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特表2024-524796亜鉛の湿式製錬工法における塩素を除去する方法
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  • 特表-亜鉛の湿式製錬工法における塩素を除去する方法 図1
  • 特表-亜鉛の湿式製錬工法における塩素を除去する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】亜鉛の湿式製錬工法における塩素を除去する方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 19/20 20060101AFI20240702BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20240702BHJP
   C22B 3/20 20060101ALI20240702BHJP
   C25C 1/16 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C22B19/20 101
C22B3/04
C22B3/20
C25C1/16 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544715
(86)(22)【出願日】2023-04-25
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 KR2023005611
(87)【国際公開番号】W WO2023234562
(87)【国際公開日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】10-2022-0145379
(32)【優先日】2022-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519197594
【氏名又は名称】高麗亞鉛株式会社
【氏名又は名称原語表記】KOREA ZINC CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミン チョル
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ホン シク
【テーマコード(参考)】
4K001
4K058
【Fターム(参考)】
4K001AA20
4K001AA30
4K001BA03
4K001CA15
4K001DB02
4K001DB07
4K001DB21
4K001JA01
4K058AA21
4K058BA25
4K058BB04
(57)【要約】
本発明は、亜鉛焼鉱を浸出する浸出工程から工程液を準備する段階;前記工程液を反応槽に投入し、酸素を吹き込みながら前記反応槽に鉛精鉱を投入する段階;前記反応槽で形成されたスラリーを濾過槽で固液分離する段階;及び前記固液分離する段階で分離された濾液及び鉛精鉱の残渣を後処理する段階を含み、前記反応槽で前記工程液中の塩素イオンと前記鉛精鉱に含まれる銀とを反応させて塩化銀を沈殿させる、亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛焼鉱を浸出する浸出工程から工程液を準備する段階;
前記工程液を反応槽に投入し、酸素を吹き込みながら前記反応槽に鉛精鉱を投入する段階;
前記反応槽で形成されたスラリーを濾過槽で固液分離する段階;及び
前記固液分離する段階で分離された濾液及び鉛精鉱の残渣を後処理する段階を含み、
前記反応槽で前記工程液中の塩素イオンと前記鉛精鉱に含まれる銀とを反応させて塩化銀を沈殿させる、亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法。
【請求項2】
前記鉛精鉱の残渣を鉛製錬工程で製錬する、請求項1に記載の亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法。
【請求項3】
前記浸出工程は中性浸出(neutral leaching)工程、弱酸浸出(weak acid leaching)工程、強酸浸出(hot acid leaching)工程、及び超強酸浸出(super hot acid leaching)工程を含み、
前記工程液は前記超強酸浸出工程の沈殿槽の上澄み液である、請求項1に記載の亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法。
【請求項4】
前記濾液を、前記強酸浸出工程に投入する、請求項3に記載の亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法。
【請求項5】
前記鉛精鉱は0.1重量%以上の銀(Ag)、6重量%以上の亜鉛(Zn)、3重量%以上の銅(Cu)を含む、請求項1に記載の亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法。
【請求項6】
前記鉛精鉱の粒度は50μm以下である、請求項1に記載の亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法。
【請求項7】
前記反応槽に前記酸素を100~400Nm/hrの流量で吹き込む、請求項1に記載の亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法。
【請求項8】
前記鉛精鉱のパルプ濃度は80~150g/Lの範囲である、請求項1に記載の亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法。
【請求項9】
亜鉛精鉱から焼鉱を形成する焙焼工程;
前記焼鉱から浸出液を形成する浸出工程;
鉛精鉱を用いて前記浸出工程のうち一部の工程液中の塩素を除去する塩素除去工程;
前記浸出液中の不純物を除去する浄液工程;及び
前記浄液工程後に電解液から亜鉛を形成する電解工程を含む、亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法。
【請求項10】
前記塩素除去工程は、前記工程液を反応槽に投入し、酸素を吹き込みながら前記反応槽に前記鉛精鉱を投入する段階を含む、請求項9に記載の亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は亜鉛の湿式製錬工法における塩素を除去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
亜鉛精鉱から亜鉛を得る工法には乾式製錬工法と湿式製錬工法とがある。このうち湿式製錬工法では、亜鉛精鉱を、焙焼(Roasting)工程、浸出(Leaching)工程、浄液(Purification)工程及び電解(Electro‐winning)工程を経て高純度亜鉛として抽出する。
【0003】
電解工程は種々の不純物に非常に敏感なので、浸出工程及び/又は浄液工程で不純物を適切な水準以下に除去しなければならない。このような不純物のうち、塩素は各種金属設備の腐食を加速化し、電解槽における塩素ガスの発生をもたらすので、その濃度を適正水準以下に維持しなければならない。しかし、塩素は浸出工程及び浄液工程で除去するのが非常に難しい。よって、塩素濃度の調節は湿式工程における原料の入量を少なくする方法で制御しなければならないが、この場合、亜鉛の製錬においてさまざまな原料を処理するのが難しくなり、特に亜鉛のリサイクル過程で発生する、塩素含量の高い2次原料を処理する際に問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は亜鉛の湿式製錬工法の浸出工程において、鉛精鉱を用いて工程液の中に含まれた塩素を適正な水準に除去することによって、後続の電解工程で電解槽内のガスの発生を抑制して設備の腐食を防止し、さまざまな種類の亜鉛精鉱及び亜鉛のリサイクル過程で発生する2次原料を処理するのを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施例は、亜鉛焼鉱を浸出する浸出工程から工程液を準備する段階;前記工程液を反応槽に投入し、酸素を吹き込みながら前記反応槽に鉛精鉱を投入する段階;前記反応槽で形成されたスラリーを濾過槽で固液分離する段階;及び前記固液分離段階で分離された濾液及び鉛精鉱の残渣を後処理する段階を含み、前記反応槽で前記工程液中の塩素イオンと前記鉛精鉱に含まれる銀とを反応させて塩化銀を沈殿させる、亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法を提供することができる。
【0006】
本発明の一実施例は、前記鉛精鉱の残渣を鉛製錬工程で製錬する、亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法を提供することができる。
【0007】
本発明の一実施例は、前記浸出工程は中性浸出(neutral leaching)工程、弱酸浸出(weak acid leaching)工程、強酸浸出(hot acid leaching)工程、及び超強酸浸出(super hot acid leaching)工程を含み、前記工程液は前記超強酸浸出工程の沈殿槽の上澄み液である、亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法を提供することができる。
【0008】
本発明の一実施例は、前記濾液を、前記強酸浸出工程に投入する、亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法を提供することができる。
【0009】
本発明の一実施例は、前記鉛精鉱は0.1重量%以上の銀(Ag)、6重量%以上の亜鉛(Zn)、3重量%以上の銅(Cu)を含む、亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法を提供することができる。
【0010】
本発明の一実施例は、前記鉛精鉱の粒度は50μm以下である、亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法を提供することができる。
【0011】
本発明の一実施例は、前記反応槽に前記酸素を100~400Nm/hrの流量で吹き込む、亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法を提供することができる。
【0012】
本発明の一実施例は、前記鉛精鉱のパルプ濃度は80~150g/Lの範囲である、亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法を提供することができる。
【0013】
本発明の一実施例は、亜鉛精鉱から焼鉱を形成する焙焼工程;前記焼鉱から浸出液を形成する浸出工程;鉛精鉱を用いて前記浸出工程のうち一部の工程液中の塩素を除去する塩素除去工程;前記浸出液中の不純物を除去する浄液工程;及び前記浄液工程後に、電解液から亜鉛を形成する電解工程を含む、亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法を提供することができる。
【0014】
本発明の一実施例は、前記塩素除去工程は、前記工程液を反応槽に投入し、酸素を吹き込んで前記反応槽に前記鉛精鉱を投入する段階を含む、亜鉛の湿式製錬工法における工程液中の塩素を除去する方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は亜鉛の湿式製錬工法において工程液の中に含まれる塩素の濃度を低くすることによって、製錬所全般にわたって発生する塩素イオンによる腐食と、電解工程における有害ガスの発生を防止することができる。また、塩素含量が高い亜鉛精鉱や2次原料を処理することが可能になるので、資源循環に寄与することができる。また、鉛精鉱に多く含まれている亜鉛を回収できるので、経済的な亜鉛製錬方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例による、亜鉛の湿式製錬工法を示す工程フローチャートである。
図2】本発明の一実施例による、亜鉛の湿式製錬工法のうち塩素除去工程を示す工程フローチャートである。
図3】本発明の一実施例による、亜鉛の湿式製錬工法のうち塩素除去工程を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例は、本発明の技術的思想を説明するための目的で例示されたものである。本発明による権利範囲が以下に提示される実施例やこれらの実施例に関する具体的説明により限定されるものではない。
【0018】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
【0019】
図1を参照すると、亜鉛の湿式製錬工法は、焙焼工程(S10)、浸出工程(S20)、浄液工程(S30)、及び電解工程(S40)を含んでよい。
【0020】
亜鉛精鉱を焙焼工程(S10)に投入してよい。焙焼工程(S10)は硫化物として存在する亜鉛精鉱を熱と酸素を用いて酸化物に変化させる工程であり、これによって焼鉱(calcine)が形成される。
【0021】
浸出工程(S20)は焙焼工程(S10)で形成された焼鉱を硫酸のような酸溶液に溶解させて亜鉛浸出液を形成する工程である。浸出工程(S20)には電解工程(S40)で形成された電解尾液(spent)を用いてもよい。一実施例において、浸出工程(S20)は亜鉛浸出率を極大化して、不純物の溶解を最小限にするために複数の段階からなってもよい。複数の段階からなる浸出工程(S20)内で電解尾液と焼鉱及び未反応の焼鉱とを互いに反対方向に流し(countercurrent flow)てもよい。浸出工程(S20)は中性浸出(neutral leaching)工程、弱酸浸出(weak acid leaching)工程、強酸浸出(hot acid leaching)工程、及び超強酸浸出(super hot acid leaching)工程を含んでよい。
【0022】
一実施例において、中性浸出工程の残渣を弱酸浸出工程に投入してもよく、弱酸浸出工程の残渣を強酸浸出工程に投入してもよく、強酸浸出工程の残渣を超強酸浸出工程に投入してもよい。一実施例において、中性浸出工程の濾液を浄液工程(S30)に投入してもよい。また、弱酸浸出工程、強酸浸出工程及び超強酸浸出工程のうち少なくともいずれか1つの工程の濾液を中性浸出工程及び/又はその後段の他の工程に投入してもよい。
【0023】
浄液工程(S30)は浸出工程(S20)で形成された浸出液のうち亜鉛を除いた不純物を除去する工程である。浄液工程(S30)後の溶液は電解工程(S40)で電解液として用いられる。
【0024】
電解工程(S40)は硫酸亜鉛を含む電解液から亜鉛を陰極上に電着させる工程である。
【0025】
図2は本発明の一実施例による、亜鉛の湿式製錬工法のうち塩素除去工程を示す工程フローチャートである。
【0026】
図3は本発明の一実施例による、亜鉛の湿式製錬工法のうち塩素除去工程を説明するための図面である。
【0027】
図2及び図3を参照すると、塩素除去工程は、工程液準備段階(S100)、鉛精鉱投入段階(S200)、固液分離段階(S300)、濾液及び鉛精鉱の残渣後処理段階(S400)を含んでよい。
【0028】
<工程液準備段階(S100)>
まず、亜鉛の湿式製錬工程から、塩素を除去するのに適した工程液を準備してよい。塩素を除去するのに適した工程液は、図1の浸出工程(S20)の中性浸出(neutral leaching)工程、弱酸浸出(weak acid leaching)工程、強酸浸出(hot acid leaching)工程、及び超強酸浸出(super hot acid leaching)工程のうちいずれか1つの工程の沈殿槽の上澄み液であってよい。例えば、塩素を除去するのに適した工程液は、超強酸浸出工程の沈殿槽の上澄み液であってもよい。前記工程液を、図3に示されているように、反応槽(100)に投入してよい。
【0029】
超強酸浸出工程の沈殿槽の上澄み液は70~120g/L濃度の硫酸を含んでよく、0.4~0.7g/L濃度の塩素を含んでよい。また、強酸浸出工程の沈殿槽の上澄み液は20~70g/L濃度の硫酸を含んでよく、弱酸浸出工程の沈殿槽の上澄み液のpHは1.5~3の範囲であってよく、中性浸出工程の沈殿槽の上澄み液のpHは3.5~5の範囲であってよい。ただし工程液中の硫酸の濃度及び塩素の濃度は精練所によって異なってよい。
【0030】
工程液全部を用いることになれば多くの鉛精鉱が必要となるので、塩素を除去しようとする程度に応じて工程液の流量を調節することによって、適正量の鉛精鉱を用いて塩素を効率よく除去することができる。
【0031】
例えば、浸出工程(S20)の複数の段階のうち一部の工程液(即ち、超強酸浸出工程の沈殿槽の上澄み液)のみを準備し、その流量を適宜調節することによって不必要に多くの鉛精鉱が投入されるのを防止することができる。前記超強酸浸出工程の沈殿槽の上澄み液の一部(例:約50%)を反応槽(100)に投入して塩素を所定のパーセントで除去すれば、前記超強酸浸出工程の沈殿槽の上澄み液全部を反応槽(100)に投入して塩素を所定のパーセントで除去するよりも投入される鉛精鉱の量を削減することができる。他の実施例において、超強酸浸出工程の沈殿槽の上澄み液全部を反応槽(100)に投入して塩素を除去するようにしてもよい。
【0032】
<鉛精鉱投入段階(S200)>
反応槽(100)内に鉛精鉱を投入してもよい。酸素を吹き込んで反応槽(100)内に鉛精鉱を投入してもよい。反応槽(100)内で、液中の塩素(Cl)イオンと鉛精鉱に含まれた銀(Ag)成分とを結合させて塩化銀(AgCl)形態の沈殿を発生させてもよい。この場合、反応槽(100)内の液中の塩素(Cl)イオン濃度は減少する。塩素と銀との反応は下記[反応式]で示すことができる。
【0033】
[反応式]
Ag + Cl= AgCl
【0034】
反応槽(100)内の反応温度は80~95℃の範囲であってよく、反応時間は5~20時間であってよい。鉛精鉱のパルプ濃度は80~150g/Lが望ましい場合もある。鉛精鉱のパルプ濃度は工程液1L当たり反応槽(100)に投入される鉛精鉱の量である。酸素は一般的な下部吹き込み方法を通じて反応槽(100)に供給され、反応槽(100)の大きさに応じてさまざまな流量で吹き込まれてよい。例えば、反応槽(100)が約250mの寸法を有する場合、酸素を約100~200Nm/hrまたは約100~400Nm/hrの流量で反応槽(100)内に吹き込んでよい。酸素を、鉛精鉱に含まれる銅及び亜鉛成分を溶解させるための目的で反応槽(100)内に投入してもよい。
【0035】
鉛精鉱のパルプ濃度は、80g/L未満では塩素の除去効率が減少し、150g/L超では鉛精鉱の投入量不必要に多くなる可能性がある。
【0036】
鉛精鉱は一般的な鉛精鉱を用いてよいが、銀(Ag)含量が比較的高いことが望ましい場合があり、亜鉛の含量及び銅の含量も比較的高いことが望ましい場合がある。銀(Ag)は工程液中の塩素と直接結合するので、塩素除去の効率向上のためにその含量が高いことが望ましい。鉛精鉱に含まれる亜鉛と銅は鉛製錬に害がある元素であるが、その含量が高くても亜鉛製錬の後続工程で回収でき、亜鉛と銅が工程液中に溶解した後の鉛精鉱の残渣は亜鉛と銅の含量が減少した状態にあるので鉛製錬においても有利である。
【0037】
鉛精鉱に含まれる亜鉛と銅成分は、乾式方法の鉛精鉱製錬において困難を伴う。しかし、反応槽(100)で80~95%の亜鉛及び銅の成分が溶解することがあるため、鉛精鉱の残渣は亜鉛及び銅の成分の含量が減少した状態にあるので、鉛精鉱の残渣の鉛製錬を、より容易に行うことができる。また溶解した亜鉛及び銅の成分は、亜鉛製錬の後続工程で回収することが可能なので、経済的な亜鉛製錬方法を提供することができる。
【0038】
鉛精鉱は0.1重量%以上の銀(Ag)を含んでよい。鉛精鉱に含まれる銀の含量が0.1%未満であると、工程液中の塩素の除去効果が落ちるからである。
【0039】
鉛精鉱は6重量%以上の亜鉛(Zn)を含んでよい。鉛精鉱に含まれる亜鉛の含量が6重量%未満であると、後続工程での亜鉛の回収効果が小さくなるからである。
【0040】
鉛精鉱は3重量%以上含量の銅(Cu)を含んでよい。鉛精鉱に含まれる銅の含量が3重量%未満であると、後続工程での銅の回収効果が小さくなるからである。
【0041】
鉛精鉱の粒度は微細なものが望ましい場合もある。例えば、鉛精鉱の粒度は50μm以下であってもよい。鉛精鉱の粒度が大きいと反応性が落ち、塩素除去率、亜鉛回収率、及び銅回収率が落ちる可能性があるからである。
【0042】
鉛精鉱投入段階(S200)で反応槽(100)内の液の酸度(acidity)を高めるために図1の電解工程(S40)で形成された電解尾液(Spent)を反応槽(100)内に投入してもよい。反応槽(100)内の液の酸度が高くなるに伴って、亜鉛及び銅の溶解率が増加する可能性があるからである。
【0043】
鉛精鉱の鉛(Pb)成分は硫酸によって溶解せず、一部が硫化物(sulfide)から硫酸物(sulfate)に変化するかもしれないが、後続の鉛製錬工程(300)では問題はない。
【0044】
<固液分離段階(S300)>
反応後のスラリーは濾過設備を介して固液分離処理され、濾液及び鉛精鉱の残渣に分離される。一実施例において、濾過を行う前に、沈殿槽を経てもよい。濾過設備は一般的なフィルタープレス(Filter press)が望ましいが、これに限定されるものではなく、他の形態の固液分離設備を使用してもよい。
【0045】
<濾液及び鉛精鉱の残渣後処理段階(S400)>
反応後の濾液は初期の液より塩素濃度が相当減少した状態にあり、亜鉛及び銅の濃度が多少増加した状態にあるかもしれない。反応後の濾液を、最も酸度が高い超強酸浸出工程と比較して酸度がその次に高い強酸浸出工程に投入してもよい。以後、電解工程で電解液中の塩素濃度は減少した状態にあるので、電解槽内のガスの発生を抑制して設備の腐食を防止し、さまざまな種類の亜鉛精鉱及び亜鉛のリサイクル過程において発生する2次原料の処理を可能にすることができる。
【0046】
反応後の鉛精鉱の残渣を鉛製錬工程(300)で製錬してもよい。鉛精鉱の残渣において亜鉛及び銅の含量は低くなった状態あるので、乾式方法で製錬する時に有利であり得る。鉛精鉱の残渣は多少増加した濃度の塩素を含有するが、鉛製錬工程(300)に大きい影響を与えないので、鉛を製錬する時に困難はない。
【0047】
本発明の例示的な実施例によると、亜鉛の湿式製錬で工程液中に含まれた塩素濃度を低くすることによって、精練所全般にわたって発生する塩素イオンによる腐食と、電解工程で有害なガスの発生を防止することができる。また、塩素含量が高い亜鉛精鉱や2次原料を処理することが可能なので、資源循環に寄与することができる。また、鉛精鉱に多く含まれている亜鉛を回収することができるので、経済的な亜鉛製錬方法を提供することができる。
【0048】
[実施例1および実施例2]
亜鉛製錬工法の浸出工程の工程液2Lと鉛精鉱300gを90℃で酸素を反応槽に吹き込んで16時間反応させた後、濾過した。濾過後の濾液に含まれる塩素(Cl)成分の濃度を測定した。比較例1及び比較例2では、鉛精鉱の成分含量及び粒度を除いて他の条件を実施例1及び実施例2と同一にした。実施例と比較例における、濾過後の濾液の塩素濃度及び塩素除去率を表1で比較した。
【0049】
実施例1及び実施例2において、0.568g/L濃度の塩素(Cl)、92g/L濃度の亜鉛(Zn)、126g/L濃度の硫酸を含む工程液を用いた。
【0050】
実施例1において、51.1重量%の鉛(Pb)、0.4重量%の銀(Ag)、6.3重量%の亜鉛(Zn)、3.7重量%の銅(Cu)を含む鉛精鉱Aを用いた。
【0051】
実施例2において、29.4重量%の鉛(Pb)、0.3重量%の銀(Ag)、13.7重量%の亜鉛(Zn)、1.9重量%の銅(Cu)を含む鉛精鉱Bを用いた。
【0052】
以上の通り実施した結果を下記表1に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
比較例2のように鉛精鉱の粒度が85μmと大きい場合、塩素除去率は14.3%であるのに対して、実施例1、2のように鉛精鉱の粒度が50μm以下の場合、比較例1に比べて塩素除去率が相当高い。比較例1のように鉛精鉱に含まれる銀が0.05重量%の場合、塩素除去率は8.1%であるに対して、実施例1、2のように鉛精鉱に含まれる銀が0.1重量%以上の場合、比較例1に比べて塩素除去率が相当高い。
【0055】
また、銀含量がさらに高い鉛精鉱を使用した実施例1の方が実施例2よりも工程液中の塩素除去率がさらに高かった。
【0056】
以上、添付した図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明の属する技術分野における当業者は、本発明がその技術的思想もしくは必須の特徴を変更せずとも他の具体的な形態で実施されてもよいということを理解できるはずである。
【0057】
従って、以上で記述した各実施例は、全ての面において例示的なものであり、限定的ではないものと理解すべきである。本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲そしてその均等概念から導き出される全ての変更または変更された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
図1
図2
図3
【国際調査報告】