(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】がんの治療に使用するためのプレニル化カルコンおよびフラボノイド組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/121 20060101AFI20240628BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20240628BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240628BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240628BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240628BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240628BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240628BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240628BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61K31/121
A61K31/352
A61P43/00 105
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P35/02
A61K45/00
A61K36/185
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/20
A61K47/12
A61K31/506
A61K31/496
A61K31/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525190
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 US2022036485
(87)【国際公開番号】W WO2023283418
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524011890
【氏名又は名称】イノックス・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Innox Corp.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】アラン,デブリム
(72)【発明者】
【氏名】ニジオル,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】グイスキ,マリウシュ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076CC27
4C076DD14
4C076DD41
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4C076EE31
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4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZC75
(57)【要約】
キサントフモールおよびイソキサントフモールを含む組成物、ならびにがん、たとえば、チロシンキナーゼ阻害剤耐性がんの治療におけるそれらの使用が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量のキサントフモールおよびイソキサントフモールと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項2】
6-プレニルナリンゲニンおよび8-プレニルナリンゲニンをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
キサントフモールが、少なくとも50~99% w/wの量で存在し、イソキサントフモールが、1~15% w/wの量で存在し、6-プレニルナリンゲニンが、0.0~5%の量で存在し、8-プレニルナリンゲニンが、0.0~5%の量で存在する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
キサントフモール、イソキサントフモール、6-プレニルナリンゲニン、または8-プレニルナリンゲニンの少なくとも1つが、植物から抽出される、請求項1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項5】
植物が、ホップ、使用済みホップ、またはホップを含む製品である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
キサントフモール、イソキサントフモール、6-プレニルナリンゲニン、8-プレニルナリンゲニンのうちの少なくとも1つが、化学的に合成される、請求項1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項7】
薬学的に許容される担体が、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、または滑沢剤の少なくとも1つである、請求項1~6のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項8】
結合剤が、デンプン1500、ポリビニルピロリドン、および微結晶セルロースの1つまたは複数である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
結合剤が、10~30% w/wの量で存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
崩壊剤がクロスカルメロースナトリウムである、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
崩壊剤が、1~5% w/wの量で存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウムである、請求項7に記載の組成物。
【請求項13】
界面活性剤は、1~5% w/wの量で存在する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウムである、請求項7に記載の組成物。
【請求項15】
滑沢剤が、0.5~3% w/wの量で存在する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
ホップからキサントフモールおよびイソキサントフモールを含む組成物を調製する方法であって、
ホップ植物材料をn-ヘプタンに懸濁して非極性不純物を除去すること;
ヘプタンを蒸発させて、残渣をろ過すること;
残渣を酢酸エチルで抽出し、キサントフモール含有画分をロータリーエバポレーターで収集すること;
キサントフモールを0.05M ZnCl
2、5% NaHCO
3および食塩水を含む有機酸溶液で抽出すること;
有機層を無水Na
2SO
4で乾燥すること;
酢酸エチルを含む混合物からキサントフモールを沈殿させること;および
沈殿したキサントフモールとイソキサントフモールを乾燥させること;を含む方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法によって得られるキサントフモールおよびイソキサントフモールを含む組成物。
【請求項18】
治療有効量の請求項1~15および17のいずれか1つに記載の組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において、ファルネソイドX受容体活性をアゴナイズする方法。
【請求項19】
ファルネソイドX受容体活性をアゴナイズすることが、がんの治療をもたらす、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
がんが、チロシンキナーゼ阻害剤に耐性がある、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
治療有効量の請求項1~15および17のいずれか1つに記載の組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において、NFκB活性を阻害する方法。
【請求項22】
NFκB活性を阻害することが、がんの治療をもたらす、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
がんが、チロシンキナーゼ阻害剤に耐性がある、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
治療有効量の請求項1~15および17のいずれか1つに記載の組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において、核因子赤血球2関連因子2(NRF2)の発現および/または活性化を増加させる方法。
【請求項25】
NRF2の発現および/または活性化を増加させることが、がんの治療をもたらす、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
がんが、チロシンキナーゼ阻害剤に耐性がある、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
細胞を有効量の請求項1~15および17のいずれか1つに記載の組成物と接触させることを含む、細胞においてアポトーシスを誘導する方法。
【請求項28】
細胞が、白血病細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
細胞が、bcr-abl遺伝子変異を含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
細胞が、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、または急性骨髄性白血病(AML)の患者の細胞である、27~29のいずれか1つに請求項に記載の方法。
【請求項31】
治療有効量の請求項1~15および17のいずれか1つに記載の組成物を対象に投与することを含む、対象における慢性骨髄性白血病(CML)を治療する方法。
【請求項32】
CMLが、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)による治療に耐性がある、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
TKIが、イマチニブ、ダサチニブ、またはポナチニブである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
治療有効量の請求項1~15および17のいずれか1つに記載の組成物を対象に投与することを含む、対象における二次チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)耐性の発生率を減少させる方法。
【請求項35】
治療有効量の請求項1~15および17のいずれか1つに記載の組成物を対象に投与することを含む、対象におけるBCR-ABL非依存性耐性がんを治療する方法。
【請求項36】
BCR-ABL非依存性耐性が、CRKLおよびSTAT5リン酸化の阻害、またはmTOR複合体1(mTORC1)の活性化を示す翻訳調節因子リボソームタンパク質S6(RPS6)の持続的なリン酸化の阻害によって引き起こされる、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
対象にTKIを投与することをさらに含む、請求項18~36のいずれか1つに記載の方法。
【請求項38】
TKIが、組成物の後に投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
TKIが、イマチニブ、ダサチニブ、ポナチニブ、またはニロチニブである、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
カンナビノイドを対象に投与することをさらに含む、請求項18~39のいずれか1つに記載の方法。
【請求項41】
カンナビノイドが、組成物の後に投与される、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
現在、がんの治療法は主に、外科手術、化学療法、放射線療法、分子標的療法、遺伝子療法、および伝統的に単一の生物学的標的を標的とする免疫療法で構成されている。しかしながら、これらの治療の治癒効果は、これまでのところ腫瘍の特定の特性によって制限されている。
【0002】
薬剤耐性は必然的にすべての標的療法の有効性を制限する。腫瘍細胞にとって、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対する薬剤耐性は、固形腫瘍と白血病/リンパ腫の両方において大きな障害となる。腫瘍細胞は、TKI感受性またはTKI耐性である可能性があり、固有または後天的な耐性を示し、標的の内部または外部で変化を蓄積して生存を促進する。
【0003】
キサントフモールは、ホップ、より具体的には雌ホップ植物に由来するプレニル化カルコンである。キサントフモールは、主要な転写因子の調節を含む幅広い生物活性を示すが、主にその抗酸化活性で有名である。したがって、がん、糖尿病および脂質異常症などの酸化ストレスに関連する疾患の治療に有用であると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在のキサントフモール含有製品には少なくとも2つの欠点がある。第一に、これらの製品におけるキサントフモールのバイオアベイラビリティ生物学的利用能は、水溶性が低いため非常に低い。第二に、キサントフモール製品にはかなりの量のイソキサントフモールが含まれていることが多く、これはキサントフモール含有製品の製造中(加熱工程など)または保管中にキサントフモールが分解することに起因する。したがって、薬剤耐性があるものなどのがんの治療のために生物学的に利用可能なキサントフモールを大量に含む新しい製剤を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示の要約
本開示は、治療有効量のキサントフモールおよびイソキサントフモールと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。1つの態様では、組成物は、6-プレニルナリンゲニンおよび8-プレニルナリンゲニンをさらに含む。別の態様では、キサントフモールは、少なくとも50~99% w/wの量で存在し、イソキサントフモールは、1~15% w/wの量で存在し、6-プレニルナリンゲニンは、0.0~5%の量で存在し、8-プレニルナリンゲニンは、0.0~5%の量で存在する。
【0006】
1つの態様では、キサントフモール、イソキサントフモール、6-プレニルナリンゲニン、または8-プレニルナリンゲニンの少なくとも1つは、植物から抽出される。別の態様では、該植物とは、ホップ、使用済みホップ、またはホップを含む製品である。別の態様では、キサントフモール、イソキサントフモール、6-プレニルナリンゲニン、8-プレニルナリンゲニンのうちの少なくとも1つは、化学的に合成される。
【0007】
1つの態様では、本開示の組成物は、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、または滑沢剤のうちの少なくとも1つである薬学的に許容される担体を含む。別の態様では、結合剤は、デンプン1500、ポリビニルピロリドン、および微結晶セルロースの1つまたは複数である。別の態様では、結合剤は、10~30% w/wの量で存在する。別の態様では、崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウムである。別の態様では、崩壊剤は、1~5% w/wの量で存在する。別の態様では、界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウムである。別の態様では、界面活性剤は、1~5% w/wの量で存在する。別の態様では、滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムである。別の態様では、滑沢剤は、0.5~3% w/wの量で存在する。
【0008】
本開示はまた、ホップからキサントフモールおよびイソキサントフモールを含む組成物を調製する方法であって、
ホップ植物材料をn-ヘプタンに懸濁して非極性不純物を除去すること;
ヘプタンを蒸発させて、残渣をろ過すること;
残渣を酢酸エチルで抽出し、キサントフモール含有画分をロータリーエバポレーターで収集すること;
キサントフモールを0.05M ZnCl2、5% NaHCO3および食塩水を含む有機酸溶液で抽出すること;
有機層を無水Na2SO4で乾燥すること;
酢酸エチルを含む混合物からキサントフモールを沈殿させること;および
沈殿したキサントフモールとイソキサントフモールを乾燥させること;を含む方法。本開示は、この方法によって得られるキサントフモールおよびイソキサントフモールを含む組成物にも関する。
【0009】
本開示はまた、治療有効量の本明細書に記載の組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において、ファルネソイドX受容体活性をアゴナイズする方法にも関する。1つの態様では、ファルネソイドX受容体活性をアゴナイズすることは、がんの治療をもたらす。別の態様では、がんは、チロシンキナーゼ阻害剤に耐性がある。
【0010】
本開示はまた、治療有効量の本明細書に記載の組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において、NFκB活性を阻害する方法にも関する。1つの態様では、NFκB活性を阻害することは、がんの治療をもたらす。別の態様では、がんは、チロシンキナーゼ阻害剤に耐性がある。
【0011】
本開示はまた、治療有効量の本明細書に記載の組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において、核因子赤血球2関連因子2(NRF2)の発現および/または活性化を調節する方法にも関する。1つの態様では、核因子赤血球2関連因子2(NRF2)の発現および/または活性化を調節することは、がんの治療をもたらす。別の態様では、がんは、チロシンキナーゼ阻害剤に耐性がある。
【0012】
本開示はまた、細胞を有効量の本明細書に記載の組成物と接触させることを含む、細胞においてアポトーシスを誘導する方法にも関する。1つの態様では、細胞は、白血病細胞である。別の態様では、細胞は、bcr-abl遺伝子変異を含む。別の態様では、細胞は、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、または急性骨髄性白血病(AML)の患者の細胞である。
【0013】
本開示はまた、治療有効量の本明細書に記載の組成物を対象に投与することを含む、対象における慢性骨髄性白血病(CML)を治療する方法にも関する。1つの態様では、CMLは、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)による治療に耐性がある。別の態様では、TKIは、イマチニブ、ダサチニブ、またはポナチニブである。
【0014】
本開示はまた、治療有効量の本明細書に記載の組成物を対象に投与することを含む、対象における二次チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)耐性の発生率を減少させる方法にも関する。
【0015】
本開示はまた、治療有効量の本明細書に記載の組成物を対象に投与することを含む、対象におけるBCR-ABL非依存性耐性がんを治療する方法にも関する。1つの態様では、BCR-ABL非依存性耐性は、CRKLおよびSTAT5リン酸化の阻害、またはmTOR複合体1(mTORC1)の活性化を示す翻訳調節因子リボソームタンパク質S6(RPS6)の持続的なリン酸化の阻害によって引き起こされる。
【0016】
本開示の1つの態様では、方法は、対象にTKIを投与することをさらに含む。別の態様では、TKIは、組成物の後に投与される。別の態様では、TKIは、イマチニブ、ダサチニブ、ポナチニブ、またはニロチニブである。
【0017】
本開示の1つの態様では、方法は、カンナビノイドを対象に投与することをさらに含む。別の態様では、カンナビノイドは、組成物の後に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、レミエリンからキサントフモールを含む原薬を精製するプロセスのブロック図を示す。
【
図3A-3B】
図3A-3Bは、バッチXN-54(
図3A)およびDSバッチXN-87(
図3B)の示差走査熱量測定(DSC)を示す。
【
図5A-5B】
図5A-5Bは、バッチXN-54(
図5A)およびXN-87(
図5B)のフーリエ変換赤外分析(FTIR)を示す。
【
図7A-7B】
図7A-7Bは、K562-DR 1000nM細胞におけるpCrkl(
図7A)およびBCR-ABL(
図7B)レベルを示す。
【
図8A-8B】
図8A-8Bは、K562-IS、-IR、および-DR細胞における48時間(
図8A)および72時間(
図8B)における細胞生存率に対するXN-54またはダサチニブの濃度増加の効果を示す。
【
図9A-9B】
図9A-9Bは、早期アポトーシスマーカーを使用して48時間(
図9A)および72時間(
図9B)で測定した、K562-IS、-IR、および-DR細胞におけるXN-54誘発性アポトーシスを示す。
【
図10A-10B】
図10A-10Bは、後期アポトーシスマーカーを使用して48時間(
図10A)および72時間(
図10B)で測定した、K562-IS、-IR、および-DR細胞におけるXN-54誘発性アポトーシスを示す。
【
図11A-11B】
図11A-11Bは、log10(M) XN-54(
図11A)またはポナチニブ(
図11B)のいずれかに基づいて、K562-IR細胞における細胞生存率に対するXN-54とポナチニブの組み合わせの効果を示す。
【
図12A-12B】
図12A-12Bは、log10(M) ニコチニブ(
図12A)またはXN-54(
図12B)のいずれかに基づいて、K562-IR細胞における細胞生存率に対するXN-54とニロチニブの組み合わせの効果を示す。
【
図13A-13C】
図13A-13Cは、K562-DR(
図13A)、K562-IS(
図13B)、およびK562-IR細胞(
図13C)における細胞生存率に対するXN-54(化合物1)とカンナビジオール(CBD)(化合物2) の組み合わせの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な記載
本開示は、キサントフモール、イソキサントフモール、6-プレニルナリンゲニン、8-プレニルナリンゲニンを含む組成物、およびがんの治療におけるそれらの使用に関する。いくつかの態様では、組成物は、白血病および固形腫瘍の治療に有用である。他の態様では、組成物は、薬剤耐性がんの治療に有用である。
一般的な定義
本開示をより容易に理解することができるように、最初に特定の用語を定義する。本明細書で使用される場合、本明細書に明示的に規定されている場合を除き、以下の各用語は下記に示す意味を有するものとする。追加の定義は本明細書を通して記載される。
【0020】
「a」または「an」という用語は、1つまたは複数のその実体を示すことに注意すべきである;たとえば、「フィード培地」は、1つまたは複数のフィード培地を表すと理解される。したがって、「a」(または「an」)、「1つまたは複数(one or more)」、および「少なくとも1つ(at least one)」という用語は、本明細書では同じ意味で使用されうる。
【0021】
本明細書で使用される「および/または」という用語は、他方の有無に関係なく、指定された2つの特徴または要素のそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。したがって、本明細書で「Aおよび/またはB」などの語句で使用される「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)が含まれることを意図する。同様に、「A、B、および/またはC」などの語句で使用される「および/または」という用語は、次の各態様を包含することを意図する:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC。;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)。
【0022】
本明細書において態様が「含む」という用語を用いて説明される場合は常に、「からなる」および/または「本質的にからなる」という用語で記載される類似の態様も提供されることが理解される。
【0023】
他に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示に関連する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。たとえば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology、Juo、Pei-Show、2nd ed.、2002、CRC Press; The Dictionary of Cell and Molecular Biology、3rd ed.、1999、Academic Press; およびOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology、Revised、2000、Oxford University Pressは、本明細書で使用した用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する
【0024】
単位、接頭語、および記号は、国際単位系(SI)の承認された形式で示される。数値範囲には、範囲を定義する数値が含まれる。本明細書に提供される見出しは、本開示のさまざまな態様を限定するものではなく、態様は、本明細書全体を参照することによって理解され得る。したがって、すぐ下で定義される用語は、明細書全体を参照することによってより完全に定義される。
【0025】
代替語(たとえば、「または」)の使用は、代替語のいずれか、両方、またはそれらの組み合わせを意味すると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」または「an」は、列挙または列挙された(recited or enumerated)任意の構成要素の「1つまたは複数」を示すと理解されるべきである。
【0026】
「約」または「本質的に含む」という用語は、当業者によって決定される特定の値または組成の許容誤差範囲内にある値または組成を示し、これは、値または組成がどのように測定または決定されるか、つまり測定システムの制限に部分的に依存する。たとえば、「約」または「本質的に含む」は、当該技術分野における慣例に従って、実施当たり、1標準偏差以内または1を超える標準偏差を意味し得る。あるいは、「約」または「本質的に含む」は、最大20%の範囲を意味する場合がある。さらに、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、この用語は最大で1桁大きいことまたは最大5倍の値を意味する場合がある。特定の値または組成が出願および特許請求の範囲で提供される場合、特に明記されていない限り、「約」または「本質的に含む」の意味は、その特定の値または組成について許容可能な誤差範囲内であると想定されるべきである。
【0027】
本明細書に記載されているように、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲または整数範囲は、他に特記されない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、および適切な場合にはその分数(整数の10分の1および100分の1など)を含むものと理解されるべきである。
【0028】
医薬組成物
本開示の文脈において、「キサントフモール」という用語は、ホップ、使用済みホップ、またはホップ生成物などの植物から得られるプレニル化カルコノイドを意味すると理解されるべきであり、次の式で表される:
【化1】
【0029】
本開示で使用されるキサントフモールは、分子の市販の純粋な形態であってもよく、あるいは植物などの適切な供給源から得られる(濃縮された)抽出物であってもよい。
【0030】
本開示の文脈において、「イソキサントフモール」という用語は、キサントフモールの対応するプレニル化フラバノンとして理解されるべきであり、次の式で表される:
【化2】
【0031】
6-プレニルナリンゲニンは、ナリンゲニンのC-6がプレニル化された構造を持つトリヒドロキシフラバノンである。それは、トリヒドロキシフラバノンであり、4'-ヒドロキシフラバノンのメンバーであり、(2S)-フラバン-4-オンである。それは、(S)-ナリンゲニンに由来する。それは、次の式で表される:
【化3】
【0032】
8-プレニルナリンゲニンまたはソフォラフラバノンBは、8位にプレニル基を有する(S)-ナリンゲニンであるトリヒドロキシフラバノンである。それは、血小板凝集阻害剤および植物代謝産物としての役割がある。それは、トリヒドロキシフラバノンであり、4'-ヒドロキシフラバノンのメンバーであり、(2S)-フラバン-4-オンである。それは、(S)-ナリンゲニンに由来する。それは、ソフォラフラバノンB(1-)の共役酸である。それは、次の式で表される:
【化4】
【0033】
本明細書で使用される場合、キサントフモール、イソキサントフモール、6-プレニルナリンゲニン、および8-プレニルナリンゲニンなどの用語には、ヒドロキシル化および硫酸プレニル化フラボノイドなどの誘導体が含まれ、あるいは多形体であるか、あるいは固体または液体の物理的形態であってもよい。たとえば、化合物は、結晶形態、非晶質形態であり得、任意の粒子サイズを有することができる。粒子は微粉化されていても、凝集していてもよく、粒子状の顆粒、粉末、油、油性懸濁液、または固体もしくは液体の物理的形態である任意の他の形態であってもよい。
【0034】
文献に記載されている植物材料からキサントフモール、イソキサントフモール、6-プレニルナリンゲニン、および8-プレニルナリンゲニンを抽出および精製する方法には、多くの欠点がある。たとえば、効率的に抽出するには大量の有機溶媒、特に毒性の高い溶媒(ジクロロメタン、ヘキサン、クロロホルム)が必要である。現在の方法では、シリカゲルなどの高価な材料も大量に使用されている。この方法は、キサントフモールの不可逆的な分解を引き起こして、副生成物(主に異性体イソキサントフモール)とポリマー酸化分解生成物(強塩基の水溶液、たとえば、NaOH、KOHによる抽出)を生成する。向流クロマトグラフィー技術は、プロセスの効率と拡張性が低い。最も重要なことは、高い医薬品純度(最低で95重量%)のキサントフモールを入手することはほぼ不可能であるということである。しかしながら、本開示は、95%を超えるHPLC純度を有するキサントフモールを調製する方法を提供する。
【0035】
化学合成によってキサントフモールなどを得る既知の方法は非効率的であり、あまり拡張性がない。さらに、産生の最終段階では、医薬品純度の高い大量のキサントフモールを経済的に実行可能に調製することはできない。
【0036】
いくつかの態様では、本開示は、植物からキサントフモールを調製する方法を提供する。いくつかの態様では、植物は、ホップである。ホップまたはホップ(Humulus lupulus)は、アサ科、イラクサ目ホップ属に属するつる性の蔓性植物である。昔の分類学者はクワ科(mulberry family)(クワ科(Moraceae))にカラハナソウ(Humulus)属を含めていた。
【0037】
ホップは北半球原産の雌雄異株の多年草植物である。十分な水が確保できる植え込みや森林の端で見られ、高さは最大7~8メートル(23~26フィート)に達する。多くの雌花は、茎状花序と呼ばれる花序を形成し、花序は、ジグザグに毛状の軸に取り付けられた膜状の托葉と苞で構成されている。ホップの苞葉と托葉にはポリフェノールが含まれている;薬の匂いと味は主にルプリン腺に含まれる非常に複雑な分泌物によるものである。
【0038】
収穫後、花序を安定させるため、水分含有量が約10%になるまですぐに乾燥させる。また、環境条件に応じて、ホップは収穫から最終製品までの一部または全工程において常時冷蔵保管される。苦味成分は保存中に急速に分解することが知られており、冷蔵しない場合、その濃度はわずか6か月で50~70%減少する。
【0039】
収穫されたホップの果粒の25%がエタノールまたは超臨界二酸化炭素で抽出され、可能な限り多くのアルファ酸が得られる。エタノールと二酸化炭素は醸造過程で自然に発生するため、これらの溶媒を使用しても問題はない。
【0040】
膨大なバイオマス生産量から、ホップ植物のうち花序(球果)が使用される唯一の部分である。サラダで食される若芽の一部の利用を除いて、茎、葉、根茎、および根は人間によって利用されていない。地上(aerial)部は堆肥化され、畑の肥料として利用される。しかしながら、現在のプロセスを使用すると、キサントフモールおよび他の分子は、ホップ、ビール生産などの他のプロセスから生成されたホップ廃棄物(使用済みホップ)、または生物学的に活性で安全な比率のホップを含む製品から精製される。
【0041】
特定の態様では、本開示の組成物は、治療有効量で投与するために製剤化される。「有効量」、「薬学的有効量」および「治療有効量」という用語は、疾患を治療するために対象に投与された場合に、その疾患の治療に影響を与えるのに十分である化合物の量を含む、所望の生物学的または医学的反応を誘発するのに有効な量を示す。有効量は、化合物、疾患およびその重症度、ならびに治療される対象の年齢、体重などによって異なる。有効量には、一定範囲の量が含まれ得る。さらに、有効量には、他の薬剤と組み合わせた場合に有効な薬剤の量が含まれる。
【0042】
いくつかの態様では、有効量の組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容されるビヒクルと組み合わされる。
「薬学的に許容される」という用語は、生物学的またはその他の点で望ましくない材料、たとえば、その材料は、重大な望ましくない生物学的影響を引き起こしたり、それが含まれる組成物の他の成分のいずれとも有害な相互作用を引き起こしたりすることなく、患者に投与される医薬組成物に組み込むことができる材料を示す。薬学的に許容されるビヒクル(たとえば、担体、アジュバント、および/またはその他の賦形剤)は、毒物学的試験および製造試験の必要な基準を満たしている、および/または米国食品医薬品局が作成した不活性成分ガイドに含まれていることが好ましい。
【0043】
「担体」または「薬学的に許容される担体」という用語は、化合物が一緒に投与される希釈剤、崩壊剤、沈殿阻害剤、界面活性剤、流動促進剤、結合剤、滑沢剤、およびその他の賦形剤およびビヒクルを示す。担体は、一般的に本明細書に記載されており、またE. W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」にも記載されている。担体の例として、モノステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、イソステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシステアリン酸ヒドロキシオクタコサニル、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、乳糖、乳糖一水和物、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、微結晶セルロース、ポロクサマー124、ポロクサマー181、ポロクサマー182、ポロクサマー188、ポロクサマー237、ポロクサマー407、ポビドン、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、シリコーン、シリコーン接着剤4102、およびシリコーンエマルジョンが挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、医薬組成物のために選択される担体、および組成物中のかかる担体の量は、製剤化方法(たとえば、乾式造粒製剤、固体分散製剤)に応じて変化し得ることを理解すべきである。
【0044】
「希釈剤」という用語は、目的の化合物をデリバリー前に希釈するために使用される化合物を示す。希釈剤は、化合物を安定化させる役割もある。希釈剤の非限定的な例としては、デンプン、糖類、二糖類、スクロース、ラクトース、乳糖一水和物、多糖類、セルロース、セルロースエーテル、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、糖アルコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、圧縮性糖類、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウム、リン酸二カルシウム、第二リン酸カルシウム二水和物、マンニトール、および第三リン酸カルシウムが挙げられる。
【0045】
本明細書で使用される「結合剤」という用語は、担体の活性成分と不活性成分を一緒に結合させて粘着部分と離散部分を維持するために使用することができる任意の薬学的に許容されるフィルムを示す。結合剤の非限定的な例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、コポビドン、およびエチルセルロースが挙げられる。
【0046】
「崩壊剤」という用語は、固形製剤に添加すると、投与後のその分解または崩壊を促進し、有効成分の放出を可能な限り効率的に可能にして迅速に溶解させる物質を示す。崩壊剤の非限定的な例としては、トウモロコシデンプン、グリコール酸デンプンナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、微結晶セルロース、加工コーンスターチ、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ポビドン、アルファ化デンプン、およびアルギン酸が挙げられる。
【0047】
「滑沢剤」という用語は、打錠またはカプセル化プロセス中に圧縮された粉末塊が装置に付着するのを防ぐために粉末ブレンドに添加される物質を示す。滑沢剤は、金型からの錠剤の排出を補助し、粉末の流れを改善する。滑沢剤の非限定的な例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカ、脂肪、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、フマル酸ステアリルナトリウム、またはタルク;およびラウリン酸、オレイン酸、C8/C10脂肪酸などの脂肪酸といったような可溶化剤が挙げられる。
【0048】
「フィルムコーティング」という用語は、基材(たとえば、錠剤)の表面にある薄く、均一なフィルムを示す。フィルムコーティングは、光分解から有効成分を保護するのに特に有用である。フィルムコーティングの非限定的な例として、ポリビニルアルコールベース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000および酢酸フタル酸セルロースフィルムコーティングが挙げられる。
【0049】
「流動促進剤」という用語は、錠剤圧縮時の流動特性を改善し、固結防止効果を生み出すために錠剤およびカプセル製剤に使用される物質を示す。流動促進剤の例として、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ヒュームドシリカ、デンプン、デンプン誘導体、およびベントナイトが挙げられる。
【0050】
使用方法
プレニル化カルコンとフラボノイドは、ヒトにおける生物学的および分子的活性のため、栄養面だけでなく疾患の予防においてもますます注目を集めている。本開示の1つの態様では、本明細書に記載の組成物は、がん、特にTKI耐性慢性骨髄性白血病(CML)などの白血病を含むさまざまな疾患および症状の治療/予防に有用である。
【0051】
CMLは、チロシンキナーゼ腫瘍タンパク質BCR-ABL1をコードする融合遺伝子BCR-ABL1という分子変化に関連する骨髄増殖性腫瘍である。これがTKIの開発につながり、イマチニブが治療用途として承認された最初のTKIとなった。CML患者の大多数はイマチニブに反応するが、この標的療法に対する耐性が治療の失敗と再発の一因となる。
【0052】
標的療法に対する耐性は、最終的には治療を回避する能力を有するがんクローンの選択に至る、複雑かつ多要素のプロセスである。CMLでは、TKI耐性メカニズムは通常、BCR-ABL1依存性メカニズムと独立性メカニズムに細分される(Morozova E.V. et al. Biomark. Insights. 2015;10:43-47)。しかしながら、治療ガイドラインでは、用量調整やTKI切り替えに関してBCR-ABL1関連メカニズムのみが考慮される(Baccarani M. et al. 2013. Blood. 2013;122:872-884)。BCR-ABL1タンパク質の抑制に基づく白血病幹細胞(LSC)の持続およびLSC様表現型も、主要なTKI耐性メカニズムとして報告されている(Baykal-Koese S. et al. PLoS ONE. 2020;15:e0229104)。
【0053】
メカニズムには結びつかないが、いくつかの態様では、本開示の組成物はファルネソイドX受容体を刺激するのに有用である。ファルネソイドX受容体(FXR)は、核ホルモン受容体として知られる受容体のファミリーに属する。FXRは、胆汁酸活性化核内受容体であり、腫瘍形成に広く関与している。
【0054】
FXRの活性化は、乳がんの標的遺伝子:局所エストロゲン生産者アロマターゼおよびトランスポーターMDR3、MRP-1、溶質キャリアトランスポーター7A5(SLC7A5)を下方制御し、細胞の増殖を阻害する(Bishop-Bailey、D.、et al. Cancer Res (2006) 66 (20): 10120-10126)。それは、既知のFXR標的遺伝子SHP、IBABP、MRP2の発現も誘導する。それは、EGFR/ERK、NF-κB、p38/MAPK、PI3K/AKT、Wnt/βカテニン、およびJAK/STATなどのいくつかの細胞シグナル伝達経路を、カスパーゼ;MMP、サイクリン;p53、C/EBPβ、p-Rbなどの腫瘍抑制タンパク質;さまざまなサイトカイン;EMTマーカー;およびその他などのそれらの標的とともに調節することが示されている
【0055】
いくつかの態様では、本開示の組成物は、細胞内のNFκB活性を阻害するのに有用である。核因子カッパB(NF-κB)は、古代のタンパク質転写因子であり(Salminen、A.、Huuskonen、et al. (2008). Ageing Res. Rev. 7、83-105)、自然免疫の調節因子と考えられている(Baltimore、D. (2009). Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 1:a000026)。NFκBは、がんの発症と治療に関与する重要なシグナル伝達経路でもある(Xia、L.、et al. Onco Targets Ther. (2018) 11:2063-2073)。
【0056】
いくつかの態様では、本開示の組成物は、核因子赤血球2(NF-E2)関連因子2(Nrf2)の発現/活性を調節するのに有用である。Nrf2/Keap1経路は、外因性化学物質によって引き起こされる酸化損傷への耐性を担う重要なシグナル伝達カスケードである。それは、酸化還元ホメオスタシスを維持し、複数の下流の細胞保護遺伝子を調節することによって抗炎症および抗がん活性を発揮し、それによって細胞の生存に重要な役割を果たす。興味深いことに、近年、Nrf2ががんにおいて相反する役割を果たすことを示唆する証拠が蓄積されている。Nrf2の異常な活性化は、予後不良と関連している。さまざまながんにおけるNrf2の構成的活性化は、生存促進遺伝子を誘導し、代謝の再プログラミング、がん細胞のアポトーシスの抑制、およびがん幹細胞の自己複製能力の強化によってがん細胞の増殖を促進する。さらに重要なことには、Nrf2は、炎症誘発性の発がんだけでなく、がん細胞の化学療法耐性や放射線耐性にも寄与していることが証明されている。
【0057】
いくつかの態様では、本開示の組成物は、他の治療薬と組み合わせて投与される。1つの態様では、本開示の組成物は、1つまたは複数のチロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせて投与される。チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)は、いくつかの阻害モードによってプロテインキナーゼのシグナル伝達経路を妨害する薬理活性物質のグループである。プロテインキナーゼの突然変異、調節不全、および過剰発現は、多くの疾患プロセスに関与している。ヒト遺伝子の約40個に1個がプロテインキナーゼをコードしており、それらの遺伝子のほぼ半数が疾患遺伝子座またはがんアンプリコンのいずれかにマッピングされている。プロテインキナーゼ阻害剤への関心は、2001年にチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)イマチニブがFDAに承認されたことから始まった。イマチニブは、フィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病患者で産生されるチロシンキナーゼシグナル伝達タンパク質であるBCR-Ablハイブリッドタンパク質を標的とするように設計された経口化学療法薬である。
【0058】
全体として、チロシンキナーゼは、基質酵素上の特定のアミノ酸をリン酸化し、その後、シグナル伝達を変化させ、細胞生物学の下流の変化につながる。TKによって開始される下流のシグナル伝達は、細胞の成長、遊走、分化、アポトーシス、および細胞死を変化させることができる。突然変異またはその他の手段による構成的な活性化または阻害は、シグナルカスケードの調節不全を引き起こし、悪性腫瘍およびその他の病状を引き起こす可能性がある。したがって、TKIを介してこれらの最初のシグナルをブロックすると、変異したTKまたは機能不全になったTKの異常な動作を防ぐことができる。
【0059】
キナーゼ阻害剤には不可逆性と可逆性がある。不可逆的なキナーゼ阻害剤は、共有結合して ATP 部位をブロックする傾向があり、不可逆的な阻害を引き起こす。可逆的キナーゼ阻害剤は、結合ポケットおよびDFGモチーフの確認に基づいて、4つの主要なサブタイプにさらに細分することができる。
【0060】
いくつかの態様では、本開示の組成物は、イマチニブ、ダサチニブ、またはポナチニブと組み合わせて投与される。
【0061】
TKI療法の有効性を制限する避けられない障壁は耐性の問題であり、長期的な疾患管理に対する今日の広範な課題である。がんは、その核心で進化の縮図である。その生存は、遺伝的多様性と突然変異の長期的蓄積によって左右され、TKI療法の選択圧の影響を受ける。これらの初歩的だが複雑な原理は、伝統的に一次性(固有)または二次性(後天性)に分類されるTKI耐性の難治性の基礎となっている。一次耐性では、患者は標的療法に対する治療反応がまったくない。二次耐性では、患者は最初に何らかの臨床的利益を達成するが、その後疾患が進行する。それぞれの発がん性ドライバーと標的阻害剤の発見により、ますます多くの、そして多様な耐性メカニズムが定義されている。
【0062】
本開示の1つの態様では、本明細書に記載の組成物は、一次または二次TKI耐性を有する対象に、単独で、またはTKIと組み合わせて投与される。1つの態様では、本開示の組成物は、二次的なTKI耐性の発現を回避するために第一選択薬として投与される。いくつかの態様では、本開示の組成物は、1つまたは複数のTKIと組み合わせて、同時に、または任意の順序で投与される。
【0063】
いくつかの態様では、本開示の組成物は、カンナビノイドと組み合わせて、同時に、または任意の順序で投与される。1つの態様では、カンナビノイドは、フィトカンナビノイド、エンドカンナビノイド、または合成カンナビノイドである。1つの態様では、カンナビノイドは、カンナビジオール(CBD)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、またはカンナビゲロール(CBG)または他のカンナビノイドである。
【0064】
「合成カンナビノイド」とは、カンナビノイドまたはカンナビノイド様の構造を有し、植物ではなく化学的手段を使用して製造される化合物である。
【0065】
フィトカンナビノイドは、カンナビノイドの抽出に使用された方法に応じて、中性(脱炭酸型)またはカルボン酸型として得ることができる。たとえば、カルボン酸型を加熱すると、ほとんどのカルボン酸型が脱炭酸して中性型になることが知られている。
【実施例】
【0066】
生物学的に活性な原薬の精製
投入原料
キサントフモール含有量0.3~1.0wt.%の緑灰色の粉塵および顆粒(生産廃棄物、「リープ(leaps)」)。原料には、従来の抽出プロセス(水抽出/水非混和性有機溶媒)では除去が困難な非極性および極性の不純物が大量に含まれている。
【0067】
抽出手順
植物材料をn-ヘプタンに懸濁し、非極性不純物を除去するために20~30℃で連続抽出プロセスに付した。抽出温度を50~60℃に上げ(この温度では植物原料の一部の成分が融解する)、このプロセスを繰り返す。ヘプタンを蒸発させ、黄色残差をプレス機で綿フィルターを通してろ過した。乾燥残渣を抽出反応器に移し、酢酸エチルを加え、半製品をロータリーエバポレーターでフラスコに集めた点を除いて、n-ヘプタン抽出と同様にプロセスを繰り返した。プロセスの最後に、黄色がかった沈殿中のキサントフモール含有量は、約10~12重量%であった。
【0068】
沈殿物を適切な量の有機溶媒と液体アルカンの混合物に溶解して、約0.05Mの濃度のキサントフモールを得た。得られた暗色の溶液を、0.2M有機酸溶液、0.05M ZnCl2、5% NaHCO3、および食塩水に対する抽出プロセスに付した。有機層を無水Na2SO4で乾燥し、有機溶媒を蒸発させた後、キサントフモール含有量20~25%の固体混合物を得た。次に、混合物を十分な量の酢酸エチルに溶解してキサントフモールの濃度0.05~0.1Mを得、次いで、溶液をろ過し、液液分離器を使用して流中で塩基-酸抽出を行った。簡単に述べると、キサントフモールの酢酸エチル溶液を0.05~0.1M NaOH溶液で抽出し、有機層を廃棄し、水層中のキサントフモール(ナトリウム塩として)を0.05M~0.1Mの有機酸溶液に添加すると、Xnの沈殿が生じ、これを酢酸エチルに抽出し、無水Na2SO4で乾燥させた。残渣に酢酸エチルと食塩水を加えた。無機塩をろ去した後、酢酸エチルの大部分を蒸発させ、計算量のn-ヘプタンを添加して、溶媒混合物からキサントフモールの沈殿を開始した。キサントフモールがすべて沈殿するまで蒸留プロセスを継続した。アルコールを添加し(微量の酢酸エチルを除去するため)、蒸発プロセスを継続した。沈殿物をろ別し、n-ヘプタンで洗浄し、真空乾燥して、最終生成物を淡黄色粉末で得た(HPLC純度>95.0%)。
【0069】
原薬の特性評価
キサントフモール、イソキサントフモール、6-プレニルナリンゲニン、8-プレニルナリンゲニンを含む原薬(XN-54、XN-63-10、およびXN-87)の3つのバッチを上記のプロセスで調製し、分析した。
【0070】
粒度分布(PSD)
PSD試験は、Malvern分析装置によるMastersizer 2000を使用したレーザー回折によって実行された。表1は、試験した3つのバッチの平均値(μm)を示す:XN-54(サンプルは分析前に乳鉢で粉砕された)、XN-63-10、およびXN-87。表2は、バッチXN-63とその微粉化誘導体の結果をまとめたものである。XN-54(
図2A)、XN-63-10(
図2B)、およびXN-87(
図2C)の粒度分布を示す。
【0071】
表1.原薬のPSD結果、バッチ:XN-54、XN-63-10およびXN-87
【表1】
【0072】
表2.原薬、バッチXN-63-10およびその微粉化誘導体のPSD結果
【表2】
【0073】
示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定分析は、TA Instruments 示差走査熱量測定(DSC)、タイプ DSC Q20 V24.10 Build 122で行った。2つのDSバッチのDSC分析により、2つの異なる融点の結果が示された。DSバッチ XN-54の融点は153.22℃(
図3A)、DSバッチ XN-87の融点は171.86℃(
図3B)であった。
【0074】
熱重量分析(TGA)
熱重量分析は、TA Instruments 熱重量分析装置 (TGA)、タイプ Q50 V20.13 Build 39で行った。原薬のバッチXN-54のTGAを
図4Aに、バッチXN-87のTGAを
図4Bに示す。
【0075】
フーリエ変換赤外分析(FTIR)
フーリエ変換赤外分析は、次のFTIR分光光度計で行った:島津製作所、タイプ IRTracer-100(DS、バッチXN-54)およびJASCO FT/IR-6200(DS、バッチXN-63-10)。
図5Aと5B は、それぞれDSバッチXN-54とXN-87のFTIR分析の結果を示す。
【0076】
粉末X線回折(XRPD)
粉末X線回折分析により、原薬の結晶性が示され、2つの異なるバッチについて2つの異なる結晶形が示された。XN-54のディフラクトグラムを
図6Aに、XN-8のディフラクトグラムを
図6Bに示す。
【0077】
原薬の溶解度
原薬の溶解度試験は、水、0.1N塩酸、酢酸緩衝液 pH=4.5、リン酸緩衝液pH=6.8および人工唾液の5つの溶媒中で行った。さまざまな界面活性剤の添加が材料の溶解度に及ぼす影響も調査した。試験は、室温で、各媒体中の各材料の2つのサンプルについて、マグネチックスターラーを使用して行った(予備調査を除き、オービタルシェーカーを使用した)。欧州薬局方10.5、5.17.1に従って、pH=4.5およびpH=6.8の緩衝液を調製した。人工唾液は、次の出版物に従って調製した:Artificial saliva and its use in biological experiments J. Pytko-Polonczyk1、A. Jakubik、A. Przeklasa-Bierowiec、B. Muszynska、Journal of Physiology and Pharmacology 2017、68、6、807-813。溶液中の原薬の含有量をHPLCにより分析した。
【0078】
表3は、溶解度試験からのサンプル中の原薬の含有量を測定するためのHPLC条件を示す。
表3.溶解した原薬を測定するためのHPLC法のパラメーター
【表3】
* 原薬溶液3μl/顆粒溶液1μl
【0079】
医薬品の製剤化
XN87は、表4に示す3つのフォーマットを使用して製剤化開発を進めた。
表4.原薬の製剤化
【表4】
* 粉末で添加
** 3%溶液で添加
【0080】
使用方法
慢性骨髄性白血病(CML)細胞に対する原薬の効果は、K562細胞株モデルを使用して試験した。3つの細胞株を使用した:K562-IR(イマチニブ耐性)、およびK562-IS(イマチニブ感受性)は、American Type Culture Collection (ATCC)から購入した;およびK562-DR 1000nM(イマチニブおよびダサチニブ耐性)は、TKIによる継続的な治療とクローン選択によって開発された。基礎タンパク質の発現は、α/βチューブリンおよびGAPDHのウェスタンブロッティングによって確認した(データは示さず)。K562-DR1000nMにおけるpCrklレベルは減少したが、BCR-ABLレベルはダサチニブ処理細胞間で同様であり(それぞれ
図7Aおよび7B)、これは、二重耐性がBCR-ABLに依存しないことを示している。K562-IS細胞を1000nMイマチニブで処理しても、未処理の対照と比較してpCrk1レベルは有意に変化しなかった(データは示さず)。
【0081】
K562細胞株に対するXN-54(化合物1)の効果を測定するために、製造者の指示に従ってCellTiter-Glo 2.0システム(Promega)を使用して生存率実験を行った。簡単に説明すると、培地中にK562細胞を含む不透明な壁のマルチウェルプレートを、XN-54とともに室温で所望の時間インキュベートした。細胞培養培地の体積と同じ体積のCellTiter-Glo試薬を各ウェルに添加した。発光シグナルが安定した後に発光を測定した。
【0082】
細胞培養は、96ウェルプレート形式で、各細胞株専用の培地200μl中で行った。細胞を以下の密度:5 x 10
5/ml、2.50 x 10
5/ml、1.25 x 10
5/mlで、24、48、または72時間播種した。48時間と72時間の両方の時点でのXN-54またはダサチニブ(コントロール)の濃度増加に応じた生存率を
図8に示す。
図8に示すように、XN-54(化合物1)は、K562イマチニブ感受性細胞とK562イマチニブ耐性細胞の両方で顕著な活性を示した。XN-54が生存率に影響を与えるメカニズムを決定するために、早期マーカー(アネキシンV)と後期マーカー(アネキシンV/ヨウ化プロピジウム)の両方(BD Pharmingen cat. 556547)を使用して細胞のアポトーシスを分析した。
図9および10に示すように、XN-54は、早期アポトーシス(
図9)および後期アポトーシス(
図10)マーカーの両方を使用して、すべての細胞株でアポトーシスを誘導した。
【0083】
併用療法
TKIと組み合わせたXN-54の効果もK562細胞で分析した。K562-IR細胞におけるXN-54とポナチニブの用量反応組み合わせに対する生存率を測定した。
図11に示すように、XN-54とポナチニブの組み合わせは、log 10(M)のXN-54(
図11A)またはポナチニブ(
図11B)のいずれかに基づいて細胞生存率に顕著な効果もたらした。同様の結果が、ニロチニブと組み合わせてXN-54 を使用したK562-IS細胞でも見られた(
図12)。
【0084】
XN-54(化合物1)とカンナビジオール(化合物2)の効果を、上記の細胞生存率の方法を使用してアッセイした。
図13に示すように、XN-54とCBDの組み合わせは、K562-DR(
図13A)、K562-IS(
図13B)、およびK562-IR細胞(
図13C)の細胞生存率に劇的な影響を与えた。
【国際調査報告】