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特表2024-524839陽極着色エレクトロクロミック化合物、並びにそれを含むデバイス及び組成物
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  • 特表-陽極着色エレクトロクロミック化合物、並びにそれを含むデバイス及び組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】陽極着色エレクトロクロミック化合物、並びにそれを含むデバイス及び組成物
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1516 20190101AFI20240702BHJP
   G02F 1/1503 20190101ALI20240702BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20240702BHJP
   C09K 9/02 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G02F1/1516
G02F1/1503
C07D519/00 CSP
C09K9/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573020
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 US2022031338
(87)【国際公開番号】W WO2022251630
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/194,303
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518301590
【氏名又は名称】ビトロ フラット グラス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアンセン、ディラン
【テーマコード(参考)】
2K101
【Fターム(参考)】
2K101AA22
2K101DA01
2K101DB06
2K101DC13
2K101DC42
2K101DC45
2K101EB41
2K101EC12
2K101EG52
2K101EJ14
2K101EJ15
(57)【要約】
本発明は、式(I)で表される陽極着色エレクトロクロミック化合物に関する。式(I)を参照すると、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C20アルキルから選択される。本発明はまた、式(I)で表される陽極着色エレクトロクロミック化合物を含むエレクトロクロミックデバイス及び組成物に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロクロミックデバイスであって、
(a)第1の透明電極層を含む表面を有する第1の基板と、
(b)第2の透明導電電極層を含む表面を有する第2の基板と、
(c)前記第1の透明導電性電極層と前記第2の透明導電性電極層との間に介在するエレクトロクロミック層と、
を含み、
前記第1の透明電極層と前記第2の透明電極層とは、対向する間隔をおいて対向しており、
前記エレクトロクロミック層は、
(i)陰極成分と、
(ii)陽極成分と、
(iii)電解質と、
(iv)ポリマーマトリックスと、
を含み、
前記陽極成分は、以下の式(I):
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C20アルキルから選択される)で表される陽極着色エレクトロクロミック化合物を含む、
エレクトロクロミックデバイス。
【請求項2】
及びRが、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C10アルキルである、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項3】
及びRが、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~Cアルキルである、請求項2に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項4】
前記陰極成分が、以下の式(II):
【化2】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C10アルキル、非置換アリール、及び置換アリールから選択される)で表される、1,1’-二置換-4,4’-ジピリジニウムカチオンを含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項5】
及びRが、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~Cアルキル、非置換フェニル、及び置換フェニルから選択される、請求項4に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項6】
前記陰極成分が、カウンターアニオンをさらに含み、陰極成分の各カウンターアニオンが、BF 、PF 、ClO 、CFSO 又は(CFSO及び(CFSOからなる群から独立して選択される、請求項4に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項7】
前記電解質が、
少なくとも1つの電解質アニオンであって、各電解質アニオンが、ビス(パーフルオロ(直鎖状又は分枝状C~Cアルキルスルホニル)イミド)から独立して選択される、電解質アニオンと、
少なくとも1つの電解質カチオンであって、各電解質カチオンが、1-(直鎖状若しくは分枝状のC~Cアルキル)-3-(直鎖状若しくは分枝状のC~Cアルキル)イミダゾリウム、又は1-(直鎖状若しくは分枝状のC~Cアルキル)-1-(直鎖状若しくは分枝状のC~Cアルキル)ピペリジニウムから独立して選択される、電解質カチオンと、
を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項8】
前記ポリマーマトリックスが、ポリマーを含み、前記ポリマーが、ポリ((メタ)アクリロニトリル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-パーフルオロ(直鎖状若しくは分岐状のC~Cアルキレン))、又はポリ((直鎖状若しくは分岐状のC~Cアルキル)(メタ)アクリレート)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項9】
前記陰極成分は、0.8重量%~6.25重量%の量で存在し、
前記陽極成分は、0.8重量%~6.25重量%の量で存在し、
前記電解質は、16.4重量%~25.0重量%の量で存在し、
前記ポリマーマトリックスは、62.5重量%~82.0重量%の量で存在し、
それぞれの場合の重量%は、前記陰極成分、前記陽極成分、前記電解質、及び前記ポリマーマトリックスの総重量に基づく、
請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項10】
エレクトロクロミック組成物であって、
(i)陰極成分と、
(ii)陽極成分と、
(iii)電解質と、
(iv)高分子増粘剤と、
(v)溶媒と、
を含み、
前記陽極成分は、以下の式(I):
【化3】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C20アルキルから選択される)で表される陽極着色エレクトロクロミック化合物を含む、
エレクトロクロミック組成物。
【請求項11】
及びRが、それぞれ独立して、C~C10アルキルである、請求項10に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項12】
及びRが、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~Cアルキルである、請求項11に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項13】
前記陰極成分が、以下の式(II):
【化4】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C10アルキル、非置換アリール、及び置換アリールから選択される)で表される、1,1’-二置換-4,4’-ジピリジニウムカチオンを含む、請求項10に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項14】
及びRが、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~Cアルキル、非置換フェニル、及び置換フェニルから選択される、請求項13に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項15】
前記陰極成分が、カウンターアニオンをさらに含み、陰極成分の各カウンターアニオンが、BF 、PF 、ClO 、CFSO 又は(CFSO及び(CFSOからなる群から選択される、請求項13に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項16】
前記電解質が、
少なくとも1つの電解質アニオンであって、各電解質アニオンが、ビス(パーフルオロ(直鎖状又は分枝状C~Cアルキルスルホニル)イミド)から独立して選択される、電解質アニオンと、
少なくとも1つの電解質カチオンであって、各電解質カチオンが、1-(直鎖状又は分枝状のC~Cアルキル)-3-(直鎖状又は分枝状のC~Cアルキル)イミダゾリウム、又は1-(直鎖状又は分枝状のC~Cアルキル)-1-(直鎖状又は分枝状のC~Cアルキル)ピペリジニウムから独立して選択される、電解質カチオンと、
を含む、請求項10に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項17】
前記高分子増粘剤が、ポリマーを含み、前記ポリマーが、ポリ((メタ)アクリロニトリル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-パーフルオロ(直鎖状若しくは分枝状のC~Cアルキレン))、又はポリ((直鎖状若しくは分枝状のC~Cアルキル)(メタ)アクリレート)のうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項18】
前記溶媒が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、ガンマ-バレロラクトン、N-メチルピロリドン、ポリエチレングリコール、又はポリエチレングリコールのカルボン酸エステルのうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項19】
前記陰極成分は、0.2重量%~3.6重量%の量で存在し、
前記陽極成分は、0.2重量%~3.6重量%の量で存在し、
前記電解質は、3.8重量%~14.3重量%の量で存在し、
前記高分子増粘剤は、19.2重量%~35.7重量%の量で存在し、
前記溶媒は、42.8重量%~76.6重量%の量で存在し、
それぞれの場合の重量%は、前記陰極成分、前記陽極成分、前記電解質、前記高分子増粘剤、及び前記溶媒の総重量に基づく、
請求項10に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項20】
以下の式(I):
【化5】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C20アルキルから選択される)で表される、陽極着色エレクトロクロミック化合物。
【請求項21】
及びRが、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C10アルキルである、請求項20に記載の陽極着色エレクトロクロミック化合物。
【請求項22】
及びRが、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~Cアルキルである、請求項21に記載の陽極着色エレクトロクロミック化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年5月28日に出願された米国仮特許出願第63/194,303号の権利を有し、その優先権を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(分野)
本発明は、陽極着色エレクトロクロミック化合物、並びにそのような陽極着色エレクトロクロミック化合物を含むエレクトロクロミックデバイス及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
エレクトロクロミズムは、電位の印加によって材料の可視色及び/又は可視光の透過率が可逆的に変化することを含む。色及び/又は透過率の変化は、典型的には、交互に繰り返される酸化及び還元の電荷状態を伴う。一般に、還元を受けながら発色する材料を陰極着色(cathodically-coloring)エレクトロクロミック材料といい、酸化を受けながら発色する材料を陽極着色(anodically-coloring)エレクトロクロミック材料という。
【0004】
陽極酸化着色エレクトロクロミック材料は、場合によっては、中性状態では望ましくは無色であり、有利な程度の色の再現性とコントラストを提供する。場合によっては、陽極着色エレクトロクロミック材料は、中性及び/又はラジカルカチオン状態において、エレクトロクロミック層を調製する液体エレクトロクロミック組成物への溶解性が不十分なことがある。
【0005】
新しい陽極着色エレクトロクロミック材料の開発が望まれる。このような新しく開発された陽極着色エレクトロクロミック材料が、現在入手可能な陽極着色エレクトロクロミック材料と少なくとも同程度の特性及び性能を提供することがさらに望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明によれば、エレクトロクロミックデバイスであって、
(a)第1の透明電極層を含む表面を有する第1の基板と、
(b)第2の透明電極層を含む表面を有する第2の基板と、
(c)前記第1の透明電極層と前記第2の透明電極層との間に介在するエレクトロクロミック層と、
を含み、
前記第1の透明電極層と前記第2の透明電極層とは、対向する間隔をおいて対向しており、
前記エレクトロクロミック層は、
(i)陰極成分と、
(ii)陽極成分と、
(iii)電解質と、
(iv)ポリマーマトリックスと、
を含み、
前記陽極成分は、以下の式(I):
【化1】

で表される陽極着色エレクトロクロミック化合物を含む、エレクトロクロミックデバイスが提供される。
【0007】
式(I)を参照すると、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C20アルキルから選択される。
【0008】
さらに本発明によれば、エレクトロクロミック組成物であって、
(i)陰極成分と、
(ii)陽極成分と、
(iii)電解質と、
(iv)高分子増粘剤と、
(v)溶媒と、
を含む、エレクトロクロミック組成物が提供される。
【0009】
エレクトロクロミック組成物の陽極成分は、上記に示すように、式(I)で表される陽極着色エレクトロクロミック化合物を含み、式中、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC~C20アルキルから選択される。
【0010】
さらに本発明によれば、上記に示すように、式(I)で表される陽極着色エレクトロクロミック化合物が提供され、式中、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C20アルキルから選択される。
【0011】
本発明を特徴付ける特徴は、本開示に添付され、本開示の一部を構成する特許請求の範囲に具体的に指摘されている。本発明のこれら及び他の特徴、その動作上の利点、及びその使用によって得られる特定の目的は、本発明の非限定的な実施形態が図示され説明される以下の詳細な説明から、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明によるエレクトロクロミックデバイスの代表的な側面断面図である。
【0013】
図2図2は、本発明によるエレクトロクロミックデバイスの代表的な側面断面図であり、エレクトロクロミック層を封止する役割を果たすガスケットをさらに含む。
【0014】
図1及び図2において、同様の文字は、特に断りのない限り、場合によっては同じ構成要素及び/又は要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用される場合、冠詞「a」、「an」、及び「the」は、別段の明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含む。
【0016】
特に断りのない限り、本明細書に開示されたすべての範囲又は比率は、そこに包含されるあらゆる部分範囲又は部分比率を包含するものと理解されたい。例えば、「1~10」という指定された範囲又は比率は、最小値「1」と最大値「10」の間の(及びそれらを含む)あらゆる部分範囲を含むとみなされる必要がある。すなわち、最小値「1」以上で始まり最大値「10」以下で終わるすべての部分範囲又は部分比率、例えば「1~6.1」、「3.5~7.8」、「5.5~10」などを含むが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書で使用される場合、特に断りのない限り、2価の連結基のなどの連結基の左から右への表現は、右から左への配向などの他の適切な配向を包含するが、これらに限定されない。非限定的な例示の目的で、2価の連結基の左から右への表現:
【化2】

又は同等の-C(O)O-は、2価の連結基の右から左への表現:
【化3】

又は同等の-O(O)C-若しくは-OC(O)-を包含する。
【0018】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される成分の量、反応条件などを表す全ての数字は、実施例又は別段の指示がある場合を除き、全ての場合において「約」という用語によって修飾されるものと理解されたい。
【0019】
本明細書で使用される場合、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)などのポリマーの分子量値は、ポリスチレン標準物質などの適切な標準物質を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される。
【0020】
本明細書で使用される場合、多分散性指数(PDI)値は、ポリマーの数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(すなわち、Mw/Mn)を表す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、ホモポリマー(例えば、単一のモノマー種から調製される)、コポリマー(例えば、少なくとも2つのモノマー種から調製される)、及びグラフトポリマーを意味する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート」という用語、及び「(メタ)アクリル酸エステル」などの類似の用語は、メタクリレート及び/又はアクリレートを意味する。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリル酸」という用語は、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を意味する。
【0023】
本発明の陽極酸化エレクトロクロミック化合物/材料は、本明細書では、陽極酸化エレクトロクロミックビチエノジオキシン化合物/材料とも呼ばれる。
【0024】
式(I)で表される陽極着色エレクトロクロミック化合物を含むがこれらに限定されない、本明細書に記載される本発明の陽極着色エレクトロクロミック化合物は、任意選択で、そのような化合物の合成から生じる、1つ以上の共生成物をさらに含むことができる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「エレクトロクロミック」という用語、及び「エレクトロクロミック化合物」などの類似の用語は、電位の印加に応じて変化する、少なくとも可視放射線の吸収スペクトルを有することを意味する。さらに、本明細書で使用される場合「エレクトロクロミック材料」という用語は、エレクロクロミック特性をディスプレイするように適合され(例えば、印加される電位に応答して変化する少なくとも可視放射線の吸収スペクトルを有するように適合され)、少なくとも1つのエレクトロクロミック化合物を含む任意の物質を意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「電位(electric potential)」という用語、及び「電位(electrical potential)」などの関連用語は、本明細書でさらに詳細に説明されるように、エレクトロクロミック材料を、ある形態又は状態から別の形態又は状態に変換することなど(ただしこれに限定されない)、材料に応答を引き起こすことが可能な電位を意味する。
【0027】
本明細書で「状態」という用語を修飾するために使用される場合、「第1の」及び「第2の」という用語は、特定の順序又は時系列を指すことを意図したものではなく、2つの異なる状態又は特性を指すものである。非限定的な例示の目的で、陽極着色エレクトロクロミック化合物などのエレクトロクロミック化合物の第1の状態と第2の状態は、可視及び/又はUV放射線の吸収などの少なくとも1つの光学特性に関して異なることができるが、これらに限定されない。したがって、本明細書に開示される様々な非限定的な実施形態によれば、本発明の陽極着色エレクトロクロミック化合物は、第1の状態及び第2の状態のそれぞれにおいて、異なる吸収スペクトルを有することができる。例えば、本明細書において限定するものではないが、本発明の陽極着色エレクトロクロミック化合物は、第1の状態では透明であり、第2の状態では着色することができる。あるいは、本発明の陽極着色エレクトロクロミック化合物は、第1の状態で第1の色を有し、第2の状態で第2の色を有することができる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ディスプレイ」という用語は、単語、数字、記号、デザイン又は図面による情報の可視的又は機械可読的な表現を意味する。ディスプレイ要素の非限定的な例としては、スクリーン、モニター、及びセキュリティ要素、例えばセキュリティマークが挙げられる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「窓」という用語は、放射線の透過を可能にするように適合された開口部を意味する。窓の非限定的な例としては、自動車及び航空機の透明体、フロントガラス、フィルター、シャッター、及び光スイッチが挙げられる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「ミラー」という用語は、入射光の大部分を鏡面反射する表面を意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「左」、「右」、「内側」、「外側」、「上(above)」、「下(below」などの空間的又は方向的な用語は、図面に示される本発明に関するものである。しかしながら、本発明は様々な代替的な方向性を想定することが可能であり、したがって、そのような用語は限定的なものとみなされないことを理解されたい。
【0032】
本明細書で使用される場合、「上に形成(formed over)」、「上に堆積」、「上に提供」、「上に適用」、「上に存在」、又は「上に配置」という用語は、下地要素、又は下地要素の表面上に形成され、堆積され、提供され、適用され、存在する、又は配置されることを意味するが、必ずしも下地要素、又は下地要素の表面と直接(又は隣接して)接触する必要はない。例えば、基板上に「配置された」層は、配置又は形成された層と基板との間に位置する、同一又は異なる組成の1つ以上の他の層、コーティング、又はフィルムの存在を排除するものではない。
【0033】
本明細書で使用される場合、「介在」及び「間に介在」という用語は、その上にある要素及び/又はその下にある要素、あるいはその表面の間に存在する、又は配置されることを意味するが、必ずしもその上にある要素及び/又はその下にある要素、あるいはその表面と直接(又は隣接して)接触している必要はない。例えば、第1の基板と第2の基板との「間に介在する」層は、介在する層と第1及び/又は第2の基板との間に位置する、同一又は異なる組成の1つ以上の他の層、コーティング、又はフィルムの存在を排除するものではない。
【0034】
本明細書で言及される、発行済み特許及び特許出願などの(ただしこれらに限定されない)すべての文書は、別段の記載がない限り、その全体が「参照により組み込まれる」ものとみなされる。
【0035】
本明細書で使用される場合、直鎖状又は分岐状アルキルなどの「直鎖状又は分岐状」基の記載は、本明細書では、メチレン基又はメチル基、直鎖状C~C20アルキル基などの直鎖状である基、及び分岐状C~C20アルキル基などの適切な分岐状である基を含むものと理解される。
【0036】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、直鎖状又は分枝状、環状又は非環状のC~C25アルキルを意味する。直鎖状又は分岐状アルキルには、C~C25アルキル、例えば、C~C20アルキル、例えば、C~C10アルキル、例えば、C~C12アルキル、例えば、C~Cアルキルなどを挙げることができる。本発明の種々のアルキル基が選択され得るアルキル基の例としては、本明細書中にさらに記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。アルキル基には、「シクロアルキル」基が含まれ得る。本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、C~C12シクロアルキル(環状C~C10アルキル、又は環状C~Cアルキルを含むが、これらに限定されない)基などの適切な環状である基を意味する。シクロアルキル基の例としては、本明細書でさらに記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語には、以下のものも含まれる:架橋環ポリシクロアルキル基(又は架橋環多環式アルキル基)、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル(又はノルボルニル)、ビシクロ[2.2.2]オクチル、及び縮合環ポリシクロアルキル基(又は縮合環多環式アルキル基)、例えば、オクタヒドロ-1H-インデニル、デカヒドロナフタレニルなどであるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書で使用される「ヘテロシクロアルキル」という用語は、例えば、C~C12ヘテロシクロアルキル基、例えば、C~C10ヘテロシクロアルキル基、例えば、C~Cヘテロシクロアルキル基などであるが、これらに限定されず、環状環内に少なくとも1つのヘテロ原子を有する基、例えば、O、S、N、P、及びそれらの組合せなどであるが、これらに限定されず、適切に環状である基を意味する。ヘテロシクロアルキル基の例としては、イミダゾリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル及びピペリジニルが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「ヘテロシクロアルキル」という用語には、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタニルなどの架橋環多環式ヘテロシクロアルキル基、及びオクタヒドロシクロペンタ[b]ピラニル、オクタヒドロ-1-ヒソクロメニルなどの縮合環多環式ヘテロシクロアルキル基も含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語、及び「アリール基」などの関連用語は、芳香族環状1価炭化水素ラジカルを意味する。本明細書で使用される場合、「芳香族」という用語、及び「芳香族基」などの関連用語は、(π電子の非局在化による)安定性が、仮想的な局在構造の安定性よりも著しく大きい環状共役炭化水素を意味する。アリール基の例としては、C~C14アリール基、例えばフェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラセニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
「ヘテロアリール」という用語は、本明細書で使用される場合、C~C18ヘテロアリール、例えば、C~C10ヘテロアリール(縮合環多環式ヘテロアリール基を含む)を含むが、これらに限定されず、芳香族環内に、又は縮合環多環式ヘテロアリール基の場合には少なくとも1つの芳香族環内に、少なくとも1つのヘテロ原子を有するアリール基を意味する。ヘテロアリール基の例としては、フラニル、ピラニル、ピリジニル、キノリニル、イソキノリニル、及びピリミジニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
「アラルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、C~C24アラルキル、例えば、C~C10アラルキルを含むが、これらに限定されず、アリール基で置換されたアルキル基を意味する。アラルキル基の例としては、ベンジル及びフェネチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。代表的なアルケニル基としては、ビニル、アリル、プロペニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。代表的なアルキニル基としては、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。代表的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
「含窒素複素環」という用語、例えば「含窒素複素環基」又は「含窒素複素環置換基」は、本明細書で使用される場合、含窒素環が環窒素を介して結合している含窒素環を含むが、これらに限定されない。含窒素複素環の例としては、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノ、デカヒドロイソキノリノなどの環状アミノ、及びイミダゾール、ピロール、インドール、カルバゾールなどのヘテロ芳香族が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書で使用される場合、「置換」基とは、アルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、及び/又はヘテロアリール基を含む基であって、その少なくとも1つの水素が、水素以外の基又は「置換基」で置換又は置換された基を意味するが、これらに限定されない:例えば、アルコキシ基、ハロ基(例えばF、Cl、I、及びBr)、ヒドロキシル基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボン酸エステル基、カルボン酸基、リン酸基、リン酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、ペルハロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基(アルカリール基を含み、フェノールなどのヒドロキシル置換アリールを含み、多縮合環アリールを含む、)アラルキル基、ヘテロアリール基(多縮合環ヘテロアリール基を含む)、アミノ基、例えば、-N(R11’)(R12’)、式中、R11’及びR12’は、それぞれ独立して、例えば、水素、アルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールから選択される、カルボキシレート基、シロキサン基、アルコキシシラン基、ポリシロキサン基、アミド基、カルバメート基、カーボネート基、尿素基、トリアルキルシリル基、含窒素複素環、又はそれらの組合せ(本明細書においてさらに記載されるようなクラス及び例を含む)からそれぞれ独立して選択される。本発明のいくつかの実施形態によれば、置換基(substituents)の置換基(substituted group)をより具体的に挙げる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「ハロ」という用語、及び「ハロ基」、「ハロ置換基」、「ハロゲン基」、及び「ハロゲン置換基」などの関連用語は、単結合ハロゲン基、例えば-F、-Cl、-Br、及びIを意味する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「ハロ置換」及び関連用語(ハロアルキル基、ハロアルケニル基、ハロアルキニル基、ハロアリール基、及びハロヘテロアリール基などであるが、これらに限定されない)の記載は、少なくとも1つ、最大で利用可能な水素基のすべてが、F、Cl又はBrなどのハロ基で置換されている基を意味するが、これらに限定されない。「ハロ置換」という用語には、「ペルハロ置換」が含まれる。本明細書で使用される場合、ペルハロ置換基という用語、及び関連用語(ペルハロアルキル基、ペルハロアルケニル基、ペルハロアルキニル基、ペルハロアリール基又はペルハロヘテロアリール基などであるが、これらに限定されない)は、その利用可能な水素基のすべてがハロ基で置換されている基を意味する。非限定的な例示の目的で、ペルハロメチルは、-CXであり、ペルハロフェニルは、-Cであり、式中、Xは、F、Cl、Br、又はIなどの1つ以上のハロ基を表すが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つ」は、要素が接続して列挙されているか分離して列挙されているかにかかわらず、「1つ以上」と同義である。例えば、「A、B、Cの少なくとも1つ」及び「A、B、Cの少なくとも1つ」という表現はそれぞれ、A、B、又はCのいずれか1つ、又はA、B、又はCのいずれか2つ以上の任意の組合せを意味する。例えば、Aだけ、Bだけ、Cだけ、あるいはA及びB、A及びC、B及びC、あるいはA、B、及びCのすべてを意味する。
【0047】
本明細書で使用される場合、「から選択される」は、要素が接続して列挙されているか分離して列挙されているかにかかわらず、「から選ばれる」と同義である。さらに、「A、B、及びCから選択される」及び「A、B、又はCから選択される」という表現はそれぞれ、A、B、又はCのいずれか1つ、又はA、B、又はCのいずれか2つ以上の任意の組合せを意味する。例えば、Aだけ、Bだけ、Cだけ、あるいはA及びB、A及びC、B及びC、あるいはA、B、及びCのすべてを意味する。
【0048】
本明細書における本発明の考察では、特定の特徴について、特定の制限の範囲内で「特に」又は「好ましくは」(例えば、特定の制限の範囲内で「好ましくは」、「より好ましくは」、又は「さらに好ましくは」)と記載する場合がある。本発明は、このような特定の限定や好ましい制限に限定されるものではなく、本開示の全範囲を包含するものと理解されたい。
【0049】
本明細書で使用される場合、及びいくつかの実施形態によれば、本発明の化合物及び成分の基、及び種々の基の置換基に関するような「ケトン」という用語、並びに「ケトン基」及び「ケトン置換基」などの関連用語は、-C(O)Rで表される物質を含み、式中、Rは、水素以外の、以下に記載されるような基から選択される。
【0050】
本明細書で使用される場合、及びいくつかの実施形態によれば、本発明の化合物及び成分の基、及び種々の基の置換基に関するような「カルボン酸」という用語、並びに「カルボン酸基」及び「カルボン酸置換基」などの関連用語には、-C(O)OHで表される物質が含まれる。
【0051】
本明細書で使用される場合、及びいくつかの実施形態によれば、本発明の化合物及び成分の基、及び種々の基の置換基に関するような「エステル」という用語、並びに「エステル基」及び「エステル置換基」などの関連用語は、-C(O)ORで表されるカルボン酸エステル基を意味し、式中、Rは、水素以外の、以下に記載されるような基から選択される。
【0052】
本明細書で使用される場合、及びいくつかの実施形態によれば、本発明の化合物及び成分の基、及び種々の基の置換基に関するような「カルボキシレート」という用語、並びに「カルボキシレート基」及び「カルボキシレート置換基」などの関連用語は、-OC(O)Rで表される物質を含み、式中、Rは、以下に記載されるような基から選択される。
【0053】
本明細書で使用される場合、及びいくつかの実施形態によれば、本発明の化合物及び成分の基、及び種々の基の置換基に関するような「アミド」という用語、並びに「アミド基」及び「アミド置換基」などの関連用語は、-C(O)N(R)(R)又はN(R)C(O)Rで表される物質を含み、式中、各Rは、以下に記載されるようなそれらの基から独立して選択される。
【0054】
本明細書で使用される場合、及びいくつかの実施形態によれば、本発明の化合物及び成分の基、及び種々の基の置換基に関するような「カーボネート」という用語、並びに「カーボネート基」及び「カーボネート置換基」などの関連用語は、-OC(O)ORで表される物質を含み、式中、Rは、水素以外の、以下に記載されるような基から選択される。
【0055】
本明細書で使用される場合、及びいくつかの実施形態によれば、本発明の化合物及び成分の基、並びに種々の基の置換基に関するような「カルバメート」という用語、並びに「カルバメート基」及び「カルバメート置換基」などの関連用語は、-OC(O)N(R)(H)又はN(H)C(O)ORで表される物質を含み、式中、Rは、それぞれの場合において、水素以外の、以下に記載されるようなそれらの基から独立して選択される。
【0056】
本明細書で使用される場合、及びいくつかの実施形態によれば、本発明の化合物及び成分の基、及び種々の基の置換基に関するような「尿素」という用語、並びに「尿素基」及び「尿素置換基」などの関連用語は、-N(R)C(O)N(R)(R)で表される物質を含み、式中、各Rは、以下に記載されるようなそれらの基から独立して選択される。
【0057】
本明細書で使用される場合、及びいくつかの実施形態によれば、本発明の化合物及び成分の基、並びに種々の基の置換基に関するような「シロキシ」という用語、並びに、「シロキシ基」及び「シロキシ置換基」などの関連用語は、-O-Si(R)で表される物質を含み、式中、各Rは、水素以外の、以下に記載されるようなそれらの基から独立して選択される。
【0058】
本明細書で使用される場合、及びいくつかの実施形態によれば、本発明の化合物及び成分の基、並びに種々の基の置換基に関するような「アルコキシシラン」という用語、並びに「アルコキシシラン基」及び「アルコキシシラン置換基」などの関連用語は、-Si(OR’’)(R)で表される物質を含み、式中、wは1~3であり、tは0~2であり、ただし、w及びtの合計は3であり、各wのR’’は、独立してアルキルから選択され、各tのRは、独立して、水素以外の、以下に記載する基から選択される。
【0059】
本明細書で使用される場合、及びいくつかの実施形態によれば、本発明の化合物及び成分の基、及び種々の基の置換基に関するような「ポリシロキサン」という用語、並びに「ポリシロキサン基」及び「ポリシロキサン置換基」などの関連用語は、以下の式(A)で表される物質を含む:
【化4】

式(A)を参照すると:t’は、2以上、例えば、2~200であり、各t’についてのR及びRは、それぞれ独立して、水素以外の、以下に記載するような基Rから選択され、Rは、独立して、以下に記載するような基Rである。
【0060】
特に断らない限り、上記のケトン、エステル(カルボン酸エステル)、カルボキシレート、アミド、カーボネート、カルバメート、尿素、シロキサン、アルコキシシラン基、及びポリシロキサン基のそれぞれの各R基は、それぞれの場合において、水素、アルキル、ハロアルキル、ペルハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びそれらの組合せ(本明細書で先に記載したそれらのクラス及び例を含む)から独立して選択される。
【0061】
本発明の陽極着色エレクトロクロミック化合物、例えば、式(I)で表されるもの、及びそれらの種々の基について、本明細書においてさらに詳細に説明するが、これらに限定されない。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態では、式(I)を参照すると、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C20アルキルから選択される。
【0063】
本発明のいくつかのさらなる実施形態では、式(I)を参照すると、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C10アルキルから選択される。
【0064】
本発明のいくつかの追加の実施形態では、式(I)を参照すると、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~Cアルキルから選択される。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、式(I)のR及びRがそれぞれ独立して選択され得るアルキル基の例としては、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、分岐ペンチル、n-ヘキシル、分岐ヘキシル、n-ヘプチル、分岐ヘプチル、n-オクチル、分岐オクチル、n-ノニル、分岐ノニル、n-デシル、分岐デシル、n-ウンデシル、分岐ウンデシル、n-ドデシル、分岐ドデシル、n-トリデシル、分岐トリデシル、n-テトラデシル、分岐テトラデシル、n-ペンタデシル、分岐ペンタデシル、n-ヘキサデシル、分岐ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、分岐ヘプタデシル、n-オクタデシル、分岐オクタデシル、n-ノナデシル、分岐ノナデシル、n-イコサニル、分岐イコサニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
本発明の陽極着色エレクトロクロミック化合物、例えば、式(I)で表される化合物は、当技術分野で認識されている方法に従って調製することができる。いくつかの実施形態では、式(I)で表されるような本発明の陽極着色エレクトロクロミック化合物は、以下の一般的かつ非限定的な説明に従って調製することができる。以下のスキーム(1)を参照すると、化合物(1)(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン)をテトラヒドロフラン(THF)中、-78℃でn-ブチルリチウム(nBuLi)で処理し、続いて、ジスルフィド(R-SS-R)でクエンチし、その後、クロマトグラフィーを用いて精製/単離し、その結果、化合物(2)(5-(R-チオ)-2,3-dihydrothieno[3,4-b][1,4]dioxine)が形成される。化合物(2)をテトラヒドロフラン(THF)中、-78℃でn-ブチルリチウム(nBuLi)で処理し、続いて、鉄(III)トリス(アセチルアセトナート)(Fe(AcAc))と組み合わせ、その結果、化合物(3)が形成される。スキーム(1)において、ジスルフィド及び化合物(3)のR基は、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C20アルキルから選択される。
【化5】
【0067】
本発明のいくつかの実施形態によれば、エレクトロクロミックデバイスが提供される。非限定的な例示の目的で、本発明によるエレクトロクロミックデバイス(3)を図1に示す。エレクトロクロミックデバイス(3)は、第1の表面(14)と第2の表面(17)を有する第1の基板(11)を含む。第1の基板(11)の第1の表面(14)は、導電性の第1の透明電極層(20)を含む。第1の透明電極層(20)は、第1の基板(11)の第1の表面(14)の少なくとも一部の上に存在する。いくつかの実施形態では、第1の透明電極層(20)は、第1の基板(11)の第1の表面(14)上の1つ以上のパターン(例えば、1つ以上のデザイン及び/又は表示)の形態である。いくつかのさらなる実施形態では、第1の透明電極層(20)は、第1の基板(11)の第1の表面(14)上に実質的に連続した層を形成する。第1の透明電極層(20)は、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の導電体(21)と電気的に接触している。
【0068】
エレクトロクロミックデバイス(3)は、第1の表面(26)と第2の表面(29)を有する第2の基板(23)を含む。第2の基板(23)の第1の表面(26)は、導電性の第2の透明電極層(32)を含む。第2の透明電極層(32)は、第2の基板(23)の第1の表面(26)の少なくとも一部の上に存在する。いくつかの実施形態では、第2の透明電極層(32)は、第2の基板(23)の第1の表面(26)上の1つ以上のパターン(例えば、1つ以上のデザイン及び/又は表示)の形態である。いくつかのさらなる実施形態では、第2の透明電極層(32)は、第2の基板(23)の第1の表面(26)上に実質的に連続した層を形成する。第2の透明電極層(32)は、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第2の導電体(33)と電気的に接触している。
【0069】
図1のエレクトロクロミックデバイス(3)をさらに参照すると、第1の透明電極層(20)と第2の透明電極層(32)は、互いに対して対抗する間隔を空けて対向している。
【0070】
エレクトロクロミックデバイス(3)は、第1の透明電極層(20)と第2の透明電極層(32)との間に介在するエレクトロクロミック層(35)をさらに含む。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミック層(35)は、第1の透明電極層(20)と第2の透明電極層(32)との間に介在し、第1の透明電極層(20)と第2の透明電極層(32)との間に隣接する関係にある。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態によれば、エレクトロクロミックデバイスは、少なくともエレクトロクロミック層を封止する役割を果たすガスケットをさらに含む。図2を非限定的に参照すると、エレクトロクロミックデバイス(5)は、エレクトロクロミックデバイス(3)と同様であるが、エレクトロクロミックデバイス(5)の全体の周囲に延びる凹部(38)内に存在するガスケット(41)をさらに含む。いくつかの実施形態では、凹部(38)は環状リング(38)である。図2をさらに参照すると、第1の基板(11)及び第1の透明電極層(20)、並びに第2の基板(23)及び第2の透明電極層(32)は、エレクトロクロミック層(35)の上に/エレクトロクロミック層(35)に対して横方向外側に延在している。第1の透明電極層(20)及び第2の透明電極層(32)の、エレクトロクロミック層(35)に対して横方向外側に延在している部分は、共に、ガスケット(41)が存在する凹部(38)を画定する。いくつかの実施形態では、ガスケット(41)は酸素バリア特性を有し、エレクトロクロミックデバイス(5)が製造された後、酸素とエレクトロクロミック層(35)との接触を最小限に抑える役割を果たす。ガスケット(41)は、いくつかの実施形態では、有機ポリマー及び/又はセラミック材料で構成される。いくつかの実施形態によれば、ガスケット(41)は、本明細書でさらに説明するように、スタックの真空ラミネーションに先立って、凹部(38)内に配置され、位置決めされる。
【0072】
エレクトロクロミックデバイスの第1の基板及び第2の基板は、本発明のいくつかの実施形態では、透明基板からそれぞれ独立して選択される。第1及び第2の基板がそれぞれ独立して選択され得る透明基板は、いくつかの実施形態では、シリカガラス、有機ポリマー(ポリカーボネートポリマーなど)、及びそれらの組合せを含むがこれらに限定されない材料から作製される。いくつかの実施形態では、第1及び第2の基板がそれぞれ独立して選択され得る透明基板は、シリカガラスを含む材料から作製される。第1及び第2の基板は、それぞれ独立して、任意の適切な厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の基板はそれぞれ独立して、2mm~10mmの厚さを有する。
【0073】
本発明のエレクトロクロミックデバイスの第1及び第2の透明電極層は、いくつかの実施形態では、導電性無機酸化物、導電性有機材料、導電性金属、及び/又は導電性炭素、例えば、カーボンナノチューブ及び/又はグラフェンを含む。導電性無機酸化物の例としては、インジウムなどのドーピング材料でドープすることができる酸化スズ、さらに例えばアルミニウムを含むことができる酸化亜鉛などが挙げられるが、これらに限定されない。導電性有機材料の例としては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(4,4-ジオクチルシクロペンタジチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(スチレンスルホネート)などが挙げられるが、これらに限定されない。第1及び第2の透明電極層は、いくつかの実施形態では、それぞれ独立して、金属ワイヤのグリッド、カーボンナノチューブのグリッド、及び/又はグラフェンの層の形態とすることができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の透明電極層は、半透明金属層から、それぞれ独立して選択される。いくつかのさらなる実施形態では、第1及び第2の透明電極層の一方は、反射性金属層(例えば、アルミニウム、金、及び/又は銀を含む)を含み(又はそれに関連する)、エレクトロクロミックデバイスは、制御可能に反射するミラーなどの反射性エレクトロクロミックデバイスである。
【0074】
いくつかの実施形態によれば、本発明のエレクトロクロミックデバイスの第1及び第2の電極層は、それぞれ独立して、インジウムスズ酸化物、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)、又はそれらの組合せから選択される導電性材料を含む。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態によるエレクトロクロミックデバイスの第1及び第2の電極層は、透明かつ導電性であれば、それぞれ独立して任意の適切な厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、本発明のエレクトロクロミックデバイスの第1及び第2の電極層は、それぞれ独立して、0.01マイクロメートル~10マイクロメートルの厚さを有する。
【0076】
本発明のエレクトロクロミックデバイスのエレクトロクロミック層は、陽極成分を含み、この陽極成分は、本明細書で前述したように、式(I)で表される陽極着色エレクトロクロミック化合物を含む。
【0077】
式(I)で表される陽極着色エレクトロクロミック化合物に加えて、エレクトロクロミック層の陽極成分は、いくつかの実施形態では、任意選択で、以下のような1つ以上の追加の陽極エレクトロクロミック化合物を含むが、これらに限定されない:フェロセン及び/又はフェロセン誘導体(その少なくとも1つのシクロペンタジエニル環が、本明細書で先に述べたような置換基を含む少なくとも1つの置換基で置換されている)、5,10-ジヒドロ-5,10-ジ(直鎖状又は分岐状C~C10アルキル)フェナジン、例えば、5,10-ジヒドロ-5,10-ジメチルフェナジン、N置換フェノキサジン、例えば、N-フェニルフェノキサジン、及びそれらの組合せ。
【0078】
いくつかの実施形態では、本発明のエレクトロクロミックデバイスのエレクトロクロミック層の陽極成分は、本明細書で前述したように、式(I)で表される陽極着色エレクトロクロミック化合物から本質的に構成される。いくつかのさらなる実施形態では、本発明のエレクトロクロミックデバイスのエレクトロクロミック層の陽極成分は、本明細書で前述したように、式(I)で表される陽極着色エレクトロクロミック化合物からなる。
【0079】
本発明のエレクトロクロミックデバイスのエレクトロクロミック層は、陰極成分を含む。陰極成分は、いくつかの実施形態では、可逆的に還元される少なくとも1つの材料を含む。式(I)で表される陽極着色エレクトロクロミック材料が可逆的に酸化されるためである。いくつかの実施形態では、陰極成分は、1つ以上のジピリジニウム(又はジピリジニウムをベースとする)カチオン(例えば、4,4’-ジピリジニウム、2,2’-ジピリジニウム、1,1’-ジピリジニウム、及び/又は1,1’-ジピリジニウムなどを含み、あるいはこれらをベースとするが、これらに限定されず、窒素原子が、2価の連結基、例えば、2価のアルキル連結基によって連結されている)及び/又はその誘導体であって、任意選択で、第4級窒素原子の1つ以上が水素以外の基、例えば、アルキル基又はアリール基に結合しているもの。
【0080】
いくつかの実施形態では、陰極成分は、以下の式(II):
【化6】

で表される1,1’-二置換-4,4’-ジピリジニウムカチオンを含む。
【0081】
式(II)を参照すると、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C10アルキル、非置換アリール、及び置換アリールから選択される。R及びRがそれぞれ独立して選択され得る非置換アリール基及び置換アリール基のアリール基としては、本明細書で先に述べたようなアリール基、例えば、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラセニルが挙げられるが、これらに限定されない。R及びRがそれぞれ独立して選択され得る置換アリール基の置換基としては、本明細書で先に述べたような置換基が挙げられる。いくつかの実施形態では、R及びRがそれぞれ独立して選択され得る置換アリール基の各置換基は、それぞれ独立して、アルコキシ基、ハロ基(例えば、F、Cl、I、及びBr)、ヒドロキシル基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ケトン基、アルデヒド基、ハロアルキル基、ペルハロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基(ベンジル基など)、ヘテロアリール基、及びアミノ基から選択される。
【0082】
図(II)をさらに参照すると、いくつかのさらなる実施形態によれば、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~Cアルキル、非置換フェニル、及び置換フェニルから選択される。R及びRがそれぞれ独立して選択され得る置換フェニル基の各置換基としては、本明細書で先に述べたような置換基が挙げられる。いくつかの実施形態では、R及びRがそれぞれ独立して選択され得る置換フェニル基の各置換基は、それぞれ独立して、アルコキシ基、ハロ基(例えば、F、Cl、I、及びBr)、ヒドロキシル基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ケトン基、アルデヒド基、ハロアルキル基、ペルハロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(例えば、ベンジル基)から選択される。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、式(II)をさらに参照すると、Rは、直鎖状又は分枝状のC~C10アルキルから選択され、Rは、アリール及び置換アリールから選択される。いくつかの追加の実施形態では、Rは、直鎖状又は分枝状のC~Cアルキルから選択され、Rは、非置換フェニル及び置換フェニルから選択される。
【0084】
いくつかの実施形態では、陰極成分は、式(II)で表される1,1’-二置換-4,4’-ジピリジニウムカチオンに加えて、又はその代わりに、以下の式(III):
【化7】

で表される1,1-(アルカン-アルファ,オメガ-ジイル)-ビス-(1’-二置換-4,4’-ジピリジニウム)カチオンを含む。
【0085】
式(III)を参照すると、いくつかの実施形態によれば、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C10アルキル、非置換アリール、及び置換アリールから選択される。R及びRがそれぞれ独立して選択され得る非置換アリール基及び置換アリール基のアリール基としては、本明細書で先に述べたようなアリール基、例えば、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラセニルが挙げられるが、これらに限定されない。R及びRがそれぞれ独立して選択され得る置換アリール基の置換基としては、本明細書で先に述べたような置換基が挙げられる。いくつかの実施形態では、R及びRがそれぞれ独立して選択され得る置換アリール基の各置換基は、それぞれ独立して、アルコキシ基、ハロ基(例えば、F、Cl、I、及びBr)、ヒドロキシル基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ケトン基、アルデヒド基、ハロアルキル基、ペルハロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基(ベンジル基など)、ヘテロアリール基、及びアミノ基から選択される。
【0086】
式(III)をさらに参照すると、いくつかのさらなる実施形態によれば、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~Cアルキル、非置換フェニル、及び置換フェニルから選択される。R及びRがそれぞれ独立して選択され得る置換フェニル基の各置換基としては、本明細書で先に述べたような置換基が挙げられる。いくつかの実施形態では、R及びRがそれぞれ独立して選択され得る置換フェニル基の各置換基は、それぞれ独立して、アルコキシ基、ハロ基(例えば、F、Cl、I、及びBr)、ヒドロキシル基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ケトン基、アルデヒド基、ハロアルキル基、ペルハロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(例えば、ベンジル基)から選択される。
【0087】
式(III)をさらに参照すると、Rは、2価の直鎖状又は分枝状のC~C10アルカン連結基である。いくつかの実施形態では、式(II)のRは、2価の直鎖状又は分枝状のC~Cアルカン連結基である。いくつかのさらなる実施形態では、式(III)のRは、2価の直鎖状又は分枝状のC~Cアルカン連結基である。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態によれば、陰極成分はカウンターアニオンをさらに含む。いくつかのさらなる実施形態では、陰極成分は同数のカチオン及びカウンターアニオン(又はアニオン)を含み、それに対応して、陰極成分は正味中性電荷を有する。陰極成分の各カウンターアニオンは、いくつかの実施形態では、BF 、PF 、ClO 、CFSO 又は(CFSO及び(CFSOからなる群から独立して選択される。
【0089】
本発明のエレクトロクロミックデバイスのエレクトロクロミック層は、電解質をさらに含む。電解質は、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの電解質アニオンと少なくとも1つの電解質カチオンを含む。エレクトロクロミック層の電解質は、いくつかの実施形態では、等しい数の電解質アニオンと電解質カチオンを含み、それに対応して、正味中性電荷を有する。
【0090】
いくつかの実施形態では、エレクトロクロミック層の電解質は、少なくとも1つの電解質アニオンを含み、各電解質アニオンは、塩化物、ヘキサフルオロホスフェート、及びビス(ペルフルオロ(直鎖状又は分枝状のC~Cアルキルスルホニル)イミドから独立して選択される。いくつかのさらなる実施形態では、エレクトロクロミック層の電解質は、少なくとも1つの電解質カチオンを含み、各電解質カチオンは、ナトリウム、カリウム、リチウム、1-(直鎖状又は分岐状のC~Cアルキル)-3-(直鎖状又は分岐状のC~Cアルキル)イミダゾリウム、及び1-(直鎖状又は分岐状のC~Cアルキル)-1-(直鎖状又は分岐状のC~Cアルキル)ピペリジニウムから独立して選択される。
【0091】
エレクトロクロミック層の電解質は、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの電解質アニオンと、少なくとも1つの電解質カチオンとを含み、各電解質アニオンは、ビス(パーフルオロ(直鎖状又は分枝状のC~Cアルキルスルホニル)イミド)から独立して選択され、各電解質カチオンは、1-(直鎖状若しくは分枝状のC~Cアルキル)-3-(直鎖状若しくは分枝状のC~Cアルキル)イミダゾリウム、又は1-(直鎖状若しくは分枝状のC~Cアルキル)-1-(直鎖状若しくは分枝状のC~Cアルキル)ピペリジニウムから独立して選択される。
【0092】
エレクトロクロミック層の電解質は、いくつかのさらなる実施形態では、少なくとも1つの電解質アニオンと、少なくとも1つの電解質カチオンとを含み、各電解質アニオンは、ビス(トリフルロメチルスルホニル)イミドであり、各電解質カチオンは、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、及び1-メチル-1-プロピルピペリジニウムから独立して選択される。
【0093】
本発明のエレクトロクロミックデバイスのエレクトロクロミック層は、ポリマーマトリックスを含む。ポリマーマトリックスは、少なくとも1つのポリマーを含む。ポリマーマトリックスは、いくつかの実施形態では、ゲル化ポリマーマトリックス、架橋ポリマーマトリックス、及び/又は熱可塑性ポリマーマトリックスである。
【0094】
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスは、ポリマーを含み、前記ポリマーは、ポリ((メタ)アクリロニトリル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-パーフルオロ(直鎖状若しくは分岐状C~Cアルキレン))、又はポリ((直鎖状若しくは分岐状C~Cアルキル)(メタ)アクリレート)のうちの少なくとも1つを含む。
【0095】
本発明のエレクトロクロミックデバイスのいくつかの実施形態によれば、陰極成分は、0.8重量%~6.25重量%の量で存在し、陽極成分は、0.8重量%~6.25重量%の量で存在し、電解質は、16.4重量%~25.0重量%の量で存在し、ポリマーマトリックスは、62.5重量%~82.0重量%の量で存在する。それぞれの場合の重量%は、陰極成分、陽極成分、電解質、ポリマーマトリックスの総重量に基づいている。
【0096】
本発明のエレクトロクロミックデバイスのエレクトロクロミック層は、いくつかの実施形態では、1つ以上の当技術分野で認識されている任意の添加剤、例えば、熱安定剤、UV安定剤、レオロジー調整剤、静的着色剤(静的色合い及び/又は静的染料など)、動的添加剤(電極反応を促進する)、及びそれらの組合せをさらに含むことができるが、これらに限定されない。当技術分野で認識されている熱安定剤の非限定的なクラスは、フェノール類、例えば2,6-ジターシャリーブチルフェノール、及び2,6-ジターシャリーブチルフェノール基又は部位を含む化合物である。当技術分野で認識されているUV安定剤の非限定的なクラスは、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、及び2,2,6,6-テトラメチルピペリジン基又は部位を含む化合物である。静的着色剤には、アクティニック放射線(UV及び/又は可視光など)や電位の印加に対して吸収スペクトルが変化しない着色剤が含まれ、フォトクロミック化合物やエレクトロクロミック化合物は含まれない。動的添加剤の非限定的なクラスには、例えば、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、及びヘキサフルオロリン酸塩のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、並びにテトラアルキルアンモニウム塩のような塩が含まれる。レオロジー改質剤の非限定的な例としては、ジアルコキシアセトフェノン、例えば3’,4’ジメトキシアセトフェノン、及び任意に置換されたシクロアルキルアリールケトン、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが挙げられる。各任意の添加剤は、エレクトロクロミック層の総固形分重量(任意の添加剤の重量を含む)に基づいて、0.05重量%~5重量%などの任意の適切な活性量で存在することができる。
【0097】
本発明のエレクトロクロミックデバイスを含み得る、又は本発明のエレクトロクロミックデバイスによって定義され得る、製造品などの物品の例としては、エネルギー効率の高い、及び/又はプライバシーの透明体(又は窓)、例えば、建築用及び輸送用の透明体又は窓、バックミラーなどのミラー、光学フィルター、並びに矯正レンズ、非矯正レンズ、拡大レンズ、保護レンズ、及びバイザーなどの眼科用品、並びに可変で制御可能な光透過率及び/又は色が所望される任意の他の物品又は用途が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
本発明はまた、以下を含むエレクトロクロミック組成物に関する:(i)陰極成分、(ii)陽極成分、(iii)電解質、高分子増粘剤、及び(v)溶媒。本発明のエレクトロクロミック組成物の陽極成分は、本明細書で先に記載したように、式(I)で表される陽極着色エレクトロクロミック化合物を含む。
【0099】
エレクトロクロミック組成物の陰極成分、陽極成分、及び電解質はそれぞれ、本発明のエレクトロクロミックデバイスのエレクトロクロミック層に関して本明細書で既に説明した通りである。
【0100】
エレクトロクロミック組成物の高分子増粘剤は、いくつかの実施形態では、ポリマーを含み、前記ポリマーは、ポリ((メタ)アクリロニトリル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-パーフルオロ(直鎖状若しくは分岐状のC~Cアルキレン))、又はポリ((直鎖状若しくは分岐状のC~Cアルキル)(メタ)アクリレート)のうちの少なくとも1つを含む。
【0101】
本発明のエレクトロクロミック組成物は、溶媒を含む。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミック組成物の溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、ガンマ-バレロラクトン、N-メチルピロリドン、ポリエチレングリコール、又はポリエチレングリコールのカルボン酸エステルのうちの少なくとも1つを含む。
【0102】
本発明のエレクトロクロミック組成物のいくつかの実施形態によれば、陰極成分は、0.2重量%~3.6重量%の量で存在し、陽極成分は、0.2重量%~3.6重量%の量で存在し、電解質は、3.8重量%~14.3重量%の量で存在し、高分子増粘剤は、19.2重量%~35.7重量%の量で存在し、溶媒は、42.8重量%~76.6重量%の量で存在する。それぞれの場合の重量%は、陰極成分、陽極成分、電解質、高分子増粘剤、及び溶媒の総重量に基づいている。
【0103】
本発明のエレクトロクロミック組成物は、いくつかの実施形態では、1つ以上の当技術分野で認識されている任意の添加剤、例えば、熱安定剤、UV安定剤、レオロジー調整剤、静的着色剤(静的色合い及び/又は静的染料など)、動的添加剤(電極反応を促進する)、及びそれらの組合せを含むことができるが、これらに限定されない。任意の添加剤は、それぞれの場合において、本発明のエレクトロクロミックデバイスに関して本明細書で既に説明した通りである。各任意の添加剤は、エレクトロクロミック組成物の総重量(任意の添加剤の重量を含む)に基づいて、0.05重量%~5重量%などの任意の適切な活性量でエレクトロクロミック組成物中に存在することができる。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態によれば、エレクトロクロミックデバイスのエレクトロクロミック層は、本発明のエレクトロクロミック組成物から形成される。本発明のいくつかの実施形態によれば、エレクトロクロミック組成物及びエレクトロクロミック層の形成は、以下の工程を含む。第一に、高分子増粘剤以外のエレクトロクロミック組成物のすべての成分を、均質な混合物が形成されるまで(インペラーなどを用いて)剪断力の下で混合する。第二に、高分子増粘剤を添加し、その混合物を均質化して、濃厚なスラリーを形成する。厚いスラリーの液状フィルムを、例えば、ドクターブレードやドローダウンバーを使用して、犠牲ライナー又は一時ライナー(いくつかの実施形態では、ポリエチレンテレフタレートで構成)上に形成する。犠牲ライナー/一時ライナー上の液状フィルムを、例えば、60℃~90℃で3分~10分間、高温にさらし、その結果、エレクトロクロミック層である固化フィルム/層を形成する。固化したフィルム/エレクトロクロミック層を、犠牲ライナー/一時ライナー(これは廃棄される)から分離し、(必要に応じて)所定のサイズに切断し、第1の基板の第1の透明電極層の上に(over)又は上に向けて(onto)配置する。第2の基板の第2の透明電極を、エレクトロクロミック層の他方の(又は対向/露出した)面の上に(over)又は上に向けて(onto)配置し、第1の基板、第1の透明電極、エレクトロクロミック層、第2の透明電極、及び第2の基板を含むスタックを形成する。スタックは、第1及び第2の透明電極と別個に電気的に接触する電気コネクタをさらに含むことができる。スタック(少なくともエレクトロクロミック層の外縁を取り囲む任意のガスケットを有する)を、一定時間(例えば10分~30分)、高温(例えば110℃~200℃)を同時に適用しながら、真空ラミネーションに供する。冷却後、そのように形成されたエレクトロクロミックデバイスを、真空ラミネーションデバイスから取り出す。
【0105】
本発明はさらに、以下の非限定的な条項の1つ以上によって特徴付けることができる。
【0106】
条項1:エレクトロクロミックデバイスであって、
(a)第1の透明電極層を含む表面を有する第1の基板と、
(b)第2の透明導電電極層を含む表面を有する第2の基板と、
(c)前記第1の透明導電性電極層と前記第2の透明導電性電極層との間に介在するエレクトロクロミック層と、
を含み、
前記第1の透明電極層と前記第2の透明電極層とは、対向する間隔をおいて対向しており、
前記エレクトロクロミック層は、
(i)陰極成分と、
(ii)陽極成分と、
(iii)電解質と、
(iv)ポリマーマトリックスと、
を含み、
前記陽極成分は、以下の式(I):
【化8】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C20アルキルから選択される)で表される陽極着色エレクトロクロミック化合物を含む、
エレクトロクロミックデバイス。
【0107】
条項2:R及びRが、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C10アルキルである、条項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【0108】
条項3:R及びRが、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~Cアルキルである、条項1又は2に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【0109】
条項4:前記陰極成分が、以下の式(II):
【化9】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C10アルキル、非置換アリール、及び置換アリールから選択される)で表される、1,1’-二置換-4,4’-ジピリジニウムカチオンを含む、条項1、2、又は3のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【0110】
条項5:R及びRが、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~Cアルキル、非置換フェニル、及び置換フェニルから選択される、条項4に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【0111】
条項6:Rが、直鎖状又は分枝状のC~Cアルキルから選択され、Rが、非置換フェニル、及び置換フェニルから選択される、条項4又は5に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【0112】
条項7:前記陰極成分が、カウンターアニオンをさらに含み、陰極成分の各カウンターアニオンが、BF 、PF 、ClO 、CFSO 又は(CFSO及び(CFSOからなる群から独立して選択される、条項1、2、3、4、5、又は6のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【0113】
条項8:前記電解質が、
少なくとも1つの電解質アニオンであって、各電解質アニオンが、ビス(パーフルオロ(直鎖状又は分枝状C~Cアルキルスルホニル)イミド)から独立して選択される、電解質アニオンと、
少なくとも1つの電解質カチオンであって、各電解質カチオンが、1-(直鎖状又は分枝状のC~Cアルキル)-3-(直鎖状又は分枝状のC~Cアルキル)イミダゾリウム、又は1-(直鎖状又は分枝状のC~Cアルキル)-1-(直鎖状又は分枝状のC~Cアルキル)ピペリジニウムから独立して選択される、電解質カチオンと、
を含む、条項1、2、3、4、5、6、又は7のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【0114】
条項9:前記ポリマーマトリックスが、ポリマーを含み、前記ポリマーが、ポリ((メタ)アクリロニトリル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-パーフルオロ(直鎖状若しくは分岐状のC~Cアルキレン))、又はポリ((直鎖状若しくは分岐状のC~Cアルキル)(メタ)アクリレート)のうちの少なくとも1つを含む、条項1、2、3、4、5、6、7、又は8のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【0115】
条項10:条項1、2、3、4、5、6、7、8、又は9のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックデバイスであって、
前記陰極成分は、0.8重量%~6.25重量%の量で存在し、
前記陽極成分は、0.8重量%~6.25重量%の量で存在し、
前記電解質は、16.4重量%~25.0重量%の量で存在し、
前記ポリマーマトリックスは、62.5重量%~82.0重量%の量で存在し、
それぞれの場合の重量%は、前記陰極成分、前記陽極成分、前記電解質、及び前記ポリマーマトリックスの総重量に基づく、エレクトロクロミックデバイス。
【0116】
条項11:エレクトロクロミック組成物であって、
(i)陰極成分と、
(ii)陽極成分と、
(iii)電解質と、
(iv)高分子増粘剤と、
(v)溶媒と、
を含み、
前記陽極成分は、以下の式(I):
【化10】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C20アルキルから選択される)で表される陽極着色エレクトロクロミック化合物を含む、
エレクトロクロミック組成物。
【0117】
条項12:R及びRが、それぞれ独立して、C~C10アルキルである、条項11に記載のエレクトロクロミック組成物。
【0118】
条項13:R及びRが、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC~Cアルキルである、条項11又は12に記載のエレクトロクロミック組成物。
【0119】
条項14:前記陰極成分が、以下の式(II):
【化11】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C10アルキル、非置換アリール、及び置換アリールから選択される)で表される、1,1’-二置換-4,4’-ジピリジニウムカチオンを含む、条項11、12、又は13のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック組成物。
【0120】
条項15:R及びRが、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~Cアルキル、非置換フェニル、及び置換フェニルから選択される、条項13に記載のエレクトロクロミック組成物。
【0121】
条項16:Rが、直鎖状又は分枝状のC~Cアルキルから選択され、Rが、非置換フェニル、置換フェニルから選択される、条項14又は15に記載のエレクトロクロミック組成物。
【0122】
条項17:前記陰極成分が、カウンターアニオンをさらに含み、陰極成分の各カウンターアニオンが、BF 、PF 、ClO 、CFSO 又は(CFSO及び(CFSOからなる群から選択される、条項11、12、13、14、15、又は16のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック組成物。
【0123】
条項18:前記電解質が、
少なくとも1つの電解質アニオンであって、各電解質アニオンが、ビス(パーフルオロ(直鎖状又は分枝状C~Cアルキルスルホニル)イミド)から独立して選択される、電解質アニオンと、
少なくとも1つの電解質カチオンであって、各電解質カチオンが、1-(直鎖状又は分枝状のC~Cアルキル)-3-(直鎖状又は分枝状のC~Cアルキル)イミダゾリウム、又は1-(直鎖状又は分枝状のC~Cアルキル)-1-(直鎖状又は分枝状のC~Cアルキル)ピペリジニウムから独立して選択される、電解質カチオンと、
を含む、条項11、12、13、14、15、16、又は17のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック組成物。
【0124】
条項19:前記高分子増粘剤が、ポリマーを含み、前記ポリマーが、ポリ((メタ)アクリロニトリル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-パーフルオロ(直鎖状若しくは分岐状のC~Cアルキレン))、又はポリ((直鎖状若しくは分岐状のC~Cアルキル)(メタ)アクリレート)のうちの少なくとも1つを含む、条項11、12、13、14、15、16、17、又は18のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック組成物。
【0125】
条項20:前記溶媒が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、ガンマ-バレロラクトン、N-メチルピロリドン、ポリエチレングリコール、又はポリエチレングリコールのカルボン酸エステルのうちの少なくとも1つを含む、条項11、12、13、14、15、16、17、18、又は19のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック組成物。
【0126】
条項21:条項11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック組成物であって、
前記陰極成分は、0.2重量%~3.6重量%の量で存在し、
前記陽極成分は、0.2重量%~3.6重量%の量で存在し、
前記電解質は、3.8重量%~14.3重量%の量で存在し、
前記高分子増粘剤は、19.2重量%~35.7重量%の量で存在し、
前記溶媒は、42.8重量%~76.6重量%の量で存在し、
それぞれの場合の重量%は、前記陰極成分、前記陽極成分、前記電解質、前記高分子増粘剤、及び前記溶媒の総重量に基づく、エレクトロクロミック組成物。
【0127】
条項22: 以下の式(I):
【化12】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C20アルキルから選択される)で表される、陽極着色エレクトロクロミック化合物。
【0128】
条項23:R及びRが、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~C10アルキルである、条項21に記載の陽極着色エレクトロクロミック化合物。
【0129】
条項24:R及びRが、それぞれ独立して、直鎖状又は分枝状のC~Cアルキルである、条項22又は23に記載の陽極着色エレクトロクロミック化合物。
【0130】
本発明を、その特定の実施形態の具体的な詳細を参照して説明した。添付の特許請求の範囲に含まれる範囲を除き、このような詳細が本発明の範囲を限定するものとみなされることを意図したものではない。
図1
図2
【国際調査報告】