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特表2024-524726同種移植片のための組織の摘出方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】同種移植片のための組織の摘出方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/60 20060101AFI20240628BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20240628BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61L27/60
A61K35/36
A61P17/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502458
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 IB2021056338
(87)【国際公開番号】W WO2023285859
(87)【国際公開日】2023-01-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524019416
【氏名又は名称】マルセロ・アンドレス・フォンセカ・カンテロス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルセロ・アンドレス・フォンセカ・カンテロス
【テーマコード(参考)】
4C081
4C087
【Fターム(参考)】
4C081AA12
4C081AB19
4C081BA12
4C081CD34
4C081DA02
4C081EA01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB48
4C087CA03
4C087MA32
4C087MA63
4C087NA04
4C087ZA89
(57)【要約】
本発明は、全皮膚の同種移植片の摘出及びその後の冷凍保存による皮膚欠損のための新しい代替被覆に対応する。本発明は、複雑な創傷の一時的及び最終的な被覆の問題に対する解決法を提供しようとするものである。提案された解決法は、複雑な創傷の被覆のための皮膚同種移植片の摘出方法、処理、及びその後の使用に対応する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真皮を含む全皮膚の皮膚移植片のための組織の供給を可能にする生体パッチを生成する方法であって、3つの主要な段階、すなわち、
i.生体ドナーから全皮膚組織を入手する段階、
ii.前記組織を処置及び保存することにより、生体パッチを入手する段階、及び最後に
iii.最終的な患者において組織を移植する段階
を含む方法。
【請求項2】
前記方法の段階i)が、工程a)外科的介入、工程b)組織の摘出、工程c)包装及び識別、工程d)保管、並びに工程e)処理施設への輸送を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階ii)の組織処置及び組織の保存が、工程f)処理、工程g)冷凍保存及び隔離、工程h)検証、記録を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
段階iii)が、工程i)輸送及び工程j)臨床使用を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程a)が、前記ドナーの前記組織が取り出される病棟で実施され、具体的な工程において、組織を切開する領域に印が付けられ、印が付けられると皮膚脂肪組織の切開が実施されて、前記皮膚脂肪組織が得られ、適切な摘出が実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
工程b)において、工程a)で得られた組織が、真皮を含む全皮膚の摘出が実施される適切な表面に移され、適切な道具を使用してより深い真皮から脂肪が剥離される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
品質管理として、この工程において、好気性及び嫌気性微生物の培養、並びに真菌培養を実施するために組織試料がまた採取される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記組織が、生理学的血清を有する滅菌容器に入れられ、前記組織が血清中に完全に浸漬するように注意しながら容器が密閉される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記生理学的血清が抗生物質を含有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
段階c)において、段階b)で得られた容器が滅菌状態で保管され、前記容器には組織に割り当てられた少なくとも1つのコード、摘出日時のデータを伴うラベルを付ける、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
段階d)において、温度を2から8℃の間に維持するために、前記組織が適切な容器に保管され、その後、段階e)において、前記組織が、36時間未満の期間内に温度を2から8℃の範囲に保ちながら輸送される、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記組織が処理施設に到着すると、前記組織には、以下の段階:
1)生体パッチの測定、必要に応じて部分の切断、薄片の再調査、微生物負荷を低減するための洗浄サイクル、試料収集番号2、及び冷凍保存溶液中での30分から3時間の浸漬、
2)包装段階中の試料収集番号3及び4(培養)及びバッキングのための試料収集番号5(培養)とともに、得られた各フィルムの調製、トリミング、測定、包装、及びラベル付け、ここで、工程g)において、冷凍保存及び隔離のために冷凍保存及び凍結防止溶液が使用され、照射まで一連の培養の結果を待ちながらCAWSが-80℃に冷凍して維持される、
3)照射:コールドチェーンの維持のためのドライアイス中での、25から28kGyの照射線量での組織ロットの滅菌
を行う、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記冷凍保存及び/又は凍結防止剤が10%グリセロールである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程h)において、検証、譲渡、記録が実施され、組織提供方法、前記組織の摘出及び処理の再調査、公的な組織及び臓器移植データベースへの記録が実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項15】
最終段階で、輸送の工程i)において、処理された前記組織がコールドチェーンの維持(-80℃)のために最適な状態で作製施設に輸送され、j)において、組織受容者の同意を得ることによって臨床使用の危険性及び利益が組織受容者に通知される、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
後の自家移植のための創傷床を改善するための慢性で複雑化した創傷、自家移植又は局所皮弁の状態がない被覆不全、閉鎖の可能性がないcontained開腹手術、及び黒色腫の切除後の治療に有用なパッチの調製又は生成に役立つ、請求項1から15のいずれか一項に規定の生成された生体パッチの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植片のための組織の摘出及び処理の技術分野の一部である。
【背景技術】
【0002】
広範囲の皮膚損傷は、主に熱傷患者で生じるだけでなく、身体の非常に広い部分の破壊及び脱上皮化を引き起こす外傷及び皮膚疾患等のその他の状況でも生じ、それは被覆及び皮膚代替物の探索が必要になるが、最近のあらゆる技術開発にも関わらず、自家皮膚移植が依然として標準治療であり、それは拒絶の危険性がなく、したがって最終的な被覆(coverage)及び解決を実現するからであることを強調しなければならない。しかし、特に広い皮膚表面が患部である場合は、ドナー部分が罹患しており不足するという欠点がある。
【0003】
同種の個体から得られる皮膚同種移植片(CA)は、自己皮膚と同じ機能を果たすので、優れた代替物であるが、免疫作用のため拒絶され、一時的被覆としてのみ使用され、最終的には感染性疾患(infectocontagious diseases)の媒介物となる可能性がある。現在、ドナーの数は少なく、臨床使用のための皮膚の摘出、処理、及び保管の管理は複雑で、更に、チリ国保健省の組織の摘出、保存、及び移植の最新の一般用技術基準(MINSAL、2018年2月)によると、予約されているのは死体ドナーのみであるので、得られるのは限られた部分層のCAのみであり、これについては文献においてある大規模な臨床実験がある。
【0004】
臨床的有益性は多々あると同時にCAが不足しているため、特に、審美的及び/又は再建上の理由で身体輪郭形成手術、例えば、腹壁形成術を受けた人々のように、健康状態により臨床改善のために大量の皮膚がドライアウトする(drying out)に違いない生体ドナーにおいて、潜在的な皮膚ドナーの探索に関する可能性が開かれ、したがって、全皮膚のCA(CAWS)を得ることができる。
【0005】
提示された臨床実験によって、身体輪郭形成手術がCAの供給源となる可能性が再度確認されるが、全皮膚(CAWS)という特定の場合では、冷凍保存によって保存されると(CAWSC)、その生存性及びドナー真皮の多くの要素、特に、受容部に付着する線維芽細胞が維持され、一部の患者にとっては中間的な被覆となり、その他の患者にとっては最終的な被覆となる。
【0006】
皮膚の全体的な提供率及び特定の提供率が低い地域並びに主に文化的及び宗教的理由のためにその使用がまだ合法化されていないその他の地域では、身体輪郭形成処置を受けた患者、特にこの腹壁形成術の場合の生体ドナーからのCAの使用が選択肢となる。2017~2019年では、チリにおける有効な皮膚ドナーの人数はわずか4人で、1年あたりそれぞれ3,051cm2、1,069cm2、及び6,839cm2の皮膚が得られた(いずれも死体ドナー)。我々の実験では、それぞれの腹壁形成術について約302cm2の臨床的に有用な処理された皮膚が得られるので、この処置がCA及びCAWSの重要な供給源となる可能性を反映している。
【0007】
本発明は、皮膚再生基質として作用する、一部の患者では一時的な、その他の患者では最終的な、皮膚欠損の新しい代替被覆であり、一部の患者は方法を完了するために自家移植が必要であるが、その他の患者は治療方法を終了させるために高度な治療によって管理されてもよい。これには3つの独特の特徴があり、すなわち、a)生体ドナーから得られ、b)皮膚の層全体を含み、c)冷凍保存によって保存されるので、生存組織が得られるという特徴がある。
【0008】
以下に、本発明に近い先行技術文書について記載する。
【0009】
米国特許出願公開第2020/246508号は、脱細胞化されている天然組織から調製された足場材料について記載している。この生成物は組織充填物として使用するために適していることが示されている。評価した本発明との違いは、本発明の組織は脱細胞化されておらず、増殖因子が添加されていないという事実である。更に、その使用は、大きな熱傷の治療には適していないと思われる。
【0010】
米国特許出願公開第2014/316262号は、皮弁取り出しのために理想的な部位を特定するために、貫通静脈を特定するための方法について記載している。この方法は、造影剤を注入し、その後照明によって領域内の静脈を特定することで構成される。この文書は一般的な技術水準に対応しており、評価した本発明に影響を及ぼさない。
【0011】
米国特許出願公開第2013/108683号は、様々な重症度及び位置の創傷の治療のための方法及び組成物を開示している。この組成物は、増殖因子が補足された生物学的に適合性のある基質に対応する。特許請求の範囲は、この生成物が皮弁等の移植物を促進するか、又は改善するのに役立つことを示している。評価された本発明との違いは、この生成物が、評価された本発明を補うのに使用され得るので、明らかである。
【0012】
米国特許出願公開第2006/073592号は、組織基質保管のための方法について記載している。具体的には、真皮について述べているが、この方法は脱細胞化された組織を保存しようとするものである。したがって、この文書は一般的な技術水準と考えられ、評価した本発明に影響を及ぼさないであろう。
【0013】
国際公開第0052149号の場合、生物学的材料を患者に応用する方法のために保護が必要とされる。最初は、細胞を参照しているが、組織を使用する選択肢もあり、組織の例では、皮弁が挙げられている。
【0014】
評価された本発明との違いは、この場合、移植する皮弁(flap)の状態が規定されていないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/246508号
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/316262号
【特許文献3】米国特許出願公開第2013/108683号
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/073592号
【特許文献5】国際公開第0052149号
【発明の概要】
【0016】
本発明は、全皮膚の同種移植の摘出及びその後の冷凍保存による皮膚欠損の新しい代替被覆に対応する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、複雑な創傷の一時的及び最終的な被覆の問題に対する解決法を提供しようとするものである。
【0018】
提案された解決法は、複雑な創傷の被覆のための皮膚同種移植片の摘出方法、処理、及びその後の使用に対応する。
【0019】
この方法は、3つの主要な段階、すなわち、(i)生体ドナーから全皮膚組織を入手する段階、(ii)組織を処置及び保存することにより、皮膚同種移植片を入手する段階、及び最後に(iii)最終的な患者においてCAWSを移植する段階を含む。
【0020】
より具体的な実施形態では、この方法の段階i)は、工程a)外科的介入、工程b)組織の摘出、工程c)包装及び識別、工程d)保管、並びに工程e)処理施設への輸送を含む。
【0021】
その一方で、組織処置及び保存段階は、工程f)処理、工程g)冷凍保存及び隔離、工程h)検証、記録を含む。
【0022】
最後に、最終過程に対応する段階は、工程i)輸送及び工程j)臨床使用を含む。
【0023】
より具体的な実施形態では、工程a)は、ドナーからの組織が取り出される病棟で実施される。具体的な工程において、組織を切開する領域に印が付けられる。印が付けられると皮膚脂肪組織の切開が実施される。前記皮膚脂肪組織が得られると、摘出自体が実行される。
【0024】
工程b)において、工程a)で得られた組織は、真皮を含む全皮膚摘出が実施される適切な表面に移動され、適切な道具を使用してより深い真皮から脂肪が剥離される。品質管理として、この工程において、好気性及び嫌気性微生物の培養、並びに真菌培養のために組織試料がまた採取される。最後に、組織は生理学的血清を有する滅菌容器に入れられる。場合によっては、生理学的血清は抗生物質を含有してもよい。組織が血清中に完全に浸漬していることを確実にしながら容器が密閉される。
【0025】
段階(c)において、段階(b)で得られた容器が滅菌状態で保管され、容器には組織に割り当てられた少なくとも1つのコード、摘出日時のデータを伴うラベルを付ける。
【0026】
d)において、温度を2から8℃の間に維持するために、組織は適切な容器に保管される。その後、e)において、組織は、温度を2から8℃の範囲に維持しながら、36時間未満の期間内にできる限り迅速に処理施設に輸送される。
【0027】
組織が処理施設に到着すると、組織には、以下の段階を行う:1.CAWSの測定、必要に応じて部分の切断、薄片の再調査、微生物負荷を低減するための洗浄サイクル、試料収集番号2、及び冷凍保存溶液中での30分から3時間の浸漬、2.包装段階中の試料収集番号3及び4(培養)並びにバッキングのための試料収集番号5(培養)とともに、得られた各フィルムの調製、トリミング、測定、包装、及びラベル付け。
【0028】
工程g)において、冷凍保存及び隔離のために冷凍保存及び凍結防止溶液が使用される。照射まで一連の培養の結果を待ちながら、CAWSは-80℃に凍結して維持される。C)照射:コールドチェーンの維持のためにドライアイス中で、25から28kGyの照射線量で組織ロットを滅菌する。
【0029】
具体的な実施形態では、10%グリセロールが冷凍保存及び凍結防止剤として使用される。
【0030】
次に、工程h)において、検証、譲渡、記録が実行される:提供、組織の摘出、及び処理の再調査、公的な組織及び臓器移植データベースへの記録。
【0031】
最後に、最終段階では、輸送の工程i)において、処理された組織はコールドチェーンの維持(-80℃)のために最適な状態で作製施設に輸送され、j)において、組織受容者の同意を得ることによって臨床使用の危険性及び利益が受容者に通知される。
【0032】
本発明はまた、後の自家移植のための創傷床を改善するための慢性で複雑化した創傷、自家移植又は局所皮弁の状態がない被覆不全、閉鎖の可能性がないcontained開腹手術(contained laparostomy)、及び黒色腫の切除後の治療に有用な生体包帯の調製又は生成における本発明のCAWSの使用を含む。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0033】
個別診断で、腹部の審美的外観を改善するために腹壁形成術を希望した14人の患者を評価し、評価過程、前記手術の手術前検査及びインフォームドコンセントが終了した時点で、切除した腹部脂肪の真皮弁からの皮膚の提供に参加するよう申し入れた。組織提供の除外基準がないことが確認されると、患者等は健康調査を受け、組織提供のための通常の臨床検査が行われ(空白期間がないように手術中)、組織提供のインフォームドコンセントの署名を得て、チリの臓器提供及び移植の統合システム(Integrated Organ Donation and Transplant System)(SIDOT、スペイン語での頭字語)に登録された。ドナー選択後、方法は以下の10工程に分かれた:a)外科的/腹壁形成工程、b)摘出、c)包装及び識別、d)保管、e)処理施設への輸送、f)処理、g)冷凍保存/隔離、h)検証、譲渡、記録、i)輸送、j)臨床使用。方法は全て、チリ国保健省の組織の摘出、保存、及び移植のための技術規範に従った。
【0034】
a.外科的/腹壁形成工程:皮膚の摘出は、病棟で、腹壁形成の手術と同時に、全て無菌及び消毒対策を施して、全身麻酔下で同じ外科チーム(麻酔科医、2人の形成外科医、臓器摘出外科医、外科助手、病棟助手、麻酔助手、病棟看護師、及び臓器摘出看護師)によって実施された。臍下皮膚横楕円の印をした後(図1)、腹部脂肪皮膚の皮弁の切開を実施すると、重複した皮弁の切除を実施し、そして同時にチームを分けて、一方は腹壁形成術を継続し、独立した手術台で皮膚の摘出を実施した。
【0035】
b.皮膚の摘出:楕円の形状に切除された脂肪皮膚の皮弁は別の手術台に置かれた。全皮膚(真皮を含む)の摘出を実施し、より深い真皮から脂肪をハサミを使用して剥離した。現行(好気性)の培養、嫌気性培養、及び真菌培養のためにも組織試料(3)が採取された。処置した皮膚は、クロキサシリン1g及びゲンタマイシン80mgを含む生理学的血清500ccを含む滅菌容器に入れて、皮膚が完全に浸漬するように注意しながら密閉された。
【0036】
c.皮膚の包装及び識別:皮膚容器は少なくとも90ミクロンの滅菌の二重の袋に保管された。袋を1つずつ、ほとんどの空気を除去して密閉し、組織コード及び摘出日時のラベルを付けた。
【0037】
d.皮膚の保管:皮膚は2から8℃の間の温度に維持するために、病棟から冷媒装置付きの冷却器内の一時保管場所に移された。
【0038】
e.皮膚の輸送:皮膚は処理するために、容器を確実に2から8℃の間の温度に維持して、必ず摘出して36時間以内に、飛行機でイキケからサンチアゴの国立組織バンク(BNT、スペイン語での頭字語)に送られた。
【0039】
f.処理:CAはBNTにおいて移植物として以下の2つの段階で調製された:a):皮弁を測定し、必要に応じて部分を切断し、薄片を再調査し、微生物負荷を低減するために洗浄サイクルを行い、培養物の試料収集番号は2であり(1番は手術中)、冷凍保存溶液に1時間浸漬する。b)調製し、トリミングし、測定し、得られた各フィルムを包装してラベルを付ける。包装段階中の試料収集番号3及び4(培養)。バッキングについては試料収集番号5(培養)。
【0040】
g.凍結保存及び隔離:冷凍保存及び凍結防止溶液として10%グリセロールが使用される。CAWSは、照射まで一連の培養の結果を待ちながら-80℃に凍結して維持される。C)照射:コールドチェーンの維持のためにドライアイス中で、25から28kGyの照射線量で組織ロットを滅菌する。
【0041】
h.検証、譲渡、記録:提供方法、組織の摘出及び処理の再調査、SIDOTへの記録。
【0042】
i.輸送:コールドチェーンの維持(-80℃)のためにドライアイス中での、処理された組織の作製施設への返送。
【0043】
j.臨床使用:この処置の危険性及び利点を組織受容者に説明し、ヒト由来の組織の使用についてインフォームドコンセントを得て、受容者のデータ及び使用した組織の量を、それを識別するコード及び起こり得る悪影響と共に含む組織移植フォームによって、確実に履歴管理(traceability)及び生体監視を行った。その使用のための臨床的適応は、a)後の自家移植のための創傷床を改善するための慢性で複雑化した創傷の準備、b)自家移植又は局所皮弁の状態のない被覆不全、c)閉鎖の可能性がないcontained開腹手術、及びd)黒色腫の切除後であった。手術直前の期間に、被覆する欠損の大きさが計測されると、CAWSを温めた生理学的血清(40℃以下)で3回洗浄して凍結防止剤を除去した。壊死して失活した組織及び無秩序な肉芽領域の瘢痕切除によって受容床を準備し、陰圧療法に関連したポイント及び/又はブラケットでCAWSを固定した。
【0044】
結果
皮膚ドナーの試料は平均年齢40歳の31から55歳の女性の患者14人から構成され、そのうち2人は以前に肥満外科手術の既往歴があった。摘出された皮膚表面は、楕円面積の式を使用して推定され、その後、摘出された全皮膚の一次収縮及び臨床的に有用な複数のサイズのフィルムを残す処理時の縁の除去によって、面積は減少した。処理した皮膚及び臨床的に有用なフィルムの平均値は、患者あたりそれぞれ302cm2及び8.3フィルムであった。
【0045】
臨床試料は、糖尿病性足病変(4)、contained開腹手術(2)、下肢の複雑な創傷(2)、頭皮の再発性肉腫(1)、及び黒色腫(1)と診断された、2ヵ月から75歳の10人の患者(2つの処置が2人の患者で実施された)から構成された。全患者において初期のCA生着が認められ、21日後にCAの色の変化及び表層壊死エスカーの形成によって明らかなように拒絶が開始し、これを除去すると主要組織が受容部に付着しており、ある患者は自己移植を受け、他の患者は最終的治療として二次治癒による治癒で管理された。CAの組織学は、主に多形核の浸潤によってCAが除去された場合は壊死部位を示し、受容床の場合は線維芽細胞及び新生血管が豊富な境界面を示した。この境界面又は新皮は画像によって確認でき、糖尿病性足病変と診断され、横断的中足骨切断術の既往歴を有する患者のNMRでは、CAは、血管柄付真皮と同様に、非捕捉表面成分(non-captant superficial component)及び造影剤で増強された深部成分で認められた。一連の臨床結果を以下の表にまとめて示す。
【0046】
【表1】
【0047】
CAWSについては、拒絶は自然な進展で、健康な個体ではこれは8から10日の間に発症し、広範囲の熱傷では免疫系の抑制によって、15から30日の間に遅れて発症する。CAWSCを用いた我々の実験では、拒絶は遅れ、3週間目から臨床的に明らかになり、多形核の表皮への浸潤を特徴とする。CAWSCの拒絶は治療不全と解釈されるべきでなく、むしろ中間的な被覆と呼んでいる段階であり、なぜならば、CAWSCの一部が失われ、その一部が受容床に付着し、「新皮」の境界面が得られ、一方では、自家移植によって最終的な被覆が完了し、他方では、二次治癒によって治癒が完了し、創傷の2次収縮もあって欠損のサイズが減少するからである。このように、CAWSCは皮膚基質の使用の代替として使用されることが可能で、骨、軟骨、及び腱等の構造物の被覆に加えて、より厚く、より弾性のあるより質の良いコーティングが得られる。
【0048】
CAWSCの治療的使用は多岐にわたり、我々の一連の研究で注目している糖尿病性足病変、広範囲にわたる複雑な被覆の欠損、contained開腹手術、及び起こり得る周辺部分の拡大及び再構築のために生検が待たれる皮膚腫瘍の切除後が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、臨床業界において、ほとんどの場合一時的であるが、場合によっては最終的な複雑な創傷の被覆に適用され、皮膚基質の使用の代替となる。
【国際調査報告】