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特表2024-524827熱交換装置の流体案内体のリークを検知する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】熱交換装置の流体案内体のリークを検知する方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/20 20060101AFI20240702BHJP
   G01M 3/22 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01M3/20 B
G01M3/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571584
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2022065804
(87)【国際公開番号】W WO2022258799
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】102021115111.2
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500469855
【氏名又は名称】インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Inficon GmbH
【住所又は居所原語表記】Bonner Strasse 498, D-50968 Koeln, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100230248
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 圭二
(72)【発明者】
【氏名】ソリン・ジーン-マイケル
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA01
2G067AA21
2G067CC04
2G067DD27
(57)【要約】
【課題】熱交換装置の流体案内体のリークを検知する方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、a)3Dセンサ34を用いて、各点が熱交換装置12の外表面の表面点46aを成す、三次元仮想空間48内の熱交換装置12の点群44を取得する過程と、b)所定の外径の管に相当する構造50を、点群44内で探索する過程と、c)得られた構造50から、前記管の径又は方向が変化する対象部分52を探索する過程と、d)対象部分52が見つかると、ガスリークディテクタ24の吸込みプローブ22を点群44内の対象部分52に接近させるための接近経路58を求める過程と、e)吸込みプローブ22を、接近経路58に沿って自動的に、熱交換装置12のうちの、点群44内の対象部分52に相当する被検部分20へと物理的に接近させる過程と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換装置(12)の流体案内体(16,18)のリークを検知する方法であって、
a)3Dセンサ(34)を用いて、各点が前記熱交換装置(12)の外表面の表面点(46a)を成す、三次元仮想空間(48)内の前記熱交換装置(12)の点群(44)を取得する過程と、
b)所定の外径の管に相当する構造(50)を、前記点群(44)内で探索する過程と、
c)得られた前記構造(50)から、前記管の径又は方向が変化する対象部分(52)を探索する過程と、
d)対象部分(52)が見つかると、ガスリークディテクタ(24)の吸込みプローブ(22)を前記点群(44)内の該対象部分(52)に接近させるための接近経路(58)を求める過程と、
e)前記吸込みプローブ(22)を、前記接近経路(58)に沿って自動的に、前記熱交換装置(12)のうちの、前記点群(44)内の前記対象部分(52)に相当する被検部分(20)へと物理的に接近させる過程と、
を備える、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、当該方法が、前記ガスリークディテクタ(24)を具備したリーク検知システム(56)によって自動的に実行される、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記三次元仮想空間(48)内の前記点群(44)が、撮像システム(36)の少なくとも2つの光学カメラ(38,40)から得られた画像データから生成される、方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法において、前記3Dセンサ(34)が、少なくとも1つの光学カメラ及び少なくとも1つの照明装置(42)を具備した撮像システム(36)である、方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法において、過程a)の後に、前記点群(44)が、前記熱交換装置(12)のうちの、該点群(44)内での探索対象である前記構造のデジタル参照データと比較される、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記デジタル参照データが、前記熱交換装置(12)について事前に得られたCADデータである、方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の方法において、前記点群(44)内の少なくとも1つの探索部分が、前記参照データとの比較に基づいて選択される、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記探索部分が、過程b)で得られた、前記点群(44)内の前記熱交換装置(12)の位置の位置データを用いて選択される、方法。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか一項に記載の方法において、前記参照データが、同じ熱交換装置(12)から又は同じ種類の対応する熱交換装置(12)から前記3Dセンサ(34)によって生成されたものである、方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法において、過程c)が、過程b)で見つかった、前記点群(44)内の前記管に相当する点(46a)を辿って分析することによって実行される、方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法において、過程d)で、前記管又は被検部分(20)のガスリーク検知のための、前記吸込みプローブ(22)の理想的な位置が算出される、方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法において、過程d)は、求められた接近経路(58)が前記吸込みプローブ(22)と前記熱交換装置(12)の構造との衝突に繋がるか否かを判定する副過程、および求められた接近経路(58)で衝突が予想される場合にさらなる接近経路(58)を求める副過程を含む、方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法において、過程d)は、前記吸込みプローブ(22)と前記熱交換装置(12)の構造との衝突が予想されない接近経路(58)が求められるまで繰り返される、方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法において、過程d)は、前記吸込みプローブ(22)及び/又は過程e)を実行するロボット(32)について事前に得られて記憶された例えばCADデータ等のデジタルデータを用いる、方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法において、少なくとも過程e)が、ロボットによって実行される、方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法において、過程a)~d)のうちの少なくとも1つが、リークディテクタ及びロボットを具備したリーク検知システム(56)のソフトウェアアルゴリズムによって実行される、方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の方法において、過程d)が、前記吸込みプローブ(22)を保持したロボット(32)が辿ることになる軌道(46c)を生成する副過程を含む、方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の方法において、少なくとも過程b)~d)が複数の対象領域について繰り返された後、該対象部分に相当するそれぞれの被検部分に前記吸込みプローブ(22)を後から接近させるために、過程e)が各回数実行される、方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の方法において、当該方法が、過程e)の後に、さらに、
f)前記吸込みプローブ(22)で前記被検領域の吸込みを行って前記管上の該被検部分(20)内のリーク検知を実施し、前記流体案内構造(16,18)のリークの可能性を特定する過程、
を実行する、方法。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の方法において、前記吸込みプローブ(22)が、先端側に延びる2つの吸込みアームからなる略U字状のスニッファー先端を有する、方法。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の方法において、過程d)で接近経路(58)が前記吸込みプローブ(22)と前記熱交換装置(12)の構造との衝突に繋がると判定された場合に、前記吸込みプローブ(22)または前記吸込みプローブ(22)の吸込み先端(25)が、自動的に再構成もしくは変形されるか、または別の吸込みプローブ(22)もしくは先端と自動的に交換される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験体のリークを検知するリークディテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
リークディテクタは、例えばDE 10 2005 022 157 A1(特許文献1)(Inficon社)に記載されている。このリークディテクタは、プローブ先端が試験体のうちの所定の被検領域に対して配置させられるプローブを備える。該試験体には、例えばヘリウム等のテストガスが充填される。漏れ出たテストガスが上記プローブ先端から本体部に吸引され、例えば質量分析計として設計され得るテストガス検出器へと供給される。
【0003】
リークディテクタの使用時には、例えば空調システムや、冷凍機の冷却群等の試験体にテストガスが充填され、該試験体からテストガスが漏れ出ているか否かが、吸込みプローブを使って検知され得る。工業製品の品質検査では、試験体のうち漏洩の可能性がある特定の被検部分にプローブ先端が適用される。その際には、被検部分へと手動でプローブが動かされる。この過程では、プローブ先端が試験体の全ての対象被検部分に動かされ終えたか否かを確認することが難しい。作業者は、一部の被検部分を過って見落としたり、自身の主観的な判断で重要でないと考えた別の被検部分を飛ばしたりする可能性がある。
【0004】
U.S. Pat. No. 4,945,305(特許文献2)(Ascension社)には、パルス状の直流磁場を生成する送信機と対象物に設けられた受信機とからなる位置判定システムが記載されている。この方法は、瞬時位置の判定、所望の位置との比較、およびフィードバックに極めて適している。送信機と受信機との間の見通し線にある非磁性体は、外乱の原因にならない。検査対象の構造体が動かないことから、圧縮機ブロックや冷凍機械などの大規模な磁性金属による残留外乱についても、校正すれば無視可能になる。この方法は、本開示の実現において極めて有益であった。
【0005】
WO 2009/016160 A1(特許文献3)には、ホースでプローブと接続された本体部を備えるリークディテクタが開示されている。プローブ先端が、試験体の被検区域又は被検部分に対して配置される。試験体からテストガスが漏洩していれば、本体部のガス検出器でこれが検出される。位置判定システムが設けられており、これは送信機、プローブ内部に設けられた受信機、および供給評価部からなる。それにより、各被検部分にプローブ先端が位置しているかどうかが監視・確認される。
【0006】
オートメーションの分野では、3Dセンサで物体のデジタルデータを収集することによって、各点が該物体の外表面上の表面点を成す、三次元仮想空間内の点群を得ることが知られている。オートメーション産業において車などの製品の自動製造に使用されるようなロボットは、収集されたデジタルデータを使ったソフトウェアアルゴリズムによって制御される。これは、一般的に、物体全体の外周や外表面を検出して該物体の配置、把持、移動又は再配置を行ったり例えば車両製造産業等で塗料吹付ロボットアームによる該物体の該表面の塗装を行ったりするのに利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005022157号明細書
【特許文献2】米国特許第4945305号明細書
【特許文献3】国際公開第2009/016160号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
冷凍機、空調ユニット、ヒートポンプなどの熱交換装置に対する吸込みリーク検知は、熱交換装置の品質検査の一部となっている。作業者は、熱交換器のうちの液体案内管などの対象被検部分を目視で特定し、プローブを各被検部分に次々と手動で動かしていく必要がある。熱交換装置に対するこのような様式の吸込みリーク検知は、時間を要するだけでなく、被検部分を見落としたり、吸込みプローブが被検部分に十分に接近していなかったりなどといった、人的な要因による過誤を生じ易い。
【0009】
本発明の目的の一つは、熱交換装置の流体案内体のリークをより確実に且つ迅速に検知することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の方法は、独立請求項1の構成で定まる。
【0011】
つまり、
a)3Dセンサを用いて、各点が熱交換装置の外表面の表面点を成す、三次元仮想空間内の点群が、前記熱交換装置から取得され、
b)前記点群が取得された後、所定の外径の管に相当する構造が前記点群から探索され(なお、前記管は、前記熱交換装置のうちの、リークを探し出す必要のある流体案内体に相当し得る)、
c)前記管の径もしくは方向が変化するか又は管が終端する少なくとも1つの対象部分が、b)で得られた前記構造から、例えば、溶接点もしくは半田付け点または溶接箇所もしくは半田付け箇所に対応する、さらなる管との継手または接合部に対応する、該管が溶接、半田付けなどで別の管に接合される接合部分に対応する、あるいは、管の終端部等に対応する径の増加等によって探索されて(なお、該管の方向の変化は、該管の主な長手方向軸(中心軸)の方向が変わる該管の屈曲であり得て、また、該管の方向の変化は、該管の外壁の屈曲であり得て、これらの対象部分は、探索対象である流体案内体における低強度位置を成すことから、熱交換装置の自動製造過程の品質検査時の吸込みリーク検知で極めて重要な部分となる)、
d)対象部分が見つかると、本発明の方法により、ガスリーク検知システムのガスリークディテクタの吸込みプローブを前記点群内の該対象部分に接近させるための接近経路が求められて(なお、これは、一般的に、実際の吸込みプローブを前記熱交換装置に実際に接近させる前に前記仮想空間内の前記点群内で接近経路を複数算出することによって実施され得る)、
e)接近経路が求められると、前記吸込みプローブが、前記接近経路に沿って手動で、前記熱交換装置の被検部分へと物理的に接近させられる(なお、実際の前記熱交換装置上の該被検部分は、前記点群内で得られた前記対象部分に相当する)。
【0012】
換言すれば、本発明は、3Dセンサを用いて、熱交換装置の少なくとも一部についての仮想モデルまたはシミュレーションを取得し、該仮想モデル又はシミュレーションから、該仮想モデルのうちの各対象部分に相当する漏洩候補区域(実際の前記熱交換装置上の被検部分)を探し出す。本発明では、このような被検部分に前記吸込みプローブを実際に物理的に接近させる前に、実際の前記熱交換装置ではなく前記仮想モデルを用いて接近経路候補を求める。これにより、前記吸込みプローブは、前記仮想モデルの各対象部分への接近経路が判明してからでしか被検部分へと物理的に接近させられない。
【0013】
これにより、本発明では、熱交換装置の流体案内体の自動的な吸込みリーク検知がより確実に且つ迅速に行われることになる。前記流体案内体は、小さいものであると、熱交換装置の外周の内側又は奥側に隠れてしまう場合がある。具体的に言えば、一般的に、熱交換装置は、種類が異なると、被検対象の流体案内構造の場所も変化する。したがって、本発明は、熱交換装置の種類が変わっても、確実且つ迅速な探索を自動的に行うことができる。
【0014】
好適には、方法は、前記ガスリークディテクタを具備したリーク検知システム、好ましくは、前記ガスリークディテクタ及びロボットを具備したリーク検知システムによって自動的に実行される。
【0015】
好適には、前記三次元仮想空間内の前記点群は、光学カメラから得られた画像データ、好ましくは、撮像システムの少なくとも2つの光学カメラから得られた画像データから生成される。前記3Dセンサは、少なくとも1つの光学カメラ及び少なくとも1つの照明装置(例えば、LED、レーザ源等)を具備した撮像システムであり得る。
【0016】
過程a)の後に、前記点群は、前記熱交換装置のうちの、該点群内での探索対象である前記構造のデジタル参照データと比較され得る。これは、例えば圧縮機等としての前記熱交換装置の例えばフレームといった構成要素などである前記構造の識別及び/又は位置特定を行うのに用いられ得る。好ましくは、前記デジタル参照データは、前記熱交換装置について事前に得られたCADデータである。前記デジタル参照データは、本発明のリーク検知システムのメモリ内に記憶され得る。
【0017】
一実施形態において、前記点群内の少なくとも1つの探索部分は、該点群と前記デジタル参照データとの比較に基づいて選択され得るか又は取得され得る。前記探索部分は、過程b)で得られ得る、前記点群内の前記熱交換装置の位置の位置データを用いて取得され得る。例えば、過程b)で所定の外径の管に相当する前記構造が得られると、該構造の位置が取得・記憶され得る。この位置データで前記探索部分を選択し、得られた前記構造又は管についての径の変化の有無を探索することにより、リーク検知が実施されることになる前記対象部分が得られ得る。
【0018】
前記参照データは、同じ熱交換装置から又は同じ種類の対応する装置から前記リーク検知システムの前記3Dセンサによって生成されたものであり得る。
【0019】
過程c)は、過程b)で見つかった、前記点群内の前記管に相当する点を辿って分析することによって実行され得る。
【0020】
過程d)では、前記管又は被検部分のガスリーク検知のための、前記吸込みプローブの理想的な位置が算出され得る。
【0021】
過程d)は、求められた接近経路が前記吸込みプローブと前記熱交換装置の構造との衝突に繋がるか否かを判定する副過程、および求められた接近経路で衝突が予想される場合にさらなる接近経路を求める副過程を含み得る。
【0022】
過程d)は、前記吸込みプローブと前記熱交換装置の構造との衝突が予想されない接近経路が求められるまで繰り返され得る。これに代えて又はこれに加えて、過程d)は、前記吸込みプローブ及び/又は過程e)を実行するロボットについて事前に得られて記憶された例えばCADデータ等のデジタルデータを用い得る。具体的には、少なくとも過程e)が、前記リーク検知システムの一部であり得るロボットによって実行され得る。
【0023】
過程a)~d)のうちの少なくとも1つが、リークディテクタを具備したリーク検知システム、好ましくは、リークディテクタ及び前述のロボットを具備したリーク検知システムのソフトウェアアルゴリズムによって実行され得る。
【0024】
過程d)が、実際のリーク検知を実施する際に前記吸込みプローブを保持したロボットが辿ることになる軌道を、前記仮想空間内の前記点群内で又は前記点群によって生成する副過程を含み得る。
【0025】
少なくとも過程b)~d)が複数の対象領域について繰り返され得た後、該対象部分に相当するそれぞれの被検部分に前記吸込みプローブを後から接近させるために、過程e)が各回数実行され得る。
【0026】
本発明の前記方法は、過程e)の後に、さらに、
f)前記吸込みプローブで前記被検領域の吸込みを行って前記管上の該被検部分内のリーク検知を実施し、前記流体案内構造のリークの可能性を特定する過程、
を実行し得る。
【0027】
前記吸込みプローブは、先端側に延びる2つの吸込みアームからなり該吸込みアームの少なくとも一方が流入開口部を含む略U字状のスニッファー先端を有し得る。このようなU字状のスニッファー先端は、2つのスニッファー先端アームが被検対象の前記管の両側に位置するようにして前記被検部分に接近させられる。
【0028】
過程d)で接近経路が前記吸込みプローブと前記熱交換装置の構造との衝突に繋がると判定された場合に、前記吸込みプローブまたは前記吸込みプローブの吸込み先端は、自動的に再構成もしくは変形され得るか、または別の吸込みプローブもしくは吸込み先端と自動的に交換され得る。
【0029】
本発明の方法は、少なくとも1つの対象部分の位置についての情報、および/または、少なくとも1つの(さらなる)管の径もしくは方向が変化する箇所についての情報、および/または、対象部分内で探索を行う方向についての情報、および/または、過程b)で探索される前記所定の外径についての情報が与えられることで、別の種類の熱交換装置に対処し得る。
【0030】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】リーク検知システムおよび熱交換装置の概略図である。
図2図1の熱交換装置から取得された、仮想空間内の点群の概略図である。
図3】別の熱交換装置の細部を示す概略図である。
図4図3の熱交換装置から取得された、仮想空間内の点群の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1に、冷凍機の形態の熱交換装置12を示す。本開示で用いる「熱交換装置」という表現は、冷凍機、空調システム、ヒートポンプなどの熱交換器からなるシステムや装置に関する表現である。前記熱交換装置は、下部後側14に、冷凍機の製造過程で該冷凍機の後側に溶接される管の形態の複数の流体案内体16,18を具備している。完全自動の品質管理の一部として、特定の被検部分20を、該被検部分20でのリーク検知実施のために特定する必要がある。被検部分20は、前記熱交換装置のうちの、管同士が互いに取付、溶接もしくは半田付けされているか、管が終端しているか、管が別の管と接合されているか、または管同士が互いに合わさっているかもしくは交わっている部分のことであると考えられたい。図1に示す実施形態では、第1の流体案内体16が垂直方向に配置されており、第2の流体案内体18が一方の端部で第1の流体案内体16と接合されている。管16,18が接合されている部分を被検部分20と見なし、これを図1に破線円で示す。
【0033】
図3及び図4に、異なる径の2つの管16,18が共通の長手方向軸17に沿って互いに接合されているという、より一般的な一例を示す。
【0034】
本発明の目的は、吸込みリークディテクタ24の吸込みプローブ22を、該吸込みプローブ22の吸込み先端25が被検部分20内の任意の配管16,18のリーク箇所から漏洩するガスを吸い込むのに十分近くに位置するように、該被検部分20へと自動的に動かすことである。一般的な様式どおり、吸込みプローブ22は、接続ホース26でガスリークティテクタ24に接続されている。
【0035】
吸込みプローブ22は、ロボット32のロボットアーム30の先端部28に取り付けられている。
【0036】
2つの光学カメラ38,40及びLEDランプの形態の照明装置42を具備した撮像システム36の形態の3Dセンサ34が、熱交換装置12の下部後側14からデジタル画像データを収集する。一般に既知の様式で、照明装置42が熱交換装置12、特には、熱交換装置12の下部後側14を照明する。カメラ38,40が反射光を撮像し、撮像システム36がデジタル画像データを生成し、該デジタル画像データから三次元仮想空間48内の点46の群44が取得される。
【0037】
図2及び図4は、取得された点群44を簡素化・低次化して示すグラフィック図である。同図では、点群44を、あくまでも例示目的で、二次元の行列に低次化して示している。実際には、3Dセンサ34で取得される点群44は、三次元のグリッドやメッシュの形態などといった三次元のものである。すなわち、点群44の各点46は、3種類の座標x,y,zおよび例えばカメラ38,40で撮像された反射照明の強度等を表す振幅値を含んでいる。
【0038】
本発明では、点群44から、所定の外径の管に相当する構造が探索される。例えば、点46の前記振幅値から、特定の範囲内の且つ管16,18の径に相当する所定の外径の管の幾何学的構造の特定の距離内の値が探索され得る。
【0039】
図2及び図4では、管16,18に相当する点群44に参照符号46aを付して且つ塗りつぶした円で表現する一方、それ以外の点46については、塗りつぶされていない円で表している。線50で点46a同士を繋げることにより、仮想空間48内の熱交換装置12の管16,18の構造又は表現15,19を可視化させている。
【0040】
「仮想空間」という表現は、一般的に、熱交換装置12、ロボット32、ロボットアーム30および吸込みプローブ22、ならびにプローブ22と熱交換装置12との間の空間についての、シミュレーション環境に関する表現である。
【0041】
本発明の方法では、次の過程として、得られた前記構造又は点46aから、径の変化が探索される。例えば、図2の左から右にかけて、左側にある水平方向の管18に対応する点46a又は線50を辿ると、仮想空間48内の管18の構造的表現19が垂直方向の管16の構造的表現15に合体して繋がる際に、管18の構造的表現19の径が変化している。例えば、これは、点46aの対の距離を分析し、該距離を線50沿いのさらなる点46a同士の各距離と比較することによって発見することができる。左から右にかけて分析していくと、あたかも、垂直方向の管16の構造的表現15の点46aによって管18の構造的表現19の径が増えているように見える。
【0042】
同様に、下から上にかけて垂直方向の管16の構造的表現15を分析していくと、点46aの対の距離は、垂直方向の管16の構造的表現15が水平方向の管18の構造的表現19と合体する部分で増加しており、あたかも、管16の径が増えているように見える。
【0043】
図2及び図4では、径のこのような増加が発見された部分を、対象部分52として破線で印付けている。この対象部分52は、リーク検知システム56のメモリに記憶される。該メモリは、ロボット32内及び/又は3Dセンサ36内に、あるいは、ロボット32及び/又は3Dセンサ36に接続された別のコンピュータ装置内に含まれ得る。リーク検知装置56は、リークディテクタ24、ロボット32および3Dセンサ34を具備している。
【0044】
仮想空間48内の対象部分52は、熱交換装置12のうちの、吸込みプローブ22を接近させてリーク検知を行う必要がある被検部分20に相当する。
【0045】
次の過程として、前記吸込みプローブを被検部分20に接近させるための(点群44内で吸込みプローブ22のグラフィック表現を対象部分52に接近させるための)接近経路58が求められる。これは、吸込みプローブ22及びその吸込み先端25のCADデータを使用し、点群44を該CADデータと比較することによって実施される。これにより、点群44内の、吸込み先端25又は吸込みプローブ22に対応する点46bが特定され得る。その後、吸込み先端25を被検部分20(すなわち、仮想空間48内の対象部分52)に接近させるための接近経路58が算出される。これにより、吸込み先端25及び/又は吸込みプローブ22及び/又はロボットアーム30もしくは接続ホース26と熱交換装置12又は熱交換装置12の何らかの構造もしくは部品との衝突を避ける接近経路58が求められる。この接近経路58は、図2において4本の矢印と点46cによって示されている。
【0046】
仮想空間48(すなわち、シミュレーション環境)内で衝突に繋がらない接近経路58が求められてからでしか、現実世界の実際の被検部分20へのロボット32やロボットアーム30による吸込み先端25の実際の接近は行われない。
【0047】
これにより、作業者によって行われる熱交換装置の従来の吸込みリーク検知に比べて、完全自動で遥かに迅速かつ遥かに確実に品質管理や製造産業のリーク検知を実施することが可能となる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】