(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】疾患細胞を検出するための操作された微生物
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20240702BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240702BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240702BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240702BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240702BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20240702BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20240702BHJP
C12Q 1/42 20060101ALI20240702BHJP
C12Q 1/66 20060101ALI20240702BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240702BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240702BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240702BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240702BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240702BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20240702BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20240702BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240702BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240702BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20240702BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
C12Q1/02
A61P35/00 ZNA
A61P1/04
A61P1/00
A61K45/00
A61K35/74 A
A61K35/74 Z
A61K31/573
C12Q1/42
C12Q1/66
C12N1/21
G01N33/50 Z
G01N33/68
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/55
C12N15/53
C12N15/62 Z
C07K19/00
C12N15/31
C12N15/63 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575742
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 US2022032789
(87)【国際公開番号】W WO2022261290
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523459815
【氏名又は名称】マイクロビアル マシーンズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ワーグナー, ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】マーメルスタイン, フレッド
(72)【発明者】
【氏名】ノビナ, カール
(72)【発明者】
【氏名】ディステル, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ナイヤー, スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ポリスキー, バリー
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045AA28
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB03
2G045CB04
2G045CB07
2G045CB30
2G045DA36
2G045FA11
2G045FA36
2G045FB03
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ22
4B063QQ33
4B063QQ79
4B063QR13
4B063QR80
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4C086ZA68
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4C086ZC78
4C087AA01
4C087AA10
4C087BC30
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4C087NA20
4C087ZA66
4C087ZA68
4C087ZB26
4C087ZC78
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA51
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、とりわけ、(i)疾患胃腸組織の上皮細胞の管腔側に特異的に露出している細胞膜受容体と特異的に相互作用する表面タンパク質と、(ii)分泌可能なバイオマーカーとを発現する操作された微生物に関する。本技術の操作された細菌は、疾患胃腸組織を検出するのに有用である。消化管(GI管)は食物を摂取し、食物を消化してエネルギーおよび栄養素を抽出および吸収し、残りの老廃物を糞便として排出する。消化器疾患(GI疾患)は、口、食道、胃および小腸、大腸および直腸を含む消化管を形成する器官が関与する疾患である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患上皮組織、および必要に応じて胃腸(GI)組織を検出するための方法であって、
(a)対象の前記上皮組織に、上皮の疾患細胞に特異的に侵入し、前記疾患細胞における分泌可能なバイオマーカーの発現を指示する操作された微生物を投与することと;
(b)前記対象の生物学的試料を得ることと;
(c)前記分泌可能なバイオマーカーの存在または量について前記試料を評価することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記遺伝子操作された微生物が、疾患組織の上皮細胞の管腔側に特異的に露出している1またはそれを超える細胞膜受容体と特異的に相互作用する表面タンパク質をコードする外因性遺伝子を含み;ならびに
前記表面タンパク質は、前記疾患上皮細胞における前記微生物の結合および/または侵入を促進する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物学的試料が、血液、血漿、血清、尿、糞便、唾液および粘液、またはこれらの任意の2もしくはそれを超える組み合わせから選択される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記分泌可能なバイオマーカーが、粘液、唾液および尿から選択される生体液中に排泄される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記遺伝子操作された微生物が非病原性である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子操作された微生物が、少なくとも1つの栄養要求性変異を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記分泌可能なバイオマーカーが哺乳動物プロモーターから発現される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記哺乳動物プロモーターがGI管上皮細胞特異的発現を指示する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記分泌可能なバイオマーカーが微生物プロモーターから発現され、前記分泌可能なバイオマーカーをコードするmRNAが前記疾患細胞において翻訳される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記分泌可能なバイオマーカーをコードする前記RNAが、配列内リボソーム進入部位(IRES)をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記遺伝子操作された微生物が、経口または直腸経路を介して投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記分泌可能なバイオマーカーが、酵素、ペプチドホルモン、またはタンパク質もしくはペプチド抗原である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記分泌可能なバイオマーカーが、前記対象の前記生体液中に通常存在しない、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記分泌可能なバイオマーカーが、アルカリホスファターゼ、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト癌胎児性抗原(CEA)、結腸がん分泌タンパク質2、カテプシンB、Gaussiaルシフェラーゼ(Gluc)、Metridiaルシフェラーゼ(MLuc)、これらのサブユニット、これらの断片、およびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択される分泌タンパク質である、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記分泌可能なバイオマーカーが、体液中の分布(例えば、前記尿中への排泄の増加または前記血液中への蓄積の増加)に関して最適化される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記分泌可能なバイオマーカーが、定性的に、定量的にまたは半定量的に測定され、必要に応じて、前記分泌可能なバイオマーカーが、結腸鏡、内視鏡、X線撮影装置、コンピュータ断層撮影(CT)スキャナ、磁気共鳴画像法(MRI)機器、血液ガス分析装置および尿化学分析装置から選択される臨床検査装置を使用せずに、測定される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記分泌可能なバイオマーカーが、凝集、電流測定、原子吸光分析法、原子発光分析法、円二色性(CD)、化学発光、比色分析、ディップスティックアッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、蛍光定量法、電気泳動アッセイ、酵素アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ガスクロマトグラフィー、重量測定、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、イムノアッセイ、免疫蛍光酵素アッセイ、質量分析、核磁気共鳴、ラジオイムノアッセイ、分光測定、滴定法、ウェスタンブロッティングまたはこれらの任意の2もしくはそれを超える組み合わせによって測定される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記分泌可能なバイオマーカーが、ラテラルフローもしくはディップスティックイムノアッセイまたは酵素アッセイから選択されるアッセイによって測定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記分泌可能なバイオマーカーが、携帯型および/または手持ち式機器を使用して測定される、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記分泌可能なバイオマーカーの測定が数値をもたらす、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記分泌可能なバイオマーカーが分泌型アルカリホスファターゼを含み、必要に応じて、前記分泌型アルカリホスファターゼがヒト胎盤アルカリホスファターゼのトランケート型の形態である、請求項14~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記分泌型アルカリホスファターゼが、酵素アッセイを使用して測定される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記分泌型アルカリホスファターゼが、比色、蛍光および/または化学発光読み出しを使用して測定される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記アッセイが、p-ニトロフェニルホスファート(pNPP)、4-メチルウンベリフェリルリン酸二ナトリウム塩(MUP)およびクロロ-5-置換アダマンチル-1,2-ジオキセタンホスファート(CSPD)から選択される基質を使用する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記分泌可能なバイオマーカーが、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、またはそのサブユニット、またはその断片を含む、請求項14~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記hCG、または前記そのサブユニット、または前記その断片が、イムノアッセイを使用して測定される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記hCG、または前記そのサブユニット、または前記その断片が、抗hCG抗体またはその断片を使用して測定される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記イムノアッセイが、凝集アッセイ、ディップスティックアッセイ、ラテラルフローアッセイ、定量的イムノアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、またはこれらの任意の2もしくはそれを超える組み合わせから選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記hCG、または前記そのサブユニット、または前記その断片が、化学発光、比色分析および/または蛍光を使用して測定される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記生物学的試料が、血液、尿および唾液から選択される、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記分泌可能なバイオマーカーがルシフェラーゼを含む、請求項14~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ルシフェラーゼが、Gaussiaルシフェラーゼ(Gluc)またはその誘導体である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ルシフェラーゼが、酵素アッセイを使用して測定される、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記酵素アッセイが、ルシフェリンを基質として使用する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ルシフェリンがセレンテラジンである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ルシフェラーゼが、発光読み出しを使用して測定される、請求項31~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記生物学的試料が、血液、尿および唾液から選択される、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子が、少なくとも1つのイントロンを含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記少なくとも1つのイントロンがスプライソソームイントロンである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記微生物が、Lactobacillus、Bifidobacterium、Saccharomyces、Enterococcus、Streptococcus、Pediococcus、Leuconostoc、Bacillus、Escherichia coliから選択される、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記微生物がEscherichia coliであり、必要に応じてEscherichia coli Nissle 1917またはその誘導体である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記Escherichia coli Nissle 1917またはその誘導体が、プラスミドpMUT1および/もしくはプラスミドpMUT2ならびに/またはこれらの誘導体を保有する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記Escherichia coli Nissle 1917またはその誘導体が、前記プラスミドpMUT1および/または前記プラスミドpMUT2をキュアリングされている、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記表面タンパク質が、胃腸組織の正常な上皮細胞の管腔側に露出していない1またはそれを超える細胞膜受容体と特異的に相互作用する、請求項2~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記表面タンパク質が、インベイシンまたはその断片である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記インベイシンが、Yersinia enterocoliticaインベイシン、Yersinia pseudotuberculosisインベイシン、Salmonella enterica PagN、Candida albicans Als3およびE.coliインチミンから選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記表面タンパク質が、がん性細胞および/または前がん性細胞の表面に特異的に結合するペプチドまたはタンパク質を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記ペプチドまたはタンパク質が、レプチン、抗体、またはこれらの断片から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体またはその断片が、単一ドメイン抗体(sdAb)およびscFv断片から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ペプチドまたはタンパク質が、微生物の表面タンパク質上に提示される、請求項47~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記ペプチドまたはタンパク質が、前記微生物の表面タンパク質との融合タンパク質として発現される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記微生物の表面タンパク質が、インベイシン、インチミンおよびアドヘシンから選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記微生物が、エンドサイトーシス液胞を溶解することができる溶解素をコードする外因性遺伝子をさらに含む、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記溶解素が、リステリオリシンOまたはその変異体誘導体である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記表面タンパク質をコードする遺伝子および/または前記溶解素をコードする遺伝子が、前記微生物のゲノムに組み込まれている、請求項53または54に記載の方法。
【請求項56】
前記表面タンパク質をコードする遺伝子および前記溶解素をコードする遺伝子が、単一のゲノム部位に組み込まれている、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記単一のゲノム部位が、バクテリオファージの組み込み部位およびプラスミドの組み込み部位から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記表面タンパク質をコードする遺伝子および/または前記溶解素をコードする遺伝子がプラスミドに挿入されている、請求項53または54に記載の方法。
【請求項59】
前記分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子が、前記微生物のゲノムに組み込まれているか、またはプラスミドに挿入されている、請求項1~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子が、前記単一のゲノム部位に組み込まれている、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子がプラスミドに挿入されている、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子が、第2のプラスミドに挿入されている、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記微生物がEscherichia coli Nissle 1917またはその誘導体であり、ならびに前記プラスミドおよび/または前記第2のプラスミドが、前記プラスミドpMUT1、前記プラスミドpMUT2およびこれらの誘導体から選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記プラスミドおよび/または前記第2のプラスミドが選択機構を含む、請求項62または請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記選択機構が、抗生物質耐性マーカー、毒素-抗毒素系、必須遺伝子における変異の相補性を引き起こすマーカー、シス作用遺伝要素、およびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記選択機構が、カナマイシン耐性遺伝子およびテトラサイクリン耐性遺伝子から選択される抗生物質耐性マーカーである、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記選択機構が、プラスミドR1のhok/sok系、プラスミドRK2のparDE系、FプラスミドのccdAB、FプラスミドのflmAB、プラスミドR1のkis/kid系、Xanthomonas campestrisのXCV2162-ptaRNA1、腸管出血性E.coliまたはKlebsiellaのataT-ataR、Erwinia carotovoraのtoxIN系、Caulobacter crescentusのparE-parD系、Enterococcus faecalisプラスミドAD1からのfst-RNAII、Bacillus subtilisプラスミドpSM19035のε-ζ系およびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択される毒素-抗毒素系である、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記選択機構が、必須遺伝子における変異の相補性を引き起こすマーカーであり、前記必須遺伝子産物は、
必須栄養素もしくは細胞壁成分の生合成に関与する酵素;および/または
ハウスキーピング機能
をコードする、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
前記必須遺伝子が、dapA、dapD、murA、alr、dadX、murI、dapE、thyAおよびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択され、必要に応じて、前記必須遺伝子がalrおよびdadXであり、必要に応じて、前記遺伝子操作された微生物がalrおよびdadXの不活性化を有し、ならびに前記選択機構が、前記alrおよびdadXの不活性化を補完するためのalr遺伝子を有するプラスミドである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記ハウスキーピング機能が、rRNA、tRNA、infA、RNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ、細胞分裂タンパク質またはシャペロンタンパク質のサブユニットをコードする遺伝子、およびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択される、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記選択機構が、ColE1 cer遺伝子座およびpSC101 par遺伝子座から選択されるシス作用遺伝要素である、請求項64に記載の方法。
【請求項72】
前記微生物が、dapA、dapD、dapE、murA、alr、dadX、murI、thyAおよびaroCの1つまたはそれより多くの欠失、不活性化または変化した発現もしくは活性から選択される少なくとも1つの変異を有し、ならびに必要に応じて、dapA、alrおよびdadXの欠失または不活性化を含む、請求項1~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子を保有するプラスミドが、DNA結合タンパク質に対する少なくとも1つの結合部位を含む、請求項59~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記DNA結合タンパク質に対する少なくとも1つの結合部位が、SV40エンハンサー、転写因子結合部位および細菌のオペレーターから選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記DNA結合タンパク質が、1またはそれを超える核局在化シグナル(NLS)を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記NLSがSV40 T抗原NLS配列(KKKRKV)である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記微生物が、前記DNA結合タンパク質をコードする遺伝子を含む、請求項73~76のいずれか一項に記載のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記DNA結合タンパク質がNFκBである、請求項73~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記疾患が、前がん性病変、がん、潰瘍性大腸炎、クローン病、バレット食道、過敏性腸症候群および過敏性腸疾患から選択される、請求項1~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記前がん性病変が、無茎性ポリープ、鋸歯状ポリープ(例えば、過形成性ポリープ、無茎性鋸歯状腺腫/ポリープ、および古典的鋸歯状腺腫)、無茎性鋸歯状ポリープ、平坦型ポリープ、亜有茎性ポリープ、有茎性ポリープ、およびこれらの組み合わせから選択されるポリープを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記前がん性病変が、BilIN-1、BilIN-2、BilIN-3および胆管癌から選択される胆管上皮内新生物(BilIN)を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記前がん性病変が、PanIN-1、PanIN-2、PanIN-3および膵管腺癌(PDAC)から選択される膵臓上皮内新生物(PanIN)を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
前記前がん性病変が微小ポリープである、請求項79~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記前がん性病変が約0.05mm~約30mmのサイズを有する、請求項79~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記前がん性病変が、約0.1mm未満、約0.25mm未満、約0.5mm未満、約1mm未満、約2mm未満、約5mm未満、約8mm未満、約10mm未満、約15mm未満、約20mm未満、約25mm未満または約30mm未満のサイズを有する、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記がんが、ポリープ、腺腫または明白ながんを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項87】
前記がんが、リンチ症候群がん、家族性腺腫性ポリポーシス、遺伝性非ポリポーシス結腸がん(HNPCC)、膵管腺癌(PDAC)、胆管癌または散発性がんを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項88】
前記対象ががんに罹患しやすい、請求項1~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記対象が、リンチ症候群、遺伝性非ポリポーシス結腸がん(HNPCC)、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)、ガードナー症候群、ターコット症候群、MUTYH関連ポリポーシス、ポイツ・ジェガース症候群および若年性ポリポーシス症候群および大腸炎関連結腸直腸がん(CACC)から選択される状態に罹患している、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記ステップ(a)、(b)および/または(c)が繰り返される、請求項1~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記ステップ(a)、(b)および/または(c)が、毎月、隔月、6ヶ月ごともしくは毎年を超えない頻度で、または概ね毎月、隔月、6ヶ月ごともしくは毎年繰り返される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
表面タンパク質をコードする遺伝子を含む、遺伝子操作された微生物であって、前記表面タンパク質は、疾患組織、および必要に応じて消化管の上皮組織である疾患組織の上皮細胞の管腔側に特異的に露出している1またはそれを超える細胞膜受容体と特異的に相互作用し、
前記表面タンパク質は、疾患組織の上皮細胞の結合および侵入を促進し、
前記微生物は、前記上皮細胞によって分泌可能である分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子を含み、前記分泌可能なバイオマーカーをコードする前記遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されている、遺伝子操作された微生物。
【請求項93】
前記遺伝子操作された微生物が非病原性である、請求項92に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項94】
前記遺伝子操作された微生物が少なくとも1つの栄養要求性変異を有する、請求項92または請求項93に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項95】
前記分泌可能なバイオマーカーが哺乳動物プロモーターから発現される、請求項92~94のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項96】
前記哺乳動物プロモーターがGI管上皮細胞特異的発現を指示する、請求項95に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項97】
前記分泌可能なバイオマーカーが微生物プロモーターから発現される、請求項92~94のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項98】
前記分泌可能なバイオマーカーをコードするRNAが、配列内リボソーム進入部位(IRES)を含む、請求項97に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項99】
前記微生物プロモーターが、誘導性および/または抑制性である、請求項97または98に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項100】
前記分泌可能なバイオマーカーが、酵素、ペプチドホルモン、またはタンパク質もしくはペプチド抗原である、請求項92~99のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項101】
前記分泌可能なバイオマーカーが、血液、尿または唾液から選択される対象の生体液中に通常存在しない、請求項100に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項102】
前記分泌可能なバイオマーカーが、アルカリホスファターゼ、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト癌胎児性抗原(CEA)、結腸がん分泌タンパク質2、カテプシンB、Gaussiaルシフェラーゼ(Gluc)、Metridiaルシフェラーゼ(MLuc)、これらのサブユニット、これらの断片、およびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択される、請求項92~101のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項103】
前記分泌可能なバイオマーカーが分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)である、請求項102に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項104】
前記分泌可能なバイオマーカーが、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、またはそのサブユニットもしくはその断片である、請求項102に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項105】
前記分泌可能なバイオマーカーがルシフェラーゼである、請求項102に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項106】
前記分泌可能なバイオマーカーが、ルシフェラーゼGaussiaルシフェラーゼ(Gluc)またはその誘導体である、請求項105に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項107】
前記分泌可能なバイオマーカーをコードする前記遺伝子が少なくとも1つのイントロンを含む、請求項92~106のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項108】
前記微生物が、Lactobacillus、Bifidobacterium、Saccharomyces、Enterococcus、Streptococcus、Pediococcus、Leuconostoc、Bacillus、Escherichia coliから選択される、請求項92~107のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項109】
前記微生物が、プロバイオティックEscherichia coli株またはその誘導体である、請求項108に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項110】
前記微生物が、Escherichia coli Nissle 1917またはその誘導体である、請求項109に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項111】
前記Escherichia coli Nissle 1917または前記その誘導体が、プラスミドpMUT1および/もしくはプラスミドpMUT2ならびに/またはこれらの誘導体を保有する、請求項110に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項112】
前記Escherichia coli Nissle 1917または前記その誘導体が、前記プラスミドpMUT1および/または前記プラスミドpMUT2をキュアリングされている、請求項110に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項113】
前記表面タンパク質が、がん性細胞および/または前がん性細胞の表面に特異的に結合するペプチドまたはタンパク質を含む、請求項92~112のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項114】
前記表面タンパク質が、インベイシンまたはその断片である、請求項113に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項115】
前記インベイシンが、Yersinia enterocoliticaインベイシン、Yersinia pseudotuberculosisインベイシン、Salmonella enterica PagN、Candida albicans Als3およびE.coliインチミンから選択される、請求項114に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項116】
前記ペプチドまたはタンパク質が、レプチン、抗体、またはこれらの断片から選択される、請求項113に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項117】
前記抗体またはその断片が、単一ドメイン抗体(sdAb)およびscFv断片から選択される、請求項116に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項118】
前記ペプチドまたはタンパク質が微生物の表面タンパク質上に提示される、請求項117に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項119】
前記ペプチドまたはタンパク質が、前記微生物の表面タンパク質との融合タンパク質として発現される、請求項118に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項120】
前記微生物の表面タンパク質が、インベイシン、インチミンおよびアドヘシンから選択される、請求項119に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項121】
前記微生物が、エンドサイトーシス液胞を溶解する溶解素をコードする外因性遺伝子をさらに含む、請求項92~120のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項122】
前記溶解素が、リステリオリシンOまたはその変異体誘導体である、請求項121に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項123】
前記表面タンパク質をコードする前記遺伝子および/または前記溶解素をコードする前記遺伝子が、前記微生物のゲノムに組み込まれている、請求項121または請求項122に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項124】
前記表面タンパク質をコードする前記遺伝子および前記溶解素をコードする前記遺伝子が、単一のゲノム部位に組み込まれている、請求項121~123のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項125】
前記単一のゲノム部位が、バクテリオファージの組み込み部位またはプラスミドの組み込み部位である、請求項124に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項126】
前記表面タンパク質をコードする前記遺伝子および/または前記溶解素をコードする前記遺伝子が、プラスミドに挿入されている、請求項121~123のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項127】
前記分泌可能なバイオマーカーをコードする前記遺伝子が前記プラスミドに挿入されている、請求項126に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項128】
前記分泌可能なバイオマーカーをコードする前記遺伝子が前記微生物のゲノムに組み込まれており、必要に応じて、前記分泌可能なバイオマーカーをコードする前記遺伝子が前記単一のゲノム部位に組み込まれている、請求項92~126のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項129】
前記分泌可能なバイオマーカーをコードする前記遺伝子が、第2のプラスミドに挿入されている、請求項92~126のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項130】
前記プラスミドおよび/または前記第2のプラスミドが選択機構を含む、請求項125~129のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項131】
前記選択機構が、抗生物質耐性マーカー、毒素-抗毒素系、必須遺伝子における変異の相補性を引き起こすマーカー、シス作用遺伝要素、およびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択される、請求項130に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項132】
前記選択機構が、カナマイシン耐性遺伝子およびテトラサイクリン耐性遺伝子から選択される抗生物質耐性マーカーである、請求項130に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項133】
前記選択機構が、プラスミドR1のhok/sok系、プラスミドRK2のparDE系、FプラスミドのccdAB、FプラスミドのflmAB、プラスミドR1のkis/kid系、Xanthomonas campestrisのXCV2162-ptaRNA1、腸管出血性E.coliまたはKlebsiellaのataT-ataR、Erwinia carotovoraのtoxIN系、Caulobacter crescentusのparE-parD系、Enterococcus faecalisプラスミドAD1からのfst-RNAII、Bacillus subtilisプラスミドpSM19035のε-ζ系およびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択される毒素-抗毒素系である、請求項130に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項134】
前記選択機構が、必須遺伝子における変異の相補性を引き起こすマーカーであり、前記必須遺伝子は、
必須栄養素もしくは細胞壁成分の生合成に関与する酵素;および/または
ハウスキーピング機能
をコードする、請求項130に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項135】
前記必須遺伝子が、dapA、dapD、murA、alr、dadX、murI、dapE、thyAおよびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択され、必要に応じて、前記必須遺伝子がalrおよびdadXであり、必要に応じて、前記遺伝子操作された微生物がalrおよびdadXの不活性化を有し、ならびに前記選択機構が、前記alrおよびdadXの不活性化を補完するためのalr遺伝子を有するプラスミドである、請求項134に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項136】
前記必須遺伝子が、rRNA、tRNA、infA、RNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ、細胞分裂タンパク質またはシャペロンタンパク質のサブユニットをコードする遺伝子、およびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択されるハウスキーピング機能をコードする、請求項121に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項137】
前記必須遺伝子が、ColE1 cer遺伝子座またはpSC101 par遺伝子座から選択されるシス作用遺伝要素である、請求項118に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項138】
前記微生物が、dapA、dapD、dapE、murA、alr、dadX、murI、thyAおよびaroCの1つまたはそれより多くの欠失、不活性化または低下した発現もしくは活性から選択される少なくとも1つの変異を有し、前記微生物が、必要に応じて、dapA、alrおよびdadXの(or)欠失または不活性化を含む、請求項92~137のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項139】
前記プラスミドまたは前記第2のプラスミドが、DNA結合タンパク質に対する少なくとも1つの結合部位を含む、請求項129~138のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項140】
前記DNA結合タンパク質が、1またはそれを超える核局在化シグナル(NLS)を含む、請求項139に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項141】
前記NLSがSV40 T抗原NLS配列(KKKRKV)である、請求項140に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項142】
前記微生物が、前記DNA結合タンパク質をコードする遺伝子を含む、請求項139~141のいずれか一項に記載のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項143】
前記DNA結合タンパク質がNFκBである、請求項139~142のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項144】
前記微生物が、前記DNA結合タンパク質をコードする遺伝子を含む、請求項139~143のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項145】
対象における疾患を診断および/または処置する方法であって、
(i)請求項92~144のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物を前記対象の消化管に投与することと;
(ii)前記対象から生物学的試料を得ることと;
(iii)前記生物学的試料中の前記分泌可能なバイオマーカーを測定し、それにより、疾患上皮細胞を検出することと
を含み、
必要に応じて、前記方法は、前記対象に処置を施すことをさらに含む、方法。
【請求項146】
(iv)前記分泌可能なバイオマーカーの発現が観察された場合、処置のために前記対象を選択することをさらに含む、請求項145に記載の方法。
【請求項147】
前記疾患が、前がん性病変、がん、潰瘍性大腸炎、クローン病、バレット食道、過敏性腸症候群および過敏性腸疾患から選択される、請求項145または請求項146に記載の方法。
【請求項148】
前記前がん性病変が、
無茎性ポリープ、鋸歯状ポリープ、過形成性ポリープ、無茎性鋸歯状腺腫/ポリープ、古典的鋸歯状腺腫、無茎性鋸歯状ポリープ、平坦型ポリープ、亜有茎性ポリープ、有茎性ポリープおよびこれらの組み合わせから選択されるポリープ;
BilIN-1、BilIN-2、BilIN-3および胆管癌から選択される胆管上皮内新生物(BilIN);ならびに/または
PanIN-1、PanIN-2、PanIN-3および膵管腺癌(PDAC)から選択される膵臓上皮内新生物(PanIN)を含む、請求項147に記載の方法。
【請求項149】
前記ポリープが微小ポリープである、請求項148に記載の方法。
【請求項150】
前記前がん性病変が約0.05mm~約30mmのサイズを有する、請求項148に記載の方法。
【請求項151】
前記前がん性病変が、約0.1mm未満、約0.25mm未満、約0.5mm未満、約1mm未満、約2mm未満、約5mm未満、約8mm未満、約10mm未満、約15mm未満、約20mm未満、約25mm未満または約30mm未満のサイズを有する、請求項150に記載の方法。
【請求項152】
前記がんが、ポリープ、腺腫または明白ながんを含む、請求項147に記載の方法。
【請求項153】
前記がんが、リンチ症候群がん、家族性腺腫性ポリポーシス、遺伝性非ポリポーシス結腸がん(HNPCC)、胆管癌、膵管腺癌(PDAC)または散発性がんを含む、請求項147に記載の方法。
【請求項154】
前記がんが、肛門の扁平上皮癌、肛門の低悪性度扁平上皮内病変(LSIL)、肛門の高悪性度扁平上皮内病変(HSIL)、結腸直腸がん、結腸直腸腺癌、家族性腺腫性ポリポーシス、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸がん、結腸直腸ポリポーシス(例えば、ポイツ・ジェガース症候群、若年性ポリポーシス症候群、MUTYH関連ポリポーシス、家族性腺腫性ポリポーシス/ガードナー症候群、クロンカイト・カナダ症候群)、カルチノイド、腹膜偽粘液腫、十二指腸腺癌、小腸の前悪性腺腫、遠位胆管癌、胆管上皮内新生物(BilIN)、BilIN-1、BilIN-2、BilIN-3または胆管癌、膵管腺癌(PDAC)、膵臓上皮内新生物(PanIN)、PanIN-1、PanIN-2、PanIN-3、胃癌、印環細胞癌(SRCC)、胃リンパ腫(MALTリンパ腫)、形成性胃組織炎(ブリントン病)、および食道の扁平上皮癌および腺癌から選択される、請求項147に記載の方法。
【請求項155】
対象におけるがんを処置するための方法であって、
(i)請求項92~144のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物を前記対象の消化管に投与することと;
(ii)前記対象から生物学的試料を得ることと;
(iii)前記生物学的試料中の前記分泌可能なバイオマーカーを測定し、それにより、前記疾患上皮細胞を検出することと;
(iv)前記分泌可能なバイオマーカーの発現が観察された場合、処置を施すことと
を含む、方法。
【請求項156】
前記対象が、ポリープおよび/またはがんを発症しやすい、請求項145~155のいずれか一項に記載の方法。
【請求項157】
前記対象が、リンチ症候群、遺伝性非ポリポーシス結腸がん(HNPCC)、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)、ガードナー症候群、ターコット症候群、MUTYH関連ポリポーシス、ポイツ・ジェガース症候群および若年性ポリポーシス症候群および大腸炎関連結腸直腸がん(CACC)から選択される状態に罹患している、請求項156に記載の方法。
【請求項158】
前記対象がリンチ症候群を有する、請求項157に記載の方法。
【請求項159】
前記処置が、結腸鏡検査、内視鏡検査、手術ならびに化学療法剤、細胞傷害剤、免疫チェックポイント阻害剤、免疫抑制剤、サルファ剤、コルチコステロイド、抗生物質およびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせからなる群から選択される治療剤の投与から選択される、請求項145~158のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、とりわけ、操作された微生物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
消化管(GI管)は食物を摂取し、食物を消化してエネルギーおよび栄養素を抽出および吸収し、残りの老廃物を糞便として排出する。消化器疾患(GI疾患)は、口、食道、胃および小腸、大腸および直腸を含む消化管を形成する器官が関与する疾患である。GI疾患には、バレット食道、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、クローン病、潰瘍性大腸炎および前がん性症候群、およびがんが含まれる。
【0003】
GI疾患の診断は、症状および病歴から始まる。内視鏡検査、結腸鏡検査およびコンピュータ断層撮影(CT)スキャンのような技術は、GI管の管腔の観察を容易にすることによって診断を補助する。例えば、CTスキャンでの限局性、不規則的および非対称性の消化管壁の肥厚は、悪性腫瘍を示唆する。分節性またはびまん性の消化管壁の肥厚は、虚血性、炎症性または感染性疾患を示し得る。しかしながら、内視鏡検査、結腸鏡検査などは侵襲的な手技であり、患者にとって、特にGI管のがんのリスクが高い患者にとって不快である。より侵襲性の低いモニタリング技術が望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
したがって、様々な局面において、本発明は、胃腸(GI)組織または胃腸組織とつながっている管の上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)などの疾患上皮組織を検出するのに有用な組成物および方法を提供する。本発明の一局面は、胃腸(GI)組織および胃腸組織とつながっている管の上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)などの疾患上皮組織を検出するための方法に関する。様々な実施形態において、本方法は、体液または排泄された試料中のバイオマーカーの存在によって疾患組織の存在を検出することを可能にし、これにより、結腸鏡検査などのより侵襲的な技術の使用を回避することができる。これらの実施形態は、疾患モニタリングを補助するために、消化管のがん性病変を発症する遺伝的素因を有する個体にとって特に有利である。様々な実施形態において、本方法は、分泌可能なバイオマーカーの発現を疾患細胞(diseased cell)において特異的に指示する遺伝子操作された微生物を、投与することを必要とする対象の消化管に投与することを含む。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、疾患細胞によって分泌される。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、尿および唾液などの体液中に排泄される。したがって、分泌可能なバイオマーカーは、血液、血清、血漿、唾液または尿の試料から検出または測定され得る。したがって、本方法は、対象から生物学的試料を得ることと、生物学的試料中の分泌可能なバイオマーカーを測定し、それにより、疾患上皮細胞の存在を検出することとをさらに含む。
【0005】
様々な実施形態において、遺伝子操作された微生物は、疾患胃腸上皮細胞に特異的に存在する(すなわち、非疾患胃腸上皮細胞と比較して)1またはそれを超える細胞膜受容体と特異的に相互作用する発現された表面タンパク質を通じて、疾患上皮細胞と特異的に相互作用する。例えば、細胞膜受容体は、正常な胃腸組織の上皮細胞の管腔側に露出していなくてもよいが、疾患に罹患している対象中の胃腸組織の疾患上皮細胞の管腔側に露出している。表面タンパク質は、これにより、疾患上皮細胞における微生物の結合および侵入を促進する。様々な実施形態において、微生物は、プロモーターに作動可能に連結された分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子を含む。それにより、様々な実施形態において、微生物は、疾患上皮細胞に核酸(例えば、DNAまたはmRNA分子)またはタンパク質を送達する。様々な実施形態において、疾患上皮細胞は、分泌可能なバイオマーカーを分泌し、それにより、生体液(biological fluid)試料の簡単な評価による疾患上皮細胞の簡便な検出を可能にする。様々な実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは分泌タンパク質である。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、生体液中に排泄される。いくつかの実施形態において、生体液は、粘液、唾液および/または尿から選択される。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、血液または糞便試料中で検出される。
【0006】
様々な実施形態において、(例えば、消化管の)疾患上皮組織の検出は、対象から得られた生物学的試料中の分泌可能なバイオマーカーを測定することを含む。本明細書中に開示される実施形態のいずれにおいても、検出は、酵素試験またはイムノアッセイを使用して実施され得る。
【0007】
様々な実施形態において、遺伝子操作された微生物は、経口または直腸経路を介して投与される。様々な実施形態において、必要に応じて、結腸洗浄剤(colon cleansing agent)が、微生物の投与前および/または投与後に投与され得る。様々な実施形態において、本明細書に開示される方法は、前がん性病変、がん、またはリンチ症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、バレット食道、過敏性腸症候群および/もしくは過敏性腸疾患によって引き起こされる病変から選択される疾患胃腸(GI)組織を検出する。様々な実施形態において、遺伝子操作された微生物は、経口または直腸経路を介して投与される。様々な実施形態において、必要に応じて、結腸洗浄剤が、微生物の投与前および/または投与後に投与され得る。
【0008】
様々な実施形態において、対象は、ポリープおよび/またはがん(限定されないが、例えば、結腸直腸がん、膵管腺癌または胆管癌)を発症しやすい。いくつかの実施形態において、対象は、リンチ症候群、遺伝性非ポリポーシス結腸がん(HNPCC)、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)、ガードナー症候群、ターコット症候群、MUTYH関連ポリポーシス、ポイツ・ジェガース症候群および若年性ポリポーシス症候群および大腸炎関連結腸直腸がん(CACC)から選択される状態に罹患している。
【0009】
本発明の一局面は、遺伝子操作された微生物に関する。微生物は、胃腸組織の疾患上皮細胞の管腔側に露出している1またはそれを超える細胞膜受容体を介して疾患上皮細胞と特異的に相互作用する表面タンパク質をコードする遺伝子を含む。1またはそれを超える細胞膜受容体は、正常な胃腸組織の上皮細胞の管腔側で発現されず、したがって胃腸組織の疾患細胞または異常細胞に対する特異性を微生物に付与する。表面タンパク質は、疾患胃腸組織の上皮細胞の侵入を特異的に促進する。
【0010】
様々な実施形態において、微生物は非病原性である。様々な実施形態において、微生物は、少なくとも1つの栄養要求性変異を有する。様々な実施形態において、少なくとも1つの栄養要求性変異は、微生物の選択および封じ込めを可能にし、侵入に際して疾患哺乳動物細胞の内側での微生物の溶解も促進する。例示的な栄養要求性変異には、細胞壁合成のために必要とされる代謝産物の合成に関与する1またはそれを超える遺伝子の欠失、不活性化、または低下した活性もしくは発現が含まれる。細胞壁合成に関与する例示的な代謝産物としては、D-アラニンおよびジアミノピメリン酸が挙げられる。様々な実施形態において、微生物は、ファゴソームの溶解を引き起こす溶解素をコードする遺伝子をさらに含む。
【0011】
様々な実施形態において、微生物は、プロモーターに作動可能に連結された分泌可能なバイオマーカー(哺乳動物細胞によって分泌可能)をコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは哺乳動物プロモーターから発現される。いくつかの実施形態において、哺乳動物プロモーターは、上皮発現またはGI管上皮細胞特異的発現および/または胃腸組織とつながっている管の上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)における特異的発現に対して活性であるか、または特異的である。これらの実施形態において、微生物は、DNA分子(例えば、プラスミド)を疾患上皮細胞に送達する。プラスミドは、単一コピープラスミドであり得、またはいくつかの実施形態においてマルチコピープラスミド(例えば、高コピー数プラスミド)であり得る。これらの実施形態において、DNA分子は、必要に応じて、DNA結合タンパク質のための少なくとも1つの結合部位を含む。これらの実施形態において、DNA分子は、必要に応じて、外因性DNA結合タンパク質のための少なくとも1つの結合部位を含む。いくつかの実施形態において、DNA結合タンパク質は、1またはそれを超える核局在化シグナル(NLS)を含み、したがって、疾患上皮細胞におけるDNA分子(例えば、プラスミド)の核移行を可能にする。これらの実施形態において、疾患上皮細胞は、微生物によって送達されたDNA分子(例えば、プラスミド)から分泌可能なバイオマーカーを発現し、それによって分泌可能なバイオマーカーの検出を可能にする。
【0012】
代替の実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、例えばT7またはT3プロモーターを含む微生物プロモーターから発現される。このような実施形態において、微生物は、T7またはT3 RNAポリメラーゼの遺伝子をさらに含み、発現する。他の適切な微生物プロモーターは、本明細書にさらに記載されており、当技術分野で公知である。これらの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は、哺乳動物細胞内での翻訳のために構築される。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は、配列内リボソーム進入部位を含む。これらの実施形態において、微生物は、哺乳動物細胞内で翻訳されるmRNA分子を疾患上皮細胞に送達する。これらの実施形態において、疾患上皮細胞は、微生物によって送達されたmRNA分子から分泌可能なバイオマーカーを発現し、それにより、疾患上皮細胞の簡便な検出を可能にする。
【0013】
代替の実施形態において、プロモーターは微生物プロモーターであり、発現されたmRNAは細菌細胞内で翻訳される。これらの実施形態において、少なくとも1つの検出マーカーをコードする1またはそれを超える遺伝子は、哺乳動物の細胞質にのみ見出される代謝産物と接触すると蛍光性になるタンパク質を必要に応じてさらに含む。これらの実施形態において、微生物は、タンパク質分子を産生し、疾患上皮細胞に送達する。これらの実施形態において、疾患上皮細胞はタンパク質を産生しないが、代わりに、微生物によって産生されたタンパク質が哺乳動物細胞質にのみ見出される代謝産物に遭遇すると蛍光性になる。
【0014】
様々な実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、酵素、ペプチドホルモン、またはペプチドもしくはタンパク質抗原から選択される分泌タンパク質である。例としては、アルカリホスファターゼ、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト癌胎児性抗原(CEA)、結腸がん分泌タンパク質2、カテプシンB、Gaussiaルシフェラーゼ(Gluc)、Metridiaルシフェラーゼ(MLuc)、これらのサブユニット、これらの断片、およびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせが挙げられる。
【0015】
様々な実施形態において、微生物は、Lactobacillus、Bifidobacterium、Saccharomyces、Enterococcus、Streptococcus、Pediococcus、Leuconostoc、Bacillus、Escherichia coliから選択される。いくつかの実施形態において、微生物はEscherichia coliである。例示的なE.coli株は、E.coli Nissle 1917またはその誘導体である。
【0016】
様々な実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は、Escherichia coli Nissle 1917由来の天然の内因性プラスミド(すなわち、pMUT1、pMUT2および/またはそれらの誘導体)に挿入され得る。いくつかの実施形態において、プラスミドは選択機構を含む。いくつかの実施形態において、選択機構は、プラスミド維持のために抗生物質を必要としなくてよい。したがって、いくつかの実施形態において、選択機構は、抗生物質耐性マーカー、毒素-抗毒素系、必須遺伝子における変異の相補性を引き起こすマーカー、シス作用遺伝要素、およびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、分泌可能なマーカーをコードする遺伝子を運ぶプラスミドは、細胞壁合成のために必要とされる代謝産物の合成に関与する遺伝子を欠失または不活性化する栄養要求性変異などの栄養要求性変異を相補する。
【0017】
本発明の一局面は、対象における疾患を診断する方法であって、(i)対象の関心対象の標的上皮細胞(消化管の上皮細胞など)に本明細書に開示されている遺伝子操作された微生物を投与することと、(ii)分泌可能なバイオマーカーの発現を検出し、それにより疾患上皮細胞の存在を検出することとを含む、方法に関する。
【0018】
本発明の一局面は、対象における疾患を診断および/または処置する方法であって、(i)対象の標的上皮細胞(消化管の上皮細胞など)に本明細書に開示されている任意の実施形態の遺伝子操作された微生物を投与することと、(ii)対象から生物学的試料を得ることと、(iii)生物学的試料中の分泌可能なバイオマーカーを測定し、それにより、疾患上皮細胞の存在を検出することとを含む、方法に関する。疾患上皮細胞が検出される場合、この方法は、対象に処置を施すこと、ならびに/または疾患組織の位置を特定し、疾患組織を評価し、および/もしくは疾患組織を除去するために結腸鏡検査を行うことをさらに含み得る。
【0019】
本発明の一局面は、処置のために疾患に罹患しているかまたは罹患している疑いがある対象を選択する方法であって、(i)対象の標的上皮細胞(消化管の上皮細胞など)に本明細書に開示されている任意の実施形態の遺伝子操作された微生物を投与することと、(ii)対象から生物学的試料を得ることと、(iii)生物学的試料中の分泌可能なバイオマーカーを測定し、それにより、疾患上皮細胞の存在を検出することと、(iv)分泌可能なバイオマーカーの発現が観察された場合に、処置のために対象を選択することとを含む、方法に関する。いくつかの実施形態において、処置は、必要に応じてポリープまたは病変切除を伴う結腸鏡検査を含む。いくつかの実施形態において、処置は、これに代えてまたはこれに加えて、化学療法、放射線療法、または免疫療法を含む。
【0020】
本発明の一局面は、患者におけるがんを処置するための方法であって、(i)対象の標的上皮細胞(消化管の上皮細胞など)に本明細書に開示されている任意の実施形態の遺伝子操作された微生物を投与することと、(ii)分泌可能なバイオマーカーの発現を検出し、それにより、疾患上皮細胞の存在を検出することと、(iii)分泌可能なバイオマーカーの発現が観察された場合に、処置を施すこととを含む、方法に関する。様々な局面および実施形態において、処置は、手術または化学療法剤、細胞傷害剤、免疫チェックポイント阻害剤、免疫抑制剤、サルファ剤、コルチコステロイド、抗生物質およびこれらの任意の2もしくはそれを超える組み合わせからなる群から選択される治療剤の投与である。
【0021】
本発明の他の局面は、上記局面の方法において使用するための本明細書に開示される任意の実施形態の遺伝子操作された微生物を提供する。
【0022】
本明細書に開示されている任意の局面または実施形態は、本明細書に開示されている任意の他の局面または実施形態と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、GI管上皮の疾患細胞の模式的表示を示す。基底外側および管腔側が示されている。中央の細胞は、管腔側に提示された誤った場所に局在化した受容体を示す疾患細胞である。他の疾患細胞は、誤った場所に局在化したおよび/または新規な哺乳動物膜受容体を有し得る。新規な受容体は、その細胞に通常見られない受容体または転座およびその他のゲノム再編成によって形成される受容体であり得る。
【
図2】
図2は、E.coli Nissle 1917(EcN)株の模式的表示を示す。この株は、遺伝子操作された細菌を産生するのに有用な例示的な株である。染色体ならびに天然に存在するプラスミドpMUT1(GenBankアクセッション番号MW240712)および/またはプラスミドpMUT2(GenBankアクセッション番号CP023342)が異なるサイズの円によって表されている。
【
図3】
図3は、1またはそれを超える栄養要求性変異(Xによって示される)を有する遺伝子操作されたE.coli Nissle 1917(EcN)株の基本株の一実施形態の模式的表示を示す。例示的な栄養要求性変異としては、dapAΔ、alrΔおよびdadXΔが挙げられる。このような変異は、細菌細胞が体内または環境で増殖するのを防ぎ、それによって遺伝子操作された細菌の封じ込めを補助する。
【
図4】
図4Aおよび
図4Bは、dapAΔ、alrΔ、dadXΔ栄養要求性変異を有する遺伝子操作されたE.coli Nissle 1917(EcN)株の成長要件および成長特性を示す。アラニンラセマーゼをコードする遺伝子であるalrおよびdadXの二重欠失は、D-アラニン栄養要求性をもたらす。dapAの欠失は、ジアミノピメリン酸に対する栄養要求性をもたらす。
図4Aのグラフは、D-アラニンおよびジアミノピメリン酸の両方を成長培地に添加した場合にのみこの株が成長することを実証している。
図4Bのグラフは、D-アラニンおよびジアミノピメリン酸を培地に添加すると、この株が野生型株と同様に成長することを実証している。
【
図5】
図5は、表面タンパク質をコードする遺伝子およびゲノムに組み込まれたリステリオリシンOを有する遺伝子操作された細菌E.coli Nissle 1917(EcN)株の一実施形態の模式的表示を示す。例示的な表面タンパク質は、インベイシン(配列番号1)および細菌の足場上に発現されるナノボディ/受容体結合ペプチドである。リステリオリシンO(配列番号2)が発現され、エンドソームからの脱出が可能になる。
【
図6】
図6は、1またはそれを超える栄養要求性変異(Xによって示される)を有し、ゲノムに組み込まれた表面タンパク質およびリステリオリシンOをコードする遺伝子をさらに有する遺伝子操作されたE.coli Nissle 1917(EcN)誘導体の一実施形態の模式的表示を示す。この株はプラスミドpMUT1を含有しない。
【
図7】
図7Aおよび
図7Bは、E.coli Nissle 1917(EcN)からの潜在プラスミドのキュアリングの結果を示す。
図7Aは、pMut1、次いでpMut2の逐次キュアリングを示すアガロースゲルを示す。野生型E.coli Nissle 1917(EcN)をキュアリングプラスミドで形質転換し、5mg/mlアンピシリンの存在下で継代した。野生型E.coli Nissle 1917(EcN)(レーンA)、pMUT1がキュアリングされたE.coli Nissle 1917(EcN)(レーンB)ならびにpMUT1およびpMUT2がキュアリングされたE.coli Nissle 1917(EcN)(レーンC)からのプラスミド調製物
図7Bは、最終株におけるpMUT1およびpMUT2のキュアリングを確認する定量的PCRの結果を示す。qPCRは、rpoA(染色体マーカー)、pMUT1およびpMUT2に対して特異的なプライマーを用いて行われ、増幅が設定された閾値を超えたサイクル数の逆数(Cq
-1)が示されている。データラベルは
図7Aと同様である。
【
図8】
図8は、本開示の遺伝子操作された細菌の非限定的な実施形態の模式的表示を示す。この株は、1またはそれを超える栄養要求性変異(Xによって示される)を有し、ゲノムに組み込まれた表面タンパク質およびリステリオリシンOをコードする遺伝子をさらに有するE.coli Nissle 1917(EcN)誘導体である。この株はプラスミドpMUT1を含有しないが、選択機構として栄養要求性変異の少なくとも1つの相補性(例えば、プラスミド媒介性alr遺伝子によるalrおよびdadXの相補性)を用いて選択される、pMUT1ベースの誘導体であるプラスミドpSRXを含有する。プラスミドpSRXは、本明細書においてGFPによって例示される検出マーカーも保有する。
【
図9A】
図9A~
図9Dは、理論に束縛されるものではないが、疾患胃腸(GI)組織を検出するための方法の模式的表示を示す。
図9Aは、GI管の管腔側に提示された誤った場所に局在化した受容体を示す、疾患上皮細胞(中央の細胞によって表される)への遺伝子操作された細菌の特異的結合を示す。このような結合は、遺伝子操作された細菌の、疾患上皮細胞(中央の細胞によって表される)における内部移行をもたらす。
図9Bは、弱毒変異による細菌の溶解、およびLLOの作用を通じたファゴソームの溶解を示す。
図9Cは、遺伝子操作された細菌の溶解の際の、分泌可能なバイオマーカーを有するプラスミドの核局在化を示す。
図9Dは、GI管の疾患上皮細胞(中央の細胞によって表される)による分泌可能なバイオマーカーの発現を示す。
【
図10】
図10は、インビトロでSW480結腸直腸がん細胞に侵入した後に細菌細胞によって発現される検出マーカー(GFP)の発現を示す。SW480(結腸直腸がん由来細胞株)と1時間共インキュベートし、続いて細胞外細菌を洗い流した後の、インベイシン遺伝子なし(上のパネル)またはあり(下のパネル)のmNeonGreen(緑色蛍光タンパク質)を含有する細菌株。SW480細胞を蛍光顕微鏡法によって可視化し(左パネル)、プレートから取り除き、次いで、フローサイトメトリーによって分析して(右パネル)、細菌株による侵入が成功したSW480細胞の一部を同定した。
【
図11A-B】
図11A~
図11Cは、本明細書に開示される疾患細胞に対する非侵襲性試験の模式的表示を示す。
図11Aは、理論に束縛されるものではないが、DNAペイロードの送達機構を示す。
図11B(左パネル)は、遺伝子操作された細菌(限定されないが、例えば、E.coli Nissle 1917)によって送達されたDNAペイロードを有する標的がん細胞を示す。中央のパネルは、DNAペイロードによってコードされる検出マーカーの発現および分泌を示す。右パネルは、検出マーカーを有する血管を表す。いくつかの実施形態において、検出マーカーは尿中に分泌される。
図11Cは、検出マーカーが簡易な血液検査または尿検査で検出され得ることを示す。
【
図12A-B】
図12A~
図12Dは、Gaussiaルシフェラーゼ(Gluc)検出マーカーを使用する疾患細胞のインビトロ検出を実証する。
図12Aは、哺乳動物プロモーター(配列番号3)の制御下にあるGluc遺伝子を有するプラスミドの構成を示す。プラスミドは、リステリオリシンO(溶解素)と選択マーカー、例えば、Amp
Rまたはalrをコードする遺伝子を有する。
図12Bは、
図12AのE.coli Nissle 1917をベースとした操作された細菌と接触させた細胞によるがんGlucの発現を示す。
図12Cは、哺乳動物プロモーター(配列番号4)の制御下にあるイントロンを有するGluc遺伝子を有するプラスミドの構成を示す。プラスミドは、リステリオリシンO(溶解素)と選択マーカー、例えば、Amp
Rまたはalrをコードする遺伝子を有する。
図12Dは、
図12CのE.coli Nissle 1917をベースとした操作された細菌と接触させたがん細胞によるGlucの発現を示す。
【
図13】
図13A~
図13Cは、β-絨毛性ゴナドトロピン(hCG)検出マーカーを用いた疾患細胞のインビトロ検出を実証する。ELISAベースの試験(
図13A)および妊娠試験(
図13B)を用いた、E.coli Nissle 1917をベースとする操作された細菌によるDNAペイロードの送達時にがん細胞株によって産生されたhCGの検出が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
消化管内の異常に成長している細胞の現行の診断は、患者にとって快適ではなく、疾患細胞の検出に必ず成功するとは限らない侵襲的な結腸鏡検査に基づいている。異常な細胞および疾患組織を可視化し、除去する能力は、外科医の技能およびポリープまたは腫瘍の隆起に応じて異なる。ある種の異常に成長する細胞は、平坦であるか、または数が少なく、したがって、熟練した外科医によっても視覚化および除去されない。さらに、結腸直腸がんのリスクの増加を伴う状態を有する患者にとって、頻繁な結腸鏡検査はかなりの負担である。本開示は、体液試料の日常的な分析によって対象中の異常細胞を検出する目的で投与される操作された細菌細胞を提供する。操作された細菌細胞は、異常細胞に侵入し、分泌可能なバイオマーカーをコードする核酸を送達するように遺伝子改変されており、異常細胞が分泌可能なバイオマーカーを発現し、分泌することを可能にする。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、尿、粘液、唾液および糞便などの生物学的試料中に排泄される。いくつかの実施形態において、検出マーカーは血液中に分泌され、したがって、血液、血清または血漿などの試料中で検出され得る。様々な実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、酵素アッセイまたはイムノアッセイを使用して、必要に応じて凝集、発光または蛍光、ディップスティックアッセイ、およびラテラルフローイムノアッセイなどのモダリティを使用して検出される。
【0025】
いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、体液中での分布(例えば、排泄の減少または増加および安定性のぞうか)に関して最適化される。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、血液中での分布に関して最適化される。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、尿中での分布に関して最適化される。したがって、いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、(例えば、尿または糞便中での)排泄の増加に関して最適化される。代替の実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、排泄の減少に関して最適化され、分泌可能なバイオマーカーの血液中への蓄積をもたらす。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、蓄積の増加をもたらす安定性の増加(例えば、改善されたタンパク質フォールディングおよび/またはタンパク質分解に対する安定性)に関して最適化される。例示的な実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、安定性の増加および排泄の減少に関して最適化され、血液中への蓄積をもたらす。別の例示的な実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、安定性の増加および排泄の増加を有し、尿中への蓄積をもたらす。
【0026】
したがって、様々な局面において、本発明は、胃腸(GI)組織の上皮細胞または胃腸組織とつながっている管の疾患上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)などの疾患上皮細胞を検出するのに有用な組成物および方法を提供する。本発明の1つの局面は、胃腸(GI)組織の上皮細胞または胃腸組織とつながっている管の上皮細胞(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)などの疾患上皮細胞を検出するための方法であって、(i)遺伝子操作された微生物を、投与することを必要とする対象の(例えば、消化管の)標的上皮細胞に投与することと、(ii)対象から生物学的試料を得ることと、(iii)前記生物学的試料中の前記分泌可能なバイオマーカーを測定し、それにより、疾患上皮細胞の存在を検出することとを含む、方法に関する。いくつかの実施形態において、遺伝子操作された微生物は、非病原性、栄養要求性であり、1またはそれを超える細胞膜受容体と特異的に相互作用する表面タンパク質をコードする外因性遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、細胞膜受容体は、正常な胃腸組織の上皮細胞の管腔側に露出していないが、疾患に罹患している対象中の(例えば、胃腸組織の)疾患上皮細胞の管腔側に露出している。表面タンパク質は、疾患上皮細胞における微生物の結合および侵入を促進する。微生物は、哺乳動物または細菌による発現を駆動するためにプロモーターに作動可能に連結された分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子も含む。いくつかの実施形態において、プロモーターは哺乳動物プロモーターであり得る。いくつかの実施形態において、哺乳動物プロモーターは、上皮特異的発現またはGI管上皮細胞特異的発現および/または胃腸組織とつながっている管の上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)における特異的発現を指示する。遺伝子操作された微生物は、経口または直腸経路を介して投与され得る。この局面において、結腸洗浄剤は、必要に応じて、微生物の投与の前および/または後に投与され得る。本明細書中に開示される実施形態のいずれにおいても、生物学的試料は対象から得られ、(iii)分泌可能なバイオマーカーは、生物学的試料において測定され、それにより、疾患上皮細胞の存在を検出する。本明細書中に開示される実施形態のいずれにおいても、生物学的試料は、血液、血漿、血清、粘液、尿、糞便、唾液またはこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、結腸鏡、内視鏡、X線撮影装置(例えば、X線機器)、コンピュータ断層撮影(CT)スキャナ、磁気共鳴画像法(MRI)機器、血液ガス分析装置および尿化学分析装置から選択される臨床検査装置を使用せずに測定される。本明細書中に開示される実施形態のいずれにおいても、分泌可能なバイオマーカーは、凝集、電流測定、原子吸光分析法、原子発光分析法、円二色性(CD)、化学発光、比色分析、ディップスティックアッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、蛍光定量法、電気泳動アッセイ、酵素アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ガスクロマトグラフィー、重量測定、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、イムノアッセイ、免疫蛍光酵素アッセイ、質量分析、核磁気共鳴、ラジオイムノアッセイ、分光測定、滴定法、ウェスタンブロッティングまたはこれらの任意の2もしくはそれを超える組み合わせによって測定される。
【0027】
消化管の管腔を取り囲む消化管壁は、管腔から外側方向に配置された、粘膜、粘膜下組織、筋層および漿膜(組織が腹腔内である場合)/外膜(組織が腹膜後組織である場合)と呼ばれる4つの同心層で構成される。粘膜の特徴は器官に依存する。例えば、胃粘膜上皮は、単純な円柱状であり、分泌に対処するために胃小窩および腺に組織化されている。分泌細胞(例えば、杯細胞およびパネート細胞)、免疫細胞(例えば、腸管関連リンパ組織(GALT)の樹状細胞およびM細胞)と混ざり合った腺上皮から構成される小腸粘膜は、絨毛内に配置され、刷子縁を形成し、吸収面積を増加させる。
【0028】
消化管の上皮細胞は、分極した連続層を形成する。上皮細胞は、密着結合および接着結合によって接続され、頂端表面にバリアを形成し、頂端組織区画と基底組織区画との間での溶質、イオンおよびタンパク質の選択的拡散を制御する。細胞の頂端表面はGI管腔に面し、基底外側面は内側に面する基底膜に隣接して存在する。基底膜は、ラミニン、IV型コラーゲン、プロテオグリカンおよびナイドジェンを含む細胞外マトリックス(ECM)である。上皮細胞は、ECM成分および細胞内タンパク質に結合する膜内在性タンパク質である、インテグリンおよび膜貫通プロテオグリカンであるジストログリカンを介してECMと相互作用する。上皮細胞中で広く発現されているβ1インテグリンは、上皮細胞の極性を確立する上で中心的な役割を果たす。例えば、ECM成分へのインテグリンの結合は、インテグリンによるシグナル伝達を活性化し、細胞骨格の組織化に影響を及ぼし、これは細胞極性に寄与する。
【0029】
極性およびバリア機能の破壊は疾患を引き起こす。例えば、腫瘍抑制因子APCの不活性化後に、組織極性はがん進行中の極めて早期に失われる。例えば、Fatehullahら、Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci.368(1629):20130014(2013)を参照されたい。したがって、反対側の基底表面ドメインへのインテグリンの場所を誤った局在化は、上皮構造の喪失およびがんの発達と相関していた。Krishnanら、Mol Biol Cell 24(6):818-31(2013)。同様に、腸病原性Escherichia coliおよびY.pseudotuberculosisなどの病原体は、細胞極性を破壊し、基底外側膜タンパク質の頂端への移動を可能にする。Muza-Moonsら、Infect Immun.71(12):7069-7078(2003);McCormickら、Infect Immun.65(4):1414-21(1997)。さらに、クローン病、処置されていないセリアック病、過敏性腸症候群、および過敏性腸疾患などの疾患は、バリア機能の破壊を特徴とする。Marchiandoら、Annu Rev Pathol 5:119-144(2010)。したがって、誤った場所に局在化したおよび/または異常に発現した細胞表面分子の検出は、大きな診断価値を有する。
【0030】
胆管は、胆汁を運ぶ長い管状の構造である。小胆管は、小肝動脈分岐、?門脈分岐も含有する肝小葉の門脈三つ組において見ることができる。小型胆管は融合して、より大型の胆管を形成する。肝三つ組中のより大型の胆管は癒合して、肝臓の下面で融合して総胆管になる右および左肝管になる肝内胆管となる。総胆管の中ほどで、(胆嚢におよび胆嚢から胆汁を運ぶ)胆嚢管が胆嚢へと分岐する。総胆管は腸に開口する。肝内管、胆嚢管および総胆管は、高円柱上皮によって裏打ちされている。
【0031】
胆嚢は、肝臓から排出された胆汁を貯蔵する。円柱状粘膜は、粘膜固有層の上に折り重なって配置されており、伸長を可能にする。粘膜固有層の下には筋層があり、胆嚢を取り囲んでいるのは結合組織層および漿膜である。胆嚢粘膜は、胆汁中のナトリウムを外に輸送し、続いて塩化物および水を受動的に輸送する。したがって、肝臓によって排出され、胆嚢中に貯蔵された胆汁は、より濃縮される。胆嚢の筋層は、小腸の腸内分泌細胞によって排出されるホルモンであるコレシストキニンの影響を受けて収縮する。
【0032】
膵管、またはヴィルズング管(主膵管としても知られている)は、膵臓を総胆管に接続する管である。膵管は、ファーター膨大部の直前で総胆管に接続し、その後、両管は、大十二指腸乳頭で十二指腸の第2部の内側を穿通する。多くの希少な解剖学的変異形も存在する。膵管は、管腔の微絨毛および多糖外被ならびに小さな頂端細胞質ムチン液滴を有する円柱状細胞によって裏打ちされている。大きな膵管では、多くの上皮細胞は繊毛も有し、これは外分泌分泌物の下流への移動を補助するように機能する。
【0033】
したがって、様々な局面において、本発明は、GI組織の疾患上皮組織または胃腸組織とつながっている管の上皮細胞(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)などの疾患上皮組織を検出するのに有用な組成物および方法を提供する。本発明の一局面は、疾患GI組織を検出するための方法であって、(i)GI管の疾患上皮細胞または胃腸組織とつながっている管の上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)において、検出可能なマーカーの発現を特異的に指示するように操作された遺伝子操作された微生物を、投与することを必要とする対象の消化管に投与することと、(ii)分泌可能なバイオマーカーの発現を検出し、それにより疾患上皮細胞の存在を検出することとを含む方法に関する。様々な実施形態において、本方法は、分泌可能なバイオマーカーの発現を疾患細胞において特異的に指示する遺伝子操作された微生物を、投与することを必要とする対象のGI管に投与することを含む。本方法は、分泌可能なバイオマーカーの発現を検出し、それにより、疾患上皮細胞の存在を検出することをさらに含む。いくつかの実施形態において、遺伝子操作された微生物は、非病原性、栄養要求性であり、1またはそれを超える細胞膜受容体と特異的に相互作用する表面タンパク質をコードする外因性遺伝子を含む。細胞膜受容体は、正常な上皮または胃腸組織の上皮細胞の管腔側に露出していないが、疾患に罹患している対象中の胃腸組織の疾患上皮細胞の管腔側に露出している。したがって、1またはそれを超える細胞膜受容体の発現および/または局在化は、上皮組織または胃腸組織の疾患細胞または異常細胞に対する特異性を微生物に付与する。したがって、表面タンパク質は、疾患上皮細胞における微生物の結合および侵入を促進する。表面タンパク質は、疾患上皮細胞における微生物の結合および侵入を促進する。微生物は、プロモーター(例えば、哺乳動物または細菌のプロモーター)に作動可能に連結された分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子も含む。それにより、様々な実施形態において、微生物は、疾患上皮細胞に核酸(例えば、DNAまたはmRNA分子)を送達する。様々な実施形態において、疾患上皮細胞は、分泌可能なバイオマーカーを発現し、それによって疾患上皮細胞の検出を可能にする。いくつかの実施形態において、プロモーターは哺乳動物プロモーターであり得る。いくつかの実施形態において、哺乳動物プロモーターは、GI管上皮細胞特異的発現および/または胃腸組織とつながっている管の上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)における特異的発現を指示する。
【0034】
遺伝子操作された微生物を使用して、および/または本明細書に開示されている方法を使用して診断され得る疾患には、前がん性病変、GI管がん、潰瘍性大腸炎、クローン病、バレット食道、過敏性腸症候群および過敏性腸疾患が含まれる。GI管がんおよび前がん性症候群には、肛門の扁平上皮癌、結腸直腸がん(結腸直腸腺癌、家族性腺腫性ポリポーシス、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸がんを含むCRC)、結腸直腸ポリポーシス(ポイツ・ジェガース症候群、若年性ポリポーシス症候群、MUTYH関連ポリポーシス、家族性腺腫性ポリポーシス/ガードナー症候群、およびクロンカイト・カナダ症候群を含む)、カルチノイド、腹膜偽粘液腫、十二指腸腺癌、遠位胆管癌、膵管腺癌、胃癌、印環細胞癌(SRCC)、胃リンパ腫(MALTリンパ腫)、形成性胃組織炎(linitis plastic)(ブリントン病)、ならびに食道の扁平上皮癌および腺癌が含まれる。これらの適応症の1またはそれより多くに罹患している対象からの疾患上皮細胞は、本開示の遺伝子操作された微生物を使用して検出され得る。遺伝子操作された微生物は、胃腸組織の疾患上皮細胞の管腔側に露出している1またはそれを超える細胞膜受容体と特異的に相互作用することによって、疾患上皮細胞に特異的に結合する。異常細胞または疾患細胞において生じる1もしくはそれを超える細胞膜受容体または異常に発現されたタンパク質は胃腸組織または管組織の正常な上皮細胞の管腔側に露出していないので、遺伝子操作された微生物は正常(非疾患)上皮細胞に結合しない。いくつかの実施形態において、遺伝子操作された微生物は、分泌可能なバイオマーカーをコードする1またはそれを超える核酸を疾患上皮細胞(標的細胞)に送達する。これらの実施形態において、疾患上皮細胞(標的細胞)は分泌可能なバイオマーカーを発現し、生体液試料中での疾患上皮細胞(標的細胞)の検出を可能にする。例えば、疾患上皮細胞(標的細胞)は、血液、糞便、尿または唾液などの生物学的試料中の分泌可能なバイオマーカーの検出に基づいて同定され得る。疾患上皮細胞の確認または評価は、続いて、結腸鏡検査、内視鏡検査、磁気共鳴画像法、CTスキャン、PETスキャン、SPECTスキャンなどのような適切な技術を使用して行われ得る。
【0035】
結腸直腸がん(CRC)は、一般的でしばしば致死的な腫瘍である。結腸直腸腺腫は、最も頻繁な前がん性病変である。他の潜在的に前悪性の状態としては、慢性炎症性腸疾患ならびに、家族性腺腫性ポリポーシス、ポイツ・ジェガース症候群および若年性ポリポーシスなどの遺伝性症候群が挙げられる。これらの状態は、消化管の異なる部位を含み得る。すべてのこのような症例において、初期段階での疾患認識は、適切な予防がん戦略を考案するために不可欠である。
【0036】
結腸直腸腺腫は、無関係の症状のためにまたはCRCスクリーニングのために行われた結腸鏡検査中に偶発的に発見されることが多い無症候性病変である。結腸鏡検査スクリーニングを受ける約25%の男性および15%の女性は、1またはそれを超える腺腫を有する。60歳を超える人々の最大40%が結腸鏡検査で示されるように結腸直腸腺腫性ポリープを有するが、すべての大腸ポリープが腺腫であるわけではなく、腺腫の90%超ががんに進行しない。
【0037】
遺伝性非ポリポーシス結腸がん(HNPCC)としても知られているリンチ症候群は、すべてのCRC症例の2~4%を占める。HNPCCを有する個体は、CRCを発症する約75%の生涯リスクを有しており、いくつかのタイプのがんに罹患しやすい。結腸がんおよびポリープは、リンチ症候群患者において、散発性新生物を有する一般集団より若齢で発生し、腫瘍はより近位の位置で発生する。これらのがんは、しばしば低分化で粘液性である。ミュア・トール症候群は、ある種の皮膚腫瘍に対するさらなる素因を与える、リンチ症候群の変異形である。
【0038】
家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)は、10,000個体に1個体の有病率を有し、CRCに罹患しやすい2番目に一般的な遺伝的症候群である。予防的結腸切除術を受けていないFAPに罹患している個体においてCRCを発症する生涯リスクは100%に近い。FAPの特徴的な特徴には、青年期初期に始まる数百から数千の結腸腺腫の発達が含まれる。FAP患者におけるCRC診断の平均年齢(未処置の場合)は40歳である;7%が20歳までに腫瘍を発症し、95%が50歳までに腫瘍を発症する。軽症型FAPは、この疾患の重篤度がより低い形態であり、CRCの平均生涯リスクは70%である。この群では、約30個の腺腫性ポリープが結腸に発生し、結腸新生物は近位結腸に位置する傾向があり、がんはより高齢で発生する。ガードナー症候群およびターコット症候群は、FAPのまれな変異形である。ポリープに加えて、ガードナー症候群は、類表皮嚢胞、骨腫、歯の異常および/またはデスモイド腫瘍のような結腸外症状を引き起こす。ターコット症候群は、結腸直腸腺腫性ポリープ、および髄芽腫などの中枢神経系の悪性腫瘍を発症する素因を引き起こす。
【0039】
遺伝的状態であるMUTYH関連ポリポーシス、ポイツ・ジェガース症候群および若年性ポリポーシス症候群は、結腸ポリープおよびがんの素因を引き起こす他のよりまれな症候群である。MUTYH関連ポリポーシス(MAP)を有する患者は、結腸直腸の腺腫性ポリポーシスを発症し、80%のCRCのリスクを有する。ポイツ・ジェガースおよび若年性ポリポーシス症候群は、結腸直腸および他の悪性腫瘍のリスクの増加を示し、CRCの生涯リスクは約40%である。
【0040】
胆管癌とも呼ばれる胆道がんは、膵臓がん、胆嚢がんおよび胆管のがんを含む胆管系の器官に生じる悪性腫瘍を指す。毎年、胆道がんの約7,500の新規の症例が診断される。これらのがんには、約5,000の胆嚢がんおよび2,000~3,000の胆管がんが含まれる。胆管および膵臓の前新生物病変および新生物病変は、分子的、組織学的および病態生理学的特徴に関して類似性を共有する。上皮内新生物は、胆道では胆管上皮内新生物(BilIN)として、膵臓では膵臓上皮内新生物(PanIN)として報告されている。いずれも浸潤癌、それぞれ胆管癌(CCA)および膵管腺癌(PDAC)に進行し得る。
【0041】
BilINは、通常、肝外胆管(EHBD)および大型肝内胆管(IHBD)を裏打ちする上皮内において発生し、胆嚢にも見出される場合がある。BilINは、多段階胆管発癌の過程に関与する、微小乳頭状、偽乳頭状または平坦な成長パターンを有する微視的な病変である。細胞および構造上の異型性の程度に基づいて、BilINは、胆管の非新生物性上皮と比較して最も軽度の変化を示すBilIN-1(低悪性度異形成);BilIN-1と比較して増加した核異型性および細胞極性の限局性異常を有するBilIN-2(中程度の異形成);通常、胆管癌領域の近くで同定されるBilIN-3(高悪性度異形成または上皮内癌)という3つのカテゴリーに分類されてきた。
【0042】
毎年、膵臓がんの約30,000の新規の症例が米国で診断されている。初期症状は曖昧であり、膵臓がんを検出するためのスクリーニング検査が存在しないため、早期診断は困難である。膵臓上皮内新生物(PanIN)は、微視的な平坦なまたは微小乳頭状の非侵襲性病変として定義される。これらの病変は、しばしば5mm未満のサイズであり、膵管腺癌(PDAC)の最も一般的な悪性前駆体と考えられている。より少ない割合のPDACの症例は、膵管内乳頭粘液性新生物(IPMN)および粘液性嚢胞新生物(MCN)にも由来する。PanINも、細胞および構造上の異型性の程度に従って、軽度から中等度の細胞学的異型性および基底部限局性の核を有する低悪性度(以前はPanIN-1およびPanIN-2として分類されていた)ならびに重度の細胞学的異型性、極性および有糸分裂の喪失を有する高悪性度(以前はPanIN-3として分類されていた)に分類されている。
【0043】
炎症性腸疾患(IBD)は、腸の非特異的慢性炎症性疾患の群であり、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)および分類不能大腸炎を含む。IBDの病因は不明なままであり、長期持続性および再発性の腸炎症を特徴とする。米国におけるUCの発生率は、10万人当たり9~12人であり、10万人当たり205~240人の有病率であると推定されている(Tally et al.,Am J Gastroenterol.106 Suppl 1:S2-S25(2011))。UCの病因は不明である。しかしながら、腸内微生物を含む腸内の内容物に対する異常な免疫応答は、遺伝的素因を有する個体において疾患を推進すると考えられている(Geremia et al.,Autoimmun Rev.13:3-10(2014))。大腸炎関連結腸直腸がん(CACC)は、炎症性腸疾患(IBD)、特に潰瘍性大腸炎(UC)における最も重篤な合併症の1つであり、IBD患者の全原因死亡率の約15%を占める。散発性CRCよりもCACCの方が予後が悪く、死亡率が高いため、早期のCACC検出が重要である。
【0044】
クローン病は、消化(GI)管の炎症を特徴とする。炎症は、口から肛門までGI管内のどこにでも現れ得る。この疾患を有する人々は、症状の起伏を経験することが多い。この疾患を有する人々は、寛解期間を経験することさえある。診断遅延の長さは、少なくとも一部のクローン病(CD)患者にとって問題となり得る。しかしながら、クローン病は、軽度の症状から始まり、徐々に悪化する進行性疾患である。早期診断は、瘻孔、膿瘍または狭窄などの腸損傷の予防を補助するために重要である。
【0045】
過敏性腸症候群(IBS)は、一連の慢性胃腸(GI)症状ならびに明らかな構造的および生化学的異常が存在しない場合の排便習慣の変化として現れる障害である。IBSは、世界的な有病率が10~15%であり、50歳未満の個体においてより頻度が高い。Lovell and Ford,Global Prevalence of and Risk Factors for Irritable Bowel Syndrome:A Meta-analysis,Clinical Gastroenterology and Hepatology 10:712-721(2012)。排便習慣の変化は、最も一般的に報告されている臨床的特徴であり、主に便秘(IBS-C)、下痢(IBS-D)または両方の状態の混合(IBS-M)を伴う症候群である。さらに、IBS患者はしばしば腹痛を経験し、腹痛は感情的ストレスまたは摂食によって誘発され得、通常、便の通過によって緩和される。IBSの診断は、臨床経験および多国籍の専門家の委員会のコンセンサスに基づくローマ基準の最新版に従って確認される。
【0046】
バレット食道は、腸の裏打ちに類似する組織が食道を裏打ちする組織を置き換える状態である。バレット食道を有する人々は食道腺癌を発症し得る。バレット食道の正確な原因は不明であるが、胃食道逆流性疾患(GERD)は、バレット食道を発症するリスクを増加させる。
【0047】
診断、特に早期診断は、前がん性病変、GI管がん、潰瘍性大腸炎、クローン病、バレット食道、過敏性腸症候群および/または過敏性腸疾患に罹患している個体の死亡率および罹患率を予防するために極めて重要である。
【0048】
様々な局面において、本発明は、消化管内の誤った場所に局在化したおよび/または異常に発現された細胞表面分子の検出において有用な遺伝子操作された微生物を提供し、それによって疾患状態を診断、予後診断または評価する。本明細書に開示されている遺伝子操作された微生物は、表面タンパク質をコードする遺伝子を含み、表面タンパク質は1またはそれを超える細胞膜受容体と特異的に相互作用し、1またはそれを超える細胞膜受容体は、正常な胃腸組織および/または胆管、膵管もしくは総胆管などを裏打ちする上皮組織の上皮細胞の管腔側に露出しておらず、ならびに1またはそれを超える細胞膜受容体は、疾患胃腸組織および/または胆管、膵管もしくは総胆管などを裏打ちする上皮組織の上皮細胞の管腔側に露出している。この局面では、いくつかの実施形態において、表面タンパク質は、本明細書に開示されている遺伝子操作された微生物による、疾患胃腸組織および/または胆管、膵管もしくは総胆管などを裏打ちする上皮組織の上皮細胞の結合および侵入を促進する。微生物は、プロモーターに作動可能に連結された、分泌可能なバイオマーカーをコードする1またはそれを超える遺伝子も含む。いくつかの実施形態において、微生物は、非病原性であり得、および/または少なくとも1つの栄養要求性変異を有する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの栄養要求性変異は、細胞壁合成のために必要とされる代謝産物(例えば、遺伝的にコードされないアミノ酸)の合成に関与する遺伝子の欠失、不活性化または減少した発現もしくは活性を含む。例示的な実施形態において、遺伝子は、D-アラニンまたはジアミノピメリン酸の合成のために必要とされる。このような栄養要求性変異は、操作された微生物を選択するための手段を提供し、哺乳動物細胞内に入ると微生物の溶解も促進する。
【0049】
いくつかの実施形態において、本開示の遺伝子操作された微生物は、疾患上皮細胞(標的細胞)に核酸を送達する。分泌可能なバイオマーカーをコードする1またはそれを超える遺伝子は、分泌可能なバイオマーカーの発現を調節する、検出マーカー遺伝子に作動可能に連結された1またはそれを超える配列要素を含み得る。配列要素は、検出マーカーの転写、転写物安定性、翻訳、タンパク質安定性、細胞局在化および/または分泌を調節および制御し得る。いくつかの実施形態において、配列要素は、遺伝子操作された微生物による検出マーカーの発現を妨げ得る。代替の実施形態において、配列要素は、遺伝子操作された微生物による検出マーカーの発現(転写および/または翻訳)を可能にし得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、本開示の遺伝子操作された微生物は、DNA分子(例えば、本明細書でペイロードプラスミドとも呼ばれるプラスミドDNAである)を疾患上皮細胞(標的細胞)に送達する。いくつかの実施形態において、ペイロードプラスミドは、細胞あたり複数コピー(約1~約300コピー、約20~約50コピー、約2~約10コピー、または約5~約10コピーの範囲)で存在するか、または単一コピープラスミドである。コピー数は、プラスミドの特定の遺伝的特徴に依存する。いくつかの実施形態において、ペイロードプラスミドは、分泌可能なバイオマーカーをコードする1またはそれを超える遺伝子を有する。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする1またはそれを超える遺伝子は、哺乳動物プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする1またはそれを超える遺伝子は、細菌の転写を阻害するための微生物リプレッサー結合部位を含む。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする1またはそれを超える遺伝子はイントロンを含み、イントロンの除去は検出マーカーの機能的発現のために必要である。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする1またはそれを超える遺伝子は、微生物の転写ターミネーター(複数可)を含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、細菌は、T7RNAP遺伝子によってコードされるT7 RNAポリメラーゼ(T7RNAP)を発現し、T7プロモーターの調節下において、本明細書に開示される検出マーカーをコードする遺伝子を有する。いくつかの実施形態において、T7RNAPは細菌の染色体上に組み込まれる。いくつかの実施形態において、T7RNAPはプラスミドに存在する。いくつかの実施形態において、T7RNAPは誘導性プロモーター(例えば、araBADまたはlacUV5プロモーター)によって調節される。これらの実施形態において、細菌は、検出マーカーをコードするmRNAおよび/または検出マーカーを発現する。いくつかの実施形態において、これらの細菌は、検出マーカーをコードするmRNAを疾患上皮細胞に送達する。これらの実施形態において、疾患上皮細胞に送達される検出マーカーをコードするmRNAは、配列内リボソーム進入部位(IRES)を含む。いくつかの実施形態において、これらの細菌は、検出マーカータンパク質を疾患上皮細胞に送達する。これらの実施形態において、疾患上皮細胞に送達される検出マーカーは、細胞の代謝産物と接触すると蛍光性になる。
【0052】
理論に拘束されるものではないが、ペイロードプラスミドDNA上に存在する分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子中に必要に応じて存在する配列要素(複数可)(例えば、哺乳動物プロモーター、微生物リプレッサー結合部位(例えば、オペレーター)およびイントロン)は、哺乳動物細胞中での分泌可能なバイオマーカーの産生を可能にし、一方、遺伝子操作された微生物中での分泌可能なバイオマーカーの発現を妨げると考えられる。したがって、いくつかの実施形態において、遺伝子操作された微生物は、遺伝子操作された微生物中でのバックグラウンド発現なしに、疾患上皮細胞(標的細胞)の存在の真の読み出しを提供する。したがって、いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は、哺乳動物プロモーターに作動可能に連結され得る。いくつかの実施形態において、哺乳動物プロモーターは、GI管上皮細胞特異的発現および/または胃腸組織とつながっている管の上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)における特異的発現を指示する。GI管上皮細胞特異的発現を指示する適切な哺乳動物プロモーターの実例は、MUC2遺伝子プロモーター、T3b遺伝子プロモーター、腸型脂肪酸結合タンパク質遺伝子プロモーター、リゾチーム遺伝子プロモーターおよびビリン遺伝子プロモーターである。いくつかの実施形態において、哺乳動物プロモーターは、誘導性のGI管上皮細胞特異的発現を指示する。いくつかの実施形態において、RPL38プロモーターは、膵臓の管上皮における特異的発現のために使用される。適切な誘導性哺乳動物プロモーターの実例は、β-ナフトフラボンなどの親油性生体異物に応答して転写的に上方制御されるシトクロムP450プロモーター要素であり得る。いくつかの実施形態において、誘導性哺乳動物プロモーターは、テトラサイクリン、クメートまたはエストロゲンによって制御可能である。いくつかの実施形態において、誘導性哺乳動物プロモーターは、Tet-OnまたはTet-Offプロモーターであり得る。したがって、いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は、誘導性および/または抑制性であり得、誘導因子または抑制因子を患者に送達することによって、必要に応じて調節され得る。
【0053】
分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子中に必要に応じて存在する微生物リプレッサー結合部位は、細菌中での分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子の発現を抑制するが、哺乳動物細胞中ではそのような抑制効果を発揮しない。いくつかの実施形態において、リプレッサー配列は、1またはそれを超えるlacオペレーター、1またはそれを超えるaraオペレーター、1またはそれを超えるtrpオペレーター、1またはそれを超えるSOSオペレーター、1またはそれを超える組み込み宿主因子(IHF)結合部位、1またはそれを超えるヒストン様タンパク質HU結合部位およびこれらの2またはそれを超える組み合わせから選択され得る。
【0054】
微生物転写終結部位は、哺乳動物細胞中での分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子の転写の途中での終結を引き起こすことなく、遺伝子操作された微生物中での分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子の転写の途中での終結を引き起こす。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は、rho非依存性の微生物転写終結部位を含む。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は5’非翻訳領域を含み、5’非翻訳領域はrho非依存性の微生物転写終結部位を含む。いくつかの実施形態において、rho非依存性の微生物転写終結部位は、短いヘアピンとそれに続く4~8個のT(例えば、TTTTTTおよびTTTTT)の連続を含む。例示的なrho非依存性の微生物転写終結部位は、T7ターミネーター、rrnBターミネーターおよびT0ターミネーターである。
【0055】
代替の実施形態において、本開示の遺伝子操作された微生物は、分泌可能なバイオマーカーをコードするmRNA分子を疾患上皮細胞(標的細胞)に送達し得る。したがって、これらの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は、微生物プロモーターに作動可能に連結され得る。いくつかの実施形態において、微生物は、分泌可能なバイオマーカーをコードするmRNAを疾患上皮細胞の細胞質に送達し、疾患上皮細胞の細胞質はmRNAを翻訳してコードされた分泌可能なマーカーを産生することができる。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は、配列内リボソーム進入部位(IRES)を含む。これらの実施形態において、配列内リボソーム進入部位は、微生物によって送達されるmRNA分子の翻訳を促進する。いくつかの実施形態において、送達されるmRNA配列は、mRNA分子に安定性を付与する要素を含む。mRNA分子に安定性を付与する要素の非限定的な例としては、5’ヘアピン構造および3’ポリAテールが挙げられる。
【0056】
したがって、これらの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は、微生物プロモーターに作動可能に連結され得る。適切な微生物プロモーターの実例としては、微生物(例えば、E.coli)において機能する任意の染色体遺伝子、プラスミド遺伝子またはバクテリオファージ遺伝子の天然プロモーターが挙げられる。いくつかの実施形態において、微生物プロモーターは、プロモーターコンセンサス配列に由来する合成プロモーターであり得る。いくつかの実施形態において、微生物プロモーターは誘導性プロモーターであり得る。適切な誘導性微生物プロモーターの実例は、araBADプロモーターおよびlacプロモーターである。したがって、いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は、誘導性および/または抑制性であり得、誘導因子または抑制因子を患者に送達することによって、必要に応じて調節され得る。いくつかの実施形態において、プロモーターはT7またはT3プロモーターであり、操作された微生物は、分泌可能なマーカーの発現を支持するためにT7またはT3 RNAポリメラーゼ遺伝子を発現する。
【0057】
配列内リボソーム進入部位(IRES)は、キャップ非依存的な様式で翻訳開始を可能にするRNA要素である。いくつかの実施形態において、配列内リボソーム進入部位(IRES)は、脳心筋炎ウイルス(EMCV)由来のIRES、C型肝炎ウイルス(HCV)由来のIRESおよびコオロギ麻痺ウイルス(CrPV)由来のIRESから選択され得る。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子中に存在する配列内リボソーム進入部位は、遺伝子操作された微生物中で産生されたmRNAを使用して哺乳動物細胞中での分泌可能なバイオマーカーの産生を可能にする。
【0058】
分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子中に必要に応じて存在するイントロン(複数可)は、分泌可能なバイオマーカーをコードするmRNAが遺伝子操作された微生物または哺乳動物細胞中で転写され得るかどうかにかかわらず、哺乳動物細胞中での分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子の発現を可能にしながら、細菌中での分泌可能なバイオマーカーの機能的発現を妨げる。いくつかの実施形態において、イントロンは、スプライソソームイントロンであり得る。いくつかの実施形態において、イントロンは、分泌可能なバイオマーカーをコードするスプライシングされていないmRNA中にフレームシフトまたは未成熟終止コドンを作り出す。したがって、いくつかの実施形態において、遺伝子操作された微生物は、遺伝子操作された微生物中での分泌可能なバイオマーカータンパク質のバックグラウンド発現なしに、疾患上皮細胞(標的細胞)の存在の真の読み出しを提供する。
【0059】
本明細書中に開示される実施形態のいずれにおいても、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は、必要に応じて、コザック配列、2Aペプチド配列、哺乳動物転写終結配列、ポリアデニル化配列(pA)、タンパク質分泌のためのリーダー配列およびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択される配列要素をさらに含む。
【0060】
コザック配列は、ほとんどの真核生物mRNA転写物においてタンパク質翻訳開始部位として機能する核酸モチーフである。分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子中に存在するコザック配列は、正しい翻訳開始を改善する。いくつかの実施形態において、コザック配列は、以下のヌクレオチド配列:5’-(GCC)GCCRCCAUGG-3’を有する。
【0061】
2Aペプチドは、存在する場合、2Aペプチドの末端に見出されるグリシン残基とプロリン残基との間でのペプチド結合の合成を妨げることによって機能し、2Aペプチドは、同じmRNAから等モルレベルの複数のタンパク質の産生を可能にする。2AペプチドはC末端上流タンパク質に結合するようになり、一方、下流タンパク質はプロリンで始まる。いくつかの実施形態において、2Aペプチドは、E2A((GSG)QCTNYALLKLAGDVESNPGP)、F2A((GSG)VKQTLNFDLLKLAGDVESNP GP)、P2A((GSG)ATNFSLLKQAGDVEENPGP)およびT2A(((GSG)EGRGSLLTCGDVEE NPGP)から選択される。いくつかの実施形態において、(括弧内に含まれる)GSG配列は、必要に応じて存在し得る。
【0062】
ポリアデニル化配列(pA)は、mRNAへのポリAテールの付加を引き起こし、これはmRNAの核外輸送、翻訳および安定性にとって重要である。哺乳動物転写終結配列は転写を終結させ、ポリAテールの付加を促進する。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は、哺乳動物の転写終結配列およびポリアデニル化配列の両方である配列要素を含む。いくつかの実施形態において、哺乳動物の転写終結配列およびポリアデニル化配列の両方であり得る配列要素は、SV40ターミネーター、hGHターミネーター、BGHターミネーターおよびrbGlobターミネーターから選択される。
【0063】
いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は、哺乳動物の発現に関して最適化されたコドン使用頻度を含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、遺伝子操作された微生物は、分泌可能なバイオマーカーをコードする1またはそれを超える核酸を疾患上皮細胞(標的細胞)に送達する。これらの実施形態において、疾患上皮細胞(標的細胞)は分泌可能なバイオマーカーを発現し、疾患上皮細胞(標的細胞)の検出を可能にする。いくつかの実施形態において、疾患上皮細胞(標的細胞)は分泌可能なバイオマーカーを分泌し、分泌可能なバイオマーカーを血液、血清または血漿中で検出可能にする。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、粘液、尿および唾液などの体液中に排泄され、分泌可能なバイオマーカーを体液中で検出可能にする。
【0065】
いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは胃腸組織の上皮細胞によって分泌可能である。したがって、これらの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、分泌可能なバイオマーカーを発現する哺乳動物細胞中の分泌経路において合成され、選別される。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、必要に応じてN末端またはその近くに位置するERシグナル配列を含む。いくつかの実施形態において、ERシグナルは、分泌可能なバイオマーカーを合成しているリボソームを粗面ERに向かわせる。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、天然のシグナルペプチドを含む。これに加えてまたはこれに代えて、いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、異種のシグナル配列を含む。いくつかの実施形態において、異種のシグナル配列は、インターロイキン-2、CD5、免疫グロブリンκ軽鎖、トリプシノゲン、血清アルブミンおよびプロラクチンのシグナル配列から選択される。いくつかの実施形態において、Gaussiaルシフェラーゼ(Gluc)は天然のシグナル配列を含む。これに加えてまたはこれに代えて、Gaussiaルシフェラーゼ(Gluc)は異種のシグナル配列を含む。いくつかの実施形態において、βhCGは天然のシグナル配列を含む。これに加えてまたはこれに代えて、βhCGは異種のシグナル配列を含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、酵素、ペプチドホルモンまたはタンパク質もしくはペプチド抗原である。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、アルカリホスファターゼ、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト癌胎児性抗原(CEA)、結腸がん分泌タンパク質2(CCSP-2)、カテプシンB、Gaussiaルシフェラーゼ(Gluc)、Metridiaルシフェラーゼ(MLuc)、これらのサブユニット、これらの断片、およびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択される分泌タンパク質(またはこれに由来するペプチドのサブユニット)である。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、血液、血清、血漿、粘液、尿および唾液などの生物学的試料中で検出され、それにより疾患上皮細胞の存在を検出する。
【0067】
いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、酵素アッセイ(例えば、分泌可能なバイオマーカーが酵素活性を有する場合)またはイムノアッセイを使用することによって測定される。これらのまたは他の実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、凝集、電流測定、原子吸光分析法、原子発光分析法、円二色性(CD)、化学発光、比色分析、ディップスティックアッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、蛍光定量法、電気泳動アッセイ、酵素アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ガスクロマトグラフィー、重量測定、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、イムノアッセイ、免疫蛍光酵素アッセイ、質量分析、核磁気共鳴、ラジオイムノアッセイ、分光測定、滴定法、ウェスタンブロッティングまたはこれらの任意の2もしくはそれを超える組み合わせから選択されるアッセイを使用して、試料において測定される。
【0068】
いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーが生物学的試料において検出された場合、追加の試験(限定されないが、例えば、結腸鏡検査)が指示される。
【0069】
いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーの発現は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、免疫組織化学、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(mRNA蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(RNA-FISH)を含むFISH)および発色インサイチュハイブリダイゼーション(CISH)から選択される技術を使用して生検試料において検出され得る。いくつかの実施形態において、疾患上皮もしくは胃腸(GI)組織および/または胃腸組織とつながっている管の上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)の場所を特定するために、分泌可能なバイオマーカーの発現が使用され得る。
【0070】
いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーはヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)である。hCGは、2つのサブユニット:αおよびβサブユニットから構成されるホルモンである。いくつかの実施形態において、ヒト絨毛性ゴナドトロピンは、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのαサブユニット(αhCG)であり得る。いくつかの実施形態において、ヒト絨毛性ゴナドトロピンは、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニット(βhCG)であり得る。hCGは主に肝臓によって異化されるが、約20%は尿中に排泄される。ベータサブユニットは腎臓内で分解されて、尿hCG試験によって測定されるコア断片を生成する。妊娠を通じた尿中のhCGの排泄パターンは十分に確立されている。唾液中へのhCGの排出も報告されている。したがって、いくつかの実施形態において、hCGは、血液、血清、血漿、尿および/または唾液を使用して測定される。
【0071】
いくつかの実施形態において、hCG(例えば、βhCG)は、体液中での分布(例えば、排泄の減少または増加および安定性の増加)に関して最適化される。いくつかの実施形態において、hCGは、血液中での分布に関して最適化される。いくつかの実施形態において、hCGは、尿中での分布に関して最適化される。したがって、いくつかの実施形態において、hCGは、(例えば、尿または糞便中での)排泄の増加に関して最適化される。代替の実施形態において、hCG(例えば、βhCG)は、排泄の減少に関して最適化され、血中へのhCGの蓄積をもたらす。いくつかの実施形態において、hCGは、蓄積の増加をもたらす安定性の増加(例えば、改善されたタンパク質フォールディングおよび/またはタンパク質分解に対する安定性)に関して最適化される。例示的な実施形態において、hCG(例えば、βhCG)は、安定性の増加および排泄の減少に関して最適化され、血液中への蓄積をもたらす。別の例示的な実施形態において、hCG(例えば、βhCG)は、安定性の増加および排泄の増加を有し、尿中への蓄積をもたらす。
【0072】
いくつかの実施形態において、hCGは、1つの抗hCG抗体またはその断片を使用して測定される。いくつかの実施形態において、hCGは、2つの抗hCG抗体またはその断片(複数可)を使用して測定される。いくつかの実施形態において、2つの抗hCG抗体またはその断片(複数可)は、異なるエピトープを結合する。いくつかの実施形態において、hCGは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの免疫測定アッセイを使用して測定される。いくつかの実施形態において、hCGは、直接ELISA、間接ELISA、サンドイッチELISAおよび競合ELISAから選択されるELISAを使用して測定される。いくつかの実施形態において、市販のhCG検出キットのいずれもが使用され得る。
【0073】
例示的な実施形態において、疾患上皮組織を検出するための方法は、(i)hCGまたはその断片をコードする外因性遺伝子を含む本明細書に開示されている任意の実施形態の遺伝子操作された微生物を、投与することを必要とする対象の標的上皮組織(消化管の標的組織など)に投与することと、(ii)血液、血清、血漿、尿および唾液から選択される生物学的試料を対象から得ることと、(iii)対象から得られた生物学的試料中のhCGまたはその断片を測定することとを含む。本明細書中に開示される実施形態のいずれにおいても、検出は、凝集アッセイ、化学発光、比色分析、蛍光定量法、定量的イムノアッセイ、ディップスティックアッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはこれらの任意の2もしくはそれを超える組み合わせを使用して行われる。
【0074】
いくつかの実施形態において、hCGまたはその断片が生物学的試料において検出された場合、追加の試験(限定されないが、例えば、結腸鏡検査)が指示される。
【0075】
いくつかの実施形態において、hCGまたはその断片の発現は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、免疫組織化学、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(mRNA蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(RNA-FISH)を含むFISH)および発色インサイチュハイブリダイゼーション(CISH)から選択される技術を使用して生検試料において検出され得る。いくつかの実施形態において、疾患上皮もしくは胃腸(GI)組織および/または胃腸組織とつながっている管の上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)の場所を特定するために、hCGの発現が使用され得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーはアルカリホスファターゼである。いくつかの実施形態において、アルカリホスファターゼは分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)である。アルカリホスファターゼは、通常、膜結合型であり、したがって分泌されない。理論に束縛されるものではないが、膜アンカードメインをコードする配列中への終止コドンの導入は、完全に活性な分泌型アルカリホスファターゼをもたらし得る。Lowe,“Site-specific Mutations in the COOH Terminus of Placental Alkaline Phosphatase:A Single Amino Acid Change Converts a Phosphatidylinositol-glycan-anchored Protein to a Secreted Protein” Journal of Cell Biology,116(3):799-807(1992)。
【0077】
いくつかの実施形態において、アルカリホスファターゼ(限定されないが、例えば、SEAP)は、血液試料からアッセイされ得る。いくつかの実施形態において、分泌型アルカリホスファターゼは、酵素アッセイを使用して測定される。いくつかの実施形態において、発色性、蛍光性、発光性および/または基質が、アッセイにおいて使用され得る。例示的な発色性アルカリホスファターゼ基質としては、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスファート(BCIP)、p-ニトロフェニルホスファート(pNPP)および4-クロロ-2-メチルベンゼンジアゾニウム/3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸2,4-ジメチルアニリドホスファートが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な発光性アルカリホスファターゼ基質としては、限定されないが、ジオキセタンホスファート(例えば、アダマンチルジオキセタンフェニルホスファートおよびクロロ-5-置換アダマンチル-1,2-ジオキセタンホスファート(CSPD))が挙げられ、例示的な蛍光性アルカリホスファターゼ基質としては、限定されないが、4-メチルウンベリフェリルホスファート二ナトリウム塩(MUP)および6,8-ジフルオロ-7-ヒドロキシ-4-メチルクマリンホスファートが挙げられる。
【0078】
いくつかの実施形態において、アルカリホスファターゼ(限定されないが、例えば、SEAP)を検出するために、p-ニトロフェニルホスファート(pNPP)、4-メチルウンベリフェリルリン酸二ナトリウム塩(MUP)およびクロロ-5-置換アダマンチル-1,2-ジオキセタンホスファート(CSPD)から選択される基質が使用され得る。いくつかの実施形態において、酵素アッセイは、比色、蛍光および/または化学発光の読み出しを使用し得る。例示的な実施形態において、p-ニトロフェニルホスファート(pNPP)が基質として使用され得、アルカリホスファターゼ(限定されないが、例えば、SEAP)は、比色読み出しを使用して生物学的試料からアッセイされ得る。別の例示的な実施形態において、4-メチルウンベリフェリルリン酸二ナトリウム塩(MUP)が基質として使用され得、アルカリホスファターゼ(限定されないが、例えば、SEAP)は、蛍光読み出しを使用して生物学的試料からアッセイされ得る。さらに別の例示的な実施形態において、クロロ-5-置換アダマンチル-1,2-ジオキセタンホスファート(CSPD)が基質として使用され得、アルカリホスファターゼ(限定されないが、例えば、SEAP)は、化学発光読み出しを使用して生物学的試料からアッセイされ得る。
【0079】
例示的な実施形態において、疾患上皮組織もしくは胃腸(GI)組織および/または胃腸組織とつながっている管の疾患上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)を検出するための方法は、(i)アルカリホスファターゼをコードする外因性遺伝子を含む本明細書に開示されている任意の実施形態の遺伝子操作された微生物を、投与を必要とする対象の標的上皮細胞(消化管の標的細胞など)に投与することと、(ii)血液、血清または血漿から選択される生物学的試料を対象から得ることと、(iii)対象から得られた生物学的試料中のアルカリホスファターゼを測定することとを含む。本明細書中に開示される実施形態のいずれにおいても、検出は、化学発光、比色分析、蛍光定量法、定量的イムノアッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはこれらの任意の2もしくはそれを超える組み合わせを使用して行われる。
【0080】
いくつかの実施形態において、アルカリホスファターゼが生物学的試料において検出された場合、追加の試験(限定されないが、例えば、結腸鏡検査)が指示される。
【0081】
いくつかの実施形態において、アルカリホスファターゼの発現は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、免疫組織化学、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(mRNA蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(RNA-FISH)を含むFISH)および発色インサイチュハイブリダイゼーション(CISH)から選択される技術を使用して生検試料において検出され得る。いくつかの実施形態において、疾患上皮もしくは胃腸(GI)組織および/または胃腸組織とつながっている管の上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)の場所を特定するために、アルカリホスファターゼの発現が使用され得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーはルシフェラーゼである。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼは、Gaussiaルシフェラーゼ(Gluc)、Metridiaルシフェラーゼ(MLuc)、そのサブユニット、その断片である。Glucは、哺乳動物細胞から活性形態で天然に分泌される。さらに、Glucは、少なくとも尿中に排泄される。したがって、いくつかの実施形態において、Glucは、血液、血清、血漿、尿および/または唾液を使用して測定され得る。
【0083】
いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼは、Gaussiaルシフェラーゼ(Gluc)またはその誘導体である。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼは酵素アッセイを用いて測定される。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼは、ルシフェリンを基質として用いて測定される。ルシフェリンは、限定されないが、ホタルルシフェリン、Latiaルシフェリン、細菌ルシフェリン、渦鞭毛藻類ルシフェリン、ヴァルグリンまたはフォックスファイアであり得る。いくつかの実施形態において、ATPが補因子であり得る。いくつかの実施形態において、ルシフェリンはセレンテラジンである。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼは発光読み出しを用いて測定される。いくつかの実施形態において、生物学的試料は、血液、尿および唾液から選択される。
【0084】
Gaussiaルシフェラーゼ(Gluc)は、多数のジスルフィド結合を有する小さなルシフェラーゼである。Glucは血清中で安定であるが、細菌環境はジスルフィド結合の形成を許容しないので、E.coli細胞質中では活性ではない。したがって、いくつかの実施形態において、Glucの発現は、疾患ヒト細胞によるGlucの産生および分泌を示す。いくつかの実施形態において、Glucをコードする遺伝子は、疾患ヒト細胞によるGlucの産生および分泌を確実にするためにイントロンを含む。
【0085】
Glucは、活性のための補因子(例えば、ATP)を一切必要とせず、青色光(480nm)の発光をもたらす反応において基質セレンテラジンの酸化を触媒する。したがって、いくつかの実施形態において、Glucは発光を使用して測定され得る。他の実施形態において、Glucは、定量的イムノアッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などのイムノアッセイを使用して測定され得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、Glucは、体液中での分布(例えば、排泄の減少または増加および安定性の増加)に関して最適化される。いくつかの実施形態において、Glucは、血液中での分布に関して最適化される。いくつかの実施形態において、Glucは、尿中での分布に関して最適化される。したがって、いくつかの実施形態において、Glucは、(例えば、尿または糞便中での)排泄の増加に関して最適化される。代替の実施形態において、Gluc(例えば、βGluc)は、排泄の減少に関して最適化され、血中へのGlucの蓄積をもたらす。いくつかの実施形態において、Glucは、蓄積の増加をもたらす安定性の増加(例えば、改善されたタンパク質フォールディングおよび/またはタンパク質分解に対する安定性)に関して最適化される。例示的な実施形態において、Glucは、安定性の増加および排泄の減少に関して最適化され、血液中への蓄積をもたらす。別の例示的な実施形態において、Glucは、安定性の増加および排泄の増加を有し、尿中への蓄積をもたらす。
【0087】
例示的な実施形態において、疾患上皮組織もしくは胃腸(GI)組織または胃腸組織とつながっている管の疾患上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)を検出するための方法は、(i)Glucまたはその断片をコードする外因性遺伝子を含む本明細書に開示されている任意の実施形態の遺伝子操作された微生物を、投与を必要とする対象の標的上皮細胞(消化管の標的細胞など)に投与することと、(ii)血液、血清、血漿、尿および唾液から選択される生物学的試料を対象から得ることと、(iii)対象から得られた生物学的試料中のGlucまたはその断片を測定することとを含む。本明細書中に開示される実施形態のいずれにおいても、検出は発光アッセイを使用して行われる。
【0088】
いくつかの実施形態において、Glucまたはその断片が生物学的試料において検出された場合、追加の試験(限定されないが、例えば、結腸鏡検査)が指示される。いくつかの実施形態において、Glucまたはその断片の発現は、結腸鏡検査中に、発光に基づいて検出され得る。これらの実施形態において、セレンテラジンは、結腸鏡検査の前または間に対象に投与され得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、Glucまたはその断片の発現は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、免疫組織化学、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(mRNA蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(RNA-FISH)を含むFISH)および発色インサイチュハイブリダイゼーション(CISH)から選択される技術を使用して生検試料において検出され得る。いくつかの実施形態において、疾患胃腸(GI)組織および/または胃腸組織とつながっている管の疾患上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)の場所を特定するために、Glucの発現が使用され得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーはヒト癌胎児性抗原(CEA)である。CEAは、いくつかの正常な成体組織および同じ自己抗原を発現する腫瘍において天然に発現される。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは結腸がん分泌タンパク質2(CCSP2)である。CCSP2の発現は、一般に、正常な身体組織には存在しないが、結腸腺腫および結腸がんにおいて誘導される。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーはカテプシンBである。カテプシンBは、リソソームシステインプロテアーゼのファミリーに属し、細胞内タンパク質分解において重要な役割を果たす。カテプシンBは、血清および尿の両方に見出される。
【0091】
本明細書に開示されている遺伝子操作された微生物は、表面タンパク質をコードする1またはそれを超える遺伝子を含み、表面タンパク質は、疾患胃腸組織の上皮細胞の管腔側に特異的に露出している1またはそれを超える細胞膜受容体と特異的に相互作用する。この局面では、いくつかの実施形態において、表面タンパク質は、遺伝子操作された微生物による疾患組織の上皮細胞の結合および侵入を特異的に促進する。
【0092】
いくつかの実施形態において、表面タンパク質は、インベイシンまたはその断片である。いくつかの実施形態において、表面タンパク質はインベイシンであり、Yersinia enterocoliticaインベイシン、Yersinia pseudotuberculosisインベイシン(配列番号1)、Salmonella enterica PagN、Candida albicans Als3およびE.coliインチミンから選択される。
【0093】
いくつかの実施形態において、表面タンパク質は、インベイシン(配列番号1)またはYadA(Yersinia enterocoliticaプラスミド接着因子)である。代替的な表面タンパク質としては、Rickettsia侵入因子RickA(アクチン重合タンパク質)、Legionella RaIF(グアニン交換因子)、1もしくはそれを超えるNeisseria侵入因子(例えば、NadA(ナイセリア接着/侵入因子)、OpAおよびOpC(不透明関連接着))、Listeria InlAおよび/もしくはInlB、Shigella侵入プラスミド抗原(例えば、IpaA、IpaB、IpaC、IpgD、IpaB-IpaC複合体、VirAおよびIcsA)の1つもしくはそれより多く、Salmonella侵入因子(例えば、SipA、SipC、SpiC、SigD、SopB、SopE、SopE2およびSptP)の1つもしくはそれより多く、Staphylococcus FnBPAおよび/もしくはFnBPB、1もしくはそれを超えるStreptococcus侵入因子(ACP、Fba、F2、Sfb1、Sfb2、SOFおよびPFBP)ならびに/またはPorphyromonas gingivalisFimB(インテグリン結合タンパク質線毛(fibriae))が挙げられる。いくつかの実施形態において、表面タンパク質は、インベイシン、YadA、RickA、RaIF、NadA、OpA、OpC、InlA、InlB、IpaA、IpaB、IpaC、IpgD、IpaB-IpaC、VirA、IcsA、SipA、SipC、SpiC、SigD、SopB、SopE、SopE2、SptP、FnBPA、FnBPB、ACP、Fba、F2、Sfb1、Sfb2、SOF、PFBPおよびFimBの1またはそれより多くの活性断片を含む。いくつかの実施形態において、断片は、本明細書に開示されている操作された微生物の表面、例えば接着足場上に発現される。いくつかの実施形態において、表面タンパク質は、インベイシンとインチミンとの融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、インチミンの3つのC末端の1またはそれを超えるドメイン(例えば、D1、D2およびD3)をインベイシンのC末端ドメインで置き換えることによって、インチミン-インベイシンが作製された。
【0094】
いくつかの実施形態において、表面タンパク質は、III型分泌系またはその成分である。いくつかの実施形態において、表面タンパク質は、がん性細胞および前がん性細胞の表面に特異的に結合するペプチドまたはタンパク質を含み、必要に応じて、タンパク質は、ペプチド、レプチン、抗体、またはこれらの断片(例えば、Nanobody(登録商標)としても知られているsdAbおよびscFv断片)から選択される。いくつかの実施形態において、表面タンパク質は、レプチン、抗体、またはこれらの断片の1つまたはそれより多くを含む。抗体の断片の実例は、限定されないが、ラクダ科動物のナノボディを含む単一ドメイン抗体(sdAb、Nanobody(登録商標)としても知られる)またはscFv断片である。いくつかの実施形態において、レプチン、抗体、またはこれらの断片は、微生物の表面タンパク質との融合タンパク質として提示される。いくつかの実施形態において、微生物の表面タンパク質は、インベイシン、インチミンおよびアドヘシンから選択される。いくつかの実施形態において、ペプチドまたはラクダ科動物のナノボディは、がん細胞表面受容体に結合するその能力に関して選択される。いくつかの実施形態において、表面タンパク質は、がん性組織または前がん性病変(ポリープまたは腺腫)、涙およびびらん(バレット食道)または炎症性疾患中の誤った場所に局在化したタンパク質に特異的に結合するペプチドまたはタンパク質を含む。
【0095】
表面タンパク質の同一性により、本明細書に開示されている遺伝子操作された微生物は、天然の表面タンパク質の親和性を模倣し得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている遺伝子操作された微生物は、口腔上皮細胞、舌の頬側上皮細胞、咽頭上皮細胞、粘膜上皮細胞、胃の内皮細胞、腸上皮細胞、結腸上皮などの1つまたはそれより多くに特異的に結合し得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている遺伝子操作された微生物は、エンドサイトーシス液胞を溶解し、それによってファゴソームのポア形成、破壊または分解に寄与する溶解素をコードする第2の外因性遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、溶解素は、コレステロール依存性細胞溶解素である。いくつかの実施形態において、溶解素は、リステリオリシンO、イバノリシンO、ストレプトリシン、パーフリンゴリシン、ボツリノリジン、ロイコシジンおよびこれらの変異体誘導体からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、溶解素は、リステリオリシンOまたはその変異体誘導体である。いくつかの実施形態において、リステリオリシンOの変異体誘導体は、分泌されず、細胞質に留まる誘導体(例えば、配列番号8)である。いくつかの実施形態において、リステリオリシンOの変異体誘導体は、ペリプラズムにおいて分泌される誘導体(例えば、配列番号2)である。いくつかの実施形態において、リステリオリシンOの変異体誘導体は、外膜の外側に分泌される誘導体である。
【0097】
本技術の遺伝子操作された微生物は、ヒトGI管の正常フローラである非病原性微生物、またはヨーグルト、チーズ、パンなどの食品を介したヒトの摂取に安全であると一般に認識されている微生物などの任意の非病原性微生物に由来し得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている実施形態の任意の1つの遺伝子操作された微生物は、Lactobacillus、Bifidobacterium、Saccharomyces、Enterococcus、Streptococcus、Lactococcus、Pediococcus、Leuconostoc、BacillusおよびEscherichia coliから選択される微生物に由来し得る。本明細書に開示されている実施形態の任意の1つの微生物を遺伝子操作するのに適した例示的な種としては、Bacillus coagulans、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium animalis、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium essencis、Bifidobacterium faecium、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium longum subsp.infantis、Bifidobacterium pseudolungum、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus boulardii、Lactobacillus breve、Lactobacillus brevis、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus casei、Lactobacillus delbrueckii ssp.Bulgaricus、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus rhamnosus GG、Lactobacillus salivarius、Lactococcus lactis、Streptococcus thermophilus、Pediococcus acidilactici、Enterococcus faecium、Leuconostoc、Carnobacterium、Proprionibacterium、Saccharomyces boulardiiおよびEscherichia coliが挙げられる。
【0098】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている実施形態の任意の1つの遺伝子操作された微生物は、Escherichia coli Nissle 1917、Escherichia coli Symbioflor2(DSM 17252)、Escherichia coli株A0 34/86、Escherichia coli O83(Colinfant)などのプロバイオティックEscherichia coli株に由来し得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている実施形態の任意の1つの遺伝子操作された微生物は、Escherichia coli Nissle 1917に由来する。Escherichia coli Nissle 1917の完全なゲノム配列は公知である。Reister et al.,J Biotechnol.187:106-7(2014)。
【0099】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている実施形態の任意の1つの遺伝子操作された微生物は、Escherichia coli Nissle 1917またはその誘導体である。Escherichia coli Nissle 1917は、2つの天然に存在する安定な潜在プラスミドpMUT1(GenBankアクセッション番号MW240712)およびプラスミドpMUT2(GenBankアクセッション番号CP023342)を含有する。いくつかの実施形態において、Escherichia coli Nissle 1917またはその誘導体は、プラスミドpMUT1および/またはプラスミドpMUT2および/または1もしくはそれを超えるこれらの誘導体を保有する。いくつかの実施形態において、Escherichia coli Nissle 1917またはその誘導体は、プラスミドpMUT1および/またはプラスミドpMUT2をキュアリングされている。
【0100】
いくつかの実施形態において、表面タンパク質をコードする遺伝子は、微生物のゲノムに組み込まれる。これに加えてまたはこれに代えて、溶解素をコードする遺伝子は、微生物のゲノムに組み込まれる。いくつかの実施形態において、表面タンパク質をコードする遺伝子および溶解素をコードする遺伝子は、単一のゲノム部位に組み込まれる。いくつかの実施形態において、単一のゲノム部位は、バクテリオファージの組み込み部位および/またはプラスミドの組み込み部位である。したがって、いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は、バクテリオファージλ組み込み部位attBに挿入され得る。
【0101】
いくつかの実施形態において、表面タンパク質をコードする遺伝子は、微生物のプラスミドに組み込まれる。これに加えてまたはこれに代えて、溶解素をコードする遺伝子は、プラスミドに組み込まれる。いくつかの実施形態において、プラスミドは、例えばEscherichia coli Nissle 1917などの微生物中に存在する天然に存在するプラスミドであるか、または操作されたプラスミドである。いくつかの実施形態において、表面タンパク質をコードする遺伝子および溶解素をコードする遺伝子は、単一のプラスミドに組み込まれる。
【0102】
いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は、微生物(例えば、pMUT1、pMUT2および/またはそれらの誘導体などの、Escherichia coli Nissle 1917)由来の天然の内因性プラスミドに挿入され得る。いくつかの実施形態において、プラスミドは、本明細書中に記載されるような栄養要求性変異の相補性などの選択機構を含む。いくつかの実施形態において、プラスミドはマルチコピープラスミド(例えば、高コピー数プラスミド)であり、それにより、細胞侵入の際に高い核酸ペイロードを提供する。代替の実施形態において、表面タンパク質をコードする遺伝子は、同じまたは異なるプラスミドに挿入される。いくつかの実施形態において、溶解素をコードする遺伝子は、同じまたは異なるプラスミドに挿入される。
【0103】
これに加えてまたはこれに代えて、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は、微生物のゲノムに組み込まれる。いくつかの実施形態において、表面タンパク質をコードする遺伝子、溶解素をコードする第2の遺伝子および分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は、単一のゲノム部位に組み込まれる。いくつかの実施形態において、単一のゲノム部位は、バクテリオファージの組み込み部位および/またはプラスミドの組み込み部位である。
【0104】
いくつかの実施形態において、プラスミドおよび/または第2のプラスミドは選択機構を含む。いくつかの実施形態において、選択機構は、プラスミド維持のために抗生物質を必要としなくてよい。したがって、いくつかの実施形態において、選択機構は、抗生物質耐性マーカー、毒素-抗毒素系、必須遺伝子における変異の相補性を引き起こすマーカー、シス作用遺伝要素、およびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択される。
【0105】
いくつかの実施形態において、選択機構は、治療のためにヒトまたは動物では使用されないかまたはまれである抗生物質に対する耐性マーカーである。いくつかの実施形態において、プラスミドおよび/または第2のプラスミドの選択のために使用される選択機構は、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子およびこれらの組み合わせから選択される抗生物質耐性マーカーである。これに加えてまたはこれに代えて、いくつかの実施形態において、プラスミドおよび/または第2のプラスミドの選択のために使用される選択機構は、プラスミドR1のhok/sok系、プラスミドRK2のparDE系、FプラスミドのccdAB、FプラスミドのflmAB、プラスミドR1のkis/kid系、Xanthomonas campestrisのXCV2162-ptaRNA1、腸管出血性E.coliまたはKlebsiellaのataT-ataR、Erwinia carotovoraのtoxIN系、Caulobacter crescentusのparE-parD系、Enterococcus faecalisプラスミドAD1からのfst-RNAII、Bacillus subtilisプラスミドpSM19035のε-ζ系およびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択される毒素-抗毒素系である。これに加えてまたはこれに代えて、いくつかの実施形態において、プラスミドおよび/または第2のプラスミドの選択のために使用される選択機構は、細胞壁合成のために必要とされる必須栄養素もしくは基質(例えば、アミノ酸)の生合成および/またはハウスキーピング機能に関与する酵素をコードする必須遺伝子である。細胞壁合成のために必要とされる例示的なアミノ酸には、D-アラニンおよびジアミノピメリン酸が含まれる。いくつかの実施形態において、必須遺伝子は、dapA、dapD、murA、alr、dadX、murI、dapE、thyAおよびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、必須遺伝子は、alrとdadX(いずれもアラニンラセマーゼをコードする)の組み合わせである。いくつかの実施形態において、必須遺伝子はalrとdadXの組み合わせであり、プラスミドは、機能的alr遺伝子(alr+、例えば野生型alr遺伝子)を選択マーカーとして使用して選択される。いくつかの実施形態において、プラスミドおよび/または第2のプラスミドは、プラスミドおよび/または第2のプラスミドに存在する機能的alr遺伝子によるalrおよびdadX変異の相補性によって選択される。いくつかの実施形態において、ハウスキーピング機能は、infA、RNAポリメラーゼのサブユニットをコードする遺伝子、DNAポリメラーゼ、rRNA、tRNA、細胞分裂タンパク質、シャペロンタンパク質およびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択される。これに加えてまたはこれに代えて、いくつかの実施形態において、プラスミドおよび/または第2のプラスミドの選択のために使用される選択機構は、ColE1 cer遺伝子座またはpSC101からのparなどのシス作用遺伝要素である。
【0106】
いくつかの実施形態において、遺伝子操作された微生物が、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子のmRNA分子を疾患上皮細胞(標的細胞)に送達する場合、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子は遺伝子操作された微生物のゲノムに組み込まれる。いくつかの実施形態において、遺伝子操作された微生物が分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子のmRNA分子を疾患上皮細胞(標的細胞)に送達する場合、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子はプラスミドに存在する。
【0107】
代替の実施形態において、遺伝子操作された微生物が、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子を含むDNA分子(例えば、プラスミド)を疾患上皮細胞(標的細胞)に送達する場合、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子はプラスミドに存在する。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子を含むプラスミドは、DNA結合タンパク質に対する少なくとも1つの結合部位をさらに含む。いくつかの実施形態において、DNA結合タンパク質のための結合部位は、DNA結合タンパク質のための一群の複数の隣接する結合部位を形成する。いくつかの実施形態において、DNA結合タンパク質は、1またはそれを超える核局在化シグナル(NLS)を含む。これらの実施形態において、DNA結合タンパク質は、DNA分子(例えば、プラスミド)を結合し、1またはそれを超える核局在化シグナル(NLS)を介してDNA分子(例えば、プラスミド)の核移行を促進する。いくつかの実施形態において、NLSはSV40 T抗原NLS配列(KKKRKV)である。いくつかの実施形態において、DNA結合タンパク質はNFκBである。いくつかの実施形態において、微生物は、1またはそれを超える核局在化シグナル(NLS)を含むDNA結合タンパク質をコードする遺伝子を含む。理論に束縛されるものではないが、1またはそれを超える核局在化シグナルを含むDNA結合タンパク質は、少なくとも1つの検出マーカーをコードする1またはそれを超える遺伝子を含むプラスミド上のDNA結合タンパク質のための少なくとも1つの結合部位を結合し、1またはそれを超える核局在化シグナルの作用を介してプラスミドの核移行を促進すると考えられる。したがって、これらの実施形態において、疾患上皮細胞は、微生物によって送達されるDNA分子(例えば、プラスミド)から少なくとも1つの検出マーカーを発現し、それによって疾患上皮細胞の検出を可能にする。
【0108】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの結合部位に結合するDNA結合タンパク質は、微生物によって発現される。例示的な実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子を含むプラスミドは、一群のlacオペレーターまたはtetオペレーターをさらに含み、微生物は、核局在化シグナルを含むlacリプレッサーまたはtetリプレッサーを過剰発現する。他の実施形態において、少なくとも1つの結合部位に結合するDNA結合タンパク質は、疾患上皮細胞によって発現される。例示的な実施形態において、分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子を含むプラスミドは、一群のNFκB結合部位をさらに含み、疾患上皮細胞はNFκBを発現する。
【0109】
いくつかの実施形態において、DNA結合タンパク質をコードする遺伝子は、ゲノムに組み込まれているか、またはプラスミドに存在する。
【0110】
いくつかの実施形態において、微生物は、侵入の際に哺乳動物細胞内で微生物の溶解を促進する少なくとも1つの栄養要求性変異を有する。このような変異には、細胞壁合成に関与する遺伝子または細胞壁合成のために必要とされる代謝産物の欠失、不活性化または低下した発現もしくは活性、ならびにポリンなどの他のタンパク質の変化が含まれる。いくつかの実施形態において、微生物は、dapA、dapD、dapE、murA、alr、dadX、murI、thyA、aroC、ompCおよびompFから選択される遺伝子における欠失または変異を有する。いくつかの実施形態において、微生物は、dapA、alrおよびdadX栄養要求性変異の組み合わせを有する。いくつかの実施形態において、プラスミドは、プラスミドに存在する機能的alr遺伝子によるalrおよびdadX変異の相補性によって選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの栄養要求性変異は、侵入の際に疾患哺乳動物細胞内で微生物の溶解を促進する。いくつかの実施形態において、dapA栄養要求性変異は、侵入の際に疾患哺乳動物細胞内で微生物の溶解を促進する。
【0111】
いくつかの実施形態において、対象の種および診断または処置されている疾患または状態に応じて、約103~約1011個の生きた遺伝子操作された微生物が対象に投与される。いくつかの実施形態において、約105~約109個の本開示の生きた遺伝子操作された微生物が対象に投与される。
【0112】
本開示の遺伝子操作された微生物は、発現されたマーカーの検出前に1~約50回投与してよい。遺伝子操作された微生物は、マーカー検出の前に約1~約21回、または1~約14回、または約1~約7回投与してよい。遺伝子操作された微生物は、マーカー検出の約1時間~約2ヶ月前に開始して投与してよい。遺伝子操作された微生物の投与は、マーカー検出の前、少なくとも約1時間、少なくとも約6時間、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約5日、少なくとも約7日、少なくとも約10日、少なくとも約15日、少なくとも約20日、少なくとも約30日、少なくとも約40日、少なくとも約50日または少なくとも約60日までに開始してよい。
【0113】
本開示の遺伝子操作された微生物は、投与の際にそれらの標的細胞に侵入することができ、かつそれらのペイロードを送達することができる限り、任意の経路によって投与され得る。本開示の遺伝子操作された微生物が送達するペイロードは、一般に、分泌可能なバイオマーカーをコードする核酸分子である。いくつかの実施形態において、本技術の遺伝子操作された微生物は、経口および/または直腸経路によって投与される。
【0114】
本開示の遺伝子操作された微生物は、一般に、薬学的に許容され得る担体および/または希釈剤と共に投与される。使用される特定の薬学的に許容され得る担体および/または希釈剤は、本発明にとって重要ではない。希釈剤の例としては、リン酸緩衝食塩水、スクロースを含有するクエン酸緩衝液(pH7.0)、重炭酸緩衝液(pH7.0)単独(Levineら、J.Clin.Invest.79:888-902(1987);およびBlackら、J.Infect.Dis.155:1260-1265(1987))、またはアスコルビン酸、ラクトース、および必要に応じてアスパルテーム(Levineら、Lancet 2(8609):467-70(1988))を含有する重炭酸緩衝液(pH7.0)などの胃内の胃酸に対して緩衝するための緩衝液が挙げられる。担体の例としては、例えば脱脂乳に見出されるようなタンパク質、糖、例えばスクロース、またはポリビニルピロリドンが挙げられる。典型的には、これらの担体は、約0.1~30%(w/v)の濃度で、好ましくは1~10%(w/v)の範囲で使用されるであろう。
【0115】
送達のために使用され得る薬学的に許容され得る担体または希釈剤は、特定の投与経路に依存し得る。本開示の遺伝子操作された微生物が依然として標的細胞に侵入することができ、かつ本開示の遺伝子操作された微生物が運ぶペイロードを標的細胞に送達することができる限り、任意のこのような担体または希釈剤を本発明の遺伝子操作された微生物の投与のために使用することができる。適切な希釈剤および担体を決定するために、侵入性についてのインビトロまたはインビボ試験を行うことができる。本発明の組成物は、経口および/または直腸投与用に製剤化され得る。遺伝子操作された微生物が侵入性であり、かつ標的細胞との接触の際にまたは対象への投与の際に遺伝子操作された微生物のペイロードを送達することができる限り、凍結乾燥された形態も含まれる。技術および製剤は、一般に、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Meade Publishing Co.,Easton,Paに見出され得る。
【0116】
経口投与の場合、医薬組成物は、例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容され得る賦形剤を用いて、従来の手段によって調製された錠剤またはカプセル剤の形態を取り得る。錠剤は、当技術分野で周知の方法によってコーティングされ得る。経口投与用の液体調製物は、例えば、液剤、シロップ剤もしくは懸濁剤の形態を取り得、または使用前に水または他の適切なビヒクルで構成するための乾燥生成物として提供され得る。このような液体調製物は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または硬化食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアゴム);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分別植物油);および防腐剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸)などの薬学的に許容され得る添加剤を用いて従来の手段によって調製され得る。調製物は、適宜、緩衝塩、香味剤、着色剤および甘味剤も含有し得る。
【0117】
本明細書で提供される医薬組成物は、坐剤、膣坐薬、ペースト剤、粉剤・散剤(powder)、クリーム剤、軟膏剤、液剤、乳剤、懸濁剤、ゲル剤、フォーム剤、スプレー剤または浣腸剤の形態で直腸投与され得る。これらの剤形は、上記のRemington:The Science and Practice of Pharmacyに記載されている従来の方法を使用して製造することができる。
【0118】
直腸坐剤は、直腸内に挿入するための固形物であり、常温では固体であるが、体温で融解または軟化して、本開示の遺伝子操作された微生物を直腸内に放出する。直腸坐剤において利用される薬学的に許容され得る担体としては、本明細書で提供される医薬組成物と共に製剤化された場合に、体温の付近で融点を生じさせる、硬化剤などの基剤またはビヒクル;ならびに亜硫酸水素塩およびメタ重亜硫酸ナトリウムを含む酸化防止剤が挙げられる。適切なビヒクルには、カカオバター(カカオ脂)、グリセリン-ゼラチン、カルボワックス(ポリオキシエチレングリコール)、鯨ろう、パラフィン、白蝋および黄蝋、ならびに脂肪酸のモノ-、ジ-およびトリグリセリドの適切な混合物、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリラート、ポリアクリル酸などのヒドロゲル、グリセリン化ゼラチンが含まれるが、これらに限定されない。様々なビヒクルの組み合わせが使用され得る。直腸坐剤は、圧縮法または成形によって調製され得る。直腸坐剤の典型的な重量は、約2~約3gである。
【0119】
いくつかの実施形態において、本開示の遺伝子操作された微生物は、単一の組成物として投与されるか、または同じもしくは異なる時間に同じもしくは異なる投与経路(例えば、経口および直腸)を介して個別に投与される。いくつかの実施形態において、本開示の遺伝子操作された微生物は、直腸滴注に適した混合物または溶液で提供され、チオ硫酸ナトリウム、次没食子酸ビスマス、ビタミンEおよびクロモリンナトリウムを含む。いくつかの実施形態において、本発明の治療用組成物は、坐剤形態で、ブチラート、およびグルタチオンモノエステル、グルタチオンジエチルエステルまたは他のグルタチオンエステル誘導体を含む。坐剤は、必要に応じて、チオ硫酸ナトリウムおよび/またはビタミンEを含むことができる。医薬組成物はまた、例えばカカオバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含有する、坐剤または停留浣腸などの直腸組成物に製剤化され得る。
【0120】
いくつかの実施形態において、本開示の遺伝子操作された微生物は、浣腸製剤として製剤化される。浣腸製剤は、還元剤(または同様の作用様式を有する任意の他の作用物質)を含む。いくつかの実施形態において、本発明の浣腸製剤は、遺伝子操作された微生物を含む。浣腸製剤は、必要に応じて、ポリソルベート-80(または任意の他の適切な乳化剤)、および/または酪酸ナトリウム(4個の炭素)、プロピオン酸ナトリウム(3個の炭素)、酢酸ナトリウム(2個の炭素)などの、結腸上皮エネルギー源としての任意の短鎖脂肪酸(例えば、5個、4個、3個または2個の炭素脂肪酸)、および/またはクロモリンナトリウム(GASTROCROM)もしくはネドクロミルナトリウム(ALOCRIL)などの任意の肥満細胞安定剤を含むことができる。
【0121】
いくつかの実施形態において、組成物は、本開示の約105~約109個の生きた遺伝子操作された微生物を含む。組成物がクロモリンナトリウムを含む場合、クロモリンナトリウムは約10mg~約200mg、または約20mg~約100mg、または約30mg~約70mgの量で存在することができる。組成物がポリソルベート-80を含む場合、ポリソルベート-80は約1%(v/v)~約10%(v/v)の濃度で提供され得る。組成物が酪酸ナトリウムを含む場合、酪酸ナトリウムは約500~約1500mgの量で存在することができる。いくつかの実施形態において、浣腸としての投与に適した組成物は、本開示の遺伝子操作された微生物、クロモリンナトリウムおよびポリソルベート-80を含むように製剤化される。いくつかの実施形態において、組成物は、アルファ-リポ酸および/またはL-グルタミンおよび/またはN-アセチルシステインおよび/または酪酸ナトリウム(1.1gm)をさらに含む。
【0122】
組成物は、所望であれば、活性成分を含有する1またはそれを超える単位剤形を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイスおよび/またはキットで提供され得る。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチック箔を含み得る。パックまたはディスペンサーデバイスは、投与のための指示を伴い得る。
【0123】
様々な局面において、本発明は、胃腸(GI)組織の上皮組織および/または胃腸組織とつながっている管の疾患上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)などの疾患上皮組織を検出するための方法であって、(i)本明細書に開示されている遺伝子操作された微生物を、投与することを必要とする対象の前記上皮組織に投与することと、(ii)前記分泌可能なバイオマーカーの発現を検出し、それにより、疾患上皮細胞の存在を検出することとを含む、方法を提供する。上述のように、微生物は、表面タンパク質をコードする外因性遺伝子を含み、前記表面タンパク質は、正常な胃腸組織の上皮細胞の管腔側に露出していないが、疾患に罹患している対象中の胃腸組織の疾患上皮細胞の管腔側に露出している1またはそれを超える細胞膜受容体と特異的に相互作用する。いくつかの実施形態において、表面タンパク質は、疾患上皮細胞における微生物の結合および侵入を促進する。微生物は、プロモーターに作動可能に連結された分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子も含む。
【0124】
いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは哺乳動物プロモーターから発現される。いくつかの実施形態において、上皮発現またはGI管上皮細胞特異的発現に対して活性であるか、または特異的である哺乳動物プロモーター。いくつかの実施形態において、哺乳動物プロモーターは、GI管上皮細胞特異的発現および/または胃腸組織とつながっている管の上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)に対して特異的な発現を指示する。これらの実施形態において、微生物は、DNA分子(例えば、プラスミド)を疾患上皮細胞に送達する。いくつかの実施形態において、遺伝子操作された微生物は、経口または直腸経路を介して投与される。いくつかの実施形態において、本方法は、緩下剤を含む結腸洗浄剤の投与をさらに含む。いくつかの実施形態において、緩下剤を含む結腸洗浄剤は、微生物の投与前に投与される。
【0125】
疾患胃腸(GI)組織は、前がん性病変(複数可)、GI管がん、潰瘍性大腸炎、クローン病、バレット食道、過敏性腸症候群および過敏性腸疾患であり得る。例示的な前がん性病変(複数可)およびGI管がんとしては、肛門の扁平上皮癌、肛門の低悪性度扁平上皮内病変(LSIL)、肛門の高悪性度扁平上皮内病変(HSIL)、結腸直腸がん、結腸直腸腺癌、家族性腺腫性ポリポーシス、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸がん、結腸直腸ポリポーシス(例えば、ポイツ・ジェガース症候群、若年性ポリポーシス症候群、MUTYH関連ポリポーシス、家族性腺腫性ポリポーシス/ガードナー症候群およびクロンカイト・カナダ症候群)、カルチノイド、腹膜偽粘液腫、十二指腸腺癌、小腸の前悪性腺腫、遠位胆管癌、胆管上皮内新生物(BilIN)、BilIN-1、BilIN-2、BilIN-3または胆管癌、膵管腺癌(PDAC)、膵臓上皮内新生物(PanIN)、PanIN-1、PanIN-2、PanIN-3、胃癌、印環細胞癌(SRCC)、胃リンパ腫(MALTリンパ腫)、形成性胃組織炎(ブリントン病)、および食道の扁平上皮癌および腺癌が挙げられる。
【0126】
いくつかの実施形態において、対象が前がん性病変、がん、潰瘍性大腸炎、クローン病、バレット食道、過敏性腸症候群または過敏性腸疾患に罹患しているので、胃腸(GI)組織および/または胃腸組織とつながっている管の上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)は、潜在的に疾患胃腸組織および/または疾患上皮であり得る。いくつかの実施形態において、前がん性病変は、無茎性ポリープ、鋸歯状ポリープ(例えば、過形成性ポリープ、無茎性鋸歯状腺腫/ポリープおよび古典的鋸歯状腺腫)、無茎性鋸歯状ポリープ、平坦型ポリープ、亜有茎性ポリープ、有茎性ポリープおよびこれらの組み合わせから選択されるポリープを含む。いくつかの実施形態において、ポリープは微小ポリープである。いくつかの実施形態において、前がん性病変は、BilIN-1、BilIN-2、BilIN-3および胆管癌から選択される胆管上皮内新生物(BilIN)を含む。いくつかの実施形態において、前がん性病変は、PanIN-1、PanIN-2、PanIN-3および膵管腺癌(PDAC)から選択される膵臓上皮内新生物(PanIN)を含む。いくつかの実施形態において、前がん性病変は約0.05mm~約30mmのサイズを有する。いくつかの実施形態において、前がん性病変は、約0.1mm未満、約0.25mm未満、約0.5mm未満、約1mm未満、約2mm未満、約5mm未満、約8mm未満、約10mm未満、約15mm未満、約20mm未満、約25mm未満または約30mm未満のサイズを有する。
【0127】
いくつかの実施形態において、がんは、ポリープ、腺腫または明白ながんを含む。いくつかの実施形態において、がんは、リンチ症候群、家族性腺腫性ポリポーシス、遺伝性非ポリポーシス結腸がん(HNPCC)または散発性がんを含む。いくつかの実施形態において、がんは、胆管上皮内新生物(BilIN)、BilIN-1、BilIN-2、BilIN-3または胆管癌)、膵臓上皮内新生物(PanIN)、PanIN-1、PanIN-2、PanIN-3または膵管腺癌(PDAC)を含む。
【0128】
いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは、蛍光タンパク質、生物発光タンパク質、磁気共鳴画像法(MRI)用の造影剤、陽電子放出断層撮影(PET)レポーター、酵素レポーター、コンピュータ断層撮影(CT)において使用するための造影剤、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)レポーター、光音響レポーター、X線レポーター、超音波レポーター、およびイオンチャネルレポーター(例えばcAMP活性化型カチオンチャネル)、ならびにこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される任意の実施形態の蛍光タンパク質、生物発光タンパク質、磁気共鳴画像法(MRI)用の造影剤、陽電子放出断層撮影(PET)レポーター、酵素レポーター、コンピュータ断層撮影法(CT)において使用するための造影剤、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)レポーター、光音響レポーター、X線レポーター、超音波レポーターおよびイオンチャネルレポーター(例えばcAMP活性化型カチオンチャネル)が使用され得る。
【0129】
いくつかの実施形態において、方法は、少なくとも1つの生物発光タンパク質の1もしくはそれを超える基質、磁気共鳴画像法において使用するための少なくとも1つの造影剤の1もしくはそれを超える基質、1もしくはそれを超えるPETプローブ、酵素レポーターの1もしくはそれを超える基質、1もしくはそれを超えるSPECTプローブまたはこれらの任意の2もしくはそれを超える組み合わせの投与をさらに含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの生物発光タンパク質の1またはそれを超える基質、磁気共鳴画像法において使用するための少なくとも1つの造影剤の1またはそれを超える基質、1またはそれを超えるPETプローブ、酵素レポーターの1またはそれを超える基質、1またはそれを超えるSPECTプローブ、またはこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせの投与は、マーカー検出の少なくとも約1時間、少なくとも約6時間、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間、少なくとも約2日、少なくとも約3日前までに、マーカー検出の前に開始され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの生物発光タンパク質の1もしくはそれを超える基質、磁気共鳴画像法において使用するための少なくとも1つの造影剤の1もしくはそれを超える基質、1もしくはそれを超えるPETプローブ、酵素レポーターの1もしくはそれを超える基質、1もしくはそれを超えるSPECTプローブまたはこれらの任意の2もしくはそれを超える組み合わせは、微生物の投与後に投与され得る。
【0130】
様々な局面において、本発明は、対象における疾患または障害の評価、モニタリング、診断および/または予後診断のための方法であって、(i)本明細書に開示されている遺伝子操作された微生物を、投与することを必要とする対象の(例えば、消化管の)標的上皮組織に投与することと、(ii)対象から生物学的試料を得ることと、(iii)生物学的試料中の分泌可能なバイオマーカーを測定し、それにより、疾患上皮細胞の存在または非存在を検出することとを含む、方法を提供する。上述のように、微生物は、表面タンパク質をコードする外因性遺伝子を含み、前記表面タンパク質は、正常な胃腸組織の上皮細胞の管腔側に露出していないが、疾患に罹患している対象中の胃腸組織の疾患上皮細胞の管腔側に露出している1またはそれを超える細胞膜受容体と特異的に相互作用する。いくつかの実施形態において、表面タンパク質は、疾患上皮細胞における微生物の結合および侵入を促進する。微生物は、プロモーターに作動可能に連結された分泌可能なバイオマーカーをコードする遺伝子も含む。いくつかの実施形態において、分泌可能なバイオマーカーは哺乳動物プロモーターから発現される。いくつかの実施形態において、上皮発現(例えば、胃腸組織とつながっている管の上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織))またはGI管上皮細胞特異的発現に対して活性であるか、または特異的である哺乳動物プロモーター。いくつかの実施形態において、哺乳動物プロモーターは、GI管上皮細胞特異的発現を指示する。これらの実施形態において、微生物は、DNA分子(例えば、プラスミド)を疾患上皮細胞に送達する。いくつかの実施形態において、遺伝子操作された微生物は、経口または直腸経路を介して投与される。いくつかの実施形態において、本方法は、緩下剤を含む結腸洗浄剤の投与をさらに含む。いくつかの実施形態において、緩下剤を含む結腸洗浄剤は、微生物の投与前に投与される。いくつかの実施形態において、遺伝子操作された微生物は非病原性である。いくつかの実施形態において、遺伝子操作された微生物は栄養要求性である。いくつかの実施形態において、遺伝子操作された微生物は、非病原性および栄養要求性である。
【0131】
様々な局面において、本発明は、対象における疾患または障害の診断および/または予後診断の方法において使用するための遺伝子操作された微生物であって、前記方法は、(i)本明細書に開示される、投与することを必要とする対象の消化管に投与することと、(ii)検出マーカーの発現を検出することにより、疾患上皮細胞を検出することとを含む、微生物を提供する。上述のように、微生物は、表面タンパク質をコードする外因性遺伝子を含み、表面タンパク質は、正常な胃腸組織および/または胆管、膵管もしくは総胆管などを裏打ちする上皮組織の上皮細胞の管腔側に露出していないが、疾患に罹患している対象中の胃腸組織および/または胆管、膵管もしくは総胆管などを裏打ちする上皮組織の疾患上皮細胞の管腔側に露出している1またはそれを超える細胞膜受容体と特異的に相互作用する。いくつかの実施形態において、表面タンパク質は、疾患上皮細胞における微生物の結合および侵入を促進する。微生物は、プロモーターに作動可能に連結された少なくとも1つの検出マーカーをコードする1またはそれを超える遺伝子も含む。いくつかの実施形態において、プロモーターは哺乳動物プロモーターである。いくつかの実施形態において、哺乳動物プロモーターは、GI管上皮細胞特異的発現を指示する。いくつかの実施形態において、遺伝子操作された微生物は、経口または直腸経路を介して投与される。いくつかの実施形態において、本方法は、緩下剤を含む結腸洗浄剤の投与をさらに含む。いくつかの実施形態において、緩下剤を含む結腸洗浄剤は、微生物の投与前に投与される。いくつかの実施形態において、遺伝子操作された微生物は非病原性である。いくつかの実施形態において、遺伝子操作された微生物は栄養要求性である。いくつかの実施形態において、遺伝子操作された微生物は、非病原性および栄養要求性である。
【0132】
様々な局面において、処置のために、疾患に罹患しているかまたは罹患している疑いがある対象を選択する方法であって、(i)対象の消化管に本明細書に開示されている実施形態の任意の1つの遺伝子操作された微生物を投与することと、(ii)対象から生物学的試料を得ることと、(iii)生物学的試料中の分泌可能なバイオマーカーを測定し、それにより、疾患上皮細胞を検出することと、(iv)分泌可能なバイオマーカーの発現が観察された場合に、処置のために対象を選択することとを含む、方法が本明細書に開示されている。いくつかの実施形態において、処置可能な疾患には、前がん性病変、がん、潰瘍性大腸炎、クローン病、バレット食道、過敏性腸症候群および過敏性腸疾患が含まれる。いくつかの実施形態において、処置は手術または治療剤の投与である。いくつかの実施形態において、手術は疾患組織を除去する。いくつかの実施形態において、治療剤は、化学療法剤、細胞傷害剤、免疫チェックポイント阻害剤、免疫抑制剤、サルファ剤、コルチコステロイド、抗生物質およびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせから選択される。
【0133】
いくつかの実施形態において、前がん性病変は、無茎性ポリープ、鋸歯状ポリープ(例えば、過形成性ポリープ、無茎性鋸歯状腺腫/ポリープおよび古典的鋸歯状腺腫)、無茎性鋸歯状ポリープ、平坦型ポリープ、亜有茎性ポリープ、有茎性ポリープおよびこれらの組み合わせから選択されるポリープを含む。いくつかの実施形態において、ポリープは微小ポリープである。いくつかの実施形態において、ポリープは微小ポリープである。いくつかの実施形態において、前がん性病変は、BilIN-1、BilIN-2、BilIN-3および胆管癌から選択される胆管上皮内新生物(BilIN)を含む。いくつかの実施形態において、前がん性病変は、PanIN-1、PanIN-2、PanIN-3および膵管腺癌(PDAC)から選択される膵臓上皮内新生物(PanIN)を含む。いくつかの実施形態において、前がん性病変は約0.05mm~約30mmのサイズを有する。いくつかの実施形態において、前がん性病変は、約0.1mm未満、約0.25mm未満、約0.5mm未満、約1mm未満、約2mm未満、約5mm未満、約8mm未満、約10mm未満、約15mm未満、約20mm未満、約25mm未満または約30mm未満のサイズを有する。
【0134】
これに加えてまたはこれに代えて、いくつかの実施形態において、がんは、ポリープ、腺腫または明白ながんを含む。いくつかの実施形態において、がんは、リンチ症候群、家族性腺腫性ポリポーシス、遺伝性非ポリポーシス結腸がん(HNPCC)または散発性がんを含む。
【0135】
様々な局面において、患者におけるがんを処置する方法も本明細書に開示されている。これらの方法は、(i)請求項57~100のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物を対象の消化管に投与することと、(ii)分泌可能なバイオマーカーの発現を検出し、それにより、疾患上皮細胞を検出することと、(iii)前記分泌可能なバイオマーカーの発現が観察された場合、処置を施すこととを含む。いくつかの実施形態において、処置は手術または治療剤の投与である。いくつかの実施形態において、治療剤は、化学療法剤、細胞傷害剤、免疫チェックポイント阻害剤、免疫抑制剤、サルファ剤、コルチコステロイド、抗生物質およびこれらの任意の2またはそれを超える組み合わせからなる群から選択される。
【実施例】
【0136】
実施例1.遺伝子操作された細菌株および設定
本研究の目的の1つは、消化管上皮中の疾患細胞を検出することができる細菌株を構築することであった。
図1に示されるように、疾患上皮細胞は、新規な哺乳動物膜受容体の誤った場所への局在化および/または発現を示す。新規な受容体は、その細胞に通常見られない受容体または転座およびその他のゲノム再編成によって形成される受容体であり得る。Escherichia coli Nissle 1917に由来する細菌株が本明細書に開示される。
図2に示されるように、この株は、単一の細菌染色体および2つの染色体外プラスミド(pMUT1およびpMUT2)を含有する。
図7のレーンAを参照されたい。
【0137】
細菌株の封じ込めを可能にするために栄養要求性を導入した(
図3参照)。栄養要求性株は、体内または環境中で繁殖することができない。さらに、栄養要求性は、抗生物質を用いないプラスミドの選択を可能にする。
【0138】
細菌の封じ込めのために、細菌の細胞壁の必須成分であるジアミノピメリン酸を産生するのに不可欠なdapA遺伝子をノックアウトした。ΔdapA株は、成長のために培地中にジアミノピメリン酸を必要とする。プラスミド選択のために、alrおよびdadX遺伝子をノックアウトした。alrおよびdadXは、冗長なアラニンラセマーゼであり、成長のために、細菌株を、同じく細菌の細胞壁の成分であるアミノ酸D-アラニンの供給に依存させる。
【0139】
すべての栄養要求性は十分に確立されたλ-red組換え系を用いて作製され、抗生物質マーカーを排除するような様式で行われた。Datsenko and Wanner,Proc Natl Acad Sci U S A.97(12):6640-5(2000)。その結果、最終的な株は、E,coli Nissle 1917株が感受性であるすべての抗生物質に対して感受性であり、成長のためにジアミノピメリン酸およびD-アラニンの添加を必要とすると予想される。
【0140】
得られた株(E.coli Nissle 1917ΔdapAΔalrΔdadX)を、D-アラニンおよびジアミノピメリン酸を補充したLB培地中で成長させた。(1)LB、(2)D-アラニンのみを補充したLB、(3)ジアミノピメリン酸のみを補充したLBならびに(4)D-アラニンおよびジアミノピメリン酸を補充したLBで培養物を希釈し、37℃でインキュベートし、成長をモニタリングした。
図4Aに示されるように、D-アラニンおよびジアミノピメリン酸の両方が培地に添加された場合にのみ、株が成長するに過ぎなかった。さらに、
図4Bに示すように、D-アラニンおよびジアミノピメリン酸が培地に添加された場合、この株は、野生型株と類似の成長特性を示した。
【0141】
インベイシン(配列番号1)およびリステリオリシンO(配列番号2)を含有するシャーシを作製した。このインベイシンおよびリステリオリシンO遺伝子をプラスミド上で維持した。安定に組み込まれたインベイシンおよびリステリオリシンOを有する細菌株が構築される(
図5)。
【0142】
次に、プラスミドpMUT1およびpMUT2を標準的な手順を用いてキュアリングした(
図6)。
図7Aは、E.coli Nissle 1917(EcN)誘導体からプラスミドpMUT1およびpMUT2をキュアリングするために行った実験の結果を示すアガロースゲルを示す。野生型E.coli Nissle 1917(EcN)をキュアリングプラスミドで形質転換し、5mg/mlアンピシリンの存在下で継代した。野生型E.coli Nissle 1917(EcN)(レーンA)、pMUT1がキュアリングされたE.coli Nissle 1917(EcN)(レーンB)ならびにpMUT1およびpMUT2がキュアリングされたE.coli Nissle 1917(EcN)(レーンC)からのプラスミド調製物。プラスミドpMUT1およびpMUT2の予想位置が示されている。
図7Bは、プラスミドがキュアリングされたことを確認するための定量的PCR実験の結果を示す。データラベルは
図7Aと同じである。
【0143】
非抗生物質選択を有するpMUT1ベースのプラスミドベクターを構築した。要約すると、E.coli Nissle 1917のdapA、alr、dadX三重欠失体誘導体における選択として、E.coli alr遺伝子(配列番号5)を使用した。alrを用いて選択された得られたプラスミド中にGFP遺伝子をクローニングした。このプラスミドをpSRXと命名した。
図8は、本開示の遺伝子操作された細菌の実施形態の模式的表示を示す。この株は、1またはそれを超える栄養要求性変異(Xによって示される)を有し、ゲノムに組み込まれた表面タンパク質およびリステリオリシンOをコードする遺伝子をさらに有するE.coli Nissle 1917(EcN)誘導体である。この株は、プラスミドpMUT1を含有しないが、選択機構として栄養要求性変異の相補性を用いて選択されるpMUT1ベースの誘導体であるプラスミドpSRXを含有する。プラスミドpSRXは、本明細書においてGFPによって例示される検出マーカーも保有する。
【0144】
実施例2.結腸直腸癌細胞のインビトロ検出
本開示の細菌は、疾患細胞を特異的に検出することができる。理論に拘束されるものではないが、疾患細胞の検出は4つの異なるステップを経て進行すると仮定される。
図9Aに示されているように、本開示の遺伝子操作された微生物は、誤った場所に局在化した受容体を介して疾患上皮細胞に結合し、内部移行を受ける。内部移行すると、
図9Bに示されているように、細菌はdapA弱毒変異による溶解を受け、これは細胞壁合成の欠陥を引き起こす。次いで、リステリオリシンO(LLO、またはHly;配列番号2)が放出され、ファゴソームを溶解するか、またはE.coli株から自然に排出される。
図9Cに示されているように、分泌可能なバイオマーカーを有するプラスミドは核局在化を受け、これは天然に起こり得るか、または核局在化シグナルを含むタンパク質の結合によって誘導され得る。
図9Dに示されているように、分泌可能なバイオマーカーを有するプラスミドは、GI管の疾患上皮細胞および/または胃腸組織とつながっている管の上皮(例えば、胆管、膵管および総胆管を裏打ちする上皮組織)において、分泌可能なバイオマーカーの発現を駆動する。
【0145】
このスキームを試験するために、侵入機構を含有する株を構築した。侵入機構は、哺乳動物細胞表面のタンパク質に結合し、細菌のエンドサイトーシスを促進する細菌表面タンパク質からなる。試験された最初の細菌表面タンパク質は、タンパク質インベイシンをコードするYersinia pseudotuberculosis由来のinv遺伝子(配列番号1)であった。インベイシンは、哺乳動物細胞の表面のインテグリンに結合し、エンドサイトーシスを促進する。この株は、ProD構成的プロモーターの調節下でinvを発現するpMUT1由来プラスミドを有するE.coli Nissle 1917である。プラスミドは、細菌を容易に可視化し、哺乳動物細胞と識別可能にするために、同じProDプロモーターの調節下にあるGFP遺伝子も含んだ。この株由来の細菌をSW480(結腸直腸がん由来の細胞株)と1時間共インキュベートした後、細胞外細菌を洗い流した。SW480細胞を蛍光顕微鏡法によって可視化し、プレートから取り除き、次いで、フローサイトメトリーによって分析して、細菌株による侵入が成功したSW480細胞の一部を同定した。
図10に示されているように、SW480結腸直腸がん細胞は、侵入遺伝子を発現する細菌細胞によってのみ侵入された。これらの結果は、本技術の遺伝子操作された微生物がインビトロでがん細胞に侵入することができることを実証している。
【0146】
細菌がエンドサイトーシス液胞から逃れることを可能にする、インベイシン(inv)およびリステリオリシンO(hly)をコードする遺伝子を含む侵入機構は、ラムダファージ組み込み部位で細菌染色体に組み込まれる。組み込みは、組み込み後の抗生物質選択の排除を可能にするように行われる。
図5は、遺伝子操作された細菌E.coli Nissle 1917(EcN)株のこの実施形態の模式的表示を示す。この株は、必要に応じて、dapAΔ、alrΔおよびdadXΔ(Xによって示される)などの1またはそれを超える栄養要求性変異を有する。
【0147】
実施例3.Gaussiaルシフェラーゼ(Gluc)を使用するがん細胞のインビトロ検出
本明細書に開示されている操作された細菌は、それらが発現する表面タンパク質を介して疾患細胞を結合する。例えば、操作された細菌は、表面に発現されたインベイシンを介してβ1-インテグリンに結合する。この相互作用は、細菌の侵入をもたらす(
図11A)。理論に束縛されるものではないが、細菌は溶解を受ける。リステリオリシンO(LLO)は、ファゴソームの溶解を媒介し、DNAペイロードが送達される(
図11A)。次いで、がん細胞は、検出マーカーを発現および分泌する(
図11A)。検出マーカーは血液媒介性になり得(
図11B)、簡易な血液または尿試験を介して疾患細胞の検出を容易にする(
図11C)。
【0148】
染色体中に組み込まれたインベイシン遺伝子(配列番号7)と、哺乳動物プロモーターの調節下にあるGaussiaルシフェラーゼa(Gluc)遺伝子(配列番号3)および細菌プロモーターの調節下にあるリステリオリシンO(溶解素;配列番号2)および選択マーカーを運搬保有する(carrying harboring)高コピープラスミドとを有するインベイシン
+、リステリオリシン
+、Gluc
+E.coli Nissle 1917 dapAΔ実験株を構築した(
図12A)。インベイシン
-、リステリオリシン
+、Gluc
+E.coli Nissle 1917 dapAΔ対照株(インベイシン遺伝子を欠くが、Glucおよび溶解素遺伝子を有するプラスミドを保有する)も構築した。がん細胞を検出するために、インベイシン
+、リステリオリシン
+、Gluc
+実験細菌およびインベイシン
-、リステリオリシン
+、Gluc
+対照細菌をSW480細胞に同一の感染多重度で播種した。細菌および培地の両方を含有する試料を取り出し、GlucレベルをGlucのバックグラウンドレベルとして測定した(0日目)。1時間のインキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、抗生物質を添加してすべての細胞外細菌を死滅させた。細胞をさらに1、2または4日間インキュベートし、培地の試料をGlucの測定のために取り出した。
図12Bに示されているように、インベイシン
+、リステリオリシン
+、Gluc
+実験細菌は、0日目から1日目、2日目および4日目まで増加した発光シグナルを産生した。対照的に、インベイシン
-、リステリオリシン
+Gluc
+対照細菌はルシフェラーゼシグナルの増加をもたらさなかった。
【0149】
Glucががん細胞によって作製されたことを確認するために、pMUT1由来の低コピープラスミド上のインベイシン遺伝子と、イントロンを有しおよび哺乳動物プロモーターの調節下にあるGaussiaルシフェラーゼa(Gluc)遺伝子(配列番号4)、細菌プロモーターの調節下にあるリステリオリシンO(溶解素;配列番号2)ならびに選択マーカーを運搬保有する高コピープラスミドとを有するインベイシン
+、リステリオリシン
+、Gluc-イントロン
+E.coli Nissle 1917 dapAΔ株を構築した(
図12C)。同様のインベイシン
-、リステリオリシン
+、Gluc-イントロン
+E.coli Nissle 1917 dapAΔ対照株も構築した。インベイシン
+、リステリオリシン
+、Gluc-イントロン
+細菌およびインベイシン
-、リステリオリシン
+、Gluc-イントロン
+対照細菌を、SW480細胞に同一の感染多重度で播種した。細菌および培地の両方を含有する試料を取り出し、GlucレベルをGlucのバックグラウンドレベルとして測定した(0日目)。1時間のインキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、抗生物質を添加してすべての細胞外細菌を死滅させた。細胞をさらに1、2または4日間インキュベートし、培地の試料をGlucの測定のために取り出した。
図12Dに示されているように、インベイシン
+、リステリオリシン
+、Gluc-イントロン
+実験細菌は、0日目から1日目、2日目および4日目まで増加した発光シグナルを産生した。対照的に、インベイシン
-、リステリオリシン
+Gluc-イントロン
+対照細菌はルシフェラーゼシグナルの増加をもたらさなかった。
【0150】
これらの結果は、本明細書に開示されている操作された細菌によるDNAペイロードの送達の際に、がん細胞がGlucを産生および分泌したことを実証している。
【0151】
まとめると、これらの結果は、本明細書に開示されている操作された細菌がDNAペイロードをがん細胞に送達し、それががん細胞によるGlucの産生および分泌をもたらし、それによってがん細胞の検出を促進したことを実証している。
【0152】
実施例4.ヒトβ-絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を用いた結腸直腸癌細胞のインビトロ検出
pMUT1由来の低コピープラスミド上のインベイシン遺伝子と、哺乳動物プロモーターの調節下にある人工のイントロンを含有するヒトβ-絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)遺伝子(配列番号6)、および細菌プロモーターの調節下にあるリステリオリシンO(溶解素;配列番号2)および選択マーカーを運搬保有する高コピープラスミドとを有するインベイシン
+、リステリオリシン
+、β-hCG
+E.coli Nissle 1917 dapAΔ株を構築した。インベイシン
-、リステリオリシン
+、β-hCG
+E.coli Nissle 1917 dapAΔ対照株(インベイシン遺伝子を欠くが、β-hCGおよび溶解素をコードするプラスミド遺伝子を運搬する)も構築した。がん細胞を検出するために、インベイシン
+、リステリオリシン
+、β-hCG
+実験細菌およびインベイシン
-、リステリオリシン
+、β-hCG
+対照細菌をSW480細胞に同一の感染多重度で播種した。3時間のインキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、抗生物質を添加してすべての細胞外細菌を死滅させた。細胞をさらに3日間インキュベートし、培地の試料をβ-hCGの測定のために取り出した。ELISAベースのアッセイ(DRG Internationalのβ-hCG Elisa RUOキット)を使用して、ヒトβ-絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)を測定した。
図13Aに示されているように、ELISA試験によって示されたとおり、インベイシン
+、リステリオリシン
+、β-hCG
+株と接触した細胞は培養上清中にβ-絨毛性ゴナドトロピンを産生したが、インベイシン
-、リステリオリシン
+、β-hCG
+株と接触した細胞は産生しなかった。培養上清はまた、一般用妊娠検査薬を用いてアッセイされた。要約すると、妊娠検査薬のウィック(wick)を、インベイシン
+、リステリオリシン
+、β-hCG
+株またはインベイシン
-、リステリオリシン
+、β-hCG
+株で処理されたSW480細胞の培地中に浸漬した。
図13Bに示されているように、インベイシン
+、リステリオリシン
+、β-hCG
+株と接触した細胞は最初の「妊娠」特定位置に線の出現を示し、培養上清中でのβ-絨毛性ゴナドトロピンの産生を示したが、インベイシン
-、リステリオリシン
+、β-hCG
+株と接触した細胞は示さなかった。予想されたとおり、内部対照は、両検査での線の出現によって示された陽性反応を示した(
図13B)。
【0153】
これらの結果は、本明細書に開示されている操作された細菌がDNAペイロードをがん細胞に送達し、それががん細胞によるβ-hCGの産生および分泌をもたらし、それによってがん細胞の検出を促進したことを実証している。
【0154】
実施例5.Gaussiaルシフェラーゼ(Gluc)およびヒトβ-絨毛性ゴナドトロピン(hCG)検出マーカーを使用する結腸直腸癌細胞のインビボ検出
これらの実験は、結腸直腸がんのマウスモデルにおいて行われる。簡潔には、発癌を誘発するために、正常なまたはApcFl/Fl;Vil-Cre-ERT2マウスに30μM 4-OHタモキシフェンを投与する。浣腸および/または経管栄養(gavage)を用いて、インベイシン+、リステリオリシン+、Gluc+株またはインベイシン-、リステリオリシン+、Gluc+株の細菌をマウスに投与する。一部のマウスから血液および尿を回収し、ELISAまたは活性アッセイを用いてGlucを検出する。一部のマウスを屠殺し、結腸を切除し、洗浄し、免疫組織化学またはルミノメトリーによってGlucを検出する。
【0155】
正常なマウスは、インベイシン+、リステリオリシン+、β-Gluc+株を投与されるかまたはインベイシン-、リステリオリシン+、β-Gluc+株を投与されるかに関わらず、Gluc発現を示さないことが予想される。他方、ApcFl/Fl;Vil-Cre-ERT2マウスは、血液、尿および/または結腸にβ-Glucを示すと予想される。
【0156】
別の一連の実験では、発癌を誘発するために、ApcFl/Fl;Vil-Cre-ERT2マウスに30μM4-OHタモキシフェンを投与する。浣腸および/または経管栄養を用いて、インベイシン+、リステリオリシン+、β-hCG+株またはインベイシン-、リステリオリシン+、β-hCG+株の細菌をマウスに投与する。一部のマウスから血液および尿を回収し、ELISAおよび/または妊娠検査薬を用いてβ-hCGを検出する。一部のマウスを屠殺し、結腸を切除し、洗浄し、免疫組織化学によってβ-hCGを検出する。
【0157】
正常なマウスは、インベイシン+、リステリオリシン+、β-hCG+株を投与されるかまたはインベイシン-、リステリオリシン+、β-hCG+株を投与されるかに関わらず、β-hCG発現を示さないことが予想される。他方、ApcFl/Fl;Vil-Cre-ERT2マウスは、血液、尿および/または結腸にβ-hCGを示すと予想される。
【0158】
参照による組み入れ
本明細書で参照されるすべての特許および刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0159】
本明細書中で論述される刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示のためにのみ提供される。本明細書のいかなる記述も、先行発明によって、本発明がかかる刊行物に先行する権利を有しないことを認めたものと解釈してはならない。
【0160】
本明細書で使用される場合、すべての見出しは単に整理のためのものであり、決して本開示を限定することを意図するものではない。任意の個々のセクションの内容は、すべてのセクションに等しく適用可能であり得る。
【0161】
均等物
本発明は、その特定の実施形態に関連して開示されているが、さらなる修正が可能であり、本出願は、一般に、本発明の原理に従って、ならびに本発明が関連する技術分野内の公知のまたは従来の慣行に含まれるようなおよび以下に記載され、以下のとおり、添付の特許請求の範囲内の本質的特徴に適用され得るような本開示からの逸脱を含め、本発明の任意の変形、使用または改変を包含することが意図されることが理解されよう。
【0162】
表面タンパク質(インベイシンおよび類似体)の配列
配列番号1
インベイシンのアミノ酸配列
【化1】
配列番号7
インベイシン 染色体の配置(太字:コード領域、斜字体:ProDプロモーター)
【化2-1】
【化2-2】
溶解素の配列(例えば、リステリオリシンOおよび誘導体)
配列番号2
リステリオリシンOのアミノ酸配列
【化3】
配列番号8
ペリプラズム分泌シグナルを欠くリステリオリシンOのアミノ酸配列
【化4】
例示的な選択マーカーの配列
配列番号5
プロモーターを有するアラニンラセマーゼ(太字:コード領域、斜字体:プロモーター領域)
【化5-1】
【化5-2】
例示的な分泌可能なバイオマーカーの配列
配列番号3
Gaussiaルシフェラーゼ構築物(太字:コード領域、斜字体:CMVプロモーター)
【化6】
配列番号4
Gaussiaルシフェラーゼ-イントロン構築物(太字:コード領域、斜字体:CMVプロモーター、下線:イントロン)
【化7】
配列番号6
β-hCG構築物(太字:コード領域、斜字体:CMVプロモーター、下線:イントロン)
【化8-1】
【化8-2】
【配列表】
【国際調査報告】