(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/149 20060101AFI20240702BHJP
C07D 307/08 20060101ALI20240702BHJP
C07C 31/20 20060101ALI20240702BHJP
C07D 307/33 20060101ALI20240702BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
C07C29/149
C07D307/08
C07C31/20 B
C07D307/33 150
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577260
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 KR2022009050
(87)【国際公開番号】W WO2022270982
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0083443
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0034844
(32)【優先日】2022-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512088051
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CheilJedang Corporation
【住所又は居所原語表記】CJ Cheiljedang Center, 330, Dongho-ro, Jung-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ソ, ジャン-ウー
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ジンウー
(72)【発明者】
【氏名】ユー, ヨンス
(72)【発明者】
【氏名】イ, ジュー ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジウン
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC21
4H006AC41
4H006AC91
4H006BA05
4H006BA16
4H006BA55
4H006BE20
4H006FE11
4H006FG28
4H039CA60
4H039CB20
4H039CL30
(57)【要約】
本発明は、テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの製造方法に関する。特に、本発明の実施形態によれば、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を用いることにより、優れた生分解性及び生体適合性により環境にやさしいテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの収率が、複雑な追加プロセスを用いることなく効果的に制御され得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を非プロトン性溶媒中で銅ベース触媒を用いた水素化反応に付すステップを含む、テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法。
【請求項2】
前記水素化反応が50℃~500℃の温度及び1bar~100barの圧力で実施される、請求項1に記載のテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法。
【請求項3】
水素ガスが前記水素化反応のステップにおいて注入され、前記水素ガスが、前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)のモノマーのモル数の1倍~500倍のモル数で注入される、請求項1に記載のテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法。
【請求項4】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)及び前記銅ベース触媒を前記非プロトン性溶媒と混合するステップと、混合物を水素化反応に付すステップとを含む、請求項1に記載のテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法。
【請求項5】
前記水素化反応のステップの前に、反応器内の酸素を除去するステップと、水素ガスを注入することにより前記反応器の内圧を1bar~100barに調節するステップとを含む、請求項4に記載のテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法。
【請求項6】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)と前記銅ベース触媒との重量比が1:0.01~5である、請求項4に記載のテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法。
【請求項7】
前記水素化反応が1時間~10時間、200rpm~2,000rpmの撹拌速度で実施される、請求項4に記載のテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法。
【請求項8】
前記非プロトン性溶媒中に前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を溶解させるステップと、
溶解したポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を前記銅ベース触媒を含む触媒床を通過させて水素化反応に付すステップとを含む、請求項1に記載のテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法。
【請求項9】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)に対する前記銅ベース触媒の重量空間速度(WHSV)が0.1h
-1~10h
-1である、請求項8に記載のテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法。
【請求項10】
前記銅ベース触媒が担持体に担持されており、
前記担持体がカーボン、ゼオライト、Al
2O
3、SiO
2、TiO
2、ZrO
2、MgO、及びCr
2O
3からなる群から選択される少なくとも一種を含み、
前記銅ベース触媒が銅触媒又は銅-金属複合触媒であり、
前記銅-金属複合触媒が、銅以外に、Mn、Zn、Mg、Co、Ni、Cr、及びFeからなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む銅-金属複合体を含む、
請求項1に記載のテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法。
【請求項11】
前記担持体がAl
2O
3、SiO
2、TiO
2、又はZrO
2であり、
前記銅ベース触媒がCu触媒、Cu-Mn触媒、Cu-Zn触媒、又はCu-Mg触媒である、請求項10に記載のテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法。
【請求項12】
前記担持体に担持された前記銅ベース触媒中の銅又は銅-金属複合体の含有量が、前記担持体の合計重量に対して0.1重量%~85重量%である、請求項10に記載のテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法。
【請求項13】
前記非プロトン性溶媒が、アセトン、ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル、アクリロニトリル、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、ジメチルプロピレン尿素、及びヘキサメチルリン酸トリアミドからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載のテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法。
【請求項14】
テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの収率が65モル%を超える、請求項1に記載のテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法。
【請求項15】
前記水素化反応の前に、前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を前処理するステップをさらに含み、前記前処理のステップが、溶媒抽出法を用いて前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を精製することを含む、請求項1に記載のテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法。
【請求項16】
前記水素化反応の後、蒸留工程、イオン交換工程、溶媒抽出工程、及び吸着工程からなる群から選択される1つ又は複数の工程により反応生成物を処理するステップをさらに含む、請求項1に記載のテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法。
【請求項17】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)が4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を0.1重量%~100重量%の量で含む、請求項1に記載のテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法。
【請求項18】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)が0.5μm及び5μmの平均粒子径、並びに2.5未満の多分散性指数(PDI)を有する、請求項1に記載のテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を用いるテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法に関する。
【0002】
[背景技術]
テトラヒドロフランは、有機化学分野において広く用いられている溶媒である。テトラヒドロフランは、天然及び合成樹脂の工業スケールでの製造に広く用いられている。このように、テトラヒドロフランの需要は高い。さらに、ガンマ-ブチロラクトンは、様々な合成方法の出発物質として広く用いられている溶媒である。例えば、ガンマ-ブチロラクトンは、N-メチルピロリドン、酪酸、及びその誘導体等の物質の製造において重要な役割を果たす。また、ガンマ-ブチロラクトンは、アクリレート、スチレンポリマー、ポリマー、及び合成樹脂の製造における重要な溶媒としても知られている。
【0003】
従来、コハク酸、マレイン酸、又はそれらの無水物を用いるテトラヒドロフラン又はガンマ-ブチロラクトンの作製方法が用いられてきた。しかし、副反応を制御することが困難であり、目的物の収率は低い。さらに、ブタンジオールを用いるテトラヒドロフラン又はガンマ-ブチロラクトンの製造方法が用いられてきたが、ブタンジオールの価格が比較的高く、製造プロセスが複雑である。従って、所望の材料の収率を制御することが可能であり、優れたプロセス効率を有する製造方法に関する研究が行われている。
【0004】
一方で、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、多くの微生物により産生される数種類のヒドロキシルカルボン酸で構成されている生分解性ポリマーであり、細胞内貯蔵物質として用いられる。ポリヒドロキシアルカノエートは、従来の石油由来の合成ポリマー、例えばポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、及びポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)と同様の物理的特性を有し、完全な生分解性を示し、生体適合性に優れている。
【0005】
[先行技術文献]
[特許文献1]韓国特許出願公開第2001-0095500号
【0006】
[発明の開示内容]
[技術的課題]
従って、本発明は、その優れた生分解性及び生体適合性のおかげで環境にやさしいポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を用いるテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法を提供することを目的とし、複雑な追加プロセスを用いることなく、テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの収率を効果的に制御することを可能とする。
【0007】
[課題の解決方法]
本発明の実施形態によるテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を非プロトン性溶媒中で銅ベース触媒を用いた水素化反応に付すステップを含む。
【0008】
本発明の別の実施形態によれば、上記水素化反応は、50℃~500℃の温度及び1bar~100barの圧力で実施されてもよい。
【0009】
本発明の実施形態によるテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)及び銅ベース触媒を非プロトン性溶媒と混合するステップと、上記混合物を水素化反応に付すステップとを含んでいてもよい。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法は、水素化反応ステップの前に、反応器内の酸素を除去するステップと、水素ガスを注入することにより反応器の内圧を1bar~100barに調節するステップとを含む。
【0011】
本発明の別の実施形態によれば、上記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)と銅ベース触媒との重量比は、1:0.01~5であってもよい。
【0012】
本発明の別の実施形態によれば、上記水素化反応は、1時間~10時間、200rpm~2,000rpmの撹拌速度で実施されてもよい。
【0013】
本発明の実施形態によるテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法は、非プロトン性溶媒中にポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を溶解させるステップと、溶解したポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を銅ベース触媒を含む触媒床を通過させて水素化反応に付すステップとを含んでいてもよい。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、水素ガスは、水素化反応ステップにおいて注入され、上記水素ガスは、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)モノマーのモル数の1倍~500倍のモル数で注入されてもよい。
【0015】
本発明の別の実施形態によれば、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)に対する銅ベース触媒の重量空間速度(WHSV)は0.1h-1~10h-1であってもよい。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、上記銅ベース触媒は担持体に担持されており、上記担持体はカーボン、ゼオライト、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、MgO、及びCr2O3からなる群から選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0017】
本発明の別の実施形態によれば、上記銅ベース触媒は銅触媒又は銅-金属複合触媒であり、銅-金属複合触媒は、銅以外に、Mn、Zn、MgCo、Ni、Cr、及びFeからなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む銅-金属複合体を含んでいてもよい。
【0018】
本発明の別の実施形態によれば、上記担持体はAl2O3、SiO2、TiO2、又はZrO2であってもよく、上記銅ベース触媒はCu触媒、Cu-Mn触媒、Cu-Zn触媒、又はCu-Mg触媒であってもよい。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、上記担持体に担持された銅ベース触媒中の銅又は銅-金属複合体の含有量は、担持体の合計重量に対して0.1重量%~85重量%であってもよい。
【0020】
本発明の別の実施形態によれば、上記非プロトン性溶媒は、アセトン、ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル、アクリロニトリル、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、ジメチルプロピレン尿素、及びヘキサメチルリン酸トリアミドからなる群から選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの収率は65モル%を超え得る。
【0022】
本発明の別の実施形態によれば、テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法は、水素化反応の前に、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を前処理するステップをさらに含んでいてもよく、上記前処理ステップは、溶媒抽出法を用いてポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を精製することを含んでいてもよい。
【0023】
本発明の別の実施形態によれば、テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法は、水素化反応の後、蒸留すること、イオン交換すること、溶媒抽出すること、及び吸着することからなる群から選択される1つ又は複数のことにより反応生成物を処理するステップをさらに含んでいてもよい。
【0024】
本発明の実施形態によれば、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位を0.1重量%~100重量%の量で含んでいてもよい。
【0025】
本発明の実施形態によれば、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は0.5μm及び5μmの平均粒子径を有してもよい。
【0026】
本発明の実施形態によれば、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は2.5未満の多分散性指数(PDI)を有してもよい。
【0027】
[発明の有利な効果]
本発明の実施形態によるテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法において、水素化反応を通じてテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールを製造するために、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)が用いられる。従って、本発明の実施形態によるテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の優れた生分解性及び生体適合性のおかげで環境にやさしい。また、複雑な追加プロセスを用いることなく、テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの収率を効果的に制御することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態によるテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法のフローチャート(S100)を示している。
【
図2】本発明の別の実施形態によるテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法のフローチャート(S200)を示している。
【0029】
[発明を実施するための最良の形態]
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、下記開示内容に限定されないが、発明の趣旨が変更されない限り、様々な形態に改変され得る。
【0030】
本明細書を通して、ある部分がある要素を「含む(comprising)」と表記される場合、他に特に言及のない限り、他の要素が除外されるのではなく、他の要素を含むことができると理解される。
【0031】
本明細書に使用される成分及び反応条件等の量に関連する全ての数値及び表現は、他に示唆がない限り、用語「約(about)」により改変されると理解される。
【0032】
本明細書において、ある要素が別の要素の上(on)又はその下(under)に形成されると言及される場合、1つの要素が別の要素の上(on)に直接的に、又はその下(under)に形成されることのみを意味するのではなく、それらの間に他の要素を挟んで1つの要素が間接的に別の要素の上、又はその下に形成されることも意味する。
【0033】
本発明の実施形態によるテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を非プロトン性溶媒中で銅ベース触媒を用いた水素化反応に付すステップを含む。
【0034】
従来から用いられているテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの製造方法において所望の材料の収率を選択的に制御することは困難であった。具体的には、コハク酸、マレイン酸、又はそれらの無水物を用いてテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールが作製される場合、テトラヒドロフランの収率は向上する可能性があるが、一方で、ガンマ-ブチロラクトン又は1,4-ブタンジオールの収率を向上させるために複雑な追加プロセスを実施する必要があるという問題がある。具体的には、コハク酸又はマレイン酸を無水物に転化させるプロセスをさらに要する、又はエステル化反応等のプロセスをさらに要し、プロセス時間及びコストを増加させ、低プロセス効率につながる。
【0035】
例えば、コハク酸を原材料として用いる場合、発酵ブロスからコハク酸無水物を得るためにバイオマスを除去し、塩酸等を適用することによりpHを3に酸性化し、高温、減圧(180℃、200mbar)蒸留プロセスを追加で実施してコハク酸無水物を得る。さらに、マレイン酸を原材料として用いる場合、具体的には、エタノールのエステル化反応を通じて製造されたマレイン酸ジエチルを原材料として用いる場合、エステル化反応中に形成される酸及び副生成物は触媒の寿命を縮めるおそれがあり、水素化反応の後にエタノールが再度生成され得ることにより、エタノール分離及び回収プロセスを追加で要するとの問題につながる。
【0036】
しかし、本発明の実施形態によるテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法においては、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)が用いられる。従って、本発明の実施形態によるテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の優れた生分解性及び生体適合性のおかげで環境にやさしい。また、複雑な追加プロセスを用いることなく、テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの収率を効果的に制御することが可能であることにより、プロセスを簡略化することができ、プロセス効率に優れる。
【0037】
第一に、本発明の実施形態によるテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を用いて実施される。
【0038】
PHAは、微生物細胞に蓄積する天然の熱可塑性ポリエステルポリマーである。PHAは生分解性材料であるため、堆肥化され、毒性廃棄物を生じることなく、最終的に二酸化炭素、水、及び有機廃棄物に分解され得る。
【0039】
具体的には、PHAは、微生物細胞内に蓄積する天然の熱可塑性ポリエステルポリマーである。栄養素(窒素源及びリン等)が一定の細菌に偏って供給される際に、カーボン及びエネルギーを貯蔵するために、PHA細胞内にPHAが蓄積されることにより形成される。
【0040】
さらに、PHAは、従来の石油由来の合成ポリマー、例えばポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、及びポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)と同様の物理的特性を有し、完全な生分解性を示し、生体適合性に優れている。
【0041】
特に、PBS、PLA、及びPTT等の他の環境にやさしいプラスチック材料とは異なり、PHAは150種類以上のモノマーから合成できるため、何百種類ものPHAをモノマーの種類に応じて作製することができる。モノマーの種類に応じた何百種類ものPHAは完全に異なる構造及び特性を有する。
【0042】
PHAは、生きた細胞中の単一のモノマー繰り返し単位で構成され得るものであり、1つ又は複数のモノマー繰り返し単位を重合させることにより形成され得る。具体的には、PHAはホモ-ポリヒドロキシアルカノエート(以下、ホモPHAと表記する)又は共重合されたポリヒドロキシアルカノエート(以下、共重合されたPHAと表記する)、すなわち、ポリマー鎖中で異なる繰り返し単位が無作為に分布している共重合体であってもよい。
【0043】
PHA中に含有され得る繰り返し単位の例としては、2-ヒドロキシブチレート、乳酸、グリコール酸、3-ヒドロキシブチレート(以下、3-HBと表記する)、3-ヒドロキシプロピオネート(以下、3-HPと表記する)、3-ヒドロキシバレレート(以下、3-HVと表記する)、3-ヒドロキシヘキサノエート(以下、3-HHと表記する)、3-ヒドロキシヘプタノエート(以下、3-HHepと表記する)、3-ヒドロキシオクタノエート(以下、3-HOと表記する)、3-ヒドロキシノナノエート(以下、3-HNと表記する)、3-ヒドロキシデカノエート(以下、3-HDと表記する)、3-ヒドロキシドデカノエート(以下、3-HDdと表記する)、4-ヒドロキシブチレート(以下、4-HBと表記する)、4-ヒドロキシバレレート(以下、4-HVと表記する)、5-ヒドロキシバレレート(以下、5-HVと表記する)、及び6-ヒドロキシヘキサノエート(以下、6-HHと表記する)が挙げられる。PHAは、上記から選択される1つ又は複数の繰り返し単位を含有し得る。
【0044】
具体的には、PHAは3-HB、4-HB、3-HP、3-HH、3-HV、4-HV、5-HV、及び6-HHからなる群から選択される1つ又は複数の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0045】
より詳細には、PHAは4-HB繰り返し単位を0.1重量%~100重量%の量で含んでいてもよい。例えば、PHAは4-HB繰り返し単位を0.2~100重量%、0.5~100重量%、1~100重量%、5重量%~100重量%、10重量%~100重量%、20重量%~100重量%、30重量%~100重量%、40重量%~100重量%、50重量%~100重量%、60重量%~100重量%、70重量%~100重量%、80重量%~100重量%、又は90重量%~100重量%の量で含んでいてもよい。すなわち、PHAは、4-HB繰り返し単位単独で構成されるホモPHA又は4-HB繰り返し単位を含む共重合されたPHAであってもよい。
【0046】
例えば、PHAは、4-HB繰り返し単位を含み、さらに4-HB繰り返し単位とは異なる1つの繰り返し単位、又は2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上の互いに異なる繰り返し単位を含む共重合されたPHAであってもよい。例えば、PHAはポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート(以下、3HB-co-4HBと表記する)であってもよい。
【0047】
さらに、PHAは異性体を含んでいてもよい。例えば、PHAは構造異性体、エナンチオマー、又は幾何異性体を含んでいてもよい。具体的には、PHAは構造異性体を含んでいてもよい。
【0048】
PHAは、テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの収率制御の効果を最大化させる観点から、好ましくは4-HB繰り返し単位単独で構成されるホモPHAであってもよい。
【0049】
さらに、PHAは制御された結晶性を有する共重合されたPHAであってもよい。例えば、PHAは少なくとも1つ以上の4-HB繰り返し単位を含んでいてもよく、そして4-HB繰り返し単位の含有量は、PHAの結晶性を調節するために制御してもよい。
【0050】
例えば、PHAは、3-ヒドロキシブチレート(3-HB)、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)、3-ヒドロキシプロピオネート(3-HP)、3-ヒドロキシヘキサノエート(3-HH)、3-ヒドロキシバレレート(3-HV)、4-ヒドロキシバレレート(4-HV)、5-ヒドロキシバレレート(5-HV)、及び6-ヒドロキシヘキサノエート(6-HH)からなる群から選択される少なくとも1つの繰り返し単位を含む共重合されたポリヒドロキシアルカノエート(PHA)であってもよい。
【0051】
具体的には、共重合されたPHAは4-HB繰り返し単位を含むことができ、3-HB繰り返し単位、3-HP繰り返し単位、3-HH繰り返し単位、3-HV繰り返し単位、4-HV繰り返し単位、5-HV繰り返し単位、及び6-HH繰り返し単位からなる群より選択される1つ又は複数の繰り返し単位をさらに含む。より詳細には、PHAは4-HB繰り返し単位及び3-HB繰り返し単位を含み得る。
【0052】
例えば、上記共重合されたPHAは、3-HB繰り返し単位を共重合されたPHAの合計重量に対して20重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、又は75重量%以上、そして99重量%以下、98重量%以下、97重量%以下、96重量%以下、95重量%以下、93重量%以下、91重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、又は55重量%以下の量で含み得る。
【0053】
結晶性が調節されたPHAは、その分子構造においてその結晶性及びアモルファス性の不規則性が高まるように調節されたものであってもよい。具体的には、モノマーの種類若しくは比率、又は異性体の種類若しくは含有量を調節してもよい。
【0054】
本発明の実施形態によれば、PHAは異なる結晶性を有する2種類以上のPHAを含んでいてもよい。具体的には、PHAは、4-HB繰り返し単位の含有量を特定の範囲内とするために、異なる結晶性を有する2種類以上のPHAを混合することにより作製することができる。
【0055】
具体的には、PHAは、半結晶性PHAである第一のPHAを含んでいてもよい。
【0056】
制御された結晶性を有する半結晶性PHA(以下、scPHAと表記する)として、第一のPHAは、4-HB繰り返し単位を0.1重量%~30重量%の量で含んでいてもよい。例えば、第一のPHAは4-HB繰り返し単位を0.1重量%~30重量%、0.5重量%~30重量%、1重量%~30重量%、3重量%~30重量%、1重量%~28重量%、1重量%~25重量%、1重量%~24重量%、1重量%~15重量%、2重量%~25重量%、3重量%~25重量%、3重量%~24重量%、5重量%~24重量%、7重量%~20重量%、10重量%~20重量%、15重量%~25重量%、又は15重量%~24重量%の量で含んでいてもよい。
【0057】
第一のPHAのガラス転移温度(Tg)は-30℃~80℃、-30℃~10℃、-25℃~5℃、-25℃~0℃、-20℃~0℃、又は-15℃~0℃であってもよい。第一のPHAの結晶化温度(Tc)は70℃~120℃、75℃~120℃、又は75℃~115℃であってもよい。第一のPHAの溶融温度(Tm)は105℃~165℃、110℃~160℃、115℃~155℃、又は120℃~150℃であってもよい。
【0058】
第一のPHAは10,000g/モル~1,200,000g/モル、50,000g/モル~1,100,000g/モル、100,000g/モル~1,000,000g/モル、100,000g/モル~900,000g/モル、200,000g/モル~800,000g/モル、200,000g/モル~600,000g/モル、又は200,000g/モル~400,000g/モルの重量平均分子量を有してもよい。
【0059】
さらに、PHAは、制御された結晶性を有するアモルファスPHA樹脂である、第二のPHAを含んでいてもよい。
【0060】
制御された結晶性を有するアモルファスPHA(以下、aPHAと表記する)として、第二のPHAは、4-HB繰り返し単位を15重量%~60重量%、15重量%~55重量%、20重量%~55重量%、25重量%~55重量%、30重量%~55重量%、35重量%~55重量%、20重量%~50重量%、25重量%~50重量%、30重量%~50重量%、35重量%~50重量%、又は20重量%~40重量%の量で含んでいてもよい。
【0061】
第二のPHAのガラス転移温度(Tg)は、-45℃~-10℃、-35℃~-15℃、-35℃~-20℃、又は-30℃~-20℃であってもよい。
【0062】
さらに、第二のPHAの結晶化温度(Tc)は測定されなくてもよく、又は60℃~120℃、60℃~110℃、70℃~120℃、又は75℃~115℃であってもよい。第二のPHAの溶融温度(Tm)は測定されなくてもよく、又は100℃~170℃、100℃~160℃、110℃~160℃、又は120℃~150℃であってもよい。
【0063】
第二のPHA樹脂は10,000g/モル~1,200,000g/モル、10,000g/モル~1,000,000g/モル、50,000g/モル~1,000,000g/モル、200,000g/モル~1,200,000g/モル、300,000g/モル~1,000,000g/モル、100,000g/モル~900,000g/モル、500,000g/モル~900,000g/モル、200,000g/モル~800,000g/モル、又は200,000g/モル~400,000g/モルの重量平均分子量を有してもよい。
【0064】
第一のPHA及び第二のPHAは、4-HB繰り返し単位の含有量の観点で区別されるものであってもよく、上記ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)、及び溶融温度(Tm)からなる群から選択される少なくとも一種の特性を有していてもよい。具体的には、第一のPHA及び第二のPHAは、4-HB繰り返し単位の含有量、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tg)、及び溶融温度(Tm)等の観点で区別されるものであってもよい。
【0065】
本発明の実施形態によれば、PHAは第一のPHAを含んでいてもよく、又は第一のPHAと第二のPHAの両方を含んでいてもよい。
【0066】
具体的には、PHAが半結晶性PHAである第一のPHA、又は、半結晶性PHAである第一のPHAとアモルファスPHAである第二のPHAの両方を含む場合、より詳細には、第一のPHAと第二のPHAの含有量が調節されている場合、所望の材料の収率をより効果的に制御することが可能である。
【0067】
さらに、PHAのガラス転移温度(Tg)は、-45℃~80℃、-35℃~80℃、-30℃~80℃、-25℃~75℃、-20℃~70℃、-35℃~5℃、-25℃~5℃、-35℃~0℃、-25℃~0℃、-30℃~-10℃、-35℃~-15℃、-35℃~-20℃、-20℃~0℃、-15℃~0℃、又は-15℃~-5℃であってもよい。
【0068】
PHAの結晶化温度(Tc)は測定されなくてもよく、又は60℃~120℃、60℃~110℃、70℃~120℃、75℃~120℃、75℃~115℃、75℃~110℃、又は90℃~110℃であってもよい。
【0069】
PHAの溶融温度(Tm)は測定されなくてもよく、又は100℃~170℃、105℃~170℃、105℃~165℃、110℃~160℃、115℃~155℃、110℃~150℃、120℃~150℃、又は120℃~140℃であってもよい。
【0070】
さらに、PHAは10,000g/モル~1,200,000g/モルの重量平均分子量を有してもよい。例えば、PHA樹脂の重量平均分子量は50,000g/モル~1,200,000g/モル、100,000g/モル~1,200,000g/モル、50,000g/モル~1,000,000g/モル、100,000g/モル~1,000,000g/モル、200,000g/モル~1,200,000g/モル、250,000g/モル~1,150,000g/モル、300,000g/モル~1,100,000g/モル、350,000g/モル~1,000,000g/モル、350,000g/モル~950,000g/モル、100,000g/モル~900,000g/モル、200,000g/モル~800,000g/モル、200,000g/モル~700,000g/モル、250,000g/モル~650,000g/モル、200,000g/モル~400,000g/モル、300,000g/モル~800,000g/モル、300,000g/モル~600,000g/モル、500,000g/モル~1,200,000g/モル、500,000g/モル~1,000,000g/モル、550,000g/モル~1,050,000g/モル、550,000g/モル~900,000g/モル、600,000g/モル~900,000g/モル、又は500,000g/モル~900,000g/モルであってもよい。
【0071】
PHAは、示差走査熱量計(DSC)により測定される90%以下の結晶性を有してもよい。例えば、PHAの結晶性は示差走査熱量計で測定することができ、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、又は70%以下であってもよい。
【0072】
さらに、PHAは、0.5μm~5μmの平均粒子径を有してもよい。例えば、PHAは、0.5μm~5μm、0.5μm~4.5μm、0.7μm~4μm、1μm~3.5μm、又は1.2μm~3.5μmの平均粒子径を有してもよい。
【0073】
PHAの平均粒子径は、ナノ粒子径測定装置(例えば、Zetasizer Nano ZS)を用いて測定してもよい。具体的には、PHAは、25℃の温度及び175°の測定角度でZetasizer Nano ZS(製造者:Marven)を用いた動的光散乱(DLS)を通じた平均粒子径の測定に付される。このような事態において、0.5の信頼区間における多分散性指数(PDI)を通じて導出されたピーク値を粒子径とする。
【0074】
PHAは2.5未満の多分散性指数(PDI)を有してもよい。例えば、PHAの多分散性指数は、2.5未満、2.3以下、2.1以下、又は2.0以下であってもよい。
【0075】
PHAの平均粒子径及び多分散性指数のそれぞれが上記範囲を満たす場合、所望の材料の収率をより効果的に制御することが可能である。
【0076】
さらに、PHAは、非機械的な方法又は化学的な方法を用いた細胞破壊により得られるものであってもよい。具体的には、PHAは微生物細胞内に蓄積し、比較的大きな平均粒子径を有する天然の熱可塑性ポリエステルポリマーであるため、所望の材料の収率をより効果的に制御し、プロセス効率を高めるための破壊プロセスを通じて得ることができる。
【0077】
本発明の実施形態によるテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を用いる水素化反応を通じて実施される。
【0078】
具体的には、上記水素化反応は、非プロトン性溶媒中で銅ベース触媒を用いて実施されてもよい。より詳細には、上記水素化反応は、水素の存在下で、PHA、非プロトン性溶媒、及び銅ベース触媒を用いて実施されてもよい。
【0079】
上記水素化反応は、50℃~500℃の温度及び1bar~100barの圧力で実施されてもよい。例えば、上記水素化反応は、55℃~480℃、80℃~460℃、100℃~420℃、150℃~400℃、200℃~360℃、220℃~350℃、250℃~350℃、270℃~310℃、275℃~300℃、280℃~290℃、50℃~300℃、80℃~250℃、100℃~220℃、120℃~205℃、155℃~200℃、又は175℃~195℃の温度で、及び5bar~75bar、10bar~100bar、10bar~65bar、1bar~55bar、5bar~35bar、10bar~30bar、15bar~55bar、30bar~90bar、45bar~80bar、又は45bar~65barの圧力で実施されてもよい。水素化反応の温度及び圧力を上記範囲内でそれぞれ制御する場合、所望の材料の収率を選択的に制御し、プロセス安定性を向上させ、プロセスコストを削減することが可能である。
【0080】
本発明の別の実施形態によれば、水素ガスは、水素化反応ステップにおいて注入され、上記水素ガスは、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)モノマーのモル数の1倍~500倍のモル数で注入されてもよい。
【0081】
具体的には、上記水素化反応は水素の存在下で実施できる。より詳細には、水素化反応ステップにおいて水素ガスを注入することにより実施されてもよい。
【0082】
例えば、水素化反応ステップにおいて、水素ガスは、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)モノマーのモル数の1倍~350倍、2倍~250倍、5倍~100倍、10倍~80倍、又は30倍~60倍で注入されてもよい。
【0083】
上記非プロトン性溶媒は、アセトン、ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル、アクリロニトリル、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、ジメチルプロピレン尿素、及びヘキサメチルリン酸トリアミドからなる群から選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。上記非プロトン性溶媒は、所望の材料に応じて選択的に使用してもよい。
【0084】
さらに、上記銅ベース触媒は、担持体に担持された触媒であってもよい。具体的には、上記銅ベース触媒は、担持体に担持されており、上記担持体は、カーボン、ゼオライト、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、MgO、及びCr2O3からなる群から選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0085】
さらに、上記銅ベース触媒は、銅触媒又は銅-金属複合触媒であってもよく、上記銅-金属複合触媒は、銅以外に、Mn、Zn、MgCo、Ni、Cr、及びFeからなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む銅-金属複合体を含んでいてもよい。
【0086】
より詳細には、上記銅ベース触媒は、担持体に担持された銅ベース触媒である。上記担持体はAl2O3、SiO2、TiO2、又はZrO2であってもよく、上記銅ベース触媒はCu触媒、Cu-Mn触媒、Cu-Zn触媒、又はCu-Mg触媒であってもよい。例えば、上記銅ベース触媒は、Cu/Al2O3、CuZn/Al2O3、CuMn/Al2O3、Cu/SiO2、Cu/ZrO2、Cu/TiO2、CuMn/SiO2、CuMn/ZrO2、又はCuMn/TiO2であってもよいが、これらに限定されない。
【0087】
さらに、上記担持体に担持された銅ベース触媒中の銅又は銅-金属複合物の含有量は、担持体の合計重量に対して0.1重量%~85重量%であってもよい。例えば、上記銅ベース触媒は、担持体の合計重量に対して85重量%以下の銅又は銅-金属複合物が担持された触媒であってもよい。より詳細には、銅又は銅-金属複合物の含有量は、担持体の合計重量に対して80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、64重量%以下、30重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、又は5.5重量%以下、及び0.1重量%以上、0.5重量%以上、1.5重量%以上、又は2重量%以上、又は0.1重量%~85重量%、0.5重量%~75重量%、1重量%~70重量%、2重量%~68重量%、5重量%~66重量%、8重量%~64重量%、0.1重量%~25重量%、0.2重量%~20重量%、0.5重量%~13重量%、1重量%~10重量%、1.5重量%~8重量%、又は2重量%~5重量%であってもよい。
【0088】
銅ベース触媒は、10μm~2,000μmの平均粒子径を有してもよい。例えば、銅ベース触媒の平均粒子径は、25μm~1,500μm、50μm~1,000μm、100μm~800μm、又は200μm~500μmであってもよい。
【0089】
さらに、銅ベース触媒は500m2/g以下の表面積を有してもよい。例えば、銅ベース触媒の表面積は350m2/g以下、300m2/g以下、100m2/g以下、又は80m2/g以下であってもよい。
【0090】
バッチ反応
本発明の実施形態によるテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)及び銅ベース触媒を非プロトン性溶媒と混合するステップと、上記混合物を水素化反応に付すステップとを含んでいてもよい。
【0091】
さらに、テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法は、水素化反応ステップの前に、反応器内の酸素を除去するステップと、水素ガスを注入することにより反応器の内圧を1bar~100barに調節するステップとを含んでいてもよい。酸素の除去は水素ガスを用いて実施できるが、これらに限定されない。
【0092】
水素ガスの注入量は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の重量の1倍~500倍であってもよい。例えば、水素ガスの注入量は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)モノマーの重量の1倍~350倍、2倍~250倍、5倍~100倍、10倍~80倍、又は30倍~60倍であってもよい。
【0093】
さらに、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)と銅ベース触媒との重量比は、1:0.01~5であってもよい。例えば、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の銅ベース触媒に対する重量比は、1:0.02~4.5、1:0.05~2.5、1:0.08~2.2、1:0.1~2、1:0.1~1.2、1:0.1~1、1:0.1~0.8、1:0.1~4、1:0.5~3.5、1:1~3、1:1.2~2.5、又は1:1.5~2.2であってもよい。ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)と銅ベース触媒との重量比が上記範囲内に調節されている場合、所望の材料の収率を効果的に制御することが可能である。
【0094】
さらに、上記水素化反応は、1時間~10時間、200rpm~2,000rpmの撹拌速度で実施されてもよい。例えば、上記撹拌速度は250rpm~1,500rpm、300rpm~1,200rpm、400rpm~1,000rpm、450rpm~900rpm、500rpm~750rpm、又は520rpm~700rpmであってもよく、上記反応時間は1時間~9時間、2時間~7.5時間、4.5時間~7時間、又は5.5時間~6.5時間であってもよい。
【0095】
連続反応
本発明の別の実施形態によるテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法は、非プロトン性溶媒中にポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を溶解させるステップと、溶解したポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を銅ベース触媒を含む触媒床を通過させて水素化反応に付すステップとを含んでいてもよい。
【0096】
上記溶解ステップは、非プロトン性溶媒中にPHAを0.1重量%~30重量%となるように溶解させるステップであってもよい。例えば、溶解したPHAの含有量は0.1重量%~20重量%、0.2重量%~16重量%、0.5重量%~10重量%、0.6重量%~8重量%、0.7重量%~6重量%、0.8重量%~3重量%、又は0.9重量%~2重量%であってもよい。
【0097】
さらに、連続反応において、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)に対する銅ベース触媒の重量空間速度(WHSV)は0.1h-1~10h-1であってもよい。例えば、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)に対する銅ベース触媒の重量空間速度(WHSV)は0.02h-1~5h-1、0.05h-1~2h-1、0.1h-1~1h-1、又は0.2h-1~0.5h-1であってもよい。
【0098】
本発明の実施形態によれば、テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの収率は65モル%を超え得る。例えば、テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの収率は、67モル%以上、69モル%以上、70モル%以上、71モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、90モル%以上、91モル%以上、93モル%以上、95モル%以上、97モル%以上、又は99モル%以上であり得る。上記収率は、水素化反応を通じて得られた最終生成物にガスクロマトグラフィー(GC)を用いて測定できる。
【0099】
具体的には、テトラヒドロフランの収率は65モル%を超え得る。例えば、テトラヒドロフランの収率は67モル%以上、69モル%以上、70モル%以上、71モル%以上、80モル%以上、95モル%以上、又は97モル%以上であり得る。
【0100】
より詳細には、上記銅ベース触媒が6重量%~85重量%の銅が担持されたCu/Al2O3又はCuMn/Al2O3である場合、テトラヒドロフランの収率は65モル%を超え得る。例えば、上記銅ベース触媒が銅を6重量%~80重量%、7重量%~75重量%、6重量%~65重量%、又は8重量%~64重量%の量で含有するCu/Al2O3又はCuMn/Al2O3触媒である場合、テトラヒドロフランの収率は65モル%を超え得る。
【0101】
さらに、55℃~480℃、80℃~460℃、100℃~420℃、150℃~400℃、200℃~360℃、220℃~350℃、250℃~350℃、270℃~310℃、275℃~300℃、又は280℃~290℃の温度で、及び10bar~100bar、30bar~90bar、45bar~80bar、又は45bar~65barの圧力で水素化反応が実施される場合、テトラヒドロフランの収率は65モル%を超え得る。
【0102】
あるいは、ガンマ-ブチロラクトンの収率は65%を超え得る。例えば、ガンマ-ブチロラクトンの収率は67モル%以上、69モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、95モル%以上、又は99モル%以上であり得る。
【0103】
具体的には、水素化反応が1bar~75barの圧力で実施される場合、ガンマ-ブチロラクトンの収率は65%を超え得る。例えば、水素化反応が5bar~75bar、10bar~65bar、15bar~55bar、1bar~35bar、10bar~25bar、30bar~65bar、又は45bar~55barで実施される場合、ガンマ-ブチロラクトンの収率は65モル%を超え得る。
【0104】
さらに、銅ベース触媒の担持体がSiO2又はTiO2を含む場合、ガンマ-ブチロラクトンの収率は65モル%を超え得る。
【0105】
さらに、触媒が、8重量%未満の量の銅が担持されたCu/Al2O3触媒である場合、ガンマ-ブチロラクトンの収率は65%を超え得る。例えば、触媒が、8重量%未満、7重量%以下、6重量%以下、0.1重量%~7重量%、0.5重量%~8重量%、1重量%~6重量%、又は1.5重量%~5.5重量%の量の銅が担持されたCu/Al2O3触媒である場合、ガンマ-ブチロラクトンの収率は65モル%を超え得る。
【0106】
あるいは、1,4-ブタンジオールの収率は65モル%を超え得る。例えば、1,4-ブタンジオールの収率は70モル%以上、85モル%以上、90モル%以上、91モル%以上、又は93モル%以上であり得る。
【0107】
例えば、水素化反応が50℃~300℃、80℃~250℃、100℃~220℃、120℃~205℃、155℃~200℃、又は175℃~195℃の温度で、及び10bar~100bar、30bar~90bar、45bar~80bar、又は45bar~65barの圧力で実施される場合、1,4-ブタンジオールの収率は65モル%を超え得る。
【0108】
本発明の別の実施形態によれば、テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法は、水素化反応の前に、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を前処理するステップをさらに含んでいてもよい。
【0109】
具体的には、上記前処理ステップは、溶媒抽出法を用いてポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を精製することを含んでいてもよい。溶媒抽出法は、ジオキサン、クロロホルム、及び塩化メチレンからなる群から選択される1つ又は複数の溶媒を用いて実施されてもよい。
【0110】
例えば、PHA、すなわち、PHA培地又は発酵ブロスから得られた乾燥物を溶媒と混合してPHAを抽出するステップ、細胞残渣を分離するステップ、そして細胞残渣をエタノールに滴下して加えて回収するステップによる溶媒抽出法を実施されてもよい。
【0111】
さらに、テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの作製方法は、水素化反応の後、蒸留すること、イオン交換すること、溶媒抽出すること、及び吸着することからなる群から選択される1つ又は複数のことにより反応生成物を処理するステップをさらに含んでいてもよい。これらの処理ステップを追加で実施する場合、上記収率を効果的に制御することができる。
【0112】
蒸留は、通常使用される蒸留法を用いて実施されてもよい。イオン交換、溶媒抽出、及び吸着は、通常使用される方法を用いて、本発明の効果が損なわれない限り、それぞれ実施されてもよい。
【0113】
例えば、蒸留塔のレシーバーを用いて反応生成物を加熱するステップ、コンデンサーを備える蒸留塔の最上部から生成した蒸気を凝縮して生成物を分離するステップ、及び生成物を回収するステップにより蒸留を実施されてもよい。
【0114】
蒸留は、50℃~250℃の温度、及び10Torr~760Torrの減圧下で実施されてもよい。例えば、蒸留は、50℃~200℃又は80℃~200℃の温度、及び20Torr~700Torr又は30Torr~500Torrの減圧下で実施されてもよい。
【0115】
[発明の形態]
以下、下記実施例を参照しながら本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は本発明を説明することを意図しており、実施例の範囲はそれらのみに限定されない。
【0116】
[実施例]
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)ペレットの作製
作製例1-1
400mlのポリヒドロキシアルカノエート(PHA)培地を、高速遠心分離機を用いて3,800rpmで20分間撹拌させて、上澄みを除去した。その後、400mlの蒸留水を加えて混合し、上澄みを同一条件下で高速遠心分離機を用いてもう一度除去した。その後、それを-70℃及び真空で凍結乾燥し、ホモジナイザー(製品名:Homomixer Mark2、製造者:Primix)を用いて平均粒子径が1μmとなるように均一に粉砕した。
【0117】
50gの粉砕された材料を1リットルのクロロホルム(製造者:Daejung Chemicals & Metals)と混合し、55℃で1.5時間撹拌させた。細胞残渣をろ過により除去し、クロロホルムのろ液を5リットルのエタノールに滴下して加えた。その後、析出したPHAを回収し、40℃の真空オーブン内で乾燥させて、PHAペレット(回収率:90%、純度:99%、4-ヒドロキシブチレート(4-HB)の含有量:100重量%)を作製した。
【0118】
触媒の作製
作製例2-1:Cu/Al2O3触媒の作製
5gのアルミナ(Al2O3、Strem)及び1.52gの硝酸銅三水和物(Cu(NO3)2・3H2O、製造者:Daejung Chemicals & Metals)が溶解した250mlの水溶液を室温で10時間撹拌してスラリーを作製した。真空ロータリーエバポレーターを用いてスラリー中の溶媒を除去した後、105℃に維持された循環オーブン内で12時間乾燥させた。
【0119】
その後、乾燥した銅-アルミナ複合物を空気雰囲気下で500℃で4時間焼結した後、5%水素及び窒素雰囲気下で500℃で2時間還元させた。その後、室温で十分に冷却し、1%酸素及び窒素雰囲気下で0.5時間安定化させて8重量%の銅がアルミナ担持体に担持されたCu/Al2O3触媒を作製した。
【0120】
作製例2-2:Cu/Al2O3触媒の作製
0.38gの硝酸銅三水和物(Cu(NO3)2・3H2O、製造者:Daejung Chemicals & Metals)を用いた以外は、2重量%の銅が担持されたCu/Al2O3触媒を作製例2-1と同様の手法で作製した。
【0121】
作製例2-3:Cu/Al2O3触媒の作製
0.95gの硝酸銅三水和物(Cu(NO3)2・3H2O、製造者:Daejung Chemicals & Metals)を用いた以外は、5重量%の銅が担持されたCu/Al2O3触媒を作製例2-1と同様の手法で作製した。
【0122】
作製例2-4:Cu/Al2O3触媒の作製
3.04gの硝酸銅三水和物(Cu(NO3)2・3H2O、製造者:Daejung Chemicals & Metals)を用いた以外は、16重量%の銅が担持されたCu/Al2O3触媒を作製例2-1と同様の手法で作製した。
【0123】
作製例2-5:Cu/Al2O3触媒の作製
6.08gの硝酸銅三水和物(Cu(NO3)2・3H2O、製造者:Daejung Chemicals & Metals)を用いた以外は、32重量%の銅が担持されたCu/Al2O3触媒を作製例2-1と同様の手法で作製した。
【0124】
作製例2-6:Cu/Al2O3触媒の作製
12.16gの硝酸銅三水和物(Cu(NO3)2・3H2O、製造者:Daejung Chemicals & Metals)を用いた以外は、64重量%の銅が担持されたCu/Al2O3触媒を作製例2-1と同様の手法で作製した。
【0125】
作製例2-7:CuZn/Al2O3触媒の作製
1.8gの亜鉛前駆体硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO3)2・6H2O、製造者:Sigma-Aldrich)を追加で用いた以外は、8重量%の銅及び8重量%の亜鉛がアルミナ担持体に担持されたCuZn/Al2O3触媒を作製例2-1と同様の手法で作製した。
【0126】
作製例2-8:CuMn/Al2O3触媒の作製
2.1gのマンガン前駆体硝酸マンガン六水和物(Mn(NO3)2・6H2O、製造者:Junsei)を追加で用いた以外は、8重量%の銅及び8重量%のマンガンがアルミナ担持体に担持されたCuMn/Al2O3触媒を作製例2-1と同様の手法で作製した。
【0127】
作製例2-9:Cu/SiO2触媒の作製
アルミナに代えてシリカ(SiO2、製造者:Strem)を用いた以外は、8重量%の銅がシリカ担持体に担持されたCu/SiO2触媒を作製例2-1と同様の手法で作製した。
【0128】
作製例2-10:Cu/ZrO2触媒の作製
アルミナに代えてジルコニア(ZrO2、製造者:Sigma-Aldrich)を用いた以外は、8重量%の銅がジルコニア担持体に担持されたCu/ZrO2触媒を作製例2-1と同様の手法で作製した。
【0129】
作製例2-11:Cu/TiO2触媒の作製
アルミナに代えてチタニア(TiO2、製造者:Sigma-Aldrich)を用いた以外は、8重量%の銅がチタニア担持体に担持されたCu/TiO2触媒を作製例2-1と同様の手法で作製した。
【0130】
作製例2-12:CuMn/SiO2触媒の作製
2.1gのマンガン前駆体硝酸マンガン六水和物(Mn(NO3)2・6H2O、製造者:Junsei)を追加で用いた以外は、8重量%の銅及び8重量%のマンガンがシリカ担持体に担持されたCuMn/SiO2触媒を作製例2-7と同様の手法で作製した。
【0131】
作製例2-13:CuMn/ZrO2触媒の作製
2.1gのマンガン前駆体硝酸マンガン六水和物(Mn(NO3)2・6H2O、製造者:Junsei)を追加で用いた以外は、8重量%の銅及び8重量%のマンガンがジルコニア担持体に担持されたCuMn/ZrO2触媒を作製例2-8と同様の手法で作製した。
【0132】
作製例2-14:CuMn/TiO2触媒の作製
2.1gのマンガン前駆体硝酸マンガン六水和物(Mn(NO3)2・6H2O、製造者:Junsei)を追加で用いた以外は、8重量%の銅及び8重量%のマンガンがチタニア担持体に担持されたCuMn/TiO2触媒を作製例2-9と同様の手法で作製した。
【0133】
水素化反応を用いた生成物の作製
実施例1-1
オートクレーブ反応器に作製例1-1で作製されたPHAペレット1g、ジオキサン40g、及び作製例2-1で作製されたCu/Al2O3触媒0.5gを投入し、水素ガスを用いて反応器内の酸素を3又は4回除去した。その後、水素ガスを注入して圧力を50barに上げ、280℃の反応温度に加熱した。反応温度に到達した時間を反応開始時間に設定し、600rpmの撹拌速度で反応を合計で6時間実施した。上記反応が完了した際、温度を室温まで低下させ、最終生成物を回収し、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて最終生成物の収率を分析した。結果は表2に示されている。
【0134】
実施例1-2~1-14及び比較例1-1~1-7
下記表1に示されるように成分及びプロセス条件を変更した以外は、実施例1-1と同様の手法で最終生成物を回収した。その後、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて最終生成物の収率を分析した。結果は表2に示されている。ここで、比較例1-1において、前処理されたコハク酸無水物(商品名:コハク酸無水物、製造者:Sigma-Aldrich)を用いた。
【0135】
【0136】
【0137】
上記表2からわかるように、プロセス温度と圧力及び触媒に担持された銅の含有量を調節し、触媒のキャリアーを選択的に制御しながら、水素の存在下でPHAペレット、非プロトン性溶媒、及び触媒を反応させた場合、ヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、又は1,4-ブタンジオールの収率を65モル%を超えるように調節することができる。
【0138】
特に、非プロトン性溶媒の代わりにエタノールを用いた比較例1-2において、テトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、及び1,4-ブタンジオールの収率は、副反応に起因して全て非常に低かった。
【0139】
実施例2-1
SUS316製の連続固定床反応器を作製例2-7で作製された触媒2.0gで充填して触媒床を形成し、ガラス繊維を触媒床の上及び下に配置して触媒床を固定した。その後、300℃で2時間水素ガスを流通させることにより触媒を活性化した。その後、水素ガスの流速を上昇させて反応器内の圧力を40barに高めた後、温度を280℃に調節した。
【0140】
その後、作製例1-1で作製されたPHAペレットをジオキサン中で1重量%に溶解させ、上記溶液を1ml/分の速度で反応器に入れ、同時に、それにポリヒドロキシアルカノエート(PHA)モノマーのモル数の50倍の割合で水素ガスを供給して反応を実施した。生成物を毎時間回収し、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて収率を分析した。結果は表3に示されている。
【0141】
実施例2-2
作製例2-1で作製された触媒を用いた以外は、実施例2-1と同様の手法で反応を実施した。生成物を毎時間回収し、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて収率を分析した。結果は表3に示されている。
【0142】
【0143】
上記表3からわかるように、触媒床がCuZn/Al2O3触媒で固定され、PHAペレットが非プロトン性溶媒中に溶解した溶液をその後に入れて反応させた実施例2-1において、テトラヒドロフランの収率が優れていた。具体的には、反応の初期段階でのテトラヒドロフランの収率は98.6モル%であった。18時間後でも、テトラヒドロフランの収率は97.0モル%で優れていた。さらに、テトラヒドロフランの収率の1時間あたりの低下速度は約0.089モル%であり、安定的な活性を示した。
【0144】
さらに、触媒床がCu/Al2O3触媒で固定され、その後PHAペレットが非プロトン性溶媒中に溶解した溶液を入れて反応させた実施例2-2において、テトラヒドロフランの収率の経時的な低下速度は、実施例2-1と比べて悪くなる傾向にある一方で、反応の初期段階でのテトラヒドロフランの収率は95.1モル%で優れていた。
【国際調査報告】