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▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】電気機械のステータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20240628BHJP
   H02K 1/16 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K1/16 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503863
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 EP2022065453
(87)【国際公開番号】W WO2023001445
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】102021207922.9
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】キューバッハー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ベンジング,フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】シュタムラー,ヤニク
【テーマコード(参考)】
5H601
5H609
【Fターム(参考)】
5H601AA16
5H601GA37
5H601GB36
5H601JJ08
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP08
5H609QQ05
5H609QQ18
5H609RR38
5H609RR41
(57)【要約】
ステータ軸(2)と、ステータ歯(4)および前記ステータ歯(4)間に位置するステータ溝(5)が構成され、複数の薄板片(6)を含む積層鉄心(3)と、を備えた電気機械(23)のステータであって、前記ステータ歯(4)が、環状のステータヨーク(7)を介して相互に接続され、単一の導体(9)または複数の導体(9)を含む導体束(10)、特に平角導体の積層体が、電気的なステータ巻線(8)を形成するために前記ステータ溝(5)にそれぞれ設けられ、前記ステータ溝(5)が、前記ステータヨーク(7)に向いた溝ベース(5.1)と、前記溝ベース(5.1)の反対方向に向いた溝スロット(5.2)と、をそれぞれ有し、前記ステータ軸(2)に対して軸線方向に相互に離間した複数の支持点(11)が、前記それぞれのステータ溝(5)に位置する前記導体(9)または前記導体束(10)を支持するために、前記ステータ溝(5)にそれぞれ形成され、前記それぞれのステータ溝(5)の壁部(5.1、4.2)と、前記ステータ溝(5)に配置された前記導体(9)または前記導体束(10)との間に、軸線方向に延びる溝ギャップ流路(14)を形成する少なくとも1つの溝ギャップが形成され、前記溝ギャップ流路(14)には、冷却媒体、特にオイルが、冷却経路(15)に沿って通流可能であり、前記それぞれの溝ギャップ流路(14)は、前記支持点(11)で少なくとも狭められているものにおいて、
- 前記それぞれのステータ溝(5)の前記溝スロット(5.2)が溝閉鎖部(16)によって閉鎖されており、
- 前記支持点(11)における前記それぞれのステータ溝(5)内に、前記溝ギャップ流路(14)内の前記狭められた支持点(11)を越えて冷却媒体を移送するバイパス(18)がそれぞれ設けられており、
- 前記ステータ溝(5)内に蛇行状冷却経路(15)が形成されるように、同一のステータ溝(5)の前記異なる支持点(11)における前記バイパス(18)が、異なる半径方向位置に配置されていることを特徴とする、ステータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ軸(2)と、ステータ歯(4)および前記ステータ歯(4)間に位置するステータ溝(5)が構成され、複数の薄板片(6)を含む積層鉄心(3)と、を備えた電気機械(23)のステータであって、
前記ステータ歯(4)が、環状のステータヨーク(7)を介して相互に接続され、単一の導体(9)または複数の導体(9)を含む導体束(10)、特に平角導体の積層体が、電気的なステータ巻線(8)を形成するために前記ステータ溝(5)にそれぞれ設けられ、前記ステータ溝(5)が、前記ステータヨーク(7)に向いた溝ベース(5.1)と、前記溝ベース(5.1)の反対方向に向いた溝スロット(5.2)と、をそれぞれ有し、前記ステータ軸(2)に対して軸線方向に相互に離間した複数の支持点(11)が、前記それぞれのステータ溝(5)に位置する前記導体(9)または前記導体束(10)を支持するために、前記ステータ溝(5)にそれぞれ形成され、前記それぞれのステータ溝(5)の壁部(5.1、4.2)と、前記ステータ溝(5)に配置された前記導体(9)または前記導体束(10)との間に、軸線方向に延びる溝ギャップ流路(14)を形成する少なくとも1つの溝ギャップが形成され、前記溝ギャップ流路(14)には、冷却媒体、特にオイルが、冷却経路(15)に沿って通流可能であり、前記それぞれの溝ギャップ流路(14)は、前記支持点(11)で少なくとも狭められているものにおいて、
- 前記それぞれのステータ溝(5)の前記溝スロット(5.2)が溝閉鎖部(16)によって閉鎖されており、
- 前記支持点(11)における前記それぞれのステータ溝(5)内に、前記溝ギャップ流路(14)内の前記狭められた支持点(11)を越えて冷却媒体を移送するバイパス(18)がそれぞれ設けられており、
- 前記ステータ溝(5)内に蛇行状冷却経路(15)が形成されるように、同一のステータ溝(5)の前記異なる支持点(11)における前記バイパス(18)が、異なる半径方向位置に配置されている、
ことを特徴とするステータ。
【請求項2】
前記ステータ溝(5)に蛇行状冷却路(15)が形成されるように、同一のステータ溝(5)の前記異なる支持点(11)における前記バイパス(18)が、前記溝ベース(5.1)、特に前記溝ベース(5.1)内もしくは前記溝ベース(5.1)の前記歯面(4.2)、または前記溝閉鎖部(16)にそれぞれ構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
同一のステータ溝(5)の前記異なる支持点(11)の前記バイパス(18)が、1つの支持点(11)から次の支持点(11)への前記蛇行状冷却経路(15)を形成するために、前記溝ベース(5.1)、特に前記溝ベース(5.1)内もしくは前記溝ベース(5.1)の前記歯面(4.2)、または前記溝閉鎖部(16)に交互に構成されていることを特徴とする、請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記バイパス(18)がバイパス流路によってそれぞれ形成されており、前記バイパス流路は、特に前記導体(9)または導体束(10)の導体幅(B)よりも小さい流路幅(b)を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のステータ。
【請求項5】
前記積層鉄心(3)が複数の同じ薄板片(6)を有し、前記同じ薄板片(6)の各々が前記ステータ溝(5)を形成する複数の溝凹部(20)を有し、前記バイパス流路を形成するバイパス凹部(19)が、前記薄板片(6)の各々に対して、パターンに従って決定され、全周にわたって分布している特定の溝凹部(20)の溝ベース(5.1)に設けられていることを特徴とする、請求項4に記載のステータ。
【請求項6】
前記バイパス(18)が特定の軸方向位置で特定の長さにわたって前記個々のステータ溝(5)に形成されるように、前記積層鉄心(3)において前記同じ薄板片(6)のうち複数の薄板片(6)が、前記ステータ軸(2)を中心にねじられることを特徴とする、請求項5に記載のステータ。
【請求項7】
前記ステータ溝(5)の前記溝閉鎖部(16)が、個々の溝閉鎖部材によってそれぞれ形成され、または分離管に1個もしくは複数個で構成されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のステータ。
【請求項8】
前記支持点(11)が、前記積層鉄心(3)の少なくとも2つの薄板片(6)を、前記ステータ軸(2)に対して所定のねじれ角度(φ)だけねじることによって形成されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のステータ。
【請求項9】
前記それぞれの支持点(11)を形成するために前記積層鉄心(3)の薄板片(6)をねじることにより、前記それぞれのステータ溝(5)の対向面から前記ステータ溝(5)内に突出する前記薄板片(6)の支持部(6.1)が形成され、これにより、前記導体(9)または前記導体束(10)の保持面(13)において、前記支持部(6.1)の間に前記導体(9)または前記導体束(10)が保持され、特にクランプされることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のステータ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のステータ(1)が配置されたハウジング(24)を備えた電気機械であって、前記ステータ巻線(8)が、前記ステータ(1)の各端面に巻線ヘッド(8.1)を形成し、前記ステータ(1)の各端面の前記ハウジング(24)内には、前記それぞれの巻線ヘッド(8.1)を冷却するために、前記それぞれの巻線ヘッド(8.1)を収容する巻線ヘッド冷却室(25)が設けられ、前記2つの巻線ヘッド冷却室(25)のうち一方から出発した前記ステータ溝(5)が、前記ステータ溝(5)の冷却経路(15)を介して他方の巻線ヘッド冷却室(25)に通流可能であることを特徴とする、電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立形式請求項の上位概念に記載された電気機械のステータに基づく。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102019113785号明細書からは、ステータ軸と、ステータ歯およびステータ歯間に位置するステータ溝が構成され、複数の薄板片を含む積層鉄心と、を備え、ステータ歯は、環状のステータヨークを介して相互に接続され、複数の導体を含む導体束が、電気的なステータ巻線を形成するためにステータ溝にそれぞれ設けられ、ステータ溝が、ステータヨークに向いた溝ベースと、溝ベースの反対方向に向いた溝スロットと、をそれぞれ有し、ステータ軸に対して軸線方向に相互に離間した複数の支持点が、それぞれのステータ溝に位置する導体または導体束を支持するために、ステータ溝にそれぞれ形成され、それぞれのステータ溝の壁部と、ステータ溝に配置された導体束との間に、軸線方向に延びる溝ギャップ流路を形成する少なくとも1つの溝ギャップが形成され、この溝ギャップ流路には、冷却媒体、特にオイルが、冷却経路に沿って通流可能であり、それぞれの溝ギャップ流路は、支持点で少なくとも狭められている、電気機械のステータが既知である。溝ギャップ流路内のそれぞれの導体束の冷却経路に沿った均一な冷却は保証されないが、それは、例えば、溝ギャップ流路の流れ断面にわたって不均一な流れ分布が生じ得るためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102019113785号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一方で、独立形式請求項の固有な特徴を有する本発明に係る電気機械のステータは、冷却経路に沿った溝ギャップ流路内のそれぞれの導体束が、より均一に冷却されるという利点を有する。
【0005】
これは、本発明によれば、それぞれのステータ溝の溝スロットが溝閉鎖部によって閉鎖されており、支持点におけるそれぞれのステータ溝内に、溝ギャップ流路内の狭められた支持点を越えて冷却媒体を移送するバイパスがそれぞれ設けられており、ステータ溝内に蛇行状冷却経路が形成されるように、同一のステータ溝の異なる支持点におけるバイパスは、異なる半径方向位置に配置されていることによって達成される。
【0006】
引用形式請求項に挙げられた手段により、独立形式請求項に記載された電気機械のステータの有利な改善形態および改良形態が可能である。
ステータ溝内に蛇行状冷却路が形成されるように、同一のステータ溝の異なる支持点におけるバイパスが、溝ベース、特に溝ベース内もしくは溝ベースの歯面、または溝閉鎖部にそれぞれ構成されていると特に有利である。このようにして、半径方向に広く延びた蛇行を有する蛇行状冷却経路が達成され、ひいてはステータ溝内で非常に均一な冷却が達成される。
【0007】
有利な実施例によれば、同一のステータ溝の異なる支持点におけるバイパスは、1つの支持点から次の支持点への蛇行状冷却経路を形成するために、溝ベース内または溝閉鎖部に交互に構成されている。代替的に、蛇行は軸方向に見て長く構成されていてもよい。
【0008】
バイパスが、例えば溝状のバイパス流路によって形成されていると非常に有利である。このようにして、バイパスは、ステータの積層鉄心のそれぞれのステータ溝で非常に容易に製造することができる。バイパス流路が、導体または導体束の導体幅よりも小さい流路幅を有する場合、導体または導体束が、例えばバイパス流路に滑り込むことによって、バイパス流路を閉鎖したり閉塞したりすることができないことが有利に保証される。
【0009】
積層鉄心が複数の同じ薄板片を有し、同じ薄板片の各々がステータ溝を形成する複数の溝凹部を有し、バイパス流路を形成するバイパス凹部が、薄板片の各々に対して、パターンに従って決定され、全周にわたって分布している特定の溝凹部の溝ベースに設けられている場合も有利である。薄板片の残りの溝凹部には、バイパス凹部は設けられない。このようにして、同一の薄板片を用いて、積層鉄心の各ステータ溝の所定の軸方向位置において、それぞれのステータ溝の溝ベースにバイパスを形成することができる。すなわち、本発明に係るバイパスを追加で設けたにもかかわらず、積層鉄心の製造コストは増加しないか、大幅には増加しない。
【0010】
これは、バイパスが特定の軸方向位置で特定の長さにわたって個々のステータ溝に形成されるように、積層鉄心において同じ薄板片のうち複数の薄板片を、ステータ軸を中心にねじることによって有利に達成することができる。
【0011】
有利な実施例によれば、ステータ溝の溝閉鎖部は、それぞれ個々の溝閉鎖部材によって形成されてもよく、または分離管に1個もしくは複数個で構成されてもよい。
また、支持点が、積層鉄心の少なくとも2つの薄板片を、ステータ軸を中心に所定のねじれ角度だけねじることによって形成されていると有利である。このようにして、それぞれのステータ溝の導体束は、それぞれの支持点で2つの歯面の間にクランプされる。導体または導体束の電気絶縁を確実に保護するために、通常設けられている溝絶縁紙の代替として、支持点の領域において、導体束の周囲に保護部材を設けてもよい。これにより、積層鉄心と導体束との間の溝ギャップにおいて、含浸用樹脂の絶縁体としての使用を、少なくとも部分的に省略することが可能となる。
【0012】
また、それぞれの支持点を形成するために積層鉄心の薄板片をねじることにより、それぞれのステータ溝の対向面からステータ溝内に突出する薄板片の支持部が形成され、これにより、導体または導体束の保持面において、支持部の間に導体または導体束が保持され、特にクランプされると有利である。このようにして、導体または導体束を、ステータ軸に対して周方向において、それぞれのステータ溝の中央または中心に支承することが可能となる。
【0013】
本発明は、さらに、本発明に係るステータが配置されたハウジングを備えた電気機械に関し、ステータ巻線が、ステータの各端面に巻線ヘッドを形成し、ステータの各端面のハウジング内には、それぞれの巻線ヘッドを冷却するために、それぞれの巻線ヘッドを収容する巻線ヘッド冷却室が設けられ、2つの巻線ヘッド冷却室のうち一方から出発したステータ溝は、ステータ溝の冷却経路を介して他方の巻線ヘッド冷却室に通流可能である。このようにして、ステータの特に良好な冷却を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
発明の実施例を図面に簡略的に示し、以下の説明で詳述する。
図1】本発明に係る電気機械のステータの部分図である。
図2】本発明に係る複数の支持点におけるステータ溝のうち1つに支承された導体束を備えた、図1に記載されたステータの断面図である。
図3図1および図2に記載された本発明に係るステータ溝の縦断面における、電気機械の部分図である。
図4図1から図3に記載された本発明に係るステータの薄板片のうち1つである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に係る電気機械のステータの部分図である。
電気機械のステータ1は、ステータ軸2を有し、ステータ歯4およびステータ歯4の間に位置するステータ溝5が形成され、薄板片6の積層体によって形成された積層鉄心3を含む。
【0016】
ステータ歯4は、積層鉄心3の環状ステータヨーク7を介して互いに接続され、歯ヘッド4.1を有してもよい。電気的なステータ巻線8を形成する単一の導電体9または複数の導電体9を含む導体束10のいずれかをステータ溝5にそれぞれ設けてもよい。本発明を説明するため、図1ではステータ溝5のうち1つにのみ導体束10が示されている。
【0017】
ステータ1の導電体9は、それぞれ四角形、特に長方形の導体断面を有する平角導体として構成することができる。さらに、ステータ1の導体9は、それぞれヘアピン導体部材またはIピン導体部材として構成することができる。導体9は、例えば、公知の方法で絶縁ワニスによって被覆されている。
【0018】
図2は、本発明に係る複数の支持点におけるステータ溝のうち1つに支承された導体束を備えた、図1に記載されたステータの断面図である。
図2に示すように、ステータ溝5には、それぞれのステータ溝5内に位置する導体9または導体束10をクランプ、緊締または支持するための、ステータ軸2に対して軸方向に相互に離間した、複数、例えば3つの支持点11が、ステータ溝5にそれぞれ形成されている。
【0019】
支持点11は、例えば、積層鉄心3の少なくとも2つの薄板片6を、ステータ軸2に対して所定のねじれ角度φだけねじることによって形成することができる。それぞれの支持点11を形成するために薄板片6をねじることによって、薄板片6の支持部6.1が形成され、この支持部6.1は、導体束10の保持面13の支持部6.1間に導体束10を保持、例えばクランプするために、ステータ溝5の対向面からそれぞれのステータ溝5内に突出する。ねじられた薄板片6は、特に材料結合式の接合によって、さらなるねじれを防ぐように積層鉄心3に固定されているため、積層鉄心3に安定的かつ持続保持可能な支持点11が形成される。
【0020】
本発明に係る支持点11の間には、それぞれのステータ溝5の導体束10が、例えば自由に浮遊して、すなわち積層鉄心3に対して非接触式に支承されている。すなわち、それぞれのステータ溝5の導体束10は、例えば支持点11においてのみ積層鉄心6と接触している。
【0021】
それぞれのステータ溝5の導体束10と、それぞれの支持点11との間には、特にスリーブ状、キャップ状、管状、クランプ状、U字状、ストリップ状または平坦な帯状に構成された、図示しない保護層を設けてもよい。
【0022】
図3は、図1および図2に示す本発明に係るステータを備えた電気機械の縦断面部分図である。
ステータ溝5は、ステータヨーク7に向いた溝ベース5.1と、特にそれぞれのステータ歯4の2つの歯ヘッド4.1間に形成されている、溝ベース5.1と反対側方向に向いた溝スロット5.2と、をそれぞれ有する。
【0023】
それぞれのステータ溝5の壁部と、ステータ溝5内に配置された導体9または導体束10との間には、少なくとも1つの溝ギャップが構成され、この溝ギャップは、軸方向に延びる溝ギャップ流路14を形成し、この溝ギャップ流路14には、冷却媒体、特にオイルが、冷却経路15に沿って通流可能である。
【0024】
ステータ溝のそれぞれの溝ギャップ流路14は、少なくとも支持点11で狭くなっている。
本発明によれば、それぞれのステータ溝5の溝スロット5.2が、半径方向に見て、いわゆる空隙に向かって溝閉鎖部16によって閉鎖されており、冷却媒体を溝ギャップ流路14内の狭められた支持点11を越えて移送するために、支持点11においてそれぞれのステータ溝5にバイパス18がそれぞれ設けられていることが企図されている。さらに、本発明によれば、ステータ溝5に蛇行状冷却経路15が形成されるように、バイパス18がステータ軸2に対して異なる半径方向位置で、同一のステータ溝5の異なる支持点11に配置されていることが企図されている。溝閉鎖部16は、空隙に対して半径方向に、溝ギャップ流路14を密閉または少なくともほぼ密閉する。
【0025】
蛇行状冷却経路15は、流れ方向に見て、ステータ溝5の長手方向に沿って、溝ベース5.1から溝スロット5.2を経由して溝ベース5.1まで、または溝スロット5.2から溝ベース5.1を経由して溝スロット5.2まで延びる少なくとも1つの蛇行を有する。
【0026】
同一のステータ溝5の異なる支持点11におけるバイパス18は、ステータ溝5内に蛇行状冷却経路15が形成されるように、例えば溝ベース5.1、特に溝ベース5.1内に、または溝ベース5.1の歯面4.2に、または溝閉鎖部16内に、それぞれ配置されている。
【0027】
図3の実施例によれば、同一のステータ溝5の異なる支持点11におけるバイパス18は、溝ベース5.1または溝閉鎖部16において、軸方向に見て、ある支持点11から次の支持点11に向かって交互に構成され、これにより蛇行状冷却経路15が形成されている。
【0028】
電気機械23は、本発明に係るステータ1が配置されたハウジング24を有する。ステータ巻線8は、ステータ1の各端面に巻線ヘッド8.1を形成する。ハウジング24には、それぞれの巻線ヘッド8.1を冷却するために、それぞれの巻線ヘッド8.1を収容する巻線ヘッド冷却室25がステータ1の各端面に設けられている。ここで、ステータ1のステータ溝5は、例えば並列接続、直列接続、または並列接続と直列接続の組み合わせによって、2つの巻線ヘッド冷却室25のうち一方から、ステータ溝5の冷却経路15を経由して、他方の巻線ヘッド冷却室25に通流可能である。それぞれの巻線ヘッド冷却室25は、環状壁26、例えばシールスリーブによって、ステータ軸2に対して半径方向内側が囲まれている。シールスリーブ26は、例えば、ステータ1と電気機械23のロータ27との間に形成された空隙内に到達し、ステータ軸2に対して軸方向にこれを貫通してもよい。
【0029】
ステータ溝5の溝閉鎖部16は、それぞれのステータ溝5に配置され、かつ取り付けられた、個々の溝閉鎖部材によってそれぞれ形成することができる。代替的に、ステータ溝5の溝閉鎖部16は、電気機械23のステータ1とロータ27との間の空隙に配置され、例えば繊維強化プラスチック(CFRP、GFRP)製とすることができるいわゆる分離管に、1個または複数個構成されていてもよい。
【0030】
図4は、図1から図3に記載された本発明に係るステータの薄板片のうち1つを示す。
バイパス18は、溝ベース5.1、特に溝ベース5.1内に、または溝ベース5.1上もしくは溝ベース5.1近傍の歯面4.2(図4に破線で示す)、またはそれぞれのステータ溝5の溝閉鎖部16に、バイパス流路によってそれぞれ形成されている。バイパス流路18は、例えば溝状であり、および/または導体束10の導体幅Bよりも小さい流路幅bを有する。
【0031】
溝ベース5.1のバイパス18は、それぞれステータ1の積層鉄心3の対応する薄板片6に構成されている。
積層鉄心3は、例えば複数の同じ薄板片6を有し、同じ薄板片6の各々は、ステータ溝5を形成する複数の溝凹部20を有する。薄板片6の各々に対して、バイパス流路18を形成するバイパス凹部19は、例えば、パターンに従って決定され、薄板片6の全周に渡って分布している特定の溝凹部20の溝ベース5.1に設けられ、薄板片6の残りの溝凹部20には、バイパス凹部19は設けられていない。すなわち、パターンに従って、薄板片6の溝凹部20の一部にはバイパス凹部19が形成され、溝凹部20の残りの部分にはバイパス凹部19が形成されていない。
【0032】
積層鉄心3の同じ薄板片6のうちいくつかを、ステータ軸2を中心にねじることにより、バイパス18が個々のステータ溝5において、所望の軸方向位置で、所望の長さにわたって形成されることが達成できる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-01-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ軸(2)と、ステータ歯(4)および前記ステータ歯(4)間に位置するステータ溝(5)が構成され、複数の薄板片(6)を含む積層鉄心(3)と、を備えた電気機械(23)のステータであって、
前記ステータ歯(4)が、環状のステータヨーク(7)を介して相互に接続され、単一の導体(9)または複数の導体(9)を含む導体束(10)、特に平角導体の積層体が、電気的なステータ巻線(8)を形成するために前記ステータ溝(5)にそれぞれ設けられ、前記ステータ溝(5)が、前記ステータヨーク(7)に向いた溝ベース(5.1)と、前記溝ベース(5.1)の反対方向に向いた溝スロット(5.2)と、をそれぞれ有し、前記ステータ軸(2)に対して軸線方向に相互に離間した複数の支持点(11)が、前記それぞれのステータ溝(5)に位置する前記導体(9)または前記導体束(10)を支持するために、前記ステータ溝(5)にそれぞれ形成され、前記それぞれのステータ溝(5)の壁部(5.1、4.2)と、前記ステータ溝(5)に配置された前記導体(9)または前記導体束(10)との間に、軸線方向に延びる溝ギャップ流路(14)を形成する少なくとも1つの溝ギャップが形成され、前記溝ギャップ流路(14)には、冷却媒体、特にオイルが、冷却経路(15)に沿って通流可能であり、前記それぞれの溝ギャップ流路(14)は、前記支持点(11)で少なくとも狭められているものにおいて、
- 前記それぞれのステータ溝(5)の前記溝スロット(5.2)が溝閉鎖部(16)によって閉鎖されており、
- 前記支持点(11)における前記それぞれのステータ溝(5)内に、前記溝ギャップ流路(14)内の前記狭められた支持点(11)を越えて冷却媒体を移送するバイパス(18)がそれぞれ設けられており、
- 前記ステータ溝(5)内に蛇行状冷却経路(15)が形成されるように、同一のステータ溝(5)の前記異なる支持点(11)における前記バイパス(18)が、異なる半径方向位置に配置されている、
ことを特徴とするステータ。
【請求項2】
前記ステータ溝(5)に蛇行状冷却路(15)が形成されるように、同一のステータ溝(5)の前記異なる支持点(11)における前記バイパス(18)が、前記溝ベース(5.1)、特に前記溝ベース(5.1)内もしくは前記溝ベース(5.1)の前記歯面(4.2)、または前記溝閉鎖部(16)にそれぞれ構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
同一のステータ溝(5)の前記異なる支持点(11)の前記バイパス(18)が、1つの支持点(11)から次の支持点(11)への前記蛇行状冷却経路(15)を形成するために、前記溝ベース(5.1)、特に前記溝ベース(5.1)内もしくは前記溝ベース(5.1)の前記歯面(4.2)、または前記溝閉鎖部(16)に交互に構成されていることを特徴とする、請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記バイパス(18)がバイパス流路によってそれぞれ形成されており、前記バイパス流路は、特に前記導体(9)または導体束(10)の導体幅(B)よりも小さい流路幅(b)を有することを特徴とする、請求項1に記載のステータ。
【請求項5】
前記積層鉄心(3)が複数の同じ薄板片(6)を有し、前記同じ薄板片(6)の各々が前記ステータ溝(5)を形成する複数の溝凹部(20)を有し、前記バイパス流路を形成するバイパス凹部(19)が、前記薄板片(6)の各々に対して、パターンに従って決定され、全周にわたって分布している特定の溝凹部(20)の溝ベース(5.1)に設けられていることを特徴とする、請求項4に記載のステータ。
【請求項6】
前記バイパス(18)が特定の軸方向位置で特定の長さにわたって前記個々のステータ溝(5)に形成されるように、前記積層鉄心(3)において前記同じ薄板片(6)のうち複数の薄板片(6)が、前記ステータ軸(2)を中心にねじられることを特徴とする、請求項5に記載のステータ。
【請求項7】
前記ステータ溝(5)の前記溝閉鎖部(16)が、個々の溝閉鎖部材によってそれぞれ形成され、または分離管に1個もしくは複数個で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のステータ。
【請求項8】
前記支持点(11)が、前記積層鉄心(3)の少なくとも2つの薄板片(6)を、前記ステータ軸(2)に対して所定のねじれ角度(φ)だけねじることによって形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のステータ。
【請求項9】
前記それぞれの支持点(11)を形成するために前記積層鉄心(3)の薄板片(6)をねじることにより、前記それぞれのステータ溝(5)の対向面から前記ステータ溝(5)内に突出する前記薄板片(6)の支持部(6.1)が形成され、これにより、前記導体(9)または前記導体束(10)の保持面(13)において、前記支持部(6.1)の間に前記導体(9)または前記導体束(10)が保持され、特にクランプされることを特徴とする、請求項1に記載のステータ。
【請求項10】
請求項1に記載のステータ(1)が配置されたハウジング(24)を備えた電気機械であって、前記ステータ巻線(8)が、前記ステータ(1)の各端面に巻線ヘッド(8.1)を形成し、前記ステータ(1)の各端面の前記ハウジング(24)内には、前記それぞれの巻線ヘッド(8.1)を冷却するために、前記それぞれの巻線ヘッド(8.1)を収容する巻線ヘッド冷却室(25)が設けられ、前記2つの巻線ヘッド冷却室(25)のうち一方から出発した前記ステータ溝(5)が、前記ステータ溝(5)の冷却経路(15)を介して他方の巻線ヘッド冷却室(25)に通流可能であることを特徴とする、電気機械。
【国際調査報告】