(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】VOC排出量を減少した繊維板を製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
B27N 3/04 20060101AFI20240628BHJP
B27N 3/18 20060101ALI20240628BHJP
B27N 1/00 20060101ALI20240628BHJP
B27K 5/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B27N3/04 B
B27N3/18
B27N1/00
B27K5/00 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504156
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2022070535
(87)【国際公開番号】W WO2023001978
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524028980
【氏名又は名称】ファイバーボード ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】FIBERBOARD GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブンゲルト, ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ハイネ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェンディ, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】デュミヘン, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ヘニッヒ, アンドレ
【テーマコード(参考)】
2B230
2B260
【Fターム(参考)】
2B230AA30
2B230BA05
2B230EA21
2B230EB06
2B230EB12
2B230EB29
2B230EB38
2B260AA20
2B260BA01
2B260BA19
2B260CB01
2B260CD03
2B260CD06
2B260EA05
2B260EB02
2B260EB05
2B260EB12
2B260EB13
2B260EB21
2B260EB23
(57)【要約】
本発明は、VOC排出量を減少した繊維板を製造するためのプロセスに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
VOC排出量を減少した繊維板を製造するためのプロセスであって、
a)木材を含有する木材チップを用意する工程、
b)1つの熱処理装置内または複数の熱処理装置内で前記木材チップを熱処理する工程、
c)前記木材チップをリファイナー内で破砕する工程、
d)前記木材チップを接着する工程、
e)前記接着された木材チップを圧締して、前記繊維板を形成する工程、
を少なくとも含み、
f)前記プロセスで使用されるまたは生じる蒸気が、少なくとも1つの蒸気排出位置において、制御された方式で、前記プロセスから連続して分離され、全分離蒸気の量範囲の下限および上限が、工程a)で使用される前記木材チップの少なくとも1つの仕様に応じて決まるような所定量範囲で、前記蒸気が分離されることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
前記分離蒸気の量範囲の下限および上限が、工程a)で用意される木材チップの量に応じて決まることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記分離蒸気の量範囲の下限および上限が、工程a)で用意される前記木材チップに含有されるVOC、特にテルペンの量に応じて決まることを特徴とする、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
工程a)で使用される前記木材チップに含有されるVOC、特にテルペンの量が、使用される前記木材チップを検査することにより決定される、または使用される木材チップの種類に基づいて推定されることを特徴とする、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
工程f)における蒸気の全分離量が、用意される前記木材チップのVOC量に基づいて、その質量の0.5~100倍、好ましくはその質量の0.5~50倍、より好ましくはその質量の0.5~10倍の量範囲内であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
工程f)における蒸気の全分離量が、用意される前記木材チップの乾燥質量に基づいて、その質量の0.001~0.2倍、好ましくはその質量の0.001~0.1倍、より好ましくはその質量の0.001~0.02倍の量範囲内であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
少なくとも1つの蒸気排出位置が、前記リファイナーの上流に配置されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記リファイナーの上流に配置されている前記蒸気排出位置が、熱処理装置を含む、または前記リファイナーと熱処理装置との間に位置することを特徴とする、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記リファイナーの上流に配置されている前記蒸気排出位置が、木材チップクッカーよりも前の蒸気処理装置、もしくは前記木材チップクッカー自体である、または前記蒸気処理装置と前記木材チップクッカーとの間に位置することを特徴とする、請求項7または8に記載のプロセス。
【請求項10】
少なくとも1つの蒸気排出位置が、前記リファイナーの下流に配置されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記リファイナーの下流に配置されている前記蒸気排出位置が、前記リファイナーの下流に配置されている蒸気セパレーターであることを特徴とする、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
少なくとも1つの蒸気排出位置が、液体流から生成されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記液体流が、圧密スクリューに直接由来する圧搾水流、または圧密スクリュー由来の圧搾水流から生じる液体流であることを特徴とする、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
工程f)に従って除去されたVOC含有蒸気が収集され、場合により、1つまたは複数の成分がさらに処理されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
さらなる処理として、テルペンの混合物またはテレビン油が単離されることを特徴とする、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
さらなる処理として、ハイドロレートが単離されることを特徴とする、請求項14または15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記分離蒸気または1つもしくは複数の成分が、燃焼、もしくは高温への曝露、吸着、吸収、メンブレンテクノロジー技術、凝縮、結晶化、または他の好適なプロセスエンジニアリング技術によってさらに処理されることを特徴とする、請求項14~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記プロセスにおいて発生する材料流の熱が、前記プロセスにおいてエネルギーとして再利用されることを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
分離蒸気流の熱が、前記プロセスにおいてエネルギーとして再利用されることを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
MDF板またはHDF板が製造されるサーモメカニカルプロセスであることを特徴とする、請求項1~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VOC排出量を減少した繊維板、特にHDF板またはMDF板を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
乾式および湿式技術を使用する、木材、ワラ、またはバガスなどのリグノセルロース系材料をベースとした木材繊維を製造する連続的プロセスは、これに限定されないが、原材料を破砕して遊離繊維または繊維集合体にし、これを、後続の工程において、接着剤でコーティングし、乾燥させ、成形し、圧締して最終製品、いわゆる、ボードまたは繊維板にすることを含む。昨今は、原材料からの繊維の解離を、好ましくは、単一の工程におけるいわゆるサーモメカニカルプロセスで、または少なくとも2つの個別の工程における熱的および機械的プロセスで、実施する。
【0003】
第1の熱処理の前に、木材チップを通常は洗浄して、泥または石などの夾雑物を除去する。熱的処理、すなわち、原材料の加熱を、例えば、第1の熱処理装置において、特に大気圧下で、約摂氏100度までの好ましい温度で、引き続き、特に約4~13バールの圧力で、例えば、およそ摂氏150~190度の温度で、好ましくは加圧された第2の熱処理装置において実施する。熱処理装置における木材チップの滞留時間は、一般的なプロセス条件に応じて調整することができ、例えば、約1~10分の間であってよい。関連技術によれば、第2の熱処理装置における熱的加熱を、好ましくは、蒸気を用いて実施する。次いで、機械的加工を、解繊機とも称されるリファイナーにおいて実施する。リファイナーにおける木材チップ原材料の滞留時間は、短期間である。機械的加工に関連して機械的エネルギーに変換されるエネルギーは、加工システムにおいて、寸法減少域中で熱に変化し、排気ガス、特に原材料中の水分から生成される蒸気として現れる。
【0004】
リファイナーにおいて解繊した後、通常は、空気圧によって木材繊維を繊維乾燥機へと運び、その時点の繊維の水分に応じて、多量の空気および約摂氏140~200度の制御された吸気温度で、乾燥プロセスを実施する。繊維を、乾燥風から機械的に分離する。次いで、乾燥した繊維はさらに運ばれ、成形され、プレ圧締され、ボードに最終圧締される。乾燥風は、排気ガスの洗浄に供される。これに関しては、湿式洗浄、湿式電気フィルターまたはバイオフィルターおよび生物学的廃水処理が使用される。
【0005】
関連技術によれば、特に第2の熱処理装置において、繊維の解離および乾燥の間に放出される木材排出物は、繊維バルク材と一緒に、第1の熱処理装置からリファイナーを介して乾燥機へ運ばれ、そこで大部分が繊維から分離され、最終的には、乾燥機からの湿気のある乾燥風は、排気ガスの洗浄の後、大気中に送られる。これらの木材排出物は、揮発性有機物質、いわゆる、揮発性有機化合物(VOC:volatile organic compound)を主に含有する。
【0006】
VOCの中には、湿気のある排気ガスの洗浄において、水への溶解度が非常に小さいために、それらの分離度が数パーセントのみ、またはさらにはゼロに近い物質が存在する。これは、特にテルペンに当てはまる。そのため、湿式分離プロセスは、10~30%の排出減少度を達成するのみであることが公知である。低い溶解度は、その物質の本質的に低い水への溶解度、ならびに、分圧、したがって熱力学的な推進力を極端に減少させる、乾燥風中での強力な希釈のためである。テルペンは、使用される木材の樹脂に由来する。テルペンは揮発性油である。テルペンはテレビンとも称される。
【0007】
乾燥機から放出されない残りの量は、繊維流に従って後続のプロセスユニットに送られ、続いて周囲の大気中に放出されるか、または最終製品であるボード中に副生成物として現れる。このように、排出物の大気中への放散は、最終製品からもまた起こり得る。
【0008】
国際公開第1999/10594号(特許文献1)により、第2の熱処理装置が、そこで放出される有機排出物をガス抜きするための上部排出口を備えることは、既に公知である。ここで、蒸気を、第1の熱処理装置の下部に導入し、第1の熱処理装置の上部に侵入する木材チップを、蒸気の凝縮中に、逆流する蒸気中で洗浄する。これは、木材チップカラムを通って第1の熱処理装置の上部中のより低温の木材チップへと上方移動する蒸気によって達成される。放出された排出物、排気空気および蒸気は、木材チップ中の水分の蒸発により発生するものであり、分離され、対応する装置中の排出口から廃棄される。第1の熱処理装置からの木材チップが、スクリューコンベアを用いてリファイナーに運ばれ、運搬中に、このスクリューコンベアが木材チップを圧縮し、水抜きをすることもまた、本公報は明らかにしている。
【0009】
欧州特許出願公開第1597427号明細書(特許文献2)によれば、圧縮中に発生する排気ガスが、圧縮域に配する排出口を介して、スクリューコンベアにおいて廃棄される方法が公知である。本資料によるプラントは、木材チップを圧縮する間に発生し、VOC含有排気ガスを含有する蒸発させた水分を放散するための排気ガス排出口が、圧縮域に配されていることを特徴とする。
【0010】
欧州特許出願公開第2573258号明細書(特許文献3)には、木材を含有する繊維性材料の製造のための木材チップを加工するための方法および機器が記載されている。木材チップの洗浄に関して、98℃まで加熱した水を使用して、約90℃まで加熱することによってこれを行うことが述べられている。
【0011】
米国特許第4,925,527号明細書(特許文献4)には、気流がリファイナーから採取され、コンデンサーに供給される、TMP(thermal mechanical pulp:サーモメカニカルパルプ)プロセスにおいてテレビンを回収するための方法が記載されている。
【0012】
欧州特許出願公開第1021612号明細書(特許文献5)には、木材繊維を製造および処理するためのプラントであって、木材チップから繊維をほぐす機能を果たす木材チッププレヒーターおよびビーターを備える繊維製造部分と、繊維を乾燥させる機能を果たす少なくとも1つの乾燥機段階とを含む、プラントが記載されている。繊維製造部分と乾燥機段階との間に、蒸気セパレーター部分が備えられており、この蒸気セパレーター部分はサイクロンセパレーターを含み、サイクロンセパレーターの吸入口は、ビーター機から得られた繊維および蒸気のために使用されるブロワーラインに接続されている。サイクロンセパレーターの下部排出口は、ロックゲートを介して繊維の搬送/乾燥ラインに接続されている。サイクロンセパレーターの上部排出口は、サイクロンセパレーターの蒸気から揮発性有機物質を分離し、熱を回収する機能を果たす装置に接続されている。
【0013】
米国特許出願公開第2012/227918号明細書(特許文献6)には、繊維材料混合物をリファイナーから蒸気セパレーターの吸入口へ運ぶためのブローラインを含む、リファイナースチーム分離システムが記載されている。排気蒸気は、排気蒸気排出口を通してセパレーターから放散される。清浄化された繊維材料は、排出口を通してセパレーターから放散され、これにより、排気蒸気のかなりの部分が排出口に到達するのを防ぐ。中継管が、排出口および乾燥機ダクトに接続され、その2つの間で、清浄化された繊維材料を運ぶ。樹脂吸入口がその中継管に接続され、樹脂を中継管に供給する。樹脂が清浄化された繊維材料と混合された後、清浄化された繊維材料は乾燥機ダクト中で乾燥される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第1999/10594号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1597427号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2573258号明細書
【特許文献4】米国特許第4,925,527号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1021612号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2012/227918号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、環境に配慮した木材加工のために、繊維板、特にHDF板またはMDF板を製造するためのプロセスから、さらにいっそう効率的にVOCを除去する必要性があり、省資源的なプロセスもまた可能とするべきである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、課題の解決は、請求項1に記載の特色を有するVOC排出量を減少した繊維板を製造するためのプロセスによって達成される。本発明の好ましい構成は、従属請求項および以下の明細書において示されており、そのそれぞれが、本発明の一態様を、個々にまたは組み合わせて表すことができる。
【0017】
VOC排出量を減少した繊維板を製造するためのプロセスであって、
a)木材を含有する木材チップを用意する工程、
b)1つの熱処理装置内または複数の熱処理装置内で木材チップを熱処理する工程、
c)木材チップをリファイナー内で破砕する、特に解繊する工程、
d)破砕された、特に解繊された木材チップを接着する工程、
e)破砕され、特に解繊され、接着された木材チップを圧締して、繊維板を形成する工程、
を少なくとも含み、
f)プロセスで使用されるまたは生じる蒸気が、少なくとも1つの蒸気排出位置において、制御された方式で、プロセスから特に連続して分離され、全分離蒸気の量範囲の下限および上限が、工程a)で使用される木材チップの少なくとも1つの仕様に応じて決まるような所定量範囲で、蒸気が分離される、プロセスが記載される。
【0018】
そのようなプロセスは、繊維板の製造において環境上有害なVOC排出量を効率的に減少させる特に有利な方法を可能にする。さらに、省資源的なプロセスが可能である。
【0019】
本発明の意味の範囲内の用語、VOC(volatile organic compound:揮発性有機化合物)は、特に、本明細書に記載されているプロセスのための原材料として使用される木材中に存在する揮発性化合物を指す。特に、本プロセスにおいて記載されるVOCはテルペンであり、テルペンは木材中に木材油として存在する。例として、以下の物質が挙げられ、これらは含有されるVOCに基づいて括弧内に示される重量パーセンテージで存在し得る:α-ピネン(20~70%)、β-ピネン(5~20%)、リモネン(1~5%)、カンフェン(1~5%)、フェノール(0.2~2%)。さらなる成分として、ミルセン、α-、β-フェランドレン、3-カレン、シメン、テルピノール、オシメンを挙げることができる。
【0020】
本発明の意味の範囲内の用語「制御された」は、蒸気の分離の観点から、分離される蒸気の量および/または材料流が、調整可能である、好ましくは制御可能であることを意味する。この点において、調整不能かつ/または制御不能な蒸気の排出位置は、本発明の意味の範囲内の制御された蒸気の分離として理解されるべきではない。
【0021】
ここに記載されるプロセスは、繊維板を製造するために使用される。本発明の意味の範囲内の繊維板は、一般に知られているように、結合剤を含むマトリックス内に木材繊維を有するボードであると理解される。例えば、繊維板は、いわゆる中密度繊維板(例えば、700~800kg/m3の密度を有するMDF板)または低密度繊維板(例えば、650kg/m3未満の密度を有するLDF)であってもよい。さらに、いわゆる高密度繊維板(例えば、800kg/m3を超える密度を有するHDF板)を、記載されるプロセスを使用して製造してもよい。より好ましくは、MDF板またはHDF板を、記載されるプロセスを使用して製造してもよい。かかる繊維板は、屋根下ボードとして屋内建築に、または壁の屋外用クラッディングに特に好適である。これらのボードは、家具の製造においても広く使用される。床、天井、または内壁装飾材として、部屋の内部付属品に適用することもまた好適である。
【0022】
ここに記載のプロセスでは、工程a)による木材を含有する木材チップの用意が、最初に実行される。この工程では、基本的に木材チップとして用意され得るように粗破砕されている任意の木材を用意することができる。
【0023】
使用される木材は、基本的に限定されず、例えば、松材、トウヒ材、カラマツ材、カバ材、ブナ材、枯死オーク材、アルダー材などから選択される木材を使用することができるが、これらに限定されない。
【0024】
原木は、例えば、原材料として使用される木材を粗く刻むこと、またその皮を剥き、粗い不純物をそれから取り除く、すなわち、例えば砂成分または石をそれから取り除くことにより、木材チップに加工されてもよい。木材チップのサイズは、繊維板を製造する当業者に知られているように、基本的には限定されない。
【0025】
工程b)によれば、プロセスは、1つの熱処理装置内または複数の熱処理装置内で木材チップを熱処理する工程を含む。この工程では、木材チップは、例えば前もって木材からVOCを除去するために、圧力下で、蒸気または熱水で処理されてもよい。したがって、この工程における温度は、少なくとも部分的に100℃を超える範囲内であり得る。さらに、熱処理(単数または複数)は、木材チップをさらに清浄化する機能を果たしてもよい。
【0026】
工程c)によれば、木材チップは、リファイナー内で破砕される。この工程では、事前に粗破砕されていた木材は、製造されるボードに好適な形状となるようにさらに破砕される。これは、当業者に一般的に知られているように、例えば、粉砕機構、または木材チップに導入されるエネルギー、および/または木材チップの処理の期間を調整することにより調整され得る。特に、この工程は、木材チップを解繊する工程を含み得る。
【0027】
工程c)の後に得られる、破砕または解繊された木材チップは、その後、工程d)に従って接着される。接着することは、特に、接着剤として機能を果たす結合剤を含むマトリックス中に木材チップを導入することを意味すると理解される。結合剤または接着剤は、例えばメラミンまたはフェノールで強化された、例えば、尿素-ホルムアルデヒド樹脂であり得る。さらに、接着剤または結合剤は、硬化後に安定構造が形成され、これが対応する繊維板として機能を果たすことができるように、例えば、熱を適用することにより硬化可能であることが好ましい。
【0028】
したがって、解繊され、接着された木材チップは、その後、工程e)に従って圧締されて、特に熱および/または電磁放射線を適用することにより繊維板を形成し得る。当然のことながら、この工程で適用される具体的なパラメータは、圧締される材料、特に使用される接着剤または結合剤に応じて決まる。
【0029】
ここに記載のプロセスでは、工程f)に従って、プロセスで使用されるまたは生じる蒸気が、少なくとも1つの蒸気排出位置において、制御された方式で、プロセスから分離され、蒸気が、全分離蒸気の量範囲の下限および上限が、工程a)で使用される木材チップの少なくとも1つの仕様に応じて決まるような所定量範囲で分離されることがさらに提供される。蒸気の分離は、好ましくは連続的に実行され得る。蒸気の連続分離は、例えば、途切れのない分離または断続的で周期的な分離を含み、したがって定義可能な周期的に繰り返される一時停止を含む。
【0030】
特に、プロセスで使用されるまたは生じる蒸気を、少なくとも1つの蒸気排出位置において、制御された方式で、プロセスから分離し、蒸気が、全分離蒸気の量範囲の下限および上限が、工程a)で使用される木材チップの少なくとも1つの仕様に応じて決まるような所定量範囲で分離されることにより、関連技術による解決策と比較して大きな利点を達成することができる。
【0031】
本発明は、特に、VOCは蒸気中に蓄積するので、プロセスから蒸気を分離することにより、生成物流からVOCを分離することができるという事実に基づいている。したがって、対応する蒸気分離により、結果として、製造された製品、すなわち製造された繊維板からの排気ガスまたはフュームなどのVOC排出量は減少する。
【0032】
驚くべきことに、VOC排出量の大幅な減少を達成するためにプロセスから大量の蒸気を連続的に分離する必要がないことが見出された。むしろ、たとえ比較的少量の蒸気の排出であっても、ほとんど全量のVOC、特にテルペンを除去することができることが見出された。これにより、除去される蒸気量、したがって、例えば、さらに処理される蒸気量を大幅に減少させることできる。これにより、プロセス全体が複雑になることを抑制し、したがって費用を削減することできる。
【0033】
さらに、繊維板の製造では、多くの場合、対応する加工工程に十分な蒸気量を得るために、プロセスの間に既に生じている蒸気に加えて追加の蒸気を生成することが必要である。しかし、蒸気の生成もまた複雑さおよび費用に関連しており、これを本発明により大幅に減少させることができる。
【0034】
本明細書に記載のプロセスでは、このプロセスにおける最も重要なVOCとしてのテルペンが150℃を超える沸点を有していても、排気蒸気流または一般に100℃未満の温度を有する蒸気流でさえ、かなりの量の揮発性有機物質、特にテルペンを含有し得ることが見出されたことも利用される。そのため、本明細書に記載のプロセスでは、その発生源または局所的な分離点にかかわらず、蒸気の全分離量に焦点を当てることが有利である。
【0035】
蒸気流の分離は、基本的に関連技術を使用して実行されてもよく、蒸気が処理されてVOCが回収され、VOCと一緒に直接環境に放出されないことが有利である。例えば、蒸気は、過圧または陰圧を用いて分離され得る。
【0036】
全分離蒸気の量範囲の下限および上限が、工程a)で使用される木材チップの少なくとも1つの仕様に応じて決まるような所定量範囲で蒸気を分離する工程は、以下でさらに詳しく説明されるように様々な方法で実行することができる。本明細書に記載のプロセスに従って、製造された繊維板は、特にそれらの特定の応用分野に応じて、さらに加工されてもよい。例えば、製造された繊維板は、研削されても、もしくはより小さいボードに鋸断されてもよく、または追加の層を例えばラミネート法で適用してもよい。さらに、互いにまたは他の基材との接着の機能を果たし得るある特定の構造をボードに導入することができる。このように、繊維板は、有利には、所望の用途向けとしてもよい。
【0037】
木材チップの少なくとも1つの仕様に関して、1つの仕様のみが、分離される蒸気量を決定するための基準としての機能を果たしてもよく、または好ましくは複数の仕様が、分離される蒸気量を決定するための基準としての機能を果たしてもよいことが言及されるべきである。
【0038】
例えば1つの仕様または複数の仕様は、以下の仕様から選択され得る。
【0039】
特に仕様は、プロセスで使用される木材チップの量であり得る。例えばバッチ処理において、木材チップおよび蒸気の両方の量は絶対量であり得、または、例えば連続処理において、木材チップおよび蒸気の両方の量は、単位時間あたりの量であり得る。木材チップの特定の構成および成分にもかかわらず、木材チップの量は、木材によりプロセスに導入されるVOCに対して、したがって同様に放散されるVOCに対して重大な影響を有しており、そのため、分離される蒸気量を決定する際に、好ましくは木材チップの量が考慮されるべきであることが理解できる。
【0040】
使用される木材チップの量の代わりにまたは好ましくはそれに加えて、量範囲の下限および上限が、工程a)で用意される木材チップに含有されるVOC、特にテルペンの量に応じて決まることが好ましい場合がある。したがって、特に、木材チップの量に対して木材中に存在するVOCの量がどのくらい、したがって特にテルペンの量がどのくらい木材チップに含まれるかが決定または推定され得る。換言すると、木材チップの量に基づいて重量パーセントで木材チップ中に存在するテルペンまたはVOCの量が考慮され得る。
【0041】
この仕様は、異なる種類の木材はまた異なる量のテルペンも有していることが示されているので、特に有利であり得る。したがって、ある特定の量の木材チップ中に存在するVOCの量は、使用される木材の具体的な種類に応じて決まり得る。
【0042】
特に、蒸気の分離の間に生じるVOCの変動のために少なくない蒸気が分離され、したがって、望ましくない大量のVOCが生じることが確認されているので、そのような仕様を選択することにより、分離される蒸気量は、特に確実に減少させることができる。さらに、分離される蒸気量、および生成される可能性がある蒸気量を、前述のリスクなしでやはり確実に減少させることができる。
【0043】
使用される木材チップを検査することにより決定される、または使用される木材チップの種類に基づいて推定される、工程a)で使用される木材チップに含有されるVOC、特にテルペンの量にとっても有利であり得る。
【0044】
木材チップを検査することによりVOCの量を決定することにより、木材チップに含有されるVOCの特に正確な決定を可能にすることができ、その結果、分離される蒸気量の決定も、非常に正確に実行することができる。ここで、VOC量は、木材チップの成分を分析することにより公知の方法で決定することができる。これは、例えば、VOCの含有量を、保管中のフュームの排出により、または同じ種類の木材に含有されるVOCの変動のために単に減少させることができるので、有利であり得る。
【0045】
特に木材チップがどの種類の木材から形成されたかを考慮して、使用される木材チップの種類に基づいて木材チップに含有されるVOC、特にテルペンを推定することで、VOC量の特に単純な決定を可能にすることができ、複雑さを最小限に抑えることができる。この構成は、特に、カバまたはトウヒなどの異なる種類の木材が、多くの場合異なる量のVOC、例えばテルペンを有しているが、含有されるVOCの量、特に含有されるテルペンの量が、木材の種類の特徴を示すという事実に基づき得る。したがって、使用される木材の種類を知ることで、分析を実行することなく、VOC量を事前に推定することができる。
【0046】
それぞれの木材のVOC量が不正確である可能性があっても重大ではないことを確認するため、分離蒸気の量は、定義可能な安全率を含めて決定することができる、すなわち、テルペンの量に関する利用されたデータに従って必要とされるよりも明確に大量の蒸気を分離してもよい。これにより、プロセスから除去されるVOCの量を特に安全かつ確実に減少させることも可能になる。
【0047】
工程f)での蒸気の全分離量が、用意される木材チップのテルペンの量に基づいて、その質量の0.5~100倍、好ましくはその質量の0.5~50倍、より好ましくはその質量の0.5~10倍の量範囲であれば十分であることが見出された。この量は、関連技術から、例えばUS4,925,527での解決策において分離される蒸気量を大きく下回るが、驚いたことに、本質的にプロセスからVOCの総量を除去するのに十分であり、したがって本明細書に記載の繊維板を製造するためのプロセスでのVOC排出量を大幅に減少させる。したがって、例えば、ここに記載のプロセスまたはプロセスで分離される蒸気量が、木材チップによりプロセスに導入されるテルペンなどのVOCの量に基づく場合、驚くほど少量の蒸気が分離され得、本発明による課題を解決するのに十分であることが示されている。
【0048】
代わりにまたはさらに、用意された木材チップの乾燥質量もまた、分離される蒸気量を決定するための良好な指標であり得る。したがって、工程f)での蒸気の全分離量が、用意される木材チップの乾燥質量に基づいて、その質量の0.001~0.2倍、好ましくはその質量の0.001~0.1倍、より好ましくはその質量の0.001~0.02倍の量範囲内であることが有利であり得る。
【0049】
そのような相関があっても、分離される蒸気量は、関連技術から、例えば米国特許第4,925,527号明細書(特許文献4)での解決策において分離される量を大きく下回るが、また驚いたことにプロセスからのVOCのほぼ総量を除去するのに十分であり、したがってここに記載の繊維板を製造するためのプロセスでのVOC排出量を大幅に減少させる。したがって、例えば、ここに記載のプロセスまたはプロセスで分離される蒸気量が、用意される木材チップの乾燥質量に基づく場合、驚くほど少量の蒸気が分離され得、本発明による課題を解決するのに十分であることも示されている。
【0050】
ここで、木材または木材チップの乾燥質量は、一般的な木材加工では通例であるように、特に絶対乾燥(atro-absolut trucken)木材を指す。さらに、使用される木材の乾燥質量は、使用される木材の種類についての既知のデータに基づいて分析により決定または推定することができる。さらに、連続またはバッチ処理では、質量は、上述したように、単位時間あたりの量として、または絶対量として容易に決定することができる。
【0051】
少なくとも1つの蒸気排出位置が、リファイナーの上流に配置されていること、すなわち、リファイナーよりも前の加工順序にあることもまた、有利であると示されている。かなりの量のVOCが、リファイナーよりも前に木材から既に除去されていることが示されており、したがって、リファイナーよりも前に、蒸気分離によってプロセスから、VOCを除去することが有利である。一方では、これにより、効果的なVOC除去が実現し得る。その上、プロセス中でVOCが運ばれ、それにより除去がより困難になり得ることを防ぐことができる。
【0052】
リファイナーの上流への配置に関して、リファイナーの上流に配置されている蒸気排出位置が、熱処理装置を含むこと、またはリファイナーと、クッカーなどの熱処理装置との間に配置されていることは、特に有利であり得る。VOC、特に、テルペンを、これらの配置で、蒸気分離によってプロセスから効果的に除去することができることが示されており、本構造において、プロセスを特に効果的に実施することを可能にしている。したがって、蒸気排出位置が、木材チップクッカーよりも前の蒸気処理装置、もしくは木材チップクッカー自体であること、または蒸気処理装置とクッカーとの間に位置することもまた、有利であり得る。これらの排出位置でも、VOC、および特にテルペンを、プロセスから効果的に除去できることが示されている。
【0053】
ここで、リファイナーの上流などの、ある配置の上流での蒸気分離は、木材チップの主要な材料流または蒸気の再循環における配置であってもよく、蒸気の再循環は、主要な材料流とは反対方向に流れるが、その配置が主要な材料流の対応する配置に隣接していることから、または蒸気の再循環のルーティングのために、やはり上流として記載され得る。したがって、例えば、リファイナーから熱処理装置への蒸気の再循環は、リファイナーの上流とみなされるべきである。
【0054】
上記の通り、1つまたは複数のリファイナーの上流の蒸気排出位置で蒸気を分離することは、非常に効果的であり得る。特に、ここに記載されるプロセスは、非常に少量の蒸気のみを分離するという事実によって特徴付けられるため、特に効果的な蒸気分離ができるように、およびVOCをできるだけ完全にプロセスから除去するために、少なくとも1つの蒸気排出位置が、リファイナーの下流に配置されていることが有利であり得る。本構造は、したがって、リファイナーの上流で全てのテルペンを除去せずとも、リファイナーの下流のプロセスからこれらを排除することができる。
【0055】
特に本構造においては、VOC排出量の減少は、特に効果的に減少し得る。
【0056】
VOC排出量の効果的な減少の観点から、リファイナーの下流に配置されている蒸気排出位置が、リファイナーの下流に配置されている蒸気セパレーターであることは、特に有利であり得る。蒸気セパレーターは、プロセスから蒸気を除去することを目的とした装置であると理解される。したがって、効果的なVOC減少に加え、本構造はまた、複雑な機器を必要とせず実装することができる。
【0057】
少なくとも1つの蒸気排出位置が、液体流から生成されることもまた、好ましいことであり得る。本構造において、よって蒸気は、対応する熱い液体流から生じ得、次いで分離される、または蒸気が生じないより低温の液体流を、そのように生成された蒸気流を分離するために蒸気が生じるまで加熱することができる。
【0058】
本構造においては、木材から流出したVOCまたはテルペンが、蒸気中に蓄積するだけではなく、少なくとも少量が液体流中でも認められることを考慮に入れることができる。これらの液体流からの蒸気排出によって、次いで、VOCのかかる部分を効果的にプロセスから除去することができ、それにより、さらにVOCの減少を全体として効果的なものにすることができる。
【0059】
VOCが認められ得る液体流の例は、圧密スクリューに直接由来する圧搾水流、または圧密スクリュー由来の圧搾水流から生じる液体流を含む。
【0060】
工程g)に従って除去したVOC含有蒸気が収集されること、場合により、1つまたは複数の成分がさらに処理されることもまた、有利であり得る。本構造において、分離蒸気流の収集が可能であること、および場合によってはそれらのさらなる処理に起因して、プロセスは、このようにVOC排出量を減少させる機能を果たすだけでなく、はるかにより経済的に実施することもできる。これは、蒸気流に含有される材料、またはその熱などの蒸気流の他の特質を、本プロセスまたは他のプロセスにおいて使用することができ、その結果、費用および資源を節約することができるためである。
【0061】
例えば、さらなる処理として、テルペンの混合物またはテレビン油が単離されることが有利であり得る。かかる物質は、繊維板を製造するためのプロセスの排出物として実際に減少させて環境への放出を防ぐべきである一方、これらの物質は、他のプロセスまたは用途のために価値がある生成物であり得る。このように、本構造は、ここに記載されるプロセスの経済の観点から、および使用する木材の価値創造の観点から特に有利であり得る。さらなる処理として、ハイドロレートが単離される場合も同様である。本発明の意味の範囲内では、ハイドロレートは一般に、ホルムアルデヒドなどのそれぞれの水溶性成分を含有し得る、蒸気の凝縮後に得られる水性相であると理解される。
【0062】
さらに、分離蒸気または1つもしくは複数の成分が、燃焼、もしくは高温への曝露、吸着、吸収、メンブレンテクノロジー技術、凝縮、結晶化、または他の好適なプロセスエンジニアリング技術によってさらに処理されることは、有利であり得る。
【0063】
燃焼または高温への曝露は、例えば、分離蒸気流に含有されるVOCの熱的再燃焼、およびそれにより場合によってはエネルギーの使用を可能にする。他の言及された技術はそれぞれ、個別の物質の単離または分離を指し得る。
【0064】
プロセスにおいて発生する材料流の熱、例えば、分離蒸気流が、プロセスにおいてエネルギーとして再利用されることもまた有利であり得る。本構造において、熱の形態で材料流に内包されるエネルギーは、よって、特に他の材料流を加熱するために、再利用され得る。本工程はまた、本発明によるプロセスの経済的な側面を改善し、よって費用および資源を節約し得る。
【0065】
本発明は、好ましい例示的な実施形態を使用して添付の図面を参照して、以下により詳細に、実施例により説明され、以下に示す特色は、個々におよび組み合わせての両方で、本発明の一態様を表すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1において、本発明によるプロセスを概略的に示す。ここでは、実線の矢印は、主要な材料流を表すことを意図し、破線の矢印は、蒸気の再循環を示すことを意図する。
【0068】
工程10では、木材チップを用意する。これらは、基本的に選択可能な木材から形成し、木材の粗破砕によって、特に粗洗浄によって、用意する。
【0069】
続いて、木材チップを複数の熱処理装置内で処理する。第1の熱処理工程20、第2の熱処理工程40、および第3の熱処理工程50において、これを実現する。
【0070】
本発明の意味の範囲内では、概して、VOC含有排気ガスが高温を有することが規定されている。これは特に水の沸点、すなわち100℃よりも高く、この温度が、熱処理の間も、少なくとも部分的に存在し得るような温度を意味する。
【0071】
第1の熱処理工程20を、いわゆるプレプレ蒸気容器(pre-pre-vapor container)において、最大で約100℃の好ましい温度で、特に大気圧下で、実施する。これが、木材チップの第1の熱処理であり、蒸気、好ましくは、水蒸気を使用して実施する。ここでは、VOCの一部分が、木材チップから蒸気へ移動し得る。このVOC含有蒸気を、蒸気排出位置で、好ましくは、装置の上部から、および例えば、屋根の上に配したパイプラインを介して、第1の熱処理装置から除去することができる。
【0072】
引き続き、第2の熱処理工程40の前に、木材チップを、清浄化工程30において、洗浄または清浄化する。洗浄装置における木材チップの清浄化を、特に、室温を超え、かつ水の沸点以下の温度、特に80℃~100℃の間で実施する。高温により、より良好な木材チップと異物の分離が可能になる。このように、木材チップではない異物を加工システムからろ過し、除去する。木材チップの清浄化は、好ましくは、水含有の、特に、水ベースの媒体により実施する。
【0073】
洗浄装置が、前述の第1の熱処理装置からのVOC含有凝縮物を受け取ることは、有利な選択肢である。このVOC含有凝縮物を、洗浄中に放出されるVOCと一緒に加工システムから除去することができる。
【0074】
木材チップの第2の熱処理工程40は、VOC含有排気ガスを受け取り、放散する、特に第1の熱処理装置に戻すように構成されているプレ蒸気容器(pre-vapor container)とも呼ばれる第2の熱処理装置で実行される。第2の熱処理は、例えば、圧力をかけず、室温を超える温度、特に水の沸点以下の温度、すなわち100℃以下で実行される。高温により、木材チップからのVOCのより良好な放出が可能になる。VOC含有排気ガスは、特に、第2の熱処理装置から放散される、および/または第1の熱処理装置に送られる。さらに、プロセスを実行するために後で使用される装置からのVOC含有排気ガスは、木材チップをさらに加熱するため、またはVOCを放出するために第2の熱処理装置に供給され得る。
【0075】
一例として、他の特色とは無関係に、第2の熱処理装置内の木材チップの第2の熱処理は、蒸気、好ましくは水蒸気を使用して実行される可能性がある。ここで、VOCの一部は、木材チップから蒸気に移動し得る。このVOC含有蒸気は、第2の熱処理装置から、好ましくはその上部から、例えば屋根の上に配したパイプラインを介して放散される可能性がある。VOC含有蒸気の放散の代わりにまたはさらに、一部または全部の蒸気は凝縮され、凝縮物として木材チップからVOCを放出することができる。このVOC含有凝縮物は、例えば圧密スクリュー、クッカー、および/または水処理プラントに送られてもよい。
【0076】
第3の熱処理工程50は、特にいわゆるクッカーで実行されてもよい。VOC含有排気ガスを受け取り、放散するように構成される可能性があるクッカーでの木材チップの蒸解は、例えば室温を超える温度で、特に3bar~15barの間(両端を含む)、好ましくは5bar~13barの間(両端を含む)、好ましくは9barで、水の沸点、すなわち100℃を超える温度で、例えば90~175℃で実行される。高温により、木材チップからのVOCのより良好な放出が可能になる。木材チップの清浄化は、好ましくは水含有の、特に水ベースの媒体で実行される。第1および第2の熱処理は、木材チップに含有されるVOCが効率的にクッカーから放出されるように、木材チップを加熱し、軟化させている。液滴セパレーターは、好ましくはクッカーの下流で接続される。
【0077】
第2の熱処理装置から前述のVOC含有凝縮物を受け取ることは、クッカーの上流にある圧密スクリューおよび/またはクッカー自体にとって有利な選択肢である。このVOC含有凝縮物は、蒸解中に任意選択で放出されたVOCとともに圧密スクリューを介しておよび/またはクッカーを介して加工システムから放散され得る。
【0078】
続いて、木材チップは、破砕または解繊工程60においてリファイナーで破砕される。リファイナーの構造および操作は、ボードの所望の応用分野に適応可能であり得る。原則として、木材チップ1トンあたり50~200kWhの粉砕エネルギーは、リファイナーの一部であり、木材チップを解繊する粉砕工具を介して導入され得る。木材チップ1トンあたり約50kWhなどのより低い粉砕エネルギーは、床材に適しており、木材チップ1トンあたり150kWhは、高品質家具に適している。
【0079】
リファイナーから始まり、このように得られた解繊木材チップまたは木材繊維は、いわゆるブローラインを通って案内され、リファイナーから入ってくる木材繊維を乾燥するための乾燥工程70は、乾燥機で実行される。これは、高温で再度実行される可能性があり、ここで、得られる多湿雰囲気は、分離工程80により木材繊維から除去される可能性がある。残った成分、特にVOC含有成分を洗い落とすことができ、再利用または回収することが可能であるように、排気空気は、例えば洗浄され得る。
【0080】
このように得られた乾燥した解繊木材チップまたは木材繊維は、加工工程90で繊維板に加工される。この目的のために、解繊木材チップは、接着されてもよく、接着された解繊木材チップは、ボードに圧締されてもよい。続いて、ボードに、特定の用途のための最終加工を行ってもよい。
【0081】
本明細書に記載のプロセスでは、蒸気が生成されるか、追加の蒸気が供給される。プロセスの間に原木から生じるVOCを有利に除去するために、プロセスで使用されるまたは生じる蒸気が、少なくとも1つの蒸気排出位置で、プロセスから連続的に分離され、蒸気は、全分離蒸気の量範囲の下限および上限が、工程a)で使用される木材チップの少なくとも1つの仕様に応じて決まるような所定量範囲で分離されることが規定されている。
【0082】
したがって、VOCを除去するための蒸気の分離は、木材チップまたはそれらの木材によりプロセスに導入されるVOCに応じて決まる。これは、例えば、導入される木材の量および/もしくは種類または具体的には導入されるVOCの量を考慮して実行され得る。特に、蒸気の全分離量は、用意される木材チップのテルペンの量に基づいて、その質量の0.5~100倍、好ましくはその質量の0.5~50倍、より好ましくはその質量の0.5~10倍の量範囲内であり得る。代わりにまたはさらに、蒸気の全分離量は、用意される木材チップの乾燥質量に基づいて、その質量の0.001~0.2倍、好ましくはその質量の0.001~0.1倍、より好ましくはその質量の0.001~0.02倍の量範囲であり得る。
【0083】
種々の蒸気排出位置を使用して、蒸気を分離し、よってVOCを除去することができる。蒸気排出位置は、特に蒸気をプロセスから分離することができる位置であると理解される。
【0084】
例えば、以下の蒸気排出位置:プレプレ蒸気容器もしくは第1の熱処理装置、プレ蒸気容器もしくは第2の熱処理装置、クッカーもしくは第3の熱処理装置、またはリファイナーは、蒸気を分離するのに好適である。第1の熱処理装置の後、第2と第3の熱処理装置との間などのスクリューもしくは搬送機器などの運搬ユニット、または第3の熱処理装置とリファイナーとの間のスクリューなどの運搬ユニットもまた好適である。脱水スクリューなどの脱水ユニット、または個別のプロセスユニット間の蒸気の再循環もまた、好適である。
【0085】
しかしながら、以下の気体排出位置が、特に好適であることが見出された。
【0086】
例えば、少なくとも1つの気体排出位置を、リファイナーの上流に配置することができる。この関連の配置は、例えば、熱処理装置、もしくはリファイナーと熱処理装置との間の蒸気の再循環における配置、木材チップクッカーよりも前の蒸気処理装置、もしくは木材チップクッカー自体、または蒸気処理装置とクッカーとの間の蒸気の再循環を含む。
【0087】
代わりにまたはさらに、少なくとも1つの蒸気排出位置が、リファイナーの下流に配置されていることは、有利であり得る。この関連で、リファイナーの下流に配置されている蒸気排出位置が、リファイナーの下流に配置されている蒸気セパレーターであることは有利である。
【0088】
さらに、少なくとも1つの蒸気排出位置が液体流から生成されることは、特に好ましいことであり得る。例として、圧密スクリューに直接由来する圧搾水流、または圧密スクリュー由来の圧搾水流から生じる液体流が挙げられる。
【0089】
本明細書に記載されるプロセスにより、繊維板、特にHDFまたはMDF板の製造におけるVOC排出量を減少させるための費用および資源を節約する方法が可能となる。
【符号の説明】
【0090】
10 木材チップを用意する工程
20 第1の熱処理工程
30 清浄化工程
40 第2の熱処理工程
50 第3の熱処理工程
60 破砕工程
70 乾燥工程
80 分離工程
90 加工工程
【手続補正書】
【提出日】2024-03-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
VOC排出量を減少した繊維板を製造するためのプロセスであって、
a)木材を含有する木材チップを用意する工程、
b)1つの熱処理装置内または複数の熱処理装置内で前記木材チップを熱処理する工程、
c)前記木材チップをリファイナー内で破砕する工程、
d)前記木材チップを接着する工程、
e)前記接着された木材チップを圧締して、前記繊維板を形成する工程、
を少なくとも含み、
f)前記プロセスで使用されるまたは生じる蒸気が、少なくとも1つの蒸気排出位置において、制御された方式で、前記プロセスから連続して分離され、全分離蒸気の量範囲の下限および上限が、工程a)で使用される前記木材チップの少なくとも1つの仕様に応じて決まるような所定量範囲で、前記蒸気が分離されることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
前記分離蒸気の量範囲の下限および上限が、工程a)で用意される木材チップの量に応じて決まることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記分離蒸気の量範囲の下限および上限が、工程a)で用意される前記木材チップに含有されるVOC、特にテルペンの量に応じて決まることを特徴とする、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項4】
工程a)で使用される前記木材チップに含有されるVOC、特にテルペンの量が、使用される前記木材チップを検査することにより決定される、または使用される木材チップの種類に基づいて推定されることを特徴とする、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
工程f)における蒸気の全分離量が、用意される前記木材チップのVOC量に基づいて、その質量の
0.5~100倍の量範囲内であることを特徴とする、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項6】
工程f)における蒸気の全分離量が、用意される前記木材チップの乾燥質量に基づいて、その質量の
0.001~0.2倍の量範囲内であることを特徴とする、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項7】
少なくとも1つの蒸気排出位置が、前記リファイナーの上流に配置されていることを特徴とする、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記リファイナーの上流に配置されている前記蒸気排出位置が、熱処理装置を含む、または前記リファイナーと熱処理装置との間に位置することを特徴とする、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記リファイナーの上流に配置されている前記蒸気排出位置が、木材チップクッカーよりも前の蒸気処理装置、もしくは前記木材チップクッカー自体である、または前記蒸気処理装置と前記木材チップクッカーとの間に位置することを特徴とする、請求項
7に記載のプロセス。
【請求項10】
少なくとも1つの蒸気排出位置が、前記リファイナーの下流に配置されていることを特徴とする、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記リファイナーの下流に配置されている前記蒸気排出位置が、前記リファイナーの下流に配置されている蒸気セパレーターであることを特徴とする、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
少なくとも1つの蒸気排出位置が、液体流から生成されることを特徴とする、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記液体流が、圧密スクリューに直接由来する圧搾水流、または圧密スクリュー由来の圧搾水流から生じる液体流であることを特徴とする、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
工程f)に従って除去されたVOC含有蒸気が収集され、場合により、1つまたは複数の成分がさらに処理されることを特徴とする、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項15】
さらなる処理として、テルペンの混合物またはテレビン油が単離されることを特徴とする、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
さらなる処理として、ハイドロレートが単離されることを特徴とする、請求項
14に記載のプロセス。
【請求項17】
前記分離蒸気または1つもしくは複数の成分が、燃焼、もしくは高温への曝露、吸着、吸収、メンブレンテクノロジー技術、凝縮、結晶化、または他の好適なプロセスエンジニアリング技術によってさらに処理されることを特徴とする、請求項
14に記載のプロセス。
【請求項18】
前記プロセスにおいて発生する材料流の熱が、前記プロセスにおいてエネルギーとして再利用されることを特徴とする、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項19】
分離蒸気流の熱が、前記プロセスにおいてエネルギーとして再利用されることを特徴とする、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項20】
MDF板またはHDF板が製造されるサーモメカニカルプロセスであることを特徴とする、請求項
1に記載のプロセス。
【国際調査報告】