(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】細胞内ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の産生のためにNARHとNRとの組み合わせを使用する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/13 20160101AFI20240702BHJP
A61K 31/706 20060101ALN20240702BHJP
A61P 25/20 20060101ALN20240702BHJP
A61P 3/04 20060101ALN20240702BHJP
A61P 3/00 20060101ALN20240702BHJP
A61P 3/10 20060101ALN20240702BHJP
A61P 3/06 20060101ALN20240702BHJP
A61P 25/28 20060101ALN20240702BHJP
A61P 25/22 20060101ALN20240702BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20240702BHJP
A61P 25/00 20060101ALN20240702BHJP
A61P 13/12 20060101ALN20240702BHJP
A61P 17/02 20060101ALN20240702BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20240702BHJP
A61P 1/16 20060101ALN20240702BHJP
A61P 31/00 20060101ALN20240702BHJP
A61P 27/16 20060101ALN20240702BHJP
A61P 21/00 20060101ALN20240702BHJP
A61P 21/04 20060101ALN20240702BHJP
A61P 27/02 20060101ALN20240702BHJP
A61P 1/14 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
A23L33/13
A61K31/706
A61P25/20
A61P3/04
A61P3/00
A61P3/10
A61P3/06
A61P25/28
A61P25/22
A61P43/00 107
A61P25/00
A61P13/12
A61P17/02
A61P35/00
A61P1/16
A61P31/00
A61P27/16
A61P21/00
A61P21/04
A61P27/02
A61P1/14
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564574
(86)(22)【出願日】2022-04-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2022060882
(87)【国際公開番号】W WO2022233625
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】カント アルヴァレス, カルレス
(72)【発明者】
【氏名】シアロ, エレオノーラ
(72)【発明者】
【氏名】ジネール, マリア ピラール
(72)【発明者】
【氏名】モコ, ソフィア
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD44
4B018ME01
4B018ME03
4B018ME08
4B018ME10
4B018ME14
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
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4C086MA52
4C086MA60
4C086NA05
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4C086ZA02
4C086ZA05
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4C086ZA34
4C086ZA70
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZB22
4C086ZB26
4C086ZB32
4C086ZB35
4C086ZC21
4C086ZC33
4C086ZC35
4C086ZC52
4C086ZC75
(57)【要約】
NARHとNRとの組合せを使用して、細胞内でNAD+/NADHを産生させるための、組成物及び方法。組成物は、食品又は飲料用途、医薬製剤、又はダイエタリーサプリメントとして使用することができる。本組成物を個体に投与して、細胞及び組織の生存又は細胞全体及び組織全体の健康を改善するために、細胞及び組織における細胞内ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)レベルの増加を促進することができる。また、本組成物は、ミトコンドリア関連疾患又はミトコンドリア機能の変化に関連する状態の治療又は予防を必要とする個体又はリスクがある個体において、それらを治療又は予防するために、該個体に投与することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体において細胞内ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を増加させる方法において使用するための、NARHとNRとの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとの組み合わせからなる、組成物であって、前記方法が、前記個体の1つ以上の細胞においてNAD+の生合成を増加させるのに有効な量の、NARHとNRとの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物を前記対象に経口投与することを含む、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、経腸投与される、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記組成物が、食品製品、栄養補助食品、経口栄養補助食品(ONS)、医療用食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記1つ以上の細胞のうちの少なくとも一部分が、肝臓、腎臓、脳、及び骨格筋からなる群から選択される少なくとも1つの身体部分の一部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
個体におけるNAD+の生合成を増加させるのに有効な量の、NARHとNRとの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物の単位剤形。
【請求項6】
食品製品、栄養補助食品、経口栄養補助食品(ONS)、医療用食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の単位剤形。
【請求項7】
前記組成物が、経腸投与用に配合されている、請求項5又は6に記載の単位剤形。
【請求項8】
(i)1つ以上の細胞におけるミトコンドリアエネルギーの増加、(ii)1つ以上の細胞における代謝疲労に関連する生理学的状態の改善、(iii)1つ以上の細胞における代謝疲労の治療又は予防、(iv)筋肉疲労の治療又は予防、(v)運動能力の改善、及び(vii)寿命の改善からなる群から選択される少なくとも1つの結果を達成する方法であって、NAD+の生合成を増加させるのに有効な量の、NARHとNRとの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物を個体に経口投与することを含む、方法。
【請求項9】
ミトコンドリア関連疾患又はミトコンドリア機能の変化に関連する状態の治療又は予防を必要とする個体又はそれらのリスクがある個体において、その治療又は予防を行う方法であって、NAD+の生合成を増加させるのに有効な量の、NARHとNRとの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物を前記個体に経口投与することを含む、方法。
【請求項10】
前記ミトコンドリア関連疾患又は状態が、老化の悪影響、ストレス、肥満、過体重、代謝速度の低下、メタボリックシンドローム、真性糖尿病、糖尿病合併症、高脂血症、神経変性疾患、認知障害、ストレス誘発性又はストレス関連性認知機能障害、気分障害、不安障害、加齢に伴う神経細胞死又は神経機能障害、早老症候群(早老症、コケイン症候群)、慢性腎臓病、腎不全、肝臓疾患(例えば、非アルコール性脂肪肝)、外傷、感染症、がん、難聴、黄斑変性、ミオパチー及びジストロフィー、ミトコンドリア遺伝病並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記NAD+の生合成が、肝臓、腎臓、脳、及び骨格筋からなる群から選択される少なくとも1つの身体部分の一部である1つ以上の細胞において増加される、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
個体における防御免疫を促進する、及び/又は細菌感染症もしくはウイルス感染症を予防及び/又は治療する、及び/又は感染後の免疫介在性の病変を制限する必要がある、又はそれらのリスクがある個体において、これらの対処を行う方法であって、NAD+生合成を増加させるのに有効な量の、NARHとNRとの組み合わせを含む組成物、又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物を前記個体に経口投与することを含む、方法。
【請求項13】
個体における細菌感染症及びウイルス感染症の両方を含む、胃腸感染症、呼吸器感染症(上気道感染症及び/又は下気道感染症)、尿路感染症を予防又は治療するために使用するための、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、経腸投与される、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、食品製品、栄養補助食品、経口栄養補助食品(ONS)、医療用食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ミトコンドリア関連疾患又はミトコンドリア機能の変化に関連する状態の治療又は予防を必要とする個体又はそれらのリスクがある個体におけるその治療又は予防に有効な量の、NARHとNRとの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物の単位剤形。
【請求項17】
食品製品、栄養補助食品、経口栄養補助食品(ONS)、医療用食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の単位剤形。
【請求項18】
前記組成物が、経腸投与用に配合されている、請求項16又は17に記載の単位剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広義には、NARHとNRとの組み合わせを使用して細胞内NAD+/NADHを産生させる組成物及び方法に関する。細胞及び組織における細胞内NAD+レベルを増加させて、細胞及び組織の生存並びに/又は細胞全体及び組織全体の健康を改善することができる。
【背景技術】
【0002】
ニコチン酸及びニコチンアミドは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)のビタミン形態である。真核生物は、キヌレニン経路を介してトリプトファンからNAD+をデノボ合成することができ、ナイアシンの補給は、トリプトファン不足の食事を摂る集団において生じ得るペラグラを予防する。ニコチン酸は、ホスホリボシル化されてニコチン酸モノヌクレオチド(NaMN)になり、これが次にアデニル化されてニコチン酸アデニンジヌクレオチド(NaAD)を生成し、これが次にアミド化されてNAD+を生成する。
【0003】
NAD+は、還元-酸化反応及びエネルギー代謝に関連した複数種の酵素の機能に不可欠な酵素補因子である。NAD+は、アミノ酸、脂肪酸、及び炭水化物の細胞代謝において電子担体として機能する。NAD+は、下等生物における代謝機能及び寿命延長に関与するタンパク質脱アセチル化酵素ファミリーの1つであるサーチュインの活性化因子及び基質として機能する。NAD+の補酵素活性、並びにその生合成及びバイオアベイラビリティの厳密な調節により、NAD+が老化プロセスに関与していることは明らかであり、代謝をモニタリングするのに重要な系となっている。
【0004】
[発明の概要]
本開示は、個体において細胞内ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を増加させる方法に使用するための、NARHとNRとの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物であって、方法が、個体の1つ以上の細胞においてNAD+の生合成を増加させるのに有効な量の、NARHとNRとの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物を前記対象に経口投与することを含む、組成物を提供する。
【0005】
NAD+の生合成の増加は、個体、例えば、ヒト(例えば、治療を受けているヒト)、ペット若しくはウマ(例えば、治療を受けているペット又はウマ)、又は畜牛若しくは家禽(例えば、農業で使用されている畜牛又は家禽)に対して、1つ以上の利点を提供することができる。上記1つ以上の利点は、ミトコンドリアエネルギーの増加、代謝疲労の治療又は予防、筋肉疲労の治療又は予防、1つ以上の細胞における代謝疲労に関連する生理学的状態の改善、運動能力の改善、又は寿命の改善のうちの少なくとも1つを含むことができる。好ましくは、NAD+の生合成は、個体の1つ以上の細胞、例えば、肝臓、腎臓、脳、及び骨格筋からなる群から選択される少なくとも1つの身体部分の一部である1つ以上の細胞において増加される。
【0006】
一実施形態では、組成物は、経腸投与される。
【0007】
一実施形態では、組成物は、食品製品、栄養補助食品、経口栄養補助食品(ONS)、医療用食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0008】
別の実施形態では、本開示は、個体におけるNAD+の生合成を増加させるのに有効な量で、NARHとNRとの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物の単位剤形を提供する。組成物は、食品製品、栄養補助食品、経口栄養補助食品(ONS)、医療用食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択できる。
【0009】
別の実施形態では、本開示は、(i)1つ以上の細胞におけるミトコンドリアエネルギーの増加、(ii)1つ以上の細胞における代謝疲労に関連する生理学的状態の改善、(iii)1つ以上の細胞における代謝疲労の治療又は予防、(iv)筋肉疲労の治療又は予防、(v)運動能力の改善、及び(vii)寿命の改善からなる群から選択される少なくとも1つの結果を達成する方法を提供する。好ましくは、1つ以上の細胞の少なくとも一部分は、肝臓、腎臓、脳、及び骨格筋からなる群から選択される少なくとも1つの身体部分の一部である。本方法は、NAD+生合成を増加させるのに有効な量でNaRHとNRとの組み合わせを含む組成物を、個体に経口投与することを含む。
【0010】
別の実施形態では、本開示は、ミトコンドリア関連疾患又はミトコンドリア機能の変化に関連する状態を治療又は予防する(例えば、発症率及び/又は重症度を低減する)必要がある個体又はリスクがある個体において、かかる状態を治療又は予防する方法を提供する。本方法は、NAD+生合成を増加させるのに有効な量でNARHとNRとの組み合わせを含む組成物を、個体に経口投与することを含む。
【0011】
ミトコンドリア関連疾患又は状態は、老化の悪影響、ストレス(例えば、酸化ストレス)、肥満、過体重、代謝速度の低下、メタボリックシンドローム、真性糖尿病、糖尿病合併症、高脂血症、神経変性疾患、認知障害、ストレス誘発性又はストレス関連性認知機能障害、気分障害、不安障害、加齢に伴う神経細胞死又は神経機能障害、早老症候群(早老症、コケイン症候群)、慢性腎臓病、腎不全、外傷、感染症、がん、難聴、黄斑変性、ミオパチー及びジストロフィー、ミトコンドリア遺伝病並びにこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0012】
別の実施形態において、本開示は、個体における防御免疫を促進する、及び/又は細菌感染症もしくはウイルス感染症を予防及び/又は治療する、及び/又は感染後の免疫介在性の病変を制限する方法であって、このような対処の必要がある、又はそれらのリスクがある個体に送達することを含み、NAD+生合成を増加させるのに有効な量の、NARHとNRとの組み合わせを含む組成物、又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物を前記個体に経口投与することを含む、方法を提供する。
【0013】
別の実施形態では、本開示は、ミトコンドリア関連疾患又はミトコンドリア機能の変化に関連する状態の治療又は予防(例えば、発症率及び/又は重症度の低減)を必要とする個体又はそのリスクがある個体における治療又は予防に有効な量の、NARHとNRとの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物の単位剤形を提供する組成物は、食品製品、栄養補助食品、経口栄養補助食品(ONS)、医療用食品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択できる。
【0014】
本開示によって提供される1つ以上の実施形態の利点は、酸化的代謝に関する効果を増強すること、及びDNA損傷を防ぐことである。
【0015】
本開示によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、年齢とともに減少するNAD+プールを補充することである。
【0016】
本開示によって提供される1つ以上の実施形態の更に別の利点は、老化に伴う代謝の減速を補うのを助けることである。
【0017】
本開示によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、脂肪酸代謝を高めるのを助けることである。
【0018】
本開示によって提供される1つ以上の実施形態の更に別の利点は、体が脂肪を代謝し、除脂肪体重を増加させるのを助けることである。
【0019】
本開示によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、心臓の健康の維持を助けることである。
【0020】
本開示によって提供される1つ以上の実施形態の更に別の利点は、血液中の健康なLDLコレステロールレベル及び脂肪酸レベルの維持に役立つことである。
【0021】
追加の特徴及び利点は、以降の発明の詳細な説明及び図面に記載され、これらにより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】NARHとNRとの組み合わせは、マウス肝細胞においてNAD+を相乗的に誘導する。 AML12細胞を、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)及びニコチンアミドリボシド(NR)の、単独で又は組み合わせにより2時間処理した。NARH及びNRは、0.5mMの濃度で使用した。処理後、細胞をトリプシン処理し、NAD+及びタンパク質含量測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。全ての結果を、平均+/- SD、n=3~4として表す。
【
図2】NARH及びNAは、NAD+誘導において相乗作用を示さない。 AML12細胞を、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)及びニコチン酸(NA)の、単独で又は組み合わせにより2時間処理した。NARH及びNAは、0.5mMの濃度で使用した。処理後、細胞をトリプシン処理し、NAD+及びタンパク質含量測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。全ての結果を、平均+/- SD、n=2として表す。
【
図3】NARH及びNAMは、NAD+誘導において相乗作用を示さない。 AML12細胞を、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)及びニコチンアミド(NAM)の、単独で又は組み合わせにより2時間処理した。NARH及びNAMは、それぞれ0.5mM及び5mMの濃度で使用した。処理後、細胞をトリプシン処理し、NAD+及びタンパク質含量測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。全ての結果を、平均+/- SD、n=2として表す。
【
図4】NARH及びNARは、NAD+誘導において相乗作用を示さない。 AML12細胞を、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)及びニコチン酸リボシド(NAR)の、単独で又は組み合わせにより2時間処理した。NARH及びNARは、0.5mMの濃度で使用した。処理後、細胞をトリプシン処理し、NAD+及びタンパク質含量測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。全ての結果を、平均+/- SD、n=2として表す。
【
図5】NARH及びNRHは、NAD+誘導において相乗作用を示さない。 AML12細胞を、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)及びジヒドロニコチンアミドリボシド(NRH)の、単独で又は組み合わせにより2時間処理した。NARH及びNRHは、それぞれ0.5mM及び0.01mMの濃度で使用した。処理後、細胞をトリプシン処理し、NAD+及びタンパク質含量測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。全ての結果を、平均+/- SD、n=4として表す。
【
図6】NR及びNAは、NAD+誘導において相乗作用を示さない。 AML12細胞を、ニコチンアミドリボシド(NR)及びニコチン酸(NA)の、単独で又は組み合わせにより2時間処理した。NR及びNAは、0.5mMの濃度で使用した。処理後、細胞をトリプシン処理し、NAD+及びタンパク質含量測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。全ての結果を、平均+/- SD、n=2として表す。
【
図7】NR及びNAMは、NAD+誘導において相乗作用を示さない。 AML12細胞を、ニコチンアミドリボシド(NR)及びニコチンアミド(NAM)の、単独で又は組み合わせにより2時間処理した。NR及びNAMは、それぞれ0.5mM及び5mMの濃度で使用した。処理後、細胞をトリプシン処理し、NAD+及びタンパク質含量測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。全ての結果を、平均+/- SD、n=2として表す。
【
図8】NR及びNARは、NAD+誘導において相乗作用を示さない。 AML12細胞を、ニコチンアミドリボシド(NR)及びニコチン酸リボシド(NAR)の、単独で又は組み合わせにより2時間処理した。NR及びNARは、0.5mMの濃度で使用した。処理後、細胞をトリプシン処理し、NAD+及びタンパク質含量測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。全ての結果を、平均+/- SD、n=2として表す。
【
図9】NA及びNAMは、NAD+誘導において相乗作用を示さない。 AML12細胞を、ニコチン酸(NA)及びニコチンアミド(NAM)の、単独で又は組み合わせにより2時間処理した。NA及びNAMは、それぞれ0.5mM及び5mMの濃度で使用した。処理後、細胞をトリプシン処理し、NAD+及びタンパク質含量測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。全ての結果を、平均+/- SD、n=2として表す。
【
図10】NA及びNARは、NAD+誘導において相乗作用を示さない。 AML12細胞を、ニコチン酸(NA)及びニコチン酸リボシド(NAR)の、単独で又は組み合わせにより2時間処理した。NA及びNARは、0.5mMの濃度で使用した。処理後、細胞をトリプシン処理し、NAD+及びタンパク質含量測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。全ての結果を、平均+/- SD、n=2として表す。
【
図11】NAM及びNARは、NAD+誘導において相乗作用を示さない。 AML12細胞を、ニコチンアミド(NAM)、ニコチン酸リボシド(NAR)の、単独で又は組み合わせにより2時間処理した。NAM及びNARは、それぞれ5mM及び0.5mMの濃度で使用した。処理後、細胞をトリプシン処理し、NAD+及びタンパク質含量測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。全ての結果を、平均+/- SD、n=2として表す。
【
図12】NAR及びNRHは、NAD+誘導において相乗作用を示さない。 AML12細胞を、ニコチン酸リボシド(NAR)、ジヒドロニコチンアミドリボシド(NRH)の、単独で又は組み合わせにより2時間処理した。NAR及びNRHは、それぞれ0.5mM及び0.01mMの濃度で使用した。処理後、細胞をトリプシン処理し、NAD+及びタンパク質含量測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。全ての結果を、平均+/- SD、n=4として表す。
【
図13】NARHとNRとの組合せは、ラット膵臓β細胞においてNAD+を相乗的に誘導する。 INS-1細胞を、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)及びニコチンアミドリボシド(NR)の、単独で又は組み合わせにより2時間処理した。NARH及びNRは、0.5mMの濃度で使用した。処理後、細胞をトリプシン処理し、NAD+及びタンパク質含量測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示に従い用いて定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。全ての結果を、平均+/- SD、n=2として表す。
【
図14】NARHとNRとの組み合わせは、マウス線維芽細胞においてNAD+を誘導するが、NARH又はNR単独では誘導しない。 MEF細胞を、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)及びニコチンアミドリボシド(NR)の、単独で又は組み合わせにより2時間処理した。NARH及びNRは、0.5mMの濃度で使用した。処理後、細胞をトリプシン処理し、NAD+及びタンパク質含量測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示に従い用いて定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。全ての結果を、平均+/- SD、n=2として表す。NARH 対 対照 P=0.7581、NR 対 対照 P=0.5337、NRH+NR 対 対照 P=0.0002。
【
図15】NARHとNRとの組み合わせは、マウスマクロファージにおいてNAD+を誘導するが、NARH又はNR単独では誘導しない。 RAW264.7細胞を、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)及びニコチンアミドリボシド(NR)の、単独で又は組み合わせにより2時間処理した。NARH及びNRは、0.5mMの濃度で使用した。処理後、細胞を掻き取り、NAD+及びタンパク質含量の測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。全ての結果を、平均+/- SD、n=2~4として表す。NARH 対 対照 P=0.8130、NR 対 対照 P=0.0788、NRH+NR 対 対照 P=0.0087。
【
図16】NR及びNARHは、肝臓NAD
+レベルに対して相乗効果を有する。 2時間の絶食後、マウス(群毎にn=5)に、生理食塩水(ビヒクルとして)又は500mg/kgのNR、NARHもしくはNR+NARHを腹腔内注射した。NR+NARHの組み合わせについては、一方の群において、両方の化合物を、両方の化合物を含む単一混合物を使用して注射し(NR+NARH Comb)、第2の群において、化合物を別々に、1つは腹膜の左側に、1つは右側に注射した(NR+NARH Sep)。1時間後、肝臓組織を急速凍結し、NAD
+レベルを測定した。全てのデータは、群毎にn=4~5匹のマウスの平均+/-SEMとして表す。*は、ビヒクル処理群と比較してp<0.05であることを示す。#は対単一化合物での処理と比較してp<0.05であることを示す。
【
図17】NR+NARHの組み合わせは、AML12肝細胞におけるNRHの細胞内含有量の増加をもたらす。 AML12細胞を、PBS(対照として)、NR(0.5mM)、NARH(0.5mM)又は両方のいずれかで処理した。次いで、2時間後、細胞を急速冷凍し、LC-MS法によって細胞内レベルを評価するために処理した(Giner et al., 2021; doi: 10.3390/ijms221910598を参照のこと)。全てのデータは、n=3回の実験の平均+/-SEMとして表す。
【
図18】NR及びNARHは、循環血中のNRHレベルの増加をもたらす。 2時間の絶食後、マウス(群毎にn=5)に、生理食塩水(ビヒクルとして)又は500mg/kgのNR、NARHもしくはNR+NARHを腹腔内注射した。NR+NARHの組み合わせについては、1つの群において、両方の化合物を、両方の化合物を含む単一混合物を使用して注射し(NR+NARH Comb)、第2の群において、化合物を別々に、1つは腹膜の左側に、1つは右側に注射した(NR+NARH Sep)。1時間後、血液を採取し、NRHレベルをLC-MSによって測定した(Giner et al., 2021; doi: 10.3390/ijms221910598を参照のこと)。全てのデータは、n=3回の実験の平均+/-SEMとして表す。
【
図19】NR及びNARHは、アデノシンキナーゼ活性を特徴とするNAD
+合成にNRH経路を必要とする。 AML12細胞を、DMSO(ビヒクルとして)又はアデノシンキナーゼ阻害剤5-IT(1μM;)で1時間処理した後、PBS(対照として)、NR(0.5mM)、NARH(0.5mM)のいずれか又は両方で処理した。2時間後に酸抽出物を得てNAD+レベルを評価した。全てのデータは、n=3回の実験の平均+/-SEMとして表す。*は、それぞれのビヒクル処理群と比較してp<0.05であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
以下、いくつかの定義を示す。しかしながら定義が以下の「実施形態」の項にある場合もあり、上記の見出し「定義」は、「実施形態」の項におけるそのような開示が定義ではないことを意味するものではない。
【0024】
本明細書に記載する全ての百分率は、別途記載のない限り、組成物の総重量によるものである。本明細書で使用するとき、「約」、「およそ」、及び「実質的に」は、数値のある範囲内、例えば、参照数字の-10%から+10%の範囲内、好ましくは参照数字の-5%から+5%の範囲内、より好ましくは、参照数字の-1%から+1%の範囲内、最も好ましくは参照数字の-0.1%から+0.1%の範囲内の数を指すものと理解される。
【0025】
本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数又は分数を含むと理解されるべきである。更に、これらの数値範囲は、この範囲内の任意の数又は数の部分集合を対象とする請求項をサポートすると解釈されたい。例えば、1~10という開示は、1~8、3~7、1~9、3.6~4.6、3.5~9.9などの範囲をサポートするものと解釈されたい。
【0026】
本開示及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」には、別段の指示がない限り、複数の参照物も含まれる。したがって、例えば、「1つの構成成分(a component)」又は「その構成成分(the component)」についての言及は、2つ以上の構成成分を含む。
【0027】
用語「含む/備える(comprise)」、「含む/備える(comprises)」、及び「含んでいる/備えている(comprising)」は、排他的なものではなく、他を包含し得るものとして解釈されるべきである。同様にして、用語「含む(include)」、「含む(including)」及び「又は(or)」は全て、このような解釈が文脈から明確に妨げられない限りは他を包含し得るものであると解釈されるべきである。しかしながら、本明細書に開示されている組成物は、本明細書において具体的に開示されていない要素を含まない場合がある。したがって、「含む/備える(comprising)」という用語を用いた実施形態の開示は、特定されている構成要素「を本質的に含む/から本質的に構成される(consisting essentially of)」実施形態、及び特定されている構成要素「からなる(consisting of)」実施形態の開示を含む。本明細書で開示される任意の実施形態は、本明細書で開示される任意の他の実施形態と組み合わせることができる。
【0028】
「X及び/又はY」という文脈で使用される用語「及び/又は」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びY」と解釈されるべきである。同様に、「X又はYのうちの少なくとも1つ」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びY」と解釈されるべきである。例えば「代謝疲労又は筋肉疲労のうちの少なくとも1つ」は、「代謝疲労」若しくは「筋肉疲労」、又は「代謝疲労及び筋肉疲労の両方」と解釈されるべきである。
【0029】
本明細書において使用する場合、用語「例」及び「例えば~など(such as)」は、その後に用語の列挙が続くときは特に、単に例示的かつ説明的なものにすぎず、排他的又は包括的なものとみなされるべきではない。本明細書で使用するとき、別の状態「に関連する/伴う(associated with)」又は「と関連付けられる(linked with)」状態は、これらの状態が同時に起こることを意味し、好ましくは、これらの状態が同じ基礎症状によって引き起こされることを意味し、最も好ましくは、特定されている状態のうちの一方が他方の特定されている状態によって引き起こされることを意味する。
【0030】
用語「食品」、「食品製品」、及び「食品組成物」は、ヒトなどの個体による摂取が意図され、かかる個体に対して少なくとも1種の栄養素を提供する、製品又は組成物を意味する。食品製品は、典型的には、タンパク質、脂質、炭水化物のうちの少なくとも1つを含み、任意に1種以上のビタミン及びミネラルを含む。本明細書に記載されている多くの実施形態を含む本開示の組成物は、本明細書に開示されている要素、並びに本明細書に記載されている又は記載されていなくとも食生活において有用である任意の追加の又は任意選択の原材料、構成成分又は要素を含んでよい、それらから構成されてよい、又は本質的に含んでもよい。
【0031】
本明細書で使用するとき、用語「単離された」は、単離されていない場合に例えば自然界において見られるようにその化合物と一緒に見られ得る、1種以上の他の化合物又は成分から、分けられていることを意味する。好ましくは、例えば「単離された」は、特定されている化合物が、自然界で典型的に一緒に見られる細胞材料の少なくとも一部分から分離されていることを意味する。一実施形態では、単離された化合物は、他のいかなる化合物も含まない。
【0032】
「予防」は、状態又は障害のリスク、発症率及び/又は重症度の低減を含む。「処置/治療(treatment)」、「処置する/治療する(treat)」及び「緩和すること(to alleviate)」という用語は、(標的とする病態又は障害の発症を予防する及び/又は遅らせる)予防用の(prophylactic)処置又は予防的な(preventive)処置と、診断された病態又は疾患を治癒させる、遅らせる、その症状を減弱する、かつ/又はその進行を止める治療的措置を含む、治癒的、治療的又は疾患修飾処置との両方;並びに疾患にかかるリスクを有する、又は疾患にかかったと推測される患者の処置に加えて、病気である、又は疾患若しくは医学的状態に罹患していると診断された患者の処置を含む。この用語は、必ずしも完治するまで対象が治療されることを意味するものではない。「処置/治療」及び「処置/治療する」という用語はまた、疾患に罹患してはいないが不健康な状態を招きやすい可能性のある個体の健康を維持及び/又は促進することも指す。「処置/治療」、「処置/治療する」及び「緩和すること」という用語はまた、1つ以上の主たる予防的又は治療的措置の相乗作用、又は別の増強作用を含むことも意図している。「処置/治療」、「処置/治療する」及び「緩和すること」という用語は更に、疾患若しくは状態の、食事による管理(dietary management)、又は疾患若しくは状態の予防(prophylaxis)若しくは予防(prevention)のための、食事による管理を含むことも意図している。治療は患者に関連するものであってもよく、又は医師に関連するものであってもよい。
【0033】
本明細書で使用するとき、「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び動物対象のための投与量単位として好適な物理的に小分けされた単位を指し、各単位は、製薬上許容可能な希釈剤、担体、又はビヒクルとともに、所望の効果をもたらすのに十分な量の、所定量の本明細書に開示される組成物を含有する。単位剤形の仕様は、使用される具体的な化合物、達成しようとする効果、及びホスト体内の各化合物に関連する薬力学によって決まる。
【0034】
本明細書で使用するとき、用語「組み合わせ」、又は用語「組み合わせて」、「~と組み合わせて使用される」若しくは「組み合わせた調製物」は、2種以上の作用剤/剤を同時に、順次に、又は別々に組み合わせ投与することを指す。
【0035】
本明細書で使用される用語「同時」は、作用剤/剤が同時に投与されること、すなわち、同じ時に投与されることを意味する。
【0036】
本明細書で使用される用語「順次」とは、作用剤/剤がもう一方の後に投与されることを意味する。
【0037】
本明細書で使用される用語「別々に」は、作用剤/剤が、互いに独立して投与されるが、但し、作用剤/剤を組み合わせた効果、好ましくは相乗的な効果を示すことを可能にする時間間隔内で投与されることを意味する。したがって、「別々に」投与するとは、1つの作用剤/剤を、例えば、もう一方の後の1分以内、5分以内、又は10分以内に投与することを容認し得る。
【0038】
本明細書で使用するとき、「有効量」とは、欠乏を予防する、個体の疾患若しくは医学的状態を治療する、又はより一般的には、症状を軽減させる、疾患の進行を管理する、又は個体に対して栄養学的、生理学的若しくは医学的利益をもたらす、量である。相対用語「改善する」、「向上させる」、「増強する」、「増進する」などは、本明細書に開示される組成物、すなわち、NaRHとNRとの組み合わせを含む組成物の、NaRHとNRとの組み合わせを含まないこと以外は同一である組成物と比較した効果を指す。本明細書で使用するとき、「促進すること」とは、本明細書に開示される組成物の投与前のレベルと比較して増強又は誘導することを指す。
【0039】
「対象」又は「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトである。用語「高齢」は、ヒトに関連して、少なくとも60歳、好ましくは63歳超、より好ましくは65歳超、最も好ましくは70歳超の年齢を意味する。ヒトの文脈での「中高年者(older adult)」という用語は、45歳以上、好ましくは50歳より上、より好ましくは55歳より上の出生後年齢を意味し、高齢者を含む。
【0040】
「運動能力(Mobility)」は、ある場所から別の場所まで独力で安全に移動する能力である。
【0041】
「代謝疲労(metabolic fatigue)」は、1つ以上の細胞内の、基質の不足による、及び/又は1つ以上の細胞内の、ミトコンドリア機能を妨害する代謝産物の蓄積による、1つ以上の細胞(例えば、肝臓、腎臓、脳、骨格筋のうちの1種以上)におけるミトコンドリア機能の低下を意味する。
【0042】
「過体重」は、ヒトに関しては、体格指数(BMI)が25~30kg/m2であることとして定義される。「肥満」は、ヒトに関しては、BMIが少なくとも30kg/m2、例えば30~39.9kg/m2であることとして定義される。「減量/体重減少」は、総体重の減少である。減量は、例えば、健康、フィットネス、又は外観のうちの1つ以上を改善するための総体重の減少を指し得る。
【0043】
「糖尿病」には、この疾患のI型及びII型の両方が包含される。糖尿病の危険因子の非限定的な例としては、ウエストラインが男性で40インチ超又は女性で35インチ超であること、血圧が130/85mmHg以上であること、トリグリセリドが150mg/dL超であること、空腹時血糖が100mg/dL超であること、又は高密度リポタンパク質が男性で40mg/dL未満若しくは女性で50mg/dL未満であることが挙げられる。
【0044】
本明細書で使用するとき、「メタボリックシンドローム」という用語は、併せて発生する場合に心血管疾患及び糖尿病を発症するリスクを増加させる内科的異常の組み合わせを指す。メタボリックシンドロームは、米国において5人に1人が罹患しており、有病率は年齢とともに増加する。米国における有病率は人口の25%であるとする推定を示す研究もある。国際糖尿病連合(International Diabetes Foundation)の世界共通定義(consensus worldwide definition、2006)に従って、メタボリックシンドロームは、中心性肥満に、以下のうちのいずれか2つを併せ持っているものである:
トリグリセリドの上昇:150mg/dL(1.7mmol/L)超、又はこの脂質異常を対象とする治療;
HDLコレステロールの低下:男性で40mg/dL(1.03mmol/L)未満、女性で50mg/dL(1.29mmol/L)未満、又はこの脂質異常を対象とする治療;
血圧の上昇:収縮期BPが130超若しくは拡張期BPが85mmHg超、又は以前に診断された高血圧の治療;及び
空腹時血漿グルコースの上昇:(FPG)が100mg/dL(5.6mmol/L)超、又は以前に2型糖尿病であると診断されている。
【0045】
本明細書で使用するとき、「神経変性疾患」又は「神経変性障害」は、中枢神経系において機能性ニューロンが徐々に減少する任意の状態を指す。一実施形態では、神経変性疾患は、加齢に伴う細胞死に関連する。神経変性疾患の非限定的な例としては、軽度認知障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS及びルーゲーリック病としても知られる)、末梢神経障害、AIDS認知症複合症、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、アルパース病、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病、ウシ海綿状脳症(BSE)、カナバン病、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、レビー小体型認知症、致死性家族性不眠症、前頭側頭葉変性症、ケネディー病、クラッベ病、ライム病、マシャド・ジョセフ病、多発性硬化症、多系統萎縮症、神経有棘赤血球症、ニーマン・ピック病、ピック病、原発性側索硬化症、進行性核上性麻痺、レフサム病、サンドホフ病、びまん性髄鞘破壊性硬化症、脊髄小脳失調症、亜急性連合性脊髄変性症、脊髄癆、テイ・サックス病、中毒性脳症、伝染性海綿状脳症、及びハリネズミふらつき症候群が挙げられる。本開示は、神経変性疾患の特定の実施形態に限定されず、神経変性疾患は、当業者に既知の任意の神経学的に関連する状態であり得る。
【0046】
本明細書で使用するとき、「認知機能」とは、象徴的な活動、例えば、知覚、記憶、注意、音声理解、音声生成、読解、イメージの作成、学習、及び推論、好ましくは少なくとも記憶を伴う、任意の精神的プロセスを指す。
【0047】
認知機能を測定するための方法は周知であり、例えば、認知機能の任意の特徴に関する個別テスト又はバッテリーテストを含むことができる。そのような試験の1つには、Margallo-LanaらによるPrudhoe認知機能検査(Prudhoe Cognitive Function Test)がある(2003)J.Intellect.Disability Res.47:488-492。別のそのような試験には、ミニメンタルステート検査(Mini Mental State Exam、MMSE)があり、この検査は、時間及び場所に対する見当識、記銘、注意及び計算、再生、言語使用及び理解、復唱、並びに複雑な命令を評価するように設計されている。Folsteinら(1975)J.Psych.Res.12:189-198。このような試験を使用して、認知機能を客観的に評価することができ、その結果、例えば、本明細書に開示されている方法による処置に応じた、認知機能の変化を測定及び比較することができる。
【0048】
本明細書で使用するとき、「認知障害」は、認知機能を低下させる任意の状態を指す。認知障害の非限定的な例としては、せん妄、認知症、学習障害、注意欠陥障害(ADD)、及び注意欠陥多動障害(ADHD)が挙げられる。
【0049】
本明細書で使用するとき、NARHは、ニコチン酸リボシド(NAR)の還元形態であり、NRは、ニコチンアミドリボシドに関する。
【0050】
実施形態
本開示は、個体において細胞内ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を増加させる方法に使用するための、NARHとNRとの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物を提供し、該方法は、個体の1つ以上の細胞においてNAD+の生合成を増加させるのに有効な量の、NARHとNRとの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物を対象に経口投与することを含む。
【0051】
NAD+の生合成の増加は、個体、例えば、ヒト(例えば、薬物療法を受けているヒト)、ペット若しくはウマ(例えば、治療を受けているペット又はウマ)、又は畜牛若しくは家禽(例えば、農業で使用されている畜牛又は家禽)に対して、1つ以上の利点を提供することができる。上記1つ以上の利点は、ミトコンドリアエネルギーの増加、代謝疲労の治療又は予防、筋肉疲労の治療又は予防、1つ以上の細胞における代謝疲労に関連する生理学的状態の改善、運動能力の改善、又は寿命の改善のうちの少なくとも1つを含むことができる。好ましくは、NAD+の生合成は、個体の1つ以上の細胞、例えば、肝臓、腎臓、脳、及び骨格筋からなる群から選択される少なくとも1つの身体部分の一部である1つ以上の細胞において増加される。一部の実施形態では、組成物は、中高年者又は高齢者に投与される。
【0052】
げっ歯類などの非ヒト哺乳動物に関するいくつかの実施形態は、非ヒト哺乳動物の体重kg当たり、1.0mg~1.0gのNARHとNRとの組み合わせ、好ましくは10mg~500mgのNARHとNRとの組み合わせ、より好ましくは25mg~400mgのNARHとNRとの組み合わせ、最も好ましくは50mg~300mgのNARHとNRとの組み合わせを提供する量の組成物を投与することを含む。
【0053】
ヒトに関するいくつかの実施形態は、ヒトの体重kg当たり、1.0mg~10.0gのNARHとNRとの組み合わせ、好ましくは10mg~5.0gのNARHとNRとの組み合わせ、より好ましくは50mg~2.0gのNARHとNRとの組み合わせ、最も好ましくは100mg~1.0gのNARHとNRとの組み合わせを提供する量の組成物を投与することを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、NARH及び/又はNRの少なくとも一部は、天然の植物原料から単離される。追加的に又は代替的に、NARH及び/又はNRの少なくとも一部分は、化学合成することができる。
【0055】
本明細書で使用するとき、「NARH及びNRの組み合わせから本質的になる組成物」は、NARH及びNRを含有し、かつNARH及びNR以外のNAD+産生に影響を及ぼす任意の追加の化合物を含まないか、又は実質的に含まないか、又は全く含まない。特定の非限定的な実施形態では、組成物は、NARHとNRとの組み合わせと、1種の添加物、又は1種以上の添加物と、を含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、NARH及びNRの組み合わせから本質的になる組成物は、任意選択で、他のNAD+前駆体を実質的に含まないか、又は完全に含まない。
【0057】
本明細書で使用するとき、「実質的に含まない」は、組成物中に存在する任意の他の化合物が、NARHとNRとの組み合わせの量に対して1.0重量%以下、好ましくはNARHとNRとの組み合わせの量に対して0.1重量%以下、より好ましくはNARHとNRとの組み合わせの量に対して0.01重量%以下、最も好ましくはNARHとNRとの組み合わせの量に対して0.001重量%以下であることを意味する。
【0058】
本開示の別の態様は、細胞内アデニンジヌクレオチド(NAD+)の増加を必要とする個体においてそれを行うための方法である。本方法は、細胞及び組織の生存並びに細胞全体及び組織全体の健康を改善するために、細胞及び組織における細胞内NAD+レベルの増加を促進することができる。例えば、細胞内NAD+レベルの増加は、ミトコンドリアエネルギーの増加、代謝疲労の治療又は予防、筋肉疲労の治療又は予防、代謝疲労に関連する生理学的状態の改善、運動能力の改善、又は寿命の改善のうちの少なくとも1つを提供することができる。好ましくは、NAD+の生合成は、固体の1つ以上の細胞、例えば、肝臓、腎臓、脳、及び骨格筋からなる群から選択される少なくとも1つの身体部分の一部である1つ以上の細胞において増加される。
【0059】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)は、補酵素であり、かつ細胞のエネルギーを生成する酸化還元反応における必須補因子であると考えられる。NADHのNAD+への酸化は、ヒドリドの移動を促進し、結果としてミトコンドリア酸化的リン酸化によるATP生成を促進するため、NAD+は、エネルギー代謝において重要な役割を果たす。また、複数の酵素の分解基質としても機能する(Canto,C.et al.2015;Imai,S.et al.2000;Chambon,P.et al.1963;Lee,H.C.et al.1991)。
【0060】
哺乳類生物は、異なる4つの原材料からNAD+を合成することができる。第1に、NAD+は、10段階のデノボ経路を介してトリプトファンから得ることができる。第2に、ニコチン酸(NA)も、3段階Preiss-Handler経路を介してNAD+に変換することができ、これは上記デノボ経路と合流する。第3に、ニコチンアミド(NAM)からの細胞内NAD+サルベージ経路は、細胞がNAD+を構築する主要経路を構成し、NAMが最初にNAM-ホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)の触媒活性を介してNAM-モノヌクレオチド(NMN)に変換され、次にNMNアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)酵素を介してNAD+に変換される2段階反応によって発生する。最後に、ニコチンアミドリボシド(NR)は、NRキナーゼ(NRK)によるNRのNMNへの初期リン酸化を特徴とする、NAD+への第4の経路を構成する(Breganowski,P.et al.;2004)。
【0061】
トリプトファン、ニコチン酸(NA)、ニコチンアミド(NAM)、ニコチン酸リボシド(NaR)、及びニコチンアミドリボシド(NR)という5つの分子がそのまま細胞外NAD+前駆体として働くことが以前から知られている。本発明は、NAD+前駆体の任意の他の組合せと比較した場合に、NAD+の誘導において予想外の相乗効果を示す、NARHとNRとの組合せに関する。本発明のこの利点は、その治療有効性を裏付ける。
【0062】
本方法は、NARHとNRの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとからなる組成物の有効量を個体に投与することを包含する。
【0063】
本開示の更に別の態様は、ミトコンドリア関連疾患又はミトコンドリア機能の変化に関連する状態を治療又は予防(例えば、発症率及び/又は重症度の低減)する必要がある個体又はリスクがある個体において、そのような治療又は予防を行う方法である。本方法は、NAD+生合成を増加させるのに有効な量でNaRHとNRとの組み合わせを含む組成物を、個体に経口投与することを含む。
【0064】
ミトコンドリア関連疾患又は状態は、老化の悪影響、ストレス(例えば、酸化ストレス)、肥満、過体重、代謝速度の低下、メタボリックシンドローム、真性糖尿病、糖尿病合併症、高脂血症、神経変性疾患、認知障害、ストレス誘発性又はストレス関連性認知機能障害、気分障害、不安障害、加齢に伴う神経細胞死又は神経機能障害、早老症候群(早老症、コケイン症候群)、慢性腎臓病、腎不全、外傷、感染症、がん、難聴、黄斑変性、ミオパチー及びジストロフィー、ミトコンドリア遺伝病並びにこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0065】
例えば、老化は、酸化ストレス、グルタチオンレベルの低下、及びレドックス比NAD+/NADHの低下のうちの1つと関連付けられる状態である。本明細書に開示される組成物は、これらの老化の悪影響を治療又は予防することができる。例えば、トリゴネリンはNAD+を増加させ、本発明者らは、増加したNAD+が、レドックスリサイクルを通してグルタチオンの増進を導き得ると考えている。
【0066】
他の例として、うつ病は低グルタチオンと関連付けられ、不安は酸化ストレスと関連付けられる。本明細書に開示される組成物は、これらの状態を治療又は予防することができる。
【0067】
これらの方法は、NARHとNRとの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物を投与することから本質的になり得る。本明細書で使用するとき、「NARHとNRとの組み合わせから本質的になる組成物を投与する工程から本質的になる方法」とは、NAD+産生に影響を及ぼすNARHとNRとの組み合わせ以外の任意の追加の化合物がNARHとNRとの組み合わせの投与から1時間以内に投与されないこと、好ましくは、NARHとNRとの組み合わせの投与から2時間以内に投与さないこと、より好ましくはNARHとNRとの組み合わせの投与から3時間以内に投与されないこと、最も好ましくはNARHとNRとの組み合わせの投与と同日に投与されないこと、を意味する。任意選択的に本方法から除外され得る化合物の非限定的な例としては、組成物自体からの除外に関して上述したものが挙げられる。
【0068】
本開示のさらに別の態様は、防御免疫を促進する、及び/又は細菌感染症もしくはウイルス感染症を予防及び/又は処置する、及び/又は感染後の免疫介在性の病変を制限する必要がある又はリスクがある個体において、これらの処置を行う方法であって、NAD+の生合成を増加させるのに有効な量のNARHとNRとの組み合わせを含む組成物、又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物を個体に経口投与することを含む、方法を提供する。
【0069】
本発明の文脈内で、「防御免疫の増進」という用語は、以下:感染症の予防、抗病原体活性、病原体の増殖の制限、病原体クリアランスの促進、病原体の拡散の制限、感染症からの回復、二次感染のリスクの低減、及び/又は感染後の免疫介在性の病変の制限、のうちの1つ以上を意味する。防御免疫の増進は、病原体に対する3通りのレベルの免疫防御によって定義することができる:(i)肺及び胃腸管の粘膜バリア機能、(ii)自然免疫応答、特に抗菌活性を有するマクロファージ、及び(iii)肺における抗ウイルス免疫を増加させるCD8 T細胞活性化を含む適応免疫応答。
【0070】
本発明の文脈において、「感染症」という用語は、細菌感染症及びウイルス感染症の両方を含む、胃腸感染症、呼吸器感染症(上気道感染症及び/又は下気道感染症)、尿路感染症を含む。
【0071】
本発明の文脈において、胃腸感染症という用語は、サルモネラ菌、赤痢菌、C.ディフィシル(C.difficile)及び/又はシトロバクター(Citrobacter)を含むがこれらに限定されない腸管系病原体によって引き起こされる感染症を意味する。
【0072】
本発明の文脈において、「ウイルス感染症」という用語は、ウイルスによって引き起こされる感染症、例えばインフルエンザ感染症、ロタウイルス感染症などを意味する。ウイルス感染症に対する防御免疫には、自然免疫及び適応免疫の両方が寄与する。
【0073】
本発明の文脈において、気道感染症(RTI)という用語は、気道に関わる感染症を指す。このタイプの感染症は、通常、上気道感染症(URI又はURTI)又は下気道感染症(LRI又はLRTI)として更に分類される。肺炎などの下気道感染症は、感冒などの上気道感染よりもはるかに重篤である傾向がある。上気道感染症(URTI)は、鼻、副鼻腔、咽頭、又は喉頭を含む上気道に関与する急性感染によって引き起こされる疾患である。この疾患には一般に、鼻閉塞、咽頭痛、扁桃炎、咽頭炎、喉頭炎、副鼻腔炎、中耳炎、及び感冒が含まれる。ほとんどの感染症は本質的にウイルス性であり、他の例では、原因は細菌性である。下気道は、気管(気管)、気管支、細気管支及び肺を含む。LRIは気管支炎及び肺炎である。
【0074】
本発明の文脈内で、肺疾患及び状態は以下を含む。
i)典型的には(i)気道及び/又は(ii)肺胞に影響を及ぼす閉塞性肺疾患及び状態。
ii)気管、気管支、及び分岐して肺全体にわたって次第により小さい管になる細気管支に影響を及ぼす、肺気道閉塞疾患及び状態。肺気道に影響を及ぼす状態及び疾患としては、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease、COPD)、慢性気管支炎、肺気腫、急性気管支炎及び嚢胞性線維症が挙げられる。
iii)肺胞閉塞疾患及び状態。
【0075】
肺胞は、肺組織の大部分を構成する気嚢である。肺胞に影響を及ぼす病気及び状態には、例えば、肺炎、結核などが含まれる。
【0076】
本発明の化合物、組成物、及び方法は、前述の細菌感染症及び/又はウイルス感染症の予防及び/又は治療、特に臓器組織の機能の維持又は向上に有益であり得ることが理解され得る。
【0077】
インフルエンザは上気道及び下気道の両方に影響を及ぼすが、高度に悪性のH5N1などのより危険な株は、肺の深部の受容体に結合する傾向がある。
【0078】
本開示の別の態様は、NARHとNRとの組み合わせを含む組成物又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物の単位剤形であり、当該組成物は、少なくとも、老化の悪影響、糖尿病(I型又はII型)、糖尿病合併症(例えば、糖尿病性脂質異常症及び/又は糖尿病性微小血管性合併症、例えば腎症、網膜症、及び/又は神経障害など)、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、脂質異常症、過体重、肥満、過体重、コレステロールレベル上昇、トリグリセリドレベル上昇、脂肪酸レベル上昇、脂肪性肝疾患(例えば、炎症を伴う又は伴わない非アルコール性脂肪性肝疾患)、心血管疾患(例えば、心不全及び/又は心収縮機能障害)、神経変性疾患(例えば、老化による)、うつ病、不安、意欲低減/低下、認知機能の低下、スタチン誘発性ミオパチーなどのミオパチー、非アルコール性脂肪性肝炎、耳鳴、めまい、アルコールによる二日酔い、聴覚障害、骨粗鬆症、高血圧、アテローム性動脈硬化症/冠動脈疾患、ストレス(例えば、熱傷又は外傷による)後の心筋障害、外傷性脳損傷(脳震盪を含む)、嚢胞性線維症、炎症、がん、化学療法の副作用、HIV感染症、脳卒中、片頭痛、及び脳虚血からなる群から選択される状態の治療又は予防に有効な量のNARH及びNRを含有する。
【0079】
例えば、老化は、酸化ストレス、グルタチオンレベルの低下、及びレドックス比NAD+/NADHの低下のうちの1つと関連付けられる状態である。本明細書に開示される組成物は、これらの老化の悪影響を治療又は予防することができる。例えば、NARHとNRとの組み合わせはNAD+を増加させ、本発明者らは、増加したNAD+が、レドックスリサイクルを通してグルタチオンの増強を導き得ると考えている。
【0080】
他の例として、うつ病は低グルタチオンと関連付けられ、不安は酸化ストレスと関連付けられる。本明細書に開示される組成物は、これらの状態を治療又は予防することができる。
【0081】
本開示の別の態様は、上記の状態の少なくとも1つを治療する方法であって、NARHとNRとの組み合わせを含む組成物又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物の治療有効量を、当該状態を有する個体に投与することを含む、方法である。本開示の別の態様は、上記の状態の少なくとも1つを予防する方法であって、NARHとNRとの組み合わせを含む組成物又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物の予防有効量を、少なくとも1つの状態のリスクがある個体に投与することを含む、方法である。
【0082】
NARHとNRとの組み合わせを含むか又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物は、グルタチオンに富むことが知られている眼水晶体におけるレベル低下を含む、GSHレベルの低下から直接的又は間接的に生じる眼の状態を、治療又は予防することができる。このような状態の非限定的な例としては、白内障及び/又は緑内障、老視(拡大鏡を必要とする、加齢に伴う近見視力の低下)、及び老人性難聴(補聴器を必要とする、加齢に伴う聴力低下)が挙げられる。
【0083】
本開示の更に別の態様は、健康な中高年者において代謝低下の開始(off-set)を遅らせる、酸化ストレスを低減する、免疫機能を維持する、及び/又は認知機能を維持する方法である。本方法は、NARHとNRとの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物の有効量を健康な中高年者に投与することを含む。
【0084】
本開示のさらに別の態様は、体重管理に有効な量のNARHとNRとの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物の単位剤形である。成人(例えば、出生後少なくとも18年)についての「体重管理」は、その個体が、組成物を1週間摂取した後、好ましくは組成物を1カ月間摂取した後、より好ましくは組成物を1年間摂取した後に、組成物の摂取を開始したときの体格指数(BMI)と比較してほぼ同じBMIを有することを意味する。若年個体についての「体重管理」は、BMIが、組成物を1週間摂取した後、好ましくは組成物を1カ月間摂取した後、より好ましくは組成物を1年間摂取した後に、相当する年齢の個体に対するパーセンタイルが、組成物の摂取を開始したときのBMIパーセンタイルと比較してほぼ同じであることを意味する。
【0085】
別の態様では、本開示は、認知機能を改善する方法を提供する。本方法は、NARHとNRとの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとの組み合わせからなる組成物の有効量を個体に投与することを含む。認知機能は、知覚、記憶、注意、言語理解、言語表出、読解力、イメージ想起、学習、推理、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。一実施形態では、個体は認知障害を有さず、あるいは、個体は認知障害を有する。個体は高齢者であってもよく、及び/又は加齢に伴う認知機能の低下を有していてもよい。
【0086】
本開示の更に別の態様は、将来の肥満、過体重及び/若しくは糖尿病の発症を予防するための胎児期の代謝プログラミング、妊娠糖尿病中の母体及び胎児の健康、運動能力及び身体機能、生活の質、寿命、記憶、認知、外傷後の回復及び生存(例えば、手術後、敗血症後、事故又は身体的暴行による鈍的外傷又は穿通性外傷後)、又は外傷及び手術からの回復のうちの1つ以上を改善する方法である。本方法は、NARHとNRとの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとの組み合わせからなる有効量の組成物を、そのリスクがあるか、又はそれを必要とする個体に投与することを含む。
【0087】
本開示の更に別の態様は、(i)酸化ストレス、酸化ストレスに関連する状態(例えば、老化及び皮膚老化などのその影響)、グルタチオンレベルの低下、グルタチオンレベルの低下に関連する状態からなる群から選択される少なくとも1つの身体状態を治療又は予防する方法、又は(ii)将来の肥満、過体重、前糖尿病、及び/若しくは糖尿病の発症を予防するための胎児期の代謝プログラミング、妊娠糖尿病中の母体及び胎児の健康、運動能力及び身体機能、生活の質、寿命、記憶、認知、外傷後の回復及び生存、又は外傷及び手術からの回復のうちの1つ以上を改善する方法である。本方法は、NARHとNRとの組み合わせを含むか、又はNARHとNRとの組み合わせからなる有効量の組成物を、それらのリスクがあるか、又はそれを必要とする個体に投与することを含む。例えば、増加したNAD+は、レドックスリサイクルを介してグルタチオンの増強をもたらし得る。
【0088】
生物学及び心理学において、用語「ストレス」は、実際のものであるか又は想像上のものであるかにかかわらず、生理学的、感情的、又は身体的脅威に、ヒト又は他の動物が適切に応答できずに生じる結果を指す。ストレスの特徴は、精神生物学的には、酸化ストレスの発現として、すなわち、活性酸素種の産生及び発現と、生体システムが活性中間体を速やかに解毒する能力又はもたらされた損傷を速やかに修復する能力との釣り合いがとれなくなっている状態として現れる場合がある。組織の正常なレドックス状態が乱れると、タンパク質、脂質、及びDNAなどといった細胞のあらゆる成分を損傷させる、過酸化物及びフリーラジカルの産生により、毒性作用が引き起こされることがある。いくつかの活性酸化種は、「レドックスシグナル」と呼ばれる現象によりメッセンジャーとしても作用することがある。
【0089】
ヒトでは、酸化ストレスは多くの疾患に関与する。例としては、アテローム性動脈硬化症、パーキンソン病、心不全、心筋梗塞、アルツハイマー病、統合失調症、双極性障害、脆弱X症候群、及び慢性疲労症候群が挙げられる。
【0090】
ヒトにおける通常の条件下での活性酸素の1つの出所は、酸化的リン酸化中の、ミトコンドリアからの活性化酸素の漏出である。スーパーオキシド(O2-)を産生し得る他の酵素には、キサンチンオキシダーゼ、NADPHオキシダーゼ、及びシトクロムP450がある。別の強力な酸化剤である過酸化水素は、いくつかのオキシダーゼを含む多様な酵素によって産生される。活性酸素種は、レドックスシグナルと呼ばれる細胞のシグナル伝達プロセスにおいて重要な役割を果たす。したがって、適切な細胞恒常性を維持するために、活性酸素の産生と消費との間でバランスをとる必要がある。
【0091】
酸化ストレスは、紫外線照射及び高酸素症後の組織障害の一因となる。また、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及びハンチントン病を始めとする神経変性疾患において重要であると推測される。
【0092】
血管内皮における低密度リポタンパク質(LDL)の酸化はプラーク形成の前兆であることから、酸化ストレスは特定の心血管疾患にも関連していると考えられている。酸化ストレスはまた、低酸素状態後の酸素の再潅流による障害に起因する虚血のカスケードでも働く。このカスケードには、脳卒中及び心臓発作の両方を含む。酸化ストレスはまた、慢性疲労症候群にも関わっている。
【0093】
更に、老化に関するフリーラジカル理論では、老化の生物学的プロセスは高齢者における酸化ストレスの増大により生じることが示唆されている。酸化ストレスにより生じ得る損傷に細胞が抵抗する能力は、生体における、酸化体のフリーラジカルの生成と、当該細胞が利用することのできる数々の防御的な抗酸化物質とのバランスによって決まる。複数の抗酸化防御系が存在し、その中でも、グルタチオン(GSH)は、総合的な抗酸化防御に関係し最も豊富な細胞内成分である。GSHは、トリペプチドであり、前駆体のアミノ酸であるグルタメート、システイン、及びグリシンから、グルタミン酸システインリガーゼ(GCL、γ-グルタミルシステインシンテターゼ、EC6.3.2.2としても知られる)及びγ-L-グルタミル-L-システイン:グリシンリガーゼ(グルタチオンシンテターゼ、EC6.3.2.3としても知られる)によって触媒される二段階で合成され、GSHは細胞内でデノボ合成される。
【0094】
本明細書に開示される組成物及び方法のそれぞれにおいて、組成物は、好ましくは、食品添加物、食品原材料、機能性食品、ダイエタリーサプリメント、医療用食品、ニュートラシューティカルズ、経口栄養補助食品(ONS)、又は栄養補助食品を含む食品製品又は飲料製品である。
【0095】
組成物は、1週間に少なくとも1日、好ましくは1週間に少なくとも2日、より好ましくは1週間に少なくとも3日若しくは4日(例えば、1日おき)、最も好ましくは1週間に少なくとも5日、1週間に6日、又は1週間に7日、投与してよい。投与期間は、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも1カ月間、より好ましくは少なくとも2カ月間、最も好ましくは少なくとも3カ月間、例えば、少なくとも4カ月間であり得る。いくつかの実施形態では、投与は、少なくとも1日1回であり、例えば、対象は、1日当たり1回以上の投与、一実施形態では1日当たり複数回の投与を受け得る。組み合わせは、1日1回単回用量で投与することも、1日に複数の分割用量で投与することもできる。いくつかの実施形態では、投与は、個体の残りの寿命にわたって継続される。他の実施形態では、投与は、医学的状態について検出可能な症状がなくなるまで行われる。具体的な実施形態では、投与は、少なくとも1つの症状について検出可能な改善が起こるまで行われ、更なる場合においては、寛解を維持するために継続される。
【0096】
本明細書に開示される組成物は、経腸的に、例えば経口的に、又は非経口的に対象に投与されてもよい。非経口投与の非限定的な例としては、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、関節内、滑液嚢内、眼内、髄腔内、局所、及び吸入が挙げられる。したがって、組成物の形態の非限定的な例としては、自然食品、加工食品、天然果汁、濃縮物及び抽出物、注射液、マイクロカプセル、ナノカプセル、リポソーム、硬膏、吸入形態、点鼻スプレー、点鼻剤、点眼剤、舌下錠、及び持続放出性製剤が挙げられる。
【0097】
本明細書に開示される組成物には、治療目的での投与のための様々な製剤のいずれかを使用することができる。より詳細には、医薬組成物は、適切な製薬上許容可能な担体又は希釈剤を含むことができ、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、マイクロスフェア、及びエアゾール剤などの固体、半固体、液体又は気体形態の製剤として処方され得る。したがって、組成物の投与は、経口、バッカル、直腸内、非経口、腹腔内、皮内、経皮、及び気管内での投与を含む様々な方法で達成することができる。活性成分は、投与後に全身性のものであってもよく、又は局所投与の使用、壁内投与の使用、若しくは埋め込み部位において有効用量を保持するように作用する埋入物(インプラント)の使用によって局在化させてもよい。
【0098】
医薬の投与剤形では、化合物は、製薬上許容可能な塩として投与されてもよい。これらはまた、別の製薬上活性な化合物と適切に関連させて使用してもよい。以下の方法及び添加物は、単なる例示であり、決して限定するものではない。
【0099】
経口製剤では、化合物は、単独で使用することができ、又は、錠剤、散剤、顆粒剤若しくはカプセル剤を製造するための適切な添加剤との組み合わせ、例えば、乳糖、マンニトール、トウモロコシデンプン、若しくはジャガイモデンプンなどの従来の添加剤との組み合わせ;結晶セルロース、セルロース機能性誘導体、アラビアゴム、トウモロコシデンプン又はゼラチン等の結合剤との組み合わせ;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤との組み合わせ;タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤との組み合わせ;並びに所望であれば、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤及び香味剤との組み合わせで、使用できる。
【0100】
化合物は、例えば、植物油若しくは他の類似の油、合成脂肪族酸グリセリド、高級脂肪族酸のエステル又はプロピレングリコールなどの水性又は非水性溶剤中に、また所望であれば、可溶化剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、及び保存剤などの従来の添加剤と一緒に、溶解、懸濁又は乳化することによって、注射用の製剤として処方することができる。
【0101】
化合物は、吸入により投与されるエアゾール製剤において利用することができる。例えば、化合物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容可能な噴射剤中に配合することができる。
【0102】
更に、化合物は、乳化基剤又は水溶性基剤などの様々な基剤と混合することによって坐剤として製造することができる。化合物は、坐剤によって直腸投与することができる。坐剤は、ココアバター、カーボワックス、及びポリエチレングリコールなどの、体温では融解するが室温では凝固するビヒクルを含むことができる。
【0103】
シロップ剤、エリキシル剤、及び懸濁剤などの経口又は直腸内投与用の単位剤形が提供されてもよく、各投与量単位、例えば、小さじ1杯、大さじ1杯、錠剤又は坐剤は、規定量の組成物を含有する。同様に、注射又は静脈内投与用の単位剤形は、滅菌水、生理食塩水又は別の製薬上許容可能な担体による溶液としての組成物中に化合物を含んでもよく、各投与量単位、例えばmL又はLは、化合物のうちの1つ以上を含有する組成物の規定量を含有する。
【0104】
非ヒト動物を対象とする組成物としては、動物の必要栄養量を補給する食品組成物、動物用トリート(例えば、ビスケット)、及び/又はダイエタリーサプリメントが挙げられる。組成物は、ドライ組成物(例えば、キブル)、セミモイスト組成物、ウェット組成物、又はそれらの任意の混合物であってよい。一実施形態では、組成物は、グレイビー、飲料水、飲料、ヨーグルト、粉末、顆粒、ペースト、懸濁液、噛むもの(chew)、一口で食べるもの(morsel)、トリート、スナック、ペレット、丸薬、カプセル、錠剤、又は他の適切な送達形態のものなどのダイエタリーサプリメントである。ダイエタリーサプリメントは、高濃度のUFA及びNORCと、ビタミンB類及び抗酸化物質とを含み得る。これにより、かかるダイエタリーサプリメントを動物に少量投与することが可能になり、あるいは動物に投与する前に希釈することができる。ダイエタリーサプリメントは、動物に投与する前に、水又は他の希釈剤と混合する必要がある場合があり、又は混合することができる。
【0105】
「ペットフード」又は「ペットトリート組成物」は、約15%~約50%の粗タンパク質を含む。粗タンパク質材料は、大豆ミール、ダイズタンパク質濃縮物、トウモロコシグルテンミール、小麦グルテン、綿実、及びピーナッツミールなどの植物性タンパク質、又はカゼイン、アルブミン、及び肉タンパク質などの動物性タンパク質を含み得る。本明細書で有用な肉タンパク質の例としては、豚肉、子羊、ウマ、家禽、魚、及びこれらの混合物が挙げられる。組成物は、約5%~約40%の脂肪を更に含むことができる。組成物は、炭水化物源を更に含み得る。組成物は、約15%~約60%の炭水化物を含み得る。そのような炭水化物の例としては、米、トウモロコシ、ミロ、ソルガム、アルファルファ、大麦、大豆、キャノーラ、オート麦、小麦、及びこれらの混合物などの穀物又は穀草類が挙げられる。組成物はまた、乾燥乳清及び他の乳製品副産物などの他の材料を任意に含み得る。
【0106】
一部の実施形態では、ペットフード組成物の灰分は、1%未満~約15%であり、一態様では、約5%~約10%の範囲である。
【0107】
水分含有量は、ペットフード組成物の性質に応じて異なり得る。一実施形態では、組成物は、完成品(complete)でありかつ栄養的にバランスのとれたペットフードであり得る。この実施形態では、ペットフードは、「ウェットフード」、「ドライフード」、又は中間水分含有量の食品であり得る。「ウェットフード」は、典型的には缶又はホイル袋で販売されるペットフードを表し、典型的には約70%~約90%の範囲の水分含有量を有する。「ドライフード」は、ウェットフードと同様の組成のものであるが、典型的には約5%~約15%又は20%の範囲の限定された水分含有量を含むペットフードを表し、そのため、例えば、小さいビスケット状のキブルとして提供される。一実施形態では、組成物の水分含有量は約5%~約20%である。ドライフード製品は、比較的常温保存可能であり、微生物又は真菌による劣化又は汚染に対して耐性を有するようなさまざまな水分含有量のさまざまな食品を含む。コンパニオンアニマル向けのペットフード又はスナックフードなどの、押し出し成形された食品製品であるドライフード製品組成物も含まれる。
【0108】
参照文献
Canto,C.,K.J.Menzies,and J.Auwerx,2015.NAD(+)Metabolism and the Control of Energy Homeostasis:A Balancing Act between Mitochondria and the Nucleus.Cell Metab.22(1):31-53.
Chambon,P.,J.D.Weill,and P.Mandel,1963.Nicotinamide mononucleotide activation of new DNA-dependent polyadenylic acid synthesizing nuclear enzyme.Biochem Biophys Res Commun.1139-43.
Imai,S.,C.M.Armstrong,M.Kaeberlein,and L.Guarente,2000.Transcriptional silencing and longevity protein Sir2 is an NAD-dependent histone deacetylase.Nature.403(6771):795-800.
Lee,H.C.and R.Aarhus,1991.ADP-ribosyl cyclase:an enzyme that cyclizes NAD+ into a calcium-mobilizing metabolite.Cell Regul.2(3):203-9.
【実施例】
【0109】
以下の非限定的な例は、細胞栄養のためのNARHとNRとの組み合わせを含む組成物の概念を展開及び支持する科学的データを提示する。
【0110】
実施例1.マウス肝細胞での比較例
AML12細胞を以下のとおり処理した:
i)ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)及びニコチンアミドリボシド(NR)を、単独で又は組み合わせて、2時間。NARH及びNRは、0.5mMの濃度で使用した。
ii)ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)及びニコチン酸(NA)を、単独で又は組み合わせて、2時間。NARH及びNAは、0.5mMの濃度で使用した。
iii)ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)及びニコチンアミド(NAM)を、単独で又は組み合わせて、2時間。NARH及びNAMは、それぞれ0.5mM及び5mMの濃度で使用した。
iv)ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)及びニコチン酸リボシド(NAR)を、単独で又は組み合わせて2時間。NARH及びNARは、0.5mMの濃度で使用した。
v)ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)及びジヒドロニコチンアミドリボシド(NRH)を、単独で又は組み合わせて、2時間。NARH及びNRHは、それぞれ0.5mM及び0.01mMの濃度で使用した。
vi)ニコチンアミドリボシド(NR)及びニコチン酸(NA)を、単独で又は組み合わせて、2時間。NR及びNAは、0.5mMの濃度で使用した。
vii)ニコチンアミドリボシド(NR)及びニコチンアミド(NAM)を、単独で又は組み合わせて、2時間。NR及びNAMは、それぞれ0.5mM及び5mMの濃度で使用した。
viii)ニコチンアミドリボシド(NR)及びニコチン酸リボシド(NAR)を、単独で又は組み合わせて、2時間。NR及びNARは、0.5mMの濃度で使用した。
ix)ニコチン酸(NA)及びニコチンアミド(NAM)を、単独で又は組み合わせて、2時間。NA及びNAMは、0.5mM及び5mMの濃度で使用した。
x)ニコチン酸(NA)及びニコチン酸リボシド(NAR)を、単独で又は組み合わせて、2時間。NA及びNARは、0.5mMの濃度で使用した。
xi)ニコチンアミド(NAM)、ニコチン酸リボシド(NAR)を、単独で又は組み合わせて、2時間。NAM及びNARは、5mM及び0.5mMの濃度で使用した。
xii)ニコチン酸リボシド(NAR)、ジヒドロニコチンアミドリボシド(NRH)を、単独で又は組み合わせて、2時間。NAR及びNRHは、それぞれ0.5mM及び0.01mMの濃度で使用した。
【0111】
処理後、細胞をトリプシン処理し、NAD+及びタンパク質含量の測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。
【0112】
【0113】
図1は、NARHとNRとの組合せはマウス肝細胞においてNAD+を相乗的に誘導するが、他のNAD+前駆体の組合せ、例えば、NARH及びNA(
図2)、NARH及びNAM(
図3)、NARH及びNAR(
図4)、NARH及びNRH(
図5)、NR及びNA(
図6)、NR及びNAM(
図7)、NR及びNAR(
図8)、NA及びNAM(
図9)、NA及びNAR(
図10)、NAM及びNAR(
図11)又はNAR及びNRH(
図12)はNAD+誘導において相乗作用を示さないことを示す。
【0114】
実施例2:NARHとNRとの組み合わせは、ラット膵臓β細胞においてNAD+を相乗的に誘導する。
INS-1細胞を、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)及びニコチンアミドリボシド(NR)の、単独で又は組み合わせにより2時間処理した。NARH及びNRは、0.5mMの濃度で使用した。処理後、細胞をトリプシン処理し、NAD+及びタンパク質含量の測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。
【0115】
結果を
図13に表す。
図13は、NARHとNRとの組み合わせが、ラット膵臓β細胞においてNAD+を相乗的に誘導することを示す。
【0116】
実施例3:NARHとNRとの組み合わせは、マウス線維芽細胞においてNAD+を誘導するが、NARH又はNR単独では誘導しない。
MEF細胞を、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)及びニコチンアミドリボシド(NR)の、単独で又は組み合わせにより2時間処理した。NARH及びNRは、0.5mMの濃度で使用した。処理後、細胞をトリプシン処理し、NAD+及びタンパク質含量測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。
【0117】
結果を
図14に表す。
図14は、NARHとNRとの組み合わせが、マウス線維芽細胞においてNAD+を誘導するが、NARH又はNR単独では誘導しないことを示す。
【0118】
実施例4.NARHとNRとの組み合わせは、マウスマクロファージにおいてNAD+を誘導するが、NARH又はNR単独では誘導しない。
RAW264.7細胞を、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)及びニコチンアミドリボシド(NR)の、単独で又は組み合わせにより2時間処理した。NARH及びNRは、0.5mMの濃度で使用した。処理後、細胞を掻き取り、NAD+及びタンパク質含量の測定のために回収した。NAD+を抽出し、EnzyChrom NAD/NADH Assay Kit(BioAssay Systems;#E2ND-100)を製造者の指示通りに使用して定量した。タンパク質を、BCA Protein Assay Kit(Pierce(商標);#23225)で定量した。
【0119】
結果を
図15に表す。
図15は、NARHとNRとの組み合わせが、マウスマクロファージにおいてNAD+を誘導するが、NARH又はNR単独では誘導しないことを示す。
【0120】
実施例5.NR及びNARHは、肝臓NAD+レベルに対して相乗効果を有する。
2時間の絶食後、マウス(群毎にn=5)に、生理食塩水(ビヒクルとして)又は500mg/kgのNR、NARHもしくはNR+NARHを腹腔内注射した。NR+NARHの組み合わせについては、一方の群において、両方の化合物を、両方の化合物を含む単一混合物を使用して注射し(NR+NARH Comb)、第2の群において、化合物を別々に、1つは腹膜の左側に、1つは右側に注射した(NR+NARH Sep)。1時間後、肝臓組織を急速凍結し、NAD+レベルを測定した。全てのデータは、群毎にn=4~5匹のマウスの平均+/-SEMとして表す。*は、ビヒクル処理群と比較してp<0.05であることを示す。#は、単一化合物での処理と比較してp<0.05であることを示す。
【0121】
結果を
図16に表す。
図16は、NARHとNRとの組み合わせが、肝臓NAD+レベルに対して相乗効果を有することを示す。
【0122】
実施例6.NR+NARHの組み合わせは、AML12肝細胞におけるNRHの細胞内含有量の増加をもたらす。
AML12細胞を、PBS(対照として)、NR(0.5mM)、NARH(0.5mM)又は両方のいずれかで処理した。次いで、2時間後、細胞を急速冷凍し、LC-MS法によって細胞内レベルを評価するために処理した(Giner et al.,2021;doi:10.3390/ijms221910598を参照のこと)。全てのデータは、n=3回の実験の平均+/-SEMとして表す。
【0123】
結果を
図17に表す。
図17は、NR+NARHの組み合わせが、AML12肝細胞におけるNRHの細胞内含有量の増加をもたらすことを示す。
【0124】
実施例7.NR及びNARHは、循環血中のNRHレベルの増加をもたらす。
2時間の絶食後、マウス(群毎にn=5)に、生理食塩水(ビヒクルとして)又は500mg/kgのNR、NARHもしくはNR+NARHを腹腔内注射した。NR+NARHの組み合わせについては、1つの群において、両方の化合物を、両方の化合物を含む単一混合物を使用して注射し(NR+NARH Comb)、第2の群において、化合物を別々に、1つは腹膜の左側に、1つは右側に注射した(NR+NARH Sep)。1時間後、血液を採取し、NRHレベルをLC-MSによって測定した(Giner et al.,2021;doi:10.3390/ijms221910598を参照のこと)。全てのデータは、n=3回の実験の平均+/-SEMとして表す。
【0125】
結果を
図18に表す。
図18は、NR及びNARHが、循環血中のNRHレベルの増加をもたらすことを示す。
【0126】
実施例8.NR及びNARHは、アデノシンキナーゼ活性を特徴とするNAD+合成にNRH経路を必要とする。
AML12細胞を、DMSO(ビヒクルとして)又はアデノシンキナーゼ阻害剤5-IT(1μM;)で1時間処理した後、PBS(対照として)、NR(0.5mM)、NARH(0.5mM)のいずれか又は両方で処理した。2時間後に酸抽出物を得てNAD+レベルを評価した。全てのデータは、n=3回の実験の平均+/-SEMとして表す。*は、それぞれのビヒクル処理群と比較してp<0.05であることを示す。
【0127】
結果を
図19に表す。
図19は、NR及びNARHが、アデノシンキナーゼ活性によって評価されるNAD+合成にNRH経路を必要とすることを示す。
【0128】
本明細書で述べる現在の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかとなる点を理解されたい。そのような変更及び修正は、本主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、かつ意図される利点を損なわずに、なされ得る。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
【国際調査報告】