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特表2024-524748ヘキサノール含浸を介して活性ニッケル相をシェル中に分散されて含んでいる触媒の調製方法
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  • 特表-ヘキサノール含浸を介して活性ニッケル相をシェル中に分散されて含んでいる触媒の調製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ヘキサノール含浸を介して活性ニッケル相をシェル中に分散されて含んでいる触媒の調製方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20240628BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20240628BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B01J37/02 101D
B01J23/755 Z
B01J37/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503856
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2022069498
(87)【国際公開番号】W WO2023001641
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】2107962
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ブアレグ マリカ
(72)【発明者】
【氏名】ジョティ レティシア
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA11
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA21C
4G169BA29C
4G169BB04A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BE06C
4G169BE08C
4G169BE09C
4G169BE14C
4G169BE19C
4G169BE38C
4G169CB02
4G169CB62
4G169CB65
4G169DA05
4G169EA02Y
4G169EA06
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC02Y
4G169EC03Y
4G169EC06Y
4G169EC07Y
4G169EC29
4G169FA02
4G169FA08
4G169FB19
4G169FB30
4G169FB57
4G169FC03
4G169FC07
4G169FC08
4G169FC10
(57)【要約】
本発明は、活性ニッケル相と、アルミナ担体とを含んでいる触媒を調製するための方法であって、前記触媒は、触媒の全重量に対して1~50重量%のニッケル元素を含み、ニッケルは、担体の周囲のシェル上と、担体のコアの両方に分布し、以下の工程を含んでいる、方法に関する:a)前記担体に、前記担体の全細孔容積TPVの0.2~0.8倍の容積V1のヘキサノール溶液を含浸させて含浸済み担体を得る工程;b)工程a)の終わりに得られた含浸済み担体に、活性ニッケル相の少なくとも1種の前駆体を含んでいる溶液を含浸させて、触媒前駆体を得る工程;およびc)工程b)の終わりに得られた触媒前駆体を250℃未満の温度で乾燥させる工程。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケルをベースとする活性相と、アルミナ担体とを含んでいる触媒を調製するための方法であって、前記触媒は、触媒の全重量に相対して1重量%~50重量%のニッケル元素を含み、ニッケルは、担体の周囲のクラスト上と、担体のコアの両方に分布し、前記クラストの厚さは、触媒の径の2%~15%であり、触媒中のニッケル粒子のサイズは、酸化物の形態で測定されて、15nm未満であり、以下の工程を含んでいる、方法:
a) 前記担体に、前記担体の全細孔容積TPVの0.2~0.8倍の容積V1のヘキサノール溶液を含浸させて含浸済み担体を得る工程;
b) 工程a)の終わりに得られた含浸済み担体に、ニッケル活性相の少なくとも1種の前駆体を含んでいる溶液を含浸させて、触媒前駆体を得る工程;
c) 工程b)の終わりに得られた触媒前駆体を250℃未満の温度で乾燥させる工程。
【請求項2】
工程b)において、工程a)の終わりに得られた含浸済み担体上に含浸したニッケル活性相の少なくとも1種の前駆体を含んでいる溶液の容積V2は、V2=TPV-V1になるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程c)を、0.5時間~12時間の期間にわたって行うことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程d)をさらに含み、当該工程において、工程c)の終わりに得られた触媒を、250℃~600℃の温度で焼成することを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
工程d)を、0.5時間~24時間の期間にわたって行う、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程a)において、前記ヘキサノール溶液の前記容積V1は、前記担体の全細孔容積TPVの0.25~0.75倍である、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
工程a)において、n-ヘキサノールの溶液を用いる、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
工程b1)を行い、当該工程において、工程a)の終わりに得られた含浸済み担体、または工程b)の終わりに得られた触媒前駆体のいずれかに、少なくとも1個のカルボン酸基、または少なくとも1個のアルコール基、または少なくとも1個のエステル基、または少なくとも1個のアミド基、または少なくとも1個のアミン基を含んでいる少なくとも1種の有機化合物を含有している少なくとも1種の溶液を含浸させ、工程b)およびb1)を、任意の順序で、または同時に行う、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
工程a)の終わりに得られた含浸済み担体上に含浸させられる、活性ニッケル相の少なくとも1種の前駆体を含んでいる溶液の容積V2と、少なくとも1種の有機化合物を含んでいる溶液の容積V3とは、V2+V3=TPV-V1になるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程b)およびb1)を、同時に行う、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
工程a)の終わりに得られた含浸済み担体上に含浸させられる、活性ニッケル相の少なくとも1種の前駆体および少なくとも1種の有機化合物を含んでいる溶液の容積V2’は、V2’=TPV-V1になるものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程b1)において導入された前記有機化合物対工程b)においても導入されたニッケル元素のモル比は、0.01~5.0mol/molである、請求項8~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
工程b1)の有機化合物を、シュウ酸、マロン酸、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、クエン酸、酒石酸、ピルビン酸、レブリン酸、エチレングリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、グリセロール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ジエチレングリコール、グルコース、γ-バレロラクトン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルメタンアミド、2-ピロリドン、γ-ラクタム、ラクタミド、尿素、アラニン、アルギニン、リジン、プロリン、セリン、EDTAから選ぶ、請求項8~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
工程a1)を行い、当該工程において、工程a)の終わりに得られた含浸済み担体を、0.5時間~40時間にわたって静置熟成させる、請求項1~13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
触媒中のニッケル粒子のサイズは、酸化物の形態で測定されて、13nm未満である、請求項8~14のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケルをベースとし、特に不飽和炭化水素の水素化、より詳細にはポリ不飽和化合物の選択的水素化または芳香族化合物の水素化を目的とした担持型金属触媒を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モノ不飽和有機化合物、例えば、エチレンおよびプロピレン等は、ポリマー、プラスチックおよび他の付加価値のある化学製品の製造の根幹をなすものである。これらの化合物は、天然ガス、ナフサ、または水蒸気分解または接触分解の方法によって処理されたガスオイルから得られる。これらの方法は、高温で行われ、所望のモノ不飽和化合物に加えて、ポリ不飽和有機化合物、例えば、アセチレン、プロパジエンおよびメチルアセチレン(またはプロピン)、1,2-ブタジエンおよび1,3-ブタジエン、ビニルアセチレンおよびエチルアセチレン、および他のポリ不飽和化合物であって、その沸点がC5+ガソリンフラクションに相当するもの(5個以上の炭素原子を有する炭化水素化合物を含有しているガソリン)、特に、スチレンまたはインデンの化合物を生じさせる。これらのポリ不飽和化合物は反応性が高く、ポリマー化ユニットにおいて副反応を引き起こす。これらのフラクションの経済的な使用をなす前に、それらを除去することがこのように必要である。選択的水素化は、これらの炭化水素供給原料から望ましくないポリ不飽和化合物を特異的に除去するために開発された主な処理である。これにより、ポリ不飽和化合物を、その完全な飽和を避けて、対応するアルカンまたはナフテンの形成を回避しながら、対応するアルケンまたは芳香族の化合物への転化が可能になる。
【0003】
選択的水素化触媒は、一般に、周期律表の第VIII族からの金属、好ましくはパラジウムまたはニッケルをベースとする。金属は、金属粒子の形態で担体上に堆積して提供される。金属含有率、金属粒子のサイズおよび担体中の活性相の分布は、触媒の活性および選択性に影響を与える基準の一つである。
【0004】
担体中の金属粒子の巨視的分布は、重要な基準を、主に、急速で連続的な反応、例えば、選択的水素化のコンテキストにおいて構成する。一般的に望ましいことは、これらの元素が、担体の周囲のクラスト中に位置していることで、活性の欠陥や選択性の喪失をもたらす場合がある粒内物質移動の問題を回避することである。このような触媒は、「エッグシェル」触媒とも呼ばれている。
【0005】
このような触媒は、パラジウムをベースとする選択的水素化触媒のケースにおいて広く知られている。実際に、低いパラジウム含有率(一般に、触媒に相対してパラジウム1重量%(1wt%)未満)および適切な調製方法により、担体粒体の周囲のパラジウムの薄いクラストが得られ得る(特許文献1および2)。
【0006】
パラジウムをニッケルで置き換えることがしばしば提案されるが、ニッケルという金属は、パラジウムよりも低活性であり、したがって、触媒中により多量に有している必要がある。それ故に、ニッケルベースの触媒の金属含有率は、一般に、触媒に相対してニッケルの重量で5重量%~50重量%である。これらの触媒において、ニッケルは、一般に、担体内に均一に分布している。活性および選択性に関してこれらの触媒を改良する1つの可能な方法は、ニッケルをクラスト上に、担体の周囲により集中的に堆積させることによって、担体内のニッケルの分布をコントロールすることである。このような触媒は、従来技術から知られている。
【0007】
特許文献3には、多孔質担体上にニッケルを有する「エッグシェル」触媒が記載されており、担体の細孔容積は、サイズが11.7nm未満である細孔について少なくとも0.2mL/gであり、サイズが11.7nm超である細孔について少なくとも0.1mL/gである。ニッケルの50%超がクラスト中に見出され、その厚さは、担体の半径の0.15倍に等しい。この触媒は、脂肪の水素化に用いられる。
【0008】
特許文献4には、ニッケルの90%超が700μm厚のクラスト中に見出される担持型ニッケル触媒が記載されている。触媒の調製は、ニッケル塩を溶解させるアンモニア溶液を用いて行われる。これらの触媒は、選択的水素化の用途に用いられる。
【0009】
特許文献5には、厚さが径の3%~15%であるクラスト上およびコアの両方上にニッケルを分布して有し、クラストとコアとの間のニッケルの濃度比は、3.0:1~1.3:1である担持型ニッケル触媒が記載されている。ニッケル活性相は、ニッケル塩のアンモニア溶液のスプレーコーティングによって担体上に堆積される。
【0010】
特許文献6には、非常に特殊な方法に従って得られたアルミナ担体上にニッケルベースの触媒を調製するための方法が記載されており、ニッケルは、担体の周囲のクラスト上と担体のコアの両方に分布しており、前記クラストの厚さは、触媒の径の2%~15%である。このような触媒を調製するための方法では、第1に、酸性溶液の存在中で水熱処理を受けた特定のアルミナ担体の使用、そして第2に、触媒前駆体に特定の有機添加剤を添加した後の水熱処理の工程の実施が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】仏国特許第2922784号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/217052号明細書
【特許文献3】米国特許第4519951号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開第101890351号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2012/0065442号明細書
【特許文献6】仏国特許第3099387号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の概要)
驚くべきことに、本出願人は、ヘキサノール溶液を多孔質アルミナ担体上に含浸させる特定の工程をその起源に関係なく行い、ヘキサノールの含浸と活性ニッケル相の前駆体の含浸との間に中間乾燥工程を行わないことにより、ニッケルの少なくとも一部は、担体の周囲のクラストにわたって分布し、ニッケルの他の部分は、触媒のコアに分布する触媒を得ることが可能になることを発見した。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、ヘキサノールの存在により、活性ニッケル相の担体のコアへのマイグレーションは、制限される。これは、多孔度部の一部のみがヘキサノールによって占有されるためである。さらに、ヘキサノールと水は混和性が低いため、ヘキサノール層は、ニッケルの担体のコアへの拡散に対するバリアを構成する。
【0013】
本発明は、それ故に、触媒を調製するための新規な方法に関し、ポリ不飽和化合物の選択的水素化反応または芳香族化合物の水素化反応の関連において活性および選択性の点で少なくとも同程度に良好な、さらにはより良好な性能品質を含んでいる触媒を得ることが可能となる一方で、従来技術において典型的に用いられる量より少ない有効量のニッケル相(すなわち、選択的水素化反応または芳香族化合物の水素化反応を行うことを可能にする、担体の周囲のクラスト中に最終的に位置するニッケルの量)を用い、これは、担体中の活性ニッケル相のより良好な分布に特に起因し、試薬によりアクセスしやすくなる。
【0014】
本発明の1つの主題は、ニッケルをベースとする活性相と、アルミナ担体とを含んでいる触媒を調製するための方法にあり、前記触媒は、触媒の全重量に相対して1重量%~50重量%のニッケル元素を含み、ニッケルは、担体の周囲のクラスト上と、担体のコアの両方に分布し、前記クラストの厚さは、触媒の径の2%~15%であり、触媒中のニッケル粒子のサイズは、酸化物の形態で測定されて、15nm未満であり、当該方法は、以下の工程を含んでいる:
a) 前記担体に、前記担体の全細孔容積TPV(total pore volume)の0.2~0.8倍の容積V1のヘキサノール溶液を含浸させて含浸済み担体を得る工程;
b) 工程a)の終わりに得られた含浸済み担体に、ニッケル活性相の少なくとも1種の前駆体を含んでいる溶液を含浸させて、触媒前駆体を得る工程;
c) 工程b)の終わりに得られた触媒前駆体を250℃未満の温度で乾燥させる工程。
【0015】
1つまたは複数の実施形態によると、工程b)において、工程a)の終わりに得られた含浸済み担体上に含浸したニッケル活性相の少なくとも1種の前駆体を含んでいる溶液の容積V2は、V2=TPV-V1になるものである。
【0016】
1つまたは複数の実施形態によると、工程c)は、0.5時間~12時間の期間にわたって行われる。
【0017】
1つまたは複数の実施形態によると、前記方法は、工程d)をさらに含み、当該工程において、工程c)の終わりに得られた触媒を、250℃~600℃の温度で焼成する。
【0018】
1つまたは複数の実施形態によると、工程d)は、0.5時間~24時間にわたって行われる。
【0019】
1つまたは複数の実施形態によると、工程a)において、前記ヘキサノール溶液の前記容積V1は、前記担体の全細孔容積TPVの0.25~0.75倍である。
【0020】
1つまたは複数の実施形態によると、工程a)において、n-ヘキサノールの溶液が用いられる。
【0021】
1つまたは複数の実施形態によると、前記方法は、工程b1)をさらに含み、当該工程において、工程a)の終わりに得られた含浸済み担体、または工程b)の終わりに得られた触媒前駆体のいずれかに、少なくとも1個のカルボン酸基、または少なくとも1個のアルコール基、または少なくとも1個のエステル基、または少なくとも1個のアミド基、または少なくとも1個のアミン基を含んでいる少なくとも1種の有機化合物を含有している少なくとも1種の溶液を含浸させ、工程b)およびb1)は、任意の順序で、または同時に行われる。
【0022】
1つまたは複数の実施形態によると、工程a)の終わりに得られた含浸済み担体上に含浸させられる、活性ニッケル相の少なくとも1種の前駆体を含んでいる溶液の容積V2と、少なくとも1種の有機化合物を含んでいる溶液の容積V3は、V2+V3=TPV-V1になるものである。
【0023】
1つまたは複数の実施形態によると、工程b)およびb1)は、同時に行われる。
【0024】
1つまたは複数の実施形態によると、工程a)の終わりに得られた含浸済み担体上に含浸させられる、活性ニッケル相の少なくとも1種の前駆体および少なくとも1種の有機化合物を含んでいる溶液の容積V2’は、V2’=TPV-V1になるものである。
【0025】
1つまたは複数の実施形態によると、工程b1)において導入された前記有機化合物対工程b)においても導入されたニッケル元素のモル比は、0.01~5.0mol/molである。
【0026】
1つまたは複数の実施形態によると、工程b1)の有機化合物は、シュウ酸、マロン酸、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、クエン酸、酒石酸、ピルビン酸、レブリン酸、エチレングリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、グリセロール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ジエチレングリコール、グルコース、γ-バレロラクトン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルメタンアミド、2-ピロリドン、γ-ラクタム、ラクタミド、尿素、アラニン、アルギニン、リジン、プロリン、セリン、EDTAから選ばれる。
【0027】
1つまたは複数の実施形態によると、工程a1)が行われ、当該工程において、工程a)の終わりに得られた含浸済み担体は、0.5時間~40時間にわたって静置熟成される。
【0028】
1つまたは複数の実施形態によると、触媒中のニッケル粒子のサイズは、酸化物の形態で測定されて、13nm未満である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(図面の説明)
図1は、触媒中のニッケルの分布を示す図である。X軸は、触媒の厚さ(μm)に対応し、触媒のエッジから測定される。Y軸は、ニッケル密度(Niのグラム/mm)に対応する。ニッケルは、厚さep1の担体の周囲のクラスト上と、担体のコアの両方に分布している。クラスト上のニッケル密度dcrustは、担体のコアにおけるニッケル密度dcoreより高い。触媒のコアとクラストの間の遷移間隔は、ep2-ep1で示される厚さを有する。
【0030】
(発明の詳細な説明)
(1.定義)
以下の本文において、化学元素の族は、CAS分類に従って与えられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics、出版元CRC Press、編集長D. R. Lide、第81版、2000-2001)。例えば、CAS分類による第VIII族は、新IUPAC分類による8、9および10列の金属に対応する。
【0031】
本説明において、IUPAC協定にしたがって、「ミクロ細孔」は、径が2nm未満、すなわち0.002μm未満である細孔を意味すると理解される;「メソ細孔」は、径が2nm以上、すなわち0.002μm以上、かつ、50nm未満、すなわち0.05μm未満である細孔を意味すると理解され、「マクロ細孔」は、径が50nm以上、すなわち0.05μm以上である細孔を意味すると理解される。
【0032】
担体上の金属性の相の分布を分析するために、クラスト厚は、キャスタンマイクロプローブ(Castaing microprobe)(または電子マイクロプローブ微量分析)によって測定される。用いられるデバイスは、CAMECA XS100であり、4種の元素の同時分析を可能にする4個のモノクロメータ結晶を備えている。キャスタンマイクロプローブ分析技術は、高エネルギー電子ビームによる固体の元素の励起の後にその固体によって発されるX線の検出からなる。この特徴付けの目的のために、触媒の粒体は、エポキシ樹脂のブロックにコーティングされる。これらのブロックは、ビーズまたは押出物の径を通る断面に達するまで研磨され、次いで、金属エバポレータ中でカーボンを沈着させることによって金属化される。電子プローブは、5個のビーズまたは押出物の径に沿って走査され、固体の成分元素の平均分布プロファイルを得る。この方法は、当業者に周知であり、L. Sorbierらによる出版物「Measurement of palladium crust thickness on catalyst by EPMA」、Materials Science and Engineering 32 (2012)において定義されている。それにより、所与の元素、ここでは、ニッケルの粒体内の分布プロファイルを確立することが可能となる。さらに、Ni濃度は、各測定について、したがって、各分析工程について定義される。粒体内のNiの密度は、したがって、容積(mm)当たりのNiの濃度として定義される。
【0033】
全細孔容積は、規格ASTM D4284-92による水銀ポロシメトリによって、ぬれ角140°で、例えば商標Micromeritics(登録商標)からのAutopore III(登録商標)モデルデバイスを用いて測定される。
【0034】
BET比表面積は、規格ASTM D3663-03による窒素物理吸着によって測定される。方法は、Rouquerol F.、Rouquerol J.およびSingh K.による研究「Adsorption by Powders & Porous Solids: Principles, Methodology and Applications、Academic Press, 1999に記載されている。
【0035】
用語「ニッケル粒子のサイズ」は、酸化物の形態にあるニッケル結晶子の径を意味すると理解される。酸化物の形態にあるニッケル結晶子の径は、X線回折によって、角度2θ=43°のところに位置する回折ラインの幅から(すなわち、結晶学的方位[200]に沿って)シェラーの関係式を用いて決定される。多結晶性サンプルまたは粉体上のX線回折において用いられるこの方法は、回折ピークの半値全幅を粒子のサイズに連結するものであり、この方法は、次の参照文献において詳細に記載されている:Appl. Cryst. (1978), 11, 102-113, "Scherrer after sixty years: A survey and some new results in the determination of crystallite size", J. I. Langford and A. J. C. Wilson。
【0036】
ニッケルの含有率は、蛍光X線によって測定される。
【0037】
(2.触媒を調製するための方法)
前記調製方法の工程は、以下に詳細に記載される。
【0038】
(工程a))
本方法の工程a)によると、アルミナ担体は、含浸させられるべき前記担体の全細孔容積(ここではTPVともいう)の0.2~0.8倍、好ましくは0.25~0.75倍の容積V1のヘキサノール溶液を含浸させられる。
【0039】
ヘキサノールは、アルコール基を含んでいる実験化学式C14Oに対応する有機化合物を意味すると理解される。ヘキサノールは、そのため、以下の有機化合物のファミリーを意味すると理解される:ヘキサン-1-オール(またはn-ヘキサノール)、ヘキサン-2-オール、およびそれらの異性体。好ましくは、工程a)は、ヘキサン-1-オールの存在中で行われる。
【0040】
(工程a1)(任意選択))
工程a)の後に、含浸済み担体は、湿潤状態で0.5時間~40時間、好ましくは1時間~30時間にわたって熟成させられ得る。熟成工程a1)が好ましく行われる際の温度は、60℃以下、より優先的には周囲温度である。この工程により、ヘキサノール溶液の担体のコアへのマイグレーションが可能になる。それが行われる場合、熟成工程a1)により、ヘキサノール溶液が担体のコアへのマイグレーションを強化し、活性相の前駆体の含浸の工程の間にニッケルによってアクセス可能な担体の周囲にある「フリーな細孔の環」を解放することが可能となる。
【0041】
(工程b))
本方法の工程b)の間に、工程a)の終わりに得られた含浸済み多孔質アルミナ担体(または工程a1)の終わりに得られた熟成済みの含浸済み多孔質アルミナ担体)は、ニッケル活性相の少なくとも1種の前駆体を含んでいる溶液を含浸させられ、触媒前駆体を得る。含浸工程は、当業者に周知である方法に従う乾式含浸または過剰含浸によって行われ得る。
【0042】
含浸させられるニッケル活性相の少なくとも1種の前駆体を含んでいる前記溶液のpHは、酸または塩基の任意選択の添加によって改変され得る。
【0043】
好ましくは、前記ニッケル前駆体は、水溶液中に、例えば硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、塩化物またはシュウ酸塩の形態、ポリ酸または酸アルコールおよびその塩によって形成される錯体の形態、アセチルアセトナートにより形成される錯体の形態または水溶液に可溶な任意の他の無機誘導体の形態で導入され、前記担体と接触させられる。好ましくは、使用が有利になされるのは、ニッケル前駆体として、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケルまたはヒドロキシ炭酸ニッケルである。大いに好ましくは、ニッケル前駆体は、硝酸ニッケルである。
【0044】
溶液中のニッケルの濃度は、依然として利用可能な担体の細孔容積に応じて調節されて、担持型触媒について、触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で1重量%~50重量%、より優先的には2重量%~40重量%、さらにより優先的には3重量%~35重量%、さらにより優先的には5重量%~25重量%のニッケル含有率を得るようにする。
【0045】
(工程b1)(任意選択))
工程b1)が行われる場合、工程a)の終わりに得られた含浸済み多孔質アルミナ担体(または工程a1)の終わりに得られた熟成済みの含浸済み多孔質アルミナ担体)または工程b)の終わりに得られた触媒前駆体は、少なくとも1個のカルボン酸基、または少なくとも1個のアルコール基、または少なくとも1個のエステル基、または少なくとも1個のアミド基、または少なくとも1個のアミン基を含んでいる少なくとも1種の有機化合物を含有している溶液を含浸させられ、前記工程b)およびb1)は、任意の順序で、または同時に行われる。
【0046】
含浸工程は、当業者に周知である方法に従う乾式含浸または過剰含浸によって行われ得る。これは、有機化合物(後述)の存在中で調製された触媒が、このタイプの有機化合物が存在しない中で調製された触媒よりも活性であることがさらに留意されるためである。この効果は、ニッケル粒子のサイズの減少に関連している。
【0047】
少なくとも1個のカルボン酸基を含んでいる少なくとも1種の有機化合物を含有している前記溶液は、好ましくは水性である。前記有機化合物は、予め、少なくとも部分的に前記溶液に所望の濃度で溶解させられる。前記溶液のpHは、酸または塩基の任意選択の添加によって改変され得る。
【0048】
有利には、工程b1)において導入された前記有機化合物対工程b)においても導入されたニッケル元素のモル比は、0.01~5.0mol/mol、好ましくは0.05~2.0mol/mol、より優先的には0.1~1.5mol/mol、さらにより優先的には0.3~1.2mol/molである。
【0049】
少なくとも1個のカルボン酸基を含んでいる前記有機化合物は、飽和または不飽和の脂肪族有機化合物もしくは芳香族有機化合物であってよい。好ましくは、飽和または不飽和の脂肪族有機化合物は、1~9個の炭素原子、好ましくは2~7個の炭素原子を含む。好ましくは、芳香族有機化合物は、7~10個の炭素原子、好ましくは7~9個の炭素原子を含む。
【0050】
少なくとも1個のカルボン酸基を含んでいる前記飽和または不飽和の脂肪族有機化合物もしくは前記芳香族有機化合物は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸またはテトラカルボン酸から選ばれてよい。
【0051】
有利には、少なくとも1個のカルボン酸基を含んでいる有機化合物は、エタン二酸(シュウ酸)、プロパン二酸(マロン酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヒドロキシ酢酸(グリコール酸)、2-ヒドロキシプロパン酸(乳酸)、2-ヒドロキシプロパン二酸(タルトロン酸)、2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸(クエン酸)、2,3-ジヒドロキシブタン二酸(酒石酸)、2-オキソプロパン酸(ピルビン酸)または4-オキソペンタン酸(レブリン酸)から選ばれる。
【0052】
(工程b)およびb1)の実施)
ニッケル触媒を調製するための方法は、工程b1)が行われるならば、いくつかの実施形態を含んでよい。それらは、有機化合物およびニッケル前駆体の導入の順序において特に異なっており、有機化合物は、担体と、ニッケル前駆体が工程a)(またはa1))の終わりに得られた含浸済み担体と接触させられた後か、またはニッケル前駆体が工程a)(またはa1))の終わりに得られた含浸済み担体と接触させられる前か、またはニッケルが工程a)(またはa1))の終わりに得られた含浸済み担体と接触させられるのと同時かのいずれかに接触させられることが可能である。
【0053】
第1の実施形態は、前記工程b1)の前に前記工程b)を行うことからなる(後含浸)。
【0054】
第2の実施形態は、前記工程b)の前に前記工程b1)を行うことからなる(前含浸)。
【0055】
含浸させられた担体にニッケル前駆体を含浸させる、および、含浸させ、任意選択に熟成させた担体に少なくとも1個のカルボン酸基を含んでいる少なくとも1種の有機化合物を含有している少なくとも1種の溶液を含浸させる各工程b)およびb1)は、少なくとも1回行われ、有利には、数回、場合によっては、ニッケル前駆体および/または有機化合物の存在中で行われてよく、これ(これら)は、各工程b)および/またはb1)のそれぞれにおいて同一または異なり、工程b)およびb1)の実施の全ての可能な組み合わせが、本発明の範囲内に含まれる。
【0056】
好ましくは、工程a)の終わりに得られた含浸済みの、任意選択に熟成済みの担体上に含浸させられる、活性ニッケル相の少なくとも1種の前駆体を含んでいる溶液の容積V2と、少なくとも1種の有機化合物を含んでいる溶液の容積V3は、V2+V3=TPV-V1になるものである。
【0057】
第3の実施形態は、前記工程b)および前記工程b1)を同時に行うことからなる(共含浸)。この実施形態は、有利には、1回または複数回の工程b)の実施を含んでよく、場合によっては、各工程b)において、同一または異なるニッケル前駆体を用いる。特に、1回または複数回の工程b)は、前記共含浸工程に先行し、および/または有利には、これに後続し、場合によっては、各工程において同一または異なるニッケル前駆体を用いる。この実施形態は、いくつかの共含浸工程を含んでもよい:工程b)およびb1)は、同時に数回、場合によっては、各共含浸工程において同一または異なるニッケル前駆体および/または有機化合物の存在中で行われる。
【0058】
好ましくは、工程b)およびb1)は、同時に行われる。好ましくは、工程a)(またはa1))の終わりに得られた担体上に含浸させられた、活性ニッケル相の少なくとも1種の前駆体と、少なくとも1種の有機化合物とを含んでいる溶液の容積V2’は、V2’=TPV-V1になるものである。
【0059】
(工程c))
乾燥工程c)は、有利には250℃未満、好ましくは15℃~180℃、より優先的には30℃~160℃、さらにより優先的には50℃~150℃、さらにより優先的には70℃~140℃の温度で、典型的には0.5時間~12時間の期間にわたって、さらにより好ましくは0.5時間~5時間の期間にわたって行われる。より長い期間が規定外とはされないが、必ずしもなんらかの改善を提供するわけではない。
【0060】
乾燥工程は、当業者に知られている任意の技術によって行われ得る。それは、有利には、不活性雰囲気下または酸素含有雰囲気下または不活性ガスと酸素の混合雰囲気下に行われる。それは、有利には、大気圧でまたは減圧で実行される。好ましくは、この工程は、大気圧で、空気または窒素の存在中で行われる。
【0061】
工程c)の終わりに、触媒中のヘキサノール溶液の全体的または部分的な存在または不存在は、ポリ不飽和化合物の選択的水素化または芳香族化合物の水素化のコンテキストにおいて、触媒の活性および/または選択性に影響を及ぼさない。
【0062】
(工程d)(任意選択))
焼成工程d)は、250℃~600℃、好ましくは350℃~550℃の温度で、典型的には0.5時間~24時間の期間の期間にわたって、好ましくは0.5時間~12時間の期間の期間にわたって、さらにより好ましくは0.5時間~10時間の期間にわたって、好ましくは不活性雰囲気下または酸素含有雰囲気下で行われ得る。より長い期間が規定外とはされないが、必ずしも何等かの改善を提供するわけではない。
【0063】
工程d)の終わりに、触媒中のヘキサノール溶液の全体的なまたは部分的な存在または不存在は、ポリ不飽和化合物の選択的水素化または芳香族化合物の水素化のコンテキストにおいて、触媒の活性および/または選択性に影響を及ぼさない。
【0064】
(工程e)(任意選択))
触媒反応器における触媒の使用および水素化方法の実施の前に、有利には、工程c)またはd)の後に、少なくとも1回の還元処理工程e)が還元ガスの存在中で行われ、ニッケルを少なくとも部分的に金属性の形態で含んでいる触媒を得る。
【0065】
この処理により、前記触媒を活性化し、金属粒子、特に、0価の状態にあるニッケルの金属粒子を形成することが可能となる。前記還元処理は、現場内(in situ)または現場外(ex situ)、すなわち水素化反応器への触媒の充填の後またはその前に行われてよい。
【0066】
還元ガスは、好ましくは、水素である。水素は、高純度でまたは混合物(例えば、水素/窒素、または水素/アルゴンまたは水素/メタンの混合物)として用いられてよい。水素が混合物として用いられる場合、任意の割合が想定されてよい。
【0067】
前記還元処理は、120℃~500℃、好ましくは150℃~450℃の温度で行われる。触媒が一切のパッシベーションを受けないか、または還元処理の後にパッシベーションを受ける場合、還元処理が行われる際の温度は、180℃~500℃、好ましくは200℃~450℃、さらにより優先的には350℃~450℃である。触媒が先にパッシベーションを受けた場合、還元処理が一般に行われる際の温度は、120℃~350℃、好ましくは150℃~350℃である。
【0068】
還元処理の継続期間は、一般に2時間~40時間、好ましくは3時間~30時間である。所望の還元温度までの昇温は、一般に遅く、例えば0.1℃/分~10℃/分、好ましくは0.3℃/分~7℃/分に設定される。
【0069】
水素流量は、L/時間/触媒グラムで表されて、0.01~100L/時間/触媒グラム、好ましくは0.05~10L/時間/触媒グラム、さらにより好ましくは0.1~5L/時間/触媒グラムである。
【0070】
(3.触媒)
本発明による調製方法により、ニッケルをベースとする活性相と、アルミナ担体とを含んでいる触媒を得ることが可能になり、前記触媒は、触媒の全重量に相対して1重量%~50重量%のニッケル元素を含み、ニッケルは、担体の周囲のクラスト上と、担体のコアの両方に分布し、前記クラストの厚さ(ep1とも呼ばれる)は、触媒の径の2%~15%であり、ニッケル粒子のサイズは、酸化物の形態で測定されて、触媒中、15nm未満である。
【0071】
好ましくは、ニッケルは、担体の周囲のクラスト上と、担体のコア中との両方に分布し、前記クラストの厚さ(ep1とも呼ばれる)は、触媒の径の2%~15%、好ましくは触媒の径の2.5%~12%、さらにより好ましくは触媒の径の3%~10%、さらにより好ましくは触媒の径の3%~7.5%である。
【0072】
好ましくは、クラストとコアとの間のニッケル密度比(ここではdcrust/dcoreとも呼ばれる)は、厳密に3超、好ましくは3.5超、好ましくは3.8~15である。
【0073】
好ましくは、前記クラストは、触媒中に含有されるニッケル元素の全重量に相対して25重量%超、好ましくは40重量%超、より優先的には45重量%~90重量%、さらにより優先的には60重量%~90重量%のニッケル元素を含む。
【0074】
有利には、触媒のコアとクラストとの間の遷移間隔(ここではコア/クラスト遷移間隔、または図1の表記に従ってep2-ep1とも呼ばれる)は、触媒のエッジ部から触媒の中心部までの触媒の厚さにわたって測定されるニッケル密度の変化に関連し、これは、非常に急激である。好ましくは、コア/クラスト遷移間隔は、触媒の径の0.05%~3%、好ましくは触媒の径の0.5%~2.5%である。
【0075】
前記触媒中のニッケル含有率は、触媒の全重量に相対して有利には1重量%~50重量%、より優先的には2重量%~40重量%、さらにより優先的には3重量%~35重量%、さらにより優先的には触媒の全重量に相対して5重量%~25重量%である。値「重量%」は、ニッケルの元素形態をベースとする。
【0076】
触媒は、「セミエッグシェル」触媒として記載され得、すなわち、ニッケルの濃度は、担体の周囲で担体のコアにおけるのより高く、担体のコアにおけるニッケル前記濃度は、ゼロではない。
【0077】
触媒の比表面積は、一般に10m/g~350m/g、好ましくは25m/g~300m/g、より好ましくは40m/g~250m/gである。
【0078】
触媒の全細孔容積は、一般に0.1mL/g~1mL/g、好ましくは0.2mL/g~0.8mL/g、特に好ましくは0.3mL/g~0.7mL/gである。
【0079】
ニッケル粒子のサイズは、酸化物の形態で測定されて、触媒中、有利には15nm未満、好ましくは13nm未満、好ましくは10nm未満である。本発明による方法の工程b1)が行われる場合、ニッケル粒子のサイズは、酸化物の形態で測定されて、触媒中、有利には7nm未満、好ましくは5nm未満、より優先的には4nm未満、さらにより優先的には3nm未満である。
【0080】
触媒の活性相は、第VIB族からの金属を含まない。特に、それは、モリブデンまたはタングステンを含まない。
【0081】
前記触媒(および触媒の調製に用いられる担体)は、粒体の形態にあり、有利には0.5mm~10mmの径を有している。粒体は、当業者に知られている任意の形態を有してよく、例えば、ビーズ(好ましくは、1mm~8mmの径を有する)、押出成形物、タブレットまたは中空円筒の形態がある。好ましくは、触媒(および触媒の調製に用いられる担体)は、押出成形物の形態にあり、0.5mm~10mm、好ましくは0.8mm~3.2mm、大いに好ましくは1.0mm~2.5mmの径を有し、0.5mm~20mmの長さを有する。押出成形物の「径」は、これらの押出成形物の断面において外接する円の直径を意味することを意図している。触媒は、有利には、円筒形、多葉形、三葉形または四葉形の押出成形物の形態で提示され得る。好ましくは、その形状は、三葉状または四葉状である。葉の形状は、従来技術の全ての既知方法に従って調節され得る。
【0082】
(4.担体)
アルミナの特徴は、このセクションにおいて言及され、本発明による調製方法の工程a)を行う前のアルミナの特徴に対応する。
【0083】
担体は、アルミナであり、すなわち、担体は、担体の重量に相対して最低95重量%、好ましくは最低98重量%、特に好ましくは最低99重量%のアルミナを含む。アルミナは、一般に、δ-、γ-またはθ-アルミナタイプの結晶学的構造を、単独でまたは混合物として示す。
【0084】
アルミナ担体は、不純物、例えば、CAS分類による第IIA族、第IIIB族、第IVB族、第IIB族、第IIIA族および第IVA族からの金属の酸化物、例えばシリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび酸化カルシウム、あるいはほかに、アルカリ金属、例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウム、および/またはアルカリ土類金属、例えばマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウム、あるいはほかに硫黄を含む場合がある。
【0085】
アルミナのBET比表面積は、一般に10m/g~400m/g、好ましくは30m/g~350m/g、より好ましくは50m/g~300m/gである。
【0086】
アルミナの全細孔容積は、一般に0.1mL/g~1.2mL/g、好ましくは0.3mL/g~0.9mL/g、大いに好ましくは0.5mL/g~0.9mL/gである。
【0087】
(5.選択的水素化方法)
本発明の別の主題は、終点が300℃以下である炭化水素供給原料中に含有される、分子当たり少なくとも2個の炭素原子を含有しているポリ不飽和化合物、例えば、ジオレフィン類および/またはアセチレン類および/またはスチレン類としても知られているアルケニル芳香族類の選択的水素化のための方法にあり、前記方法は、本明細書で上述したような調製方法によって得られた触媒の存在中で行われ、その際の温度は、0℃~300℃であり、その際の圧力は、0.1MPa~10MPaであり、当該方法が液相で行われる場合にはその際の水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は0.1~10であり、その際の毎時空間速度は、0.1~200h-1であるか、または当該方法が気相で行われる場合には水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、0.5~1000であり、その際の毎時空間速度は、100h-1~40000h-1である。
【0088】
モノ不飽和有機化合物、例えばエチレンおよびプロピレン等は、ポリマー、プラスチックおよび他の付加価値のある化学製品の製造の根幹をなすものである。これらの化合物は、天然ガス、ナフサまたは水蒸気分解または触媒分解の方法で処理されたガスオイルから得られる。これらの方法は、高温で行われ、生じさせるのは、所望のモノ不飽和化合物に加えて、ポリ不飽和有機化合物、例えば、アセチレン、プロパジエンおよびメチルアセチレン(またはプロピン)、1,2-ブタジエンおよび1,3-ブタジエン、ビニルアセチレンおよびエチルアセチレン、および沸点がC5+フラクション(少なくとも5個の炭素原子を有する炭化水素化合物)に相当する他のポリ不飽和化合物、特にジオレフィン系またはスチレン系またはインデン系の化合物である。これらのポリ不飽和化合物は、反応性が高く、ポリマー化ユニットにおいて副反応を引き起こす。これらのフラクションの経済的な使用をなす前に、それらを除去することがそれ故に必要である。
【0089】
選択的水素化は、これらの炭化水素供給原料から望ましくないポリ不飽和化合物を特異的に除去するために開発された主要な処理である。それにより、ポリ不飽和化合物の対応するアルケン類または芳香族類への転化が、その完全な飽和、それ故に、対応するアルカン類やナフテン類の形成を避けながら可能となる。供給原料として用いられる水蒸気分解ガソリンの場合、選択的水素化によって、芳香環の水素化を避けながら、アルケニル芳香族類を選択的に水素化して芳香族類を与えることも可能になる。
【0090】
選択的水素化方法において処理される炭化水素供給原料は、300℃以下の最終沸点を有し、分子当たり少なくとも2個の炭素原子を含有し、少なくとも1種のポリ不飽和化合物を含む。用語「ポリ不飽和化合物」は、少なくとも1個のアセチレン基および/または少なくとも1個のジエン基および/または少なくとも1個のアルケニル芳香族基を含んでいる化合物を意味することが意図される。
【0091】
より詳細には、供給原料は、水蒸気分解C2フラクション、水蒸気分解C2-C3フラクション、水蒸気分解C3フラクション、水蒸気分解C4フラクション、水蒸気分解C5フラクションおよび水蒸気分解ガソリン(熱分解ガソリンまたはC5+フラクションとしても知られる)からなる群から選ばれる。
【0092】
本発明による選択的水素化方法の実施に有利に用いられる水蒸気分解C2フラクションは、例えば、以下の組成を示す:エチレン40重量%~95重量%およびアセチレン0.1重量%~5重量%程度;残部は、本質的にエタンおよびメタンである。一部の水蒸気分解C2フラクションには、0.1重量%~1重量%のC3化合物が存在することもある。
【0093】
本発明による選択的水素化方法の実施に有利に用いられる水蒸気分解C3フラクションは、例えば、以下の平均組成を示す:プロピレン90重量%程度およびプロパジエンおよびメチルアセチレン1重量%~8重量%程度;残部は、本質的にプロパンである。一部のC3フラクションには、0.1重量%~2重量%のC2化合物およびC4化合物が存在することもある。
【0094】
C2-C3フラクションも、本発明による選択的水素化法の実施のために有利に用いられ得る。それは、例えば、以下の組成を示す:アセチレン0.1重量%~5重量%程度、プロパジエンおよびメチルアセチレン0.1重量%~3重量%程度、エチレン30重量%程度およびプロピレン5重量%程度;残部は、本質的にメタン、エタンおよびプロパンである。この供給原料は、0.1重量%~2重量%のC4化合物を含有する場合もある。
【0095】
本発明による選択的水素化法の実施のために有利に用いられる水蒸気分解C4フラクションは、例えば、以下の平均重量組成を示す:ブタン1重量%、ブテン46.5重量%、ブタジエン51重量%、ビニルアセチレン1.3重量%およびブチン0.2重量%。いくつかのC4フラクションにおいて、0.1重量%~2重量%のC3化合物およびC5化合物が存在する場合もある。
【0096】
本発明による選択的水素化法の実施のために有利に用いられる水蒸気分解C5フラクションは、例えば、以下の組成を示す:ペンタン21重量%、ペンテン45重量%およびペンタジエン34重量%。
【0097】
本発明による選択的水素化法の実施のために有利に用いられる水蒸気分解ガソリンまたは熱分解ガソリンは、その沸点が一般的に0℃~300℃、好ましくは10℃~250℃である炭化水素フラクションに対応する。前記水蒸気分解ガソリン中に存在する水素化されるべきポリ不飽和炭化水素は、特に、ジオレフィン化合物(ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン、その他)、スチレン化合物(スチレン、α-メチルスチレン、その他)およびインデン化合物(インデンその他)である。水蒸気分解ガソリンは、一般的に、C5-C12フラクションを、痕跡量のC3、C4、C13、C14およびC15(例えば、これらのフラクショのそれぞれについて0.1重量%~3重量%)と共に含む。例えば、熱分解ガソリンから形成される供給原料は、一般的に、以下のような組成を有する:飽和化合物(パラフィンおよびナフテン)5重量%~30重量%、芳香族化合物40重量%~80重量%、モノオレフィン5重量%~20重量%、ジオレフィン5重量%~40重量%およびアルケニル芳香族化合物1重量%~20重量%であり、組み合わされた化合物は100%を形成する。それは、硫黄0~1000重量ppm、好ましくは硫黄0~500重量ppmも含有する。
【0098】
好ましくは、本発明による選択的水素化法により処理されるポリ不飽和炭化水素供給原料は、水蒸気分解C2フラクションまたは水蒸気分解C2-C3フラクションまたは水蒸気分解ガソリンである。
【0099】
本発明による選択的水素化法は、モノ不飽和炭化水素を水素化することなく、水素化されるべき前記供給原料中に存在する前記ポリ不飽和炭化水素を取り除くことに標的が定められる。例えば、前記供給原料がC2フラクションである場合、選択的水素化法は、アセチレンを選択的に水素化することに標的が定められる。前記供給原料がC3フラクションである場合、選択的水素化法は、プロパジエンおよびメチルアセチレンを選択的に水素化することに標的が定められる。C4フラクションの場合、目標は、ブタジエン、ビニルアセチレン(vinylacetylene:VAC)およびブチンを取り除くことにある;C5フラクションの場合、目標は、ペンタジエンを取り除くことにある。前記供給原料が水蒸気分解ガソリンである場合、選択的水素化法は、処理されるべき前記供給原料中に存在する前記ポリ不飽和炭化水素を選択的に水素化して、ジオレフィン化合物が部分的に水素化されてモノオレフィンを与えるようにし、かつ、スチレンおよびインデンの化合物が部分的に水素化されて対応する芳香族化合物を与えるようにする一方で芳香環の水素化を回避することに標的が定められる。
【0100】
選択的水素化法の技術的実施は、例えば、ポリ不飽和炭化水素供給原料および水素の少なくとも1基の固定床反応器への上向流または下向流としての注入によって行われる。前記反応器は、等温タイプまたは断熱タイプのものであり得る。断熱反応器が好適である。ポリ不飽和炭化水素供給原料は、有利には、選択的水素化反応が行われる前記反応器に由来する流出物の、反応器の入口と出口との間に置かれた反応器の種々のポイントにおける1回または複数回の再注入によって希釈されて、反応器中の温度勾配を制限することができる。本発明による選択的水素化法の技術的実施は、有利には、反応蒸留塔中または反応器-交換器中またはスラリータイプの反応器中の少なくとも前記担持型触媒の埋め込みによっても行われ得る。水素の流れは、水素化されるべき供給原料と同時にかつ/または反応器の1個または複数個の異なるポイントにおいて導入され得る。
【0101】
水蒸気分解C2、C2-C3、C3、C4、C5およびC5+フラクションの選択的水素化は、気相または液相で行われ得、好ましくは、C3、C4、C5およびC5+フラクションについては液相で、C2およびC2-C3フラクションについては気相で行われる。液相反応により、エネルギーコストを低下させることおよび触媒のサイクル期間を増大させることが可能となる。
【0102】
一般に、分子当たり少なくとも2個の炭素原子を含有しているポリ不飽和化合物を含有しており、かつ、300℃以下の最終沸点を有している炭化水素供給原料の選択的水素化が行われる際の温度は、0℃~300℃であり、その際の圧力は、0.1MPa~10MPaであり、液相で行われる方法についてその際の水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、0.1~10であり、その際の毎時空間速度(供給原料の容積流量対触媒の容積の比として定義される)は、0.1h-1~200h-1であるか、または、気相で行われる方法についてその際の水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、0.5~1000であり、その際の毎時空間速度は、100~40000h-1である。
【0103】
本発明による1つの実施形態において、選択的水素化法が行われるに当たり供給原料がポリ不飽和化合物を含んでいる水蒸気分解ガソリンである場合、(水素)/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、一般的に0.5~10、好ましくは0.7~5.0、よりなおさら好ましくは1.0~2.0であり、温度は、0℃~200℃、好ましくは20℃~200℃、よりなおさら好ましくは30℃~180℃であり、毎時空間速度(HSV)は、一般的に0.5h-1~100h-1、好ましくは1~50h-1であり、圧力は、一般的に0.3MPa~8.0MPa、好ましくは1.0MPa~7.0MPa、よりなおさら好ましくは1.5MPa~4.0MPaである。
【0104】
より優先的には、選択的水素化法が行われるに当たり供給原料がポリ不飽和化合物を含んでいる水蒸気分解ガソリンであると、水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、0.7~5.0であり、温度は、20℃~200℃であり、毎時空間速度(HSV)は、一般的に1h-1~50h-1であり、圧力は、1.0MPa~7.0MPaである。
【0105】
よりなおさら優先的には、選択的水素化法が行われる際の供給原料がポリ不飽和化合物を含んでいる水蒸気分解ガソリンであると、水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、1.0~2.0であり、温度は、30℃~180℃であり、毎時空間速度(HSV)は、一般的に1h-1~50h-1であり、圧力は、1.5MPa~4.0MPaである。
【0106】
水素流量は、ポリ不飽和化合物の全てを理論的に水素化するように十分な量を確保しかつ反応器出口のところで過剰の水素を維持するように調節される。
【0107】
本発明による別の実施形態において、選択的水素化法が行われるに当たり供給原料がポリ不飽和化合物を含んでいる水蒸気分解C2フラクションおよび/または水蒸気分解C2-C3フラクションである場合、(水素)/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、一般的に0.5~1000、好ましくは0.7~800であり、温度は、0℃~300℃、好ましくは15℃~280℃であり、毎時空間速度(HSV)は、一般的に100h-1~40000h-1、好ましくは500h-1~30000h-1であり、圧力は、一般的に0.1MPa~6.0MPa、好ましくは0.2MPa~5.0MPaである。
【0108】
(6.芳香族化合物の水素化のための方法)
本発明の別の主題は、650℃以下、一般的に20℃~650℃、好ましくは20℃~450℃の最終沸点を有している炭化水素供給原料中に含有される少なくとも1種の芳香族またはポリ芳香族の化合物の水素化のための方法にある。少なくとも1種の芳香族またはポリ芳香族の化合物を含有している前記炭化水素供給原料は、以下の石油または石油化学のフラクションから選ばれ得る:接触改質からのリフォメート、ケロセン、軽質ガスオイル、重質ガスオイル、分解蒸留物、例えば、FCCリサイクルオイル、コーキングユニットガスオイルまたは水素化分解蒸留物。
【0109】
本発明による水素化法において処理される炭化水素供給原料中に含有される芳香族またはポリ芳香族の化合物の含有率は、一般的に0.1重量%~80重量%、好ましくは1重量%~50重量%、特に好ましくは2重量%~35重量%であり、百分率は、炭化水素供給原料の全重量をベースとする。前記炭化水素供給原料中に存在する芳香族化合物は、例えば、ベンゼンまたはアルキル芳香族化合物、例えば、トルエン、エチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレンまたはp-キシレン、あるいはまたいくつかの芳香環を有している芳香族化合物(ポリ芳香族化合物)、例えば、ナフタレンである。
【0110】
供給原料の硫黄または塩素の含有率は、一般的に、硫黄または塩素の重量で5000重量ppm未満、好ましくは100重量ppm未満、特に好ましくは10重量ppm未満である。
【0111】
芳香族またはポリ芳香族の化合物の水素化のための方法の技術的実施は、例えば、炭化水素供給原料および水素の少なくとも1基の固定床反応器への上向流または下向流としての注入によって行われる。前記反応器は、等温タイプまたは断熱タイプのものであり得る。断熱反応器が好適である。炭化水素供給原料は、有利には、芳香族化合物の水素化の反応が行われる前記反応器に由来する流出物の、反応器の入口と出口との間に置かれた反応器の種々のポイントのところの1回または複数回の再注入によって希釈され得、反応器中の温度勾配を制限する。本発明による芳香族化合物の水素化のための方法の技術的実施は、有利には、反応蒸留塔中または反応器-交換器中またはスラリータイプの反応器中の少なくとも前記担持型触媒の埋め込みによって行われてもよい。水素の流れは、水素化されるべき供給原料と同時に、かつ/または反応器の1個または複数個の異なるポイントのところで導入され得る。
【0112】
芳香族またはポリ芳香族の化合物の水素化は、気相または液相で、好ましくは液相で行われ得る。一般的に、芳香族またはポリ芳香族の化合物の水素化が行われる際の温度は、30℃~350℃、好ましくは50℃~325℃であり、その際の圧力は、0.1MPa~20MPa、好ましくは0.5MPa~10MPaであり、その際の水素/(水素化されるべき芳香族化合物)のモル比は、0.1~10であり、その際の毎時空間速度は、0.05h-1~50h-1、好ましくは0.1h-1~10h-1であり、水素化する炭化水素供給原料は、芳香族またはポリ芳香族の化合物を含有しており、650℃以下、一般的に20℃~650℃、好ましくは20℃~450℃の最終沸点を有している。
【0113】
水素流量は、芳香族化合物の全部を理論的に水素化するようにその十分な量を利用可能としかつ反応器出口のところで過剰な水素を維持するように調節される。
【0114】
芳香族またはポリ芳香族の化合物の転化率は、炭化水素供給原料中に含有される芳香族またはポリ芳香族の化合物の一般的に20mol%超、好ましくは40mol%超、より好ましくは80mol%超、特に好ましくは90mol%超である。転化率は、炭化水素供給原料中と生成物中との芳香族またはポリ芳香族の化合物の全モルの間の差を、炭化水素供給原料中の芳香族またはポリ芳香族の化合物の全モルで除算することによって計算される。
【0115】
本発明による方法の具体的な代わりの形態によると、炭化水素供給原料、例えば、接触改質ユニットに由来するリフォメートのベンゼンの水素化のための方法が行われる。前記炭化水素供給原料中のベンゼン含有率は、一般的に0.1重量%~40重量%、好ましくは0.5重量%~35重量%、特に好ましくは2重量%~30重量%であり、重量百分率は、炭化水素供給原料の全重量をベースとする。
【0116】
供給原料の硫黄または塩素の含有率は、それぞれに硫黄または塩素の重量で一般的に10重量ppm未満、好ましくは2重量ppm未満である。
【0117】
炭化水素供給原料中に含有されるベンゼンの水素化は、気相または液相で、好ましくは、液相で行われ得る。それが液相で行われる場合、溶媒が存在し得、例えば、シクロヘキサン、ヘプタンまたはオクタンである。一般的に、ベンゼンの水素化が行われる際の温度は、30℃~250℃、好ましくは50℃~200℃、より好ましくは80℃~180℃であり、その際の圧力は、0.1MPa~10MPa、好ましくは0.5MPa~4MPaであり、その際の水素/(ベンゼン)のモル比は、0.1~10であり、その際の毎時空間速度は、0.05h-1~50h-1、好ましくは0.5h-1~10h-1である。
【0118】
ベンゼンの転化率は、一般的に50mol%超、好ましくは80mol%超、より好ましくは90mol%超、特に好ましくは98mol%超である。
【0119】
本発明は、以下に、下記実施例を介して例証されることになるが、これらは、
決して制限するものではない。
【0120】
(実施例)
下記実施例において言及される全ての触媒について、担体は、アルミナAであり、比表面積80m2/g、全細孔容積(TPV)0.7mL/gおよびメソ細孔中位径12nmを有している。
【0121】
WTV(water take-up volume)は、取水量を意味する。
【0122】
(実施例1:添加剤を含むNi前駆体の水溶液の調製)
触媒B~Hの調製のために用いられる水溶液Sの調製を、硝酸ニッケル(NiNO、供給業者Strem Chemicals(登録商標))43.5gおよびマロン酸(CAS 141-82-2、供給業者Fluka(登録商標))7.69gを13mLの容積の蒸留水中に溶解させることによって行う。添加剤/Niのモル比を0.5に設定する。溶液Sを得る。そのNi濃度は、溶液の容積(リットル)当たりNi350gである。
【0123】
(実施例1a:添加剤を含まないNi前駆体の水溶液の調製)
触媒Aの調製のために用いられる水溶液S’の調製を、硝酸ニッケル(NiNO、供給業者Strem Chemicals(登録商標))43.5gを13mLの容積の蒸留水中に溶解させることによって行う。溶液S’を得る。そのNi濃度は、溶液の容積(リットル)当たりNi350gである。
【0124】
(実施例2:本発明に合致する触媒Aの調製[前含浸における10重量%のNi-ヘキサノール25%WTV])
アルミナAの10gにn-ヘキサノール2.4mLを滴下して含浸させる。含浸済み担体を、次に、30分にわたって60℃で静置熟成させる。次に、実施例1aにおいて調製された溶液S’の7.1mLを、含浸済み担体に滴下含浸させる。このようにして得られた触媒前駆体を、その後オーブン中、120℃で12時間にわたって乾燥させ、次いで1L/h/触媒gの乾燥空気の流れ下に、450℃で2時間にわたって焼成する。
【0125】
触媒の全重量に相対して10重量%のニッケル元素を含有している触媒Aを得る。
【0126】
こうして得られた触媒Aの特徴を下記の表1に与える。
【0127】
(実施例3:本発明に合致する触媒Bの調製[前含浸における10重量%のNi-ヘキサノール25%WTV+添加剤])
アルミナAの10gにn-ヘキサノール2.4mLを滴下して含浸させる。含浸済み担体を、次に、30分にわたって60℃で静置熟成させる。次に、実施例1において調製された溶液Sの7.1mLを、含浸済み担体に滴下含浸させる。このようにして得られた触媒前駆体を、その後オーブン中、12時間にわたって120℃で乾燥させ、次いで1L/h/触媒gの乾燥空気の流れ下に、450℃で2時間にわたって焼成する。
【0128】
触媒の全重量に相対して10重量%のニッケル元素を含有している触媒Bを得る。
【0129】
こうして得られた触媒Bの特徴を下記の表1に与える。
【0130】
(実施例4:本発明に合致する触媒Cの調製[前含浸における5重量%のNi-ヘキサノール25%WTV+添加剤])
アルミナAの10gにn-ヘキサノール2.4mLを滴下して含浸させる。含浸済み担体を、次に、30分にわたって60℃で静置熟成させる。次に、実施例1において調製された溶液Sの3.55mLを水により希釈し最高7.1mLになるようにし、これを、含浸済み担体に滴下含浸させる。このようにして得られた触媒前駆体を、その後オーブン中、120℃で12時間にわたって乾燥させ、次いで1L/h/触媒gの乾燥空気の流れ下に、450℃で2時間にわたって焼成する。
【0131】
触媒の全重量に相対して5重量%のニッケル元素を含有している触媒Cを得る。
【0132】
こうして得られた触媒Cの特徴を下記の表1に与える。
【0133】
(実施例5:本発明に合致する触媒Dの調製[前含浸における10重量%のNi-ヘキサノール75%WTV+添加剤])
アルミナAの10gにn-ヘキサノール7.2mLを滴下して含浸させる。含浸済み担体を、次に、30分にわたって60℃で静置熟成させる。次に、実施例1において調製された溶液Sの2.4mLを、含浸済み担体に滴下含浸させる。このようにして得られた触媒前駆体を、その後オーブン中、12時間にわたって120℃で乾燥させ、次いで1L/h/触媒gの乾燥空気の流れ下に、450℃で2時間にわたって焼成する。
【0134】
触媒の全重量に相対して10重量%のニッケル元素を含有している触媒Dを得る。
【0135】
こうして得られた触媒Dの特徴を下記の表1に与える。
【0136】
(実施例6:本発明に合致しない触媒Eの調製[従来の含浸Ni10%+添加剤])
実施例1において調製された溶液Sの乾式含浸を、それを滴下することによって、アルミナ10g上に行う。このようにして得られた触媒前駆体を、その後オーブン中、12時間にわたって120℃で乾燥させ、次いで1L/h/触媒gの乾燥空気の流れ下に、450℃で2時間にわたって焼成する。
【0137】
触媒の全重量に相対して10重量%のニッケル元素を含有している触媒Eを得る。
【0138】
こうして得られた触媒Eの特徴を下記の表1に与える。
【0139】
(実施例7:本発明に合致しない触媒Fの調製[後含浸における10重量%のNi-ヘキサノール25%WTV])
実施例1において調製された溶液Sの7.1mLの乾式含浸を、それをアルミナ10g上に滴下することによって行う。調製された触媒前駆体10gにn-ヘキサノール2.4mLを滴下して含浸させる。固体を、次いで、30分にわたり60℃で静置熟成させる。こうして得られた固体を、その後オーブン中、120℃で12時間にわたって乾燥させ、次いで1L/h/触媒gの乾燥空気の流れ下に、450℃で2時間にわたって焼成する。
【0140】
触媒の全重量に相対して10重量%のニッケル元素を含有している触媒Fを得る。
【0141】
こうして得られた触媒Fの特徴を下記の表1に与える。
【0142】
(実施例8:本発明に合致しない触媒Gの調製[前含浸における10重量%のNi-トルエン25%WTV])
アルミナAの10gにトルエン2.4mLを滴下して含浸させる。含浸済み担体を、次に、30分にわたって60℃で静置熟成させる。次に、実施例1において調製された溶液Sの7.1mLを、含浸済み担体上に滴下含浸させる。このようにして得られた触媒前駆体を、その後オーブン中、120℃で12時間にわたって乾燥させ、次いで1L/h/触媒gの乾燥空気の流れ下に、450℃で2時間にわたって焼成する。
【0143】
触媒の全重量に相対して10重量%のニッケル元素を含有している触媒Gを得る。
【0144】
こうして得られた触媒Gの特徴を下記の表1に与える。
【0145】
(実施例9:本発明に合致しない触媒Hの調製[前含浸における10重量%のNi-n-プロパノール25%WTV])
アルミナAの10gにn-プロパノール2.4mLを滴下して含浸させる。含浸済み担体を、次に、30分にわたって60℃で静置熟成させる。次に、実施例1において調製された溶液Sの7.1mLを、含浸済み担体上に滴下含浸させる。このようにして得られた触媒前駆体を、その後オーブン中、120℃で12時間にわたって乾燥させ、次いで1L/h/触媒gの乾燥空気の流れ下に、450℃で2時間にわたって焼成する。
【0146】
触媒の全重量に相対して10重量%のニッケル元素を含有している触媒Hを得る。
【0147】
こうして得られた触媒Hの特徴を下記の表1に与える。
【0148】
【表1】
【0149】
(実施例10:触媒テスト:スチレンおよびイソプレンを含有している混合物の選択的水素化における性能(AHYD1))
上記実施例に記載された触媒A~Hを、スチレンおよびイソプレンを含有している混合物の選択的水素化の反応に関してテストする。
【0150】
選択的に水素化されるべき供給原料の組成は、以下の通りである:スチレン(供給業者Sigma Aldrich(登録商標)、純度99%)8重量%、イソプレン(供給業者Sigma Aldrich(登録商標)、純度99%)8重量%およびn-ヘプタン(溶媒)(供給業者VWR(登録商標)、純度>99% Chromanorm HPLC)84重量%。この供給原料は、非常に低い含有率の硫黄化合物も含有する:10重量ppmの硫黄は、ペンタンチオールの形態で導入され(供給業者Fluka(登録商標)、純度>97%)、100重量ppmの硫黄は、チオフェンの形態で導入される(供給業者Merck(登録商標)、純度99%)。この組成は、反応混合物の当初組成に対応する。モデル分子のこの混合物は、熱分解ガソリンの典型である。
【0151】
選択的水素化反応を、500mLのステンレス鋼オートクレーブにおいて行う。このオートクレーブは、磁気駆動メカニカルスターラを備えており、100bar(10MPa)の最大圧力および5℃~200℃の温度下に操作することができる。
【0152】
オートクレーブへの導入の前に、3mLの量の触媒を、1L/h/触媒gの水素流れ下に、400℃で16時間にわたって現場外還元し(昇温勾配1℃/分)、次いで、それをオートクレーブに移し、空気を排除する。n-ヘプタン(供給業者VWR(登録商標)、純度>99% Chromanorm HPLC)214mLの添加の後に、オートクレーブを閉じて、パージし、次いで、35bar(3.5MPa)の水素下に加圧し、30℃に等しいテスト温度にする。時間t=0において、スチレン、イソプレン、n-ヘプタン、ペンタンチオールおよびチオフェンを含有している混合物およそ30gを、オートクレーブ中に導入する。このとき反応混合物は、上記の組成を有しており、撹拌を、1600rpmで開始する。オートクレーブ内の圧力を、反応器の上流に位置するストレージシリンダを用いて、35bar(3.5MPa)に一定に維持する。
【0153】
規則的な時間間隔で反応媒体からサンプルを取ることによって反応の進行をモニターする:スチレンは水素化されてエチルベンゼンを与えるが、芳香環の水素化はなく、イソプレンは水素化されて、メチルブテンを与える。反応が必要より長く延長されるならば、メチルブテンが今度は水素化されて、イソペンタンを与える。水素消費も、反応器の上流に置かれたストレージシリンダ中の圧力低減によって経時的にモニターする。触媒活性を時間(分)当たりかつNiの重量(グラム)当たりの消費されたHのモルで表す。
【0154】
触媒A~Hについて測定された触媒活性を、下記の表2に与える。それらは、触媒Eについて測定された触媒活性(AHYD1)に関係付けられる。
【0155】
(実施例11:触媒テスト:トルエンの水素化における性能(AHYD2))
上記実施例に記載された触媒A~Hを、トルエンの水素化の反応に関してもテストする。
【0156】
実施例9において記載されたものと同一のオートクレーブにおいて選択的水素化反応を行う。
【0157】
オートクレーブへの導入の前に、2mLの量の触媒を、1L/h/触媒gの水素流れ下に、400℃で16時間にわたって現場外還元し(昇温勾配1℃/分)、次いで、それをオートクレーブに移し、空気を排除する。n-ヘプタン(供給業者VWR(登録商標)、純度>99% Chromanorm HPLC)216mLの添加の後に、オートクレーブを閉じて、パージし、次いで、35bar(3.5MPa)の水素下に加圧し、80℃に等しいテスト温度にする。時間t=0において、トルエン(供給業者SDS(登録商標)、純度>99.8%)およそ26gをオートクレーブ中に導入して(反応混合物の当初の組成は、トルエン6重量%/n-ヘプタン94重量%である)、撹拌を、1600rpmで開始する。反応器の上流に位置するストレージシリンダを用いて、オートクレーブ内の圧力を35bar(3.5MPa)に一定に維持する。
【0158】
規則的な時間間隔で反応媒体からサンプルを取ることによって反応の進行をモニターする:トルエンは、完全に水素化されてメチルシクロヘキサンを与える。反応器の上流に置かれたストレージシリンダ中の圧力低下によって水素消費も経時的にモニターする。触媒活性を、時間(分)当たりかつNiの重量(グラム)当たりの消費されたHのモルで表す。
【0159】
触媒A~Hについて測定された触媒活性を、下記の表2に与える。それらは、触媒Eについて測定された触媒活性(AHYD2)に関係付けられる。
【0160】
【表2】
【0161】
これらの実施例は、本発明に合致する触媒A、B、CおよびDのAHYD1およびAHYD2の性能が、本発明に合致しない触媒E、F、GおよびHと比較して、向上していることを明確に示している。これは、触媒A、B、CおよびD上のクラスト中のニッケルの分布によって説明され、これは、それらに顕著に改善された活性を、特に急速水素化反応において与える。マロン酸が用いられていないために粒子がサイズにおいてより大きい(8nm)という事実に拘わらず、触媒Aは、依然として非常に良好に機能しているのは、ニッケルがクラスト中に十分に分布しており、したがって、非常にアクセスしやすいためである。触媒Eは、ヘキサノールの前含浸なしで行われる従来の含浸に起因してより低い活性を有している。触媒Fは、ヘキサノールによる後含浸を経るが、これにより、ニッケルのクラスト分布は可能とされない。触媒Gは、トルエンを前含浸させる工程により調製される。それ故に、トルエンは、ヘキサノールの場合と同様に、水とあまり混和しないが、分子内に-OH基がないため、アルミナ担体の-OH基と強い相互作用をそれが有することができず、これは、ニッケル含浸工程の間に硝酸ニッケル溶液中に含有される水を介したトルエンのマイグレーションを説明してよい。プロパノールの場合、-OH基によって、それが担体のコアまで行き、担体と相互作用することが可能になるようである。他方で、水およびn-プロパノールは、ヘキサノール/水の対とは異なり、非常に混和性が高いため、得られた最終触媒の物理化学的特徴と触媒テストの結果の両方を考慮すると、硝酸ニッケル水溶液のコアへの拡散が起こるようである。それ故に、触媒F、GおよびHについて、ニッケルは、触媒粒体全体に均質に分布している。触媒FおよびGは、したがって、AHYD1とAHYD2の点で、触媒Aよりもはるかに活性が低い。触媒Gは、硝酸ニッケル溶液の含浸を阻害するトルエンの存在により、活性が低い。
【図面の簡単な説明】
【0162】
図1】触媒中のニッケルの分布を示す図である。
図1
【国際調査報告】