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特表2024-524743重質炭化水素供給材料のための水蒸気改質触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】重質炭化水素供給材料のための水蒸気改質触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/78 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
B01J23/78 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503651
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2022068111
(87)【国際公開番号】W WO2023001521
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】PA202100778
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】オーヴェスン・シャロデ・ヴィニング
(72)【発明者】
【氏名】モラレス・カノ・フェルナンド
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BC03A
4G169BC03B
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC10A
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169CC04
4G169CC25
(57)【要約】
弾性が改善され、活性が改善され、カリウム浸出が低減され及びコーキング問題が低減された、ヒボナイトおよびカリウムβ-アルミナを含む新規な水蒸気改質触媒。それはまた、前記の新規触媒を製造する方法、ならびに前記新規触媒の、水蒸気改質反応器における、水素ガスを製造するためのプラントにおける、または合成ガスを製造するためのプラントにおける、または水蒸気改質プロセスにおけるガードベッドとしての使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
か焼された触媒を基準として、75~90重量%の触媒担体と10~25重量%の酸化ニッケルおよびカリウムとを含む水蒸気改質触媒であって、カリウムの含有率がか焼された触媒を基準として2~4重量%であり、および触媒担体が焼結した時に少なくとも35重量%のヒボナイト(CaAl1219)および10~35重量%のカリウムβ-アルミナを含む、前記水蒸気改質触媒。
【請求項2】
触媒担体において、焼結した時に、ヒボナイト(CaAl1219)およびカリウムβ-アルミナの全量が、少なくとも60重量%、例えば少なくとも70、80、90または95重量%である、請求項1に記載の水蒸気改質触媒。
【請求項3】
触媒担体がさらに、焼結した時に、全量で40重量%未満、例えば30、25、20、15、10または5重量%未満の、アルミナ結晶構造物であるグロサイトおよび/またはα-アルミナを含む、請求項1または2に記載の水蒸気改質触媒。
【請求項4】
触媒担体が、40~90重量%のヒボナイト(CaAl1219)、0~30重量%のグロサイトまたはα-アルミナ、および10~30重量%のカリウムβ-アルミナを含む、請求項1~3のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒。
【請求項5】
触媒または触媒担体の重量%が、存在する結晶相の定量的分析により測定され、前記結晶相は、Cu Kα線を用いる粉末X線回折(XRPD)技術およびBragg-Brentanoジオメトリ(PANalytical Xpert Pro)によりex-situで測定される、請求項1~4のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒。
【請求項6】
定量的な相分析が、TOPAS(version 4.2)ソフトウェアを使用するリートベルト法によって実施される、請求項5に記載の水蒸気改質触媒。
【請求項7】
定量的分析が、存在する相の相対量、平均粒径および格子パラメータの情報をもたらし、当該分析が全ての既知のK-β-アルミナ相、例えばKAl1117、KAl1117.5、K1.62Mg0.62Al10.3817、KMgAl3050を含み、これらの相の総和がK-β-アルミナ(焼結した時のカリウムβ-アルミナ)として報告される、請求項5または6に記載の水蒸気改質触媒。
【請求項8】
以下を含む、か焼された水蒸気改質触媒を製造するための方法:
a)焼結された触媒担体を提供すること;
b)前記の焼結された触媒担体に、ニッケル塩の水溶液及びカリウム塩の水溶液を施用して、触媒前駆体を提供すること;および
c)350~550℃の範囲の触媒か焼温度で前記の触媒前駆体をか焼し、ニッケル塩及びカリウム塩をそれぞれ酸化ニッケル及び酸化カリウムに分解して、か焼された触媒を得ること。
【請求項9】
ステップa)の焼結された触媒担体が、請求項1~7のいずれか1つに記載の触媒担体であり、前記触媒担体が以下によって製造される、請求項8に記載の方法:
i.以下を含む押出可能な触媒担体ペーストを提供すること
1.ペースト中に存在する金属の全量あたり85~95モル%の範囲のアルミニウム、
2.ペースト中に存在する全金属あたり4~12モル%Caの範囲のカルシウム、
3.ペースト中に存在する全金属あたり0.1~2.7モル%Tiの範囲のチタン、および
4.ペースト中に存在する全金属あたり0.5~5モル%Kの範囲のカリウム、および
5.ペースト溶媒;ならびに
ii.前記のペーストを触媒担体ボディへ成形すること;
iii.前記の触媒担体ボディを、1100~1500℃の範囲の温度で焼結して、少なくとも35重量%のヒボナイト(CaAl1219)および10~35重量%のカリウム-β-アルミナを含む焼結された触媒担体を形成すること。
【請求項10】
成形ステップii.と焼結ステップiii.との間に、触媒担体ボディを、300~600℃の範囲の担体か焼温度でか焼して、か焼された触媒担体を製造する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ニッケル塩が、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、クエン酸ニッケル、乳酸ニッケルおよび炭酸ニッケル、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、カリウム塩が、硝酸塩、水酸化物または炭酸塩のカリウム塩、またはそれらの組み合わせの群から選択される、請求項8~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか1つに記載の触媒の、水蒸気改質プロセスにおける、好適にはガードベッドとしての、使用。
【請求項13】
以下のステップを含む、水蒸気改質プロセス:
・請求項1~7のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒を提供するステップ;
・合成ガスを生成するように、水蒸気の存在下において、前記水蒸気改質触媒に、重質炭化水素供給材料、例えばナフサを通すステップ。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒が少なくとも部分的に装填された水蒸気改質反応器を含む、水素または合成ガスを製造するためのプラント。
【請求項15】
水蒸気改質反応器が以下を含む、請求項14に記載のプラント:
請求項1~7のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒を含むガードベッド;および
前記ガードベッドの下流に配置された、水蒸気改質触媒、好適には別の水蒸気改質触媒。
【請求項16】
請求項1~7のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒を含む、水蒸気改質システム用のガードベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重質炭化水素供給材料、例えばナフサの水蒸気改質を実施する場合に、弾性が改善され、活性が改善され、カリウム浸出が低減され及びコーキング問題が低減された、特にコーキング問題が低減された、新規な水蒸気改質触媒に関する。本発明はまた、前記の新規触媒を製造するための方法、ならびに重質炭化水素供給材料を処理する改質反応器における、水素ガスを製造するためのプラントにおけるまたは合成ガスを製造するためのプラントにおける前記新規触媒の使用に関する。本発明はさらに、水蒸気改質システム用のガードベッドであって、前記水蒸気改質触媒を含むガードベッドに関する。本発明はさらに、ガードベッドおよび下流に配置された水蒸気改質触媒を含む水蒸気改質システム、ならびに水蒸気改質プロセスにおけるガードベッド材料としての前記水蒸気改質触媒の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスまたは重質供給材料、例えばナフサの水蒸気改質は、水素および合成ガスを製造するための重要な経路である。触媒の環境は非常に過酷である。蒸気は、金属系触媒の存在下、高温(350~1100℃)で炭化水素と反応して、主に一酸化炭素および水素を形成する。最も頻繁に使用される金属はニッケルであるが、他の金属、例えばRu、Rh、Ir、PtおよびPdも水蒸気改質反応を触媒する。金属は一般に、アルミナ担体または促進されたアルミナ担体、例えばアルミン酸カルシウムまたはアルミン酸マグネシウムスピネル上に担持される。
【0003】
従って、水蒸気改質触媒は、そのようなプロセスにおける工業的適用のための様々な課題を有する。例えば、以下のことが重要である
- 触媒の活性が長期間保持される、
- 活性を保持するために触媒上の炭素形成が最小化される、
- 触媒体が高温で機械的に安定であり、高い細孔容積を有する。
【0004】
触媒寿命を通しての触媒の高い活性は、最適な性能のために不可欠であり、なぜなら、より高い活性は、炭素形成の可能性がより低い比較的低い温度で、高級炭化水素を転化するからである。
【0005】
水蒸気改質触媒に関する周知の問題は、例えばNi系触媒上での高級炭化水素からの炭素の形成である(コーキングとも呼ばれる)。炭素の形成は、パイロリティック炭素が反応器壁および触媒体上に堆積し、触媒床への熱伝達を減少させるので、触媒にとって有害である。別の問題は、ウィスカー炭素の形成が最終的に触媒細孔を満たし、活性の低下に加えて触媒体の破壊を引き起こし得ることである。アルカリ金属は、炭素のガス化を促進し、それによってパイロリティック炭素の形成を防止または低減することが知られている。アルカリ金属はまた、Ni粒子上でのアルカリ金属の吸着によってNi触媒上でのウィスカー炭素形成を防止し、それによって触媒の活性部位上の炭素形成を抑制することが知られている。しかしながら、アルカリ金属は負の効果も有し、なぜならそれは、アルカリ金属が水と反応して揮発性のアルカリ水酸化物を形成するので、水蒸気改質活性を低下させ、水蒸気改質反応条件下で触媒から移動する傾向があるからである。これは、下流プロセスにおけるアルカリ金属の有用な特性の喪失およびアルカリ金属のレイダウンにつながる。
【0006】
US2018345255(特許文献1)には、担体とその上に担持された触媒とを含む水蒸気改質触媒が開示されている。前記担体は、CeとZrを含む複合酸化物を含む。NiとTiが担体上に担持されている。得られた水蒸気改質触媒は、高価な貴金属を使用することなく、硫黄被毒による触媒活性低下を防止することができ、炭化水素の水素への高い転化率を維持することができる。
【0007】
WO14/048740(特許文献2)は、例えば天然ガス又はナフサの水蒸気改質のための担持ニッケル触媒の製造方法を開示しており、この方法では、アルカリ金属塩及び他の金属塩を含む水性混合物が最初にか焼され、次いで焼結されて担体材料が形成し、このようにして担体内にアルカリβ-アルミナ相の形態のアルカリリザーバーが形成される。形成されたリザーバーは、活性Ni粒子が担体材料上に担持されている表面にカリウムをゆっくりと放出し、それにより炭素形成を防止する。担体内でのアルカリ金属の捕捉はアルカリの移動を制限し、触媒表面へのカリウムの徐放を確実にする。得られる触媒は、触媒寿命にわたって優れた活性および十分な耐炭素性を有し、同時に、下流プロセスへのカリウム移動を制限する。完成した担体材料は、8重量%以上のカリウムβ-アルミナ、30~90重量%のマグネシウムアルミナスピネル、0~60重量%のグロサイトおよび/またはヒボナイト、ならびに0~5重量%のα-アルミナを含むと言及されている。しかしながら、この文献は、アルミン酸カルシウム相の性質に対して、何らの重要性、関連性または意義も与えていない。実際、実施例は、少量のヒボナイト(少なくとも担体の5重量%未満)および大量のグロサイト(少なくとも担体の10重量%超)のみを含有する。特に、全ての実施例は、ヒボナイトよりもはるかに多くのグロサイトを含有する。
【0008】
WO2005/092497(特許文献3)は、相当の量のCOおよびCO、少量の蒸気および比較的多量の硫黄化合物を含む供給材料流中の改質反応に有用な、チタンで安定化された、カルシウム促進アルミナ担持ニッケル改質触媒を開示している。触媒にカリウムを含浸させて、炭素形成を低減させることができる。前記触媒は、合成ガスを製造するための改質反応において使用することができ、鉄鉱石還元などの用途のための水素対一酸化炭素比の低い合成ガスの製造において利点を有する。
【0009】
CN101347735A(特許文献4)は、か焼アルミナ担体に硝酸ニッケルおよび硝酸カリウムの溶液を含浸させ、引き続きか焼する方法を開示している。
【0010】
水蒸気改質環境において増大した寿命を有し(反応後期活性)、増強された水蒸気改質活性、優れた耐炭素性ならびに良好な触媒体弾性を提供する触媒および触媒担体が、引き続き必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US2018345255
【特許文献2】WO14/048740
【特許文献3】WO2005/092497
【特許文献4】CN101347735A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本特許出願の発明者らは、担体内に形成されたアルカリβ-アルミナ相の形態のアルカリリザーバーを含む本出願人のWO14/048740の触媒を改良すること、さらに、特にナフサなどの重質炭化水素供給材料の水蒸気改質を行う場合に、コーキング低減に関して、出願人の同時係属中の特許出願PCT/EP2021/052146の触媒を改良することを試みた。係属中の特許出願PCT/EP2021/052146はとりわけ、10~25重量%の酸化ニッケルを含む水蒸気改質触媒であって、触媒担体がヒボナイトおよびカリウムβアルミナを含む触媒を開示している。カリウム-β-アルミナ相はKリザーバーとして機能し、ヒボナイト相は焼結安定性をもたらす。
【0013】
例えばWO14/048740による触媒は、アルカリβ-アルミナ相を含むアルカリ促進セラミック担体上の遷移金属の群に属する。一般に、そのような触媒の結晶構造、および従って物理的および化学的特性は予測不可能であり、例えば、各金属の相対量および使用される原材料によって変化し得る。さらに、形成される結晶構造は、触媒を製造するプロセスに依存し得る。換言すると、様々な結晶構造の形成のギブス自由エネルギーは、非常に大きく変化する。従って、触媒の組成を最適化するときに、単一の構造上で最適化することだけが、これまで現実的であると考えられてきた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは驚くべきことに、ヒボナイト(hibonite)相およびカリウムβ-アルミナ相をそれぞれ形成するのに必要なギブス自由エネルギーは非常に異なるが、カルシウムに対するアルミニウムの特定のモル比に関して、ならびにカリウムおよびチタンの存在下で、高レベルのアルカリβ-アルミナ相を依然として維持しながら、ヒボナイト相に富む触媒担体を得ることが可能であることを見出した。
【0015】
本発明の一態様によれば、か焼された触媒を基準として、75~90重量%の触媒担体と10~25重量%の酸化ニッケルおよびカリウム(K)とを含む水蒸気改質触媒であって、カリウムの含有率が2~4重量%であり、触媒担体が焼結した時に少なくとも35重量%のヒボナイトおよび10~35重量%のカリウムβ-アルミナを含む、前記触媒が提供される。
【0016】
カリウム含有率が、例えばニッケル塩の水溶液およびカリウム塩の水溶液を焼結された触媒担体に施用することによってニッケルと一緒に、触媒担体に施用されるカリウム、ならびに触媒担体の製造の間に添加され、従って触媒担体に固有の任意のカリウムに対応することは理解されよう。
【0017】
か焼された触媒中の酸化ニッケルおよびカリウムの含有率は10~25重量%である。例えば、か焼された触媒を基準として、酸化ニッケルの含有率は16.4重量%であり、一方、カリウムの含有率は好適には2.2重量%である。
【0018】
ヒボナイトおよびカリウム-β-アルミナ相に富むそのような触媒は、向上したEOR(end of run:反応後期)、向上した水蒸気改質活性および優れた耐炭素性ならびに良好な触媒体弾性を有する水蒸気改質触媒を提供する。加えて、そのような触媒は、還元雰囲気において著しく改善された還元特性を示した。これらの利点の全ては、プラント内の水蒸気改質触媒の寿命の改善に寄与する。従って、優れた触媒が達成され、プラント性能が改善される。さらに、ナフサなどの重質供給原料を長い触媒寿命で処理することを可能にする本出願人の同時係属中の特許出願PCT/EP2021/052146の水蒸気改質触媒と比較して、さらに高い耐炭素性が得られる。
【0019】
ナフサ改質に必要な耐炭素性を得るためにより多くのカリウムを遊離させるために、触媒に、例えばニッケルとカリウムの両方を含浸させることによって、ニッケルとカリウムの両方とともに提供される。触媒寿命にわたってカリウムを遊離させるためのリザーバーとして作用する担体中にカリウムが存在するので、例えばヒボナイトおよびカリウムを含むマグネシウムアルミニウムスピネル系触媒におけるよりも、必要とされる、触媒上に含浸されるカリウムは少ない。それによって、プロセスの下流でのカリウムの喪失および移動が少なくなる。さらに、スピネル相を排除し、含浸カリウムの量を低減することにより、触媒寿命中のオンサイト還元のために重要な還元特性を改善することが期待される。
【0020】
前記触媒は、例えば、一次または管状の水蒸気改質器において使用され得る。有利には、チタンの使用が、以下にさらに記載されるように、カリウム-β-アルミナ相のほんのわずかな減少のみを伴って、ヒボナイト相の形成を促進する。前記触媒は、重質供給材料(重質天然ガス、ナフサ、例えば軽質ナフサ、又はブタンを含めて)の水蒸気改質に使用され、実質的に炭素の形成なしで作用することができる。
【0021】
本発明によれば、か焼時、および従って焼結した時に、少なくとも35重量%のヒボナイトおよび10~35重量%のカリウム-β-アルミナを含む触媒担体が提供される。
【0022】
本発明者らは、このような触媒担体をベースとする触媒が、触媒中に、すなわちか焼された触媒を基準として、2~4重量%のKをもたらす追加的なカリウム(K)を、好適にはニッケルと一緒に、さらに備える場合に、先行技術の触媒と比較して優れたカリウム安定性、延長された水蒸気改質活性、優れた耐炭素性および優れた機械的耐性を示すこと、特に本出願人の同時係属中の特許出願PCT/EP2021/052146による触媒よりもさらに高い耐炭素性を示すことを見出した。触媒においてカリウム含有率を2重量%未満に減少させると、炭素形成に対する耐性を低下させ、一方、カリウム含有率を4重量%超に増加させると、より低い触媒活性と、カリウムの浸出に伴う潜在的な問題をもたらし得る。
【0023】
本発明の触媒はまた、炭化水素供給材料中に存在する硫黄の除去を可能にし、従って、水蒸気改質反応器における硫黄ガードとして、特に管状改質ユニットにおける硫黄ガードとしての役割を果たす。硫黄の存在は、下流の水蒸気改質触媒にとって有害である。
【0024】
さらに、前記触媒の使用は、予備改質ユニットを提供する必要性をなくし、従って、より不都合な水蒸気改質プロセスを可能にする。
【0025】
加えて、本発明者らは驚くべきことに、本発明による触媒担体をベースとする触媒が、上記のように、スピネル系触媒と比較して、還元雰囲気において著しく改善された還元特性を示したので、さらなる利点を有することを見出した。
【0026】
好ましくは、前記触媒担体に含まれるアルミナ結晶構造物であるグロサイト(CaAl)および/またはα-アルミナ(α-Al)は、焼結した時に合計30重量%未満である。本発明者らは、α-アルミナおよびグロサイトの両方が、分解、クラッキングおよび重合反応を通じて炭素形成を促進することを見出した。これは典型的にはナフサ改質において観察されるが、供給材料組成に応じて重質天然ガスの改質においても観察され得る。触媒担体中のα-Al(αアルミナ)は、酸性度を導入することが知られている。本発明者らは驚くべきことに、8超かつ20未満のAl:Caのモル比に関して、非常に多くのヒボナイトおよびカリウムβ-アルミナ、ならびに非常に少ないグロサイトおよびα-アルミナが形成されることを見出した。本発明者らはまた、8超かつ14未満のAl:Caモル比では、α-Alが触媒担体中に存在しないことも見出した。Al:Ca比が14超だが20未満の場合、少量のα-Alが形成した。しかしながら、これは触媒にほとんど影響を与えなかった。
【0027】
本発明の別の態様によれば、か焼された水蒸気改質触媒、すなわちか焼された触媒を製造するための方法であって、以下を含む方法も提供する:
a)焼結された触媒担体を提供すること;
b)前記の焼結された触媒担体に、ニッケル塩水溶液及びカリウム塩水溶液を施用して、触媒前駆体を提供すること;および
c)350~550℃の範囲の触媒か焼温度で前記の触媒前駆体をか焼し、ニッケル塩及びカリウム塩をそれぞれ酸化ニッケル及び酸化カリウムに分解して、か焼された触媒を得ること。
【0028】
本発明による触媒担体を製造する方法は、所望の量のヒボナイトおよびカリウムβ-アルミナ相を得るために重要である。
【0029】
従って、一実施態様において、ステップa)の焼結された触媒担体は、上記または下記の実施態様のいずれか1つに記載される触媒担体であり、前記触媒担体は以下によって製造される:
i.以下:
- ペースト中に存在する全金属あたり85~94モル%の範囲のアルミニウム、
- ペースト中に存在する全金属あたり4.7~12モル%Caの範囲のカルシウム、
- ペースト中に存在する全金属あたり0.1~2.7モル%Tiの範囲のチタン、および
- ペースト中に存在する全金属あたり0.5~5モル%Kの範囲のカリウム、および
- ペースト溶媒;
を含み、アルミニウム:カルシウムのモル比が8~20、例えば8~16または8~14である、押出可能な触媒担体ペーストを提供すること;
ii.前記のペーストを触媒担体ボディへ成形すること;
iii.前記の触媒担体ボディを、1100~1500℃の範囲の温度で焼結して、少なくとも35重量%のヒボナイトおよび10~35重量%のカリウム-β-アルミナを含む焼結された触媒担体を形成すること。
【0030】
本発明による方法の利点は、所望の量のヒボナイト相およびカリウムβ-アルミナ相を示す触媒担体が提供されることであり、従って、以下に述べるような利点をもたらす。本発明による方法によって得ることができる触媒担体は、向上したEOR(反応後期)水蒸気改質活性、向上した水蒸気改質活性および優れた耐炭素性ならびに良好な触媒体弾性を有する水蒸気改質触媒を提供するために有用である。全体として、これは、プラント内の水蒸気改質触媒の寿命を改善する。従って、上記で説明したように、プラント性能を特に耐炭素性の点で改善する優れた触媒が達成される(改善された例XXV-重質炭化水素供給材料。耐炭素性も参照。)。
【0031】
本発明による方法では、触媒担体ボディの焼結の前に、アルミニウム、カルシウム、チタンおよびカリウムのいずれもが混合されることが重要である。このことが、本発明の利点を提供する、豊富な量のヒボナイトおよびカリウム-β-アルミナ相の形成を可能にする。
【0032】
か焼された触媒を製造するための方法のステップb)において、ニッケル塩の水溶液およびカリウム塩の水溶液を、例えば含浸によって、施用することによって、ニッケルおよびカリウムが提供される。一実施態様において、ニッケル塩は、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、クエン酸ニッケル、乳酸ニッケルおよび炭酸ニッケル、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され;カリウム塩は、硝酸塩、水酸化物または炭酸塩のカリウム塩、またはそれらの組み合わせの群から選択される。
【0033】
別の態様において、本発明は、上記または下記の実施態様のいずれかに記載される触媒(すなわち水蒸気改質触媒)の、水蒸気改質プロセスにおける、好適にはガードベッドとしての、使用を提供する。
【0034】
別の態様において、本発明は、以下のステップを含む、水蒸気改質方法を提供する:
・上記または下記の実施態様のいずれか1つに従う水蒸気改質触媒を提供するステップ、
・合成ガスを生成するように、水蒸気の存在下において、前記水蒸気改質触媒に、重質炭化水素供給材料、例えばナフサを通すステップ。
【0035】
別の態様において、本発明は、上記または下記の実施態様のいずれか1つに従う水蒸気改質触媒が少なくとも部分的に装填された水蒸気改質反応器を含む、水素または合成ガスを製造するためのプラントを提供する。その特定の実施態様において、水蒸気改質反応器は、以下を含む:
上記または下記の実施態様のいずれかに従う水蒸気改質触媒を含むガードベッド;および
前記ガードベッドの下流に配置された、水蒸気改質触媒、好適には別の水蒸気改質触媒。
【0036】
例えば、本発明による触媒は、水蒸気改質反応器の頂部40~50%に配置され、ここでは、重質炭化水素供給材料の高級炭化水素からの炭素形成の可能性がある。下方(下流)には、低アルカリ触媒、例えば本出願人の特許出願PCT/EP2021/052146による低アルカリ触媒が配置される。
【0037】
前記水蒸気改質方法における運転条件は、4~5の水蒸気炭素モル比、入口反応器温度約500℃および出口温度約800℃、ならびに全圧約20barでの運転を含み得る。
【0038】
前記触媒はまた、純粋なブタンで操作するプラントに使用されてもよい。
【0039】
別の態様において、本発明は、上記または下記の実施態様のいずれかに従う水蒸気改質触媒を含む、水蒸気改質システム用のガードベッドを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】72.9重量%のヒボナイト(CaAl1219)、10.6重量%のグロサイト(CaAl)、0重量%のα-アルミナおよび16.9重量%のK-β-アルミナを含む担体例XIIのXRPDディフラクトグラム。
図2】例I~XXIXの各々の調製に使用した原料の量を示す表。
図3】例の触媒担体I~XIXの実験データを示す表。表は、か焼および焼結された触媒担体の元素化学組成を、XRFによって測定して、モル%および重量%で示し、相組成を、XRPDによって測定して、重量%で示す。Tiを含む担体は、1重量%までのCaTiOを含有する。BETはBET表面積であり、PVは細孔容積である。
図4】例の触媒XX~XXIXを調製するために使用した担体の実験データを示す表。表は、か焼および焼結された担体の元素化学組成を、XRFによって測定して、モル%および重量%で示し、相組成を、XRPDによって測定して、重量%で示す。Tiを含む担体は、1重量%までのCaTiOを含有する。
図5】例のか焼された触媒XX~XXIXの実験データを示す表。表は、フレッシュなか焼された触媒の元素化学組成を、XRFによって測定して、モル%および重量%で示し、相組成を、XRPDによって測定して、重量%で示す。
図6】例の触媒XX~XXIXの実験データを示す表。表は、還元され、不動態化された触媒の元素化学組成を、XRFによって測定して、モル%および重量%で示し、相組成を、XRPDによって測定して、重量%で示す。
【0041】
発明の詳細な説明
定義
本文脈において、語句「重質炭化水素供給材料」は、天然ガスの主成分であるメタン(CH、すなわちC1)よりも大きい炭素数を有する炭化水素を主に(50重量%超)含む、炭化水素供給材料を意味する。重質炭化水素としては、重質天然ガス、ナフサ、例えば軽質ナフサ、又はブタンが挙げられる。軽質ナフサは、C5~C6炭化水素および任意にまたC7~C8炭化水素、例えばそれらの少量を含有する。より具体的には、軽質ナフサは、30℃~90℃で沸騰する留分を意味し、C5~C6炭化水素からなる。重質ナフサは、90~200℃で沸騰し、6~12個の炭素原子を有する分子からなる。
【0042】
本文脈において、語句「か焼」は、揮発性化合物、例えば溶媒または不純物が除去され、金属化合物の熱分解によって単純な金属酸化物が形成される、金属含有体の熱処理を指すことが意図される。一般的なか焼温度範囲は250~800℃である。本発明において、触媒担体ボディは、好ましくは、溶媒を除去し、金属酸化物を形成するために、300~600℃の担体か焼温度でか焼される。本発明において、触媒前駆体は、好ましくは、溶媒を除去し、酸化ニッケルを形成するために、350~550℃の触媒か焼温度でか焼される。特定の用途に関しては、相転移が起こらないことが好ましい。そのような場合、約600℃未満の温度でか焼を行うことが好ましい。
【0043】
本文脈において、「焼結」は、金属原子の相転移または構造再構成を促進する金属含有体の熱処理を指すことが意図される。一般的な焼結温度範囲は900~1800℃である。本発明では、様々な金属を含むペーストを1100~1500℃の範囲の焼結温度で焼結して、アルミン酸カルシウム相(特にヒボナイト)およびカリウム-β-アルミナ相を含む、焼結された触媒担体を生成する。
【0044】
語句「焼結された触媒担体」は、触媒担体ペーストを焼結した後に得られる材料を指すことが意図される。焼結された触媒担体は、単に「触媒担体」とも称され得る。
【0045】
語句「か焼された触媒担体」は、触媒担体か焼温度でか焼した後に得られる材料を指すことが意図される。
【0046】
本文脈において、触媒担体ボディは、触媒担体前駆体とも称され得る。
【0047】
「触媒前駆体」は、活性金属の溶液を含浸させた触媒担体、しかしながら(分解または触媒のか焼によって)金属酸化物を形成する前の触媒担体を指すことが意図される。前記の触媒前駆体は、担持ニッケル触媒の製造における安定な中間体である。
【0048】
語句「分解された触媒」は、触媒が触媒か焼温度で分解に曝された後の触媒前駆体を指すことが意図される。それは、か焼された触媒またはか焼水蒸気改質触媒とも称され得る。
【0049】
語句「活性化触媒」は、活性金属が還元された後(すなわち、NiOがNiに還元された後)の触媒を指すことが意図される。それはまた、「還元触媒」とも称され得る。それは、例えば、分解された触媒を還元雰囲気に曝露することによって、または不動態化された触媒を還元雰囲気に曝露することによって得ることができる。
【0050】
語句「還元され、不動態化された触媒」または「不動態化された触媒」は、触媒が還元され、次いで還元雰囲気から(エイジングに曝されることなく)取り出され、次いで酸化雰囲気に曝露されて活性金属のNiOへの表面酸化がもたらされた後の触媒を指すことが意図される。
【0051】
語句「エイジングされた触媒」は、水蒸気改質における長期間の使用、または水蒸気改質における長期間の使用に似た条件に曝露した後の触媒を指すことが意図される。典型的には、長期間の使用に似た条件は、触媒のエイジングプロセスを加速する。エイジング手順の後、エイジングされた触媒は、酸化雰囲気に曝露され、活性金属のNiOへの表面酸化をもたらす。
【0052】
語句「触媒」は、触媒活性材料を指すことが意図される。触媒活性材料は、典型的には、a)活性成分、この場合には、反応物との化学的相互作用を提供する触媒活性金属、およびb)その表面に活性成分を、広い面積にわたって、および典型的には多くの個々のクラスターまたは細孔中に、提供する主な機能を有する多孔質担体を含む。さらに、構造的な担体の形態にある別の成分c)が、触媒活性材料に機械的/物理的安定性を有する輪郭が明確にされた構造を提供するという主な機能を伴って存在してもよい。さらに、活性成分の結晶構造および/または粒子の焼結または類似の不活性化を低減する追加的な成分d)、例えば安定剤、ならびにe)さらに別の活性成分が、触媒活性材料中に存在してもよい。触媒活性材料は、還元触媒または還元触媒活性材料とも称され得る。
【0053】
語句「ガード」は、供給材料中の不純物、例えば、硫黄を吸着し、それによって触媒を下流で保護できる材料を指すことが意図される。
【0054】
本文脈において、材料、例えば金属が「触媒活性」であると考えられる場合、それは、それが触媒する反応の反応速度を、触媒活性材料が存在しないことを除いて同じ反応条件下での同じ反応の反応速度と比較した場合、少なくとも1桁、好ましくは2桁、さらにより好ましくは5桁増加させることができる。本発明による水蒸気改質触媒は、メタンの水蒸気改質(CH+HO=CO+3H)、高級炭化水素の水蒸気改質(C+nHO=nCO+(n+0.5m)H)及び水性ガスシフト反応(CO+HO=CO+H)を含む水蒸気改質反応を触媒する。水蒸気改質反応を触媒する物質が存在しない場合、反応性を測定することはほぼ不可能である。
【0055】
語句「好適には」は、「任意」であり、すなわち任意の実施態様を意味する。
【0056】
語句「含む(comprising)」はまた、「のみを含む(comprising only)」、すなわち「からなる(consisting of)」を含み得る。
【0057】
触媒担体
本発明によれば、焼結した時に少なくとも35重量%のヒボナイトおよび10~35重量%のカリウムβ-アルミナを含む、水蒸気改質において使用するための触媒担体が提供される。本発明者らは驚くべきことに、8超かつ20未満のAl:Caのモル比に関して、非常に多くのヒボナイトおよびカリウムβ-アルミナ、ならびに非常に少ないグロサイトおよびα-アルミナが形成されることを見出した。一実施態様において、触媒担体は、少なくとも50重量%のヒボナイトおよび15~35重量%のK-β-アルミナを含む。別の実施態様において、触媒担体は、少なくとも60重量%のヒボナイトおよび20~30重量%のK-β-アルミナを含む。担体の全量の実用的な最大値が100%を超えないことを除いて、ヒボナイトの量に上限はない。従って、ヒボナイトの実用的な最大値は、それぞれ90、85、および80重量%である。
【0058】
驚くべきことに、Tiで促進すると、β-アルミナ相の濃度がわずかに低くなり、ヒボナイト濃度が著しく高くなることが見出された。より高い濃度のヒボナイトは、長期触媒活性と耐炭素性に関して正の効果を有し、これは、カリウム-β-アルミナ相の量がより少なくても改善された。Ti促進触媒はまた、より低いカリウム喪失を示した。これはより安定なカリウムβ-アルミナ相が形成されたことを実証するものである。
【0059】
本文脈において、ヒボナイトは、式CaAl1219の組成物を指すことが意図される。本発明者らは、ヒボナイトが熱安定性であり、焼結を阻害するNi粒子を安定化し、長い安定性および高い反応後期活性をもたらすので、触媒において望ましい成分であることを見出した。このこともまた、耐炭素性に関して正の効果を有し、なぜなら、小さなNi粒子は大きなNi粒子よりも炭素形成に対して高い抵抗性を有するためである。本発明者らは、触媒の高い活性が得られると、炭化水素の転化がより低い温度で起こり、さらにまた炭素形成のリスクを低下させ得ることを見出した。
【0060】
K-β-アルミナ相はK-リザーバとして機能し、触媒の耐炭素性をさらに増加させる。カリウムは炭素のガス化を促進し、それによって炭素形成に対する抵抗性を増加させることが知られている。カリウムはまた、Ni粒子上の活性部位に吸着し、それによって、炭素形成に対する抵抗性を誘導する。しかしながら、カリウムはまた、触媒の活性を低下させることが知られており、従って、活性ニッケルの近傍では低い濃度が望ましい。カリウムは経時的に触媒から移動し、なぜならカリウムは、揮発性である水酸化カリウムを生成するガスストリーム中の水と反応するためである。K-β-アルミナは、カリウムをゆっくりと表面に遊離させるK-リザーバを提供し、それによって、Ni粒子上のカリウムの十分な濃度を維持して、高い水蒸気改質活性を保持するために炭素形成が十分に低くなるような抵抗性をもたらす。カリウムのこの低濃度は、最大限可能な活性をもたらす。
【0061】
要約すると、ヒボナイト相は活性に関して触媒の長期安定性をもたらし、K-β-アルミナ相は耐炭素性に関して長期安定性をもたらす。触媒に施用される追加的なKは、重質炭化水素供給材料の水蒸気改質を実施する際に、耐炭素性をさらに高める。
【0062】
本発明による1つの実施態様において、触媒担体中のヒボナイトおよびカリウムβ-アルミナの全量は、焼結した時に、少なくとも60重量%、例えば少なくとも70、80、90または100重量%である。そのような担体は、主に有利な相からなり、場合により不利な他の相は少量でのみ含有する。
【0063】
本発明による1つの実施態様において、触媒担体は、焼結した時に、全量で40重量%未満、例えば30、25、20、15、10、5重量%未満または0重量%の、アルミナ結晶構造物であるグロサイト(grossite)および/またはα-アルミナを含む。
【0064】
結晶構造α-アルミナ(α-Al)は酸性であり、触媒担体中に存在すると酸性の原因となることが知られている。本発明者らはまた、グロサイト(CaAl)が触媒特性に悪影響を及ぼすこと、ならびに両相が分解、クラッキングおよび重合反応を通して炭素形成を促進することを見出した。これは典型的にはナフサ改質において観察されるが、供給材料組成に応じて重質天然ガスの改質においても観察され得る。上述のように、触媒担体中のα-Al(αアルミナ)は、酸性をもたらすことが知られている。本発明者らは驚くべきことに、8超かつ14未満のAl:Caモル比では、α-Alが触媒担体中に存在しないことも見出した。Al:Ca比が14超だが20未満の場合、少量のα-Alが見られた。しかしながら、これらの少ない量は、触媒にほとんど影響を与えなかった。本発明の一実施態様によれば、触媒担体中のCaに対するAlのモル比は、8~20、例えば8~16または8~14の範囲である。
【0065】
従って、本発明の一実施態様において、触媒担体は、40~90重量%のヒボナイト、0~30重量%のグロサイトまたはα-アルミナ、および10~30重量%のカリウムβ-アルミナを含む。別の実施態様において、触媒担体は、50~70重量%のヒボナイト、0~5重量%のグロサイトまたはα-アルミナ、および20~30重量%のカリウムβ-アルミナを含む。
【0066】
ヒボナイトおよびカリウムβ-アルミナに富む本発明による触媒担体は、有利には、少なくともCa:Al:Ti:Kのモル比が1:(8~20):(0.01~0.5):(0.05~1.0)の範囲、例えば1:(10~16):(0.1~0.3):(0.3~0.6)の範囲内にある場合に、得ることができることが見出された。8~20のAl:Caモル比に加えて、これは、0.01~0.5のTi:Caモル比および0.05~1のK:Caモル比および0.1~100のK:Tiモル比の意味を含む。Al:Caの好ましい範囲は8~16、より好ましくは8~14である。Ti:Caの好ましい範囲は、0.05~0.3、より好ましくは0.08~0.3である。K:Caの好ましい範囲は0.1~0.8、より好ましくは0.3~0.6である。K:Tiの好ましい範囲は0.5~20、より好ましくは2~8である。全ての比はモル比である。
【0067】
好ましくは、触媒担体は、か焼および/または焼結の時、アルミニウム、カルシウム、チタンおよびカリウムの酸化物から本質的になる。一実施態様において、触媒担体は、アルミニウム、カルシウム、チタンおよびカリウムの酸化物を含み、アルミニウム、カルシウム、チタンおよびカリウムの酸化物の全重量は、乾燥物質基準で、触媒担体の最小で99重量%、例えば100重量%を占める。
【0068】
本発明の触媒担体は、熱、圧力または化学的な攻撃に対する耐性を必要とし、かつ高温での強度及び形態を保持すべき触媒体を製造するために有用である。特に、触媒担体は、水蒸気改質用触媒を製造するために有用である。
【0069】
好適には、触媒または触媒担体の重量%は、存在する結晶相の定量的分析により測定され、前記結晶相は、Cu Kα線を用いる粉末X線回折(XRPD)技術およびBragg-Brentanoジオメトリ(PANalytical Xpert Pro)によりex-situで測定される。好適にはまた、定量的な相分析は、TOPAS(version 4.2)ソフトウェアを使用するリートベルト法によって実施される。好適にはまた、定量的分析は、存在する相の相対量、平均粒径および格子パラメータの情報をもたらし;当該分析は全ての既知のK-β-アルミナ相、例えばKAl1117、KAl1117.5、K1.62Mg0.62Al10.3817、KMgAl3050を含み、これらの相の総和が、K-β-アルミナ(焼結した時のカリウムβ-アルミナ)として報告される。
【0070】
触媒
本発明の一態様によれば、か焼された触媒を基準として、75~90重量%の上記で特定される触媒担体と、10~25重量%の酸化ニッケルおよびカリウムとを含む水蒸気改質触媒が提供される。本発明の一実施態様によれば、前記水蒸気改質触媒は、か焼された触媒を基準として、80~85重量%の上記で特定される触媒担体と、15~20重量%の酸化ニッケルおよびカリウムとを含む。
【0071】
触媒試験により驚くべきことに、本発明によるヒボナイトに富む水蒸気改質触媒が、カリウム喪失がより少なく、活性喪失がより少なく、より高いEOR活性、およびより低い臨界O/C比によって実証されるより高い耐炭素性をもたらすことが実証された(例を参照されたい)。驚くべきことに、Tiで促進すると、β-アルミナ相の濃度がわずかに低くなり、ヒボナイト濃度が著しく高くなることが見出された。ヒボナイトのより高い濃度は、長期触媒活性と耐炭素性に関して正の効果を有し、これは、カリウム-β-アルミナ相の量がより少なくても改善された。Ti促進触媒はまた、より低いカリウム喪失を示したが、これはより安定なカリウムβ-アルミナ相が形成されたことを実証するものである。
【0072】
本発明の一実施態様によれば、アルミニウム、カルシウム、チタンカリウムおよびニッケルの酸化物を含む水蒸気改質触媒であって、アルミニウム、カルシウム、チタンカリウムおよびニッケルの酸化物の全重量が、乾燥物質基準で、か焼された触媒の最小でも99重量%を占める水蒸気改質触媒が提供される。
【0073】
本発明者らはまた、本発明による触媒が、使用前に触媒を活性化するために重要な改善された還元特性を有することを見出した。水蒸気改質触媒の活性化は、典型的には、現場で(すなわち、水蒸気改質反応器において)行われる。典型的には、か焼された触媒は、水蒸気改質反応器内に配置され、NiOが水素によってNiに還元され、従って触媒活性な水蒸気改質触媒(または触媒活性材料)を生成する。活性化は、好都合には、プロセスガス(典型的には、6~10の水蒸気炭素比を有する)中で実施される。従って、水素が、温度がより高い(650~850℃)反応器の底部で開始する炭化水素の水蒸気改質によって生成される。水素の逆拡散によって、上記の触媒が還元され、最終的には、温度がより低い(450~500℃)反応器の頂部において触媒が還元される。触媒の還元特性は、触媒の迅速かつ容易な還元に重要である。特に、温度がより低い反応器の頂部における触媒の完全な還元は、より困難であり得る。担体の組成は、還元特性に影響を及ぼし得、従って、CaOおよびMgOの両方が、NiOの還元を遅らせることが知られている。さらに、カリウムは、同一の効果を有し得る。
【0074】
触媒担体を製造するための方法
本発明の第1の態様による触媒担体を製造するための本発明の一態様による方法において、アルミニウムは、任意のアルミニウム源に由来し得る。同様に、カルシウムは任意のカルシウム源に由来してもよく、チタンは任意のチタン源に由来してもよく、カリウムは任意のカリウム源に由来してもよい。金属源は、例えば、金属塩、金属鉱物、金属酸化物または金属水酸化物であることができる。
【0075】
担体ペーストは、アルミニウム、カルシウム、チタンおよびカリウムを、それらが焼結プロセスにおいて相変化を受けてヒボナイトおよびカリウムβ-アルミナ相を形成することを可能にする形態で提供する任意の適切な方法で製造することができる。本発明の一実施態様によれば、担体ペーストは、粒子状のアルミニウム、カルシウムチタンおよびカリウム源をペースト溶媒と混合し、押出可能な触媒担体ペーストを得ることによって提供される。一実施態様において、粒子状のアルミニウム、カルシウムチタンおよびカリウム源は、5mm未満、好ましくは1mm未満の粒径サイズを有する。
【0076】
カルシウム源は、例えば、CaO、CaCO、Ca(HCO、Ca(OH) Ca(NO、CaO・Al、3CaO・Al、CaO・6Alおよび12CaO・7Al、またはそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0077】
アルミニウム源は、例えば、AlOOH、Al(OH)、Al、Al(NO、CaO・Al、3CaO・Al、CaO・6Alおよび12CaO・7Al、またはそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0078】
チタン源は、例えば、酸化チタン、水酸化チタン、硝酸チタン、塩化チタンチタン金属、および任意の有機形態のチタン、好ましくは酸化チタンおよび水酸化チタン、例えばTiO、Ti(OH)、Ni(NO、Ti(NO、TiClおよびTi、またはそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0079】
カリウム源は、例えば、カリウム金属塩、例えば硝酸塩、水酸化物または炭酸塩のカリウム塩;またはそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0080】
本発明の一実施態様によれば、ペースト溶媒は、水、および鉱酸を含む水からなる群から選択される。好ましくは、溶媒は、鉱酸HNOを含む。
【0081】
本発明の一実施態様によれば、ステップii.における触媒担体ボディへの成形は、ペーストを押し出して押出物を生成することを含む。成形のステップii.と焼結のステップiii.との間に、触媒担体ボディを、300~600℃の範囲の担体か焼温度でか焼して、か焼された触媒担体を製造することができる。好ましくは、担体か焼温度は、400~550℃の範囲内、例えば450~500℃の範囲内で選択される。か焼された触媒担体は、粉砕され、潤滑剤と混合され、次いで、焼結のステップiii.に付される前にタブレットに成形されてもよい。潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウムおよびステアリン酸カルシウムまたはそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0082】
触媒担体は、少量の酸化チタンを含んでもよい。好ましくは、ニッケルなどの活性金属の添加前に、触媒担体に含まれる上記のもの以外の金属酸化物は5重量%未満である。
【0083】
水蒸気改質触媒を製造するための方法
本発明の一態様によると、か焼水蒸気改質触媒は以下によって製造される:
a.上記のような本発明による焼結された触媒担体を提供すること;
b.ニッケル塩の水溶液およびカリウム塩の水溶液を、前記の焼結された触媒担体に施用して、触媒前駆体を提供すること;および
c.前記触媒前駆体を、350~550℃、例えば400~500℃の範囲の触媒か焼温度でか焼し、ニッケル塩を酸化ニッケルに分解して、使用準備ができたか焼された触媒を得ること。
【0084】
ステップb)において、ニッケル塩およびカリウム塩の水溶液は、含浸によって、例えばインシピエントウェットネス法によって、担体に施用することができる。
【0085】
ステップb)およびc)は、触媒中のニッケルの量、または触媒中のカリウムの量を増加させるために、1回または複数回繰り返すことができた。例えば、カリウムはニッケルと一緒に2回の含浸で加えることができる;しかしながら、カリウムは1回目の含浸および2回目の含浸の両方に含ませるか、または1回目の含浸にのみ含ませることができ、あるいは、最初にニッケルで含浸し、次いでカリウムで含浸することができる。
【0086】
本発明の一実施態様によれば、ニッケル塩は、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、クエン酸ニッケル、乳酸ニッケルおよび炭酸ニッケル、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され;カリウム塩は、群から選択され、カリウム塩は、硝酸塩、水酸化物または炭酸塩のカリウム塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0087】
本発明による触媒は、重質炭化水素供給材料の水蒸気改質に特に有用である。典型的には、か焼された触媒は、水蒸気改質反応器内に配置され、そこで、酸化ニッケルのニッケル金属への還元を促進する還元雰囲気中で活性化されて、水蒸気改質反応を触媒する活性触媒を生成する。一般に、水蒸気改質プロセスは、合成ガスを生成するように、蒸気の存在下で前記水蒸気改質触媒に炭化水素供給材料を通す連続プロセスとして実施される。活性が、収率がもはや許容できないかまたは炭化のレベルがもはや許容できないレベルまで低下すると、水蒸気改質反応器の触媒装填物は、再生されるか、またはフレッシュな触媒と交換されなければならない。これはプロセスの休止期間を必然的に伴い、これは時間を浪費し、従って著しい利益の損失を伴う。従って、寿命が長い触媒は非常に有利である。新しい触媒装填物は交換後に還元しなければならず、このプロセスもまた時間を浪費する。改善された還元特性は、触媒を還元するための時間をより短くし、前の時間をより短くし、許容可能な収率が達成され、従って、収益性の増加をもたらす。
【0088】
水蒸気改質プロセスは例えば、水素を生成するためのプラントまたは合成ガスを生成するためのプラントに統合されてもよい。
【0089】
本発明の所与の態様に従う実施態様および関連する利益のいずれも、本発明の他の態様のいずれかと組み合わせることができる。
【実施例
【0090】

例I-XIX:水蒸気改質触媒のための担体材料
試験した担体全ては、以下の手順に従って製造した:
供給材料A:KNO3(量に関しては図2参照)
供給材料B:TiO、AlOOH、Al(OH)およびCaCOの乾燥混合物(量については、図2を参照)。
【0091】
供給材料A(KNO)を、100gの水および5.2gのHNO(65重量%)を含み、70℃で温度調節されたz-ミキサーに加えた。供給材料Aを溶解する際に、供給材料B(TiO、AlOOH、Al(OH)およびCaCO)を添加し、混合物を均一になるように混合した。次いで、ペーストを押出機に供給し、押出して押出物にした。押出物を110℃で一晩乾燥し、450~500℃で約30分間か焼した。か焼押出物を粉砕し、ステアリン酸マグネシウムと混合し、タブレット化した。タブレットを1200~1400℃で約4時間焼結した。
【0092】
担体サンプルI~XIXを、図2に示すTiO、KNO、AlOOH、Al(OH)およびCaCOの量で、この方法に従って製造した。
【0093】
例IIIおよびIXは先行技術による担体であり、か焼および焼結の前に添加されるカリウムもチタンも含まない。
【0094】
例IV、V、XおよびXIは先行技術による担体であり、か焼および焼結の前に添加されるカリウムを含む(例えば、WO14/048740に開示されている)。
【0095】
例VIは先行技術による担体であり、か焼および焼結の前に添加されるチタンを含む(例えば、WO05/092497に開示されている)。
【0096】
例I、II、VII、VIII、XII、XIII、XIVおよびXVは、本発明による好ましい担体であり、か焼および焼結の前に添加されるカリウムおよびチタンの両方を含み、Al:Caのモル比は7~14の範囲である。
【0097】
例XVI、XVII、XVIIIおよびXIXは、本発明による担体であり、か焼および焼結の前に添加されるカリウムおよびチタンの両方を含むが、Al:Caのモル比は14または16を超え、ただし20未満である。当該担体は、少量のα-Alを含む。
【0098】
各担体材料I~XIX中に存在する結晶相の定量分析を、Cu Kα線を用いる粉末X線回折(XRPD)技術およびBragg-Brentanoジオメトリ(PANalytical Xpert Pro)によりex-situで測定した。定量的な相分析は、TOPAS(version 4.2)ソフトウェアを使用するリートベルト法によって実施した。定量的分析により、存在する相の相対量、平均粒径および格子パラメータの情報が得られた。解析には、KAl1117、KAl1117.5、K1.62Mg0.62Al10.3817、KMgAl3050などの全ての既知のK-β-アルミナ相が含まれ、これらの相の総和が以下ではK-βアルミナとして報告される。
【0099】
ディフラクトグラムの一例を、担体例XIIについて図1に示す。担体例XIIの定量分析により、72.9重量%のヒボナイト(CaAl1219)、10.2重量%のグロサイト(CaAl)および16.9重量%のK-β-アルミナの相組成が得られた。各担体材料の化学元素組成を、蛍光X線(XRF)によって決定した。調製されたサンプルに、X線源からの高エネルギーX線を照射し、それによってサンプルの組成の二次的な蛍光X線特性を生成した。蛍光X線を、分析結晶中で回折させ、元素特異的な回折角で検出器によって測定した。検出器に到達する二次X線の強度を、元素濃度の定量に使用した。
【0100】
BET表面積は、一点法BET分析によって決定した。サンプルをU字管に入れ、ヘリウム流中300℃で8時間乾燥させた。その後、サンプルを含むU字管を液体窒素の浴中で冷却し、ヘリウム中に30%窒素を含む流れにサンプルを曝露することによって、窒素をサンプル上に吸着させた。吸着が終わったら、浴を外し、脱着ピークを記録し、積分した。BET表面積は、サンプルから脱着した窒素の量から決定した。
【0101】
細孔容積は、Hgポロシメトリーによって決定した。サンプルを250℃で2時間乾燥した。サンプルの細孔容積は、細孔に水銀を充填することによって決定した。圧力および体積データを収集する間に、圧力を周囲圧力から4140barまで勾配的に変化させ、再び下降させた。加圧中に収集されたデータを、細孔分布(PV)の計算に使用した。
【0102】
その結果、各担体の元素化学組成を図3に示す(重量%およびモル%の両方)。図3はまた、各担体中のヒボナイト(CaAl1219)、グロサイト(CaAl)およびK-β-アルミナの量も示す。また、全てのTi促進担体において、含まれるCaTiOは1重量%までであった。
【0103】
当該結果により、チタンを添加せずに担体にカリウムを添加すると、ヒボナイトの濃度が著しく低下することが示された。理論に束縛されるものではないが、これは、カリウムとアルミナとの間の反応がグロサイトとアルミナとの間の反応よりも有利であり、従って、ヒボナイト濃度が減少し、グロサイト濃度が増加することを示す(例えば、担体例IVおよびV対III、およびXおよびXI対IXを参照されたい)。
【0104】
当該結果により、カリウムを添加せずに担体にチタンを添加すると、ヒボナイトの濃度が増加し、グロサイトおよびα-アルミナの濃度が減少し、従ってグロサイトとα-アルミナとの間の反応が促進されることが示された(担体例VI対III参照)。
【0105】
か焼および焼結の前にTiおよびKの両方を担体に添加すると、本発明者らは、Tiを含まないサンプルのK-β-アルミナ濃度に近い高濃度のK-β-アルミナと、高いヒボナイト濃度との両方を得ることが可能であることを見出した。本発明者らは驚くべきことに、そのような担体が、以下の例に示されるように、担体中にK-β-アルミナを有することおよびヒボナイトを有することに関連する利点の両方をもたらすことを見出した。本発明者らはさらに、Caに対するAlのモル比が8~20の範囲にある場合に、得ることができるヒボナイト濃度の最大値が得られることを見出した。本発明者らは、Al/Caが15を超える場合に、フリーのα-Alが観察され、これが担体に望ましくない酸性度をもたらすことを見出した。しかしながら、試験結果により、少量のα-Alの存在は、担体および触媒の性能に大きな影響を及ぼさなかったことが示される。当該結果はまた、Ti促進担体が、非促進担体よりも高い細孔容積を有することも示す。
【0106】
例XX~XXIX: 水蒸気改質に使用される触媒
担体は、例I~XIXについて上述した方法に従って製造した。例XX~XXIXの各担体を製造するために使用された材料については、図2を参照されたい。
【0107】
例XX~XXIXのための担体の元素化学組成を上記のように決定した。結果を図4に示す。相組成を上記のようにXRPDによって決定した。これらの結果も図4にも示す。
【0108】
その後、担体に硝酸ニッケル溶液をインシピエントウェットネス法によって含浸させ、450℃でか焼した。含浸およびか焼を繰り返した。硝酸ニッケル溶液の濃度を調節して、か焼された触媒を基準として約14重量%のニッケルを含むか焼された触媒を得た。
【0109】
例XX~XXIXのフレッシュなか焼された触媒の元素化学組成を上記のように決定した。結果を図5に示す。
【0110】
触媒XX~XXIXの各々の特性を、以下に記載される試験手順に従って試験した。下記のように、各触媒を、触媒をエイジング手順に曝露する前の1つのサンプルにおいて試験し(フレッシュな触媒)、それをエイジング手順に曝露した後の同一触媒の別のサンプルにおいて試験した(エイジングした触媒)。
【0111】
触媒XX~XXIXのための試験手順:
各触媒XX~XXIXのうちの少なくとも2つのサンプルを管型反応器に入れ、水素中、525℃で還元して活性化触媒を生成し、そのうちの1つを、エイジング手順(運転中の水蒸気改質触媒の寿命を表す加速水蒸気改質条件を呈する)に付した。触媒XX~XXIXの各サンプル(エイジング前のものとエイジング後の別のもの)の元素化学組成および相組成を、上述のようにXRFによって決定した。エイジング後の相対的なカリウム喪失も同一の方法で測定した。
【0112】
加速水蒸気改質条件を呈するエイジング手順は、以下のように行った:
サンプルを、450~800℃の範囲の温度で、H2O/CO2/H2のストリーム中、31時間エイジングし、エイジング触媒を生成した。この後、触媒上に残っているカリウムの量を、上述のようにXRFを用いた化学分析によって測定した。カリウム喪失は、還元された不動態化触媒中のカリウムの量に対する、還元された不動態化触媒中のカリウムの量からエイジング触媒中に残っているカリウムの量を引いたものとして定義される。
【0113】
還元された不動態化触媒の元素化学組成および相組成を前述のように決定した。結果を図6に示す。
【0114】
フレッシュな(還元され、不動態化された)およびエイジングされた触媒の固有の水蒸気改質活性(速度論的研究)を、以下のように実施した:
固有の水蒸気改質活性を、高純度ガスを含むシリンダーを備えた管型反応器中で500℃で、O/C=4のCH4/H2O/H2混合物を用いて測定した。活性喪失は、還元された不動態化触媒の固有活性に対する、還元された不動態化触媒の固有活性からエイジング触媒の固有活性を引いたものとして定義される。
【0115】
相対的カリウム喪失および炭素形成に関する臨界O/Cの決定:
800℃でエイジングした触媒の耐炭素性を、ノルマルブタンと水を用いた500℃での熱重量分析により測定した。一定の水流で、ブタン流を勾配的に変化させ、炭素形成が開始するO/C比を触媒の臨界O/C比として特徴付けた。
【0116】
還元された不動態化触媒およびエイジング触媒の固有活性、ならびにエイジング触媒のカリウム喪失の結果を、それぞれ表1および2に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
触媒試験により、ヒボナイトリッチ触媒のカリウム喪失がより少ないことが実証され、より高いEOR活性およびより高い耐炭素性をもたらす、より低い活性喪失が、より低い臨界O/C比によって示された(表2)。Tiで促進すると、β-アルミナ相の濃度がわずかに低くなり、ヒボナイト濃度が著しく高くなる。ヒボナイトのより高い濃度は、長期触媒活性と耐炭素性に関して正の効果を有し、これは、カリウム-β-アルミナ相の量がより少なくても改善される。促進された触媒もまた、カリウム喪失がより少なく、これはより安定なカリウムβ-アルミナ相が形成されたことを実証するものである。
【0120】
固有活性が上昇すると、観察される活性も増加する。固有活性と観察活性との間には、効率因子(efficiency factor)の関係がある。
【0121】
本発明による触媒(XXIII、XXVIおよびXXVII)およびいくつかの従来技術の触媒(XXIおよびXXX)の還元特性
触媒の還元特性を、ヘリウム中に1%の水素と3%の水を含むガスに触媒サンプルを供する昇温還元法(TPR:temperature programmed reduction studies)で研究した。触媒サンプルを室温から1000℃に加熱し、流出ストリーム中の水素と水を温度の関数として質量分析により測定した。水素の消費は、還元状態になる、すなわち活性化状態になるための触媒サンプルの能力を反映している。大部分の水素が消費される温度が低いほど、触媒サンプルの還元特性は良好である。本研究では、2つの水素消費ピーク;450~520℃の範囲にピーク最大値を有するα-ピークと名付けられた低温ピークおよび740~760℃の範囲にピーク最大値を有するβ-ピークと名付けられた高温ピーク、が観察された。β-ピークが小さいほど、より低い温度でより簡単に還元を行えるので、触媒の還元特性が良好となる。消費された水素の全量と比較して、β-ピークによって表される消費水素の量が25%未満である場合、反応器の頂部における触媒の高い活性を確実にするのに十分な触媒のNiOが還元される。
【0122】
表3に、研究した触媒についての結果を示す。低いグロサイト含有率に加えて高いヒボナイトおよびK-β-アルミナ含有率を有する触媒は、少量のβ-ピークを有する触媒をもたらし、このことは、還元特性に関するヒボナイト相の有益な効果を実証するものである。EP2900368に記載されるような組成を有する触媒に関して、マグネシウムアルミナスピネルを含有する場合、β-ピークが還元特性を支配しており、このことは、本発明の触媒と比較して、この触媒にはより高い還元温度が必要であることを示している。
【0123】
昇温還元法TPR
TPRを、内径3.8mmの固定床反応器中で実施した。触媒を破砕して150~300μmの篩分け画分にし、反応器に充填した。ヘリウム中に1%の水素を含む流れを、25℃で水を含むボトルを通過させ、供給材料中におよそ3重量%の水を得た。触媒床を2℃/分の加熱速度で室温から1000℃に加熱した。出口ガスの組成を質量分析計(InProcess Instruments GAM 400)によって分析した。
【0124】
【表3】
【0125】
改善された例XXV -重質炭化水素供給材料。耐炭素性
重質炭化水素供給材料ブタンの水蒸気改質に関する耐炭素性を、本出願人の同時係属中の特許出願PCT/EP2021/052146に記載の水蒸気改質触媒(具体的には上記表の例XXVに対応する)を用いて、およびまた、前記例XXVにカリウムをさらに含浸させて2~4重量%Kの最終含有率を得る、本発明による水蒸気改質触媒を用いて行った。
【0126】
より具体的には、例XXVによる担体を調製した:5.3gのKNO3を、100gの水および5.2gのHNO3(65重量%)を含み、70℃で温度調節されたz-ミキサーに加えた。KNO3を溶解する際に、1.66gのTiO2、102.4gのAlOOH、22.1gのAl(OH)3および14.6gのCaCO3の乾燥混合物を添加し、均一になるように混合した。次いで、ペーストを押出機に供給し、押出して押出物にした。押出物を110℃で一晩乾燥し、450~500℃で約30分間か焼した。か焼押出物を粉砕し、ステアリン酸マグネシウムと混合し、タブレット化した。タブレットを1200~1400℃で4時間焼結した。引き続き、担体に硝酸ニッケル溶液をインシピエントウェットネス法によって含浸させ、450℃でか焼した。含浸を繰り返し、2回目は硝酸ニッケルに硝酸カリウムを加え、450℃でか焼した。得られた触媒は、か焼された触媒中に全体で12.9重量%のNi(NiOとして16.4重量%)および2.22重量%のK(還元された不動態化触媒として2.4重量%のK)を含有する。従って、前記触媒におけるNiOおよびKの含有率は、か焼された触媒に基づいて、18.6重量%である。
【0127】
相対的カリウム喪失および炭素形成に関する臨界O/Cの決定:800℃でエイジングした触媒の耐炭素性を、ノルマルブタンと水を用いた500℃での熱重量分析により測定した。一定の水流で、ブタン流を勾配的に変化させ、炭素形成が開始するO/C比を触媒の臨界O/C比として特徴付けた。
【0128】
以下の表は臨界O/C比を示し、より高い耐炭素性がより低い臨界O/C比によって実証されている。表はまた、耐炭素性の相対的な改善を示し、すなわち、例XXVによる耐炭素性が100である。
【0129】
本発明に係る触媒では、耐炭素性の相対的な改善が47である(値が100に対して低いほど良好)。従って、耐炭素性の著しい改善が達成される。
【0130】
【表4】
【0131】
本発明の実施態様(項目)を以下に記載する:
1.か焼された触媒を基準として、75~90重量%の触媒担体と10~25重量%の酸化ニッケルおよびカリウムとを含む水蒸気改質触媒であって、カリウムの含有率がか焼された触媒を基準として2~4重量%であり、および触媒担体が焼結した時に少なくとも35重量%のヒボナイト(CaAl1219)および10~35重量%のカリウムβ-アルミナを含む、前記水蒸気改質触媒。
2.触媒担体において、焼結した時に、ヒボナイト(CaAl1219)およびカリウムβ-アルミナの全量が、少なくとも60重量%、例えば少なくとも70、80、90または95重量%である、項目1に記載の水蒸気改質触媒。
3.触媒担体がさらに、焼結した時に、全量で40重量%未満、例えば30、25、20、15、10または5重量%未満の、アルミナ結晶構造物であるグロサイトおよび/またはα-アルミナを含む、項目1または2に記載の水蒸気改質触媒。
4.触媒担体において、Caに対するAlのモル比が、8~20、例えば8~16または8~14の範囲である、項目1~3のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒。
5.触媒担体において、Ca:Al:Ti:Kのモル比が、1:(8~20):(0.01~0.5):(0.05~1.0)の範囲である、項目1~4のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒。
6.触媒担体が、40~90重量%のヒボナイト(CaAl1219)、0~30重量%のグロサイトまたはα-アルミナ、および10~30重量%のカリウムβ-アルミナを含む、項目1~5のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒。
7.触媒担体が、アルミニウム、カルシウム、チタンおよびカリウムの酸化物を含み、アルミニウム、カルシウム、チタンおよびカリウムの酸化物の全重量が、乾燥物質基準で、触媒担体の最小でも99重量%を占める、項目1~6のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒。
8.アルミニウム、カルシウム、チタン カリウムおよびニッケルの酸化物を含み、アルミニウム、カルシウム、チタン カリウムおよびニッケルの酸化物の全重量が、乾燥物質基準で、か焼された触媒の最小でも99重量%を占める、項目1~7のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒。
9.以下を含む、か焼された水蒸気改質触媒を製造するための方法:
a)焼結された触媒担体を提供すること;
b)前記の焼結された触媒担体に、ニッケル塩の水溶液及びカリウム塩の水溶液を施用して、触媒前駆体を提供すること;および
c)350~550℃の範囲の触媒か焼温度で前記の触媒前駆体をか焼し、ニッケル塩及びカリウム塩をそれぞれ酸化ニッケル及び酸化カリウムに分解して、か焼された触媒を得ること。
10.ステップa)の焼結された触媒担体が、項目1~8のいずれか1つに記載される触媒担体であり、前記触媒担体が以下によって製造される、項目9に記載の方法:
i.以下を含む押出可能な触媒担体ペーストを提供すること
1.ペースト中に存在する金属の全量あたり85~95モル%の範囲のアルミニウム、
2.ペースト中に存在する全金属あたり4~12モル%Caの範囲のカルシウム、
3.ペースト中に存在する全金属あたり0.1~2.7モル%Tiの範囲のチタン、および
4.ペースト中に存在する全金属あたり0.5~5モル%Kの範囲のカリウム、および
5.ペースト溶媒;ならびに
ii.前記のペーストを触媒担体ボディへ成形すること;
iii.前記の触媒担体ボディを、1100~1500℃の範囲の温度で焼結して、少なくとも35重量%のヒボナイト(CaAl1219)および10~35重量%のカリウム-β-アルミナを含む焼結された触媒担体を形成すること。
11.担体ペーストが、粒子状のアルミニウム、カルシウムチタンおよびカリウム源をペースト溶媒と混合し、押出可能な触媒担体ペーストを得ることによって提供される、項目10に記載の方法。
12.ペースト溶媒が、水、および鉱酸を含む水からなる群内から選択される、項目10または11に記載の方法。
13.鉱酸がHNOである、項目10~12のいずれか1つに記載の方法。
14.ステップii.における触媒担体ボディへの成形が、前記ペーストを押し出して押出物を生成することを含む、項目10~13のいずれか1つに記載の方法。
15.成形のステップii.と焼結のステップiii.との間に、触媒担体ボディを、300~600℃の範囲の担体か焼温度でか焼して、か焼された触媒担体を製造する、項目10~14のいずれか1つに記載の方法。
16.か焼された触媒担体が、焼結のステップiii.に付される前に、粉砕され、潤滑剤と混合され、次いで、タブレットに成形される、項目15に記載の方法。
17.潤滑剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウムおよびステアリン酸カルシウムまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目16に記載の方法。
18.ステップb)およびc)を1回以上繰り返すことを含む、項目9~17のいずれか1つに記載の方法。
19.ニッケル塩が、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、クエン酸ニッケル、乳酸ニッケルおよび炭酸ニッケル、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され;カリウム塩が、群から選択され、カリウム塩が、硝酸塩、水酸化物または炭酸塩のカリウム塩、またはそれらの組み合わせの群から選択される、項目9~18のいずれか1つに記載の方法。
20.項目1~8のいずれか1つに記載の触媒の、水蒸気改質プロセスにおける、好適にはガードベッドとしての、使用。
21.以下のステップを含む、水蒸気改質プロセス:
・項目1~8のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒を提供するステップ;
・合成ガスを生成するように、水蒸気の存在下において、前記水蒸気改質触媒に、重質炭化水素供給材料、例えばナフサを通すステップ。
22.項目1~8のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒が少なくとも部分的に装填された水蒸気改質反応器を含む、水素または合成ガスを製造するためのプラント。
23.水蒸気改質反応器が以下を含む、請求項22に記載のプラント:
項目1~8のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒を含むガードベッド;および前記ガードベッドの下流に配置された、水蒸気改質触媒、好適には別の水蒸気改質触媒。
24.項目1~8のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒を含む、水蒸気改質システム用のガードベッド。
25.触媒または触媒担体の重量%が、存在する結晶相の定量的分析により測定され、前記結晶相は、Cu Kα線を用いる粉末X線回折(XRPD)技術およびBragg-Brentanoジオメトリ(PANalytical Xpert Pro)によりex-situで測定される、項目1~3、6~8のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒。
26.定量的な相分析が、TOPAS(version 4.2)ソフトウェアを使用するリートベルト法によって実施される、項目25に記載の水蒸気改質触媒。
27.定量的分析が、存在する相の相対量、平均粒径および格子パラメータの情報をもたらし;当該分析は全ての既知のK-β-アルミナ相、例えばKAl1117、KAl1117.5、K1.62Mg0.62Al10.3817、KMgAl3050を含み、これらの相の総和が、K-β-アルミナ(焼結した時のカリウムβ-アルミナ)として報告される、項目25または26に記載の水蒸気改質触媒。
28.触媒または触媒担体の重量%が、存在する結晶相の定量的分析により測定され、Cu Kα線を用いる粉末X線回折(XRPD)技術およびBragg-Brentanoジオメトリ(PANalytical Xpert Pro)によりex-situで測定される、項目10に記載の方法。
29.定量的な相分析が、TOPAS(version 4.2)ソフトウェアを使用するリートベルト法によって実施される、項目28に記載の方法。
30.定量的分析が、存在する相の相対量、平均粒径および格子パラメータの情報をもたらし;当該分析が全ての既知のK-β-アルミナ相、例えばKAl1117、KAl1117.5、K1.62Mg0.62Al10.3817、KMgAl3050を含み、これらの相の総和が、K-β-アルミナ(焼結した時のカリウムβ-アルミナ)として報告される、項目28または29に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-04-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0131
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0131】
本発明の実施態様(項目)を以下に記載する:
1.か焼された触媒を基準として、75~90重量%の触媒担体と10~25重量%の酸化ニッケルおよびカリウムとを含む水蒸気改質触媒であって、カリウムの含有率がか焼された触媒を基準として2~4重量%であり、および触媒担体が焼結した時に少なくとも35重量%のヒボナイト(CaAl1219)および10~35重量%のカリウムβ-アルミナを含む、前記水蒸気改質触媒。
2.触媒担体において、焼結した時に、ヒボナイト(CaAl1219)およびカリウムβ-アルミナの全量が、少なくとも60重量%、例えば少なくとも70、80、90または95重量%である、項目1に記載の水蒸気改質触媒。
3.触媒担体がさらに、焼結した時に、全量で40重量%未満、例えば30、25、20、15、10または5重量%未満の、アルミナ結晶構造物であるグロサイトおよび/またはα-アルミナを含む、項目1または2に記載の水蒸気改質触媒。
4.触媒担体において、Caに対するAlのモル比が、8~20、例えば8~16または8~14の範囲である、項目1~3のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒。
5.触媒担体において、Ca:Al:Ti:Kのモル比が、1:(8~20):(0.01~0.5):(0.05~1.0)の範囲である、項目1~4のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒。
6.触媒担体が、40~90重量%のヒボナイト(CaAl1219)、0~30重量%のグロサイトまたはα-アルミナ、および10~30重量%のカリウムβ-アルミナを含む、項目1~5のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒。
7.触媒担体が、アルミニウム、カルシウム、チタンおよびカリウムの酸化物を含み、アルミニウム、カルシウム、チタンおよびカリウムの酸化物の全重量が、乾燥物質基準で、触媒担体の最小でも99重量%を占める、項目1~6のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒。
8.アルミニウム、カルシウム、チタン カリウムおよびニッケルの酸化物を含み、アルミニウム、カルシウム、チタン カリウムおよびニッケルの酸化物の全重量が、乾燥物質基準で、か焼された触媒の最小でも99重量%を占める、項目1~7のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒。
9.以下を含む、か焼された水蒸気改質触媒を製造するための方法:
a)焼結された触媒担体を提供すること;
b)前記の焼結された触媒担体に、ニッケル塩の水溶液及びカリウム塩の水溶液を施用して、触媒前駆体を提供すること;および
c)350~550℃の範囲の触媒か焼温度で前記の触媒前駆体をか焼し、ニッケル塩及びカリウム塩をそれぞれ酸化ニッケル及び酸化カリウムに分解して、か焼された触媒を得ること。
10.ステップa)の焼結された触媒担体が、項目1~8のいずれか1つに記載される触媒担体であり、前記触媒担体が以下によって製造される、項目9に記載の方法:
i.以下を含む押出可能な触媒担体ペーストを提供すること
1.ペースト中に存在する金属の全量あたり85~95モル%の範囲のアルミニウム、
2.ペースト中に存在する全金属あたり4~12モル%Caの範囲のカルシウム、
3.ペースト中に存在する全金属あたり0.1~2.7モル%Tiの範囲のチタン、および
4.ペースト中に存在する全金属あたり0.5~5モル%Kの範囲のカリウム、および
5.ペースト溶媒;ならびに
ii.前記のペーストを触媒担体ボディへ成形すること;
iii.前記の触媒担体ボディを、1100~1500℃の範囲の温度で焼結して、少なくとも35重量%のヒボナイト(CaAl1219)および10~35重量%のカリウム-β-アルミナを含む焼結された触媒担体を形成すること。
11.担体ペーストが、粒子状のアルミニウム、カルシウムチタンおよびカリウム源をペースト溶媒と混合し、押出可能な触媒担体ペーストを得ることによって提供される、項目10に記載の方法。
12.ペースト溶媒が、水、および鉱酸を含む水からなる群内から選択される、項目10または11に記載の方法。
13.鉱酸がHNOである、項目10~12のいずれか1つに記載の方法。
14.ステップii.における触媒担体ボディへの成形が、前記ペーストを押し出して押出物を生成することを含む、項目10~13のいずれか1つに記載の方法。
15.成形のステップii.と焼結のステップiii.との間に、触媒担体ボディを、300~600℃の範囲の担体か焼温度でか焼して、か焼された触媒担体を製造する、項目10~14のいずれか1つに記載の方法。
16.か焼された触媒担体が、焼結のステップiii.に付される前に、粉砕され、潤滑剤と混合され、次いで、タブレットに成形される、項目15に記載の方法。
17.潤滑剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウムおよびステアリン酸カルシウムまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目16に記載の方法。
18.ステップb)およびc)を1回以上繰り返すことを含む、項目9~17のいずれか1つに記載の方法。
19.ニッケル塩が、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、クエン酸ニッケル、乳酸ニッケルおよび炭酸ニッケル、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され;カリウム塩が、群から選択され、カリウム塩が、硝酸塩、水酸化物または炭酸塩のカリウム塩、またはそれらの組み合わせの群から選択される、項目9~18のいずれか1つに記載の方法。
20.項目1~8のいずれか1つに記載の触媒の、水蒸気改質プロセスにおける、好適にはガードベッドとしての、使用。
21.以下のステップを含む、水蒸気改質プロセス:
・項目1~8のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒を提供するステップ;
・合成ガスを生成するように、水蒸気の存在下において、前記水蒸気改質触媒に、重質炭化水素供給材料、例えばナフサを通すステップ。
22.項目1~8のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒が少なくとも部分的に装填された水蒸気改質反応器を含む、水素または合成ガスを製造するためのプラント。
23.水蒸気改質反応器が以下を含む、請求項22に記載のプラント:
項目1~8のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒を含むガードベッド;および前記ガードベッドの下流に配置された、水蒸気改質触媒、好適には別の水蒸気改質触媒。
24.項目1~8のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒を含む、水蒸気改質システム用のガードベッド。
25.触媒または触媒担体の重量%が、存在する結晶相の定量的分析により測定され、前記結晶相は、Cu Kα線を用いる粉末X線回折(XRPD)技術およびBragg-Brentanoジオメトリ(PANalytical Xpert Pro)によりex-situで測定される、項目1~3、6~8のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒。
26.定量的な相分析が、TOPAS(version 4.2)ソフトウェアを使用するリートベルト法によって実施される、項目25に記載の水蒸気改質触媒。
27.定量的分析が、存在する相の相対量、平均粒径および格子パラメータの情報をもたらし;当該分析は全ての既知のK-β-アルミナ相、例えばKAl1117、KAl1117.5、K1.62Mg0.62Al10.3817、KMgAl3050を含み、これらの相の総和が、K-β-アルミナ(焼結した時のカリウムβ-アルミナ)として報告される、項目25または26に記載の水蒸気改質触媒。
28.触媒または触媒担体の重量%が、存在する結晶相の定量的分析により測定され、Cu Kα線を用いる粉末X線回折(XRPD)技術およびBragg-Brentanoジオメトリ(PANalytical Xpert Pro)によりex-situで測定される、項目10に記載の方法。
29.定量的な相分析が、TOPAS(version 4.2)ソフトウェアを使用するリートベルト法によって実施される、項目28に記載の方法。
30.定量的分析が、存在する相の相対量、平均粒径および格子パラメータの情報をもたらし;当該分析が全ての既知のK-β-アルミナ相、例えばKAl1117、KAl1117.5、K1.62Mg0.62Al10.3817、KMgAl3050を含み、これらの相の総和が、K-β-アルミナ(焼結した時のカリウムβ-アルミナ)として報告される、項目28または29に記載の方法。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1)か焼された触媒を基準として、75~90重量%の触媒担体と10~25重量%の酸化ニッケルおよびカリウムとを含む水蒸気改質触媒であって、カリウムの含有率がか焼された触媒を基準として2~4重量%であり、および触媒担体が焼結した時に少なくとも35重量%のヒボナイト(CaAl 12 19 )および10~35重量%のカリウムβ-アルミナを含む、前記水蒸気改質触媒。
2)触媒担体において、焼結した時に、ヒボナイト(CaAl 12 19 )およびカリウムβ-アルミナの全量が、少なくとも60重量%、例えば少なくとも70、80、90または95重量%である、上記1)に記載の水蒸気改質触媒。
3)触媒担体がさらに、焼結した時に、全量で40重量%未満、例えば30、25、20、15、10または5重量%未満の、アルミナ結晶構造物であるグロサイトおよび/またはα-アルミナを含む、上記1)または2)に記載の水蒸気改質触媒。
4)触媒担体が、40~90重量%のヒボナイト(CaAl 12 19 )、0~30重量%のグロサイトまたはα-アルミナ、および10~30重量%のカリウムβ-アルミナを含む、上記1)~3)のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒。
5)触媒または触媒担体の重量%が、存在する結晶相の定量的分析により測定され、前記結晶相は、Cu Kα線を用いる粉末X線回折(XRPD)技術およびBragg-Brentanoジオメトリ(PANalytical Xpert Pro)によりex-situで測定される、上記1)~4)のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒。
6)定量的な相分析が、TOPAS(version 4.2)ソフトウェアを使用するリートベルト法によって実施される、上記5)に記載の水蒸気改質触媒。
7)定量的分析が、存在する相の相対量、平均粒径および格子パラメータの情報をもたらし、当該分析が全ての既知のK-β-アルミナ相、例えばKAl 11 17 、K Al 11 17.5 、K 1.62 Mg 0.62 Al 10.38 17 、K Mg Al 30 50 を含み、これらの相の総和がK-β-アルミナ(焼結した時のカリウムβ-アルミナ)として報告される、上記5)または6)に記載の水蒸気改質触媒。
8)以下を含む、か焼された水蒸気改質触媒を製造するための方法:
a)焼結された触媒担体を提供すること;
b)前記の焼結された触媒担体に、ニッケル塩の水溶液及びカリウム塩の水溶液を施用して、触媒前駆体を提供すること;および
c)350~550℃の範囲の触媒か焼温度で前記の触媒前駆体をか焼し、ニッケル塩及びカリウム塩をそれぞれ酸化ニッケル及び酸化カリウムに分解して、か焼された触媒を得ること。
9)ステップa)の焼結された触媒担体が、上記1)~7)のいずれか1つに記載の触媒担体であり、前記触媒担体が以下によって製造される、上記8に記載の方法:
i.以下を含む押出可能な触媒担体ペーストを提供すること
1.ペースト中に存在する金属の全量あたり85~95モル%の範囲のアルミニウム、
2.ペースト中に存在する全金属あたり4~12モル%Caの範囲のカルシウム、
3.ペースト中に存在する全金属あたり0.1~2.7モル%Tiの範囲のチタン、および
4.ペースト中に存在する全金属あたり0.5~5モル%Kの範囲のカリウム、および
5.ペースト溶媒;ならびに
ii.前記のペーストを触媒担体ボディへ成形すること;
iii.前記の触媒担体ボディを、1100~1500℃の範囲の温度で焼結して、少なくとも35重量%のヒボナイト(CaAl 12 19 )および10~35重量%のカリウム-β-アルミナを含む焼結された触媒担体を形成すること。
10)成形ステップii.と焼結ステップiii.との間に、触媒担体ボディを、300~600℃の範囲の担体か焼温度でか焼して、か焼された触媒担体を製造する、上記9)に記載の方法。
11)ニッケル塩が、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、クエン酸ニッケル、乳酸ニッケルおよび炭酸ニッケル、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、カリウム塩が、硝酸塩、水酸化物または炭酸塩のカリウム塩、またはそれらの組み合わせの群から選択される、上記8)~10)のいずれか1つに記載の方法。
12)上記1)~7)のいずれか1つに記載の触媒の、水蒸気改質プロセスにおける、好適にはガードベッドとしての、使用。
13)以下のステップを含む、水蒸気改質プロセス:
・上記1)~7)のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒を提供するステップ;
・合成ガスを生成するように、水蒸気の存在下において、前記水蒸気改質触媒に、重質炭化水素供給材料、例えばナフサを通すステップ。
14)上記1)~7)のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒が少なくとも部分的に装填された水蒸気改質反応器を含む、水素または合成ガスを製造するためのプラント。
15)水蒸気改質反応器が以下を含む、上記14に記載のプラント:
上記1)~7)のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒を含むガードベッド;および
前記ガードベッドの下流に配置された、水蒸気改質触媒、好適には別の水蒸気改質触媒。
16)上記1)~7)のいずれか1つに記載の水蒸気改質触媒を含む、水蒸気改質システム用のガードベッド。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
か焼された触媒を基準として、75~90重量%の触媒担体と10~25重量%の酸化ニッケルおよびカリウムとを含む水蒸気改質触媒であって、カリウムの含有率がか焼された触媒を基準として2~4重量%であり、および触媒担体が焼結した時に少なくとも35重量%のヒボナイト(CaAl1219)および10~35重量%のカリウムβ-アルミナを含む、前記水蒸気改質触媒。
【請求項2】
触媒担体において、焼結した時に、ヒボナイト(CaAl1219)およびカリウムβ-アルミナの全量が、少なくとも60重量%、例えば少なくとも70、80、90または95重量%である、請求項1に記載の水蒸気改質触媒。
【請求項3】
触媒担体がさらに、焼結した時に、全量で40重量%未満、例えば30、25、20、15、10または5重量%未満の、アルミナ結晶構造物であるグロサイトおよび/またはα-アルミナを含む、請求項1または2に記載の水蒸気改質触媒。
【請求項4】
触媒担体が、40~90重量%のヒボナイト(CaAl1219)、0~30重量%のグロサイトまたはα-アルミナ、および10~30重量%のカリウムβ-アルミナを含む、請求項3に記載の水蒸気改質触媒。
【請求項5】
触媒または触媒担体の重量%が、存在する結晶相の定量的分析により測定され、前記結晶相は、Cu Kα線を用いる粉末X線回折(XRPD)技術およびBragg-Brentanoジオメトリ(PANalytical Xpert Pro)によりex-situで測定される、請求項1または2に記載の水蒸気改質触媒。
【請求項6】
定量的な相分析が、TOPAS(version 4.2)ソフトウェアを使用するリートベルト法によって実施される、請求項5に記載の水蒸気改質触媒。
【請求項7】
定量的分析が、存在する相の相対量、平均粒径および格子パラメータの情報をもたらし、当該分析が全ての既知のK-β-アルミナ相、例えばKAl1117、KAl1117.5、K1.62Mg0.62Al10.3817、KMgAl3050を含み、これらの相の総和がK-β-アルミナ(焼結した時のカリウムβ-アルミナ)として報告される、請求項に記載の水蒸気改質触媒。
【請求項8】
以下を含む、か焼された水蒸気改質触媒を製造するための方法:
a)焼結された触媒担体を提供すること;
b)前記の焼結された触媒担体に、ニッケル塩の水溶液及びカリウム塩の水溶液を施用して、触媒前駆体を提供すること;および
c)350~550℃の範囲の触媒か焼温度で前記の触媒前駆体をか焼し、ニッケル塩及びカリウム塩をそれぞれ酸化ニッケル及び酸化カリウムに分解して、か焼された触媒を得ること。
【請求項9】
ステップa)の焼結された触媒担体が、請求項1または2に記載の触媒担体であり、前記触媒担体が以下によって製造される、請求項8に記載の方法:
i.以下を含む押出可能な触媒担体ペーストを提供すること
1.ペースト中に存在する金属の全量あたり85~95モル%の範囲のアルミニウム、
2.ペースト中に存在する全金属あたり4~12モル%Caの範囲のカルシウム、
3.ペースト中に存在する全金属あたり0.1~2.7モル%Tiの範囲のチタン、および
4.ペースト中に存在する全金属あたり0.5~5モル%Kの範囲のカリウム、および
5.ペースト溶媒;ならびに
ii.前記のペーストを触媒担体ボディへ成形すること;
iii.前記の触媒担体ボディを、1100~1500℃の範囲の温度で焼結して、少なくとも35重量%のヒボナイト(CaAl1219)および10~35重量%のカリウム-β-アルミナを含む焼結された触媒担体を形成すること。
【請求項10】
成形ステップii.と焼結ステップiii.との間に、触媒担体ボディを、300~600℃の範囲の担体か焼温度でか焼して、か焼された触媒担体を製造する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ニッケル塩が、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、クエン酸ニッケル、乳酸ニッケルおよび炭酸ニッケル、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、カリウム塩が、硝酸塩、水酸化物または炭酸塩のカリウム塩、またはそれらの組み合わせの群から選択される、請求項8記載の方法。
【請求項12】
請求項1または2に記載の触媒の、水蒸気改質プロセスにおける、好適にはガードベッドとしての、使用。
【請求項13】
以下のステップを含む、水蒸気改質プロセス:
・請求項1または2に記載の水蒸気改質触媒を提供するステップ;
・合成ガスを生成するように、水蒸気の存在下において、前記水蒸気改質触媒に、重質炭化水素供給材料、例えばナフサを通すステップ。
【請求項14】
請求項1記載の水蒸気改質触媒が少なくとも部分的に装填された水蒸気改質反応器を含む、水素または合成ガスを製造するためのプラント。
【請求項15】
水蒸気改質反応器が以下を含む、請求項14に記載のプラント:
請求項1または2に記載の水蒸気改質触媒を含むガードベッド;および
前記ガードベッドの下流に配置された、水蒸気改質触媒、好適には別の水蒸気改質触媒。
【請求項16】
請求項1または2に記載の水蒸気改質触媒を含む、水蒸気改質システム用のガードベッド。
【国際調査報告】