(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】量子コンピューティングシステムにおいて量子ビットの状態を読み出すための方法及び構成
(51)【国際特許分類】
G06N 10/40 20220101AFI20240702BHJP
H10N 60/10 20230101ALI20240702BHJP
【FI】
G06N10/40 ZAA
H10N60/10 K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577313
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 FI2021050457
(87)【国際公開番号】W WO2022263705
(87)【国際公開日】2022-12-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519394241
【氏名又は名称】アイキューエム フィンランド オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ラハテーンマキ パシ
【テーマコード(参考)】
4M113
【Fターム(参考)】
4M113AA41
4M113AC22
4M113AC45
(57)【要約】
量子コンピューティングシステムにおいて、各量子ビット(202)は、2つの量子状態のコヒーレントな重ね合わせを示すことができる。状態の読み出しは、重ね合わせをいずれかの状態に崩壊させる。複数の閾値検出器(203)のそれぞれは、それぞれの量子ビット(202)に制御可能に結合可能な入力を有する。超伝導並列直列変換器(204)は、並列入力及び直列出力を有し、その並列入力は、閾値検出器(203)の出力に結合される。送信機(205)は、超伝導並列直列変換器(204)の直列出力に結合され、量子ビット(202)、閾値検出器(203)、超伝導並列直列変換器(204)、及び送信機(205)が位置する極低温冷却環境(201)の境界を横断して、前記直列出力で取得された信号を送信するように構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子コンピューティングシステムにおいて複数の量子ビットの状態を読み出すための構成であって、前記量子ビットのそれぞれは、2つの量子状態のコヒーレントな重ね合わせを示すことができ、前記量子ビットのいずれかの状態を読み出すことは、それぞれの前記重ね合わせを前記2つの量子状態のうちの1つに崩壊させ、前記構成が、
・複数の閾値検出器であって、前記閾値検出器のそれぞれは、入力及び出力を有し、前記入力は、前記複数の量子ビットのそれぞれに制御可能に結合可能である、複数の閾値検出器と、
・複数の並列入力と直列出力とを有する超伝導並列直列変換器であって、前記並列入力のそれぞれが、前記閾値検出器のそれぞれの前記出力に結合される、超伝導並列直列変換器と、
・前記超伝導並列直列変換器の前記直列出力に結合された送信機であって、前記送信機は、前記量子ビット、前記閾値検出器、前記超伝導並列直列変換器、及び前記送信機が位置する極低温冷却環境の境界を超えて前記直列出力で取得された信号を送信するように構成される、送信機と、
を備えることを特徴とする、構成。
【請求項2】
・前記量子ビットは、トランスモン量子ビットであって、その状態は、それぞれの前記トランスモン量子ビットに蓄積された瞬間的なエネルギー量によって表され、
・前記閾値検出器は、それぞれの前記トランスモン量子ビットがその基底状態にあったか第一の励起状態にあったかを示す2つの可能な値のうちの1つをそれらの出力に与えるように構成されたパルスマイクロ波光子カウンタである、請求項1に記載の構成。
【請求項3】
前記複数のパルスマイクロ波光子カウンタは、ジョセフソン接合ベースの単一光子検出器である、請求項2に記載の構成。
【請求項4】
前記複数のパルスマイクロ波光子カウンタは、ボロメータである、請求項2に記載の構成。
【請求項5】
・前記複数のパルスマイクロ波光子カウンタのそれぞれは、制御信号を受信するための制御入力を備え、
・前記複数のパルスマイクロ波光子カウンタのそれぞれは、それと前記複数の量子ビットのそれぞれとの間の制御可能な結合を可能にすることによって、その制御入力を介して受信された制御信号に応答する、請求項2~4のいずれか一項に記載の構成。
【請求項6】
前記閾値検出器は、前記量子ビットと同じ数だけ存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の構成。
【請求項7】
・前記閾値検出器の少なくとも1つについて、N個の前記量子ビットからなるグループが存在し、Nは、整数であり、
・前記構成は、前記閾値検出器の少なくとも1つを、対応する前記量子ビットのグループの選択された1つと制御可能に結合するように構成された読み出し制御手段を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の構成。
【請求項8】
Nは、5以下であり、好ましくは2である、請求項7に記載の構成。
【請求項9】
前記超伝導並列直列変換器は、単一磁束量子(以下、SFQ)ベースの古典的論理を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の構成。
【請求項10】
前記超伝導並列直列変換器は、直列に結合された論理セルのチェーンを備え、前記論理セルのチェーン内の各論理セルは、前記複数の閾値検出器のそれぞれから取得されたデジタル情報の一片を一時的に記憶するように構成される、請求項9に記載の構成。
【請求項11】
前記論理セルのチェーン内の各論理セルは、
・前記パルスマイクロ波光子カウンタのそれぞれの前記出力に結合されたデータ入力と、
・転送入力及び転送出力と、
・前記データ入力、前記転送入力及び前記転送出力に結合されたレジスタ素子と、
・制御入力と、
を備え、
前記論理セルのチェーン内の各論理セルは、前記制御入力で受信された制御値に応じて、前記データ入力又は前記転送入力のいずれかから取得された値を前記レジスタ素子に一時的に記憶するように構成される、請求項10に記載の構成。
【請求項12】
前記送信機は、前記直列出力で取得された前記信号を真空管導波路内に送信するように構成されたマイクロ波トランスデューサを備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の構成。
【請求項13】
前記送信機は、前記直列出力で取得された前記信号を光ファイバ接続に送信するように構成された光送信機を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の構成。
【請求項14】
量子計算システムであって、
・極低温冷却環境を確立するためのクライオスタットと、
・前記極低温冷却環境内の前記クライオスタットの内側に位置する、請求項1~13のいずれか一項に記載の構成と、
を備える、量子計算システム。
【請求項15】
量子コンピューティングシステムにおいて複数の量子ビットの状態を読み出すための方法であって、前記読み出しは、それぞれの前記量子ビットによって示される2つの量子状態のコヒーレントな重ね合わせを前記2つの量子状態のうちの1つに崩壊させることを含み、前記方法が、
・前記複数の量子ビットと複数の閾値検出器との間の読み出し結合を制御可能に同時に確立し、したがって、前記複数の閾値検出器のそれぞれに、それぞれの量子ビットを読み出すことによって、それぞれの前記量子ビットが前記2つの量子状態のうちの第一の量子状態又は第二の量子状態に崩壊したかどうかを示す2つの可能な出力値のうちの1つを想定させるステップと、
・その後、前記複数の閾値検出器によって想定される値を前記複数の閾値検出器からデジタルストリングとして転送し、前記デジタルストリングを、前記量子ビット及び前記閾値検出器を含む極低温冷却環境から送信するステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記読み出し結合を確立することは、複数のパルスマイクロ波光子カウンタのそれぞれを、前記複数の量子ビットのそれぞれと共振状態に制御可能に設定することによって実行される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の閾値検出器によって想定される前記値を前記転送することは、前記値をシフトレジスタに記憶し、前記デジタルストリングを構成する直列形式で前記シフトレジスタから読み出すことを含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記極低温冷却環境から前記デジタルストリングを前記送信することは、真空管導波路を通って伝搬する電磁波を用いて行われる、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記極低温冷却環境から前記デジタルストリングを前記送信することは、光ファイバ接続を通って伝搬する光パルスを用いて行われる、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、量子計算において使用される回路ハードウェア、及びそのような回路ハードウェアを使用する方法に関する。特に、本発明は、量子ビットの状態を読み取り、取得された情報を極低温冷却環境から伝達するために使用されるハードウェア及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子計算は、量子ビットを使用して計算を実行することと、結果として量子ビットが取得した状態を繰り返し読み出すこととを含む。一般に、量子ビットは、2つの量子状態のコヒーレントな重ね合わせを示すことができるデバイスである。量子ビットのこの能力は、バイナリ値、すなわち1又はゼロのみを記憶することができる従来のデジタルレジスタと比較して、計算性能におけるそれらの優位性の基礎を形成する。量子ビットの状態を読み出すと、それぞれの重ね合わせを前記2つの量子状態のうちの1つに崩壊させる。
【0003】
量子ビットの実際の物理的実装及びその読み出しメカニズムは、変動することがある。量子ビットの1つの一般的に使用される形態は、トランスモンであり、その状態をa│0>+b│1>と記述し、ここで、│0>は基底状態、│1>は(第一の)励起状態であり、a及びbは、│a│2+│b│2=1となる複素数である。読み出しの観点から、本質的な量は│b│2であり、これは、トランスモン量子ビットが励起状態にあった結果を与える読み出し動作の確率に対応する。いくらか簡略化すると、トランスモン量子ビットの状態は、量子ビットに蓄積された瞬間的なエネルギー量によって表される。トランスモン型の量子ビットの状態を読み出す従来の方法は、量子ビットをマイクロ波共振器と結合し、共振器と相互作用するマイクロ波パルスを用いて結果として生じる位相及び振幅のシフトを検出することを含む。
【0004】
量子ノイズがそれらの状態のコヒーレンスを破壊しないようにするために、量子ビットは、温度が絶対零度よりわずか数ミリケルビン高い極低温冷却環境に維持されなければならない。処理エレクトロニクスのかなりの部分は、周囲の室温環境に位置するので、2つの環境の間のインターフェースにわたって信号を伝達するための接続を構築することを必要とする。従来、接続は、関与する高周波での使用のために寸法決めされた剛性同軸ケーブルの形態を有していた。しかしながら、設計者が量子コンピューティングシステム内の量子ビットの数を増やしたいと考えるので、問題が生じる。周波数多重等の公知技術では、一対の同軸ケーブルで何回同時読み出し(読み出し入力、信号出力)できるかに実用上の限界がある。例えば、約10の量子ビットのみの状態を同時に読み出すことに限定され得る。したがって、大型の量子計算システムでは、非常に多数の同軸ケーブルが必要とされている。
【0005】
同軸ケーブルは比較的嵩張るので、必要とされる極低温を維持するために用いられるクライオスタット内に大きなスペースを必要とする。同軸ケーブルは、また熱も伝導するので、クライオスタットの中核機器である希釈冷凍機の低温端で利用可能な比較的低い冷却力に過度の負担をかけないために、途中で効果的に熱されなければならないことを意味する。これらの要件は、同軸ケーブルベースの接続を複雑で高価なものにし、最終的に、提供され得るそのような接続の数に制限を設定する。
【0006】
本文に記載される解決策は、極低温冷却環境と周囲の室温環境との間の接続性の問題を解決することで、以前から知られている構成の欠点なしに、多数の量子ビットの状態を読み出すことを本質的に可能にすることを狙いとしている。
【発明の概要】
【0007】
第一の態様によれば、量子コンピューティングシステムにおいて、複数の量子ビットの状態を読み出すための構成が提供される。前記量子ビットのそれぞれは、2つの量子状態のコヒーレントな重ね合わせを示すことができ、前記量子ビットのいずれかの状態を読み出すことは、それぞれの重ね合わせ位置を前記2つの量子状態のうちの1つに崩壊させる。構成は、複数の閾値検出器を備え、前記閾値検出器のそれぞれが入力及び出力を有し、前記入力は、前記複数の量子ビットのそれぞれに制御可能に結合可能である。この構成は、複数の並列入力と直列出力とを有する超伝導並列直列変換器を備え、並列入力のそれぞれは、閾値検出器のそれぞれの出力に結合される。この構成は、超伝導並列直列変換器の前記直列出力に結合された送信機をさらに備える。前記送信機は、前記量子ビット、前記閾値検出器、前記超伝導並列直列変換器、及び前記送信機が位置する極低温冷却環境の境界を超えて前記直列出力で取得された信号を送信するように構成される。
【0008】
一実施形態によれば、前記量子ビットは、トランスモン量子ビットであり、その状態は、それぞれのトランスモン量子ビットに蓄積された瞬間的なエネルギー量によって表される。次いで、閾値検出器は、それぞれのトランスモン量子ビットがその基底状態にあったか第一の励起状態にあったかを示す2つの可能な値のうちの1つをそれらの出力に与えるように構成されたパルスマイクロ波光子カウンタであってもよい。これは、電荷ノイズに対する感度の低下などのトランスモン量子ビットに関連する利点、及び高速かつ信頼性の高い読み出し回路の使用を可能にするという利点を伴う。
【0009】
一実施形態によれば、前記複数のパルスマイクロ波光子カウンタは、ジョセフソン接合ベースの単一光子検出器である。これは、高速かつ信頼性の高い読み出し回路の使用を可能にするという利点を伴う。
【0010】
一実施形態によれば、前記複数のパルスマイクロ波光子カウンタは、ボロメータである。これは、量子ビットの状態を読み出す際に応答時間が極めて速くなるという利点を伴う。
【0011】
一実施形態によれば、前記複数のパルスマイクロ波光子カウンタのそれぞれは、制御信号を受信するための制御入力を備え、前記複数のパルスマイクロ波光子カウンタのそれぞれは、それと複数の量子ビットのそれぞれとの間の制御可能な結合を可能にすることによって、その制御入力を介して受信された制御信号に応答する。これは、読み出し以外の時間中に読み出し回路と量子ビットとの間の良好な分離を維持し、量子ビットのコヒーレンス時間を改善するという利点を伴う。
【0012】
一実施形態によれば、前記量子ビットと同じ数の前記閾値検出器が存在する。これは、量子ビットとそれらのそれぞれの読み出し回路との間の制御可能な結合を非常に正確に調整することができ、すべての量子ビットの状態さえ同時に読み出すことができるという利点を伴う。
【0013】
一実施形態によれば、前記閾値検出器の少なくとも1つについて、N個の前記量子ビットからなるグループがあり、Nは、整数である。また、構成は、前記閾値検出器の少なくとも1つを、対応する量子ビットのグループの選択された1つと制御可能に結合するように構成された読み出し制御手段を備えてもよい。これは、必要な閾値検出器及び制御ラインが少なくて済むという利点を伴う。
【0014】
一実施形態によれば、Nは、5以下であり、好ましくは2に等しい。これは、複数の量子ビットに対して共通閾値検出器を使用するにもかかわらず、読み出し動作を高速に実行できるという利点を伴う。
【0015】
一実施形態によれば、前記超伝導並列直列変換器は、単一磁束量子(SFQ)ベースの古典的論理を備える。これは、並列直列変換において動作速度が非常に速いという利点を伴う。
【0016】
一実施形態によれば、前記超伝導並列直列変換器は、直列に結合された論理セルのチェーンを備え、前記論理セルのチェーン内の各論理セルは、前記複数の閾値検出器のそれぞれから取得されたデジタル情報を一時的に記憶するように構成される。これは、比較的単純な論理構造を並列直列変換に用いることができるという利点を伴う。
【0017】
一実施形態によれば、前記論理セルのチェーン内の各論理セルは、前記パルスマイクロ波光子カウンタのそれぞれの出力に結合されたデータ入力と、転送入力と、転送出力とを備える。各論理セルは、次いで、前記データ入力、前記転送入力、及び前記転送出力に結合されたレジスタ要素と、制御入力とをさらに含んでもよい。次いで、論理セルの前記チェーン内の各論理セルは、前記制御入力において受信された制御値に応じて、前記データ入力又は前記転送入力のいずれかから取得された値を前記レジスタ要素に一時的に記憶するように構成されてもよい。これは、比較的単純な論理構造を並列直列変換に用いることができるという利点を伴う。
【0018】
一実施形態によれば、前記送信機は、前記直列出力で取得された前記信号を真空管導波路内に送信するように構成されたマイクロ波トランスデューサを備える。これは、コンパクトな構造的解決策が、室温環境に向かう通信接続のために利用可能であるという利点を伴う。
【0019】
一実施形態によれば、前記送信機は、前記直列出力で取得された前記信号を光ファイバ接続に送信するように構成された光送信機を備える。これは、通信速度が速く、室温環境への通信接続における電磁干渉に対する耐性という利点を伴う。
【0020】
第二の態様によれば、量子コンピューティングシステムが提供され、このシステムは、極低温冷却環境を確立するためのクライオスタットと、前記極低温冷却環境内の前記クライオスタットの内部に配置された、上述の種類の構成とを備える。
【0021】
第三の態様によれば、量子コンピューティングシステムにおいて複数の量子ビットの状態を読み出すための方法が提供される。前記読み出しは、それぞれの量子ビットによって示される2つの量子状態のコヒーレントな重ね合わせを前記2つの量子状態のうちの1つに崩壊させることを含む。方法は、前記複数の量子ビットと複数の閾値検出器との間の読み出し結合を制御可能に同時に確立し、したがって、前記複数の閾値検出器のそれぞれに、それぞれの量子ビットを読み出すことによって、それぞれの前記量子ビットが前記2つの量子状態のうちの第一の量子状態又は第二の量子状態に崩壊したかどうかを示す2つの可能な出力値のうちの1つを想定させるステップを含む。方法は、その後、前記複数の閾値検出器によって想定される値を前記複数の閾値検出器からデジタルストリングとして転送し、前記デジタルストリングを、前記量子ビット及び前記閾値検出器を含む極低温冷却環境から送信するステップを含む。
【0022】
一実施形態によれば、前記読み出し結合を確立することは、複数のパルスマイクロ波光子カウンタのそれぞれを、前記複数の量子ビットのそれぞれと共振状態に制御可能に設定することによって実行される。これは、コヒーレンス時間が長く、電荷ノイズの影響を比較的受けにくいトランスモン量子ビットを利用できるという利点を伴う。
【0023】
一実施形態によれば、前記複数の閾値検出器によって想定される前記値を前記転送することは、前記値をシフトレジスタに記憶し、前記デジタルストリングを構成する直列形式で前記シフトレジスタから読み出すことを含む。これは、非常に高速であるが比較的単純な論理回路を使用できるという利点を伴う。
【0024】
一実施形態によれば、極低温冷却環境から前記デジタルストリングを前記送信することは、真空管導波路を通って伝搬する電磁波を用いて行われる。これは、コンパクトな構造的解決策が、室温環境に向かう通信接続のために利用可能であるという利点を伴う。
【0025】
一実施形態によれば、極低温冷却環境から前記デジタルストリングを前記送信することは、光ファイバ接続を通って伝搬する光パルスを用いて行われる。これは、通信速度が速く、室温環境への通信接続における電磁干渉に対する耐性という利点を伴う。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を説明し、説明とともに本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0027】
【
図2】極低温冷却環境内の機能ブロックの例を示す。
【
図3】量子ビットと閾値検出器の組み合わせを示す。
【
図4】量子ビットのグループと共通閾値検出器との組み合わせを示す。
【
図7】SFQベースの古典的論理を用いて実装される超伝導並列直列変換器の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1の既知の量子コンピューティングシステムは、破線101によって示されるように、デジタル領域とアナログ領域とに分割されてもよい。デジタル領域の全体は、室温環境に位置する。「室温」という表記は、人々が居住する部屋で通常見られる温度が実際に存在することを必要としない。これは、全システムの大部分が、動作のために極低温冷却を必要としないことを強調しているだけである。
【0029】
ブロック102は、いわゆる論理制御層を表し、その上に様々なフロントエンド及びツールを見つけることができる。ブロック103は、いわゆる実験層と呼ぶことができ、これは、様々な実行制御機能を含む。ブロック104は、バックエンド層であり、その一部は、システムの正しい動作に必要な機器情報及び較正データであってもよい。機器ファームウェア105は、ドライバ層上に位置し、入力側において、入力及び実行命令は、波形コントローラ106に進み、デジタイザ107は、出力として測定結果を提供する。
【0030】
デジタル領域とアナログ領域との間では、デジタルからアナログへの変換が入力側で行われ、それに対応してアナログからデジタルへの変換が出力側で行われる。この実施形態では、極低温冷却環境と室温環境との間の通信は、マイクロ波周波数で行われる。マイクロ波パルス発生電子機器108は、依然として室温環境内に位置してもよい。入力マイクロ波接続構成109及び出力マイクロ波接続構成110は、
図1にクライオスタット111として示される極低温冷却環境との間で信号を伝達する。入力側は減衰器112を備え、出力側は、様々な増幅段、アイソレータ、及びブロック113及び114によって全体的に表される関連する回路を備える。頭字語TWPAは、進行波パラメトリック増幅器という表現に由来する。
【0031】
量子計算システムのコアには、量子処理ユニット115がある。これは、クライオスタット111の最も冷たい部分に位置しており、その周囲を注意深くシールドするだけでなく、クライオスタットと暖かい部分との間の全ての接続を効果的に熱化する必要がある。
【0032】
クライオスタットの正確なタイプ及び動作は、本明細書では重要ではない。本明細書に記載する時点で、希釈冷凍機は、ミリケルビン範囲の温度を達成することができるクライオスタットにおける炉心冷却装置である。希釈冷凍機の冷却操作は、液体ヘリウムが混合チャンバと呼ばれる容器内で1つの同位体3Heリッチな相及び別の3Heプアな相を自発的に形成する特有の傾向に基づく。相境界を超えて3He原子を能動的にポンピングすることによって、混合チャンバ、及び混合チャンバに熱的に結合されたあらゆるものを、わずか数ミリケルビンの温度まで冷却する冷却効果を生み出すことができる。
【0033】
希釈冷凍機の冷却力のワット単位での絶対値は、あまり大きくない。したがって、システムのコア部分の発熱をできるだけ少なくし、混合チャンバとその周辺をできるだけ効果的に断熱して保つことが第一に重要である。既に上述したように、後者は、例えば、量子コンピューティング回路と構成の周囲の暖かい部分との間に同軸接続のような熱伝導性の信号接続があればあるほど困難になる。
【0034】
図2は、一実施形態による量子コンピューティングシステムのいくつかの汎用レベルの特徴を示す。ブロック201は、周囲の室温環境とは対照的に、極低温冷却環境を表す。
【0035】
図2の構成では、ブロック202は、複数の量子ビットを表す。効率的な量子コンピューティングシステムは、少なくとも数百又は数千以上の量子ビット、あるいはさらに著しく多い量子ビットを備え得るものと仮定してもよい。ここでも、量子コンピューティングシステムにおける量子ビットの正確な数は、従来の方法を使用して多数の量子ビットの状態を同時に読み出すことが複雑になるほど多くの量子ビットが存在する限り、本明細書において、さほど重要ではない。
【0036】
図2に示す構成は、デジタルへの読み出しというブロック203によって表される複数の閾値検出器を備える。閾値検出器は、入力及び出力を有するデバイスであり、その出力は、入力に存在する信号が閾値を下回るか上回るかに応じて、2つの可能な値のうちの1つをとる。これは、
図2の「デジタルへの読み出し」という表現に適合する。つまり、ブロック203の閾値検出器は、読み出された量子ビットの対応する状態を示すバイナリ信号を生成するように構成される。ブロック203における閾値検出器の入力は、読み出し動作を実行するためにブロック202における量子ビットのそれぞれに制御可能に結合可能である。
【0037】
ブロック204に示すように、この構成は、並列直列変換器を備える。その性質によれば、並列直列変換器は、複数の並列入力及び少なくとも1つの直列出力を備える。並列入力のそれぞれは、ブロック203の閾値検出器のそれぞれの出力に結合しているか、又は結合可能である。並列直列変換器204は極低温冷却環境201内に配置されるので、最も有利には、超伝導並列直列変換器である。このようにして、さもなければ並列直列変換器におけるオーム損失に起因して生じ得る迷熱の発生を大いに回避することが可能になる。
【0038】
ブロック203における複数の閾値検出器が、それぞれの量子ビットに対して同時に読み出し動作を実行する任意の瞬間に、そのような複数の閾値検出器によって仮定される値は、デジタルストリングを構成する。このデジタルストリングは、その並列入力を使用して、並列直列変換器204に読み込むことによって、複数の閾値検出器から転送することができる。並列直列変換器204は、次いで、デジタルストリングをその出力において直列形式で出力する。
【0039】
ブロック205は、超伝導並列直列変換器204の直列出力に結合される送信機を表す。ブロック205における送信機は、前記直列出力で取得された信号(すなわち、デジタルストリング)を、極低温冷却環境201の境界を超えて、周囲の室温環境におけるさらなる処理に送信するように構成される。送信される情報はデジタル形式で容易に得られるので、ローカルで比較的短い接続を介してデジタルデータを高速に送信することを目的として知られている多くの種類の送信機を使用することができる。そのような送信機のいくつかの有利な例は、本文において、後でより詳細に説明される。
【0040】
読み出された量子ビット状態をデジタル形式に即時変換すると、量子計算動作の現在の結果を表すクライオスタット信号の取り出しが、著しく単純になる。これは、
図1のような従来のシステムとの重要な違いであって、従来のシステムでは、読み出し動作の生の出力は、さらなる処理のためにクライオスタットから運ばれなければならなかった。以下でより詳細に説明するように、この違いによって、極低温冷却環境と周囲の室温環境との間の接続ハードウェアを著しく単純にすることが可能になる。
【0041】
図3は、ブロック202に量子ビットが存在するのと同数の閾値検出器がブロック203に存在する実施形態を示す。言い換えれば、そのような実施形態では、量子ビット301とそれらのそれぞれの閾値検出器302との間に、一対一の関係がある。閾値検出器302が量子ビット301のコヒーレント量子状態に干渉しないようにするために、それらの間に制御可能な結合を有することが有利である。次いで、読み出し制御信号の値は、制御可能な結合がオン(読み出し中)であるかオフ(読み出し中でない)であるかを決定する。
【0042】
図4は、少なくとも1つの閾値検出器404についてN個の量子ビット401~403からなるグループが存在する別の実施形態を示す。この構成は、次いで、閾値検出器404を対応する量子ビットのグループのうちの選択された量子ビットに制御可能に結合するように構成された読み出し制御手段を備える。このアプローチがシステム全体を通して使用され、各個々の閾値検出器についてN個の量子ビットからなるグループが割り当てられる場合、量子コンピューティングシステム内の複数の量子ビット全体のうちの1つの第Nの量子ビットのみが同時に読み取られ得る。他方で、必要とされる閾値検出器及び読み出し制御線の数は、それに応じて少なくなる。
【0043】
図3及び
図4による実施形態を混合させることも可能であり、したがって、いくつかの量子ビットに対して、
図3のような専用閾値検出器があり、いくつかの他の量子ビットには、対応する共有閾値検出器にグループごとに割り当てられる。
【0044】
多数の量子ビットの状態を同時に読み出す可能性を維持するために、
図4の実施形態において、Nの値を小さく保つことが有利である。Nの値は、例えば、5以下でも、あるいは、さらにはちょうど2に等しくてもよい。量子ビットの各グループに対して同じ値のNを有する必要はない。
【0045】
上記で説明した一般的な原理は、量子ビットの実際の実装のために、どの技術が選択されるかにかかわらず適用される。いくつかのより詳細な例を立証するために、以下では、量子ビットは、トランスモン量子ビットであり、その状態は、それぞれのトランスモン量子ビットに蓄積された瞬間的なエネルギー量によって(読み出しの観点から)表される。そのような場合、閾値検出器は、パルスマイクロ波光子カウンタであってもよい。閾値検出の原理によれば、パルスマイクロ波光子カウンタは、それぞれのトランスモン量子ビットがその基底状態にあったか第一の励起状態にあったかを示す2つの可能な値のうちの1つをそれらの出力に与えるように構成される。
【0046】
トランスモン量子ビットの1つの有利な形態は、キャパシタンスでシャントされたジョセフソン接合(又はジョセフソン接合のアレイ)を備える非線形共振回路である。
図5において、左側部分501は、このようなトランスモン量子ビットを構成し、ここでは、並列の2つのジョセフソン接合502及び503と、この両方を超えて接続されたキャパシタンス504とを伴う。中央部分511は、ここでは閾値検出器として使用されるパルスマイクロ波光子カウンタを表す。これは、基本的に別の共振量子回路であり、その共振周波数は、読み出し制御構成から来る制御信号で制御することができる。
図5のパルスマイクロ波光子カウンタは、キャパシタンス513でシャントされたジョセフソン接合512を備える。
【0047】
図5のようなパルスマイクロ波光子計数器の原理及び基本的な動作は、2011年11月14日に発行された刊行物(Y.-F.Chen et al.:「Microwave Photon Counter Based on Joseph son Junctions」、Phys. Rev. Lett. 107, 217401)の中で徹底的に説明されている。パルスマイクロ波光子カウンタがそれぞれのトランスモン量子ビットと共振しているとき、ジョセフソン接合512を通るトンネリング確率は、トランスモン量子ビットがその第一の励起状態(│1>状態)にある場合、トランスモン量子ビットがその基底状態(│0>状態)にある場合よりも数十倍高くなる可能性がある。この結果、パルスマイクロ波光子カウンタの出力は、デジタル「1」として
図5の右側に読み出すことができる電圧を仮定する。トランスモン量子ビットがその基底状態であった場合、パルスマイクロ波光子カウンタの出力値は、デジタル「0」として読み出される。
【0048】
容量結合521及び522は、トランスモン量子ビットとパルスマイクロ波光子カウンタとの間、及び最後に述べた回路と閾値検出器(パルスマイクロ波光子カウンタ)の出力をさらに処理するさらなる回路(
図5に図示せず)との間に設けられる。量子ビットのコヒーレント状態に過度に干渉しないように、量子ビットの状態を読み出す時間以外は、量子ビットと対応する閾値検出器との間の結合を、可能な限り小さく保つことが重要である。
図5の構成では、これは、容量結合521を設けること、及びパルスマイクロ波光子カウンタを量子ビットとの共振から外して保つことによって保証される。
【0049】
図5のようなトランスモン量子ビット及び対応するパルスマイクロ波光子計数器の構成は、単一の閾値検出器をN個の量子ビットからなるグループのいずれかに制御可能に結合できる
図4の場合にも使用できる。グループ内の各量子ビットは、個々の共振周波数を有することができ、それらの共通パルスマイクロ波光子カウンタは、必要に応じて、量子ビットの共振周波数のいずれかを満たすように調整することができる。
【0050】
トランスモン量子ビットの閾値検出器として使用することができるパルスマイクロ波光子カウンタの代替の形態は、ボロメータである。一般的な概念として、ボロメータは、ここでの意味合いでは閾値検出器又はパルスマイクロ波光子カウンタではないが、ボロメータが十分な感度を有する場合、閾値検出器のように作用するようにすることができる。その場合、それをパルスマイクロ波光子カウンタにすることは、適切なパラメータを有する超伝導ボロメータにおけるバイアスの閾値に近いパルスのようないくつかの特定の構成のみを必要とする。この種の使用に好適な形態のボロメータは、例えば、2020年9月30日に発行された刊行物(R.Kokkoniemi et al.:「Bolometer operating at the threshold for circuit quantum electrodynamics」,Nature,volume 586,pages 47-51(2020))に記載されている。ちょうどジョセフソン接合ベースの単一光子検出器と同様に、ボロメータは、その第一の励起状態にあるトランスモン量子ビットに結合されたときに1つの特性電圧を出力する特性を有し、トランスモン量子ビットがその基底状態にあるときに別の特性電圧を出力する特性を有する。
【0051】
図5に示すように、各パルスマイクロ波光子カウンタが制御信号を受信するための制御入力523を備えることが有利である。このようにして、各パルスマイクロ波光子カウンタは、それとそれぞれの量子ビットとの間の制御可能な結合を有効にすることによって、その制御入力を介して受信された制御信号に応答することができる。
【0052】
図6は、超伝導並列直列変換器の一例を示す。これは、複数の並列入力601~603及び直列出力604を有する。並列入力601~603のそれぞれは、それぞれの閾値検出器(
図6には図示せず)の出力に結合される。
図6に示す3つの要素611~613は、超伝導並列直列変換器を共に形成する類似の直列結合要素の長いチェーンの一部であってもよい。
図6の要素を通る水平な線は転送線を構成し、したがって、デジタルワードが上から並列入力を通して読み出されると、それは、一連の転送動作を適用することによって直列出力604から転送することができる。個々の要素が(上からの)対応する入力からの新しいデジタル情報を記憶するように動作するか、又は以前に記憶されたデジタル情報を水平に転送するように動作するかは、対応する制御入力621~623を介して受信する制御コマンドに依存する。
【0053】
超伝導並列直列変換器を実装するための有利な方法は、SFQベースの古典的論理を使用することであり、ここで、頭字語SFQは、Single Flux Quantum(単一磁束量子)に由来する。
図7の実施形態では、超伝導並列直列変換器は、直列に結合された論理セルのチェーンを備える。各セルは、それぞれの閾値検出器から取得されたデジタル情報の一片(ここでは1ビット)を一時的に記憶するように構成される。そのようなデジタル情報を受信するためのデータ入力は、
図7においてD
A、D
B、及びD
Cとしてマークされる。
【0054】
一例として左端の論理セルを考えると、その論理セルは、2つの並列ANDゲート701及び702を備え、その出力は、ORゲート703の入力に向かう。ORゲート703の出力は、レジスタ素子の入力に向かい、ここでは、ラッチ704の入力Dに向かっている。ラッチ704の出力Qは、論理セルの転送出力を構成する。データ入力DAは、上部ANDゲート701の一方の入力に向かい、論理セルへの転送入力は、下部ANDゲート702の一方の入力に向かう。制御信号SHIFT/(/LD)は、このようにして下側ANDゲート702の他方の入力に向かい、上側ANDゲート701の他方の入力に反転される。したがって、制御信号SHIFT/(/LD)の論理値「0」は、上側ANDゲート701にデータ入力DAにおける電流値を転送させる;論理値「1」は、下位ANDゲートに転送入力の電流値を転送させる。ORゲート703は単にバッファであり、その出力は、クロック信号CLKによってタイミングを合わせて、ラッチ704に記憶される。
【0055】
SFQ論理は、
図7中の論理ゲート及びラッチなどのビルディングブロックを実装するために利用することができる。SFQは、本質的にマイクロ波技術と互換性があり、数百ギガヘルツまでの極めて高い動作周波数の使用を可能にする。また、消費電力が非常に低いため、消費された電力はすべて最終的に熱となり、クライオスタットから除去する必要があるという大きな利点がある。SFQ回路は、セルフクロック式に作製されてもよいので、非常に実用的な非同期設計が可能になる。
【0056】
高い動作周波数は、超伝導並列直列変換器のためのSFQ論理の使用に関して2つの重要な利点を有する。第一に、変換されたデジタルストリングを直列形式で読み出すことは、過度の遅延なしに行うことができる。第二に、SFQ論理回路は、例えば、真空管導波路を直接駆動することができ、これは、極低温冷却環境からデジタルストリングを移送する1つの可能な形態である。一例として、SFQ論理が92.5GHzで動作する場合、典型的な同軸ケーブルと同様に、75~110GHzの推奨帯域及び2.54mm×1.27mmの内部寸法を有するEIA型WR10導波路を利用してもよい。そのような導波路をSFQ論理駆動することによって、複雑なアナログ変調スキームがなくても、良好な信号対雑音比を達成することが可能になる。受信側では、室温環境において、例えば、特定のMMIC(モノリシックマイクロ波集積回路)を使用して、この種の周波数範囲で必要な増幅及びサンプリング信号を実行することができる。
【0057】
一般に、SFQロジックに実装される構成の部分801は、
図8に示すように、超伝導並列直列変換器802と、エンコーダ及びトランスデューサ部分803と、必要に応じてクロック信号源804とを備えることができる。既に上述したように、トランスデューサの1つの可能性は、マイクロ波トランスデューサであり、マイクロ波トランスデューサは、超伝導並列直列変換器802の直列出力で取得された信号を真空管導波路に伝送するように構成されている。別の可能性は、送信機が、前記信号を光ファイバ接続に送信するように構成された光送信機を備えることである。室温環境への接続は、概して、
図8において805として示される。
【0058】
送信に使用される変調方式は、好ましくは、オン/オフタイプの振幅変調などのデジタルDCフリー変調方式である。室温環境への接続が導波路である場合、導波路がDCを搬送することができないため、伝送のためにDCフリー変調を使用することが重要である。変調は、本質的に、例えば、上述の92.5GHz周波数を中心とするデジタル帯域制限信号を生成し、その動作性は、SFQにおいて、実証されている。振幅変調は、そのようなものとして知られているSFQ回路を用いて達成することができる。必要であれば、8b/10bデジタル符号化などの符号化を、受信端におけるクロック回復を容易にするために利用することができる。
【0059】
SFQ論理の追加又は代替として、ミリケルビン温度で効率的に動作することができる任意の他の低電力古典的ジョセフソン接合ベースの論理を使用することも可能である。そのような代替技術の例は、断熱量子磁束パラメトロン(AQFP)である。
【0060】
上記でレイアウトされた周波数を用いて、100ns未満で数千の量子ビットからの読み出し結果を伝送することが可能である。正確な数は、占有帯域幅及びその利用効率に依存する。単一の導波路又は光ファイバのみが必要とされ、これは、多数の同軸ケーブルがそれのために必要とされるであろう公知の実装と比較して、接続を熱化することを非常に容易にし、また、クライオスタットの内側の非常に多くの空間を節約する。
【0061】
当業者には、技術の進歩とともに、本発明の基本的アイデアを様々な方法で実施できることが明らかである。例えば、SFQロジック又はAQFPの代わりに、ジョセフソン接合の一種のデュアルである量子位相スリップ接合に基づく回路を使用することが可能である。したがって、本発明及びその実施形態は、上述の例に限定されず、むしろ、特許請求の範囲内で変更することができる。
【国際調査報告】