(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】精製歩留まりが向上したボツリヌス毒素複合体の精製方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/33 20060101AFI20240628BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C07K14/33
C12P21/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502631
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 KR2022010836
(87)【国際公開番号】W WO2023003443
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0096681
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524021327
【氏名又は名称】イニバイオ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INIBIO CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【氏名又は名称】藤野 香子
(72)【発明者】
【氏名】キム チョンセ
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヨンジュン
【テーマコード(参考)】
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG30
4B064CA02
4B064CA21
4B064CD01
4B064CD15
4B064CE03
4B064CE11
4B064CE20
4B064DA01
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA10
4H045CA11
4H045DA83
4H045EA20
4H045FA70
4H045FA72
4H045GA01
4H045GA05
4H045GA15
4H045GA23
(57)【要約】
本発明は、精製純度および歩留まりが向上したボツリヌス毒素の精製方法に関する。本発明のボツリヌス毒素の精製方法を利用する場合、非常に高い歩留まりでボツリヌス毒素を精製することができる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のステップを含む、ボツリヌス毒素複合体の精製方法:
(a)ボツリヌス毒素生成菌株培養液を準備するステップ;
(b)準備された培養液を複合機能(Mixed-mode)アニオン交換樹脂を利用して精製する第1次精製ステップ;および
(c)第1次精製ステップを経た培養液を複合機能(Mixed-mode)カチオン交換樹脂を利用して精製する第2次精製ステップ。
【請求項2】
前記ボツリヌス毒素生成菌株は、ボツリヌス菌(C.botulinum)Type Aであることを特徴とする、請求項1に記載のボツリヌス毒素複合体の精製方法。
【請求項3】
前記複合機能アニオン交換樹脂および複合機能カチオン交換樹脂は、疎水性相互作用およびイオン相互作用が複合された複合機能選択性を有することを特徴とする、請求項1に記載のボツリヌム毒素複合体の精製方法。
【請求項4】
前記複合機能アニオン交換樹脂は、TOYOPEARL NH
2-750F、HyperCel STAR AX Resin、またはPOROS XQで構成された群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のボツリヌス毒素複合体の精製方法。
【請求項5】
前記複合機能カチオン交換樹脂は、TOYOPEARL Sulfate-650F、TOYOPEARL MX-Trp-650M、Eshmuno CPS、またはPOROS XSで構成された群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のボツリヌス毒素複合体の精製方法。
【請求項6】
前記ステップ(a)は、次のステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載のボツリヌス毒素複合体の精製方法:
(a-1)培養培地にボツリヌス毒素を培養するステップ;
(a-2)硫酸を添加して反応させる第1沈殿ステップ;
(a-3)ベンゾナーゼを添加して反応させる酵素処理ステップ;
(a-4)酵素処理ステップを経た溶液の上澄み液を回収し、リン酸を添加して反応させる第2沈殿ステップ;および
(a-5)緩衝液を使用して沈殿物を再溶解させる再溶解ステップ。
【請求項7】
前記ステップ(a-5)以後、遠心分離して沈殿物を除去するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載のボツリヌス毒素複合体の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2021年7月22日に韓国特許庁に提出された大韓民国特許出願第10-2021-0096681号に対して優先権を主張し、上記特許出願の開示事項は、本明細書に参照として組み入れられる。
【0002】
本発明は、精製純度および歩留まりが向上したボツリヌス毒素複合体の精製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ボツリヌス毒素は、ボツリヌス菌(C.botulinum)という嫌気性バクテリアで作られる神経毒素であって、計7個の種類(A~G型)があり、現在、このうちボツリヌスA、B型の2種が精製されて医学的に使用される。ボツリヌス毒素は、神経伝達物質であるアセチルコリンの放出を抑制することで、筋肉収縮シグナル伝達を遮断して筋肉を弛緩させる役割をする。すなわち、神経筋接合部(neuromuscular junction)でシナプス前終末(presynaptic terminal)で分泌する神経伝達物質であるアセチルコリンの放出を遮断して、神経麻痺を誘発する。フィラーが皮膚のボリュームの足りない部位に所定の物質を埋める医療機器であるのに対し、ボツリヌス毒素製剤は、筋肉を収縮させる神経伝達物質の放出を防いで筋肉の使用を低下させる成分を含有した医薬品であるという違いがある。
【0004】
ボツリヌス毒素は、眉間のシワ、目元のシワを抑制または除去するのに主に活用されており、脳卒中の上肢痙縮、まぶたの痙攣、尖足の奇形などの治療にも活用されており、徐々に適応症を広げている。
【0005】
すべてのボツリヌス毒素の血清型は、類似に末梢神経の神経筋接合部の末端でアセチルコリンの放出を抑制して神経伝達を遮断する。正常神経筋接合体のシグナル伝達過程で、コリン性神経末端の単糖類と結合した後、細胞内に移入した毒素は、SNAREタンパクの機能を抑制する。これによって、アセチルコリンを含有した小胞体が融合して、アセチルコリンを放出することを抑制するようになり、それによる神経筋伝達を防ぐ。ボツリヌス毒素によって遮られたコリン性シナプスは、新たなシナプスを形成して代替することになる。また遮られた既存のシナプスは、徐々に再生して本来の機能を回復するようになり、平均3~4ヶ月持続する。
【0006】
ボツリヌス毒素複合体は、ボツリヌス菌(C.botulinum)細胞培養物を前処理し、精製する工程を通じて取得することができる。
【0007】
ボツリヌス毒素複合体を得るために前処理された細胞培養物を精製する多様な工程が知られている。従来、イオン交換クロマトグラフィーおよび/または疎水性クロマトグラフィーを順次に使用してボツリヌス毒素を精製する方法に関し公知になっているが(KR10-2020-0121245 AおよびKR10-2020-0121246 A)、該当方法は比較的に高い純度を見せるにもかかわらず、生産歩留まりが低い問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、生産純度および歩留まりが高いボツリヌス毒素複合体の精製方法を開発しようと、鋭意研究に努めた。その結果、複合機能(Mixed-mode)アニオン交換樹脂および複合機能(Mixed-mode)カチオン交換樹脂を使用する2ステップ精製工程を使用する場合、ボツリヌス毒素の精製歩留まりを大きく向上できることを究明することで、本発明を完成するに至った。
【0009】
よって、本発明の目的は、精製純度および歩留まりが向上したボツリヌス毒素複合体の精製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一様態によれば、本発明は、次のステップを含むボツリヌス毒素複合体の精製方法を提供する:(a)ボツリヌス毒素生成菌株培養液を準備するステップ;(b)準備された培養液を複合機能(Mixed-mode)アニオン交換樹脂を利用して精製する第1次精製ステップ;および(c)第1次精製ステップを経た培養液を複合機能(Mixed-mode)カチオン交換樹脂を利用して精製する第2次精製ステップ。
【0011】
本発明者らは、生産純度および歩留まりが高いボツリヌス毒素複合体の精製方法を開発しようと鋭意研究に努めた。その結果、複合機能(Mixed-mode)アニオン交換樹脂および複合機能(Mixed-mode)カチオン交換樹脂を使用する2ステップ精製工程を使用する場合、ボツリヌス毒素複合体の精製歩留まりを大きく向上させることができることを究明した。
【0012】
本明細書において、用語「ボツリヌス毒素」とは、ボツリヌス菌(C.botulinum)菌株から精製して取得することができる毒素を意味する。また用語「ボツリヌス毒素複合体」とは、ボツリヌス毒素と一つまたはそれ以上の非-毒素タンパク質が結合された状態の複合物質を意味し、ボツリヌス菌菌株が生成するボツリヌス毒素の場合、約150kDaのサイズを有し、ボツリヌス毒素複合体の場合、約300kDa~900kDaのサイズを有する。
【0013】
精製して取得したボツリヌス毒素複合体は、眉間のシワ、目元のシワの抑制または改善だけでなく、多様な医療目的のために使用されることができる。
【0014】
本発明の一具現例において、本発明のボツリヌス毒素生成菌株は、ボツリヌス菌(C.botulinum)である。さらに具体的に、Clostridium botulinum Type A(ATCC 19397)菌株を使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0015】
以下、ステップ別に本発明を詳しく説明する。
【0016】
ステップ(a):ボツリヌス毒素生成菌株培養液を準備するステップ
ボツリヌス毒素生成菌株培養液を準備するステップは、従来知られていた多様な前処理工程を使用して遂行することができ、特に制限されない。
【0017】
具体的に例を挙げると、菌株を培養し、1回または2回以上の沈殿、フィルタリング、再溶解工程を経て、精製過程を経る前の培養液を準備することができる。上述した培養は、種培養および本培養からなることができ、上述した沈殿は、酸処理工程を通じて実施することができる。
【0018】
菌株の種培養および本培養は、当業界に公知になり、ボツリヌス菌を培養するのに適したものと当業者が理解することが自明な多様な培養培地を使用することができ、具体的に例を挙げると、ペプトン2%、酵母抽出物1%、グルコース1%を含むと知られているPYG培地を適して利用することができる。上述した培養培地は、菌株接種前に滅菌過程を経ることができ、このとき、具体的に例を挙げると、高圧蒸気滅菌器を利用して滅菌することができる。滅菌した培地は、嫌気条件で初期化して維持することが好ましい。種培養の場合、具体的に例を挙げると、培養培地に菌株を約1/50~1/200割合、1/50~1/150割合、1/80~1/120割合で接種して実施することができ、さらに具体的には、約1/100割合で接種して実施することができるが、これに必ずしも制限されるものではない。肉眼で確認するとき培地全体が不透明になる場合、種培養になったものと判断することができる。
【0019】
本培養の場合も種培養と同様に、培養培地を滅菌した後に遂行することが好ましい。本培養は、種培養液を接種した後、約60~75時間、さらに具体的に63~72時間程度培養した後に終了することができ、本培養の条件は、培養環境によって当業者の技術常識に即して適切に調節可能である。
【0020】
本発明の一具現例において、本発明のステップ(a)は、次のステップを含む:(a-1)培養培地にボツリヌス毒素を培養するステップ;(a-2)硫酸を添加して反応させる第1沈殿ステップ;(a-3)ベンゾナーゼを添加して反応させる酵素処理ステップ;(a-4)酵素処理ステップを経た溶液の上澄み液を回収し、リン酸を添加して反応させる第2沈殿ステップ;および(a-5)緩衝液を使用して沈殿物を再溶解させる再溶解ステップ。
【0021】
本発明の一具現例における、硫酸を使用した第1沈殿ステップの場合、本培養が完了した培養液に5N硫酸を使用してpHが約3.5になるように滴定し、微黄色浮遊物を確認後、常温で半日~一日間放置することで実施することができる。
【0022】
本発明の一具現例における、酵素処理ステップの場合、ベンゾナーゼを添加することで実施することができ、ベンゾナーゼ処理前、ベンズアミジンハイドロクロライドハイドレートで前処理することができる。酵素処理後、例えば、2~10時間、3~8時間、4~7時間の間反応させ、酵素処理液を回収し、遠心分離後に上澄み液のみを収集して、次のステップである第2沈殿ステップを遂行することができる。
【0023】
本発明の一具現例によって、酵素処理後、リン酸を使用して第2沈殿を遂行することができる。より具体的に、pHが約3.5になるように10%リン酸を添加してリン酸沈殿を遂行することができる。リン酸沈殿完了後、半日~一日間沈殿液を放置する。
【0024】
本発明の一具現例によって、リン酸沈殿液を遠心分離後に上澄み液を除去し、pelletのみを回収して緩衝溶液を利用して再溶解させて培養液を準備する。
【0025】
本発明の一具現例において、前記ステップ(a-5)以後、遠心分離して沈殿物を除去するステップをさらに含むことができる。
【0026】
ステップ(b):準備された培養液を複合機能(Mixed-mode)アニオン交換樹脂を利用して精製する第1次精製ステップ
本発明のステップ(b)の第1次精製ステップは、複合機能(Mixed-mode)アニオン交換樹脂を利用して、ステップ(a)を通じて準備されたボツリヌス毒素生成菌株培養液を精製させるステップである。
【0027】
本発明の一具現例において、本発明の複合機能アニオン交換樹脂は、疎水性相互作用およびイオン相互作用が複合された複合機能選択性を有することである。
【0028】
本発明の一具体例において、本発明の複合機能アニオン交換樹脂は、TOYOPEARL NH2-750F、HyperCel STAR AX Resin、またはPOROS XQで構成された群から選択されることを使用することができる。さらに具体的に例を挙げると、TOYOPEARL NH2-750Fを使用することができる。上述した具体的な例示は、本発明の容易な実施を助けるための例示であって、類似するか、または同等な物性を有する複合機能アニオン交換樹脂を適切に使用することができることは、当業者にとって自明である。
【0029】
本第1次精製ステップは、複合機能(Mixed-mode)アニオン交換樹脂が充填されたカラムにステップ(a)を通じて準備された培養液をローディング(loading)して遂行することができる。ローディング完了後、従来知られていた方法を通じて洗浄および溶出する過程を遂行することができる。
【0030】
ステップ(c):第1次精製ステップを経た培養液を複合機能(Mixed-mode)カチオン交換樹脂を利用して精製する第2次精製ステップ
本発明のステップ(c)の第2次精製ステップは、複合機能(Mixed-mode)カチオン交換樹脂を利用して、ステップ(b)を通じて1次精製された精製溶液を2次精製させるステップである。
【0031】
本発明の一具現例において、本発明の複合機能カチオン交換樹脂は、疎水性相互作用およびイオン相互作用が複合された複合機能選択性を有することである。
【0032】
本発明の一具体例において、本発明の複合機能カチオン交換樹脂は、TOYOPEARL Sulfate-650F、TOYOPEARL MX-Trp-650M、Eshmuno CPS、またはPOROS XSで構成された群から選択されることを使用することができる。さらに具体的に例を挙げると、TOYOPEARL Sulfate-650Fを使用することができる。上述した具体的な例示は、本発明の容易な実施を助けるための例示であって、類似するか、または同等な物性を有する複合機能アニオン交換樹脂を適切に使用することができることは、当業者にとって自明である。
【0033】
本第2次精製ステップは、複合機能(Mixed-mode)カチオン交換樹脂が充填されたカラムにステップ(b)を通じて1次精製された精製液をローディング(loading)して遂行することができる。ローディング完了後、従来知られていた方法を通じて洗浄および溶出する過程を遂行することができる。
【0034】
本発明は、第1次精製ステップで複合機能(Mixed-mode)アニオン交換樹脂を使用し、順次に第2次精製ステップで複合機能(Mixed-mode)カチオン交換樹脂を使用することを技術的特徴とする。
【0035】
ボツリヌス毒素複合体を精製するとき、本発明の一具現例による2ステップ工程を使用することと比較して、複合機能交換樹脂ではなく、一般的なアニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂などを順次に使用する工程の場合、非常に低い精製歩留まりを見せることを確認し、これに加えて、疎水性交換樹脂を追加で利用する3ステップ精製工程の場合にも、本発明の精製工程に比べて非常に低い精製歩留まりを見せることを確認した。
【発明の効果】
【0036】
本発明の特徴および利点を要約すると、次のとおりである:
(a)本発明は、ボツリヌス毒素複合体の精製方法を提供する。
(b)本発明のボツリヌス毒素複合体の精製方法を利用する場合、非常に高い歩留まりでボツリヌス毒素複合体を精製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】複合機能(Mixed-mode)アニオン交換樹脂を利用した第1次精製工程後に取得された結果物の分析結果を示す。
【
図2】複合機能(Mixed-mode)アニオン交換樹脂を利用した第1次精製工程後に取得された結果物に対するSDS-PAGE分析結果を示す。
【
図3】複合機能(Mixed-mode)カチオン交換樹脂を利用した第2次精製工程後に取得された結果物の分析結果を示す。
【
図4】複合機能(Mixed-mode)カチオン交換樹脂を利用した第2次精製工程後に取得された結果物に対するSDS-PAGE分析結果を示す。
【
図5】本発明において使用されたボツリヌス毒素複合体原液のSDS-PAGE分析結果を示す。
【
図6】本発明において使用されたボツリヌス毒素複合体原液のSE-HPLC分析結果を示す。
【
図7】精製歩留まりの比較実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、実施例を通じて、本発明をより詳しく説明しようとする。これらの実施例は、ひたすら本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例により制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0039】
実施例
実施例1:種培養
1-1.培地調製
ペプトン(Sigma社、29185)2%、酵母抽出物(Merck社、1.03753)1%、グルコース(Merck社、1.37048)1%を添加して種培養使用培地を調製した。高圧蒸気滅菌器を利用して培地を滅菌した。滅菌完了した培地を嫌気性培養器に入れ、36℃、嫌気条件で初期化して維持させた。
【0040】
1-2.接種および培養
36±1℃、嫌気条件(O2、1.0%以下)で維持されている嫌気性培養器のパスボックス(pass box)を利用して、嫌気性培養器内にボツリヌス菌A型菌株を移動させた。嫌気性培養器内で菌株が溶けた後、培地に菌を1/100割合で接種した。36±1℃、嫌気条件で24時間静置培養後に肉眼で確認するとき培地全体が不透明になる場合、種培養になったものと判断した。
【0041】
実施例2:本培養
2-1.培地調製
ペプトン(Sigma社29185)2%、酵母抽出物(Merck社1.03753)1%、およびグルコース(Merck社1.37084)1%を添加して、本培養使用培地を調製した。本培養前に発酵器(Fermenter)に使用するセンサーを補正し、濁度(Turbidity)センサーとpHおよびpO2センサーを培養器に装着した。調製された本培養培地を発酵器に入れ、121℃、20分間滅菌を遂行した。滅菌完了後、嫌気条件(pO2、5.0%以下)で維持した。
【0042】
2-2.本培養
嫌気性培養器から種培養液を取り出した。接種ラインを開放して培養器内部に種培養液を接種した。本培養開始後、72時間培養後、本培養を終了した。
【0043】
実施例3:硫酸沈殿
本培養が完了した発酵器に5N硫酸を利用してpHを3.5で滴定した。pHが3.5±0.1に調節が完了した後、常温で12時間の間放置した。
【0044】
実施例4:酵素処理
4-1.pH滴定
硫酸沈殿液の上澄み液を除去した。上澄み液の除去が完了した硫酸沈殿液を36℃、100rpm条件で5N水酸化ナトリウム溶液(Sodium hydroxide solution)(Merck社、1.06482)を添加して、pH6.0±0.1になるように滴定した。
【0045】
4-2.酵素処理
ベンズアミジン塩酸塩水和物(Benzamidine hydrochloride hydrate)(Sigma社、B6506)を10mM/L濃度になるように添加した。ベンゾナーゼ(Benzonase)(Merck社、1.01697)を500,00U/Lになるように添加した。36℃、100 rpm条件で5時間反応させた。
【0046】
反応後、回収された酵素処理液を13,000×g、20分、4℃条件で遠心分離を実施した後、上澄み液だけ集めてペレット(pellet)は除去した。
【0047】
実施例5:リン酸沈殿
ペレット(Pellet)を除去した酵素処理上澄み液に10%リン酸(AppliChem社、147143)を添加して、pHが3.5になるように滴定した。リン酸沈殿が完了した溶液は、常温で12時間放置した。
【0048】
実施例6:毒素再溶解
放置が終わったリン酸沈殿液を13,000×g、20分、4℃条件で遠心分離を実施した後に上澄み液を捨て、ペレット(pellet)を回収した。50mM sodium phosphate buffer pH6.5を利用して、ペレットを再溶解させた。再溶解された毒素液を13,000×g、20分、4℃条件で遠心分離を実施した後に上澄み液を回収し、ペレットを廃棄した。
【0049】
実施例7:1次精製
UV278nmと導電度(conductivity)のベースライン(baseline)が安定化したか否か確認した。再溶解が完了した毒素液を0.22umボトルトップフィルター(bottle top filter)で濾過して異物を除去した。濾過された毒素液を多機能(Multi modal)アニオン交換樹脂であるNH2-750Fが充填されたカラムに線速度46cm/hrでローディングした。ローディング完了後、50mM sodium phosphate buffer pH6.5で500mL以上洗浄した。洗浄後、50mM sodium phosphate buffer pH6.5、1M sodium chloride bufferを60%で溶出(elution)するとともに分画(fraction)を5mLずつ受けた。60%で溶出するとともに5mLずつ受けた分画を回収し、SDS-PAGE結果に基づいてプーリング(pooling)した。
【0050】
実施例8:2次精製
UV278nmと導電度(conductivity)のベースラインが安定化したか否か確認した。1次精製プーリング液に25mM citrate buffer pH5.5を添加して、pH5.5±0.1、導電度(conductivity)7.0±0.5mS/cmに合わせた。0.22umボトルトップフィルターで濾過して異物を除去した。濾過された毒素液を多機能(Multi modal)カチオン交換樹脂であるSulfate-650Fが充填されたカラムに線速度46cm/hrでローディングした。ローディング完了後、25mM citrate buffer pH5.5で500mL以上洗浄した。洗浄後、25mM citrate buffer pH5.5、1M sodium chloride bufferを14%で溶出するとともに分画(fraction)を3mLずつ回収し、SDS-PAGE結果に基づいてプーリングした。
【0051】
実施例9:濾過および小分け
2次精製プーリング液を0.2μm Syringe filterを利用してフィルターした。濾過が完了した2次精製プーリング液を保管容器に小分けし、-70℃以下で保管した。
【0052】
実施例10:精製産物タンパク質バンド分析
下記表のような還元条件でSDS-PAGE分析試料を作った。分析試料をNovex 4-12% Bis-Tris gel(Invitrogen、NP0321BOX)にMES SDS Running buffer(Invitrogen、NP0002)を利用して電気泳動した。電気泳動が完了したGelをCoomassie Blue stain reagent(Instnat Blue、expedeon、ISB1L)を利用して1時間染色した後、3次蒸溜水を利用して十分に洗浄した。洗浄が完了したGelをImage analyzer(ATTO、WSE-6100)を利用して分析した。
【0053】
【0054】
分析結果、ボツリヌス毒素A型複合体を構成すると知られている7個のタンパク質バンド以外に不純物タンパク質が観察されないことを確認することができた(参照:
図5)。
【0055】
実施例11:精製産物純度分析
下記のような条件でSE-HPLC分析を進行した。
【0056】
【0057】
分析結果、Retention time約7.7分(約900kDa)で100%純度の単一peakを確認することができた(参照:
図6)。
【0058】
実施例12:タンパク質定量を通じた歩留まり分析
下記表のような条件でBCA assay(Thermo scientific、23227)を進行して、タンパク質定量を通じた歩留まり比較を進行した。
【0059】
【0060】
大韓民国出願番号第2020-044716号(KR 10-2020-0121245 A)および大韓民国出願番号第2020-044717号(KR 10-2020-0121246 A)に記載された実施方法を対照群として設定して、最終産物の歩留まりを比較した。
【0061】
【0062】
その結果、比較例1に比べて約44倍、比較例2に比べて約7倍程度の歩留まり向上を確認した。
【国際調査報告】