(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】制御性T細胞(Treg)集団を製造するための方法、Treg組成物、及び治療のための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20240702BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240702BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240702BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240702BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240702BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240702BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240702BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240702BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240702BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240702BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240702BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240702BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240702BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240702BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240702BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240702BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240702BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240702BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240702BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240702BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240702BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20240702BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240702BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240702BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240702BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20240702BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C12N5/0783
A61K35/17
A61P37/02
A61P29/00
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/14
A61P21/00
A61P1/04
A61P17/00
A61P19/02
A61P3/10
A61P17/06
A61P21/04
A61P13/12
A61P7/06
A61P7/00
A61P1/16
A61P27/02
A61P17/14
A61P5/14
A61P37/06
A61P9/00
A61P9/10 101
A61P9/10
A61P9/04
A61P25/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575529
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 US2022032474
(87)【国際公開番号】W WO2022261074
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518045694
【氏名又は名称】ザ メソディスト ホスピタル
(71)【出願人】
【識別番号】523341808
【氏名又は名称】コヤ セラピューティクス, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】スタンレー ハーシュ アペル
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ロバート ゾンホフ
(72)【発明者】
【氏名】デビッド ロバート ビアーズ
(72)【発明者】
【氏名】アーロン ドリュー ゾーメ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイフア ザオ
(72)【発明者】
【氏名】ハワード バーマン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AC20
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4B065BB19
4B065CA44
4C087AA01
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4C087ZB11
4C087ZB15
4C087ZC06
4C087ZC35
(57)【要約】
開示されるのは、頑健、高純度、かつ機能的なT制御性細胞(Treg)の大規模な集団を生産するための改良されたバイオリアクターベースの方法である。また、増殖させたTreg集団、凍結保存されたTreg集団、並びに、例えば、ヒトの神経変性障害の1つ以上の症状の治療、予防、及び/又は改善などの1種以上の哺乳動物の疾患を治療するための方法及びそのために製剤化された組成物におけるこれらの細胞の使用も開示される。特に、本明細書で提供される組成物及び方法は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、並びに他の神経疾患及び障害の1つ以上の症状の治療及び改善において臨床で使用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結保存された制御性T細胞(Treg)の治療用集団を製造する方法であって:
a. Tregを含有していると思われる細胞試料由来のTregを濃縮して、ベースラインTreg細胞集団を製造する工程;
b. 該ベースラインTreg細胞集団を増殖させて、増殖させたTreg細胞集団を製造する工程であって、該ベースラインTreg細胞集団が、工程(b)の開始前に凍結保存されず、かつ工程(b)が、バイオリアクター内で行われる、前記工程;及び
c. 該増殖させたTreg細胞集団を凍結保存して、凍結保存されたTregの治療用集団を製造する工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
工程(a)が、CD8+/CD19+細胞を枯渇させ、次いでCD25+細胞に関して濃縮することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(b)が、工程(a)の後約30分以内に実施される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
工程(b)が、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズを含む培養培地中で前記Tregを培養することを含む、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程(b)が、前記培養の開始から約24時間以内に、前記ビーズを前記培養培地に添加することを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
工程(b)が、工程(a)の完了の後約30分以内に、前記ビーズを前記培養培地に添加することを含む、請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】
工程(b)が、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズが前記培養培地に初めて添加されてから約11日後に、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズを該培養培地に添加することを含む、請求項4~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程(b)が、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズが前記培養培地に初めて添加されてから約11日後に、細胞数がその時までに目標細胞数に到達していない場合に、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズを該培養培地に添加することを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記目標細胞数が、2.5×10
9細胞である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
工程(b)が、インターロイキン-2(IL-2)を含む培養培地中で前記Tregを培養することを含む、請求項1~9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
工程(b)が、前記培養の開始から約24時間以内に、IL-2を前記培養培地に添加することを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
工程(b)が、工程(a)の完了の後約30分以内に、IL-2を前記培養培地に添加することを含む、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
工程(b)が、IL-2が前記培養培地に初めて添加された後に約3~4日毎に、該培養培地にIL-2を補充することを含む、請求項10~12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
工程(b)が、細胞数に応じてIL-2濃度を調整することを含む、請求項10~13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
工程(b)が、細胞数が600×10
6に到達するまで前記Tregを約200 IU/mLのIL-2を含有する培養培地中で培養すること、及び、次いで、該Tregを約250 IU/mLのIL-2を含有する培養培地中で培養することを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
工程(b)が、前記Tregを、ラパマイシンを含む培養培地中で培養することを含む、請求項1~15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
工程(b)が、前記培養の開始から約24時間以内に、ラパマイシンを前記培養培地に添加することを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
工程(b)が、工程(a)の完了の後約30分以内に、ラパマイシンを前記培養培地に添加することを含む、請求項16又は17記載の方法。
【請求項19】
工程(b)が、細胞数に応じて前記バイオリアクターの毛細管外(EC)培地の流量を調整することを含む、請求項1~18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記毛細管外培地が、ラパマイシンを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
工程(b)が、細胞数が500×10
6に到達するまで前記EC培地の流量を0に維持すること、次いで、該EC培地の流量を約0.2mL/分まで増加させること及び細胞数が750×10
6に到達するまで該EC培地の流量を約0.2mL/分に維持すること、次いで、該EC培地の流量を約0.4mL/分まで増加させること及び細胞数が約1,000×10
6に到達するまで該EC培地の流量を約0.4mL/分に維持すること、次いで、該EC培地の流量を約0.6mL/分まで増加させること及び細胞数が約1,500×10
6に到達するまで該EC培地の流量を約0.6mL/分に維持すること、並びに、次いで、該EC培地の流量を約0.8mL/分まで増加させること及び該EC培地の流量を約0.8mL/分に維持することを含む、請求項19又は20記載の方法。
【請求項22】
前記細胞試料が、白血球アフェレーシス細胞試料である、請求項1~21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
工程(b)が、自動化されている、請求項1~22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
工程(b)が、閉鎖系で行われる、請求項1~23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
工程(a)が、自動化されている、請求項1~24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
工程(a)が、閉鎖系で行われる、請求項1~25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
工程(a)及び工程(b)が、異なる系で行われる、請求項1~26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
工程(a)によって製造される前記ベースラインTreg細胞集団が、閉鎖工程で、工程(b)における前記バイオリアクターに移される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
工程(a)が、閉鎖系で行われ、工程(b)が、閉鎖系で行われ、かつ工程(a)によって製造される前記ベースラインTreg細胞集団が、閉鎖工程で、工程(b)における前記バイオリアクターに移される、請求項27記載の方法。
【請求項30】
工程(a)及び工程(b)が、同じ系で行われる、請求項1~26のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記同じ系が、閉鎖系である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記凍結保存されたTregの治療用集団を解凍すること、及びさらなる増殖を行わずに、該集団を医薬として許容し得る担体を含む組成物中に入れて、医薬組成物を製造することをさらに含む、請求項1~31のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
前記医薬組成物を対象に投与することをさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記医薬組成物中の前記Tregが、前記対象にとって自己由来のものである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記医薬組成物中の前記Tregが、前記対象にとって同種異系のものである、請求項33記載の方法。
【請求項36】
前記対象が、ヒト対象である、請求項33~35のいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
請求項1~31のいずれか1項記載の方法によって製造された、凍結保存されたTregの治療用集団。
【請求項38】
請求項37記載の凍結保存されたTregの治療用集団の解凍されておりかつ増殖させていない形態、及び医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物。
【請求項39】
請求項32~36のいずれか1項記載の方法によって製造された医薬組成物。
【請求項40】
それを必要としている対象においてTreg機能障害に関連する障害を治療する方法であって、該対象に、請求項38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項41】
それを必要としている対象においてTreg欠乏に関連する障害を治療する方法であって、該対象に、請求項38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項42】
それを必要としている対象において免疫系の過剰活性化に関連する障害を治療する方法であって、該対象に、請求項38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
それを必要としている対象においてT細胞応答によって推進される炎症状態を治療する方法であって、該対象に、請求項38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項44】
それを必要としている対象において骨髄系細胞応答によって推進される炎症状態を治療する方法であって、該対象に、請求項38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項45】
前記骨髄系細胞が、単球、マクロファージ、又はミクログリアである、請求項44記載の方法。
【請求項46】
それを必要としている対象において神経変性障害を治療する方法であって、該対象に、請求項38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項47】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症、又はハンチントン病である、請求項46記載の方法。
【請求項48】
それを必要としている対象において自己免疫障害を治療する方法であって、該対象に、請求項38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項49】
前記自己免疫障害が、多発性筋炎、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、クローン病、セリアック病、全身性硬化症(強皮症)、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)、I型糖尿病、乾癬、皮膚筋炎、全身性エリテマトーデス、皮膚ループス、重症筋無力症、自己免疫性腎症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血球減少、自己免疫性脳炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性ブドウ膜炎、脱毛症、甲状腺炎、又は天疱瘡である、請求項48記載の方法。
【請求項50】
それを必要としている対象において移植片対宿主病を治療する方法であって、該対象に、請求項38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項51】
前記対象が、骨髄移植、腎移植、又は肝移植を受けている、請求項50記載の方法。
【請求項52】
それを必要としている対象において膵島移植片の生存を向上させる方法であって、該対象に、膵島移植術と組み合わせて、請求項38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項53】
それを必要としている対象において心臓の炎症を治療する方法であって、該対象に、請求項38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項54】
前記心臓の炎症が、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、虚血性心筋症、又は心不全と関連する、請求項53記載の方法。
【請求項55】
それを必要としている対象において神経炎症を治療する方法であって、該対象に、請求項38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項56】
前記神経炎症が、卒中、急性散在性脳脊髄炎、急性視神経炎、急性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎、視神経脊髄炎、てんかん、外傷性脳損傷、脊髄損傷、脳炎、中枢神経系血管炎、神経サルコイドーシス、自己免疫性もしくは感染後脳炎、又は慢性髄膜炎と関連する、請求項55記載の方法。
【請求項57】
それを必要としている対象においてTreg症を治療する方法であって、該対象に、請求項38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項58】
前記Treg症が、FOXP3、CD25、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)、LPS反応性ベージュ様アンカータンパク質(LRBA)、又はBTBドメイン及びCNCホモログ2(BACH2)遺伝子機能喪失型変異、又はシグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)機能獲得型変異によって引き起こされる、請求項57記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1. 関連出願への相互参照)
本出願は、2021年6月8日に出願された米国仮特許出願第63/208,393号及び2022年2月25日に出願された米国仮特許出願第63/314,147号の双方の優先権の利益を主張する。前述の関連出願は全て、その全体が、引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
(2. 分野)
本開示は、医薬品、分子生物学の分野に関し、特に、哺乳動物の神経変性疾患の治療における使用に適した医薬品の生産に関する。特に、本開示は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、及び他の神経性の疾患又は機能障害、並びに炎症性及び自己免疫の疾患又は機能障害などの疾患の治療に有用な、頑健、高純度、かつ機能的なT制御性細胞を生産するための改良方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(3. 背景)
増殖させた自己由来のCD4+CD25highFOXP3+ T制御性細胞(Treg)の臨床的生産では、これらの療法を使用することによって利益を得る可能性がある患者に対する該療法の可用性を妨げる物流上及び費用関連の難題がいくつか存在する。現行のTreg生産条件は、複雑かつ非常に骨が折れる活性化及び増殖プロトコールを必要とする。さらなる難題として、必要な用量となるまでTregを増殖させるのに必要とされる時間、並びに細胞の生存率、完全性、及び機能を維持する増殖後の最終の凍結保存された生成物の製剤化が挙げられる。これらの難題にもかかわらず、自己由来Treg療法は、移植片対宿主病(GvHD)、並びに1型糖尿病及びクローン病を含むいくつかの自己免疫疾患に関する第1相臨床試験において現在試験中である。多くの免疫抑制薬の有効性が、それらのTregを刺激する能力次第で決まるという事実によって、Treg活性を増加させることの治療的価値が支持される。Treg療法は、それが、オフターゲットな作用を制限し、従って、有効性を向上させかつ有害作用を最小化し得るために、免疫抑制性の薬物よりも有利であり得る。従って、高純度かつ機能的なTregの頑健な製造のための生産プロセスの開発は、Treg療法の将来の応用に極めて重要である。
【発明の概要】
【0004】
(4. 概要)
Treg養子細胞療法は、多様な障害の患者を治療するのに非常に有望である。しかしながら、そのような療法の潜在能力を発揮するための難題は、高い純度、生存率、及び抑制能を示し、蓄えることができ、かつ患者へすぐ投与できる多数のTregを効率的かつ迅速に製造することができることである。本明細書で示される方法は、この難題に対処し、棚から取り出してすぐに使える治療用物質として利用され得る強力なエクスビボで増殖させたTreg細胞集団を製造できることを提供する。
【0005】
また、エクスビボで増殖させたTreg細胞集団、そのようなTreg細胞集団を含む医薬組成物、凍結保存されたエクスビボで増殖させた治療用Treg集団、及び解凍後のかつさらなる増殖を行わないそのような凍結保存されたTregを含む医薬組成物も本明細書で示される。
【0006】
また、例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、及び前頭側頭型認知症などの神経変性障害の治療を含む、本明細書で製造され記載されるTreg細胞集団を利用する治療の方法も本明細書で示される。
【0007】
一態様において、本明細書で提供されるのは、凍結保存された制御性T細胞(Treg)の治療用集団を製造する方法であって、(a)Tregを含有していると思われる細胞試料由来のTregを濃縮して、ベースラインTreg細胞集団を製造する工程;(b)該ベースラインTreg細胞集団を増殖させて、増殖させたTreg細胞集団を製造する工程であって、該ベースラインTreg細胞集団が、工程(b)の開始前に凍結保存されず、かつ工程(b)が、バイオリアクター内で行われる、前記工程;及び(c)該増殖させたTreg細胞集団を凍結保存して、凍結保存されたTregの治療用集団を製造する工程を含む、前記方法である。この文脈において、「ベースライン」又は「ベースラインTreg細胞集団」という用語は、患者試料から濃縮されているが、まだ増殖させてはいないTregの集団を意味する。ある実施態様において、工程(a)は、CD8+/CD19+細胞を枯渇させ、次いで、CD25+細胞に関して濃縮することを含む。ある実施態様において、工程(b)は、工程(a)の後約30分以内に実施される。
【0008】
ある実施態様において、工程(b)は、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズを含む培養培地中で前記Tregを培養することを含む。具体的な実施態様において、工程(b)は、前記培養することの開始から約24時間以内に、前記ビーズを前記培養培地に添加することを含む。具体的な実施態様において、工程(b)は、工程(a)の完了の後約30分以内に、前記ビーズを前記培養培地に添加することを含む。具体的な実施態様において、工程(b)は、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズが前記培養培地に初めて添加されてから約11日後に、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズを該培養培地に添加することを含む。具体的な実施態様において、工程(b)は、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズが前記培養培地に初めて添加されてから約11日後に、細胞数がその時までに目標細胞数に到達していない場合に、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズを該培養培地に添加することを含む。細胞数は、培養中の細胞の大部分に相当し、具体的な実施態様においては、培養中の細胞の70%超、80%超、90%超、95%超、99%超、又は100%に相当する前記濃縮されたTreg細胞を含む培養中の全ての細胞の数を意味する。具体的な実施態様において、前記目標細胞数は、2.5×109個の細胞である。
【0009】
ある実施態様において、工程(b)は、インターロイキン-2(IL-2)を含む培養培地中で前記Tregを培養することを含む。具体的な実施態様において、工程(b)は、前記培養することの開始から約24時間以内に、IL-2を前記培養培地に添加することを含む。具体的な実施態様において、工程(b)は、工程(a)の完了の後約30分以内に、IL-2を前記培養培地に添加することを含む。具体的な実施態様において、工程(b)は、IL-2が前記培養培地に初めて添加された後に約3~4日毎に、該培養培地にIL-2を補充することを含む。具体的な実施態様において、工程(b)は、細胞数に応じてIL-2濃度を調整することを含む。細胞数は、培養中の細胞の大部分に相当し、具体的な実施態様においては、培養中の細胞の70%超、80%超、90%超、95%超、99%超、又は100%に相当する前記濃縮されたTreg細胞を含む培養中の全ての細胞の数を意味する。具体的な実施態様において、工程(b)は、細胞数が、600×106に到達するまで前記Tregを約200 IU/mLのIL-2を含有する培養培地中で培養すること、及び、次いで、該Tregを約250 IU/mLのIL-2を含有する培養培地中で培養することを含む。
【0010】
ある実施態様において、工程(b)は、前記Tregを、ラパマイシンを含む培養培地中で培養することを含む。具体的な実施態様において、工程(b)は、前記培養することの開始から約24時間以内に、ラパマイシンを前記培養培地に添加することを含む。具体的な実施態様において、工程(b)は、工程(a)の完了の後約30分以内に、ラパマイシンを前記培養培地に添加することを含む。
【0011】
ある実施態様において、工程(b)は、細胞数に応じて前記バイオリアクターの毛細管外(EC)培地の流量を調整することを含む。細胞数は、培養中の細胞の大部分に相当し、具体的な実施態様においては、培養中の細胞の70%超、80%超、90%超、95%超、99%超、又は100%に相当する前記濃縮されたTreg細胞を含む培養中の全ての細胞の数を意味する。具体的な実施態様において、前記毛細管外培地は、ラパマイシンを含む。具体的な実施態様において、工程(b)は、細胞数が500×106に到達するまで前記EC培地の流量を0に維持すること、次いで、該EC培地の流量を約0.2mL/分まで増加させること及び細胞数が750×106に到達するまで該EC培地の流量を約0.2mL/分に維持すること、次いで、該EC培地の流量を約0.4mL/分まで増加させること及び細胞数が約1,000×106に到達するまで該EC培地の流量を約0.4mL/分に維持すること、次いで、該EC培地の流量を約0.6mL/分まで増加させること及び細胞数が約1,500×106に到達するまで該EC培地の流量を約0.6mL/分に維持すること、並びに、次いで、該EC培地の流量を約0.8mL/分まで増加させること及び該EC培地の流量を約0.8mL/分に維持することを含む。
【0012】
ある実施態様において、前記細胞試料は、白血球アフェレーシス細胞試料である。
【0013】
ある実施態様において、工程(b)は、自動化されている。ある実施態様において、工程(b)は、閉鎖系で行われる。ある実施態様において、工程(a)は、自動化されている。ある実施態様において、工程(a)は、閉鎖系で行われる。いくつかの実施態様において、工程(a)及び工程(b)は、異なる系で行われる。特定の実施態様において、工程(a)によって製造される前記ベースラインTreg細胞集団は、閉鎖工程で、工程(b)における前記バイオリアクターに移される。具体的な実施態様において、工程(a)は、閉鎖系で行われ、工程(b)は、閉鎖系で行われ、かつ工程(a)によって製造される前記ベースラインTreg細胞集団は、閉鎖工程で、工程(b)における前記バイオリアクターに移される。別の実施態様において、工程(a)及び工程(b)は、同じ系で行われる。具体的な実施態様において、前記同じ系は、閉鎖系である。
【0014】
ある実施態様において、前記方法は、前記凍結保存されたTregの治療用集団を解凍すること、及びさらなる増殖を行わずに、該集団を医薬として許容し得る担体を含む組成物中に入れて、医薬組成物を製造することをさらに含む。具体的な実施態様において、前記方法は、前記医薬組成物を対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施態様において、前記医薬組成物中のTregは、前記対象にとって自己由来のものである。別の実施態様において、前記医薬組成物中のTregは、前記対象にとって同種異系のものである。さまざまな実施態様において、前記対象は、ヒト対象である。
【0015】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される方法によって製造される凍結保存されたTregの治療用集団である。
【0016】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される凍結保存されたTregの治療用集団の解凍されておりかつ増殖させていない形態、及び医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物である。
【0017】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される方法によって製造される医薬組成物である。
【0018】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象においてTreg機能障害に関連する障害を治療する方法であって、該対象に本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む、前記方法である。
【0019】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象においてTreg欠乏に関連する障害を治療する方法であって、該対象に本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む、前記方法である。
【0020】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象において免疫系の過剰活性化に関連する障害を治療する方法であって、該対象に本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む、前記方法である。
【0021】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象においてT細胞応答によって推進される炎症状態を治療する方法であって、該対象に本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む、前記方法である。
【0022】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象において骨髄系細胞応答によって推進される炎症状態を治療する方法であって、該対象に本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む、前記方法である。具体的な実施態様において、前記骨髄系細胞は、単球、マクロファージ、又はミクログリアである。
【0023】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象において神経変性障害を治療する方法、該対象に本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む、前記方法である。具体的な実施態様において、前記神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症、又はハンチントン病である。
【0024】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象において自己免疫障害を治療する方法であって、該対象に本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む、前記方法である。具体的な実施態様において、前記自己免疫障害は、多発性筋炎、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、クローン病、セリアック病、全身性硬化症(強皮症)、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)、I型糖尿病、乾癬、皮膚筋炎、ループス、例えば、全身性エリテマトーデスもしくは皮膚ループス、重症筋無力症、自己免疫性腎症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血球減少、自己免疫性脳炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性ブドウ膜炎、脱毛症、甲状腺炎、又は天疱瘡である。
【0025】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象において移植片対宿主病を治療する方法であって、該対象に本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む、前記方法である。具体的な実施態様において、前記対象は、骨髄移植、腎移植、又は肝移植を受けている。
【0026】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象において膵島移植片の生存を向上させる方法であって、該対象に本明細書に記載される医薬組成物を膵島移植術と組み合わせて投与することを含む、前記方法である。
【0027】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象において心臓の炎症を治療する方法であって、該対象に本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む、前記方法である。具体的な実施態様において、前記心臓の炎症は、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、虚血性心筋症、又は心不全と関連する。
【0028】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象において神経炎症を治療する方法であって、該対象に本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む、前記方法である。具体的な実施態様において、前記神経炎症は、卒中、急性散在性脳脊髄炎、急性視神経炎、急性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎、視神経脊髄炎、てんかん、外傷性脳損傷、脊髄損傷、脳炎、中枢神経系血管炎、神経サルコイドーシス、自己免疫性もしくは感染後脳炎、又は慢性髄膜炎と関連する。
【0029】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象においてTreg症(Tregopathy)を治療する方法であって、該対象に本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む、前記方法である。具体的な実施態様において、前記Treg症は、FOXP3、CD25、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)、LPS反応性ベージュ様アンカータンパク質(LRBA)、又はBTBドメイン及びCNCホモログ2(BACH2)遺伝子機能喪失型変異、又はシグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)機能獲得型変異によって引き起こされる。
【0030】
いくつかの実施態様において、前記増殖させたTreg細胞集団及び前記凍結保存されたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、炎症細胞による炎症促進性サイトカイン産生によって測定される該炎症細胞を抑制する能力を示し、該炎症細胞は、ヒトドナー由来であるか又は人工多能性幹細胞から作られたマクロファージ又は単球である。いくつかの実施態様において、解凍後のかつ追加の増殖を行わない前記凍結保存されたTregの治療用集団の炎症細胞を抑制する前記能力は、前記増殖させたTreg細胞集団のそれの少なくとも70%である。
【0031】
いくつかの実施態様において、炎症細胞を抑制する前記能力は、該炎症細胞によるIL-6、TNFα、IL1β、IL8、及び/又はインターフェロン-γ産生によって測定される。いくつかの実施態様において、炎症細胞を抑制する前記能力は、該炎症細胞によるIL-6産生によって測定される。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、抑制機能を示し、該抑制機能は、レスポンダーT細胞の増殖の抑制によって決定して、前記ベースラインTreg細胞集団のそれよりも大きい。いくつかの実施態様において、解凍後のかつ追加の増殖を行わない前記凍結保存されたTregの治療用集団の前記抑制機能は、レスポンダーT細胞の増殖の抑制によって決定して、前記ベースラインTreg細胞集団の前記抑制機能よりも少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、又は少なくとも300%大きい。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、抑制機能を示し、該抑制機能は、レスポンダーT細胞の増殖の抑制によって決定して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である。いくつかの実施態様において、解凍後のかつ追加の増殖を行わない前記凍結保存されたTregの治療用集団の前記抑制機能は、凍結保存前の前記増殖させたTreg細胞集団の該抑制機能の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である。いくつかの実施態様において、前記レスポンダーT細胞の増殖は、フローサイトメトリー又はチミジン取り込みによって決定される。
【0032】
いくつかの実施態様において、解凍後のかつ追加の増殖を行わない前記凍結保存されたTregの治療用集団の生存率は、トリパンブルー染色によって決定して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である。いくつかの実施態様において、解凍後のかつ追加の増殖を行わない前記凍結保存されたTregの治療用集団の生存率は、トリパンブルー染色によって決定して、前記増殖させたTreg細胞集団が工程(c)において凍結保存される前の該増殖させたTreg細胞集団の生存率の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である。
【0033】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、FoxP3+ Tregを含み、FoxP3+ Tregの割合が、前記ベースラインTreg細胞集団中のTregのうちのFoxP3+ Tregの割合と比較して増加している。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、フローサイトメトリーによって決定して、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%のFoxP3+ Tregを含む。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、FoxP3発現Tregを含み、FoxP3の発現が、該Tregにおいて、前記ベースラインTreg細胞集団中のTregにおけるFoxP3の発現と比較して増加している。
【0034】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、フローサイトメトリーによって決定して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のCD4+CD25+細胞を含む。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、フローサイトメトリーによって決定して、20%未満のCD8+細胞を含む。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、フローサイトメトリーによって決定して、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%のCD4+CD25highCD127low Tregを含む。
【0035】
いくつかの実施態様において、前記細胞試料は、白血球アフェレーシス細胞試料である。いくつかの実施態様において、前記方法は、前記細胞試料をドナーから白血球アフェレーシスによって得ることをさらに含む。いくつかの実施態様において、前記細胞試料は、前記濃縮工程(a)を実施する前に1晩保管されたり凍結されたりしない。いくつかの実施態様において、前記細胞試料を、濃縮工程(a)の開始前30分以内に得る。いくつかの実施態様において、工程(a)は、CD8+/CD19+細胞を枯渇させ、次いでCD25+細胞に関して濃縮することを含む。いくつかの実施態様において、工程(b)は、工程(a)の後30分以内に実施される。
【0036】
いくつかの実施態様において、工程(b)は、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズを含む培養培地中で前記Tregを培養することを含む。いくつかの実施態様において、前記培養することの開始から約24時間以内に、前記ビーズが、前記培養培地に初めて添加される。いくつかの実施態様において、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズが前記培養培地に初めて添加されてから約14日後に、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズが、該培養培地に添加される。
【0037】
いくつかの実施態様において、工程(b)は、前記培養することの開始から約6日以内に、前記培養培地にIL-2を添加することをさらに含む。いくつかの実施態様において、工程(b)は、IL-2が前記培養培地に初めて添加された後に約2~3日毎に、該培養培地にIL-2を補充することをさらに含む。
【0038】
いくつかの実施態様において、工程(b)は、前記培養することの開始から約24時間以内に、ラパマイシンを前記培養培地に添加することをさらに含む。いくつかの実施態様において、工程(b)は、前記ラパマイシンが前記培養培地に初めて添加された後に2~3日毎に、該培養培地にラパマイシンを補充することをさらに含む。
【0039】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存する工程(c)は、工程(b)における前記培養培地へのIL-2の添加又は補充の少なくとも6日後に実施される。いくつかの実施態様において、前記凍結保存する工程(c)は、前記培養する工程(b)の開始の約8~25日後に実施される。
【0040】
いくつかの実施態様において、工程(c)は、DMSOを含む凍結保護剤中で前記Tregを凍結保存することを含む。いくつかの実施態様において、前記凍結保存工程(c)は、以下の増分:4℃まで1℃/分、-40℃まで25℃/分、-12℃まで10℃/分、-40℃まで1℃/分、及び-80℃~-90℃まで10℃/分で、前記Tregの集団の温度を変化させることを含む。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、少なくとも5千万細胞/mLのTreg密度で凍結される。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、1~1.5mLの総体積で凍結される。いくつかの実施態様において、前記方法は、約1週間、1か月、約3か月、約6か月、約9か月、約12か月、約18か月、又は約24か月にわたる凍結保存後に、前記凍結保存されたTregの治療用集団を解凍することをさらに含む。
【0041】
いくつかの実施態様において、前記細胞試料は、ヒトドナー由来である。いくつかの実施態様において、前記ヒトドナーは、健康なドナーである。別の実施態様において、前記ヒトドナーは、神経変性障害であると診断されているか又は神経変性障害であることが疑われている。いくつかの実施態様において、前記神経変性障害は、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、又は前頭側頭型認知症である。
【0042】
いくつかの実施態様において、前記Tregの集団は、凍結保存する工程(c)の前の前記方法の任意の時点で、遺伝子操作(genetic engineering)を受けている。
【0043】
いくつかの実施態様において、工程(b)は、自動化されている。いくつかの実施態様において、工程(b)は、バイオリアクター内で行われる。いくつかの実施態様において、いくつかの実施態様において、工程(b)は、G-REX培養システム内で行われる。いくつかの実施態様において、前記方法は、閉鎖系で行われる。
【0044】
いくつかの実施態様において、前記方法は、前記凍結保存されたTregの治療用集団を解凍すること、及びさらなる増殖を行わずに、該集団を医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物中に入れて、Treg医薬組成物を製造することをさらに含む。いくつかの実施態様において、前記Treg医薬組成物は、生理食塩水及び5%ヒト血清アルブミンを含む。
【0045】
いくつかの実施態様において、前記方法は、前記Treg医薬組成物をヒト対象へ投与することをさらに含む。いくつかの実施態様において、前記医薬組成物中の前記Tregは、前記ヒト対象にとって自己由来のものである。いくつかの実施態様において、前記ヒト対象は、神経変性障害であると診断されているか又は神経変性障害であると疑われている。いくつかの実施態様において、前記神経変性障害は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、又は前頭側頭型認知症である。
【0046】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書で提供される方法によって製造された凍結保存されたTregの治療用集団である。
【0047】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、解凍後のかつさらなる増殖を行わない本明細書で提供される方法によって製造された凍結保存されたTregの治療用集団、及び医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物である。
【0048】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、炎症細胞による炎症促進性サイトカイン産生によって測定される、該炎症細胞を抑制する能力を示すエクスビボで増殖させたTreg細胞集団であって、該炎症細胞が、ヒトドナー由来であるか又は人工多能性幹細胞から作られたマクロファージ又は単球である、前記エクスビボで増殖させたTreg細胞集団である。いくつかの実施態様において、炎症細胞を抑制する前記能力は、該炎症細胞によるIL-6、TNFα、IL1β、IL8、及び/又はインターフェロン-γ産生によって測定される。いくつかの実施態様において、炎症細胞を抑制する前記能力は、該炎症細胞によるIL-6産生によって測定される。いくつかの実施態様において、前記Treg細胞集団は、ALSのヒト対象にとって自己由来のものである。いくつかの実施態様において、前記Treg細胞集団は、ALSのヒト対象由来の細胞試料から増殖させたものである。
【0049】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書で提供されるエクスビボで増殖させたTreg細胞集団及び医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物である。
【0050】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、炎症細胞による炎症促進性サイトカイン産生によって測定される、該炎症細胞を抑制する能力を示す、凍結保存されたエクスビボで増殖させたTregの治療用集団であって、該炎症細胞が、ヒトドナー由来であるか又は人工多能性幹細胞から作られたマクロファージ又は単球である、前記凍結保存されたエクスビボで増殖させたTregの治療用集団である。いくつかの実施態様において、増殖後のかつ追加の増殖を行わない前記凍結保存されたエクスビボで増殖させたTregの治療用集団の炎症細胞を抑制する前記能力は、凍結保存前の該エクスビボで増殖させたTregのそれの少なくとも70%である。いくつかの実施態様において、炎症細胞を抑制する前記能力は、該炎症細胞によるIL-6、TNFα、IL1β、IL8、及び/又はインターフェロン-γ産生によって測定される。いくつかの実施態様において、炎症細胞を抑制する前記能力は、該炎症細胞によるIL-6産生によって測定される。
【0051】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたエクスビボで増殖させたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、フローサイトメトリー又はチミジン取り込みによるレスポンダーT細胞の増殖の抑制によって決定して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である抑制機能を示す。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたエクスビボで増殖させたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、フローサイトメトリー又はチミジン取り込みによるレスポンダーT細胞の増殖の抑制によって決定して、凍結保存前の該エクスビボで増殖させたTregの抑制機能の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である抑制機能を示す。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたエクスビボで増殖させたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、トリパンブルー染色によって決定して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の生存率を示す。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたエクスビボで増殖させたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、トリパンブルー染色によって決定して、凍結保存前の該Tregの生存率の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である生存率を示す。
【0052】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたエクスビボで増殖させたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、フローサイトメトリーによって決定して、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%のFoxP3+ Tregを含む。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたエクスビボで増殖させたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、フローサイトメトリーによって決定して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のCD4+CD25+細胞を含む。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたエクスビボで増殖させたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、フローサイトメトリーによって決定して、20%未満のCD8+細胞を含む。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたエクスビボで増殖させたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、フローサイトメトリーによって決定して、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%のCD4+CD25highCD127low Tregを含む。いくつかの実施態様において、前記エクスビボで増殖させたTregは、ALSのヒト対象にとって自己由来のものである。いくつかの実施態様において、前記エクスビボで増殖させたTregは、ALSのヒト対象由来の細胞試料から増殖させたものである。
【0053】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、解凍後のかつさらなる増殖を行わない本明細書で提供される凍結保存されたTregの治療用集団、及び医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物である。
【0054】
いくつかの実施態様において、前記エクスビボで増殖させたTreg細胞集団は、抑制機能を示し、該抑制機能は、フローサイトメトリー又はチミジン取り込みによるレスポンダーT細胞の増殖の抑制によって決定して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である。いくつかの実施態様において、前記エクスビボで増殖させたTreg細胞集団は、抑制機能を示し、該抑制機能は、フローサイトメトリー又はチミジン取り込みによるレスポンダーT細胞の増殖の抑制によって決定して、ベースラインTregのそれの少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、又は少なくとも150%である。いくつかの実施態様において、前記エクスビボで増殖させたTregは、ALSのヒト対象にとって自己由来のものである。いくつかの実施態様において、前記エクスビボで増殖させたTregは、ALSのヒト対象由来の細胞試料から増殖させたものである。
【0055】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、解凍後のかつさらなる増殖を行わない本明細書で提供されるエクスビボで増殖させたTreg細胞集団、及び医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物である。
【0056】
いくつかの実施態様において、増殖後のかつ追加の増殖を行わない前記エクスビボで増殖させたTregの炎症細胞を抑制する能力は、凍結保存前の該エクスビボで増殖させたTregのそれの少なくとも70%である。いくつかの実施態様において、前記エクスビボで増殖させたTregの炎症細胞を抑制する能力は、該炎症細胞によるIL-6、TNFα、IL1β、IL8、及び/又はインターフェロン-γ産生によって測定される。いくつかの実施態様において、炎症細胞を抑制する前記能力は、該炎症細胞によるIL-6産生によって測定される。
【0057】
いくつかの実施態様において、前記エクスビボで増殖させたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、フローサイトメトリー又はチミジン取り込みによるレスポンダーT細胞の増殖の抑制によって決定して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である抑制機能を示す。いくつかの実施態様において、前記エクスビボで増殖させたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、フローサイトメトリー又はチミジン取り込みによるレスポンダーT細胞の増殖の抑制によって決定して、凍結保存前の前記エクスビボで増殖させたTregの前記抑制機能の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である抑制機能を示す。いくつかの実施態様において、前記エクスビボで増殖させたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、トリパンブルー染色によって決定して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の生存率を示す。
【0058】
いくつかの実施態様において、前記エクスビボで増殖させたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、トリパンブルー染色によって決定して、凍結保存前の前記Tregの生存率の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である生存率を示す。
【0059】
いくつかの実施態様において、前記エクスビボで増殖させたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、フローサイトメトリーによって決定して、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%のFoxP3+ Tregを含む。いくつかの実施態様において、前記エクスビボで増殖させたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、フローサイトメトリーによって決定して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のCD4+CD25+細胞を含む。いくつかの実施態様において、前記エクスビボで増殖させたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、フローサイトメトリーによって決定して、20%未満のCD8+細胞を含む。いくつかの実施態様において、前記エクスビボで増殖させたTregの治療用集団は、解凍後にかつ追加の増殖を行わずに、フローサイトメトリーによって決定して、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%のCD4+CD25highCD127low Tregを含む。いくつかの実施態様において、前記エクスビボで増殖させたTregは、ALSのヒト対象にとって自己由来のものである。いくつかの実施態様において、前記エクスビボで増殖させたTregは、ALSのヒト対象由来の細胞試料から増殖させたものである。いくつかの実施態様において、遺伝子産物発現は、シングルショットプロテオミクス解析によって決定される。
【0060】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、解凍後のかつさらなる増殖を行わない本明細書で提供されるエクスビボで増殖させたTregの治療用集団を含む前記凍結保存された組成物、及び医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物である。
【0061】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、Treg機能障害に関連する障害を治療する方法であって:該治療を必要とする対象に、Tregの治療用集団を含む医薬組成物を投与することを含み、該Tregが、エクスビボで増殖されかつ凍結保存されており、かつ該Tregが、該投与することの前にさらに増殖されない、前記方法である。
【0062】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、Treg欠乏に関連する障害を治療する方法であって:該治療を必要とする対象に、Tregの治療用集団を含む医薬組成物を投与することを含み、該Tregが、エクスビボで増殖されかつ凍結保存されており、かつ該Tregが、該投与することの前にさらに増殖されない、前記方法である。
【0063】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、免疫系の過剰活性化に関連する障害を治療する方法であって:該治療を必要とする対象に、Tregの治療用集団を含む医薬組成物を投与することを含み、該Tregが、エクスビボで増殖されかつ凍結保存されており、かつ該Tregが、該投与することの前にさらに増殖されない、前記方法である。
【0064】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、T細胞応答によって推進される炎症状態を治療する方法であって:該治療を必要とする対象に、Tregの治療用集団を含む医薬組成物を投与することを含み、該Tregが、エクスビボで増殖されかつ凍結保存されており、かつ該Tregが、該投与することの前にさらに増殖されない、前記方法である。
【0065】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、骨髄系細胞応答によって推進される炎症状態を治療する方法であって:該治療を必要とする対象に、Tregの治療用集団を含む医薬組成物を投与することを含み、該Tregが、エクスビボで増殖されかつ凍結保存されており、かつ該Tregが、該投与することの前にさらに増殖されない、前記方法である。いくつかの実施態様において、前記骨髄系細胞は、単球、マクロファージ、又はミクログリアである。
【0066】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象において神経変性障害を治療する方法であって:該対象にTregの治療用集団を含む医薬組成物を投与することを含み、該Tregが、エクスビボで増殖されかつ凍結保存されており、かつ該Tregが、該投与することの前にさらに増殖されない、前記方法である。いくつかの実施態様において、前記神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症、又はハンチントン病である。
【0067】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象において自己免疫障害を治療する方法であって:該対象にTregの治療用集団を含む医薬組成物を投与することを含み、該Tregが、エクスビボで増殖されかつ凍結保存されており、かつ該Tregが、該投与することの前にさらに増殖されない、前記方法である。いくつかの実施態様において、前記自己免疫障害は、多発性筋炎、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、クローン病、セリアック病、全身性硬化症(強皮症)、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)、I型糖尿病、乾癬、皮膚筋炎(dermatomyosititis)、ループス、例えば、全身性エリテマトーデスもしくは皮膚ループス、重症筋無力症、自己免疫性腎症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血球減少、自己免疫性脳炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性ブドウ膜炎、脱毛症、甲状腺炎、又は天疱瘡である。
【0068】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象において移植片対宿主病を治療する方法であって:該対象にTregの治療用集団を含む医薬組成物を投与することを含み、該Tregが、エクスビボで増殖されかつ凍結保存されており、かつ該Tregが、該投与することの前にさらに増殖されない、前記方法である。いくつかの実施態様において、前記対象は、骨髄移植、腎移植、又は肝移植を受けている。
【0069】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象において膵島移植片の生存を向上させる方法であって:膵島移植術を、該対象にTregの治療用集団を含む医薬組成物を投与することと組み合わせることを含み、該Tregが、エクスビボで増殖されかつ凍結保存されており、かつ該Tregが、該投与することの前にさらに増殖されない、前記方法である。
【0070】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象において心臓の炎症を治療する方法であって:該対象にTregの治療用集団を含む医薬組成物を投与することを含み、該Tregが、エクスビボで増殖されかつ凍結保存されており、かつ該Tregが、該投与することの前にさらに増殖されない、前記方法である。いくつかの実施態様において、前記心臓の炎症は、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、虚血性心筋症、又は心不全と関連する。
【0071】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象において神経炎症を治療する方法であって:該対象にTregの治療用集団を含む医薬組成物を投与することを含み、該Tregが、エクスビボで増殖されかつ凍結保存されており、かつ該Tregが、該投与することの前にさらに増殖されない、前記方法である。いくつかの実施態様において、前記神経炎症は、卒中、急性散在性脳脊髄炎、急性視神経炎、急性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎、視神経脊髄炎、てんかん、外傷性脳損傷、脊髄損傷、脳炎、中枢神経系血管炎、神経サルコイドーシス、自己免疫性もしくは感染後脳炎、又は慢性髄膜炎と関連する。
【0072】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象においてTreg症を治療する方法であって:該対象にTregの治療用集団を含む医薬組成物を投与することを含み、該Tregが、エクスビボで増殖されかつ凍結保存されており、かつ該Tregが、該投与することの前にさらに増殖されない、前記方法である。いくつかの実施態様において、前記Treg症は、FOXP3、CD25、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)、LPS反応性ベージュ様アンカータンパク質(LRBA)、又はBTBドメイン及びCNCホモログ2(BACH2)遺伝子機能喪失型変異、又はシグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)機能獲得型変異によって引き起こされる。
【0073】
本明細書で提供される治療の方法のいくつかの実施態様において、前記Tregは、前記対象にとって自己由来のものである。本明細書で提供される治療の方法の別の実施態様において、前記Tregは、前記対象にとって同種異系のものである。
【0074】
本明細書で提供される治療の方法のいくつかの実施態様において、前記組成物は、本明細書で提供される医薬組成物である。
【0075】
本発明の原理の理解を促すために、ここで、図面に示される実施態様又は実施例に言及し、それを説明するために具体的な言いまわしが用いられる。しかしながら、それによって、本発明の範囲の限定が意図されないことが理解されるものとする。本発明が関連する分野における通常の知識を有する者の頭に通常浮かぶであろうような、記載される実施態様における任意の改変及びさらなる改良、並びに本明細書に記載される本発明の原理の任意のさらなる応用が予測される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
(5. 図面の簡単な説明)
【
図1】
図1は、バイオリアクター内でTregの治療用集団を製造するプロセスのフローチャートを示す。
【0077】
【
図2】
図2は、6回のTreg増殖試行についてTreg細胞数をバイオリアクター内でのインキュベーション時間に対して示すグラフである。
【0078】
【
図3】
図3は、前記6回の試行から得られたベースライン、凍結前、及び解凍後における試料中の凍結保存されたTregの生存率を示す。
【0079】
【
図4】
図4は、前記6回の試行から得られたベースライン試料及び解凍後試料中のCD4+CD25+ Treg細胞の百分率を示す。
【0080】
【
図5】
図5は、前記6回の試行から得られたベースライン試料及び解凍後試料中のCD4+CD25+FOXP3+ Treg細胞の百分率を示す。
【0081】
【
図6】
図6は、前記6回の試行から得られたベースライン試料及び解凍後試料中のCD4+CD25+CD127+loFOXP3+Treg細胞の百分率を示す。
【0082】
【
図7】
図7は、ベースラインTreg試料及び解凍後Treg試料中の凍結保存されたTreg細胞の抑制機能を示す。
【0083】
【
図8】
図8は、ベースラインTreg試料及び解凍後Treg試料中の凍結保存されたTreg細胞におけるFoxP3のタンパク質レベルを示す。
【0084】
【
図9】
図9は、ベースラインTreg試料及び解凍後Treg試料中の凍結保存されたTreg細胞におけるCD25のタンパク質レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
(6. 例示的な実施態様)
発明の例示的な実施態様が、以下の文書に含まれる。明確性のために、実際の実施の全ての特徴が、本明細書に記載されるわけではない。勿論、任意のそのような実際の実施態様の開発において、ある実施と別の実施とでは異なるものであるシステム関連及び事業関連の制約への適合などの開発者の特定の目的を達成するには、実施に特異的な決定が多数なされなければならないことが認識されるであろう。さらに、そのような開発への取り組みは、複雑かつ/又は時間がかかるものであり得るが、本件開示の利益を受ける当業者にとってルーチンの仕事であろうことが認識されるであろう。
【0086】
一実施態様において、本明細書で提供されるのは、凍結保存された制御性T細胞(Treg)の治療用集団を製造する方法であって、(a)Tregを含有していると思われる白血球アフェレーシス試料由来のTregを濃縮して、ベースラインTreg細胞集団を製造する工程;(b)該ベースラインTreg細胞集団を増殖させて、増殖させたTreg細胞集団を製造する工程であって、該ベースラインTreg細胞集団が、工程(b)の開始前に凍結保存されず、かつ工程(b)が、バイオリアクター内で行われる、前記工程;及び(c)該増殖させたTreg細胞集団を凍結保存して、凍結保存されたTregの治療用集団を製造する工程を含み、該濃縮する工程が、該白血球アフェレーシス試料を得てから約30~90分以内に開始され、かつ該増殖工程が、該濃縮工程の完了から約30~90分以内に開始される、前記方法である。
【0087】
一実施態様において、本明細書で提供されるのは、凍結保存された制御性T細胞(Treg)の治療用集団を製造する方法であって、(a)Tregを含有していると思われる白血球アフェレーシス試料由来のTregを濃縮して、ベースラインTreg細胞集団を製造する工程;(b)該ベースラインTreg細胞集団を増殖させて、増殖させたTreg細胞集団を製造する工程であって、該ベースラインTreg細胞集団が、工程(b)の開始前に凍結保存されず、かつ工程(b)が、バイオリアクター内で行われる、前記工程;及び(c)該増殖させたTreg細胞集団を凍結保存して、凍結保存されたTregの治療用集団を製造する工程を含み、該濃縮する工程が、該白血球アフェレーシス試料を得てから約30~90分以内に開始され、該増殖工程が、該濃縮工程の完了から約30~90分以内に開始され、かつ該凍結保存工程が、約15~25日の増殖の後に開始される、前記方法である。
【0088】
一実施態様において、本明細書で提供されるのは、凍結保存された制御性T細胞(Treg)の治療用集団を製造する方法であって、(a)Tregを含有していると思われる白血球アフェレーシス試料由来のTregを濃縮して、ベースラインTreg細胞集団を製造する工程;(b)該ベースラインTreg細胞集団を増殖させて、増殖させたTreg細胞集団を製造する工程であって、該ベースラインTreg細胞集団が、工程(b)の開始前に凍結保存されず、かつ工程(b)が、バイオリアクター内で行われる、前記工程;及び(c)該増殖させたTreg細胞集団を凍結保存して、凍結保存されたTregの治療用集団を製造する工程を含み、該濃縮する工程が、該白血球アフェレーシス試料を得てから約30~90分以内に開始され、かつ該増殖工程が、(i)該濃縮工程の完了から約30~90分以内に開始され、(ii)抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズを含む培養培地中で前記Tregを培養することを含み、かつ(iii)2~3日毎の該培養培地への増殖剤の添加を含む、前記方法である。
【0089】
一実施態様において、本明細書で提供されるのは、凍結保存された制御性T細胞(Treg)の治療用集団を製造する方法であって、(a)Tregを含有していると思われる白血球アフェレーシス試料由来のTregを濃縮して、ベースラインTreg細胞集団を製造する工程;(b)該ベースラインTreg細胞集団を増殖させて、増殖させたTreg細胞集団を製造する工程であって、該ベースラインTreg細胞集団が、工程(b)の開始前に凍結保存されず、かつ工程(b)が、バイオリアクター内で行われる、前記工程;及び(c)該増殖させたTreg細胞集団を凍結保存して、凍結保存されたTregの治療用集団を製造する工程を含み、該濃縮する工程が、該白血球アフェレーシス試料を得てから約30~90分以内に開始され、かつ該増殖工程が、(i)該濃縮工程の完了から約30~90分以内に開始され、(ii)培養を開始してから24時間以内に、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズを、細胞培養培地に添加することを含み、かつ(iii)2~3日毎の該培養培地への増殖剤の添加を含む、前記方法である。
【0090】
一実施態様において、本明細書で提供されるのは、凍結保存された制御性T細胞(Treg)の治療用集団を製造する方法であって、(a)Tregを含有していると思われる白血球アフェレーシス試料由来のTregを濃縮して、ベースラインTreg細胞集団を製造する工程;(b)該ベースラインTreg細胞集団を増殖させて、増殖させたTreg細胞集団を製造する工程であって、該ベースラインTreg細胞集団が、工程(b)の開始前に凍結保存されず、かつ工程(b)が、バイオリアクター内で行われる、前記工程;及び(c)該増殖させたTreg細胞集団を凍結保存して、凍結保存されたTregの治療用集団を製造する工程を含み、該濃縮する工程が、該白血球アフェレーシス試料を得てから約30~90分以内に開始され、かつ該増殖工程が、(i)該濃縮工程の完了から約30~90分以内に開始され、(ii)培養を開始してから約24時間以内に、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズを、細胞培養培地に添加することを含み、かつ(iii)該培養を開始してから約6日以内に開始される、2~3日毎の該培養培地への増殖剤の添加を含む、前記方法である。
【0091】
一実施態様において、本明細書で提供されるのは、凍結保存された制御性T細胞(Treg)の治療用集団を製造する方法であって、(a)Tregを含有していると思われる白血球アフェレーシス試料由来のTregを濃縮して、ベースラインTreg細胞集団を製造する工程;(b)該ベースラインTreg細胞集団を増殖させて、増殖させたTreg細胞集団を製造する工程であって、該ベースラインTreg細胞集団が、工程(b)の開始前に凍結保存されず、かつ工程(b)が、バイオリアクター内で行われる、前記工程;及び(c)該増殖させたTreg細胞集団を凍結保存して、凍結保存されたTregの治療用集団を製造する工程を含み、該濃縮する工程が、該白血球アフェレーシス試料を得てから約30~90分以内に開始され、かつ該増殖工程が、(i)該濃縮工程の完了から約30~90分以内に開始され、(ii)培養を開始してから約24時間以内に、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズを、細胞培養培地に添加することを含み、かつ(iii)該培養を開始してから約6日以内に開始される、2~3日毎の該培養培地への増殖剤の添加を含む、前記方法である。
【0092】
一実施態様において、本明細書で提供されるのは、凍結保存された制御性T細胞(Treg)の治療用集団を製造する方法であって、(a)Tregを含有していると思われる白血球アフェレーシス試料由来のTregを濃縮して、ベースラインTreg細胞集団を製造する工程;(b)該ベースラインTreg細胞集団を増殖させて、増殖させたTreg細胞集団を製造する工程であって、該ベースラインTreg細胞集団が、工程(b)の開始前に凍結保存されず、かつ工程(b)が、バイオリアクター内で行われる、前記工程;及び(c)該増殖させたTreg細胞集団を凍結保存して、凍結保存されたTregの治療用集団を製造する工程を含み、該濃縮する工程が、該白血球アフェレーシス試料を得てから約30~90分以内に開始され、かつ該増殖工程が、(i)該濃縮工程の完了から約30~90分以内に開始され、(ii)培養を開始してから約24時間以内に、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズを、細胞培養培地に添加することを含み、かつ(iii)該培養を開始してから約6日以内に開始される、2~3日毎の該培養培地へのIL-2の添加を含む、前記方法である。
【0093】
一実施態様において、本明細書で提供されるのは、凍結保存された制御性T細胞(Treg)の治療用集団を製造する方法であって、(a)Tregを含有していると思われる白血球アフェレーシス試料由来のTregを濃縮して、ベースラインTreg細胞集団を製造する工程;(b)該ベースラインTreg細胞集団を増殖させて、増殖させたTreg細胞集団を製造する工程であって、該ベースラインTreg細胞集団が、工程(b)の開始前に凍結保存されず、かつ工程(b)が、バイオリアクター内で行われる、前記工程;及び(c)該増殖させたTreg細胞集団を凍結保存して、凍結保存されたTregの治療用集団を製造する工程を含み、該濃縮する工程が、該白血球アフェレーシス試料を得てから約30~90分以内に開始され、かつ該増殖工程が、(i)該濃縮工程の完了から約30~90分以内に開始され、(ii)培養を開始してから約24時間以内に、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズを、細胞培養培地に添加することを含み、(iii)該培養を開始してから約6日以内に開始される、2~3日毎の該培養培地への増殖剤の添加を含み、かつ(iv)該培養の開始から約24時間以内に開始される、2~3日毎にラパマイシンを該培養培地に添加することを含む、前記方法である。
【0094】
一実施態様において、本明細書で提供されるのは、凍結保存された制御性T細胞(Treg)の治療用集団を製造する方法であって、(a)Tregを含有していると思われる白血球アフェレーシス試料由来のTregを濃縮して、ベースラインTreg細胞集団を製造する工程;(b)該ベースラインTreg細胞集団を増殖させて、増殖させたTreg細胞集団を製造する工程であって、該ベースラインTreg細胞集団が、工程(b)の開始前に凍結保存されず、かつ工程(b)が、バイオリアクター内で行われる、前記工程;及び(c)該増殖させたTreg細胞集団を凍結保存して、凍結保存されたTregの治療用集団を製造する工程を含み、該濃縮する工程が、該白血球アフェレーシス試料を得てから約30~90分以内に開始され、該増殖工程が、(i)該濃縮工程の完了から約30~90分以内に開始され、(ii)培養を開始してから約24時間以内に、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズを、細胞培養培地に添加することを含み、(iii)該培養を開始してから約6日以内に開始される、2~3日毎の該培養培地への増殖剤の添加を含み、かつ(iv)該培養の開始から約24時間以内に開始される、2~3日毎にラパマイシンを該培養培地に添加することを含み、かつ該凍結保存工程が、約15~25日の増殖の後に開始される、前記方法である。
【0095】
本明細書に記載される例示的な生産プロセスの詳細な全体像を、
図1に示す。臨床的療法用にTregを単離する場合、CD8/CD19枯渇工程及びそれに続くCD25濃縮工程が、一般に採用され、Tregの生存及び増殖を支持するIL-2及びTreg集団を安定化するラパマイシンの存在下でのエクスビボ増殖が後に続く。この単離及び増殖戦略は、炎症促進性集団(すなわち、細胞傷害性CDS+T細胞及びTエフェクター細胞)の量を減少させ、最終のTreg生成物の純度を高める。このTregの頑健な生産は、白血球アフェレーシス及びエクスビボ分離によって単離することができる循環Tregの数が少ないことによって制限される。従って、十分な数のTregを得てより長い期間患者を治療するためには、大規模なエクスビボ増殖が必須である。機能的に損なわれたTreg、例えば、自己由来のALS由来Tregの増殖は、さらに一層困難である。
【0096】
ルー・ゲーリック病としても知られる筋萎縮性側索硬化症は、上位及び下位運動ニューロンの容赦ない変性を特徴とする急速進行性の致命的な神経変性疾患である。免疫系の調節不全が、ALS疾患の進行を早めることがあることを示す証拠が増えている。特に、Tregが、ALSの患者において減少しており、より顕著な減少が、より急速な疾患の進行と関連している。Tregは、神経炎症反応を抑制するCD4+CD25hi hFOXP3+細胞からなるT-リンパ球の亜集団である。ALSの治療としての自己由来のTregの養子移入の安全性及び治療的可能性が、第1相臨床試験で実証されている。より多数のALS患者が1年間にわたる月1回のTregの投与で治療されることとなる第2相試験を完了するためには、少なくとも20億個、好ましくは、少なくとも25億個の各試験参加者由来のTregの生産が、投薬需要を満たすのに必要とされる。類似の需要が、承認される治療レジメンに必要とされるであろう。
【0097】
本明細書に記載されるTreg生産プロセスは、頑健なTreg増殖及び有害でない凍結保存を提供する。現行のTreg生産プロトコールは、複雑かつ非常に骨が折れるものであり、生産費用をつり上げ、多数の患者、例えば、ALS又はアルツハイマー病などの神経変性疾患の患者のための療法として持続不可能なものとなっている。本明細書に記載されるバイオリアクターベースの方法は、生産プロセス、例えば、cGMP生産プロセスの最適化を通じて低い費用で生産の難題に対処する。さらに、本明細書に記載される方法は、Tregが凍結保存されかつさらなる増殖を行わずに解凍された場合であっても維持される優れた抑制機能を有する強化されたTreg生成物を製造し、ここで、該Tregは、患者に注入で戻された場合に、より効果があるものであり得る。
【0098】
例えば、本明細書に記載される改良Treg生産プロセスは、ALSにおける疾患の進行を強力に減速する療法の開発の前進に重要である。これは、該改良Treg生産プロセスが、現行の及び将来のALSの臨床試験のため及び治療的ALSレジメンのためのプラットフォームを提供し、連続する用量で延長された治療期間にわたるALS由来の自己由来Tregの効果的な凍結保存を可能とし、機能的に優れたTreg生成物を生み出し、かつ、場合によっては、疾患、例えば、ALS及びアルツハイマー病などの神経変性疾患、1型糖尿病及び関節リウマチなどの自己免疫疾患、並びに骨髄移植後の移植片対宿主病(GVHD)などのGVHDの治療に使用し得る「既製の免疫特権Treg療法(off-the-shelf immune- privileged Treg therapy)」であるためである。
【0099】
制御性T細胞(Treg)は、末梢循環におけるCD4+ T細胞の5~10%を占める。その機能障害は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の急速な進行の一因となる。ALSの患者から単離されたTregの抑制機能は、インターロイキン(IL)-2及びラパマイシンとのエクスビボ増殖後に正常化する。従って、増殖させた機能的Tregは、進行の速度を減速し得る有望なALSの治療となる。しかしながら、該Treg集団の進行中の疾患過程に対する特別の感受性及び提案される治療の自己由来の性質が、潜在的には数千の患者におけるALSと戦うことができるであろうTreg療法の開発に著しい難題をもたらしている。ALS患者のための実用的なTreg生産プロセスは、患者にTreg単離のために頻回の白血球アフェレーシス処置を受けさせることを回避するのに十分な数の高度に抑制性のTregを生じさせる増殖段階を必要とする。最適化されたTreg用量の頻回の注入が、ALSが進行するにつれて生じる進行性の神経炎症性環境を継続的に抑制するのに必要とされるであろう。各注入の前に各ALS患者由来のTregを増殖させることは非実用的であると思われるために、凍結保存プロセスの開発は、細胞生産の患者1名あたりの費用及び潜在的には数千のALSの患者のためのTreg療法を開発するのに必要とされるであろう人手を削減するのに極めて重要である。本明細書に記載されるTreg生産プロセスは、治療レジメンにおけるそれらの応用のため、例えば、例として、ALS及びアルツハイマー病などの神経変性障害、1型糖尿病及び関節リウマチなどの自己免疫障害、及び骨髄移植後のものなどの移植片対宿主病(GVHD)などの障害を治療する方法におけるそれらの応用のため、並びにALS患者及び場合によってはアルツハイマー病などの他の神経変性疾患の将来の臨床試験におけるそれらの応用のために、多数の高度に抑制性のTregを製造し凍結保存するのに最適化されている。最適化されたTreg療法は、増殖段階及び注入の回数を最小化し、これによって、該療法が、より費用効率が高く持続可能なものとなる。
【0100】
さらなる例示的な実施態様は、以下の通りである:
1. 凍結保存された制御性T細胞(Treg)の治療用集団を製造する方法であって、
a. Tregを含有していると思われる細胞試料由来のTregを濃縮して、ベースラインTreg細胞集団を製造する工程;
b. 該ベースラインTreg細胞集団を増殖させて、増殖させたTreg細胞集団を製造する工程であって、該ベースラインTreg細胞集団が、工程(b)の開始前に凍結保存されず、かつ工程(b)が、バイオリアクター内で行われる、前記工程;及び
c. 該増殖させたTreg細胞集団を凍結保存して、凍結保存されたTregの治療用集団を製造する工程
を含む、前記方法である。
2. 工程(a)が、CD8+/CD19+細胞を枯渇させ、次いでCD25+細胞に関して濃縮することを含む、実施態様1記載の方法。
3. 工程(b)が、工程(a)の後約30分以内に実施される、実施態様1又は2記載の方法。
4. 工程(b)が、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズを含む培養培地中で前記Tregを培養することを含む、実施態様1~3のいずれか1つ記載の方法。
5. 工程(b)が、前記培養の開始から約24時間以内に、前記ビーズを前記培養培地に添加することを含む、実施態様4記載の方法。
6. 工程(b)が、工程(a)の完了の後約30分以内に、前記ビーズを前記培養培地に添加することを含む、実施態様4又は5記載の方法。
7. 工程(b)が、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズが前記培養培地に初めて添加されてから約11日後に、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズを該培養培地に添加することを含む、実施態様4~6のいずれか1つ記載の方法。
8. 工程(b)が、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズが前記培養培地に初めて添加されてから約11日後に、細胞数がその時までに目標細胞数に到達していない場合に、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で被覆されたビーズを該培養培地に添加することを含む、実施態様7記載の方法。
9. 前記目標細胞数が、2.5×109細胞である、実施態様8記載の方法。
10. 工程(b)が、インターロイキン-2(IL-2)を含む培養培地中で前記Tregを培養することを含む、実施態様1~9のいずれか1つ記載の方法。
11. 工程(b)が、前記培養の開始から約24時間以内に、IL-2を前記培養培地に添加することを含む、実施態様10記載の方法。
12. 工程(b)が、工程(a)の完了の後約30分以内に、IL-2を前記培養培地に添加することを含む、実施態様10又は11記載の方法。
13. 工程(b)が、IL-2が前記培養培地に初めて添加された後に約3~4日毎に、該培養培地にIL-2を補充することを含む、実施態様10~12のいずれか1つ記載の方法。
14. 工程(b)が、細胞数に応じてIL-2濃度を調整することを含む、実施態様10~13のいずれか1つ記載の方法。
15. 工程(b)が、細胞数が、600×106に到達するまで前記Tregを約200 IU/mLのIL-2を含有する培養培地中で培養すること、及び、次いで、該Tregを約250 IU/mLのIL-2を含有する培養培地中で培養することを含む、実施態様14記載の方法。
16. 工程(b)が、前記Tregを、ラパマイシンを含む培養培地中で培養することを含む、実施態様1~15のいずれか1つ記載の方法。
17. 工程(b)が、前記培養の開始から約24時間以内に、ラパマイシンを前記培養培地に添加することを含む、実施態様16記載の方法。
18. 工程(b)が、工程(a)の完了の後約30分以内に、ラパマイシンを前記培養培地に添加することを含む、実施態様16又は17記載の方法。
19. 工程(b)が、細胞数に応じて前記バイオリアクターの毛細管外(EC)培地の流量を調整することを含む、実施態様1~18のいずれか1つ記載の方法。
20. 前記毛細管外培地が、ラパマイシンを含む、実施態様19記載の方法。
21. 工程(b)が、細胞数が500×106に到達するまで前記EC培地の流量を0に維持すること、次いで、該EC培地の流量を約0.2mL/分まで増加させること及び細胞数が750×106に到達するまで該EC培地の流量を約0.2mL/分に維持すること、次いで、該EC培地の流量を約0.4mL/分まで増加させること及び細胞数が約1,000×106に到達するまで該EC培地の流量を約0.4mL/分に維持すること、次いで、該EC培地の流量を約0.6mL/分まで増加させること及び細胞数が約1,500×106に到達するまで該EC培地の流量を約0.6mL/分に維持すること、並びに、次いで、該EC培地の流量を約0.8mL/分まで増加させること及び該EC培地の流量を約0.8mL/分に維持することを含む、実施態様19又は20記載の方法。
22. 前記細胞試料が、白血球アフェレーシス細胞試料である、実施態様1~21のいずれか1つ記載の方法。
23. 工程(b)が、自動化されている、実施態様1~22のいずれか1つ記載の方法。
24. 工程(b)が、閉鎖系で行われる、実施態様1~23のいずれか1つ記載の方法。
25. 工程(a)が、自動化されている、実施態様1~24のいずれか1つ記載の方法。
26. 工程(a)が、閉鎖系で行われる、実施態様1~25のいずれか1つ記載の方法。
27. 工程(a)及び工程(b)が、異なる系で行われる、実施態様1~26のいずれか1つ記載の方法。
28. 工程(a)によって製造される前記ベースラインTreg細胞集団が、閉鎖工程で、工程(b)における前記バイオリアクターに移される、実施態様27記載の方法。
29. 工程(a)が、閉鎖系で行われ、工程(b)が、閉鎖系で行われ、かつ工程(a)によって製造される前記ベースラインTreg細胞集団が、閉鎖工程で、工程(b)における前記バイオリアクターに移される、実施態様27記載の方法。
30. 工程(a)及び工程(b)が、同じ系で行われる、実施態様1~26のいずれか1つ記載の方法。
31. 前記同じ系が、閉鎖系である、実施態様30記載の方法。
32. 前記凍結保存されたTregの治療用集団を解凍すること、及びさらなる増殖を行わずに、該集団を医薬として許容し得る担体を含む組成物中に入れて、医薬組成物を製造することをさらに含む、実施態様1~31のいずれか1つ記載の方法。
33. 前記医薬組成物を対象に投与することをさらに含む、実施態様32記載の方法。
34. 前記医薬組成物中の前記Tregが、前記対象にとって自己由来のものである、実施態様33記載の方法。
35. 前記医薬組成物中の前記Tregが、前記対象にとって同種異系のものである、実施態様33記載の方法。
36. 前記対象が、ヒト対象である、実施態様33~35のいずれか1つ記載の方法。
37. 実施態様1~31のいずれか1つ記載の方法によって製造された、凍結保存されたTregの治療用集団。
38. 実施態様37記載の凍結保存されたTregの治療用集団の解凍されておりかつ増殖させていない形態、及び医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物。
39. 実施態様32~36のいずれか1つ記載の方法によって製造された医薬組成物。
40. それを必要としている対象においてTreg機能障害に関連する障害を治療する方法であって、該対象に、実施態様38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
41. それを必要としている対象においてTreg欠乏に関連する障害を治療する方法であって、該対象に、実施態様38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
42. それを必要としている対象において免疫系の過剰活性化に関連する障害を治療する方法であって、該対象に、実施態様38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
43. それを必要としている対象においてT細胞応答によって推進される炎症状態を治療する方法であって、該対象に、実施態様38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
44. それを必要としている対象において骨髄系細胞応答によって推進される炎症状態を治療する方法であって、該対象に、実施態様38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
45.前記骨髄系細胞が、単球、マクロファージ、又はミクログリアである、実施態様44記載の方法。
46. それを必要としている対象において神経変性障害を治療する方法であって、該対象に、実施態様38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
47. 前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症、又はハンチントン病である、実施態様46記載の方法。
48. それを必要としている対象において自己免疫障害を治療する方法であって、該対象に、実施態様38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
49. 前記自己免疫障害が、多発性筋炎、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、クローン病、セリアック病、全身性硬化症(強皮症)、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)、I型糖尿病、乾癬、皮膚筋炎、ループス、例えば、全身性エリテマトーデスもしくは皮膚ループス、重症筋無力症、自己免疫性腎症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血球減少、自己免疫性脳炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性ブドウ膜炎、脱毛症、甲状腺炎、又は天疱瘡である、実施態様48記載の方法。
50. それを必要としている対象において移植片対宿主病を治療する方法であって、該対象に、実施態様38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
51. 前記対象が、骨髄移植、腎移植、又は肝移植を受けている、実施態様50記載の方法。
52. それを必要としている対象において膵島移植片の生存を向上させる方法であって、該対象に、実施態様38又は39記載の医薬組成物を、膵島移植術と組み合わせて投与することを含む、前記方法。
53. それを必要としている対象において心臓の炎症を治療する方法であって、該対象に、実施態様38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
54. 前記心臓の炎症が、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、虚血性心筋症、又は心不全と関連する、実施態様53記載の方法。
55. それを必要としている対象において神経炎症を治療する方法であって、該対象に、実施態様38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
56. 前記神経炎症が、卒中、急性散在性脳脊髄炎、急性視神経炎、急性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎、視神経脊髄炎、てんかん、外傷性脳損傷、脊髄損傷、脳炎、中枢神経系血管炎、神経サルコイドーシス、自己免疫性もしくは感染後脳炎、又は慢性髄膜炎と関連する、実施態様55記載の方法。
57. それを必要としている対象においてTreg症を治療する方法であって、該対象に、実施態様38又は39記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
58. 前記Treg症が、FOXP3、CD25、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)、LPS反応性ベージュ様アンカータンパク質(LRBA)、又はBTBドメイン及びCNCホモログ2(BACH2)遺伝子機能喪失型変異、又はシグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)機能獲得型変異によって引き起こされる、実施態様57記載の方法。
【0101】
(7. 詳細な説明)
本明細書で提供されるのは、エクスビボで増殖させたTreg細胞集団を製造するバイオリアクターベースの方法、そのようなTreg細胞集団を含む医薬組成物などのそのようなエクスビボで増殖させたTreg細胞集団を含む組成物、凍結保存されたエクスビボで増殖させた治療用Treg集団、及び解凍後のかつさらなる増殖を行わないそのような凍結保存されたTregを含む医薬組成物である。
【0102】
また、例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、及び前頭側頭型認知症などの神経変性障害の治療などの、本明細書で製造され記載されるTreg細胞集団を利用する治療の方法も本明細書で示される。
【0103】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書で別途示されない限り、当該範囲に入る各個の値に対して個別に言及することの略記法として役立つことのみが意図され、かつ各別々の値は、それが本明細書において個別に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。
【0104】
明確に記載されるか又は文脈から明らかである場合を除き、本明細書で使用される「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「前記/該(the)」という用語は、単数又は複数であると理解され、「1つ以上の」を意味する。
【0105】
「含む(include)」、「など(such as)」、及び類似の用語は、そうでないと明確に示された場合を除き、限定することなく含めることを示唆することが意図される。
【0106】
「又は/もしくは(or)」及び「及び/並びに(and)」という用語は、互換的に使用される場合があり、「及び/又は」を意味するよう理解されることがある。
【0107】
要素(単数又は複数)に関する「~を含む(comprising)」、「~を有する(having)」、「~を含む(including)」、又は「~を含有する(containing)」などの用語を用いる本発明の任意の態様又は実施態様の本明細書における説明は、特に断りのない限り又は文脈によって明確に否定されない限り、当該特定の要素(単数又は複数)「~からなる(consists of)」、「~から本質的になる(consists essentially of)」、又は「~を実質的に含む(substantially comprises)」本発明の類似の態様又は実施態様についての裏付けを提供することが意図される(例えば、特定の要素を備えるとして本明細書に記載される組成物は、特に断りのない限り又は文脈によって明確に否定されない限り、当該要素からなる組成物も記載するものとして理解されるべきである)。
【0108】
本明細書で使用される「約(about)」及び「約(approximately)」という用語は、交換可能であり、一般に、所与の数字の周囲の数の範囲及び記載された数の範囲内の全ての数を意味するよう理解されるべきである(例えば、「約5~15」は、特に断りのない限り「約5~約15」を意味する)。さらに、本明細書における全ての数値範囲は、該範囲内の各整数(whole integer)を含むよう理解されるべきである。特に、別の記載がない限り、この用語は、所与の値又は範囲の±10%以内を意味する。整数が必要とされるである場合には、この用語は、最も近い整数に切り上げ又は切り上げされた、所与の値又は範囲の±10%以内を意味する。
【0109】
(7.1 増殖させたTregの治療用集団を製造する方法)
本明細書で提供されるのは、特に、神経変性疾患、自己免疫疾患、及び炎症性要素を有する他の疾患を治療することに関連する使用のための、増殖させたTreg細胞集団、凍結保存されたTregの治療用集団、及び解凍されてさらなる増殖を行わずに医薬として許容し得る担体を含む組成物中に入れられている凍結保存された増殖させたTregを含む医薬組成物の製造のための方法である。いくつかの実施態様において、前記方法は、体外での患者のTregの増殖及び操作を伴う。
【0110】
本明細書で提供されるTregの治療用集団の製造のための方法は、病理学的疾患又は状態の患者を治療するのに有用であり得る。また、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される方法によって製造されるTregの治療用集団及びその医薬組成物である。
【0111】
いくつかの実施態様において本明細書で提供される方法によって製造されるTregの治療用集団は、臨床応用に有利な性質を有する。例えば、一実施態様において、本明細書で提供される方法によって製造されるTregの治療用集団は、生存率、純度、又は効力の低下を伴わずに凍結保存され得る。例えば、一実施態様において、本明細書で提供される方法によって製造されるエクスビボで増殖させたTregの治療用集団は、凍結保存され得、解凍され得、かつさらなる増殖を行わずに、凍結保存前の該増殖させたTregと比較しての生存率、純度、及び効力の維持を示し得る。別の実施態様において、本明細書に記載される方法によって製造されるTregの治療用集団は、ドナー試料から濃縮されたTregよりも高い抑制性能を有するか又は健康なドナーのTregに匹敵するTregを含む。さらに別の実施態様において、本明細書に記載される方法によって製造されるTregの治療用集団は、ドナー試料から濃縮されたTregには存在しない抑制性能を有するか、又は健康なドナーのTregに匹敵するTregを含む。従って、いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団を製造する方法は、当技術分野において公知の方法と比較して改良された方法である。
【0112】
いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団を製造する方法は、(1)対象から得た細胞集団をTregに関して濃縮する工程;(2)Tregに関して濃縮された該細胞集団のエクスビボ増殖工程、及び/又は(3)該増殖させたTregの凍結保存工程を含む。Tregを含む細胞の集団は、生体試料、例えば、末梢血試料又は胸腺組織から濃縮され得る。ある実施態様において、工程(2)は、自動化されている。ある実施態様において、工程(2)は、閉鎖系で行われる。ある実施態様において、工程(2)は、自動化され、閉鎖系で行われる。具体的な実施態様において、工程(2)は、バイオリアクター(例えば、Terumo BCT Quantum(登録商標)細胞増殖システム)内で行われる。ある実施態様において、工程(1)は、自動化されている。ある実施態様において、工程(1)は、閉鎖系で行われる。ある実施態様において、工程(1)は、自動化され、閉鎖系で行われる。具体的な実施態様において、工程(1)は、CliniMACS Prodigy(登録商標)システム内で行われる。具体的な実施態様において、工程(1)は、CliniMACS(登録商標) Plusシステム内で行われる。いくつかの実施態様において、工程(1)及び工程(2)は、異なる系で行われる(例えば、工程(1)が、CliniMACS Prodigy(登録商標)システム内で行われ、かつ工程(2)が、Terumo BCT Quantum(登録商標)細胞増殖システム内で行われるか、又は工程(1)が、CliniMACS(登録商標) Plusシステム内で行われ、かつ工程(2)が、Terumo BCT Quantum(登録商標)細胞増殖システム内で行われる)。具体的な実施態様において、工程(1)によって製造される濃縮された細胞集団は、閉鎖工程で、工程(2)が行われるシステムに移される。別の実施態様において、工程(1)及び工程(2)は、同じ系で行われる。具体的な実施態様において、前記同じ系は、閉鎖系である。
【0113】
一態様において、本明細書で提供されるのは、凍結保存された制御性T細胞(Treg)の治療用集団を製造する方法であって、(a)Tregを含有していると思われる細胞試料由来のTregを濃縮して、ベースラインTreg細胞集団を製造する工程;(b)該ベースラインTreg細胞集団を増殖させて、増殖させたTreg細胞集団を製造する工程であって、該ベースラインTreg細胞集団が、工程(b)の開始前に凍結保存されず、かつ工程(b)が、バイオリアクター内で行われる、前記工程;及び(c)該増殖させたTreg細胞集団を凍結保存して、凍結保存されたTregの治療用集団を製造する工程を含む、前記方法である。この文脈において、「ベースライン」又は「ベースラインTreg細胞集団」という用語は、患者試料から濃縮されているがまだ増殖させていないTregの集団を意味する。ある実施態様において、工程(b)は、自動化されている。ある実施態様において、工程(b)は、閉鎖系で行われる。ある実施態様において、工程(b)は、自動化され、閉鎖系で行われる。具体的な実施態様において、工程(b)は、Terumo BCT Quantum(登録商標)細胞増殖システム内で行われる。ある実施態様において、工程(a)は、自動化されている。ある実施態様において、工程(a)は、閉鎖系で行われる。ある実施態様において、工程(a)は、自動化され、閉鎖系で行われる。具体的な実施態様において、工程(a)は、CliniMACS Prodigy(登録商標)システム内で行われる。具体的な実施態様において、工程(a)は、CliniMACS(登録商標) Plusシステム内で行われる。いくつかの実施態様において、工程(a)及び工程(b)は、異なる系で行われる(例えば、工程(a)が、CliniMACS Prodigy(登録商標)システム内で行われ、かつ工程(b)が、Terumo BCT Quantum(登録商標)細胞増殖システム内で行われるか、又は工程(a)が、CliniMACS(登録商標) Plusシステム内で行われ、かつ工程(b)が、Terumo BCT Quantum(登録商標)細胞増殖システム内で行われる)。具体的な実施態様において、前記工程(a)によって製造される前記ベースラインTreg細胞集団は、閉鎖工程で、工程(b)における前記バイオリアクターに移される。別の実施態様において、工程(a)及び工程(b)は、同じ系で行われる。具体的な実施態様において、前記同じ系は、閉鎖系である。
【0114】
(7.1.1. Treg濃縮)
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団を製造する方法は、生物学的ドナー試料、例えば、末梢血試料又は胸腺組織由来のTregを濃縮する工程を含む。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、Tregを含有していると思われる血清試料から得られる。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、白血球アフェレーシスによってドナーから得られるTregを含有していると思われる細胞試料から得られる。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、Tregを含有していると思われる生体試料から得られる。本明細書で提供される又は記載されるTregの治療用集団を製造する方法が、凍結保存されたTregの治療用集団を製造する方法を含むことが理解されるであろう。
【0115】
いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、ドナー対象、特に、ヒトドナー対象由来の生体試料から濃縮される。いくつかの実施態様において、前記生体試料の前記ドナーは、前記Tregの治療用集団又はその誘導体で治療される患者対象である。別の実施態様において、前記生体試料の前記ドナーは、前記Tregの治療用集団又はその誘導体によって治療される患者対象とは異なる。生体試料は、Tregを含有していると思われる、Tregを含有している可能性のある、又はTregを含有していることが知られている任意の試料とすることができる。そのような生体試料は、対象から直接採取されてもよく、又は分離、例えば、選択もしくは濃縮、遠心分離、洗浄、及び/又はインキュベーションなどの1つ以上の処理工程の結果として得られる試料であってもよい。生体試料としては、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液などの体液、組織及び器官の試料(それら由来の処理された試料を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
いくつかの態様において、前記試料は、血液もしくは血液由来の試料であるか、又はアフェレーシス又は白血球アフェレーシス生成物であるかもしくはそれから誘導されたものである。例示的な試料としては、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、及び胸腺が挙げられる。
【0117】
いくつかの実施態様において、前記生体試料は、血液由来の試料、例えば、全血、血清、又は血漿から誘導される試料である。いくつかの実施態様において、前記生体試料は、末梢血単核細胞であるか、又はそれを含む。いくつかの実施態様において、前記生体試料は、末梢血又は血清試料である。いくつかの実施態様において、前記生体試料は、リンパ節試料である。
【0118】
いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、ヒト対象である。いくつかの実施態様において、前記ヒトドナーは、健康なドナーである。
【0119】
いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、Treg機能障害に関連する障害であると診断されているか又はそうであると疑われている。いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、Treg欠乏に関連する障害であると診断されているか又はそうであると疑われている。いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、T細胞応答によって推進される状態であると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0120】
いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、神経変性疾患であると診断されているか又はそうであると疑われている。いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、又は前頭側頭型認知症であると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0121】
いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、免疫系の下方制御による利益を受けるであろう障害であると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0122】
いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、自己免疫疾患であると診断されているか又はそうであることが疑われている。該自己免疫疾患は、例えば、全身性硬化症(強皮症)、多発性筋炎、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、クローン病、セリアック病、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)、I型糖尿病、乾癬、皮膚筋炎、ループス、全身性エリテマトーデス、もしくは皮膚ループス、重症筋無力症、自己免疫性腎症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血球減少、自己免疫性肝炎、自己免疫性ブドウ膜炎、脱毛症、甲状腺炎、又は天疱瘡(pemhigus)であり得る。
【0123】
いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、心不全又は虚血性心筋症であると診断されているか又はそうであると疑われている。いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、例えば、臓器移植(腎移植又は肝移植など)を受けた後の、又は幹細胞移植(造血幹細胞移植など)を受けた後の移植片対宿主病であると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0124】
いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、神経炎症であると診断されているか又はそうであると疑われている。神経炎症は、例えば、卒中、急性播種性脳炎、急性視神経炎、横断性脊髄炎、視神経脊髄炎、てんかん、外傷性脳損傷、脊髄損傷、脳炎、中枢神経系(CNS)血管炎、神経サルコイドーシス、自己免疫性もしくは感染後脳炎、又は慢性髄膜炎と関連していることがある。
【0125】
いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害(CIDP)であると診断されているか又はそうであると疑われている。いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、急性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー(AIDP)であると診断されているか又はそうであると疑われている。いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、ギラン・バレー症候群(GBS)であると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0126】
いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、心臓の炎症、例えば、心筋梗塞、虚血性心筋症、心不全に伴う心臓の炎症があると診断されているか又はそうであることが疑われている。
【0127】
いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、卒中を患ったことがある。
【0128】
いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、がん、例えば、血液がんであると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0129】
いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、喘息であると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0130】
いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、湿疹であると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0131】
いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、免疫系の過剰活性化に関連する障害であると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0132】
いくつかの実施態様において、前記ドナー対象は、Treg症であると診断されているか又はそうであると疑われている。該Treg症は、FOXP3、CD25、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)、LPS反応性ベージュ様アンカータンパク質(LRBA)、又はBTBドメイン及びCNCホモログ2(BACH2)遺伝子機能喪失型変異、又はシグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)機能獲得型変異によって引き起こされ得る。
【0133】
そのような生物学的ドナー試料由来のTregを含有していると思われている、含有している可能性のある、又は含有することが知られている細胞の集団を得る方法は、当技術分野において公知である。例えば、リンパ球は、白血球アフェレーシスによって末梢血試料から得ることができよう。いくつかの実施態様において、Tregは、リンパ球の集団から濃縮される。いくつかの実施態様において、度重なる末梢血試料が、Tregを製造するためにドナーから得られる。いくつかの実施態様において、末梢血試料が2回以上、ドナーから得られる。いくつかの実施態様において、25日間増殖させた後に、不十分なTregが、ドナー試料から得られ、後続の試料が得られる。いくつかの実施態様において、前記ドナー試料は、濃縮プロセスの期間内に、減容(例えば、本明細書に記載される方法による減容)を受ける。
【0134】
いくつかの実施態様において、2名以上のドナー由来の生体試料(例えば、白血球アフェレーシス試料)が、濃縮プロセス前にプールされ、同種異系のTregの集団が作製される。いくつかの実施態様において、生体試料(例えば、2、3、4、又は5名のドナー由来の白血球アフェレーシス試料)が、プールされる。
【0135】
Tregは、当技術分野において公知であるか又は本明細書に記載される任意の方法によって生体試料から濃縮され得る。いくつかの実施態様において、Tregは、磁気ビーズ分離(例えば、CliniMACS配管セットLS(162-01)、CliniMACS(登録商標) Plus装置、又はCliniMACS Prodigy(登録商標)装置)、蛍光細胞選別、及び使い捨ての閉鎖カートリッジベースの細胞選別機を用いて試料から濃縮される。
【0136】
1つ以上のマーカーを発現している細胞に関する濃縮とは、細胞の集団におけるそのような細胞の数又は百分率を増加させることを意味するが、必ずしも、該マーカーを発現していない細胞の完全な非存在をもたらすものではない。1つ以上のマーカーを発現している細胞の枯渇は、細胞の集団におけるそのような細胞の数又は百分率を低減させることを意味するが、必ずしも、そのようなマーカー(単数)又はマーカー(複数)を発現している全ての細胞の完全な除去をもたらすものではない。
【0137】
いくつかの実施態様において、濃縮は、1つ以上のマーカー(例えば、Treg細胞表面マーカー)を発現している細胞の親和性又は免疫親和性ベースの分離の工程を含む。そのような分離工程は、該1つ以上のマーカーを発現している細胞が維持される陽性選択に基づくもの、及び/又は1つ以上のマーカーを発現していない細胞が維持される陰性選択(枯渇)に基づくものとすることができる。
【0138】
分離は、1つ以上のマーカー(例えば、Treg細胞表面マーカー)の発現(例えば、陽性もしくは陰性発現)又は発現レベル(例えば、高もしくは低発現)に基づくものであってもよい。この文脈において、「高発現(high expression)」及び「低発現(low expression)」は、一般に、細胞の集団全体と比較してのものである。いくつかの実施態様において、細胞の分離は、CD8発現に基づくものであってもよい。いくつかの実施態様において、細胞の分離は、CD19発現に基づくものであってもよい。いくつかの実施態様において、細胞の分離は、高いCD25発現に基づくものであってもよい。
【0139】
従って、いくつかの実施態様において、Tregの濃縮は、あるマーカー(例えば、Treg細胞表面マーカー)に特異的に結合する抗体又は結合パートナーとのインキュベーション、並びに、一般に、それに続く洗浄工程及び該抗体又は結合パートナーに結合している細胞の該抗体又は結合パートナーに結合していない細胞からの分離を含み得る。
【0140】
いくつかの実施態様において、前記抗体又は結合パートナーは、球又はビーズ、例えば、ナノ粒子、マイクロビーズ、ナノビーズ(アガロース、磁気ビーズ、又は常磁性ビーズなど)などの固体の支持体又はマトリックスに結合している。いくつかの実施態様において、前記球又はビーズをカラム内に充填してイムノアフィニティークロマトグラフィーを実施することができる。いくつかの実施態様において、前記抗体又は結合パートナーは、検出できるように標識化される。いくつかの実施態様において、前記抗体又は結合パートナーは、ナノ粒子又は常磁性ビーズなどの小型の磁気的に反応性の粒子又は微粒子に取り付けられる。そのようなビーズは公知であり、市販されている(例えば、Dynabeads(登録商標)(Life Technologies, Carlsbad, CA)、MACS(登録商標)ビーズ(Miltenyi Biotec, San Diego, CA)、又はStreptamer(登録商標)ビーズ試薬(IBA、ドイツ))。そのような粒子又は微粒子は、濃縮されるべき細胞の集団とインキュベーションされ、次いで、磁場の中に入れられ得る。これにより、磁石に引き寄せられており非結合の細胞から分離されている抗体又は結合パートナーを介して粒子又は微粒子に付着した細胞がもたらされる。この方法は、磁石に付着した細胞の維持(陽性選択)又は磁石に引き寄せられた細胞の除去(陰性選択)を可能とする。
【0141】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団を製造する方法は、濃縮工程の間の陽性及び陰性選択の双方を含む。
【0142】
いくつかの実施態様において、前記生体試料は、前記濃縮する工程の開始から約25~35分、約35~45分、約45~60分、約60~75分、約75~90分、約90~120分、約120~150分、約150~180分、約2~3時間、約3~4時間、約4~5時間、又は約5~6時間以内に得る。いくつかの実施態様において、前記試料は、前記濃縮する工程の開始から約30分以内に得る。いくつかの実施態様において、前記生体試料が、1晩保管(例えば、4℃で保管)されることはない。
【0143】
いくつかの実施態様において、ヒト試料由来のTregの濃縮は、該試料からCD8+細胞を枯渇させることを含む。いくつかの実施態様において、ヒト試料由来のTregの濃縮は、試料からCD19+細胞を枯渇させることを含む。いくつかの実施態様において、生体試料由来のTregの濃縮は、該試料からCD8+細胞及びCD19+細胞を枯渇させることを含む。いくつかの実施態様において、生体試料由来のTregの濃縮は、前記細胞集団をCD25high細胞に関して濃縮することを含む。いくつかの実施態様において、生体試料由来のTregの濃縮は、前記細胞集団をCD25+細胞に関して濃縮することを含む。いくつかの実施態様において、生体試料由来のTregの濃縮は、該試料からのCD8+細胞及びCD19+細胞の枯渇、及び前記細胞集団をCD25high細胞に関して濃縮することを含む。いくつかの実施態様において、生体試料由来のTregの濃縮は、CD8+/CD19+細胞を枯渇させること及びCD25+細胞に関して濃縮することを含む。
【0144】
いくつかの実施態様において、前記Tregに関して濃縮された細胞の集団は、フローサイトメトリーによって決定される濃縮前の該Treg中のCD4+CD25high Tregの割合と比較して増加した割合のCD4+CD25high Tregを含む。具体的な実施態様において、CD4+CD25high Tregの比率は、約2倍~約4倍、約4倍~約6倍、約6倍~約8倍、約8倍~約10倍、約10倍~約15倍、約15倍~約20倍、約20倍~約25倍、約25倍~約30倍、約30倍~約35倍、約35倍~約40倍、約40倍~約45倍、約45倍~約50倍増加している。
【0145】
いくつかの実施態様において、前記Tregに関して濃縮された細胞の集団は、フローサイトメトリーによって決定される濃縮前の該Treg中のCD4+CD25highCD127low Tregの割合と比較して増加した割合のCD4+CD25highCD127low Tregを含む。具体的な実施態様において、CD4+CD25highCD127low Tregの割合は、約2倍~約4倍、約4倍~約6倍、約6倍~約8倍、約8倍~約10倍、約10倍~約15倍、約15倍~約20倍、約20倍~約25倍、約25倍~約30倍、約30倍~約35倍、約35倍~約40倍、約40倍~約45倍、約45倍~約50倍増加している。
【0146】
いくつかの実施態様において、前記Tregに関して濃縮された細胞の集団は、CD25+ Tregを含み、ここで、フローサイトメトリーによって決定される該TregにおけるCD25の発現は、濃縮前の該TregにおけるCD25の発現と比較して増加している。具体的な実施態様において、CD25の発現は、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、又は少なくとも約50倍増加している。
【0147】
いくつかの実施態様において、前記Tregに関して濃縮された細胞の集団は、CD127+ Tregを含み、ここで、フローサイトメトリーによって決定される該TregにおけるCD127の発現は、濃縮前の該TregにおけるCD127の発現と比較して増加している。具体的な実施態様において、前記CD127の発現は、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、又は少なくとも約3倍増加している。
【0148】
いくつかの実施態様において、フローサイトメトリーによって決定される前記濃縮されたTregの集団中のTregの粒度は、濃縮前の該Tregの粒度と比較して増加している。具体的な実施態様において、前記Tregの粒度は、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、又は少なくとも約3倍増加している。
【0149】
いくつかの実施態様において、フローサイトメトリーによって決定される前記濃縮されたTregの集団中のTregのサイズは、濃縮前の該Tregのサイズと比較して増加している。具体的な実施態様において、前記Tregのサイズは、少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.5倍、又は少なくとも約2倍増加している。
【0150】
(7.1.2. エクスビボでTregを増殖させる方法)
別の態様において、本明細書で提供される方法は、生体試料から濃縮された前記Tregの治療用集団を増殖させる工程を含む。
【0151】
いくつかの実施態様において、前記増殖工程は、前記濃縮工程の完了後約4~5日以内に実施される。いくつかの実施態様において、前記増殖工程は、前記濃縮工程の完了後約3~4日以内に実施される。いくつかの実施態様において、前記増殖工程は、前記濃縮工程の完了後約2~3日以内に実施される。いくつかの実施態様において、前記増殖工程は、前記濃縮工程の完了後約1~2日以内に実施される。いくつかの実施態様において、前記増殖工程は、前記濃縮工程の完了後約24時間以内に実施される。いくつかの実施態様において、前記増殖工程は、前記濃縮工程の完了後約12時間以内に実施される。いくつかの実施態様において、前記増殖工程は、前記濃縮工程の完了後約6時間以内に実施される。いくつかの実施態様において、前記増殖工程は、前記濃縮工程の完了後約3時間以内に実施される。いくつかの実施態様において、前記増殖工程は、前記濃縮工程の完了後約2時間以内に実施される。いくつかの実施態様において、前記増殖工程は、前記濃縮工程の完了後約1時間以内に実施される。いくつかの実施態様において、前記増殖工程は、前記濃縮工程の完了後約30分以内に実施される。
【0152】
このTregの治療用集団の増殖は、培地中で、例えば、無血清培地(例えば、TexMACS培地)中で、血清枯渇培地中で、又は血清含有培地中で、生体試料から濃縮された細胞を培養することを含み得る。
【0153】
ある実施態様において、前記増殖工程は、ヒト血清を含む培養培地(例えば、ヒト血清を添加したTexMACS GMP培地)中で前記Tregを培養することを含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、5%以下のヒト血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、4%以下のヒト血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、3%以下のヒト血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、2%以下のヒト血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、1%以下のヒト血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、0.5%以下のヒト血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、5%未満のヒト血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、4%未満のヒト血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、3%未満のヒト血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、2%未満のヒト血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、1%未満のヒト血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、0.5%未満のヒト血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、0~0.5%のヒト血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、0.5~1%のヒト血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、1~2%のヒト血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、2~3%のヒト血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、3~4%のヒト血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、4~5%のヒト血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、約0.5%のヒト血清を含む。別の具体的な実施態様において、前記培養培地は、約1%のヒト血清を含む。別の具体的な実施態様において、前記培養培地は、約2%のヒト血清を含む。別の具体的な実施態様において、前記培養培地は、約3%のヒト血清を含む。別の具体的な実施態様において、前記培養培地は、約4%のヒト血清を含む。別の具体的な実施態様において、前記培養培地は、約5%のヒト血清を含む。
【0154】
ある実施態様において、前記増殖工程は、ヒトAB血清を含む培養培地(例えば、ヒトAB血清を添加したTexMACS GMP培地)中で前記Tregを培養することを含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、5%以下のヒトAB血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、4%以下のヒトAB血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、3%以下のヒトAB血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、2%以下のヒトAB血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、1%以下のヒトAB血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、0.5%以下のヒトAB血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、5%未満のヒトAB血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、4%未満のヒトAB血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、3%未満のヒトAB血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、2%未満のヒトAB血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、1%未満のヒトAB血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、0.5%未満のヒトAB血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、0~0.5%のヒトAB血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、0.5~1%のヒトAB血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、1~2%のヒトAB血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、2~3%のヒトAB血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、3~4%のヒトAB血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、4~5%のヒトAB血清を含む。具体的な実施態様において、前記培養培地は、約0.5%のヒトAB血清を含む。別の具体的な実施態様において、前記培養培地は、約1%のヒトAB血清を含む。別の具体的な実施態様において、前記培養培地は、約2%のヒトAB血清を含む。別の具体的な実施態様において、前記培養培地は、約3%のヒトAB血清を含む。別の具体的な実施態様において、前記培養培地は、約4%のヒトAB血清を含む。別の具体的な実施態様において、前記培養培地は、約5%のヒトAB血清を含む。
【0155】
いくつかの実施態様において、生体試料から濃縮された前記細胞は、約37℃及び約5% CO2で培養される。いくつかの実施態様において、生体試料から濃縮された前記細胞は、適正製造規範(good manufacturing practice; GMP)条件下で培養される。いくつかの実施態様において、生体試料から濃縮された前記細胞は、閉鎖系で培養され得る。
【0156】
いくつかの実施態様において、生体試料から濃縮された前記細胞は、自動化システム内で培養される。いくつかの実施態様において、生体試料から濃縮された前記細胞は、閉鎖されかつ自動化されたシステム内で培養される。いくつかの実施態様において、生体試料から濃縮された前記細胞は、Terumo BCT Quantum(登録商標)細胞増殖システム内で培養される。
【0157】
いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団の増殖は、生体試料からの濃縮から25~35分以内、20~40分以内、15~45分以内、又は10~50分以内に開始される。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団の増殖は、生体試料からの濃縮から約30分以内に開始される。
【0158】
Tregは、1種以上の増殖剤の存在下で前記細胞を培養することによってエクスビボで増殖させ得る。いくつかの実施態様において、前記増殖剤は、IL-2である。前記培養培地中のIL-2の適切な濃度は、本技術分野において通常の知識を有する者によって決定することができる。いくつかの実施態様において、前記細胞培養培地中のIL-2の濃度は、約5~10 IU/mL、約10~20 IU/mL、約20~30 IU/mL、約30~40 IU/mL、約40~50 IU/mL、約50~100 IU/mL、約100~200 IU/mL、約200~300 IU/mL、約300~400 IU/mL、約400~500 IU/mL、約500~600 IU/mL、約600~700 IU/mL、約700~800 IU/mL、約800~900 IU/mL、約900~1000 IU/mL、約1000~1500 IU/mL、約1500~2000 IU/mL、約2000~2500 IU/mL、約2500~3000 IU/mL、約3000~3500 IU/mL、約3500~4000 IU/mL、約4000~4500 IU/mL、約4500~5000 IU/mL、約5000~6000 IU/mL、約6000~7000 IU/mL、約7000~8000 IU/mL、約8000~9000 IU/mL、又は約9000~10,000 IU/mLである。具体的な実施態様において、前記前記細胞培養培地中のIL-2の濃度は、約100 IU/mLである。具体的な実施態様において、前記前記細胞培養培地中のIL-2の濃度は、約150 IU/mLである。具体的な実施態様において、前記前記細胞培養培地中のIL-2の濃度は、約200 IU/mLである。具体的な実施態様において、前記前記細胞培養培地中のIL-2の濃度は、約250 IU/mLである。具体的な実施態様において、前記前記細胞培養培地中のIL-2の濃度は、約300 IU/mLである。具体的な実施態様において、前記前記細胞培養培地中のIL-2の濃度は、約400 IU/mLである。具体的な実施態様において、前記前記細胞培養培地中のIL-2の濃度は、約500 IU/mLである。具体的な実施態様において、前記前記細胞培養培地中のIL-2の濃度は、約600 IU/mLである。具体的な実施態様において、前記前記細胞培養培地中のIL-2の濃度は、約700 IU/mLである。具体的な実施態様において、前記前記細胞培養培地中のIL-2の濃度は、約800 IU/mLである。ある実施態様において、前記増殖工程は、細胞数に応じてIL-2濃度を調整することを含む。細胞数は、培養中の細胞の大部分に相当し、具体的な実施態様においては、培養中の細胞の70%超、80%超、90%超、95%超、99%超、又は100%に相当する前記濃縮されたTreg細胞を含む培養中の全ての細胞の数を意味する。具体的な実施態様において、前記増殖工程は、細胞数が、600×106に到達するまで前記Tregを約200 IU/mLのIL-2を含有する培養培地中で培養すること、及び、次いで、該Tregを約250 IU/mLのIL-2を含有する培養培地中で培養することを含む。
【0159】
いくつかの実施態様において、IL-2は、培養を開始してから約4~5日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、培養を開始してから約3~4日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、培養を開始してから約2~3日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、培養を開始してから約1~2日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、培養を開始してから約24時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、培養を開始してから約12時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、培養を開始してから約6時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、培養を開始してから約3時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、培養を開始してから約2時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、培養を開始してから約1時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、培養を開始してから約30分以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、前記濃縮工程の完了後約4~5日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、前記濃縮工程の完了後約3~4日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、前記濃縮工程の完了後約2~3日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、前記濃縮工程の完了後約1~2日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、前記濃縮工程の完了後約24時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、前記濃縮工程の完了後約12時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、前記濃縮工程の完了後約6時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、前記濃縮工程の完了後約3時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、前記濃縮工程の完了後約2時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、前記濃縮工程の完了後約1時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、前記濃縮工程の完了後約30分以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、IL-2は、約1、2、3、4、又は5日毎に補充される。いくつかの実施態様において、IL-2は、約1~2日毎に補充される。いくつかの実施態様において、IL-2は、約2~3日毎に補充される。いくつかの実施態様において、IL-2は、約3~4日毎に補充される。いくつかの実施態様において、IL-2は、約4~5日毎に補充される。
【0160】
いくつかの実施態様において、前記増殖剤は、CD3を活性化し、例えば、該増殖剤は、抗CD3抗体である。いくつかの実施態様において、前記増殖剤は、CD28を活性化し、例えば、該増殖剤は、抗CD28抗体である。
【0161】
いくつかの実施態様において、前記増殖剤は、可溶性抗CD3抗体である。特定の実施態様において、前記抗CD3抗体は、OKT3である。いくつかの実施態様において、前記培養培地中の可溶性抗CD3抗体の濃度は、約0.1~0.2ng/mL、約0.2~0.3ng/mL、約0.3~0.4ng/mL、約0.4~0.5ng/mL、約0.5~1ng/mL、約1~5ng/mL、約5~10ng/mL、約10~15ng/mL、約15~20ng/mL、約20~25ng/mL、約25~30ng/mL、約30~35ng/mL、約35~40ng/mL、約40~45ng/mL、約45~50ng/mL、約50~60ng/mL、約60~70ng/mL、約70~80ng/mL、約80~90ng/mL、又は約90~100ng/mLである。
【0162】
いくつかの実施態様において、前記増殖剤は、可溶性抗CD28抗体である。抗CD28抗体の非限定的な例としては、NA/LE(例えば、BD Pharmingen)、IM1376(例えば、Beckman Coulter)、又は15E8(例えば、Miltenyi Biotec)が挙げられる。いくつかの実施態様において、前記培養培地中の可溶性抗CD28抗体の濃度は、約1~2ng/mL、約2~3ng/mL、約3~4ng/mL、約4~5ng/mL、約5~10ng/mL、約10~15ng/mL、約15~20ng/mL、約20~25ng/mL、約25~30ng/mL、約30~35ng/mL、約35~40ng/mL、約40~45ng/mL、約45~50ng/mL、約50~60ng/mL、約60~70ng/mL、約70~80ng/mL、約80~90ng/mL、約90~100ng/mL、約100~200ng/mL、約200~300ng/mL、約300~400ng/mL、約400~500ng/mL、500~600ng/mL、600~700ng/mL、約700~800ng/mL、約800~900ng/mL、又は約900~1000ng/mLである。
【0163】
いくつかの実施態様において、抗CD3抗体及び抗CD28抗体の双方が、前記細胞培養培地中に存在する。いくつかの実施態様において、前記抗CD3抗体及び前記抗CD28抗体は、固体表面に取り付けられている。いくつかの実施態様において、該抗CD3抗体及び該抗CD28抗体は、ビーズに取り付けられている。いくつかの実施態様において、CD28抗体、抗ビオチン抗体及びCD3-ビオチンを載せたビーズ(例えば、3.5μmの粒子)が、前記細胞培養培地中に存在する。そのようなビーズは、商業的に入手できる(例えば、MACS GMP ExpAct Tregキット、DYNABEADS(登録商標) M-450 CD3/CD28 T Cell Expander)。具体的な実施態様において、前記ビーズ上の抗CD3抗体と抗CD28抗体との比は、約100:1、90:1、80:1、70:1、60:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、又は1:100である。いくつかの実施態様において、前記Tregの集団は、IL-2とCD28抗体、抗ビオチン抗体、及びCD3-ビオチンを載せたビーズとの双方の存在下で培養される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、培養を開始してから約4~5日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、培養を開始してから約3~4日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、培養を開始してから約2~3日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、培養を開始してから約1~2日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、培養を開始してから約24時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、培養を開始してから約12時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、培養を開始してから約6時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、培養を開始してから約3時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、培養を開始してから約2時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、培養を開始してから約1時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、培養を開始してから約30分以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、前記濃縮工程の完了後約4~5日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、前記濃縮工程の完了後約3~4日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、前記濃縮工程の完了後約2~3日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、前記濃縮工程の完了後約1~2日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、前記濃縮工程の完了後約24時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、前記濃縮工程の完了後約12時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、前記濃縮工程の完了後約6時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、前記濃縮工程の完了後約3時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、前記濃縮工程の完了後約2時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、前記濃縮工程の完了後約1時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、前記濃縮工程の完了後約30分以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、該抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズが、前記培養培地に初めて添加されてから約14日後に(例えば、細胞数がその時までに目標細胞数に到達していない場合に)、該培養培地に再度添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、該抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズが、前記培養培地に初めて添加されてから約13日後に(例えば、細胞数がその時までに目標細胞数に到達していない場合に)、該培養培地に再度添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、該抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズが、前記培養培地に初めて添加されてから約12日後に(例えば、細胞数がその時までに目標細胞数に到達していない場合に)、該培養培地に再度添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、該抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズが前記培養培地に初めて添加されてから約11日後に(例えば、細胞数がその時までに目標細胞数に到達していない場合に)、該培養培地に再度添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、該抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズが、前記培養培地に初めて添加されてから約10日後に(例えば、細胞数がその時までに目標細胞数に到達していない場合に)、該培養培地に再度添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、該抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズが、前記培養培地に初めて添加されてから約9日後に(例えば、細胞数がその時までに目標細胞数に到達していない場合に)、該培養培地に再度添加される。いくつかの実施態様において、前記抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズは、該抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズが、前記培養培地に初めて添加されてから約8日後に(例えば、細胞数がその時までに目標細胞数に到達していない場合に)、該培養培地に再度添加される。細胞数は、培養中の細胞の大部分に相当し、具体的な実施態様においては、培養中の細胞の70%超、80%超、90%超、95%超、99%超、又は100%に相当する前記濃縮されたTreg細胞を含む培養中の全ての細胞の数を意味する。ある実施態様において、前記目標細胞数は、1×108~1×1010個の細胞である。ある実施態様において、前記目標細胞数は、1×109~5×109個の細胞である。ある実施態様において、前記目標細胞数は、2×109~5×109個の細胞である。ある実施態様において、前記目標細胞数は、2×109~2.5×109個の細胞である。具体的な実施態様において、前記目標細胞数は、1×109個の細胞である。別の具体的な実施態様において、前記目標細胞数は、1.5×109個の細胞である。別の具体的な実施態様において、前記目標細胞数は、2×109個の細胞である。別の具体的な実施態様において、前記目標細胞数は、2.5×109個の細胞である。別の具体的な実施態様において、前記目標細胞数は、3×109個の細胞である。別の具体的な実施態様において、前記目標細胞数は、3.5×109個の細胞である。別の具体的な実施態様において、前記目標細胞数は、4×109個の細胞である。別の具体的な実施態様において、前記目標細胞数は、4.5×109個の細胞である。別の具体的な実施態様において、前記目標細胞数は、5×109個の細胞である。具体的な実施態様において、前記培養物中のビーズと細胞との比は、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、又は1:1である。
【0164】
前記増殖剤(複数可)は、1、2、3、4、又は5日毎に前記培養培地に添加され得る。具体的な実施態様において、前記増殖剤は、1~2日毎に前記培養培地に添加される。具体的な実施態様において、前記増殖剤は、2~3日毎に前記培養培地に添加される。具体的な実施態様において、前記増殖剤は、3~4日毎に前記培養培地に添加される。具体的な実施態様において、前記増殖剤は、4~5日毎に前記培養培地に添加される。別の具体的な実施態様において、前記増殖剤は、第6日、第8日、及び第11日に前記培養培地に添加され、ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である。いくつかの特定の実施態様において、前記増殖剤は、第13日に前記培養培地に添加されず、ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である。
【0165】
いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、培養を開始してから約30分~1時間以内、1~2時間以内、2~4時間以内、4~6時間以内、6~8時間以内、8~10時間以内、10~12時間以内、12~14時間以内、14~16時間以内、16~18時間以内、18~24時間以内、24~36時間以内、36~48時間以内、約30分以内、約1時間以内、約2時間以内、約3時間以内、約6時間以内、約12時間以内、約24時間以内、約2日以内、約3日以内、約4日以内、約5日以内、約6日以内、又は約7日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、培養を開始してから約4~5日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、培養を開始してから約3~4日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、培養を開始してから約2~3日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、培養を開始してから約1~2日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、培養を開始してから約24時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、培養を開始してから約12時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、培養を開始してから約6時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、培養を開始してから約3時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、培養を開始してから約2時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、培養を開始してから約1時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、培養を開始してから約30分以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、前記濃縮工程の完了後約30分~1時間以内、1~2時間以内、2~4時間以内、4~6時間以内、6~8時間以内、8~10時間以内、10~12時間以内、12~14時間以内、14~16時間以内、16~18時間以内、18~24時間以内、24~36時間以内、36~48時間以内、約30分以内、約1時間以内、約2時間以内、約3時間以内、約6時間以内、約12時間以内、約24時間以内、約2日以内、約3日以内、約4日以内、約5日以内、約6日以内、又は約7日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、前記濃縮工程の完了後約4~5日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、前記濃縮工程の完了後約3~4日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、前記濃縮工程の完了後約2~3日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、前記濃縮工程の完了後約1~2日以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、前記濃縮工程の完了後約24時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、前記濃縮工程の完了後約12時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、前記濃縮工程の完了後約6時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、前記濃縮工程の完了後約3時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、前記濃縮工程の完了後約2時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、前記濃縮工程の完了後約1時間以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、前記濃縮工程の完了後約30分以内に前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、該増殖剤が前記培養培地に初めて添加されてから約14日後に、該培養培地に再度添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、該増殖剤が前記培養培地に初めて添加されてから約13日後に、該培養培地に再度添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、該増殖剤が前記培養培地に初めて添加されてから約12日後に、該培養培地に再度添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、該増殖剤が前記培養培地に初めて添加されてから約11日後に、該培養培地に再度添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、該増殖剤が前記培養培地に初めて添加されてから約10日後に、該培養培地に再度添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、該増殖剤が前記培養培地に初めて添加されてから約9日後に、該培養培地に再度添加される。いくつかの実施態様において、前記1種以上の増殖剤は、該増殖剤が前記培養培地に初めて添加されてから約8日後に、該培養培地に再度添加される。
【0166】
増殖剤が、所与の日に前記培養物に添加されない場合、その日は、「休薬日」とみなされる。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団が回収される日の前日は、増殖剤は投与されない。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団が回収される日の前2日間、3日間、4日間、5日間、又は6日間は、増殖剤は投与されない。
【0167】
いくつかの実施態様において、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTor)を阻害する1種以上の薬剤の存在下で細胞を培養することによって、前記Tregの治療用集団をエクスビボで増殖させ得る。いくつかの実施態様において、前記mTor阻害剤は、ラパマイシンである。いくつかの実施態様において、前記mTor阻害剤は、ラパマイシンの類似体(「ラパログ(rapalog)」、例えば、テムシロリムス、エベロリムス、又はリダフォロリムス)である。いくつかの実施態様において、前記mTor阻害剤は、ICSN3250、OSU-53、又はAZD8055である。前記細胞培養培地中のラパマイシンの濃度は、約1~20nmol/L、約20~30nmol/L、約30~40nmol/L、約40~50nmol/L、約50~60nmol/L、約60~70nmol/L、約70~80nmol/L、約80~90nmol/L、約90~100nmol/L、約100~150nmol/L、約150~200nmol/L、約200~250nmol/L、約250~300nmol/L、約300~350nmol/L、約350~400nmol/L、約400~450nmol/L、約450~500nmol/L、約500~600nmol/L、約600~700nmol/L、約700~800nmol/L、約800~900nmol/L、又は約900~1000nmol/Lである。いくつかの実施態様において、前記細胞培養培地中のラパマイシンの濃度は、約100nmol/Lである。
【0168】
いくつかの実施態様において、前記mTor阻害剤は、培養を開始してから約30分~1時間以内、1~2時間以内、2~4時間以内、4~6時間以内、6~8時間以内、8~10時間以内、10~12時間以内、12~14時間以内、14~16時間以内、16~18時間以内、18~24時間以内、24~36時間以内、36~48時間以内、約30分以内、約1時間以内、約2時間以内、約3時間以内、約6時間以内、約12時間以内、約1日以内、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、又は約7日以内に、前記培養物に初めて添加される。いくつかの実施態様において、前記mTor阻害剤は、約1、2、3、4、又は5日毎に前記培養培地に添加される。いくつかの実施態様において、前記mTor阻害剤は、約4~5日毎に前記培養培地に添加される。いくつかの実施態様において、前記mTor阻害剤は、約3~4日毎に前記培養培地に添加される。いくつかの実施態様において、前記mTor阻害剤は、約2~3日毎に前記培養培地に添加される。いくつかの実施態様において、前記mTor阻害剤は、約1~2日毎に前記培養培地に添加される。
【0169】
ある実施態様において、前記増殖工程は、毛細管外空間を備えるバイオリアクター内で行われる。いくつかの実施態様において、前記バイオリアクターの毛細管外(EC)培地の流量は、約0~1mL/分、約0~0.8mL/分、約0~0.6mL/分、約0~0.4mL/分、約0~0.2mL/分、約0.2~1mL/分、約0.2~0.8mL/分、約0.2~0.6mL/分、約0.2~0.4mL/分、約0.4~1mL/分、約0.4~0.8mL/分、約0.4~0.6mL/分、約0.6~1mL/分、約0.6~0.8mL/分、又は約0.8~1mL/分に維持することができる。いくつかの実施態様において、前記バイオリアクターのEC培地の流量は、約0mL/分、約0.1mL/分、約0.2mL/分、約0.3mL/分、約0.4mL/分、約0.5mL/分、約0.6mL/分、約0.7mL/分、約0.8mL/分、約0.9mL/分、又は約1mL/分に維持することができる。いくつかの実施態様において、前記増殖工程は、細胞数に応じて前記バイオリアクターのEC培地の流量を調整することを含む。細胞数は、培養中の細胞の大部分に相当し、具体的な実施態様においては、培養中の細胞の70%超、80%超、90%超、95%超、99%超、又は100%に相当する前記濃縮されたTreg細胞を含む培養中の全ての細胞の数を意味する。具体的な実施態様において、前記増殖工程は、細胞数が500×106に到達するまで前記EC培地の流量を0に維持すること、次いで、該EC培地の流量を約0.2mL/分まで増加させること及び細胞数が750×106に到達するまで該EC培地の流量を約0.2mL/分に維持すること、次いで、該EC培地の流量を約0.4mL/分まで増加させること及び細胞数が約1,000×106に到達するまで該EC培地の流量を約0.4mL/分に維持すること、次いで、該EC培地の流量を約0.6mL/分まで増加させること及び細胞数が約1,500×106に到達するまで該EC培地の流量を約0.6mL/分に維持すること、並びに、次いで、該EC培地の流量を約0.8mL/分まで増加させること及び該EC培地の流量を約0.8mL/分に維持することを含む。ある実施態様において、前記毛細管外培地は、ラパマイシンを含む。
【0170】
前記Tregの治療用集団は、これらを適切な期間培養することによって増殖させ得る。治療的応用に十分なほどに増殖したTregの治療用集団をもたらす増殖に必要とされる時間は、本技術分野において通常の知識を有する者によって、例えば、フローサイトメトリーを用いてCD4+CD25+細胞の割合をモニタリングすることによって容易に決定され得る。
【0171】
例えば、いくつかの実施態様において、十分に増殖したTregの治療用集団は、フローサイトメトリーによって決定して、70%超のCD4+CD25+細胞を含有する細胞の集団である。いくつかの実施態様において、十分に増殖したTregの治療用集団は、フローサイトメトリーによって決定して、該Tregの治療用集団の予定されるレシピエントの体重1kgあたり約1×106~約2×106、約2×106~約3×106、約3×106~約4×106、約4×106~約5×106、約5×106~約6×106、約6×106~約7×106、約7×106~約8×106、約8×106~約9×106、約9×106~約1×107、約1×107~約2×107、約2×107~約3×107、約3×107~約4×107、約4×107~約5×107、約5×107~約6×107、約6×107~約7×107、約7×107~約8×107、約8×107~約9×107、約9×107~約1×108、約1×108~約2×108、約2×108~約3×108、約3×108~約4×108、約4×108~約5×108、約5×108~約6×108、約6×108~約7×108、約7×108~約8×108、約8×108~約9×108、約9×108~約1×109個のCD4+CD25+細胞を含有する集団である。いくつかの実施態様において、十分に増殖したTregの治療用集団は、フローサイトメトリーによって決定して、該Tregの治療用集団の予定されるレシピエントの体重1kgあたり1×106個のCD4+CD25+細胞(+/-10%)を含有する集団である。いくつかの実施態様において、十分に増殖したTregの治療用集団は、フローサイトメトリーによって決定して、約70%の又は約70%を超えるCD4+CD25+細胞を含有し、かつ該Tregの治療用集団の予定されるレシピエントの体重1kgあたり1×106個のCD4+CD25+細胞(+/-10%)を含有する細胞の集団である。
【0172】
いくつかの実施態様において、十分に増殖したTregの治療用集団は、約1×108~1×1010個のTreg細胞を含有する集団である。いくつかの実施態様において、十分に増殖したTregの治療用集団は、約1×109~5×109個のTreg細胞を含有する集団である。いくつかの実施態様において、十分に増殖したTregの治療用集団は、約2×109~5×109個のTreg細胞を含有する集団である。いくつかの実施態様において、十分に増殖したTregの治療用集団は、約2×109~2.5×109個のTreg細胞を含有する集団である。いくつかの実施態様において、十分に増殖したTregの治療用集団は、約1×109個以上のTreg細胞を含有する集団である。いくつかの実施態様において、十分に増殖したTregの治療用集団は、約1.5×109個以上のTreg細胞を含有する集団である。いくつかの実施態様において、十分に増殖したTregの治療用集団は、約2×109個以上のTreg細胞を含有する集団である。いくつかの実施態様において、十分に増殖したTregの治療用集団は、約2.5×109個以上のTreg細胞を含有する集団である。いくつかの実施態様において、十分に増殖したTregの治療用集団は、約3×109個以上のTreg細胞を含有する集団である。いくつかの実施態様において、十分に増殖したTregの治療用集団は、約3.5×109個以上のTreg細胞を含有する集団である。いくつかの実施態様において、十分に増殖したTregの治療用集団は、約4×109個以上のTreg細胞を含有する集団である。いくつかの実施態様において、十分に増殖したTregの治療用集団は、約4.5×109個以上のTreg細胞を含有する集団である。いくつかの実施態様において、十分に増殖したTregの治療用集団は、約5×109個以上のTreg細胞を含有する集団である。
【0173】
前記Tregの治療用集団の予定されるレシピエントは、該Tregを濃縮した生体試料のドナーと同一の対象であってもよい。あるいは、該Tregの治療用集団の予定されるレシピエントは、該Tregを濃縮した生体試料のドナーとは異なる対象であってもよい。
【0174】
CD4+CD25+細胞の数は、毎日、又は2、3、4、もしくは5日毎に決定され得る。ある実施態様において、第15日(ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である)に、培養物が十分に増殖したTregの治療用集団を含有しない場合には、細胞が、1種以上の増殖剤で再活性化され得;第15日(ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である)に、培養物が十分に増殖したTregの治療用集団を含有している場合には、細胞が、回収され得る。ある実施態様において、第14日(ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である)に、培養物が十分に増殖したTregの治療用集団を含有しない場合には、細胞が、1種以上の増殖剤で再活性化され得;培養物が、第14日(ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である)に、十分に増殖したTregの治療用集団を含有している場合には、細胞が、回収され得る。ある実施態様において、第13日(ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である)において、培養物が十分に増殖したTregの治療用集団を含有しない場合には、細胞が、1種以上の増殖剤で再活性化され得;第13日(ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である)において、培養物が十分に増殖したTregの治療用集団を含有している場合には、細胞が、回収され得る。ある実施態様において、培養物が、第12日(ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である)に十分に増殖したTregの治療用集団を含有しない場合には、細胞が、1種以上の増殖剤で再活性化され得;培養物が、第12日(ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である)に、十分に増殖したTregの治療用集団を含有している場合には、細胞が、回収され得る。ある実施態様において、第11日(ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である)に、培養物が十分に増殖したTregの治療用集団を含有しない場合には、細胞が、1種以上の増殖剤で再活性化され得;培養物が、第11日(ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である)に、十分に増殖したTregの治療用集団を含有している場合には、細胞が、回収され得る。ある実施態様において、第10日(ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である)に、培養物が十分に増殖したTregの治療用集団を含有しない場合には、細胞が、1種以上の増殖剤で再活性化され得;培養物が、第10日(ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である)に、十分に増殖したTregの治療用集団を含有している場合には、細胞が、回収され得る。ある実施態様において、第9日(ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である)に、培養物が十分に増殖したTregの治療用集団を含有しない場合には、細胞が、1種以上の増殖剤で再活性化され得;培養物が、第9日(ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である)に、十分に増殖したTregの治療用集団を含有している場合には、細胞が、回収され得る。ある実施態様において、第8日(ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である)に、培養物が十分に増殖したTregの治療用集団を含有しない場合には、細胞が、1種以上の増殖剤で再活性化され得;培養物が、第8日(ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である)に、十分に増殖したTregの治療用集団を含有している場合には、細胞が、回収され得る。
【0175】
いくつかの実施態様において、約6~30日間、約10~30日間、約15~25日間、又は約18~22日間培養することによって、Tregの治療用集団を増殖させる。いくつかの実施態様において、約15、16、18、18、19、20、21、22、23、24、又は25日間培養することによって、Tregの治療用集団を増殖させる。ある実施態様、例えば、自動化、部分的な自動化、又は少なくとも1つの自動化工程を含む実施態様において、約6~15日間、約8~15日間、約8~12日間、又は約6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15日間培養することによって、Tregの治療用集団を増殖させる。
【0176】
培養で増殖させている細胞の生存率を、当技術分野において公知の任意の方法を用いて決定し得る。例えば、培養で増殖させている細胞の生存率は、トリパンブルー排除を用いて決定され得る。トリパンブルーは、インタクトな膜を有する細胞(生細胞)によって排除されるが、膜の完全性が損なわれている細胞(非生細胞)によって取り込まれる色素である。従って、生細胞が、光学顕微鏡下で透明に見え、その一方で、非生細胞は、青色に見える。等量のトリパンブルー及び細胞懸濁液が混合され、計数される。生存率は、トリパンブルーを排除した細胞の百分率として表される。いくつかの実施態様において、Tregの治療用集団は、トリパンブルー排除によって決定して、約60%、65%、又は70%の生細胞を含む。いくつかの実施態様において、Tregの治療用集団は、トリパンブルー排除によって決定して、約70%超の生細胞を含む。例えば、ある実施態様において、Tregの治療用集団は、トリパンブルー排除によって決定して、約75%、80%、85%、90%、95%の、又は95%超の生細胞を含む。いくつかの実施態様において、培養で増殖させている細胞の生存率は、2~3日毎に決定される。いくつかの実施態様において、培養で増殖させている細胞の生存率は、毎日又は2、3、4、もしくは5日毎に決定される。
【0177】
いくつかの実施態様において、前記細胞は、インキュベーション又は培養の間に存在する薬剤を除去するためかつ/又は培養培地に1種以上の追加の薬剤を補充するために、培養の間に1回以上洗浄される。いくつかの実施態様において、前記細胞は、前記増殖剤を減少させる又は除去するためにインキュベーション又は培養の間に洗浄される。前記培養培地を、約2、3、4、5、6、又は7日毎、例えば、2~3日毎に又は3~4日毎に置き換えてもよい。いくつかの実施態様において、前記培養培地の一部のみ(例えば、前記培養培地の約50%)が、置き換えられる。別の実施態様において、前記培養培地全体が置き換えられる。いくつかの実施態様において、前記細胞培養物は、培養培地の交換の期間内に遠心分離されない。いくつかの実施態様において、前記細胞培養物は、回収の期間内に遠心分離されない。
【0178】
前記Tregの治療用集団は、当技術分野において公知の任意の手段で、例えば、遠心分離によって回収し得る。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、第8日に回収され、ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、第9日に回収され、ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、第10日に回収され、ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、第11日に回収され、ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、第12日に回収され、ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、第13日に回収され、ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、第14日に回収され、ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、第15日に回収され、ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、第19日に回収され、ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、第20日に回収され、ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、第25日に回収され、ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、第16、17、又は18日に回収され、ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、第21、22、23、又は24日に回収され、ここで、第0日は、前記生体試料を前記対象から得る日である。
【0179】
いくつかの態様において、前記Tregの集団は、凍結保存前の前記方法の任意の時点で、遺伝子操作を受ける。いくつかの実施態様において、前記Tregの集団は、凍結保存前の任意の時点で2回以上遺伝子操作を受ける。いくつかの実施態様において、前記操作は、前記Treg中への導入遺伝子の導入又は前記Treg中へのmRNAの導入を含み得る。いくつかの実施態様において、前記遺伝子操作は、CRISPR-Cas9による遺伝子編集も含む。いくつかの実施態様において、前記遺伝子操作は、siRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドによる遺伝子発現の低減を含む。いくつかの実施態様において、前記遺伝子操作は、同種異系状況での本明細書で提供されるTregの治療用集団の使用を可能にし得る。いくつかの実施態様において、前記遺伝子操作は、前記Treg中へキメラ抗原受容体(CAR)を導入する。
【0180】
(7.2 Tregを凍結保存し解凍する方法)
別の態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される特徴を有する凍結保存されたTregの集団である。凍結保存されたTregの治療用集団は、本明細書に記載される方法によって製造され得る。解凍されておりかつ対象、例えば、ヒト対象への投与に適した製剤中に存在する、凍結保存されたTregの治療用集団を含む医薬組成物も本明細書で開示される。ある実施態様において、前記製剤は、医薬として許容し得る担体、例えば、生理食塩水を含む。ある実施態様において、前記製剤は、ヒト血清アルブミンを含む。別の実施態様において、前記製剤は、生理食塩水及びヒト血清アルブミンを含む。
【0181】
いくつかの実施態様において、Tregの治療用集団は、増殖後に凍結保存される。該Tregの治療用集団は、当技術分野において公知の任意の適当な培地中で凍結保存されてもよい。凍結保存に適した培地の例としては、例えば、CryoStor(登録商標)CS10が挙げられる。いくつかの実施態様において、Tregの治療用集団は、凍結保護剤を含む組成物中、例えば、DMSOを含む組成物(例えば、10% DMSO)中で凍結される。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、グリセロールを含む中で凍結される。いくつかの実施態様において、前記凍結保護剤は、DMSO及び/又はグリセロールであるか、又はDMSO及び/又はグリセロールを含む。
【0182】
いくつかの実施態様において、Tregの治療用集団は、約-200℃~-190℃、約-180~-140℃、又は約-90~-70℃で保管され得る。いくつかの実施態様において、Tregの治療用集団は、約-196℃で保管され得る。いくつかの実施態様において、Tregの治療用集団は、約-80℃で保管され得る。いくつかの実施態様において、Tregの治療用集団は、液体窒素蒸気相中で保管され得る。いくつかの実施態様において、Tregの治療用集団は、凍結二酸化炭素(ドライアイス)上で保管され得る。
【0183】
別の態様において、凍結保存されたTregの治療用集団は、第1の温度で、ある期間、例えば、長期間、例えば、約1か月、約3か月、約6か月、約9か月、約12か月、約18か月、又は約24か月保管され、それに続き、第2の温度で、より短い期間(例えば、約6時間、約12時間、約24時間、約36時間、又は約48時間)保管され得る。別の態様において、凍結保存されたTregの治療用集団は、第1の温度である期間、例えば、約6時間、約12時間、約24時間、約36時間、又は約48時間保管され、それに続き、第2の温度でより長い期間、例えば、約1か月、約3か月、約6か月、約9か月、約12か月、約18か月、又は約24か月保管され得る。いくつかの実施態様において、前記第1の温度は、前記第2の温度よりも低い。いくつかの実施態様において、前記第1の温度は、約-200℃~-190℃、約-180~-140℃、約-90~-70℃、約-196℃、又は約-80℃である。いくつかの実施態様において、前記第2の温度は、約-80℃又は約-20℃である。
【0184】
いくつかの実施態様において、Tregの治療用集団は、約-196℃で、約1か月、約3か月、約6か月、約9か月、約12か月、約18か月、又は約24か月保管され、それに続き、凍結二酸化炭素上で約6時間、約12時間、約24時間、約36時間、又は約48時間保管される。いくつかの実施態様において、Tregの治療用集団は、液体窒素蒸気相中で約1か月、約3か月、約6か月、約9か月、約12か月、約18か月、又は約24か月保管され、それに続き、凍結二酸化炭素上で約6時間、約12時間、約24時間、約36時間、又は約48時間保管される。
【0185】
いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、高いTreg密度で凍結保存される。具体的な実施態様において、前記Tregの治療用集団は、該Tregの予定されるレシピエントの体重1kgあたり1×106個の細胞(+/-10%)の濃度で凍結保存される。前記Tregの予定されるレシピエントは、Tregを含有する初めの生体試料を得た対象(前記ドナー)と同一の個体であっても異なる個体であってもよい。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、1mlあたり1千万、少なくとも2千万、少なくとも2千5百万、少なくとも3千万、少なくとも3千5百万、少なくとも4千万、少なくとも4千5百万、少なくとも5千万、少なくとも5千5百万、少なくとも6千万、少なくとも6千5百万、少なくとも7千万、少なくとも7千5百万、少なくとも8千万、少なくとも8千5百万、少なくとも9千万、少なくとも9千5百万、又は少なくとも1億個の細胞の密度で保管される。
【0186】
いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、クライオバイアル中で凍結保存される。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、約0.5mL~1mL、約1mL~1.5mL、又は約1.5mL~2mL、約2~5mL、約5~10mL、又は約15~20mLの体積で、クライオバイアル中で凍結される。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、約1.0mL、約1.1mL、約1.2mL、約1.3mL、約1.4mL、約1.5mL、約1.6mL、約1.7mL、約1.8mL、約1.8mL、約1.9mL、又は約2.0mLの体積で、クライオバイアル中で凍結される。
【0187】
いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、凍結保存バッグ、例えば、ガス透過性バッグ中で凍結される。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、約1~2mL、約2~5mL、約5~10mL、約10~15mL、又は約15~20mLの体積で凍結保存バッグ中で凍結される。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、約1mL、約2mL、約5mL、約10mL、又は約20mLの体積で、凍結保存バッグ中で凍結される。
【0188】
いくつかの実施態様において、凍結保存は、以下の増分:4℃まで1℃/分、-40℃まで25℃/分、-12℃まで10℃/分、-40℃まで1℃/分、及び-80℃~-90℃まで10℃/分で、前記Tregの治療用集団の温度を低下させることを含む。
【0189】
前記凍結保存されたTregの治療用集団は、例えば、凍結保存から約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、約1~2週間、約2~4週間、約1か月、約1~2か月、約2~3か月、約3~6か月、約6~9か月、約9~12か月、約12~15か月、約15~18か月、約18~24か月、約1~2年、約2~3年、約3~4年、又は約4~5年後に解凍され得る。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、例えば、凍結保存から約1週間、1か月、約3か月、約6か月、約9か月、約12か月、又は約18か月後に解凍され得る。
【0190】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、例えば、トリパンブルー排除によって決定して、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の又は95%超の該Tregの生存率をもたらす方法を用いて解凍される。
【0191】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、解凍され、0.9%塩化ナトリウムを含む溶液中に希釈される。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、解凍され、0.9%塩化ナトリウム及び約5%ヒト血清アルブミンを含む溶液中に希釈される。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、解凍され、溶液中に希釈され、ここで、得られる溶液は、0.9%塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、解凍され、溶液中に希釈され、ここで、得られる溶液は、0.9%塩化ナトリウム及び約5%ヒト血清アルブミンを含む。ある実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、解凍され、かつさらなる増殖を行わずに、本明細書に記載される溶液中に入れられる。
【0192】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、解凍され、0.9%塩化ナトリウム及び約5%ヒト血清アルブミンを含む50mLの溶液中に希釈される。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、解凍され、溶液中に希釈され、ここで、得られる溶液は、0.9%塩化ナトリウム及び約5%ヒト血清アルブミンを含む50mLの溶液である。ある実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、解凍され、かつさらなる増殖を行わずに、本明細書に記載される溶液中に入れられる。
【0193】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団が入ったクライオバイアルが1つ解凍され、0.9%塩化ナトリウム及び約5%ヒト血清アルブミンを含む50mLの溶液中に入れられる。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団が入ったクライオバイアルが1つ解凍され、溶液中に入れられ、ここで、得られる溶液は、0.9%塩化ナトリウム及び約5%ヒト血清アルブミンを含む50mLの溶液である。ある実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、解凍され、かつさらなる増殖を行わずに、本明細書に記載される溶液中に入れられる。
【0194】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、自動解凍システム(例えば、COOK regentecの解凍システム)を用いて解凍される。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、急速解凍される。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、制御された速度で解凍される。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、水浴中で解凍される。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、室温で解凍される。
【0195】
いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、解凍から約2~10時間以内、約4~8時間以内、又は約5~7時間以内に対象に投与される。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団は、解凍から約30分、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12時間以内に対象に投与される。具体的な実施態様において、前記Tregの治療用集団は、解凍から約6時間以内に対象に投与される。
【0196】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、解凍され、さらに希釈されることなく患者に投与される。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、解凍され、さらに希釈したりさらに増殖させたりすることなく患者に投与される。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、解凍され、さらに希釈されることなく、生理食塩水と組み合わせて患者に投与される。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、解凍され、さらに希釈したりさらに増殖させたりすることなく、生理食塩水と組み合わせて患者に投与される。いくつかの実施態様において、前記解凍された凍結保存されたTregの治療用集団及び生理食塩水が、並行して静脈内へ投与される。
【0197】
いくつかの実施態様において、解凍と対象への投与との間に、前記Tregの治療用集団のさらなる増殖は、必要とされない。いくつかの実施態様において、解凍と対象への投与との間に前記Tregの治療用集団のさらなる増殖は行われない。
【0198】
(7.2.1. 自動化)
いくつかの実施態様において、Tregの治療用集団を製造する方法を、閉鎖系で実施することができる。前記方法は、いくつかの実施態様において、自動化された又は部分的に自動化された様式で実施される。例えば、本明細書に記載されるTregの治療用集団を製造する方法(例えば、本明細書のセクション6.1又は7.1に記載される方法)を、バイオリアクター内で行ってもよい。いくつかの実施態様において、前記方法は、G-REX(登録商標)培養システム内で実施される。いくつかの実施態様において、前記方法は、テルモBCT Quantum(登録商標)細胞増殖システムで実施される。
図1は、バイオリアクター内でTregの治療用集団を製造する例示的なプロセスを示す。
【0199】
いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団を製造する方法の工程のうちのいずれか1つ以上を、閉鎖系で又はGMP条件下で実施することができる。いくつかの実施態様において、前記工程のうちの1つ以上又は全て(例えば、濃縮及び/又は増殖)が、統合された又は自給式のシステム内のシステム、装置、又は器機を用いてかつ/又は自動化された又はプログラム可能な方式で実施される。いくつかの態様において、前記システム又は器機は、該システム又は器機と通信を行うコンピューター及び/又はコンピュータープログラムを含み、これは、ユーザーが、前記工程をプログラムし、制御し、その結果を評価し、かつ/又はそのさまざまな態様を調節することを可能とする。
【0200】
ある実施態様において、前記濃縮工程は、自動化されている。ある実施態様において、前記濃縮工程は、閉鎖系で行われる。ある実施態様において、前記濃縮工程は、自動化され、閉鎖系で行われる。具体的な実施態様において、前記濃縮工程は、CliniMACS Prodigy(登録商標)システムで行われる。具体的な実施態様において、前記濃縮工程は、CliniMACS(登録商標) Plusシステムで行われる。ある実施態様において、前記増殖工程は、自動化されている。ある実施態様において、前記増殖工程は、閉鎖系で行われる。ある実施態様において、前記増殖工程は、自動化され、閉鎖系で行われる。具体的な実施態様において、前記増殖工程は、バイオリアクター(例えば、Terumo BCT Quantum(登録商標)細胞増殖システム)内で行われる。いくつかの実施態様において、前記濃縮工程及び前記増殖工程は、異なる系で行われる(例えば、前記濃縮工程が、CliniMACS Prodigy(登録商標)システムで行われ、かつ前記増殖工程が、Terumo BCT Quantum(登録商標)細胞増殖システムで行われるか、又は前記濃縮工程が、CliniMACS(登録商標) Plusシステムで行われ、かつ前記増殖工程は、Terumo BCT Quantum(登録商標)細胞増殖システムで行われる)。具体的な実施態様において、前記濃縮工程によって製造される濃縮された細胞集団は、閉鎖工程で、前記増殖工程が行われるシステムに移される。別の実施態様において、前記濃縮工程及び前記増殖工程は、同じ系で行われる。具体的な実施態様において、前記同じ系は、閉鎖系である。
【0201】
いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団を製造する方法は、該Tregを増殖させる工程を含む。いくつかの実施態様において、前記増殖工程は、自動化されている。いくつかの実施態様では、前記Tregを、6、7、8、9、10、11、又は12日間増殖させる。一実施態様では、前記Tregを、8日間増殖させる。別の実施態様では、前記Tregを、11日間増殖させる。別の実施態様では、前記Tregを、13、14、又は15日間増殖させる。別の実施態様では、前記Tregを、15日間増殖させる。
【0202】
いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団を製造する方法は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10日毎に増殖剤(IL-2、CD3活性化剤、及び/又はCD28活性化剤など)を投与することを含む。いくつかの実施態様において、前記増殖剤(IL-2、CD3活性化剤、及び/又はCD28活性化剤など)は、前記培養を開始してから24時間以内に初めて投与される。いくつかの実施態様において、前記増殖剤(IL-2、CD3活性化剤、及び/又はCD28活性化剤など)は、前記培養を開始してから12時間以内に初めて投与される。いくつかの実施態様において、前記増殖剤(IL-2、CD3活性化剤、及び/又はCD28活性化剤など)は、前記培養を開始してから6時間以内に初めて投与される。いくつかの実施態様において、前記増殖剤(IL-2、CD3活性化剤、及び/又はCD28活性化剤など)は、前記培養を開始してから3時間以内に初めて投与される。いくつかの実施態様において、前記増殖剤(IL-2、CD3活性化剤、及び/又はCD28活性化剤など)は、前記培養を開始してから2時間以内に初めて投与される。いくつかの実施態様において、前記増殖剤(IL-2、CD3活性化剤、及び/又はCD28活性化剤など)は、前記培養を開始してから1時間以内に初めて投与される。いくつかの実施態様において、前記増殖剤(IL-2、CD3活性化剤、及び/又はCD28活性化剤など)は、前記培養を開始してから30分以内に初めて投与される。いくつかの実施態様において、前記増殖剤(IL-2、CD3活性化剤、及び/又はCD28活性化剤など)は、毎日投与される。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団を製造する方法は、前記培養培地を1、2、3、4、5、6、又は7日毎に交換することを含む。いくつかの実施態様において、ある代謝産物(例えば、ラクタクテ(lactacte))のレベルが、所定の閾値に到達したときに、前記培地が交換されてもよい。いくつかの実施態様において、前記培地は、前記Tregの治療用集団の増殖速度に基づいて変わる。
【0203】
いくつかの実施態様において、前記前記培養物中の細胞の濃度は、第8日に決定される。いくつかの実施態様において、前記前記培養物中の細胞の濃度は、第11日に決定される。いくつかの実施態様において、前記前記培養物中の細胞の濃度は、第15日に決定される。 いくつかの実施態様において、前記システムは、前記増殖工程の始めから終わりまで閉鎖系のままである。
【0204】
(7.3 組成物)
本明細書で提供されるのは、対象への投与に適したTregの治療用集団を含む組成物である。ある実施態様において、本明細書で提供される凍結保存されたTregの治療用集団を製造する方法は、前記凍結保存されたTregの治療用集団を解凍すること、及びさらなる増殖を行わずに、該集団を医薬として許容し得る担体を含む組成物中に入れて、医薬組成物を製造することをさらに含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される方法によって製造される医薬組成物である。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される方法によって製造される凍結保存されたTregの治療用集団である。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される凍結保存されたTregの治療用集団の解凍されておりかつ増殖させていない形態、及び医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物である。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される特徴を有するTregの治療用集団を含む凍結保存された組成物である。Tregの治療用集団、例えば、凍結保存されたTregの治療用集団は、本明細書に記載される方法によって製造され得る。解凍されておりかつ対象、例えば、ヒト対象への投与に適した製剤中に存在する凍結保存されたTregの治療用集団を含む医薬組成物も本明細書で開示される。
【0205】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、トリパンブルー排除によって決定して、約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%の又は95%超の生細胞を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、約70%超の生細胞を含む。
【0206】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、約1×106~約2×106、約2×106~約3×106、約3×106~約4×106、約4×106~約5×106、約5×106~約6×106、約6×106~約7×106、約7×106~約8×106、約8×106~約9×106、約9×106~約1×107、約1×107~約2×107、約2×107~約3×107、約3×107~約4×107、約4×107~約5×107、約5×107~約6×107、約6×107~約7×107、約7×107~約8×107、約8×107~約9×107、約9×107~約1×108、約1×108~約2×108、約2×108~約3×108、約3×108~約4×108、約4×108~約5×108、約5×108~約6×108、約6×108~約7×108、約7×108~約8×108、約8×108~約9×108、約9×108~約1×109個のCD4+CD25+細胞を含む。
【0207】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、約1×108~1×1010個のTreg細胞を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、約1×109~5×109個のTreg細胞を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、約2×109~5×109個のTreg細胞を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、約2×109~2.5×109個のTreg細胞を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、約1×109個以上のTreg細胞を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、約1.5×109個以上のTreg細胞を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、約2×109個以上のTreg細胞を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、約2.5×109個以上のTreg細胞を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、約3×109個以上のTreg細胞を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、約3.5×109個以上のTreg細胞を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、約4×109個以上のTreg細胞を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、約4.5×109個以上のTreg細胞を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、約5×109個以上のTreg細胞を含む。
【0208】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、1mlあたり約1×106~約2×106、約2×106~約3×106、約3×106~約4×106、約4×106~約5×106、約5×106~約6×106、約6×106~約7×106、約7×106~約8×106、約8×106~約9×106、約9×106~約1×107、約1×107~約2×107、約2×107~約3×107、約3×107~約4×107、約4×107~約5×107、約5×107~約6×107、約6×107~約7×107、約7×107~約8×107、約8×107~約9×107、約9×107~約1×108、約1×108~約2×108、約2×108~約3×108、約3×108~約4×108、約4×108~約5×108、約5×108~約6×108、約6×108~約7×108、約7×108~約8×108、約8×108~約9×108、約9×108~約1×109個のCD4+CD25+細胞を含む。
【0209】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、フローサイトメトリーによって決定して、予定されるレシピエント対象の体重1kgあたり約1×106~約2×106、約2×106~約3×106、約3×106~約4×106、約4×106~約5×106、約5×106~約6×106、約6×106~約7×106、約7×106~約8×106、約8×106~約9×106、約9×106~約1×107、約1×107~約2×107、約2×107~約3×107、約3×107~約4×107、約4×107~約5×107、約5×107~約6×107、約6×107~約7×107、約7×107~約8×107、約8×107~約9×107、約9×107~約1×108、約1×108~約2×108、約2×108~約3×108、約3×108~約4×108、約4×108~約5×108、約5×108~約6×108、約6×108~約7×108、約7×108~約8×108、約8×108~約9×108、約9×108~約1×109個のCD4+CD25+細胞を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、フローサイトメトリーによって決定して、対象の体重1kgあたり1×106個のCD4+CD25+細胞(+/-10%)を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、約70%の又は約70%超のCD4+CD25+細胞を含み、フローサイトメトリーによって決定して、対象の体重1kgあたり1×106個のCD4+CD25+細胞(+/-10%)を含有する。該対象は、Tregを濃縮した生体試料のドナーと同一の対象であってもよい。あるいは、該対象は、Tregを濃縮した生体試料のドナーとは異なる対象であってもよい。
【0210】
本明細書で提供される凍結保存されたTregの治療用集団は、フローサイトメトリーによって決定して、対応するベースラインTreg細胞集団中のCD4+CD25high Tregの割合と比較して増加した割合のCD4+CD25high Tregを含み得る。いくつかの実施態様において、凍結保存されたTregの治療用集団は、フローサイトメトリーによって決定して、前記ベースラインTreg細胞集団中のCD4+CD25highCD127low Tregの割合と比較して増加した割合のCD4+CD25highCD127low
Tregを含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団は、フローサイトメトリーによって決定して、前記ベースラインTreg細胞集団中のCD4+CD25high Tregの割合と比較して増加した割合のCD4+CD25high Tregを含み得る。いくつかの実施態様において、増殖させたTregの治療用集団は、フローサイトメトリーによって決定して、前記ベースラインTreg細胞集団中のCD4+CD25highCD127low Tregの割合と比較して増加した割合のCD4+CD25highCD127low Tregを含む。この文脈において、「high」及び「low」は、集団全体と比較した細胞の亜集団におけるマーカー(例えば、CD25又はCD127)の発現レベルを意味する。
【0211】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、CD25+ Tregを含み、ここで、該TregにおけるCD25の発現は、フローサイトメトリーによって決定して、前記ベースラインTreg細胞集団中の前記TregにおけるCD25の発現と比較して増加している。該CD25の発現は、フローサイトメトリーによって決定して、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、又は少なくとも約50倍増加している。
【0212】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの集団は、CD127+ Tregを含み、ここで、該TregにおけるCD127の発現は、フローサイトメトリーによって決定して、前記ベースラインTreg細胞集団中の前記TregにおけるCD127の発現と比較して3倍を超えて増加していない。いくつかの実施態様において、前記CD127の発現は、フローサイトメトリーによって決定して、前記Treg濃縮細胞集団における前記TregにおけるCD127の発現と比較して増加していない。
【0213】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、フローサイトメトリーによって決定して、前記ベースラインTreg細胞集団中に少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%のCD4+CD25highCD127low Tregを含む。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、フローサイトメトリーによって決定して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のCD4+CD25+細胞を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団を含む組成物は、フローサイトメトリーによって決定して、20%未満のCD8+細胞を含み、かつ対象の体重1kgあたり1×106個のCD4+CD25+細胞(+/-10%)を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団を含む組成物は、フローサイトメトリーによって決定して、20%未満のCD8+細胞を含み、約70%の又は約70%超のCD4+CD25+細胞を含み、かつ対象の体重1kgあたり1×106個のCD4+CD25+細胞(+/-10%)を含む。
【0214】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団中の該Tregの粒度は、フローサイトメトリーによって決定して、前記Treg濃縮細胞集団における該Tregの粒度と比較して増加している。いくつかの実施態様において、前記Tregの粒度は、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、又は少なくとも約2.5倍増加している。
【0215】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団中の該Tregのサイズは、フローサイトメトリーによって決定して、前記ベースラインTreg細胞集団中の前記Tregのサイズと比較して増加している。いくつかの実施態様において、前記Tregのサイズは、少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.5倍、又は少なくとも約2倍増加している。
【0216】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、CTLA4+ Tregを含み、ここで、CTLA4+ Tregの割合は、前記ベースラインTreg細胞集団におけるCTLA4+ Tregの割合と比較して増加している。いくつかの実施態様において、増殖させたTregの治療用集団は、CTLA4+ Tregを含み、ここで、CTLA4+ Tregの割合は、前記ベースラインTreg細胞集団におけるCTLA4+ Tregの割合と比較して増加している。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、フローサイトメトリーによって決定して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%のCTLA4+ Tregを含む。
【0217】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、FoxP3+ Tregを含み、ここで、FoxP3+ Tregの割合は、前記ベースラインTreg細胞集団におけるFoxP3+ Tregの割合と比較して増加している。いくつかの実施態様において、増殖させたTregの治療用集団は、FoxP3+ Tregを含み、ここで、FoxP3+ Tregの割合は、前記ベースラインTreg細胞集団におけるFoxP3+ Tregの割合と比較して増加している。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、フローサイトメトリーによって決定して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%のFoxP3+ Tregを含む。
【0218】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団中の該Tregは、FoxP3発現Tregを含み、ここで、FoxP3の発現は、該Tregにおいて、増殖前の前記ベースラインTreg細胞集団中のTregにおけるFoxP3の発現と比較して増加している。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団、又はTregの治療用集団を含む凍結保存された組成物は、高レベルのFoxP3を発現し、ここで、FOXP3遺伝子の前記1種以上の調節エレメント(例えば、プロモーター又はエンハンサー)は、脱メチル化されている。いくつかの実施態様において、FOXP3内のTreg特異的脱メチル化領域(TSDR)が、脱メチル化されている。いくつかの実施態様において、FOXP3脱メチル化に関連する1種以上の遺伝子産物の発現が、前記Tregの治療用集団において又は増殖後の前記凍結保存されたTregの治療用集団において増加している。いくつかの実施態様において、FOXP3メチル化に関連する1種以上の遺伝子産物が、前記Tregの治療用集団において又は増殖後の前記凍結保存されたTregの治療用集団において減少している。
【0219】
いくつかの実施態様において、凍結保存されたTregの集団は、高レベルのグルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)を発現する。
【0220】
いくつかの実施態様において、凍結保存されたTregの集団は、フローサイトメトリーによって決定して、20%未満のCD8+細胞を含む。
【0221】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団の生存率は、該凍結保存された治療用集団の解凍後に行われるトリパンブルー染色によって決定して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団の生存率は、該凍結保存された治療用集団の解凍後に行われるトリパンブルー染色によって決定して、増殖させたTreg細胞集団が凍結保存される前の該増殖させたTreg細胞集団の生存率の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団を凍結保存する前に行われるトリパンブルー染色によって決定される該Tregの治療用集団の生存率は、増殖前の前記濃縮Treg細胞集団の生存率と比較して上昇している。
【0222】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの集団の前記抑制機能は、前記治療用集団の解凍後に行われるフローサイトメトリー又はチミジン取り込みによるレスポンダーT細胞の増殖の抑制によって決定して、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である。Tregの抑制機能は、例えば、フローサイトメトリー又はチミジン取り込みによってCFSE陽性レスポンダーT細胞の増殖を測定することにより評価され得る。CFSEは、前記レスポンダーT細胞集団中のみに存在する細胞内マーカーである。レスポンダーT細胞は、一般に、CD4+CD25- T細胞として特性が記述され、CD4+CD25+制御性T細胞単離キット(Miltenyi Biotec)を用いて単離され得る。例えば、試料を、CD4+CD25+制御性T細胞を含有する陽性選択細胞画分と前記レスポンダーT細胞集団を含有する非標識のCD4+CD25-細胞流出液とに分割し得る。
【0223】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの集団は、フローサイトメトリー又はチミジン取り込みによってレスポンダーT細胞の増殖の抑制として増殖前に測定した場合に、前記濃縮Treg細胞集団の抑制機能を超える抑制機能を示す。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団の解凍後に行われるフローサイトメトリー又はチミジン取り込みによるレスポンダーT細胞の増殖の抑制によって決定される該治療用集団の前記抑制機能は、フローサイトメトリーによって決定されるTregが凍結保存される前の前記増殖させたTreg細胞集団の該抑制機能の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である。いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団を凍結保存する前に行われるフローサイトメトリー又はチミジン取り込みによるレスポンダーT細胞の増殖の抑制によって決定される該Tregの治療用集団の抑制機能は、増殖前の前記濃縮Treg細胞集団の抑制機能と比較して増加している。
【0224】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、炎症性細胞(例えば、ヒトドナー由来であるか又は人工多能性幹細胞から作られたマクロファージ又は単球)によるIL-6産生によって測定して、炎症細胞を抑制する能力を示す。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、骨髄系細胞(例えば、マクロファージ、単球、又はミクログリア)の機能を抑制する能力を示す。いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの治療用集団は、炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-6、IL-8、TNFα、又はINFγ)の放出を抑制する能力を示す。
【0225】
いくつかの実施態様において、前記増殖させたTregの治療用集団は、炎症性細胞(例えば、ヒトドナー由来であるか又は人工多能性幹細胞から作られたマクロファージ又は単球)によるIL-6産生によって測定して、炎症細胞を抑制する能力を示す。いくつかの実施態様において、前記増殖させたTregの治療用集団は、骨髄系細胞(例えば、マクロファージ、単球、又はミクログリア)の機能を抑制する能力を示す。いくつかの実施態様において、前記増殖させたTregの治療用集団は、炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-6、IL-8、TNFα、又はINFγ)の放出を抑制する能力を示す。
【0226】
具体的な実施態様において、前記凍結保存されたTregの集団は、増殖前の前記Tregの治療用集団と比較して向上した、マクロファージからの炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-6、IL-8、TNFα、又はINFγ)の分泌を抑制する能力を示す。別の具体的な実施態様において、前記凍結保存されたTregの集団は、増殖前の前記Tregの治療用集団と比較して向上した、単球からの炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-6、IL-8、TNFα、又はINFγ)の分泌を抑制する能力を示す。別の具体的な実施態様において、前記凍結保存されたTregの集団は、増殖前の前記Tregの治療用集団と比較して向上した、ミクログリアからの炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-6、IL-8、TNFα、又はINFγ)の分泌を抑制する能力を示す。
【0227】
具体的な実施態様において、凍結保存前の前記増殖させたTregの集団は、増殖前の前記Tregの治療用集団と比較して向上した、マクロファージからの炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-6、IL-8、TNFα、又はINFγ)の分泌を抑制する能力を示す。別の具体的な実施態様において、凍結保存前の前記増殖させたTregの集団は、増殖前の前記Tregの治療用集団と比較して向上した、単球からの炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-6、IL-8、TNFα、又はINFγ)の分泌を抑制する能力を示す。別の具体的な実施態様において、凍結保存前の前記増殖させたTregの集団は、増殖前の前記Tregの治療用集団と比較して向上した、ミクログリアからの炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-6、IL-8、TNFα、又はINFγ)の分泌を抑制する能力を示す。
【0228】
いくつかの実施態様において、前記凍結保存されたTregの集団は、本明細書に記載される方法に従って解凍される。
【0229】
(7.3.1. 医薬組成物)
ある態様において、提供されるのは、本明細書に記載されるTregの治療用集団を含む医薬組成物である。ある実施態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載されるTregの治療用集団及びバッファーを含む医薬組成物である。いくつかの実施態様において、前記医薬組成物は、無菌のバッファー中に本明細書で提供されるTregの治療用集団を含む。
【0230】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、ヒト対象への投与に適したバッファー中にTregの治療用集団を含む。ヒト対象への投与に適したバッファーの例としては、リン酸緩衝生理食塩水などの生理食塩水含有バッファー、生理食塩水(physiological saline)、生理食塩水(normal saline)、又は0.9%生理食塩水が挙げられる。従って、ある実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、無菌のバッファー、例えば、生理食塩水含有バッファー中にTregの治療用集団を含む。特定の実施態様において、前記医薬組成物は、Tregの治療用集団及び生理食塩水(physiological saline)を含む。特定の実施態様において、前記医薬組成物は、Tregの治療用集団及び生理食塩水(normal saline)を含む。特定の実施態様において、前記医薬組成物は、Tregの治療用集団及び0.9%生理食塩水を含む。特定の実施態様において、前記医薬組成物は、Tregの治療用集団及びリン酸緩衝生理食塩水を含む。
【0231】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される組成物は、本明細書で提供されるTregの治療用集団、及び医薬として許容し得る担体、賦形剤、又は希釈剤を含む医薬組成物である。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるのは、有効量の本明細書で提供されるTregの治療用集団、即ち、所望の結果をもたらすのに十分な量の本明細書で提供されるTregの治療用集団、及び担体、賦形剤、又は希釈剤を含む医薬組成物である。
【0232】
本明細書で使用される「医薬として許容し得る」という用語は、動物での、及びより特定的にはヒトでの使用に関して連邦政府又は州政府の規制当局によって承認されているか、又は米国薬局方、欧州薬局方、又は他の一般に認められた薬局方に収載されていることを意味する。
【0233】
前記担体、賦形剤、又は希釈剤は、当技術分野において公知の任意の医薬として許容し得る担体、賦形剤、又は希釈剤であってよい。医薬として許容し得る担体の例としては、無毒性の固体、半固体、又は液体充填剤、希釈剤、カプセル化材、製剤化補助剤もしくは担体が挙げられる。医薬として許容し得る担体は、薬剤投与と両立可能な全ての溶媒、分散媒、被覆剤、抗細菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延化剤などを含むことができる。そのような担体又は希釈剤の例としては、水、生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖溶液、及び5%のヒト血清が挙げられるが、これらに限定されない。リポソーム、及び固定油などの非水性ビヒクルも用いられ得る。
【0234】
賦形剤としては、例えば、カプセル化材又は吸収促進剤、抗酸化剤、結合剤、バッファー、コーティング剤、着色料、崩壊剤、乳化剤、増量剤、充填剤、香味剤、湿潤剤、滑沢剤、香料、防腐剤、プロペラント、放出剤/離型剤(releasing agent)、滅菌剤、甘味料、可溶化剤、湿潤剤、及びそれらの混合物などの添加剤を挙げ得る。「賦形剤」という用語それ自体は、担体又は希釈剤を意味し得る。
【0235】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、0.1%v/v以下、0.2%v/v以下、0.3%v/v以下、0.4%v/v以下、0.5%v/v以下、0.6%v/v以下、0.7%v/v以下、0.8%v/v以下、0.9%v/v以下、1%v/v以下、1.1%v/v以下、1.2%v/v以下、1.3%v/v以下、1.4%v/v以下、又は1.5%v/v以下のDMSOを含む。
【0236】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団を含む組成物は、夾雑物を含まない。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団を含む組成物は、対象、例えば、ヒト対象への投与、例えば、治療的投与に適するように十分に低いレベルの夾雑物を含む。夾雑物としては、例えば、細菌、真菌、マイコプラズマ、エンドトキシン、又は前記増殖培養物由来の残留ビーズが挙げられる。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団を含む組成物は、約5EU/kg未満のエンドトキシンを含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団を含む組成物は、3×106細胞あたり約100個又はそれ未満のビーズを含む。
【0237】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるTregの治療用集団を含む組成物は、無菌のものである。いくつかの実施態様において、前記細胞の単離又は濃縮は、例えば、間違い、利用者が手で触れること、及び/又は汚染を最小化するために閉鎖環境又は無菌の環境で実施される。いくつかの実施態様において、無菌性は、例えば、無菌の濾過膜を通す濾過によって容易に達成され得る。
【0238】
(7.4 治療の方法)
本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象に有効量の本明細書に記載される増殖させたTregの集団を投与することを含む治療の方法である。例えば、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象に、本明細書に記載される、例えば、本明細書で示される方法によって製造される有効量のエクスビボで増殖させたTregの集団を投与することを含む治療の方法である。
【0239】
本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象に、有効量の本明細書に記載される増殖させたTregの集団を投与することを含む治療の方法であって、該集団が、凍結保存されている、前記方法である。例えば、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象に、有効量の本明細書に記載される、例えば、本明細書で示される方法によって製造されるエクスビボで増殖させたTregの集団を投与することを含む治療の方法であって、該集団が、凍結保存されている、前記方法である。
【0240】
本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象に有効量の本明細書に記載される増殖させたTregの集団を投与することを含む治療の方法であって、該集団が、凍結保存されており、該凍結保存された集団が、解凍され、さらなる増殖を行わずに該対象に投与される、前記方法である。例えば、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象に有効量の本明細書に記載される、例えば、本明細書で示される方法によって製造されるエクスビボで増殖させたTregの集団を投与することを含む治療の方法であって、該集団が、凍結保存されており、該凍結保存された集団が、解凍され、さらなる増殖を行わずに該対象に投与される、前記方法である。
【0241】
本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象に有効量のTregの治療用集団を含む凍結保存された組成物を投与することを含む治療の方法である。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象に有効量のTregの治療用集団を含む凍結保存された組成物を投与することを含む、それを必要としている対象において神経変性障害を治療するための方法である。ある実施態様において、前記凍結保存された集団は、解凍され、さらなる増殖を行わずに前記対象に投与される。
【0242】
本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象に、有効量のTregの治療用集団(例えば、本明細書に記載される凍結保存されたTregの治療用集団の解凍されておりかつ増殖させていない形態)を含む本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む治療の方法である。いくつかの実施態様において、前記医薬組成物中のTregは、前記対象にとって自己由来のものである。別の実施態様において、前記医薬組成物中のTregは、前記対象にとって同種異系のものである。
【0243】
いくつかの実施態様において、前記対象は、Treg機能障害に関連する障害であると診断されているか又はそうであると疑われている。いくつかの実施態様において、前記対象は、Treg欠乏に関連する障害であると診断されているか又はそうであると疑われている。いくつかの実施態様において、前記対象は、T細胞応答によって推進される状態(例えば、炎症状態)であると診断されているか又はそうであると疑われている。いくつかの実施態様において、前記対象は、骨髄系細胞応答によって推進される状態(例えば、炎症状態)であると診断されているか又はそうであると疑われている。いくつかの実施態様において、前記対象は、その症状が骨髄系細胞応答に関与している(例えば、その症状をもたらす又は悪化させる)状態であると診断されているか又はそうであると疑われている。ある実施態様において、該状態は、炎症性、自己免疫性、又は神経変性障害である。具体的な実施態様において、前記骨髄系細胞は、単球、マクロファージ、又はミクログリアである。ある実施態様において、前記骨髄系細胞は、中枢神経系の外側の末梢の単球又はマクロファージを含む。
【0244】
いくつかの実施態様において、前記対象は、神経変性疾患であると診断されているか又はそうであると疑われている。いくつかの実施態様において、前記対象は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、パーキンソン病、又は前頭側頭型認知症であると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0245】
いくつかの実施態様において、前記対象は、免疫系の下方制御による利益を受けるであろう障害であると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0246】
いくつかの実施態様において、前記対象は、自己免疫疾患であると診断されているか又はそうであると疑われている。該自己免疫疾患は、例えば、全身性硬化症(強皮症)、多発性筋炎、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、クローン病、セリアック病、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)、I型糖尿病、乾癬、皮膚筋炎、ループス、例えば、全身性エリテマトーデスもしくは皮膚ループス、重症筋無力症、自己免疫性腎症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血球減少、自己免疫性脳炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性ブドウ膜炎、脱毛症、甲状腺炎、又は天疱瘡であり得る。
【0247】
いくつかの実施態様において、前記対象は、心不全又は虚血性心筋症であると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0248】
いくつかの実施態様において、前記対象は、例えば、臓器移植(腎移植又は肝移植など)を受けた後又は幹細胞移植(骨髄移植をはじめとする造血幹細胞移植など)を受けた後の移植片対宿主病であると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0249】
いくつかの実施態様において、前記対象は、神経炎症であると診断されているか又はそうであると疑われている。神経炎症は、例えば、卒中、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、急性視神経炎、急性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎、視神経脊髄炎(NMO)、てんかん、外傷性脳損傷、脊髄損傷、脳炎、中枢神経系(CNS)血管炎、神経サルコイドーシス、自己免疫性もしくは感染後脳炎、又は慢性髄膜炎と関連していることがある。
【0250】
いくつかの実施態様において、前記対象は、肝障害であると診断されているか又はそうであることが疑われている。肝障害は、例えば、脂肪肝、例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、原発性胆汁性胆管炎、自己免疫性肝炎、肝臓がん、肝臓の炎症、A型肝炎、B型肝炎、及びC型肝炎であり得る。ある実施態様において、前記肝障害は、NAFLDである。ある実施態様において、前記肝障害は、NASHである。
【0251】
いくつかの実施態様において、前記対象は、アルコール性肝炎(AH)又はアルコール性脂肪性肝炎(ASH)であると診断されているか又はそうであることが疑われている。
【0252】
いくつかの実施態様において、前記対象は、代謝障害であると診断されているか又はそうであることが疑われている。代謝障害は、これらに限定されないが、線維症、メタボリックシンドローム、NAFLD、及びNASHであり得る。
【0253】
いくつかの実施態様において、前記対象は、膵島移植片の生存を向上させることを必要としており、且つ前記方法は、該対象に、本明細書に記載される増殖させたTregの集団又は本明細書に記載される医薬組成物を膵島移植術と組み合わせて投与することを含む。
【0254】
いくつかの実施態様において、前記対象は、心臓の炎症、例えば、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、虚血性心筋症、心不全に関連する心臓の炎症があると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0255】
いくつかの実施態様において、前記対象は、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害(CIDP)であると診断されているか又はそうであると疑われている。いくつかの実施態様において、前記対象は、急性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー(AIDP)であると診断されているか又はそうであると疑われている。いくつかの実施態様において、前記対象は、ギラン・バレー症候群症候群(GBS)であると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0256】
いくつかの実施態様において、前記対象は、卒中を患ったことがある。
【0257】
いくつかの実施態様において、前記対象は、がん、例えば、血液がんであると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0258】
いくつかの実施態様において、前記対象は、喘息であると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0259】
いくつかの実施態様において、前記対象は、湿疹であると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0260】
いくつかの実施態様において、前記対象は、免疫系の過剰活性化に関連する障害であると診断されているか又はそうであると疑われている。
【0261】
いくつかの実施態様において、前記対象は、Treg症であると診断されているか又はそうであると疑われている。該Treg症は、FOXP3、CD25、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)、LPS反応性ベージュ様アンカータンパク質(LRBA)、又はBTBドメイン及びCNCホモログ2(BACH2)遺伝子機能喪失型変異、又はシグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)機能獲得型変異によって引き起こされ得る。
【0262】
いくつかの実施態様において、前記対象の体重1kgあたり、約1×106~約2×106、約2×106~約3×106、約3×106~約4×106、約4×106~約5×106、約5×106~約6×106、約6×106~約7×106、約7×106~約8×106、約8×106~約9×106、約9×106~約1×107、約1×107~約2×107、約2×107~約3×107、約3×107~約4×107、約4×107~約5×107、約5×107~約6×107、約6×107~約7×107、約7×107~約8×107、約8×107~約9×107、約9×107~約1×108、約1×108~約2×108、約2×108~約3×108、約3×108~約4×108、約4×108~約5×108、約5×108~約6×108、約6×108~約7×108、約7×108~約8×108、約8×108~約9×108、約9×108~約1×109個のCD4+CD25+細胞が、投与される。いくつかの実施態様において、前記対象の体重1kgあたり1×106個のCD4+CD25+細胞(+/-10%)が、投与される。
【0263】
いくつかの実施態様において、約1×106~約2×106、約2×106~約3×106、約3×106~約4×106、約4×106~約5×106、約5×106~約6×106、約6×106~約7×106、約7×106~約8×106、約8×106~約9×106、約9×106~約1×107、約1×107~約2×107、約2×107~約3×107、約3×107~約4×107、約4×107~約5×107、約5×107~約6×107、約6×107~約7×107、約7×107~約8×107、約8×107~約9×107、約9×107~約1×108、約1×108~約2×108、約2×108~約3×108、約3×108~約4×108、約4×108~約5×108、約5×108~約6×108、約6×108~約7×108、約7×108~約8×108、約8×108~約9×108、約9×108~約1×109個のCD4+CD25+細胞が、患者に投与される。
【0264】
いくつかの実施態様において、約1×106~約2×106、約2×106~約3×106、約3×106~約4×106、約4×106~約5×106、約5×106~約6×106、約6×106~約7×106、約7×106~約8×106、約8×106~約9×106、約9×106~約1×107、約1×107~約2×107、約2×107~約3×107、約3×107~約4×107、約4×107~約5×107、約5×107~約6×107、約6×107~約7×107、約7×107~約8×107、約8×107~約9×107、約9×107~約1×108、約1×108~約2×108、約2×108~約3×108、約3×108~約4×108、約4×108~約5×108、約5×108~約6×108、約6×108~約7×108、約7×108~約8×108、約8×108~約9×108、約9×108~約1×109個のCD4+CD25+細胞が、一回の注入で患者に投与される。
【0265】
いくつかの実施態様において、Tregの治療用集団を含む凍結保存された組成物は、Tregの治療用集団を含む前記凍結保存された組成物を解凍してから約30分、約1時間、約2~3時間、約3~4時間、約4~5時間、約5~6、約6~7時間、約7~8時間、約8~9時間、又は約9~10時間以内に投与される。前記Tregの治療用集団を含む凍結保存された組成物は、約2℃~約8℃で(例えば、約4度で)解凍と投与との間保管され得る。
【0266】
いくつかの実施態様において、Tregの治療用集団又はTregの治療用集団を含む組成物の用量が1回、対象に投与される。いくつかの実施態様において、Tregの治療用集団又はTregの治療用集団を含む組成物が、1回よりも多く(more than once)投与される。いくつかの実施態様において、Tregの治療用集団又はTregの治療用集団を含む組成物が、2回以上(two or more times)投与される。いくつかの実施態様において、Tregの治療用集団又はTregの治療用集団を含む組成物が、1~2週、2~3週、3~4週、4~5週、5~6週、6~7週、7~8週、8~9週、9~10週、10~11週、11~12週毎、1~2か月、2~3か月、3~4か月、4~5か月、5~6か月、6~7か月、7~8か月、8~9か月、9~10か月、10~11か月、11~12か月、13~14か月、14~15か月、15~16か月、16~17か月、17~18か月、18~19か月、19~20か月、20~21か月、21~22か月、22~23か月、23~24か月毎、1~2年、2~3年、3~4年、又は4~5年毎に投与される。
【0267】
いくつかの実施態様において、前記対象の体重1kgあたり約1×106個のTregが、1回目投与で投与され、投与されるTregの数は、2回目、3回目、及び後続の投与で増量される。いくつかの実施態様において、前記対象の体重1kgあたり約1×106個のTregが、最初の2回の投与で投与され、投与されるTregの数は、その後投与1回おきに(例えば、4回目、6回目、8回目、及び10回目の投与で)増量される。従って、例えば、1か月あたり前記対象の体重1kgあたり約1×106個のTregが、1か月目及び2か月目に投与され得、1か月あたり該対象の体重1kgあたり約2×106個のTregが、3か月目及び4か月目に投与され得、かつ/又は1か月あたり該対象の体重1kgあたり約3×106個の細胞が、5か月目及び6か月目に投与される。
【0268】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される治療の方法は、自己由来Tregの治療用集団又は自己由来のTregの治療用集団を含む組成物を、前記対象に投与することを含む。別の実施態様において、対象において神経変性障害を治療する方法は、同種異系Tregの治療用集団又は同種異系Tregの治療用集団を含む組成物を、該対象に投与することを含む。
【0269】
(7.4.1. 追加の療法)
いくつかの実施態様において、いくつかの実施態様において、本明細書に記載される治療の方法に従って治療される対象は、1種以上の追加の療法をさらに受けた。
【0270】
いくつかの実施態様において、対象は、IL-2をさらに投与される。IL-2の用量は、約0.5~1×105 IU/m2、約1~1.5×105 IU/m2、約1.5~2×105 IU/m2、約2~2.5×105 IU/m2、約2.5~3×105 IU/m2、約3~3.5×105 IU/m2、約3.5~4×105 IU/m2、約4~4.5×105 IU/m2、約4.5~5×105 IU/m2、約5~6×105 IU/m2、約6~7×105 IU/m2、約7~8×105 IU/m2、約8~9×105 IU/m2、約9~10×105 IU/m2、約10~15×105 IU/m2、約15~20×105 IU/m2、約20~25×105 IU/m2、約25~30×105 IU/m2、約30~35×105 IU/m2、約35~40×105 IU/m2、約40~45×105 IU/m2、約45~50×105 IU/m2、約50~60×105 IU/m2、約60~70×105 IU/m2、約70~80×105 IU/m2、約80~90×105 IU/m2、又は約90~100×105 IU/m2であり得る。具体的な実施態様において、対象には、2×105 IU/m2のIL-2が投与される。
【0271】
IL-2は、1か月に1回、2回、又はそれを超える回数投与され得る。いくつかの実施態様において、IL-2は、1か月に3回投与される。
【0272】
いくつかの実施態様において、IL-2は、皮下投与される。
【0273】
前記IL-2は、前記初めてのTreg注入の少なくとも2週間、少なくとも3週間、又は少なくとも4週間前に投与され得る。
【0274】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される方法に従って治療される対象は、アルツハイマー病の治療のための1種以上の追加の療法を受ける。アルツハイマー病の治療のための追加の療法としては、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ドネペジル(Aricept(登録商標))、ガランタミン(Razadyne(登録商標))、もしくはリバスチグミン(Exelon(登録商標)))又はNMDA受容体アンタゴニスト(例えば、メマンチン(Akatinol(登録商標)、Axura(登録商標)、Ebixa(登録商標)/Abixa(登録商標)、Memox(登録商標)、及びNamenda(登録商標))が挙げられる。また、追加の療法としては、抗炎症剤(例えば、イブプロフェン、インドメタシン、及びスリンダク硫化物)などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID))、3-アミノピリダジンの誘導体などのニューロン死関連タンパク質キナーゼ(DAPK)阻害剤、シクロオキシゲナーゼ(COX-1及び-2)阻害剤、又はビタミンC及びEなどの抗酸化剤も挙げられる。
【0275】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される方法に従って治療される対象は、ALSの治療のための1種以上の追加の療法を受ける。ALSの治療のための追加の療法としては、リルゾール(Rilutek(登録商標))又はリルゾール(Rilutek(登録商標))が挙げられる。
【0276】
いくつかの実施態様において、前記Tregの治療用集団又はTregの治療用組成物を含む組成物は、静脈内注入によって対象に投与される。
【0277】
(7.4.2. 治療効果を決定する方法)
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される治療の方法は、血液中のTregの抑制機能のベースラインからの増加をもたらす。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される治療の方法は、ベースラインから第4週、第8週、第16週、第24週、第30週、又は第36週までの、血液中のTregの抑制機能の増加をもたらす。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される治療の方法は、ベースラインから第24週までの、血液中のTregの抑制機能の増加をもたらす。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される治療の方法は、血液中のTreg数のベースラインからの増加をもたらす。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される治療の方法は、ベースラインから第4週、第8週、第16週、第24週、第30週、又は第36週までの、血液中のTreg数の増加をもたらす。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される治療の方法は、ベースラインから第24週までの、血液中のTreg数の増加をもたらす。
【0278】
本明細書で提供される治療の方法の効果は、臨床症状及び治療されるべき疾患の症状をモニタリングすることによって評価され得る。
【0279】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される治療の方法は、ベースラインと比較して、Appel ALSスコアの変化をもたらす。該Appel ALSスコアは、能力障害又は機能変化の総合的な進行を測定する。いくつかの実施態様において、Appel ALSスコアは、本明細書で提供される方法に従って治療される対象においてベースラインと比較して低下し、これは、症状の改善を示す。別の実施態様において、Appel ALSスコアは、本明細書で提供される方法に従って治療される対象において、ベースラインと比較して変化しないままである。
【0280】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される治療の方法は、ベースラインと比較して、筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール-改訂版(the Amyotrophic Lateral Sclerosis Functional Rating Scale-revised; ALSFRS-R)スコアの変化をもたらす。該ALSFRS-Rスコアは、能力障害又は機能変化の進行を評価する。いくつかの実施態様において、ALSFRS-Rスコアは、本明細書で提供される方法に従って治療される対象においてベースラインと比較して増加し、これは、症状の改善を示す。別の実施態様において、Appel ALSFRS-Rスコアは、本明細書で提供される方法に従って治療される対象において、ベースラインと比較して変化しないままである。
【0281】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される治療の方法は、ベースラインと比較して、努力性肺活量(FVC;呼息に伴い用いられる筋肉の強度)の変化をもたらし、ここで、最も高い数値が、最も強い測定値である。いくつかの実施態様において、FVCは、本明細書で提供される方法に従って治療される対象においてベースラインと比較して増加する。別の実施態様において、FVCは、本明細書で提供される方法に従って治療される対象において、ベースラインと比較して変化しないままである。
【0282】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される治療の方法は、比較して、最大吸気圧(MIP;吸息に伴い用いられる筋肉の強度)の変化をもたらし、ここで、最も高い数値が、最も強い測定値である。いくつかの実施態様において、MIPは、本明細書で提供される方法に従って治療される対象においてベースラインと比較して増加する。別の実施態様において、MIPは、本明細書で提供される方法に従って治療される対象において、ベースラインと比較して変化しないままである。
【0283】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される治療の方法は、ベースラインと比較して、神経精神症状評価質問表(Neuropsychiatric Inventory Questionnaire; NPI-Q)の変化をもたらす。NPI-Qは、報告される各症状についての症状の重症度及び窮迫の格付け、及び個々の領域のスコアの和を反映する総計の重症度及び窮迫スコアを提供する。いくつかの実施態様において、NPI-Qスコアは、本明細書で提供される方法に従って治療される対象においてベースラインと比較して低下する。別の実施態様において、NPI-Qスコアは、本明細書で提供される方法に従って治療される対象において、ベースラインと比較して変化しないままである。
【0284】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される治療の方法は、ベースラインと比較して、GI症状、アナフィラキシー、又は発作の頻度の低減をもたらす。
【0285】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される治療の方法は、ベースラインと比較して、CSFアミロイド及び/又はCSFタウタンパク質(CSF-タウ)の変化の変化をもたらす。いくつかの実施態様において、CSFアミロイド及び/又はCSFタウタンパク質のレベルは、本明細書で提供される方法に従って治療される対象においてベースラインと比較して低下する。別の実施態様において、CSFアミロイド及び/又はCSFタウタンパク質のレベルは、本明細書で提供される方法に従って治療される対象において、ベースラインと比較して変化しないままである。
【0286】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される治療の方法は、ベースラインと比較して、臨床的認知症尺度(Clinical Dementia Rating; CDR)の変化をもたらす。CDRは、記憶、見当識、判断及び問題解決、地域社会活動、家庭及び趣味、並びに介護を評価し、次いで、0-障害なしから3-重篤な障害までの範囲で全体的な格付けを行う。いくつかの実施態様において、CDRは、本明細書において提供される方法に従って治療される対象において、ベースラインと比較して低下する。別の実施態様において、CDRは、本明細書で提供される方法に従って治療される対象において、ベースラインと比較して変化しないままである。
【0287】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される治療の方法は、ベースラインと比較して、アルツハイマー病評価尺度(Alzheimer's Disease Assessment Scale; ADAS)-cog13スコアの変化をもたらす。ADAS-cogは、認識能力を試験し、85の上限(劣った能力)及びゼロの下限(最高の能力)を有する。いくつかの実施態様において、前記ADAS-cog13スコアは、本明細書で提供される方法に従って治療される対象においてベースラインと比較して低下する。別の実施態様において、前記ADAS-cog13スコアは、本明細書で提供される方法に従って治療される対象において変化しないままである。
【0288】
本明細書に記載される治療の方法の有効性は、本明細書に記載される方法に従う治療の開始後約20週、約24週、約28週、約32週、約36週、約40週、約44週、約48週、約52週、約56週、約60週、約64週、約68週、約72週、約76週、約80週、約84週、約88週、約92週、約96週、約100週、約2~3か月、3~4か月、4~5か月、5~6か月、6~7か月、7~8か月、8~9か月、約9~10か月、約10~11か月、約11~12か月、約12~18か月、約18~24か月、約1~2年、約2~3年、約3~4年、約4~5年、約5~6年、約6~7年、約7~8年、約8~9年、又は約9~10年の時点で評価され得る。
【0289】
(7.5 キット)
本明細書で提供されるのは、本明細書で提供されるTregの治療用組成物又はTregの治療用集団を含む組成物を含むキットである。
【0290】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるキットは、使用説明書、追加の試薬(例えば、前記組成物の希釈用の滅菌水もしくは生理食塩水)、もしくは生体試料の採取、生体試料の処理用のチューブ、容器、もしくはシリンジなどの部品、及び/又は試料中の1種以上の表面マーカーの量を定量化するための試薬(例えば、抗体などの検出試薬)を含む。
【0291】
いくつかの実施態様において、前記キットには、本明細書において提供される方法における使用のためのTregの治療用集団又はTregの治療用集団を含む組成物が入った1つ以上の容器が入っている。前記組成物を収容する1つ以上の容器は、単回使用バイアルであっても、複数回使用バイアルであってもよい。いくつかの実施態様において、前記生産物又はキットは、適当な希釈剤を含む第2の容器をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施態様において、前記キットには、本明細書で提供されるTregの治療用集団又はTregの治療用集団を含む組成物の使用(例えば、希釈及び/又は投与)のための説明書が入っている。
【実施例】
【0292】
(8. 実施例)
本セクションに記載される実施例は、発明の例示的な実施態様を示すために提供される。当該実施例に開示される技術が、本発明の実践においてよく機能することが分かっている技術を表しており、従って、その実践のための好適な形態を構成するとみなすことができることが当業者によって認識されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示を踏まえて、開示されている特定の実施態様において多くの変更を行うことができ、それでもなお、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく同様な又は類似の結果を得ることができることを認めるべきである。
【0293】
(8.1 実施例1: 自動Treg増殖)
単離及び濃縮(例えば、CliniMACS(登録商標) Plus又はCliniMACS Prodigy(登録商標)によるCD25+濃縮/CD8+CD19+枯渇)後に、CD25+濃縮細胞を、Quantum Cell Expansion System (Terumo BCT)でインキュベートする。
【0294】
単離されかつ濃縮された細胞の培養の開始から24時間以内に(好ましくは、単離及び濃縮後30分以内に)(第0日)、CD25+細胞を、前記バイオリアクター中で4:1のビーズ:細胞比の抗CD3/抗CD28ビーズで活性化する。また、IL-2及びラパマイシンも、第0日に単離されかつ濃縮された細胞の培養の開始から24時間以内に(好ましくは、単離及び濃縮から30分以内に)添加される。
【0295】
培養培地に、3~4日毎にIL-2を補充し、IL-2濃度を、細胞数(すなわち、前記濃縮されたTreg細胞を含む培養中の全ての細胞の数)に応じて調整する。具体的には、前記細胞は、細胞数が600×106に到達するまでは、約200 IU/mLのIL-2を含有する培養培地中で培養され、次いで、約250 IU/mLのIL-2を含有する培養培地中で培養される。また、培養培地は、ヒトAB血清(例えば、1%又は0.5%ヒトAB血清)も含有する。
【0296】
また、毛細管外(EC)培地の流量も、細胞数(すなわち、前記濃縮されたTreg細胞を含む培養中の全ての細胞の数)に応じて調整される。具体的には、EC培地の流量は、細胞数が500×106に到達するまでは、0に維持され、次いで、約0.2mL/分まで増加され、細胞数が750×106に到達するまで約0.2mL/分に維持され、次いで、約0.4mL/分まで増加され、細胞数が約1,000×106に到達するまで約0.4mL/分に維持され、次いで、約0.6mL/分まで増加され、かつ細胞数が約1,500×106に到達するまで約0.6mL/分に維持され、かつ、次いで、約0.8mL/分まで増加され、約0.8mL/分に維持される。EC培地は、ラパマイシンを含有する。細胞は、Quantumバイオリアクター内で第1日から増殖させる。細胞数及び生存率が、各日に決定される。また、培養培地中のグルコース及び乳酸レベルも、毎日測定される。
【0297】
第11日又はそれより前に、細胞増殖によって必要とされる細胞の用量(≧2.5×10
9細胞)が得られた場合には、細胞が回収され、ビーズ除去後に凍結保存される。細胞増殖プロセスが、第11日までに用量に到達しない場合には、細胞は、第11日に、バイオリアクター中で1:1のビーズ:細胞比の抗CD3/抗CD28ビーズで再活性化される。増殖プロセスは、バイオリアクター中で、必要に応じて、第12日から第15日まで継続され得る。細胞数及び生存率が、各日に測定される。細胞増殖プロセスによって、前記必要とされる細胞の用量が(第12日~第15日のいずれかの日に)得られたら、細胞は、直ちに回収され、ビーズ除去後に凍結保存される。対応するプロセスフロー図については
図1を参照されたい。
【0298】
(7.2 実施例2)
(7.2.1 Treg増殖)
健常人Treg増殖物からの一連のバイオリアクター製造の試行(BioR1~BioR6)を、本明細書に記載されるプロトコール(例えば、実施例1を参照されたい)により、1%ヒトAB血清を含有する培地中で、下記表1に列挙される特定のパラメーターを利用して行った。例えば、表1に記載されるように、健常人由来のTregを、CliniMACS(登録商標) Plusシステム (Miltenyi Biotec社)を用いて5回の試行で単離し、CliniMACS(登録商標) Prodigyシステム(Miltenyi Biotec社)を用いて1回の試行で単離した。Tregを、Terumo Quantumバイオリアクター内で増殖させた。
【0299】
目標用量は、これらの試行の間で2.5×10
9個の総細胞であり、これは、
図2に示されるように達成された。さらに、以下にまとめられるように、得られたエクスビボで増殖させたTregは、凍結保存後であっても良好な生存率及び効力を示した。
【0300】
図2において、試行ごとに列挙された最終データポイントは、Tregが集められた日を表す。バイオリアクター#6(BioR6)については、例えば、開始時の細胞の数は多く、増殖速度は速かった。加えて、目標用量が週末の間に達成されたために、回収は、目標用量が達成されてからかなりの時間をあけて行われた。出発材料から単離されたTregの半分のみが、バイオリアクター#1(BioR1)において用いられ、残りの半分は、フラスコ内で培養されたことに留意すべきである。この単回の試行の間、バイオリアクター#1内での増殖の速度は、フラスコ内でのものよりも優れていた。
(表1)
【表1】
【0301】
(7.2.2 バイオリアクター由来の凍結保存されたTregの解凍後の生存率)
上述の6回の完了した増殖由来のTregを回収し、ビーズを除去し、次いで、セクション6.2で既に記載した手順に従ってクライオバイアル内で凍結保存した。該Tregの生存率を、ベースライン(92.1%±1.89、n=6)、凍結直前(92.3%±4.5、n=6)、及び解凍直後(79.2%±4.2、n=6)において測定した。
図3(結果は、平均±SDとして示される)に示されるように、解凍された試料は全て、70%を超える生存率を示した(範囲72%~87%)。
【0302】
解凍された試料中の細胞の特性を、以下に示されるように評価した。
【0303】
(7.2.3 CD4+CD25+細胞の百分率)
解凍された試料の純度を、フローサイトメトリーによるCD4+CD25+細胞の百分率(全CD4+細胞のうちの百分率)によって決定した。
図4(結果は、平均±SDとして示される)に示されるように、解凍された集団におけるCD4+CD25+細胞の百分率は、99.3%±0.4、n=6であった。
【0304】
(7.2.4 CD4+CD25+FoxP3+細胞の百分率)
解凍された試料の純度を、フローサイトメトリーによるCD4+CD25+FoxP3+細胞の百分率(全CD4+細胞のうちの百分率)によって決定した。
図5(結果は、平均±SDとして示される)に示されるように、解凍された集団におけるCD4+CD25+FoxP3+細胞の百分率は、51.8%±10.6、n=6(範囲34~67%)であった。
【0305】
(7.2.5 CD4+CD25+CD127(low)FoxP3+細胞の百分率)
解凍された試料の純度を、フローサイトメトリーによるCD4+CD25+CD127(low)FoxP3+細胞の百分率(全CD4+細胞のうちの百分率)によって決定した。
図6(結果は、平均±SDとして報告される)に示されるように、解凍された集団におけるCD4+CD25+CD127(low)FoxP3+細胞の百分率は、50.1%±10.3、n=6(範囲34~67%)であった。
【0306】
(7.2.6凍結保存されたTregの解凍後の効力)
解凍された細胞の効力を、レスポンダーT細胞の増殖に対するその抑制能によって決定した。
図7(結果は、平均±SDとして示される)に示されるように、解凍された集団の抑制機能は、91.7%±3.1、n=6(範囲88~97%)であった。
【0307】
(7.2.7 解凍後の凍結保存されたTregにおけるFoxP3タンパク質レベル)
解凍された試料中の細胞上のFoxP3タンパク質発現を、フローサイトメトリーによる平均蛍光強度(MFI)測定によって定量化した。
図8(結果は、平均±SDとして報告される)に示されるように、解凍された集団のFoxP3 MFIは、1714±476、n=6(範囲1508~2494)であった。
【0308】
(7.2.8 解凍後の凍結保存されたTregにおけるCD25タンパク質レベル)
解凍された試料中の細胞上のCD25タンパク質発現を、フローサイトメトリーによる平均蛍光強度(MFI)測定によって定量化した。
図9(結果は、平均±SDとして報告される)に示されるように、解凍された集団のCD25 MFIは、25471±7074、n=6(範囲20728~36922)であった。
【0309】
本明細書で引用される刊行物、特許、及び特許出願は全て、各個の刊行物又は特許出願が、具体的にかつ個別に引用により組み込まれていると示されているかのように、引用により本明細書に組み込まれている。
【0310】
前述の発明は、理解の明確性の目的のために実例及び具体例としてある程度詳細に記載されているが、本発明の教示を考慮すれば、添付の特許請求の範囲の趣旨や範囲から逸脱することなく、それに対してある種の変更及び改変を行い得ることが当業者には容易に明らかとなるであろう。
【0311】
本発明は、本明細書に記載される具体的な実施態様によって範囲が限定されるものではない。実際に、本明細書に記載されるものに加えて本発明のさまざまな変更形態が、前述の説明及び添付の図面から当業者に明らかとなるであろう。そのような変更形が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【国際調査報告】