(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ポリマー電解質膜、膜電極接合体及びレドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1018 20160101AFI20240702BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20240702BHJP
H01M 8/18 20060101ALI20240702BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20240702BHJP
C25B 13/08 20060101ALI20240702BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20240702BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240702BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240702BHJP
【FI】
H01M8/1018
H01M8/10 101
H01M8/18
C25B9/23
C25B13/08 302
C25B13/04 301
C25B9/00 A
C25B1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577142
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 IB2022055463
(87)【国際公開番号】W WO2022264007
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ダブリュ.ホスバイン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー エル.アガーポブ
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB28
4K021DB33
4K021DB40
4K021DB43
5H126AA05
5H126AA10
5H126BB06
5H126BB10
5H126FF05
5H126JJ03
5H126JJ04
(57)【要約】
第一の表面及び反対側の第二の表面を有する少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜を含む、電気化学デバイス用の複合電解質膜が提供される。強化ポリマー電解質膜は、ミクロ多孔質ポリマー構造及びイオン交換材料を含み、イオン交換材料はミクロ多孔質ポリマー構造内に少なくとも部分的に埋め込まれて、ミクロ多孔質ポリマー構造を閉塞性とする。複合電解質膜は、第一の多孔質層及び第二の多孔質層を含む複数の多孔質層をさらに含み、第一の多孔質層は第一の強化ポリマー電解質の第一の表面に隣接し、第二の多孔質層は強化ポリマー電解質の第二の表面に隣接する。また、そのような複合電解質膜を含む膜電極接合体、及びそのような膜電極接合体を含むレドックスフロー電池、燃料電池及び電解装置も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学デバイス用の複合電解質膜(100)であって、
a)第一の表面(112)及び反対側の第二の表面(114)を有する少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜(110)、ここで、前記少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜は、
ミクロ多孔質ポリマー構造(120)及びイオン交換材料(125)を含み、ここで、前記イオン交換材料は前記ミクロ多孔質ポリマー構造内に少なくとも部分的に埋め込まれて、前記ミクロ多孔質ポリマー構造を閉塞性とする、及び、
b)少なくとも第一の多孔質層(130)及び第二の多孔質層(140)を含む複数の多孔質層、
を含み、
前記第一の多孔質層は、前記第一の多孔質層(130)の第一の表面(132)が前記少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜(110)の前記第一の表面(112)に隣接するように、第一の表面(132)及び反対側の第二の表面(136)を有し、前記第一の多孔質層(130)は、5マイクロメートル~5000マイクロメートルの範囲の細孔サイズを有する複数の細孔(136)を有し、そして前記複数の細孔は、前記第一の多孔質層(130)の第一の表面及び第二の表面(132、134)の間に延在する1つ以上の通路を提供し、
前記第二の多孔質層(140)は、前記第二の多孔質層(140)の第一の表面(142)が前記少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜(110)の第二の表面(114)に隣接するように、第一の表面(142)及び反対側の第二の表面(144)を有し、前記第二の多孔質層(140)は5マイクロメートル~5000マイクロメートルの範囲の細孔サイズを有する複数の細孔(146)を有し、前記複数の細孔(146)は、前記第二の多孔質層(140)の第一の表面と第二の表面(142、144)との間で前記第二の多孔質層(140)を通って延在する1つ以上の通路を提供する、電気化学デバイス用の複合電解質膜(100)。
【請求項2】
前記ミクロ多孔質ポリマー構造は、前記イオン交換材料で完全に埋め込まれている、請求項1記載の複合電解質膜(100)。
【請求項3】
前記強化ポリマー電解質膜(110)のミクロ多孔質ポリマー構造(120)は、第一の表面(121)及び反対側の第二の表面(122)を有し、
前記イオン交換材料の少なくとも1つの層(126、127)は、前記ミクロ多孔質ポリマー構造(120)の第一の表面及び第二の表面(121、122)の少なくとも一方の上に存在する。請求項1又は請求項2記載の複合電解質膜(100)。
【請求項4】
前記イオン交換材料(125)の第一の層(126)は前記ミクロ多孔質ポリマー構造(120)の第一の表面(121)上に存在し、前記イオン交換材料(125)の第二の層(127)は、前記ミクロ多孔質ポリマー構造(120)の第二の表面(122)上に存在する、請求項3記載の複合電解質膜(100)。
【請求項5】
前記イオン交換材料(125)の少なくとも1つのさらなる層(128)は、イオン交換材料の第一の層及びイオン交換材料の第二の層の一方又は両方の上に存在する、請求項3又は請求項4記載の複合電解質膜(100)。
【請求項6】
前記イオン交換材料の層のうちの1つ以上の層は、少なくとも1つの膜触媒(150)をさらに含む、請求項3~5のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの膜触媒は、Pt、Ir、Ni、Co、Pd、Ti、Sn、Ta、Nb、Sb、Pb、Mn、Ru及びFe、それらの酸化物ならびにそれらの混合物のうちの1つ以上を含む第一の膜触媒(150)を含む、請求項6記載の複合電解質膜(100)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの膜触媒は第一の膜触媒を含み、前記イオン交換材料の第一の層(126)は前記第一の膜触媒(150)を含む、請求項6又は7記載の複合電解質膜(100)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの膜触媒は第一の膜触媒を含み、前記イオン交換材料の第二の層(127)は前記第一の膜触媒(150)を含む、請求項6~8のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの膜触媒は第一の膜触媒を含み、前記イオン交換材料の少なくとも1つのさらなる層(128)は前記第一の膜触媒(150)を含む、請求項5~7記載の複合電解質膜(100)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの膜触媒は炭素粒子などの担体上に存在する、請求項5~10のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項12】
前記第一の多孔質層及び前記第二の多孔質層(130、140)の一方又は両方が前記強化ポリマー電解質膜(110)に取り付けられている、請求項1~11のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項13】
前記第一の多孔質層及び前記第二の多孔質層(130、140)の一方又は両方の一部が、前記イオン交換材料の少なくとも1つの層に部分的に埋め込まれている、請求項3~12のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜(110)は2つ以上のミクロ多孔質ポリマー構造(120)を含む、請求項1~13のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項15】
隣接する一対のミクロ多孔質ポリマー構造はイオン交換材料の層によって分離されている、請求項14記載の複合電解質膜(100)。
【請求項16】
前記イオン交換材料の少なくとも1つの層は、0%RHで約0.5μm~約20μm、又は約0.5μm~約15μm、又は約0.5μm~約12μm、又は約0.5μm~約8μm、又は約0.5μm~約5μm、又は約2μm~約5μmの範囲の厚さを有する、請求項3~11のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項17】
前記イオン交換材料が少なくとも部分的に埋め込まれ、前記ミクロ多孔質ポリマー構造を閉塞性とする前記ミクロ多孔質ポリマー構造は、0%RHで約0.5μm~約30μm、又は約0.5μm~約21μm、又は約0.5μm~約10μm、又は約0.5μm~約8μm、又は約0.5μm~約6μm、又は約2μm~約30μm、又は約2μm~約21μm、又は約2μm~約10μm、又は約2μm~約8μm、又は約2μm~約6μmの範囲の厚さを有する、請求項1~16のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項18】
前記イオン交換材料が少なくとも部分的に埋め込まれ、前記ミクロ多孔質ポリマー構造を閉塞性とする前記ミクロ多孔質ポリマー構造は、0%RHで約30μm~約100μm、又は約30μm~約250μm、又は約30μm~約500μmの範囲の厚さを有する、請求項1~16のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項19】
前記ミクロ多孔質ポリマー構造は少なくとも1つのフッ素化ポリマーを含む、請求項1~18のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項20】
前記少なくとも1つのフッ素化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(EPTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、延伸ポリフッ化ビニリデン(ePVDF)、延伸ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(eEPTFE)、又はそれらの混合物である、請求項19記載の複合電解質膜(100)。
【請求項21】
前記フッ素化ポリマーは延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)である、請求項19又は請求項20記載の複合電解質膜(100)。
【請求項22】
前記ミクロ多孔質ポリマー構造は少なくとも1つの炭化水素ポリマーを含む、請求項1~18のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項23】
前記少なくとも1つの炭化水素ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン又はそれらの混合物を含む、請求項22記載の複合電解質膜(100)。
【請求項24】
前記ミクロ多孔質ポリマー構造は、イオン交換材料が少なくとも部分的に埋め込まれる前に、0%RHで約2μm~約150μm、又は約2μm~約100μm、又は約2μm~約70μm、又は約2μm~約40μm、又は約2μm~約20μmの範囲の厚さを有する、請求項19~23のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項25】
前記ミクロ多孔質ポリマー構造は、前記イオン交換材料が少なくとも部分的に埋め込まれる前に、約0.5g/m
2~約100g/m
2、又は0.5g/m
2~約30g/m
2、又は約0.5g/m
2~約21g/m
2、又は約0.5g/m
2~約10g/m
2、又は約0.5g/m
2~約8g/m
2、又は約0.5g/m
2~約6g/m
2、又は約2g/m
2~約30g/m
2、又は約2g/m
2~約21g/m
2、又は約2g/m
2~約10g/m
2、又は約2g/m
2~約8g/m
2、又は約2g/m
2~約6g/m
2、又は約30g/m
2~約100g/m
2、又は約30g/m
2~約80g/m
2、又は約30g/m
2~約60g/m
2の範囲の面積当たりの質量を有する、請求項19~24のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項26】
前記イオン交換材料は少なくとも1つのアイオノマーを含む、請求項1~25のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項27】
前記少なくとも1つのアイオノマーはプロトン伝導性ポリマーを含む、請求項26記載の複合電解質膜(100)。
【請求項28】
前記プロトン伝導性ポリマーはペルフルオロスルホン酸を含む、請求項27記載の複合電解質膜(100)。
【請求項29】
前記少なくとも1つのアイオノマーは相対湿度0%で約1.9g/cc以上の密度を有する、請求項26~28のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項30】
前記イオン交換材料の平均当量体積は、約240cc/モル当量~約1000cc/モル当量であるか、又は前記イオン交換材料の平均当量体積は、約240cc/モル当量~約650cc/モル当量であるか、又は前記イオン交換材料の平均当量体積は、約240cc/モル当量~約475cc/モル当量であるか、又は前記イオン交換材料の平均当量体積は、約350cc/モル当量~約475cc/モル当量である、請求項1~29のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項31】
前記強化ポリマー電解質膜(110)は、2マイクロメートル~500マイクロメートルの範囲の厚さを有する、請求項1~30のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項32】
前記強化ポリマー電解質膜は、4μm~30μmの範囲の厚さを有する、請求項1~31のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項33】
前記複数の多孔質層のそれぞれは、メッシュ、編物材料、紙、フェルト、マット又はクロスなどの織物材料及び不織布材料から独立して選ばれることができる、請求項1~32のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項34】
前記複数の多孔質層のそれぞれは織物材料である、請求項33記載の複合電解質膜(100)。
【請求項35】
前記複数の多孔質層のそれぞれはフッ素化ポリマーを含む、請求項1~34のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項36】
前記フッ素化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(EPTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はそれらの混合物である、請求項35記載の複合電解質膜(100)。
【請求項37】
前記フッ素化ポリマーはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である、請求項35又は請求項36記載の複合電解質膜(100)。
【請求項38】
前記複数の多孔質層のうちの多孔質層は炭化水素ポリマーを含む、請求項1~34のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項39】
前記炭化水素ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、又はそれらの混合物を含む、請求項38記載の複合電解質膜(100)。
【請求項40】
前記複数の多孔質層のうちの多孔質層はガラス繊維を含む、請求項1~34のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項41】
前記複数の多孔質層のうちの多孔質層はセラミック材料を含む、請求項1~34のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項42】
前記セラミック材料は、シリカ、ジルコニア、アルミナ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ホウ素、酸化ナトリウム、酸化カリウム、又はそれらの任意の混合物を含む、請求項41記載の複合電解質膜(100)。
【請求項43】
前記複数の多孔質層のそれぞれの細孔サイズは、100ミクロン~2000マイクロメートル、又は500マイクロメートル~1500マイクロメートルの範囲内である、請求項1~42のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項44】
前記複数の多孔質層のそれぞれは、2.99cm
2の開口面積に対して12ミリバールの差圧で6000リットル/時を超える空気透過性を有する、請求項1~43のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項45】
前記複数の多孔質層のそれぞれは、0.80~0.98の開口面積多孔度を有する、請求項1~44のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項46】
前記複数の多孔質層のそれぞれは非導電性である、請求項1~45のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項47】
前記複数の多孔質層のそれぞれは、0%RHで約15μm~約500μm、又は約15μm~約250μm、又は約15μm~約200μm、又は約15μm~約150μm、又は約15μm~約100μm、又は約15μm~約50μm、又は約30μm~約500μm、又は約30μm~約250μm、又は約30μm~約150μm、又は約30μm~約100μm、又は約30μm~約50μm、又は約50μm~約500μm、又は約50μm~約250μm、又は約50μm~約200μm、又は約50μm~約150μm、又は約50μm~約100μmの範囲の厚さを有する、請求項1~46のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項48】
前記複合電解質膜は、0%RHで約30μm~約1500μm、又は約30μm~約1250μm、又は約30μm~約1100μm、又は約30μm~約800μm、又は約30μm~約500μm、又は約30μm~約300μm、又は約30μm~約250μm、又は約30μm~約150μm、又は約60μm~約1500μm、又は約60μm~約1250μm、又は約60μm~約1100μm、又は約60μm~約800μm、又は約60μm~約500μm、又は約60μm~約300μm、又は約60μm~約250μm、又は約60μm~約150μm、又は約100μm~約1500μm、又は約100μm~約1250μm、又は約100μm~約1100μm、又は約100μm~約800μm、又は約100μm~約500μm、又は約100μm~約300μm、又は約100μm~約250μm、又は約100μm~約150μmの範囲の厚さを有する、請求項1~47のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項49】
前記複合電解質膜は一体構造である、請求項1~48のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項50】
前記複合電解質膜のプロトン面積比抵抗は≧2500MPa/(オーム・cm
2)であるか、≧3500MPa/(オーム・cm
2)であるか、又は≧4000MPa/(オーム・cm
2)である、請求項1~49のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)。
【請求項51】
電気化学デバイス用の膜電極接合体(200)であって、
第一の電極(160)を含む少なくとも1つの電極、及び、
請求項1~50のいずれか1項記載の複合電解質膜、ここで、前記複合電解質膜は、前記第一の多孔質層(130)が、前記第一の電極(160)と前記少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜(110)との間にあるように前記少なくとも1つの電極に隣接している、
を含む、電気化学デバイス用の膜電極接合体(200)。
【請求項52】
前記少なくとも1つの電極は第二の電極(170)を含み、前記第二の多孔質層(140)は、前記第二の電極(170)と前記強化ポリマー電解質膜(110)の間にある、請求項51記載の膜電極接合体(200)。
【請求項53】
前記複合電解質膜(100)は、前記少なくとも1つの電極(160、170)に取り付けられている、請求項51又は請求項52記載の膜電極接合体(200)。
【請求項54】
前記複合電解質膜(100)は、前記少なくとも1つの電極(160、170)にプレスされる、請求項51又は請求項52記載の膜電極接合体(200)。
【請求項55】
前記少なくとも1つの電極(160、170)は繊維又は繊維材料を含む、請求項51~54のいずれか1項記載の膜電極接合体(200)。
【請求項56】
前記少なくとも1つの電極(160、170)は炭素繊維又はドープされた炭素繊維を含み、場合により、前記炭素繊維は約8~約30μmの直径を有する、請求項51~55のいずれか1項記載の膜電極接合体(200)。
【請求項57】
前記ドープされた炭素繊維は、N、P、S又はB及びそれらの混合物を含む、請求項56記載の膜電極接合体(200)。
【請求項58】
前記少なくとも1つの電極(160、170)は、フェルト、紙、マット又は織物材料から選ばれる、請求項51~57のいずれか1項記載の膜電極接合体(200)。
【請求項59】
前記少なくとも1つの電極(160、170)は、少なくとも1つの電極触媒を含む電極触媒層を含む、請求項51~58のいずれか1項記載の膜電極接合体(200)。
【請求項60】
前記電極触媒層は、担体上の少なくとも1つの電極触媒及びイオン交換材料を含む、請求項59記載の膜電極接合体(200)。
【請求項61】
前記少なくとも1つの電極触媒は、Pt、Ir、Ni、Co、Pd、Ti、Sn、Ta、Nb、Sb、Pb、Mn、Ru及びFe、それらの酸化物ならびにそれらの混合物のうちの1つを含む、請求項59又は請求項60記載の膜電極接合体(200)。
【請求項62】
前記電極触媒層は電子伝導性である、請求項59~61のいずれか1項記載の膜電極接合体(200)。
【請求項63】
前記第一の電極は、前記少なくとも1つの電極触媒を含む電極触媒層を含む、請求項59~62のいずれか1項記載の膜電極接合体(200)。
【請求項64】
前記電極触媒層は、前記第一の多孔質層(130)の第一の表面(132)が前記強化ポリマー電解質膜(110)の第一の表面(112)と接触し、前記第一の多孔質層(130)の第二の表面(134)が電極触媒層の第一の表面と接触するように、第一の表面及び反対側の第二の表面を有する、請求項59~63のいずれか1項記載の膜電極接合体(200)。
【請求項65】
前記第一の電極(160)は第一の表面及び反対側の第二の表面を有し、前記第一の多孔質層(130)の第一の表面(132)は少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜(110)の第一の表面(112)と接触し、そして前記第一の多孔質層(130)の第二の表面(134)は前記第一の電極(160)の第一の表面と接触している、請求項51~63のいずれか1項記載の膜電極接合体(200)。
【請求項66】
前記少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜(110)の第一の表面は、膜触媒(150)を含むイオン交換材料の層を含む、請求項51~65のいずれか1項記載の膜電極接合体(200)。
【請求項67】
前記膜電極接合体は電解装置膜電極接合体である、請求項59~66のいずれか1項記載の膜電極接合体(200)。
【請求項68】
前記膜電極接合体はレドックスフロー電池膜電極接合体である、請求項51~58のいずれか1項記載の膜電極接合体(200)。
【請求項69】
前記膜電極接合体は燃料電池膜電極接合体である、請求項59~66のいずれか1項記載の膜電極接合体(200)。
【請求項70】
請求項1~50のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)、又は請求項59~66もしくは69記載の膜電極接合体を含む、燃料電池。
【請求項71】
請求項1~50のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)、又は請求項51~66もしくは68記載の膜電極接合体を含む、レドックスフロー電池。
【請求項72】
請求項1~50のいずれか1項記載の複合電解質膜(100)、又は請求項59~67記載の膜電極接合体を含む、電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドックスフロー電池などの電気化学デバイス用の複合電解質膜に関する。複合電解質膜は、強化ポリマー電解質膜と、第一の多孔質層及び第二の多孔質層を含む複数の多孔質層とを含み、前記第一の多孔質層及び前記第二の多孔質層は、強化ポリマー電解質膜の対向する表面に隣接している。また、そのような複合電解質膜を含む膜電極接合体、ならびにそのような膜電極接合体を含む燃料電池、電解装置及びレドックスフロー電池も開示される。このような複合電解質膜は、高い耐穿刺性を示す。その結果、このような複合電解質膜を備えるレドックスフロー電池は、電気的短絡に対する耐性が向上する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー電解質膜(PEM)は、燃料電池、電解装置、レドックスフロー電池及び加湿器などの多くの用途において重要な構成要素である。これらは、共有結合したペンダントイオン化単位を含むポリマーであるアイオノマーなどのイオン交換材料から作られた半透性膜である。PEMは、電子絶縁体であり、ガス酸素及び水素又はその他のイオン種などの反応体に対して低い透過性を有しながら、プロトンなどのイオンを伝導するように設計されている。
【0003】
ポリマー電解質膜燃料電池(PEMFC)及び加湿器において、PEMは膜電極接合体(MEA)の一部である。MEAは、電力を生成する電気化学反応が起こる燃料電池の中心構成要素である。典型的なMEAは、PEM、2つの触媒層 (つまり、PEMの反対側に取り付けられたアノード及びカソード)及び2つのガス拡散層(GDL、PEMに隣接するものの反対側である各触媒層の外面に取り付けられている)を含む。PEMは2つの反応体ガス流を分離する。MEAのアノード側では、水素ガスなどの燃料が酸化されて電子とプロトンが分離される。このセルは、電子が外部回路を通過し、一方、プロトンがPEMを通過して移行するように設計されている。カソード側では、電子とプロトンが酸化剤(すなわち、酸素又は空気)と反応して水と熱を生成する。このようにして、電気化学ポテンシャルが維持され、燃料電池から電流を取り出して有用な仕事を行うことができる。
【0004】
電解装置は水を加水分解して水素と酸素を生成する。電解装置で起こる反応は、アノードとカソードで起こる反応が逆であることを除いて、燃料電池での反応と非常に似ている。燃料電池ではアノードで水素ガスが消費され、電解装置では水素ガスはカソードで生成される。バイポーラ電解装置(又はPEM電解装置)は、PEM燃料電池と同じタイプの電解質を使用する。電解質は薄い固体イオン伝導膜であり、アルカリ電解装置で使用される水溶液の代わりに使用される。
【0005】
レドックスフロー電池は、酸化及び還元反応を介してエネルギーを貯蔵及び放出するための電気活性材料として2つの可溶性レドックス対を使用する。典型的に、レドックスフロー電池は2つの電解質リザーバ(陰極電解質及び陽極電解質)を備えており、そこから電解質はポンプによって電気化学セルスタックを介して循環される。セルスタックは通常、不活性電極で電気化学反応が起こることができるように直列又は並列に接続された複数のセルを含む。スタックの各セルは、アノード、カソード及びイオン交換膜セパレータ(例えば、ポリマー電解質膜)を含み、2つのリザーバからの電解質溶液の相互混合を防止しながら、膜セパレータを横切るイオン(例えば、プロトン)の選択的拡散を可能にする。
【0006】
高い選択性(望ましい種の高いコンダクタンス及び/又は望ましくない種の低い透過性による)、高い耐久性及び低コストはすべてPEMにおける望ましい品質である。しかしながら、実際のエンジニアリングの問題として、これらの特性の最適化では対立が生じることが多く、トレードオフを受け入れる必要がある。膜厚を薄くすることで、選択したイオン(例えば、プロトン)のコンダクタンスを増加させることで、選択性を向上させることができる。PEMを薄くすると、イオン交換材料が高価で使用量が少なくなるため、コストも削減される。しかしながら、膜が薄くなるにつれて(例えば、水素ガス又は望ましくないイオン種に対する)透過性が増加し、プロトン伝導の増加による選択性の向上が損なわれ、結果的に薄い膜でも厚い膜と同等以下の選択性が得られる。さらに、膜が薄いと強度も弱く、自動車の過酷な条件に対して十分な機械的耐久性が不足することがよくある。ポリマー電解質膜の厚さを薄くすると、他の電気化学デバイスの構成要素からの損傷又は穿刺を受けやすくなり、電池の寿命が短くなる可能性がある。
【0007】
機械的弱点の一例はPEMの穿刺である。電極層は、特にRFBにおいて、ミクロ多孔質層(典型的な細孔サイズ1~200ミクロン)を含むことができる。ミクロ多孔質層は、とりわけ、フェルト、紙、マット又は織物材料を含むことができ、それは繊維材料から作ることができる。PEM-電極の組み立て中に、電極はPEMに対して圧縮される。電極層を形成する炭素繊維などの繊維材料は、圧縮時にPEMに穿刺する可能性がある。これは、繊維電極層がPEMの両側に配置されているレドックスフロー電池(RFB)において特に問題となる可能性がある。
【0008】
したがって、穿刺損傷によって形成されたピンホールがポリマー電解質膜を通って広がる可能性があるため、PEM電気化学デバイスは故障する可能性がある。さらに、電子電流がPEMを通過し、電解質によってピンホールを通って伝導され、システムが短絡する場合にも、これらのデバイスは故障する可能性がある。
【0009】
したがって、典型的にはより薄い膜を使用することにより、より高いプロトン伝導性を有する膜を提供することは、典型的にはより厚い膜を使用することにより穿刺抵抗を提供する必要性によって制限される。
【0010】
PEMの機械的耐性及び穿刺特性に対する耐性を改善する既知のアプローチには、輸送保護層でPEMを保護することが含まれる。しかしながら、保護されたPEMであっても、電気化学デバイスの製造中にPEMを組み立てる際に穿刺を受ける可能性がある。
【0011】
したがって、既知の複合膜と比較して、電気化学デバイス構成要素による穿刺に対する耐性を向上させ、それに対応して電気的短絡に対する耐性を向上させながら、良好な性能及び低いイオン抵抗を維持する薄い複合膜に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0012】
本開示は、上述の問題を解決するものである。驚くべきことに、a)第一の強化ポリマー電解質膜を含む少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜と、b)第一の強化ポリマー電解質膜の対向する表面に隣接して、第一の多孔質層及び第二の多孔質層を含む複数の多孔質層を含む、複合電解質膜が、電気化学デバイスの製造時に電気化学デバイスの構成要素によるPEMの穿刺に対する耐性を高めることが発見された。複数の多孔質層のそれぞれは、5マイクロメートル~5000マイクロメートルの範囲の細孔サイズを有する複数の細孔を有する。複数の細孔のそれぞれは、多孔質層の第一の表面と第二の表面との間に延在する1つ以上の通路を提供する。したがって、第一の多孔質層は、5マイクロメートル~5000マイクロメートルの範囲の細孔サイズを有する複数の細孔を有し、前記複数の細孔は、第一の多孔質層の第一の表面と第二の表面との間に延在する1つ以上の通路を提供する。同様に、第二の多孔質層は、5マイクロメートル~5000マイクロメートルの範囲の細孔サイズを有する複数の細孔を有し、前記複数の細孔は、第二の多孔質層の第一の表面と第二の表面との間で第二の多孔質層を通って延在する1つ以上の通路を提供する。
【0013】
さらに、このような穿刺に対する抵抗の増大は、低いプロトンシート抵抗を維持しながら達成することができる。既知の複合電解質膜と比較して、本明細書に記載の複合電解質膜は、複合電解質膜を組み込むことができる電気化学デバイスの構成要素による穿刺に対して優れた耐性を示すため、これらの発見は非常に有益である。したがって、本明細書に記載の複合膜は、膜の性能を損なうことなく、デバイス製造時に電気化学デバイスの要素による穿刺に対して優れた耐性を有する。本明細書に記載の複合膜の優れた耐穿刺性は、改善された短絡圧力及び破裂圧力から明らかである。
【0014】
第一の態様において、電気化学デバイス用の複合電解質膜が提供され、この複合電解質膜は、
a)第一の表面及び反対側の第二の表面を有する少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜、ここで、前記少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜は、
ミクロ多孔質ポリマー構造及びイオン交換材料を含み、ここで、前記イオン交換材料は、前記ミクロ多孔質ポリマー構造内に少なくとも部分的に埋め込まれて、前記ミクロ多孔質ポリマー構造を閉塞性とする、及び、
b)第一の多孔質層及び第二の多孔質層を含む複数の多孔質層、
を含み、
前記第一の多孔質層は、前記第一の多孔質層の第一の表面が前記少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜の第一の表面に隣接するように、第一の表面及び反対側の第二の表面を有し、前記第一の多孔質層は、5マイクロメートル~5000マイクロメートルの範囲の細孔サイズを有する複数の細孔を有し、前記複数の細孔は、前記第一の多孔質層の第一の表面と第二の表面との間に延在する1つ以上の通路を提供し、
前記第二の多孔質層は、前記第二の多孔質層の第一の表面が前記少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜の第二の表面に隣接するように、第一の表面及び反対側の第二の表面を有し、前記第二の多孔質層は、5マイクロメートル~5000マイクロメートルの範囲の細孔サイズを有する複数の細孔を有し、前記複数の細孔は、前記第二の多孔質層の第一の表面と第二の表面との間で前記第二の多孔質層を通って延在する1つ以上の通路を提供する。
【0015】
1つの実施形態において、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜は、第一の表面及び反対側の第二の表面を有する第一の強化ポリマー電解質膜を含む。
【0016】
複数の多孔質層のそれぞれは、第一の表面及び反対側の第二の表面を有することができる。複数の細孔は、多孔質層の第一の表面と第二の表面との間に延在する1つ以上の通路を提供する。これらの1つ以上の通路は、規則的又は不規則に、好ましくは規則的に、複数の多孔質層の第一の表面及び第二の表面の一方又は両方、好ましくは両方にわたって間隔をあけて配置されうる。
【0017】
別の実施形態において、前記複数の多孔質層のそれぞれは、0%RHで約15μm~約500μm、又は約15μm~約250μm、又は約15μm~約200μm、約15μm~約150μm、又は約15μm~約100μm、又は約15μm~約50μm、又は約30μm~約500μm、又は約30μm~約250μm、又は約30μm~約150μm、又は約30μm~約100μm、又は約30μm~約50μm、又は約50μm~約500μm、又は約50μm~約250μm、又は約50μm~約200μm、又は約 50μm~約150μm、又は約50μm~約100μmの範囲の厚さを有する。
【0018】
複合電解質膜の別の実施形態において、ミクロ多孔質ポリマー構造はイオン交換材料内に完全に埋め込まれることができる。
【0019】
複合電解質膜の別の実施形態において、強化ポリマー電解質膜のミクロ多孔質ポリマー構造は、第一の表面と反対側の第二の表面を有し、そして、イオン交換材料の少なくとも1つの層は、ミクロ多孔質ポリマー構造の第一の表面及び第二の表面の少なくとも一方の上に存在する。典型的には、イオン交換材料の層は、ミクロ多孔質ポリマー構造の第一の表面と第二の表面のそれぞれの上に存在することができ、その結果、イオン交換材料の第一の層はミクロ多孔質ポリマー構造の第一の表面上に存在し、イオン交換材料の第二の層はミクロ多孔質ポリマー構造の第二の表面上に存在する。好ましくは、第一の多孔質層及び第二の多孔質層の一方又は両方の一部は、イオン交換材料の層に部分的に埋め込まれる。
【0020】
別の実施形態において、イオン交換材料の少なくとも1つのさらなる層は、イオン交換材料の第一の層及びイオン交換材料の第二の層の一方又は両方の上に存在する。
【0021】
別の実施形態において、イオン交換材料の1つ以上の層、例えば、イオン交換材料の少なくとも1つの層及び/又はイオン交換材料の少なくとも1つのさらなる層は、少なくとも1つの膜触媒をさらに含むことができる。少なくとも1つの触媒は、Pt、Ir、Ni、Co、Pd、Ti、Sn、Ta、Nb、Sb、Pb、Mn、Ru及びFe、それらの酸化物、及びそれらの混合物のうちの1つ以上を含む第一の触媒を含むことができる。1つの実施形態において、少なくとも1つの膜触媒は第一の膜触媒を含むことができ、イオン交換材料の第一の層は第一の膜触媒を含むことができる。1つの実施形態において、少なくとも1つの膜触媒は第一の膜触媒を含むことができ、イオン交換材料の第二の層は第一の膜触媒を含むことができる。1つの実施形態において、少なくとも1つの膜触媒は第一の膜触媒を含むことができ、イオン交換材料の少なくとも1つのさらなる層は第一の膜触媒を含むことができる。1つの実施形態において、少なくとも1つの膜触媒は、炭素粒子などの担体上に存在することができる。
【0022】
別の実施形態において、第一の多孔質層及び第二の多孔質層の一方又は両方を強化ポリマー電解質膜に取り付けることができる。例えば、第一の多孔質層及び第二の多孔質層の一方又は両方の一部を、イオン交換材料の少なくとも1つの層に部分的に埋め込むことができる。
【0023】
別の実施形態において、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜は、2つ以上のミクロ多孔質ポリマー構造を含むことができる。2つ以上のミクロ多孔質ポリマー構造は、第一のミクロ多孔質ポリマー構造及び第二のミクロ多孔質ポリマー構造を含むことができる。第一のミクロ多孔質ポリマー構造及び第二のミクロ多孔質ポリマー構造などの、隣接する一対のミクロ多孔質ポリマー構造は、イオン交換材料の層によって分離されうる。
【0024】
イオン交換材料の層は、0%RHで約0.5μm~約20μm、又は約0.5μm~約15μm、又は約0.5μm~約12μm、又は約0.5μm~約8μm、又は約0.5μm~約5μm、又は約2μm~約20μm、又は約2μm~約15μm、又は約2μm~約12μm、又は約2μm~約8μm、又は約2μm~約5μmの範囲の厚さを有することができる。
【0025】
複合電解質膜の1つの実施形態において、ミクロ多孔質ポリマー構造を閉塞性とするためにイオン交換材料が少なくとも部分的に埋め込まれたミクロ多孔質ポリマー構造は、0%RHで約0.5μm~約500μm、又は約0.5μm~約250μm、又は約0.5μm~約100μmの範囲の厚さを有する。
【0026】
複合電解質膜がレドックスフロー電池用である場合などの複合電解質膜の別の実施形態において、ミクロ多孔質ポリマー構造を閉塞性とするためにイオン交換材料が少なくとも部分的に埋め込まれたミクロ多孔質ポリマー構造は、約0.5μm~約30μm、又は約0.5μm~約21μm、又は約0.5μm~約10μm、又は約0.5μm~約8μm、又は約0.5μm~約6μm、又は約2μm~約30μm、又は約2μm~約21μm、又は約2μm~約10μm、又は約2μm~約8μm、又は約2μm~約6μmの範囲の0%RHでの厚さを有する。
【0027】
複合電解質膜が電解装置用である場合などの複合電解質膜の1つの実施形態において、ミクロ多孔質ポリマー構造を閉塞性とするためにイオン交換材料が少なくとも部分的に埋め込まれたミクロ多孔質ポリマー構造は、約30μm~約100μm、又は約30μm~約250μm、又は約30μm~約500μmの範囲の0%RHでの厚さを有する。
【0028】
複合電解質膜の別の実施形態において、ミクロ多孔質ポリマー構造はミクロ多孔質ポリマー膜であることができる。
【0029】
ミクロ多孔質ポリマー膜などのミクロ多孔質ポリマー構造は、少なくとも1つのフッ素化ポリマーを含むことができる。少なくとも1つのフッ素化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(EPTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、延伸ポリフッ化ビニリデン(ePVDF)、延伸ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(eEPTFE)又はそれらの混合物を含む群より選ばれることができる。好ましくは、フッ素化ポリマーは、過フッ素化延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)であることができる。
【0030】
代替的に又は追加的に、ミクロ多孔質ポリマー膜などのミクロ多孔質ポリマー構造は、少なくとも1つの炭化水素ポリマーを含むことができる。少なくとも1つの炭化水素ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン又はそれらの混合物を含む群より選ばれることができる。
【0031】
別の実施形態において、ミクロ多孔質ポリマー構造は、イオン交換材料がその中に少なくとも部分的に埋め込まれる前に、0%RHで約2μm~約150μm、又は約2μm~約100μm、又は約2μm~約70μm、又は約2μm~約40μm、又は約2μm~約20μmの範囲の厚さを有することができる。ミクロ多孔質ポリマー構造内にイオン交換材料を少なくとも部分的に埋め込むと、細孔が満たされて閉塞されるにつれてミクロ多孔質ポリマー構造が緻密化されるため、ミクロ多孔質ポリマー構造の厚さが減少することは明らかである。
【0032】
別の実施形態において、イオン交換材料が少なくとも部分的に埋め込まれる前のミクロ多孔質ポリマー構造は、約0.5g/m2~約100g/m2、又は0.5g/m2~約30g/m2、又は約0.5g/m2~約21g/m2、又は約0.5g/m2~約10g/m2、又は約0.5g/m2~約8g/m2、又は約0.5g/m2~約6g/m2、又は約2g/m2~約30g/m2、又は約2g/m2~約21g/m2、又は約2g/m2~約10g/m2、又は約2g/m2~約8g/m2、又は約2g/m2~約6g/m2、又は約30g/m2~約100g/m2、又は約30g/m2~約80g/m2、又は約30g/m2~約60g/m2の範囲の面積当たりの質量を有することができる。
【0033】
複合電解質膜の別の実施形態において、イオン交換材料は少なくとも1つのアイオノマーを含む。好ましくは、少なくとも1つのアイオノマーはプロトン伝導性ポリマーを含む。プロトン伝導性ポリマーは、ペルフルオロスルホン酸を含むことができる。
【0034】
複合電解質膜の別の実施形態において、少なくとも1つのアイオノマーは、相対湿度0%で約1.9g/cc以上の密度を有する。
【0035】
複合電解質膜の別の実施形態において、イオン交換材料の平均当量体積は約240cc/モル当量~約1000cc/モル当量、又はイオン交換材料の平均当量体積は約240cc/モル当量~約650cc/モル当量、又はイオン交換材料の平均当量体積は約240cc/モル当量~約475cc/モル当量、又はイオン交換材料の平均当量体積は約350cc/モル当量~約475cc/モル当量である。
【0036】
別の実施形態において、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜のミクロ多孔質ポリマー構造は、イオン交換材料内に部分的に埋め込まれている。例えば、ミクロ多孔質ポリマー構造は、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜の第一の表面、第二の表面、又は両方の表面に最も近い非閉塞部分を有することができる。非閉塞部分は、いかなるイオン交換材料も含まないミクロ多孔質ポリマー構造の部分であることができる。あるいは、非閉塞部分は、ミクロ多孔質ポリマー構造の内面へのイオン交換材料のコーティングを含むが、ミクロ多孔質ポリマー構造の外面にはイオン交換材料を含まないミクロ多孔質ポリマー構造の部分であることができる(すなわち、複合膜は非強化イオン交換材料の層を含まないが、ミクロ多孔質ポリマー構造の内部フィブリルなどの内部空隙の表面をコーティングするイオン交換材料を含むことができる)。換言すれば、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜は、対向する外面の一方又は両方に、バターコートとしても知られるイオン交換材料の表面層を含まない。
【0037】
1つの実施形態において、強化ポリマー電解質膜は、0%RHで2マイクロメートル~500マイクロメートルの範囲の厚さを有することができる。
【0038】
別の実施形態において、強化ポリマー電解質膜は、0%RHで4マイクロメートル~30マイクロメートルの範囲の厚さを有する。
【0039】
複合電解質膜の別の実施形態において、複数の多孔質層のそれぞれは、織物材料及び不織布材料から独立して選ばれることができる。不織布材料の例としては、メッシュ、編物、紙、フェルト、マット及びクロスなどが挙げられる。より好ましくは、複数の多孔質層は、からみ織りを有する織物材料などの織物材料である。このような織物材料及び不織布材料は、繊維又は繊維材料、好ましくは繊維ポリマー又は金属ワイヤもしくは金属合金ワイヤから作製されうる。複数の多孔質層は、金属スクリムなどの金属メッシュであることができる。
【0040】
好ましくは、複数の多孔質層のうちの多孔質層、例えばそのような層を形成する繊維又は繊維材料は、少なくとも1つのフッ素化ポリマーを含むことができる。好ましくは、フッ素化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(EPTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はそれらの混合物を含むことができる。より好ましくは、フッ素化ポリマーはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。別の実施形態において、複数の多孔質層のうちの多孔質層、例えばそのような層を形成する繊維材料は、炭化水素ポリマーを含むことができる。好ましくは、炭化水素ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン又はそれらの混合物を含むことができる。別の実施形態において、複数の多孔質層のうちの多孔質層はガラス繊維を含むことができる。別の実施形態において、複数の多孔質層のうちの多孔質層はセラミック材料を含むことができる。好ましくは、セラミック材料は、シリカ、ジルコニア、アルミナ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ホウ素、酸化ナトリウム、酸化カリウム又はそれらの任意の混合物を含むことができる。
【0041】
別の実施形態において、複数の多孔質層のうちの多孔質層の細孔サイズは、好ましくは100μm~2000μm、又は500μm~1500μmの範囲内であることができる。
【0042】
複合電解質膜の別の実施形態において、前記複数の多孔質層のそれぞれは、0%RHで約15μm~約500μm、又は約15μm~約250μm、又は約15μm~約200μm、又は約15μm~約150μm、又は約15μm~約100μm、又は約15μm~約50μm、又は約30μm~約500μm、又は約30μm~約250μm、又は 約30μm~約150μm、又は約30μm~約100μm、又は約30μm~約50μm、又は約50μm~約500μm、又は約50μm~約250μm、又は約50μm~約200μm、又は約50μm~約150μm、又は約50μm~約100μmの範囲の厚さを有することができる。
【0043】
複合電解質膜の別の実施形態において、前記複数の多孔質層のそれぞれは、2.99cm2の開口面積に対して12ミリバールの差圧で6000リットル/時を超える空気透過率を有することができる。空気透過率は、式s2*100/(C1*C2)(式中、sは開口部の辺の長さであり、C1及びC2は開口部の垂直及び水平間隔である)から測定することができる。
【0044】
複合電解質膜の別の実施形態において、前記複数の多孔質層のそれぞれは、0.80~0.98の開口面積多孔度を有することができる。好ましくは、前記複数の多孔質層のそれぞれは、-0.93~0.97の開口面積多孔度を有する。開口面積多孔度は、ImageJ画像分析などの画像分析によって測定することができる。
【0045】
複数の多孔質層のそれぞれは、非導電性多孔質層であることが好ましい。複数の多孔質層は、導電性材料を含まなくてよい。
【0046】
複合電解質膜の別の実施形態において、複合電解質膜、すなわち少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜及び複数の多孔質層などは、0%RHで約30μm~約1500μm、又は約30μm~約1250μm、又は約30μm~約1100μm、又は約30μm~約800μm、又は約30μm~約500μm、又は約30μm~約300μm、又は約30μm~約250μm、又は約30μm~約150μm、又は約60μm~約1500μm、又は約60μm~約1250μm、又は約60μm~約1100μm、又は約60μm~約800μm、又は約60μm~約500μm、又は約60μm~約300μm、又は約60μm~約250μm、又は約60μm~約150μm、又は約100μm~約1500μm、又は約100μm~約1250μm、又は約100μm~約1100μm、又は約100μm~約800μm、又は約100μm~約500μm、又は約100μm~約300μm、又は約100μm~約250μm、又は約100μm~約150μmの範囲の厚さを有することができる。
【0047】
複合電解質膜の別の実施形態において、複合電解質膜は一体構造である。例えば、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜は、複数の多孔質層に接着されうる。例えば、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜は、ミクロ多孔質ポリマー構造の外面上にイオン交換材料の層を含むことができ、複数の多孔質層のうちの1つは、層又はイオン交換材料中に部分的に埋め込まれていることができる。
【0048】
複合電解質膜の別の実施形態において、複合電解質膜のプロトン面積比抵抗正規化引張強度とも呼ばれる、プロトン抵抗正規化引張強度は、≧2500MPa/(オーム・cm2)であるか、又は、≧3500MPa/(オーム・cm2)であるか、又は≧4000MPa/(オーム・cm2)である。
【0049】
別の実施形態において、複合電解質膜は、少なくとも517kPa(75psi)、又は好ましくは少なくとも689kPa(100psi)、又はより好ましくは少なくとも758kPa(110psi)、又はさらにより好ましくは少なくとも862kPa(125psi)の破裂圧力を有する。
【0050】
別の実施形態において、複合電解質膜は、複合電解質膜の1つ以上の外面、例えば、複合電解質膜の第一の外面及び第二の反対側の外面の一方又は両方に取り付けられた少なくとも1つの除去可能な支持層をさらに含むことができる。
【0051】
第二の態様において、電気化学デバイス用の膜電極接合体は提供され、この膜電極接合体は、
第一の電極を含む少なくとも1つの電極、及び、
前記少なくとも1つの電極に隣接する、第一の態様による複合電解質膜であって、前記第一の多孔質層が前記第一の電極と前記少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜との間にあるようになっている、複合電解質膜、
を含む。
【0052】
1つの実施形態において、少なくとも1つの電極は第二の電極を含み、第二の多孔質層は、第二の電極と強化ポリマー電解質膜との間にある。
【0053】
別の実施形態において、複合電解質膜は少なくとも1つの電極に取り付けられる。別の実施形態において、複合電解質膜は少なくとも1つの電極に対してプレスされる。
【0054】
別の実施形態において、少なくとも1つの電極は繊維又は繊維材料を含む。繊維又は繊維材料は導電性であることができる。例えば、少なくとも1つの電極は、炭素繊維又はドープされた炭素繊維を含むことができる。炭素繊維又はドープされた炭素繊維は、約8μm~約30μmの直径を有することができる。好ましくは、ドープされた炭素繊維は、N、P、S又はBを含み、そしてそれらの混合物を含む。
【0055】
別の実施形態において、少なくとも1つの電極は、フェルト、紙、マット又は織物材料から選ばれる。フェルト、紙、マット又は織物材料は電子伝導性であることができる。
【0056】
別の実施形態において、少なくとも1つの電極は、少なくとも1つの電極触媒を含む電極触媒層を含む。好ましくは、少なくとも1つの電極触媒は炭素粒子上に担持される。典型的に、電極触媒層は、担体上の少なくとも1つの電極触媒及びイオン交換材料を含む。好ましくは、少なくとも1つの電極触媒は、Pt、Ir、Ni、Co、Pd、Ti、Sn、Ta、Nb、Sb、Pb、Mn、Ru及びFe、それらの酸化物、及びそれらの混合物のうちの1つ以上を含む。電極触媒層は、電子伝導性であることができる。幾つかの実施形態において、第一の電極は、少なくとも1つの電極触媒を含む電極触媒層を含む。
【0057】
別の実施形態において、電極触媒層は、第一の多孔質層の第一の表面が強化ポリマー電解質膜の第一の表面と接触するように、そして第一の多孔質層の第二の表面が電極触媒層の第一の表面に接触するように、第一の表面及び反対側の第二の表面を有する。
【0058】
代替実施形態において、第一の電極は、第一の表面及び反対側の第二の表面を有し、第一の多孔質層の第一の表面は、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜の第一の表面に接触しており、そして第一の多孔質層の第二の表面は第一の電極の第一の表面に接触している。
【0059】
別の実施形態において、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜の第一の表面は、膜触媒を含むイオン交換材料の層を含む。
【0060】
このような膜電極接合体は、電解装置膜電極接合体、レドックスフロー電池膜電極接合体、又は燃料電池膜電極接合体であることができる。
【0061】
別の態様において、本明細書に記載のとおりの複合電解質膜、又は本明細書に記載のとおりの燃料電池膜電極接合体を含む、燃料電池が提供される。
【0062】
別の態様において、本明細書に記載のとおりの複合膜、又は本明細書に記載のとおりのレドックスフロー電池膜電極接合体を含む、レドックスフロー電池が提供される。
【0063】
別の態様において、本明細書に記載のとおりの複合膜、又は本明細書に記載のとおりの電解装置膜電極接合体を含む、電解装置が提供される。
【0064】
本開示は、上述したように、既知のPEMの低い耐穿刺性の問題に対処する。驚くべきことに、強化ポリマー電解質膜を複数の多孔質層と組み合わせて利用すると、低いプロトンシート抵抗を維持しながら耐穿刺性が増加することが見出された。驚くべきことに、この強化の増加は、既知のPEMと比較して、使用するイオン交換材料の量を増やさずに達成でき、使用するイオン交換材料の量を減らしても達成できる。
【0065】
穿刺に対する耐性が高いPEMを提供することにより、電池組み立て時に複合膜に穿刺があった場合に発生する電気的短絡による故障の可能性が減少する。また、使用中の短絡の発生を減らすことで、そのような膜を使用して製造されたデバイスの寿命を延ばすこともできる。さらに、PEM構成要素の厚さを増やさずに、他の電気化学デバイス構成要素による穿刺に対して高い耐性を備えた膜を提供することで、同等の強化率を有する薄い膜に必要なアイオノマーの含有量が少なくなるため、膜のイオン伝導度を高く保つことができ、製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図面において、本明細書に開示される複合電解質膜の同一又は同等の特徴には同一の参照番号が使用されている。
【0067】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態による複合電解質膜の断面の概略図を示す。複合電解質膜は、強化ポリマー電解質膜と、該強化ポリマー電解質膜の2つの対向する外面のそれぞれに1つずつ配置された2つの多孔質層とを含む。強化ポリマー電解質膜は、ミクロ多孔質ポリマー構造及びイオン交換材料を含み、ここで、イオン交換材料はミクロ多孔質ポリマー構造内に少なくとも部分的に埋め込まれて、ミクロ多孔質ポリマー構造を閉塞性とする。
【0068】
【
図2】
図2は、本開示の実施形態による複合電解質膜の断面の概略図を示す。複合電解質膜は、イオン交換材料の層がミクロ多孔質ポリマー構造の2つの対向する表面のそれぞれに存在することを除いて、
図1の複合電解質膜と同様の構造を有する。
【0069】
【
図3】
図3は、別の実施形態による複合電解質膜の断面の概略図を示す。複合膜は、ミクロ多孔質ポリマー構造の2つの対向する表面のうちの1つの表面上にあるイオン交換材料の層のうちの1つの層の上にさらなるイオン交換材料の層が存在することを除いて、
図2の複合電解質膜と同様の構造を有する。
【0070】
【
図4】
図4は、本開示の実施形態による複合電解質膜の断面の概略図を示す。複合電解質膜は、イオン交換材料の層がミクロ多孔質ポリマー構造の2つの対向する表面のそれぞれの上に存在し、これらのイオン交換材料の層のうちの1つの層が少なくとも1つの触媒をさらに含むことを除いて、
図1の複合電解質膜と同様の構造を有する。
【0071】
【
図5】
図5は、別の実施形態による複合電解質膜の断面の概略図を示す。複合電解質膜は、少なくとも1つの触媒を含むイオン交換材料の層が、ミクロ多孔質ポリマー構造の2つの対向する表面のうちの1つの表面の上のイオン交換材料の層のうちの1つの層の上に存在することを除いて、
図2の複合電解質膜と同様の構造を有する。
【0072】
【
図6】
図6は、別の実施形態による、第一の電極層及び第二の電極層ならびに複合電解質膜とを含む膜電極接合体の断面の概略図を示す。複合電解質膜は、
図2の複合電解質膜と同様の構造を有する。
【0073】
【
図7】
図7は、本明細書に開示されるとおりの多孔質層としてスクリムを有する複合電解質膜の平均短絡(穿刺)圧力を、多孔質層のない強化ポリマー電解質膜及び非強化ポリマー電解質膜と比較した棒グラフを示す。
【0074】
【
図8】
図8は、本明細書に開示されるとおりの多孔質層としてスクリムを有する複合電解質膜の破裂圧力を、多孔質層のない強化ポリマー電解質膜及び非強化ポリマー電解質膜と比較した棒グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本明細書で使用されるときに、用語「一体構造」は、複合電解質膜又は他の構築物に関して使用されるときに、特に明記しない限り、複合電解質膜又は他の構築物の個々の構成要素は、個々の構成要素のいずれにも損傷又は不可逆的な変形を起こすことなく分離することができないことを意味する。
【0076】
本明細書で使用されるときに、イオン交換材料は、ミクロ多孔質ポリマー構造内に部分的又は完全に埋め込まれていることができる。
【0077】
本明細書で使用されるときに、ミクロ多孔質ポリマー構造の一部は、その部分の内部体積が、例えば10体積%未満などの低体積の空隙を特徴とする構造を有し、そして10000秒を超えるガーレー数で示されるような、ガスに対して非常に不透過性であるときに、「閉塞性」又は「閉塞された」と称される。逆に、ミクロ多孔質ポリマー構造の一部の内部体積が、その部分の内部体積が、例えば10体積%以上などの大きな体積の空隙を特徴とし、そして10000秒以下のガーレー数で示されるような、ガスに対して透過性であるときに、「非閉塞性」又は「閉塞されていない」と呼ばれる。
【0078】
ミクロ多孔質ポリマー構造の一部又は全部は、埋め込まれたイオン交換材料によって閉塞性とされることができる。ミクロ多孔質ポリマー構造の一部のみが閉塞性であるときに、この部分は、ミクロ多孔質ポリマー構造に隣接する又はミクロ多孔質ポリマー構造の外面にある層などの、ミクロ多孔質ポリマー構造の層であることが好ましい。
【0079】
本明細書で使用されるときに、「隣接する」という用語は、ミクロ多孔質ポリマー構造、多孔質層又はイオン交換材料の層など、例えば、層の平面に垂直な軸に沿って見たときに、それらの間に同じタイプの要素を持たない2つの隣接する要素を意味することが意図されている。したがって、隣接する一対のミクロ多孔質ポリマー材料層は、それらの間にミクロ多孔質ポリマー材料の介在層を有しない2つの隣接するミクロ多孔質ポリマー材料層である。しかしながら、同じタイプのそのような隣接する要素は、異なるタイプの1つ以上の要素によって分離されることができる。例えば、隣接する一対のミクロ多孔質ポリマー材料層は、1つ以上のイオン交換材料層及び/又は1つ以上の多孔質層によって分離されうる。
【0080】
既知の複合膜と比較して改善された短絡圧力及び/又は破裂圧力を示す、燃料電池、電解装置及びレドックスフロー電池などの電気化学デバイス用の複合電解質膜を本明細書に開示する。このような改善された短絡圧力及び/又は破裂圧力は、デバイス組み立て時の電気化学デバイスの他の構成要素に対する複合膜の耐穿刺性が改善された結果であると考えられる。理論に拘束されることを望まないが、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜の対向する側に配置された、それぞれが5マイクロメートル~5000マイクロメートルの範囲の細孔サイズを有する複数の細孔を有する複数の多孔質層を有する複合電解質膜を提供することは、非強化ポリマー電解質膜、強化ポリマー電解質膜、又は非強化ポリマー電解質膜と多孔質層との組み合わせに比べて、複合電解質膜の耐突刺性の向上に有意に寄与する。
【0081】
さらに、強化ポリマー電解質と多孔質層の組み合わせは、非強化ポリマー電解質膜、強化ポリマー電解質膜、又は、非強化ポリマー電解質膜と多孔質層との組み合わせと比較して、短絡圧力及び破裂圧力において予期せぬ相乗効果のある改善をもたらす。
【0082】
さらに、少なくとも2つの多孔質層が強化ポリマー電解質膜の対向する外面上に存在するときに、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜のミクロ多孔質ポリマー構造の総含有量が増加すると、複合電解質膜の耐穿刺性がさらに向上する。理論に拘束されることを望むものではないが、任意の所与のミクロ多孔質ポリマー含有量及び複合電解質膜の厚さについて、複合電解質膜内の少なくとも2つの強化ポリマー層の間でミクロ多孔質ポリマー構造を分離することにより、複合膜の耐穿刺性をさらに改善することができる。
【0083】
幾つかの実施形態において、電気化学デバイス用の複合電解質膜が提供され、
a)第一の表面及び反対側の第二の表面を有する少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜、ここで、前記少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜は、
ミクロ多孔質ポリマー構造及びイオン交換材料を含み、前記イオン交換材料は、前記ミクロ多孔質ポリマー構造内に少なくとも部分的に埋め込まれて、前記ミクロ多孔質ポリマー構造を閉塞性とする、及び、
b)第一の多孔質層及び第二の多孔質層を含む複数の多孔質層、
を含み、
前記第一の多孔質層は、前記第一の多孔質層の第一の表面が前記少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜の第一の表面に隣接するように、第一の表面と、その反対側の第二の表面とを有し、前記第一の多孔質層は、5マイクロメートル~5000マイクロメートルの範囲にある細孔サイズを有する複数の細孔を有し、そして前記複数の細孔は前記第一の多孔質層の第一の表面と第二の表面との間に延在する1つ以上の通路を提供する。
【0084】
実施形態は、イオン交換材料を含む強化ポリマー電解質膜と、異なる密度のミクロ多孔質ポリマー構造との間の組成の有意義な比較方法を提供するために、体積ベースの値を使用して説明される。
【0085】
強化ポリマー電解質膜内のミクロ多孔質ポリマー構造の含有量の意味のある値を提供すると同時に、ミクロ多孔質ポリマー構造の固有分子量/マトリックス骨格密度から独立してこれらの値を提供するために、実施形態は、面積当たりの正規化された総質量の値を使用して説明されてきた。これは、幾つかの実施形態が強化ポリマー電解質膜層内に異なるミクロ多孔質ポリマー構造を含む可能性があることを考慮に入れている。強化ポリマー電解質膜内のミクロ多孔質ポリマー構造の含有量は、面積当たりの質量の値で表すこともでき、これは、単一タイプのミクロ多孔質ポリマー構造を含む実施形態において適切な測定値である。
【0086】
ミクロ多孔質ポリマー構造は、複合ポリマー電解質膜の総体積を基準として少なくとも約20体積%の量で存在することができる。
【0087】
本開示で使用される様々な定義を以下に示す。
【0088】
本明細書で使用されるときに、「イオン交換材料」及び「アイオノマー」という用語は、カチオン交換材料、アニオン交換材料、又はカチオン交換能力とアニオン交換能力の両方を含むイオン交換材料を指す。イオン交換材料の混合物も使用することができる。イオン交換材料は過フッ素化又は炭化水素ベースであることができる。適切なイオン交換材料としては、例えば、ペルフルオロスルホン酸ポリマー、ペルフルオロカルボン酸ポリマー、ペルフルオロホスホン酸ポリマー、スチレン系イオン交換ポリマー、フルオロスチレン系イオン交換ポリマー、ポリアリールエーテルケトンイオン交換ポリマー、ポリスルホンイオン交換ポリマー、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミド、(フルオロアルキルスルホニル)(フルオロスルホニル)イミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ジビニルベンゼン、ポリマーを含む又は含まない金属塩、及びそれらの混合物が挙げられる。例示的な実施形態において、イオン交換材料は、テトラフルオロエチレンとペルフルオロスルホニルビニルエステルとを共重合させてプロトン形態に転化させることによって作製されたペルフルオロスルホン酸(PFSA)ポリマーを含む。
【0089】
本明細書で使用されるときに、イオン交換材料又はアイオノマーの「当量重量」は、1つのスルホン酸基当たりのイオン交換材料又はアイオノマー中のポリマーの重量(分子量)を指す。したがって、当量が低いほど、酸含有量が多いことを示す。イオン交換材料又はアイオノマーの当量重量(EW)は、そのイオン交換材料又はアイオノマーが0%RH(相対湿度)でプロトンの形であり、不純物が無視できる場合のEWを指す。「イオン交換容量」という用語は、当量重量の逆数(1/EW)を指す。
【0090】
本明細書で使用されるときに、イオン交換材料又はアイオノマーの「当量体積」は、1つのスルホン酸基当たりのイオン交換材料又はアイオノマーの体積を指す。イオン交換材料又はアイオノマーの当量体積(EV)は、そのアイオノマーが純粋で、相対湿度0%でプロトンの形であり、不純物が無視できる場合のEVを指す。
【0091】
本明細書で使用されるときに、「ミクロ多孔質ポリマー構造」という用語は、イオン交換材料又はアイオノマーを支持するためにイオン交換材料又はアイオノマーが埋め込まれ、得られる強化ポリマー電解質膜に構造一体性及び耐久性を付与するポリマーマトリックスを指す。幾つかの例示的な実施形態において、ミクロ多孔質ポリマー構造は、ノード及びフィブリル構造を有する延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含む。他の例示的な実施形態において、ミクロ多孔質ポリマー構造は、滑らかな平坦な表面、高い見掛け密度、及び明確に規定された細孔サイズを有するトラックエッチングされたポリカーボネート膜を含む。
【0092】
複合膜
【0093】
図1~5に示すように、複合電解質膜は、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜及び複数の多孔質層を含むことができる。これらの図に示されるように、強化ポリマー電解質膜110を含む複合電解質膜100が提供され、各強化ポリマー電解質膜110は、ミクロ多孔質ポリマー構造120と、該強化ポリマー電解質膜のミクロ多孔質ポリマー構造中に埋め込まれたイオン交換材料125(例えば、アイオノマー)とを含む。すなわち、強化ポリマー電解質膜110のミクロ多孔質ポリマー構造120のそれぞれは、イオン交換材料125が少なくとも部分的に吸収される。イオン交換材料125は、ミクロ多孔質ポリマー構造120のミクロ多孔質ポリマー構造に実質的に含浸して、その内部体積を実質的に閉塞性とする(すなわち、内部体積は、空隙の体積が小さく、ガスに対して高度に不透過性であることを特徴とする構造を有する)。例えば、強化ポリマー電解質膜110のミクロ多孔質ポリマー構造120の内部体積の90%超をイオン交換材料125で充填することによって、実質的な閉塞が生じ、膜は10000秒を超えるガーレー数によって特性化されることになる。イオン交換材料125は、強化ポリマー電解質膜110のミクロ多孔質ポリマー構造120の内面、例えば、ミクロ多孔質ポリマー構造のフィブリル及び/又はノードにしっかりと接着されうる。
【0094】
図1の実施形態において、ミクロ多孔質ポリマー構造120の対向する第一の表面及び第二の表面は、強化ポリマー電解質膜110の対向する第一の表面及び第二の表面112、114を提供する。
【0095】
図2~
図5に示される幾つかの実施形態において、イオン交換材料は、強化ポリマー電解質膜110のミクロ多孔質ポリマー構造120に埋め込まれることに加えて、1つ以上の追加層126、127、128(例えば、「バターコート(BC)」とも呼ばれる)として、ミクロ多孔質ポリマー構造の対向する外面の一方又は両方の上に設けられる。ミクロ多孔質ポリマー構造に埋め込まれたイオン交換材料の部分は、イオン交換材料の1つ以上の追加の層にアンカー効果を提供する。
【0096】
他の実施形態において、イオン交換材料は、ミクロ多孔質ポリマー構造の外面の一方にのみ設けられ、他方の表面には設けられない(図示せず)。
【0097】
他の実施形態において、イオン交換材料は、ミクロ多孔質ポリマー構造120に埋め込まれた状態でのみ提供され、すなわち、追加のバターコートなど、イオン交換材料の追加の層なしに提供される(
図1)。それにもかかわらず、複合電解質膜100は、複合電解質膜100の総体積の20%超を占めるミクロ多孔質ポリマー構造を特徴とすることができ、この総体積には、追加の層126、127、128が存在する場合に、その体積も含まれる。
【0098】
図1による実施形態において、第一の強化ポリマー電解質膜110は、イオン交換材料125を第一のミクロ多孔質ポリマー構造120内に埋め込むことによって形成されうる。例えば、イオン交換材料は、第一のミクロ多孔質ポリマー構造120の第一の側に吸収されて、第一の強化ポリマー電解質膜110を形成しうる。これらの実施形態において、単一強化ポリマー電解質膜110のみが存在する。
【0099】
図2~
図5による実施形態において、イオン交換材料は、
図1と同様の方法で第一のミクロ多孔質ポリマー構造120内に埋め込まれている。しかしながら、
図2~5の実施形態において、強化ポリマー電解質膜110は、ミクロ多孔質ポリマー構造120の第一の外面及び第二の外面上に配置されたイオン交換材料の2つのバターコート126、127を有する。バターコート、すなわちイオン交換材料の第一の層及び第二の層、126、127は、ミクロ多孔質ポリマー構造120に埋め込まれたイオン交換材料と同じイオン交換材料を含むことができる。あるいは、バターコート126、127の一方又は両方のイオン交換材料は、ミクロ多孔質ポリマー構造120内に埋め込まれたイオン交換材料と異なっていてもよい。2つのバターコート126、127のイオン交換材料は同じであっても又は異なっていてもよい。
図2及び
図4の実施形態において、イオン交換材料の第一の層及び第二の層126、127は、強化ポリマー電解質膜110の対向する第一の表面及び第二の表面112、114をそれぞれ形成する。
【0100】
図1~
図5の実施形態において、第一の多孔質層130及び第二の多孔質層140を含む複数の多孔質層が提供され、第一の多孔質層及び第二の多孔質層は、それぞれ強化ポリマー電解質膜110の対向する第一の外面及び第二の外面上に位置する。第一の多孔質層及び第二の多孔質層130、140は、ミクロ多孔質ポリマー構造120の第一の表面及び第二の表面の細孔内にアイオノマーが存在することにより、又はイオン交換材料の層126、127(
図2~5)にアイオノマーが存在することにより、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜110に接着することができる。
【0101】
したがって、第一の多孔質層130は、強化ポリマー電解質膜110の第一の表面上に設けられる。第二の多孔質層140は、強化ポリマー電解質膜110の第二の表面上に設けられ、強化ポリマー電解質膜の第二の表面は第一の表面の反対側である。これらの実施形態において、第一の多孔質層130及び第二の多孔質層140は、緯糸繊維及び経糸繊維を含む織物材料などの織物材料であることができる。からみ織りは、織物材料のそのような好ましい例の1つである。織物材料を形成する繊維は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン又はそれらの混合物などの炭化水素ポリマー、又は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(EPTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はそれらの混合物などのフッ素化ポリマーを含むことができる。第一の多孔質層130及び第二の多孔質層140の織物材料は、同じであっても又は異なっていてもよい。
【0102】
図2~
図5の実施形態において、強化ポリマー電解質膜110は、ミクロ多孔質ポリマー構造120の対向する第一の表面及び第二の表面上にイオン交換材料の第一の層及び第二の層126、127を含む。第一の多孔質層及び第二の多孔質層130、140はイオン交換材料の第一の層及び第二の層126、127にそれぞれ部分的に埋め込まれることが好ましい。第一の多孔質層及び第二の多孔質層130、140をイオン交換材料の非強化層126、127内に部分的に埋め込むことにより、強化ポリマー電解質膜110の外面112、114に第一の多孔質層及び第二の多孔質層130、140を取り付けることができる。この取り付けにより複合電解質膜が一体構造となる。この埋め込みは、強化ポリマー電解質膜110と第一の多孔質層及び/又は第二の多孔質層130、140を圧力下で一緒にプレスすることによって達成することができる。これは、イオン交換材料の非強化層を軟化させるために、及び/又はイオン交換材料の非強化層が形成されているときに、高温下で実行することができる。
【0103】
図には示されていないが、さらなる実施形態において、
図1の複合電解質膜には、第一のミクロ多孔質ポリマー構造と第一の多孔質層との間にイオン交換材料の層を設けることができる。したがって、強化ポリマー電解質膜は、イオン交換材料が部分的に埋め込まれたミクロ多孔質ポリマー構造を含み、イオン交換材料の層がミクロ多孔質ポリマー構造上に設けられ、強化ポリマー電解質膜の第一の表面を形成する。第一の多孔質層は、強化ポリマー電解質膜のこの第一の表面上にある。第一の多孔質層の一部は、イオン交換材料の非強化層中に埋め込まれることができる。このようにして、1つの強化ポリマー電解質膜及び第一の多孔質層を含む一体構造が形成される。
【0104】
図示されていないが、図示されたいずれかの構築物による実施形態において、複合電解質膜は支持層上に設けられることができる。支持層は、バッカー層及び剥離層を含むことができる。バッカー層は、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル層であることができる。剥離層は、シクロオレフィンコポリマー(COC)層であることができる。幾つかの実施形態において、複合電解質膜は、膜電極接合体(MEA)に組み込まれる前に、支持層から剥離(又は分離)されることができる。
【0105】
図2~
図5による実施形態において、イオン交換材料の1つ以上の追加層126、127を、第一のミクロ多孔質ポリマー構造120の対向する外面の一方又は両方の上に設けることができる。好ましい実施形態において、イオン交換材料の1つ以上の追加層は、 2層以上の層、例えば2つの非強化イオン交換材料の層である、第一のミクロ多孔質ポリマー構造の第一の外面上に配置された第一の層126及び第一のミクロ多孔質ポリマー構造の第二の外面上に配置された第二の層127(すなわち、バターコート)を含む。追加のイオン交換材料層(すなわち、バターコート)126、127、128のイオン交換材料は、同じであっても又は異なっていてもよく、そして第一のミクロ多孔質ポリマー構造内に埋め込まれたイオン交換材料と同じであっても又は異なっていてもよい。
【0106】
図2~5による実施形態において、第一のイオン交換材料は、第一のイオン交換材料をミクロ多孔質ポリマー構造の第一の外面に吸収させることによって、第一の強化ポリマー電解質膜110のミクロ多孔質ポリマー構造120に少なくとも部分的に埋め込まれることができる。これらの実施形態において、第一の強化ポリマー電解質膜110は、ミクロ多孔質ポリマー構造120の対向する第一の外面及び第二の外面のそれぞれの上に配置されたイオン交換材料の第一の層及び第二の層126、127を有する。イオン交換材料のこれらの2つの層は第二のイオン交換材料及び第三のイオン交換材料をそれぞれ含むことができる。イオン交換材料のこれらの層は、第一のイオン交換材料と同じイオン交換材料を含み、その結果、第一のイオン交換材料、第二のイオン交換材料及び第三のイオン交換材料が同じであり、又は、第一のイオン交換材料と異なっていることができ、その結果、第二のイオン交換材料及び第三のイオン交換材料が第一のイオン交換材料と異なる。さらに、非強化イオン交換層を形成する第二のイオン交換材料及び第三のイオン交換材料は、同じであっても又は異なっていてもよい。さらに、イオン交換材料の第一の層及び第二の層126、127は、同じ厚さ又は異なる厚さを有することができる。
【0107】
幾つかの実施形態において、強化ポリマー電解質膜は、ミクロ多孔質ポリマー構造の対向する外面の一方又は両方の上にイオン交換材料の2つの外層を有することができる。例えば、イオン交換材料128のさらなる層は膜触媒150を含み、それによって
図5に示されるような触媒層を形成することができる。代替実施形態において、触媒は、イオン交換材料の第一の層及び第二の層の一方又は両方に存在することができる。
図4の実施形態は、第一のイオン交換層126内に存在し、それによって触媒層を形成する膜触媒150を示す。これらの実施形態は、膜電極接合体に関連して以下でより詳細に説明される。
【0108】
特に示されていないが、本明細書に記載されるとおりの複合膜の他の実施形態は、それぞれがミクロ多孔質ポリマー構造と、該ミクロ多孔質ポリマー材料内に少なくとも部分的に埋め込まれたイオン交換材料とを含む2つ以上の強化ポリマー電解質膜を含むことができる。幾つかの実施形態において、2つ以上の強化ポリマー電解質膜は、最も外側のミクロ多孔質ポリマー構造の外面の1つにイオン交換材料の1つだけの外層を有することができる。幾つかの実施形態において、2つ以上の強化ポリマー電解質膜は、最も外側のミクロ多孔質ポリマー構造の外面の1つにイオン交換材料の1つだけの外層を有することができ、また隣接する一対のミクロ多孔質ポリマー材料層の間にイオン交換材料の1つ以上の内層を有することができる。
【0109】
幾つかの実施形態において、2つ以上の強化ポリマー電解質膜は、各最外ミクロ多孔質ポリマー構造の対向する外面上にイオン交換材料の2つの外層を有することができる。幾つかの実施形態において、2つ以上の強化ポリマー電解質膜は、各最外ミクロ多孔質ポリマー構造の対向する外面上にイオン交換材料の2つの外層を有することができ、また隣接するミクロ多孔質ポリマー材料層の間にイオン交換材料の1つ以上の内層を有することができる。
【0110】
幾つかの実施形態において、2つ以上の強化ポリマー電解質膜は、ミクロ多孔質ポリマー材料層のそれぞれの間に、イオン交換材料の1つ以上の内層、すなわちバターコートを有することができる。2つ以上の強化ポリマー電解質膜は、2つの最も外側のミクロ多孔質ポリマー構造の外面にイオン交換材料の層を有していても、又は有していなくてもよい。
【0111】
複合ポリマー電解質の各強化ポリマー電解質膜は、同じであっても又は異なっていてもよい2つ(又はそれ以上)のミクロ多孔質ポリマー構造を含むことができる。2つ以上のミクロ多孔質ポリマー構造を含む特定の強化ポリマー電解質膜において、1つ以上の内部バターコートは隣接するミクロ多孔質ポリマー構造層の間に位置しうる。このような強化ポリマー電解質膜は、最外ミクロ多孔質ポリマー構造の一方の外面にイオン交換材料の1つの外層を有するか、又は最外ミクロ多孔質ポリマー構造の両方の外面にイオン交換材料の外層を有することができる。
【0112】
少なくとも2つのミクロ多孔質ポリマー構造を有する実施形態において、2つのミクロ多孔質ポリマー構造は異なっていることができる。複合膜構築物において異なるタイプのミクロ多孔質ポリマー構造を使用する原理は、本明細書に記載の任意の実施形態に適用することができる。例えば、第一の強化ポリマー電解質膜は、第一のミクロ多孔質ポリマー構造内に第一のイオン交換材料を少なくとも部分的に埋め込むことによって形成することができ、第二の強化ポリマー電解質膜は、第二のイオン交換材料を第二のミクロ多孔質ポリマー構造内に少なくとも部分的に埋め込むことによって形成することができる。これらの実施形態において、第一の強化ポリマー電解質膜層及び第二の強化ポリマー電解質膜は異なる。したがって、本明細書に記載の複合膜において、第一のミクロ多孔質ポリマー構造は、第二のミクロ多孔質ポリマー構造と同じであっても又は異なっていてもよい。第一のイオン交換材料は、第二のイオン交換材料と同じであっても又は異なっていてもよい。
【0113】
追加の実施形態において、強化ポリマー電解質膜110のミクロ多孔質ポリマー構造120の一部(例えば、ミクロ多孔質ポリマー構造の対向する外面近くの一方又は両方の領域)は、非閉塞部分(すなわち、内部体積が、高体積の空隙を特徴とする構造を有し、ガスに対して高い透過性である)、例えば、イオン交換材料を含まない、又は実質的に含まないミクロ多孔質ポリマー構造の非閉塞層を含むことができる。非閉塞部分又は層の位置は、ミクロ多孔質ポリマー構造の対向する外面近くの領域に限定されない。上で規定したように、非閉塞層は、強化ポリマー電解質膜のいずれか又はすべてのミクロ多孔質ポリマー構造の一部上に設けることができる。
【0114】
さらに他の実施形態において、非閉塞部分は、ミクロ多孔質ポリマー構造の内面に薄いノード及びフィブリルコーティングとして存在する少量のイオン交換材料を含むことができる。しかしながら、イオン交換材料の量は、ミクロ多孔質ポリマー構造を閉塞性にさせるのに十分に大きくなく、それによって非閉塞部分を形成することができる。
【0115】
互いに直接接触しうる第一のミクロ多孔質ポリマー構造及び第二のミクロ多孔質ポリマー構造を含む実施形態において、第一のミクロ多孔質ポリマー構造はイオン交換材料で完全に吸収され、閉塞層を形成することができる。しかしながら、第二のミクロ多孔質ポリマー構造は、大部分がイオン交換材料で吸収されるが、イオン交換材料で吸収されない、又は非閉塞的な部分又は層を含む。この非閉塞部分は、強化ポリマー電解質膜の外面に最も近い第二のミクロ多孔質ポリマー構造の層であることができる。本開示の関係において、「ほとんど吸収される」とは、ミクロ多孔質ポリマー構造がイオン交換材料で約90%閉塞されていることを意味することができる。他の同様の実施形態(図示せず)において、第一のミクロ多孔質ポリマー構造は、イオン交換材料が吸収されない、又は非閉塞性の部分又は層を含むことができ、一方、第二のミクロ多孔質ポリマー構造は、イオン交換材料が完全に吸収されて、閉塞層を形成することができる。第一のミクロ多孔質ポリマー構造の非閉塞部分又は層は、強化ポリマー電解質膜の外面に近くであることができる。
【0116】
さらに他の実施形態(図示せず)において、第一のミクロ多孔質ポリマー構造及び第二のミクロ多孔質ポリマー構造は両方とも、イオン交換材料が吸収されていない又は非閉塞の部分又は層を含むことができる。非閉塞部分又は層は、強化層の外面の1つの近くに配置されうる。部分的に吸収されたミクロ多孔質ポリマー構造は、イオン交換材料で約90%閉塞されうる。
【0117】
2つの隣接するミクロ多孔質ポリマー構造間に内部バターコートが存在しない実施形態において、2つの隣接するミクロ多孔質ポリマー構造は直接接触していることができる(すなわち、2つの隣接したミクロ多孔質ポリマー構造は約0μmの距離dだけ隔てられていることができる)。
【0118】
複合膜が2つの隣接するミクロ多孔質ポリマー構造間にイオン交換材料の1つ以上の内層を含む実施形態において、2つのミクロ多孔質ポリマー構造は距離dだけ分離されうる。距離dは、約1μm~約10μmであることができる。距離dは、約2μm~約8μmであることができる。距離dは、約4μm~約6μmであることができる。距離dは、約1μm~約5μmであることができる。距離dは、約5μm~約10μmであることができる。距離dは、約6μm~約8μmであることができる。距離dは、約1μm、又は約2μm、又は約3μm、又は約4μm、又は約5μm、又は約6μm、又は約7μm、又は約8μm、又は約9μm、又は約10μmであることができる。距離dは、2つの隣接するミクロ多孔質ポリマー構造の間に配置された非強化イオン交換材料の層(すなわち、内部バターコート)の厚さであることができる。
【0119】
ミクロ多孔質ポリマー構造
【0120】
複合電解質膜は、ミクロ多孔質ポリマー構造を含む少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜を含むことができる。例えば、複合電解質膜は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の強化ポリマー電解質膜を含むことができ、各膜はミクロ多孔質ポリマー構造を含む。
【0121】
少なくとも2つの強化ポリマー電解質膜が存在する1つの実施形態において、各膜は連続的であることができる。少なくとも2つの強化ポリマー電解質膜が存在する別の実施形態において、少なくとも2つの膜のそれぞれは不連続であることができる。
【0122】
適切なミクロ多孔質ポリマー構造は、複合電解質膜が使用される用途に大きく依存する。ミクロ多孔質ポリマー構造は、好ましくは、良好な機械的特性を有し、複合膜が使用される環境において化学的及び熱的に安定であり、含浸のためにイオン交換材料とともに使用されるいかなる添加剤にも耐性がある。
【0123】
本明細書で使用されるときに、用語「ミクロ多孔質」とは、肉眼では見えない細孔を有する構造を指す。様々な任意選択的な実施形態によれば、細孔は、0.01~100ミクロン、例えば、0.05~20ミクロン、又は0.1~1ミクロンの平均細孔サイズを有することができる。
【0124】
本明細書で使用されるときに、「ミクロ多孔質ポリマー構造」という用語は、イオン交換材料が内部に少なくとも部分的に埋め込まれる前に、0%RHで約0.5μm~約500μm、又は約2μm~約150μm、又は約2μm~約100μm、又は約2μm~約70μm、又は約2μm~約40μm、又は約2μm~約20μmの厚さを有し、約0.05μm~約20μm、例えば0.1μm~1μmの平均ミクロ細孔サイズを有する層を指すことが意図されている。
【0125】
電気化学用途のための強化ポリマー電解質膜110の適切なミクロ多孔質ポリマー構造120は、多孔質ポリマー材料を含むことができる。多孔質ポリマー材料は、フルオロポリマー、塩素化ポリマー、炭化水素、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスルホン、コポリエーテルエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリールエーテルケトン、ポリベンゾイミダゾール、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン-コ-ヘキサフルオロプロピレン)を含む群から選ばれることができる。幾つかの実施形態において、ミクロ多孔質ポリマー構造120は過フッ素化多孔質ポリマー材料を含む。過フッ素化多孔質ポリマー材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、延伸ポリフッ化ビニリデン(ePVDF)、延伸ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(eEPTFE)及びそれらの混合物を含む群から選ばれることができる。
【0126】
幾つかの実施形態において、ミクロ多孔質ポリマー構造は炭化水素材料を含む。炭化水素材料は、ポリエチレン、膨張ポリエチレン、ポリプロピレン、膨張ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、トラックエッチングされたポリカーボネート及びそれらの混合物を含む群から選ばれることができる。燃料電池用途に使用するのに適した過フッ素化多孔質ポリマー材料の例としては、米国特許第8,757,395号明細書の教示に従って製造されたePTFEが挙げられ、この特許はその全体が参照により本明細書に組み込まれ、W.L.Gore & Associates, Inc.(メリーランド州エルクトン)から様々な形態で市販されている。
【0127】
ミクロ多孔質ポリマー構造がePTFEを含む実施形態において、ミクロ多孔質ポリマー構造の面積当たりの総質量は、複合電解質膜の総面積に基づいて約0.5g/m2~約100g/m2、又は0.5g/m2~約30g/m2、又は約0.5g/m2~約21g/m2、又は約0.5g/m2~約10g/m2、又は約0.5g/m2~約8g/m2、又は約0.5~約6g/m2、又は約2g/m2~約30g/m2、又は約2g/m2~約21g/m2、又は約2g/m2~約10g/m2、又は約2g/m2~約8g/m2、又は約2g/m2~約6g/m2、又は約30g/m2~約100g/m2、又は約30g/m2~約80g/m2、又は約30g/m2~約60g/m2であることができる。例えば、ミクロ多孔質ポリマー構造がePTFEを含む実施形態において、ミクロ多孔質ポリマー構造の面積当たりの総質量は、複合膜の総面積に基づいて、約5.5g/m2、又は約5.8g/m2、又は約6g/m2、又は約7g/m2、又は約8g/m2、又は約9g/m2、又は約10g/m2、又は約11g/m2、又は約12g/m2、又は約13g/m2、又は約14g/m2、又は約15g/m2、又は約16g/m2、又は約17g/m2、又は約18g/m2、又は約19g/m2、又は約20g/m2である。
【0128】
イオン交換材料
【0129】
適切なイオン交換材料は、複合電解質膜が使用される用途に依存する可能性がある。イオン交換材料は、好ましくは、約240cc/モル当量~約1000cc/モル当量、場合により、約240cc/モル当量~約650cc/モル当量、場合により、約240cc/モル当量~約475cc/モル当量、場合により、約350cc/モル当量~約475cc/モル当量の平均当量体積を有する。イオン交換材料は、複合電解質膜が使用される環境において化学的及び熱的に安定であることができる。燃料電池用途に適したイオン交換材料は、カチオン交換材料、アニオン交換材料、又はカチオン交換能力とアニオン交換能力の両方を含むイオン交換材料を含むことができる。幾つかの実施形態において、イオン交換材料はプロトン伝導性ポリマー又はカチオン交換材料を含む。イオン交換材料は、ペルフルオロカルボン酸ポリマー、ペルフルオロホスホン酸ポリマー、スチレン系イオン交換ポリマー、フルオロスチレン系イオン交換ポリマー、ポリアリールエーテルケトンイオン交換ポリマー、ポリスルホンイオン交換ポリマー、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミド、(フルオロアルキルスルホニル)(フルオロスルホニル)イミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ジビニルベンゼン、ポリマーを含む又は含まない金属塩及びそれらの混合物を含む群より選ばれることができる。燃料電池用途での使用に適したペルフルオロスルホン酸ポリマーの例としては、Nafion(登録商標)(E.I. DuPont de Nemours, Inc.、米国デラウェア州ウィルミントン)、Flemion(登録商標)(旭硝子株式会社、東京、日本)、Aciplex(登録商標)(アサヒケミカル株式会社、東京、日本)、Aquivion(登録商標)(SolvaySolexis S.P.A、イタリア)及び3M(商標)(3M Innovative Properties Company、米国)が挙げられ、これらは市販のペルフルオロスルホン酸コポリマーである。燃料電池用途に使用するのに適したペルフルオロスルホン酸ポリマーの他の例としては、米国特許第5,463,005号明細書に記載されているようなペルフルオロスルホニル(コ)ポリマーが挙げられる。
【0130】
イオン交換材料の層は、0%RHで約0.5μm~約20μm、又は約0.5μm~約15μm、又は約0.5μm~約12μm、又は約0.5μm~約8μm、又は約0.5μm~約5μm、又は約2μm~約5μmの範囲の厚さを有することができる。
【0131】
レドックスフロー電池での使用に関して、イオン交換材料が少なくとも部分的に埋め込まれてミクロ多孔質ポリマー構造を閉塞性としたミクロ多孔質ポリマー構造は、0%RHで約0.5μm~約30μm、又は約0.5μm~約21μm、又は約0.5μm~約10μm、又は約0.5μm~約8μm、又は約0.5μm~約6μm、又は約2μm~約30μm、又は約2μm~約21μm、又は約2μm~約10μm、又は約2μm~約8μm、又は約2μm~約6μmの範囲の厚さを有することができる。
【0132】
電解装置での使用に関して、イオン交換材料が少なくとも部分的に埋め込まれてミクロ多孔質ポリマー構造を閉塞性としたミクロ多孔質ポリマー構造は、0%RHで約30μm~約100μm、約30μm~約250μm、又は約30μm~約500μmの範囲の厚さを有することができる。
【0133】
強化ポリマー電解質膜は、0%RHで約2マイクロメートル~500マイクロメートルの範囲の厚さを有することができる。
【0134】
膜触媒
【0135】
幾つかの実施形態において、第一の層126、第二の層127などのイオン交換材料の少なくとも1つの層、又はイオン交換材料の第三の層128などのイオン交換材料の少なくとも1つのさらなる層のうちの1つ以上は、少なくとも1つの膜触媒150をさらに含むことができる。
【0136】
図4は、イオン交換材料126の第一の層が膜触媒150を含む実施形態を示す。
図5は、イオン交換材料の第一の層126の上に存在するイオン交換材料のさらなる層128が膜触媒150を含む実施形態を示す。イオン交換材料のさらなる層128は、イオン交換材料の第三の層であることができる。代替的又は追加的に、イオン交換材料の第二の層127は膜触媒(図示せず)を含むことができる。
【0137】
少なくとも1つの膜触媒は、Pt、Ir、Ni、Co、Pd、Ti、Sn、Ta、Nb、Sb、Pb、Mn、Ru及びFeならびにそれらの混合物のうちの1つ以上を含む第一の膜触媒150を含むことができる。少なくとも1つの膜触媒は、担体、例えば炭素粒子などの粒子担体上に存在することができる。
【0138】
強化ポリマー電解質膜
【0139】
強化ポリマー電解質膜は、ミクロ多孔質ポリマー構造及びイオン交換材料を含み、イオン交換材料はミクロ多孔質ポリマー構造内に少なくとも部分的に埋め込まれて、ミクロ多孔質ポリマー構造を閉塞性とする。強化ポリマー電解質構造は、イオン交換材料の1つ以上の層を含むことができる。膜触媒はイオン交換材料とともに存在してもよい。
【0140】
強化ポリマー電解質膜は、0%RHで2μm~500μmの範囲の厚さを有することができる。例えば、強化ポリマー電解質膜は、4マイクロメートル~30マイクロメートルの範囲の厚さを有することができる。あるいは、0%RHで約15μm~約500μm、又は約15μm~約250μm、又は約15μm~約200μm、又は約15μm~約150μm、又は約15μm~約100μm、又は約15μm~約50μm、又は約30μm~約500μm、又は約30μm~約250μm、又は約30μm~約150μm 、又は約30μm~約100μm、又は約30μm~約50μm、又は約50μm~約500μm、又は約50μm~約250μm、又は約50μm~約200μm、又は約50μm~約150μm、又は約50μm~約100μmの厚さを有することができる。
【0141】
多孔質層
【0142】
適切な多孔質層は、複合電解質膜が使用される用途に依存する可能性がある。多孔質層は、5マイクロメートル~5000マイクロメートルの範囲の細孔サイズを有する複数の細孔を有すべきである。複数の細孔は、多孔質層の、第一の外面などの第一の表面と、該第一の表面の反対側の第二の外面などの反対側の第二の表面との間に延在する1つ以上の通路を提供する。第一の多孔質層及び第二の多孔質層の第一の外面及び第二の外面の1つは、強化ポリマー電解質膜に隣接している。細孔は、イオンが多孔質層の一方の表面から細孔に沿って多孔質層のもう一方の表面に伝導され、それによって第一の多孔質層の外面から第一の多孔質層、強化ポリマー電解質膜、第二の多孔質層、そして第二の多孔質層の外面まで、又はその逆に、イオン伝導経路を提供することができるように、多孔質層の外面間に延在する連続チャネルを表す。
【0143】
多孔質層は、織物材料、不織布材料又はそれらの組み合わせから独立して選択することができる。織物材料又は不織布材料は、繊維又は繊維材料を含むことができる。好ましい織物材料はからみ織りである。あるいは、複数の多孔質層は、メッシュ、ニット材料、紙、フェルト、マット又はクロスなどの不織布材料であることができる。織物材料と不織布材料の組み合わせも本開示の範囲内である。
【0144】
幾つかの実施形態において、繊維は、長さ対幅及び長さ対厚さの両方が約10より大きいアスペクト比を有し、幅対厚さのアスペクト比が約5未満であることができる。長さ対厚さ及び長さ対幅の両方の繊維のアスペクト比は、約10~約1000000、10~約100000、10~約1000、10~約500、10~約250、10~約100、約10~約50、約20~約1000000、20~約100000、20~約1000、20~約500、20~約250、20~約100、又はさらに約20~約50であることができる。
【0145】
複数の多孔質層用の不織布材料は、メルトブローン繊維、スパンボンド、カーディングなどの当該技術分野で知られている方法によって製造することができる。
【0146】
幾つかの実施形態において、複数の多孔質層の織物材料又は不織布材料を形成する繊維又は繊維材料は、熱可塑性ポリマーであることができる。このような繊維又は繊維材料は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエーテル。 ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン、スチレン及びスチレン系ランダム及びブロックコポリマー、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン、ポリ塩化ビニル、及びフッ素化ポリマー、例えばポリフッ化ビニリデン及びポリテトラフルオロエチレンを含む群から選択することができる。
【0147】
幾つかの実施形態において、繊維又は繊維材料は、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオレフィン、スチレン及びスチレン系ランダム及びブロックコポリマー、ポリ塩化ビニル、及びフッ素化ポリマーのうちの少なくとも1つを含む。
【0148】
好ましい実施形態において、複数の多孔質層は、フッ素化繊維又はフッ素化繊維材料などの少なくとも1つのフッ素化ポリマーを含む。フッ素化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(EPTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びそれらの混合物を含む群から選択することができる。より好ましくは、フッ素化ポリマーはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【0149】
代替実施形態において、複数の多孔質層は、炭化水素ポリマー繊維又は炭化水素ポリマー繊維材料などの炭化水素ポリマーを含む。炭化水素ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン及びそれらの混合物を含む群から選択することができる。
【0150】
複数の多孔質層のそれぞれは、0%RHで約15μm~約500μm、又は約15μm~約250μm、又は約15μm~約200μm、又は約15μm~約150μm、又は約15μm~約100μm、又は約15μm~約50μm、又は約30μm~約500μm、又は約30μm~約250μm、又は約30μm~約150μm、又は約30μm~約100μm、又は約30μm~約50μm、又は約50μm~約500μm、又は約50μm~約250μm、又は約50μm~約200μm、又は約50μm~約150μm、又は約50μm~約100μmの範囲の厚さを有することができる。
【0151】
複数の多孔質層は、2.99cm2の開口面積に対して12ミリバールの差圧で6000リットル/時を超える空気透過性を有することができる。
【0152】
幾つかの実施形態において、複数の多孔質層は、0.80~0.98の範囲、好ましくは約0.95の開口面積多孔度を有することができる。
【0153】
幾つかの実施形態において、複数の多孔質層は親水性であることができる。親水性多孔質層により、水性電解質との適合性が向上する。
【0154】
複合電解質膜の特性
【0155】
上述したように、複合電解質膜は、a)ミクロ多孔質ポリマー構造と、イオン交換材料がミクロ多孔質ポリマー内に少なくとも部分的に埋め込まれたイオン交換材料とを含む少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜と、b)複数の多孔質層とを含み、これにより、一緒になって複合電解質膜の耐穿刺性を向上させる区別された構成要素を形成する。理論に束縛されるものではないが、複合電解質膜の耐穿刺性は、多孔質層と場合により組み合わせた非強化層におけるイオン交換材料又は強化ポリマー電解質膜及び多孔質層なしと比較して、強化ポリマー電解質膜及び多孔質層によって影響される可能性がある。
【0156】
複合電解質膜(強化ポリマー電解質膜及び多孔質層)は、0%RHで約15μm~約1500μmの範囲の厚さを有することができる。1つの実施形態において、複数の多孔質層は、0%RHで15μm~約500μm、又は約15μm~約250μm、又は約15μm~約200μm、又は約15μm~約150μm、又は約15μm~約100μm、又は約15μm~約50μm、又は約30μm~約500μm、又は約30μm~約250μm、又は約30μm~約150μm、又は約30μm~約100μm、又は約30μm~約50μm、又は約50μm~約500μm、又は約50μm~約250μm、又は約50μm~約200μm、又は約50μm~約150μm、又は約50μm~約100μmの範囲の厚さを有することができる。別の実施形態において、複数の多孔質層は、0%RHで約30μm~約1500μm、又は約30μm~約1250μm、又は約30μm~約1100μm、又は30μm~約800μm、又は約30μm~約500μm、又は約30μm~約300μm、又は約30μm~約250μm、又は約30μm~約150μm、又は約60μm~約1500μm、又は約60μm~約1250μm、又は約60μm~約1100μm、又は約60μm~約800μm、又は約60μm~約500μm、又は約60μm~約300μm、又は約60μm~約250μm、又は約60μm~約150μm、又は約100μm~約1500μm、又は約100μm~約1250μm、又は約100μm~約1100μm、又は約100μm~約800μm、又は約100μm~約500μm、又は約100μm~約300μm、又は約100μm~約250μm、又は約100μm~約150μmの範囲の厚さを有することができる。
【0157】
複合電解質膜は、0%RHで約15μm、又は約16μm、又は約17μm、又は約18μm、又は約19μm、又は約20μm、又は約21μm、又は約22μm、又は約23μm、又は約24μm、又は約25μm、又は約30μm、又は約35μm、又は約40μm、又は約45μm、又は約50μm、又は約55μm、又は約60μm、又は約65μm、又は約70μm、又は約75μmの厚さを有することができる。複合電解質膜は、0%RHで約10μm未満の厚さを有することができない。
【0158】
幾つかの実施形態において、ミクロ多孔質ポリマー構造は、複合電解質膜の総体積に基づいて約2体積%~約65体積%、又は、複合電解質膜の総体積に基づいて、約15体積%~約65体積%、又は約20体積%~約65体積%、又は約30体積%~約65体積%、又は約40体積%~約65体積%、又は約50体積%~約65体積%、又は約65体積%~約65体積%、又は約25体積%~約60体積%、又は約20体積%~約50体積%、又は約20体積%~約40体積%、又は約20体積%~約30体積%、又は約40体積%~約60体積%、又は約40体積%~約50体積%を占める。ミクロ多孔質ポリマー構造は、複合電解質膜の総体積に基づいて、約15体積%、又は約20体積%、又は約25体積%、又は約30体積%、又は約35体積%、又は約40体積%、又は約45体積%、又は約50体積%、又は約55体積%、又は約60体積%、又は約65体積%の量で存在しうる。
【0159】
幾つかの実施形態において、イオン交換材料の当量体積は約240cc/モル当量~約1000cc/モル当量である。イオン交換材料は、約240g/当量~約2000g/当量のSO3
-の総当量重量(EW)を有することができる。様々な実施形態において、複合電解質膜100、200、300、400の酸含有量は、相対湿度0%で1.2meq/ccを超え、例えば1.2meq/ccを超え、3.5meq/ccまでである。様々な実施形態において、0%RHにおける複合電解質膜100、200、300、400の厚さは、約4μm~約115μm、又は約4μm~約50μm、又は約4μm~約40μm、又は 約4μm~約36μm、又は約4μm~約30μm、又は約4μm~約25μm、又は約4μm~約15μm、又は約4μm~約8μm、又は約10μm~約115μm、又は約10μm~約50μm、又は約10μm~約40μm、又は約10μm~約36μm、又は約10μm~約30μm、又は約10μm~約25μm、又は約10μm~約15μmである。具体的には、実施形態によれば、複合電解質膜100、200、300、400の厚さは約4μm~約115μmであり、複合膜100、200、300、400の酸含有量は1.2ミリ当量/ccを超えて3.5ミリ当量/ccまでの範囲である。
【0160】
複合材料中のミクロ多孔質ポリマー構造の体積%は、アイオノマーを含まない、ミクロ多孔質ポリマー構造のノード及びフィブリルによって占められる空間を指す。したがって、複合材料中のミクロ多孔質ポリマー構造の体積%は、アイオノマーを含む吸収層とは異なる。複合材料中のミクロ多孔質ポリマー構造の体積%は湿度の影響を受ける。したがって、体積%に関して以下で説明する実験は、乾燥条件(例えば、相対湿度(RH)0%)で実施される。
【0161】
幾つかの実施形態において、複合膜内のミクロ多孔質ポリマー構造の正規化された総含有量は、複合膜の総面積に基づいて、少なくとも約3×10-6m、又は約3.5×10-6m、又は約4×10-6m、又は約4.5×10-6m、又は約5×10-6m、又は約5.5×10-6m、又は約6×10-6m、又は約6.5×10-6m、又は約7×10-6m、又は約8×10-6m、又は約8.5×10-6m、又は約9×10-6mであることができる。
【0162】
イオン交換材料の当量重量は湿度にも影響される。したがって、当量重量に関して以下で説明する実験は、水の存在が当量体積の値に影響を及ぼさず、異なるアイオノマー間の有意義な比較を行うことができる理想的な状態の乾燥条件(例えば、相対湿度(RH)0%)で行われる。
【0163】
上述したように、強化ポリマー電解質膜を多孔質層と組み合わせて提供することによって、複合電解質膜の耐穿刺性が劇的に改善されることは驚くべきかつ予想外である。
【0164】
複合電解質膜は、以下に記載する平均破裂圧力試験によって測定したときに、少なくとも約40psiの平均破裂圧力を有することができる。例えば、複合電解質膜は、以下に記載する平均破裂圧力試験によって測定したときに、少なくとも約60psi、又は少なくとも約80psi、又は少なくとも約100psiの平均破裂圧力を有することができる。複合電解質膜は、以下に記載する平均破裂圧力試験によって測定したときに、約200psi未満の平均破裂圧力を有することができる。
【0165】
複合膜は、以下に記載する平均短絡圧力試験によって測定したときに、少なくとも約130psiの平均短絡圧力を有することができる。例えば、複合電解質膜は、以下に記載する平均短絡圧力試験によって測定したときに、約140psi以上、約200psi以上、又は約300psi以上、又は約350psi以上の平均短絡圧力を有することができる。複合膜は、以下に記載する平均短絡圧力試験によって測定したときに、約800psi未満の平均短絡圧力を有することができる。
【0166】
複合膜は、以下に説明する平均穿刺圧力破壊試験によって測定したときに、約150psi以上、又は約200psi以上、又は約250psi以上、又は約300psi以上、又は約350psi以上、又は約400psi以上、又は約450psi以上、又は約500psi以上の平均破壊圧力を有することができる。
【0167】
調製方法
【0168】
強化ポリマー電解質膜は、国際公開第2018/231232号A1パンフレットの
図4A、4B及び4Cに記載されている方法に従って調製することができ、その内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0169】
1つの実施形態において、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜は、少なくとも以下の工程を含む方法によって形成される第一の強化ポリマー電解質膜を含むことができる。
-支持構造を提供すること、
-第一のイオン交換材料溶液を、単一パス又は複数パスのイオン交換材料コーティング技術で、制御された厚さの層として支持構造に適用すること、ここで、前記第一のイオン交換材料溶液は、溶媒に溶解した第一のイオン交換材料を含む、
-前記第一のイオン交換材料溶液の少なくとも一部の上にミクロ多孔質ポリマー構造をラミネート化して、処理されたミクロ多孔質ポリマー構造を提供すること、及び、
-処理されたミクロ多孔質ポリマー構造を乾燥して、第一のイオン交換材料がミクロ多孔質ポリマー構造の内面にしっかりと接着された第一の強化ポリマー電解質膜を提供すること。
イオン交換材料は、ミクロ多孔質ポリマー構造に少なくとも部分的に埋め込まれ、ミクロ多孔質ポリマー構造を閉塞性とする。第一の強化ポリマー電解質膜は、ミクロ多孔質ポリマー構造の表面上に第一のイオン交換材料の層を含むことができる。
【0170】
別の実施形態において、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜は、少なくとも以下の工程を含む方法によって形成される第一の強化ポリマー電解質膜を含むことができる。
-支持構造を提供すること、
-第一のイオン交換材料溶液を、単一パス又は複数パスのイオン交換コーティング技術で、制御された厚さの層として支持構造に適用すること、ここで、第一のイオン交換材料溶液は、溶媒に溶解した第一のイオン交換材料を含む、
-第一のイオン交換材料溶液の少なくとも一部の上にミクロ多孔質ポリマー構造をラミネート化して、処理されたミクロ多孔質ポリマー構造を提供すること、
-場合により、処理されたミクロ多孔質ポリマー構造を乾燥させて、第一のイオン交換材料がミクロ多孔質ポリマー構造の内面にしっかりと接着された乾燥複合材料を提供すること、
-処理されたミクロ多孔質ポリマー構造上に第二のイオン交換材料溶液をコーティングすること、又は場合により、単一パス又は複数パスのイオン交換材料コーティング技術で制御された厚さの層として複合材料を乾燥させて、第二のイオン交換材料溶液が溶媒中に溶解した第二のイオン交換材料を含む構造を提供すること、及び、
-構造を乾燥して、第一の強化ポリマー電解質膜を提供すること。
第一の強化ポリマー電解質膜は、ミクロ多孔質ポリマー構造の第一の表面上の第一のイオン交換材料の層と、ミクロ多孔質ポリマー構造の反対側の第二の表面上の第二のイオン交換材料の層とを含む。
【0171】
幾つかの実施形態において、支持構造は以下のものであることができる。
-延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンの織物繊維から作られたスクリム、押出又は配向されたポリプロピレン又はポリプロピレンネットから作られたウェブ、ならびにポリプロピレン及びポリエステルの織物材料から選ばれる織物材料、又は
-スパンボンドポリプロピレンから選ばれる不織布材料、又は
-ポリエチレン(「PE」)、ポリスチレン(「PS」)、環状オレフィンコポリマー(「COC」)、環状オレフィンポリマー(「COP」)、フッ素化エチレンプロピレン(「FEP」)、ペルフルオロアルコキシアルカン(「PFA」)、エチレンテトラフルオロエチレン(「ETFE」)、ポリフッ化ビニリデン(「PVDF」)、ポリエーテルイミド(「PEI」)、ポリスルホン(「PSU」)、ポリエーテルスルホン(「PES」)、ポリフェニレンオキシド(「PPO」)、ポリフェニルエーテル(「PPE」)、ポリメチルペンテン(「PMP」)、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、又はポリカーボネート(「PC」)のウェブ。
【0172】
幾つかの実施形態において、支持構造は、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(「PS」)、環状オレフィンコポリマー(「COC」)、環状オレフィンポリマー(「COP」)、フッ素化エチレンプロピレン(「FEP」)、ペルフルオロアルコキシアルカン(「PFA」)、エチレンテトラフルオロエチレン(「ETFE」)、ポリフッ化ビニリデン(「PVDF」)、ポリエーテルイミド(「PEI」)、ポリスルホン(「PSU」)、ポリエーテルスルホン(「PES」)、ポリフェニレンオキシド(「PPO」)、ポリフェニルエーテル(「PPE」)、ポリメチルペンテン(「PMP」)、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、又はポリカーボネート(「PC」)から選ばれる保護層をさらに含む。
【0173】
幾つかの実施形態において、単一パス又は複数パスイオン交換材料コーティング技術は、フォワードロールコーティング、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、ドクターコーティング、キスコーティング、スロットダイコーティング、スライドダイコーティング、浸漬、はけ塗り、塗装及びスプレーから選ばれる。本明細書で使用するときに、複数パスイオン交換材料コーティング技術は、溶媒に溶解したイオン交換材料を含むイオン交換材料溶液の少なくとも2回の順次適用を含む。
【0174】
幾つかの実施形態において、乾燥は、60℃を超える温度で、例えばオーブン内で加熱することを含む。
【0175】
幾つかの実施形態において、第二のイオン交換材料は第一のイオン交換材料と同じである。他の実施形態において、第二のイオン交換材料は第一のイオン交換材料とは異なる。
【0176】
別の実施形態において、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜は、少なくとも以下の工程を含む方法によって形成された第一の強化ポリマー電解質膜及び第二の強化ポリマー電解質膜を含むことができる。
-支持構造を提供すること、
-第一のイオン交換材料溶液を、単一パス又は複数パスイオン交換材料コーティング技術で、制御された厚さの層として前記支持構造に適用すること、ここで、第一のイオン交換材料溶液は、溶媒に溶解した第一のイオン交換材料を含む、
-第一のイオン交換材料溶液の少なくとも一部の上に第一のミクロ多孔質ポリマー構造をラミネート化して、第一の処理されたミクロ多孔質ポリマー構造を提供すること、
-場合により、第一の処理されたミクロ多孔質ポリマー構造を乾燥させて、前記第一のイオン交換材料が前記第一のミクロ多孔質ポリマー構造の内部膜表面にしっかりと接着している第一の乾燥複合材料を提供すること、
-第二のイオン交換材料溶液を、単一パス又は複数パスイオン交換材料コーティング技術において制御された厚さの層として、第一の処理されたミクロ多孔質ポリマー構造上に又は場合により第一の乾燥複合材料上にコーティングすること、ここで、前記第二のイオン交換材料溶液は、溶媒に溶解した第二のイオン交換材料溶液を含む、
-第二のイオン交換材料溶液の少なくとも一部の上に第二のミクロ多孔質ポリマー構造をラミネート化して、第二の処理されたミクロ多孔質ポリマー構造を提供すること、
-場合により、第二の処理されたミクロ多孔質ポリマー構造を乾燥させて、前記第二のイオン交換材料が前記第二のミクロ多孔質ポリマー構造の内部膜表面にしっかりと接着している第二の乾燥複合材料を提供すること、
-第三のイオン交換材料溶液を、第二の処理されたミクロ多孔質ポリマー構造上に又は場合により第二の乾燥ミクロ多孔質ポリマー構造上に、単一パス又は複数パスアイオノマーコーティング技術で制御された厚さの層としてコーティングして、第三の処理されたミクロ多孔質ポリマー構造を提供すること、ここで、前記第三のイオン交換材料溶液は、溶媒に溶解された第三のイオン交換材料を含む、及び、
-第三の処理されたミクロ多孔質ポリマー構造を乾燥して、第一の強化ポリマー電解質膜を提供すること。
【0177】
イオン交換材料は、ミクロ多孔質ポリマー構造内に少なくとも部分的に埋め込まれ、ミクロ多孔質ポリマー構造を閉塞性とする。少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜は、第一のミクロ多孔質ポリマー構造の第一の表面上の第一のイオン交換材料の層と、第一のミクロ多孔質ポリマー構造の反対側の第二の表面上の第二のイオン交換材料の層とを含む第一の強化ポリマー電解質膜、及び、第二のミクロ多孔質ポリマー構造の第一の表面上の第二のイオン交換材料の層と、第二のミクロ多孔質ポリマー構造の反対側の第二の表面上の第三のイオン交換材料の層とを含む第二の強化ポリマー電解質膜とを含むことができる。したがって、第二のイオン交換材料の層は、第一のミクロ多孔質ポリマー構造と第二のミクロ多孔質ポリマー構造との間に存在する。
【0178】
幾つかの実施形態において、第一のイオン交換材料、第二のイオン交換材料及び第三のイオン交換材料は独立して同じであっても又は異なっていてもよい。
【0179】
幾つかの実施形態において、支持体の定義、単一パス又は複数パスコーティング技術、及び加熱工程は、上述のとおりであることができる。
【0180】
1つの実施形態において、複合電解質膜は、少なくとも以下の工程を含む方法によって形成されうる。
-第一の表面及び反対側の第二の表面を有する第一の強化ポリマー電解質膜を含む少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜を提供すること、
-第一の多孔質層の第一の表面が前記第一の強化ポリマー電解質膜の第一の表面に隣接するように、第一の表面及び反対側の第二の表面を有する第一の多孔質層を前記第一の強化ポリマー電解質膜に付加すること、及び、
-第二の多孔質層の第一の表面が前記第一の強化ポリマー電解質膜の第二の表面に隣接するように、第一の表面及び反対側の第二の表面を有する第二の多孔質層を前記第一の強化ポリマー電解質膜に付加して、複合電解質膜を提供すること。
【0181】
1つの実施形態において、第一の強化ポリマー電解質膜は、ミクロ多孔質ポリマー構造の対向する第一の表面及び第二の表面上にイオン交換材料の第一の層及び第二の層を含むことができ、それにより、付加工程は、第一の多孔質層及び第二の多孔質層をイオン交換材料の第一の層及び第二の層に部分的に埋め込むことを含む。このようにして、第一の多孔質層及び第二の多孔質層は第一の強化ポリマー電解質膜に取り付けられる。例えば、埋め込みは、第一の強化ポリマー電解質膜と第一の多孔質層及び/又は第二の多孔質層とを圧力下で一緒にプレスする工程によって達成することができる。これは、イオン交換材料の第一の層及び/又は第二の層を軟化させるために加熱しながら実施することができ、及び/又はイオン交換材料の第一の層及び/又は第二の層の形成時にプレスを実施することができる。
【0182】
別の実施形態において、第一の強化ポリマー電解質膜を含む少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜を提供する工程は、上述の少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜を形成する方法の1つであることができる。
【0183】
膜電極接合体
【0184】
本明細書に開示される複合電解質膜は、膜電極接合体に組み込むこともできる。
図6に示される実施形態において、第一の電極160を含む少なくとも1つの電極及び本明細書に記載の複合電解質膜を含む、電気化学デバイス用の膜電極接合体200が提供される。複合電解質膜は、第一の多孔質層130が第一の電極160と少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜110との間にあるように、少なくとも1つの電極に隣接している。このようにして、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜110は、介在する第一の多孔質層130によって、第一の電極160による損傷から保護される。
【0185】
膜電極接合体200の幾つかの実施形態において、少なくとも1つの電極は、第二の電極170をさらに含むことができる。第二の多孔質層140は、第二の電極170と強化ポリマー電解質膜110との間に位置することができる。このようにして、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜110は、介在する第二の多孔質層140によって、第二の電極170による損傷から保護される。
【0186】
幾つかの実施形態において、複合電解質膜は少なくとも1つの電極に取り付けられることができる。例えば、複合電解質膜と少なくとも1つの電極とを一緒にプレスすることができる。
【0187】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの電極は繊維又は繊維材料を含むことができる。このような繊維又は繊維材料は、繊維又は繊維材料による少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜への損傷又は貫通の原因となる可能性がある。電極を形成する繊維又は繊維材料の例としては、炭素繊維又はドープされた炭素繊維が挙げられる。適切な炭素繊維又はドープされた炭素繊維は、約8μm~約30μmの直径を有することができる。ドープされた炭素繊維は、N、P、S又はB及びそれらの混合物を含むことができる。
【0188】
少なくとも1つの電極は、フェルト、紙、マット又は織物材料から選ばれることができる。
【0189】
第一の多孔質層及び第二の多孔質層130、140の間に配置された強化ポリマー電解質膜110の組み合わせは、第一の電極及び第二の電極160、170からの繊維による強化ポリマー電解質膜の穿刺に対する保護を改善する。これは、非強化ポリマー電解質膜、多孔質層を有する非強化ポリマー電解質膜、又は多孔質層のない強化ポリマー電解質膜と比較したときの、そのような膜電極接合体を含むセルの有意に改善された破裂圧力及び短絡圧力によって証明される。
【0190】
このような膜電極接合体200は、レドックスフロー電池の膜電極接合体として使用することができる。
【0191】
少なくとも1つの電極は、少なくとも1つの電極触媒を含む電極触媒層(図示せず)を含むことができる。電極触媒層は、上述したようなイオン交換材料をさらに含むことができる。少なくとも1つの電極触媒は、炭素粒子上の電極触媒などの粒子担体上の電極触媒などの担持電極触媒であることができる。幾つかの実施形態において、電極触媒層は、例えば炭素粒子又は導電性粒子、典型的には金属電極触媒粒子などの金属粒子などの別の電子伝導性材料の存在により電子伝導性である。あるいは、電極触媒層は、金属電極触媒粒子の存在により電子伝導性であることができる。
【0192】
電極触媒層の少なくとも1つの電極触媒は、Pt、Ir、Ni、Co、Pd、Ti、Sn、Ta、Nb、Sb、Pb、Mn、Ru及びFe、それらの酸化物及び混合物のうちの1つ以上を含むことができる。
【0193】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの電極触媒を含む電極触媒層は、第一の多孔質層の第一の表面が強化ポリマー電解質膜の第一の表面と接触するように、そして、第一の多孔質層の第二の表面が第一の電極触媒層の第一の表面と接触するように、第一の表面及び反対側の第二の表面を有する第一の電極触媒層であることができる。好ましくは、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜の第一の表面は、複合電解質膜の少なくとも1つのイオン交換材料層の構成要素として、上述したとおりの膜触媒を含むイオン交換材料の層を含むことができる。
【0194】
代替的又は追加的に、少なくとも1つの電極触媒を含むさらなる電極触媒層は、第二の多孔質層の第一の表面が強化ポリマー電解質膜の第二の表面と接触するように、そして第二の多孔質層の第二の表面が第二の電極触媒層の第一の表面と接触するように、第一の表面及び反対側の第二の表面を有する第二の電極触媒層であることができる。好ましくは、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜の第二の表面は、複合電解質膜の少なくとも1つのイオン交換材料層の構成要素として、上述したとおりの膜触媒を含むイオン交換材料の層を含むことができる。
【0195】
幾つかの実施形態において、第一の電極は、第一の電極層として、第一の表面及び反対側の第二の表面を有し、第一の多孔質層の第一の表面は、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜の第一の表面と接触しており、第一の多孔質層の第二の表面は、第一の電極の第一の表面と接触している。好ましくは、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜の第一の表面は、複合電解質膜の少なくとも1つのイオン交換材料層の構成要素として、上述したとおりの膜触媒を含むイオン交換材料の層を含むことができる。
【0196】
代替的又は追加的に、第一の表面及び反対側の第二の表面を有する第二の電極を第二の電極層として設けることができ、第二の多孔質層の第一の表面は少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜の第一の表面と接触し、第二の多孔質層の第二の表面は、第二の電極の第一の表面と接触している。好ましくは、少なくとも1つの強化ポリマー電解質膜の第二の表面は、複合電解質膜の少なくとも1つのイオン交換材料層の構成要素として、上述したとおりの膜触媒を含むイオン交換材料の層を含むことができる。
【0197】
このような膜電極接合体は、電解装置又は燃料電池の膜電極接合体として使用することができる。
【0198】
膜電極接合体が燃料電池の膜電極接合体であるときに、第一の電極触媒及び第二の電極触媒層は、約100nm以下の細孔サイズを有することができる。第一の電極触媒層及び第二の電極触媒層は、独立して、1つ以上のイオン交換材料、カーボンブラックなどの触媒担体、及び白金などの触媒担体上に担持された触媒を含むことができる。
【0199】
このような膜電極接合体を含むレドックスフロー電池、燃料電池及び電解装置も本開示の範囲内である。
【実施例】
【0200】
例
【0201】
実施例で使用した試験手順及び測定プロトコル
【0202】
特に明記されていない限り、相対湿度0%で測定される温度は23℃である。
【0203】
バブルポイント
【0204】
バブルポイントは、ASTM F316-86の手順に従って測定された。試験片の細孔を満たす湿潤流体としてイソプロピルアルコールを使用した。バブルポイントは、ミクロ多孔質ポリマーマトリックスを覆うイソプロピルアルコールの層を通ってバブルが上昇することによって検出可能なバブルの第一の連続流を生成するのに必要な空気の圧力である。この測定により、最大細孔サイズの推定値が提供される。
【0205】
非接触厚さ
【0206】
ミクロ多孔質ポリマー構造のサンプルを平らで滑らかな金属アンビルの上に置き、しわを取り除くために張力をかけた。アンビル上のミクロ多孔質ポリマー構造の高さを、非接触型Keyence LS-7010Mデジタルマイクロメータを使用して測定及び記録した。次に、ミクロ多孔質ポリマー構造のないアンビルの高さを記録した。ミクロ多孔質ポリマー構造の厚さを、アンビル上にミクロ多孔質構造が存在する場合と存在しない場合のマイクロメータ読み値の差としてとった。
【0207】
面積当たりの質量
【0208】
各ミクロ多孔質ポリマー構造を、しわがなくなるのに十分に引っ張り、その後、ダイを使用して10cm2の小片を切り取った。10cm2片の重さを従来の実験室用スケールで測定した。次に、面積当たりの質量(M/A)を、既知の面積に対する測定質量の比として計算した。この手順を2回繰り返し、M/Aの平均値を算出した。
【0209】
ミクロ多孔質ポリマー構造の見掛け密度
【0210】
ミクロ多孔質ポリマー構造の見掛け密度を、非接触厚さ及び面積当たりの質量データを使用して、次の式を使用して計算した。
【数1】
【0211】
ミクロ多孔質ポリマー構造の多孔度
【0212】
ミクロ多孔質ポリマー構造の多孔度を、見掛け密度と骨格密度データを使用し、次の式を使用して計算した。
【数2】
【0213】
イオン交換材料(IEM)の溶液の固形分濃度
【0214】
本明細書において、「溶液」及び「分散液」という用語は、イオン交換材料(IEM)を指すときに、相互互換的に使用される。この試験手順は、IEMがプロトンの形であり、他の固形分が無視できる量で存在する溶液に適している。2立方センチメートルの体積のIEM溶液をシリンジに引き込み、溶液を含むシリンジの質量を固体分析装置(CEM Corporation、USAから入手)の天秤により測定した。2枚のガラス繊維紙(CEM Corporation、USAから入手)の質量も測定し、記録した。次に、IEM溶液をシリンジから2層のガラス繊維紙に堆積させた。アイオノマー溶液を含むガラス繊維紙を固体分析装置に入れ、160℃まで加熱して溶媒液体を除去した。ガラス繊維紙と残留固体の質量が、温度と時間の上昇に対して変化するのが停止したら、それを記録した。残留IEMは水を含まないものと想定される(つまり、これは0%RHに対応するアイオノマーの質量である)。その後、空になったシリンジの質量を、以前と同じ天秤を使用して測定し、記録した。溶液中のアイオノマー固形分を、次の式に従って計算した。
【数3】
【0215】
IEMの当量重量(EW)
【0216】
以下の試験手順は、プロトン型(すなわち、無視できる量の他のカチオンを含む)であり、無視できる量のプロトン酸及び解離塩を含む他のイオン種を含む溶液中にある、単一のアイオノマー樹脂又はアイオノマー樹脂の混合物を含むIEMに適している。これらの条件が満たされないならば、試験前に、当業者に公知の適切な手順に従って溶液をイオン性不純物から精製しなければならず、又は、不純物を特性化して、その不純物がEWの試験の結果に及ぼす影響を補正しなければならない。
【0217】
本明細書で使用されるときに、IEMのEWは、IEMが0%RHでプロトンの形態にあり、不純物が無視できる場合を指す。IEMは、プロトン形態の単一のアイオノマー又はアイオノマーの混合物を含むことができる。上述のように決定された固形分濃度を有し、0.2グラムの固形分を含む量のIEM溶液をプラスチックカップに注いだ。アイオノマー溶液の質量を、従来の実験室スケール(米国のメトラー・トレド社から入手)を介して測定した。次に、5mlの脱イオン水及び5mlの200プルーフの変性エタノール (SDA 3C、Sigma Aldrich、米国)をカップ内のアイオノマー溶液に加える。次いで、55mlの2N塩化ナトリウム水溶液をIEM溶液に添加した。次いで、サンプルを15分間一定の撹拌下で平衡化させた。平衡化工程の後に、サンプルを1N水酸化ナトリウム溶液で滴定した。サンプル溶液をpH値7に中和するのに必要な1N水酸化ナトリウム溶液の体積を記録した。IEMのEW(EW
IEM)を次のように計算した。
【数4】
【0218】
複数のIEMを組み合わせて複合膜を作製したときに、複合膜内のIEMの平均EWを、次の式を使用して計算した。
【数5】
【0219】
上式中、各IEMの質量分率は、すべてのIEMの合計量に対するものである。この式は、アイオノマーブレンドを含む複合膜と複数のアイオノマー層を含む複合膜の両方に使用した。
【0220】
イオン交換材料の当量体積(EV)
【0221】
本明細書で使用されるときに、IEMの当量体積は、IEMが純粋であり、0%RHでそのプロトン形態にあり、不純物が無視できる場合のEVを指す。EVを次の式に従って計算した。
【数6】
【0222】
各IEMの当量重量は、上述の手順に従って決定した。これらの用途で使用されたIEMはペルフルオロスルホン酸アイオノマー樹脂であり、ペルフルオロスルホン酸アイオノマー樹脂の体積密度は0%RHで1.9g/ccとした。
【0223】
複合電解質膜の厚さ
【0224】
複合電解質膜は、厚さが測定される前に少なくとも1時間、厚さが測定される室内で平衡化された。複合電解質膜を、複合電解質膜がコーティングされた基材に付着したままにした。各サンプルについて、コーティング基材上の複合電解質膜を滑らかで平らで水平な大理石スラブ上に置いた。厚さゲージ(Heidenhain Corporation、USAから入手)を複合膜に接触させ、膜上の格子パターンに配置された6つの異なるスポットでゲージの高さの読み取り値を記録した。次に、サンプルを基材から取り外し、ゲージを基材に接触させ、同じ6つのスポットで高さの読み取り値を再度記録した。室内の所与の相対湿度(RH)における複合膜の厚さは、複合膜が存在する場合と存在しない場合のゲージの高さの読み取り値の差として計算した。局所RHは、RHプローブ(Fluke Corporationから入手)を使用して測定した。0%RHでの厚さを、次の一般式を使用して計算した。
【数7】
【0225】
上式中、パラメータλは、指定されたRHにおける酸基1モルあたりの水のモル数で表したイオン交換材料の水分摂取量に対応する。PFSAアイオノマーに関して、気相中の0~100%の範囲の任意のRHでのλ値を、次の式に従って計算した。
【数8】
【0226】
複合電解質膜のミクロ多孔質ポリマーマトリックス(MPM)体積含有量
【0227】
各複合膜中のミクロ多孔質ポリマー構造の体積%を、次の式に従って計算した。
【数9】
【0228】
これらの例で使用したミクロ多孔質ポリマーマトリックスは、ePTFE及びトラックエッチングされた多孔質ポリカーボネートであった。ePTFEのマトリックス骨格密度は2.25g/ccとし、トラックエッチングされた多孔質ポリカーボネートのマトリックス骨格密度は1.20g/ccとした。
【0229】
複合電解質膜の酸含有分
【0230】
複合膜の酸含有分を、次の式に従って計算した。
【数10】
【0231】
複合電解質膜の破裂圧力試験
【0232】
本発明に従って製造された複合電解質膜の機械強度を、サンプルに負荷圧力を加えることによって測定した。
【0233】
膜のサンプルは、上部プレートに10mmのアパチャを備えた2枚のスチールプレートの間に固定される。システムは下から加圧され、膜がアパチャを通ってドーム状に膨らむときに膜に二軸方向の応力を加える。膜が破損するまで、圧力を5psiずつ増加させ、各レベル間で5秒間保持する。破損が発生した圧力を破裂圧力として記録する。この手順を4回繰り返して、平均破裂圧力及び標準偏差を計算する。
【0234】
平均穿刺圧力破壊試験
【0235】
サンプルを2つの多孔質炭素電極 (Sigracet 39AA カーボン紙)の間に置き、電気的に絶縁された直径14mmの金メッキ円筒形プラテンを備えた Instron モデル5542に装填した。サンプル及び電極の領域はプラテンに比べて大きく、穿刺時のエッジ効果を排除するためにプラテンを超えて延在させた。電極が接触してサンプルを通過しない電子短絡が生じるのを防ぐために、サンプル領域は電極領域に比べて大きくした。膜を横切る電気抵抗は、上部及び下部のプラテンに接続された Keithley 580 マイクロオームメータによって測定される。圧縮機械負荷をサンプルに加えながら、上部プラテンを周囲条件で1mm/分の速度で下げ、444.8N(100 lbf)が加えられるまでサンプルを横切って測定された電気抵抗を常に記録した。この場合に、代替の器具を使用するか、プラテンの活性領域を小さくすることで、より高い圧縮圧力を得ることができる。膜穿刺は、電気抵抗が18,000オーム未満に低下したときの圧力として定義され、サンプルを介した電極又は電極繊維の物理的接触を表す。各サンプルについて5回の複製物を試験し、5回の試験の平均を平均穿刺圧力として報告する。穿刺圧力は電極の材料に依存し、代替の電極材料を使用すると有意に増加又は減少する可能性がある。
【数11】
【0236】
例
【0237】
本開示の複合電解質膜は、以下の非限定的な実施例を参照することによってよりよく理解されうる。
【0238】
複合膜の酸含有量、体積、耐穿刺性などの特性、ならびに試験手順及び測定プロトコルの特性を決定するために、上記のように実施した。表1は、本発明の実施形態及び比較例による複合膜の特性を示す。表2は、本発明の幾つかの態様による5つの一連の実施例及び比較例における様々な試験手順で使用されるミクロ多孔質ポリマー構造の特性を示す。
【0239】
全ての例について本開示の態様に従って製造されたイオン交換材料
【0240】
以下の実施例で使用されるすべてのイオン交換材料は、表1に指定された当量重量 (EW)を有するペルフルオロスルホン酸(PFSA)ベースのアイオノマーである。複合膜の製造前のすべてのアイオノマーは、溶媒相中の水分含量が50%未満である溶媒として水とエタノールの混合物をベースとした溶液の形態であった。
【0241】
一般に知られているイオン交換材料を使用して、本開示の複合膜を製造した。好ましい例は、下記一般式(a:b=1:1~9:1、n=0、1又は2)で表される、Xが-O-(CF
2C(CF
3)FO)
n-CF
2CF
2SO
3Hである単位-(CF
2CF
2)
a-及び-(CF
2CXF)
b-を含む固体のPFSAアイオノマーを溶媒中に分散又は溶解することによって得られる溶液である。
【化1】
【0242】
幾つかの態様において、溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール及びtert-ブチルアルコールなどのアルコール、ペンタノール及びその異性体、ヘキサノール及びその異性体、n-ヘキサンなどの炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン及びジオキサンなどのエーテル系溶媒、ジメチルスルホキシド及びジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド及びN,N-ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N-ジメチルアセトアミド及びN,N-ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N-メチル-2-ピロリドン及びN-ビニル-2-ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,1,2-テトラクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン及びクロロホルムからなる群より選ばれる。本開示において、溶媒は、場合により、水、メタノール、エタノール、プロパノールからなる群より選ばれる。水及び上記溶媒は、単独で用いてもよく、又は、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0243】
比較例1
【0244】
面積当たりの質量が4g/m2、厚さが13.3μm、見掛け密度が0.26g/cc、バブルポイントが55.5psiであるePTFE膜1を手で引っ張ってシワを取り除き、この状態で金属フレームで拘束した。次に、EV=379cc/モル当量、水34.87%、エタノール48.09%、固形分17.04%の溶液組成を有するPSFA溶液(日本の旭硝子社から入手)の第一のレイダウンをポリマーシート基材の上面にコーティングした。ポリマーシート基材(日本のダイセルバリューコーティング株式会社から入手)は、PET及び環状オレフィンコポリマー(COC)の保護層を含み、COC側が上になるように配向された。IEM(PFSA溶液)コーティングは、理論上の湿潤コーティング厚さ3ミルのマイヤーバーを使用して達成された。コーティングがまだ湿っている間に、金属フレーム上に予め拘束されていたePTFE膜1をコーティングにラミネート化すると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、内部に空気を含んだ対流式オーブン内で165℃の温度で乾燥させた。乾燥すると、ミクロ多孔質ポリマー構造 (ePTFE膜)にIEMが完全に吸収された。IEMはまた、ミクロ多孔質ポリマー基材の底面とポリマーシート基材との間に層を形成した。第二のレイダウン時に、水38%、エタノール57.7%、固形分4.3%の溶液組成の同じIEMを、理論上の湿潤コーティング厚さ3ミルのドローダウンバーを使用して、複合材料の上面 (ポリマーシート基材の反対側の表面)にコーティングした。次いで、複合材料を165℃で再度乾燥させた。この時点では複合材料はほぼ透明であり、ミクロ多孔質ポリマー構造が完全に含浸していることが示された。多層複合膜は完全に閉塞しており、ミクロ多孔質ポリマーマトリックスの両側にIEMの層を有した。得られた多層複合膜は、0%RHで6.5マイクロメートルの厚さを有し、28体積%がミクロ多孔質ポリマー構造によって占められ、酸含有量が1.9meq/ccであった。多層複合膜は多孔質層を有しない。
【0245】
例1
【0246】
面積当たりの質量が4g/m2、厚さが13.3μm、見掛け密度が0.26g/cc、バブルポイントが55.5psiのePTFE膜を手で引っ張ってシワを取り除き、この状態で金属フレームで拘束した。次に、EV=379cc/モル当量、水34.87%、エタノール48.09%、固形分17.04%の溶液組成を有するPSFA溶液(日本の旭硝子社から入手)の第一のレイダウンをポリマーシート基材の上面にコーティングした。ポリマーシート基材(日本のダイセルバリューコーティング株式会社から入手)は、PET及び環状オレフィンコポリマー(COC)の保護層を含み、COC側が上になるように配向された。IEM(PFSA溶液)コーティングは、理論上の湿潤コーティング厚さ3ミルのマイヤーバーを使用して達成された。コーティングがまだ湿っている間に、金属フレーム上に予め拘束されていたePTFE膜1をコーティングにラミネート化すると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、内部に空気を含む対流式オーブン内で165℃の温度で乾燥させた。乾燥すると、ミクロ多孔質ポリマー構造(ePTFE膜)にIEMが完全に吸収された。IEMはまた、ミクロ多孔質ポリマー基材の底面とポリマーシート基材との間に層を形成した。第二のレイダウン時に、水38%、エタノール57.7%、固形分4.3%の溶液組成の同じIEMを、理論上の湿潤コーティング厚さ3ミルのドローダウンバーを使用して複合材料の上面(ポリマーシート基材の反対側の表面)にコーティングした。次いで、複合材料を165℃で再度乾燥させた。この時点で、複合材料はほぼ透明であり、ミクロ多孔質ポリマー構造が完全に含浸していることが示された。多層複合膜は完全に閉塞しており、ミクロ多孔質ポリマーマトリックスの両側に IEMの層を有した。得られた多層複合膜は、0%RHで6.5マイクロメートルの厚さを有し、28体積%がミクロ多孔質ポリマー構造によって占められ、酸含有量が1.9meq/ccであった。
【0247】
次いで、この多層複合膜を織物PTFE材料の層の間で160℃で960ポンド/平方インチの圧力下で90秒間プレスして、最終的な膜-保護層複合材を形成した。
【0248】
フィラメントは200デニールの繊度の延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)で、Z方向に32撚り/インチ(TPI)で撚られている。このフィラメントは、メリーランド州エルクトンの W.L. Gore and Associates, Inc.から部品番号V112407で入手できる。フィラメントを、すべてからみ綜絖を装備した4つのハーネスを使用して、ドルニエレピア織機で平織りスクリム布に織り込んだ。スクリムは、経糸方向に1インチ当たり15本のレノペアエンド(ppi)(すなわち、epiで30本の単一フィラメント)及び緯糸方向に1インチ当たり15本のピック(ppi)を使用して製造された。フィラメント又は織布に仕上げ加工助剤又は製織加工助剤を適用しなかった。布の両側の耳を除去して、本発明のサンプルを製造した。
【0249】
比較例2
【0250】
面積当たりの質量が2g/m2、厚さが6.83μm、見掛け密度が0.34g/cc、バブルポイントが86.2psiのePTFE膜1を手で引っ張ってシワを取り除き、この状態で金属フレームで拘束した。次に、EV=379cc/モル当量、水33.0%、エタノール52.2%、固形分14.8%の溶液組成を有するPSFA溶液(日本の旭硝子社から入手)の第一のレイダウンをポリマーシート基材の上面にコーティングした。ポリマーシート基材(日本のダイセルバリューコーティング株式会社から入手)は、PET及び環状オレフィンコポリマー(COC)の保護層を含み、COC側が上になるように配向された。IEM(PFSA溶液)コーティングは、理論上の湿潤コーティング厚さ3ミルのマイヤーバーを使用して達成された。コーティングがまだ湿っている間に、金属フレーム上に予め拘束されていたePTFE膜1をコーティングにラミネート化すると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、内部に空気を含む対流式オーブン内で165℃の温度で乾燥させた。乾燥すると、ミクロ多孔質ポリマー構造(ePTFE膜)にIEMが完全に吸収された。IEMはまた、ミクロ多孔質ポリマー基材の底面とポリマーシート基材との間に層を形成した。第二のレイダウン時に、理論上の湿潤コーティング厚さ1.5ミルのドローダウンバーを使用して、水38.0%、エタノール57.7%、固形分4.3%の溶液組成の同じIEMを複合材料の上面(ポリマーシート基材の反対側の表面)にコーティングした。次いで、複合材料を165℃で再度乾燥させた。この時点で複合材料はほぼ透明であり、ミクロ多孔質ポリマー構造が完全に含浸していることが示された。多層複合膜は完全に閉塞しており、ミクロ多孔質ポリマーマトリックスの両側にIEMの層を有した。得られた多層複合膜は、0%RHでの厚さが3.25マイクロメートル、28体積%がミクロ多孔質ポリマー構造で占められ、酸含有量が1.9meq/ccであった。多層複合膜は多孔質層を有しない。
【0251】
例2
【0252】
面積当たりの質量が2g/m2、厚さが6.83μm、見掛け密度が0.34g/cc、バブルポイントが86.2psiのePTFE膜1を手で引っ張ってシワを取り除き、この状態で金属フレームで拘束した。次に、EV=379cc/モル当量、水33.0%、エタノール52.2%、固形分14.8%の溶液組成を有するPSFA溶液(日本の旭硝子社から入手)の第一のレイダウンをポリマーシート基材の上面にコーティングした。ポリマーシート基材(日本のダイセルバリューコーティング株式会社から入手)は、PET及び環状オレフィンコポリマー(COC)の保護層を含み、COC側が上になるように配向された。IEM(PFSA溶液)コーティングは、理論上の湿潤コーティング厚さ3ミルのマイヤーバーを使用して達成された。コーティングがまだ湿っている間に、金属フレーム上に予め拘束されていたePTFE膜1をコーティングにラミネート化すると、IEM溶液が細孔に吸収された。続いて、この複合材料を、内部に空気を含む対流式オーブン内で165℃の温度で乾燥させた。乾燥すると、ミクロ多孔質ポリマー構造(ePTFE膜)にIEMが完全に吸収された。IEMはまた、ミクロ多孔質ポリマー基材の底面とポリマーシート基材との間に層を形成した。第二のレイダウン時に、理論上の湿潤コーティングの厚さ1.5ミルのドローダウンバーを使用して、水38.0%、エタノール57.7%、固形分4.3%の溶液組成の同じIEMを複合材料の上面(ポリマーシート基材の反対側の表面)にコーティングした。次いで、複合材料を165℃で再度乾燥させた。この時点では複合材料はほぼ透明であり、ミクロ多孔質ポリマー構造が完全に含浸していることが示された。多層複合膜は完全に閉塞しており、ミクロ多孔質ポリマーマトリックスの両側にIEMの層を有した。得られた多層複合膜は、0%RHで3.25マイクロメートルの厚さを有し、28体積%がミクロ多孔質ポリマー構造によって占められ、酸含有量が1.9meq/ccであった。
【0253】
次いで、この多層複合膜を織物PTFE材料の層の間で160℃、960ポンド/平方インチの圧力下で90秒間プレスして、最終的な膜-保護層複合材を形成した。
【0254】
フィラメントは200デニールの繊度の延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)で、Z方向に32撚り/インチ(TPI)で撚られている。このフィラメントは、メリーランド州エルクトンの W.L. Gore and Associates, Inc. から部品番号 V112407 で入手できる。フィラメントは、すべてからみ綜絖を装備した4つのハーネスを使用して、ドルニエレピア織機で平織りスクリム布に織り込まれた。スクリムは、経糸方向に1インチ当たり15本のレノペアエンド(ppi)(すなわち、epiで30本の単一フィラメント)及び緯糸方向に1インチ当たり15本のピック(ppi)を使用して製造された。フィラメント又は織布は仕上げ加工助剤又は製織加工助剤が適用されていない。布の両側の耳を除去して、本発明のサンプルを製造した。
【0255】
比較例3
【0256】
EV=379cc/モル当量、水41%、エタノール53%、固形分6%の溶液組成を有するPSFA溶液(日本の旭硝子社から入手)のレイダウンを、ポリマーシート基材の上側にコーティングした。ポリマーシート基材(日本のダイセルバリューコーティング株式会社から入手)は、PET及び環状オレフィンコポリマー(COC)の保護層を含み、COC側が上になるように配向された。IEM(PFSA溶液)コーティングは、理論上の湿潤コーティング厚さ7ミルのマイヤーバーを使用して達成された。続いて、このキャストフィルムを、内部に空気を含む対流式オーブン内で165℃の温度で乾燥させた。キャストフィルムはミクロ多孔質ポリマー構造を含まないため、強化ポリマー電解質膜ではない。キャストフィルムも多孔質層を有しない。
【0257】
比較例4
【0258】
EV=379cc/モル当量、水41%、エタノール53%、固形分6%の溶液組成を有するPSFA溶液(日本の旭硝子社から入手)のレイダウンを、ポリマーシート基材の上側にコーティングした。ポリマーシート基材(日本のダイセルバリューコーティング株式会社から入手)は、PET及び環状オレフィンコポリマー(COC)の保護層を含み、COC側が上になるように配向された。IEM(PFSA溶液)コーティングは、理論上の湿潤コーティング厚さ7ミルのマイヤーバーを使用して達成された。続いて、このキャストフィルムを、内部に空気を含む対流式オーブン内で165℃の温度で乾燥させた。キャストフィルムはミクロ多孔質ポリマー構造を含まないため、強化ポリマー電解質膜ではない。
【0259】
次いで、キャストフィルムを織物PTFEの層上に置き、PSFAキャストフィルムを織物PTFEと接触させた。次いで、PET及び保護層を含むポリマーシート基材をPFSAキャストフィルムから除去する。次に、PSFAキャストフィルムが2層のPTFE織物の間に位置するように、織物PTFEのさらなる層が適用される。次いで、多層複合膜を160℃で90秒間、960ポンド/平方インチの圧力下でプレスして、最終的な膜-保護層複合体を形成した。
【0260】
織物PTFE材料の層は、Z方向に32撚り/インチ(TPI)で撚られた、200デニールの繊度を有する延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)のフィラメントから得られる。このフィラメントは、メリーランド州エルクトンの W.L. Gore and Associates, Inc. から部品番号 V112407で入手できる。フィラメントは、すべてからみ綜絖を装備した4つのハーネスを使用して、ドルニエレピア織機で平織りスクリム布に織り込まれた。スクリムは、経糸方向に1インチ当たり15本のレノペアエンド(ppi)(すなわち、epiで30本の単一フィラメント)及び緯糸方向に1インチ当たり15本のピック(ppi)を使用して製造された。フィラメント又は織布には仕上げ加工助剤又は製織加工助剤は適用されなかった。布の両側の耳を取り除いて比較サンプルを作成した。
【0261】
実施例の複合電解質膜の特性を表1に示し、
図7及び8にプロットした。短絡圧力の改善を
図7に示す。
図7は、比較可能な膜の平均短絡圧力と本発明の複合電解質膜の平均短絡圧力とを比較するチャートを示す。破裂圧力の改善を
図8に示す。
図8は、比較可能な膜の平均破裂圧力と本発明の複合電解質膜の平均破裂圧力とを比較するグラフを示す。
【0262】
表1及び
図8から、ミクロ多孔質ポリマー構造とスクリムの2つの多孔質層を有する8μmのサンプル(例1)の平均破壊圧力は、強化ポリマー電解質膜内にミクロ多孔質ポリマー構造を有し、多孔質層を有しない8μmのサンプル(比較例1)及びミクロ多孔質ポリマー構造を有せず、スクリムの2つの多孔質層を有する8μmのサンプル(比較例4)を追加した場合よりも高い。表1及び
図8を見ると、平均破裂圧力についても同様の効果が見られ、例1は破裂試験の限界(100psi)よりも強いが、比較例1及び4は30psiよりも高い破裂圧力を達成していない。これらのデータセットは両方とも、ミクロ多孔質ポリマー構造と多孔質層の組み合わせが相乗的な性能効果をもたらすことを示しており、これは驚くべき独創的な結果である。
【表1】
【0263】
表1及び
図7及び
図8から、例2及び比較例2の4μm強化ポリマー電解質膜などのより薄い膜は、短絡保護及び破裂試験における追加の強度のためにスクリムの多孔質層を追加することによって有意な利益を得ることができることが分かる。さらに、このような薄膜設計の場合に、ミクロ多孔質ポリマー構造は、イオン交換膜を取り扱い、多孔質層を有する複合電解質膜に加工するために必要なポリマー電解質膜の構成要素である。ミクロ多孔質ポリマー構造及び多孔質層の両方がなければ、これらの複合電解質膜の性能は有意に低下し、その構造は実現不可能になる可能性がある。
【0264】
本発明を詳細に説明してきたが、本発明の主旨及び範囲内での変更は当業者に容易に明らかであろう。本発明の態様、様々な実施形態の一部、及び上記及び/又は添付の特許請求の範囲に記載された様々な特徴は、全部又は一部を組み合わせたり又は交換したりできることが理解される。様々な実施形態の前述の説明において、別の実施形態を参照するそれらの実施形態は、当業者に理解されるように、他の実施形態と適切に組み合わせることができる。さらに、当業者であれば、前述の説明は単なる例であり、本発明を限定するものではないことを理解するであろう。
【国際調査報告】