(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】GRIN素子を備えたフォトポリマー層を有する眼用レンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/02 20060101AFI20240628BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20240628BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20240628BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20240628BHJP
【FI】
G02C7/02
G02C7/04
G02B3/00 A
G02B3/00 B
G02B1/14
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024503499
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 GB2022051976
(87)【国際公開番号】W WO2023007159
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521013611
【氏名又は名称】クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】チェンバレン ポール
(72)【発明者】
【氏名】サハ スーラフ
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー アーサー
(72)【発明者】
【氏名】アルムガム バスカール
【テーマコード(参考)】
2H006
2K009
【Fターム(参考)】
2H006BB02
2H006BB06
2K009CC21
(57)【要約】
【課題】近視の悪化を防止又は遅らせるのに使用するための公知のレンズに代わる簡単で費用効果の高いレンズを提供することを目的としている。
【解決手段】 レンズ(118)の表面上に設けられたベース屈折率を有する層(100)を有する眼用レンズ(118)が記載されている。層(100)は、少なくとも1つの屈折率分布型光学素子(102)を含む。眼用レンズ(118)は、眼用レンズ又はコンタクトレンズとすることができる。このようなレンズ(118)の製造方法も記載される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼用レンズであって、このレンズの表面上に設けられたベース屈折率を有する層を有し、前記層は少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含む、眼用レンズ。
【請求項2】
前記層は、前記レンズの前面に設けられている、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項3】
前記層は、前記レンズの表面に施工されたフィルムである、請求項1又は2に記載の眼用レンズ。
【請求項4】
前記層は、前記レンズの表面上に設けられたコーティングである、請求項1~3の何れかに記載の眼用レンズ。
【請求項5】
前記レンズは眼鏡レンズである、請求項1~3の何れかに記載の眼用レンズ。
【請求項6】
前記レンズはコンタクトレンズである、請求項1~4の何れかに記載の眼用レンズ。
【請求項7】
前記レンズは硬質コンタクトレンズである、請求項6に記載の眼用レンズ。
【請求項8】
前記層は、前記層の領域にわたって分布する複数の屈折率分布型光学素子を含む、請求項1~5の何れかに記載の眼用レンズ。
【請求項9】
前記複数の屈折率分布型光学素子は、前記層の領域にわたって三角格子の格子点上に分布している、請求項8に記載の眼用レンズ。
【請求項10】
前記層はフォトポリマー層であり、前記少なくとも1つの屈折率分布型光学素子の各々は、光硬化屈折率分布型光学素子である、請求項9に記載の光学レンズ。
【請求項11】
前記少なくとも1つの屈折率分布型光学素子の各々は、2次関数によって定義される半径方向に変化する屈折率プロファイルを有する、請求項1~10の何れかに記載の光学レンズ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの屈折率分布型光学素子の各々は、10μm~2mmの間の直径又は幅を有する、請求項1~11の何れかに記載の眼用レンズ。
【請求項13】
前記複数の屈折率分布型光学素子は、前記層の表面積の20%~80%を占める、請求項8~12の何れかに記載の光学レンズ。
【請求項14】
中央領域と前記中央領域を囲む環状領域とを有し、前記少なくとも1つの屈折率分布型光学素子の各々を含む前記層が、前記環状領域の一部を覆っている、請求項1~13の何れかに記載の眼用レンズ。
【請求項15】
複数の屈折率分布型光学素子は前記環状領域の周囲に周期的に配置されている、請求項14に記載の光学レンズ。
【請求項16】
前記層は複数の同心円状の環状領域を含み、前記各環状領域は、少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含む、請求項14又は15に記載の眼用レンズ。
【請求項17】
第1の環状領域における少なくとも1つの屈折率分布型光学素子は、隣接する第2の環状領域における少なくとも1つの屈折率分布型光学素子と位相がずれている、請求項16に記載の眼用レンズ。
【請求項18】
前記環状領域は、ベース屈折力を有する前記層の領域によって半径方向に分離されている、請求項16又は17に記載の眼用レンズ。
【請求項19】
前記環状領域は互いに隣接している、請求項16又は17に記載の眼用レンズ。
【請求項20】
前記層は、1μm~70μmの間の厚さを有する、請求項16又は17に記載の眼用レンズ。
【請求項21】
前記層と前記レンズの表面との間に設けられた接着剤を更に含む、請求項1~20の何れかに記載の眼用レンズ。
【請求項22】
少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含む前記層の前面に設けられた保護層を更に備える、請求項1~21の何れかに記載の眼用レンズ。
【請求項23】
眼用レンズを製造する方法であって、
眼用レンズを提供するステップと、
このレンズの表面上に層を形成するステップであって、前記層がベース屈折率を有し、少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含む、ステップと、
を含む、方法。
【請求項24】
前記層を形成するステップは、コーティング又はフィルムを前記レンズの表面に施工するステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記層はフィルムであり、前記フィルムを前記レンズに施工するステップは、接着剤を使用して前記フィルムを前記レンズに接着するステップを含む、請求項24に記載の方法において、方法。
【請求項26】
前記層はコーティングであり、プラズマコーティングを用いて、前記層を前記レンズに施工する、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年7月30日に出願された先行の米国仮特許出願第63/227,381号の米国特許法第119(e)条に基づく優先権を主張し、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、屈折率分布型屈折素子を含む層を有する眼用レンズ、及びこのようなレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
子供及び大人を含む多くの人々は、近視(近視眼)を矯正するために眼用レンズを必要とし、また、多くの大人は、老眼(加齢に伴う遠近調整不能、従って、近くの物体に焦点を合わせることができない)を矯正するために眼用レンズを必要とする。眼用レンズはまた、遠視、乱視、又は円錐角膜(角膜が徐々に膨らんで円錐状を形成する状態)の矯正に必要となる場合がある。
【0004】
近視眼は、遠くの物体からの入射光を網膜の前方位置で合焦する。その結果、光は網膜直前の平面に向かって収束し、網膜に向かって発散して、網膜に到達したときには焦点外にある。従来の近視矯正用レンズ(例えば、眼鏡レンズ及びコンタクトレンズ)は、遠方物体からの入射光が眼に到達する前に、収束(コンタクトレンズの場合)を減少させ、又は発散(眼鏡レンズの場合)を引き起こさせて、焦点位置が網膜上にシフトするようにしている。数十年前、小児又は若者の近視の進行は、低矯正、すなわち、焦点を網膜に向けて移動させるが、網膜上には移動させないことによって遅らせ又は予防できると示唆された。しかしながら、この手法では、近視を完全に矯正するレンズで得られる視力に比べ、遠視力が必然的に低下することになる。更に現在では、低矯正が近視の進行を制御するのに有効であるかは疑わしいと考えられている。より最近の手法は、遠視力の完全矯正を提供する領域と、低矯正する又は近視のデフォーカス(焦点外れ)を意図的に誘導する領域との両方を有するレンズを提供することである。また、レンズの完全矯正領域を通過する光と比較して、特定の領域で光の散乱を増加させるレンズも提供することができる。これらの手法により、子供又は若者の近視の発症又はその進行を阻止又は遅らせることができると同時に、良好な遠視力を提供できることが示唆されている。
【0005】
焦点外れをもたらす領域を有するレンズの場合、遠視力の完全矯正を提供する領域は、通常はベース度数領域と呼ばれ、低矯正又は近視焦点外れを意図的に誘起する領域は、通常、加入度数領域又は近視焦点外れ領域と呼ばれる(屈折度数は、遠い領域の度数よりもより正の又はより負であるため)。加入度数領域の表面(通常は、前面)は、遠用度数領域の曲率半径よりも小さく、従って、眼に対してより正の又はより負の度数を提供する。加入度数領域は、入射する平行光(すなわち、遠方からの光)を網膜の前方(すなわち、レンズに近い方)の眼内で合焦するように設計されており、一方、遠用度数領域は、網膜(すなわち、レンズから遠い方)で光を合焦して結像するように設計されている。
【0006】
特定の領域で光の散乱を増加させるレンズの場合、散乱を増加させる特徴部は、レンズの表面に導入することができ、又は、レンズを形成するために使用される材料に導入することができる。例えば、散乱素子は、レンズに焼き付けるか、又はレンズに埋め込むことができる。散乱素子は、レンズ材料に埋め込まれたレーザーアブレーション光学素子とすることができる。
【0007】
近視の進行を制限するコンタクトレンズの既知のタイプは、MISIGHT(クーパービジョン社)の名称で販売されている二重焦点コンタクトレンズである。この二重焦点レンズは、老眼者の視力を改善するように構成された遠近両用コンタクトレンズ又は多焦点コンタクトレンズとは異なり、二重焦点レンズは、遠近調節できる人が遠くの物体と近くの物体の両方を見るために遠用矯正(すなわち、ベース度数)を使用可能にする一定の光学寸法で構成されている。また、付加度数を有する二重焦点レンズの治療ゾーンは、遠方視及び近方視の両方の距離において近視的に焦点外れの像を提供する。
【0008】
これらのレンズは近視の発症又は進行を阻止又は遅らせるのに有益であることが判明しているが、環状加入度数領域は、望ましくない視覚的副作用を生じさせる可能性がある。網膜の前で環状加入度数領域によって合焦された光は、焦点から発散し、網膜で焦点外れの環状を形成する。そのため、これらのレンズの装用者は、特に街灯及び車のヘッドライトなどの小さな明るい物体に対して、網膜上に形成された像を囲むリング又は「ハロー」が見えることがある。また、装用者は、理論的には、眼の自然な遠近調節(すなわち、焦点距離を変化させる眼の自然な能力)を利用して近くの物体に焦点を合わせるのではなく、環状加入度数領域から生じる網膜前の付加的な焦点を利用して、近くの物体に焦点を合わせることができ、言い換えれば、装用者は、老眼矯正レンズの使用と同じ方法でレンズを不注意に使用する可能性があり、これは若年の被験者にとって望ましくない。
【0009】
近視の治療に使用することができ、またMISIGHT(CooperVision,Inc)レンズ及び上述した他の類似のレンズにおいて合焦された遠方像の周りで観察されるハローを排除するように設計された更なるレンズが開発されている。これらのレンズでは、環状領域は、単一の光軸上の像が網膜の前で形成されないように構成され、これにより、近方標的を眼が調節する必要性を回避するために、このような像が使用されるのを防止する。むしろ、遠方の点光源は、環状領域によって、近接加入度数焦点面におけるリング状の焦点線に結像され、遠方の焦点面における網膜上に周囲の「ハロー」効果なしで、光の小さなスポットサイズをもたらす。
【0010】
近視焦点外れを導入するための治療部分を含む公知のレンズは、典型的には、レンズ装用者に特定の治療を提供するように設計されていることが認識されている。レンズは高価で設計が複雑である可能性があり、時間の経過とともにレンズ装用者の要求が変化した場合に、異なる矯正レベルを提供する異なるレンズを購入する必要が生じる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、近視の悪化を防止又は遅らせるのに使用するための公知のレンズに代わる簡単で費用効果の高いレンズを提供しようとするものである。このようなレンズはまた、老眼、遠視、乱視、円錐角膜又は他の屈折異常に関連した視力の矯正又は改善に有益となる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様によれば、本開示は、眼用レンズを提供する。レンズは、レンズの表面上に設けられたベース屈折率を有する層を有する。層は、少なくとも1つの屈折率分布型(GRIN)光学素子を含む。
【0013】
第2の態様によれば、本開示は、眼用レンズを製造する方法を提供する。本方法は、眼用レンズを提供するステップと、レンズにコーティング又はフィルムを施工するステップとを含み、層はベース屈折率を有し、少なくとも1つのGRIN光学素子を含む。
【0014】
勿論、本開示の一態様に関連して記載される特徴は、本開示の他の態様に組み込むことができることが理解されるであろう。例えば、本開示の方法は、本開示の装置を参照して説明された特徴を組み込むことができ、その逆も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】本開示の一実施形態による、レンズの表面上に設けられたベース屈折率を有する層を備え、層が複数のGRIN光学素子を含む眼用レンズの概略上面図である。
【
図1C】本開示の一実施形態によるレンズである、
図1A及び
図1Bに示すようなレンズを含む眼鏡の斜視図である。
【
図2A】本開示の一実施形態による、レンズの表面上に設けられたベース屈折率を有する層を備え、層が複数のGRIN光学素子を含むコンタクトレンズの概略上面図である。
【
図3】本開示の一実施形態による、中央領域を囲む環状領域を含む層を有し、環状領域が三角格子の格子点(格子線は、例示の目的で示されており、物理的な線ではない)上に配置された複数のGRIN素子を含む、レンズの概略上面図である。
【
図4】本開示の一実施形態による、正方格子の格子点(格子線は、例示の目的で示されており、物理的な線ではない)上に配置された複数のGRIN素子を含む層を有するレンズの概略上面図である。
【
図5】本開示の一実施形態による、GRIN素子の屈折率の変化を示すグラフである。
【
図6】本開示の一実施形態による、中央領域を囲む環状領域を含む層を有し、環状領域の一部が複数のGRIN要素を含む、レンズの概略上面図である。
【
図7A】本開示の一実施形態による、レンズに施工され、複数のGRIN要素を含む層を通る断面図である。
【
図7B】本開示の一実施形態による、レンズに施工され、立方体GRIN散乱素子を含む層を通る断面図である。
【
図7C】本開示の一実施形態による、複数の球状GRIN散乱素子を含む層であって、各素子が、各素子の中心から半径方向外側に変化する屈折率を有する、レンズに施工された層を通る断面図である。
【
図8】本開示の一実施形態による、中央領域を囲む2つの同心円状の環状領域を含み、各環状領域が複数のGRIN要素を含む層を有するレンズの概略上面図である。
【
図9】本開示の一実施形態による、複数の同心環状領域を含み、各環状領域が屈折率の振動的変動を有する層を有するレンズの概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の態様によれば、本開示は、眼用レンズを提供する。レンズは、レンズの表面上に設けられたベース屈折率を有する層を有する。層は、少なくとも1つの屈折率分布型(GRIN)光学素子を含む。
【0017】
レンズは、近視の発症又は進行を阻止又は遅らせるためのものとすることができる。レンズは、老眼、遠視、乱視、円錐角膜又は他の屈折異常と関連する視力を矯正又は改善するためのレンズとすることができる。
【0018】
層は、レンズの表面の全体又はレンズの表面の実質的に全てを覆うことができる。或いは、層は、レンズの表面の一部を覆うこともできる。層はレンズの表面の中央部、例えばレンズ装用者の眼の前に位置するように構成された部分を覆うことができる。層は、レンズの中心部を囲む環状領域を覆うことができる。層によってカバーされないレンズの周辺領域があってもよい。
【0019】
層のベース屈折率は一定とすることができる。層のベース屈折率は、1.3~1.8の間、好ましくは約1.5とすることができる。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折力よりも大きい平均屈折力を有することができる。或いは、少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折力未満の平均屈折力を有することができる。
【0020】
本開示の文脈において、少なくとも1つの屈折率(GRIN)光学素子の各々は、変化する屈折率を有する素子である。屈折率の変化は、素子にわたって屈折率の横方向の変化、すなわち、層の表面に平行に延びる方向とすることができる。屈折率の変化は、屈折率の半径方向の変化、すなわち、屈折率は、ある点から半径方向外側に広がって変化することができる。屈折率の変化は、屈折率の軸方向の変化、すなわち、層の表面に垂直に延びる方向とすることができる。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、屈折率の横方向の変化及び屈折率の軸方向の変化を有することができる。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々の屈折率の変化は、屈折率の直線的に変化する勾配、又は2次関数によって定義される変化するプロファイルを有する勾配とすることができる。
【0021】
GRIN要素はレンズとすることができる。有利には、GRIN要素は焦点外れを提供することができる。焦点外れは近視の悪化を阻止又は遅らせるのに役立つと考えられる。焦点外れは、老眼、遠視、乱視、円錐角膜又は他の屈折異常と関連する視力の矯正又は改善に役立つと考えられる。
【0022】
少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、層の残りの部分に入射する光と比較して、GRIN光学素子に入射する光の追加的な散乱を生じさせることができる。或いは、少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、層の残りの部分に入射する光と比較して、GRIN光学素子に入射する光の低減された散乱を生じさせることがある。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率と比較して、少なくとも0.001、好ましくは少なくとも0.005の屈折率の最小変化を有することができる。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率よりも0.001大きい最小屈折率を有することができる。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率よりも0.005大きい最小屈折率を有することができる。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率よりも0.005小さい最大屈折率を有することができる。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率よりも0.001小さい最大屈折率を有することができる。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率と比較して0.1未満、好ましくは0.025未満の屈折率の最大変化を有することができる。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率よりも0.1大きい最大屈折率を有してもよい。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率よりも0.025大きい最大屈折率を有することができる。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率より0.1未満である最小屈折率を有することができる。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率よりも0.025小さい最小屈折率を有することができる。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、-25D及び25Dの間、好ましくは-0.25D~25Dの間である最小屈折力を有することができる。
【0023】
少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、層の厚さを通って延びることができる。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、層の厚さの一部を通って延びることができる。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、層内に埋め込まれてもよい。
【0024】
層は、少なくとも1つのGRIN光学素子を含む架橋ポリマー層とすることができる。層は、未架橋ポリマーのマトリックスから形成されていてもよい。
【0025】
層は、レンズの前面に設けることができる。本開示の文脈において、レンズの前面とは、レンズ装用者によってレンズが装用されているときにレンズの前方に面する、又はレンズの外面をいう。
【0026】
層は、レンズの表面に施工されたフィルムとすることができる。この層はBayfol(登録商標)HXフィルムを含むことができる。層は、レンズの製造中にレンズに施工されるフィルムとすることができる。層は恒久的に接着されるか、又は他の方法でレンズに施工される。層は、再剥離可能にレンズに接着又は施工され、すなわち、レンズから容易に剥離可能である。層は、同じレンズ又は異なるレンズに容易に除去及び再適用できるように、再使用可能とすることができる。
【0027】
層は、レンズの表面上に設けられたコーティングとすることができる。コーティングはレンズの製造中にレンズに施工することができる。コーティングはレンズの表面に接合することができる。コーティングは、レンズに不可逆的に施工されてもよく、例えば、コーティングとレンズとの接合は恒久的な接合とすることができる。
【0028】
レンズは眼用レンズとすることができる。レンズは円形とすることができる。レンズは、楕円形とすることができる。レンズは、長円形とすることができる。レンズは矩形とすることができる。レンズは正方形とすることができる。レンズ前面の面積は1200mm2~3000mm2とすることができる。レンズは、透明ガラス又はポリカーボネート等の硬質プラスチックから形成することができる。レンズは、実質的に平面であってもよく、レンズ度数を提供する少なくとも1つの曲面を有してもよい。
【0029】
レンズはコンタクトレンズとすることができる。本明細書で使用する場合、コンタクトレンズという用語は、眼の前面に配置することができる眼用レンズを指す。このようなコンタクトレンズは、臨床的に許容可能な眼球上の動きを提供し、人の1又は複数の眼に結合されないことが理解されるであろう。コンタクトレンズは、角膜レンズ(例えば、眼の角膜上に載るレンズ)の形態とすることができる。レンズがコンタクトレンズである実施形態において、レンズは、60mm2~750mm2の間の表面積を有することができる。レンズは円形の形状を有することができる。レンズは長円形を有することができる。レンズは楕円形状を有することができる。レンズは、10mm~15mmの間の直径を有することができる。
【0030】
レンズは、硬質コンタクトレンズとすることができる。レンズは、硬質のガス透過性コンタクトレンズとすることができる。
【0031】
コンタクトレンズは、トーリックコンタクトレンズとすることができる。例えば、トーリックコンタクトレンズは、人の乱視を矯正するように形成された光学ゾーンを含むことができる。
【0032】
レンズは、ヒドロゲルコンタクトレンズ又はシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのようなソフトコンタクトレンズとすることができる。
【0033】
レンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、又はシリコーンヒドロゲル材料、又はこれらの組み合わせを含むことができる。コンタクトレンズの分野で理解されるように、ヒドロゲルとは、平衡状態で水を保持し、シリコーン含有化学物質を含まない材料である。シリコーンハイドロゲルは、シリコーン含有化学物質を含むハイドロゲルである。本開示の文脈において記載されるようなヒドロゲル材料及びシリコーンヒドロゲル材料は、少なくとも10%~約90%(wt/wt)の平衡含水率(EWC)を有する。幾つかの実施形態において、ヒドロゲル材料又はシリコーンヒドロゲル材料は、約30%~約70%(wt/wt)のEWCを有する。比較すると、本開示の文脈において記載されるようなシリコーンエラストマー材料は、約0%~10%未満(wt/wt)の含水率を有する。典型的には、本方法又は装置と共に使用されるシリコーンエラストマー材料は、0.1%~3%(wt/wt)の含水率を有する。好適なレンズ配合物の例としては、以下の米国採用名(USAN)を有するものが挙げられ、すなわち、メタフィルコンA、オキュフィルコンA、オキュフィルコンB、オキュフィルコンC、オキュフィルコンD、オマフィルコンA、オマフィルコンB、コンフィルコンA、エンフィルコンA、ステンフィルコンA、ファンフィルコンA、エタフィルコンA、セノフィルコンA、セノフィルコンB、セノフィルコンC、ナラフィルコンA、ナラフィルコンB、バラフィルコンA、サムフィルコンA、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、ソモフィルコンA、リオフィルコンA、デレフィルコンA、ベロフィルコンA、カリフィルコンA、レフィルコンA等である。
【0034】
或いは、レンズは、シリコーンエラストマー材料を含む、又はから本質的になる、もしくはからなることができる。例えば、レンズは、3~50のショアA硬度を有するシリコーンエラストマー材料を含む、又はから本質的になる、もしくはからなることができる。ショアA硬度は、当業者には理解されるように、従来の方法を用いて決定することができる(例えば、DIN53505の方法を用いて)。他のシリコーンエラストマー材料は、例えば、NuSil Technology社又はDow Chemical Company社から入手することができる。
【0035】
レンズは光学ゾーンを有することができる。光学ゾーンは、光学機能を有するレンズの部分を包含する。光学ゾーンは、使用時に眼の瞳孔の上又は前に位置するように構成される。光学ゾーンは周辺ゾーンに囲まれることができる。周辺ゾーンは、光学ゾーンの一部ではなく、光学ゾーンの外側に位置する。コンタクトレンズの場合、周辺ゾーンは、レンズ装用時に虹彩の上方に位置することがある。周辺ゾーンは、機械的な機能を提供することができ、例えば、レンズのサイズを大きくすることで、レンズを扱いやすくすることがある。コンタクトレンズの場合、周辺ゾーンは、レンズの回転を阻止するためのバラストを提供する、及び/又はレンズ装用者の快適性を向上させる形状領域を提供することができる。周辺ゾーンは、レンズの縁部まで延びることができる。本開示の実施形態において、少なくとも1つのGRIN光学素子を含む層は、光学ゾーンを覆うことができるが、周辺ゾーンを覆わなくてもよい。
【0036】
層は均一な厚さを有することができる。コンタクトレンズの場合、層は1μm~100μm、好ましくは10μm~20μm、及びより好ましくは14μm~18μmの厚さを有することができる。眼用レンズの場合、層は、1μm~1000μmの間、好ましくは10μm~20μmの間、及びより好ましくは14μm~18μmの間の厚さを有することができる。
【0037】
本開示の実施形態において、層は、層の領域にわたって分布された複数のGRIN素子を含むことができる。複数のGRIN光学素子は、全領域の層にわたって分布することができる。複数のGRIN光学素子は、層の一部にわたって分布することができる。複数のGRIN光学素子は、層の全部又は一部にわたってランダムに分布することができる。GRIN光学素子は、層の全部又は一部にわたって規則的なパターンで配置することができる。眼用レンズの場合、レンズの領域にわたって分布された複数のGRINを提供することが有利とすることができるが、これにより、レンズ装用者の眼がレンズに対して相対的に移動する際に(GRIN要素によって引き起こされる)焦点外れを維持することを可能にすることができる。眼用レンズ全体に分布された複数のGRIN要素は、一貫した近視焦点外れを維持することを可能にすることができる。
【0038】
GRIN光学素子は、層全体又は層の一部にわたって一定の間隔で配置することができる。GRIN光学素子は、三角格子の格子点に配置されてもよい。GRIN光学素子は、正方形又は長方形の格子の格子点に配置することができる。GRIN光学素子は、層上に環状パターンを形成するように配置されてもよい。環状パターンは、GRIN光学素子がないレンズの中央領域を有することができる。レンズは、GRIN光学素子がなくてもよい最大8mmの直径を有する中央領域を有することができる。環状パターンは、単一の環状パターン又は複数の同心円状の環状パターンを含むことができる。
【0039】
層は、フォトポリマー層とすることができる。少なくとも1つの屈折率分布型光学素子の各々は、光硬化された屈折率分布型光学素子とすることができる。各GRIN光学素子は、光硬化を用いて形成されていてもよい。
【0040】
少なくとも1つの屈折率分布型光学素子の各々は、2次関数によって定義される半径方向に変化する屈折率プロファイルを有することができる。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、高次の多項式関数によって定義される変化する屈折率プロファイルを有することができる。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ガウス関数によって定義される屈折率プロファイルを変化させることができる。
【0041】
複数のGRIN素子の各々は、屈折率の同じ変化を有することができる。複数のGRIN素子の各々は、屈折率の異なる変化を有することができる。GRIN素子の幾つかは屈折率の同じ変化を有することができ、他の素子は屈折率の異なる変化を有することができる。複数のGRIN光学素子は、屈折率の同じ又は類似の変化を有するGRIN光学素子が、クラスターで又は順序付けられた配置でグループ化されるように分布することができる。フィルムは、複数の別個の部分に分割可能であってもよく、各部分は、屈折率に異なる変化を有するGRIN光学素子を含むことができる。
【0042】
少なくとも1つの屈折率分布型光学素子の各々は、10μm~5mmの間の幅を有することができる。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、100μm3~3mm3の間の体積を有することができる。複数のGRIN光学素子は、層の体積の5%~80%を占めることができる。複数の屈折率分布型光学素子は、層の表面積の20%~80%を覆うことができる。層は、2~5000個の屈折率分布型光学素子を含むことができる。
【0043】
少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、層の厚さを通って延びることができる。少なくとも1つのGRIN素子の各々は、層の厚さの一部を通って延びることができる。少なくとも1つのGRIN素子の各々は、層内に分布することができる。少なくとも1つのGRIN要素の各々は、ほぼ立方体状又は球状とすることができる。
【0044】
レンズは、中心領域と中心領域を囲む環状領域とを有することができる。少なくとも1つの屈折率分布型光学素子の各々を含む層は、環状領域の一部を覆うことができる。層が中央領域を覆わず、中央領域はGRIN光学素子がないものとすることができる。層は、環状領域の全てを覆うことができ、又は環状領域の一部を覆うことができる。本明細書で使用される場合、環状領域という用語は、中央領域の外側縁部全体の周囲に延在することができ、又は中央領域の外側縁部の周囲に部分的に延在することができる領域を指す。環状領域は、円形、長円形又は楕円形とすることができる。環状領域は、複数のGRIN光学素子を含むことができる。複数のGRIN光学素子は、環状領域全体の周囲に分布していてもよく、又は環状領域の一部にわたって分布することができる。複数の屈折率分布型光学素子は、環状領域の周囲に周期的に配置されてもよい。層は、複数の同心円状の環状領域を含むことができ、同心円状の環状領域の各々は、少なくとも1つのGRIN光学素子を含むことができる。各同心円状環状領域は、複数のGRIN素子を含むことができる。複数のGRIN光学素子は、各環状領域の一部を覆うことができる。角度θを用いて環状領域の周りの位置を定義すると、θは0゜~360゜の間で変化し、複数のGRIN光学素子は、各環状領域について同じ範囲のθ角度を覆うことができる(すなわち GRIN素子は、各環状領域に対して同位相であり、各環状領域に対して同じθ値で極大及び極小を有する)、又はθ角の異なる範囲を占めることができる(すなわち、GRIN素子は、各環状領域に対して位相がずれていることがあり、各素子に対して異なるθ値で極大及び極小を有する)。従って、第1の環状領域の少なくとも1つのGRIN要素は、隣接する第2の環状領域の少なくとも1つのGRIN要素と位相がずれている場合がある。第1の環状領域内の少なくとも1つのGRIN要素は、隣接する第2の環状領域内の少なくとも1つのGRIN要素と同位相である場合がある。
【0045】
層が複数の同心円状の環状領域を含む場合、各環状領域の周りの屈折率の変化は、同位相であってもよく、又は位相がずれていてもよい。
【0046】
層は、ベース屈折率を有する層の領域によって半径方向に分離された複数の同心円状の環状領域を含むことができる。或いは、層は、環状の同心円状屈折率分布型光学素子の間にベース屈折率を有する領域が存在しないように、互いに隣接する複数の同心円状環状領域を含むことができる。
【0047】
層は、1μm~70μmの間の厚さを有することができる。
【0048】
レンズは、層とレンズの表面との間に設けられた接着剤を更に含むことができる。接着剤は、エポキシ系接着剤のような透明な接着剤からなることができる。接着剤は粘着層とすることができる。接着剤層は、レンズの製造中にレンズの前面に施工することができる。接着剤層は、レンズの製造中に層の後面に施工することができる。接着剤は層をレンズの表面に恒久的に接着させることができる。或いは、層はレンズの表面に接合されてもよい。層はレンズの表面に恒久的に接合される場合もあれば、不可逆的に接合される場合もある。
【0049】
レンズは、少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含む層の前面に設けられた保護層を更に含むことができる。少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含む層の前部表面は、レンズが通常の使用状態にあり、レンズ装用者によって装着されているときの前方に面する又は層の外部表面である。保護層は、少なくとも1つのGRIN光学素子を含む層の前面の全部又は一部を覆うことができる。保護層はトランスペアレンシー層とすることができる。保護層は、ポリカーボネート(PC)を含むことができる。保護層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はセルローストリアセテート(TAC)を含むことができる。保護層は、無視できる程度の複屈折を有する物質を含むことができる。保護層は、水に対して不透過性とすることができる。保護層は耐スクラッチ性があることができる。保護層はベース屈折率を有することができる。保護層は、ある程度のUV保護を提供することができる。保護層は、接着剤を使用して、少なくとも1つのGRIN光学素子を含む層に接着することができる。
【0050】
第2の態様によれば、本開示は、眼用レンズを製造する方法を提供する。レンズは、レンズの表面上に設けられた層を有する。層はベース屈折率を有し、少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含む。本方法は、眼用レンズを提供するステップと、コーティング層又はフィルムをレンズに施工して層を形成するステップとを含む。レンズは、上記の特徴の何れかを含むことができる。レンズを提供するステップは、レンズを製造するステップを含むことができる。レンズを製造するステップは、凹状のレンズ形成面を有する雌型部材と凸状のレンズ形成面を有する雄型部材とを形成するステップを含むことができる。本方法は、雌型部材と雄型部材の間のギャップをバルクレンズ材料で充填するステップを含むことができる。本方法は更に、バルクレンズ材料を硬化させてレンズを形成するステップを含むことができる。
【0051】
レンズは成形コンタクトレンズとすることができる。レンズは、注型成形プロセス、スピン注型成形プロセス、又は旋盤加工プロセス、又はこれらの組み合わせによって形成することができる。当業者には理解されるように、注型成形とは、凹状のレンズ部材形成面を有する雌型部材と、凸状のレンズ部材形成面を有する雄型部材との間にレンズ形成材料を配置することによるレンズの成形をいう。
【0052】
層はフィルムとすることができる。フィルムをレンズに施工するステップは、接着剤を使用して層をレンズに接着するステップを含むことができる。接着剤は透明接着剤とすることができる。接着剤は、少なくとも1つのGRIN要素を含む層の後面に施工することができる。接着剤は、少なくとも1つのGRIN要素を含む層を施工する前に、レンズの前面に施工することができる。
【0053】
或いは、層はコーティングを含むことができる。コーティングは、スプレーコーティング、スピンコーティング、溶液注型成形、液相面蒸着、又はガス相表面蒸着等の様々なコーティング方法によってレンズの表面に直接施工することができる。コーティングをレンズの表面に施工する前に、例えば、プラズマ処理を用いてレンズの表面を処理し、コーティング層との接合又は接着を改善することができる。
【0054】
層を形成するステップは、光硬化性層の少なくとも1つの領域を光硬化させることにより、少なくとも1つの光硬化性の屈折率分布型光学素子を製造するステップを含むことができる。デジタル光投影システムを使用して、光硬化性層の少なくとも1つの領域を光硬化させることができる。或いは、直接レーザー書き込みシステムを使用して、光硬化性層の少なくとも1つの領域を光硬化させることができる。或いは、コリメートされたLED/レーザー光源を使用して、光硬化性層の少なくとも1つの領域を光硬化させることができる。2光子共焦点顕微鏡ベースのレーザー照明システムなどの高解像度3D光硬化性システムを使用して、光硬化性層の少なくとも1つの領域を光硬化させてもよい。
【0055】
以下に記載する例示的な実施形態において、レンズは、眼鏡レンズ又はコンタクトレンズとすることができる。レンズは円形の形状を有することができる。レンズは、長円の形状を有することができる。レンズは、楕円の形状を有することができる。眼鏡レンズの場合、レンズは、300mm2~5000mm2、好ましくは1000mm2~3000mm2の領域を有することができる。コンタクトレンズの場合、レンズは、60mm2~750mm2の表面積を有する。コンタクトレンズは、6mm~20mm、好ましくは9mm~16mmの直径を有することができる。
【0056】
図1Aは、本開示の一実施形態による、レンズ118の前面上に設けられたベース屈折率を有する層100を備えた眼鏡レンズ118の概略上面図であり、層100は、複数のGRIN光学素子102を含む。層100はフィルムの形態である。フィルム100のベース屈折率は一定であり、フィルムは均一な厚さを有する。層100は、複数のGRIN光学素子102を含む。層100はレンズ118の前面を覆う。GRIN光学素子102は各々、層100の前面に平行な方向で素子にわたって連続的及び横方向に変化する屈折率の勾配を有する。各要素102は、屈折率の同じ変化を有する。層100に実質的に垂直な方向でGRIN素子102に入射する光は、ベース屈折率を有する層100の残りの部分104に入射する光と比較して、より散乱される。GRIN素子102は、フィルム100の表面にわって一定の間隔で分布しており、フィルムの一方の表面の約70%を覆う。GRIN光学素子102の各々は、光硬化光学素子である。
図1Bは、
図1Aのレンズ118の断面であり、レンズ118の前面に設けられた層100を示している。
【0057】
図1Cは、
図1Aに示すレンズ118を含む眼鏡122の斜視図である。眼鏡122は、
図1Aに記載されたレンズのうち、レンズが使用中であった場合に装用者の眼の瞳孔の前にある2つのレンズを含む。上述したように、層100は、各眼鏡0レンズ118の前面を覆う。層100は、複数のGRIN光学素子102を含み、層の残りの部分104はベース屈折率を有する。
【0058】
図2Aは、本開示の一実施形態による、レンズ218の表面上に設けられたベース屈折率を有する層200を備えたコンタクトレンズ218の概略上面図であり、層200は、複数のGRIN光学素子202を含む。層200は、レンズ218の前面を覆い、均一な厚さを有する。GRIN素子202は、層200の前面の約70%を覆う。層200のベース屈折率は一定である。GRIN光学素子202は、層200の表面にわって一定の間隔で分布している。GRIN光学素子202は各々、素子202にわたって連続的及び横方向に変化する屈折率の勾配を有し、各素子202は屈折率の同じ変化を有する。GRIN素子202に入射する光は、ベース屈折率を有する層200の残りの部分204に入射する光と比較して、より散乱される。層200は、製造プロセス中にレンズ218に施工されるコーティング含む。
図2Bは、
図2Aに表示されたレンズ218の側面図である。
【0059】
図3は、
図2Aに示すレンズ218と同様のコンタクトレンズ318の概略上面図である。コンタクトレンズ318は、レンズ318の前面に設けられた層300を有する。層300は、環状の形状を有し、レンズ300の環状領域306を覆い、レンズ318の中心領域308を囲んでいる。層300は、本開示の一実施形態による三角格子310の格子点上に配置された複数のGRIN光学素子302を含む。格子線は、例示のために示されており、物理的な線ではない。層300は、均一な厚さを有する。GRIN要素302は、層300の前面の約70%に及ぶ。層300のベース屈折率は一定である。GRIN光学素子302は、層300の表面にわたる三角格子310の格子点上に配置されている。レンズ318の中央領域308は、層300によって覆われておらず、従ってこの中央領域308はGRIN要素を含まない。レンズ318の周辺領域320もまた、層300によって覆われておらず、従って、GRIN素子302も含まない。GRIN光学素子302は各々、素子302にわたって連続的及び横方向に変化する屈折率分布型を有し、各素子302は屈折率の同じ変化を有する。
【0060】
図4は、
図3に示すレンズ318と同様のコンタクトレンズ418の概略上面図である。コンタクトレンズ418は、レンズ418の前面に設けられた層400を有する。レンズ418の中央領域408を覆う層400の一部には、GRIN光学素子402がない。レンズ418の周辺領域420を覆う層400の一部もまた、GRIN光学素子402がない。レンズ400の環状領域406を覆う層400の一部は、本開示の一実施形態による、正方格子410の格子点上に配置された複数のGRIN素子402を含む。格子線は、例示の目的で示されており、物理的な線ではない。GRIN光学素子402はそれぞれ、素子402にわたって連続的及び横方向に変化する屈折率分布型を有し、各素子402は屈折率の同じ変化を有する。
【0061】
図5は、本発明の実施形態による、層に含めることができるGRIN要素の屈折率変化を示すグラフ512である。GRIN素子は、2次関数によって定義される変化する屈折率プロファイルを有し、最大屈折率は素子の中心にあり、屈折率は素子の中心から半径方向外側に減少するようになっている。屈折率の変化は、GRIN光学素子を含まないフィルムの領域と比較して、GRIN光学素子に入射する光の散乱を増加させる。
【0062】
図6は、本開示の一実施形態による、中央領域608を囲む環状領域606(領域606a及び606bとして示されている)を含む層600を有するコンタクトレンズ618の概略上面図であり、環状領域606aの一部は、複数のGRIN要素602を含む。レンズ618の周辺領域620を覆う層600の一部もまた、GRIN光学素子602がない。コンタクトレンズ618は、
図2A~Bで説明したものと同様であるが、本実施形態では、GRIN光学素子602は、環状領域の一部606aの表面全体に規則的に分布しており、環状領域606bの残りの部分は、GRIN光学素子602を含まない。GRIN素子602に入射する光は、屈折率がベースである残部604に入射する光に比べて散乱される。
【0063】
図7Aは、レンズ718に施工された層700を通る断面を示し、層700は、本開示の一実施形態による、複数のGRIN素子702を含む。GRIN光学素子702は、層700の表面にわたって一定の間隔で分布している。層700はフィルムの形態である。GRIN光学素子702は各々、フィルムの表面に平行な方向に素子にわたって連続的及び横方向に変化する屈折率の勾配を有する。各GRIN光学素子702の屈折率は、フィルムの表面に垂直な方向において一定である。各要素702の屈折率は同じである。フィルム700のベース屈折率は一定であり、及びフィルム700は均一な厚さを有する。フィルム700は製造工程でレンズ718に施工される。
【0064】
図7Bは、本開示の一実施形態による、レンズ818に施工された層800を通る断面を示し、層800は、複数の立方晶GRIN要素802を含む。層800はフィルムの形態であり、GRIN光学素子802は、層800の厚さ内に分布される光硬化光学素子である。GRIN光学素子802はそれぞれ、層800の表面に平行な方向において、素子802の中心から半径方向外側に変化する屈折率分布型を有する。各要素802は屈折率の同じ変化を有する。フィルム800のベース屈折率は一定であり、フィルム800は均一な厚さを有する。フィルム800は、製造プロセス中にレンズ818に施工される。
【0065】
図7Cは、レンズ918に施工された層900を通る断面を示し、層900は、本開示の一実施形態による、複数の球状GRIN要素902を含む。層900はフィルムの形態であり、及びGRIN光学素子902は、フィルム900の厚さ内に分布された光硬化光学素子である。GRIN光学素子902はそれぞれ、素子902の中心から半径方向外側に変化する屈折率分布型を有し、各素子902は屈折率の同じ変化を有する。フィルム900のベース屈折率は一定であり、及びフィルム900は均一な厚さを有する。フィルム900は製造工程でレンズ918に施工される。
【0066】
図8は、本開示の一実施形態による、中央領域1008を囲む2つの同心円状の環状領域1006i及び1006iiを含む層1000を有するコンタクトレンズ1018の概略上面図であり、各環状領域は、複数のGRIN要素1002を含む。GRIN光学素子1002は各々、素子1002にわたって連続的及び横方向に変化する屈折率分布型を有し、各素子1002は屈折率の同じ変化を有する。同心円状の環状領域1006i及び1006iiは、ベース屈折率を有する層1000の環状領域1024によって分離されている。GRIN光学素子1002は、同心円状の環状領域1006i及び1006iiの表面にわたって一定の間隔で分布している。光学レンズの中央部1008を覆う層1000の領域は、GRIN光学素子1002を含まない。レンズ1018の周辺領域1020を覆う層1000の領域は、いかなるGRIN光学素子1002も含まない。GRIN光学素子1002の各々は、ベース屈折率を有する(残余1004の)ベース屈折力よりも大きい平均屈折力を有する。
【0067】
図9は、本開示の一実施形態による、中心領域1108を囲む環状周辺領域1120を含む層1100、及び複数の同心環状領域1106a~dを含む層1100を有する、レンズ1118の概略上面図であり、各環状領域1106a~dは、複数のGRIN光学素子1102a~dを含む。GRIN光学素子(1102a~dのうちの1つ)は、環状領域1106bのうちの1つの周囲におけるGRIN光学素子1102bの位置決めが、隣接する環状領域1106a/1106cにおけるGRIN光学素子(1102a及び1102c)の位置決めと位相がずれるように、各環状領域1106a~dの周囲に分布する。同心円状の環状領域1106a~dは、ベース屈折率を有する層1104a~cの領域によって半径方向に分離されている。本開示の他の実施形態(図示せず)では、同心円状の環状領域は、互いに隣接していてもよく、すなわち、屈折率をベースとする領域によって分離されていなくてもよい。
【0068】
本開示は、特定の実施形態を参照して説明及び図示されてきたが、本開示は、本明細書において具体的に図示されていない多くの異なる変形に適していることが、当業者には理解されるであろう。例証としてのみ、特定の可能な変形例について説明する。本開示の例示的な実施形態において、各GRIN要素は、ベース屈折率よりも高い平均屈折率を有することができる。他の例示的な実施形態では、各GRIN要素は、ベース屈折率よりも低い平均屈折率を有することができる。
【0069】
前述の説明において、既知の明白な又は予測可能な均等物を有する整数又は要素が言及されているが、このような均等物は、個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本開示の真の範囲を決定するために、特許請求の範囲を参照されたい。また、有利又は好都合などとして記載されている本開示の整数又は特徴は任意であり、独立請求項の範囲を限定するものではないことも、読み手には理解されるであろう。更に、このような任意的な整数又は特徴は、本開示の幾つかの実施形態において利益をもたらす可能性がある一方で、望ましくない可能性があり、従って他の実施形態では存在しない可能性があることを理解されたい。
【符号の説明】
【0070】
100 層
102 屈折率分布型光学素子
104 層(100)の残りの部分
118 レンズ
【手続補正書】
【提出日】2024-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼用レンズであって、このレンズの表面上に設けられたベース屈折率を有する層を有し、前記層は
、前記層の領域にわたって分布する複数の屈折率分布型光学素子を含
み、前記各屈折率分布型光学素子はレンズであり、前記各屈折率分布型光学素子は、100μm
3
~3mm
3
の体積を有し、前記各屈折率分布型光学素子は、前記素子にわたって屈折率の半径方向の変化又は屈折率の横方向の変化を有する、眼用レンズ。
【請求項2】
前記層は、前記レンズの前面に設けられている、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項3】
前記層は、前記レンズの表面に施工されたフィルムである、請求項1又は2に記載の眼用レンズ。
【請求項4】
前記層は、前記レンズの表面上に設けられたコーティングである、
請求項1又は2に記載の眼用レンズ。
【請求項5】
前記レンズは眼鏡レンズである、
請求項1又は2に記載の眼用レンズ。
【請求項6】
前記レンズはコンタクトレンズである、
請求項1又は2に記載の眼用レンズ。
【請求項7】
前記レンズは硬質コンタクトレンズである、請求項6に記載の眼用レンズ。
【請求項8】
前記複数の屈折率分布型光学素子は、前記層の領域にわたって三角格子の格子点上に分布している、
請求項1又は2に記載の眼用レンズ。
【請求項9】
前記層はフォトポリマー層であり、前記
複数の屈折率分布型光学素子の各々は、光硬化屈折率分布型光学素子である、
請求項1又は2に記載の
眼用レンズ。
【請求項10】
前記
複数の屈折率分布型光学素子の各々は、2次関数によって定義される半径方向に変化する屈折率プロファイルを有する、
請求項1又は2に記載の
眼用レンズ。
【請求項11】
前記
複数の屈折率分布型光学素子の各々は、10μm~2mmの間の直径又は幅を有する、
請求項1又は2に記載の眼用レンズ。
【請求項12】
前記複数の屈折率分布型光学素子は、前記層の表面積の20%~80%を占める、
請求項1又は2に記載の
眼用レンズ。
【請求項13】
中央領域と前記中央領域を囲む環状領域とを有し、前記
複数の屈折率分布型光学素子の各々を含む層が、前記環状領域の一部を覆っている、
請求項1又は2に記載の眼用レンズ。
【請求項14】
複数の屈折率分布型光学素子は、前記環状領域の周囲に周期的に配置されている、請求項13に記載の
眼用レンズ。
【請求項15】
前記層は複数の同心円状の環状領域を含み、前記各環状領域は、少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含む、請求項13に記載の眼用レンズ。
【請求項16】
第1の環状領域
の少なくとも1つの屈折率分布型光学素子は、隣接する第2の環状領域
の少なくとも1つの屈折率分布型光学素子と位相がずれている、請求項15に記載の眼用レンズ。
【請求項17】
前記環状領域は、ベース屈折力を有する前記層の領域によって半径方向に分離されている、請求項15に記載の眼用レンズ。
【請求項18】
前記環状領域は互いに隣接している、請求項15に記載の眼用レンズ。
【請求項19】
前記層は、1μm~70μmの間の厚さを有する、
請求項1又は2に記載の眼用レンズ。
【請求項20】
前記層と前記レンズの表面との間に設けられた接着剤を更に含む、
請求項1又は2に記載の眼用レンズ。
【請求項21】
複数の屈折率分布型光学素子を含む前記層の前面に設けられた保護層を更に備える、
請求項1又は2に記載の眼用レンズ。
【請求項22】
眼用レンズを製造する方法であって、
眼用レンズを提供するステップと、
このレンズの表面上に層を形成するステップであって、前記層がベース屈折率を有し、
複数の屈折率光学素子を含
み、前記各屈折率光学素子がレンズであり、前記各屈折率光学素子が100μm
3
~3mm
3
の体積を有し、前記各屈折率光学素子が屈折率の半径方向変化又は屈折率の横方向変化を有する、ステップと、
を含む、方法。
【請求項23】
前記層を形成するステップは、コーティング又はフィルムを前記レンズの表面に施工するステップを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記層はフィルムであり、前記フィルムを前記レンズに施工するステップは、接着剤を使用して前記フィルムを前記レンズに接着するステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記層はコーティングであり、プラズマコーティングを用いて前記層を前記レンズに施工する、請求項23に記載の方法。
【国際調査報告】