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特表2024-524803亜鉛製錬工程の副産物である酸化鉄からの高品位精製酸化鉄の製造方法
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  • 特表-亜鉛製錬工程の副産物である酸化鉄からの高品位精製酸化鉄の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】亜鉛製錬工程の副産物である酸化鉄からの高品位精製酸化鉄の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20240702BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C22B7/00 Z
C22B1/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552357
(86)(22)【出願日】2023-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 KR2023006857
(87)【国際公開番号】W WO2023234608
(87)【国際公開日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】10-2022-0132523
(32)【優先日】2022-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519197594
【氏名又は名称】高麗亞鉛株式会社
【氏名又は名称原語表記】KOREA ZINC CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ホン シク
(72)【発明者】
【氏名】カン,ソン ムン
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001AA30
4K001BA05
4K001CA06
4K001CA09
4K001CA15
4K001GA07
(57)【要約】
本発明は、亜鉛製錬工程の副産物である酸化鉄を精製する方法であって、この方法は、酸化鉄を焼成する焼成工程、焼成後酸化鉄ケーキを水洗液で水洗する水洗工程、及び水洗後酸化鉄ケーキを濾過して精製後酸化鉄を提供する工程を含む方法を開示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛製錬工程の副産物である原料酸化鉄を精製する方法であって、
前記方法は、
前記原料酸化鉄を焼成する焼成工程;
焼成後酸化鉄ケーキを水洗液で水洗する水洗工程;及び
水洗後酸化鉄ケーキを濾過する第1濾過工程;
を経て精製後酸化鉄を提供する、方法。
【請求項2】
前記焼成工程の焼成温度は700℃~950℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記焼成工程は、酸化鉄を乾燥する段階をさらに含み、
前記酸化鉄を乾燥する段階での乾燥温度は90℃~110℃であり、乾燥時間は2時間以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記焼成工程は、ロータリーキルンを用いて大気下で行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水洗工程は、水洗液1L当たり前記焼成後酸化鉄ケーキを140g~160g投入することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記精製後酸化鉄は、60重量%以上の鉄、0.3重量%以下の亜鉛、0.1重量%以下のカリウム、0.1重量%以下のナトリウム及び0.5重量%以下の硫黄を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記水洗工程は、オートクレーブを用いて前記焼成後酸化鉄ケーキを水洗液で水洗することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記水洗工程は、攪拌機を用いて前記焼成後酸化鉄ケーキを水洗液で水洗することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水洗液の温度は、130℃~150℃であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記水洗液の温度は、20℃~30℃であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
第1濾過工程から出る水洗後濾液から亜鉛を回収する選択的亜鉛沈殿工程をさらに含み、
前記選択的亜鉛沈殿工程は、前記水洗後濾液に塩を投入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記塩は、炭酸ナトリウムである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記選択的亜鉛沈殿工程は、前記水洗後濾液の温度が50℃~70℃であり、pHが7~9である、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛製錬工程の副産物である酸化鉄から亜鉛、カリウム、ナトリウム、硫黄等の不純物を除去して鉄含有量が60%以上である高品位酸化鉄を生産する方法に関するものであり、酸化鉄を焼成して硫黄成分を1次的に除去する乾式工程と酸化鉄内に残った残留不純物を除去する湿式工程に関するものである。また、除去された亜鉛を再び回収する選択的亜鉛沈殿(SZP、Selective Zinc Precipitation)工程に関するものである。
【背景技術】
【0002】
亜鉛精鉱から亜鉛を抽出する工法には乾式製錬工法と湿式製錬工法がある。このうち湿式製錬工法では、亜鉛精鉱を、焙焼(Roasting)工程、溶解(Leaching)工程及び浄液(Purification)工程を経た後、最終的に電気分解(Electrolysis)工程を経て高純度亜鉛として取り出す。
【0003】
湿式製錬で亜鉛と共に溶解した鉄は、別途の工程を通じてジャロサイト(Jarosite)、ゲータイト(Goethite)またはヘマタイト(Hematite)等の酸化鉄の形態に変換後、分離/排出される。
【0004】
通常、亜鉛製錬工程の副産物である酸化鉄には、全重量100%を基準に鉄含有量は40~50%であり、その他亜鉛1~5%、カリウム1~5%、ナトリウム1~5%、硫黄5~10%等を含む。酸化鉄には、鉄、亜鉛、カリウム、ナトリウム、硫黄の他にも炭素、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等が含まれ得る。低い鉄含有率を持つ酸化鉄は、その発生量が多いため保管及び運搬費用が増加する問題がある。また、高い不純物含有量により製鉄工程の原料として用い難く、その使用先を探すのは容易でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の問題点を解決するために乾/湿式工程を混合利用して酸化鉄の主要不純物である亜鉛、カリウム、ナトリウム、硫黄を除去し、鉄含有量は向上させられる方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施例は、亜鉛製錬工程の副産物である原料酸化鉄を精製する方法であって、前記方法は、原料酸化鉄を焼成する焼成工程;焼成後酸化鉄ケーキを水洗液で水洗する水洗工程;及び水洗後酸化鉄ケーキを濾過する第1濾過工程;を経て精製後酸化鉄を提供する、方法を提供する。
【0007】
本発明の一実施例は、前記焼成工程の焼成温度は700℃~950℃である、方法を提供する。
【0008】
本発明の一実施例は、前記焼成工程は酸化鉄を乾燥する段階をさらに含み、前記酸化鉄を乾燥する段階での乾燥温度は90℃~110℃であり、乾燥時間は2時間以上である、方法を提供する。
【0009】
本発明の一実施例は、前記焼成工程はロータリーキルンを用いて大気下で行うことを特徴とする、方法を提供する。
【0010】
本発明の一実施例は、前記水洗工程は水洗液1L当たり前記焼成後酸化鉄ケーキを140g~160g投入することを特徴とする、方法を提供する。
【0011】
本発明の一実施例は、前記精製後酸化鉄は60重量%以上の鉄、0.3重量%以下の亜鉛、0.1重量%以下のカリウム、0.1重量%以下のナトリウム及び0.5重量%以下の硫黄を含む、方法を提供する。
【0012】
本発明の一実施例は、前記水洗工程はオートクレーブを用いて前記焼成後酸化鉄ケーキを水洗液で水洗することを特徴とする、方法を提供する。
【0013】
本発明の一実施例は、前記水洗工程は攪拌機を用いて前記焼成後酸化鉄ケーキを水洗液で水洗することを特徴とする、方法を提供する。
【0014】
本発明の一実施例は、オートクレーブでの前記水洗液の温度は130℃~150℃であることを特徴とする、方法を提供する。
【0015】
本発明の一実施例は、前記攪拌機の前記水洗液の温度は130℃~150℃であることを特徴とする、方法を提供する。
【0016】
本発明の一実施例は、第1濾過工程から出る水洗後濾液から亜鉛を回収する選択的亜鉛沈殿工程を更に含み、前記選択的亜鉛沈殿工程は前記水洗後濾液に塩を投入することを含む、方法を提供する。
【0017】
本発明の一実施例は、前記塩は炭酸ナトリウムである、方法を提供する。
【0018】
本発明の一実施例は、前記選択的亜鉛沈殿工程は前記水洗後濾液の温度が50℃~70℃であり、pHが7~9である、方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施例による酸化鉄の精製方法によれば、亜鉛製錬工程の副産物である酸化鉄から不純物が除去された鉄含有量60%以上の高品位酸化鉄を製造することができる。この際、亜鉛、カリウム、ナトリウム、硫黄の除去率は90%以上である。
【0020】
不純物減少により酸化鉄の重量は初期重量に対して約60%に減少し、これは保管及び運送費の削減に寄与し得る。
【0021】
また、精製後酸化鉄は、亜鉛含有量0.3%以下、硫黄0.5%以下など、不純物の品位が低く、製鋼社の原料として使用が可能になることで資源の再循環に寄与し産業廃棄物の発生量が減少して環境汚染の問題を減らすことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施例による、酸化鉄を精製して高品位酸化鉄を製造し、水洗後濾液から亜鉛を回収する工程を示す順序図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の実施例は、本開示の技術的思想を説明する目的で例示されたものである。本開示による権利範囲が以下に提示される実施例やこれらの実施例に対する具体的説明に限定されるものではない。
【0024】
本開示で用いられている「含む」、「備える」、「有する」等のような表現は、当該表現が含まれる語句または文章において異なって言及されない限り、他の実施例を含む可能性を内包する開放型用語(open-ended terms)として理解されるべきである。
【0025】
図1は、本発明の一実施例による、酸化鉄を精製して高品位酸化鉄を製造し、水洗後濾液から亜鉛を回収する工程を示す順序図である。図1を参照して本発明の一実施例による酸化鉄精製工程について説明する。
【0026】
[焼成工程(S100)]
焼成工程(S100)は、酸化鉄を熱分解させて不純物を除去するためのもので、酸化鉄を高温で焼成する段階を含み得る。酸化鉄を焼成する段階は、空気雰囲気下でロータリーキルン(Rotary Kiln)を用いてなされ得る。この際、酸化鉄を焼成する温度は700℃~950℃であってもよい。焼成温度が700℃より低いと、後述するジャロサイトの分解反応がなされないことがあり、950℃より高いと、後述する硫化亜鉛が酸素と反応する過程で硫酸亜鉛より酸化亜鉛をより多く形成するようになり、後続湿式工程で除去し難くなり得る。また、焼成する温度は、好ましくは700℃~800℃、より好ましくは750℃~800℃であってもよい。
【0027】
焼成工程で焼成する原料酸化鉄は、K-ジャロサイト(KFe(SO(OH)(s))またはNa-ジャロサイト(NaFe(SO(OH)(s))のジャロサイト(Jarosite)を含み得る。
【0028】
焼成工程の主要反応は下記の通りである。
【0029】
[式(1-1)]
KFe(SO(OH)(s)=KFe(SO(s)+Fe(s)+3HO(g)
[式(1-2)]
NaFe(SO(OH)(s)=NaFe(SO(s)+Fe(s)+3HO(g)
[式(2-1)]
2KFe(SO(s)=KSO(s)+Fe(s)+3SO(g)+1.5O(g)
[式(2-2)]
2NaFe(SO(s)=NaSO(s)+Fe(s)+3SO(g)+1.5O(g)
【0030】
K-ジャロサイトは、上記式(1-1)のようにKFe(SO(s)、Fe(s)及びHO(g)に分解され得る。そして、KFe(SO(s)は更に、上記式(2-1)のようにKSO(s)、Fe(s)、SO(g)及びO(g)に分解され得る。
【0031】
Na-ジャロサイトは、上記式(1-2)のようにNaFe(SO(s)、Fe(s)及びHO(g)に分解され得る。そして、NaFe(SO(s)は更に、上記式(2-2)のようにNaSO(s)、Fe(s)、SO(g)及びO(g)に分解され得る。
【0032】
式(1-1)及び式(1-2)は450℃以上で生じる反応であってもよい。式(2-1)及び式(2-2)は680℃以上で生じる反応であってもよい。
【0033】
原料の酸化鉄は、不純物として亜鉛(Zn)を含有し得る。不純物として含まれた亜鉛は、亜鉛硫化物、例えば硫化亜鉛(ZnS)の形態で含まれていることがある。焼成工程(S100)において硫化亜鉛は、下記式(3)のように酸素と反応して硫酸亜鉛(ZnSO)を形成し得る。
【0034】
[式(3)]
ZnS(s)+2O(g)=ZnSO(s)
【0035】
この際、硫化亜鉛と反応する酸素は、外部から注入されるか、またはジャロサイトの分解過程で発生する酸素、特に式(2-1)または式(2-2)で発生する酸素であってもよい。硫化亜鉛は、焼成温度が高い場合、酸素と反応して酸化亜鉛(ZnO)を形成し得る。例えば、焼成温度が400℃より高いと、硫化亜鉛は酸素と反応する過程で酸化亜鉛を形成し得る。焼成温度が950℃より高いと、酸化亜鉛の形成量が多くなり、このような酸化亜鉛はイオン化されないので、後続湿式工程である水洗工程で除去することが難しくなり得る。
【0036】
焼成工程(S100)は、酸化鉄に含まれた水分を全部または一部蒸発させて乾燥した酸化鉄を提供する乾燥段階を含み得る。乾燥段階は、ロータリーキルンを用いてなされ得るが、これに限定されない。
【0037】
乾燥段階が進められる温度は90℃以上であってもよい。乾燥段階が進められる温度が酸化鉄を焼成する段階が進められる温度より低いため、乾燥段階以後に酸化鉄を焼成する段階を進めることができる。この際、ロータリーキルン内の酸化鉄の温度が上昇することにより乾燥段階と酸化鉄を焼成する段階が進められるので、乾燥段階と酸化鉄を焼成する段階は明確に区分され得ない。
【0038】
乾燥段階は、酸化鉄を焼成する段階以前に別途に進められることもできる。この際、乾燥段階が進められる温度は90℃以上であってもよい。乾燥温度が90℃より低い場合、乾燥が正常に行われないことがある。また、乾燥温度は好ましくは90℃~110℃であってもよい。乾燥段階が進められる時間は2時間以上であってもよい。また、乾燥段階が進められる時間は、好ましくは2時間以上24時間以下であってもよく、より好ましくは2時間以上4時間以下であってもよい。
【0039】
焼成工程(S100)を経た焼成後酸化鉄ケーキは、全酸化鉄ケーキの重量を基準に4重量%以下の硫黄(S)成分を含み得る。焼成後酸化鉄ケーキに含有された不純物である亜鉛、カリウム、ナトリウム及びガス形態で除去されなかった硫黄成分は、水溶性物質の形態で含まれていられ得る。例えば、焼成後酸化鉄ケーキに含有された不純物は硫酸亜鉛(ZnSO(s))、硫酸カリウム(KSO(s))及び/又は硫酸ナトリウム(NaSO(s))であってもよい。この際、硫黄の除去率は60%以上であってもよく、ナトリウムの除去率は10%以上であってもよい。
【0040】
[水洗工程(S200)]
水洗工程(S200)は、焼成後酸化鉄ケーキを水洗液で水洗して不純物を除去する工程である。水洗工程(S200)において使用される水洗液は水であってもよい。水洗工程は常温での水を使用して成され得る。具体的には、攪拌機を用いる場合、水洗工程は20℃~30℃の温度で行われ得る。また、水洗効率を向上させるために異なる温度の水を使用することもできる。
【0041】
水洗工程(S200)は常圧で行われ得る。水洗工程(S200)は1時間~3時間行われ得る。
【0042】
酸化鉄ケーキの効果的な水洗のために、水洗工程は、水洗液1L当たり焼成後酸化鉄ケーキ140g~160gを投入して行われ得る。水洗液1L当たり焼成後酸化鉄ケーキ140g未満を投入する場合、水洗液使用量が増加し設備規模が大きくなり得る。水洗液1L当たり焼成後酸化鉄ケーキ160gを超えて投入する場合、水洗効率が減少し得る。
【0043】
水洗工程で除去する不純物は、焼成後酸化鉄ケーキに含有された水溶性不純物であってもよい。このような水溶性不純物は、硫酸亜鉛(ZnSO(s))、硫酸カリウム(KSO(s))及び/又は硫酸ナトリウム(NaSO(s))を含み得る。
【0044】
不純物除去率を向上させるためにオートクレーブを用いて水洗工程(S200)における温度及び圧力を上昇させた後、焼成後酸化鉄ケーキを水洗することができる。オートクレーブを用いた水洗工程は、2bar~3barの圧力で進められ得、1時間~3時間進められ得る。この際、オートクレーブを用いた水洗工程時間が1時間未満の場合不純物除去率が減少し得、3時間超の場合不純物除去率に及ぼす影響は微々たる一方で工程時間が増えることにより費用が増加し得る。
【0045】
オートクレーブを用いた水洗工程で水洗液の温度は130℃~150℃であってもよい。この際、水洗液の温度が130℃未満である場合、不純物制御効率が減少し得る。
【0046】
オートクレーブを用いた水洗工程を通じて得られた酸化鉄は、常温、常圧での水洗工程を通じて得られた酸化鉄より不純物除去率が高いこともある。
【0047】
[第1濾過工程(S300)]
水洗後酸化鉄ケーキを濾過器で濾過して精製後酸化鉄を得ることができる。このように濾過工程の後に得た精製後酸化鉄は、亜鉛3重量%以下、ナトリウム0.8重量%以下、カリウム3重量%以下及び/又は硫黄8重量%以下を含み得る。精製後酸化鉄は、不純物が除去されたため、鉄含有量が60重量%以上であってもよい。精製後酸化鉄は、亜鉛0.3重量%以下、ナトリウム0.1重量%以下、カリウム0.1重量%以下及び硫黄0.5重量%以下を含む高品位酸化鉄であることが好ましい。
【0048】
[選択的亜鉛沈殿工程(S400)]
水洗後酸化鉄ケーキを濾過器で濾過して精製後酸化鉄を分離した後に残った水洗後濾液は、亜鉛を含み得る。選択的亜鉛沈殿工程、即ち、SZP(Selective Zinc Precipitation)工程は、このような水洗後濾液から亜鉛を回収する工程である。
【0049】
選択的亜鉛沈殿工程(S400)では、水洗後濾液に塩を投入することができる。この際、塩は炭酸ナトリウム(NaCO)であってもよい。選択的亜鉛沈殿工程(S400)は、塩を投入することでpHが7~9であってもよい。この際、pHが7未満であれば亜鉛回収率が下落し得、pHが9を超えると亜鉛以外に他の成分が沈殿し得る。
【0050】
選択的亜鉛沈殿工程(S400)で水洗後濾液の温度は、50℃~70℃であってもよい。この際、水洗後濾液の温度が50℃未満である場合、工程効率が減少し得る。
【0051】
水洗後濾液に含有された亜鉛は、塩と反応して下記式(4)のように固体状態で沈殿し得る。
【0052】
[式(4)]
ZnSO(aq)+NaCO(s)=ZnCO(s)+NaSO(aq)
【0053】
上記反応の結果として水洗後濾液に含有された亜鉛は、第2濾過工程(S500)を通じてZnCO(s)の形態で沈殿し、濾液中の亜鉛を99%以上回収することができる。
【0054】
上記の工程から亜鉛製錬工程の副産物である酸化鉄から不純物が除去された鉄含有量60%以上の高品位酸化鉄を製造することができる。この際、亜鉛、カリウム、ナトリウム、硫黄の除去率は90%以上である。
【0055】
不純物減少により酸化鉄の重量は初期重量に対して60%に減少し、また、精製後酸化鉄は亜鉛含有量0.3%以下、硫黄0.5%以下など、不純物の品位が低くなる。
【0056】
[実施例]
本発明を、以下の実施例及び比較例を使用してより詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例にのみ制限されるものではない。
【0057】
[焼成工程(S100)]
本発明の一実施例による亜鉛製錬の副産物である原料酸化鉄のうち、水分を除いた主要成分は次の表1の通りである。
【0058】
【表1】
【0059】
(1)乾燥段階
原料酸化鉄を100℃で24時間乾燥した。この際、乾燥後酸化鉄の水分含有率は24%である。
【0060】
(2)焼成段階
乾燥後酸化鉄を700℃、750℃、800℃、850℃、950℃で2時間焼成した。
【0061】
各焼成温度による酸化鉄の重さ減少は次の通りである。
【0062】
【表2】
【0063】
各焼成温度による焼成後酸化鉄ケーキに含まれた成分の重量%及び不純物の除去率は次の通りである。
【0064】
【表3】
【0065】
[水洗工程(S200)及び第1濾過工程(S300)]
水1L当たり150gの焼成後酸化鉄ケーキを投入した後、常温(25℃)、常圧(1bar)で2時間攪拌して水洗した。水洗を完了した後、水洗液を濾過器に入れて濾過して酸化鉄と濾液を分離した。この後、酸化鉄を乾燥させて残った重さの測定及び成分分析を施行した。比較のために、焼成しなかった酸化鉄を同一の条件で実験した。この際、乾燥後酸化鉄の水分含有率は30%である。
【0066】
各焼成温度による焼成後酸化鉄ケーキをそれぞれ水洗して濾過した結果、精製後酸化鉄に含まれた成分の重量%及び不純物の除去率は次の通りである。
【0067】
【表4】
【0068】
実験結果、酸化鉄を焼成せずに水洗した比較例の場合より、焼成工程を経た後に水洗した実施例において不純物の除去率が高く出た。また、750℃で焼成した後、水洗をした酸化鉄の場合(実施例2)、亜鉛、ナトリウム、カリウム、硫黄の4種類の不純物除去率が全て90%以上なので、不純物が最もよく除去された。
【0069】
[オートクレーブを用いた水洗工程]
水洗工程で温度に対する影響を把握するために750℃で焼成した焼成後酸化鉄を用いて60℃、90℃及びオートクレーブを用いて140℃(圧力2.5bar)で水洗工程をそれぞれ進めた。この際、攪拌時間(2時間)及び酸化鉄投入量(水1L当たり焼成後酸化鉄ケーキ150g)は同一条件を維持し、水の温度のみ異にして水洗をした。水洗後、上記実験と同一の方法で濾過し、重さの測定及び成分分析を施行した。この際、酸化鉄に含まれた成分の重量%及び不純物の除去率は次の通りである。
【0070】
【表5】
【0071】
水洗工程で水洗液の温度が上昇するほど若干の不純物除去率が増加するが、比較例2及び3は実施例2に比べて不純物除去率が大きな差を見せてはいない。ただし、オートクレーブを用いて2.5barの圧力及び140℃の温度で水洗した実施例6は、オートクレーブを用いていない実施例2に比べて不純物の除去率が上昇した。
【0072】
[選択的亜鉛沈殿工程(S400)及び第2濾過工程(S500)]
水洗後濾液中の亜鉛を回収するために選択的亜鉛沈殿工程を進めた。まず水洗後濾液の温度を60℃に上昇させた後、pH濃度が8で維持できるようにNaCOを持続的に投入した。投入されたNaCOがよく混ざるように3時間攪拌した後、濾過器で濾過した。その次に、濾過されたケーキを乾燥した後、重さの測定及び成分分析を施行した。
【0073】
水洗後濾液のうち、亜鉛含有量は2,950mg/Lであって選択的亜鉛沈殿工程を経た後の濾液のうち亜鉛含有量は2.65mg/Lに減少した。即ち、亜鉛はZnCO(s)の形態で沈殿し、水洗後濾液中の亜鉛を99%以上回収することができた。この際、沈殿物は水洗後濾液1L当たり6.5g発生した。
【0074】
以上、添付の図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態で実施され得ることを理解できるものである。
【0075】
従って、以上で記述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定なものではないと理解すべきである。本発明の範囲は上記詳細な説明よりは特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びに、その均等概念から導出される全ての変更または変更された形態が本発明の範囲に含まれるものとして解釈されるべきである。
図1
【国際調査報告】