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特表2024-524801二次電池及びこれを備えた電池モジュール、電池パック、並びに電力消費装置
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  • 特表-二次電池及びこれを備えた電池モジュール、電池パック、並びに電力消費装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】二次電池及びこれを備えた電池モジュール、電池パック、並びに電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20240702BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240702BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240702BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240702BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20240702BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240702BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M4/66 A
H01M4/64 A
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552182
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 CN2022094497
(87)【国際公開番号】W WO2023225799
(87)【国際公開日】2023-11-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲則▼利
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼ 昌隆
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 慧玲
(72)【発明者】
【氏名】郭 ▲潔▼
(72)【発明者】
【氏名】黄 磊
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 文浩
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017CC01
5H017EE05
5H017HH00
5H017HH03
5H017HH06
5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ06
5H029BJ14
5H029DJ07
5H029EJ01
5H029HJ00
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ08
(57)【要約】
本願は、二次電池及びそれを備えた電池モジュール、電池パック、並びに電力消費装置を提供する。前記二次電池は、正極シートと、非水電解液と、を含み、前記非水電解液は、式1で表される化合物を含み、前記式1で表される化合物の質量百分率は前記非水電解液の総質量に対してA1(%)であり、前記正極集電体の厚さは、H(μm)であり、前記正極集電体の破断伸び率は、Q(%)であり、前記正極活物質層の圧縮密度は、P(g/cm)であり、かつ、前記二次電池は、Hが4~14、A1/Hが0.0015~0.20、Q+A1が1~4、P/A1が2~340であることを満たす。本願によれば、薄肉化された正極集電体を用いた二次電池は、低コスト、高いエネルギー密度、高い出力性能、優れた加工性能、及び高い安全性能を兼ね備える。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シートと、非水電解液と、を含む二次電池であって、
前記正極シートは、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも1つの表面上に位置する正極活物質層と、を含み、
前記非水電解液は、式1で表される化合物を含み、
前記式1で表される化合物の質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してA1(%)であり、前記正極集電体の厚さはH(μm)であり、前記正極集電体の破断伸び率はQ(%)であり、前記正極活物質層の圧縮密度はP(g/cm)であり、かつ、前記二次電池は、Hが4~14、A1/Hが0.0015~0.20、Q+A1が1~4、P/A1が2~340であることを満たす、二次電池。
【化1】
(X、Yは、それぞれ独立して、フッ素原子、又は、部分フッ素化又は完全フッ素化した、C1~C10のアルキル、C2~C10のアルケニル、C2~C10のアルキニル、C6~C8のアリール、C1~C10のアルコキシ、C2~C10のアルケニルオキシ、C2~C10のアルキニルオキシ、C6~C8のアリールオキシからなる群のうちの少なくとも1つを表し、かつ、X、Yのうちの少なくとも一方はフッ素原子を表す。)
【請求項2】
A1/Hは、0.002~0.05、選択的には0.01~0.05であり、及び/又は、
Q+A1は、1.5~3.5、選択的には2.0~3.5であり、及び/又は、
P/A1は、5~340、選択的には10~340である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
A1は、0.02~1.8、選択的には0.02~0.5であり、及び/又は、
Qは、0.5~3.5、選択的には1.5~3.5であり、及び/又は、
Pは、3.2~3.7、選択的には3.4~3.7である、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記非水電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウムを含む第1リチウム塩をさらに含み、
前記ヘキサフルオロリン酸リチウムの質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してA2(%)であり、
選択的には、A2/A1は、5~650、より選択的には15~300であり、及び/又は、
選択的には、A2は、6~14である、請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記非水電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウム及びリチウムビスフルオロスルホニルイミドの組み合わせを含む第1リチウム塩をさらに含み、
前記ヘキサフルオロリン酸リチウムの質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してA2(%)であり、前記リチウムビスフルオロスルホニルイミドの質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してA3(%)であり、
選択的には、A2は、6~14であり、A3は、0よりも大きく5以下であり、及び/又は、
選択的には、A3/A2は、0.8以下、より選択的には0.05~0.3であり、及び/又は、
選択的には、A2/A1は、5~650、より選択的には15~300である、請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記非水電解液は、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む第2リチウム塩をさらに含み、前記非水電解液における前記第2リチウム塩の総質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してA4(%)であり、
選択的には、A4は、5以下、より選択的には2以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記第2リチウム塩は、ジフルオロリン酸リチウムを含み、
選択的には、前記ジフルオロリン酸リチウムと前記ヘキサフルオロリン酸リチウムとの質量比αは、0.01~0.15、より選択的には0.01~0.1である、請求項6に記載の二次電池。
【請求項8】
前記非水電解液は、環状カーボネート化合物をさらに含み、
前記環状カーボネート化合物の質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してB1(%)であり、
選択的には、B1は、0.5~20、より選択的には15~18であり、及び/又は、
選択的には、B1/20+A1は、1~3、より選択的には1~2である、請求項1~7のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記環状カーボネート化合物は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートのうちの少なくとも1種を含む、請求項8に記載の二次電池。
【請求項10】
前記非水電解液は、フルオロエチレンカーボネートをさらに含み、その質量百分率は前記非水電解液の総質量に対してC1(%)であり、
選択的には、0<C1≦2.5、より選択的には、0<C1≦2.0であり、及び/又は、
選択的には、0.25≦C1/A1≦25、より選択的には、0.5≦C1/A1≦10である、請求項1~9のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記非水電解液は、ヘキサメチルジシラザン、トリス(トリメチルシリル)ホスフェートのうちの少なくとも1種を含む脱水添加剤をさらに含み、
選択的には、前記脱水添加剤の質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対して、2%以下、より選択的には0.05%~1%である、請求項1~10のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項12】
X、Yは、下記条件(1)~(3)のうちの1つを満たす、請求項1に記載の二次電池。
(1)X、Yはいずれもフッ素原子を表す。
(2)X、Yのうち、一方はフッ素原子を表し、他方は、部分フッ素化又は完全フッ素化した、C1~C5のアルキル、C2~C5のアルケニル、C2~C5のアルキニル、フェニル、フェノキシ、C1~C5のアルコキシ、C2~C5のアルケニルオキシ、及びC2~C5のアルキニルオキシからなる群のうちの少なくとも1つを表す。
(3)X、Yのうち、一方はフッ素原子を表し、他方は、部分フッ素化又は完全フッ素化した、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、ビニル、プロペニル、アリル、ブタジエニル、エチニル、プロピニル、フェニル、メトキシ、エトキシ、プロキシ、ビニルオキシ、プロペニルオキシ、エチニルオキシ、プロピニルオキシ、及びフェノキシからなる群のうちの少なくとも1つを表す。
【請求項13】
前記式1で表される化合物は下記化合物のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の二次電池。
【化2】
【請求項14】
前記正極集電体はアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔を用いる、請求項1~13のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載の二次電池、請求項15に記載の電池モジュールのうちの1種を含む、電池パック。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか一項に記載の二次電池、請求項15に記載の電池モジュール、請求項16に記載の電池パックのうちの少なくとも1種を含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電池の技術分野に属し、具体的には、二次電池及びこれを備えた電池モジュール、電池パック、並びに電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池は水力、火力、風力、太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システムや、電動工具、電動自転車、電動バイク、電気自動車、軍事装備、航空・宇宙など、多くの分野で広く利用されている。二次電池の応用と普及に伴い、そのエネルギー密度に対する要求はますます高くなっている。アルミニウム箔集電体は二次電池の容量に寄与しないので、アルミニウム箔集電体を薄肉化することでコストを低減できるだけでなく、限られた電池ケースにより多くの活物質を収容することができるので、アルミニウム箔集電体を薄肉化することは二次電池のエネルギー密度を高める最も効果的な対策の1つである。アルミニウム箔集電体を薄肉化することはコストを低減し、二次電池のエネルギー密度を向上させることができるが、アルミニウム箔集電体を薄肉化すると、電池の内部抵抗が増加し、熱発生量が増加すると同時に、正極シートの加工性能が悪くなり、破裂の問題が発生しやすくなるため、この方法は、工業的に実用化されることが困難である。これにより、現在の二次電池は、低コスト、高エネルギー密度、高い出力性能、優れた加工性能、及び高い安全性能を兼ね備えることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願の目的は、薄肉化された正極集電体を用いた二次電池が低コスト、高エネルギー密度、高い出力性能、優れた加工性能、及び高い安全性能を兼ね備えることを可能にする、二次電池及びこれを備えた電池モジュール、電池パック、並びに電力消費装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願の第1態様は、正極シートと、非水電解液と、を含む二次電池であって、前記正極シートは、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも1つの表面上に位置する正極活物質層と、を含み、前記非水電解液は、式1で表される化合物を含み、前記式1で表される化合物の質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してA1(%)であり、前記正極集電体の厚さは、H(μm)であり、前記正極集電体の破断伸び率は、Q(%)であり、前記正極活物質層の圧縮密度は、P(g/cm)であり、かつ、前記二次電池は、Hが4~14、A1/Hが0.0015~0.20、Q+A1が1~4、P/A1が2~340であることを満たす、二次電池を提供する。
【化1】
(X、Yは、それぞれ独立して、フッ素原子、又は、部分フッ素化又は完全フッ素化した、C1~C10のアルキル、C2~C10のアルケニル、C2~C10のアルキニル、C6~C8のアリール、C1~C10のアルコキシ、C2~C10のアルケニルオキシ、C2~C10のアルキニルオキシ、C6~C8のアリールオキシからなる群のうちの少なくとも1つを表し、X、Yのうちの少なくとも一方はフッ素原子を表す。)
【0005】
本願の発明者らが研究した発見として、薄肉化された正極集電体を用いた二次電池では、非水電解液が式1で表される化合物を含有し、二次電池が、A1/Hが0.0015~0.20、Q+A1が1~4、P/A1が2~340であることを満たすように、その含有量A1(%)と正極集電体の厚さH(μm)、正極集電体の破断伸び率Q(%)、及び正極活物質層の圧縮密度P(g/cm)との関係を制御することにより、二次電池は、低コスト、高エネルギー密度、高い出力性能、優れた加工性能、及び高い安全性能を兼ね備えることができる。
【0006】
本願の任意の実施形態では、選択的には、A1/Hは、0.002~0.05、より選択的には0.01~0.05である。これによって、正極集電体の強度を向上させ、正極シートの加工性能を改善し、破裂の発生を減少、さらに回避することに寄与し、また、二次電池に高い出力性能及び高い安全性能を付与するのにも寄与する。
【0007】
本願の任意の実施形態では、選択的には、Q+A1は、1.5~3.5、より選択的には2.0~3.5である。これによって、正極集電体の強度を向上させ、正極シートの加工性能を改善し、破裂の発生を減少、さらに回避することに寄与し、また、二次電池に高い出力性能及び高い安全性能を付与するのにも寄与する。
【0008】
本願の任意の実施形態では、選択的には、P/A1は、5~340、より選択的には10~340である。これによって、二次電池の出力性能及び安全性能を高めるのに寄与する。
【0009】
本願の任意の実施形態では、選択的には、A1は、0.02~1.8、より選択的には0.02~0.5である。これによって、正極集電体を薄肉化することによる出力性能の劣化、安全上のリスクの増加、加工性能の劣化などの欠陥を改善できる。
【0010】
本願の任意の実施形態では、選択的には、Qは、0.5~3.5、より選択的には1.5~3.5である。これによって、正極集電体は高い強度及び優れた加工性能を持ち、破裂しにくく、また、二次電池に高い安全性能を付与するのに寄与する。
【0011】
本願の任意の実施形態では、選択的には、Pは、3.2~3.7、より選択的には3.4~3.7である。これによって、二次電池のエネルギー密度を高めるのに寄与する。
【0012】
本願の任意の実施形態では、選択的には、前記非水電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウムを含む第1リチウム塩をさらに含む。前記ヘキサフルオロリン酸リチウムの質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してA2(%)である。
【0013】
本願の任意の実施形態では、選択的には、A2/A1は、5~650、より選択的には15~300である。これによって、正極集電体を薄肉化することによる出力性能の劣化、安全上のリスクの増加、加工性能の劣化などの問題を改善しつつ、二次電池の容量維持率をさらに改善するのに寄与する。
【0014】
本願の任意の実施形態では、選択的には、A2は、6~14である。
【0015】
本願の任意の実施形態では、選択的には、前記非水電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウム及びリチウムビスフルオロスルホニルイミドの組み合わせを含む第1リチウム塩をさらに含む。前記ヘキサフルオロリン酸リチウムの質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してA2(%)であり、前記リチウムビスフルオロスルホニルイミドの質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してA3(%)である。選択的には、A2は、6~14であり、A3は、0よりも大きく5以下である。
【0016】
本願の任意の実施形態では、選択的には、A3/A2は、0.8以下、より選択的には0.05~0.3である。これによって、より低い抵抗の界面膜を形成するのに寄与する。選択的には、A2/A1は、5~650、より選択的には15~300である。これによって、正極集電体を薄肉化することによる出力性能の劣化、安全上のリスクの増加、加工性能の劣化などの問題を改善しつつ、二次電池の容量維持率をさらに改善するのに寄与する。
【0017】
本願の任意の実施形態では、選択的には、前記非水電解液は、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む第2リチウム塩をさらに含む。前記非水電解液における前記第2リチウム塩の総質量含有量は、前記非水電解液の総質量に対してA4(%)である。選択的には、A4は、5以下、より選択的には2以下である。第2リチウム塩は、補助リチウム塩として、正極及び/又は負極の界面性能をさらに改善するか、非水電解液のイオン伝導度や熱安定性を改善する役割を果たすことができる。
【0018】
本願の任意の実施形態では、選択的には、前記第2リチウム塩は、ジフルオロリン酸リチウムを含む。選択的には、前記ジフルオロリン酸リチウムと前記ヘキサフルオロリン酸リチウムとの質量比αは、0.01~0.15、より選択的には0.01~0.1である。ジフルオロリン酸リチウムは、電気化学的安定性が高く、非水電解液のイオン伝導度を向上させ、正極界面膜及び/又は負極界面膜の性質を改善し、安定的かつ抵抗の低い正極界面膜及び/又は負極界面膜の構築に寄与する。これにより、非水電解液の分解を効果的に減少し、二次電池の出力性能及び安全性能をさらに改善する。
【0019】
本願の任意の実施形態では、選択的には、前記非水電解液は、環状カーボネート化合物をさらに含む。前記環状カーボネート化合物の質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してB1(%)である。選択的には、B1は、0.5~20、より選択的には15~18である。
【0020】
本願の任意の実施形態では、選択的には、B1/20+A1は、1~3、より選択的には1~2である。これによって、正極集電体を薄肉化することによる出力性能の劣化、安全上のリスクの増加、加工性能の劣化などの問題を改善しつつ、二次電池の容量維持率をさらに改善するのに寄与する。
【0021】
本願の任意の実施形態では、選択的には、前記環状カーボネートは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートのうちの少なくとも1種を含む。
【0022】
本願の任意の実施形態では、選択的には、前記非水電解液は、フルオロエチレンカーボネートをさらに含む。前記フルオロエチレンカーボネートの質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してC1(%)である。選択的には、0<C1≦2.5、より選択的には、0<C1≦2.0である。これによって、二次電池のサイクル性能を効果的に向上させることができる。
【0023】
本願の任意の実施形態では、選択的には、0.25≦C1/A1≦25、より選択的には、0.5≦C1/A1≦10である。これによって、正極集電体を薄肉化することによる出力性能の劣化、安全上のリスクの増加、加工性能の劣化などの問題を改善しつつ、二次電池のサイクル性能をさらに改善するのに寄与する。
【0024】
本願の任意の実施形態では、選択的には、前記非水電解液は、ヘキサメチルジシラザン、トリス(トリメチルシリル)ホスフェートのうちの少なくとも1種を含む脱水添加剤をさらに含む。選択的には、前記脱水添加剤の質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対して、2%以下、より選択的には0.05%~1%である。これによって、二次電池の出力性能、貯蔵性能、及び安全性能をさらに向上させるのに寄与する。
【0025】
本願の任意の実施形態では、選択的には、X、Yはいずれもフッ素原子を表す。
【0026】
本願の任意の実施形態では、選択的には、X、Yのうち、一方はフッ素原子を表し、他方は、部分フッ素化又は完全フッ素化した、C1~C5のアルキル、C2~C5のアルケニル、C2~C5のアルキニル、フェニル、フェノキシ、C1~C5のアルコキシ、C2~C5のアルケニルオキシ、及びC2~C5のアルキニルオキシからなる群のうちの少なくとも1つを表す。
【0027】
本願の任意の実施形態では、選択的には、X、Yのうち、一方はフッ素原子を表し、他方は、部分フッ素化又は完全フッ素化した、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、ビニル、プロペニル、アリル、ブタジエニル、エチニル、プロピニル、フェニル、メトキシ、エトキシ、プロキシ、ビニルオキシ、プロペニルオキシ、エチニルオキシ、プロピニルオキシ、及びフェノキシからなる群のうちの少なくとも1つを表す。
【0028】
フッ素原子の存在は、より薄いフッ素含有正極界面膜及び/又は負極界面膜を形成するのに寄与し、リチウムイオンの均一な輸送に寄与し、また、リチウムデンドライト形成を効果的に抑制する。
【0029】
本願の任意の実施形態では、選択的には、前記式1で表される化合物は、下記化合物のうちの少なくとも1種を含む。
【化2】
【0030】
本願の任意の実施形態では、選択的には、前記正極集電体はアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔を用いる。
【0031】
本願第の2態様は、本願の第1態様に記載の二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0032】
本願の第3態様は、本願の第1態様に記載の二次電池、第2態様に記載の電池モジュールのうちの1つを含む電池パックを提供する。
【0033】
本願の第4態様は、本願の第1態様に記載の二次電池、第2態様に記載の電池モジュール、第3態様に記載の電池パックのうちの少なくとも1つを含む電力消費装置を提供する。
【発明の効果】
【0034】
本願の電池モジュール、電池パック、及び電力消費装置は本願に係る二次電池を含むため、少なくとも前記二次電池と同じ利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本願の実施例の技術案をより説明にするために、以下では、本願の実施例に使用される図面について簡単に説明する。明らかに、以下で説明される図面は本願の実施形態の一部に過ぎず、当業者であれば、創造的な努力を必要とせずに、図面に基づいて他の図面を得ることができる。
図1】本願の二次電池の一実施形態の概略図である。
図2図1の二次電池の実施形態の分解概略図である。
図3】本願の電池モジュールの一実施形態の概略図である。
図4】本願の電池パックの一実施形態の概略図である。
図5図4に示す電池パックの実施形態の分解概略図である。
図6】本願の二次電池を電源として含む電力消費装置の一実施形態の概略図である。
【符号の説明】
【0036】
図面において、図面は必ずしも実際の比率で描かれていない。
1 電池パック
2 上箱体
3 下箱体
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ケース
52 電極アセンブリ
53 カバープレート
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本願に係る二次電池及びこれを備えた電池モジュール、電池パック、並びに電力消費装置を具体的に開示した実施形態について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。しかし、必要以上の詳細な説明を省略する場合がある。例えば、既知の事項の詳細な説明や、実際には同じ構造の重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。さらに、図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図するものではない。
【0038】
本願に開示されている「範囲」は、下限及び上限の形で限定され、所定の範囲は、特定の範囲の境界を規定する下限及び上限を選択することによって限定される。このように定義された範囲は、エンド値を含んでもよく、含まなくてもよく、また、任意の組み合わせが可能であり、すなわち、任意の下限値と任意の上限値とを組み合わせて1つの範囲を形成することが可能である。例えば、特定のパラメータに対して60~120と80~110の範囲が挙げられる場合、60~110と80~120の範囲も予想されていると理解することができる。また、最小範囲値として1と2が挙げられ、最大範囲値として3、4、5が挙げられる場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、及び2~5の範囲はすべて予想される。本願において、特に断らない限り、「a~b」の範囲は、aとbとの間の任意の実数の組み合わせの短縮表現を表す。ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書において「0~5」の間のすべての実数が挙げられることを意味し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせを短縮したものである。また、あるパラメータが2以上の整数であると記述されている場合、そのパラメータが例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12等の整数であることが開示されていることになる。
【0039】
特に断らない限り、本願のすべての実施形態及び任意の実施形態は、互いに組み合わされて新たな技術案を形成することができる。また、このような技術案は、本願の開示内容に含まれるものとみなされる。
【0040】
特に断らない限り、本願のすべての技術的特徴及び任意の技術的特徴は、互いに組み合わされて新たな技術案を形成することができる。また、このような技術案は、本願の開示内容に含まれるものとみなされる。
【0041】
特に断らない限り、本願のすべてのステップは、順次に行われてもよいし、ランダムに行われてもよいし、選択的には順次行われてもよい。例えば、前記方法はステップ(a)と(b)を含む場合、前記方法は、順次行われるステップ(a)及び(b)を含んでもよく、又は、順次行われるステップ(b)及び(a)を含んでもよいことを示している。例えば、前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよいと言及した場合、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に加えられてもよいことを示している。例えば、前記方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、また、ステップ(c)、(a)及び(b)を含んでもよい。
【0042】
特に断らない限り、本願で記載される「含む」、「有する」及び「備える」は、開放式であることを意味し、また、閉鎖式であってもよい。例えば、前記「含む」、「有する」及び「備える」は、挙げられていない他の成分をさらに「含む」、「有する」又は「備える」こと、又は挙げられている成分のみを「含む」、「有する」又は「備える」ことを表すことができる。
【0043】
特に断らない限り、本願において、用語「又は」は包括的なものである。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、以下のいずれの条件も満たされる。Aが真(又は存在)であり、Bが偽(又は存在しない)である。Aが偽(又は存在しない)であり、Bが真(又は存在する)である。又は、AとBの両方が真である(又は存在する)。
【0044】
本明細書の各所において、化合物の置換基は、群又は範囲で開示されている。このような記述は、これらの群また及び範囲のメンバのそれぞれの個別のサブ組合せを含むことが明示的に予想される。例えば、用語「C1~C6のアルキル」は単独してC1、C2、C3、C4、C5、C6、C1~C6、C1~C5、C1~C4、C1~C3、C1~C2、C2~C6、C2~C5、C2~C4、C2~C3、C3~C6、C3~C5、C3~C4、C4~C6、C4~C5、及びC5~C6のアルキルを開示することが明示的に予想される。
【0045】
本願において、用語「複数」、「複数種」は、2つ以上であることを意味する。
【0046】
本願において、集電体及び活物質層の厚さは、当該技術分野で公知の意味であり、当該技術分野で公知の方法を用いて試験することができる。例えばスパイラルマイクロメータを用いて測定する。
【0047】
本願において、活物質層の圧縮密度は、当該技術分野で公知の意味であり、当該技術分野で公知の方法を用いて試験することができる。活物質層の圧縮密度=活物質層の面密度/活物質層の厚さである。活物質層の面密度は当該技術分野で公知の意味であり、例えば片面に塗布してコールドプレスした後の電極シート(両面に塗布した電極シートであれば、まず片面の活物質層を拭き取ってもよい)を、面積がSのウェハにカットして、その重量を称量してMと記録し、次に、上記重量を称量した電極シートの活物質層を拭き取り、集電体の重量を称量してMとして記録し、活物質層の面密度=(M-M)/Sとするなど、当該技術分野で公知の方法を採用して試験を行うことができる。
【0048】
本願において、正極集電体の破断伸び率とは、室温での破断伸び率を意味する。
【0049】
アルミニウム箔集電体は二次電池に不可欠な構成部品の1つであり、二次電池のエネルギー密度をさらに高めるために、アルミニウム箔集電体を薄肉化することは依然として最も有効な対策の1つである。アルミニウム箔集電体を薄肉化することにより、二次電池の低コスト化とエネルギー密度の向上が可能であるが、この手段は工業的に実用化されることが困難である。主な原因は次のとおりである。第一に、アルミニウム箔集電体を薄肉化すると、アルミニウム箔の抵抗が増加し、これにより電池の内部抵抗が増加し、出力性能が低下する。第二に、アルミニウム箔は良好な熱伝導体材料であるため、その薄肉化により、二次電池の熱発生量が増加し、放熱が困難になり、これによって二次電池の安全の潜在的なリスクが増加する。第三に、アルミニウム箔集電体を薄肉化すると、それ自体の強度が低下すると同時に、二次電池のエネルギー密度をさらに高めるために、薄肉化したアルミニウム箔集電体は一般的に高い圧縮密度を有するため、ロールプレス時に正極シートが押し潰されやすくなり、正極シート及び二次電池の加工性能に影響を与える。
【0050】
また、高出力型電池は、使用時に大きな放電電流が要求されるため、放電時の発熱量が高く、高温下での正極と負極界面での非水電解液の分解反応が著しく増加する。これにより、正極界面の抵抗と負極界面の抵抗が著しく上昇し、二次電池の出力性能が低下する。現在、高出力型電池を得るためには、アルミニウム箔集電体の厚肉化が一般的な対策の1つとなっている。
【0051】
そのため、現在、正極集電体を薄肉化することによって二次電池のエネルギー密度を高める手段は、実用化の点でまだ多くの困難に直面しており、例えば、出力性能の劣化、安全上のリスクの増加、加工性能の劣化などである。
【0052】
本願の発明者らが研究して驚いた発見として、適切な非水電解液を採用することにより、正極集電体を薄肉化することによる出力性能の劣化、安全上のリスクの増加、加工性能の劣化などの問題を解決することができる。これによって、二次電池は、低コスト、高エネルギー密度、高い出力性能、優れた加工性能、及び高い安全性能を兼ね備えることができる。
【0053】
具体的には、本願の実施形態は二次電池を提供する。
【0054】
二次電池は、充電電池又は蓄電池とも呼ばれ、放電後に充電により活物質を活性化させて使用し続けることができる電池である。本願の二次電池は、リチウム二次電池、特にリチウムイオン二次電池であってもよい。二次電池は、電極アセンブリ、非水電解液及び外装体を含む。外装体は、電極アセンブリ及び非水電解液を封入するものである。電極アセンブリは、通常正極シートを含むが、負極シート及びセパレータをさらに含んでもよい。セパレータは正極シートと負極極との間に設けられ、主として正極と負極の短絡を防止する役割を果たし、且つリチウムイオンを通過させる。いくつかの実施例では、前記正極シート、前記セパレータ及び前記負極シートは捲回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリにされてもよい。
【0055】
前記正極シートは、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも1つの表面上に位置する正極活物質層と、を含む。例えば、前記正極集電体は、自体の厚さ方向において対応する2つの表面を有し、前記正極活物質層は前記正極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方又は両方上に設けられている。前記負極シートは、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも1つの表面上に位置する負極活物質層と、を含む。例えば、前記負極集電体は、自体の厚さ方向において対向する2つの表面を有し、前記負極活物質層は前記負極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方又は両方上に設けられている。二次電池の充放電時に、リチウムイオンは正極シートと負極シートとの間で往復して挿入及び脱離を行う。非水電解液は、リチウム塩と、有機溶媒と、を含み、正極シートと負極シートとの間でリチウムイオンを伝送する役割を果たす。
【0056】
本願の二次電池では、前記非水電解液は、式1で表される化合物を含む。X、Yは、それぞれ独立して、フッ素原子、又は、部分フッ素化又は完全フッ素化した、C1~C10のアルキル、C2~C10のアルケニル、C2~C10のアルキニル、C6~C8のアリール、C1~C10のアルコキシ、C2~C10のアルケニルオキシ、C2~C10のアルキニルオキシ、C6~C8のアリールオキシからなる群のうちの少なくとも1つを表し、かつ、X、Yのうちの少なくとも一方はフッ素原子を表す。
【化3】
【0057】
前記式1で表される化合物の質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してA1(%)であり、前記正極集電体の厚さは、H(μm)であり、前記正極集電体の破断伸び率は、Q(%)であり、前記正極活物質層の圧縮密度は、P(g/cm)であり、前記二次電池は、Hが4~14、A1/Hが0.0015~0.20、Q+A1が1~4、P/A1が2~340であることを満たす。
【0058】
本願において、正極集電体の厚さH(μm)は4~14を満たし、選択的には、Hは、4~13、4~12、4~11、4~10、4~9又は4~8であってもよい。
【0059】
本願の発明者らが研究した発見として、薄肉化された正極集電体を用いた二次電池では、非水電解液が式1で表される化合物を含有し、二次電池がA1/Hが0.0015~0.20、Q+A1が1~4、P/A1が2~340であることを満たすように、その含有量A1(%)と正極集電体の厚さH(μm)、正極集電体の破断伸び率Q(%)、及び正極活物質層の圧縮密度P(g/cm)との関係を制御することによって、二次電池は低コスト、高エネルギー密度、高い出力性能、優れた加工性能、及び高い安全性能を兼ね備えることができる。
【0060】
メカニズムが不明であるが、本発明者らは以下のいくつかの原因があると推定される。
【0061】
第一には、式1で表される化合物の分子構造にシュウ酸塩基が含有され、シュウ酸塩基が有機溶媒よりも優先的に正極活物質の表面で酸化され、かつ、その酸化生成物が低抵抗の特性を有するため、低抵抗の正極界面膜の形成に寄与する。一方、式1で表される化合物の分子構造中のB原子がまた正極界面膜中のLiFなどの無機成分と強固に結合されやすく、これによって、リチウムイオンの輸送を速めて電池の内部抵抗を明らかに低下させ、二次電池に高エネルギー密度及び高い出力性能の両方を付与し、大電流放電を可能にする。
【0062】
第二には、式1で表される化合物の分子構造中のB-O結合がAl3+と結合されて正極集電体の表面にパッシベーション膜を形成することができる。これによって、正極集電体の強度を向上させ、正極シートの加工性能を改善し、破裂の発生を減少、さらに回避するのに寄与し、薄肉化された正極集電体の実用化を可能にする。式1で表される化合物の分子構造中にAl3+と結合し得るフッ素原子が含有されるため、正極シートの強度を向上し、正極シートの加工性能を改善し、破裂の発生を減少、さらに回避し、薄肉化された正極集電体の実用化を可能にする。
【0063】
第三には、式1で表される化合物自体は熱安定性が高く、例えば通常のLiPFよりも優れるので、非水電解液全体の耐熱性を向上させるのに寄与する。、また、式1で表される化合物は、水分に対してLiPFよりも感度が低いので、非水電解液の耐水性を向上させ、HFの形成を減少させて、非水電解液の酸度を下げるのに寄与する。従って、本願の非水電解液は高い熱安定性及び高い電気化学的安定性を有し、これによって、非水電解液の高温での分解を低減させ、電池の内部抵抗を低下させることができる。また、ジュールの法則から分かるように、二次電池の熱発生量が電池の内部抵抗に直接関連するため、電池の内部抵抗が低下すると、二次電池の熱発生量も低下する。これにより、二次電池は高エネルギー密度を有するとともに、高い出力性能及び高い安全性能を有する。
【0064】
第四には、本発明者らが驚いたこととして、式1で表される化合物中のアニオン部分が酸化されやすい。そのため、その分子構造から解離されたリチウムイオンはさらに活性リチウムイオンとなり、容量の一部に提出してもよく、二次電池のエネルギー密度をさらに向上させるのに寄与する。
【0065】
従って、非水電解液に式1で表される化合物が含有される場合、正極集電体の表面にパッシベーション膜を形成して正極シート及び二次電池の加工性能を改善するのに寄与し、また、正極活物質の表面に低抵抗の界面膜を形成して二次電池の出力性能及び安全性能を改善するのに寄与し、さらに、活性リチウムイオンの数を増やして容量の一部に提供するのに寄与する。しかし、本願の発明者らがさらに研究した発見として、正極集電体を薄肉化することによる出力性能、加工性能及び安全性能への悪い影響を低減させ、二次電池が低コスト、高エネルギー密度、高い出力性能、優れた加工性能、及び高い安全性能を兼ね備えるようにするために、式1で表される化合物の含有量を正極集電体の厚さ、正極集電体の破断伸び率、及び正極活物質層の圧縮密度と適切に組み合わせなければならない。
【0066】
本願において、式1で表される化合物の含有量A1(%)と正極集電体の厚さH(μm)は、A1/Hが0.0015~0.20であることを満たす。そのため、式1で表される化合物の分子構造中のB-O結合がAl3+とよりよく結合されて、正極集電体の表面に適切な厚さのパッシベーション膜を形成することができる。これによって、正極集電体の強度を向上させ、正極シートの加工性能を改善し、破裂の発生を減少、さらに回避することに寄与する。A1/Hが0.0015未満である場合、正極集電体が厚すぎて、式1で表される化合物の含有量が低く、式1で表される化合物はAl3+と結合されて正極集電体の表面にパッシベーション膜を形成するのに不十分であるため、正極シート及び二次電池の加工性能が劣化する。A1/Hが0.20よりも大きい場合、正極集電体が薄すぎて、式1で表される化合物の含有量が高く、その結果として、形成された界面膜が厚すぎる。これによって、正極界面の抵抗及び/又は負極界面の抵抗が高くなり、電池の内部抵抗及び熱発生量が高くなり、二次電池の出力性能及び安全性能が劣化する。選択的には、A1/Hは、0.002~0.15、0.002~0.1、0.002~0.08、0.002~0.07、0.002~0.06、0.002~0.05、0.005~0.15、0.005~0.1、0.005~0.08、0.005~0.07、0.005~0.06、0.005~0.05、0.01~0.15、0.01~0.1、0.01~0.08、0.01~0.07、0.01~0.06、又は0.01~0.05である。
【0067】
本願において、式1で表される化合物の含有量A1(%)と正極集電体の破断伸び率Q(%)は、Q+A1が1~4であることを満たむ。そのため、式1で表される化合物の分子構造中のB-O結合がAl3+とよりよく結合されて、正極集電体の表面に適切な厚さのパッシベーション膜を形成することができる。これによって、正極集電体の強度を向上させ、正極シートの加工性能を改善し、破裂の発生を減少、さらに回避することに寄与する。Q+A1が1未満である場合、式1で表される化合物はAl3+と結合されて正極集電体の表面にパッシベーション膜を形成するのに不十分であり、且つ正極集電体の延性が悪く、ロールプレス時に破裂が発生しやすく、その結果、正極シート及び二次電池の加工性能は劣化する。Q+A1が4よりも大きい場合、正極集電体は、延性が高く、耐圧性に優れる反面、穿刺に弱く、鋭利な物質(例えば、通常、鋭利な形状を有するハードカーボン粒子)により押されると破壊されて大きなバリが生じやすく、電池内部の短絡リスクが高まる、これによって、二次電池の安全性能は依然として効果的に改善されず、また、式1で表される化合物が多すぎると、形成された界面膜が厚すぎる。これによって、正極界面の抵抗及び/又は負極界面の抵抗が高くなり、二次電池の出力性能及び安全性能が悪くなる。選択的には、Q+A1は、1.5~4、1.8~4、2.0~4、2.2~4、2.4~4、2.6~4、2.8~4、3.0~4、1.5~3.5、1.8~3.5、2.0~3.5、2.2~3.5、2.4~3.5、2.6~3.5、2.8~3.5、又は3.0~3.5である。
【0068】
本願において、式1で表される化合物の含有量A1(%)と正極活物質層の圧縮密度P(g/cm)は、P/A1が2~340であることを満たす。そのため、式1で表される化合物は、正極活物質の表面に低抵抗の界面膜を形成して正極界面の抵抗を低下させるのに寄与するとともに、式1で表される化合物の分子構造中のB原子が正極活物質中のO原子とよりよく結合されるのに寄与する。これによって、正極活物質の電荷移動抵抗及びリチウムイオンのバルク相の拡散抵抗も低下させるため、電池の内部抵抗及び熱発生量を低下させて二次電池の出力性能及び安全性能を向上させることができる。P/A1が2未満である場合、正極活物質層の圧縮密度は小さく、式1で表される化合物の含有量は高く、形成された界面膜が厚すぎる。これによって、正極界面の抵抗及び/又は負極界面の抵抗が高く、電池の内部抵抗及び熱発生量が高く、二次電池の出力性能及び安全性能が悪くなる。P/A1が340よりも大きい場合、正極活物質層の圧縮密度は大きく、式1で表される化合物の含有量は低く、式1で表される化合物は正極活物質の表面に低抵抗の界面膜を形成するのに不十分であり、かつ、正極活物質の電荷移動抵抗及びリチウムイオンのバルク相の拡散抵抗が高くなる。これによって、電池の内部抵抗及び熱発生量が増加し、二次電池の出力性能及び安全性能が劣化する。選択的には、P/A1は、2~200、2~100、2~75、2~50、2~35、2~30、2~25、2~20、2~15、3.5~340、3.5~200、3.5~100、3.5~75、3.5~50、3.5~35、3.5~30、3.5~25、3.5~20、3.5~15、5~340、5~200、5~100、5~75、5~50、5~35、5~30、5~25、5~20、10~340、10~200、10~100、10~75、10~50、10~35、10~30、10~25、又は10~20である。
【0069】
いくつかの実施例では、選択的には、前記二次電池は、Hが4~14、A1/Hが0.01~0.05、Q+A1が1.5~3.5、及びP/A1が10~340であることを満たす。より選択的には、前記二次電池は、Hが4~14、A1/Hが0.01~0.05、Q+A1が2.0~3.5、P/A1が10~340であることを満たす。
【0070】
本願において、X、Yのうちの少なくとも一方はフッ素原子を表す。フッ素原子の存在は、より薄いフッ素含有正極界面膜及び/又は負極界面膜の形成に寄与するため、リチウムイオンの均一な輸送且つリチウムデンドライトの形成に対する効果的な抑制に寄与する。いくつかの実施例では、X、Yのうち、一方はフッ素原子を表し、他方は、部分フッ素化又は完全フッ素化した、C1~C5のアルキル、C2~C5のアルケニル、C2~C5のアルキニル、フェニル、フェノキシ、C1~C5のアルコキシ、C2~C5のアルケニルオキシ、及びC2~C5のアルキニルオキシからなる群のうちの少なくとも1つを表す。選択的には、X、Yのうち、一方はフッ素原子を表し、他方は、部分フッ素化又は完全フッ素化した、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、ビニル、プロペニル、アリル、ブタジエニル、エチニル、プロピニル、フェニル、メトキシ、エトキシ、プロキシ、ビニルオキシ、プロペニルオキシ、エチニルオキシ、プロピニルオキシ、及びフェノキシからなる群のうちの少なくとも1つを表す。
【0071】
いくつかの実施例では、X、Yはいずれもフッ素原子を表す。
【0072】
一例として、前記式1で表される化合物は、下記化合物のうちの少なくとも1種を含む。
【化4】
【0073】
いくつかの実施例では、前記正極集電体はアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔を用いる。正極集電体の耐食性及び強度を向上させるために、選択的には、純度99.99%以上のアルミニウム箔を用いる。アルミニウム合金箔としては、アルミニウム元素に加えて、鉄、マグネシウム、亜鉛、マンガン、及びケイ素のうちの少なくとも1種の元素をさらに含む。例えば、アルミニウム合金箔は、Al-Fe合金箔、Al-Mn合金箔、又はAl-Mg合金箔であってもよい。アルミニウム合金箔中のアルミニウム元素の質量百分率は、選択的には95%~99.5%、より選択的には98%~99.5%である。
【0074】
いくつかの実施例では、A1は、0.02~1.8である。選択的には、A1は、0.02~1.6、0.02~1.4、0.02~1.2、0.02~1.0、0.02~0.8、0.02~0.7、0.02~0.6、0.02~0.5、0.05~1.6、0.05~1.4、0.05~1.2、0.05~1.0、0.05~0.8、0.05~0.7、0.05~0.6、0.05~0.5、0.1~1.6、0.1~1.4、0.1~1.2、0.1~1.0、0.1~0.8、0.1~0.7、0.1~0.6、又は0.1~0.5である。式1で表される化合物の含有量が適切な範囲内である場合、正極集電体の表面に適切な厚さのパッシベーション膜を形成するとともに、正極活物質の表面に低抵抗の界面膜を形成することができる。これによって、正極集電体を薄肉化することによる出力性能の劣化、安全上のリスクの増加、加工性能の劣化などの欠陥を改善することができる。さらに、以下の状況を効果的に回避できる。式1で表される化合物の含有量が低すぎる場合、式1で表される化合物はAl3+と結合されて正極集電体の表面にパッシベーション膜を形成するのに不十分である。これによって、正極シート及び二次電池の加工性能が劣化する。式1で表される化合物の含有量が高すぎる場合、正極界面の抵抗及び/又は負極界面の抵抗が増加し、電池の内部抵抗及び熱発生量が増加し、二次電池の出力性能及び安全性能が劣化する。
【0075】
いくつかの実施例では、Qは、0.5~3.5である。選択的には、Qは、1~3.5、1.5~3.5、1.8~3.5、2.0~3.5、2.2~3.5、2.4~3.5、2.6~3.5、2.8~3.5、又は3.0~3.5である。正極集電体の破断伸び率が適切な範囲内である場合、正極集電体は、高い強度及び優れた加工性能を有し、破裂が生じにくく。さらに、以下の状況を効果的に回避できる。正極集電体の破断伸び率が小さすぎる場合、正極集電体の延性が悪く、ロールプレス時に破裂が生じやすく、正極シート及び二次電池の加工性能が劣化する。正極集電体の破断伸び率が大きすぎる場合、穿刺に弱く、鋭利な物質により押されると破壊されて大きなバリが発生しやすく、電池内部の短絡リスクが高まる。これによって、二次電池の安全性能は依然として効果的に改善されない。
【0076】
いくつかの実施例では、Pは、3.2~3.7である。選択的には、Pは、3.3~3.7、3.4~3.7、3.5~3.7、3.2~3.6、3.3~3.6、3.4~3.6、又は3.5~3.6である。正極活物質層の圧縮密度が高い範囲内である場合、二次電池のエネルギー密度の向上に寄与する。
【0077】
いくつかの実施例では、正極集電体の厚さH(μm)が11以上14以下、具体的には、Hが11~14、選択的には12~14、12~13である場合、二次電池は、A1/Hが0.005~0.15、Q+A1が1~4、P/A1が2~100であることを満たす。選択的には、二次電池は、A1/Hが0.005~0.1、Q+A1が1.5~3.5、及びP/A1が5~75であることを満たす。
【0078】
いくつかの実施例では、正極集電体の厚さH(μm)が4以上11以下、選択的には10以下、9以下、8以下、具体的には、Hが4~11、選択的には4~10、4~9、又は4~8である場合、二次電池は、A1/Hが0.006~0.1、Q+A1が1~4、P/A1が2~100であることを満たす。選択的には、A1/Hが0.01~0.05、Q+A1が1.5~3.5、P/A1が5~75であることを満たす。
[リチウム塩]
【0079】
いくつかの実施例では、前記非水電解液は第1リチウム塩をさらに含む。前記第1リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、又はヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)とリチウムビスフルオロスルホニルイミド(LiFSI)との組み合わせである。ヘキサフルオロリン酸リチウムはイオン伝導度が高い特性を有するため、その含有量が適切な範囲内である場合、非水電解液全体のイオン伝導度を向上させ、リチウムイオンの輸送を速めて、二次電池の容量維持率を高めるのに寄与する。しかし、ヘキサフルオロリン酸リチウムは高温環境で熱安定性が悪く、高温で分解されてPFを生成する。PFが水と反応して、正極活物質を腐食して電池のガス膨らみを増加するHFが形成される。非水電解液が式1で表される化合物とヘキサフルオロリン酸リチウムの両方を含有する場合、式1で表される化合物は、ヘキサフルオロリン酸リチウムと反応して化合物LiPFを形成することができる。これによって、ヘキサフルオロリン酸リチウムの一部の分解及びHFの形成を減少させ、二次電池は優れたサイクル性能を有する。リチウムビスフルオロスルホニルイミドの化学式はFNO・Liであり、N原子は2つの電子吸引性スルホニルに連結されている。これによって、N原子上の電荷が十分に非局在化され、リチウムビスフルオロスルホニルイミドは格子エネルギーが低く、解離しやすくなるため、非水電解液のイオン伝導度を向上させ、非水電解液の粘度を下げることができる。さらに、リチウムビスフルオロスルホニルイミドは、耐高温性に優れ、水解しにくい特性を有し、負極活物質の表面に、より薄く抵抗がより低く、かつ熱安定性がより高い界面膜を形成することができる。これによって、負極活物質と非水電解液との間の副反応は少なくなる。しかし、リチウムビスフルオロスルホニルイミドは正極集電体を腐食しやすいため、その含有量は高すぎてはならない。
【0080】
いくつかの実施例では、選択的には、前記ヘキサフルオロリン酸リチウムの質量含有量は、前記非水電解液の総質量に対して、A2(%)であり、A2は、6~14である。より選択的には、A2は、6~12、6~10、8~14、8~12、又は8~10である。
【0081】
いくつかの実施例では、選択的には、前記リチウムビスフルオロスルホニルイミドの質量含有量は、前記非水電解液の総質量に対して、A3(%)であり、A3は、0よりも大きく5以下である。より選択的には、A3は、0.1~2.5、0.1~2、0.1~1.5、0.1~1、0.2~2.5、0.2~2、0.2~1.5、0.2~1、0.5~2.5、0.5~2、0.5~1.5、又は0.5~1である。
【0082】
いくつかの実施例では、選択的には、A3/A2は、0.8以下、より選択的には0.01~0.8、0.05~0.8、0.1~0.8、0.01~0.6、0.05~0.6、0.1~0.6、0.01~0.4、0.05~0.4、0.1~0.4、0.01~0.3、0.05~0.3、又は0.1~0.3である。これによって、前記非水電解液が水解しにくく、かつ、より高い熱安定性も有し、また、抵抗のより低い界面膜の形成に有利である。
【0083】
いくつかの実施例では、A2/A1は、前記非水電解液の総質量に対して、5~650である。ヘキサフルオロリン酸リチウムはイオン伝導度が高い特性を有するため、式1で表される化合物の含有量A1(%)とヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量A2(%)とを適切に組み合わせることにより、正極集電体を薄肉化することによる出力性能の劣化、安全上のリスクの向上、加工性能の劣化などの問題を改善しつつ、二次電池の容量維持率をさらに改善するのに寄与する。さらに、以下の状況を効果的に回避できる。ヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量が高く、式1で表される化合物の含有量が低い場合、非水電解液にはPFが多く存在するため、非水電解液の分解反応が多くなる。また、式1で表される化合物により正極で形成される界面膜は、均一性や緻密性が不十分であり、HFによる正極活物質への腐食及びその後の一連の副反応を止めることができない。二次電池は、ガス発生量及び熱発生量が高くなり、出力性能、貯蔵性能、及び安全性能を劣化する恐れがある。ヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量が低く、式1で表される化合物の含有量が高い場合、式1で表される化合物が非水電解液中で完全に解離しにくく、かつ、カチオンとアニオンが結合されやすいため、非水電解液のイオン伝導度が低下し、二次電池の容量維持率が劣化する恐れがある。選択的には、A2/A1は、5~500、5~300、5~250、5~200、5~150、5~100、5~75、5~50、10~500、10~300、10~250、10~200、10~150、10~100、10~75、10~50、15~500、15~300、15~250、15~200、15~150、15~100、15~75、又は15~50である。
【0084】
いくつかの実施例では、前記非水電解液は第2リチウム塩をさらに含むことができる。前記第2リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiDFOP)及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム(LiTFOP)のうちの少なくとも1種を含む。第2リチウム塩は、補助リチウム塩として、正極及び/又は負極の界面性能を改善したり、非水電解液のイオン伝導度又は熱安定性を改善したりする役割を果たすことができる。
【0085】
選択的には、前記非水電解液における第2リチウム塩の総質量含有量は、前記非水電解液の総質量に対してA4(%)であり、A4は、5以下、より選択的には2以下である。
【0086】
選択的には、いくつかの実施例では、前記第2リチウム塩は、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム(LiTFOP)、又はこれらの組み合わせを含み、より選択的には、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)を含む。ジフルオロリン酸リチウムは、電気化学的安定性が高く、非水電解液のイオン伝導度を向上させ、正極界面膜及び/又は負極界面膜の性質を改善し、且つ、安定的かつ抵抗の低い正極界面膜及び/又は負極界面膜を作製するのに寄与するため、非水電解液の分解を効果的に減少させ、二次電池の出力性能及び安全性能をさらに改善させる。選択的には、ジフルオロリン酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとの質量比αは、0.01~0.15、より選択的には0.01~0.1である。
【0087】
いくつかの実施例では、選択的には、A1+A2+A3+A4は、10~20、より選択的には12~16である。
[有機溶媒]
【0088】
いくつかの実施例では、前記非水電解液は有機溶媒を含む。前記有機溶媒は、環状カーボネート化合物、鎖状カーボネート化合物、カルボキシレート化合物のうちの少なくとも1種を含む。選択的には、前記環状カーボネート化合物は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)のうちの少なくとも1種を含んでもよい。選択的には、前記鎖状カーボネート化合物は、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)のうちの少なくとも1種を含んでもよい。選択的には、前記カルボキシレート化合物は、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)のうちの少なくとも1種を含んでもよい。
【0089】
選択的には、いくつかの実施例では、前記有機溶媒は、少なくとも環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物を含む。ヘキサフルオロリン酸リチウムなどのリチウム塩の含有量が高い場合、非水電解液の粘度が上昇し、イオン伝導度が低下し、リチウムイオンの輸送に不利である。一方、環状カーボネート化合物は、高い誘電率を有するため、非水電解液のイオン伝導度を向上させることができる。鎖状カーボネート化合物は、低い粘度を有するため、非水電解液の粘度を低下させることができる。従って、有機溶媒が環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物の両方を含む場合、非水電解液に適切な粘度及びイオン伝導度を有させるのに寄与し、リチウムイオンの輸送に有利である。
【0090】
環状カーボネート化合物は、高い誘電率を有するため、非水電解液のイオン伝導度を向上させることができるが、分解反応を起こしやすく、二次電池の貯蔵性能に悪い影響を及ぼすため、その含有量は適切な範囲内にしなければならない。いくつかの実施例では、前記環状カーボネート化合物の質量含有量は、前記非水電解液の総質量に対して、B1(%)であり、B1は0よりも大きく20以下である。選択的には、B1は、0.5~20、1~20、2~20、5~20、10~20、12~20、15~20、又は15~18である。
【0091】
いくつかの実施例では、前記鎖状カーボネート化合物の質量含有量は、前記非水電解液の総質量に対してB2(%)であり、B2は45~80である。選択的には、B2は、50~80、55~80、60~80、又は60~75である。
【0092】
カルボキシレート化合物は、低粘度、高誘電率の利点を有するため、非水電解液に使用されると、非水電解液に適切な粘度及びイオン伝導度を有させるのに寄与し、リチウムイオンの輸送及び二次電池のレート性能の改善に有利である。カルボキシレート化合物は二次電池の出力性能を改善できるが、その酸化防止能力が低く、高充電状態で貯蔵される場合は分解しやすいため、その含有量は高すぎてはならない。いくつかの実施例では、前記カルボキシレート化合物の質量含有量は、前記非水電解液の総質量に対してB3(%)であり、B3は0~15である。いくつかの実施例では、B3は、0であってもよい。いくつかの実施例では、選択的には、B3は、2~15、2~10、2~8、又は2~5である。
【0093】
本願の有機溶媒は、上記の環状カーボネート化合物、鎖状カーボネート化合物、カルボキシレート化合物以外の他の溶媒を含んでもよい。一例として、前記他の溶媒は、スルホン類溶媒、例えばスルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)、及びジエチルスルホン(ESE)などを含んでもよい。
【0094】
いくつかの実施例では、式1で表される化合物の含有量A1(%)及び環状カーボネート化合物の含有量B1(%)は、B1/20+A1が1~3であることを満たし、選択的には1~2、1~1.8、1~1.6、又は1~1.4である。式1で表される化合物の含有量A1(%)と環状カーボネート化合物の含有量B1(%)とを適切に組み合わせることにより、正極集電体を薄肉化することによる出力性能の劣化、安全上のリスクの増加、加工性能の劣化などの問題を改善しつつ、二次電池の容量維持率をさらに改善するのに寄与する。さらに、以下の状況を効果的に回避できる。式1で表される化合物及び環状カーボネート化合物のいずれの含有量も高い場合、電池の内部抵抗及びガス発生量が高く、これによって、二次電池の出力性能及び貯蔵性能が影響を受ける恐れがある。式1で表される化合物及び環状カーボネート化合物のいずれの含有量も低い場合、非水電解液のイオン伝導度が低く、また、式1で表される化合物は正極集電体の表面にパッシベーション膜を形成し、且つ正極活物質の表面に低抵抗の界面膜を形成するのに不十分であり、これによって、正極シートの加工性能が悪くなると同時に、二次電池の出力性能、安全性能及びサイクル性能も悪くなる恐れがある。
[添加剤]
【0095】
いくつかの実施例では、前記非水電解液は、ハロゲンで置換された環状カーボネート化合物、ニトリル化合物、ホスファゼン化合物、芳香族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素化合物、イソシアネート化合物、無水物化合物、硫酸エステル化合物、亜硫酸エステル化合物、スルホン酸エステル化合物、ジスルホン酸エステル化合物のうちの少なくとも1種などの添加剤を含んでもよい。本願では、これら添加剤の種類は特に限定されず、本願の主旨を損なうことはなければよい。選択的には、これら添加剤の総質量含有量は、前記非水電解液の総質量に対して、5%以下、より選択的には2.5%以下である。
【0096】
選択的には、いくつかの実施例では、前記非水電解液は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)をさらに含むことができる。その質量含有量は、前記非水電解液の総質量に対してC1(%)であり、0≦C1≦2.5である。例えば、C1は、0、0.10、0.20、0.50、0.75、1.0、1.25、1.50、1.75、2.0、2.25、2.50、又は以上任意の値からなる範囲であってもよい。選択的には、0<C1≦2.5、0<C1≦2.25、0<C1≦2.0、0<C1≦1.75、0<C1≦1.5、0<C1≦1.25、0<C1≦1.0、0<C1≦0.75、又は0<C1≦0.5である。
【0097】
二次電池では、フルオロエチレンカーボネートは、高い電位で還元分解反応を起こし、負極活物質の表面に一定の柔靭性を有する界面膜を形成し、また、低い電位での有機溶媒の還元分解及び有機溶媒の負極活物質への吸蔵を抑制することができる。従って、非水電解液がフルオロエチレンカーボネートを含有する場合、二次電池のサイクル性能を効果的に向上させることができる。さらに、フルオロエチレンカーボネートは、高電圧酸化に対する耐性が強く、高電圧正極活物質と組み合わせて使用されるのに有利であり、二次電池のエネルギー密度をさらに高めることに有利である。
【0098】
いくつかの実施例では、式1で表される化合物の含有量A1(%)及びフルオロエチレンカーボネートの含有量C1(%)は、0.25≦C1/A1≦25をさらに満たす。選択的には、0.5≦C1/A1≦15、0.5≦C1/A1≦10、0.5≦C1/A1≦5、0.5≦C1/A1≦4、0.5≦C1/A1≦3、0.5≦C1/A1≦2.5、0.5≦C1/A1≦2、0.5≦C1/A1≦1.5、又は0.5≦C1/A1≦1.0である。
【0099】
非水電解液がフルオロエチレンカーボネートを含有する場合、二次電池のサイクル性能を効果的に向上させることができる。しかし、フルオロエチレンカーボネートは、分解して、正極界面膜を破壊させ且つ正極活物質を腐食させるHFを形成しやすく、二次電池の熱発生量及びガス発生量を増加する。一方、式1で表される化合物は、正極活物質に対する安定化剤として機能することができる。その構造中のB原子は、正極活物質の表面のO原子と相互作用する功能を有するので、正極活物質の結晶構造を安定化させ、HFが正極活物質の結晶構造に与える破壊を低減させることができる。従って、式1で表される化合物とフルオロエチレンカーボネートを併用することは、二次電池のサイクル性能をさらに改善するというフルオロエチレンカーボネートの作用を十分に発揮することに有利である。さらに、式1で表される化合物の含有量A1(%)とフルオロエチレンカーボネートの含有量C1(%)との間の関係を適切に制御して、0.25≦C1/A1≦25を満たすようにすると、式1で表される化合物とフルオロエチレンカーボネートとの相乗作用を十分に発揮させ、正極集電体を薄肉化することによる出力性能の劣化、安全上のリスクの増加、加工性能の劣化などの問題を改善しつつ、二次電池のサイクル性能をさらに改善するのに寄与することができる。また、フルオロエチレンカーボネートが高い誘電率を有するため、式1で表される化合物の含有量A1(%)とフルオロエチレンカーボネートの含有量C1(%)との間の関係を適切に制御して、0.25≦C1/A1≦25を満たすようにすると、式1で表される化合物のカチオン及びアニオンがフリーイオンを形成し、カチオン及びアニオンの結合を回避することを確保する。非水電解液のイオン伝導度を向上させ、二次電池のサイクル性能を改善する一方、活性リチウムイオンの数を増加させることができる。
【0100】
いくつかの実施例では、前記非水電解液は、脱水添加剤をさらに含んでもよい。脱水添加剤は、非水電解液の水含有量を低下させて、水分に起因する一連の副反応を低減させるため、二次電池のガス発生量及び熱発生量を少なくし、二次電池の貯蔵性能及び安全性能をより優れたものとすることができる。選択的には、いくつかの実施例では、前記脱水添加剤は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート(TMSP)、又はこれらの組み合わせを含む。この2種の脱水添加剤は、非水電解液の水分含有量を効果的に低下させるに加えて、ヘキサフルオロリン酸リチウムと反応してジフルオロリン酸リチウムを形成することができる。これにより、ヘキサフルオロリン酸リチウムの分解及びHFの形成を減少させる一方、正極界面膜及び/又は負極界面膜をさらに安定化させ、正極界面の抵抗及び/又は負極界面の抵抗を低下させ、二次電池の出力性能、貯蔵性能、及び安全性能をさらに向上させるのに寄与する。
【0101】
いくつかの実施例では、前記脱水添加剤の質量含有量は、前記非水電解液の総質量に対して、2%以下、選択的には0.05%~1%、より選択的には0.1%~1%である。
【0102】
本願の非水電解液は、当該技術分野の従来の方法で製造することができる。例えば、前記有機溶媒、前記リチウム塩、前記添加剤等を均一に混合して非水電解液を得ることができる。各材料の添加順序は特に限定されるものではなく、例えば、前記リチウム塩や前記添加剤等を前記有機溶媒に添加して均一に混合して非水電解液を得ることができる。
【0103】
本願において、非水電解液中の各成分及びこれらの含有量は当該技術分野で公知の方法により測定することができる。例えば、ガスクロマトグラフィー-質量分析法(GC-MS)、イオンクロマトグラフィー(IC)、液体クロマトグラフィー(LC)、NMRスペクトル分析法(NMR)などにより測定することができる。
【0104】
なお、本願の非水電解液を試験するときに、二次電池から非水電解液を取得することができる。二次電池から非水電解液を取得する方法の一例として、二次電池を放電カットオフ電圧(安全のために、一般には、電池を満放電状態にする)まで放電した後、遠心分離処理を行い、次に、遠心分離処理で得られた適量の液体を非水電解液とするステップを含む。二次電池の注液口から非水電解液を直接取得してもよい。
【0105】
本願において、前記正極活物質層は正極活物質を含む。前記正極活物質としては、当該技術分野で公知の二次電池用の正極活物質が使用されてもよい。例えば、前記正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、及びそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも1種を含んでもよい。リチウム遷移金属酸化物の例としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、及びそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも1種が含まれてもよい。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例としては、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料、及びそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも1種が含まれてもよい。本願はこれらの材料に限定されず、二次電池の正極活物質として使用可能な従来の公知の他の材料を使用してもよい。これらの正極活物質は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0106】
いくつかの実施例では、前記正極活物質は、分子式がLiNiCoMnAlの層状材料を含み、Mは遷移金属サイトドーピングカチオンを表し、Aは酸素サイトドーピングアニオンを表し、0.8≦a≦1.2、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1、0≦e≦1、0≦f≦0.2、0≦g≦2、0≦h≦2、b+c+d+e+f=1、g+h=2である。
【0107】
分子式がLiNiCoMnAlである層状材料は、選択的には、Mカチオンドーピングで改質され、Aアニオンドーピングで改質され、又はMカチオンとAアニオンの両方をドーピングすることで改質され、ドーピングにより得られた層状材料は、結晶構造がより安定的になり、格子酸素が析出されにくく、遷移金属イオンが脱離されにくい。これにより、それに起因する一連の副反応を減少させ、二次電池の安全性能及び、サイクル性能、動的特性など電気化学的特性を向上させることができる。
【0108】
いくつかの実施例では、Mは、Si、Ti、Mo、V、Ge、Se、Zr、Nb、Ru、Pd、Sb、Ce、Te及びWから選択される少なくとも1種である。
【0109】
いくつかの実施例では、Aは、F、N、P及びSから選択される少なくとも1種である。選択的には、AはFから選択される。Fをドーピングして改質されることにより、LiNiCoMnAlは、結晶構造がより安定的になり、格子酸素が析出されにくく、遷移金属イオンが脱離されにくい。これによって、二次電池はより優れた安全性能、サイクル性能、及び動的特性を有する。
【0110】
a、b、c、d、e、f、g、hの値は、LiNiCoMnAlを電気的中性に保つことを満たす。
【0111】
いくつかの実施例では、0<b<0.98である。選択的には、0.50≦b<0.98、0.55≦b<0.98、0.60≦b<0.98、0.65≦b<0.98、0.70≦b<0.98、0.75≦b<0.98、又は0.80≦b<0.98である。
【0112】
いくつかの実施例では、c=0である。
【0113】
いくつかの実施例では、0<c≦0.20である。選択的には、0<c≦0.15、0<c≦0.10、0<c≦0.09、0<c≦0.08、0<c≦0.07、0<c≦0.06、0<c≦0.05、0<c≦0.04、0<c≦0.03、0<c≦0.02、又は0<c≦0.01である。コバルトは地殻中の含有量が少なく、採掘が困難で価格が高いため、低コバルト又はコバルトフリーは正極活物質の必然的な発展傾向となっている。しかし、コバルトは正極活物質のリチウムイオン拡散速度に大きく寄与しており、低コバルト又はコバルトフリーは正極活物質のリチウムイオン拡散速度を低下させ、二次電池のサイクル性能に影響を与える。研究者らは低コバルト又はコバルトフリー正極活物質のリチウムイオン拡散速度を向上させることに注目しているが、今のところ良い決策がない。
【0114】
本願の発明者らが研究して驚いた発見として、式1で表される化合物構造中のB原子は、正極活物質中のO原子と結合されやすく、正極活物質の電荷移動抵抗を低下させるため、リチウムイオンの正極活物質バルク内での拡散抵抗力を低下させる。従って、低コバルト又はコバルトフリーの正極活物質は、リチウムイオンの拡散速度を顕著に改善することができる。低コバルト又はコバルトフリー正極活物質バルク内のリチウムイオンは、表面に適時に補充され、低コバルト又はコバルトフリーの正極活物質の表面の過度のリチウム脱離を回避し、低コバルト又はコバルトフリーの正極活物質の結晶構造を安定化させることができる。本願の低コバルト又はコバルトフリーの正極活物質の結晶構造がより安定的になるため、低コバルト又はコバルトフリーの正極活物質の表面での過度のリチウム脱離により正極活物質の構造性質、化学性質又は電気化学的性質が不安定になるなどの問題、例えば、正極活物質の不可逆的な歪みや格子欠陥の増加の発生確率を低下させる。
【0115】
いくつかの実施例では、d=0かつ0<e<0.50である。選択的には、d=0かつ0<e≦0.45、d=0かつ0<e≦0.40、d=0かつ0<e≦0.35、d=0かつ0<e≦0.30、d=0かつ0<e≦0.25、d=0かつ0<e≦0.20、d=0かつ0<e≦0.15、又はd=0かつ0<e≦0.10である。
【0116】
いくつかの実施例では、e=0かつ0<d<0.50である。選択的には、e=0かつ0<d≦0.45、e=0かつ0<d≦0.40、e=0かつ0<d≦0.35、e=0かつ0<d≦0.30、e=0かつ0<d≦0.25、e=0かつ0<d≦0.20、e=0かつ0<d≦0.15、又はe=0かつ0<d≦0.10である。
【0117】
いくつかの実施例では、0<d<0.50かつ0<e<0.50である。選択的には、0<d≦0.30かつ0<e≦0.10である。
【0118】
いくつかの実施例では、g=2、h=0である。
【0119】
いくつかの実施例では、g=0、h=2である。
【0120】
いくつかの実施例では、0<g<2、0<h<2、かつ、g+h=2である。
【0121】
一例として、分子式がLiNiCoMnAlの層状材料は、LiNi0.7Mn0.3、LiNi0.69Co0.01Mn0.3、LiNi0.68Co0.02Mn0.3、LiNi0.65Co0.05Mn0.3、LiNi0.63Co0.07Mn0.3、LiNi0.61Co0.09Mn0.3のうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。
【0122】
LiNiCoMnAlは、当該技術分野での普通の方法により製造することができる。製造方法の一例として、リチウム源、ニッケル源、コバルト源、マンガン源、アルミニウム源、M元素前駆体、A元素前駆体を混合して焼結することにより得られる。焼結雰囲気は、酸素含有雰囲気、例えば、空気雰囲気又は酸素ガス雰囲気であってもよい。焼結雰囲気のO濃度は、例えば、70%~100%である。焼結温度及び焼結時間は、実際の状況に応じて調整することができる。
【0123】
一例として、リチウム源は、酸化リチウム(LiO)、リン酸リチウム(LiPO)、リン酸二水素リチウム(LiHPO)、酢酸リチウム(CHCOOLi)、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(LiCO)、及び硝酸リチウム(LiNO)のうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。一例として、ニッケル源は、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、シュウ酸ニッケル、及び酢酸ニッケルのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。一例として、コバルト源は、硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、シュウ酸コバルト、及び酢酸コバルトのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。一例として、マンガン源は、硫酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガン、シュウ酸マンガン、及び酢酸マンガンのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。一例として、アルミニウム源は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、及び酢酸アルミニウムのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。一例として、M元素前駆体は、M元素の酸化物、硝酸化合物、炭酸化合物、水酸化合物、及び酢酸化合物のうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。一例として、A元素の前駆体は、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化水素、塩化アンモニウム、塩化リチウム、塩化水素、硝酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硫化水素アンモニウム、硫化水素、硫化リチウム、硫化アンモニウム、及び単体硫黄のうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。
【0124】
いくつかの実施例では、正極活物質層の総質量に対して、分子式がLiNiCoMnAlの層状材料の含有量は、80%~99%である。例えば、分子式がLiNiCoMnAlの層状材料の含有量は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は以上の任意の値からなる範囲であってもよい。選択的には、分子式がLiNiCoMnAlの層状材料の含有量は、85%~99%、90%~99%、95%~99%、80%~98%、85%~98%、90%~98%、95%~98%、80%~97%、85%~97%、90%~97%、又は95%~97%である。
【0125】
いくつかの実施例では、前記正極活物質層は、選択的に、正極導電剤をさらに含んでもよい。本願は、前記正極導電剤の種類を特に限定せない。一例として、前記正極導電剤は、超電導カーボン、導電性黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの少なくとも1種を含む。いくつかの実施例では、前記正極活物質層の総質量に対して、前記正極導電剤の質量含有量は5%以下である。
【0126】
いくつかの実施例では、前記正極活物質層は、選択的に、正極バインダをさらに含んでもよい。本願は、前記正極バインダの種類を特に制限せない。一例として、前記正極バインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレンの三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンの三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、フッ素含有アクリレート系樹脂のうちの少なくとも1種を含んでもよい。いくつかの実施例では、前記正極活物質層の総質量に対して、前記正極バインダの質量含有量は5%以下である。
【0127】
前記正極活物質層は、通常、正極スラリーを正極集電体上に塗布して、乾燥し、コールドプレスして得るものである。前記正極スラリーは、通常、正極活物質、選択的な導電剤、選択的なバインダ、及び任意の他の成分を溶媒に分散させて、均一に撹拌したものである。溶媒はN-メチルピロリドン(NMP)であってもよいが、これに限定されない。
【0128】
本願において、前記負極活物質層は負極活物質を含み、前記負極活物質は、当該技術分野で公知の二次電池用の負極活物質を使用してもよい。一例として、前記負極活物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素系材料、スズ系材料、チタン酸リチウムのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。前記ケイ素系材料は、単体ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素炭素複合物、ケイ素窒素複合物、ケイ素合金材料のうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。前記スズ系材料は、単体スズ、スズ酸化物、スズ合金材料のうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。本願はこれらの材料に限定されず、二次電池の負極活物質として使用可能な従来の公知の他の材料を使用してもよい。これらの負極活物質は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0129】
いくつかの実施例では、前記負極活物質層は、選択的に、負極導電剤をさらに含んでもよい。本願は、前記負極導電剤の種類を特に限定せず、一例として、前記負極導電剤は、超電導カーボン、導電性黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの少なくとも1種を含んでもよい。いくつかの実施例では、前記負極活物質層の総質量に対して、前記負極導電剤の質量含有量は5%以下である。
【0130】
いくつかの実施例では、前記負極活物質層は、選択的に、負極バインダをさらに含んでもよい。本願は、前記負極バインダの種類を特に限定せない。一例として、前記負極バインダは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR-1B、水性アクリル酸系樹脂(例えば、ポリアクリル酸PAA、ポリメタクリル酸PMAA、ポリアクリル酸ナトリウムPAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、カルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも1種を含んでもよい。いくつかの実施例では、前記負極活物質層の総質量に対して、前記負極バインダの質量含有量は5%以下である。
【0131】
いくつかの実施例では、前記負極活物質層は、選択的に、他の助剤をさらに含んでもよい。一例として、他の助剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)などの増粘剤、PTCサーミスタ材料などを含んでもよい。いくつかの実施例では、前記負極活物質層の総質量に対して、前記他の助剤の質量含有量は2%以下である。
【0132】
いくつかの実施例では、前記負極集電体は、金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔の例としては、銅箔が使用されてもよい。複合集電体は、高分子材料基材層と、高分子材料の基材層の少なくとも1つの表面上に形成された金属材料層と、を含んでもよい。一例として、金属材料は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、銀合金から選択される少なくとも1種であってもよい。一例として、高分子材料基材層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などから選択されてもよい。
【0133】
前記負極活物質層は、通常、負極スラリーを負極集電体上に塗布して、乾燥し、コールドプレスして得るものである。前記負極スラリーは、通常、負極活物質、任意の導電剤、任意のバインダ、他の任意の助剤を溶媒に分散させて、均一に撹拌したものである。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよいが、これらに限定されない。
【0134】
本願において、前記セパレータは、前記正極シートと前記負極シートとの間に設けられており、主として正極と負極との短絡を防止する役割を果たし、且つリチウムイオンを通過させる。本願は、前記セパレータの種類を特に限定せず、優れた化学安定性及び機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造のセパレータを使用してもよい。
【0135】
いくつかの実施例では、前記セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも1種を含んでもよい。前記セパレータは、単層薄膜であってもよいし、多層複合薄膜であってもよい。前記セパレータが多層複合薄膜である場合、各層の材料は、同一であるか、又は異なる。
【0136】
いくつかの実施例では、前記二次電池の外装体は、ハードプラスチックケース、アルミニウケース、スチールケースなどの硬質ケースであってもよい。前記二次電池の外装体は、袋式ソフトバッグなどのソフトバッグであってもよい。前記ソフトバッグの材質は、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)などのうちの少なくとも1種のようなプラスチックであってもよい。
【0137】
本願は、二次電池の形状を特に限定せず、円筒形、角形又は他の任意の形状としてもよい。図1には、角形構造の二次電池5が例示されている。
【0138】
いくつかの実施例では、図2に示すように、外装体は、ケース51と、カバープレート53と、を含んでもよい。ケース51は、底板と、底板に接続された側板と、を含んでもよく、底板と側板により収納室が画定される。ケース51は、収納室に連通している開口を有し、カバープレート53は、前記開口を覆って、前記収納室を密閉させるものである。正極シート、負極シート、及びセパレータを捲回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリ52に形成してもよい。電極アセンブリ52は、前記収納室に封入されている。非水電解液は電極アセンブリ52に含浸される。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は1つ又は複数であってもよく、要求に合わせて調整してもよい。
【0139】
本願の二次電池の製造方法は公知のものである。いくつかの実施例では、正極シート、セパレータ、負極シート、及び非水電解液を組み立てて二次電池にすることができる。一例として、正極シート、セパレータ、負極シートを捲回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリにし、電極アセンブリを外装体に入れて、乾燥させた後に非水電解液を注入し、真空封止、静置、化成、整形などの工程を経て、二次電池を得るようにしてもよい。
【0140】
本願のいくつかの実施例では、本願に係る二次電池は、電池モジュールとして組み込まれてもよく、電池モジュールは二次電池を複数含んでもよく、具体的な数は電池モジュールの使用及び容量に応じて調整することができる。
【0141】
図3は、電池モジュール4の一例の概略図である。図3に示すように、電池モジュール4では、複数の二次電池5は電池モジュール4の長手方向に沿って順次配列されてもよい。もちろん、他の形態で配置されてもよい。また、ファスナーによりこの複数の二次電池5を固定してもよい。
【0142】
選択的には、電池モジュール4は、収納空間を有するハウジングを有してもよく、複数の二次電池5はこの収納空間に収容される。
【0143】
いくつかの実施例では、上記の電池モジュールは、電池パックとして組み立てられてもよい。電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの使用及び容量に応じて調整することができる。
【0144】
図4及び図5は、電池パック1の一例の概略図である。図4及び図5に示すように、電池パック1は、電池箱と、電池箱内に設けられた複数の電池モジュール4と、を含んでもよい。電池箱は、上箱体2と、下箱体3と、を含んでもよい。上箱体2は下箱体3を覆って、電池モジュール4を収納する密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の形態で電池箱内に配置されてもよい。
【0145】
本願の実施形態は、本願の二次電池、電池モジュール又は電池パックのうちの少なくとも1つを含む電力消費装置をさらに提供する。前記二次電池、電池モジュール又は電池パックは、前記電力消費装置の電源としても、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとしても使用することができる。前記電力消費装置は、モバイル機器(例えば携帯電話、ラップトップなど)、電気車両(例えば純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電車、船舶及び人工衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、これらに限定されない。
【0146】
前記電力消費装置は、その使用の要求に応じて、二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択してもよい。
【0147】
図6は、電力消費装置の一例の概略図である。当該電力消費装置は、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。当該電力消費装置による高出力及び高エネルギー密度のニーズに満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用することができる。
【0148】
電力消費装置の別の例として、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコンなどであってもよい。当該電力消費装置には、通常軽量化、薄型化が求められるため、二次電池を電源として使用することができる。
実施例
【0149】
以下の実施例は、本願に開示された内容をより具体的に説明するものであり、本願に開示された内容の範囲内で様々な修正及び変更が行われることは当業者にとって明白であるので、これらの実施例は単に説明のためにのみ使用される。特に断らない限り、以下の実施例で報告されるすべての部、百分率、及び比率は質量に基づいている。実施例で使用されるすべての試薬は、市販又は従来の方法で合成して得られ、さらに処理することなく直接使用することができる。また、実施例で使用される機器は、市販品として入手可能である。
【0150】
各実施例及び比較例の二次電池は、いずれも下記の方法で製造される。
正極シートの製造
【0151】
正極活物質であるLiNi0.65Co0.05Mn0.3、導電剤であるカーボンブラック(Super P)、バインダであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を97.5:1.4:1.1の質量比で適量の溶媒NMPにて十分に撹拌して混合し、均一な正極スラリーを形成した。正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔の表面上に均一に塗工して、乾燥し、コールドプレスして、正極シートを得た。正極集電体の厚さH(μm)、破断伸び率Q(%)及び正極活物質層の圧縮密度P(g/cm)の具体的な範囲は、それぞれ表1及び表3に示される。
負極シートの製造
【0152】
負極活物質である黒鉛、バインダであるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、導電剤であるカーボンブラック(Super P)を96.2:1.8:1.2:0.8の質量比で適量の溶媒の脱イオン水にて十分に撹拌して混合し、均一な負極スラリーを形成した。負極スラリーを負極集電体の銅箔の表面上に均一に塗工して、乾燥し、コールドプレスして、負極シートを得た。
セパレータ
【0153】
多孔質ポリエチレン(PE)膜をセパレータとして用いた。
非水電解液の製造
【0154】
表1及び表3に示す組成となるように、環状カーボネート化合物、鎖状カーボネート化合物、及びカルボキシレート化合物を均一に混合して、有機溶媒を得た後、表1及び表3に示す組成となるように、式1で表される化合物、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、及びリチウムビスフルオロスルホニルイミド(LiFSI)を有機溶媒に加えて均一に混合し、非水電解液を得た。表1及び表3において、各成分の含有量は、すべて、非水電解液の総質量に基づくものであり、且つ、「/」は、対応する成分を加えていないことを意味する。
二次電池の製造
【0155】
正極シート、セパレータ、負極シートを順次積層して捲回し、電極アセンブリを得た。電極アセンブリを外装体に入れて、乾燥して、非水電解液を注入し、真空封止、静置、化成、整形などの工程を経て、二次電池を得た。
試験部分
(1)二次電池の質量エネルギー密度の試験
【0156】
25℃で、二次電池を0.33Cの定電流で4.25Vに充電し、さらに電流0.05Cとなるまで定電圧で充電した。二次電池を5min静置した後、0.33Cの定電流で2.8Vに放電し、放電エネルギーを得た。二次電池の質量エネルギー密度(Wh/Kg)=放電エネルギー/二次電池の質量。
(2)二次電池の出力性能の試験
【0157】
25℃で、二次電池を0.1Cの定電流で4.25Vに充電し、さらに電流0.05Cとなるまで定電圧で充電し、このとき、二次電池は満充電状態になった。二次電池を1Cの定電流で約30分間放電し、二次電池の充電状態を50%SOCに調整し、このとき、二次電池の電圧をVとした。二次電池を4Cの電流Iで30秒放電し、0.1秒ごとに採点し、放電末期の電圧をVとした。二次電池の内部抵抗DCR=(V-V)/Iである。二次電池の内部抵抗が小さいほど、出力性能に優れる。
(3)二次電池のホットボックス安全性能の試験
【0158】
25℃で、二次電池を0.1Cの定電流で4.25Vに充電し、さらに電流0.05Cとなるまで定電圧で充電し、このとき、二次電池は満充電状態になった。満充電状態の二次電池を密封性に優れた高温箱に入れて、5℃/minで100℃に昇温し、1時間保温後、5℃/minで105℃に昇温し、30分間保温した。その後、5℃/minの昇温速度で昇温し、二次電池が失効になるように5℃昇温するごとに30min保温し、二次電池失効前の最高温度Tmaxを記録した。Tmaxが高いほど、二次電池のホットボックス安全性能に優れる。
(4)二次電池のサイクル性能の試験
【0159】
45℃で、二次電池を1Cの定電流で4.25Vに充電し、さらに電流0.05Cとなるまで定電圧で充電し、このとき、二次電池は満充電状態になった。このときの充電容量を記録して、1サイクル目の充電容量とした。二次電池を5min静置した後、1Cで2.8Vに定電流放電し、これを充放電の1サイクルとし、このときの放電容量を記録して、1回サイクルの放電容量とした。二次電池を上記の方法で充放電試験を繰り返し、毎回サイクル後の放電容量を記録した。二次電池の45℃での600回サイクル後の容量維持率(%)=600回サイクル後の放電容量/1回サイクルの放電容量×100%。
(5)二次電池の貯蔵性能の試験
【0160】
60℃で、二次電池を1Cの定電流で4.25Vに充電し、さらに電流0.05Cとなるまで定電圧で充電し、このとき、排水法により二次電池の体積を試験してVとした。二次電池を60℃の恒温箱に入れて、30日間保管した後に取り出し、このとき、排水法により二次電池の体積を試験してVとした。二次電池を60℃で30日間保管後の体積膨張率(%)=[(V-V)/V]×100%である。
【0161】
表1は、実施例1-1~1-33及び比較例1-1~1-4の正極シート及び非水電解液のパラメータを示す。表2は、実施例1-1~1-33及び比較例1-1~1-4を上記の性能試験方法で試験した結果を示す。
【0162】
表3は、実施例2-1~2-32及び比較例2-1~2-3の正極シート及び非水電解液のパラメータを示す。表4は、実施例2-1~2-32及び比較例2-1~2-3を上記の性能試験方法に従って試験した結果を示す。
【0163】
【表1】
【0164】
【表2】
【0165】
【表3】
【0166】
【表4】
【0167】
表1及び表2の試験結果を併せて分かるように、薄肉化された正極集電体を用いた二次電池では、非水電解液が式1で表される化合物を含有し、かつ、その含有量A1(%)と正極集電体の厚さH(μm)、正極集電体の破断伸び率Q(%)及び正極活物質層の圧縮密度P(g/cm)とが、A1/Hが0.0015~0.20、Q+A1が1~4、P/A1が2~340であることを満たす場合、二次電池は、高いエネルギー密度、低い内部抵抗、高いホットボックス安全性能、高い容量維持率、及び低い体積膨張率を兼ね備えることができる。
【0168】
実施例1-1~1-10及び比較例1-2の試験結果を併せて分かるように、A1/Hが0.0015未満であり、及び/又はP/A1が340よりも大きい場合、式1で表される化合物は、Al3+と結合されて正極集電体の表面にパッシベーション膜を形成し且つ正極活物質の表面に低抵抗の界面膜を形成するのに不十分である。これによって、比較例1-1と比べて、正極集電体を薄肉化することが出力性能及び安全性能に与える悪い影響を改善しておらず、二次電池の容量維持率の増加には限りがある。
【0169】
実施例1-1~1-10及び比較例1-3~1-4の試験結果を合わせて分かるように、Q+A1が4よりも大きく、A1/Hが0.20よりも大きく、及び/又はP/A1が2未満である場合、式1で表される化合物が多すぎ、正極界面の抵抗及び/又は負極界面の抵抗が低下せず、逆に上昇する。これによって、二次電池の内部抵抗が高くなり、容量維持率が悪くなる。式1で表される化合物は、活性リチウムイオンの一部を提供しており、二次電池のエネルギー密度をわずかに向上できるが、アニオンの酸化分解により、電池内部のガス発生量が高くなり、ホットボックス安全性能が明らかに劣化する。
【0170】
表3及び表4の試験結果を併せて分かるように、薄肉化された正極集電体を用いた二次電池では、非水電解液が式1で表される化合物を含有し、かつ、その含有量A1(%)と正極集電体の厚さH(μm)、正極集電体の破断伸び率Q(%)及び正極活物質層の圧縮密度P(g/cm)とが、A1/Hが0.0015~0.20、Q+A1が1~4、P/A1が2~340であることを満たす場合、二次電池能は、高いエネルギー密度、低い内部抵抗、高いホットボックス安全性能、高い容量維持率及び低い体積膨張率を兼ね備えることができる。
【0171】
実施例2-1~2-9及び比較例2-2の試験結果を併せて分かるように、A1/Hが0.0015未満である場合、式1で表される化合物は、Al3+と結合されて正極集電体の表面にパッシベーション膜を形成し且つ正極活物質の表面に低抵抗の界面膜を形成するのに不十分である。これによって、比較例2-1と比べて、正極集電体を薄肉化することが出力性能及び安全性能に与える悪い影響を改善しておらず、また、二次電池の容量維持率の増加に限りがある。
【0172】
実施例2-1~2-9及び比較例2-3の試験結果を併せて分かるように、A1/Hが0.20よりも大きく、P/A1が2未満で、かつ、Q+A1が4よりも大きい場合、式1で表される化合物が多すぎ、正極界面の抵抗及び/又は負極界面の抵抗が低下せず、逆に上昇する。これによって、二次電池の内部抵抗が高くなり、容量維持率が悪くなる。式1で表される化合物は、活性リチウムイオンの一部を提供しており、二次電池のエネルギー密度をわずかに向上できるが、アニオンの酸化分解により、電池内部のガス発生量が高くなり、ホットボックス安全性能が明らかに劣化する。
【0173】
なお、本願は、上記の実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態は例に過ぎず、本願の技術案の範囲内で技術思想と実質的に同一の構成を有し、同一の作用効果を発揮する実施形態はいずれも本願の技術範囲内に含まれる。また、本願の主旨を逸脱しない範囲で、実施形態に当業者が思いつく種々の変形を加え、実施形態における構成要素の一部を組み合わせて構築する他の形態も本願の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-08-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シートと、非水電解液と、を含む二次電池であって、
前記正極シートは、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも1つの表面上に位置する正極活物質層と、を含み、
前記非水電解液は、式1で表される化合物を含み、
前記式1で表される化合物の質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してA1(%)であり、前記正極集電体の厚さはH(μm)であり、前記正極集電体の破断伸び率はQ(%)であり、前記正極活物質層の圧縮密度はP(g/cm)であり、かつ、前記二次電池は、Hが4~14、A1/Hが0.0015~0.20、Q+A1が1~4、P/A1が2~340であることを満たす、二次電池。
【化1】
(X、Yは、それぞれ独立して、フッ素原子、又は、部分フッ素化又は完全フッ素化した、C1~C10のアルキル、C2~C10のアルケニル、C2~C10のアルキニル、C6~C8のアリール、C1~C10のアルコキシ、C2~C10のアルケニルオキシ、C2~C10のアルキニルオキシ、C6~C8のアリールオキシからなる群のうちの少なくとも1つを表し、かつ、X、Yのうちの少なくとも一方はフッ素原子を表す。)
【請求項2】
A1/Hは、0.002~0.05、選択的には0.01~0.05であり、及び/又は、
Q+A1は、1.5~3.5、選択的には2.0~3.5であり、及び/又は、
P/A1は、5~340、選択的には10~340である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
A1は、0.02~1.8、選択的には0.02~0.5であり、及び/又は、
Qは、0.5~3.5、選択的には1.5~3.5であり、及び/又は、
Pは、3.2~3.7、選択的には3.4~3.7である、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記非水電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウムを含む第1リチウム塩をさらに含み、
前記ヘキサフルオロリン酸リチウムの質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してA2(%)であり、
選択的には、A2/A1は、5~650、より選択的には15~300であり、及び/又は、
選択的には、A2は、6~14である、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項5】
前記非水電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウム及びリチウムビスフルオロスルホニルイミドの組み合わせを含む第1リチウム塩をさらに含み、
前記ヘキサフルオロリン酸リチウムの質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してA2(%)であり、前記リチウムビスフルオロスルホニルイミドの質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してA3(%)であり、
選択的には、A2は、6~14であり、A3は、0よりも大きく5以下であり、及び/又は、
選択的には、A3/A2は、0.8以下、より選択的には0.05~0.3であり、及び/又は、
選択的には、A2/A1は、5~650、より選択的には15~300である、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項6】
前記非水電解液は、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む第2リチウム塩をさらに含み、前記非水電解液における前記第2リチウム塩の総質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してA4(%)であり、
選択的には、A4は、5以下、より選択的には2以下である、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項7】
前記第2リチウム塩は、ジフルオロリン酸リチウムを含み、
選択的には、前記ジフルオロリン酸リチウムと前記ヘキサフルオロリン酸リチウムとの質量比αは、0.01~0.15、より選択的には0.01~0.1である、請求項6に記載の二次電池。
【請求項8】
前記非水電解液は、環状カーボネート化合物をさらに含み、
前記環状カーボネート化合物の質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対してB1(%)であり、
選択的には、B1は、0.5~20、より選択的には15~18であり、及び/又は、
選択的には、B1/20+A1は、1~3、より選択的には1~2である、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項9】
前記環状カーボネート化合物は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートのうちの少なくとも1種を含む、請求項8に記載の二次電池。
【請求項10】
前記非水電解液は、フルオロエチレンカーボネートをさらに含み、その質量百分率は前記非水電解液の総質量に対してC1(%)であり、
選択的には、0<C1≦2.5、より選択的には、0<C1≦2.0であり、及び/又は、
選択的には、0.25≦C1/A1≦25、より選択的には、0.5≦C1/A1≦10である、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項11】
前記非水電解液は、ヘキサメチルジシラザン、トリス(トリメチルシリル)ホスフェートのうちの少なくとも1種を含む脱水添加剤をさらに含み、
選択的には、前記脱水添加剤の質量百分率は、前記非水電解液の総質量に対して、2%以下、より選択的には0.05%~1%である、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項12】
X、Yは、下記条件(1)~(3)のうちの1つを満たす、請求項1に記載の二次電池。
(1)X、Yはいずれもフッ素原子を表す。
(2)X、Yのうち、一方はフッ素原子を表し、他方は、部分フッ素化又は完全フッ素化した、C1~C5のアルキル、C2~C5のアルケニル、C2~C5のアルキニル、フェニル、フェノキシ、C1~C5のアルコキシ、C2~C5のアルケニルオキシ、及びC2~C5のアルキニルオキシからなる群のうちの少なくとも1つを表す。
(3)X、Yのうち、一方はフッ素原子を表し、他方は、部分フッ素化又は完全フッ素化した、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、ビニル、プロペニル、アリル、ブタジエニル、エチニル、プロピニル、フェニル、メトキシ、エトキシ、プロキシ、ビニルオキシ、プロペニルオキシ、エチニルオキシ、プロピニルオキシ、及びフェノキシからなる群のうちの少なくとも1つを表す。
【請求項13】
前記式1で表される化合物は下記化合物のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の二次電池。
【化2】
【請求項14】
前記正極集電体はアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔を用いる、請求項に記載の二次電池。
【請求項15】
請求項に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項16】
請求項に記載の二次電池、請求項15に記載の電池モジュールのうちの1種を含む、電池パック。
【請求項17】
請求項に記載の二次電池、請求項15に記載の電池モジュール、請求項16に記載の電池パックのうちの少なくとも1種を含む、電力消費装置。
【国際調査報告】