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特表2024-524725鉄道交通システムの安全な運用方法、及び鉄道交通システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】鉄道交通システムの安全な運用方法、及び鉄道交通システム
(51)【国際特許分類】
   B61L 27/20 20220101AFI20240628BHJP
   B61L 27/40 20220101ALI20240628BHJP
【FI】
B61L27/20
B61L27/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502453
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2022069759
(87)【国際公開番号】W WO2023285603
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】A50578/2021
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524019265
【氏名又は名称】プロデス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルチェク クシシュトフ
(72)【発明者】
【氏名】シュスター ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】シュスター ゴットフリート
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161JJ27
(57)【要約】
鉄道交通システム(1)を安全に運転する方法であって、鉄道交通システム(1)の状態変数に相関する第1鉄道交通情報(31)を含み、第1鉄道車両(3)とインフラ設備(2)及び/又は第2鉄道車両(4)との間で、鉄道交通システム(1)の状態変数に相関する第2鉄道交通情報(32,42)を送信し、第1鉄道交通情報(31)及び第2鉄道交通情報(32,42)を用いて比較結果を決定し、比較結果を用いて第1鉄道交通情報(31)及び/又は第2鉄道交通情報(32,42)の妥当性をチェックし、妥当性チェックの結果を用いて鉄道交通システム(1)を制御する、ステップを含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道交通システム(1)の安全な運用方法であって、
1.1. 前記鉄道交通システム(1)の状態変数に相関する第1鉄道交通情報(31)を収集し、
1.2. 第1鉄道車両(3)とインフラ設備(2)及び/又は第2鉄道車両(4)との間の前記鉄道交通システム(1)の状態変数に相関する第2鉄道交通情報(32,42)を送信し、
1.3. 前記第1鉄道交通情報(31)と前記第2鉄道交通情報(32,42)に基づいて比較結果を決定し、
1.4. 前記比較結果を用いて、前記第1鉄道交通情報(31)及び/又は前記第2鉄道交通情報(32,42)の妥当性をチェックし、及び
1.5. 妥当性チェックの結果を用いて前記鉄道交通システム(1)を制御する、ステップを有する方法。
【請求項2】
前記第1鉄道交通情報(31)は、前記第1鉄道車両(3)によって収集されること、及び
前記第2鉄道交通情報(32,42)は、前記第1鉄道車両(3)に送信されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1鉄道交通情報(31)は、前記インフラ設備(2)によって収集されること、及び
前記第2鉄道交通情報(32,42)は、前記インフラ設備(2)に送信されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1鉄道交通情報(31)及び/又は前記第2鉄道交通情報(32,42)は、感覚的に検出された測定値に基づくことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
妥当性をチェックするステップは、一定の時間間隔で行われることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記比較結果を用いて修正された少なくとも1つの鉄道交通情報(31,32)によって、前記鉄道交通システム(1)を制御することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記比較結果を用いて、前記第1鉄道交通情報(31)及び/又は前記第2鉄道交通情報(32,42)の収集を較正することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
同一の鉄道交通システム(1)内で、異なる制御能力クラスの鉄道車両(3,4)を異なる方法で制御することを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記妥当性チェックの結果を用いて前記鉄道交通システム(1)を制御することにより、前記少なくとも1つの鉄道車両(3,4)をより高い制御能力クラスに分類することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2鉄道交通情報(31,32)の連続送信により、前記少なくとも1つの鉄道車両(3,4)をより高い制御能力クラスに分類することを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記妥当性チェックの結果に応じて、前記少なくとも1つの鉄道車両(3,4)を分類することを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
交通容量を増加させるために、前記少なくとも1つの鉄道車両(3,4)を、それの制御能力クラスに基づいて、利用率の高い鉄道区間(6,7,8)に移送することを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記妥当性チェックの結果を用いて前記鉄道交通システム(1)を制御することは、遵守すべき走行パラメータ範囲及び/又は走行可能な鉄道区間(6,7,8)の決定を含むことを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記鉄道交通システム(1)を制御することは、移動空間距離の走行に少なくとも部分的に基づくことを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの鉄道車両(3,4)の制御指令により、前記インフラ設備(2)を制御することを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
鉄道交通システム(1)であって、
16.1. インフラ設備(2)及び/又は
16.2. 少なくとも1台の鉄道車両(3,4)を有し、
16.3. 前記インフラ設備(2)及び/又は前記少なくとも1つの鉄道車両(3,4)は、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法を実施するための少なくとも1つの制御ユニット(22,24)を有する、鉄道交通システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道交通システムの安全な運用方法に関する。さらに、本発明は鉄道交通システムに関する。
【背景技術】
【0002】
欧州列車制御システム(ETCS)は、欧州内で統一されていない列車制御システムの標準化を進めることを目的としている。さらに、既存の鉄道交通システムを特に効率的に利用するための基盤も整える。しかし、このような鉄道交通システムは、高い技術要件を満たさなければならない。これらは特に、例えば特許文献1に開示されている測定装置による、鉄道交通システムの感覚的監視に関するものである。必要な技術拡張レベルを達成するためには、特に既存の鉄道交通システムに多額の投資が必要であるが、その経済的効果は、鉄道交通システムの大部分が近代化された後にしか生じない。その結果、対応する近代化は、しばしば、あまりにもたどたどしく実行されている。
【0003】
特許文献2には、光学測定システム、特にステレオカメラシステムと、無線ベースの測定システムを使用して鉄道車両の位置を決定する方法が記載されており、両方の測定システムからの位置データが鉄道車両上で生成され、相互に比較される。
【0004】
鉄道車両の接近を人々に警告する警告システムは、特許文献3から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2020/108873A1
【特許文献2】WO2021/121854A1
【特許文献3】WO2021/121853A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、特に非常に経済的で柔軟に使用できる、改良された鉄道交通システムの安全な運用方法を作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法によって達成される。本発明によれば、第1及び第2鉄道交通情報に基づく比較結果を用いて鉄道交通情報の妥当性をチェックし、その妥当性チェックの結果を用いて鉄道交通システムを制御すれば、鉄道交通システムの安全な運用方法を特に経済的かつ柔軟な方法で使用できることが認識された。第1及び第2鉄道交通情報に基づいて比較結果を決定することにより、不正確な鉄道交通情報を特に確実に認識及び/又は補償することができる。特に、鉄道交通情報の収集及び/又は処理する際に起こり得る欠陥は、妥当性チェックの結果を決定することによって補償することができる。こうして、鉄道交通システムを制御するための収集された鉄道交通情報の有用性を高めることができる。鉄道交通情報の妥当性が確認された場合、この情報が正しいことを特に高い確率で推定することができる。したがって、妥当性チェックの結果を用いて鉄道交通システムを制御することは、特に高いレベルの運転安全性につながる。特に、これにより、鉄道網の特に効率的な利用に対して、特により高い交通密度に対して必要とされる信頼性の閾値を乗り越えることが可能になる。鉄道交通システムのより高い交通容量は、より少ない投資で達成できる。したがって、既存の鉄道交通システムの近代化と、新しい鉄道交通システムの建設の両方を、特に経済的かつ柔軟な方法で実施することができる。
【0008】
鉄道交通システムは、好ましくは、インフラ設備と、少なくとも1台の鉄道車両、特に複数の鉄道車両を備える。インフラ設備は、複数の、特に相互接続された線路を有する鉄道網を有することができ、この鉄道網は、好ましくは複数の鉄道線区に細分化される。インフラ設備、特に鉄道線区のそれぞれは、インフラ設備を制御するための単一又は複数の制御センターを有することができる。
【0009】
少なくとも1台の鉄道車両は、少なくとも1台、特に少なくとも2台、特に少なくとも5台、特に少なくとも10台の走行トレーラを有することができる。好ましくは、少なくとも1つの鉄道車両は、鉄道車両を線路に沿って移動させるのに必要な推進力を提供するための駆動ユニットを備えた少なくとも1つの動力貨車を備える。
【0010】
状態変数と鉄道交通情報との間の相関関係は、鉄道交通情報が状態変数に依存すること、特にそれらが互いに一定の、特に線形の関係にあることを意味すると理解される。
【0011】
鉄道交通システムの状態変数は、例えば、位置、及び/又は速度、及び/又は駆動力、及び/又は制動力、及び/又は2台の走行トレーラ間の機械結合の存在と相関する状態変数、及び/又は線路の領域に位置する物体、特に危険箇所を引き起こす障害物と相関する状態変数とすることができる。
【0012】
第2鉄道交通情報は、好ましくは、第1鉄道交通情報の情報源とは独立した情報源に基づいている。特に、第2鉄道交通情報は、第1鉄道車両によって決定されるものではない。
【0013】
第2鉄道車両は、第1鉄道車両に準じて設計することも、より高い又はより低い技術拡張レベルを有することもできる。
【0014】
妥当性チェックの結果を用いて鉄道交通システムを制御することは、鉄道交通情報の妥当性が不十分である場合、キロメートル単位の性能を低下させ、特に走行速度を低下させて、鉄道車両の運転を継続すること、及び/又は、鉄道車両を停止させること、及び/又は、鉄道車両に保守措置を実施することを含むことができる。有利なことに、これにより、鉄道交通システムを特に安全な方法で運用することができる。
【0015】
妥当性チェックの結果の決定及び/又はそのさらなる処理は、コンセンサスメカニズムを使用して行うことができる。このように、妥当性チェックの結果は、特に安全で信頼できる方法で取得し、処理することができる。
【0016】
異なる鉄道交通情報は、特に基礎となる情報源、特にセンサの信頼性に基づいて、一様に又は異なる重み付けをすることができる。例えば、インフラ設備から発信される鉄道交通情報は、鉄道車両から発信される鉄道交通情報よりも高い重み付けを有してもよい。より低い重み付けを有する鉄道交通情報は、特に2つの鉄道交通情報の間の差異により、妥当性が不十分な場合、より高い重み付けを有する鉄道交通情報によって修正でき、特に置き換えることができる。これにより、この方法は特に信頼性の高いものとなる。
【0017】
好ましくは、第1鉄道交通情報及び/又は第2鉄道交通情報は、少なくとも1つのセンサ、特に位置検出モジュール、特に鉄道網における少なくとも1つの鉄道車両の位置を検出するためのGPS受信機、及び/又は線路上の物体を捕捉するための光センサ、特にカメラ、及び/又は走行中の2台のトレーラ間の機械結合の存在を監視するための完全性監視装置によって決定される。同様に、第2鉄道交通情報は、第2鉄道車両によって決定することができる。代替的又は追加的に、第2鉄道交通情報は、インフラ設備、特にレールセンサによって決定することができる。
【0018】
第2鉄道交通情報の伝送は、有線又は無線で行うことができる。好ましくは、第2鉄道交通情報は、特に、第1鉄道車両の車両無線モジュールと、インフラ設備の制御センターの制御センター無線モジュール及び/又は第2鉄道車両の車両無線モジュールとの間で無線信号接続を介して伝送される。無線信号接続は、WiFi信号接続及び/又は5G信号接続を含んでもよい。信号接続は、好ましくはピアツーピア接続として設計される。
【0019】
好ましくは、無線信号接続を介したデータの伝送は暗号化される。これにより、この方法は特に安全に動作する。
【0020】
本発明のさらなる態様によれば、少なくとも1つの鉄道交通情報は、特に第1鉄道交通情報と第2鉄道交通情報は、特に比較結果の基礎となる鉄道交通情報、線路の領域に物体、特に人がいるかどうかに関する情報を含む。鉄道車両の接近を人々に警告するために、信号ボックス制御の乗務員警告システムを設けることができる。このような警告システムは、例えば特許文献3に開示されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。この鉄道交通情報は、例えば光センサによって検出することができる。光センサは、インフラ設備及び/又は少なくとも1つの鉄道車両の構成要素とすることができる。
【0021】
第1及び/又は第2鉄道交通情報は、特に線路に沿った少なくとも1台の鉄道車両の位置を含んでもよい。好ましくは、鉄道車両の位置は、ラテレーション法、特に無線三辺測量、特にWiFi三辺測量によって決定される。この目的のために、鉄道車両は追跡モジュール、特に無線三辺測量によって位置を決定するための無線追跡モジュールを有することができる。追跡モジュールは、アンカーモジュールとも呼ばれる。追跡モジュールは、固定式及び/又は可動式の追跡マーカ、特にトランスポンダーからの信号を検出するように設計することができる。固定式追跡マーカは、インフラ要素に取り付けることができる。特に位置が既知の固定点に配置される固定式追跡マーカによって、特に線路に沿った鉄道車両の位置を決定することができる。可動式追跡マーカは、例えば人、特に鉄道保守作業員が携帯することができる。これにより、鉄道車両に対して、及び/又は線路内、及び/又は線路に沿って、その人の位置を決定することができる。鉄道車両及び/又は人の位置を決定する方法に関しては、特許文献2が参照され、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
請求項2に記載の方法は、特に経済的かつ柔軟な方法で鉄道交通システムの運用を保証する。第2鉄道交通情報は、好ましくは、第2鉄道車両及び/又はインフラ設備によって、特にセンサによって収集される。比較結果及び/又は妥当性チェックの結果は、第1鉄道車両、特に車両制御ユニットによって決定することができる。第1及び第2鉄道交通情報を第1鉄道車両で利用可能にすることで、比較結果及び/又は妥当性チェックの結果を、第1鉄道車両によって決定することができる。このように、第1鉄道車両、特に鉄道車両の車両制御ユニットで利用可能な鉄道交通情報は、特に高い信頼性をもって決定することができる。このため、特に高い交通容量で鉄道交通システムを運用するために必要な、鉄道車両の技術拡張レベルの閾値を、特に容易に達成することができる。鉄道車両の既存のセンサーシステムで検出できる測定値の信頼性は、比較結果を用いて高めることができる。例えば、相応して高い交通容量を達成するために必要な安全度水準(SIL)は、妥当性チェックの結果を決定することによって達成できる。したがって、対応するセンサーシステムを実装するために必要な労力を削減することができ、本方法は特に柔軟に使用でき、経済的に運用できるようになる。
【0023】
請求項3に記載の方法は、特に安全かつ経済的な方法で鉄道交通システムの運用を可能にする。第2鉄道交通情報は、好ましくは、第1鉄道車両によって収集される。比較結果及び/又は妥当性チェックの結果は、インフラ設備、特に制御センター制御ユニットによって決定することができる。こうして、第1鉄道車両が受信した鉄道交通情報は、特に高い確率で正確であるとみなすことができる。鉄道車両によって受信された鉄道交通情報は、インフラ設備によって収集された鉄道交通情報の妥当性を判断するために使用することができる。このようにして、所定の技術拡張レベルのインフラ設備を、特に安全かつ経済的に運用することができる。特に、妥当性チェックの結果を用いて鉄道交通システムを制御することにより、鉄道交通システムをより高い交通容量で運用するための閾値を超えることができる。
【0024】
請求項4に記載の方法は、特に安全かつ経済的な方法で鉄道交通システムの運用を保証する。少なくとも1つの測定値の感覚検出のために、少なくとも1つの鉄道車両は、光センサ、及び/又は位置検出モジュール、及び/又は完全性監視装置を有することができる。少なくとも1つの測定値を感覚的に検出するために、インフラ設備は、通過する鉄道車両を検出するためのレールセンサ、特に、鉄道車両の走行トレーラの数、及び/又は、鉄道車両の位置、及び/又は速度を決定するためのレールセンサを有することができる。少なくとも1つのレールセンサは、車軸計数器などの点状レールセンサ、及び/又は、ライトガイドセンサ、特にグラスファイバーセンサなどの線状レールセンサを含むことができる。このようなレールセンサは、警戒標識(balise)の一部とすることも、レール又は架線に結合されたセンサの形態で設計することもできる。このような光ガイドセンサは、例えば特許文献1に開示されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。妥当性チェックの結果を判断することにより、対応するセンサに対してより高い安全度水準を容易に達成することができる。
【0025】
請求項5に記載の方法は、特に安全な方法で鉄道交通システムの運用を可能にする。好ましくは、妥当性チェックの結果の判定は、繰り返しで行われ、特に0.01秒から300秒の範囲、特に0.1秒から60秒の範囲、特に0.5秒から30秒の範囲、特に1秒から10秒の範囲の時間間隔で行われる。この目的のために、第2鉄道交通情報の送信は、同じ範囲の時間間隔、特に同じ時間間隔で行うことができる。
【0026】
本発明のさらなる態様によれば、第2鉄道交通情報の送信が所定の時間範囲内、特に上述の範囲内で行われるかどうかが監視される。送信が遅れたり、送信が失敗したりした場合には、安全対策を講じてよい。この安全対策は、例えば、走行速度を下げること、及び/又は鉄道車両を停止すること、及び/又はそれの別の線路区間への進入を禁止することを含んでもよい。これにより、本方法は特に安全に運用される。
【0027】
請求項6に記載の方法は、特に安全な方法で鉄道交通システムの運用を保証する。鉄道交通情報が乖離している場合、元の安全度水準が低い鉄道交通情報、特に安全度水準が低いセンサからの測定値に基づいている鉄道交通情報は、特に元の安全度水準が高い鉄道交通情報、特に安全度水準が高いセンサからの測定値に基づいている鉄道交通情報を用いて修正することができる。あるいは、両方の鉄道交通情報を変更及び/又は破棄することができ、特に他の鉄道交通情報、特に事前に決定された情報と置き換えることができる。好ましくは、乖離した鉄道交通情報を変更するための補正データは、第1鉄道車両とインフラ設備及び/又は第2鉄道車両との間で送信され、特に無線で送信される。
【0028】
例えば、第1鉄道車両の走行速度は、鉄道車輪の速度に相関する測定値に基づいて、鉄道車輪の直径に基づいて決定される。鉄道車輪の直径は摩耗が進むにつれて小さくなるため、測定された走行速度は実際の走行速度から乖離する。線路に沿って間隔をあけて配置されたレールセンサによって、走行速度を正確に測定することができる。鉄道車両によって検出された走行速度を、インフラ設備に送信することができる。インフラ設備により、比較結果は、この走行速度と実際の走行速度との差として決定される。インフラ設備は、鉄道車両に補正データ、特に鉄道車輪の補正された直径を送信することができ、これにより実際の走行速度を鉄道車両によって決定することができる。
【0029】
請求項7に記載の方法は、特に安全な方法で鉄道交通システムの運用を保証する。較正は、ローカルで決定された及び/又は送信された比較結果及び/又は補正データを用いて行うことができる。較正は一定の時間間隔で自動的に行うことも、手動で行うこともできる。
【0030】
請求項8に記載の方法は、特に柔軟な方法で鉄道交通システムの運用を保証する。鉄道車両の制御能力クラスは、その技術設備の尺度であると理解される。例えば、制御能力クラスは、特に特定のETCSレベルに対応するETCS分類と相関してもよい。鉄道車両の技術設備とそれに対応する制御能力クラスは、列車制御システムに対し、鉄道車両の制御がどの方式に基づくか、特にどの交通容量を達成できるか、特に鉄道車両がどの程度まで鉄道網内を自律的に移動できるかについて、決定的となる可能性がある。制御能力クラスは、安全度水準に応じて機能する。異なる制御能力クラスの鉄道車両を異なる方法で制御することで、交通容量を増大させることができる。高い制御能力クラス、特に高い技術拡張レベルを有する鉄道車両は、低い制御能力クラスを有する鉄道車両よりも高い密度で鉄道網、特に鉄道線区を走行することができる。例えば、高い制御能力クラスの鉄道車両は、移動空間距離に基づいて制御することができる。低い制御能力クラスの鉄道車両は、固定された空間距離に基づいて制御することができる。より高い制御能力クラスは、より高い感覚性能及び/又はプロセッサ性能によって達成されることが好ましい。プロセッサ性能とは、データを処理する能力、特に処理速度及び/又はデータ処理の基礎となる機能の性能を意味すると理解される。
【0031】
請求項9に記載の方法は、特に経済的かつ柔軟な方法で鉄道交通システムの運用を保証する。妥当性チェックの結果を用いて鉄道交通システムを制御することにより、特に信頼性の高い情報基盤に基づいて鉄道交通システムを制御することができる。鉄道交通情報の正当性が妥当性チェックの結果によって確認された場合、少なくとも1台の鉄道車両をより高い制御能力クラスに分類することができる。鉄道交通情報の有効性に反する妥当性チェックの結果が得られた場合、少なくとも1台の鉄道車両の制御能力クラスは、特に、妥当性チェックの結果が鉄道交通情報の妥当性に反する内容を複数回、特に連続して数回にわたって示した場合、引き下げることができる。
【0032】
請求項10に記載の方法は、特に安全かつ経済的な方法で鉄道交通システムの運用を保証する。鉄道交通情報を連続的に受信して処理することにより、比較結果及び/又は妥当性チェックの結果を連続的に決定することができる。これにより、鉄道交通情報の特に高い信頼性を確保することができ、鉄道車両をより高い制御能力クラスに分類することができる。代替的又は追加的に、インフラ設備は、鉄道車両からの鉄道交通情報の連続的な受信により、より高い制御能力クラスに分類され得る。
【0033】
請求項11に記載の方法は、特に安全な方法で鉄道交通システムの運用を保証する。妥当性チェックの結果が肯定的である場合、制御能力クラスは格上げされるか、又は変更なしの高レベルに維持される。妥当性チェックの結果が否定的である場合、制御能力クラスは格下げされるか、変更なしの低レベルに維持される。妥当性チェックの結果が悪い場合、鉄道車両は最高速度を下げて運転を継続するか、停止し続けるか、及び/又は鉄道車両の保守措置を実施することができる。
【0034】
請求項12に記載の方法は、特に経済的な方法で鉄道交通システムの運用を保証する。好ましくは、高い制御能力クラスの鉄道車両は、鉄道網の領域、特に利用率の高い鉄道区間に移される。低い制御能力クラスの鉄道車両は、これらのエリアから移動させることができる。これは、鉄道網の利用率の高いエリアを特に高密度に走行できるという点で有利である。こうして、鉄道交通システムの交通容量を、これらの地域で増やすことができる。高い制御能力クラスの鉄道車両のみが配置されている鉄道網のエリアでは、それら車両は、例えば、特にインフラ設備からの制御コマンド無しで、空間距離の移動及び/又は自律的制御に基づいて、特にインフラ設備からの制御指令無しで運行させることができる。
【0035】
請求項13に記載の方法は、特に安全な方法で鉄道交通システムの運用を保証する。例えば、最大牽引駆動力、及び/又は最大走行速度、及び/又は最大制動力などの走行パラメータ範囲を、妥当性チェックの結果に基づいて制御し、特に制限することができる。鉄道区間は、妥当性チェックの結果を用いて開閉することができる。例えば、妥当性チェックの否定的な結果をもたらし、特に正当な鉄道交通情報を生成しない鉄道車両に対しては、利用頻度の高い鉄道区間を閉じることができる。
【0036】
請求項14に記載の方法は、特に経済的に実行できる。移動空間距離での走行は、特に高い交通容量を保証する。好ましくは、鉄道交通システムの制御は、移動空間距離又は固定空間距離のいずれかにおいて、妥当性チェックの結果及び/又は制御能力クラスに応じて行われる。鉄道交通システム、特に異なる鉄道区間において、鉄道交通システムの制御は、特に移動空間距離及び/又は固定空間距離において、均一に又は不均一に実施することができる。
【0037】
請求項15に記載の方法は、特に安全かつ経済的な方法で鉄道交通システムの運用を保証する。好ましくは、少なくとも1台の鉄道車両は、インフラ設備、特に鉄道網を完全に自律的に、特にインフラ設備からの制御指令なしに走行できる。この目的のために、鉄道車両は、インフラ設備、特にレール信号機及び/又は分岐器、特にレール調整手段及び/又はレール供給手段、特に架線を介して供給される電力を制御することができる。この目的のために、鉄道車両は、インフラ設備によって収集されたセンサデータを受信することも、鉄道車両自体によって収集されたセンサデータによってのみ制御されることもできる。
【0038】
本発明のさらなる目的は、特に安全で、経済的で、柔軟な運用が可能な、改良された鉄道交通システムを構築することである。
【0039】
この目的は、請求項16の特徴を備えた鉄道交通システムによって達成される。本発明による鉄道交通システムの利点は、上記した方法の利点に対応する。好ましくは、鉄道交通システムは、本方法に関連して上記した特徴の少なくとも1つをさらに備えてさらに開発される。インフラ設備及び/又は少なくとも1つの鉄道車両は、上述の方法を実施するための少なくとも1つの制御ユニット、特に車両制御ユニット、及び/又は制御センター制御ユニットを有してもよい。
【0040】
本発明はまた、上記した方法を実行するためのコンピュータプログラム製品にも関する。コンピュータプログラム製品の利点は、上記した方法の利点に対応する。好ましくは、コンピュータプログラム製品は、方法に関連して上記した特徴の少なくとも1つを備えてさらに開発される。コンピュータプログラム製品は、少なくとも1つの制御ユニットの記憶ユニット及び/又はポータブル記憶ユニットに記憶することができる。
【0041】
本発明のさらなる特徴、詳細及び利点は、図面に基づく実施形態の以下の説明から明らかになる。以下の図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】第1鉄道区間を有するインフラ設備と、第1鉄道区間に進入する第1鉄道車両と、第1鉄道区間から出発する第2鉄道車両とを含む鉄道交通システムの概略図である。
図2図1の第1鉄道車両の側面図である。
図3図1の鉄道交通システムの概略図であり、鉄道交通情報を収集及び送信する手段がさらに詳細に示されている。
図4図1の鉄道交通システムにおいて、各鉄道車両とインフラ設備との間で交換される鉄道交通情報のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1図4は、鉄道交通システム1の一実施形態を説明する。鉄道交通システム1は、インフラ設備2と、複数の鉄道車両3,4、特に第1鉄道車両3と第2鉄道車両4とを備える。
【0044】
インフラ設備2は、鉄道網5を有する。鉄道網5は、複数の鉄道区間6,7,8に分割されている。鉄道区間6,7,8は互いに重なり合っている。このような重複領域9,10には、複数の鉄道区間6,7,8に割り当てられた線路11がある。あるいは、少なくとも個々の、特に鉄道区間6,7,8の全てを、重なり合うことなく、特に互いに直接隣接して設計することもできる。
【0045】
インフラ設備2は、レールセンサ12a,12b、レール調整手段13、レール信号14a、レール供給手段15を線路11に沿って備えている。レールセンサ12a,12bは、通過する鉄道車両3,4に相関する測定値を検出するように設計することができる。測定値の検出は、測定値の測定を意味するものと理解される。レールセンサ12a,12bは、点状レールセンサ12a又は線状レールセンサ12bとして設計することができる。点状レールセンサ12aは、例えば、車軸カウンタであると理解される。線状レールセンサ12bは、特にファイバ、特に光ファイバ内を伝導する光に基づくレールセンサ12bであると理解される。レール調整手段13は、スイッチ駆動装置として設計することができる。レール信号14aは、切り替え可能な光信号、又は可動式、特に切り替え可能なセマフォ信号とすることができる。定点マーカとも呼ばれる光マーキング14bが線路11の近くに取り付けられている。さらに、人14c、特に線路作業員が線路11の近くにいる。好ましくは、光マーキング14bはQRコード(登録商標)の形態である。レール供給手段15は、鉄道車両3,4に電力を供給するための架線とすることができる。
【0046】
さらに、インフラ設備2は、鉄道区間6,7,8ごとに管理センター16,17,18を備えている。それぞれの管理センター16,17,18は、割り当てられた鉄道区間6,7,8内の鉄道交通を制御する。この目的のために、それぞれの管理センター16,17,18は、それぞれの鉄道区間6,7,8に割り当てられた、レールセンサ12a,12b、調整手段13、レール信号14a、レール供給手段15と信号伝送方式で接続されている。特にこれらは、それぞれの管理センター16,17,18によって制御及び/又は読み出しすることができる。
【0047】
図2は、鉄道交通システム1の鉄道区間8をさらに詳細に示している。第1鉄道車両3が、線路11上に配置されている。第1鉄道車両3には、架線15を介して電力が供給される。第1鉄道車両3は、5G無線モジュールの形態の車両無線モジュール19、追跡モジュール19a、特に無線三辺測量用の無線追跡モジュール、位置検出モジュール20、及びカメラの形態の第1光センサ21aを備える。さらに、第1鉄道車両3は、デジタルデータを処理するための車両制御ユニット22を備えている。車両制御ユニット22は、車両無線モジュール19、追跡モジュール19a、位置検出モジュール20、及び第1光センサ21aと、信号伝送方式、特に有線接続で接続される。位置検出モジュール20は、好ましくはGPSモジュールとして設計され、第2鉄道車両4の位置を検出する役割を果たす。第1光センサ21aは、特に車両制御ユニット22と共に、レール信号14a及び/又は線路の領域内の物体、特に線路内の人14c及び/又は定点マーカ14bを自動的に認識するように設計されている。第2光センサ21bは、線路内の物体及び/又は光マーキング14bを検出するための第1光センサに従って設計することができる。
【0048】
管理センター18は、5G無線モジュールとして設計された管理センター無線モジュール23を備える。さらに、管理センター18は、デジタルデータを処理するための管理センター制御ユニット24を備える。管理センター18、特に管理センター制御ユニット24は、レールセンサ12a,12b、レール調整手段13、レール信号14a、及びレール供給手段15と、信号伝送方式で、特に有線で接続されている。光ファイバ内を伝導する光に基づくレールセンサ12bの動作モードに関しては、特許文献1を参照されたい。管理センター制御ユニット24はさらに、管理センター無線モジュール23と信号伝送方式で接続されている。
【0049】
第1鉄道車両3は、車両無線モジュール19及び管理センター無線モジュール23を介して、第3管理センター18と信号伝送方式で、特に無線で接続されている。無線信号接続25は、図では一点鎖線で示されている。有線信号接続26は、図では破線で示されている。
【0050】
第1鉄道区間6を離れた第2鉄道車両4は、特に車両無線モジュール19を介して、無線信号伝送方式で第1管理センター16に接続される。重複領域9,10に配置された鉄道車両3,4は、同時に複数の鉄道区間6,7,8の管理センター16,17,18と信号接続することができる。
【0051】
図3では、鉄道交通システム1が、第1鉄道区間6に配置された2台の鉄道車両3,4とともにさらに詳細に示されている。
【0052】
上述のセンサ20,21aに加えて、第1鉄道車両3は、第2光センサ21b(特に、フロントカメラ)と、第1鉄道車両3の完全性(特に、互いに機械的に結合された2つの走行トレーラ28a,28b間の機械的な接続の有無)を監視するための完全性監視装置27とをさらに備える。さらに、第1鉄道車両3は、駆動装置29とブレーキ装置30とを備える。完全性監視装置27、駆動装置29及びブレーキ装置30は、有線信号接続26を介して車両制御ユニット22に接続されている。
【0053】
第2鉄道車両4は、車両無線モジュール19、駆動装置29、ブレーキ装置30、及び車両制御ユニット22を有する。第2鉄道車両4は、その走行トレーラ28a,28b,28c間の既存の機械的連結の有無を判定したり、位置を検出したり、線路内の物体を検出したりするためのセンサを有していない。したがって、第1鉄道車両3は、第2鉄道車両4よりも制御能力の高いクラスにグループ化される。
【0054】
インフラ設備2は、通過する鉄道車両3,4を検出するように、特に、互いに連結された走行トレーラ28a,28b,28cの数を検出するように設計された第1レールセンサ12aを備える。光ファイバセンサの形態で設計された第2レールセンサ12bもまた、それを備えた線路11上を移送される鉄道車両3,4の検出を可能にする。
【0055】
鉄道交通システム1、特に制御ユニット22,24の動作モードは次のとおりである。
【0056】
第1鉄道車両3は第3鉄道区間8に配置されている。第2鉄道車両4は、第1鉄道区間6に配置されている。無線信号接続25は、第1鉄道車両3と第3管理センター18との間に存在する。また、第1管理センター16と第2鉄道車両4との間にも無線信号接続25が存在する。
【0057】
鉄道車両3,4のそれぞれの車両制御ユニット22と、それに接続されたセンサ20,21a,21b,27によって、鉄道交通情報が、特に連続的に収集される。インフラ設備2、特に第1管理センター16、特に管理センター制御ユニット24、及びそれらに接続されたセンサ12a,12bによって、さらなる鉄道交通情報が決定される。鉄道交通情報は、鉄道交通システム1、特にインフラ設備2の現在の状態、特にレール信号14aの状態及びレール調整手段13の状態、ならびに鉄道車両3,4の状態、特にその位置、速度、ブレーキカーブ、完全性、及び/又はその駆動力及び制動力を説明する。
【0058】
2つの鉄道車両3,4は、異なる制御能力クラスに分類される。この分類の決め手となるのは、鉄道車両3,4がインフラ設備2からある程度(特に、完全に)独立して、鉄道網5内を安全に移動できる能力である。特に、それぞれの鉄道車両3,4が、そのために必要な感覚能力及び/又は処理能力を備えているかどうかが決定的である。第1鉄道車両3は、第2鉄道車両4に比べてより多くの鉄道交通情報を収集して処理できるため、高い制御能力クラスに分類される。さらに、各鉄道車両3,4、特にセンサ20,21a,21b,27の安全度水準(SIL)が決定的である。センサの安全度水準は、そのセンサが検出する測定値がより正確で堅牢であるほど高く、特に故障の確率が低いほど高くなる。
【0059】
図4は、第1鉄道車両3と第1管理センター16との間の鉄道交通情報31,32の交換を示している。第2鉄道車両4が第1鉄道区間6、特に第1重複領域10に進入すると、第1鉄道車両3と第1管理センター16との間に接続33aが確立される。
【0060】
第1鉄道車両3によって、第1鉄道交通情報31が、特に連続的に決定される。位置検出モジュール20によって、特に鉄道網5における、線路11に沿った第1鉄道車両3の位置が決定される。光センサ21a,21bによって、鉄道交通を妨害する可能性のある物体が線路11の領域にあるかどうかが判断される。さらに、レール信号14aは、光センサ21a,21b及び車両制御ユニット22によって自動的に認識される。少なくとも1つの光センサ21a,21bによって、特に線路11に沿った鉄道車両3の位置を決定するために、光マーキング14bをさらに検出することができる。鉄道車両3の位置は、定点マーカ14bに基づいて、及び光センサ21a,21bによって決定することができる。完全性監視装置27からの信号は、すべての走行トレーラ28a,28bが互いに連結されているか否かを検出するために使用される。鉄道車両3によって感覚的に検出されたこのデータは、車両センサデータ34と呼ばれる。さらに、車両制御ユニット22は、第1鉄道車両3の走行状態を表す走行パラメータ35を決定する。走行パラメータ35は、駆動装置29によって供給される駆動力と、ブレーキ装置30によって生成される制動力とを含む。第1鉄道交通情報31は、調整指令36及び車両補正情報37を更に含むことができる。
【0061】
特にアンカーモジュールの形態で設計できる追跡モジュール19aによって、特に線路11に沿った鉄道車両3の位置が決定される。追跡モジュール19bは、車両無線モジュール19と同一に設計されてもよいし、別個のコンポーネントとして設計されてもよい。追跡モジュール19aによって、追跡マーカ19b、19cを検出することができ、これらは、インフラ設備2の一部として据付けに設計することも、移動可能に設計することもできる。固定式追跡マーカ19bは、例えば、特に線路11の近くのインフラ要素に取り付けることができる。移動可能な追跡マーカ19cは、例えば、線路建設作業員などの人14cによって携行されてもよい。追跡モジュール19aによって鉄道車両3及び/又は人14cの位置を決定するための監視システムの動作モードに関しては、特許文献2を参照されたい。鉄道車両3及び/又は人14cの位置は、三辺測量方法、特に無線三辺測量、特にWiFi三辺測量によって決定される。警告信号は、好ましくは、特に無線接続25、及び/又は光信号、及び/又は音響信号を介して、特に鉄道車両3によって、危険地帯にいる人14cに送信される。
【0062】
第2鉄道交通情報32は、インフラ設備2、特に第1管理センター16、特に管理センター制御ユニット24によって決定される。第2鉄道交通情報32は、レールセンサ12a,12bに基づいて決定される管制センターセンサデータ38と、レール調整手段13、レール信号14a、及びレール供給手段15の調整状態に関する情報を有する調整パラメータ39とを含む。さらに、第2鉄道交通情報32は、走行指令40と管理センター補正情報41を含んでもよい。
【0063】
無線信号接続25を介して、鉄道交通情報31,32は、第1鉄道車両3とインフラ設備2との間で交換される。比較結果を決定するために、第1鉄道交通情報31と第2鉄道交通情報32の比較33bが行われ、特に、鉄道交通システム1の同じ状態変数に相関する鉄道交通情報31,32の情報部分が互いに比較される。例えば、レールセンサ12a,12bが位置検出手段20と同じ鉄道車両4の位置及び速度を検出しているかどうかが比較される。さらに、完全性監視装置27によって検出された機械的に連結された走行トレーラ28a,28bの台数と、レールセンサ12a,12bによって検出された機械的に連結された走行トレーラ28a,28bの数とが一致するか否かを比較することができる。さらに、光センサ21a,21bによって自動的に検出されたレール信号14aが、特に調整パラメータ39に関して、インフラ設備2によって実際に予め設定されたレール信号14a、と一致するかどうかを比較することが可能である。
【0064】
この比較結果を用いて、妥当性(信憑性)チェック(the plausibility check)の結果が、第1鉄道交通情報31の妥当性を示す値として決定される。第1鉄道交通情報31は、第2鉄道交通情報32と一致すれば、妥当であり、したがって正しいとみなされる。例えば、位置検出モジュール20によって決定された第1鉄道車両3の位置は、レールセンサ12a,12bによって決定された位置と一致する場合、妥当であるとみなされる。
【0065】
鉄道交通システム1は、好ましくは、妥当性チェックの結果を用いて制御される。走行指令40は、位置検出モジュール20による位置検出が、妥当な車両センサデータ34、特にインフラ設備2の位置情報と一致するデータを提供する場合、位置情報を含むことができる。特に、走行指令40は、前方を走行する第1鉄道車両3に対する相対位置(特に、距離)を含むことができる。位置情報の妥当性に基づいて、鉄道車両3,4は、走行指令40によって安全に制御され、特に、鉄道網5内で互いに一定の安全距離を保って移動することができる。
【0066】
第1鉄道交通情報31と第2鉄道交通情報32との間には、特に鉄道交通システム1の少なくとも1つの状態変数に関して、偏差(ずれ)が存在する可能性がある。このような偏差は、鉄道交通情報31,32に基づく比較結果を使用して、妥当性チェックの結果を決定する際に認識される。この比較結果を使用して、第1鉄道交通情報31を修正することができる。特に、修正された第1鉄道交通情報31に基づいて、鉄道交通システム1を制御することができる。例えば、第2鉄道車両4によって決定された位置を、レールセンサ12a,12bのうちの1つによって決定された鉄道車両4の位置に一致するように修正することができる。
【0067】
好ましくは、第1鉄道交通情報31の収集は、比較結果を用いて較正され、特に、センサ20,21a,21b,27は、比較結果を用いて較正され得る。例えば、位置検出モジュール20及び車両制御ユニット22によって検出された鉄道車両4の速度は、線路に沿った距離が既知である2つの連続するレールセンサ12a,12bの通過の間に経過する、レールセンサ12a,12bによって決定された時間間隔に従って較正することができる。
【0068】
妥当性チェックの結果の判定は、好ましくは一定の時間間隔、例えば1秒間隔で行われる。
【0069】
比較結果、特に妥当性チェックの結果を決定することにより、それぞれの鉄道車両3,4によって決定された鉄道交通情報31の信頼性を特に連続的にチェックし、その妥当性に関して信頼性を高める可能性が生じる。これにより、それぞれの鉄道車両3,4のセンサ20,21a,21b,27を、より高い安全度水準に分類することができる。さらに、鉄道車両3,4をより高い制御能力クラスに分類することができる。比較結果を適切に使用することで、測定誤差を確実に認識し、特に補正することができる。
【0070】
対応する補正情報の決定は、鉄道車両3,4側の測定誤差を補償するために、管理センター16,17,18によって実施することができる。対応する管理センターの補正情報41は、車両センサデータ34を補正するために、鉄道車両3,4に送信することができる。
【0071】
特に高い制御能力クラスの場合、特に鉄道車両3,4の安全度水準が高い場合、第2鉄道交通情報32は、代替的又は追加的に、比較結果を用いて第1鉄道交通情報31によって補正することができる。特に、第2鉄道交通情報32は、比較結果を用いて、特に車両補正情報37に基づいて補正することができる。
【0072】
さらなる鉄道交通情報42は、好ましくは、第2鉄道車両4から、特に無線信号接続25を介して直接、又は第1管理センター16を介して、第1鉄道車両3に送信される。比較結果は、第1鉄道交通情報31と、第2及び/又はさらなる鉄道交通情報32,42に基づいて決定することができる。有利なことに、これは、さらなる鉄道交通情報42が、第1鉄道交通情報31の妥当性を評価するために利用可能であり、妥当性チェックのさらに信頼性の高い結果に使用できることを意味する。あるいは、第2鉄道車両4のさらなる鉄道交通情報42は、特に比較結果を決定するために、第2鉄道交通情報32を置き換えることができる。
【0073】
鉄道車両3,4の制御は、それらの制御能力クラスに基づいて実行されることが好ましい。異なる制御能力クラスの鉄道車両3,4は、同じ鉄道交通システム1内で異なる方法で制御することができる。例えば、より高い制御能力クラスを有する第1鉄道車両3は、それ自体で、鉄道網5上を走行するために必要な走行指令40を提供することができ、及び/又は、インフラ設備2、特に管理センター16,17,18を制御するために、特にレール供給手段15、レール信号14a、及びレール調整手段13を制御するために、調整指令36を提供することができる。第2鉄道車両4は、インフラ設備2の走行指令40によって排他的に制御することができる。
【0074】
好ましくは、鉄道網5における第1鉄道車両3の制御は、移動空間距離での走行の原則に従って実行され、及び/又は、第2鉄道車両4の制御は、固定空間距離での走行の原則に従って実行される。
【0075】
妥当性チェックの結果を用いて、及び/又は制御能力クラスに基づいて、どの走行パラメータ範囲であるか、特に、どの走行速度及び/又は先行する鉄道車両3までのどの走行距離を維持しなければならないか、及び/又は鉄道車両3,4によって、どの最大駆動力を維持しなければならないか、及び/又はどの鉄道区間6,7,8を走行することができるか、を決定することができる。例えば、鉄道車両3,4の最大許容走行速度は、決定された鉄道交通情報31に関して妥当性が欠如しているために低減され得る。
【0076】
交通容量、特に鉄道区間6,7,8を走行可能な鉄道車両3,4の密度は、鉄道交通システム1の安全な運転を確実に確保するために、連続する2つの鉄道車両3,4間の移動距離がどの程度大きくなければならないかによって決まる。必須の最小移動距離は、それぞれの鉄道車両3,4の制御能力クラスが増加するにつれて減少する。利用率の高い鉄道区間6,7,8の交通容量を増やすために、鉄道車両3,4は、その制御能力クラスに基づいて、特に利用率の低い鉄道区間6,7,8から、利用率の高い鉄道区間6,7,8に移動させることができる。制御能力クラスの低い鉄道車両3,4は、利用率の高い鉄道区間6,7,8から利用率の低い鉄道区間6,7,8に移送することができる。
【0077】
妥当性チェックの結果を用いて鉄道交通システム1を制御することにより、鉄道交通システム1の運転を特に安全に行うことが有利に達成される。異なる交通情報31,32の比較33bにより、鉄道車両3,4及びインフラ設備2を制御するための情報基盤の信頼性が向上する。この鉄道交通情報31,32の信頼性が高くなることで、鉄道車両3,4の制御能力クラスを高めることができる。鉄道網5の交通容量を増大させることができる。特に、利用率の高い特定の鉄道区間6,7,8の交通容量を増加させることができる。この方法は、同一又は異なるセンサ及びプロセッサを備えた鉄道車両3,4を備えた鉄道交通システム1を安全に運用するのに適している。特に、鉄道交通システム1は、異なる制御能力クラスの鉄道車両による混在運転に使用することができる。この方法により、特に安全で経済的かつ柔軟な方法で鉄道交通システム1を運用することが可能になる。
【符号の説明】
【0078】
1 鉄道交通システム
2 インフラ設備
3 第1鉄道車両
4 第2鉄道車両
5 鉄道網
6、7、8 鉄道区間
9、10 重複領域
11 線路
12a 点状レールセンサ
12b 線状レールセンサ
13 レール調整手段
14a レール信号
14b 光マーキング
14c 人
15 レール供給手段
16、17、18 管理センター
19 車両無線モジュール
19a 追跡モジュール
19b 固定式追跡マーカ
19c 追跡マーカ
20 位置検出モジュール
21a、21b 光センサ
22 車両制御ユニット
23 管理センター無線モジュール
24 管理センター制御ユニット
25 無線信号接続
26 有線信号接続
27 完全性監視装置
28a、28b、28c 走行トレーラ
29 駆動装置
30 ブレーキ装置
31 第1鉄道交通情報
32 第2鉄道交通情報
33a 接続
33b 比較
34 車両センサデータ
35 走行パラメータ
36 調整指令
37 車両補正情報
38 管制センターセンサデータ
39 調整パラメータ
40 走行指令
41 管理センター補正情報
42 鉄道交通情報
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】