(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】眼内ステント
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
A61F9/007 160
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502079
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 US2022036126
(87)【国際公開番号】W WO2023287611
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518224358
【氏名又は名称】ニュー ワールド メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イック、リー シー.
(72)【発明者】
【氏名】ポーティアス、エリック
(72)【発明者】
【氏名】ン、デレク
(72)【発明者】
【氏名】ション、ボビー
(72)【発明者】
【氏名】カフーク、マリク ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】クーンツ、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】バラン、ビジェイ
(57)【要約】
眼内ステントが提供される。眼内ステントは、別個の切断デバイスによる外科的切開を必要とせずに、眼の一部に貫入するための穿刺端部を含む。第1の保持部材は、シュレム管の前壁部に対して眼内ステントを安定させる。第2の保持部材は、線維柱帯内で眼内ステントを安定させる。流体入口端部は、前房内に配置されるように構成される。使用中、房水流体は、中央管腔および/またはドレナージチューブを通って流体入口端部に流れ込み、シュレム管に流出する。眼内ステントおよび挿入デバイスの積層構成も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部分および第2の部分を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記第2の部分から延びる穿刺部材と、
前記穿刺部材上に配置される第1の保持部材と、
前記ハウジングの前記第1の部分に配置される第2の保持部材と、
前記ハウジング内に配置された中央管腔と、
前記ハウジング内に配置された1つまたは複数のドレナージチューブと、
を備える、眼内ステント。
【請求項2】
前記穿刺部材の先端部が、尖ったスパイクを備える、請求項1に記載の眼内ステント。
【請求項3】
前記第1の保持部材は、傾斜面を有する面取りされた側壁部を備え、前記傾斜面の狭い部分が、前記穿刺部材の先端部の近くに配置され、前記傾斜面の幅広の部分が、前記ハウジングの近くに配置されている、請求項1に記載の眼内ステント。
【請求項4】
前記面取りされた側壁部の最も幅広の部分が、眼のシュレム管の壁部と係合するように構成されたフランジ面を備える、請求項3に記載の眼内ステント。
【請求項5】
前記第2の保持部材は、前記ハウジングの前記第1の部分が砂時計形状を含むように湾曲した側壁部を備え、前記第2の保持部材は、狭い中央部分と広い端部部分とを有し、前記広い端部部分は、眼の前房に配置されるように構成され、前記狭い中央部分は、前記眼の線維柱帯と係合するように構成される、請求項1に記載の眼内ステント。
【請求項6】
前記第2の保持部材は、前記ハウジングの前記第1の部分が台形形状を含むように面取りされた側壁部を備え、前記第2の保持部材は、狭い端部部分と広い端部部分とを有し、前記広い端部部分は、前記狭い端部部分は眼の前房内に配置されるように構成され、前記狭い端部部分は、前記眼のシュレム管内に配置されるように構成される、請求項1に記載の眼内ステント。
【請求項7】
前記第2の保持部材は、前記ハウジングの前記第1の部分から半径方向に延びる1つまたは複数の円形突起を備え、前記1つまたは複数の円形突起の1つは、眼の線維柱帯と係合するように構成される、請求項1に記載の眼内ステント。
【請求項8】
前記中央管腔は、前記ハウジング内で軸方向に配置され、前記中央管腔は、前記ハウジングの前記第1の部分の第1の端部に配置された入口ポートを有し、前記中央管腔は、前記ハウジングの前記第1の部分を通って前記ハウジングの第2の部分内へと延びる、請求項1に記載の眼内ステント。
【請求項9】
前記1つまたは複数のドレナージチューブは、前記ハウジングの前記第2の部分内に配置され、前記中央管腔に結合され、各々のドレナージチューブは、前記ハウジングの前記第2の部分の外面に配置された出口ポートを有する、請求項8に記載の眼内ステント。
【請求項10】
前記1つまたは複数のドレナージチューブは、前記中央管腔に直交して結合される、請求項9に記載の眼内ステント。
【請求項11】
前記1つまたは複数のドレナージチューブは、90度を超える角度で前記中央管腔に結合される、請求項9に記載の眼内ステント。
【請求項12】
前記1つまたは複数のドレナージチューブが、前記ハウジング内で軸方向にかつ前記中央管腔と平行に配置され、各ドレナージチューブが、前記ハウジングの前記第1の部分の前記第1の端部に配置された入口ポートと、前記ハウジングの前記第2の部分の外面に配置された出口ポートとを有する、請求項8に記載の眼内ステント。
【請求項13】
前記1つまたは複数のドレナージチューブは、前記中央管腔と交差して、前記中央管腔の長さにわたって一体化した流体経路を形成する、請求項12に記載の眼内ステント。
【請求項14】
前記1つまたは複数のドレナージチューブは、前記ハウジング内で前記中央管腔に対してある角度で配置され、各々のドレナージチューブは、前記ハウジングの前記第1の部分の第1の端部に配置された入口ポートと、前記ハウジングの前記第2の部分の外面に配置された出口ポートとを有する、請求項8に記載の眼内ステント。
【請求項15】
前記1つまたは複数のドレナージチューブの一部が、前記中央管腔と交差する、請求項14に記載の眼内ステント。
【請求項16】
第1の部分と第2の部分を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記第2の部分から延びる穿刺部材と、
前記穿刺部材上に配置される第1の保持部材と、
前記ハウジングの前記第1の部分に配置される第2の保持部材と、
前記ハウジング内に配置された複数のドレナージチューブと、
を備える、眼内ステント。
【請求項17】
前記複数のドレナージチューブは、直線状であり、前記ハウジング内で軸方向に配置され、各々のドレナージチューブは、前記ハウジングの前記第1の部分の第1の端部に配置された入口ポートと、前記ハウジングの前記第2の部分の外面に配置された出口ポートとを有する、請求項16に記載の眼内ステント。
【請求項18】
前記複数のドレナージチューブは、直線状であり、前記ハウジング内である角度で配置され、各々のドレナージチューブは、前記ハウジングの前記第1の部分の第1の端部に配置された入口ポートと、前記ハウジングの第2の部分の外面に配置された出口ポートとを有する、請求項16に記載の眼内ステント。
【請求項19】
前記第1の保持部材のフランジ面が、眼のシュレム管の壁部と係合するように構成され、前記第2の保持部材の一部が、前記眼の線維柱帯と係合するように構成され、前記ハウジングの前記第1の部分の端部が、前記眼の前房内に配置されるように構成される、請求項16に記載の眼内ステント。
【請求項20】
複数の眼内ステントであって、各々の眼内ステントは、
第1の部分と第2の部分を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記第2の部分から延びる穿刺部材と、
前記穿刺部材上に配置される第1の保持部材と、
前記ハウジングの前記第1の部分に配置される第2の保持部材と、
前記ハウジング内に配置された中央管腔と、
前記ハウジング内に配置された1つまたは複数のドレナージチューブと、
を備え、
前記中央管腔は、前記ハウジングの前記第1の部分の上面に配置された面取りされた入口ポートを有し、
前記複数の眼内ステントは、互いに積み重ねられるように構成され、第1の眼内ステントの穿刺部材および第1の保持部材は、それぞれ第2の眼内ステントの中央管腔および面取りされた入口ポート内に配置される、複数の眼内ステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広く言えば、眼内ステントに関するものであり、特に保持部材を有する眼内ステントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
房水は通常、眼の前房から線維柱帯、シュレム管、およびより遠位のコレクターチャネルを介して従来の眼の房水流出系を通って排出される。房水はまた、ブドウ膜強膜流出系を通って排出される。状況によっては、房水の排出が減少すると、眼圧が上昇する可能性があり、これが視神経の損傷を引き起こし、未治療のまま放置すると最終的には失明する可能性がある。眼内房水排出デバイスは、前房から従来の房水流出系への房水の排出を増加させるために使用される。1つのアプローチは、房水が前房から線維柱帯を通ってシュレム管に流れ、その後遠位コレクターチャネルに流れるようにする小柱バイパスインプラントを使用することである。いくつかの典型的なシャントは、線維柱帯にもたれる座部と、中央管腔に垂直な側部ポートとを有し、これはシャント内で流体の流れを90度回転させる必要があり、またシャントを挿入するために、線維柱帯に外科的切開を行う必要がある。いくつかの典型的な薬物送出デバイスは、切断デバイスによる別個の外科的切開を必要とせずに、薬物送出デバイスを線維柱帯およびシュレム管の壁部を通して挿入できるようにするために、前端部に銛構造を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、眼内に望ましい流体の流れを提供するために、挿入が容易で安定した保持のための自己穿刺機能および保持機能、および/または非垂直流体流路を有する眼内ステントを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付図面は、本開示の実施形態を示し、説明とともに本開示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本開示の態様に係る眼内ステントの正面図を示す。
【
図2】本開示の態様に係る、
図1の眼内ステントの正面断面図を示す。
【
図3】本開示の態様に係る眼内ステントの正面図を示す。
【
図4】本開示の態様に係る、
図3の眼内ステントの正面断面図を示す。
【
図5】本開示の態様に係る眼内ステントの正面図を示す。
【
図6】本開示の態様に係る、
図5の眼内ステントの正面断面図を示す。
【
図7】本開示の態様に係る、4つの平行な直線状出口ポートを備えた眼内ステントの正面図を示す。
【
図8】本開示の態様に係る、
図7の眼内ステントの斜視図を示す。
【
図9】本開示の態様に係る、
図7の眼内ステントの上面図を示す。
【
図10】本開示の態様に係る、
図7の眼内ステントの正面断面図を示す。
【
図11】本開示の態様に係る、3つの平行な直線状出口ポートを備えた眼内ステントの正面図を示す。
【
図12】本開示の態様に係る、
図11の眼内ステントの斜視図を示す。
【
図13】本開示の態様に係る、
図11の眼内ステントの上面図を示す。
【
図14】本開示の態様に係る、
図11の眼内ステントの正面断面図を示す。
【
図15】本開示の態様に係る、4つの角度の付いた直線状出口ポートを備えた眼内ステントの正面図を示す。
【
図16】本開示の態様に係る、
図15の眼内ステントの正面断面図を示す。
【
図17】本開示の態様に係る、4つの統合された平行な直線状出口ポートを備えた眼内ステントの斜視図を示す。
【
図18】本開示の態様に係る眼内ステントの斜視図を示す。
【
図19】本開示の態様に係る眼内ステントの斜視図を示す。
【
図20】本開示の態様に係る、
図19の眼内ステントの底面図を示す。
【
図21】本開示の態様に係る眼内ステントの斜視図を示す。
【
図22】本開示の態様に係る、
図21の眼内ステントの底面図を示す。
【
図23】本開示の態様に係る眼内ステントの斜視図を示す。
【
図24】本開示の態様に係る、
図23の眼内ステントの底面図を示す。
【
図25】本開示の態様に係る、
図23の眼内ステントの部分正面図を示す。
【
図26】本開示の態様に係る眼内ステントの斜視図を示す。
【
図27】本開示の態様に係る、
図26の眼内ステントの底面図を示す。
【
図28】本開示の態様に係る、
図26の眼内ステントの部分正面図を示す。
【
図29】本開示の態様に係る眼内ステントの正面図を示す。
【
図30】本開示の態様に係る、
図29の眼内ステントの底面図を示す。
【
図31】本開示の態様に係る、
図29の眼内ステントの上面図を示す。
【
図32】本開示の態様に係る、
図29の眼内ステントのある角度から見た正面図を示す。
【
図33】本開示の態様に係る、
図29の眼内ステントの別の角度から見た正面図を示す。
【
図34】本開示の態様に係る眼内ステントスタックの斜視図を示す。
【
図35】本開示の態様に係る、
図34の眼内ステントスタックを備えた眼内デバイスの斜視図を示す。
【
図36】本開示の態様に係る、単一の眼内ステントを備えた
図35の眼内デバイスの部分斜視図を示す。
【
図37】本開示の態様に係る、非作動位置にある
図36の眼内デバイスの部分側面図を示す。
【
図38】本開示の態様に係る、
図37の眼内デバイスの側面断面図を示す。
【
図39】本開示の態様に係る、作動位置にある
図36の眼内デバイスの部分側面図を示す。
【
図40】本開示の態様に係る、
図39の眼内デバイスの側面断面図を示す。
【
図41】本開示の態様に係る、眼に挿入される
図37の眼内デバイスの部分側面図を示す。
【
図42】本開示の態様に係る、眼に挿入される
図39の眼内デバイスの部分側面図を示す。
【
図43】本開示の態様に係る眼内ステントの斜視図を示す。
【
図44】本開示の態様に係る、後退位置にある
図43の眼内ステントを備えた眼内デバイスの部分斜視図を示す。
【
図45】本開示の態様に係る、眼内ステントが部分的に伸長した位置にある
図44の眼内デバイスの部分斜視図を示す。
【
図46】本開示の態様に係る、眼内ステントが伸長した位置にある
図44の眼内デバイスの部分斜視図を示す。
【
図47】本開示の態様に係る、
図46の眼内デバイスの部分分解斜視図を示す。
【
図48】本開示の態様に係る、眼内ステントのスタックを備えた眼内デバイスの部分断面斜視図を示す。
【
図49】本開示の態様に係る、
図48の眼内デバイスの部分斜視図を示す。
【
図50】本開示の態様に係る、眼内ステントを備えた眼内デバイスの正面図を示す。
【
図51】本開示の態様に係る、眼内ステントが後退位置にある眼内デバイスの部分斜視図を示す。
【
図52】本開示の態様に係る、眼内ステントが伸長位置にある
図51の眼内デバイスの部分斜視図を示す。
【
図53】本開示の態様に係る、眼の強膜に対して挿入される
図44の眼内デバイスの概略図を示す。
【
図54】本開示の態様に係る、眼内ステントが伸長位置にある
図53の眼内デバイスの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下に記載される詳細な説明は、主題技術の様々な構成を説明するものであり、主題技術が実施され得る唯一の構成を表すことを意図するものではない。詳細な説明には、主題技術の完全な理解を提供する目的で、特定の詳細が含まれている。したがって、寸法は、非限定的な例として特定の態様に関して提供される。しかしながら、当業者には、主題技術がこれらの特定の詳細なしで実施することができることが明らかであろう。場合によっては、主題技術の概念が不明瞭になるのを避けるために、よく知られている構造および構成要素がブロック図形式で示されている。
【0007】
本開示は、主題技術の例を含み、添付の特許請求の範囲を限定しないことを理解すべきである。ここで、主題技術の様々な態様を、特定の非限定的な例に従って開示する。本開示で説明される様々な実施形態は、所望の用途または実装に従って、様々な方法および変形で実行することができる。
【0008】
緑内障の発生と病気の進行は、特定のIOP数値に結び付けられてはいないが、緑内障の唯一の変更可能な危険因子は眼圧である。典型的な治療法は、IOPを下げることであり、望ましいと考えられる一般的な範囲とあまり望ましくないと考えられる範囲がいくつかある。例えば、平均眼圧は、12~21mmHgの範囲である。IOPが低すぎる(例えば、水銀柱6mm未満の)場合、眼の構造が本質的に代償不全になり、その眼が失明する可能性がある網膜の腫れを伴う視力の変化の危険がある。一方、IOPが常に高すぎる(例えば、水銀柱21mm以上の)場合、または変動するIOPに伴うスパイクがある場合も、視神経の劣化および眼の失明の危険がある。したがって、眼の健康を最適に維持するには、水銀柱10mm~18mmのIOPが望ましい。多くの場合、病気の診断時または病気の進行が認められた場合、治療は、ベースラインから25~30%のIOPの低下を目標とすることができる。場合によっては、たとえIOPが望ましい範囲内(例えば、水銀柱18mm)にあっても、IOPを望ましい範囲内のより低い値(例えば、水銀柱14mm)に下げることが望ましい場合がある。
【0009】
例えば、緑内障などの眼疾患の場合、房水の排水不足により圧力が望ましくない範囲まで上昇する。眼内ドレナージデバイス(例えば、ステント)は、房水の流れを改善するドレナージチューブを提供することによってこの圧力を軽減するために使用することができる。したがって、ドレナージチューブが所望の房水の流れを維持することが非常に望ましい。しかしながら、ドレナージチューブが凝固または破片により部分的または全体的に詰まると、眼内の房水の流れが減少し、それによって圧力が上昇する。また、ステントが安定した位置を維持しない場合、房水の流れが妨げられる、および/または有害な医学的影響が生じる可能性がある。さらに、ステントを挿入するために別個の切断デバイスによる切開が必要な場合には、より侵襲的なおよび/またはより複雑な外科的処置が必要となる。
【0010】
ステントの挿入および安定性の問題、ならびにドレナージチューブの凝固および破片の詰まりの問題を克服するために、本開示は、自己穿刺型の前端部(例えば、銛)、シュレム管の前管壁部に係合する保持部材、線維柱帯に係合する保持部材、および/または流体の流れを最大化するドレナージチューブの経路または調整部を有する眼内ステントを提供する。銛は、別個の外科的切開を必要とせずに、線維柱帯、管、およびシュレム管の前管壁部を通したステントの挿入を可能にする。ここで、シュレム管の前壁部は、眼の前面に最も近い部分であるが、線維柱帯は、より後方にあるため、シュレム管の後壁部は、線維柱帯の直前にあり、ほとんどが線維柱帯に付着している。シュレム管の保持部材は、銛が管壁部を通って後退するのを防ぎ、したがってステントに安定性を提供する。線維柱帯の保持部材は、線維柱帯と係合し、これもまたステントに安定性を提供する。ドレナージチューブ経路は、中央管腔から垂直に角度をなすこともできるし、中央管腔から非垂直に角度をなすこともできるし、中央管腔と平行な直線状にすることもできるし、直線状だが中央管腔に対して角度をなすこともできるし、中央管腔を有することなくステントを通る直線状にすることもでき、その多くは、より少ない曲がりくねった流体流路を提供することにより、凝固および破片の蓄積を軽減する。中央管腔およびドレナージ経路には、生物学的適合性を高め、凝固を軽減する材料(例えば、ヘパリン)が注入またはコーティングされていてもよい。
【0011】
ここで、いくつかの図の間で同様の符号が、同様のまたは対応する要素を指す図面をより詳細に参照すると、
図1および
図2において、ハウジング30と、ハウジング30から延びる穿刺部材40と、穿刺部材40上に配置された第1の保持部材50と、ハウジング30上に配置された第2の保持部材60と、ハウジング30内に軸方向に配置された中央管腔70と、中央管腔70に結合され、ハウジング30内に配置された複数のドレナージチューブ80とを有する眼内ステント20が図示される。
図1にさらに示されるように、眼内ステント20は、眼のシュレム管92の管壁部90および眼の線維柱帯94に対して位置決めされる。
【0012】
本開示の態様によれば、
図1および
図2に示されるように、穿刺部材40は、眼内ステント20の挿入前に別個の切断デバイスによる切開を行う必要なく、線維柱帯94とシュレム管壁部90の両方を穿刺するように構成された尖ったスパイクとすることができる。本開示の態様では、穿刺部材40は、尖った先端、鈍い先端、丸い先端、または任意の他の適切な形状のいずれかを有することができる。
【0013】
第1の保持部材50は、傾斜面54を提供する面取りされた側壁部52を有することができ、そこでは、眼用ステント20が所定の位置に挿入されるとき、穿刺部材40によって作り出された開口部を取り囲む線維柱帯94の組織およびシュレム管壁部90が、傾斜面54を越えて上方にスライドすることができる。フランジ面56は、面取りされた側壁部52の最も幅広の部分に配置されており、フランジ面56は、シュレム管壁部90の組織が面取りされた側壁部52を一旦通過すると、開口部の周囲で収縮した後に、シュレム管壁部90の組織と係合するか、またはシュレム管壁部90の組織によって保持されるように構成することができる。
【0014】
本開示の態様では、第2の保持部材60は、狭い部分64(例えば、中央部分)と幅広の部分66(例えば、端部部分)とを有する湾曲した側壁部62を有することができる。第1の保持部材50と同様に、第2の保持部材60は、ハウジング30が線維柱帯94の開口部を通ってスライドするときに、線維柱帯94の組織がハウジングの中間部分32を越えて上方にスライドして第2の保持部材60の狭い部分64の周りに落ち着くように構成される。第2の保持部材60の幅広の部分66は、ハウジングの中間部分32と幅広の部分66との間に、狭い部分64の周囲に位置する線維柱帯94の組織を維持するように構成される。
【0015】
所定の位置に配置されると、眼内ステント20は、中央管腔70の入口ポート72が眼の前房96内に配置され、ドレナージチューブ80の出口ポート82がシュレム管92内に配置されるように位置決めされる。使用中、前房96内の房水は、中央管腔70に流入して中央管腔70を通って流れ、ドレナージチューブ80/出口ポート82を通ってシュレム管92に流出する。
【0016】
図3および
図4に示されるように、眼内ステント120は、ハウジング130と、ハウジング130から延びる穿刺部材140と、穿刺部材140上に配置された第1の保持部材150と、ハウジング130上に配置された第2の保持部材160と、ハウジング130内に軸方向に配置された中央管腔170と、中央管腔170に結合され、ハウジング130内に配置された複数のドレナージチューブ180とを有することができる。さらに
図1に示されるように、眼内ステント120は、シュレム管92の管壁部90および線維柱帯94に対して位置決めされる。
【0017】
本開示の態様によれば、
図3および
図4に示されるように、穿刺部材140および第1の保持部材150は、眼内ステント20の穿刺部材40および第1の保持部材50と同一または同様に構成することができる。特に、穿刺部材140は、眼内ステント120の挿入前に切開を行う必要なく、線維柱帯94とシュレム管壁部90の両方を貫通するように構成された尖ったスパイクであってもよい。
【0018】
また、第1の保持部材150は、傾斜面154を提供する面取りされた側壁部152を有することができ、そこでは、眼用ステント120が所定の位置に挿入されるとき、穿刺部材140によって作り出された開口部を取り囲む線維柱帯94の組織およびシュレム管壁部90が、傾斜面154を越えて上方にスライドすることができる。フランジ面156は、面取りされた側壁部152の最も幅広の部分に配置されており、フランジ面156は、シュレム管壁部90の組織が面取りされた側壁部152を一旦通過すると、開口部の周囲で収縮した後に、シュレム管壁部90の組織と係合するか、またはシュレム管壁部90の組織によって保持されるように構成することができる。
【0019】
本開示の態様では、第2の保持部材160は、狭い部分164と幅広の部分166とを有する面取りされた側壁部162を有することができる。第1の保持部材150と同様に、第2の保持部材160は、ハウジング130が線維柱帯94の開口部を通ってスライドするときに、線維柱帯94の組織がハウジングの中間部分132を越えて上方にスライドして第2の保持部材160の狭い部分164の周りに落ち着くように構成される。第2の保持部材160の幅広の部分166は、ハウジングの中間部分132と幅広の部分166との間に、狭い部分164の周囲に位置する線維柱帯94の組織を維持するように構成される。
【0020】
所定の位置に配置されると、眼内ステント120は、中央管腔170の入口ポート172が眼の前房96内に配置され、ドレナージチューブ180の出口ポート182がシュレム管92内に配置されるように位置決めされる。使用中、前房96内の房水は、中央管腔170に流入して中央管腔170を通って流れ、ドレナージチューブ180/出口ポート182を通ってシュレム管92に流出する。
【0021】
図5および
図6に示されるように、眼内ステント220は、ハウジング230と、ハウジング230から延びる穿刺部材240と、穿刺部材240上に配置された第1の保持部材250と、ハウジング230上に配置された第2の保持部材260と、ハウジング230内に軸方向に配置された中央管腔270と、中央管腔270に結合され、ハウジング230内に配置された複数のドレナージチューブ280とを有することができる。ここで、ドレナージチューブ280は、中央管腔270に対して非垂直の角度(例えば、114度)をなしているため、中央管腔270とドレナージチューブ280との間の流路の急激な変化が少なくなる。さらに
図5に示されるように、眼内ステント220は、シュレム管92の管壁部90および線維柱帯94に対して位置決めされる。
【0022】
本開示の態様によれば、
図5および
図6に示されるように、穿刺部材240および第1の保持部材250は、眼内ステント20の穿刺部材40および第1の保持部材50と同一または同様に構成することができる。特に、穿刺部材240は、眼内ステント220の挿入前に切開を行う必要なく、線維柱帯94とシュレム管壁部90の両方を貫通するように構成された尖ったスパイクであってもよい。
【0023】
第1の保持部材250は、傾斜面254を提供する面取りされた側壁部252を有することができ、そこでは、眼用ステント220が所定の位置に挿入されるとき、穿刺部材240によって作り出された開口部を取り囲む線維柱帯94の組織およびシュレム管壁部90が、傾斜面254を越えて上方にスライドすることができる。フランジ面256は、面取りされた側壁部252の最も幅広の部分に配置されており、フランジ面256は、シュレム管壁部90の組織が面取りされた側壁部252を一旦通過すると、開口部の周囲で収縮した後に、シュレム管壁部90の組織と係合するか、またはシュレム管壁部90の組織によって保持されるように構成することができる。
【0024】
本開示の態様では、第2の保持部材260は、側壁部264上に配置された複数の円形突起262を有し、円形チャネル266を円形突起262に隣接して配置することができる。第2の保持部材260は、ハウジング230が線維柱帯94の開口部を通ってスライドするときに、線維柱帯94の組織がハウジング中間部分232を越えて上方にスライドして、1つまたは複数の円形チャネル266および第2の保持部材260の円形突起262の周囲に落ち着くように構成される。第2の保持部材260は、ハウジングの中間部分232と最端部の円形突起262との間に位置する線維柱帯94の組織を維持するように構成される。
【0025】
所定の位置に配置されると、眼内ステント220は、中央管腔270の入口ポート272が眼の前房96内に配置され、ドレナージチューブ280の出口ポート282がシュレム管92内に配置されるように位置決めされる。使用中、前房96内の房水は、中央管腔270に流入して中央管腔270を通って流れ、ドレナージチューブ280/出口ポート282を通ってシュレム管92に流出する。ここで、流体の流れは、直線状の中央管腔270から角度をなしたドレナージチューブ280まで、より緩やかな経路変化を有する。
【0026】
図7~
図10に示されるように、眼内ステント320は、ハウジング330と、ハウジング330から延びる穿刺部材340と、穿刺部材340上に配置された第1の保持部材350と、ハウジング330上に配置された第2の保持部材360と、ハウジング330内に軸方向に配置された中央管腔370と、ハウジング330内に配置された複数のドレナージチューブ380とを有することができる。
図1に示される眼内ステント20と同様に、眼内ステント320は、シュレム管92の管壁部90および線維柱帯94に対して挿入され、同様に位置決めすることができる。
【0027】
本開示の態様によれば、
図7および
図8に示されるように、穿刺部材340および第1の保持部材350は、眼内ステント20の穿刺部材40および第1の保持部材50と同一または同様に構成することができる。特に、穿刺部材340は、眼内ステント320の挿入前に切開を行う必要なく、線維柱帯94とシュレム管壁部90の両方を貫通するように構成された尖ったスパイクであってもよい。
【0028】
また、第1の保持部材350は、傾斜面354を提供する面取りされた側壁部352を有することができ、そこでは、眼内ステント320が所定の位置に挿入されるとき、穿刺部材340によって作り出された開口部を取り囲む線維柱帯94の組織およびシュレム管壁部90が、傾斜面354を越えて上方にスライドすることができる。フランジ面356は、面取りされた側壁部352の最も幅広の部分に配置されており、フランジ面356は、シュレム管壁部90の組織が面取りされた側壁部352を一旦通過すると、開口部の周囲で収縮した後に、シュレム管壁部90の組織と係合するか、またはシュレム管壁部90の組織によって保持されるように構成することができる。
【0029】
本開示の態様では、第2の保持部材360は、狭い部分364と幅広の部分366を有する湾曲した側壁部362を有することができる。第1の保持部材350と同様に、第2の保持部材360は、ハウジング330が線維柱帯94の開口部を通ってスライドするときに、線維柱帯94の組織がハウジング中間部分332を越えて上方にスライドして、第2の保持部材360の狭い部分364の周囲に落ち着くように構成される。第2の保持部材360の幅広の部分366は、ハウジング中間部分332と幅広の部分366との間で、狭い部分364の周囲に位置する線維柱帯94の組織を維持するように構成される。
【0030】
本開示の態様では、ドレナージチューブ380は、ハウジング330を通って中央管腔370と平行に配置される。ここで、中央管腔370は、ハウジング330の上面334に配置された入口ポート372を有し、各々のドレナージチューブ380は、ハウジング中間部分332の下に配置された出口ポート382と、ハウジング330の上面334に配置された入口ポート384とを有する。ドレナージチューブ380は、
図8に見られるように、中央管腔370およびドレナージチューブ380がハウジング330内で中央管腔370の長さにわたって一体化したまたは単一の流体経路を形成するように、中央管腔370に結合または中央管腔370と交差することができる。
【0031】
所定の位置に配置されると、眼内ステント320は、中央管腔370の入口ポート372およびドレナージチューブ380の入口ポート384が眼の前房96内に配置され、ドレナージチューブ380の出口ポート382がシュレム管92内に配置されるように位置決めされる。使用中、前房96内の房水は、中央管腔370およびドレナージチューブ380に流入し、これらを通って流れ、出口ポート382を通ってシュレム管92に流出する。
【0032】
本開示の態様では、ドレナージチューブ380は、ハウジング330の軸に対して角度をなすことができる。例えば、角度の付いたドレナージチューブ380の入口ポート384は、それらが中央管腔370の入口ポート372から分離するように上面334上に配置することができる。ここで、ドレナージチューブ380の一部は、各々のドレナージチューブ380の角度が中央管腔370の軸方向経路と交差するときに、ハウジング330内で中央管腔370と交差または結合することができる。
【0033】
本開示の態様では、中央管腔がなくてもよく、ドレナージチューブ380が、房水が眼内ステント320を通って流れるための唯一の流体経路であってもよい。ここで、ドレナージチューブ380は、例えば、ハウジング330の軸に沿って直線状に配置されてもよいし、ハウジング330の軸に対して角度をなして配置されてもよい。
【0034】
本開示の態様では、ドレナージチューブ380は、各々が中央管腔370の直径とは異なる直径(例えば、より小さい直径)を有してもよい。本開示の態様では、ドレナージチューブ380は、各々が中央管腔370の直径と同じ直径を有してもよい。
【0035】
図11~
図14に示されるように、眼内ステント420は、ハウジング430と、ハウジング430から延びる穿刺部材440と、穿刺部材440上に配置された第1の保持部材450と、ハウジング430上に配置された第2の保持部材460と、ハウジング430内に軸方向に配置された中央管腔470と、ハウジング430内に配置された複数のドレナージチューブ480とを有することができる。
図1に示される眼内ステント20と同様に、眼内ステント420は、シュレム管92の管壁部90および線維柱帯94に対して挿入され、同様に位置決めすることができる。
【0036】
本開示の態様によれば、
図11および
図12に示されるように、穿刺部材440および第1の保持部材450は、眼内ステント20の穿刺部材40および第1の保持部材50と同一または同様に構成することができる。特に、穿刺部材440は、眼内ステント420の挿入前に切開を行う必要なく、線維柱帯94とシュレム管壁部90の両方を貫通するように構成された尖ったスパイクであってもよい。
【0037】
また、第1の保持部材450は、傾斜面454を提供する面取りされた側壁部452を有することができ、そこでは、眼内ステント420が所定の位置に挿入されるとき、穿刺部材440によって作り出された開口部を取り囲む線維柱帯94の組織およびシュレム管壁部90が、傾斜面454を越えて上方にスライドすることができる。フランジ面456は、面取りされた側壁部452の最も幅広の部分に配置されており、フランジ面456は、シュレム管90の組織が面取りされた側壁部452を一旦通過すると、開口部の周囲で収縮した後に、シュレム管壁部90の組織と係合するか、またはシュレム管壁部90の組織によって保持されるように構成することができる。
【0038】
本開示の態様では、第2の保持部材460は、狭い部分464と幅広の部分466を有する湾曲した側壁部462を有することができる。第1の保持部材450と同様に、第2の保持部材460は、ハウジング430が線維柱帯94の開口部を通ってスライドするときに、線維柱帯94の組織がハウジング中間部分432を越えて上方にスライドして、第2の保持部材460の狭い部分464の周囲に落ち着くように構成される。第2の保持部材460の幅広の部分466は、ハウジング中間部分432と幅広の部分466との間で、狭い部分464の周囲に位置する線維柱帯94の組織を維持するように構成される。
【0039】
本開示の態様では、ドレナージチューブ480は、ハウジング430を通って中央管腔470と平行に配置される。ここで、中央管腔470は、ハウジング430の上面434に配置された入口ポート472を有し、各々のドレナージチューブ480は、ハウジング中間部分432の下に配置された出口ポート482と、ハウジング430の上面434に配置された入口ポート484を有する。ドレナージチューブ480は、
図12に見られるように、中央管腔470およびドレナージチューブ480がハウジング430内で中央管腔470の長さにわたって一体化したまたは単一の流体経路を形成するように、中央管腔470に結合または中央管腔470と交差することができる。
【0040】
所定の位置に配置されると、眼内ステント420は、中央管腔470の入口ポート472およびドレナージチューブ480の入口ポート484が眼の前房96内に配置され、ドレナージチューブ480の出口ポート482がシュレム管92内に配置されるように位置決めされる。使用中、前房96内の房水は、中央管腔470およびドレナージチューブ480に流入し、これらを通って流れ、出口ポート482を通ってシュレム管92に流出する。
【0041】
本開示の態様では、ドレナージチューブ480は、ハウジング430の直線軸に対して角度をなすことができる。例えば、角度の付いたドレナージチューブ480の入口ポート484は、それらが中央管腔470の入口ポート472から分離するように上面434上に配置することができる。ここで、ドレナージチューブ480の一部は、各々のドレナージチューブ480の角度が中央管腔470の軸方向経路と交差するときに、ハウジング430内で中央管腔470と交差または結合することができる。
【0042】
本開示の態様では、中央管腔がなくてもよく、ドレナージチューブ480が、房水が眼内ステント420を通って流れるための唯一の流体経路であってもよい。ここで、ドレナージチューブ480は、例えば、ハウジング430の軸に沿って直線状に配置されてもよいし、ハウジング430の軸に対して角度をなして配置されてもよい。
【0043】
本開示の態様では、ドレナージチューブ480は、各々が中央管腔470の直径とは異なる直径(例えば、より小さい直径)を有してもよい。本開示の態様では、ドレナージチューブ480は、各々が中央管腔470の直径と同じ直径を有してもよい。
【0044】
図15および
図16に示されるように、眼内ステント520は、ハウジング530と、ハウジング530から延びる穿刺部材540と、穿刺部材540上に配置された第1の保持部材550と、ハウジング530上に配置された第2の保持部材560と、ハウジング530内に軸方向に配置された中央管腔570と、ハウジング530内に配置された複数のドレナージチューブ580とを有することができる。
図1に示される眼内ステント20と同様に、眼内ステント520は、シュレム管92の管壁部90および線維柱帯94に対して挿入され、同様に位置決めすることができる。
【0045】
本開示の態様によれば、
図15および
図16に示されるように、穿刺部材540および第1の保持部材550は、眼内ステント20の穿刺部材40および第1の保持部材50と同一または同様に構成することができる。特に、穿刺部材540は、眼内ステント520の挿入前に切開を行う必要なく、線維柱帯94とシュレム管壁部90の両方を貫通するように構成された尖ったスパイクであってもよい。
【0046】
また、第1の保持部材550は、傾斜面554を提供する面取りされた側壁部552を有することができ、そこでは、眼内ステント520が所定の位置に挿入されるとき、穿刺部材540によって作り出された開口部を取り囲む線維柱帯94の組織およびシュレム管壁部90が、傾斜面554を越えて上方にスライドすることができる。フランジ面556は、面取りされた側壁部552の最も幅広の部分に配置されており、フランジ面556は、シュレム管90の組織が面取りされた側壁部552を一旦通過すると、開口部の周囲で収縮した後に、シュレム管壁部90の組織と係合するか、またはシュレム管壁部90の組織によって保持されるように構成することができる。
【0047】
本開示の態様では、第2の保持部材560は、狭い部分564と幅広の部分566を有する湾曲した側壁部562を有することができる。第1の保持部材550と同様に、第2の保持部材560は、ハウジング530が線維柱帯94の開口部を通ってスライドするときに、線維柱帯94の組織がハウジング中間部分532を越えて上方にスライドして、第2の保持部材560の狭い部分564の周囲に落ち着くように構成される。第2の保持部材560の幅広の部分566は、ハウジング中間部分532と幅広の部分566との間で、狭い部分564の周囲に位置する線維柱帯94の組織を保持するように構成される。
【0048】
本開示の態様では、ドレナージチューブ580は、中央管腔570に対してある角度でハウジング530を通って配置される。ここで、中央管腔570は、ハウジング530の上面534に配置された入口ポート572を有し、各々のドレナージチューブ580は、ハウジング中間部分532の下に配置された出口ポート582と、ハウジング530の上面534に配置された入口ポート584とを有する。各々のドレナージチューブ580は、上面534から出口ポート582まで直線状であってもよく、これにより、ドレナージチューブ580を通る自由な流体の流れが促進され、眼からの粒子による詰まりが防止または最小限に抑えられる。各々のドレナージチューブ580は、中央管腔570の一部に結合されるか、または中央管腔570の一部と交差することができる。
【0049】
所定の位置に配置されると、眼内ステント520は、中央管腔570の入口ポート572およびドレナージチューブ580の入口ポート584が眼の前房96内に配置され、ドレナージチューブ580の出口ポート582がシュレム管92内に配置されるように位置決めされる。使用中、前房96内の房水は、中央管腔570およびドレナージチューブ580に流入し、これらを通って流れ、出口ポート582を通ってシュレム管92に流出する。
【0050】
本開示の態様では、中央管腔がなくてもよく、ドレナージチューブ580が、房水が眼内ステント520を通って流れるための唯一の流体経路であってもよい。
【0051】
本開示の態様では、ドレナージチューブ580は、各々が中央管腔570の直径とは異なる直径(例えば、より小さい直径)を有してもよい。本開示の態様では、ドレナージチューブ580は、各々が中央管腔570の直径と同じ直径を有してもよい。
【0052】
図17に示されるように、眼内ステント320aは、眼内ステント320内に設けられたように、ハウジング330と、ハウジング330から延びる穿刺部材340と、穿刺部材340上に配置された第1の保持部材350と、ハウジング330上に配置された第2の保持部材360とを有することにより、眼内ステント320と同様とすることができる。眼内ステント320aは、ハウジング330内に軸方向に配置された別個の中央管腔370がなく、複数のドレナージチューブ380aがハウジング330内で統合されている点で眼内ステント320とは異なる。したがって、統合されたドレナージチューブ380aは、ハウジング330の上面334上に配置された単一の入口ポート372aを形成し、各々のドレナージチューブ380aは、ハウジング中間部分332の下に配置された出口ポート382を有する。
【0053】
図18に示されるように、眼内ステント220aは、ハウジング230と、ハウジング230から延びる穿刺部材240と、穿刺部材240上に配置された第1の保持部材250と、ハウジング230内に軸方向に配置された中央管腔270と、中央管腔270に結合され、ハウジング230内に配置された複数のドレナージチューブ280とを有する眼内ステント220と同様とすることができる。眼内ステント220aは、ハウジング230上に配置された第2の保持部材260aが第2の保持部材260とは異なる形状である点で眼内ステント220とは異なる。ここで、第2の保持部材260aは、側壁部264上に配置された1つの円形突起262aを有し、円形突起262aとハウジング中間部分232との間に1つの円形チャネル266aが配置される。
【0054】
図19および
図20に示されるように、眼内ステント620は、ハウジング630と、ハウジング630の円筒形底部632から延びる穿刺部材640と、穿刺部材640上に配置された第1の保持部材650と、ハウジング630上に配置された第2の保持部材660と、ハウジング630内に軸方向に配置された中央管腔670と、ハウジング630内に配置された複数のドレナージチューブ680とを有することができる。上記の眼内ステント20、120、220、220a、320、320a、420、520と同様に、眼内ステント620は、シュレム管92の管壁部90および線維柱帯94に対して挿入され、同様に位置決めすることができる。
【0055】
穿刺部材640は、眼内ステント620の挿入前に切開を行う必要なく、線維柱帯94とシュレム管壁部90の両方を貫通するように構成された尖ったスパイクであってもよい。穿刺部材640は、複数の突起642と、突起642間に点在する複数の形状の溝644とを備えた十字形の構成を有してもよい。突起642は、先端部646(例えば、尖った先端)とフレア端部648との間で外方にテーパになっていてもよく、フレア端部648は円筒底部632で終端を迎える。突起642の上面643は、第1の保持部材650を画定および/または形成する。
【0056】
図21および
図22に示されるように、眼内ステント620aは、穿刺部材640aおよび保持部材650aにおいてのみ眼内ステント620と異なっていてもよい。ここで、2つの反対側の突起642は、同じであるが、他の2つの突起642aは、はるかに浅く、突起642の外方へのテーパは、突起642aの外方へのテーパよりもはるかに顕著である。したがって、溝644aは、眼内ステント620の溝644とは異なる構成(例えば、形状、テーパ、深さ)を有する。2つの突起642の上面643は、第1の保持部材650aを画定および/または形成する。
【0057】
図23~
図25に示されるように、眼内ステント620bは、穿刺部材640bおよび保持部材650bのみが眼内ステント620と異なっていてもよい。ここで、穿刺部材640bは、先端部646b(例えば、尖った先端)と、円筒形底部632で終端を迎えるフレア端部648bとの間で外方にテーパになる円錐部分として構成される。第1の保持部材650bは、穿刺部材640bと円筒形底部632の両方に配置された複数のノッチ652bから画定および/または形成される。
【0058】
図25に示されるように、ノッチ652bは、反対側にある対として構成することができる。したがって、各々の反対側にあるノッチ652bの対は、シュレム管壁部90の組織が開口部の周囲で収縮した後、シュレム管壁部90の組織によって係合または保持されるように構成することができる。したがって、穿刺部材640bおよび第1の保持部材650bは、保持のための複数のレベル(高さ)を提供することができ、したがって、シュレム管壁部90に対する眼内ステント620bの調節可能性を提供する。
【0059】
本開示の態様では、ノッチ652bは、穿刺部材640bおよび円筒形底部632のうちの一方のみに配置されてもよい。本開示の態様では、ノッチ652bは、穿刺部材640bおよび/または円筒形底部632のうちの1つの面のみに配置されてもよい。本開示の態様では、ノッチ652bは、穿刺部材640bおよび/または円筒形底部632の全周に亘って延びることができる。
【0060】
図26~
図28に示されるように、眼内ステント620cは、穿刺部材640cおよび保持部材650cのみが眼内ステント620と異なっていてもよい。ここで、穿刺部材640cは、穿刺部材640bと同様に、先端部646c(例えば、尖った先端)と、円筒底部632で終端を迎えるフレア端部648cとの間で外方にテーパになる円錐部分として構成される。第1の保持部材650cは、円筒形底部632上に配置された複数の突起652cから画定および/または形成される。突起652cは、反った(例えば、傾斜した、角度を付けた)後端部653cと、直交する(例えば、垂直な)先端部654cを有してもよい。
【0061】
図28に示されるように、突起652cは、反対側にある対として構成することができる。したがって、反対側にある突起652cの各々の対は、シュレム管壁部90の組織が開口部の周囲で収縮した後、シュレム管壁部90の組織によって係合または保持されるように構成することができる。したがって、第1の保持部材650cは、保持のための複数のレベルを提供することができ、したがって、シュレム管壁部90に対する眼内ステント620cの調節可能性を提供することができる。
【0062】
本開示の態様では、突起652cは、穿刺部材640cと円筒形底部632の両方に配置されてもよい。本開示の態様では、突起652cは、穿刺部材640cおよび/または円筒形底部632の1つの面のみに配置されてもよい。本開示の態様では、突起652cは、穿刺部材640cおよび/または円筒形底部632の全周に亘って延びてもよい。
【0063】
本開示の態様では、上記の眼内ステント20、120、220、220a、320、320a、420、520のいずれも、上記の穿刺部材/第1の保持部材の組み合わせ640/650、640a/650a、640b/650b、640c/650cのいずれかを有していてもよい。
【0064】
図29~
図33に示されるように、眼内ステント720は、ハウジング730と、ハウジング730の円筒形底部732から延びる穿刺部材740と、穿刺部材740上に配置された第1の保持部材750と、ハウジング730上に配置された第2の保持部材760と、ハウジング730内に配置された複数のドレナージチューブ780とを有することができる。上記の眼内ステント20、120、220、220a、320、320a、420、520、620、620a、620b、620cと同様に、眼内ステント720は、シュレム管92の管壁部90および線維柱帯94に対して挿入され、同様に位置決めすることができる。
【0065】
ここで、第2の保持部材760は、第2の保持部材260と同様に構成されてもよい。本開示の態様では、複数の円形チャネル766は、眼内ステント720の設置中に深さの表示を提供する。
【0066】
穿刺部材740は、2つの反対側にある平面壁部742および2つの反対側にある凸状壁部744を有する長方形型の形状に構成することができる。壁部742、744は、先端部746(例えば、尖った先端)とフレア端部748との間で外方にテーパになっていてもよく、フレア端部748は円筒底部732で終端を迎える。フレア端部748の上面743は、第1の保持部材750を画定および/または形成する。穿刺部材740は、
図32に示されるように、1つの角度から見た正面図では、細い輪郭を有することができ、この場合、フレア端部748と円筒形底部732は、同じ幅を有し、
図33に示されるように、別の角度から見た正面図(例えば、90度回転)では、幅広の輪郭を有することができ、この場合、フレア端部748は、円筒形底部732の幅よりも広い。本開示の態様では、穿刺部材740(例えば、銛)の交互の細い輪郭と幅広の輪郭は、組織への容易な貫通と組織への良好な固定を提供する。
【0067】
本開示の態様によれば、上記の眼内ステント20、120、220、220a、320、320a、420、520、620~620c、720のいずれも、スタック800内に集合させることができる。例えば、
図34に示されるように、眼内ステント120は、眼内ステント20上に積み重ねられ、眼内ステント20は、次に眼内ステント220上に積み重ねられて、スタック800を形成する。
図34に示されるように、眼内ステント120の中央管腔170の入口ポート172は、別の眼内ステント20、120、220の穿刺部材40、140、240および/または第1の保持部材50、150、250が、中央管腔170に挟まれたり、詰まったりしないように面取りすることができる。眼内ステント20の入口ポート72および眼内ステント220の入口ポート272も同様に面取りすることができる。
【0068】
次いで、
図35に示される眼内デバイス900などの送出または挿入デバイスにスタック800を挿入することができる。
図35に示されるように、本開示の態様によれば、眼内デバイス900は、ハンドル910と、作動ボタン920と、カニューレ930と、挿入先端940とを含むことができる。使用時、眼内デバイス900の挿入先端940を眼に挿入することができ、スタック800の最前部の穿刺部材(例えば、眼内ステント220の穿刺部材240)を、作動ボタンを押すことによって眼の強膜に押し込むことができ、これにより、スタック800がカニューレ930を通して前方に移動する、および/または挿入先端940がカニューレ930に対して後方に後退することができる。
【0069】
したがって、最前部の穿刺部材は、その後、線維柱帯94を貫通し、シュレム管の後壁部(例えば、管壁部90)を貫通する。スタック800内の第1のステントの保持部材(例えば、保持部材250)は、眼内デバイス900の挿入先端940およびカニューレ930が眼から引き抜かれるときに、ステント(例えば、眼内ステント220)を所定の位置に保持することができる。ここで、次の眼内ステント(例えば、眼内ステント20)の穿刺部材および第1の保持部材(例えば、穿刺部材40および第1の保持部材50)が、移植された眼内ステント220の入口ポート(例えば、入口ポート272)から引き抜かれ、こうして眼内デバイス900の除去とともにスタック800の残りの部分を除去する。
【0070】
本開示の態様では、スタック800は、すべての同じ眼内ステント(例えば、眼内ステント20のみ)を含むことができる。本開示の態様では、スタック800は、眼内ステント20、120、220、220a、320、320a、420、520、620~620c、720の任意の組み合わせを含むことができる。
【0071】
図36~
図40に示されるように、眼内デバイス900は、単一の眼内ステント20、120、220、220a、320、320a、420、520、620~620c、720(例えば、眼内ステント720が図示されている)を移植するために使用することができる。挿入先端940は、カニューレ930にスライド可能に結合されるスリーブとすることができる。挿入先端940は、カニューレ930の形状と同様の形状(例えば、円形)であるカニューレ部分942と、カニューレ部分942とは異なる形状(例えば、フレア状の楕円形)を有し得る端部部分944とを有することができる。挿入先端940の端部948の開口部946は、適切な形状(例えば、楕円形)であり、眼内ステント720が突出する通路を提供することができる。開口部946は、真空吸引を提供する空気経路、および/または眼内デバイス900内に吸引される流体または破片の通路を提供する流体/破片経路を提供することができる。
【0072】
図37および
図38に示されるように、挿入先端940は、眼内ステント720の一部のみが挿入先端940の端部948を越えて延びる状態で、カニューレ930上の非作動位置に配置することができる。例えば、第2の保持部材760の下のハウジング730の部分は、穿刺部材740および第1の保持部材750が挿入先端948を越えて外側に配置されるように、非作動位置で挿入先端940から突出することができる。
【0073】
挿入器960は、カニューレ930内に配置され、カニューレ930の端部932を越えて外へ延びることができる。挿入器960は、流体(例えば、粘性流体)が眼内デバイス900を通って眼内ステント720に流入し、ドレナージチューブ780を通って眼に流出できるように構成された流体チャネル962を有することができる。挿入器960は、眼内ステント720の上面734に係合してシールするように構成された肩部964も有することができ、これにより、挿入先端940および/またはカニューレ930を通る流体の逆流を防止または低減することができる。肩部964は、挿入中に眼内ステント720を前方に押すための表面も提供することができる。また、挿入先端940の端部948の内面949は、眼内ステント720のハウジング730および/または第2の保持部材760との摩擦嵌合を提供することができ、これは、挿入または注入プロセス中に眼内ステント720を所定の位置に保持するのに役立ち得る。
【0074】
図39および
図40に示されるように、挿入先端940は、眼内ステント720の大部分または全部が挿入先端940の端部948を越えて延びた状態で、カニューレ930上の作動位置に配置することができる。ここで、眼内デバイス900が
図37に示されるような非作動位置から
図39に示されるような作動位置まで作動されると、挿入先端940は、眼内ステント720がより完全に、または全体的に露出されるように、カニューレ930に沿って後退する。
【0075】
例えば、
図41に示されるように、眼内デバイス900は、眼内ステント720の穿刺部材740が線維柱帯94およびシュレム管92を通って強膜98内に貫通するように、眼に挿入することができる。ここで、挿入先端940の端部948は、線維柱帯94の外壁部と接触することができる。一旦配置されると、
図42に示されるように、挿入先端940は後退させることができ、粘性流体が眼内ステント720を通してシュレム管92内に注入させることができ、シュレム管92が強膜98から拡張する(例えば、泡立つ)。ここで、眼内ステント720の第2の保持部材760は、線維柱帯94内に、および/または線維柱帯94によって保持することができる。次いで、眼内デバイス900を眼から除去し、眼内ステント720を所定の位置に残すことができる。
【0076】
図43~
図52を参照すると、眼内ステント1020は、ハウジング1030と、ハウジング1030の底部1032から延びる穿刺部材1040と、各々の穿刺部材1040上に配置された第1の保持部材1050と、ハウジング1030上に配置された第2の保持部材1060と、ハウジング1030内に、ハウジング1030を通って配置された管腔1080とを有することができる。上記の眼内ステント20、120、220、220a、320、320a、420、520、620、620a、620b、620c、720と同様に、眼内ステント1020は、シュレム管92のシュレム管92の管壁部90と線維柱帯94に対して挿入し、同様に位置決めすることができる。
【0077】
穿刺部材1040は、ハウジング1030から互いに平行に延びる2つの返し付き部分1042として形成されてもよく、第1の保持部材1050は、返し付き部分1042の後部レッジ(突起)である。第2の保持部材1060は、第2の保持部材260と同様に構成することができる。本開示の態様では、第2の保持部材1060は、上記の保持部材のいずれかと同様に構成することができる。本開示の態様では、複数の円形チャネル1066は、眼内ステント1020の設置中に深さの表示を提供する。
【0078】
眼内ステント1020は、眼内デバイス(例えば、眼内デバイス900)によって眼内に挿入されるように構成することができ、眼内ステント1020は、カニューレ1090内に配置される。ここで、カニューレ1090は、内部に眼内ステント1020がスライド可能に配置されるチャネル1092を有することができる。挿入トロカール1094は、眼内ステント1020の管腔1080を通して挿入することができる。例えば、トロカール1094の外径は、管腔1080の内径よりわずかに小さくすることができる。本開示の態様では、挿入トロカール1094は、鑿、刃、または任意の他の適切な形状のように形成された先端1096を有することができる。例えば、先端1096は、
図52に示されるように、2つの穿刺部材1040を橋渡しするように構成することができる。
【0079】
本開示の態様では、
図47に示されるように、トロカール1094は、プッシュロッド1097の端部1095に結合することができる。例えば、端部1095の外径は、端部1095が眼内ステント1020の端部1034と係合できるように、管腔1080の内径より大きくすることができ、こうしてプッシュロッド1097は、眼内ステント1020を挿入のためにカニューレ1090から前方にスライドさせることができる。
【0080】
本開示の態様では、先端1096は、挿入プロセス全体を通じて、穿刺部材1040がハウジング1030の底部1032から延びる位置に配置することができる。例えば、眼内ステント1020がカニューレ1090内部にある間(
図44を参照)、先端1096はこのように配置され、眼内ステント1020が伸長位置(
図45、46を参照)へと出て行く(例えば、滑り出す)間、その位置を維持することができる。
【0081】
本開示の態様では、先端1096は、眼内ステント1020がカニューレ1090内部にある間(
図51を参照)、穿刺部材1040の先端1044と略同一平面上に配置され、眼内ステント1020が伸長位置(
図52を参照)へと押し出される間、その位置を維持することができる。
【0082】
本開示の態様では、眼内ステント1020が強膜98内に配置された後、先端は、カニューレ1090に向かっておよび/またはカニューレ1090内に後退することができ、その後、カニューレ1090は、眼から後退する/眼から除去されるか、または眼の中の新しい位置に配置されることができる。本開示の態様では、先端1096は、眼内ステント1020が配置されたときに、穿刺部材1040に対するその位置(例えば、ハウジング1030の底部1032で、先端1044と同一平面上)を維持することができ、次いで、相互の相対的な位置を維持しながら、カニューレ1090および先端1096を共に除去または移動することができる。
【0083】
使用中、本開示の態様によれば、カニューレ1090は、カニューレ1090の先端部1098が強膜98に隣接するように、および/または強膜98に対して押し付けられるように、1つのステップで(例えば、切開を通して)眼内に挿入され、前房96を通して操作される。本開示の態様では、先端部1098は、
図53に示されるように角度が付けられて、強膜の角度98に合わせることができる。本開示の態様では、先端部1098は、強膜棘97およびシュワルベ線99にもたれるように構成され、したがって、トロカール1094の先端1096と穿刺部材1040の先端1044とが、眼内ステント1020がカニューレ1090内部にある間に整列された状態で、間に延びる線維柱帯94の長さを橋渡しする(
図51参照)。
【0084】
1つのステップで、トロカール1094および眼内ステント1020が前方に押し出されてカニューレ1090の外へ伸長し(
図52を参照)、先端1096および1044が線維柱帯94を貫通して通過し、シュレム管92を通過し、強膜98の壁部90に係合する/押し付ける。1つのステップでは、トロカール1094が所定の位置に維持され、眼内ステント1020がさらに前方に押され(
図46を参照)、穿刺部材1040が強膜98の壁部90を貫通し、眼内ステント1020を所定の位置に保持する(
図54を参照)。ここで、第1の保持部材1050は、眼内ステント1020が壁部90から外に戻る動きを防止または最小限に抑える。1つのステップでは、トロカール1094は、カニューレ1090内に後退され、トロカール1094の先端1096は、カニューレ1090内の次の眼内ステント1020の先端1044と位置合わせすることができる。1つのステップで、カニューレ1090がシュレム管92および線維柱帯94から引き抜かれ、眼内ステント1020が所定の位置に残される。本開示の態様では、上記のステップのいずれも組み合わせることができる、および/または省略することができる。
【0085】
眼内ステント1020が所定の位置に配置されると、管腔1080の対向する端部は、線維柱帯94の対向する側に配置され、したがって、眼内液が前房96から管腔1080を通ってシュレム管92内に流れることが可能になる。本開示の態様では、眼内ステント1020は、線維柱帯94を通って強膜98内に配備されるときに、2つの穿刺部材1040の間の空間がシュレム管92に沿って流れる流体を提供するように向けられる。
【0086】
上記のように、所定の位置に配置される前、配置中、または配置後に、眼内デバイス(例えば、眼内デバイス900)を通して、および眼内ステント1020を通して流体を注入することができる。例えば、眼内ステント1020が後退位置でカニューレ1090内にあるときに、および/または眼内ステント1020が強膜98内の所定の位置に一旦挿入されると、管腔1080を通して流体を注入することができる。また、カニューレ1090が眼内ステント1020から後退した後、カニューレ1090を通して流体を注入することもできる。
【0087】
本開示の態様では、カニューレ1090は、一度に単一の眼内ステント1020を挿入して配置するように構成することができる。本開示の態様では、カニューレ1090は、
図48に示されるような3つの眼内ステント1020のスタック1088など、眼内ステント1020のスタック1088を保管するように構成することができる。本開示の態様では、眼内ステント1020は、スタック800において他の眼内ステント20、120、220、220a、320、320a、420、520、620~620c、720と混合することができる。
【0088】
本開示の態様では、カニューレ1090内での眼内ステント1020のカニューレ1090からの拡張中の1つまたは複数の眼内ステント1020の位置合わせを確実にするために、1つまたは複数のキーイング機構を提供することができる。例えば、
図49に示されるように、スタック1088の眼内ステント1020の穿刺部材1040の先端1044は、先行する眼内ステント1020の端面1034のノッチ1036と係合するか、またはノッチ1036内に配置することができ、したがって保管中および使用中にカニューレ1090内で眼内ステント1020のラインを同じ向きに保つことができる。本開示の態様では、最も内側の眼内ステント1020のノッチ1036と嵌合するために、先端1044と同様の突起が、プッシュロッド1097の端部1095から延びてもよい。
【0089】
図50に示されるように、他のキーイング機構は、眼内ステント1020の外径上のステントキーイング機構1038を含むことができ、これは、カニューレ1090の内径上の同様のカニューレキーイング機構1099と一致し、したがって、カニューレ1090内のおよびカニューレ1090から延びる特定の位置合わせした状態に眼内ステント1020を維持する。同様に、
図47に示されるように、プッシュロッド1097の外径は、カニューレ1090の内径上のカニューレキーイング機構1099と一致するトロカールキーイング機構1093を含み、こうしてトロカール1094の先端1096を眼内ステント1020の先端1044の向きと位置合わせした状態に保つことができる。本開示の態様では、上記のキーイング機構の任意の組み合わせ、または任意の他の適切なキーイング機構を提供することができる。
【0090】
本開示の態様では、薬物送出は、上記の眼内ステント20、120、220、220a、320、320a、420、520、620~620c、720、1020のいずれによっても提供することができる。例えば、ディスペンサ内に含まれる薬剤が、1回用量で、または時間をかけて投与されるなど、ステントを通して投与できるように、ディスペンサをステントの前部に取り付けるか、または結合することができる。別の一例として、ステントの一部(例えば、チャネル266、266a、766、1066内)に薬剤をコーティングすることができ、コーティングは、時間の経過とともに生分解して薬剤を送出することができる。本開示の態様では、ステントの任意の部分または構成を薬剤でコーティングすることができる。
【0091】
さらに別の一例として、ステントは、ステントの配置後の治癒を助けるために抗線維化剤を収容してもよい。例えば、チャネル266、266a、766、1066は、レルデリムマブ(CAT-152)、デコリン、スラミン、トラニラスト、ロバスタチン、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤、マイクロRNA、ペガプタニブ、ラニビズマブ、ベバシズマブ、5D11D4、Y-27932、光線力学的療法(PDT)、サラチン、ソネプシズマブ、ドキシサイクリン、ピルフェニドン、タクロリムス、オクトレオチドなどの任意の適切な抗線維化剤を収容してもよい。
【0092】
本開示の態様では、ステントが解放された後であるが、挿入器から取り外される前に、眼科用粘手術デバイス(OVD)または薬剤を、シュレム管、線維柱帯、および収集チャネルのいずれかに注入することができる。例えば、ステントが所定の位置に配置されると、OVDがシュレム管に注入され、その後、ステントが解放される。別の一例では、薬剤を注入することができる、染料を注入することができる、またはその他の適切なデバイスおよび/または薬剤を注入することができる。OVDの場合、ステントを所望の位置に配置することができ、その後、ステントを解放する前にOVDを注入することができる。これにより、線維柱帯がトランポリン状になり、管内部分により多くのスペースを作り出すことにより、OVDの配置が強化され、ならびに血液を遮断することにより、デバイス内およびデバイス周囲の血液逆流が減少する。本開示の態様では、幹細胞療法の局在化のために、薬剤をシュレム管に直接導入することが使用できる。本開示の態様では、線維柱帯の層に何かを注入する(例えば、線維柱帯の層にトレーサーを注入する)ことができる。
【0093】
本開示の態様では、ステント内に何かを注入することが、二次ステップとして行われてもよく、そこでは、ステントが所定の位置で解放され、その後、第2のデバイスがステントと係合して、OVD、染料(例えば、トリパンブルー)、薬物、生物製剤、細胞、ウイルスベクター、およびその他の適切なデバイス/薬剤を注入する。
【0094】
本開示の態様では、1つまたは複数のセンサが、上記の保持機構のいずれかと係合することができる。
【0095】
本開示の態様では、ステントが強膜全体および管腔を通して押し込まれてテノン嚢のすぐ下に存在する場合に、上記の穿刺部材(例えば、銛)自体のいずれもが、強膜内空間ならびに経強膜空間に流体を排出するのに役立ち得る管腔を有してもよい。これは、全層シャントであってもよいが、銛の遠位端が強膜壁の表面のすぐ上になるように移植されてもよく、この場合、強膜壁は、水疱を形成する可能性がある。
【0096】
本開示の態様では、上記の眼内ステントのいずれも、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)の波長に対して不可視または部分的に可視である1つまたは複数の材料から作製することができる。いくつかの実施形態では、ステントの材料は、OCTイメージングを使用するときに最小限のアーチファクトをもたらす。これにより、隅角鏡検査への依存度を低くして、OCT補助によるステントの移植が可能になる。例えば、1つまたは複数のステント材料は、ポリ塩化ビニル、グリコール変性ポリ(エチレンテレフタレート)(PET-G)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリフェニルスルホンなどのいずれであってもよい。
【0097】
本開示の態様によれば、上記の眼内ステントのいずれも、成形プロセスを介して単一の一体型デバイスとして製造することができる。例えば、中央管腔および/またはドレナージポートを作り出すためのピン(例えば、両端から1本ずつ、中央で嵌合する2本のコアピン)を使用しながら、または流体溶解性材料(例えば、水に溶解可能)を使用しながら、眼内ステントを固形体として成形する成形プロセスによって、単一の一体型デバイスを製造することができる。成形後、ピンを固形体から取り外して、中央管腔および/またはドレナージポートを作り出すことができる。別の一例として、単一の一体型デバイスは、流体溶解性材料(例えば、水に溶解可能)を使用しながら眼内ステントを固形体として成形する成形プロセスによって製造することができる。成形後、デバイスを溶解流体に浸漬するか、または溶解流体で洗い流して固形体から溶解性材料を除去し、こうして中央管腔および/またはドレナージポートを作り出すことができる。さらに別の一例として、単一の一体型デバイスは、眼内ステントが固形体として成形され、その後、中央管腔および/またはドレナージチューブがさらなるプロセス(例えば、穴あけ、レーザエッチング)によって形成され得る成形プロセスによって製造することができる。本開示の態様では、中央管腔およびドレナージチューブは、上記のような異なる方法によって形成されてもよい。
【0098】
本開示の態様によれば、上記の眼内ステントは、シリコン、プラスチック、ポリウレタン、アクリル、形状記憶プラスチックなどを含む任意の適切な材料から製造することができる。
【0099】
本開示の態様によれば、上記の眼内ステントのいずれも、ab interno(眼内)プロセスによって眼に外科的に埋め込むことができる。ab internoプロセスは、眼内ステントを医療器具(例えば、眼内デバイス900)内に配置すること、挿入器を眼内に挿入すること、および眼内ステントを眼の内部(例えば、前房)に突き刺すことを含むことができ、眼内ステントの一部(例えば、眼内ステントの出口ポート)をシュレム管内に配置することができる。したがって、前房内の房水は、前房内に配置された眼内ステントの端部に流入し、シュレム管内に配置された眼内ステントの部分に配置された出口ポートを通って流出することができる。眼の通常のドレナージプロセスにより、房水がシュレム管から除去される。
【0100】
開示されたプロセスの方法におけるブロックの特定の順序または階層は、アプローチ例を例示するものであることが理解される。設計または実装の好みに基づいて、プロセス内のブロックの特定の順序または階層は再配置できること、または図示されたすべてのブロックが実行されることが理解される。いくつかの実装形態では、ブロックのうちのいずれかは、同時に実行され得る。
【0101】
本開示は、当業者が本明細書に記載された様々な態様を実施できるようにするために提供される。本開示は、主題技術の様々な例を提供し、主題技術はこれらの例に限定されない。これらの態様に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義された一般的な原理は、他の態様に適用してもよい。
【0102】
単数形の要素への言及は、特に明記されていない限り、「1つおよび1つだけ」を意味することを意図しているものではなく、「1つまたは複数」を意味することを意図している。特に断りのない限り、「いくつか」という用語は、1つまたは複数を指す。男性形の代名詞(例えば、彼の(his))には、女性形と中性形(例えば、彼女の(her)およびそれの(its))が含まれ、逆もまた同様である。見出しおよび小見出しは、もしあれば、便宜上のみ使用され、本発明を限定するものではない。
【0103】
「例示的」という単語は、本明細書では、「例または例示として役立つこと」を意味するために使用される。「例示的」として本明細書に記載されている任意の態様または設計は、必ずしも他の態様または設計よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。一態様では、本明細書で説明される様々な代替構成および操作は、少なくとも均等であると見なすことができる。
【0104】
本明細書で使用される場合、一連の項目の前にある「のうちの少なくとも1つ(at least one of)」という表現は、任意の項目を区切る「または(or)」という用語とともに、リストの各々の項目ではなくリスト全体を修飾する。「のうちの少なくとも1つ(at least one of)」という表現は、少なくとも1つの項目を選択する必要はなく、むしろ、この表現は、項目のいずれか1つの少なくとも1つ、および/または項目の任意の組み合わせの少なくとも1つ、および/または項目の各々の少なくとも1つを含む意味を許容する。例として、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」という表現は、Aのみ、Bのみ、またはCのみ、あるいはA、B、およびCの任意の組み合わせを指すことができる。
【0105】
「態様」などの語句は、そのような態様が主題技術に不可欠であること、またはそのような態様が主題技術のすべての構成に適用されることを意味するものではない。一態様に関する開示は、すべての構成、または1つまたは複数の構成に適用することができる。一態様は、1つまたは複数の例を提供することができる。一態様などの語句は、1つまたは複数の態様を指すことができ、その逆も同様である。「実施形態」などの語句は、そのような実施形態が主題技術に不可欠であること、またはそのような実施形態が主題技術のすべての構成に適用されることを意味するものではない。一実施形態に関する開示は、すべての実施形態、または1つまたは複数の実施形態に適用することができる。一実施形態は、1つまたは複数の例を提供することができる。一実施形態のような語句は、1つまたは複数の実施形態を指すことができ、逆もまた同様である。「構成」などの語句は、そのような構成が主題技術に不可欠であること、またはそのような構成が主題技術のすべての構成に適用されることを意味するものではない。構成に関する開示は、すべての構成、または1つまたは複数の構成に適用することができる。一構成は、1つまたは複数の例を提供することができる。このような一構成のような語句は、1つまたは複数の構成を指すことができ、逆もまた同様である。
【0106】
一態様では、別段の記載がない限り、すべての測定値、値、評価、位置、大きさ、サイズ、および以下の特許請求の範囲を含む本明細書に記載されているその他の仕様は概算であり、正確ではない。一態様では、それらは、それらが関係する機能およびそれらが関係する技術分野で通例のものと一致する合理的な範囲を有することを意図している。
【0107】
開示されるステップ、操作、またはプロセスの特定の順序または階層は、例示的なアプローチの例示であることが理解される。設計の好みに基づいて、ステップ、操作、またはプロセスの特定の順序または階層を再配置できることが理解される。ステップ、操作、またはプロセスのうちの一部は、同時に実行され得る。ステップ、操作、またはプロセスの一部またはすべては、使用者の介入なしに自動的に実行され得る。添付の方法請求項は、存在する場合には、様々なステップ、操作、またはプロセスの要素をサンプルの順序で示しており、提示された特定の順序または階層に限定されることを意味するものではない。
【0108】
当業者に知られている、または後に知られるようになる、本開示を通じて説明される様々な態様の要素に対するすべての構造的および機能的均等物は、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、特許請求の範囲に包含されることが意図される。さらに、本明細書に開示されたものは、かかる開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているかどうかに関係なく、一般に公開されることを意図したものではない。クレーム要素は、その要素が「ための手段(means for)」という語句を用いて明示的に述べられていないか、方法クレームの場合には「ためのステップ(step for)」という語句を用いて述べられていない限り、35 U.S.C.§112(f)の規定に基づいて解釈されるべきではない。さらに、「含む(include)」、「有する(have)」などの用語が使用される範囲において、そのような用語は、「備える(comprise)」が請求項において転換語として採用される場合に解釈されるときの「備える(comprise)」と同様の方法で包括的であることを意図している。
【0109】
本開示の名称、背景、概要、図面の簡単な説明、および要約は、本開示に組み込まれ、限定的な説明としてではなく、本開示の例示的な例として提供される。それらは、請求項の範囲または意味を制限するために使用されないことを理解して提出される。また、詳細な説明では、説明が例示的な例を提供し、開示を簡素化する目的で、様々な構成が様々な実施形態にまとめられていることがわかる。この開示方法は、特許請求された主題が、各々の請求項で明示的に記載されているよりも多くの構成を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、本発明の主題は、開示された単一の構成または操作のすべての構成よりも少ない構成にある。以下の請求項は、詳細な説明に組み込まれ、各々の請求項は別々に請求される主題として独立している。
【0110】
請求項は、本明細書に記載された態様に限定されることを意図したものではなく、文言上の請求項と一致する完全な範囲が与えられ、すべての法的均等物を包含するものである。それにもかかわらず、いずれの請求項も、35 U.S.C.§101、§102、または§103の要件を満たさない主題を包含することを意図しておらず、またそのように解釈されるべきでもない。
【国際調査報告】