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特表2024-524899直流電流および/または交流電流を測定するためのバスバー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】直流電流および/または交流電流を測定するためのバスバー
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/00 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
G01R15/00 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577169
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2022067415
(87)【国際公開番号】W WO2022269069
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】102021116419.2
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515078095
【氏名又は名称】エスエムエイ ソーラー テクノロジー アクティエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SMA Solar Technology AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ミュールハウゼン,フェリックス
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AB05
(57)【要約】
特に電流強度が100アンペアを超える直流電流および/または交流電流を測定するためのバスバー(11、14)は、接続領域(11a)と、接続領域(11a)間に配置され、抵抗領域(11b)内に配置された2つの測定接点(12)を有する、少なくとも1つの抵抗領域(11b)とを有し、バスバー(11、14)の動作中、測定接点(12)の領域には、本質的に電流が流れない形状をバスバー(11、14)は有し、バスバー(11、14)は、一体的に形成される。電流を決定するための、そのようなバスバー(11、14)を有する装置(10)、およびそのような装置を有する電力コンバータも開示される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に100アンペアを超える電流強度の直流電流および/または交流電流を測定するために、接続領域(11a)と、前記接続領域(11a)の間に配置され、前記抵抗領域(11b)内に配置された2つの測定接点(12)を備えた少なくとも1つの抵抗領域(11b)とを備えたバスバー(11、14)であって、
前記バスバー(11)の動作中、測定接点(12)の領域には、本質的に電流が流れない形状を前記バスバー(11、14)は有し、
前記バスバー(11、14)は、一体的に形成される、バスバー(11、14)。
【請求項2】
前記抵抗領域(11b)は、前記バスバー(11、14)の前記接続領域(11a)の断面に対する断面のテーパによって本質的に形成され、前記テーパは、特に、前記抵抗領域(11b)の幅を前記バスバー(11、14)の前記接続領域(11a)の幅の10~60パーセントの値まで減少させることによって形成される、請求項1に記載のバスバー(11、14)。
【請求項3】
前記バスバー(11、14)は、前記接続領域(11a)の一方から反対側の前記接続領域(11a)まで前記バスバー(11、14)の長手方向に前記抵抗領域(11b)を通って延びる長手方向中心軸(LA)を有し、前記測定接点(12)は、前記長手方向中心軸(LA)の領域内に配置され、前記バスバー(11、14)は、少なくとも関連する接続領域間で前記長手方向中心軸(LA)に関して本質的に対称である、請求項1または2に記載のバスバー(11、14)。
【請求項4】
前記バスバー(11、14)は、少なくとも関連する接続領域(11a)の間で、前記バスバー(11、14)の横方向にそれぞれの接続領域(11a)の間の中央を延びるそれぞれの横方向中心軸(QA)に関して本質的に対称であり、前記測定接点(12)は、前記横方向中心軸(QA)に関して本質的に対称的に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載のバスバー(11、14)。
【請求項5】
前記抵抗領域(11b)の形状が、少なくとも2つの凹部(4、4a)を有し、前記少なくとも2つの凹部(4、4a)は、前記測定接点(12)の領域内に配置され、かつ、前記測定接点(12)から長手方向に離間しており、特に各測定接点(12)の領域内に、前記凹部(4、4a)のうちの1つが配置される、請求項1~4のいずれか一項に記載のバスバー(11、14)。
【請求項6】
少なくとも1つの温度センサ(3)が、前記測定接点(12)の間、特に長手方向中心軸(LA)および/または横方向中心軸(QA)の領域内に配置される、請求項1~5のいずれか一項に記載のバスバー(11、14)。
【請求項7】
凹部(4a)が前記測定接点(12)の間に配置され、前記凹部(4a)は、長手方向中心軸(LA)および/または横方向中心軸(QA)に対して本質的に対称であり、特に横方向中心軸(QA)と交差する、請求項1~6のいずれか一項に記載のバスバー(11、14)。
【請求項8】
前記長手方向中心軸(LA)は、1つまたは複数の凹部(4、4a)の対称軸を形成する、および/または少なくとも2つの凹部(4、4a)は、横方向中心軸(QA)に関して本質的に対称的に配置される、請求項1~7のいずれか一項に記載のバスバー(11、14)。
【請求項9】
各測定接点(12)の両側に凹部(4、4a)が配置され、前記凹部(4、4a)は、長手方向中心軸(LA)および/または横方向中心軸(QA)に沿ってそれぞれの前記測定接点(12)に関して本質的に対称に形成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載のバスバー(11、14)。
【請求項10】
前記測定接点(12)の前記領域は、各々が測定点平坦部(5)およびそれぞれの接続クロスピース(9)を有し、前記測定接点(12)は、それぞれの前記測定点平坦部(5)上に配置され、それぞれの前記測定点平坦部(5)は、それぞれの前記接続クロスピース(9)を介して前記抵抗領域(11b)の通電領域に接続されており、前記接続クロスピース(9)は、好ましくは、長手方向中心軸(LA)に対して横方向に延びる、請求項1~9のいずれか一項に記載のバスバー(11、14)。
【請求項11】
前記接続クロスピース(9)は、2~5ミリメートルの幅を有し、前記測定点平坦部(5)の長手方向の広がりが5~12ミリメートルである、請求項10に記載のバスバー(11、14)。
【請求項12】
前記測定点平坦部(5)および前記接続クロスピース(9)の両側に凹部(4、4a)が配置され、前記凹部(4、4a)は、好ましくは、長手方向中心軸(LA)によって中央で交差し、前記長手方向中心軸(LA)の方向に2~10ミリメートルの幅を有する、請求項10または11に記載のバスバー(11、14)。
【請求項13】
前記抵抗領域(11b)および/または前記接続領域(11a)の材料厚さは、2~6ミリメートルである、請求項1~12のいずれか一項に記載のバスバー(11、14)。
【請求項14】
前記バスバー(11、14)は、銅またはアルミニウムで作られる、および/または少なくとも前記凹部(4、4a)は、打ち抜かれている、請求項1~13のいずれか一項に記載のバスバー(11、14)。
【請求項15】
前記測定接点(12)は、前記バスバー(11、14)の圧入穴に圧入される圧入ピンとして設計される、請求項1~14のいずれか一項に記載のバスバー(11、14)。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のバスバー(11、14)と、測定値取得のために前記バスバー(11、14)に対して面平行に配置されたプリント回路基板(2、20)とを有する電流決定装置(10)であって、
前記測定値取得は、抵抗領域(11b)の2つの測定接点(12)間の電圧差の取得と、任意選択で、関連する抵抗領域(11b)の少なくとも1つの温度センサ(3)を介した温度取得とを含む、電流決定装置(10)。
【請求項17】
前記測定値取得は、測定線(7a、7b)を介して行われ、前記測定線(7a、7b)は、周波数に依存する位相および振幅の測定誤差が低減されるように、前記測定接点(12)を共通タッピング点(6)に接続し、前記プリント回路基板(2、20)内の導体経路として設置される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記測定線(7a、7b)は、前記プリント回路基板(2、20)の前記抵抗領域(11b)に面する側で、前記ガイドプレート(2、20)の最も外側の内層として配置される前記プリント回路基板(2、20)の面内を延びる、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記測定線(7a、7b)は、前記測定接点(12)から始まり、抵抗領域(11b)の前記測定接点(12)の少なくとも1つから前記測定線(7a、7b)が配線され、前記測定接点(12)から離れる2つの方向に前記抵抗領域(11b)の縁部まで延びる、特に少なくとも部分的には、前記抵抗領域(11b)の長手方向中心軸(LA)および/または横方向中心軸(QA)に関して本質的に対称に延びるように、共通のタッピング点(6)で集められる、請求項17または18に記載の装置。
【請求項20】
前記測定線(7a、7b)は、本質的に閉じた測定線領域(8)に広がっており、前記測定線領域(8)は、1つの寸法において、前記抵抗領域(11b)の幅の70~100パーセントを含み、前記寸法に垂直な寸法において、前記測定接点(12)間の距離の70~100パーセントを含み、前記測定線(7a、7b)は、好ましくは、接続クロスピース(9)に沿って、かつ前記凹部(4、4a)との重複領域の外側を延びる、請求項17~19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記プリント回路基板(2、20)は、補償構造体(30)を有し、前記補償構造体(30)は、複数の補償経路(40a、40b、40c、40d)を備え、前記複数の補償経路(40a、40b、40c、40d)は、互いに空間的に平行に配置され、前記測定線(7a、7b)のうちの1つに電気的に直列に接続することができ、前記補償経路(40a、40b、40c、40d)は、前記プリント回路基板(2、20)の異なる平面内の導体経路(31、32、33)からなり、それぞれの場合、前記バスバー(11、14)に対して垂直でかつ長手方向中心軸(LA)に対して平行に向けられた表面に広がる、請求項17~20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記補償経路(40a、40b、40c、40d)はそれぞれ、2つの反対向きの補償アームを有し、前記補償アームは、各々の補償経路(40a、40b、40c、40d)によって前記測定線(7a、7b)に接続することができる、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記補償経路(40a、40b、40c、40d)はそれぞれ、嵌合可能な電気コネクタ(41)によって前記測定線(7a、7b)にブリッジまたは接続される、請求項21または22に記載の装置。
【請求項24】
前記電力コンバータによって処理される前記直流電流および/または前記交流電流を流すための通電線を備える電力コンバータであって、前記通電線のうちの少なくとも1つが、請求項16~20のいずれか一項に記載の電流決定装置(10)を含み、前記装置は、前記少なくとも1つの通電線の遮断をブリッジするか、または前記少なくとも1つの通電線に統合されており、前記電力コンバータは、前記バスバー(11、14)の前記抵抗領域(11b)に沿って前記測定接点(12)によって検出された電圧差を使用して、前記電力コンバータの動作中に前記通電線を通って流れる電流を決定するように設計されており、前記電力コンバータは、10kWを超える、好ましくは100kWを超え、特に好ましくは1000kWを超える公称電力を有するように設計される、電力コンバータ。
【請求項25】
電流を決定するためのマルチチャネル装置(13)を備え、前記マルチチャネル装置(13)は、マルチチャネルバスバー(14)を有し、前記マルチチャネルバスバー(14)は、第1の側に、複数の通電線を接続するための少なくとも2つの個別の接続領域(11a)を備え、第2の側に、共通の接続領域(11a)として共通バスバー(16)を備え、それぞれの前記個別の接続領域(11a)と前記共通バスバー(16)との間に配置される抵抗領域(11b)は、それぞれの場合において前記個別の接続領域(11a)と関連付けられる、請求項24に記載の電力コンバータ。
【請求項26】
測定値取得用のプリント回路基板(20)が、前記バスバー(14)に対して面平行に配置され、前記プリント回路基板(20)は、前記複数の抵抗領域(11b)を覆い、前記複数の抵抗領域(11b)の前記測定接点(12)に接続されている、請求項25に記載の電力コンバータ。
【請求項27】
前記プリント回路基板(20)は、ガルバニック絶縁(17)だけでなく、測定された電圧および任意選択で個々の抵抗領域(11b)の温度を前処理するための評価ユニット(18)を備え、前記評価ユニット(18)は、前記ガルバニック絶縁(17)を介して前記電力コンバータの制御ユニットに接続される、請求項26に記載の電力コンバータ。
【請求項28】
前記プリント回路基板(20)は、スロット(19)を有し、前記スロット(19)は、前記抵抗領域(11b)間に配置され、前記プリント回路基板(20)の縁部から前記プリント回路基板(20)の長さの少なくとも半分にわたって長手方向中心軸(LA)に平行に延在する、請求項25~27のいずれか一項に記載の電力コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、特に100アンペアを超える電流強度の直流電流および/または交流電流を測定するためのバスバー、電流決定装置、および電流決定装置を有する電力コンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
バスバーは、バスバーの接続領域間に電流を流すための導電性材料で作られた装置である。
【0003】
電流、特に数百アンペアから数キロアンペアの範囲の大電流を正確に決定するには、低抵抗の測定抵抗器、いわゆるシャントを使用できる。シャントでは、測定タップは通常、抵抗材料のすぐ隣の両側の接続領域で接触する。シャントの抵抗材料は、特に(わずかに)増加した比抵抗によってシャント材料の残りの部分と異なり、例えば、広い温度範囲にわたってさえ電気抵抗の抵抗値が一定であることによって特徴付けられる。
【0004】
例えば、電流を測定するための測定装置はDE102016010012B4から知られており、測定接点としての電圧タップのペアが抵抗材料の両端で降下する電圧を測定し、降下電圧と抵抗材料の抵抗値から、測定回路は、オームの法則を使用して、抵抗材料を流れる電流の測定値を決定する。
【0005】
DE102013005939A1には、高電流範囲におけるシャントの位相誤差の問題が記載されている。そこに記載されている位相誤差を回避するための解決策は、シャント上の異なる位置での複数の電圧測定と、動的重み付け係数による加重平均を含む。
【0006】
DE102020111634B3には、専用の抵抗材料とタップのペアを備え、(片側の)1つのタップが切り込み部を横切る電流の流れを防ぐ切り込み部で囲まれているシャントが記載されている。
【0007】
シャントの圧入穴に圧入される圧入ピンを電圧タップとして使用できる。電流が流れるシャントの領域内の圧入穴内のこのような圧入ピンは、圧入穴の両端の異なる電位間の分圧器として機能する。例えば機械的影響により、圧入接続の異なる端部で遷移抵抗が変化すると、分圧器の変化が生じる。これにより、圧入ピンの有効位置が変化し、シャント電流測定中に電圧降下が測定される2つの測定接点(測定点とも呼ばれる)間の有効距離が変化する。圧入穴の典型的な直径は、金属ワークピースの場合は、例えば1mmである。タッピング長さ、つまり、2つの測定接点間の公称距離が、例えば20mmの場合、圧入穴のそれぞれの外端にある電圧タップの有効位置間の有効距離は、19mm~21mmとすることができ、つまり、測定値は、それ以外は同一の電気的境界条件でも最大10%異なる可能性がある。
【0008】
シャント電流測定の場合、電力損失を許容範囲内に保つために、数マイクロオームの範囲内のシャントが使用される。このような低い測定抵抗を実現するには、高い導電性と大きな断面積を備えた抵抗合金を使用する必要がある。数百アンペアの範囲の公称電流では、そこから測定される電圧降下が、数ミリボルトの範囲になる可能性がある。
【0009】
大きな寸法のシャント抵抗を使用したAC電流測定では、表皮効果および誘導によって重大な位相誤差がさらに発生する可能性がある。シャント電流測定中に発生する可能性のある位相誤差は、本質的に(測定線の配線に応じて)測定線内の誘導電圧と、表皮効果とによって引き起こされ、交流電流の場合はシャント内の電流密度の位置に依存した位相位置が生じる。表皮効果は、周波数および位置に依存する振幅だけでなく、周波数および位置に依存する位相も引き起こし、多くの場合、アプリケーションでは後者の方がはるかに重要になる。誘導電圧は、負荷電流の時間変化する磁場が通過する表面を測定リードがシャントに広がるときに、シャントと評価ユニットの間の測定リードに誘導される。大電流シャントでは、低アンペア領域での通常のシャント電流測定と比較して、磁場が電流とともに直線的に増大し、その影響が測定電圧の低下とともに直線的に増大するため、この効果が明確に測定可能なオーダーで発生する。これら2つの影響の組み合わせは、誘導の影響が主電源周波数とその1桁高調波の範囲内の低周波数でも測定可能な影響を及ぼし、これは主に周波数依存の位相誤差に反映されることを意味する。例えば、インバータブリッジの出力でのAC電流測定の場合、主電源周波数で約3度の位相誤差を持ち、アクティブに制御された高調波の範囲内(例えば250Hz)で約12度の位相誤差を持つ、測定回路基板がはんだ付けされたマンガニンシャントを使用できる。しかしながら、高速スイッチングのパワー半導体を使用する場合は、高周波の高調波を制御するために交流の位相を正確に測定する必要がある。さらに、比抵抗の温度係数が大きい抵抗材料で作られたシャントが使用される場合、周波数依存の位相誤差も温度に依存するため、デジタル周波数応答補償にはコストがかかる。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、可能な限り単純な、および/または最も費用効果の高い設計で可能な限り最良の測定を可能にする電流測定用のバスバーを提供するという目的に基づいている。
【0011】
この目的は、請求項1の構成を有するバスバーによって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0012】
特に100アンペアを超える電流強度の直流電流および/または交流電流を測定するためのバスバーは、接続領域と、接続領域間に配置された少なくとも1つの抵抗領域とを有する。2つの測定接点が、抵抗領域内に配置されている。バスバーは一体的に形成されており、バスバーの動作中に測定接点の領域には本質的に電流が流れない形状を有する。
【0013】
バスバーは、好ましくは、2つの接続領域と、さらに抵抗領域を有し、抵抗領域は、接続領域の間に位置し、本質的に平坦な表面を有する。したがって、抵抗領域は、接続領域間の電気的および機械的接続を確立する。
【0014】
好ましくは銅またはアルミニウムなどの単一材料で作られる電流測定用の一体型バスバーでは、バスバーの形状、特に抵抗領域の形状は、測定接点の領域には電流が流れないが、抵抗領域の主要部分には動作電流が流れ、動作中、例えば電力コンバータでは、数百アンペア、さらには数キロアンペアが流れるように選択される。バスバーを流れるこの動作電流は、2つの測定接点間の抵抗領域の抵抗値を使用して、2つの測定接点間の電圧または電圧差を測定することによって決定できる。ここでの測定接点の大部分が電流の流れない領域により、特に測定接点の特定の位置のシフトに対して測定の許容性がより高いため、より正確な測定が可能になる。また、抵抗領域の通電領域内の電流密度の高い均一性を達成することができる。
【0015】
バスバーの一体設計により、よりシンプルで費用効果の高い構造が実現でき、例えば、統合された抵抗領域と電流の流れない測定接触領域を備えたバスバーの製造を簡素化できる。また、異なる材料間の移行時の問題も回避できる。
【0016】
電流を測定するためのバスバーは、特に、いわゆる電流シャドウ形状を有することができる。これは、バスバーの通電領域に測定タップを配置するのではなく、この目的のために特別に作られたバスバーの一部に測定タップを配置するという考えに基づいており、最終的に測定される電流が流れないか、または非常に弱くのみ流れるように設計されている。この目的のために、様々な形状が考えられる。
【0017】
バスバーの一実施形態では、抵抗領域は、バスバーの接続領域の断面に対する断面のテーパによって本質的に形成され、測定接点は、断面テーパ内に配置される。ここでのテーパは、特に、抵抗領域の幅をバスバーの接続領域の幅の10~60パーセントの値まで減少させることによって形成される。これにより、バスバーの接続領域よりも抵抗領域でより高い電流密度を達成することができ、その結果、バスバーを流れる所与の電流に対してより高い電圧降下が引き起こされる。ここでは、電圧降下を容易に測定できる範囲に引き上げる支援により、抵抗範囲内での関連するより高い損失が許容される。
【0018】
このように局所的に電流密度が増加すると、抵抗領域内で温度上昇を伴う可能性がある。しかしながら、任意選択で、この影響は、抵抗領域を表す温度測定に基づく温度補償によって無効になり、局所的に限定され明確に定義された測定範囲への制限によって過剰補償され得る。
【0019】
抵抗領域として断面テーパを備えた電流測定用一体型バスバーでは、測定接点は、断面テーパ内の抵抗領域に配置される。ここで、抵抗領域の抵抗値は、温度に依存する。したがって、抵抗素子上に配置された温度センサは、測定された温度を使用して抵抗領域の較正された抵抗値を決定することができ、その後、電流を決定するために測定接点間の測定された電圧降下に対してオフセットされるという利点を有する。
【0020】
特に、抵抗素子が銅などの非常に優れた導電性を有する一般的な材料で作られているが、その比抵抗が著しく温度に依存する場合、関連する電圧降下が発生する場所で抵抗材料の温度を正確に測定することが有利である。測定接点間に温度センサを配置すると、この利点が得られる。
【0021】
一実施形態では、バスバーは、接続領域の一方から反対側に位置する接続領域までバスバーの長手方向に抵抗領域を通って延びる長手方向中心軸を有し、測定接点は、長手方向中心軸の領域内に配置され、バスバーは、少なくともそれぞれの接続領域間で、長手方向中心軸に関して本質的に対称である。したがって、電流を測定するためのバスバーは、電流の流れ方向に沿った長手方向中心軸上の中央に測定タップが配置された電流シャドウ形状を有する。これらは、機械的影響および外部磁場に対して優れた堅牢性を有するため、再現性の高い結果を提供できる。
【0022】
一実施形態では、バスバーは、少なくともそれぞれの接続領域間の横方向中心軸に関して本質的に対称となるように設計され、横方向中心軸は、バスバーの横方向において接続領域間の中心を延び、測定接点は、横方向中心軸に関して本質的に対称的に配置される。
【0023】
一実施形態では、バスバーの形状は、抵抗領域内に少なくとも2つの凹部を有し、これらの凹部は、測定接点の領域内に配置され、かつ、測定接点から長手方向に離間しており、特に各測定接点の領域内に、凹部が配置される。凹部は、電流の流れの方向から見たときに凹部が特に測定接点の前または後に配置されるという点で、測定接点の領域の大部分に電流が流れないように配置される。測定接点の領域の外側の抵抗領域の領域は、ここでは、通電領域または電流通過領域と呼ぶことができる。
【0024】
バスバーの一実施形態では、少なくとも1つの温度センサが、測定接点の間、特に長手方向中心軸および/または横方向中心軸の領域内に配置される。個別の温度センサは、好ましくは、長手方向中心軸上および横方向中心軸上に配置することができる。あるいはまた、例えば、2つの温度センサを横方向中心軸上に、かつ長手方向中心軸に関して本質的に対称的に配置することもできる。測定接点は、横方向中心軸に対して、または温度センサ(複数可)の周囲に本質的に対称的に配置することができる。
【0025】
バスバーの一実施形態では、少なくとも1つの凹部が測定接点間に配置され、凹部は、測定接点間に配置され、特に本質的に対称となるように設計され、対称軸として長手方向中心軸および/または横方向中心軸を有する。
【0026】
バスバーの一実施形態では、長手方向中心軸は、1つまたは複数の凹部の対称軸を形成する。代替的または追加的に、少なくとも2つの凹部を横方向中心軸に関して本質的に対称的に配置することができる。
【0027】
バスバーの一実施形態では、それぞれの凹部が、電流の流れの方向で各測定接点の両側に配置され、凹部は、長手方向中心軸に沿って、および/または横方向中心軸に沿って、それぞれの測定接点に対して本質的に対称的に形成される。凹部は、特に、測定接点に関して本質的に点対称、および/または測定接点を通る軸に関して本質的に軸対称とすることができる。特に、凹部は、それぞれの測定接点を通る長手方向中心軸に関して本質的に軸対称とすることができる。
【0028】
バスバーの一実施形態では、測定接点のそれぞれの領域は、各々が測定点平坦部およびそれぞれの接続クロスピースを有し、測定接点は、それぞれの測定点平坦部上に配置される。それぞれの測定点平坦部は、それぞれの接続クロスピースを介して抵抗領域の通電領域に接続されており、接続クロスピースは、好ましくは、長手方向中心軸に対して横方向に延びている。接続クロスピースは、特に、凹部によって境界が定められている。接続クロスピースを介して、測定点平坦部は、測定接点間の電圧差がこれらの界面間の電圧差に本質的に対応するように、接続クロスピースと抵抗領域の通電領域との界面の電位に対応する電位となる。同時に、測定点平坦部と接続クロスピースを備えた形状は、通電領域を長手方向中心軸に平行に流れる動作電流が、横方向中心軸および測定点平坦部に平行に向けられた接続クロスピースを介して流れないように設計されている。これにより、測定点平坦部と接続クロスピース、ひいては測定接点の領域の大部分には、電流が流れない。
【0029】
バスバーの一実施形態では、接続クロスピースは2~5ミリメートルの幅を有し、測定点平坦部の長手方向の広がりは、5~12ミリメートルである。ここでの接続クロスピースの幅とは、接続クロスピースがそれぞれの測定点平坦部を抵抗領域の通電領域に接続する方向に垂直な広がりを指す。接続クロスピースは、好ましくは横方向中心軸に平行に、特にそれぞれの測定点平坦部の両側に対称的に延び、測定点平坦部をバスバーの通電領域に接続する。測定点平坦部の長手方向の広がりとは、接続クロスピースの方向および/または接続クロスピースの方向に対して垂直な方向の測定点平坦部の広がりを指す。
【0030】
バスバーの一実施形態では、凹部は、測定点平坦部および接続クロスピースの両側に配置され、これらの凹部は、好ましくは、長手方向中心軸によって中央で交差し、それぞれの場合において、長手方向中心軸の方向に2~10mmの幅を有する。
【0031】
バスバーの一実施形態では、抵抗領域および/または接続領域の材料厚さは、2~6ミリメートルである。ここでの材料の厚さは、抵抗領域および接続領域のバスバーの厚さに対応する。ここで、抵抗領域の断面とは、抵抗領域の幅とバスバーの厚さを辺長とする面とみなすことができる。
【0032】
バスバーは、電流強度が100アンペアを超える、好ましくは1000アンペアを超える電流を流すように設計することができる。ここで、バスバーは、好ましくは銅またはアルミニウムなどの材料から一体的に形成され、抵抗領域は、本質的にバスバーの接続領域の断面に対する断面のテーパによって形成される。これにより、材料の移行が回避され、製造および組立ての支出が削減される。抵抗領域がマンガニンなどの特殊な抵抗材料で作られたシャントは、かなり高価になる可能性があるので、特に銅製のバスバーを使用する場合、大幅なコスト削減が達成できる。代替的または追加的に、凹部を打ち抜くこともできる。これにより、製造および組立ての費用をさらに削減できる。
【0033】
バスバーの一実施形態では、測定接点は、バスバーの圧入穴に圧入される圧入ピンとして設計される。このようにして、取り付け公差または経年劣化などによる測定のばらつきを最小限に抑えることができる。また、組み立てをより費用効果を高く実現できる。測定接点は、任意選択で、ばね接点、はんだ付け接続、またはバスバーとのねじ接続として設計することもできる。このようにして、高電流用に設計されたバスバー上の測定接点の接触を技術的に簡素化できる。特に、測定誤差を引き起こす可能性がある測定接点の位置決めの不正確さを回避することができる。
【0034】
圧入ピンとバスバーの間の移行抵抗は、機械的影響の影響を受ける可能性がある。したがって、圧入ピンに沿った、特に圧入穴の有限幅に沿った電圧降下が最小限に抑えられるように、バスバーのほぼ電流の流れない領域に圧入接点を配置することが有利である。その結果、バスバーの圧入穴の両端間の電位差または電圧降下を、機械的負荷に応じて、圧入接点が圧入穴の一方の端部ともう一方の端部に時々接触するかどうかは測定技術上問題にならない程度に最小限に抑えることができる。これにより、測定の長期安定性も大幅に向上する。このようにして、測定接点が機械的にわずかにずれたり、電気的特性が変化したりしても、測定のばらつきを最小限に抑えることができる。
【0035】
電流決定装置は、バスバーと、測定値取得のためにバスバーに対して面平行に配置されたプリント回路基板とを有する。プリント回路基板は、バスバー上に面平行に配置されることが好ましい。測定値取得は、抵抗領域の2つの測定接点間の電圧差の取得と、任意選択で、関連する抵抗領域の温度センサを介した温度検出とを含むことができる。ここで、測定接点は、例えば、共通タッピング点での測定線の端点間の電圧を検出する電圧センサが配置される共通タッピング点に測定線を介して接続することができる。ここで、測定線は、プリント回路基板の抵抗領域に面する側のプリント回路基板の最も外側の内層として配置されるプリント回路基板の平面内を延びることができる、および/またはプリント回路基板の他の平面または層内を完全にまたは部分的に延びることができる。
【0036】
これにより、特に導体ループを防止するために、測定接点と評価ユニットとの間の接続を抵抗領域の非常に近くに配置することが可能となる。導体ループは、特に大電流の近くで、特に電流に周期的または過渡的な成分が含まれている場合、電磁効果により測定に重大な障害または歪みを引き起こす可能性がある。
【0037】
回路基板は、温度センサを備えることができ、温度センサがバスバーの抵抗領域と熱的に接続されて配置されるように、バスバーの表面上の抵抗領域に配置することができる。ここで、バスバーの表面と電気的に接触する測定接点は、例えば温度センサの両側に配置され、プリント回路基板上の適切な電圧計を使用することにより、抵抗領域に沿った電圧差を検出するために測定線に接続される。
【0038】
装置の一実施形態では、プリント回路基板は、バスバー上に平らに置かれ、測定接点がバスバーの表面とプリント回路基板の測定線との間の電気的接触を最短経路で確立し、温度センサがシャントの表面上に置かれるようにする。このようにして、高精度な電流測定を達成できる。
【0039】
装置の一実施形態では、測定値取得は、測定線を介して行われ、測定線は、周波数に依存する位相および振幅の測定誤差が低減されるように、プリント回路基板内の導体経路として設置される。測定接点を評価ユニット、特に電圧計に接続するための測定線は、従来の測定線の設置と比較して、例えば測定点と共通タッピング点を直線で直接接続する場合と比較して、大幅に削減されるように、バスバーの表面に対する経路に沿ってプリント回路基板内の導体経路として設置できる。導体経路としての測定線の設置は、例えば、理論的な予備検討に基づいて、および/または数値シミュレーションの助けを借りて行うことができる。
【0040】
装置の一実施形態では、測定線は、測定接点から始まり、共通のタッピング点で集められる。この目的のために、バスバーの長手方向中心軸上またはその近くに配置された測定接点の少なくとも1つから開始して、測定線は、測定接点から離れて2方向に配線され、まず外側に向かって抵抗領域の縁部端まで延び、その後、同様にバスバーの長手方向中心軸上またはその近くに配置された他の測定接点に戻る。ここで、測定線は、いずれの場合も縁部よりも前にすでに反転点に到達しているか、縁部に到達しているか、または縁部を超えている可能性もある。縁部および背面の方向における測定線の経路は、抵抗領域の長手方向中心軸および/または横方向中心軸に対して少なくとも部分的に本質的に対称とすることができる。
【0041】
設置の中心的な構成は、例えば、最初は接続クロスピースに沿って抵抗領域に流れる電流の方向を横切る直線で延び、長手方向および横方向中心軸に対して斜めに、そして抵抗領域の縁部領域に向かって外側に続き、他の測定接点に向かって内側に斜めに戻るコースとすることができ、このコース全体は、長手方向中心軸および/または横方向中心軸に関して本質的に対称である。
【0042】
装置の一実施形態では、測定線は、本質的に閉じた測定線領域に広がっており、測定線領域は、1つの寸法において、抵抗領域の幅の70~100パーセントを含み、これに垂直な寸法において、測定接点間の距離の70~100パーセントを含み、測定線は、好ましくは、接続クロスピースに沿って、かつ凹部との重複領域の外側を延びる。したがって、測定線は、凹部を越えて延びないことが好ましい。
【0043】
装置の一実施形態では、測定線領域にわたる測定線は、互いに平行に延びる複数の導体経路から構成することができ、個々の導体経路は、プリント回路基板の同じ平面または異なる平面に配置することができる。
【0044】
測定線は、特に六角形などの多角形に広がることができ、多角形は、横方向中心軸および/または長手方向中心軸に沿って延びる対称軸を有することができる。多角形の幅は、抵抗領域の幅の約70~100%とすることができる。
【0045】
測定線の特別な設置により、マイクロオーム範囲の電流を測定するためのバスバーを使用したAC電流測定における、周波数および温度に依存する位相誤差と振幅誤差を大幅に削減できる。また、ミリアンペアからキロアンペアまでの非常に広い測定範囲が実現されており、主電源周波数の範囲内と、それを超えて、制御目的に関連する主電源周波数の高調波の範囲内でほぼ線形の周波数応答を示すことができる。
【0046】
寸法が大きい電流測定用バスバーを使用した従来のAC電流測定では、表皮効果および誘導により、著しい位相誤差が発生する可能性がある。電流測定中に発生する可能性のある位相誤差は、上記の測定線の設置によって大幅に回避される。ここで、表皮効果は、周波数および位置に依存する振幅だけでなく、周波数および位置に依存する位相も引き起こし、多くの場合、アプリケーションでは後者の方がはるかに重要になる。バスバーを含む測定線が、測定対象の電流の時間変化する磁場が通過する表面に広がる場合、バスバーと評価ユニットの間の測定線に誘導電圧が発生する。上記の配置により、そのような表面にバスバーが広がるのが回避される。その代わりに、特に測定線がバスバーと平行に向けられた閉じた測定線領域に広がっているという事実により、測定線に誘導された電圧によって実質的に閉じた測定線内で電流が流れ、次いでそのオーミック電圧降下によって誘導電圧が補償されるため、外部交流磁場に対する干渉の影響を大幅に受けにくくなる。したがって、電流測定装置は、高周波での高調波を調整するための交流電流の位相補正測定が有利である、電力コンバータなどの高速スイッチングパワー半導体での使用に非常に適している。
【0047】
装置の一実施形態では、回路基板は、上述の効果をさらに補償するための構成可能な補償構造体として設計され、抵抗領域に配置されたさらなる導体経路を備える。補償構造体の導体経路は、測定線の1つと電気的に直列に接続され、この点で測定線を延長する。特に、補償構造体は、測定線領域に広がる測定線とタッピング点との間に電気的に配置することができるか、または測定線の遮断部に接続することができる。測定線と補償構造体が直列接続されているため、補償構造体の導体経路に誘導される電圧は、測定線に誘導される電圧と重なる。
【0048】
補償構造体は、特に、バスバーの表面に垂直で電流の流れの方向に平行に整列された表面に広がる導体経路からなる補償経路を備える。補償経路は、特に、プリント回路基板の異なる平面または層に配置され、互いに本質的に平行に延びる導体経路と、導体経路を異なる平面内で相互に接続するスルーコンタクトホール、いわゆるビアとを含む。
【0049】
補償経路は、反対方向を向いた2つの補償アームで構成され得る。ここで、補償アームは、例えば接続点から始まり、プリント回路基板の第1の層内の第1の導体経路と、第1の層から第2の層へのビアと、接続点に戻る第1の導体経路と平行に延びるプリント回路基板の第2の層内の第2の導体経路と、プリント回路基板の第2の層から第1の層へのさらなるビアとを備えることができる。補償経路の他の補償アームは、第1の補償アームに対してミラー反転されるように、すなわち、第1の補償アームの反対方向に延在し、かつ抵抗領域の長手方向軸に対してこれもまた平行になるように設計することができる。補償アームの一方または他方を測定線に接続するワイヤーブリッジなどの電気コネクタを使用すると、どの補償アームを測定線に追加するかを選択でき、異なる符号による補償が、補償アームの鏡像構造によって実現され得る。あるいはまた、補償経路全体をワイヤーブリッジでブリッジすることもできる。
【0050】
装置の一実施形態では、複数の補償経路を互いに空間的に平行に配置することができ、電気的に直列に接続することができる。ここで、補償経路は、好ましくは、異なる長さを有し、したがって、異なる補償寄与をもたらす異なるサイズの表面に広がる。さらなる電気コネクタによって、どの補償経路のどの補償アームを測定線に接続するかを選択することができ、個々の補償経路は、適切なコネクタによってブリッジ可能であり、その範囲まで非アクティブである。これにより、異なる積み重ねられた広がった表面との様々な組み合わせが可能になり、ゼロ(補償アームが接続されていない)からいくつかの中間値(同じまたは反対の向きで接続された1つまたは複数の補償アーム)、最大値(同じ向きで接続されたすべての補償経路)までの補償寄与が得られる。
【0051】
電流を決定するための装置は、バスバーと、測定値取得用のプリント回路基板とを有し、上記の構成を有するプリント回路基板は、基本的に抵抗領域と電圧タップを有するバスバー上に配置することができることが理解されるであろう。特に、ここでは、補償構造体を備えたプリント回路基板は、バスバーの特定の形状またはバスバー内の抵抗領域の特定の実現とはほとんど独立している。
【0052】
電力コンバータによって処理される直流電流および/または交流電流を伝導するための通電線を備えた電力コンバータにおいて、通電線のうちの少なくとも1つは、電流決定装置を有し、この装置は、少なくとも1つの通電線の遮断をブリッジするか、または少なくとも1つの通電線に組み込まれる。電力コンバータは、測定接点によって検出されるバスバーの抵抗領域に沿った電圧差を使用することにより、電力コンバータの動作中に通電線を流れる電流を決定するように設定されており、電力コンバータは、10kWを超える、好ましくは100kWを超える、特に好ましくは1000kWを超える公称電力用に設計されている。
【0053】
本願に係るバスバーによって達成可能な高い測定精度により、電力コンバータ内に保持すべきハードウェア予備量を削減すること、および/または電力コンバータに存在する他のハードウェアを用いてより高い公称電力を達成することが可能になる。
【0054】
一実施形態では、電力コンバータは、電流を決定するためのマルチチャネル装置を有し、マルチチャネル装置は、マルチチャネルバスバーを有し、マルチチャネルバスバーは、第1の側に、複数の導電線を接続するための少なくとも2つの個別の接続領域を有し、第2の側に、共通の接続領域として共通バスバーを有する。ここで、個別の接続領域にはそれぞれ、それぞれの個別の接続領域とバスバーとの間に配置される抵抗領域が割り当てられる。
【0055】
ここで、マルチチャネルバスバーは、基本的に異なる電流が流れる同一または異なる寸法の抵抗領域の並列回路を有し、その電流は、それぞれの抵抗領域の測定接点間のそれぞれの電圧降下を介して測定される。ここでの抵抗領域はそれぞれ、上記したように最適化された電流シャドウ形状を有する。マルチチャネルバスバーは、一方の側に互いに電気的に分離された第1の接続領域と、マルチチャンネルバスバーの他方の側に電気的および機械的に互いに接続されたそれぞれの抵抗領域とを有し、共通の第2の接続領域が形成されるようにする。このようなマルチチャンネルバスバーは、例えば、PVシステム(太陽光発電システム)の中央インバータのDC入力セクションで使用して、一方では、太陽光発電モジュールのいくつかのストリングのPV入力電流を個別に測定し、他方では、それらを組み合わされた合計PV電流としてPVバスバーに供給することができる。
【0056】
マルチチャンネルバスバーを使用すると、複数のシングルチャンネルバスバーと比較して材料費の削減を実現できる。製造と組み立てが簡素化され、物流の労力が軽減され得る。
【0057】
電力コンバータの一実施形態では、測定値取得用のプリント回路基板が、バスバーに対して面平行に配置され、特にバスバー上に面平行に配置され、プリント回路基板は、複数の抵抗領域を覆い、複数の抵抗領域の測定接点に接続されている。マルチチャネルバスバー用の共通のプリント回路基板を使用することにより、様々な構成要素を省略でき、これは、例えば、電源、マイクロプロセッサ、アナログデジタルコンバータ、通信ドライバ、配線などの様々な構成要素を複数ではなく単独で実現するだけでよいためである。
【0058】
電力コンバータの一実施形態では、回路基板は、測定された電圧および任意選択で個々の抵抗領域の温度を前処理するための評価ユニット、およびガルバニック絶縁を有し、評価ユニットは、ガルバニック絶縁を介して電力コンバータの制御ユニットに接続されている。通信手段または周囲の電子機器からのガルバニック絶縁を備えた測定電子機器用に共通のプリント回路基板を使用すると、複数の測定チャネルに対してガルバニック絶縁を一度だけ提供すればよいという利点が得られる。これにより、コスト面でのメリットが可能になる。これは、周囲から測定電子機器をガルバニック絶縁する必要がある場合、例えば、PVインバータのDC入力に高いDC電圧が発生する場合に、特に有利である。ここで、この絶縁は、シングルチャネルバスバーごとに個別に設定されるのではなく、一度だけ設定され得る。
【0059】
さらなる実施形態では、マルチチャネルバスバーのプリント回路基板は、スロットを有し、スロットは、抵抗領域間に配置され、プリント回路基板の1つの縁部からプリント回路基板の長さの少なくとも半分にわたって長手方向中心軸と平行に延在する。また、これらのスロットは、反対側の縁部から開始してペアで互いに隣り合って配置することができる。それらは、プリント回路基板を、相互に移動可能であり、それぞれの抵抗領域に個別に割り当てられる個々のサブ領域に分割する。その結果、プリント回路基板は、マルチチャンネルバスバーの個々の抵抗領域または接続領域の相互の変形に追従できるため、プリント回路基板のねじれだけでなく、そのような変形が発生した場合のバスバーの表面からのプリント回路基板の部分的な浮きも防止できる。
【0060】
電力コンバータには、電力コンバータによって処理される直流電流および/または交流電流を流すための通電線がある。通電線の少なくとも1つは、前述の説明に係る電流を決定するための装置を備え、この装置は、通電線の遮断をブリッジするか、または通電線に統合される。電力コンバータは、測定接点によって検出される抵抗領域に沿った電圧差および抵抗領域の抵抗値から、電力コンバータの動作中に通電線を流れる電流を決定するように設定される。ここで、電流強度の対応する計算に使用される抵抗値は、温度センサによって検出された温度の関数とすることができる。
【0061】
好ましい一実施形態では、電力コンバータは、10kWを超える、好ましくは100kWを超える、特に好ましくは1000kWを超える公称電力用に設計される。これらの電力クラスでは、電力コンバータによって処理される直流電流および/または交流電流の決定は、それらの振幅が対応して大きいため特に要求が厳しく、電力コンバータの構造に特に簡単に組み込むことができる説明された電流決定装置を用いて特に正確に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
以下では、本出願の主題を図に示される実施形態を参照してさらに説明及び記載する。
【0063】
図1図1a~図1cは、電流を測定するためのバスバーの実施形態を概略的に示す。
図2図2a及び図2bは、電流を測定するためのバスバーのさらなる実施形態を概略的に示す。
図3図3aは、電流を測定するためのバスバーのさらなる一実施形態を概略的に示す。図3bは、電流を測定するための装置の一実施形態を概略的に示す。
図4図4は、電流を決定するためのマルチチャネル装置の一実施形態を概略的に示す。
図5図5a~図5cは、電流を決定するための装置のプリント回路基板の一実施形態を概略的に示す。
【0064】
図中、同一または類似の要素には同一の符号を付している。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1a~図1cは、本出願に係る電流を測定するためのバスバー11を概略的に示す。
【0066】
図1aに示されるバスバー11は、互いに反対側にある2つの接続領域11aと、接続領域11aの間に配置され、接続領域11aに比べてバスバー11の断面積が小さい抵抗領域11bとを有する。断面積の減少は、図示のバスバー11において、抵抗領域11bにおけるバスバー11の幅の減少によってもたらされ、代替的または追加的に、抵抗領域11bにおけるバスバー11の厚さを、接続領域11aに比べて薄くすることができる。バスバーは一体的に形成され、好ましくは単一の材料、例えば銅またはアルミニウムから作られる。通電導体(図示せず)を一方の接続領域11aに接続し、他方の接続領域11aで導体を継続することにより、バスバー11は導体の遮断をブリッジする。導体に電流が流れると、バスバー11にも同じ電流が、すなわち一方の接続領域11aから抵抗領域11bを介して他方の接続領域11aに流れる。
【0067】
図示のバスバー11は、長手方向中心軸LAおよび横方向中心軸QAに関して本質的に対称的に構造化されている。2つの測定接点12が、長手方向中心軸LAの領域内に配置されている。2つの測定接点12は、横方向中心軸QAに関して本質的に対称的に配置されている。測定接点12間の電圧または電位差は、測定接点12を介して検出することができる。2つの測定接点12を接続する抵抗領域11bの材料の電気抵抗を利用することにより、この電圧差からバスバー11に流れる電流値を決定することができる。
【0068】
測定接点12は、好ましくは圧入ピンとして設計され、これにより、例えば精度に関して製造上の利点がもたらされる。上記の説明は、図1bおよび図1cに示されるバスバー11にも同様に当てはまる。
【0069】
図1aに示されるバスバー11は、凹部4を有し、凹部は、測定接点12の各々に隣接し、各々が長手方向中心軸LAの方向に測定接点12からわずかに離間している。凹部4は、測定接点12にいわゆる電流シャドウを生成するように配置されており、これは、電流が本質的に凹部4の周りを流れ、したがって測定接点12は、凹部4のすぐ近くに配置されているためほとんど電流が流れないことを意味する。これにより、測定接点12間の電圧降下の測定精度を高めることができる。ここでは、凹部4は、横方向に、特に長手方向中心軸LAに対して垂直に配置されている。それらはまた、長手方向中心軸LAに関して本質的に対称であり、横方向中心軸QAに関して互いに本質的に対称であるため、測定接点12は、凹部4の間に配置されている。代替実施形態(図示せず)では、凹部4が測定接点12の間に配置されるように、測定接点12をそれぞれの凹部4の反対側に配置することもできる。
【0070】
図1bに示されるバスバー11は、測定接点12の各々に隣接する2つの凹部4を有し、これらの凹部は、長手方向中心軸LAの方向に見て測定点12の反対側に配置され、実質的に横方向に、特に、長手方向中心軸LAに対して垂直に延在する。凹部4は、測定接点にいわゆる電流シャドウを生成するように配置されている。これは、電流が本質的にペアで配置された凹部4の周囲を流れ、測定接点12には到達しないことを意味する。したがって、凹部4の配置により、測定接点12の領域の大部分は、電流が流れない。図1aのバスバー11と比較して、この電流シャドウの効果は、測定接点12ごとに凹部4を対で配置することによってさらに改善され、測定精度をさらに改善することができる。ここで、凹部4は、長手方向中心軸LAに関して本質的に対称的に形成することができる。測定接点12の領域内の2つの凹部4も本質的に対称であり、特に測定接点12に対して本質的に点対称に形成される。同時に、測定接点12の領域に配置される2つの凹部4は、測定接点12を通る軸に関して互いに本質的に軸対称とすることができる。測定接点12の凹部4は、横方向中心軸QAに関して、他の測定接点12の凹部4と実質的に対称に配置することもできる。
【0071】
図1cに示されるバスバー11は、測定接点12の各々に隣接する凹部4を有する。ここでは、凹部4は横方向に、特に長手方向中心軸LAに対して垂直に配置されている。それらはまた、長手方向中心軸LAに関して本質的に対称的に形成される。2つの凹部4もまた、横方向中心軸QAに関して互いに実質的に対称的に配置されている。また、バスバー11は、2つの測定接点12の間にさらなる凹部4aを有する。さらなる凹部4aは、ここでは、長手方向中心軸LAおよび/または横方向中心軸QAの領域に配置されている。さらなる凹部4aは、例えば、長手方向中心軸LAおよび/または横方向中心軸QAに関して本質的に対称的に形成することができ、特に両方の測定接点12に直接隣接することができる。
【0072】
凹部4および4aは、測定接点12にいわゆる電流シャドウを形成するように配置されており、これは、電流が、本質的に長手方向中心軸LAに沿って配置された凹部4、4aの周りを流れ、凹部4、4aの側の通電領域に本質的に伝導され、その結果、特に測定接点12は、主に、凹部4、4aの配置により電流が流れないことを意味する。さらなる凹部4aにより、測定接点12の領域ではさらに低い電流密度が生じ、抵抗領域11bの通電領域ではさらに均一な電流密度が生じる。これにより、測定精度をさらに高めることができる。
【0073】
図2a及び図2bは、本願に係る電流を測定するためのバスバー11を概略的に示す。
【0074】
図2aに示されるバスバー11は、互いに反対側にある2つの接続領域11aと、接続領域11aの間に配置された抵抗領域11bとを有しており、接続領域11aに比べてバスバー11の断面積が小さくなっている。図示のバスバー11では、断面積の縮小は、抵抗領域11bにおけるバスバー11の幅の縮小によって実現されるが、抵抗領域11bにおけるバスバー11の厚さを低減することによっても実現することができる。バスバーは一体的に形成され、好ましくは単一の材料、例えば、銅またはアルミニウムから作られる。バスバー11が通電導体(図示せず)の遮断をブリッジすると、電流はバスバー11を通って一方の接続領域11aから抵抗領域11bを介して他方の接続領域11aへと流れる。
【0075】
図示のバスバー11は、長手方向中心軸LAおよび横方向中心軸QAに関して本質的に対称的に構造化されている。2つの測定接点12は、長手方向中心軸LAの領域に配置されている。2つの測定接点12は、横方向中心軸QAに関して本質的に対称的に配置されている。測定接点12間の電圧または電位差は、測定接点12を介して検出することができる。2つの測定接点12を接続する抵抗領域11bの材料の電気抵抗を利用することにより、この電圧差からバスバー11に流れる電流値を決定することができる。測定接点12は、好ましくは圧入ピンとして設計され、これにより、例えば精度に関して製造上の利点がもたらされる。
【0076】
図2aおよび図2bに係る実施形態の接続領域11aは、バスバー中心の方向に縁部側延長部を有しており、これは凸部21またはラグとしてテーパ内に延びている。反対側にある接続領域11aから互いに向かって延在する凸部21は、バスバー11の縁部において隙間によって互いに分離されているため、電流は抵抗領域11bのみを流れる。好ましくは、締結具、例えば、ピン15(好ましくは圧入ピン)の形態の締結具を凸部21に設けることができ、これにより、バスバー11を他の構成要素および/または例えばバスバー11上で、必要に応じて電気的接触を行うために、プリント回路基板2、20(図3b~図4を参照)に固定することができる。ピン15は、測定接点12と同じ設計であることが好ましい。これにより、製造をさらに簡素化できる。上記の説明は、図2bに示されるバスバー11にも同様に当てはまる。
【0077】
図2aに示されるバスバー11は、2つの測定接点12の各々の周囲に凹部4を有し、この凹部は、それぞれの測定接点12を三面で取り囲み、「開いた」面は、好ましくは互いに向かい合う。凹部4は、電流が本質的に凹部4の周囲を流れ、測定接点12には到達しないように配置され、その結果、測定接点12の領域は、ほとんど電流が流れない。凹部4は、少なくとも部分的に円形セグメントの曲率を有するか、または3つ以上の直線セグメントから構成することができる。2つの凹部4は、好ましくは、横方向中心軸QAに関して互いに本質的に対称的に配置することができる。凹部4の各々は、それ自体、長手方向中心軸LAに関して本質的に対称的に形成することができる。上記の説明は、図2bに示されるバスバー11にも同様に当てはまる。
【0078】
図2bに示されるバスバーはまた、2つのさらなる凹部4を有し、これらは、長手方向の中心で長手方向中心軸LAと交差し、それぞれの測定接点12から横方向中心軸QAの直前まで延在するように、長手方向中心軸LAの領域に配置される。また、2つのさらなる凹部4は、横方向中心軸QAに関して互いに本質的に対称的に配置されており、その結果、例えば、温度センサなどのさらなる測定点を配置することができる横方向中心軸QAの領域には狭いクロスピースのみが残る。電流は、本質的に長手方向中心軸LAに沿って配置された凹部4の周囲を流れ、凹部4の側方の通電領域内を本質的に流れる。これにより、測定接点12の電流シャドウがさらに改善され、凹部4の側方に残る抵抗領域11bの通電領域における電流密度の均一性がさらに改善される。
【0079】
図3aは、本願に係る電流を測定するためのバスバー11の一実施形態を概略的に示す。バスバー11は、4つの凹部4を有し、凹部4の各々は、測定接点12を半円形に取り囲んでいる。温度センサ3は、長手方向中心軸LAに関して中央にある2つの凹部4の間に配置されている。
【0080】
図3aに係るバスバー11は、図1a、1b、1c、2a、2bで前記したバスバー11と同様に、互いに反対側の2つの接続領域11aと、接続領域11aの間に配置され、接続領域11aに比べてバスバー11の断面積が小さい抵抗領域11bとを有する。図示のバスバー11では、断面積の減少は、バスバー11のその抵抗領域11bの幅の減少によって達成され、代替的または追加的に、厚さの減少を含むことができる。バスバーは、一体的に形成され、好ましくは単一の材料、例えば、銅またはアルミニウムから作られる。バスバー11が接続領域11aに接続された通電導体(図示せず)の遮断をブリッジするとき、電流がバスバー11を通って流れ、電流は、一方の接続領域11aから抵抗領域11bを介して他方の接続領域11aに伝導される。
【0081】
バスバー11は、一方の接続領域11aから反対側の接続領域11aまでバスバー11の長手方向に抵抗領域11bを通って延びる長手方向中心軸LAに関して本質的に対称である。測定接点12は、好ましくは、長手方向中心軸LAの領域内に配置される。図示のバスバー11は、横方向中心軸QAに関して本質的に対称的に構造化することもできる。2つの測定接点12は、横方向中心軸QAに関して本質的に対称的に配置することができる。測定接点12間の電圧または電位差は、測定接点12を介して検出することができる。2つの測定接点12を接続する抵抗領域11bの材料の電気抵抗を利用することにより、この電圧差からバスバー11に流れる電流値を決定することができる。測定接点12は、好ましくは圧入ピンとして設計され、これにより、例えば精度に関して製造上の利点がもたらされる。
【0082】
接続領域11aは、バスバー中心の方向に縁部側延長部を有し、これは凸部21またはテーパ内へのラグとして延在する。反対側の接続領域から互いに向かって延在する凸部21は、バスバー11の縁部において隙間によって互いに分離されており、その結果、電流はもっぱら抵抗領域11bを通って流れる。好ましくは、締結具(例えば、ピン15の形態の締結具(図示せず、図2a、図2bを参照)(好ましくは、圧入ピン))を提供することができ、これにより、バスバー11を他の構成部品に締結すること、および/または、例えばバスバー11上のプリント回路基板2、20(図3b、図4を参照)に締結すること、および任意選択でそれに電気的に接触させることができる。ピン15は、測定接点12と同じ設計とすることができる。
【0083】
2つの測定接点12の各々の領域において、図3aに示されるバスバー11は、測定接点12が配置される測定点平坦部5を有する。各々の測定点平坦部5の反対側の2つの側面には、いずれの場合も凹部4が位置し、凹部4は、測定点平坦部5を部分的に円弧状に取り囲んでいる。凹部4は、それぞれの測定点平坦部5に面する側に少なくとも部分的に円形断面の曲率を有することができる。ここで、測定接点12の凹部4は、横方向中心軸QAに関して他の測定接点の凹部4に関して実質的に対称に配置されることが好ましく、その結果、測定点平坦部5もまた、横方向中心軸QAに関して互いに対称となる。
【0084】
凹部4の各々は、横方向、特に長手方向中心軸LAに対して垂直に延在し、それ自体、長手方向中心軸LAに関して本質的に対称的に形成することができる。凹部4は、各々が長手方向中心軸の方向に2~10ミリメートルの幅を有することができる。測定接点12の領域に配置される2つの凹部4は、測定接点12に対して本質的に対称に、特に測定接点12に対して本質的に点対称に、および/または測定接点12を通って延びる軸に対して本質的に軸対称に、形成することができる。
【0085】
電流は、凹部4の周囲を流れ、測定点平坦部5には到達しないため、測定点平坦部には凹部4を通る電流は本質的に存在しない。そして、測定点平坦部5は、それぞれの場合において、2つの接続クロスピース9を介してのみ、抵抗領域11bの通電領域に接続される。接続クロスピース9は、横方向、特に長手方向中心軸LAに対して垂直に延びることができ、その結果、長手方向中心軸LAに対して本質的に平行に流れる電流は、接続クロスピース5を貫通しないか、または非常にわずかな程度にしか貫通しない。接続クロスピース5を介して、関連する測定点平坦部5は、接続クロスピース5と抵抗領域11bの通電領域との界面の電位に対応する電位となり、その結果、測定接点12間の電圧差は、本質的にこれらの界面間の電圧差に対応する。
【0086】
接続クロスピース9は、2~5ミリメートルの幅、すなわち長手方向中心軸LAの方向の延長部を有することができる。測定点平坦部5は、5~12ミリメートルの長手方向の広がり、すなわち、長手方向中心軸LAおよび/または横方向中心軸QAの方向の広がりを有することができる。したがって、図3aに示されるバスバー11は、例えば、3mmの寸法および構造(凹部4および残りのクロスピース)の最小サイズを有するので低コストのスタンピングプロセスで製造可能である。
【0087】
温度センサ3は、抵抗領域11bの中央および測定接点12間の中央に配置することができ、その結果、温度は、測定接点12間の電圧降下の中央の領域で正確に測定される。その結果、バスバー11の抵抗領域11bにおけるバスバー11の材料の抵抗の温度誘起の変化は、バスバー11を流れる電流の決定に関連して最適に補償することができる。測定接点12だけでなく温度センサ3でも、バスバー11のそれぞれ隣接して反対側に位置する通電領域からの対応する電圧または温度の平均値が利用できる。したがって、バスバー11の反対側の通電領域における不均一な電流または温度分布は、測定値の改ざんにつながることはない。
【0088】
一実施形態(図示せず)では、バスバーの通電領域に2つの温度センサを配置することができる。これは、相互に対向する凹部4が互いに結合して共通の凹部4aを形成する場合に特に有用であり、測定点平坦部間の長手方向中心軸LAに沿って材料は残らない(図1c参照)。2つの温度センサは、横方向中心軸上に、かつ長手方向中心軸に関して本質的に対称的に、すなわち、特に凹部4の側方の通電領域に配置されることが好ましい。これにより、測定対象の電流強度が急激に変化した場合の電流測定の応答動作が改善され、これは、熱が発生する点、つまり抵抗領域の実質的に通電領域で直接測定が行われるためである。
【0089】
図3bは、図3aのバスバー11およびプリント回路基板2を備えた電流を決定するための装置10を示す。プリント回路基板2は、バスバー上に配置することができ、例えばピン15を測定接点12と同じ設計とすることができるピン15(図2a、図2bを参照)によってバスバー11上に、特に凸部21上に固定することができる。
【0090】
プリント回路基板2は、ほぼ空間を空けずに、抵抗領域11bの表面上に配置することができる。したがって、測定接点12間の電圧降下を決定するための評価ユニット18(図示せず)に測定線6a、6b、7a、7bとして測定接点12を接続するプリント回路基板2内の導体経路もまた、抵抗領域11bの表面近くに位置し、電圧測定中の導体ループは大幅に防止される。プリント回路基板2上の測定線7a、7bの配置の形状は、バスバーの形状および電流シャドウの形状とはほぼ独立し得るが、測定線7a、7bが、凹部4を介してではなく、抵抗領域11bの残りの材料の上にわたって延在する場合には有利である。したがって、図3bに示されるようなプリント回路基板2は、例えば図1a、図1b、図1c、図2a、図2bの他のバスバー11と併せて使用することもできる。測定線7a、7bの配置は、それに応じて適合させることができる。
【0091】
したがって、測定線7a、7bは、周波数依存の位相測定誤差が低減されるような方法で、プリント回路基板2内の導体経路として設置される。測定接点12を評価ユニット18(図示せず)に接続するための測定線7a、7bは、位相誤差が、あまり最適化されていない測定線7a、7bの設置に比べて大幅に減少するようにバスバー11の表面上の経路に沿ってプリント回路基板2内の導体経路として設置することができる。図3bに示される装置10の例では、測定線7a、7bは、測定接点12から始まり、多角形の形状の測定線領域8に広がり、測定タッピング線6a、6bを介して共通のタッピング点6で集められる。適切な評価ユニット18(図示せず)は、タッピング点6における2つの測定接点12の電位を取得することができる。測定線7a、7bは、抵抗領域の長手方向中心軸および/または横方向中心軸に関して本質的に部分的に対称に延びることができる。
【0092】
測定線領域8は、特に多角形、例えば六角形に広がることができ、多角形は、横方向中心軸および/または長手方向中心軸に沿って延びる対称軸を有することができる。多角形の幅は、抵抗領域の幅の約70~100%または70~85%にすることができる。また、多角形の辺は、平行に延びる複数の導体経路によって形成できる。
【0093】
装置10の一実施形態では、バスバー11の反対側のプリント回路基板2の側に温度センサ3および評価ユニット18(図示せず)を配置することが可能である。
【0094】
図4は、プリント回路基板20が上に配置されたマルチチャネルバスバー14を有する、電流を決定するためのマルチチャネル装置13を示す。
【0095】
マルチチャネルバスバー14は、第1の側に、複数の通電線を接続するための接続要素22を備えた4つの個別の接続領域11aを有する。マルチチャネルバスバー14は、接続要素22の反対側の第2の側に、共通通電線用の共通接続領域11aとしての共通バスバー16を有する。個別接続領域11aの各々には、それぞれの個別接続領域11aと共通バスバー16との間に配置された抵抗領域11bが割り当てられている。ここで、マルチチャネルバスバー14は、基本的に異なる電流が流れる同一または異なる寸法の抵抗領域11bの並列回路を有し、その電流は、それぞれの抵抗領域11bの測定接点12間のそれぞれの電圧降下を介して測定される。抵抗領域11bは、上記の最適化された電流シャドウ形状を有する。マルチチャンネルバスバー14は、一方の側に互いに電気的に分離された第1の接続領域11aと、マルチチャンネルバスバーの他方の側で互いに電気的かつ機械的に接続されたそれぞれの抵抗領域11bとを有し、共通の第2の接続領域は、共通バスバー16の形態で形成されるようにする。
【0096】
図示の例では、それぞれの抵抗領域11bの形状は、図3aのバスバー11の形状に対応する。抵抗領域11bは、図3aのバスバー11に対応する1つまたは複数の温度センサ3を有し、測定接点12は、図3aのバスバー11に対応する測定点平坦部5上に位置し、接続クロスピース9によって抵抗領域11bの通電領域に接続される。凹部4の配置および形状は、図3aの配置および形状に対応することもでき、横方向中心軸QAと長手方向中心軸LAは、図4に対応して示されている。例えば、図1a、図1b、図1c、図2a、図2bのバスバー11に対応する、個々のバスバー形状からマルチチャンネルバスバーを構築することも可能である。
【0097】
測定値取得用のプリント回路基板20は、バスバー14上に面平行に配置され、プリント回路基板20は、複数の抵抗領域11bを覆い、複数の抵抗領域11bの測定接点12に接続されている。測定線は、プリント回路基板20内に配置され、図3aに示されるものと同様の方法で形成することができ、特にプリント回路基板20内で導体経路として配線される。測定値は、測定接点12から測定線を介して評価ユニット18に送信される。例えば、ガルバニック絶縁17、電源、評価ユニット18、A/Dコンバータ、通信ドライバ、配線など、様々な構成要素は、複数ではなく単独で実現するだけでよいため、マルチチャネルバスバー14用の共通のプリント回路基板20を使用することによって省略することができる。
【0098】
すでに述べた理由により、プリント回路基板20をマルチチャネルバスバー14上で表面とできるだけ面一に配置することが望ましい。電力コンバータにおけるバスバー14の動作中に、特に高い動作電流でマルチチャネルバスバー14に作用する熱的および電気機械的影響により、マルチチャネルバスバー14、特に互いに対する個々の抵抗領域11bの変形、および/またはプリント回路基板20の変形が発生する可能性がある。このような変形により、プリント回路基板20が少なくとも部分的に持ち上げられて、マルチチャネルバスバー14から離れる可能性がある。マルチチャネルバスバー14の表面からプリント回路基板20が持ち上がることは、プリント回路基板20のスロット19によって補償することができ、スロット19はそれぞれ、抵抗領域11b間に配置され、プリント回路基板20の一縁部からプリント回路基板20の長さの少なくとも半分にわたって長手方向中心線LAに平行に延在する。スロット19は、個々の抵抗領域11bに割り当てられたプリント回路基板20のセクションの互いに対するわずかな「ねじれ」を可能にする。その結果、プリント回路基板20は、個々の抵抗領域11bまたは接続領域11aの互いに対する変形に断面ベースで追従することができ、したがって、装置13に対する機械的応力が低減される。
【0099】
図5a~図5cは、電流を決定するための装置のプリント回路基板の一実施形態を異なる視点で示す。図5aは、図3bと同様にバスバー11(ここには図示せず)上に配置することができ、測定接点12によってバスバー11の抵抗領域11bにわたる電圧降下を捕捉することができるプリント回路基板2を示す。この目的のために、測定線領域8に広がり、測定接点12を測定タッピング線6a、6bおよびタッピング点6に接続する測定線7a、7bを、プリント回路基板2は有する。また、好ましくはバスバー11の抵抗領域内に配置され、さらなる測定タッピング線6cを介して測定線7bと電気的に直列に接続される補償構造体30を、プリント回路基板2は有する。
【0100】
特定の構成を有する補償構造体30が図5bに拡大して示されている。ここで、実線は、プリント回路基板2の第1の層(層#1)内の導体経路31を表し、破線は、導体経路32を表し、点線は、プリント回路基板2の第2の層(層#2)または第3の層(層#3)内の導体経路33を表す。層#1、#2、および#3は、プリント回路基板2の異なる平面内に位置する。補償構造体30は、複数の補償経路40a、40b、40c、40dを備え、これらは、互いに平行に配置され、プリント回路基板2がバスバー11上に配置されるとき、バスバー11の長手軸に平行である。補償経路40a、40b、40c、40dはそれぞれ、2つの反対向きの補償アームを有しており、これについては図5cに関連して以下でより詳細に説明する。
【0101】
図5bに係る例示的な特定の構成では、第2の補償経路40bの1つの補償アームだけが測定線7bに接続される。測定タッピング線6cから始まり、以下に説明する回路は、測定線7bの延長として生じる。層#1内の導体経路31は、補償構造体33の水平中心軸に沿って、最初は補償経路40aに関連するはんだ付け点34で終わる。電気コネクタによって、ここでは例えばブリッジ41によって、この半田付け点34は、中心軸上の別の半田付け点34に接続され、その結果、補償経路40aはブリッジされる、すなわち、この例では補償経路40aは使用されない。さらに進むと、導体経路31は、補償経路40bに関連する次のはんだ付け点34に到達する。さらなるブリッジ41によって、補償経路40bの上部補償アームに関連付けられ、層#1と層#2の間のビア35と一致するはんだ付け点34に、導体経路31は接続され、その結果、導体経路31は、ブリッジ41およびビア35を介して層#2内の導体経路32に接続される。補償アームの外側端点では、導体経路32は、層#2と層#3との間のビア36を介してプリント回路基板2の層#3内の導体経路33に接続され、導体経路33は、補償構造体30の中心軸にあるビア36に戻る。そこから、層#2内の導体経路32、ビア35、および導体経路31は、補償経路40cに関連するはんだ付け点34につながる。この例では、補償経路40cおよび40dも使用されず、いずれの場合もブリッジ41によってバイパスされる。最後に、補償構造体の中心軸の両側の導体経路32は、測定タッピング線6cに戻り、そこで結合する。
【0102】
4つの補償経路40a~40dの数、ならびにそれらのそれぞれの長さおよび順序は、単に一例として理解されるべきであることが理解されるであろう。任意の数のさらなる補償経路を有する補償構造体30が考えられ、各々の補償経路は、それぞれの補償アームの1つを測定線7bに接続することによって使用することができるか、またはブリッジして使用しないこともできる。
【0103】
図5cは、図5bの補償経路40bの詳細図を示す。図5bによれば最終的に測定タッピング線6cに接続される導体経路31は、ブリッジ41によって補償経路40bの2つの補償アームのうちの一方に属する導体経路32に接続される。この補償アームは、層#2内の導体経路32のそれぞれのセクション、層#2と層#3の間のビア36、層#3内の導体経路33のセクション、およびさらなるビア36によって形成され、その結果、補償アームは、プリント回路基板の表面に対して垂直(したがって、バスバー11に対して垂直)かつバスバーの長手方向中心軸LAに対して平行に向けられた、ほぼ閉じた導体ループを形成する。対応して配置されたブリッジがないため、補償経路40bの他方の補償アームは測定線7bに接続されず、したがって使用されない。
【0104】
補償経路40bの上部補償アームの代わりに、必要に応じて、補償経路40bの下部補償アームを、対応して配置されたブリッジ41によって測定線7bに接続することができるか、または補償経路40bは使用されず、対応して配置されたブリッジ41によってブリッジされる。また、他の補償経路40a、40c、および/または40dの個々のまたは複数の補償アームは、適切に配置されたブリッジ41によって測定線に接続することができる。反対方向に向けられた補償経路の補償アームは、符号は異なるが同じ大きさの補償効果を引き起こすことに留意すべきである。
【0105】
補償経路40a~40dは、異なる断面積を有する表面に広がるのが好ましい。この目的のために、アームの長さ、すなわちそれぞれの広がった表面の幅と、反対側に位置する導体経路の距離、すなわち広がった領域の高さの両方を適切に選択することができる。さらに、補償アームは、複数のループで構成することができ、それによって広がった表面がそれに応じて増加する。
【0106】
特定の実施形態では、補償アームの長さは、少なくとも1ミリメートル、最大でも20ミリメートルである。プリント回路基板の異なる平面における補償アームの導体経路間の距離は、プリント回路基板の厚さとプリント回路基板内の平面の数によって制限され、約0.2ミリメートル~約10mmである。
【0107】
補償経路40a~40dの異なる大きさの広がった表面の結果として、それぞれの場合において異なる補償効果を伴う多数の組み合わせの選択肢が得られる。図5bに係る特定の例では、上部補償アームを使用することによって合計15の異なる組み合わせを作り出すことができ、下部補償アームのさらなる15の異なる組み合わせ、および下部および上部補償アームを使用するいくつかの混合形態を作り出すことができ、これらは特に、広がった表面が2のべき乗で増加するとき、異なる振幅とおそらく異なる符号を持つ異なる補償効果を有する。
【0108】
例えば図3bに係る装置10における図5aに係るプリント回路基板2の特定の用途では、特定の一実施形態において、どの効果がどの程度測定結果に影響するかを決定するために較正測定を使用することができる。この目的のために、例えばバスバー11に規定の電流を作用させることができ、タッピング点6で検出される電圧信号を評価することができる一方、すべての補償経路40a~40bは、ブリッジされており、その限りにおいて補償構造体は非アクティブである。例えばバスバー11内の電流に対する電圧信号の非線形性を含み得る、検出された測定値の改ざんに応じて、測定される電流が測定ライン7a、7bに及ぼす望ましくない影響、ひいては測定結果に及ぼす望ましくない影響を最小化するために、補償経路40a~40dの補償アームを測定線7bに接続すべきかどうか、接続するとすればどの補償アームを接続すべきかについての決定が行われる。その結果、望ましくない影響の最適な補償を永続的に確保し、特に周波数依存の位相および振幅の測定誤差を最小限に抑える補償構造体の構成が定義される。図4に係るマルチチャネルバスバー14の場合、個々のチャネルの測定を個別に最適化するために、この構成を個々のチャネルの測定に対して個別に定義することができる。
【符号の説明】
【0109】
2 プリント回路基板
3 温度センサ
4、4a 凹部
5 測定点平坦部
6a、6b、6c 測定タッピング線
7a、7b 測定線
8 測定線領域
9 接続クロスピース
10 電流を決定するための装置
11 バスバー
11a 接続領域
11b 抵抗領域
12 測定接点
13 電流を決定するためのマルチチャンネル装置
14 マルチチャンネルバスバー
15 ピン
16 共通バスバー
17 ガルバニック絶縁
18 評価ユニット
19 スロット
20 プリント回路基板
21 凸部
22 接続要素
30 補償構造体
31 層#1内の導体経路
32 層#2内の導体経路
33 層#3内の導体経路
34 はんだ付け点
35 層#1と層#2の間のビア
36 層#2と層#3の間のビア
40a~d 補償経路
41 ブリッジ
LA 長手方向中心軸
QA 横方向中心軸
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図5c
【国際調査報告】