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  • 特表-呼吸療法装置 図1
  • 特表-呼吸療法装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】呼吸療法装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20240628BHJP
   A61M 16/20 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61M16/00 355A
A61M16/20 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502135
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 GB2022000063
(87)【国際公開番号】W WO2023285773
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】2110225.6
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509342843
【氏名又は名称】スミスズ メディカル インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】オンベリン マローン ヒッツ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミー ダニエル パーキンス
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ジェームズ フィールド
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン マーク タッパー
(72)【発明者】
【氏名】ムハンマド カシム ムハンマド カソウナヒ
(57)【要約】
振動型PEP装置は、弁クロージャ(107)を支持するロッカーアーム(106)の下の支持体(205)上に取り付けられた4つの弁開口部(201)~(204)を有する。支持体は、回転可能であり、弁開口部のうちの選択された1つを、弁クロージャの下で、インレット(103)、(104)とアウトレット(111)との間の呼吸経路にそって位置させることができる。ロッカーアーム(106)は、一方の端部で軟鉄ピン(108)を支持する。軟鉄ピン(108)は、ターンテーブル(211)上の異なる強度の2つの永久磁石のうちの1つ(212または213)と相互作用し、アームを引き下げて弁開口部を閉じる傾向のある力を加える。ターンテーブル(211)は回転可能であり、所望の磁石(212または213)を位置決めし、ロッカーアーム上の軟鉄ピンと相互作用させることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸療法装置(100)であって、ユーザがそれを通して呼吸するインレット(104、103)と、大気への開口部(111)と、前記装置を通る呼吸によって駆動されて呼吸に対して振動抵抗を生成する弁機構(105)と、を有する呼吸療法装置(100)において、前記弁機構(105)が、異なるサイズの少なくとも2つの弁部材(201~204)を含み、前記弁部材(201~204)は、患者が前記弁部材(201~204)のうちの1つの弁部材または他の弁部材を通して呼吸することができるように、前記装置を通る呼吸経路に選択的に接続されることを特徴とする、呼吸療法装置(100)。
【請求項2】
請求項1に記載の呼吸療法装置(100)において、前記弁機構(105)は共通の弁クロージャ(107)を含み、前記弁部材(201~204)は、前記弁クロージャ(107)と選択的に位置合わせすることができる異なるサイズの開口部を有することを特徴とする、呼吸療法装置(100)。
【請求項3】
請求項2に記載の呼吸療法装置(100)において、前記弁部材(201~204)は、前記弁クロージャ(107)に対して変位可能な支持体(205)上に取り付けられることを特徴とする、呼吸療法装置(100)。
【請求項4】
請求項3に記載の呼吸療法装置(100)において、前記支持体(205)は、前記弁部材(201~204)を通る流路に平行な軸線を中心に回転可能であることを特徴とする、呼吸療法装置(100)。
【請求項5】
請求項2~4の何れか一項に記載の呼吸療法装置(100)において、前記装置は、前記弁クロージャ(107)を閉鎖位置に付勢する傾向のある復元力を前記弁クロージャ(107)に提供する磁石装置(108および210)を含むことを特徴とする、呼吸療法装置(100)。
【請求項6】
請求項5に記載の呼吸療法装置において、前記磁石装置(108および210)は、異なる強度の少なくとも2つの永久磁石(212および213)を含み、前記永久磁石(212および213)は、弁クロージャ(106、107)上の磁気素子(108)と磁気的に相互作用するように選択的に変位可能であることを特徴とする、呼吸療法装置。
【請求項7】
請求項6に記載の呼吸療法装置において、前記永久磁石(212および213)は、ターンテーブル(211)上に取り付けられ、前記ターンテーブル(211)は、前記弁部材(201~204)を通る流路に平行な軸線を中心に回転可能であることを特徴とする、呼吸療法装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は呼吸療法装置に関する。呼吸療法装置は、ユーザがそれを通して呼吸するインレットと、大気への開口部と、装置を通る呼吸によって駆動されて呼吸に対して振動抵抗を生成する弁機構と、を有する種類である。
【背景技術】
【0002】
呼気陽圧(PEP: positive expiratory pressure)装置、すなわち、装置を通る呼気に抵抗を与える装置は、例えば、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、嚢胞性線維症、および無気肺などの様々な呼吸障害を患っている患者の治療を助けるために広く使用されている。より最近では、流れに対して交互の抵抗を与えるこのような装置が、呼気と振動とが組み合わさって分泌物の上方への移動を刺激して助長する点で、特に有効であることが分かってきている。このような装置の1つの例としては、スミスズメディカル(Smiths Medical)社によってアカペラ(Acapella)(スミスズメディカル社の登録商標)の商標名の下で販売されており、また特許文献1~4(米国特許第6581598号、同第6776159号、同第7059324号、および同第7699054号)に記載されているものがある。これらの装置は、弁を含む。弁は、非線形の吐出オリフィスを有する。吐出オリフィスは、ロッカーアームの一端に取り付けられた円錐形状の閉鎖部材によって開閉される湾曲したトランペット形状の開口部を有する。調整可能な磁石装置は、力を提供する。この力は、閉鎖部材を押し下げて、オリフィスを通る吐き出された空気の流れに対してオリフィスと閉鎖部材を密封係合させる傾向がある。これによって、弁の交互の開閉が生じる。これが、今度は、ユーザの呼吸通路において振動(oscillatoryまたはvibrating)効果を生成する。
【0003】
患者が発揮できる呼気力は、呼吸能力によって異なる。10L/分未満のワークフローを3秒以上持続できる患者もいれば、15L/分以上のワークフローを3秒以上持続できる患者もいる。異なる患者の範囲にわたって最も効果的な療法を提供するためには、異なるサイズの弁を有する異なる療法装置の範囲を提供することが必要である。また、それに応じて、磁気回復装置の調整が必要となる場合もある。これによって、多様な問題が発生する。病院、診療所、薬局は、全ての患者に適切な装置を提供できるように、全範囲にわたる装置を備蓄する必要がある。また、製造業者は、顧客に適切な装置を供給できるように、より多くの装置を備蓄する必要もある。さらに、患者が療法装置を使用し、呼吸が改善するにつれて、患者が、その改善された肺機能により適した別の装置に変える必要もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6581598号
【特許文献2】米国特許第6776159号
【特許文献3】米国特許第7059324号
【特許文献4】米国特許第7699054号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、代替的な呼吸療法装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上で特定された種類の呼吸療法装置が提供される。呼吸療法装置は、弁機構が、異なるサイズの少なくとも2つの弁部材を含むことを特徴とする。弁部材は、患者が弁部材のうちの1つの弁部材または他の弁部材を通して呼吸することができるように、装置を通る呼吸経路に選択的に接続される。
【0007】
弁機構は、好適には、共通の弁クロージャを含む。弁部材は、弁クロージャと選択的に位置合わせすることができる異なるサイズの開口部を有する。弁部材は、弁クロージャに対して変位可能な支持体上に取り付けることができる。支持体は、弁部材を通る流路に平行な軸線を中心に回転可能とすることができる。この装置は、弁クロージャを閉鎖位置に付勢する傾向のある復元力を弁クロージャに提供する磁石装置を含むことができる。磁石装置は、異なる強度の少なくとも2つの永久磁石を含むことができる。永久磁石は、弁クロージャ上の磁気素子と磁気的に相互作用するように選択的に変位可能である。永久磁石は、ターンテーブル上に取り付けることができる。このターンテーブルは、弁開口部を通る流路に平行な軸線を中心に回転可能である。
【0008】
次に、本発明による呼吸療法装置を、添付の図面を参照して、例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】装置の、カバーが持ち上げられた状態の簡略化された側面図である。
図2】弁開口部および磁石装置のレイアウトを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
最初に、図1を参照すると、装置100はハウジング101を含む。ハウジング101は、通常は閉じられているヒンジ付カバー102と、取り外し可能なマウスピース103と、を有する。ハウジング101は、その左手端部に患者インレット104を有する。マウスピース103は、患者インレット104に取り付けられる。ハウジング101は、弁機構105を含む。弁機構105は、呼気流に対する振動抵抗を生成し、また、米国特許第6581598号に記載されているものに類似の、ロッカーアーム106を含む。ロッカーアーム106は、一方の端部で旋回され、その反対側の自由端の近傍で円錐形の弁クロージャ107を支持する。ロッカーアーム106はまた、その自由端において、軟鉄ピンのような磁気素子108を支持する。弁クロージャ107は、下方に向いている。すなわち、装置が水平に保持されるとき、弁クロージャ107の尖った先端部が、下方に向けられている。機構105はまた、全体的に数字200で示される、トランペット形状の弁座装置を提供する弁部材または開口部と、患者インレット104からハウジングの反対側の端部にあるアウトレット111まで延在する空気流路110からの開口部と、を含む。空気流路110は、ダックビル弁またはフラップ弁などの一方向弁112、または一方向への流れを可能にする何らかの他の従来の弁を含む。特に、弁112は、(吸気中に)アウトレット111からインレット104への流れを可能にするが、(呼気中に)反対方向への流れを防止する、または制限する。カバー102が使用時に下方の閉鎖位置にあるとき、機構105内の弁座装置200は、空気流路110から、通常は封入される流路の上方の空間113内に開く。この空間113は、一方向弁の介在なしに、直接にアウトレット111と連通している。
【0011】
次に、図2を参照すると、弁座装置200は、2つ以上の弁開口部を含む。本実施例に示される弁座装置200は、4つのそのような開口部201~204を含む。開口部201~204の各々は互いに異なるサイズである。典型的に、開口部201~204は、そのより狭い端部で、5mm、7mm、10mm、および12mmの直径を有する。開口部201~204は、従来の療法装置で使用されるのと同じ一般的な種類のものである。開口部201~204は、概してトランペット形状である非線形のオリフィスを有し、そのより広い側はロッカーアーム106に向かって上方を向くように配置されている。弁部材または開口部201~204は、回転可能な円形の支持体205の周囲に均等に離間される。したがつて、それぞれが、その隣接する開口部から90°だけ離間される。支持体205は、垂直軸線、すなわち、装置100の長手方向軸線に直交する軸線を中心に、開口部201~204のうちの異なるものがロッカーアーム106上の円錐形の弁クロージャ107の真下に位置する4つの異なる位置の間で、回転可能である。支持体205は、支持体の周囲で外側に延在するリブ付きのスクロールホイール206を用いて回転される。支持体205には、ハウジング101のヒンジ付カバー102のスロット207を通して、中間ギアホイールなどを介して、直接的または間接的にアクセス可能である。装置100は、支持体205を回転させることができるように、ロッカーアーム106を持ち上げる何らかの手段を含む。これは、スクロールホイール206上の、ホイールが回転したときにロッカーアーム106と係合するカムの形態をとることができる。
【0012】
この装置は、また、ロッカーアーム上に取り付けられた軟鉄ピン108と相互作用するように配置された可動磁石構造210を備える磁石装置を含む。構造210は、円形のターンテーブル211を備える。ターンテーブル211は、2つの小さな永久磁石212および213を支持する。永久磁石212および213は、互いに直径方向に対向して取り付けられ、異なる磁気エネルギ積を有する。ターンテーブル211は、垂直軸線を中心に回転可能である。したがって、磁石212または213の選択された1つを、ロッカーアーム106上の軟鉄ピン108の下側に隣接して位置させることができる。このようにして、ロッカーアーム106の自由端を下方に引き、選択された弁開口部201~204を閉じるように付勢する磁力を、2つの異なる値の間で調整することができる。ターンテーブル211は、また、外部のスクロールホイール220を支持する。外部のスクロールホイール220は、ターンテーブルの周囲に延在し、ヒンジ付カバー102内のスロット207を通して手動で変位させることができる。代替的に、弁支持体および磁石支持体を、ヒンジ付カバー102を開いた後でのみアクセスできるように配置することもできる。直線的に変位可能なスライダの上などの、装置を通る呼吸経路に、弁開口部を選択的に接続できる多くの他の装置がある。同様に、磁石装置は、回転可能である必要はなく、例えば摺動可能であってもよい。弁開口部201~204は、非線形のプロファイルを有するトランペット形状である必要はなく、他の形状であってもよい。
【0013】
したがって、ユーザがマウスピース103および開口部104を介して吸入し、空気がアウトレット111および一方向弁112を通って流路110に引き込まれることが分かる。このために流路110内に生じる減圧によって、ロッカーシステム105を弁座200に対して更に下方に引き寄せる傾向のある圧力が加えられる。これによって、この弁の常閉状態が更に強化される。ユーザがマウスピース103およびインレット104を通して息を吐き出すと、流路110における圧力が上昇する。この圧力は、アウトレット111に直接に流れることが一方向弁112によって防止される。その代わりに、この圧力によって、磁気ロッカーシステム105内の弁クロージャ107が開き、ロッカーアーム106が瞬間的に持ち上げられ、そして弁の下の圧力を低下させることができる。これによって、ロッカーアーム106が下降し、ロッカーアームを持ち上げるのに十分な圧力が蓄積するまで、弁座200を再び閉じることができる。このようにして、弁機構105は交互に開閉し、流路110に沿う空気流に振動(oscillationまたはvibration)を引き起こす。この振動は、ユーザの呼吸システムと連通し、分泌物を緩めることを助ける治療用の振動を生成する。
【0014】
記載された装置にはいくつかの利点がある。それによって、異なるワークフローを有する装置を製造してストックする必要性が低減され、製造コストおよびユーザへのコストを低減させることができる。それはまた、ユーザの呼吸機能の変化に合致するように適合させることができる単一の装置を、ユーザに提供することを可能にする。このようにして、ユーザが最大の利益を得る。
図1
図2
【国際調査報告】