(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】緑茶葉からの生成物の連続的な抽出のための単一のプロセス
(51)【国際特許分類】
A23F 3/16 20060101AFI20240628BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240628BHJP
【FI】
A23F3/16
A23L33/105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503536
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 IN2022050641
(87)【国際公開番号】W WO2023002500
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】202111032421
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596020691
【氏名又は名称】カウンスィル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ
【氏名又は名称原語表記】COUNCIL OF SCIENTIFIC & INDUSTRIAL RESEARCH
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ、モヒト
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ、メハク
(72)【発明者】
【氏名】スード、ヴィヴェシュ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B027
【Fターム(参考)】
4B018MD60
4B018ME03
4B018ME06
4B018ME08
4B018ME09
4B018ME14
4B018MF01
4B027FB17
4B027FP72
4B027FP75
4B027FP78
(57)【要約】
本発明は生の緑茶(カメリア・シネンシス)の葉から、ワックス、クロロフィル、カテキンを同時に単離および精製するための統合された、費用効果の高いプロセスを開示する。さらに、上記生成物の抽出後に残された残留茶葉からカフェインを単離および精製するためのプロセス。様々なプロセスパラメータの最適化も行われている。これに加えて、TLC、FTIR、HPLC、GC-MS法に基づいて、生成物の品質も評価した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑茶葉から生成物を連続的に抽出するための統合されたプロセスであって、
a.)カメリア・シネンシスから得られた前記緑茶葉を準備するステップ、
b.)前記緑葉をアルカン溶媒に室温で2~3時間浸漬して溶液を得るステップ、
c.)ステップ(b)で得られた前記溶液を濾過して濾液および残留葉を得るステップ、
d.)ステップ(c)の前記濾液を乾燥させて、第1の生成物としてワックスを得るステップ、
e.)ステップ(c)で得られた前記残留葉をアルコールに浸漬し、続いて30~42℃で1~2時間加熱して、緑色溶液および残された葉を得るステップ、
f.)ステップ(e)で得られた前記緑色溶液を乾燥させて、第2の生成物として着色顔料を得るステップ、
g.)ステップ(e)で得られた前記残された葉を乾燥させ、続いて1:10の比で、60℃で30分間水抽出して、抽出物および残留する使用済みの葉を得るステップ、
h.)0.1~0.5ミクロン細孔径精密濾過によって、ステップ(g)の前記抽出物を精製するステップ、
i.)ポリスチレン吸着樹脂-Aに、ステップ(h)の前記精製された抽出物を通過させるステップ、
j.)ステップ(h)で得られた前記抽出物をアルコールで溶出して褐色カテキン粉末を第3の生成物として得るステップ、
k.)ステップ(g)で得られた残留する使用済みの葉を100℃で1時間、炭酸ナトリウムと共に水抽出するステップ、
l.)ステップ(k)で得られた前記抽出物を冷却して、ジクロロメタン溶媒による液-液抽出によって第4の生成物としてカフェインを回収するステップ、
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記第1の生成物が0.07%の収率を有するワックスである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第2の生成物が、8.6%の収率を有する着色顔料である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第3の生成物がカテキンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
樹脂-Aからの前記カテキンの収率が3.17%であり、樹脂-Cからの収率が1.16%である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第4の生成物が0.07%の収率を有するカフェインである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
アルカン溶媒がヘキサンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
カメリア・シネンシスの上部および下部の葉の両方が準備される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
カテキンが、抗酸化剤、抗変異原性剤、抗菌剤、抗ウイルス剤として使用するためのもので、糖尿病、がん、心血管疾患および炎症などの疾患からの保護効果を有する、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑茶葉から生成物を連続的に抽出するための単一のプロセスに関する。本発明は、生の緑茶(カメリア・シネンシス)の葉からワックス、クロロフィル、カテキンを同時に単離および精製するための、統合された費用効果の高いプロセスを開示する。さらに残留茶葉を、その中に存在するカフェインの単離および精製のために処理することができる。
【背景技術】
【0002】
茶樹(カメリア・シネンシス)は、東アジア原産の常緑樹の低木である。それは世界中で消費されており、水に次いで人気が高い。年間約30億キログラムの茶が生産され消費されている。茶樹は、その芽や2枚または3枚の葉に関して茶の飲料の生成のために古くから使用されているが、現在は科学の進歩によりカテキンの生成のために使用されている。過去にカテキンを抽出するためカメリア・シネンシスについて調査した全研究を、以下に挙げる。Fukudaらの米国特許第2007/0082073号明細書は、カテキンの抽出に焦点を当てており、植物を最大限に利用してはいない。Okadaらの米国特許第4,248,789号明細書は、様々な極性で抽出を行っており、焦点を主に単一の生成物、すなわちカテキンのみに置いている。Harsh Pratap Singhらの国際公開第2013/118152号は、同じ植物材料を使用してバイオアミノ酸に焦点を置いた。この発見では広い視点、すなわち植物の葉は上記の2つの目的のために使用することができるだけでなく、他の価値のある生成物の開発のためにも葉の使用を拡張し得ることが考察されている。最初に葉を溶媒に浸漬して、その脂質成分を抽出する。この脂質層は化粧品産業において使用することができる。次いで植物から緑色顔料を抽出するために、溶媒を用いて同じ葉の第2の抽出を行う。この顔料は食品産業/化粧品産業/繊維産業において、天然着色剤として最も重要である。本発明はさらに、抗酸化剤、抗変異原性剤、抗菌剤、抗ウイルス剤であり、糖尿病、がん、心血管疾患、および炎症のような疾患からの保護効果を有するカテキンとして知られる褐色の化合物の抽出に関する。茶の成分の薬効に関する広範な研究の過程で、いわゆる茶タンニンの主要成分である茶カテキンが強い生理活性を有することが見出された。さらなる調査の結果、経済的なカテキンの生成を可能にする新規な方法が発見された。カテキン抽出後の残された葉(残留物)は、世界で最も広く消費されている興奮剤と考えられ、茶に自然に存在するカフェインの抽出のためにさらに処理される。諸研究はカフェインの消費を様々な健康上の利益と関連付けてきた。カフェインの総生成量のおおよその割合が飲料に使用され、総生成量の約25%が医薬品調製に使用され、残りが他の目的のために使用される。このプロセスは植物の葉が最大限に使用されるため、効率的かつ経済的である。一般に植物の上部のみが使用されており、葉の残りは使用されないままであるが、このプロセスでは、ワックス、クロロフィル、カテキン、およびカフェインのような様々な生成物の生成のために、下部の葉も使用することができる。これらの化合物の構造を以下で明瞭にする。
【0003】
【発明の概要】
【0004】
このように本発明は、緑茶葉から4つの生成物を連続的に抽出するための単一のプロセスを提供する。抽出される生成物(ワックス、着色顔料、カテキン、およびカフェイン)を、ヘキサンなどのアルカン溶媒に室温で2~3時間浸漬して、溶液を得る。次いで溶液を濾過して、残留葉および濾液を得る。濾液を乾燥させることによりワックスが生成される。残留葉をアルコールに浸漬して、緑色溶液および残された葉を得る。緑色溶液を乾燥させて緑色顔料、すなわちクロロフィルを得る。抽出物および残留する使用済みの葉を得るために、残された葉を乾燥させる前に顔料を30分間水抽出(hydro-extract)する。抽出物を吸着樹脂-Aおよび樹脂-Cによる精密濾過によって精製するが、樹脂-Aはポリスチレンである。抽出物が褐色に溶出した後、カテキン粉末が形成される。残留する使用済みの葉を100℃で1時間、炭酸ナトリウムと共に水抽出する。ジクロロメタンによる液-液抽出を経て、抽出物を冷却することによりカフェインが回収される。本発明では植物材料の上部の葉および下部の葉の両方が使用されている。プロセスで使用されるポリスチレン吸着剤、すなわち樹脂-Aは低コストである。本発明は樹脂-Aの使用により3.59gのカテキンが得られるのに対して、樹脂-Cでは1.32gのカテキンが得られることを示す。プロセスは生の緑茶葉から、表皮脂質層、着色顔料、カテキン、およびカフェインを段階的に抽出することを主張する。抽出後に残された残留/使用済みの葉は、堆肥として使用することができる。
【0005】
単一のプロセスに関する本発明の主要な態様は、緑茶葉から生成物を連続的に抽出することに関与し、
a.)カメリア・シネンシスから得られた緑茶葉を準備するステップ、
b.)緑葉をアルカン溶媒に室温で2~3時間浸漬して溶液を得るステップ、
c.)ステップ(b)で得られた溶液を濾過して濾液および残留葉を得るステップ、
d.)ステップ(c)の濾液を乾燥させて、第1の生成物としてワックスを得るステップ、
e.)ステップ(c)で得られた残留葉をアルコールに浸漬し、続いて30~42℃で1~2時間加熱して緑色溶液および残された葉を得るステップ、
f.)ステップ(e)で得られた緑色溶液を乾燥させて、第2の生成物として着色顔料を得るステップ、
g.)ステップ(e)で得られた残された葉を乾燥させ、続いて1:10の比で、60℃で30分間水抽出して、抽出物および残留する使用済みの葉を得るステップ、
h.)0.1~0.5ミクロン細孔径の精密濾過によって、ステップ(g)の抽出物を精製するステップ、
i.)吸着樹脂-Aおよび樹脂-Cに精製された抽出物を吸着樹脂通過させるステップ、
j.)ステップ(h)で得られた抽出物をアルコールで溶出して褐色カテキン粉末を第3の生成物として得るステップ、
k.)ステップ(g)で得られた残留する使用済みの葉を100℃で1時間、炭酸ナトリウムと共に水抽出するステップ、
l.)ステップ(k)で得られた抽出物を冷却して、溶媒による液-液抽出によって第4の生成物としてカフェインを回収するステップ、
を含む。
【0006】
前記プロセスを鑑みると、得られる生成物は、ワックス、着色顔料、カテキン、およびカフェインからなる群から選択される。
【0007】
実施形態の1つにおいて、アルカン溶媒はヘキサンである。
【0008】
実施形態の1つにおいて、第1の生成物、つまりワックスの収率は0.07%である。
【0009】
さらに別の実施形態では、第2の生成物、つまり緑色着色顔料の収率は8.6%である。
【0010】
さらに別の実施形態では、カメリア・シネンシスの上部の葉および下部の葉の両方が、ワックス、クロロフィル、カテキン、およびカフェインのような異なる生成物の生成に使用される。
【0011】
別の実施形態は、ポリスチレン樹脂として樹脂-Aを必要とする。
【0012】
本発明の別の態様は、抗酸化剤、抗変異原性剤、抗菌剤、抗ウイルス剤として使用するためのカテキンに関し、糖尿病、がん、心血管疾患、および炎症のような疾患からの保護効果を有する。
【0013】
本発明の別の実施形態は、ジクロロメタンである、さらなる抽出のための溶媒を必要とする。
【0014】
カフェインを含むジクロロメタンに関するさらなる実施形態は、乾燥させ、最小限の量のアルコールと共に加熱することによって精製して、0.07%のカフェインを回収した。
【0015】
さらに別の実施形態では、樹脂-Aからのカテキンの収量は3.59gであり、樹脂-Cは1.32gの収量を与え、カフェインの収量は0.17gである。
【0016】
発明の目的
本発明の主な目的は単一のプロセスを使用して、生の緑茶葉から4つの経済的に実行可能な生成物、すなわちワックス、着色顔料、カテキン、およびカフェインを単離することである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】各種生成物の抽出手順およびC.シネンシスからのカテキンの抽出に使用される2つの樹脂の比較を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
カメリア・シネンシスの葉、茎、根、花は、2019年11月に、ヒマーチャル・プラデーシュ(Himachal Pradesh)(alt 1472 m)のパラムプル(Palampur)から収集された。植物材料は、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ-176061、パラムプルのCSIR-Institute of Himalayan Bioresource Technologyの植物標本に提出され、証拠標本(番号PLP18552)と同定された。
【0019】
本発明は生の緑茶葉から、ワックス、クロロフィル、カテキンおよびカフェインを段階的に抽出するための統合されたプロセスを提供する。第1のステップでは生の緑茶葉からのワックスの抽出は、葉をヘキサンに約2~3時間浸漬し、次いで濾過後にヘキサンを濃縮することによって行われる。第2に、これらの葉をアルコールに浸漬し30~40℃で1~2時間加熱して、それらから緑色顔料を抽出する。ワックスおよびクロロフィルを取り除いた後、薄緑色の葉を60℃で30分間撹拌しながら水抽出する。抽出後に抽出物を濾過し、次いで選択的ポリスチレン吸着樹脂に通して、その中にカテキンを吸着させた。その後これをアルコールで溶出し、噴霧乾燥して褐色カテキン粉末である一次生成物を得た。残された葉(残留物)は、水と共に100℃で1時間加熱することによってさらに処理される。後にこの水抽出物をDCMで抽出して、そこからカフェインを分離した。さらにDCMを乾燥させてカフェインフレークを得る。TLC、FTIR、NMRおよびGC-MSによって単離された化合物を明らかにすることができる。
【0020】
このプロセスにおける新規性は、出発原料、すなわち生の緑茶葉から、同時に段階的な方法で4つの生成物、すなわちワックス、着色顔料、カテキンおよびカフェインを抽出することである。主に上側の2つの葉および芽が高品質の茶生成物を製造するために使用されるが、下側の植物全体の残りの生の茶葉は利用されないままである。したがって本発明は、各段階で価値を付加するプロセスステップを設計することを通して、このような残りの葉を活用することによって、価値のある生成物を得ることができるプロセスを開発するものである。先行研究では、乾燥コストがプロセスに加わる、乾燥処理された材料での生成物の抽出が報告されているが、本発明は生の葉の価値の付加に関する。これに加えてカフェインは、資本集約的であり、カフェインの抽出のみをもたらす高圧で稼働するSFEを使用した、乾燥処理のなされた葉からのカフェイン除去によって生成される。しかしカフェインがSFEによって抽出されると、いくらかの量のカテキンも犠牲になり、カテキンの抽出に関してこのプロセスの効率が低下する。これに加えてSFEは、この技術による二酸化炭素の制限を有する。しかし本発明のプロセスは、単純であり、より安価であり、生の茶葉について設計されている。茶樹は常緑樹の植物であり、十分に活用されていないかなりの量のワックスおよび着色顔料が存在している。本発明は化粧品および繊維産業で利用することができるこれらの化合物を抽出するために開発されている。さらにワックスおよび色が除去された茶葉は、より良好な抽出率および高収率のカテキンをもたらす。下流の精製ステップも異なり、カテキンに対してより高い親和性を有する特別なポリスチレン系樹脂を使用することによって効率的になされ、それは大きいサイズの他の樹脂と比較して、特定の小さいサイズ(0.3~1.0mm)の化学的性質および大きな表面積であることに起因しており、それが後者を前者よりも良好な吸着剤にしており、これは以前に報告されていない。一般的にビーズのサイズが小さいほど表面積が大きくなり、所望の化合物に対する分離および親和性が大きくなる。本発明で使用される樹脂は、より安価で、効果的で、経済的であり、リサイクル可能である。
【0021】
さらに本発明によって得られる収率は、3.61%(生基準のw/w)または12.03%(乾燥基準のw/w)であり、以前に報告された3.2%(乾燥基準のw/w)よりも良好で4倍高く、これは連続的な革新的ステップの追加に起因している。最後に、価値ある医薬品および食品化合物カフェイン抽出プロセスは、通常廃棄される使用済みの葉から開発される。
【実施例】
【0022】
以下の実施例は例示として与えられており、したがって本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0023】
例1
100gの生の緑茶葉を室温で2~3時間アルカン系の溶媒に浸漬し、その後濾液を乾燥させて0.07g(0.07%)のワックスを回収した。このワックスをGC-MSを用いて評価する。GC-MSのデータを、AOC-20iオートサンプラーおよびFFAP1カラムを取り付けたQP2010シリーズ(日本、東京都、島津製作所)で測定したところワックスは、エステル、脂肪酸、脂肪アルコール、リン脂質およびポリフェノールを含む結果となった。さらに葉をアルコールに浸漬し、40℃で1~2時間加熱して緑色の溶媒を得て、これを乾燥させると着色顔料5.0g(5.0%)が得られる。その後乾燥した葉を60℃で30分間水抽出する。この抽出物は、0.1ミクロン細孔径の精密濾過によってさらに精製される。さらにこの抽出物を選択的ポリスチレン吸着樹脂(樹脂-A)に通し、これをアルコールで溶出すると、カテキン粉末3.61g(3.61%)が得られる。カテキンの抽出後、残留/使用済みの葉は、炭酸ナトリウム(残留葉の重量の10%)と共に100℃で1時間、さらに水抽出される。抽出物を冷却し、次いでDCMでその液-液抽出を行い、そこからカフェインを回収した。カフェインを含むこのDCMを乾燥させ、最小限の量のアルコールと加熱することによって精製して、0.07g(0.07%)のカフェインを回収した。
【0024】
例2
250gの生の緑茶葉を室温で2~3時間アルカン系の溶媒に浸漬し、その後濾液を乾燥させて0.15g(0.06%)のワックスを回収した。さらに葉を-15℃で1~2時間アルコールに浸漬して緑色の溶媒を得て、これを乾燥させると5.88g(2.35%)のクロロフィルが得られる。その後乾燥した葉を1:10の比で、60℃で30分間水抽出する。この抽出物は0.1ミクロン細孔径の精密濾過によってさらに精製される。さらにこの抽出物をそれぞれ1リットルの2つの部分に分けて、2つの異なる吸着樹脂の吸着能力を調べる。それぞれ30分間、1リットルの水抽出物を100mlの樹脂A(ポリスチレン吸着樹脂)に吸着させ、もう1つの1リットルの抽出物を100mlの樹脂Cに吸着させて、これをアルコールで溶出すると褐色の粉末が得られ、樹脂Aからは2.52g(2.23%)の収量、樹脂Cからは2.18g(1.92%)の収量で得られた。カテキンを抽出した後に残った残留/使用済みの葉を、100℃で1時間、炭酸ナトリウム(残留葉の重量の10%)と共にさらに水抽出する。抽出物を冷却し、次いでDCMでその液-液抽出を行い、そこからカフェインを回収した。カフェインを含むこのDCMを乾燥させ、最小限の量のアルコールと加熱することによって精製して、0.17g(0.07%)のカフェインを回収した。
【0025】
例3
250gの生の緑茶葉を室温で2~3時間アルカン系の溶媒に浸漬し、その後濾液を乾燥させて0.17g(0.07%)のワックスを回収した。さらに葉を室温で1~2時間アルコールに浸漬して緑色の溶媒を得て、これを乾燥させると着色顔料8.13g(3.25%)が得られる。その後乾燥した葉を、比率1:10で、60℃で30分間水抽出する。この抽出物は0.1ミクロン細孔径の精密濾過によってさらに精製される。さらにこの抽出物をそれぞれ1リットルの2つの部分に分けて、以下の樹脂の吸着能力を調べる。それぞれ30分間、1リットルの水抽出物を100mlの樹脂A(ポリスチレン吸着樹脂)に吸着させ、もう1つの1リットルの抽出物を100mlの樹脂Cに吸着させて、これをアルコールで溶出すると褐色の粉末が得られ、樹脂Aからは2.28g(2.01%)の収量、樹脂Cからは1.97g(1.74%)の収量が得られた。カテキンを抽出した後に残った残留/使用済みの葉を、100℃で1時間、炭酸ナトリウム(残留葉の重量の10%)と共にさらに水抽出する。抽出物を冷却し、次いでDCMでその液-液抽出を行い、そこからカフェインを回収した。カフェインを含むこのDCMを乾燥させ、最小限の量のアルコールと加熱することによって精製して、0.11g(0.07%)のカフェインを回収した。このカフェイン(C1)およびその標準(C2)のNMRは、NMR Bruker Avance(商標)600MHz分光計を用いて行った。1Hおよび13C NMRピークの比較を両方の試料について行い、データが一致していることが判明し、それによってこれがカフェインであることが確認された。1H NMRスペクトルの結果は、1、3、7位の3つのCH3-基および位置番号8に存在する1つのプロトンからのシグナルからなる。13C NMRの結果より、環の2、4、5、6、8位に存在する5-炭素原子および1、3、7位に存在する環の窒素に結合したメチル基の3-炭素原子について8つのシグナルが得られた。スペクトルは以下の通り、1H NMRについて4つのシグナル、および13C NMRについて8つのシグナルを与えた:
【0026】
【0027】
【0028】
NMRスペクトルにおけるこれらのピークから、この化合物の構造がカフェインであることが予測された。
【0029】
例4
250gの生の緑茶葉を室温で2~3時間アルカン系の溶媒に浸漬し、その後濾液を乾燥させて0.17g(0.07%)のワックスを回収した。さらに葉を40℃の部屋で1~2時間アルコールに浸漬して緑色の溶媒を得て、これを乾燥させると21.66g(8.6%)のクロロフィルが得られる。この着色顔料(クロロフィル)は、島津のFTIR-IR Prestige-21 IRAffinity-1 FTIR-8400S Shimadzuを用いてFTIR分光法により評価される。赤外線透過率のデータは、4000~500cm-1の範囲の波数にわたって収集された。試料のデータを参照と比較して、試料に存在する全ての官能基を特定した。試料の主なピークは、3340、2970、2931、1750、1650、1465、1379、1128、1107、950cm-1に観察される。OH官能基は、3340.71cm-1に幅の広いピークをもたらし、そしてこのピークは、OHのピークは3400~3700cm-1に見られると伝えるFTIRの表に合致している。3000~2750の領域のピークは、アルカン、すなわち化合物に存在するCH3に対応する。さらにカルボニルのピークは、1740から1800の範囲の波数に存在する。芳香族のC=C結合は、1600~1475cm-1の間にビーク(beak)を与え、カルボン酸C-Oは1300~1000cm-1の範囲にピークを与える。脂肪族のアミンは、1350~1000cm-1にピークを与える。これら全ての範囲はクロロフィルに存在する官能基に対応し、ピークが参照と一致したときこの着色顔料が植物に存在する天然色素であるクロロフィルであると判明した。その後乾燥した葉を1:10の比で、60℃で30分間水抽出する。この抽出物は、0.1ミクロン細孔径の精密濾過によってさらに精製される。さらにこの抽出物をそれぞれ1リットルの2つの部分に分けて、以下の樹脂の吸着能力を調べる。それぞれ30分間、1リットルの水抽出物を100mlの樹脂A(ポリスチレン吸着樹脂)に吸着させ、もう1つの1リットルの抽出物を100mlの樹脂Cに吸着させて、これをアルコールで溶出すると褐色粉末が得られ、樹脂Aからは収量3.59g(3.17%)、樹脂Cからは収量1.32g(1.16%)で得られた。樹脂-Aおよび樹脂-Cから得られたカテキン粉末の品質評価は、2707オートサンプラー、温度制御モジュールを有する2998PDA検出器を備えたWaters HPLCシステムを使用して行われ、樹脂-A粉末の総カテキン含有量は53~57%であるが、樹脂-C粉末では45~48%であることが確認された。カテキンの抽出後、残留/使用済みの葉は、炭酸ナトリウム(残留葉の重量の10%)と共に100℃で1時間、さらに水抽出される。抽出物を冷却し、次いでDCMでその液-液抽出を行い、そこからカフェインを回収した。カフェインを含むこのDCMを乾燥させ、最小限の量のアルコールと加熱することによって精製して、0.17g(0.07%)のカフェインを回収した。
【0030】
例5
250gの生の緑茶葉を室温で2~3時間アルカン系の溶媒に浸漬し、その後濾液を乾燥させて0.17g(0.07%)のワックスを回収した。さらに葉を40℃の室温で1~2時間アルコールに浸漬して緑色の溶媒を得て、これを乾燥させると21.66g(8.6%)のクロロフィルが得られる。その後乾燥した葉を、比率1:10で、60℃で30分間水抽出する。この抽出物は0.1ミクロン細孔径の精密濾過によってさらに精製される。さらにこの抽出物をそれぞれ1リットルの2つの部分に分けて、以下の樹脂の吸着能力を調べる。それぞれ30分間、1リットルの水抽出物を100mlの樹脂A(ポリスチレン吸着樹脂)に吸着させ、もう1つの1リットルの抽出物を100mlの樹脂Cに吸着させて、これをアルコールで溶出すると褐色粉末が得られ、樹脂Aからは収量3.59g(3.17%)、樹脂Cからは収量1.32g(1.16%)で得られた。樹脂-Aおよび樹脂-Cから得られたカテキン粉末の品質評価は、2707オートサンプラー、温度制御モジュールを有する2998PDA検出器を備えたWaters HPLCシステムを使用して行われ、樹脂-A粉末の総カテキン含有量は53~57%であるが、樹脂-C粉末では45~48%であることが確認された。カテキンの抽出後、残留/使用済みの葉は、炭酸ナトリウム(残留葉の重量の10%)と共に100℃で1時間、さらに水抽出される。抽出物を冷却し、次いでDCMでその液-液抽出を行い、そこからカフェインを回収した。カフェインを含むこのDCMを乾燥させ、最小限の量のアルコールと加熱することによって精製して、0.17g(0.07%)のカフェインを回収した。
【0031】
例6
単離された化合物の同時定量のための方法。
【0032】
ワックスの定量分析は、GC-MSによって行った。GC-MSのデータは、AOC-20iオートサンプラーおよびFFAP1カラムを取り付けたQP2010シリーズ(日本、東京都、島津製作所)で測定された。ヘリウム(純度99.99%)を、全体の流量(total flow rate)4.8ml/分、線速度(linear velocity)35.2cm/秒、圧力69.3kPa、1.0スキャン/秒のサンプリングレート(sampling rate)におけるスプリット比(split ratio)1.0、スキャン速度(scan speed):1666μ/秒、インターバル(interval)0.5秒で、キャリアガスとして使用した。試料を1mlのDCM中に1mgとして希釈した(HPLCグレード)。オーブンの温度は120℃であった。イオン供給源の温度200℃、インターフェース温度250℃、インジェクター温度は230℃に維持した。その融点は、Barnstead Electro-thermal製のm.p.測定機器を使用して測定される。次いで島津のFTIR IR Prestige-21 IRAffinity-1 FTIR-8400S Shimadzuを使用して、緑色着色顔料のさらなる分析を行う。カテキンの定量分析は、2707オートサンプラー、温度制御モジュールを有する2998PDA検出器を備えたWaters HPLCシステムを使用して行った。粒径4ミクロンの新しいシナジーMAX RP C12カラム(4.6×250mm)(Phenomenex)が使用された。全ての標準のストック溶液を、HPLCグレードのメタノール中、1.0μg/μlの濃度で個別に調製した。アセトニトリル(A)および0.01%トリフルオロ酢酸を含む水(B)のグラジエント溶媒系を、1.0ml/分の一定の流量で使用した。グラジエントの条件は以下の通りであった:0分10%A、3分15%A、5分20%、8分25%A、および10分30%A。グラジエントは20分までに再び10%溶媒Aにされた。注入量は10μlに維持した。クロマトグラムスペクトルを波長スキャンプログラムによって200~700nmで記録し、最終的なデータを各試料および標準について205nmで収集した。Empower 2のソフトウェアを用いてデータの解釈を行った。さらに残留/使用済みの茶葉から抽出されたカフェインは、NMR Bruker Avance(商標)600MHz分光計および上記と同じRP-HPLC法を用いて定量される。
【0033】
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本発明の利点
1.この研究は、同一の植物材料から4つの価値のある/商業的に有用な生成物を生成することを可能にする、統合された段階的な方法を提供する。
2.それは生の緑茶葉から、化粧品に利用することができるワックスを抽出するためのプロセスを提供する。
3.それはさらに変換すると油に可溶であり、工業において着色剤として使用することができる、緑色着色化合物が抽出されるプロセスを提供する。
4.この研究は、費用効果が高く、一次化合物、すなわちカテキンの収率を高める方法を提供する。
5.この方法は、経口摂取用のカプセル/錠剤として成形することができる粉末形態のカテキン(抗酸化剤、抗変異原性剤、抗菌剤、抗ウイルス剤であり、糖尿病、がん、心血管疾患、および炎症のような疾患からの保護効果を有する)を提供する。
6.それは緑茶抽出物の形成に使用することができる方法を提供する。
7.それは残留/使用済みの葉を使用してカフェインを抽出することができるプロセスを提供する。
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参考文献
1.Alberto Van Olphen,Herman Friedman,Neil Shaw,Nicholas Burdash and James Roger,Florida,2007.Catechin Adjuvants.
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3.Hitoshi Sato,Hideaki Ueoka,Keiji Shibata,Tokyo,2010.Tea Extract.
4.Kenji Saito,Hiratsuka-shi,Tokyo,2010.Method for producing low caffeine-tea extract.
5.Masahiro Fukuda,Hirokaz Takahahashi,Atsushi Konishi,Tokyo,2011.Process for producing tea extract containing non-polymeric catechin.
6.Harsh Pratap Singh and Ajay Rana,CSIR-IHBT India 2013.A solvent free process for purification of free bio amino acid.
7.Quan vuong and Paul Daniel Roch,Australia,2014.Article in separation and purification reviews.Caffeine in green tea.
8.Dias Indrasti,Nuri and Arwulan,Eko Hari Purnomo,and Nur Wulandari,Indonesia,2018.Stability of chlorophyll as natural colorant:A review for suji leaves.
9.Nakajima,Makoto Kawasaki-shi,London,2019.Beverage containing catechins and RebD and/or RebM.
【国際調査報告】