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特表2024-524760眼鏡または他の眼科用レンズに適用するためのグリン要素を有するフィルム
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  • 特表-眼鏡または他の眼科用レンズに適用するためのグリン要素を有するフィルム 図1
  • 特表-眼鏡または他の眼科用レンズに適用するためのグリン要素を有するフィルム 図2
  • 特表-眼鏡または他の眼科用レンズに適用するためのグリン要素を有するフィルム 図3A
  • 特表-眼鏡または他の眼科用レンズに適用するためのグリン要素を有するフィルム 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】眼鏡または他の眼科用レンズに適用するためのグリン要素を有するフィルム
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/02 20060101AFI20240628BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240628BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240628BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
G02C7/02
G02B3/00 B
G02B3/00 A
G02B1/14
G02C7/04
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024504525
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 GB2022051975
(87)【国際公開番号】W WO2023007158
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/227,373
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521013611
【氏名又は名称】クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】サハ スーラフ
(72)【発明者】
【氏名】チェンバレン ポール
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー アーサー
(72)【発明者】
【氏名】アルムガム バスカール
【テーマコード(参考)】
2H006
2K009
【Fターム(参考)】
2H006BC03
2K009CC21
(57)【要約】
眼科用レンズに適用するためのフィルム(100)が説明される。当該フィルム(100)、または、当該フィルム(100)と眼科用レンズとの組み合わせが、近視の発症または進行を予防または遅らせるように設計される。当該フィルム(100)は、ベース屈折率を有し、少なくとも1つの屈折率分布型光学素子(102)を含む。当該フィルム(100)を含む眼鏡レンズ及びコンタクトレンズなどの眼科用レンズも説明される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用レンズに適用するためのフィルムであって、
ベース屈折率を有しており、
少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含む
ことを特徴とするフィルム。
【請求項2】
当該フィルムの領域全体に分布された複数の屈折率分布型光学素子を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記複数の屈折率分布型光学素子は、三角格子の格子点上に分布されている
ことを特徴とする請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの屈折率分布型光学素子の各々が、光硬化された光学素子である
ことを特徴とする請求項1乃至3に記載のフィルム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの屈折率分布型光学素子の各々が、二次プロファイルによって定義される変化する屈折率を有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフィルム。
【請求項6】
前記複数の屈折率分布型光学素子が、当該フィルムの表面積の20%~80%を占める
ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載のフィルム。
【請求項7】
中央領域と、前記中央領域を取り囲む環状領域と、を備え、
前記環状領域が、前記少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含む
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のフィルム。
【請求項8】
前記環状領域の周囲に、複数の屈折率分布型光学素子が周期的に配置されている
ことを特徴とする請求項7に記載のフィルム。
【請求項9】
複数の同心の環状領域を含み、
各環状領域が、少なくとも1つの屈折率分布型環状光学要素を含む
ことを特徴とする請求項7または8に記載のフィルム。
【請求項10】
第1環状領域内の少なくとも1つの屈折率分布型光学素子が、隣接する第2環状領域内の少なくとも1つの屈折率分布型光学素子に対して、位相がずれている
ことを特徴とする請求項9に記載のフィルム。
【請求項11】
前記環状領域は、前記ベース屈折力を有する層の領域によって、半径方向に分離されている
ことを特徴とする請求項9または10に記載のフィルム。
【請求項12】
前記環状領域は、互いに隣接している
ことを特徴とする請求項9または10に記載のフィルム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの屈折率分布型光学素子の各々が、10μm~2mmの直径または幅を有する
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のフィルム。
【請求項14】
1μm~70μmの厚さを有する
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のフィルム。
【請求項15】
当該フィルムを眼科用レンズの表面に接着するための接着面
を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載のフィルム。
【請求項16】
当該フィルムが眼科用レンズの表面に適用される時に、保護層を提供するように構成された基材
を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載のフィルム。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれかに記載のフィルム
を備えたことを特徴とする眼科用レンズ。
【請求項18】
眼鏡レンズである
ことを特徴とする請求項17に記載の眼科用レンズ。
【請求項19】
コンタクトレンズである
ことを特徴とする請求項17に記載の眼科用レンズ。
【請求項20】
請求項18に記載の眼科用レンズ
を備えたことを特徴とする眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年7月30日に出願された米国特許仮出願第63/227,373号の35U.S.C.(米国特許法)§119(e)に基づく利益を主張する。当該出願は、その全体が、当該参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、眼科用レンズに適用するための少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含むフィルム、及び、そのようなフィルムを備えた眼科用レンズ、に関する。
【背景技術】
【0003】
子供と大人とを含む多くの人が、近視(近眼)を矯正するために眼科用レンズを必要としており、多くの大人が老眼(加齢に伴う調節能力の低下により近くの物体に焦点を合わせることができない状態)を矯正するために眼科用レンズを必要としている。眼科用レンズは、また、遠視(遠眼)、乱視、円錐角膜(角膜が徐々に膨らんで円錐形を形成する状態)を矯正するために必要とされる場合もある。
【0004】
近視の目は、遠くの物体からの入射光を網膜の前方の位置に焦点合わせする。その結果、光は、網膜の前方の面に向かって集束してから、網膜に向かって発散し、網膜に到達する時には焦点が外れている。近視を矯正するための従来のレンズ(例えば、眼鏡レンズやコンタクトレンズ)は、輻輳を減少させるか(コンタクトレンズの場合)、あるいは、遠方の物体からの入射光が目に到達する前に当該入射光の発散をもたらし(眼鏡レンズの場合)、これにより、焦点の位置が網膜上に移動される。
【0005】
数十年前に、子供や若者の近視の進行は、過小矯正、すなわち、焦点を網膜に近づけるが完全に網膜上にまでは近づけない、によって、遅らせたり予防したりできることが提案された。しかしながら、当該アプローチは、必然的に、近視を完全に矯正するレンズで得られる視力と比較して、遠方視力の低下をもたらす。更に、近視の進行を制御するのに過小矯正が有効であるというのは、現在では疑わしいと見なされている。より最近のアプローチは、遠方視力の完全な矯正を提供する領域と、過小矯正すなわち意図的に近視性デフォーカスを誘導する領域と、の両方を有するレンズを提供することである。レンズの完全な矯正領域を通過する光と比較して、特定の領域で光の散乱を増大させるレンズもまた提供され得る。これらのアプローチは、良好な遠方視力を提供しながら、子供や若者の近視の発症または進行を予防または遅らせることができる、と示唆されている。
【0006】
デフォーカスを提供する領域を有するレンズの場合、遠方視力の完全な矯正を提供する領域は、通常、ベース屈折力領域と呼ばれ、過小矯正を提供するかまたは意図的に近視性デフォーカスを誘導する領域は、通常、追加屈折力領域または近視性デフォーカス領域と呼ばれる(屈折力が、遠方領域の屈折力(視度)よりも、より正であるか、より少ない負である)。追加屈折力領域の表面(典型的には前面)は、遠方屈折力領域の曲率半径よりも小さい曲率半径を有し、従って、より正またはより少ない負の屈折力(度数)を目に提供する。追加屈折力領域は、入ってくる平行光(すなわち、遠くからの光)を網膜の前方(すなわち、水晶体により近い)の眼中に集束させるように設計される。遠方屈折力領域は、光を集束させて網膜に像を形成するように設計される(すなわち、水晶体からより通い)。
【0007】
特定の領域で光の散乱を増大させるレンズの場合、散乱を増大させる特徴がレンズ表面内に導入され得るか、あるいは、当該レンズを形成するために使用される材料内に導入され得る。例えば、散乱要素がレンズ内に焼き付けられ得て、あるいは、レンズ内に埋め込まれ得る。散乱要素は、レンズ材料に埋め込まれたレーザアブレートされた光学素子であってもよい。
【0008】
近視の進行を軽減する既知のタイプのコンタクトレンズは、MISIGHT(CooperVision, Inc.)の名称で入手できる二重焦点コンタクトレンズである。この二重焦点レンズは、老眼の視力を改善するように構成された二焦点コンタクトレンズや多焦点コンタクトレンズとは異なり、遠くの物体と近くの物体との両方を見るために、遠方矯正(すなわち、ベース屈折力)の使用を提供できる所定の光学的寸法で構成される。追加屈折力を有する二重焦点レンズの治療ゾーンは、遠くと近くの両方の視距離で近視性デフォーカスな像を提供する。
【0009】
これらのレンズは、近視の発症または進行を予防または遅らせるのに有益であることが見出されているが、環状の追加屈折力領域は、不所望の視覚的副作用を引き起こし得る。網膜の前方に環状の追加屈折力領域によって集束される光は、焦点から発散して、網膜にデフォーカスされた(焦点がずれた)輪を形成する。従って、これらのレンズの着用者は、特に街灯や車のヘッドライトなどの小さくて明るい物体の場合、網膜上に形成される像の周囲にリングまたは「ハロー」が見える場合がある。また、近くの物体に焦点を合わせるために、目の自然な遠近調節(すなわち、焦点距離を変える目の自然な能力)を使用するのではなく、理論上、着用者は近くの物体に焦点を合わせるために環状の追加屈折力領域から生じる網膜の前方の追加の焦点を利用し得てしまう。これは、換言すれば、着用者が、老視矯正レンズが使用されるのと同じ態様でレンズを無意識に(気付かずに)使用し得ることになり、これは、若い対象者にとって望ましくない。
【0010】
近視の治療に使用され得て、MISIGHT(CooperVision,Inc.)レンズ及び前述の他の同様のレンズにおいて焦点距離画像の周りに観察されるハローを排除するように設計された、更なるレンズが開発された。当該レンズでは、環状の領域が、軸上画像が網膜の前方に形成されないように構成され、それにより、近くの目標に眼が順応する必要を避けるようにそのような画像が使用されてしまうことを防止する。むしろ、遠方の点光源が、環状の領域によって、近くの追加屈折力焦点面でリング状の焦線に結像され、遠方焦点面の網膜上で、周囲の「ハロー」効果なしに、小さなスポットサイズの光となる。
【0011】
近視の進行を予防または遅らせるために使用される眼科用レンズは、典型的には、そのような目的のために特別に設計されている、ということが認識されている。これらのレンズは、高価であって設計が複雑な場合があり、時間の経過によりレンズ着用者の要件(要求)が変化する場合、異なるレベルの矯正を提供する異なるレンズを購入する必要が生じ得る。
【0012】
本発明は、近視の悪化を防止または遅らせるために使用される既知のレンズに対する単純でコスト効果の高い代替物を提供することを目的とする。このようなレンズは、老眼、遠視、乱視、円錐角膜、または、他の屈折異常、に関連する視力を矯正または改善するのにも有益であり得る。
【発明の概要】
【0013】
第1の態様によって、本開示は、眼科用レンズに適用するためのフィルムを提供する。当該フィルムは、ベース屈折率を有し、少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含む。
【0014】
第2の態様によって、本開示は、フィルムを含む眼科用レンズを提供する。当該フィルムは、ベース屈折率を有し、少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含む。
【0015】
第3の態様によって、本開示は、眼科用レンズを備える眼鏡を提供する。当該眼科用レンズはフィルムを有し、当該フィルムは、ベース屈折率を有し、少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含む。
【0016】
勿論、本開示の一態様に関連して説明される特徴が、本開示の他の態様に組み込まれ得ることが、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本開示の一実施形態による、複数のGRIN素子を含むフィルムの概略平面図である。
【0018】
図2図2は、本開示の一実施形態による、中央領域を取り囲む環状領域を有するフィルムの概略平面図であり、当該環状領域が複数のGRIN素子を含む。
【0019】
図3A図3Aは、本開示の一実施形態による、複数のGRIN素子を含むフィルムの断面図を示す。
【0020】
図3B図3Bは、本開示の一実施形態による、複数の立方体GRIN散乱素子を含むフィルムの断面図を示す。
【0021】
図3C図3Cは、本開示の一実施形態による、複数の球形GRIN散乱素子を含むフィルムの断面図を示し、各素子は当該各要素の中心から半径方向外側に向かって変化する屈折率を有する。
【0022】
図4図4は、本開示の一実施形態による、中央領域を取り囲む環状領域を有するフィルムの概略平面図であり、当該環状領域は三角格子の格子点上に配置された複数のGRIN素子を含む。
【0023】
図5図5は、本開示の一実施形態による、中央領域を取り囲む環状領域を有するフィルムの概略平面図であり、当該環状領域は正方格子の格子点上に配置された複数のGRIN素子を含む。
【0024】
図6図6は、本開示の一実施形態による、フィルム内に含まれ得るGRIN素子の屈折率変化を示すグラフである。
【0025】
図7図7は、本開示の一実施形態による、中央領域を取り囲む環状領域を有するフィルムの概略平面図であり、当該環状領域の一部が複数のGRIN素子を含む。
【0026】
図8図8は、本開示の一実施形態による、中央領域を取り囲む2つの同心の環状領域を有するフィルムの概略平面図であり、各環状領域が複数のGRIN素子を含む。
【0027】
図9図9は、本開示の一実施形態による、複数の同心の環状領域を有するフィルムの概略平面図であり、各環状領域は周期的に配置されたGRIN素子を含む。
【0028】
図10図10は、本開示の一実施形態による、中央領域を取り囲む環状領域を有するフィルムの概略平面図であり、当該環状領域は複数のGRIN素子を含み、異なるGRIN素子は異なるGRIN屈折率プロファイルを有する。
【0029】
第1の態様によって、本開示は、眼科用レンズに適用するためのフィルムを提供する。当該フィルムは、ベース屈折率を有し、少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含む。フィルムは、少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含む架橋ポリマー薄膜であり得る。フィルムは、架橋されていないポリマーのマトリックスから形成されていてもよい。フィルムは、Bayfol(登録商標)HXフィルムであり得る。
【0030】
当該フィルムは、近視の発症または進行を予防または遅らせるために、眼科用レンズに適用するためのものであり得る。当該フィルムは、老眼、遠視、乱視、円錐角膜または他の屈折異常を矯正するために、眼科用レンズに適用するためのものであり得る。
【0031】
フィルムのベース屈折率は、一定であり得る。フィルムのベース屈折率は、1.3~1.8、好ましくは約1.5、であり得る。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々が、ベース屈折力よりも大きい平均屈折力を有し得る。あるいは、少なくとも1つのGRIN光学素子の各々が、ベース屈折力よりも小さい平均屈折力を有し得る。
【0032】
本開示の文脈において、少なくとも1つの屈折率分布(GRIN)光学素子の各々は、変化する屈折率を有する素子である。当該屈折率の変化は、当該素子を横切る屈折率の横方向変化、すなわち、フィルムの表面に沿った方向の屈折率の変化、であり得る。当該屈折率の変化は、屈折率の半径方向の変化であってもよく、すなわち、屈折率が、ある点から半径方向外側に延びるにつれて変化してもよい。当該屈折率の変化は、屈折率の軸方向変化、すなわち、フィルムの表面に垂直な方向の屈折率の変化、であってもよい。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、屈折率の横方向変化と、屈折率の軸方向変化と、を有し得る。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々の屈折率の変化は、線形に変化する屈折率勾配、または、二次関数によって定義される変化プロファイルを有する勾配、であり得る。
【0033】
GRIN素子は、レンズであり得る。有利には、GRIN素子は、デフォーカスを提供し得る。デフォーカスは、近視の悪化を防止または遅らせるのに役立ち得ると考えられている。デフォーカスは、老眼、遠視、乱視、円錐角膜または他の屈折異常に関連する視力を矯正または改善するのにも役立ち得ると考えられている。
【0034】
少なくとも1つのGRIN光学素子の各々が、フィルムの残部に入射する光と比較して、当該GRIN光学素子に入射する光の付加的な散乱を生じさせ得る。あるいは、少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、フィルムの残部に入射する光と比較して、当該GRIN光学素子に入射する光の低減された散乱を生じさせ得る。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率と比較して、少なくとも0.001、好ましくは少なくとも0.005、の最小屈折率変化を有し得る。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率より0.001大きい最小屈折率を有し得る。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率より0.005大きい最小屈折率を有し得る。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率よりも0.005小さい最大屈折率を有し得る。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率よりも0.001小さい最大屈折率を有し得る。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率と比較して、0.1未満、好ましくは0.025未満、の最大屈折率変化を有し得る。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率より0.1大きい最大屈折率を有し得る。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率より0.025大きい最大屈折率を有し得る。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率より0.1小さい最小屈折率を有し得る。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ベース屈折率よりも0.025小さい最小屈折率を有し得る。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、-25D~25D、好ましくは-0.25D~25D、の最小屈折力を有し得る。
【0035】
少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、フィルムの厚さ全体に延在し得る。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、フィルムの厚さの一部に延在し得る。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、フィルム内に内蔵され得る。少なくとも1つのGRIN素子の各々は、形状が略直方体または球形であり得る。
【0036】
フィルムは、眼鏡レンズまたはコンタクトレンズに適用するのに適した面積を有するように、切断され得る、形成され得る、あるいは、成形され得る。フィルムは、眼鏡レンズ用に、構成され、サイズ決定され、及び/または、成形され得て、300mm2~5000mm2、好ましくは1000mm2~3000mm2、の面積を有し得る。眼鏡レンズに適用するためのフィルムは、形状において、円形、長円形(oval)、楕円形(elliptical)、正方形または長方形であり得る。フィルムは、コンタクトレンズに適用するために、構成され、サイズ決定され、及び/または、成形され得て、60mm2~750mm2、の面積を有し得る。コンタクトレンズに適用するためのフィルムの形状は、形状において、円形、長円形(oval)、楕円形(elliptical)、正方形または長方形であり得る。コンタクトレンズに適用するためのフィルムは、6mm~20mm、好ましくは9mm~16mm、の直径を有し得る。
【0037】
フィルムは、均一な厚さを有し得る。コンタクトレンズの場合、フィルムは、1μm~100μm、好ましくは10μm~20μm、より好ましくは14μm~18μm、の厚さを有し得る。眼鏡レンズの場合、フィルムは、1μm~1000μmの間、好ましくは10μm~20μmの間、より好ましくは14μm~18μm、の厚さを有し得る。
【0038】
フィルムは、当該フィルムの領域に分布された複数の屈折率分布型素子を含み得る。複数のGRIN光学素子は、フィルムの全領域に亘って分布され得る。複数のGRIN光学素子は、フィルムの一部に亘って分布され得る。複数のGRIN光学素子は、フィルムの全体または一部に亘ってランダムに分布され得る。複数GRIN光学素子は、フィルムの全体または一部に亘って規則的なパターンで配置され得る。このようなフィルムが眼鏡レンズに適用される場合、これは、レンズ着用者の目がレンズに対して動く時でも(GRIN素子によって引き起こされる)焦点ぼけ(defocus)が維持されることを有利に可能にし得る。眼鏡レンズに亘って分散される複数のGRIN素子は、一貫した近視焦点ぼけ(myoptic defocus)が維持されることを可能にし得る。
【0039】
各屈折率分布型光学素子は、約10μm~約10mmの直径または幅を有し得る。少なくとも1つの屈折率分布型光学素子の各々は、100μm3~3mm3の体積を有し得る。複数の屈折率分布型光学素子は、フィルム層の体積の5%~80%を占め得る。複数の屈折率分布型光学素子は、フィルムの表面積の20%~80%に亘り(広がり)得る。フィルムは、2~5000個の屈折率分布型光学素子を含み得る。屈折率分布型光学素子は、フィルムの表面積の約20%~80%を占め得る。
【0040】
複数のGRIN素子の各々は、同一の屈折率変化を有し得る。複数のGRIN素子の各々は、異なる屈折率変化を有し得る。複数のGRIN素子の幾つかが同一の屈折率変化を有し、他の素子が異なる屈折率変化を有するという態様もあり得る。複数のGRIN光学素子は、同一または類似の屈折率変化を有するGRIN光学素子がクラスタでまたは規則正しい配置でグループ化され得るように、分布され得る。フィルムは、複数の別個の部分に分割可能であり得て、各部分が、異なる屈折率変化を有する複数のGRIN光学素子を含み得る。
【0041】
複数のGRIN光学素子は、フィルムの全体またはフィルムの一部に亘って規則的な間隔で位置決めされ得る。複数のGRIN光学素子は、三角格子の格子点上に配置され得る。複数のGRIN光学素子は、正方形格子または長方形格子の格子点上に配置され得る。複数のGRIN光学素子は、環状パターンを形成するように配置され得る。当該環状パターンは、単一の環、または、複数の同心の環、を含み得る。
【0042】
少なくとも1つの屈折率分布型光学素子の各々は、光硬化された光学素子であり得る。各屈折率分布型光学素子は、光硬化を使用して形成され得る。各屈折率分布型光学素子は、デジタル光投影システム、直接的なレーザ書き込みシステム、または、コリメートされたLEDまたはレーザ光源、を用いた光硬化を使用して形成され得る。2光子共焦点顕微鏡ベースのレーザ照明システムなどの、高解像度3D光硬化可能システムが、各GRIN素子を光硬化するために使用され得る。
【0043】
少なくとも1つの屈折率分布型光学素子の各々が、二次関数によって定義される変化屈折率プロファイルを有し得る。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、高次の多項式関数によって定義される変化屈折率プロファイルを有し得る。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、ガウス関数によって定義される変化屈折率プロファイルを有し得る。
【0044】
フィルムは、中央領域と、当該中央領域を取り囲む環状領域と、を含み得る。環状領域は、少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含み得る。中央領域は、ベース屈折率を有し得る。少なくとも1つのGRIN光学素子の各々は、前述のGRIN光学素子であり得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、環状領域という用語は、中央領域の外縁全体の周りに延在し得る領域、あるいは、中央領域の外縁の周りに部分的に延在し得る領域、を示す。環状領域は、円形、長円形(oval)、または、楕円形(elliptical)、の形状であり得る。環状領域は、複数のGRIN光学素子を含み得る。複数のGRIN光学素子は、環状領域全体に分布され得るし、あるいは、環状領域の一部に亘って分布され得る。複数の屈折率分布型光学素子は、環状領域の周囲に周期的に配置され得る。フィルムは、複数の同心の環状領域を含み得て、当該同心の環状領域の各々が、少なくとも1つのGRIN光学素子を含み得る。各同心の環状領域は、複数のGRIN光学素子を含み得る。複数のGRIN光学素子は、各環状領域の一部を覆い得る。環状領域周りの位置を定義するための角度θ(θは0°~360°の間で変化する)を使用して、複数のGRIN光学素子は、各環状領域について、同一のθ角度範囲を覆い得る(すなわち、GRIN素子は、各環状領域について同位相であり得て、各環状領域について最大及び最小が同一のθ値である)、あるいは、異なるθ角度範囲を覆い得る(すなわち、GRIN素子は、各環状領域について位相が異なり得て、各環状領域について最大及び最小が異なるθ値である)。従って、第1環状領域内の少なくとも1つのGRIN素子は、隣接する第2環状領域内の少なくとも1つのGRIN素子に対して、位相がずれていてもよい。あるいは、第1環状領域内の少なくとも1つのGRIN素子は、隣接する第2環状領域内の少なくとも1つのGRIN素子に対して、同位相であってもよい。
【0046】
フィルムが複数の同心の環状領域を含む場合、環状領域の各々回りの屈折率の変化は、同位相であり得るし、あるいは、異なる位相であり得る。
【0047】
フィルムは、ベース屈折率を有する層の領域によって半径方向に分離された複数の同心の環状領域を含み得る。あるいは、フィルムは、環状の同心の屈折率分布型光学素子の間にベース屈折率を有する領域が存在しないように、互いに隣接する複数の同心の環状領域を含み得る。
【0048】
フィルムは、ベース屈折率を有する当該フィルムの領域によって半径方向に分離された複数の同心の環状領域を含み得る。あるいは、フィルムは、環状の同心のGRIN光学素子の間にベース屈折率を有する領域が存在しないように、互いに隣接する複数の同心の環状領域を含み得る。
【0049】
フィルムは、1μm~70μmの厚さを有し得る。
【0050】
フィルムは、眼科用レンズから容易に取り外され得る。フィルムは、再利用可能であり得て、フィルムは簡単に取り外され得て、同一のレンズまたは異なるレンズに再適用され得る。
【0051】
フィルムは、眼科用レンズの表面に接着するための接着面を有し得る。眼科用レンズに適用する前、フィルムの接着面は保護フィルムによって覆われ得る。保護フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、または、三酢酸セルロース(TAC)、などのポリマーを含み得る。保護フィルムは、透明であり得る。保護フィルムは、可撓性フィルムであり得る。接着面は、エポキシベースの接着剤などの接着剤の層であり得る。
【0052】
フィルムは、基材上に設けられ得る。基材は、フィルムの第1表面に接触し得て、フィルムの反対側の第2表面が接着面であり得る。従って、フィルムが接着面を使用して眼科用レンズに接着される場合、フィルムがレンズに適用される時に、基材がレンズフィルムの前面/前方面/外面となり得る。基材は、フィルムが眼科用レンズの表面に適用される時に保護層を提供するように構成され得る。基材は、ポリカーボネート(PC)を含み得る。基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)または三酢酸セルロース(TAC)を含み得る。基材は、無視できる程度の複屈折を有する物質を含み得る。基材は、水に対して不透過性であり得る。基材は、耐傷性であり得る。基材は、ベース屈折率を有し得る。基材は、ある程度のUV保護を提供し得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、眼科用レンズは、眼鏡レンズまたはコンタクトレンズであり得る。コンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズであってもよいし、ヒドロゲルコンタクトレンズやシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズなどのソフトコンタクトレンズであってもよい。
【0054】
第2の態様によって、本開示は、眼科用レンズを提供する。当該眼科用レンズは、フィルムを含み、当該フィルムは、ベース屈折率を有し、少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含む。当該フィルムは、前述の特徴のいずれかを含み得る。当該レンズは眼鏡レンズであり得る。当該レンズはコンタクトレンズであり得る。
【0055】
第3の態様によって、本開示は、眼鏡を提供する。当該眼鏡は、眼科用レンズを含み、当該眼科用レンズはフィルムを有し、当該フィルムは、ベース屈折率を有し、少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含む。当該フィルムは、前述の特徴のいずれかを含み得る。
【0056】
図1は、本開示の一実施形態による、眼科用レンズに適用するための、複数の屈折率分布型(GRIN)光学素子102を含むフィルム100の概略平面図を示す。GRIN光学素子102は、各々、フィルム100の前方面に平行な方向において当該素子102全体に亘って横方向に連続的に変化する屈折率分布(屈折率勾配)を有している。フィルム100のベース屈折率は一定であり、フィルム100は均一な厚さを有している。フィルム100は、コンタクトレンズの表面に適用するのに適した、円形の平面視形状を有している。GRIN光学素子102は、フィルム100の表面に亘って一定の間隔で分布されている。GRIN光学素子102の各々が、光硬化された光学素子である。光がGRIN光学素子102に入射すると、光学素子を含まないフィルムの領域104に入射する光と比較して、それはより多く散乱される。GRIN光学素子102は、フィルム100の表面の一方の約80%に広がっている。
【0057】
図2は、本開示の一実施形態による、眼科用レンズに適用するためのフィルム200の概略平面図であり、当該フィルムは中央領域208を取り囲む環状領域206を有しており、当該環状領域が複数のGRIN素子202を含んでいる。GRIN光学素子202は、各々、フィルム200の前方面に平行な方向において当該素子202全体に亘って横方向に連続的に変化する屈折率分布(屈折率勾配)を有しており、各素子が同一の屈折率変化を有している。フィルム204のベース屈折率は一定であり、フィルムは均一な厚さを有している。フィルム200は、円形の平面視形状を有しており、従って、コンタクトレンズの表面に適用するのに適している。GRIN光学素子202は、フィルム200の環状領域206内で一定の間隔で分布されている。フィルムの中央領域208は、GRIN光学素子を含まない。GRIN光学素子202の各々が、光硬化された光学素子である。光がGRIN光学素子202に入射すると、光学素子を含まないフィルムの領域204に入射する光と比較して、それはより多く散乱される。
【0058】
図3Aは、本開示の一実施形態による、複数のGRIN素子302を含むフィルム300の断面図を示す。GRIN光学素子302は、光硬化された光学素子であり、フィルム300の表面に亘って一定の間隔で分布されている。フィルム300のベース屈折率は一定であり、フィルムは均一な厚さを有している。
【0059】
図3Bは、本開示の一実施形態による、複数の立方体GRIN散乱素子402を含むフィルム400の断面図を示す。GRIN光学素子402は、光硬化された光学素子であり、フィルム400の厚さ内で分散されている。GRIN光学素子402は、各々、当該各要素402の中心から半径方向外側に向かって層404の表面に平行な方向に変化する屈折率分布(屈折率勾配)を有している。各素子402は、同一の屈折率変化を有している。フィルム400のベース屈折率は一定であり、フィルム400は均一な厚さを有している。
【0060】
図3Cは、本開示の一実施形態による、複数の球形GRIN散乱素子502を含むフィルム500の断面図を示す。GRIN光学素子502は、光硬化された光学素子であり、フィルム500の厚さ内で分散されている。GRIN光学素子502は、各々、当該各要素502の中心から半径方向外側に層504に向かって変化する屈折率を有しており、各素子502が同一の屈折率変化を有している。フィルム500のベース屈折率は一定であり、フィルム500は均一な厚さを有している。
【0061】
図4は、本開示の一実施形態による、眼科用レンズに適用するためのフィルム600の概略平面図であり、フィルム600は、環状の平面視形状を有しており、三角格子610の格子点上に配置された複数のGRIN素子602を含む。GRIN光学素子602は、各々、当該素子602全体に亘って横方向に連続的に変化する屈折率分布(屈折率勾配)を有しており、各素子が同一の屈折率変化を有している。
【0062】
図5は、本開示の一実施形態による、近視の発症または進行を予防または遅らせるための眼科用レンズに適用するためのフィルム700の概略平面図であり、フィルム700は、中央領域708を取り囲む環状領域706を有しており、環状領域706は、正方格子710の格子点上に配置された複数のGRIN素子702を含む。GRIN光学素子702は、各々、当該素子702全体に亘って横方向に連続的に変化する屈折率分布(屈折率勾配)を有しており、各素子が同一の屈折率変化を有している。フィルムの中央領域708は、GRIN光学素子702を含まない。
【0063】
図6は、本開示の一実施形態による、フィルム内に含まれ得るGRIN素子の屈折率変化を示すグラフ812である。GRIN素子は、3次元の二次関数によって定義される変化屈折率プロファイルを有しており、最大の屈折率が素子の中心にあり、屈折率は当該素子の中心から半径方向外側に向かって減少している。当該屈折率変化が、GRIN光学素子を含まないフィルムの領域と比較して、GRIN光学素子に入射する光の増大された散乱を引き起こす。
【0064】
図7は、本開示の一実施形態による、眼科用レンズに適用するためのフィルム900の概略平面図であり、フィルム900は、中央領域908を取り囲む環状領域906(領域906a及び領域906bとして示されている)を有しており、環状領域の一部906aが、フィルム904の表面上に配置された複数のGRIN素子902を含む。GRIN光学素子902は、各々、当該素子902全体に亘って横方向に連続的に変化する屈折率分布(屈折率勾配)を有しており、各素子が同一の屈折率変化を有している。GRIN光学素子902は、フィルム904の表面の一部906aに亘って一定の間隔で分布されている。GRIN光学素子902の各々が、光硬化された光学素子である。光がGRIN光学素子902に入射すると、光学素子を含まないフィルムの領域904に入射する光と比較して、それはより多く散乱される。GRIN素子を含むフィルムの一部906aは、環状領域の周の約1/4に及んでいる。ユーザによって着用されるレンズにフィルム900が適用される場合、網膜の特定の領域に向けられる光は、GRIN素子902によって散乱され得る。
【0065】
図8は、本開示の一実施形態による、眼科用レンズに適用するためのフィルム1100の概略平面図であり、フィルム1100は、中央領域1108を取り囲む2つの同心の環状領域1106i、1106iiを有しており、各環状領域が、複数のGRIN素子1102を含む。GRIN素子を含まない環状領域1110が、環状領域1106i、1106iiを分離している。GRIN光学素子1102は、各々、当該素子902全体に亘って横方向に連続的に変化する屈折率分布(屈折率勾配)を有しており、各素子が同一の屈折率変化を有している。フィルム1104のベース屈折率は一定であり、フィルムは均一な厚さを有している。GRIN光学素子1102は、フィルムの同心の環状領域1106i、1106iiに亘って一定の間隔で分布されている。GRIN光学素子1102の各々が、光硬化された光学素子である。光がGRIN光学素子1102に入射すると、光学素子を含まないフィルムの領域1104に入射する光と比較して、それはより多く散乱される。GRIN光学素子1102を含む同心領域1106i、1106iiの間に、ベース屈折率を有してGRIN光学素子1102を含まないフィルム1100の領域が存在する。ユーザによって着用されるレンズにフィルム1100が適用される場合、網膜の特定の同心領域に向けられる光は、GRIN光学素子1102によって散乱されるであろう。
【0066】
図9は、本開示の一実施形態による、眼科用レンズに適用するためのフィルム1200の概略平面図であり、フィルム1200は、複数の同心の環状領域1202a~1202dを有しており、各環状領域1202a~1202dが、複数のGRIN光学素子1203a~1203dを含む。GRIN光学素子1203a~1203dは、各環状領域1202a~1202dに分布されており、1つの環状領域1202bのGRIN光学素子1203bの位置は、隣接する環状領域1202a/1202cのGRIN光学素子1203a/1203cの位置と位相がずれている。同心の環状領域1202a~1202dは、ベース屈折率を有するフィルムの領域1204a~1204cによって、半径方向に分離されている。フィルムの中央領域1208は、GRIN光学素子を含まない。本開示の他の実施形態(図示せず)では、同心の環状領域が互いに隣接し得て、すなわち、ベース屈折率を有する領域によって分離されていなくてもよい。
【0067】
図10は、本開示の一実施形態による、近視の発症または進行を予防または遅らせるための眼科用レンズに適用するためのフィルム1300の概略平面図であり、フィルム1300は、中央領域1308を取り囲む環状領域1306を有しており、環状領域1306は、複数のGRIN光学素子1302a、1302b、1302cを含む。GRIN光学素子1302a、1302b、1302cの各々は、フィルム1300の表面に平行な方向に当該素子に亘って横方向に連続的に変化する屈折率分布(屈折率勾配)を有している。図10にGRIN光学素子1302a、1302b、1302cの陰影によって示されるように、異なるGRIN光学素子1302a、1302b、1302cは、異なるGRIN屈折率プロファイルを有する。最も暗い素子1302aは、より高い平均屈折率値を有し(ここで、平均は、単一素子に亘る平均屈折率値として取られる)、最も明るい素子1302cは、より低い平均屈折率値を有する。同様の平均屈折率値を有する素子1302a、1302b、1302cが、環状領域1306の周りの異なる子午線で一緒にグループ化される。フィルム1304のベース屈折率は一定であり、フィルムは均一な厚さを有している。フィルム1300は、円形の平面視形状を有しており、従って、コンタクトレンズの表面に適用するのに適している。GRIN光学素子1302a、1302b、1302cは、フィルム1300の環状領域1306内で一定の間隔で分布されている。フィルムの中央領域1308は、GRIN光学素子1302a、1302b、1302cを含まない。GRIN光学素子の各々が、光硬化された光学素子である。光がGRIN光学素子1302a、1302b、1302cに入射すると、光学素子を含まないフィルムの領域1304に入射する光と比較して、それはより多く散乱される。光は、より高い平均屈折率値を有するGRIN光学素子によって、より強く散乱されるであろう。
【0068】
本発明の眼科用レンズは、本明細書に記載されるフィルムのいずれかを眼科用レンズの表面に接触するように配置することによって、作製され得る。例えば、フィルムは、眼科用レンズの前面と接触するように配置され得る。このように製造される眼科用レンズは、眼鏡レンズまたはコンタクトレンズであり得る。幾つかの実施形態では、フィルムは、レンズ製造業者によって眼科用レンズの表面に適用される。他の実施形態では、フィルムは、眼科医/眼科技師によって眼科用レンズの表面に適用される。更なる実施形態では、フィルムは、眼科用レンズを購入した後に眼科用レンズ着用者によって適用され得る。本明細書に記載されるように、当該適用は、接着剤を使用してフィルムを眼科用レンズ表面に接着することによって達成され得る。
【0069】
本開示は、特定の実施形態を参照して説明され図示されてきたが、本開示が、本明細書に特には図示されていない多くの異なる変形例に役立つことが、当業者には理解されるであろう。単なる例示として、可能性ある特定の変形例が説明される。
【0070】
本開示の例示的な実施形態では、各GRIN素子が、ベース屈折率よりも高い平均屈折率を有し得る。他の例示的な実施形態では、各GRIN素子が、ベース屈折率よりも低い平均屈折率を有し得る。
【0071】
前述の説明では、既知の自明または予測可能な等価物を有する完全体(integer)または要素が言及されているが、そのような等価物は、本明細書に個別に記載されているかの如く、本明細書に組み込まれているものである。本開示の真の範囲を決定するためには、特許請求の範囲への参照がなされるべきである。特許請求の範囲は、あらゆるそのような等価物を包含するものと解釈されるべきである。また、有利であったり便利であったり等と説明されている本開示の完全体または特徴が、選択的なものであって、独立請求項の範囲を限定するものではないことも、読者には理解されるであろう。更に、そのような選択的な完全体または特徴は、本開示の幾つかの実施形態では有益である可能性があるが、他の実施形態では望ましくない場合があり得て、従って、他の実施形態では存在しない場合がある、ことが理解されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用レンズに適用するためのフィルムであって、
ベース屈折率を有し、当該フィルムの領域全体に分布された複数の屈折率分布型光学素子を含み、
各屈折率分布型光学素子は、レンズであり、
各屈折率分布型光学素子は、100μm3~3mm3の体積を有し、
各屈折率分布型光学素子は、屈折率の半径方向変化、または、当該素子を横切る屈折率の横方向変化、を有する
ことを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記複数の屈折率分布型光学素子は、三角格子の格子点上に分布されている
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記複数の屈折率分布型光学素子の各々が、光硬化された光学素子である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記複数の屈折率分布型光学素子の各々が、二次プロファイルによって定義される変化する屈折率を有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフィルム。
【請求項5】
前記複数の屈折率分布型光学素子が、当該フィルムの表面積の20%~80%を占める
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフィルム。
【請求項6】
中央領域と、前記中央領域を取り囲む環状領域と、を備え、
前記環状領域が、少なくとも1つの屈折率分布型光学素子を含む
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のフィルム。
【請求項7】
前記環状領域の周囲に、複数の屈折率分布型光学素子が周期的に配置されている
ことを特徴とする請求項6に記載のフィルム。
【請求項8】
複数の同心の環状領域を含み、
各環状領域が、少なくとも1つの屈折率分布型環状光学要素を含む
ことを特徴とする請求項6または7に記載のフィルム。
【請求項9】
第1環状領域内の少なくとも1つの屈折率分布型光学素子が、隣接する第2環状領域内の少なくとも1つの屈折率分布型光学素子に対して、位相がずれている
ことを特徴とする請求項8に記載のフィルム。
【請求項10】
前記環状領域は、前記ベース屈折力を有する層の領域によって、半径方向に分離されている
ことを特徴とする請求項8または9に記載のフィルム。
【請求項11】
前記環状領域は、互いに隣接している
ことを特徴とする請求項8または9に記載のフィルム。
【請求項12】
前記複数の屈折率分布型光学素子の各々が、10μm~2mmの直径または幅を有する
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のフィルム。
【請求項13】
1μm~70μmの厚さを有する
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のフィルム。
【請求項14】
当該フィルムを眼科用レンズの表面に接着するための接着面
を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のフィルム。
【請求項15】
当該フィルムが眼科用レンズの表面に適用される時に、保護層を提供するように構成された基材
を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載のフィルム。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれかに記載のフィルム
を備えたことを特徴とする眼科用レンズ。
【請求項17】
眼鏡レンズである
ことを特徴とする請求項16に記載の眼科用レンズ。
【請求項18】
コンタクトレンズである
ことを特徴とする請求項16に記載の眼科用レンズ。
【請求項19】
請求項17に記載の眼科用レンズ
を備えたことを特徴とする眼鏡。
【国際調査報告】