa2、Col1a1、及びTimp1 mRNAの発現レベルを測定した結果を示すグラフである。
図3】実験例1における実験動物G1乃至G4群のTNF-α、IL-1β、及びヒアルロン酸のレベルを測定した結果を示すグラフである。
図4】実験例1における実験動物G1乃至G4群のヒドロキシプロリンの数値を測定した結果を示すグラフである。
図5】実験例3の血中濃度-時間データから得たグラフである。
図6】実験例4の血中濃度-時間データから得たグラフである。
図7】実験例6の血中濃度-時間データから得たグラフである。
図8】実験例6の血中濃度-時間データから得たグラフである。
図9】実験例7の血中濃度-時間データから得たグラフである。
図10】本発明のアデノシン誘導体の動物実験による抗炎症活性を示す図である。
図11】本発明のアデノシン誘導体の動物実験による抗炎症活性を示す図である。
図12】本発明のアデノシン誘導体の動物実験による抗炎症活性を示す図である。
図13】本発明のアデノシン誘導体の動物実験による抗炎症活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、詳細に後述する実施例を参照すると明確になるはずである。しかし、本発明は以下に開示される実施例に限らず、互いに異なる様々な形態に具現され得るが、単に実施例は本発明の開示が完全になるようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであって、本発明は特許請求の範囲によって定義されるのみである。
【0023】
本明細書で使用された用語は実施例を説明するためのものであって、本発明を制限するものではない。本明細書において、「及び/または」は言及されたアイテムそれぞれ及び一つ以上の全ての組み合わせを含む。また、単数形は文の中で特に言及されない限り複数形も含む。明細書で使用される「含む(comprises)」及び/または「含む(comprising)」は、言及された構成要素以外にも一つ以上の他の構成要素の存在または追加を排除しない。「-」または「乃至」を使用して示した数値範囲は他の言及がない限り、その前後に記載の値をそれぞれ下限と上限として含む数値範囲を示す。「約」または「おおよそ」は、その後に記載の値及び数値範囲の20%以内の値または数値範囲を意味する。
【0024】
また、本発明の実施例の構成要素を説明するに当たって、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用し得る。このような用語はその構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語によって該当構成要素の本質や順番などは限られない。
【0025】
他の定義がなければ、本明細書で使用される全ての用語(技術及び科学的用語を含む)は本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通に理解できる意味で使用され得る。また、一般に使用される辞書に定義されている用語は明白に特別に定義されていない限り理想的にまたは過度に解釈されない。
【0026】
そして、本発明の実施例を説明するに当たって、関連する公知構成または機能に関する具体的な説明が本発明の実施例に関する理解を妨げると判断されれば、その詳細な説明は省略する。
【0027】
本発明において、用語「薬学的に許容可能な塩」とは、該当技術分野における通常の方法によって製造された塩を意味し、このような製造方法は当業者に公知である。詳しくは、前記薬学的に許容可能な塩は薬理学的または生理学的に許容される無機酸と有機酸及び塩基から誘導された塩を含むが、これに限らない。
【0028】
本発明において、「予防」とは、症状または疾患はまだないが、このような症状または疾患にかかる可能性がある個体で症状または疾患の発生を抑制するか遅延することを意味する。
【0029】
本明細書において、「治療」とは、個体で症状が好転するか良く変更される全ての行為を意味するが、例えば、(a)症状または疾患の発展(悪化)の抑制、(b)症状または疾患の軽減または改善、または(c)症状または疾患の除去を意味する。
【0030】
本明細書において、「個体」とは、本発明の組成物を投与することで「予防」または「治療」され得る症状または疾患を有するヒトを含む動物、特に哺乳類を意味する。
【0031】
本明細書において、「置換されたC乃至Cn+m」の化合物とは、置換された部分を含む化合物の全ての炭素の個数がn乃至n+mである場合はもちろん、置換された部分を除外した化合物の炭素の個数がn乃至n+mも含む。
【0032】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0033】
本発明は、下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、胆管炎または胆管炎による肝疾患の予防及び/または治療用の薬学的組成物を提供する。
【化3】
前記式において、
AはOまたはSであり、
Rは非置換のC~Cのアルキル;一つ以上のC~C10のアリールに置換されたC~Cのアルキル;非置換のベンジル;ハロゲン及びC~Cのアルコキシからなる群より選択される一つ以上に置換されたベンジル;またはヒドロキシカルボニルに置換されたベンジルであり、
YはHまたはハロゲン元素である。
【0034】
好ましくは、
前記AはOまたはSであり、
前記Rはメチル;エチル;プロピル;ナフチルメチル;ベンジル;ハロゲン及びC~Cのアルコキシからなる群より選択される一つ以上に置換されたベンジル;またはトルイル酸であり、
前記YはHまたはClである。
【0035】
より好ましくは、
前記AはSであり、
前記Rはメチル、エチル、1-ナフチルメチル、ベンジル、2-クロロベンジル、3-フルオロベンジル、3-クロロベンジル、3-ブロモベンジル、3-ヨードべジル、2-メトキシ-5-クロロベンジル、2-メトキシベンジル、または3-トルイル酸であり、
前記YはClである。
【0036】
本発明によるアデノシン誘導体は前記化学式1で表される化合物であって、好ましい例は以下のようである。
1)(2R,3R,4S)-2-(2-クロロ-6-(3-フルオロベンジルアミノ)-9H-プリン-9-イル)テトラヒドロチオフェン-3,4-ジオール;(2R,3R,4S)-2-(2-chloro-6-(3-fluorobenzylamino)-9H-purin-9-yl)tetrahydrothiophen-3,4-diol;
2)(2R,3R,4S)-2-(2-クロロ-6-(3-クロロベンジルアミノ)-9H-プリン-9-イル)テトラヒドロチオフェン-3,4-ジオール;(2R,3R,4S)-2-(2-chloro-6-(3-chlorobenzylamino)-9H-purin-9-yl)tetrahydrothiophen-3,4-diol;
3)(2R,3R,4S)-2-(6-(3-ブロモベンジルアミノ)-2-クロロ-9H-プリン-9-イル)テトラヒドロチオフェン-3,4-ジオール;(2R,3R,4S)-2-(6-(3-bromobenzylamino)-2-chloro-9H-purin-9-yl)tetrahydrothiophen-3,4-diol;
4)(2R,3R,4S)-2-(2-クロロ-6-(3-ヨードベンジルアミノ)-9H-プリン-9-イル)テトラヒドロチオフェン-3,4-ジオール;(2R,3R,4S)-2-(2-chloro-6-(3-iodobenzylamino)-9H-purin-9-yl)tetrahydrothiophen-3,4-diol;
5)(2R,3R,4S)-2-(2-クロロ-6-(2-クロロベンジルアミノ)-9H-プリン-9-イル)テトラヒドロチオフェン-3,4-ジオール;(2R,3R,4S)-2-(2-chloro-6-(2-chlorobenzylamino)-9H-purin-9-yl)tetrahydrothiophen-3,4-diol;
6)(2R,3R,4S)-2-(2-クロロ-6-(5-クロロ-2-メトキシベンジルアミノ)-9H-プリン-9-イル)テトラヒドロチオフェン-3,4-ジオール;(2R,3R,4S)-2-(2-chloro-6-(5-chloro-2-methoxybenzylamino)-9H-purin-9-yl)tetrahydrothiophen-3,4-diol;
7)(2R,3R,4S)-2-(2-クロロ-6-(2-メトキシベンジルアミノ)-9H-プリン-9-イル)テトラヒドロチオフェン-3,4-ジオール;(2R,3R,4S)-2-(2-chloro-6-(2-methoxybenzylamino)-9H-purin-9-yl)tetrahydrothiophen-3,4-diol;
8)(2R,3R,4S)-2-(2-クロロ-6-(ナフタレン-1-イルメチルアミノ)-9H-プリン-9-イル)テトラヒドロチオフェン-3,4-ジオール;(2R,3R,4S)-2-(2-chloro-6-(naphthalen-1-ylmethylamino)-9H-purin-9-yl)tetrahydrothiophen-3,4-diol;
9)3-((2-クロロ-9-((2R,3R,4S)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロチオフェン-2-イル)-9H-プリン-6-イルアミノ)メチル)安息香酸;3-((2-chloro-9-((2R,3R,4S)-3,4-dihydroxytetrahydrothiophen-2-yl)-9H-purine-6-ylamino)methyl)benzoic acid;
10)2-(2-クロロ-6-メチルアミノ-プリン-9-イル)テトラヒドロチオフェン-3,4-ジオール;2-(2-chloro-6-methylamino-purin-9-yl)tetrahydrothiophen-3,4-diol;
11)(2R,3R,4S)-2-(6-(3-フルオロベンジルアミノ)-9H-プリン-9-イル)テトラヒドロチオフェン-3,4-ジオール;(2R,3R,4S)-2-(6-(3-fluorobenzylamino)-9H-purin-9-yl)tetrahydrothiophen-3,4-diol;
12)(2R,3R,4S)-2-(6-(3-クロロベンジルアミノ)-9H-プリン-9-イル)テトラヒドロチオフェン-3,4-ジオール;(2R,3R,4S)-2-(6-(3-chlorobenzylamino)-9H-purin-9-yl)tetrahydrothiophen-3,4-diol;
13)(2R,3R,4S)-2-(6-(3-ブロモベンジルアミノ)-9H-プリン-9-イル)テトラヒドロチオフェン-3,4-ジオール;(2R,3R,4S)-2-(6-(3-bromobenzylamino)-9H-purin-9-yl)tetrahydrothiophen-3,4-diol;
14)(2R,3R,4S)-2-(6-(3-ヨードベンジルアミノ)-9H-プリン-9-イル)テトラヒドロチオフェン-3,4-ジオール;(2R,3R,4S)-2-(6-(3-iodobenzylamino)-9H-purin-9-yl)tetrahydrothiophen-3,4-diol;
15)(2R,3R,4R)-2-(6-(3-ブロモベンジルアミノ)-2-クロロ-9H-プリン-9-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジオール;(2R,3R,4R)-2-(6-(3-bromobenzylamino)-2-chloro-9H-purin-9-yl)tetrahydrofuran-3,4-diol;または
16)(2R,3R,4R)-2-(2-クロロ-6-(3-ヨードベンジルアミン)-9H-プリン-9-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジオール。(2R,3R,4R)-2-(2-chloro-6-(3-iodobenzylamino)-9H-purin-9-yl)tetrahydrofuran-3,4-diol.
【0037】
前記化学式1で表されるアデノシン誘導体の好ましい例は、下記化学式Aで表される化合物である(2R,3R,4S)-2-(2-クロロ-6-(3-クロロベンジルアミノ)-9H-プリン-9-イル)テトラヒドロチオフェン-3,4-ジオールであり得る。
【化4】
化学式A
【0038】
本発明によるアデノシン誘導体は、韓国登録特許第10-1396092号に記載の方法によって合成され得る。
【0039】
本発明による前記化学式1で表されるアデノシン誘導体は、薬学的に許容可能な塩の形態で使用され得る。前記塩としては、公知の薬学的に許容される多様な有機酸または無機酸によって形成される酸付加塩が有用である。
【0040】
本発明による前記化学式1で表されるアデノシン誘導体は、薬学的に許容可能な塩だけでなく、通常の方法によって製造され得る全ての塩、水和物、及び溶媒和物をいずれも含み得る。
【0041】
本発明の薬学的組成物はまた、薬学的に許容可能な担体を更に含み得る。薬学的に許容可能な担体は全ての適合した補強剤、担体、賦形剤、または安定化剤を意味し、錠剤、カプセル剤、散剤、溶液剤、懸濁剤、またはエマルジョン剤のような固体や液体状を取り得る。例えば、潤滑剤及び無活性充填剤、カプセルなどであり得る。錠剤、カプセル剤などは結合剤;賦形剤;崩壊剤;潤滑剤;及び甘味剤を含み得る。投与量単位の形態がカプセルであれば、上述したタイプの物質以外にも液体担体を含み得る。注射剤として投与する場合は水、エタノール、ポリオール、またはこれらの適正な混合物を含む溶媒または分散媒質であり得る。
【0042】
胆管炎は胆管系統に発生する急性または慢性の炎症疾患を意味するが、これに限らない。胆管炎は詳しくは胆汁うっ滞性疾患を含むが、前記胆汁うっ滞性疾患は、原発性胆汁性胆管炎(PBC;または原発性胆汁性肝硬変)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、胆嚢炎、薬物誘発性胆汁うっ滞、肝臓移植後の胆汁うっ滞、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)、アラジール症候群(ALGS)、胆道閉鎖症、妊娠性肝内胆汁うっ滞症(ICP)、胆石症、伝染性胆管炎、ランゲルハンス細胞組織球症に関連する胆管炎、非症候群性導管減少、及び総非経口栄養関連胆汁うっ滞のうち一つ以上を含み得る。また、胆汁うっ滞性疾患は胆汁うっ滞性疾患による合併性も含み得るが、PBCの合併症としては痒み症、高コレステロール血症、Sicca症候群、Raynaud症候群、及び骨粗鬆症のうち一つ以上を含み得て、PSCの合併症として潰瘍性大腸炎及び大腸がんのうち一つ以上を含み得る。
【0043】
また、胆管炎による肝疾患は、詳しくは肝線維症、肝硬変症、及び肝炎のような肝損傷を意味し得る。特に、PBCとPSCのような胆管炎の場合、胆管の上皮細胞が損傷して胆汁うっ滞性環境が発生し、それによって胆汁酸が肝に蓄積して肝の炎症、線維症、硬変症などを引き起こし得る。前記胆管炎による肝疾患は、例えば、NASH(non-alcoholic steatohepatitis)、ASH(alcoholic steatohepatitis)、NASHにかかった哺乳動物のアルコール摂取に関連するかそれによる肝損傷(liver injury associated with or caused by alcohol consumption in a mammal afflicted with NASH)、アルコール性肝炎(alcoholic hepatitis)、薬物性肝障(drug induced liver injury)、ウィルス性肝炎(viral hepatitis)、中毒性肝疾患(toxic liver conditions)などを含み得るが、これに限らない。
【0044】
このような胆管炎または胆管炎による肝疾患は、個体の肝組織または血液内のAST、ALT、AAR(AST/ALT)、ヒアルロン酸、及びヒドロキシプロリンのうち一つ以上のマーカーの数値を上げ得る。よって、本発明による薬学的組成物を投与した個体は胆管炎または胆管炎による肝疾患が改善されることで、肝組織または血液内の前記マーカーのうち一つ以上の数値が下がり得る。
【0045】
本発明による薬学的組成物は全身的または局部的に投与されるが、投与のために一般に使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの賦形剤(または希釈剤)を使用して剤型化され得る。
【0046】
本発明の胆管炎または胆管炎による肝疾患の予防及び/または治療用の薬学的組成物は、特に経口投与剤として剤形化され得る。
【0047】
経口投与剤は、前記化学式1で表される化合物及び/またはその薬学的に許容可能な塩と賦形剤を含み得る。賦形剤は、メチルセルロース(MC)、ジメチルスルホキシド(Dimethylsulfoxide、DMSO)、ポリエチレングリコール(Polyethylene glycol、PEG)、蒸留水(Distilled water、DW)、カプセル剤などからなる群より選択される一つ以上を含み得る。賦形剤の好ましい例は0.5wt%のメチルセルロースであり得る。
【0048】
経口投与剤は、前記化学式1で表される化合物及び/またはその薬学的に許容可能な塩が、粉末状態または賦形剤に溶解された状態でカプセル剤内に充填されているものであり得る。
【0049】
本発明による薬学的組成物の好ましい投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物の形態、投与経路及び期間など多数の因子によって異なるが、当業者によって適切に選択され得る。また、投与経路は患者の状態及びその重症度によって変化し得る。
【0050】
以下、本発明の実施例を製造例と実験例を介して詳細に説明するが、本発明の効果が下記実験例によって制限されないことは明らかである。
【実施例
【0051】
実験例1:本発明のアデノシン誘導体の胆管炎及び胆管炎による肝疾患に対する効能実験
実験方法
23匹のC57BL/6マウスを用意し、隔離及び適応期間を経た後、群を分けて胆管結紮(Bile duct ligation、BDL)手術及び偽手術(sham surgery)を行った。
【0052】
BDL齧歯類(rodent)モデルは閉鎖性胆汁うっ滞性損傷(obstructive cholestatic injury)を誘発するために多く使用される方法のうち一つである(Tag,C.G.et al., Bile Duct Ligation in Mice:Induction of Inflammatory Liver Injury and Fibrosis by Obstructive Cholestasis,<em>J.Vis.Exp.</em>(96),e52438,doi:10.3791/52438(2015))。BDLモデルは閉鎖性胆汁うっ滞を引き起こして肝線維症と炎症を誘発するが、このような症状は一般に2期以降のPBC患者から観察されるため、該当モデルはPBC病理(pathology)の重要な様相を適切に反映し得る。BDLモデルの長所は、技術的妥当性(technical validity)、再現性(reproducibility)、そしてヒト門脈圧亢進症(human portal hypertension)に関連する病理状態(pathogenomonic status)に達する短い時間である。
【0053】
手術日を0日と設定し、1日から14日まで2週間試験物質を1日1回経口投与した。投与量は投与前に測定された体重を基準に10mL/kgを投与した。試験物質として化学式Aの化合物を賦形剤(vehicle)である0.5%メチルセルロース(MC)と混合したものを使用し、対照群には賦形剤のみを使用した。
各群の処理内容をまとめると下記表1のようである。
【0054】
【表1】
【0055】
14日に呼吸麻酔下で腹部静脈を介して血液を採取し、血清を分離した。採血後、肝組織を採取して体重を測定し、そのうち左葉の半分をチューブに入れて液体窒素に浸し、残りの半分は中性ホルマリンに固定した。
【0056】
-血液生化学的分析:血清生化学的分析装置(Accute、Toshiba)を使用し、AST(aspartate aminotransferase)、ALT(alanine aminotransferase)、ALP(alkaline phosphatase)、GGT(γ-glutamyl transpeptidase)、及びT-BIL(Total bilirubin)を測定した。また、採血後、肝組織を採取して体重を測定した。
【0057】
-mRNAの発現:肝組織から除去した左葉(left lateral lobe)の一部を使用してRNAを抽出し、RNase Inhibitor(DR22-R10k、Solgent、Korea)、及びDiaStarTM RT Kitを利用してcDNAを合成し、Power SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems by Thermo Fisher Scientific、USA)を利用してqRT-PCRを行った。
【0058】
下記表2は、qRT-PCRに使用されたマウスGapdh、Acta2(actin alpha 2 chain)、Col1a1(proalpha1(I) chain)、及びTimp1(tissue inhibitor of metalloproteinases-1)プライマーの配列である。
【0059】
【表2】
【0060】
-サイトカインレベルの分析:ELISAキットを利用し、血清内のTNF-α、IL-1β、及びヒアルロン酸(Hyaluronic acid)のレベルを測定した。
【0061】
-ヒドロキシプロリン(hydroxyproline)の分析:肝組織の左葉一部を抽出し、hydroxyproline assay kit(Abcam)を使用するmicroplate reader(SpectraMax ABS Plus, Molecular Devices)で肝溶解物(lysate)のヒドロキシプロリン数値を測定した。
【0062】
実験結果
実験結果は平均±SDで表示されており、試験物質投与群は賦形剤対照群(BDL、G2)と比較した。統計分析は単方向ANOVAを使用した後、GraphPad Prism(バージョン5.01)及びSPSS(バージョン24)ソフトウェアを使用したFisherの最小有意差テスト(least significant difference test)を使用した行った。P<0.05は統計的に有意なものとみなされた。
【0063】
1)血液生化学的分析
肝胆道系障害(hepatobiliary dysfunction)を調べるために、血清ALT、AST、ALP、GGT、及びT-BILを測定した。図1は、G1乃至G4群の血清ALT、AST、ALP、GGT、及びT-BILを測定した結果を示すグラフである。(全てのグラフにおいて、*:significantly different from BDL(G2)(P<0.05)、**:significantly different from BDL(G2)(P<0.01))
【0064】
BDL対照群(G2)ではAST、ALT、AAR(AST/ALTの割合)、ALP、GGT、及びT-BILのレベルが偽薬群(G1)に比べ有意に増加していた。
【0065】
BDL対照群(G2)に比べ、ALTとAARは化学式Aの化合物を10mg/kg投与した群(G3)でそれぞれ37%、21%減少しており、ASTも化学式Aの化合物を10mg/kg投与した群(G3)及び30mg/kg投与した群(G4)でそれぞれ48%及び38%減少していた。ALT、AAR、及びASTはBDLによって誘発された肝損傷及び線維症のマーカーとして使用されるため(Afdhal NH, Nunes D.Evaluation of liver fibrosis:concise review.Am J Gastroenterol 2004;99:1160-1174.v)、このような結果は化学式Aの化合物を投与したBDL群(G3、G4)で肝損傷及び線維症が減少したことを示す。
【0066】
2)mRNAの発現レベル
図2は、G1乃至G4群のActa2、Col1a1、及びTimp1 mRNAの発現レベルを測定した結果を示すグラフである。
【0067】
Acta2 mRNAのレベルは全てのBDL群から誘導されており、化学式Aの化合物を投与したBDL群(G3、G4)で減少していた。肝星細胞(hepatic stellate cells、HSC)は胆管炎でTimp1、類型1コラーゲン(Type 1 collagen)、Col1a1、及びActa2のような線維症促進因子を調節するため、このような結果は化学式Aの化合物を処理したBDL群(G3、G4)で肝損傷及び線維症が減少したことを示す。
【0068】
3)サイトカインレベル
図3は、G1乃至G4群のTNF-α、IL-1β、及びヒアルロン酸のレベルを測定した結果を示すグラフである。
TNF-αとヒアルロン酸はBDL対照群(G2)で偽薬群(G1)に比べ有意に誘導されていた。ヒアルロン酸の数値は化学式Aの化合物を処理した全ての群(G3、G4)でBDL対照群(G2)に比べそれぞれ51%及び47%減少していた。
【0069】
血清内ヒアルロン酸の量は肝線維化の程度と有意な相関関係があるため(Afdhal NH,Nunes D.Evaluation of liver fibrosis:concise review.Am J Gastroenterol 2004;99:1160-1174.v)、このような結果は化学式Aの化合物を処理したBDL群(G3、G4)で肝線維症及び硬変症が減少したことを示す。
【0070】
4)ヒドロキシプロリンの分析:
図4は、G1乃至G4群のヒドロキシプロリンの数値を測定した結果を示すグラフである。
肝ヒドロキシプロリンの含量はBDL対照群(G2)で偽薬群(G1)に比べ有意に誘導されており、化学式Aの化合物を10mg/kg投与した群(G3)で39%減少していた。
【0071】
肝組織におけるヒドロキシプロリンの定量化は肝組織における線維症の進行を比較し得る方法であるため(Arjmand, A.et al.,Quantification of Liver Fibrosis-A Comparative Study.Appl.Sci.2020,10,447)、このような結果は化学式Aの化合物を処理したBDL群(G3)でヒドロキシプロリンが抑制されて肝線維症が減少したことを示す。
【0072】
このように、本発明のアデノシン誘導体は、肝線維症が誘発されたBDLマウスモデルからAST、ALT、AAR(AST/ALT)、ヒアルロン酸、及びヒドロキシプロリンなどを抑制することで肝機能及び線維症の改善を誘導し得るため、胆管炎または胆管炎による肝疾患の予防または治療剤として活用され得ることが分かる。
【0073】
実験例2:本発明のアデノシン誘導体の物理化学的特性試験
本発明のアデノシン誘導体の物理化学的特性を試験するために、生体外(in vitro)で化学式Aの化合物に対する実験を実施し、その結果を表3に示した。血漿(plasma)安定性(stability)及びタンパク質結合度(protein binding)はRatとヒトの血漿を利用して測定した。
【0074】
【表3】
【0075】
表3に示したように、本発明のアデノシン誘導体は経口製剤による経口投与に適合した吸収、分布、代謝、及び排泄(ADME)特性値を有するという点を確認し得る。
【0076】
実験例3~7:本発明のアデノシン誘導体の経口投与に対する薬物動態学試験
本発明のアデノシン誘導体の経口投与後の吸収、分布、代謝、及び排泄(ADME)特性を試験するために、生体内(in vivo)で化学式Aの化合物のPK(Pharmacokinetic)特性を測定した。
【0077】
表4のように実験動物に化学式Aの化合物を投与方法を異なるようにして投与した。静脈投与は大腿静脈に挿入したtubeを介して投与し、経口投与はoral gavageを利用して口腔で投入する方式で行った。
【0078】
【表4】
【0079】
投与後24時間の間、所定時間間隔に採血して血液を遠心分離してから血漿を分離し、適正の有機溶媒を使用して血漿資料を前処理した後、LC-MS/MSで濃度を分析した。WinNonlin(Pharsight、USA)を利用して化学式Aの化合物の血中濃度-時間データを分析して、それに対するグラフを図5乃至図9に示し、それから算出したnoncompartmental pharmacokinetic parameterに対する結果を表5乃至9に示した。表5乃至9において、I.V.は静脈投与群、P.O.は口腔投与群を示し、表5乃至9の各パラメータに対する定義は表10に示した。
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】
【表8】
【0084】
【表9】
【0085】
【表10】
【0086】
図5と表5は実験例3(3-1及び3-2)の血中濃度-時間データから得たグラフ及びパラメータ値であり、図6と表6は実験例4(4-1及び4-2)の血中濃度-時間データから得たグラフ及びパラメータ値である。図5及び図6と表5及び表6に示したように、本発明のアデノシン誘導体は半減期(T1/2)が最大3.34時間以上に長時間露出され、静脈投与に比べ生体利用率(Ft)が最大99.9%以上であって、経口投与に適合した特性を有することを確認し得る。
【0087】
図7と表7は実験例5の血中濃度-時間データから得たグラフ及びパラメータ値である。図7の表7に示したように、本発明のアデノシン誘導体はmiceでも半減期(T1/2)が3.61時間程度に長時間露出されて、経口投与に適合した特性を有することを確認し得る。
【0088】
図8と表8は実験例6(6-1、6-2、及び6-3)の血中濃度-時間データから得たグラフ及びパラメータ値である。図8において、G2及びG3はそれぞれ溶媒に溶解させて経口投与した場合とカプセル内粉末状態で経口投与した場合を示す。図8と表8に示したように、本発明のアデノシン誘導体はdogで半減期(T1/2)が最大5.53時間以上であって、ratやmiceより長時間露出されて経口投与に適合した特性を有し、特にカプセル内に粉末状態で充填して投与した場合、半減期(T1/2)及び生体利用率(Ft)などの特性がより向上されることを確認し得る。
【0089】
図9と表9は実験例7(7-1及び7-2)の血中濃度-時間データから得たグラフ及びパラメータ値である。図9と表9に示したように、本発明のアデノシン誘導体は経口投与においてメチルセルロース(MC)と共に投与されることが、従来の賦形剤であるジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリエチレングリコール(PEG)、蒸留水(D.W.)などと共に投与されるより優れた特性を有するという点を確認し得る。
【0090】
実験例8:本発明のアデノシン誘導体の毒性試験
本発明のアデノシン誘導体の毒性を試験するために動物実験を行った。25±5gのICR系マウス(Central Lab.Animal Inc.)と235±10gの特定病原性部材(SPF)スプラグーダウリー(Sprague Dawley、Central Lab.Animal Inc.)ラットをそれぞれ3匹ずつ3群に分け、化学式Aの化合物をそれぞれ20mg/kg、10mg/kg、1mg/kgのっ容量で腹腔投与した後、24時間の間毒性可否を観察した。
【0091】
実験結果、3群共に死亡した例を全く観察することができず、体重の増加、試料の摂取量などで外見上対照群と変わった症状を見つけることができなかったため、本発明のアデノシン誘導体が安全な薬物であることを確認し得た。
【0092】
また、化学式Aの化合物に対して細胞毒性(cytotoxicity)、心毒性(hERG ligand binding assay)、遺伝毒性、及び単回毒性を評価した。
【0093】
まず、化学式Aの化合物の細胞毒性を試験するために、Cyto XTM cell viability assay kitを利用した。試験結果、化学式Aの化合物に対するIC50がそれぞれの細胞株から10μM以上であって、一般細胞毒性に対して安全であると評価された。
【0094】
化学式Aの化合物の心毒性を試験するために、red fluorescent hERG channel ligand tracerのhERG channel protein結合程度による蛍光偏光(fluorescence polarization)評価によって心臓安定性を評価するnon-electrophysiological試験法を使用した。試験結果、化学式Aの化合物10μMに対する阻害率は基準値である50%以下であって、心毒性に対して安全であると評価された。
【0095】
化学式Aの化合物の遺伝毒性を試験するために、ヒスチジン要求性のサルモネラ菌(TA98、TA100、TA1535、及びTA1537菌株)、及びトリプトファン要求性大腸菌(WP2uvrA(pKM101)菌株)を利用し、代謝活性化の非存在下及び存在下それぞれの場合に対して化学式Aの化合物の遺伝子突然変異の誘発性を評価した。評価結果、化学式Aの化合物は代謝活性化の有無にかかわらずに各菌株の全ての容量で復帰変位コロニー数が陰性対照群の2倍を超過しておらず、容量依存的な増加も観察されておらず、陽性対照群では各菌株に対する復帰変位コロニー数が陰性対照群に比べ2倍以上確実に増加していた。以上の結果から、化学式Aの化合物は遺伝毒性に対して安全であると評価された。
【0096】
化学式Aの化合物の単回毒性を試験するために、male ratとfemale rat5匹それぞれに化学式Aの化合物2,000mg/kgを単回投与した。試験結果、死亡した実験動物はおらず、前記結果によって化学式Aの化合物は単回毒性に対して安全であると評価された。
【0097】
表11は以上の本発明のアデノシン誘導体に対する毒性試験の結果をまとめたものである。表11に示したように、本発明のアデノシン誘導体は細胞毒性、心毒性、遺伝毒性、及び単回毒性に対して安全であるという点を確認し得る。
【0098】
【表11】
【0099】
実験例9:本発明のアデノシンを含む経口投与剤の安定性評価
本発明のアデノシン誘導体を含む経口投与剤の安定性を評価するために下記のように実験した。
経口投与剤の賦形剤として使用し得る0.5wt%メチルセルロースを化学式Aの化合物に加え、音波処理(sonication)して均質化した後、室温で保管する菌と4℃で保管する菌に分けて、それぞれ1、3、7、及び10日後にWaters UPLCを利用して対照群である0.5%メチルセルロースと濃度を比較することで安定性(stability)を測定し、その結果を表12に示した。
【0100】
【表12】
【0101】
表12に示したように、本発明のアデノシン誘導体は経口投与剤として調製される際、その安定性が保管条件及び保管時間によって有意な差を示さなかったため、本発明のアデノシン誘導体は経口製剤による経口投与に適合していることを確認し得る。
【0102】
実験例10:アデノシン受容体に対する結合親和度(Binding affinity)の評価
本発明の誘導体のヒトアデノシン受容体(hAR)のうちA1、A2A、及びA3受容体に対する親和度及び選択制を評価するために下記のような実験を行った。
アデノシンA1及びA3受容体を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO、ATCC;米国細胞株銀行、No.CCL-61)細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)とペニシリン/ストレプトマイシン(100ユニット/mlと100mg/ml)を含むF-12(Gibco社、米国)培地で37℃、5%二酸化炭素の条件下で培養されて使用された。50/10/1緩衝溶液を試験管に入れ、適合したhARが発現されたCHO細胞一定量と各アデノシンA1及びA3受容体に選択的に結合する標識リガンド(1nM[3H]CCPA及び0.5nM[125I]AB-MECAを混合した。様々な濃度の本発明の誘導体をジメチルスルホキシド(DMSO)に先に溶解させてから緩衝溶液と希釈するが、DMSOの最終濃度は1%を超過しないように注意し、37℃の恒温槽で1時間培養させた後、細胞収集器(TOMTEC社、米国)を使用して迅速に減圧濾過した。次に、試験管は3mlの緩衝液で3回洗浄した後、放射性をγ-カウンターを使用して決定した。非特異的結合(Nonspecific binding)は全体の結合を測定するための条件と同じ条件で、非標識リガンドである5’-N-メチルカルボキサミドマデノシン(NECA)10μMの存在下で決定され、平衡定数であるKi値は[125I]AB-MECAのKd値が1.48nMであるという仮定の下でチェン-プルソフ(Cheng-Prusoff)方程式によって決定した。特異的結合は全体結合から非特異的結合を減算して算出した。このように測定された特異的結合から、様々な受容体に対するそれぞれの試料の結合親和度を求めた。
【0103】
また、HEK293細胞(ヒト腎臓内皮細胞株)から発現されたA2A受容体と標識リガンド、[3H]CGS-21680(2-(((4-(2-カルボキシエチル)フェニル)エチルアミノ)-5’-N-エチルカルバモイル)アデノシン)の結合測定は以下のように行われるが、アデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase)は脳膜を30℃で30分間培養する際と放射性リガンドを入れて培養する間に共に入れ、少なくとも6回の異なる濃度で個々の実施例化合物に対するIC50値を決めて、その数値をフロートプログラムを利用してKi値を決定した。本発明による実施例化合物の構造、置換基、及び結合親和度の測定結果で得られたKi値を表13に共に示した。
【0104】
【表13】
【0105】
【化5】
【0106】
表13に示したように、本発明の実施例化合物はヒトアデノシンA3受容体に対して高い結合親和度を示しており、アデノシンA1及びA2A受容体に対しては大体低い親和力、つまり、高い選択性を示していた。
【0107】
実験例11~14:本発明の誘導体による抗炎症活性の測定
本発明の誘導体の抗炎症活性を調べるために下記のような動物実験を行った。生後7週の雄ICRマウスは、右耳にTPA(12-O-tetradecanoylphorbol 13-acetate、20μl)が処理された。15分以内に本発明の実施例1~16の化合物を、アセトン(20μl)または蒸留水、或いはDMSOとアセトンを混合した混合溶媒(その組成は表14乃至表17に示す)に0.5%の濃度で希釈してマウスに投与した。対照群としては炎症治療剤として利用されるヒドロコルチゾン(hydrocortisone)を同じ濃度で処理し、同じ実験を行った。
【0108】
次に、TPA処理から6時間後に本発明のアデノシン誘導体化合物を2回目に処理した。更にTPA処理から24時間後、実験動物を頸椎脱臼法(cervical dislocation method)を利用して安楽死させた。次に、直径6mmのパンチを利用して右耳のサンプルを得た。その活性は微量はかりを利用して重量を測定することで確認し得た。阻害率(%)は下記数式1を利用して計算された。実験例11乃至14の処理組成及び処理量は表14乃至表17に示しており、その抗炎症活性の測定結果を図11乃至図14に示した。
阻害率(%)=1-(実施例化合物を処理したサンプルの重量-無処理サンプルの重量)/TPAのみ処理したサンプルの重量-無処理サンプルの重量
【0109】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【0110】
図10に示したように、対照群として利用されたヒドロコルチゾンに比べると極めて小さい変化であるが、実施例2、3、及び4の化合物をアセトンに希釈して処理してから抗炎症活性を調べた結果、TPAによって損傷したマウスの耳細胞の炎症が少量減少していることを確認し得た。図11に示したように、本発明の実施例1及び6の化合物をアセトンに希釈して処理してから調べた抗炎症活性は増加された阻害率を示すことが分かった。
【0111】
図12に示したように、蒸留水とアセトンの混合溶媒(1:4)に0.5%に希釈した本発明の実施例5、6、及び7の化合物を利用して調べた抗炎症活性は、それぞれ17%、34%、及び53%の炎症阻害率を示した。
【0112】
図13に示したように、DMSOとアセトンの混合溶媒(1:9)に0.5%に希釈した本発明の実施例15及び16の化合物を利用して調べた炎症阻害率はそれぞれ59%及び79%であって、前記化合物が抗炎症活性を有することが分かった。
【0113】
これまで本発明の実施例を中心に説明したが、これは単なる例示であって本発明を限定するものではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の実施例の本質的な特性を逸脱しない範囲内で前記の例示されていない様々な変更と応用が可能であることを理解できるはずである。例えば、本発明の実施例に具体的に示した各構成要素は変形して実施してもよい。そして、このような変形と応用に関する差は、添付した特許請求の範囲で規定する本発明の範囲に含まれると解釈すべきである。
図1
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図13
【配列表】
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【国際調査報告】