(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】標識固定化及び増幅戦略を使用した単一分子に対するデジタル免疫センシングのための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
G01N33/543 545J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577641
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2022066333
(87)【国際公開番号】W WO2022263522
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】シュテンゲレ,ニコラウス-ペーター
(57)【要約】
本発明は、診断試験及び診断技術に関する。特に、本発明は、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための方法であって、(a)前記試料を、(i)被験物質に特異的に結合することができ、固体支持体上に固定化された第1の結合剤、及び(ii)被験物質に特異的に結合することができ、少なくとも1つの検出可能な標識に可逆的に結合することができる第2の結合剤であって、第1の結合剤及び第2の結合剤が物理的に近接しているとき、前記第1の結合剤及び/又は前記第2の結合剤が、可逆的に結合した少なくとも1つの検出可能な標識を固体支持体に共有結合させることができる連結剤に連結されている、第2の結合剤と、第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体が形成されるように、第1の結合剤及び第2の結合剤への被験物質の特異的結合を可能にし、並びに少なくとも1つの検出可能な標識を固体支持体に共有結合させることを可能にする、時間及び条件下で、接触させることと、(b)少なくとも1つの検出可能な標識を共有結合させた固体支持体が残存するように、固体支持体から第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体を除去することと、(c)固体支持体上の共有結合した少なくとも1つの検出可能な標識を検出し、それにより被験物質を決定することと、を含む、方法に関する。本発明はまた、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための装置、前記試料内で、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための本発明の装置の使用、及び試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するためのキットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための方法であって、
(a)前記試料を、
(i)前記被験物質に特異的に結合することができ、固体支持体上に固定化されている、第1の結合剤、及び
(ii)前記被験物質に特異的に結合することができ、少なくとも1つの検出可能な標識に可逆的に結合することができる、第2の結合剤であって、
前記第1の結合剤及び前記第2の結合剤が物理的に近接しているとき、前記第1の結合剤及び/又は前記第2の結合剤が、可逆的に結合した前記少なくとも1つの検出可能な標識を前記固体支持体に共有結合させることができる連結剤に連結されている、第2の結合剤と、
- 第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体が形成されるように、前記第1の結合剤及び前記第2の結合剤への前記被験物質の特異的結合を可能にし、並びに
- 前記少なくとも1つの検出可能な標識を前記固体支持体に共有結合させることを可能にする、時間及び条件下で、接触させることと、
(b)前記少なくとも1つの検出可能な標識を共有結合させた前記固体支持体が残存するように、前記固体支持体から前記第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体を除去することと、
(c)前記固体支持体上の共有結合した前記少なくとも1つの検出可能な標識を検出し、それにより前記被験物質を決定することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の結合剤が、抗体又はその断片、アプタマー、受容体分子又はその断片、及びリガンド分子又はその断片からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の結合剤が、抗体又はその断片、アプタマー、受容体分子又はその断片、及びリガンド分子又はその断片からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記連結剤が、共有結合架橋酵素、好ましくはトランスグルタミナーゼ又はソルターゼである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記連結剤が、共有結合架橋化学部分を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記検出可能な標識が、蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、磁気標識、及び電気化学標識からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記検出可能な標識が、前記連結剤によって前記固体支持体に共有結合的に連結され得るリンカーを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記固体支持体が、その表面に、前記標識が前記連結剤によって共有結合され得るリンカーを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記固体支持体が、好ましくはプラズモン共鳴体のビーズ、ウェル又は所定の細分された検出領域である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
各ビーズ、ウェル、又は所定の細分された検出領域が、所定量の第1の結合剤を固定化している、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記被験物質を決定することが、前記被験物質の量を決定することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記量が、少なくとも1つの共有結合した検出可能な標識を含むビーズ、ウェル、又は所定の細分された検出領域をカウントすることによって決定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための装置であって、
(a)センサ素子であって、
(i)前記被験物質に特異的に結合することができ、固体支持体上に固定化されている、第1の結合剤、及び
(ii)前記被験物質に特異的に結合することができ、少なくとも1つの検出可能な標識に可逆的に結合することができる、第2の結合剤であって、
前記第1の結合剤及び前記第2の結合剤が物理的に近接しているとき、前記第1の結合剤及び/又は前記第2の結合剤が、可逆的に結合した前記少なくとも1つの検出可能な標識を前記固体支持体に共有結合させることができる連結剤に連結されている、第2の結合剤
を含む、センサ素子と、
(b)前記固体支持体上の共有結合した前記少なくとも1つの検出可能な標識を検出するための検出器と
を備える、装置。
【請求項14】
前記試料中の試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための、請求項13に記載の装置の使用。
【請求項15】
試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するためのキットであって、
(a)前記被験物質に特異的に結合することができ、固体支持体上に固定化されている、第1の結合剤、
(b)前記被験物質に特異的に結合することができ、少なくとも1つの検出可能な標識に可逆的に結合することができる、第2の結合剤であって、前記第1の結合剤及び前記第2の結合剤が物理的に近接しているとき、前記第1の結合剤及び/又は前記第2の結合剤が、可逆的に結合した前記少なくとも1つの検出可能な標識を前記固体支持体に共有結合させることができる連結剤に連結されている、第2の結合剤、
(c)検出剤、並びに
(d)前記少なくとも1つの検出可能な標識を共有結合させた前記固体支持体が残存するように、前記固体支持体から第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体を除去するための薬剤
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断試験及び技術に関する。特に、本発明は、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための方法であって、(a)前記試料を、(i)被験物質に特異的に結合することができ、固体支持体上に固定化された第1の結合剤、及び(ii)被験物質に特異的に結合することができ、少なくとも1つの検出可能な標識に可逆的に結合することができる第2の結合剤であって、前記第1の結合剤及び第2の結合剤が物理的に近接しているとき、前記第1の結合剤及び/又は前記第2の結合剤が、可逆的に結合した少なくとも1つの検出可能な標識を固体支持体に共有結合させることができる連結剤に連結されている、第2の結合剤と、第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体が形成されるように、第1の結合剤及び第2の結合剤への被験物質の特異的結合を可能にし、並びに少なくとも1つの検出可能な標識を固体支持体に共有結合させることを可能にする、時間及び条件下で、接触させることと、(b)少なくとも1つの検出可能な標識を共有結合させた固体支持体が残存するように、固体支持体から第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体を除去することと、(c)固体支持体上の共有結合した少なくとも1つの検出可能な標識を検出し、それにより被験物質を決定することと、を含む、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための方法に関する。本発明はまた、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための装置、前記試料内で、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための本発明の装置の使用、及び試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
イムノアッセイは、様々な診断目的に広く使用されている。イムノアッセイのためのいくつかの設定が開発されている。最も一般的なイムノアッセイの1つは、酵素結合吸着剤イムノアッセイ(ELISA)である。
【0003】
ELISAでは、目的の被験物質を含有するか、又は目的の被験物質を含有すると疑われる液体試料を、抗体又はアプタマー等の抗体様分子の存在に起因する特別な結合特性を有する固定固相に適用する。試料適用後、分析的(anytical)検出反応を実施及び停止するために、複数の試薬を順次添加し、インキュベートし、洗浄する。これらの全ての工程を実行した後、セットアップ、通常は液相における物理的又は化学的特性が変化し、検出することができる。典型的には、酵素反応の生成物による発色などの光学的変化が最終液相で起こる。これらの変化は、調査された試料中に存在する目的の被験物質の存在又は存在量に相関する。典型的には定量的な読み出しは、通常、分光光度法による透過光の強度の検出に基づいており、これは液体を通る特定の波長の光の透過の定量化を含む。検出の感度は、分析反応中のシグナルの増幅に依存する。酵素反応は非常によく知られた増幅プロセスであるため、シグナルは、正確な定量を可能にするために一定の割合で検出試薬に連結された酵素によって生成される。
【0004】
ELISA設定のために、被験物質結合剤、例えば抗体は、固体支持体構造等の固体支持相に固定化される。通常、抗体は、分析用マルチウェルプレート又は分析用バイアルのウェルの透明な底部及び時には側壁にもコーティングされ、乾燥される。しかしながら、ナノ粒子又は他のビーズをELISAの固相として使用することもできる。
【0005】
研究及び診断用途のために、ELISAは、いわゆるサンドイッチELISAの形式で使用されることが多い。サンドイッチ形式では、固定化捕捉抗体を使用して、前記固定化抗体に適用された試料中に存在する被験物質を捕捉する、すなわち特異的に結合する。捕捉抗体が被験物質に特異的に結合した後、試料材料を洗い流す。後続の工程では、固定化抗体に結合した被験物質を、被験物質又は被験物質と捕捉抗体との複合体に特異的に結合する検出抗体とインキュベートする。検出抗体は、典型的には、そのような検出可能な標識を溶液から引き付けることを可能にする検出可能なリンカー又はアダプター分子を含む。
【0006】
しかしながら、シグナル生成に必要とされる脆弱な免疫複合体、及びサンドイッチフォーマットのそのようなELISAに使用される様々な構成要素に照らして、検出抗体の望ましくない結合、したがって偽陽性シグナルの生成の多くの可能性がある。したがって、研究に使用されるサンドイッチELISAは、偽陽性結果のリスクのために検証を必要とすることが多い。さらに、そのような脆弱な多成分アッセイフォーマットの様々な欠点に起因して、感度及び特異性に関して制限がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の根底にある技術的な課題は、上述のニーズに対応するための手段及び方法の提供と見なされ得る。この技術的な課題は、以下の特許請求の範囲及び本明細書において特徴付けられる実施形態によって、解決される。
【0008】
したがって、本発明は、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための方法であって、
(a)前記試料を、
(i)被験物質に特異的に結合することができ、固体支持体上に固定化されている、第1の結合剤、及び
(ii)被験物質に特異的に結合することができ、少なくとも1つの検出可能な標識に可逆的に結合することができる、第2の結合剤であって、
第1の結合剤及び第2の結合剤が物理的に近接しているとき、前記第1の結合剤及び/又は前記第2の結合剤が、可逆的に結合した少なくとも1つの検出可能な標識を固体支持体に共有結合させることができる連結剤に連結されている、第2の結合剤と、
- 第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体が形成されるように、第1の結合剤及び第2の結合剤への被験物質の特異的結合を可能にし、並びに
- 少なくとも1つの検出可能な標識を固体支持体に共有結合させることを可能にする、時間及び条件下で、接触させることと、
(b)少なくとも1つの検出可能な標識を共有結合させた固体支持体が残存するように、固体支持体から第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体を除去することと、
(c)固体支持体上の共有結合した少なくとも1つの検出可能な標識を検出し、それにより被験物質を決定することと
を含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び請求項において、「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、それが使用される文脈に依存して、1つ以上を意味することができることが理解されるべきである。したがって、例えば、「1つの(an)」要素(item)への言及は、少なくとも1つの要素が利用され得ることを意味することができる。
【0010】
以下で使用される場合、「有する(have)」、「備える(comprise)」又は「含む(include)」という用語は、非限定的な意味又は限定的な意味を有することを意味する。したがって、限定的な意味を有するこれらの用語は、これらの用語によって導入された特徴以外に、記載された実施形態に他の特徴が存在しない状況を指す場合があり、すなわち、これらの用語は、「からなる」又は「から本質的になる」という意味で限定的な意味を有する。非限定的な意味を有する用語は、これらの用語によって導入された特徴に加えて、記載された実施形態において1つ以上の他の特徴が存在する状況を指す。
【0011】
さらに、以下で使用される場合、「好ましくは」、「より好ましくは」、「最も好ましくは」、「特に」、「より具体的には」、「典型的には」、及び「より典型的には」という用語又は同様の用語は、代替の可能性を制限することなく、追加の又は代替の特徴と共に使用される。
【0012】
さらに、本明細書で使用される場合、「少なくとも1つの」という用語は、この用語に続いて言及される項目の1つ又は複数が本発明に従って使用され得ることを意味することが理解されよう。例えば、この用語が、少なくとも1つのアイテムが使用されるべきであることを示す場合、これは、1つのアイテム又は1つより多いアイテム、すなわち、2つ、3つ、4つ、5つ、又は任意の他の数として理解され得る。この用語が言及する項目に応じて、当業者は、上限が存在する場合、この用語がどの上限を指し得るかについて理解する。
【0013】
本発明による方法は、上述の工程(a)及び(c)からなってもよく、又は工程(a)の前及び/又は工程(c)の後に試料を前処理又は単離する等の更なる工程を含んでもよく、例えば、被験物質の決定の目的に応じて診断、予後、環境関連、農業関連又は分析関連の結論を提供するために、それを参照と比較することによって、決定された被験物質を評価する1つ以上の工程を更に含んでもよい。
【0014】
本明細書で使用される場合、「決定すること」という用語は、被験物質の任意の種類の定性的又は定量的決定を包含する。定性的決定は、試料中の被験物質の存在又は非存在を決定することを目的とし、定量的決定は、被験物質の量を決定することを目的とする。定量的決定、すなわち量の決定は、絶対量(例えば、試料中に存在する分子の重量又は数による総量)又は相対量(例えば、試料体積(濃度)に対する量又はスコア(例えば、「多い」、「少ない」等)などの分類を決定することを含む。典型的には、被験物質を決定することは、前記被験物質の存在若しくは非存在、又は前記被験物質の量を決定することを含む。より典型的には、量は、本明細書の他の箇所で指定される「デジタル」検出を使用することによって定量的に決定される。
【0015】
本明細書で言及される「被験物質」という用語は、本発明の方法によって決定するのに適した任意の種類の分子又は作用物質に関する。そのような分子又は作用物質は、本明細書で言及される第1の結合剤及び第2の結合剤の結合を可能にするサイズ及び/又は構造を有し得ることが理解されよう。さらに、第1の結合剤及び第2の結合剤並びに連結剤は、本明細書の他の箇所に詳細に記載されているようなそれらの機能を発揮することができなければならないため、サイズの上限もあり得る。典型的には、本明細書で言及される被験物質は、タンパク質、ペプチド、核酸、例えばDNA若しくはRNA又は脂質若しくは代謝産物などの小分子、例えばフラボノイド及びイソフラボノイドを含むポリケチド、例えばテルペンを含むイソプレノイド、ステロール、ステロイド、カロテノイド、キサントフィル、炭水化物、フェニルプロパノイド、アルカロイド、ベンゼノイド、インドール、ポルフィリン、ホルモン、ビタミン、補因子、リグニン、グルコシノレート、プリン、ピリミジン、ヌクレオシド、ヌクレオチド、アルコール、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族化合物、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、エステル、アミン、イミン、アミド、シアン化物、アミノ酸、チオール、チオエステル、リン酸エステル、硫酸エステル、チオエーテル、スルホキシド又はエーテルである。小分子は、例えば、毒素であり得る。しかしながら、本発明の方法は、ウイルス又は更には細菌細胞を被験物質として決定するためにも使用することができる。本発明によって決定される被験物質はまた、環境試料中に存在し、例えば環境汚染、農業又は他の環境条件の指標として有用であり得る分子であってもよい。典型的には、前記被験物質は、タンパク質、ペプチド、ウイルス、細菌細胞又は小分子、好ましくは小分子毒素である。
【0016】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、決定される被験物質を含むか又は含むと疑われる組成物の任意の部分又はアリコートに関する。そのような試料は、典型的には体液又は生検試料などの生物から単離された生物学的試料であってもよく、又は培養細胞などの生物を含む組成物であってもよい。典型的には、前記生物学的試料は、疾患又は病状の診断又は予測などの医療目的のために本発明の方法によって調査される。また、試料は、環境試料であってもよく、又は人工試料であってもよい。環境試料は、任意の非生物学的天然源、例えば水などの環境に存在する溶液又は土壌などの組成物に由来し得る。人工試料は、人工供給源から得られた試料、例えば、製造され得る製品組成物又は製品の製造プロセス中に起こり得る中間組成物であり得る。そのような人工試料は、例えば、品質管理目的のために、又は特定の成分の量を決定するために調査され得る。典型的には、本発明の方法による前記試料は、生物学的試料、好ましくは体液又は生検試料である。
【0017】
「第1の結合剤」という用語は、被験物質に特異的に結合することができる分子、すなわち、試料中に存在すると疑われる被験物質以外の他の分子に結合せず、したがって交差反応しない分子に関する。特異的結合は、原則として、異なる候補薬剤を含むライブラリから被験物質に特異的に結合する薬剤を同定するためのスクリーニングアッセイを含む、当技術分野で周知の技術によって試験することができる。
【0018】
本発明による第1の結合剤は、固体支持体上に固定化される。前記第1の結合剤の固定化は、永久固定化又は可逆的固定化であり得る。永久固定は、当技術分野で周知の技術によって達成され得る。しかしながら、固定化された第1の検出剤は、固体支持体から放出され得ることが想定される。第1の検出剤として使用される抗体又は他のタンパク質若しくはペプチドの場合、これは特異的なタンパク質分解的切断によって達成され得る。核酸ベースのアプタマーの場合、固体支持体上に固定化された第1の結合剤を前記固体支持体から除去することは、ヌクレアーゼ消化によって達成され得る。典型的には、固定化は可逆的固定化、例えばL-DNA捕捉等の核酸ハイブリダイゼーションによって達成される固定化である。
【0019】
好ましくは、所望の被験物質に特異的に結合することができる第1の結合剤として使用され得る分子は、抗体であり得る。本発明に従って意味される結合剤としての抗体は、好ましくは被験物質に特異的に結合する全てのタイプの抗体を包含する。好ましくは、本発明の抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、又は依然として被験物質に特異的に結合することができるそのような抗体の任意の断片であり得る。本明細書で使用される抗体という用語に含まれるそのような断片は、二重特異性抗体、合成抗体、Fab、F(ab)2Fv若しくはscFv断片、又はこれらの抗体断片のいずれかの化学修飾誘導体を包含する。所望の被験物質に特異的に結合する抗体又はその断片は、一般に、例えばHarlow and Lane “Antibodies,A Laboratory Manual”,CSH Press,Cold Spring Harbor,1988に記載されている方法を使用することによって得ることができる。モノクローナル抗体は、免疫化された哺乳動物、好ましくは免疫化されたマウス(Koehler 1975,Nature 256,495,and Galfre 1981,Meth.Enzymol.73,3)に由来する脾臓細胞へのマウス骨髄腫細胞の融合を含む技術によって調製することができる。当業者は、免疫アッセイ、細胞選別又はウエスタンブロッティング又はプラズモン表面共鳴測定を含む免疫学的又は生化学的技術などの当技術分野で周知の技術によって特異的結合を試験することができる方法を十分に承知している。
【0020】
さらに、好ましくは、所望の被験物質に特異的に結合することができる第1の結合剤として使用され得る分子は、アプタマーであり得る。本発明による結合剤としてのアプタマーは、特定の標的被験物質に結合するオリゴヌクレオチド酸又はペプチド分子であり得る(Ellington 1990,Nature 346(6287):818-22).Bock 1992,Nature 355(6360):564-6)。オリゴヌクレオチド酸アプタマーは、選択の繰り返し又は指数関数的濃縮によるリガンドのいわゆる系統的展開(SELEX技術)によって操作される。ペプチドアプタマーは、通常、両端でタンパク質スキャフォルドに付着した可変ペプチドループを含む。この二重構造制約は、ペプチドアプタマーの結合親和性をナノモル範囲に増加させる。前記可変ペプチドループ長は、好ましくは、10~20個のアミノ酸で構成され、スキャフォルドは、改善された溶解性及び緻密性を有する任意のタンパク質、例えばチオレドキシン-Aであり得る。ペプチドアプタマーの選択は、例えば酵母ツーハイブリッド系(例えば、Hoppe-Seyler 2000,J Mol Med.78(8):426-30を参照)を含む異なる系を使用して行うことができる。被験物質に依然として特異的に結合することができる前記アプタマーの任意の断片も本発明に従って包含される。前記断片は、単離された形態で使用され得るか、又は融合分子、すなわち前記アプタマー断片を含む分子、並びにリンカー部分又はアダプター分子などの他の部分の一部であり得る。当業者は、プラズモン表面共鳴測定などの当技術分野で周知の技術によって特異的結合をどのように試験できるかを十分に承知している。
【0021】
好ましくは、所望の被験物質に特異的に結合することができる第1の結合剤として使用され得る分子は、受容体分子であり得る。本発明に従って言及される結合剤としての受容体分子は、典型的には、リガンドに特異的に結合し、リガンド結合時に活性化されてその生物学的機能を発揮するタンパク質である。リガンドに依然として特異的に結合することができるそのような受容体分子又はその断片はまた、被験物質としてのリガンド、又はリガンドに由来するが受容体分子若しくはその断片によって依然として結合することができる分子、例えばリガンドの拮抗的又は作動的に作用する変異体に対する、本発明による結合剤として使用され得る。好ましくは、本発明による結合剤として想定される受容体分子は、膜貫通型受容体タンパク質(Gタンパク質共役受容体、例えば代謝受容体、酵素結合受容体、例えば受容体チロシンキナーゼ、例えば増殖因子受容体、免疫受容体、例えばウイルス受容体、細胞表面抗原、又はT細胞受容体、例えばCD4、CD3、若しくはCD8等)、MHCタンパク質、細胞接着分子(インテグリン、カドヘリン、セレクチン又はシンデカン等)、ニューロン受容体、又は病原体受容体(Toll様受容体等)であり得る。しかしながら、受容体分子はまた、核ホルモン受容体、例えば糖質コルチコイドレセプター、レチノイン酸受容体又は甲状腺ホルモン受容体等の核受容体タンパク質であり得る。当業者は、測定される被験物質又はその断片に特異的に結合する受容体分子又はその断片を十分に承知している。さらに、特異的結合は、プラズモン表面共鳴測定などの当技術分野で周知の技術によって試験することができる。
【0022】
更に好ましくは、所望の被験物質に特異的に結合することができる第1の結合剤として使用され得る分子は、リガンド分子であってもよい。本発明に従って言及される結合剤としてのリガンド分子は、典型的には、受容体分子に特異的に結合し、受容体が前記受容体分子に結合すると活性化するタンパク質又はペプチドである。依然として受容体分子に特異的に結合することができるそのようなリガンド分子又はその断片はまた、被験物質としての受容体、又は受容体分子に由来するが、受容体の可溶性変異体などのリガンド分子又はその断片によって依然として結合することができる分子のための本発明による結合剤として使用され得る。さらに、リガンドはまた、生物の試料中の特定の抗体を決定するために使用され得る任意の抗原であり得る。好ましくは、本発明に従って結合剤として想定されるリガンド分子は、ペプチドホルモン、神経伝達物質、成長因子(アンジオポエチン、BMP、好中球因子、EGF、エピフリン(epiphrin)、EPO、FGF、GDNF、GDF、インスリン又はインスリン様成長因子等)、TGF、好中球、VEGF、サイトカイン(インターロイキン、インターフェロン、リンホカイン、モノカイン、コロニー刺激因子又はケモカイン等)、細胞外マトリックスタンパク質(フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲン、アンキリン又はラミニン等)等であり得る。当業者は、測定される被験物質又はその断片に特異的に結合するリガンド分子又はその断片を十分に承知している。さらに、特異的結合は、プラズモン表面共鳴測定などの当技術分野で周知の技術によって試験することができる。
【0023】
更に好ましくは、第1の結合剤は、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)であり得る。DARPinは、高度に特異的で高親和性の標的タンパク質結合を達成するように設計することができる遺伝子操作された抗体模倣タンパク質である。それらは天然アンキリンリピートタンパク質に由来する。典型的には、DARPinは、少なくとも3つの反復モジュールを含み、そのうちの最も多くのN末端及び最も多くのC末端モジュール(「キャップ」とも呼ばれる)は、タンパク質の疎水性コアを保護する(Binz 2003,Journal of Molecular Biology.332(2):489-503)。
【0024】
典型的には、前記第1の結合剤は、抗体又はその断片、アプタマー、受容体分子又はその断片、及びリガンド分子又はその断片からなる群から選択される。より典型的には、第2の結合剤は、抗体若しくはその断片又はアプタマーである。
【0025】
本明細書で使用される場合、「固体支持体」という用語は、分子、特に第1の結合剤及び検出可能な標識を固定化するための基礎として機能することができる物質の固体組成物に関する。固体支持体は、無機若しくは有機化合物又はその両方を含み得る。典型的には、固体支持体に適した無機化合物は、シリカ、多孔質ガラス、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ニッケル)及びこれらの1つ以上を含有する粘土からなる群から選択され得る。固体支持体はまた、金属又はグラファイトなどの導電性化合物を含んでもよい。好ましくは、そのような固体支持体は、電極、半導体、プラズモン共鳴体、又は任意の種類の電気回路構成であってもよい。あるいは、固体支持体は、架橋ポリマーなどの有機化合物を含み得る。適切な架橋ポリマーの非限定的な例は、ポリアミド、ポリエーテル、ポリスチレン及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。当業者は、調査する試料の種類、被験物質の検出のために想定される方法、及び被験物質を検出するために使用される第1の分子の種類に基づいて適切な固体支持体を選択する方法を十分に承知している。
【0026】
典型的には、前記固体支持体は、その表面に、標識が連結剤によって共有結合され得るリンカーを含む。典型的には、固体支持体の表面に使用される類似体は、トランスグルタミナーゼのKタグとして機能し得る固定化ペプチドであり得る。
【0027】
しかしながら、本発明に従って想定される前記固体支持体は、典型的には、電極又は平面導波路である。また、典型的には、前記固体支持体は、好ましくはプラズモン共鳴体のビーズ、ウェル又は所定の細分された検出領域である。より典型的には、各ビーズ、ウェル又は所定の細分された検出領域は、所定量の第1の結合剤、好ましくは最大3、最大2又は最も好ましくは1を固定化している。
【0028】
被験物質を決定する場合、前記被験物質の量を決定することを含み、典型的には、好ましくはプラズモン共鳴体のビーズ、ウェル又は所定の細分された検出領域を使用してもよく、より好ましくは、所定量の第1の結合剤を固定化している。ビーズ、ウェル又は所定の細分化された検出領域に対する第1の結合剤の所定の比に照らして、ビーズ上又はウェル又は所定の細分化された検出領域内の1つ以上の検出可能な標識によって生成されたシグナルは、第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の最初に形成された数の複合体と相関することが理解されよう。したがって、好ましくは、被験物質の量は、共有結合した少なくとも1つの検出可能な標識を含むビーズ、ウェル、又は所定の細分された検出領域をカウントすることによって決定される。続いて、最初に形成された複合体の数、ひいては被験物質の数を、既存の関係に基づいて計算することができる。
【0029】
被験物質に特異的に結合することができる「第2の結合剤」という用語は、第1の結合剤に結合したときの被験物質に、又は被験物質に結合したときの第1の結合剤に特異的に結合することができる分子、すなわち、試料中に存在すると疑われる被験物質又は被験物質と第1の結合剤との複合体以外の他の分子に結合せず、したがって交差反応しない分子に関する。典型的には、前記第2の結合剤は、抗体又はその断片、アプタマー、受容体分子又はその断片、及びリガンド分子又はその断片からなる群から選択される。より典型的には、第2の結合剤は、抗体若しくはその断片又はアプタマーである。典型的には、第2の結合剤は、第1の結合剤と同じ前述の分子クラスに由来する。第1の結合剤に従って作製された抗体又はその断片、アプタマー、受容体分子又はその断片、及びリガンド分子又はその断片の定義は、必要な変更を加えて第2の結合剤に適用される。
【0030】
本明細書で使用される場合、「検出可能な標識」という用語は、本発明の方法の状況で検出することができる物理的又は化学的特性を示す分子に関する。好ましくは、前記特性は、放射線、化学発光、蛍光又はFRETの放射などの光学的に検出可能な特性、電場又は磁場との干渉などの電磁気的特性、検出可能な放射能、又は特定の化学反応を実行又は触媒する能力などの化学的特性である。検出可能な標識は、第2の結合剤に可逆的に結合する。この目的のため、検出可能な標識は、第2の結合剤に可逆的に結合することができる分子であってもよく、又は前記第2の結合剤の既に一部である分子若しくは部分であってもよい。典型的な検出可能な標識としては、金粒子、ラテックスビーズ、アクリダンエステル、ルミノール、ルテニウム、酵素的に活性な標識、放射性標識、磁気標識又は蛍光標識が挙げられる。酵素的に活性な標識としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ又はルシフェラーゼが挙げられる。そのような酵素的に検出可能な標識の検出に適した基質としては、ジ-アミノ-ベンジジン(DAB)、3,3’-5,5’-テトラメチルベンジジン、NBT-BCIP(4-ニトロブルーテトラゾリウムクロリド及び5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート)が挙げられる。適切な酵素-基質の組み合わせにより、着色された反応産物、蛍光又は化学発光が生じてもよく、これは、当該技術分野で公知の方法によって(例えば感光フィルム又は適切なカメラシステムを使用して)、測定することができる。典型的な蛍光標識としては、蛍光タンパク質、例えばGFP、RFP、YFP、BFP又はその変異体、Cy3、Cy5、Texas Red、フルオレセイン、及びAlexa色素、例えばAlexa 568が挙げられる。また、蛍光標識としての量子ドットの使用が、企図される。典型的な放射性標識としては、35S、125I、32P、33P等が挙げられる。放射性標識は、公知かつ適切な、例えば感光膜又はホスホイメージャー(phosphor imager)等の任意の方法により検出され得る。典型的な磁気標識は、鉄-白金ナノ粒子、鉄ナノ粒子、ニッケルナノ粒子又はコバルトナノ粒子を含む。典型的には、前記検出可能な標識は、蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、磁気標識、及び電気化学標識からなる群から選択される。典型的には、前記検出可能な標識は、連結剤によって固体支持体に共有結合的に連結され得るリンカーを含む。
【0031】
本明細書で言及される「連結剤」という用語は、検出可能な標識を固体支持体に共有結合させることができる薬剤に関する。本発明の方法で使用される連結剤の選択は、検出可能な標識及び固体支持体の化学的性質に依存することが理解されよう。連結剤は、第1の結合剤及び/又は第2の結合剤に直接又はリンカー分子を介して連結されてもよい。連結剤は、共有結合していてもよいし、可逆的に連結していてもよい。典型的には、連結剤は、第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体が形成された後にのみリンカーによって結合され得る。そのような場合、アプタマーの一部が第1の結合剤に結合し、アプタマーの第2の部分が第2の結合剤に結合するスプリットアプタマーを使用してもよい。各アプタマー部分は単独では、連結剤に結合することができない。しかしながら、第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体が形成されると、アプタマーは連結剤に特異的に結合する。そのようなスプリットアプタマーは当技術分野で公知である(Walter 2017,Nano Lett 17,2467-2472)。あるいは、架橋酵素が連結剤として使用される場合、第1の結合剤及び第2の結合剤は、機能的に活性になるために互いに存在することを必要とする前記酵素の異なる部分に連結されてもよい。典型的には、前記連結剤はまた、共有結合架橋酵素、好ましくはトランスグルタミナーゼ又はソルターゼであってもよく、又は前記連結剤は共有結合架橋化学部分を含む。当業者は、検出可能な標識及び/又は固体支持体の化学的性質を考慮して連結剤を選択する方法を十分に承知している。
【0032】
好ましくは、トランスグルタミナーゼを連結剤として使用することができる。トランスグルタミナーゼは、グルタミン残基の側鎖のγ-カルボキサミド基と、ペプチド又はタンパク質のリジン残基又は一級アミン残基の側鎖のε-アミノ基との間のイソペプチド結合の形成を触媒し、それによってアンモニアを放出する架橋酵素である(EC番号EC2.3.2.13)。典型的には、本発明に従って想定されるトランスグルタミナーゼは、検出可能な標識上のQ-Tagを、固体支持体上にリンカーとして固定化されたK-タグペプチドに転写し得る。トランスグルタミナーゼは、細菌、哺乳動物及びヒトを含む様々な生物に見られる。ヒトでは、とりわけ、以下のトランスグルタミナーゼが報告されている:第XIII因子、ケラチノサイトトランスグルタミナーゼ、組織型トランスグルタミナーゼ、表皮トランスグルタミナーゼ、前立腺トランスグルタミナーゼ、TGM X、TGM Y、TGM Z、タンパク質4.2。
【0033】
好ましくは、ソルターゼも連結剤として使用され得る。ソルターゼは、トランスペプチダーゼ(E.C.番号3.4.22.70)として作用する細菌酵素である。特に、それらは保存された切断側で基質タンパク質又はペプチドを切断し、切断に起因するカルボキシ末端と別のタンパク質又はペプチド、典型的にはペプチドグリカンの遊離アミノ基との間のアミド結合の形成を触媒する。好ましくは、切断側が第1のタンパク質のC末端に付加され、オリゴグリシンモチーフがライゲーションされる第2のタンパク質のN末端に付加されるように、ソルターゼのトランスペプチダーゼ活性を使用することができる。タンパク質混合物にソルターゼを添加すると、2つのペプチドは天然のペプチド結合を介して共有結合する。この用語は、完全長ソルターゼタンパク質、並びにソルターゼ活性を有するその断片を含む。典型的には、本発明に従って適切なソルターゼには、ソルターゼA、ソルターゼB、ソルターゼC、及びD型ソルターゼが含まれる。
【0034】
さらに、連結剤は、好ましくは、共有結合架橋化学部分を含んでもよい。典型的には、連結剤として適切な化学部分は、第1の結合剤及び/又は第2の結合剤上に存在し、一緒になって、検出可能な標識の固体支持体への共有結合を化学的に触媒するか又は可能にする。例えば、検出可能な標識は、第1の結合剤、被験物質、及び第2の結合剤の複合体の形成時に固体支持体に機能的に近接するという点で、例えば連結剤として作用する抗体又はアプタマーによって複合体に非共有結合され得る。固体支持体上に存在する化学的部分及び検出可能な標識上に存在する化学的部分は、その後、共有結合が検出可能な標識と固体支持体との間に形成されるように互いに相互作用する。あるいは、第2の結合剤上に存在する第1の化学的部分は、複合体形成時に修飾されて第3の化学的部分になる第2の化学的部分を提示する固体支持体に機能的に近接してもよい。前記第3の化学的部分は、その後、検出可能な標識の化学的部分に共有結合することができる。そのようなアプローチに適した化学部分は、環化付加、例えばヒュスゲン1,3-双極子環化付加、チオール-エン反応、ディールス・アルダー反応、逆電子要求性ディールス・アルダー反応、求核置換、尿素のカルボニル化学様形成、又はジヒドロキシル化若しくはチオール-イン反応のアルキンのような炭素-炭素二重結合への付加反応等のクリック化学反応に適用できるものであり得る。典型的には、そのような反応は双直交反応として行われ、すなわち、反応の反応物は、系内の反応の前に動力学的、熱力学的、及び代謝的に安定でなければならず、系の他の反応又は成分を妨害してはならない。両方の反応物は、互いに特異的に相互作用しなければならず、すなわち、系内で交差反応性が生じてはならない。前記反応物の反応条件は、システム内の他の成分又は反応の安定性を妨げてはならない。
【0035】
本発明の方法による工程(a)では、決定される被験物質を含むか、又は決定される被験物質を含むと疑われる試料を、固体支持体上に被験物質に特異的に結合することができ、固体支持体上に固定化された第1の結合剤を含む配置と接触させる。前記配置は、本明細書の他の箇所に記載されているように、本発明によるセンサとして提供されてもよい。
【0036】
本明細書で使用される場合、「接触させる」という用語は、第1の結合剤及び/又は第2の結合剤が試料中に存在する場合に被験物質に結合され得るように、上述の成分を物理的に近接させることに関する。第1の結合剤の被験物質への結合及び第2の結合剤の被験物質又は第1の結合剤と被験物質との複合体への結合は、時間及び適切な条件の適用を必要とし得ることが理解されよう。当業者は、結合を達成するためにどのような時間が必要であり、どのような条件を適用する必要があるかを十分に認識している。例えば、試料及び結合剤は、塩濃度及び/又はpH値を調整する緩衝液と溶解又は混合され得る。適用され得る適切な緩衝剤及び他の補助成分は、使用される結合剤及び決定される被験物質の化学的性質に依存することが理解されよう。
【0037】
本発明の方法の工程(a)において、第1の結合剤及び被験物質はまた、被験物質に特異的に結合することができ、少なくとも1つの検出可能な標識に可逆的に結合することができる第2の結合剤と接触される。第2の結合剤は、試料を固体支持体上に固定化された第1の結合剤と接触させた後に適用され得る。あるいは、試料を第2の結合剤と共に第1の結合剤と接触させてもよく、すなわち、両方の成分を固体支持体及び固定化された第1の結合剤に同時に適用してもよい。更に代替として、第2の結合剤と試料とを混合してもよく、得られた混合物は、その後、固定化された第1の結合剤を含む固体支持体に適用される。
【0038】
さらに、本発明の方法の工程(a)において、検出可能な標識を、第1の結合剤及び第2の結合剤を含む試料に適用する。これは、前記成分が互いに接触する前又は後に、記載されるように、試料が第1の結合剤及び/又は第2の結合剤と接触しているときに一緒に行うことができる。
【0039】
第1の結合剤及び第2の結合剤が物理的に近接しているとき、本発明の方法において適用される第1の結合剤及び/又は第2の結合剤は、可逆的に結合した少なくとも1つの検出可能な標識を固体支持体に共有結合させることができる連結剤に連結される。前述のように、これは、第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の間の複合体が形成され、検出可能な標識を固体支持体に共有結合させることができるように連結剤の連結活性が存在する場合に当てはまる。したがって、本方法の工程(a)は、第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体が形成されるように、及び少なくとも1つの検出可能な標識を固体支持体に共有結合させるために、第1の結合剤及び第2の結合剤への被験物質の特異的結合を可能にする時間及び条件の両方の下で実施することを更に必要とする。
【0040】
検出可能な標識は、固体支持体又は固体支持体上に固定化された同様の分子に共有結合され得る。検出可能な標識の化学的性質に依存して、当業者は、検出可能な標識のための適切なリンカー又は検出可能な標識を固体支持体に直接連結するための手段を十分に認識している。
【0041】
本発明の方法の工程(a)の間に起こる上述の活性の結果として、少なくとも1つの検出可能な標識が固体支持体に共有結合する。連結剤として酵素を使用すると、1つの被験物質の存在によって引き起こされる1つの複合体形成の結果として、2つ以上の検出可能な標識が固体支持体上に共有結合によって固定化されることが理解されよう。したがって、試料中の1つの被験物質分子の存在に起因する複合体形成の事象は、容易かつ正確な検出を可能にする固体支持体上の検出可能な標識分子の様々な固定化を引き起こすために増幅され得る。
【0042】
本発明の方法の工程(b)において、第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体は、少なくとも1つの検出可能な標識が共有結合した固体支持体が残るように固体支持体から除去される。
【0043】
本明細書で使用される場合、「除去する」という用語は、工程aで形成された複合体全体又はその一部を固体支持体から除去して、連結剤がもはや検出可能な標識への可逆的結合及び/又は固体支持体への共有結合によってそれを固定化することができないようにする任意の手段に関する。典型的には、本明細書で言及される除去は、複合体又はその成分を溶解する条件を適用する緩衝液等の洗浄液で固体支持体を洗浄することによって達成される。代替的又は追加的に、温度又は他の物理的な力、例えば振盪又は遠心分離が加えられてもよい。しかしながら、共有結合した検出可能な標識は、固体支持体上に結合したままであり、複合体を除去するために使用される測定によって影響されないことが理解されるであろう。複合体を除去するための適切な手段は、典型的には、固体支持体への第1の結合剤の固定化の性質に依存する。第1の結合剤が、例えば、核酸ハイブリダイゼーションによって固定化される場合、ハイブリダイズした核酸鎖の解離を促進する温度及び/又は塩を適用することが、複合体を除去するために使用され得る。第1の結合剤が、固定化された抗体若しくはその断片、受容体タンパク質若しくはその断片、又はリガンドタンパク質若しくはその断片である場合、固定化された抗体若しくはその断片、受容体タンパク質若しくはその断片、又はリガンドタンパク質若しくはその断片を固体支持体から切断するプロテアーゼを用いたタンパク質分解消化が使用され得る。同様に、核酸ベースのアプタマーが第1の結合剤として使用される場合、固体支持体からアプタマーを切断するためにヌクレアーゼ消化が使用され得る。
【0044】
工程(b)の結果として、固体支持体は無傷の複合体を含まず、共有結合した検出可能な標識のみが残る。前記残りの検出可能な標識は、以前の複合体形成事象を表す。さらに、非特異的ノイズシグナルを生成し得る検出可能な標識、並びに共有結合した検出可能な標識によって誘発される適切なシグナル検出を妨害し得る第2の結合剤及び他の成分も大部分除去される。
【0045】
本発明の方法の工程(c)において、固体支持体上の少なくとも1つの共有結合検出可能な標識が検出され、それによって被験物質が決定される。
【0046】
本明細書で使用される場合、「検出する」という用語は、固体支持体に共有結合した標識分子の存在、非存在及び/又は量を、前記標識分子の物理的、化学的、物理化学的及び/又は生物学的特性を測定することによって同定することに関する。検出可能な標識は、典型的には、測定され得るシグナルを生成することが理解されよう。シグナル強度及び/又は持続時間は、典型的には、固体支持体上に存在する検出可能な標識分子の量を示す。検出可能な標識の化学的性質に応じて、シグナルは、光又は他の放射線の放射などの能動シグナルであってもよく、又は受動シグナル、すなわち、電磁場、放射線などを印加するなどの外部刺激に対する応答として誘発されるシグナルであってもよい。当業者は、検出可能な標識分子によって誘発されるそのようなシグナルの測定がどのようにして行われ得るかを十分に承知しており、本発明の方法に従って使用される検出方法は、使用される検出可能な標識に依存することが理解されよう。本発明による好ましい測定方法はまた、化学発光測定、蛍光測定、FRET測定、電気化学発光測定、質量分析を含む質量測定、例えばChemFET又は他の電極配置を使用した磁場又は電場ベースの測定、ラジオイムノアッセイ測定、解離促進ランタニドフルオロイムノアッセイ(DELFIA)測定、シンチレーション近接アッセイ測定、量子ドット技術測定、比濁測定又はネフェロメトリー測定を含む。
【0047】
検出可能な標識はまた、間接的に、すなわち固体支持体上の固定化された検出可能な標識に特異的に結合することができる更なる標識化分子を使用することによって検出され得る。このような更なる標識化分子は、工程(b)が行われた後、工程(c)の前に固体支持体に適用され得る。固体支持体上の検出可能な標識(複数可)への1つ以上の前記更なる標識分子の特異的結合時に、前記更なる標識化分子は、前記標識化分子の物理的、化学的、物理化学的及び/又は生物学的特性を測定することによって工程(c)で検出され得ることが理解されよう。さらに、固定化された検出可能な標識に特異的に結合することができる更なる分子は、他の標識化分子のアンカーとしても役立ち得る。更なる標識化分子又はアンカー分子として機能し得る適切な分子はまた、本明細書の他の箇所に記載されるような標的の特異的結合を可能にする抗体、アプタマー又は他の分子であり得る。そのような更なる分子に適した標識は、本明細書の他の箇所で検出可能な標識について記載されているものである。
【0048】
本発明の方法において、第1の結合剤及び第2の結合剤は、異なる被験物質を決定するために使用され得る。そのような場合、そのような異なる被験物質に対する複合体が形成されると、各複合体は異なる連結剤を有し、異なる検出可能な標識に対して異なる連結活性を提供しなければならないことが理解されよう。例えば、被験物質Aは、連結剤Aに連結された第1の結合剤及び第2の検出可能な標識Aを使用することによって決定され、続いて複合体Aが形成されると、検出可能な標識Aを固体支持体に共有結合させ、被験物質Bは、続いて又は同時に、連結剤Bに連結された第1の結合剤及び第2の検出可能な標識Bを使用することによって決定され、続いて複合体Bが形成されると、検出可能な標識Bを固体支持体に共有結合させる。典型的には、被験物質A及びBが調査される試料中に存在した場合に固体支持体上に存在する検出可能な標識A及びBは、前記検出可能な標識間で異なる検出可能な物理的、化学的、物理化学的及び/又は生物学的特性を使用することによって検出することができる。
【0049】
本発明の方法の特定の実施形態では、前記固体支持体は、好ましくはプラズモン共鳴体のビーズ、ウェル又は所定の細分された検出領域である。好ましくは、各ビーズ、ウェル又は所定の細分された検出領域は、所定量の第1の結合剤をその上に固定化している。前記方法は、被験物質を決定するのに特に有用であり、前記被験物質の量を決定することを含む。典型的には、前記量は、共有結合した少なくとも1つの検出可能な標識を含むビーズ、ウェル、又は所定の細分された検出領域をカウントすることによって決定される。この特定の実施形態によれば、前記ビーズ、ウェル又は所定の細分された検出領域に共有結合した検出可能な標識の存在若しくは非存在、又は量が、各ビーズ、ウェル又は所定の細分された領域について検出される。その後、陽性ビーズ、ウェル又は所定の細分された領域の数が決定される。陽性ビーズ、ウェル又は所定の細分化された領域は、検出可能な標識を示すか、又は所定の強度若しくは持続時間の測定可能なシグナル、例えば、所定の強度閾値を超える又は所定の時間窓を超える測定可能なシグナルを誘発する検出可能な標識を示すものである。陽性ビーズ、ウェル又は所定の細分された領域、及び前記ビーズ、ウェル又は所定の細分された領域のそれぞれに固定化された所定量の第1の結合剤に基づいて、検出可能な標識のビーズ、ウェル又は所定の細分された領域への共有結合を引き起こした被験物質の量を、例えば計算によって決定することができる。例えば、各ビーズ、ウェル又は所定の細分された領域が理想的には1つの第1の結合剤を含有する場合、試料中の1分子の被験物質の存在は、前記ウェル、ビーズ又は所定の細分された領域への少なくとも1つの検出可能な標識の共有結合を引き起こす1つの複合体を生成する。したがって、ビーズ、ウェル又は所定の細分された領域上の検出可能な標識(複数可)の存在が決定された場合、この存在は、試料中に存在する1つの被験物質の存在を反映する。したがって、ビーズ、ウェル又は任意の他の所定の細分された領域等の単離された物品に対して所定量の第1の結合剤を使用することにより、試料中に存在する被験物質分子の定量的又は半定量的決定が可能になる。この技術は、「デジタル」検出とも呼ばれる。
【0050】
有利には、本発明によれば、サンドイッチアッセイ形式での免疫複合体形成の結果としての固体支持体への検出可能な標識の共有結合の使用は、感度を改善し、望ましくないバックグラウンドノイズを抑制するために使用され得ることが見出された。本発明によれば、検出可能な標識の固体支持体への共有結合は、第1の結合剤、例えば抗体、決定される被験物質(anlyte)、第2の結合剤、例えば抗体を含む免疫複合体が形成され、複合体へのそれらの関与に起因する第1の結合剤及び第2の結合剤が、検出可能な標識の固体支持体への共有結合を可能にする連結剤を取得又は活性化する場合にのみ生じる。それにより、調査される試料中の単一の被験物質分子の存在に起因する単一の免疫複合体形成事象は、固体支持体へのいくつかの検出可能な標識の共有結合を引き起こし、したがって、前記被験物質分子の存在を表す検出可能な標識によって誘発されるシグナルを増強する。ノイズを引き起こす成分は、検出可能な標識(複数可)が固体支持体に効率的に共有結合した後に除去され得る。固体支持体の性質に応じて、複合体形成事象を本質的に単離することが可能である。例えば、ビーズが、1つの被験物質分子の存在下で複合体形成を開始する単一の第1の結合剤をその表面に固定化した固体支持体として使用される場合、複合体形成及びノイズ成分の除去を実施した後の前記ビーズが、その表面に共有結合した1つ以上の検出可能な標識を含む場合、前記標識化ビーズは、試料中に存在する1つの被験物質分子を表す。そのような「デジタル」検出フォーマットでは、標識化ビーズの数を使用して、試料中に存在する被験物質分子をカウントすることができる。
【0051】
本発明のおかげで、分子数レベルで最終的な感度を有する試料中の被験物質の決定が可能である。検出可能な標識の固体支持体への共有結合により、結合していない検出可能な標識及び/又は第1の結合剤及び第2の結合剤等のノイズを引き起こす成分は、激しい洗浄又は他の処理によって効率的に除去することができる。
【0052】
本発明はまた、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための装置であって、
(a)センサ素子であって、
(i)前記被験物質に特異的に結合することができ、固体支持体上に固定化されている、第1の結合剤、及び
(ii)前記被験物質に特異的に結合することができ、少なくとも1つの検出可能な標識に可逆的に結合することができる、第2の結合剤であって、
第1の結合剤及び第2の結合剤が物理的に近接しているとき、前記第1の結合剤及び/又は前記第2の結合剤が、可逆的に結合した少なくとも1つの検出可能な標識を固体支持体に共有結合させることができる連結剤に連結されている、第2の結合剤
を含む、センサ素子と、
(b)固体支持体上の共有結合した少なくとも1つの検出可能な標識を検出するための検出器と
を備える、装置に関する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「装置」という用語は、本発明の方法による被験物質の決定を可能にするように互いに動作可能に連結された上述の成分を含むシステムに関する。
【0054】
センサ素子は、典型的には、被験物質に特異的に結合することができ、被験物質を含む試料と接触するか、又は被験物質を含むと疑われる固体支持体上に固定化された前記第1の結合剤を有する反応ゾーンを含む。さらに、反応ゾーンにおいて、第2の結合剤、検出可能な標識及び条件を適用することが可能であり、この条件は、(i)第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体が形成されるように、第1の結合剤及び第2の結合剤への被験物質の特異的結合を可能にし、(ii)固体支持体への少なくとも1つの検出可能な標識の共有結合を可能にする。
【0055】
さらに、反応ゾーンは、少なくとも1つの検出可能な標識を共有結合した固体支持体が残るように、固体支持体から第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体を固体支持体から除去するための条件を適用することを可能にする。本明細書の他の箇所に記載されているように、そのような条件は、適切な緩衝液若しくは他の溶媒等の洗浄液による洗浄、及び/又は温度若しくは他の物理的力の適用を含み得る。
【0056】
反応ゾーンは、試料適用を直接的に可能としてもよく、又は試料が適用されるローディングゾーンに接続されていてもよい。後者の場合、試料は、ローディングゾーンと反応ゾーンとの間の接続を介して反応ゾーンに能動的に又は受動的に輸送され得る。さらに、反応ゾーンはまた、検出器に接続される。接続は、検出器が固体支持体に共有結合した検出可能な標識を検出できるようなものである。適切な接続は、検出可能な標識(複数可)の存在又は量を測定するために使用される技術に依存する。例えば、光学的な検出のために、光の伝播が検出器と反応ゾーンとの間に要求されることがあり、電気化学的決定のために、流体接続が、例えば、反応ゾーンと電極との間に、必要とされることがある。
【0057】
検出器は、固体支持体上の共有結合を検出可能な標識の存在又は量を検出するように適合される。検出可能な標識に応じて、異なる検出技術が適用され得る。
【0058】
光学的に検出可能な標識は、発光、蛍光、FRET、偏光、屈折などを測定することによって決定され得る。典型的な光検出器は、フォトマルチプライヤ、フォトチューブ、イオン化検出器、アクティブピクセルセンサ、フォトトランジスタ、フォトダイオード、量子ドット光電導体又はフォトダイオード、光電池、半導体検出器、熱検出器、光化学検出器などであり得る。
【0059】
電気化学的に検出可能な標識は、ボルタメトリック測定及び典型的にはアンペロメトリック測定に適した薄層電極などの電極構成によって決定され得る。検出器は、典型的には、少なくとも1つの電極がいわゆる作用電極である少なくとも2つの電極を含む。電極は、金属、貴金属、合金又はグラファイトなどの全ての従来の電極材料から構成することができ、好ましくは金又はパラジウムなどの貴金属又はグラファイトから構成される。センサの様々な電極は、同じ又は異なる材料から構成することができる。より典型的には、電極はパラジウムで作られる。
【0060】
固体支持体に共有結合した検出可能な標識の検出された存在、非存在又は量は、その後、評価ユニットに伝達され得ることが理解されよう。前記評価ユニットは、好ましくは、検出された検出可能な標識(複数可)の存在、非存在又は量に基づいて試料中の被験物質(anylte)の存在又は量を決定するための実施されたアルゴリズムを有するコンピュータ等のデータ処理要素を含み得る。
【0061】
そのような実装されたアルゴリズムは、シグナル強度、シグナル持続時間及び他の所定のパラメータについて検出可能な標識(複数可)から誘発された測定シグナルを評価することができる。前記評価に基づいて、真に正のシグナルを識別及び検証することができ、ノイズシグナルを識別し、更なる評価のために無視することができる。当業者は、どのアルゴリズムが使用され得て、それらを本発明の装置にどのように実装することができるかを十分に承知している。
【0062】
さらに、評価ユニットはまた、個々のビーズ、ウェル、又は所定の細分された検出領域を同定し、共有結合した少なくとも1つの検出可能な標識を含むビーズ、ウェル又は所定の細分された検出領域をカウントし、それによって被験物質の量を決定するための実施されるアルゴリズムを含み得る。
【0063】
本発明は、概して、前記試料内で、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための本発明の装置の使用に関する。より典型的には、装置は、本明細書の他の箇所に記載されている本発明の方法をより詳細に実行することによって被験物質を決定するために使用される。
【0064】
さらに、本発明は、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するためのキットであって、
(a)被験物質に特異的に結合することができ、固体支持体上に固定化されている、第1の結合剤、
(b)被験物質に特異的に結合することができ、少なくとも1つの検出可能な標識に可逆的に結合することができる、第2の結合剤であって、第1の結合剤及び第2の結合剤が物理的に近接しているとき、前記第1の結合剤及び/又は前記第2の結合剤が、可逆的に結合した少なくとも1つの検出可能な標識を固体支持体に共有結合させることができる連結剤に連結されている、第2の結合剤、
(c)検出可能な標識、並びに
(d)少なくとも1つの検出可能な標識を共有結合させた固体支持体が残存するように、固体支持体から第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体を除去するための薬剤
を含む、キットに関する。
【0065】
本明細書で使用される場合、「キット」という用語は、典型的には、別個に又は単一の容器内に提供される、上述の構成要素の集合を指す。容器はまた、典型的には、本発明の方法を実施するための説明書も含む。これらの説明書は、マニュアルの形式であってもよく、又はコンピュータ若しくはデータ処理装置上で実行されるときに本発明の方法において言及されるフィブリノゲンの決定を実行若しくはサポートすることができるコンピュータプログラムコードにより提供されてもよい。コンピュータプログラムコードは、データストレージ媒体若しくは装置、例えば光学ストレージ媒体(例えば、コンパクトディスク)上に若しくは直接的にコンピュータ若しくはデータ処理装置上に提供されてもよく、又はダウンロードフォーマット、例えばアクセス可能なサーバー若しくはクラウドへのリンクにおいて提供されてもよい。さらに、キットは、通常、較正若しくは検証のための標準化された量又は他の基準量を有する被験物質溶液を含み得る。本発明によるキットはまた、検出可能な標識の検出に必要な洗浄液、溶媒及び/又は試薬などの本発明の方法を実施するために必要な更なる構成要素を含み得る。さらに、それは、本発明の装置を部分的に又は全体的に含んでもよい。
【0066】
以下の実施形態は、本発明に従って想定される特定の好ましい実施形態である。全ての定義は、上記の用語の説明を準用する。
【0067】
実施形態1.試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための方法であって、
(a)前記試料を、
(i)前記被験物質に特異的に結合することができ、固体支持体上に固定化されている、第1の結合剤、及び
(ii)前記被験物質に特異的に結合することができ、少なくとも1つの検出可能な標識に可逆的に結合することができる、第2の結合剤であって、
前記第1の結合剤及び前記第2の結合剤が物理的に近接しているとき、前記第1の結合剤及び/又は第2の結合剤が、可逆的に結合した前記少なくとも1つの検出可能な標識を前記固体支持体に共有結合させることができる連結剤に連結されている、第2の結合剤と、
- 第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体が形成されるように、前記第1の結合剤及び前記第2の結合剤への前記被験物質の特異的結合を可能にし、並びに
- 前記少なくとも1つの検出可能な標識を前記固体支持体に共有結合させることを可能にする、時間及び条件下で、接触させることと、
(b)前記少なくとも1つの検出可能な標識を共有結合させた前記固体支持体が残存するように、前記固体支持体から前記第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体を除去することと、
(c)前記固体支持体上の共有結合した前記少なくとも1つの検出可能な標識を検出し、それにより前記被験物質を決定することと
を含む、方法。
【0068】
実施形態2.前記被験物質が、タンパク質、ペプチド、ウイルス、細菌細胞又は小分子、好ましくは小分子毒素である、実施形態1に記載の方法。
【0069】
実施形態3.前記第1の結合剤が、抗体又はその断片、アプタマー、受容体分子又はその断片、及びリガンド分子又はその断片からなる群から選択される、実施形態1又は2に記載の方法。
【0070】
実施形態4.前記第2の結合剤が、抗体又はその断片、アプタマー、受容体分子又はその断片、及びリガンド分子又はその断片からなる群から選択される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
実施形態5.前記連結剤が、共有結合架橋酵素、好ましくはトランスグルタミナーゼ又はソルターゼである、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
実施形態6.前記連結剤が、共有結合架橋化学部分を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
実施形態7.前記検出可能な標識が、蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、磁気標識、及び電気化学標識からなる群から選択される、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0074】
実施形態8.前記検出可能な標識が、前記連結剤によって前記固体支持体に共有結合的に連結され得るリンカーを含む、実施形態7に記載の方法。
【0075】
実施形態9.前記固体支持体が、その表面に、前記標識が前記連結剤によって共有結合され得るリンカーを含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
実施形態10.前記固体支持体が、電極又は平面導波路である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
実施形態11.前記固体支持体が、好ましくはプラズモン共鳴体のビーズ、ウェル又は所定の細分された検出領域である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
実施形態12.各ビーズ、ウェル、又は所定の細分された検出領域が、所定量の第1の結合剤を固定化している、実施形態11に記載の方法。
【0079】
実施形態13.前記被験物質を決定することが、前記被験物質の前記量を決定することを含む、実施形態12に記載の方法。
【0080】
実施形態14.前記量が、共有結合した少なくとも1つの検出可能な標識を含むビーズ、ウェル、又は所定の細分された検出領域をカウントすることによって決定される、実施形態13に記載の方法。
【0081】
実施形態15.前記被験物質を決定することが、前記被験物質の存在又は非存在を決定することを含む、実施形態1又は12のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
実施形態16.前記試料が、生物学的試料、好ましくは体液又は生検試料である、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
実施形態17.試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための装置であって、
(a)センサ素子であって、
(i)前記被験物質に特異的に結合することができ、固体支持体上に固定化されている、第1の結合剤、及び
(ii)前記被験物質に特異的に結合することができ、少なくとも1つの検出可能な標識に可逆的に結合することができる、第2の結合剤であって、
前記第1の結合剤及び前記第2の結合剤が物理的に近接しているとき、前記第1の結合剤及び/又は前記第2の結合剤が、可逆的に結合した前記少なくとも1つの検出可能な標識を前記固体支持体に共有結合させることができる連結剤に連結されている、第2の結合剤
を含む、センサ素子と、
(b)前記固体支持体上の共有結合した前記少なくとも1つの検出可能な標識を検出するための検出器と
を備える、装置。
【0084】
実施形態18.前記試料内で、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための、実施形態17に記載の装置の使用。
【0085】
実施形態19.試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するためのキットであって、
(a)被験物質に特異的に結合することができ、固体支持体上に固定化されている、第1の結合剤、
(b)被験物質に特異的に結合することができ、少なくとも1つの検出可能な標識に可逆的に結合することができる、第2の結合剤であって、前記第1の結合剤及び前記第2の結合剤が物理的に近接しているとき、前記第1の結合剤及び/又は前記第2の結合剤が、可逆的に結合した前記少なくとも1つの検出可能な標識を前記固体支持体に共有結合させることができる連結剤に連結されている、第2の結合剤、
(c)検出可能な標識、並びに
(d)少なくとも1つの検出可能な標識を共有結合させた固体支持体が残存するように、固体支持体から第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体を除去するための薬剤
を含む、キットに関する。
【0086】
本明細書で引用された全ての参考文献は、その全体の開示内容及び本明細書で具体的に言及された開示内容に関して、参照により本明細書で組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【
図1】本発明の方法を実施するサンドイッチアッセイの概略構成を示す。固体支持体上には、第1の結合剤、例えば、目的の被験物質に特異的に結合することができる第1の抗体を固定化するためのリンカーがある。このリンカー、例えば核酸(LLNA)は、固体支持体上に第1の結合剤を固定化するために、第1の結合剤上の部分又はアダプターに結合することができる。第1の結合剤、例えば第1の抗体は、目的の被験物質に特異的に結合する。第1の結合剤によって結合されたときの目的の被験物質は、第2の結合剤、例えば第2の抗体によって特異的に結合される。第2の結合剤は、連結剤、例えばトランスグルタミナーゼに連結される。免疫複合体の一部になると、第2の結合剤は、連結剤を固体支持体に近接させる。連結剤、例えば、トランスグルタミナーゼは、検出可能な標識を固体支持体の表面に共有結合させる。これは、固体支持体上のリンカーとして存在するKタグに転写及び共有結合される標識分子上のQタグを使用することによって達成することができる。固体支持体に共有結合している検出可能な標識は、免疫複合体が、例えば洗浄工程によって除去された後、本発明の方法において後に検出される。
【
図2A】免疫複合体の除去後の共有結合した検出可能な標識からの測定シグナルの概略図。以前の免疫複合体に近接して共有結合した検出可能な標識からのシグナルのみが、特定の強度を有する真のシグナルとして検出される。洗浄後に残存する潜在的に非特異的な結合又は関連する検出可能な標識分子によって誘発されるノイズシグナルは、閾値未満である。
【
図2B】(A)の測定シグナルに対応する固体支持体上の基礎となる分子機構の概略図。
【
図3A】固体支持体に近接する望ましくない第2の結合剤はまた、いくつかの検出可能な標識に共有結合し得る。
【
図3B】前記共有結合した検出可能な標識は、激しい洗浄後も残存し得るが、適切な免疫複合体形成の結果として固体支持体に共有結合した標識よりも有意に少ない。望ましくない共有結合した検出可能な標識は、ノイズシグナルをもたらす。
【
図4】CCDカメラの読み取りを使用して単一の免疫複合体形成を検出するための所定の細分された領域を有するプラズモン表面。
【国際調査報告】