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特表2024-524800経皮的介入におけるタイムリアルタイム誘導のための超音波プローブを備えたロボット
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  • 特表-経皮的介入におけるタイムリアルタイム誘導のための超音波プローブを備えたロボット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】経皮的介入におけるタイムリアルタイム誘導のための超音波プローブを備えたロボット
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20240702BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20240702BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240702BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240702BHJP
   A61B 34/10 20160101ALI20240702BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B8/14
A61B6/03 577
A61B6/46 506B
A61B34/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549637
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 FR2022051137
(87)【国際公開番号】W WO2022263764
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】2106352
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520148884
【氏名又は名称】クアンタム サージカル
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シュドレ,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】ブロンデル,リュシアン
(72)【発明者】
【氏名】ナホム,ベルタン
(72)【発明者】
【氏名】バダノ,フェルナンド
【テーマコード(参考)】
4C093
4C601
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA25
4C093CA33
4C093FF35
4C093FF37
4C601EE30
4C601FF16
4C601GA20
4C601GA22
4C601KK12
(57)【要約】
本発明は、医療器具(15)を、患者の皮膚における進入点と、患者の対象の解剖学的領域内の治療される病変における標的点とによって画定される軌道に沿って誘導するためのツールガイド(14)を備えたロボットアーム(13)を含む医療ロボット(10)に関する。ロボットアームは、超音波プローブ(40)も設けられる。医療ロボットは、ロボットマーカ(18)の位置及び患者マーカ(22)の位置の特定を可能にするナビゲーションシステム(30)と協働する。準備段階中、ロボットは、超音波プローブ(40)を、患者(20)に接触して並びに病変及び辿られる軌道を含む平面内に配置するように構成される。誘導段階中、医療ロボットは、辿られる軌道に沿って医療器具を誘導するために、超音波プローブによって取得された超音波画像に基づいてロボットアームをリアルタイムで制御するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者(20)の対象の解剖学的構造における病変を治療するための医学的介入中に施術者を支援するための医療ロボット(10)であって、一端において、超音波プローブ(40)と、医療器具(15)を誘導するためのツールガイド(14)とが取り付けられるロボットアーム(13)と、前記ロボットアーム(13)を制御するように構成された制御ユニット(12)とを含み、ナビゲーションシステム(30)と協働するように構成され、前記制御ユニット(12)は、前記ナビゲーションシステム(30)によって通信される情報に基づいて、前記医療ロボット(10)上に位置決めされるように意図されたロボットマーカ(18)の位置と、前記対象の解剖学的構造の近くで前記患者(20)上に位置決めされるように意図された患者マーカ(22)の位置とを任意の時点で特定することができるように構成される、医療ロボット(10)において、
準備段階中、前記制御ユニット(12)は、
- 前記病変及び前記患者マーカ(22)の少なくとも1つの放射線不透過性要素(222)が可視である計画画像を受信すること、
- 前記計画画像から、前記病変における標的点及び前記患者(20)の皮膚における進入点を特定することであって、前記標的点及び前記進入点は、したがって、前記医療器具(15)のために辿られる軌道を画定する、特定すること、
- 前記ロボットマーカ(18)の前記位置及び前記患者マーカ(22)の前記位置に従い、前記超音波プローブ(40)を、前記患者(20)に接触して並びに前記病変及び前記辿られる軌道を含む平面内に配置するように前記ロボットアーム(13)を制御すること
を行うように構成され、
誘導段階中、前記制御ユニット(12)は、前記超音波プローブ(40)によって取得された超音波画像をリアルタイムで受信し、及び前記辿られる軌道に沿って前記医療器具(15)を誘導するように前記ツールガイド(14)を配置するために、前記超音波画像に基づいて前記ロボットアーム(13)をリアルタイムで制御するように構成されることを特徴とする医療ロボット(10)。
【請求項2】
前記誘導段階中、制御ユニット(12)は、受信された超音波画像ごとに、
- 前記計画画像との前記超音波画像のレジストレーションからもたらされる融合画像を生成すること、
- 前記融合画像から前記標的点の位置及び前記進入点の位置を特定すること、
- 前記医療器具(15)が、前記ツールガイド(14)により、前記標的点の前記位置及び前記進入点の前記位置によって画定される前記軌道に沿って誘導されるように、前記ロボットアーム(13)を移動させること
を行うように構成される、請求項1に記載の医療ロボット(10)。
【請求項3】
前記誘導段階中、前記医療器具(15)の挿入中、受信された新たな超音波画像ごとに、前記制御ユニット(12)は、前記医療器具(15)の位置を特定し、及び前記医療器具(15)の前記位置に基づいて前記ロボットアーム(13)の前記リアルタイム制御を調整するように構成される、請求項1又は2に記載の医療ロボット(10)。
【請求項4】
前記超音波プローブ(40)は、前記制御ユニット(12)が、前記超音波プローブ(40)によって前記患者(20)の身体にかかる圧力を特定することを可能にする力センサ(17)に結合され、及び前記制御ユニット(12)は、前記超音波プローブ(40)が前記患者(20)の前記身体に所定の圧力をかけるように、ロボットアーム(13)を移動させるように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療ロボット(10)。
【請求項5】
前記計画画像は、コンピュータ断層撮影画像、陽電子放射断層撮影画像又は磁気共鳴画像法画像である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療ロボット(10)。
【請求項6】
前記計画画像から標的点及び進入点を特定するために、前記制御ユニットは、前記計画画像上において、人工知能アルゴリズムを用いて、前記病変及び/又は回避される解剖学的部位をセグメント化するように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の医療ロボット(10)。
【請求項7】
前記超音波プローブ(40)から受信される前記超音波画像は、Bモード超音波画像である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医療ロボット(10)。
【請求項8】
前記制御ユニット(12)は、前記超音波プローブ(40)によって取得された超音波画像を少なくとも15画像/秒の速度で受信及び処理するように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の医療ロボット(10)。
【請求項9】
前記施術者が前記計画画像及び/又は前記融合画像を見ることを可能にする表示画面を含むユーザインタフェース(19)をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の医療ロボット(10)。
【請求項10】
前記ユーザインタフェース(19)は、前記準備段階中、前記表示画面上に表示された前記計画画像上において、標的点、及び/又は進入点、及び/又は前記医療器具(15)によって横切られない解剖学的部位を前記施術者が特定することを可能にする入力手段を含む、請求項9に記載の医療ロボット(10)。
【請求項11】
前記ユーザインタフェースは、前記表示画面上で前記解析画像を前記患者の身体の実際の画像と重ね合わせるための拡張現実デバイスを含む、請求項9又は10に記載の医療ロボット(10)。
【請求項12】
前記制御ユニット(12)は、超音波画像を前記計画画像と比較し、及び前記超音波プローブ(40)によって取得された超音波画像が、前記病変が位置する解剖学的領域を含むように前記超音波プローブ(40)を移動させる方向を特定するようにさらに構成される、請求項1~11のいずれか一項に記載の医療ロボット(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、1つ又は複数の医療器具を患者の対象の解剖学的構造に挿入することを含む低侵襲の医学的介入中に施術者を支援するためのロボット装置の分野に属する。特に、本発明は、医療ロボットであって、患者の対象の解剖学的構造内の病変における標的点の移動を追跡し、及び医療器具を標的点に最適に誘導するためにロボットの多関節アームの位置をリアルタイムで調整するように構成された医療ロボットに関する。標的点の移動は、特に患者の呼吸又は医療器具の挿入によって生じる可能性がある。
【背景技術】
【0002】
従来技術
医療器具を用いて患者の対象の解剖学的構造に到達することを目的とした低侵襲の介入を準備するために、施術者は、一般に、(介入の数日前又は数週間前に得られる)術前医用画像又は(介入直前に患者が介入テーブルに乗っているときに得られる)介入前医用画像に基づいて介入計画を実施する。低侵襲の医学的介入は、特に、臓器内の腫瘍の生検若しくはアブレーションを実施すること、椎体形成術若しくは骨セメント療法を実施すること又はさらに特定の解剖学的領域を刺激することを目的とする場合がある。対象の解剖学的構造は、例えば、肺、腎臓、肝臓、脳、脛骨、膝、椎骨等であり得る。医療器具は、針、プローブ、カテーテル等であり得る。
【0003】
この計画ステップ中、施術者は、治療される対象の解剖学的構造の領域における標的点を画定する。施術者は、患者の皮膚の上に医療器具のための進入点を画定する。したがって、これらの2つの点により、医療器具が医学的介入を行うために辿らなければならない軌道が画定される。胸部領域、腹部領域又は骨盤領域に位置する軟性臓器の特定の場合、患者の呼吸に関連する移動及び/又は医療器具の挿入に起因する臓器の局所的な変形により、介入中に標的点が変位する。術前又は介入前の医用計画画像は、介入中の標的点のこの移動を予測しない。したがって、標的点の位置(すなわち対象の解剖学的構造における治療される領域の位置)は、医用計画画像の取得中と介入中とで通常異なる。したがって、医用計画画像から医療器具の挿入を計画する場合、医療器具が標的点に正確に到達しない危険性がある。
【0004】
加えて、医療器具が辿る計画された軌道が適宜調整されない場合、医療器具が挿入中に曲がり、標的点に到達しない危険性がある。
【0005】
患者の呼吸によって生じる標的点の移動を制限するために、医療器具の挿入時、医用計画画像が取得された呼吸周期の位相に対応する呼吸周期の位相で患者の呼吸を遮断することが考えられる。呼吸は、医学的介入が局所麻酔下で行われる場合、患者が自発的に遮断することができるか、又は医学的介入が全身麻酔下で行われる場合、施術者が制御された方法で遮断することができる(機械的換気の中断)。しかしながら、医用計画画像が取得された呼吸周期の位相と、介入中に患者の呼吸が遮断される呼吸周期の位相との間の正確な対応関係を得ることは、困難であるため、この解決法は、常に非常に正確であるとは限らない。さらに、この解決法は、医療器具の挿入が比較的迅速であることを前提とし、これは、患者の呼吸が遮断されている間に行われなければならないためである。
【0006】
患者の呼吸周期中にいくつかの医用計画画像を撮影し、呼吸によって生じる対象の解剖学的構造の変形及び移動が最も小さい軌道を特定することも考えられる。しかしながら、この場合にも医療器具が標的点に正確に到達しない危険性がある。
【0007】
介入中医用画像(医療器具が患者の体内に挿入されているときに取得される画像)を定期的に取得することにより、介入を通して標的点の位置を辿ることも考えられる。これらの医用画像は、通常、コンピュータ断層撮影、X線又は磁気共鳴によって取得される。しかしながら、コンピュータ断層撮影又はX線の場合、こうした解決法には、介入中に患者及び施術者に著しい放射線を照射するという欠点がある。磁気共鳴画像法の場合、特に麻酔材料に対して、特に制約の多い所定の非磁性材料を使用する必要がある。この解決法では、介入を通してかさばる撮像デバイスを使用する必要もある。
【0008】
超音波画像を活用して対象の解剖学的構造内の病変の位置を辿ることも知られている。しかしながら、病変は、超音波画像において常に可視であるとは限らず、既存の解決法は、一般的に精度に欠ける。
【0009】
したがって、患者の対象の解剖学的構造内の治療される領域の標的点に医療器具を正確に挿入するための解決法を見出すことは、特に患者の呼吸に関連する移動及び/又は医療器具の挿入に起因する対象の解剖学的構造の局所的変形が介入中に標的点の変位を引き起こす場合に依然として必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の説明
本発明の目的は、従来技術の欠点、特に上記に述べた欠点のすべて又はいくつかを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、第1の態様によれば、本発明は、患者の対象の解剖学的構造における病変を治療するための医学的介入中に施術者を支援するための医療ロボットを提案する。医療ロボットは、一端において、超音波プローブと、医療器具を誘導するためのツールガイドとが取り付けられるロボットアームを含む。医療ロボットは、ロボットアームを制御するように構成された制御ユニットも含む。医療ロボットは、ナビゲーションシステムと協働するように構成される。制御ユニットは、ナビゲーションシステムによって通信される情報に基づいて、医療ロボット上に位置決めされるように意図されたロボットマーカの位置と、対象の解剖学的構造の近くで患者上に位置決めされるように意図された患者マーカの位置とを任意の時点で特定することができるように構成される。準備段階中、制御ユニットは、
- 病変及び患者マーカの少なくとも1つの放射線不透過性要素が可視である計画画像を受信すること、
- 計画画像から、病変における標的点及び患者の皮膚における進入点を特定することであって、標的点及び進入点は、したがって、医療器具のために辿られる軌道を画定する、特定すること、
- ロボットマーカの位置及び患者マーカの位置に従い、超音波プローブを、患者に接触して並びに病変及び辿られる軌道を含む平面内に配置するようにロボットアームを制御すること
を行うように構成される。誘導段階中、制御ユニットは、超音波プローブによって取得された超音波画像をリアルタイムで受信し、及び辿られる軌道に沿って医療器具を誘導するようにツールガイドを配置するために、超音波画像に基づいてロボットアームをリアルタイムで制御するように構成される。
【0012】
本出願において、「位置」という用語は、3次元基準系における物体の位置と向きとの両方を述べるものとして広義に理解されなければならない(英語の文献では「姿勢(pose)」という用語が使用されることもある)。マーカ位置(患者マーカ及びロボットマーカ)並びに標的点の位置及び進入点の位置もロボット基準系又はナビゲーションシステム基準系で画定することができる。ロボットマーカの位置は、ナビゲーションシステムの基準系と、ロボットの基準系との両方で既知であるため、ロボットの基準系は、ナビゲーションシステムの基準系に対して相対的に画定できることに留意されたい(ロボットアームの各関節は、例えば、ロボットの基準系におけるロボットアームの各関節要素の位置を知ることを可能にするエンコーダを含み、ロボット上のロボットマーカの位置は、制御ユニットに先験的に既知である)。
【0013】
例えば、計画画像は、患者が介入テーブルに乗っているとき、患者マーカが対象の解剖学的構造の近くで患者上に位置決めされる時点で介入直前に取得された介入前医用画像である。計画画像は、介入の数日又は数週間前に取得され、介入前の画像とレジストレーションされた術前医用画像でもあり得る。計画画像は、例えば、コンピュータ断層撮影、陽電子放射断層撮影又は磁気共鳴画像法によって得られた医用画像である。患者マーカの位置は、計画画像上で可視である患者マーカの放射線不透過性マーカを用いて計画画像上で特定することができる。
【0014】
標的点及び進入点は、セグメンテーション人工知能アルゴリズムによって計画画像上で特定することができる。別の例では、標的点及び進入点は、施術者が計画画像上で特定することができる。
【0015】
計画画像上で施術者が最初に画定した標的及び進入点は、その後、誘導段階中、超音波プローブによって取得された超音波画像上で(例えば、スペックル変形追跡アルゴリズムによって)辿ることができる(スペックルは、画像の瞬間的なテクスチャに現れ、そのテクスチャに粒状の外観を与える小さく急速に変動するスポットの集合を表す)。
【0016】
したがって、超音波画像からリアルタイムで標的点の位置及び進入点の位置を追跡することが可能である。したがって、ロボットアームをリアルタイムで移動させて、医療器具が標的点の位置及び進入点の位置によって画定される軌道に沿って誘導されるように恒久的に位置決めされるようにすることができる。このロボットアームの位置のリアルタイム調整により、患者の呼吸によって生じる標的点の移動を補償することが可能になる。このリアルタイムモニタリングは、特に、医療器具を挿入する直前のツールガイドの誘導段階中に行うことができる。
【0017】
こうした配置により、医療器具の挿入を進めるために、呼吸周期の任意の瞬間に患者の呼吸を遮断することが可能になる。実際には、患者の呼吸が遮断される瞬間とは無関係に、ロボットアームは、所望の軌道に沿った医療器具の挿入を可能にするために正しく位置決めされる。
【0018】
さらに、介入中に患者の呼吸を遮断する必要がなくなる。実際には、ロボットアームは、医療器具を所望の軌道に沿って誘導するためにロボットアームの位置が常に調整されるようにリアルタイムで移動される。
【0019】
本発明により、医療器具の挿入後の軌道の横方向の再調整を最小限にすることも可能になる(こうした軌道の横方向の再調整は、一般に、医療器具が横切る器官にとって外傷となる)。
【0020】
したがって、医療器具は、医療器具が呼吸周期中に挿入される瞬間とは無関係に、治療される領域に非常に高精度で挿入することができる。医療器具の挿入は、一般に施術者によって行われ、医療ロボットの目的は、施術者による医療器具の挿入を誘導することである。しかしながら、医療器具の挿入が自動化され、制御ユニットによって制御されることを妨げるものではない。
【0021】
さらに、介入中の標的点の位置及び進入点の位置のリアルタイムの特定は、超音波画像に基づいて行われるため、介入中に患者及び施術者が電離放射線にさらされない。
【0022】
医療器具が患者の体内に挿入され始めると直ちに、患者の皮膚における進入点の位置は、固定され、ロボットアームの移動のための回転軸となる。しかしながら、医療器具の挿入中にリアルタイムで取得される新たな超音波画像から、標的点の位置及び進入点の位置をリアルタイムで辿ることが依然として可能である。
【0023】
こうした配置により、医療器具の挿入に起因する標的点のいかなる移動も考慮することが可能になる。標的点は、実際に、医療器具の挿入中に医療器具が辿る軌道の方向に移動する場合がある(これは、到達すべき標的点が軟性臓器内の病変、例えば腫瘍内にある場合に特に当てはまる)。超音波画像を用いて標的点の位置をリアルタイムで特定することにより、医療器具が辿る軌道とともに、この軌道に沿って医療器具を誘導するためのロボットアームの位置もリアルタイムで更新することが可能になる。
【0024】
特定の実施形態において、本発明は、単独で又は技術的に可能なすべての組合せに従い、以下の特徴の1つ又は複数をさらに含むことができる。
【0025】
特定の実施形態では、誘導段階中、制御ユニットは、受信された超音波画像ごとに、
- 計画画像との超音波画像のレジストレーションからもたらされる融合画像を生成すること、
- 融合画像から標的点の位置及び進入点の位置を特定すること、
- 医療器具が、ツールガイドにより、標的点の位置及び進入点の位置によって画定される軌道に沿って誘導されるように、ロボットアームを移動させること
を行うように構成される。
【0026】
超音波画像を計画画像とレジストレーションした結果、病変が可視である融合画像が生成される。そのため、計画画像上で最初に特定された標的及び進入点は、融合画像上でも特定することができる。
【0027】
特定の実施形態では、誘導段階中、医療器具の挿入中、受信された新たな超音波画像ごとに、制御ユニットは、医療器具の位置を特定し、及び医療器具の位置に基づいてロボットアームのリアルタイム制御を調整するように構成される。
【0028】
こうした配置により、患者の呼吸運動中に超音波プローブを患者の身体に適切な圧力で接触させ続けることが可能になる。
【0029】
特定の実施形態では、超音波プローブは、制御ユニットが、超音波プローブによって患者の身体にかかる圧力を特定することを可能にする力センサに結合される。制御ユニットは、超音波プローブが患者の身体に所定の圧力をかけるように、ロボットアームを移動させるようにさらに構成される。
【0030】
こうした配置により、挿入中に医療器具が曲がる危険性を考慮し、それに応じてロボットアームのリアルタイム制御を調整することが可能になる(それにより、医療器具が辿る軌道は、進入点と標的点との間の直線でなくなる)。
【0031】
特定の実施形態では、計画画像は、コンピュータ断層撮影画像、陽電子放射断層撮影画像又は磁気共鳴画像法画像である。
【0032】
特定の実施形態では、計画画像から標的点及び進入点を特定するために、制御ユニットは、計画画像上において、人工知能アルゴリズムを用いて、病変及び/又は回避される解剖学的部位をセグメント化するように構成される。
【0033】
特定の実施形態では、超音波プローブから受信される超音波画像は、Bモード超音波画像である。
【0034】
特定の実施形態では、制御ユニットは、超音波プローブによって取得された超音波画像を少なくとも15画像/秒の速度で受信及び処理するように構成される。
【0035】
こうした配置により、標的点の位置をリアルタイムでモニタリングし、その結果、ロボットアームの位置をリアルタイムで調整することを保証して、医療器具が介入を通して所望の軌道に沿って誘導されるようにすることが可能になる。
【0036】
特定の実施形態では、医療ロボットは、施術者が計画画像及び/又は融合画像を見ることを可能にする表示画面を含むユーザインタフェースをさらに含む。
【0037】
特定の実施形態では、ユーザインタフェースは、準備段階中、表示画面上に表示された計画画像上において、標的点、及び/又は進入点、及び/又は医療器具によって横切られない解剖学的部位を施術者が特定することを可能にする入力手段を含む。
【0038】
特定の実施形態では、ユーザインタフェースは、表示画面上で解析画像を患者の身体の実際の画像と重ね合わせるための拡張現実デバイスを含む。
【0039】
拡張現実デバイスにより、移動している3次元の病変及び挿入中の医療器具の経過を患者の身体の上に重ね合わせることが可能になる。このデバイスは、例えば、患者の上方の介入テーブル上に位置決めされた画面又はさらにマスク、ヘルメット若しくは拡張現実メガネであり得る。この種のディスプレイは、施術者による患者の対象の解剖学的構造の空間的表現を容易にする。
【0040】
特定の実施形態では、制御ユニットは、超音波画像を計画画像と比較し、及び超音波プローブによって取得された超音波画像が、病変が位置する解剖学的領域を含むように超音波プローブを移動させる方向を特定するようにさらに構成される。
【0041】
図の概要
本発明は、非限定的な例として示されるとともに、図1図6を参照して行われる以下の説明を読むことでよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明による医療ロボット及びナビゲーションシステムを含む医療機器の概略図である。
図2】医療ロボットのロボットアームの概略図である。
図3】医療ロボットに取り付けられるように意図された「ロボットマーカ」の概略図である。
図4】対象の解剖学的構造の近くで患者上に位置決めされるように意図された「患者マーカ」の概略図である。
図5】準備段階中、次いでロボットアームのリアルタイム誘導段階中に制御ユニットによって実施されるステップの概略図である。
図6】計画画像(図のa)部)、超音波画像(図のb)部)及び計画画像と超音波画像とのレジストレーションからもたらされる融合画像(図のc)部)の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
これらの図において、図間における同一の参照符号は、同一の又は類似する要素を示す。明確にするために、別段の断りのない限り、表される要素は、必ずしも同じ縮尺ではない。
【0044】
本発明の実施形態の詳細な説明
図1は、本発明による医療ロボット10を概略的に示す。医療ロボット10は、介入テーブル21上に位置決めされた患者20の対象の解剖学的構造に対する医学的介入中に施術者を支援するために使用される。
【0045】
一例は、患者の対象の解剖学的構造内の病変を治療するために、低侵襲的に又は経皮的に行われる医学的介入の場合である。この種の医学的介入では、一般に、対象の解剖学的構造における(例えば肝臓、肺、腎臓等における)標的解剖学的領域(病変、例えば腫瘍)に到達するために、施術者が1つ又は複数の医療器具(例えば針、プローブ、カテーテル等)を患者の体内に一定の深さまで挿入する必要がある。
【0046】
医療ロボット10は、ベース11を含む。考慮する例では、医療ロボット10のベース11には、電動車輪が備えられ、電動車輪により、医療ロボット10は、並進及び/又は回転運動によって異なる方向に移動することができる。
【0047】
医療ロボット10は、多関節ロボットアーム13をさらに含む、その一端は、ベース11に接続される。ロボットアーム13の他端には、超音波プローブ40と、医療器具15、例えば針、プローブ、カテーテル、電極等を誘導するように意図されたツールガイド14とが取り付けられる。
【0048】
考慮され、図1に示される例では、超音波プローブ40は、追加アーム16を介してロボットアーム13に取り付けられる。追加アーム16も、ツールガイド14に対する超音波プローブ40の追加の少なくとも1自由度を可能にするように関節運動する。
【0049】
医療ロボット10は、ロボットアーム13の移動を制御するように構成された制御ユニット12を含む。本出願では、ロボットアーム13の制御は、追加アーム16の制御も含むと考えられる。制御ユニット12は、1つ又は複数のプロセッサ122と、ロボットアーム13を位置決めする方法の様々なステップを実施するために実行されるプログラムコード命令のセットの形態で、コンピュータプログラム製品が格納されるメモリ121(磁気ハードディスク、電子メモリ、光ディスク等)とを含む。メモリ121は、この方法を実施するために使用される画像及び他の情報(特にナビゲーション情報)を記録することも可能にする。
【0050】
したがって、医療ロボット10は、医学的介入中に医療器具15を位置決めし、保持し、誘導する際、施術者を支援するために使用することができる。変形例では、医療器具15の挿入は、完全に自動化し、医療ロボット10の制御ユニット12によって制御することができる。加えて、医療ロボット10は、超音波プローブ40を自動的に位置決めするために使用される。
【0051】
医療ロボット10は、ユーザインタフェース19も含み、ユーザインタフェース19は、施術者が、医用画像(例えば、計画画像及び/又は超音波プローブ40によって取得され、計画画像と融合された超音波画像)を見ることができるようにする、表示画面を含む。ユーザインタフェースは、施術者が表示画面上に表示された計画画像上において、標的点、及び/又は進入点、及び/又は医療器具15によって横切られない解剖学的部位を特定することができるようにする、入力手段(キーボード、マウス、タッチスクリーン等)も含むこともできる。
【0052】
特定の実施形態では、ユーザインタフェースは、表示画面上で融合画像を患者の身体の実際の画像と重ね合わせる拡張現実デバイスを含むことができる。こうしたデバイスにより、施術者にとって対象の解剖学的構造の空間的表現が容易になる。
【0053】
医療ロボット10は、ナビゲーションシステム30と協働するように構成される。医療ロボット10は、ナビゲーションシステム30とデータを交換する、制御ユニット12に接続された通信モジュールを含む。ナビゲーションシステム30も、医療ロボット10の制御ユニット12とデータを交換する通信モジュールを含む。制御ユニット12とナビゲーションシステム30との間で確立される通信は、有線通信又は無線通信であり得る。簡略化のために、図1には通信モジュールを示していない。
【0054】
考慮する例では、ナビゲーションシステム30は光学式ナビゲーションシステムである。ナビゲーションシステム30は、赤外放射領域で動作する立体視カメラの2つのセンサに対応する2つの光学センサ31を含む。考慮する例では、ナビゲーションシステム30は、可視光領域で動作するカメラ32をさらに含む。
【0055】
制御ユニット12は、ナビゲーションシステム30によって通信される情報から、医療ロボット10に取り付けられるように意図されたロボットマーカ18の位置及び対象の解剖学的構造の近くで患者20上に位置決めされる患者マーカ22の位置を、任意の時点で特定することができるように構成される。
【0056】
本出願において、「位置」という用語は、一般に3次元座標系である所与の基準系における物体の位置及び向きの組合せに対応する。英語の文献では、空間における物体の位置及び向きの組合せを表すために「姿勢」という用語が使用される。
【0057】
制御ユニット12は、超音波プローブ40が取得した超音波画像を受信するように構成される。
【0058】
超音波プローブ40から受信された超音波画像とナビゲーションシステム30から受信された情報とは、制御ユニット12が、所与の瞬間における病変の位置を患者マーカ22の位置と相関させることができるように、時間的に同期させる。
【0059】
従来、超音波プローブ40は、1つ又は複数の音波送受信素子(圧電材料、静電容量式の電子トランスデューサ)を含む。超音波プローブは、間接的な圧電効果により超音波を生成する。波が解剖学的構造にぶつかるたびに、この波の一部が、反射又は散乱(「スペックル」)によってエコーの形態で返ってくる。したがって、このエコーは、直接圧電効果により電流に変換され、その後、画像に再構成される。超音波画像の再構成は、主にプローブの送受信素子の数、大きさ及び位置(横方向及び縦方向の分解能)、放射パルスの持続時間並びにエコー時間(軸方向及び/又は深さ方向の分解能)によって決まる。したがって、受信エコーのエネルギーは、グレーレベルでコード化される。エネルギーが高いほど、対応する画像部分(ピクセル)は白くなる。このグレースケール符号化は「輝度」と呼ばれ、関連する超音波モードは「Bモード」と称される。超音波プローブ40によって生成される画像は、2次元画像又は3次元画像であり得る。好ましくは、超音波プローブ40は、少なくとも15画像/秒の速度で生成することができる。
【0060】
Bモードは、対象の解剖学的構造が肝臓である場合に特に好適である。しかしながら、本発明は、他の超音波モード、例えばエラストグラフィでも使用することができることに留意されたい。
【0061】
考慮する例では、図2に示すように、ロボットアーム13は、6自由度を与えて、医療器具15を3次元空間の任意の位置に配置することを可能にする、6つのロトイド関節131~136を含む。有利には、ロボットアーム13の関節131~135は、一直線に並んでおらず、互いに対してオフセットしており、それにより、ロボットアーム13のより多くのあり得る構成が可能になる。ロトイド関節136は、ツールガイド14の主軸に平行な軸を中心とする回転に対応する。
【0062】
考慮する例では、超音波プローブ40は、ツールガイド14に対する超音波プローブ40の移動のための追加の2自由度を与える、2つのロトイド関節137及び138を含む追加アーム16を介して、ロボットアーム13に取り付けられる。しかしながら、逆も可能であり、すなわち、超音波プローブ40は、ロボットアーム13の遠位端に直接取り付けることができ、追加アームは、ツールガイド14を担持することができることに留意されたい。ツールガイド14及び追加アーム16は、クランプを用いてロボットアーム13の端部に取り付けられる。考慮され、図2に示される例では、超音波プローブ40は力センサ17にも結合され、力センサ17は、制御ユニット12が、患者の身体20によって超音波プローブ40にかかる力を特定することを可能にする。
【0063】
追加アーム16及びツールガイド14は、医療器具15が超音波プローブ40によって取得された超音波画像の平面内に常にあるように、互いに対して配置される。
【0064】
各関節131~138は、その角度位置がリアルタイムで既知であることを可能にする少なくとも1つのエンコーダを含む。したがって、ロボットアーム13の構成は、関節131~138が採るパラメータ値のセット(例えば、各関節の回転角度の値)に対応する。
【0065】
図3は、医療ロボット10上に位置決めされるように意図されたロボットマーカ18を概略的に示す。考慮する例では、ロボットマーカ10は、3つの光学マーカ181を含み、そのため、ロボットマーカ18の位置をナビゲーションシステム30の基準系の3つの空間次元において特定することができる。ロボットマーカ18の光学マーカ181の互いに対するそれぞれの位置は、ナビゲーションシステム30及び/又は制御ユニット12には先験的に既知である。有利には、各光学マーカ181の幾何学的形状も先験的に既知であり得る。図3に示す例では、光学マーカ181は球形の形状である。球形の形状であることにより、光放射の反射を最適化することが可能になる。
【0066】
少なくとも3つの光学マーカ181を使用することにより、平面を画定することが可能になり、したがって、平面に垂直なz軸と、平面内のx軸及びy軸とを有する、直接的な正規直交3次元基準系を画定することが可能になり、そのため、その基準系は直接的である。これにより、光学マーカ181から形成される基準系の位置及び向きを特定することが可能になる。x、y及びzの3つの軸により、6自由度、すなわち軸x、y又はzの各々に沿った並進と、これらの各軸を中心とした回転とを画定することが可能になる。
【0067】
光学マーカ181は、パッシブ又はアクティブであり得る。パッシブ光学マーカは、例えば、ナビゲーションシステム30等の別の要素によって放射された光放射を反射する。パッシブ光学マーカは、例えば、赤外線立体視カメラ(これは、例えば、Northern Digital Inc.製のPolaris(登録商標)ナビゲーションシステムで使用されるもの)で検出可能な反射球又は立体視カメラ(これは、例えば、ClaroNav製のMicronTracker(登録商標)ナビゲーションシステムで使用されるもの)で可視の白黒パターンに対応することができる。アクティブ光学マーカは、それ自体が、ナビゲーションシステム30によって検出可能な光放射、例えば赤外線を放射する。
【0068】
しかしながら、球形の光学マーカ181のセットの代わりに、3次元の特徴的な幾何学的形状を有する単一の光学マーカを使用できることに留意されたい。
【0069】
図4は、対象の解剖学的構造の近くで患者20上に位置決めされるように意図された患者マーカ22を概略的に示す。患者マーカ22は、少なくとも3つの光学マーカ221を含み(図4に示す例では4つを含む)、そのため、患者マーカ22の位置をナビゲーションシステム30の基準系の3つの空間次元において特定することができる。患者マーカ22の光学マーカ221の互いに対するそれぞれの位置は、ナビゲーションシステム30及び/又は制御ユニット12には先験的に既知である。有利には、各光学マーカ221の幾何学的形状も先験的に既知であり得る。図4に示す例では、光学マーカ221は球形の形状である。球形の形状であることにより、光放射の反射を最適化することが可能になる。ツールガイド14の光学マーカ181のアクティブ又はパッシブタイプについて上述したことは、患者基準22の光学マーカ221についても当てはまる。ここでもまた、球形の光学マーカ221のセットの代わりに、3次元の特徴的な幾何学形状を有する単一の光学マーカを使用することが考えられる。
【0070】
患者マーカ22は、医療撮像装置により(例えば、コンピュータ断層撮影により、磁気共鳴により、超音波により、断層撮影により、陽電子放射により等)取得された医用画像上で可視である放射線不透過性マーカ222も含む。放射線不透過性マーカ222の互いに対するそれぞれの位置は、ナビゲーションシステム30及び/又は制御ユニット12には先験的に既知である。有利には、放射線不透過性マーカ222の幾何学的形状も先験的に既知であり得る。好ましくは、患者マーカ22は少なくとも3つの放射線不透過性マーカ222を含む(考慮する例では、患者マーカ22は4つの放射線不透過性マーカ222を含む)。放射線不透過性マーカ222は、例えば、セラミックビーズであり得る。しかしながら、球形の放射線不透過性マーカ222のセットの代わりに、3次元の特徴的な幾何学的形状を有する単一の放射線不透過性マーカを使用できることに留意されたい。
【0071】
本明細書の残りの部分では、非限定的な例として、ナビゲーションシステム30の光学センサ31及び様々な光学マーカ181、221は、赤外線タイプの光放射で動作するように設計されると考える。また、光学マーカ181、221は、パッシブマーカであると考える。光学センサ31は、赤外線を放射するように構成される。この赤外線は、様々な光学マーカ181、221によって光学センサ31に向けて反射される。光学センサ31は、この反射された赤外線を受光するように構成される。したがって、ナビゲーションシステム30は、赤外線が前記光学センサ31と前記光学マーカ181、221との間を往復するのにかかる時間を測定することにより、光学マーカ181、221と光学センサ31との間の距離を特定することができる。各光学マーカ181、221と各光学センサ31との間の距離を知ることにより、及びロボットマーカ18上及び患者マーカ22上の光学マーカ181、221の互いに対する配置を、先験的を知ることにより、ナビゲーションシステム30の基準系におけるロボットマーカ18の位置及び患者マーカ22の位置を特定することができる。
【0072】
本発明は、光学ナビゲーションシステムを用いて説明されることに留意されたい。しかしながら、変形例において、光学ナビゲーションシステムの代わりに電磁ナビゲーションシステムを使用することを妨げるものは何もない。この場合、ナビゲーションシステムによって検出可能な様々な「マーカ」(患者マーカ22、ロボットマーカ18)は、電磁センサに対応することになり、電磁センサの位置は、生成された電磁場内でナビゲーションシステムによって特定することができる。
【0073】
考慮する例では、医療ロボット10の制御ユニット12は、ナビゲーションシステム30から、ナビゲーションシステム30の基準系におけるロボットマーカ18の現在位置に関する情報を受信するように構成される。ここで、医療ロボット10の制御ユニット12には、(関節131~138のエンコーダを介して)医療ロボット10の基準系におけるロボットマーカ18の現在位置が既知である。したがって、制御ユニット12は、ナビゲーションシステム30の基準系における位置から医療ロボット10の基準系における位置を画定するために実行される変換を特定することができる。
【0074】
ロボットマーカ18の位置から、(関節131~138のエンコーダを介して)超音波プローブ40の位置及びツールガイド14の位置を推測することも可能である。
【0075】
制御ユニット12は、ナビゲーションシステム30から、ナビゲーションシステム30の基準系における患者マーカ22の位置に関する情報を受信するようにも構成される。したがって、制御ユニット10は、医療ロボット10の基準系における患者マーカ22の位置を画定することができる。
【0076】
患者の皮膚における医療器具15の進入点の位置と、治療される病変における標的点の位置とは、病変と患者マーカ22の放射線不透過要素222との両方が可視である医療計画画像上において、患者マーカ22の位置に対して特定することができる。患者マーカ22の位置がナビゲーションシステムの基準系において又は医療ロボット10の基準系において既知である場合、ナビゲーションシステムの基準系における又は医療ロボット10の基準系における進入点の位置及び標的点の位置をそこから推論することが可能になる。
【0077】
所与の時点で超音波プローブ40の位置が既知である場合、その時点で超音波プローブ40によって取得された超音波画像上の可視要素の位置を特定することができる。この可視要素は、特に標的点又は進入点に対応することができる。標的点及び進入点は、医療器具15によって辿られる軌道を画定する。標的点の位置及び進入点の位置が既知であるとき、すなわち医療器具15によって辿られる軌道が画定されるとき、制御ユニットは、ロボットアーム13を、ツールガイド14が画定された軌道に沿って医療器具15を誘導することができるようにする構成に自動的に移動させることができる。
【0078】
患者の呼吸に関連する移動は、医療ロボット10の基準系における標的点及び進入点の変位を引き起こす。したがって、患者の呼吸サイクルの所与の瞬間において医療器具15によって辿られる軌道は、呼吸サイクルの別の瞬間において同じではない。したがって、任意の瞬間において、医療器具15によって辿られる軌道を特定し、この軌道に従って医療器具15を誘導するようにツールガイド14の位置を調整することができるために、標的点の位置及び進入点の位置をリアルタイムでモニタリングしなければならない。
【0079】
図5は、例として、このリアルタイムモニタリングを可能にするために制御ユニット12によって実施されるステップを示す。これらのステップは、特に、医療器具15を挿入する前に行われる。第1のステップでは、準備段階は、病変の超音波画像を取得するために超音波プローブ40を好適な位置に配置することを主に含む。第2のステップでは、誘導段階が、辿られる軌道に沿って医療器具15が常に位置決めされるように、ツールガイド14の位置をリアルタイムで調整するために、超音波プローブ40によって取得された超音波画像に基づいてロボットアーム13を制御することを含む。
【0080】
準備段階は、病変及び患者マーカ22の少なくとも1つの放射線不透過性要素222が可視である計画画像を受信するステップ101を含む。計画画像は、例えば、患者20が介入テーブルの上に乗っているとき、患者マーカ22が対象の解剖学的構造の近くで患者20上に位置決めされる時点で、介入の直前に取得された介入前医用画像である。計画画像は、介入の数日前又は数週間前に取得され、介入前の画像とレジストレーションされた、術前医用画像でもあり得る。計画画像は、例えば、コンピュータ断層撮影、陽電子放射断層撮影又は磁気共鳴画像法によって得られた医用画像である。患者マーカ22の位置は、計画画像上で可視である患者マーカ22の放射線不透過性マーカ222を用いて計画画像上で特定することができる。
【0081】
次に、準備段階は、計画画像上の標的点及び進入点を特定するステップ102を含む。第1の例によれば、計画画像は、ユーザインタフェース19の画面上に表示され、ユーザインタフェース19により、施術者は、治療される領域における標的点、及び/又は患者の皮膚における進入点、及び/又は回避される危険部位(例えば、骨又は血管)並びに治療パラメータを計画画像上で特定することができる。このステップは、機械学習アルゴリズムによるいくつかの解剖学的領域(対象の解剖学的構造、治療される病変、危険部位等)のセグメンテーションによって容易にすることができる。別の例では、人工知能アルゴリズムにより、計画画像上で標的及び進入点を直接特定することができる。
【0082】
次に、準備段階は、患者マーカ22の位置に対する標的点の位置及び進入点の位置を特定するステップ103を含む。患者マーカ22の位置は、実際には、計画画像上で可視である放射線不透過性要素222を用いて計画画像上で特定することができる。さらに、ナビゲーションシステム30により、患者マーカ22の位置は、ナビゲーションシステム30の基準系において又は医療ロボット10の基準系において任意の時点で特定することができる。したがって、ナビゲーションシステムの基準系において又は医療ロボット10の基準系において、進入点の位置及び標的点の位置をそこから推測することができる。
【0083】
最後に、準備段階は、超音波プローブ40が患者20に接触し、及びこの位置で超音波プローブ40によって取得された超音波画像が病変及び医療器具15によって辿られる軌道を含む平面内にあるように超音波プローブ40を位置決めするために、ロボットアーム13をリアルタイムで制御するステップを含む。注意点として、ツールガイド14及び超音波プローブ40は、医療器具15が常に、超音波プローブ40によって取得された超音波画像の平面内にあるように、相対的に配置される。ロボットアーム13のリアルタイム制御は、超音波プローブ40が取り付けられた追加アーム16の制御も含む。
【0084】
考慮する例では、力センサ17により、制御ユニット13は、超音波プローブ40によって患者20の身体にかかる圧力を特定することができる。制御ユニット12は、超音波プローブ40が患者20の身体に所定の圧力をかけるように、ロボットアーム13を移動させるように構成される。こうした配置により、患者20の呼吸運動中、超音波プローブ40を患者20の身体に接触させたままにすることが可能となる。患者20の呼吸運動が、患者20の身体に対して超音波プローブ40の過度に大きい圧力を引き起こす場合(吸気)、超音波プローブ40は、患者20の身体から離れる方向に移動する。対照的に、患者20の呼吸運動が、患者20の身体に対して超音波プローブ40の過度に低い圧力を引き起こす場合(呼気)、超音波プローブは患者20の身体に向かって移動する。
【0085】
計画画像上で施術者によって最初に画定された標的点及び進入点は、その後、誘導段階中、超音波プローブによってリアルタイムで取得される超音波画像上でモニタリングすることができる。
【0086】
標的点のモニタリングは、特に、いくつかの連続画像における移動を追跡する方法、スペックルの変形の分析又は人工知能アルゴリズムにより実施することができる。超音波画像上で病変が可視ではない場合、融合画像上での標的点の追跡を補助するために、超音波画像上で可視の病変に近い解剖学的構造(例えば血管)の移動を追跡することが有利な場合がある。しかしながら、選択された解剖学的構造は、超音波プローブによって取得される超音波画像の平面内で可視でなければならない。
【0087】
超音波画像上で病変が十分に可視ではない場合、融合画像上で標的点の移動を追跡するべきであり、各融合画像は、計画画像との超音波画像のレジストレーションに対応する。
【0088】
誘導段階は、超音波プローブ40によって取得された超音波画像を受信するステップ201を含む。
【0089】
誘導段階は、超音波プローブ40によって超音波画像が取得された瞬間にロボットマーカ18の位置及び患者マーカ22の位置を特定するステップ202を含む。
【0090】
次いで、誘導段階は、計画画像との超音波画像のレジストレーションからもたらされる融合画像を生成するステップ203を含む。したがって、病変、標的点及び進入点は、得られた融合画像上で可視である。
【0091】
図6は、計画画像の超音波画像とのレジストレーションからもたらされる融合画像(図6のc)部)を形成するために、超音波画像(図6のb)部)をレジストレーションするための計画画像(図6のa)部)を概略的に示す。計画画像上に、治療される病変50と標的点51とが可視である。考慮する例では、基準画像は、コンピュータ断層撮影によって取得される。一方、超音波画像上では、治療される病変50はほとんど可視ではない。治療される病変50と標的点51とは、基準画像の超音波画像とのレジストレーションからもたらされる解析画像上で可視となる。計画画像上及び融合画像上では、(図6には示さないが)患者マーカ22の放射線不透過性マーカ222も可視であることに留意されたい。
【0092】
レジストレーションは、全体的(対象の解剖学的構造全体へのレジストレーション)又は局所的(対象の解剖学的構造の特定の領域への最適化されたレジストレーション)であり得る。レジストレーションは剛体的に(平行移動及び/又は回転により)又は非剛体的に(変形を伴って)行うことができる。レジストレーションは、特に、合成される画像上の特定の解剖学的構造の認識に基づく機械学習アルゴリズムによって実施することができる。レジストレーションは、計画画像上の患者マーカの放射線不透過性要素のセグメンテーションと、次いで、(患者マーカ22の位置を介して既知である)計画画像の基準系と(ロボットマーカ18の位置を介して既知である)超音波画像の基準系とのレジストレーションとに基づくことも可能である。
【0093】
次いで、誘導段階は、融合画像、ロボットマーカ18の位置及び患者マーカ22の位置から、標的点の位置及び進入点の位置を特定するステップ204を含む。標的点の位置及び進入点の位置は、融合画像の基準系における患者マーカ22の位置に対して画定することができる。患者マーカ22の位置及びロボットマーカ18の位置が既知であることにより、ナビゲーションシステム30の基準系及び/又は医療ロボット10の基準系において、標的点の位置及び進入点の位置を特定することが可能になる。
【0094】
しかしながら、超音波プローブ40によって取得された新たな超音波画像ごとにロボットマーカ18の位置及び患者マーカ22の位置を特定することは必須ではないことに留意されたい(これは、ステップ202が任意選択的であることを意味する)。実際には、超音波プローブ40の位置は、医療ロボット10の基準系において既知であるため、融合画像の基準系は、医療ロボット10の基準系に関して画定することができ、したがって、融合画像から直接、医療ロボット10の基準系における標的点の位置及び進入点の位置を特定することが可能である。
【0095】
次いで、誘導段階は、医療器具15が、標的点の位置及び進入点の位置によって画定される軌道に沿ってツールガイド14によって誘導されるように、ロボットアーム13を移動させるステップ205を含む。
【0096】
超音波プローブ40から受信された新たな超音波画像ごとに、ステップ201~205が繰り返される。
【0097】
このように、ロボットアームは、医療器具15が標的点の位置及び進入点の位置によって画定される軌道に沿って誘導されるように、恒久的に位置決めされるようにリアルタイムで移動される。このロボットアーム13の位置のリアルタイム調整により、患者の呼吸によって生じる標的点の移動を補償することが可能になる。
【0098】
こうした配置により、医療器具15の挿入を進めるために、呼吸周期の任意の瞬間で患者の呼吸を遮断することが可能になる。実際には、患者の呼吸が遮断される瞬間とは無関係に、ロボットアーム13は、所望の軌道に沿った医療器具15の挿入を可能にするように正しく位置決めされる。
【0099】
さらに、介入中に患者の呼吸を遮断する必要がなくなる。実際には、ロボットアームは、医療器具を所望の軌道に沿って誘導するためにロボットアームの位置が常に調整されるようにリアルタイムで移動される。
【0100】
医療器具15が患者20の体内に挿入され始めると直ちに、患者の皮膚における進入点の位置は固定され、ロボットアーム13の移動のための回転軸になる。しかしながら、医療器具15の挿入中にリアルタイムで取得される新たな超音波画像から、標的点の位置及び進入点の位置をリアルタイムで辿ることは依然として可能である。これにより、特に、医療器具15の挿入に起因する標的点のいかなる移動も考慮することが可能になる。実際には、標的点は、医療器具15の挿入中に医療器具15が辿る軌道の方向に移動する可能性がある(これは、病変が軟組織に位置する場合に特に当てはまる)。超音波画像を用いる標的点の位置のリアルタイムの特定により、医療器具15によって辿られる軌道を更新するとともに、この軌道に沿って医療器具15を誘導するためにロボットアーム13の位置を更新することも可能になる。
【0101】
超音波プローブ40の位置は、誘導段階中、患者マーカ22の位置に応じて及び/又は力センサ17によって報告された測定値に応じて、患者20と接触したままであり、病変及び医療器具15によって辿られる軌道を含む平面内に留まるように調整できることに留意されたい。追加アーム16によって提供される追加の自由度により、ツールガイド14の位置に影響を与えることなく超音波プローブ40の位置を調整することが可能になる。
【0102】
準備段階中、病変が超音波プローブ40の視野内にない場合、すなわち病変が超音波プローブ40によって取得された超音波画像上で(又は関連する融合画像によって)可視ではない場合、病変が超音波プローブ40の視野内に入るように超音波プローブ40を移動させなければならない。この目的のために、制御ユニット12は、超音波画像を(病変が可視である)計画画像と比較し、及び超音波プローブ40によって取得された超音波画像が、病変が位置する解剖学的領域を含むように超音波プローブ40を移動させる方向を特定するように構成することができる。したがって、制御ユニット12は、この方向に超音波プローブ40を移動させるようにロボットアーム13を制御することができる。別法として、制御ユニット12は、超音波プローブによって取得された超音波画像上(又は関連する融合画像上)で病変が検出されるまで、超音波プローブ40で走査するようにロボットアーム13を制御することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a)】
図6b)】
図6c)】
【国際調査報告】