(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】脂質層上で免疫センシングするための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
G01N33/543 525U
G01N33/543 545A
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023577676
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2022066335
(87)【国際公開番号】W WO2022263523
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】シュテンゲレ,ニコラウス-ペーター
(57)【要約】
本発明は、診断試験及び技術に関する。特に、本発明は、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための方法であって、前記試料を、センサ素子であって、i)固体支持体上に存在するアンカー層と、ii)前記アンカー層に固着され、少なくとも1つの検出可能な標識を含む、前記被験物質に特異的に結合することができる、第1の結合剤と、iii)前記第1の結合剤と結合したとき前記被験物質と特異的に結合することができる、前記固体支持体に固定化された、第2の結合剤と、を備える、センサ素子と、前記試料中に存在すると疑われる前記被験物質の前記第1の結合剤への特異的結合、及び前記第2の結合剤の、前記第1の結合剤に結合した前記被験物質への特異的結合を可能にする時間及び条件下で、接触させることと、第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体の形成を検出し、それによって前記被験物質が決定される、複合体の形成を検出することと、を含む、方法に関する。更に、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための装置及び前記試料中の試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するためのその使用が提供される。更に、本発明は、前記試料内で、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するためのキットを企図する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための方法であって、
(a)前記試料を、センサ素子であって、
(i)固体支持体上に存在するアンカー層と、
(ii)前記アンカー層に固着され、少なくとも1つの検出可能な標識を含む、前記被験物質に特異的に結合することができる、第1の結合剤と、
(iii)前記第1の結合剤と結合したとき前記被験物質と特異的に結合することができる、前記固体支持体に固定化された、第2の結合剤と
を備える、センサ素子と、前記試料中に存在すると疑われる前記被験物質の前記第1の結合剤への特異的結合、及び前記第2の結合剤の、前記第1の結合剤に結合した前記被験物質への特異的結合を可能にする時間及び条件下で、接触させることと、
(b)第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体の形成を検出し、それによって前記被験物質が決定される、複合体の形成を検出することと
を含む、方法。
【請求項2】
第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の前記複合体の前記形成が、前記少なくとも1つの検出可能な標識によって誘発されるシグナルの強度及び/又は持続時間を測定することによって検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シグナルが、所定の特徴的な期間にわたって検出され得る、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アンカー層が、脂質層又は脂質二重層である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の結合剤が、アンカー分子を介して前記アンカー層に固定化される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の結合剤の量が、前記第2の結合剤の量を10倍~100倍、20倍~80倍、30倍~70倍又は40倍~60倍超える、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の結合剤が、抗体又はその断片、アプタマー、受容体分子又はその断片、及びリガンド分子又はその断片からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の結合剤が、抗体又はその断片、アプタマー、受容体分子又はその断片、及びリガンド分子又はその断片からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記被験物質を決定することが、前記被験物質の存在、非存在、又は量を決定することを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記検出可能な標識が、蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、磁気標識及び電気化学標識からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記センサ素子が、前記検出可能な標識によって誘発されるシグナルを検出するための検出器を備え、前記検出器が、前記固体支持体の下方に配置され、前記検出器が、前記第2の結合素子に直接近接したシグナルを選択的に検出することができる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための装置であって、
(i)固体支持体上に存在するアンカー層と、
(ii)前記アンカー層に固定化され、少なくとも1つの検出可能な標識を含む、前記被験物質に特異的に結合することができる、第1の結合剤と、
(iii)前記第1の結合剤と結合したとき前記被験物質と特異的に結合することができる、前記固体支持体に固定化された第2の結合剤と
を備えるセンサ素子を備える、装置。
【請求項13】
前記装置が、前記検出可能な標識によって誘発されるシグナルを検出するための検出器を更に備え、前記検出器が、前記固体支持体の下方に配置される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記試料内で、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための、請求項12又は13に記載の装置の使用。
【請求項15】
請求項12又は13に記載の装置を含む、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断試験及び技術に関する。特に、本発明は、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための方法であって、前記試料を、センサ素子であって、i)固体支持体上に存在するアンカー層と、ii)アンカー層に固着され、少なくとも1つの検出可能な標識を含む、被験物質に特異的に結合することができる、第1の結合剤と、iii)第1の結合剤と結合したとき被験物質に特異的に結合することができる、固体支持体上に固定化された、第2の結合剤とを備えるセンサ素子と、試料中に存在すると疑われる被験物質の第1の結合剤への特異的結合、及び第2の結合剤の、第1の結合剤に結合した被験物質への特異的結合を可能にする時間及び条件下で、接触させることと、第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体の形成を検出し、それによって被験物質が決定される、複合体の形成を検出することと、を含む、方法に関する。さらに、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための装置、及び前記試料内で、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するためのその使用が提供される。さらに、本発明は、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するためのキットを企図する。
【背景技術】
【0002】
イムノアッセイは、様々な診断目的に広く使用されている。イムノアッセイのためのいくつかの設定が開発されている。最も一般的なイムノアッセイの1つは、酵素結合吸着剤イムノアッセイ(ELISA)である。
【0003】
ELISAでは、目的の被験物質を含有するか、又は目的の被験物質を含有すると疑われる液体試料を、抗体又はアプタマーなどの抗体様分子の存在に起因する特別な結合特性を有する固定固相に適用する。試料適用後、分析的検出反応を実施及び停止するために、複数の試薬を順次添加し、インキュベートし、洗浄する。これらの全ての工程を実行した後、セットアップにおける物理的又は化学的特性、通常は液相が変化し、検出することができる。典型的には、酵素反応の生成物による発色などの光学的変化が最終液相で起こる。これらの変化は、調査された試料中に存在する目的の被験物質の存在又は存在量に相関する。典型的には定量的な読み出しは、通常、分光光度法による透過光の強度の検出に基づいており、これは液体を通る特定の波長の光の透過の定量化を含む。検出の感度は、分析反応中のシグナルの増幅に依存する。酵素反応は非常によく知られた増幅プロセスであるため、シグナルは、正確な定量を可能にするために一定の割合で検出試薬に連結された酵素によって生成される。
【0004】
ELISA設定のために、被験物質結合剤、例えば抗体は、固体支持構造体などの固体支持体に固定化される。通常、抗体は、分析用マルチウェルプレート又は分析用バイアルのウェルの透明な底部及び時には側壁にもコーティングされ、乾燥される。しかしながら、ナノ粒子又は他のビーズをELISAの固相として使用することもできる。
【0005】
研究及び診断のために、ELISAは、いわゆるサンドイッチELISAの形式で使用されることが多い。サンドイッチ形式では、固定化捕捉抗体を使用して、前記固定化抗体に適用された試料中に存在する被験物質を捕捉する、すなわち特異的に結合する。捕捉抗体が被験物質に特異的に結合した後、試料材料を洗い流す。後続の工程では、固定化抗体に結合した被験物質を、被験物質又は被験物質と捕捉抗体との複合体に特異的に結合する検出抗体とインキュベートする。検出抗体は、典型的には、そのような検出可能な標識を溶液から引き付けることを可能にする検出可能なリンカー又はアダプター分子を含む。
【0006】
しかしながら、シグナル生成に必要とされる脆弱な免疫複合体、及びサンドイッチフォーマットのそのようなELISAに使用される様々な構成要素に照らして、検出抗体の望ましくない結合、したがって偽陽性シグナルの生成の多くの可能性がある。したがって、研究に使用されるサンドイッチELISAは、偽陽性結果のリスクのために検証を必要とすることが多い。さらに、そのような脆弱な多成分アッセイフォーマットの様々な欠点に起因して、感度及び特異性に関して制限がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の根底にある技術的な課題は、上述のニーズに対応するための手段及び方法の提供と見なされ得る。この技術的な課題は、以下の特許請求の範囲及び本明細書において特徴付けられる実施形態によって、解決される。
【0008】
したがって、本発明は、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための方法であって、
(a)前記試料を、センサ素子であって、
(i)固体支持体上に存在するアンカー層と、
(ii)前記アンカー層に固着され、少なくとも1つの検出可能な標識を含む、前記被験物質に特異的に結合することができる、第1の結合剤と、
(iii)前記第1の結合剤と結合したとき前記被験物質と特異的に結合することができる、前記固体支持体に固定化された、第2の結合剤と
を備える、センサ素子と、前記試料中に存在すると疑われる前記被験物質の前記第1の結合剤への特異的結合及び前記第2の結合剤の前記第1の結合剤に結合した前記被験物質への特異的結合を可能にする時間及び条件下で、接触させることと、
(b)第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体の形成を検出し、それによって前記被験物質が決定される、複合体の形成を検出することと
を含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び請求項において、「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、それが使用される文脈に依存して、1つ以上を意味することができることが理解されるべきである。したがって、例えば、「1つの(an)」要素(item)への言及は、少なくとも1つの要素が利用され得ることを意味することができる。
【0010】
以下で使用される場合、「有する(have)」、「備える(comprise)」又は「含む(include)」という用語は、非限定的な意味又は限定的な意味を有することを意味する。したがって、限定的な意味を有するこれらの用語は、これらの用語によって導入された特徴以外に、記載された実施形態に他の特徴が存在しない状況を指す場合があり、すなわち、これらの用語は、「からなる」又は「から本質的になる」という意味で限定的な意味を有する。非限定的な意味を有する用語は、これらの用語によって導入された特徴に加えて、記載された実施形態において1つ以上の他の特徴が存在する状況を指す。
【0011】
さらに、以下で使用される場合、「好ましくは」、「より好ましくは」、「最も好ましくは」、「特に」、「より具体的には」、「典型的には」、及び「より典型的には」という用語又は同様の用語は、代替の可能性を制限することなく、追加の又は代替の特徴と共に使用される。
【0012】
さらに、本明細書で使用される場合、「少なくとも1つの」という用語は、この用語に続いて言及される項目の1つ又は複数が本発明に従って使用され得ることを意味することが理解されよう。例えば、この用語が、少なくとも1つのアイテムが使用されるべきであることを示す場合、これは、1つのアイテム又は1つより多いアイテム、すなわち、2つ、3つ、4つ、5つ、又は任意の他の数として理解され得る。この用語が言及する項目に応じて、当業者は、上限が存在する場合、この用語がどの上限を指し得るかについて理解する。
【0013】
本発明による方法は、上述の工程(a)及び(b)からなってもよく、又は工程(a)の前及び/又は工程(b)の後に試料を前処理又は単離するなどの更なる工程を含んでもよく、例えば、被験物質の決定の目的に応じて診断、予後、環境関連、農業関連又は分析関連の結論を提供するために、それを参照と比較することによって、決定された被験物質を評価する1つ以上の工程を更に含んでもよい。
【0014】
本明細書で使用される場合、「決定すること」という用語は、被験物質の任意の種類の定性的又は定量的決定を包含する。定性的決定は、試料中の被験物質の存在又は非存在を決定することを目的とし、定量的決定は、被験物質の量を決定することを目的とする。定量的決定、すなわち量の決定は、絶対量(例えば、試料中に存在する分子の重量又は数による総量)又は相対量(例えば、試料体積(濃度)に対する量又はスコア(例えば、「多い」、「少ない」等)などの分類を決定することを含む。典型的には、被験物質を決定することは前記被験物質の存在、非存在又は量を決定することを含む。
【0015】
本明細書で言及される「被験物質」という用語は、本発明の方法によって決定するのに適した任意の種類の分子又は作用物質に関する。そのような分子又は作用物質は、本明細書で言及される第1及び第2の結合剤の結合を可能にするサイズ及び/又は構造を有し得ることが理解されよう。さらに、第1及び第2の結合剤並びに連結剤は、本明細書の他の箇所に詳細に記載されているようなそれらの機能を発揮することができなければならないため、サイズの上限もあり得る。典型的には、本明細書で言及される被験物質は、タンパク質、ペプチド、核酸、例えばDNA若しくはRNA又は脂質若しくは代謝産物などの小分子、例えばフラボノイド及びイソフラボノイドを含むポリケチド、例えばテルペンを含むイソプレノイド、ステロール、ステロイド、カロテノイド、キサントフィル、炭水化物、フェニルプロパノイド、アルカロイド、ベンゼノイド、インドール、ポルフィリン、ホルモン、ビタミン、補因子、リグニン、グルコシノレート、プリン、ピリミジン、ヌクレオシド、ヌクレオチド、アルコール、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族化合物、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、エステル、アミン、イミン、アミド、シアン化物、アミノ酸、チオール、チオエステル、リン酸エステル、硫酸エステル、チオエーテル、スルホキシド又はエーテルである。小分子は、例えば、毒素であり得る。しかしながら、本発明の方法は、ウイルス又は更には細菌細胞を被験物質として決定するためにも使用することができる。本発明によって決定される被験物質はまた、環境試料中に存在し、例えば環境汚染、農業又は他の環境条件の指標として有用であり得る分子であってもよい。典型的には、前記被験物質は、タンパク質、ペプチド、ウイルス、細菌細胞又は小分子、好ましくは小分子毒素である。
【0016】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、決定される被験物質を含むか又は含むと疑われる組成物の任意の部分又はアリコートに関する。そのような試料は、典型的には体液又は生検試料などの生物から単離された生物学的試料であってもよく、又は培養細胞などの生物を含む組成物であってもよい。典型的には、前記生物学的試料は、疾患又は病状の診断又は予測などの医療目的のために本発明の方法によって調査される。また、試料は、環境試料であってもよく、又は人工試料であってもよい。環境試料は、任意の非生物学的天然源、例えば水などの環境に存在する溶液又は土壌などの組成物に由来し得る。人工試料は、人工供給源から得られた試料、例えば、製造され得る製品組成物又は製品の製造プロセス中に起こり得る中間組成物であり得る。そのような人工試料は、例えば、品質管理目的のために、又は特定の成分の量を決定するために調査され得る。典型的には、本発明の方法による前記試料は、生物学的試料、好ましくは体液又は生検試料である。
【0017】
本発明に従って使用される「センサ素子」という用語は、アンカー層によって覆われた表面を有する固体支持体を含む。さらに、センサ素子は、上記のような分子配置、すなわち、アンカー層に固着され、少なくとも1つの検出可能な標識を含む、被験物質に特異的に結合することができる第1の結合剤と、第1の結合剤に結合したとき被験物質に特異的に結合することができ、固体支持体上に固定化された第2の結合剤とを更に含むものとする。
【0018】
本明細書で言及される「アンカー層」という用語は、分子、特に本発明による第1の結合剤を会合することができる任意の分子層を包含する。本発明に従って言及される第1の結合剤の会合は、アンカー層内又はその表面上で第1の結合剤又はそれに付着した任意のアンカー分子の分子運動を可能にするものとする。前記アンカー層は、典型的には、脂質層又は脂質二重層である。当業者は、固体支持体がそのようなアンカー層によってどのように覆われ得るか、及びどの脂質が脂質層又は脂質二重層を作製するために使用され得るかを十分に承知している。本発明によるアンカー層としての使用に適した典型的な脂質層又は脂質二重層は、例えばリン脂質層又はリン脂質二重層を含み得る。前記リン脂質層又はリン脂質二重層は、1-オレオイル-2-パルミトイル-ホスファチジルコリン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン及び/又は1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[(N-(5-アミノ-1-カルボキシペンチル)イミノ二酢酸)スクシニル]などの1つ以上のホスファチジルコリン(複数可)、又は1つ以上のホスファチジルコリン(複数可)とコレステロールとの混合物を特に含み得る。さらに、支持された脂質二重層及び繋ぎ止められた二重層脂質膜は、本発明によるアンカー層としての用途を見出し得る。これらは、当技術分野で公知の一般的に使用されるモデル脂質二重層である。
【0019】
本明細書で使用される場合、「固体支持体」という用語は、分子、特に第2の結合剤を固定化するための基礎として機能することができる物質の固体組成物に関する。固体支持体は、無機若しくは有機化合物又はその両方を含み得る。典型的には、固体支持体に適した無機化合物は、シリカ、多孔質ガラス、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ニッケル)及びこれらの1つ以上を含有する粘土からなる群から選択され得る。固体支持体はまた、金属又はグラファイトなどの導電性化合物を含んでもよい。好ましくは、そのような固体支持体は、電極、磁気トンネル接合部、半導体、プラズモン共振器、又は任意の種類の電気回路構成であってもよく、又はそれらを含んでもよい。あるいは、固体支持体は、架橋ポリマーなどの有機化合物を含み得る。適切な架橋ポリマーの非限定的な例は、ポリアミド、ポリエーテル、ポリスチレン及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。当業者は、調査する試料の種類、被験物質の検出のために想定される方法、被験物質を検出するために使用される検出可能な標識の種類及び/又はセンサ素子に使用される第2の結合剤の種類に基づいて適切な固体支持体を選択する方法を十分に承知している。
【0020】
センサは、被験物質に特異的に結合することができる第1の結合剤を更に含むものとする。前記第1の結合剤は、アンカー層に固着されるものとする。さらに、少なくとも1つの検出可能な標識を含むものとする。
【0021】
本明細書で言及される「第1の結合剤」という用語は、被験物質に特異的に結合することができる分子、すなわち、試料中に存在すると疑われる被験物質以外の他の分子に結合せず、したがって交差反応しない分子に関する。特異的結合は、原則として、異なる候補薬剤を含むライブラリから被験物質に特異的に結合する薬剤を同定するためのスクリーニングアッセイを含む、当技術分野で周知の技術によって試験することができる。
【0022】
好ましくは、所望の被験物質に特異的に結合することができる第1の結合剤として使用され得る分子は、抗体であり得る。本発明に従って意味される結合剤としての抗体は、好ましくは被験物質に特異的に結合する全てのタイプの抗体を包含する。好ましくは、本発明の抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、又は依然として被験物質に特異的に結合することができるそのような抗体の任意の断片であり得る。本明細書で使用される抗体という用語に含まれるそのような断片は、二重特異性抗体、合成抗体、Fab、F(ab)2Fv若しくはscFv断片、又はこれらの抗体断片のいずれかの化学修飾誘導体を包含する。所望の被験物質に特異的に結合する抗体又はその断片は、一般に、例えばHarlow and Lane “Antibodies,A Laboratory Manual”,CSH Press,Cold Spring Harbor,1988に記載されている方法を使用することによって得ることができる。モノクローナル抗体は、マウス骨髄腫細胞と免疫哺乳動物、好ましくは免疫マウスに由来する脾臓細胞との融合を含む技術によって調製することができる(Koehler 1975,Nature 256,495,and Galfre 1981,Meth.Enzymol.73,3)。当業者は、免疫アッセイ、細胞選別又はウエスタンブロッティング又はプラズモン表面共鳴測定を含む免疫学的又は生化学的技術などの当技術分野で周知の技術によって特異的結合を試験することができる方法を十分に承知している。
【0023】
さらに、好ましくは、所望の被験物質に特異的に結合することができる第1の結合剤として使用され得る分子は、アプタマーであり得る。本発明による結合剤としてのアプタマーは、特定の標的被験物質に結合するオリゴヌクレオチド酸又はペプチド分子であり得る(Ellington 1990,Nature 346(6287):818-22).Bock 1992,Nature 355(6360):564-6)。オリゴヌクレオチド酸アプタマーは、選択の繰り返し又は指数関数的濃縮によるリガンドのいわゆる系統的展開(SELEX技術)によって操作される。ペプチドアプタマーは、通常、両端でタンパク質スキャフォルドに付着した可変ペプチドループを含む。この二重構造制約は、ペプチドアプタマーの結合親和性をナノモル範囲に増加させる。前記可変ペプチドループ長は、好ましくは、10~20個のアミノ酸で構成され、スキャフォルドは、改善された溶解性及び緻密性を有する任意のタンパク質、例えばチオレドキシン-Aであり得る。ペプチドアプタマーの選択は、例えば酵母ツーハイブリッド系(例えば、Hoppe-Seyler 2000,J Mol Med.78(8):426-30を参照)を含む異なる系を使用して行うことができる。被験物質に依然として特異的に結合することができる前記アプタマーの任意の断片も本発明に従って包含される。前記断片は、単離された形態で使用され得るか、又は融合分子、すなわち前記アプタマー断片を含む分子、並びにリンカー部分又はアダプター分子などの他の部分の一部であり得る。当業者は、プラズモン表面共鳴測定などの当技術分野で周知の技術によって特異的結合をどのように試験できるかを十分に承知している。
【0024】
好ましくは、所望の被験物質に特異的に結合することができる第1の結合剤として使用され得る分子は、受容体分子であり得る。本発明に従って言及される結合剤としての受容体分子は、典型的には、リガンドに特異的に結合し、リガンド結合時に活性化されてその生物学的機能を発揮するタンパク質である。リガンドに依然として特異的に結合することができるそのような受容体分子又はその断片はまた、被験物質としてのリガンド、又はリガンドに由来するが受容体分子若しくはその断片によって依然として結合することができる分子、例えばリガンドの拮抗的又は作動的に作用する変異体に対する、本発明による結合剤として使用され得る。好ましくは、本発明による結合剤として想定される受容体分子は、膜貫通型受容体タンパク質(Gタンパク質共役受容体、例えば代謝受容体、酵素結合受容体、例えば受容体チロシンキナーゼ、例えば増殖因子受容体、免疫受容体、例えばウイルス受容体、細胞表面抗原、T細胞受容体、例えばCD4、CD3若しくはCD8等)、又はMHCタンパク質、細胞接着分子(インテグリン、カドヘリン、セレクチン又はシンデカン等)、ニューロン受容体、又は病原体受容体(Toll様受容体等)であり得る。受容体分子はまた、核ホルモン受容体、例えば糖質コルチコイドレセプター、レチノイン酸受容体又は甲状腺ホルモン受容体などの核受容体タンパク質であり得る。当業者は、測定される被験物質又はその断片に特異的に結合する受容体分子又はその断片を十分に承知している。さらに、特異的結合は、プラズモン表面共鳴測定などの当技術分野で周知の技術によって試験することができる。
【0025】
更に好ましくは、所望の被験物質に特異的に結合することができる第1の結合剤として使用され得る分子は、リガンド分子であってもよい。本発明に従って言及される結合剤としてのリガンド分子は、典型的には、受容体分子に特異的に結合し、受容体が前記受容体分子に結合すると活性化するタンパク質又はペプチドである。依然として受容体分子に特異的に結合することができるそのようなリガンド分子又はその断片はまた、被験物質としての受容体、又は受容体分子に由来するが、受容体の可溶性変異体などのリガンド分子又はその断片によって依然として結合することができる分子のための本発明による結合剤として使用され得る。さらに、リガンドはまた、生物の試料中の特定の抗体を決定するために使用され得る任意の抗原であり得る。好ましくは、本発明に従って結合剤として想定されるリガンド分子は、ペプチドホルモン、神経伝達物質、成長因子(アンジオポエチン、BMP、好中球因子、EGF、エピフリン(epiphrin)、EPO、FGF、GDNF、GDF、インスリン又はインスリン様成長因子等)、TGF、好中球、VEGF、サイトカイン(インターロイキン、インターフェロン、リンホカイン、モノカイン、コロニー刺激因子又はケモカイン等)、細胞外マトリックスタンパク質(フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲン、アンキリン又はラミニン等)等であり得る。当業者は、測定される被験物質又はその断片に特異的に結合するリガンド分子又はその断片を十分に承知している。さらに、特異的結合は、プラズモン表面共鳴測定などの当技術分野で周知の技術によって試験することができる。
【0026】
更に好ましくは、第1の結合剤は、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)であり得る。DARPinは、高度に特異的で高親和性の標的タンパク質結合を達成するように設計することができる遺伝子操作された抗体模倣タンパク質である。それらは天然アンキリンリピートタンパク質に由来する。典型的には、DARPinは、少なくとも3つの反復モジュールを含み、そのうちの最も多くのN末端及び最も多くのC末端モジュール(「キャップ」とも呼ばれる)は、タンパク質の疎水性コアを保護する(Binz 2003,Journal of Molecular Biology.332(2):489-503)。
【0027】
典型的には、前記第1の結合剤は、抗体又はその断片、アプタマー、受容体分子又はその断片、及びリガンド分子又はその断片からなる群から選択される。より典型的には、第1の結合剤は、抗体若しくはその断片又はアプタマーである。
【0028】
さらに、本発明による第1の結合剤は、アンカー層に固着されるものとする。本発明に従って言及される固着された第1の結合剤は、典型的には、アンカー層に会合されるか、又はアンカー層内にあるものとする。したがって、これは、典型的には、その動きが空間内で本質的に2次元に制限される。
【0029】
好ましくは、前記第1の結合剤は、アンカー分子、より好ましくは脂質を介してアンカー層に固着される。本発明による第1の結合剤を固着するのに適した脂質は、アンカー層の性質に依存し、更に困難を伴わずに当業者によって選択され得、アンカー分子は、典型的には、リンカー分子を介して少なくとも1つ、好ましくは複数の第1の結合剤に連結され得る。適切なリンカー分子は、多くの第1の結合剤及び少なくとも1つのアンカー分子を付着させることを可能にする。好ましくは、適切なリンカー分子は、環状DNA分子であり得る。したがって、複数の第1の結合剤は、同じアンカー分子を介してアンカー層に固着されてもよい。
【0030】
本明細書で使用される場合、「検出可能な標識」という用語は、本発明の方法の状況で検出することができる物理的又は化学的特性を示す分子に関する。好ましくは、前記特性は、放射線、化学発光、蛍光又はFRETの放射などの光学的に検出可能な特性、電場又は磁場との干渉などの電磁気的特性、検出可能な放射能、又は特定の化学反応を実行又は触媒する能力などの化学的特性である。検出可能な標識は、第1の結合剤に可逆的又は永続的に結合し得る。この目的のため、検出可能な標識は、第1の結合剤に可逆的に結合することができる分子であってもよく、又は前記第1の結合剤の既に一部である分子若しくは部分であってもよい。典型的な検出可能な標識としては、金粒子、ラテックスビーズ、アクリダンエステル、ルミノール、ルテニウム、酵素的に活性な標識、磁気標識、放射性標識又は蛍光標識が挙げられる。酵素的に活性な標識としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ又はルシフェラーゼが挙げられる。そのような酵素的に検出可能な標識の検出に適した基質としては、ジ-アミノ-ベンジジン(DAB)、3,3’-5,5’-テトラメチルベンジジン、NBT-BCIP(4-ニトロブルーテトラゾリウムクロリド及び5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート)が挙げられる。適切な酵素-基質の組み合わせにより、着色された反応産物、蛍光又は化学発光が生じてもよく、これは、当該技術分野で公知の方法によって(例えば感光フィルム又は適切なカメラシステムを使用して)、測定することができる。典型的な蛍光標識としては、蛍光タンパク質、例えばGFP、RFP、YFP、BFP又はその変異体、Cy3、Cy5、Texas Red、フルオレセイン、及びAlexa色素、例えばAlexa 568が挙げられる。また、蛍光標識としての量子ドットの使用が、企図される。典型的な放射性標識としては、35S、125I、32P、33P等が挙げられる。放射性標識は、公知かつ適切な、例えば感光膜又はホスホイメージャー(phosphor imager)等の任意の方法により検出され得る。典型的な磁気標識は、鉄-白金ナノ粒子、鉄ナノ粒子、ニッケルナノ粒子又はコバルトナノ粒子を含む。典型的には、前記検出可能な標識は、蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、磁気標識、及び電気化学標識からなる群から選択される。典型的には、前記検出可能な標識は、連結剤によって固体支持体に共有結合的に連結され得るリンカーを含む。
【0031】
第1の結合剤は、分子の一部として少なくとも1つの検出可能な標識を含み得る。あるいは、少なくとも1つの検出可能な標識は、リンカーによって第1の結合分子に連結され得る。本発明によれば、永久的な連結並びに可逆的な連結が想定される。可逆的連結は、例えば、当技術分野で周知のビオチン-ストレプトアビジンベースの分子アダプター系を使用することによって達成され得る。
【0032】
センサはまた、第1の結合剤に結合したとき被験物質に特異的に結合することができる第2の結合剤を含むものとする。前記第2の結合剤は、固体支持体上に固定化されるものとする。
【0033】
被験物質に特異的に結合することができる「第2の結合剤」という用語は、第1の結合剤に結合したとき被験物質又は被験物質に特異的に結合することができる分子、すなわち、試料中に存在すると疑われる被験物質又は被験物質と第1の結合剤との複合体以外の他の分子に結合せず、したがって交差反応しない分子に関する。典型的には、前記第2の結合剤は、抗体又はその断片、アプタマー、受容体分子又はその断片、及びリガンド分子又はその断片からなる群から選択される。より典型的には、第2の結合剤は、抗体若しくはその断片又はアプタマーである。典型的には、第2の結合剤は、第1の結合剤と同じ前述の分子クラスに由来する。第1の結合剤に従って作製された抗体又はその断片、アプタマー、受容体分子又はその断片、及びリガンド分子又はその断片の定義は、必要な変更を加えて第2の結合剤に適用される。
【0034】
第2の結合剤は、固体支持体上に固定化されるものとする。前記第2の結合剤の固定化は、好ましくは永久固定化である。第2の結合剤を固体支持体に固定化するための適切な技術は、固体支持体の性質及び/又は第2の結合剤の性質に依存し、当業者に周知である。固定化時に、第2の結合剤は、アンカー層内又はアンカー層外でその位置を移動させることができないことが理解されよう。しかしながら、第2の結合剤は、被験物質又は被験物質に結合した第1の結合剤に結合するために必要な曲げ及び他の分子運動又は立体配座変化を行うことができなければならない。
【0035】
さらに、第2の結合剤と被験物質及び第1の結合剤との相互作用は、好ましくは可逆的相互作用でなければならない。会合速度は、典型的には解離速度よりも大きく、第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体が一定時間にわたって安定なままであり、前記時間窓の間に第2の結合剤の位置に近接する少なくとも1つの検出可能な標識の存在又は存在量を検出することによるそれらの決定を可能にすることが想定される。
【0036】
典型的には、前記第1の結合剤の量は、前記第2の結合剤の量を10倍~100倍、20倍~80倍、30倍~70倍又は40倍~60倍超える。
【0037】
さらに、センサ素子は、好ましくは、検出可能な標識によって誘発されるシグナルを検出するための検出器を含む。典型的には、前記検出器は、固体支持体の下方に配置され、前記検出器は、当ギア第2の結合素子に直接近接してシグナルを選択的に検出することができる。検出可能な標識に応じて、異なる検出技術が適用され得る。
【0038】
光学的に検出可能な標識は、発光、蛍光、FRET、偏光、屈折などを測定することによって決定され得る。典型的な光検出器は、フォトマルチプライヤ、フォトチューブ、イオン化検出器、アクティブピクセルセンサ、フォトトランジスタ、フォトダイオード、量子ドット光電導体又はフォトダイオード、光電池、半導体検出器、熱検出器、光化学検出器などであり得る。
【0039】
電気化学的に検出可能な標識は、ボルタメトリック測定及び典型的にはアンペロメトリック測定に適した薄層電極などの電極構成によって決定され得る。検出器は、典型的には、少なくとも1つの電極がいわゆる作用電極である少なくとも2つの電極を含む。電極は、金属、貴金属、合金又はグラファイトなどの全ての従来の電極材料から構成することができ、好ましくは金又はパラジウムなどの貴金属又はグラファイトから構成される。センサの様々な電極は、同じ又は異なる材料から構成することができる。より典型的には、電極はパラジウムで作られる。
【0040】
検出された検出可能な標識の存在若しくは非存在、又は量は、その後、評価ユニットに送信され得ることが理解されよう。前記評価ユニットは、好ましくは、検出された検出可能な標識(複数可)の存在、非存在又は量に基づいて試料中の被験物質(anlayte)の存在又は量を決定するための実施されたアルゴリズムを有するコンピュータなどのデータ処理要素を含み得る。
【0041】
そのような実施アルゴリズムは、第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体中の検出可能な標識(複数可)から誘発された測定シグナルを、シグナル強度、シグナル持続時間及び他の所定のパラメータについて評価し得る。前記評価に基づいて、真に正のシグナルを識別及び検証することができ、ノイズシグナルを識別し、更なる評価のために無視することができる。当業者は、どのアルゴリズムが使用され得て、それらを本発明の装置にどのように実装することができるかを十分に承知している。好ましくは、第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体の形成は、少なくとも1つの検出可能な標識によって誘発されるシグナルの強度及び/又は持続時間を測定することによって検出される。より好ましくは、前記シグナルは、所定の特徴的な期間にわたって検出され得る。真のシグナルの特徴は、好ましくは、第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤を含む複合体の1つ以上の会合定数に応じた第1の時間窓内での形成、所定の時間窓の持続性、及び第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤を含む複合体の1つ以上の解離定数に応じた第2の時間窓内での解離である。典型的には、真のシグナルは、固定化された第2の結合剤に近接してアンカー層をランダムに通過する自由に移動する第1の結合剤によって含まれる少なくとも1つの検出可能な標識によって誘発されるシグナルよりも有意に長い時間検出され得る。後者は、短いノイズシグナルのみを生成するものとする。
【0042】
本発明の方法に従って検出された検出可能な標識のシグナルの正確な評価、及びそれに基づいて被験物質を決定するために、コンピュータ実装アルゴリズム、特に人工知能アルゴリズム、機械学習アルゴリズムなどを適用してもよい。
【0043】
さらに、単一又は所定量の第2の結合剤を含む固体支持体の領域の検出可能な標識からのシグナルを測定することができるならば、本発明の方法によって単一の複合体形成でさえも決定することができることが理解されよう。これは、単一又は所定数の第2の結合剤を固定化することができ、検出可能な標識からのシグナルを別々に決定することができるウェル、ビーズ又は他の所定の領域を使用することによって達成することができる。このような別個の検出は、例えば、磁気トンネル接合部又は磁気スピンバルブ(例えば、米国特許第5,981,297号;Fernandes 2020,Nanomedicine:Nanotechnology,Biology,and Medicine 30,102287 or Denmark 2019,Journal of Electronic Materials(48):4749-4761を参照)などの磁気応答検出器、又はナノ細孔ベースの検出技術を使用することによっても可能である。
【0044】
本発明の方法による工程(a)では、決定される被験物質を含むか、又は決定される被験物質を含むと疑われる試料を、本明細書の他の箇所で詳細に指定されるようにバイオセンサと接触させる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「接触させる」という用語は、第1及び/又は第2の結合剤が試料中に存在する場合に被験物質に結合され得るように、上述の成分を物理的に近接させることに関する。第1の結合剤の被験物質への結合及び第2の結合剤の被験物質又は第1の結合剤と被験物質との複合体への結合は、時間及び適切な条件の適用を必要とし得ることが理解されよう。当業者は、結合を達成するためにどのような時間が必要であり、どのような条件を適用する必要があるかを十分に認識している。例えば、試料及び結合剤は、塩濃度及び/又はpH値を調整する緩衝液と溶解又は混合され得る。適用され得る適切な緩衝剤及び他の補助成分は、使用される結合剤及び決定される被験物質の化学的性質に依存することが理解されよう。
【0046】
本発明の方法の工程(a)において、第1の結合剤及び被験物質はまた、被験物質に結合したとき被験物質又は第1の結合剤に特異的に結合することができる、固体支持体上に固定化された第2の結合剤と接触させる。典型的には、アンカー層に固着された第1の結合剤及び固定化された第2の結合剤を含むセンサ素子上の配置は、試料の適用前に提供されるが、試料は、第1の結合剤と接触させられ、固体支持体上に固定化された第2の結合剤を含むアンカー層に適用されてもよい。
【0047】
本発明の方法において適用される第1の結合剤は、検出可能な標識に結合されなければならないか、又は少なくとも1つの検出可能な標識に共有結合又は可逆的に結合することができる連結剤に連結され得る。
【0048】
本発明の方法の工程(a)の間に起こる上述の活性の結果として、被験物質は、共有結合した、又は場合によりリンカー分子を介して可逆的に結合した検出可能な標識を含む第1の結合剤によって結合される。被験物質と第1の結合剤との前記複合体は、アンカー層内を移動し、固体支持体上に固定化された第2の結合剤によって結合され、第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤を含む複合体が生成される(「ロックオン」)。分子結合速度論に起因して、この複合体は、溶解するまで(「ロックオフ」)特徴的な時間窓の間、固体支持体上の第2の結合分子の固定位置に近接して存続する。
【0049】
本発明の方法の工程(b)では、上述の第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体が検出され、それによって被験物質が決定される。
【0050】
本明細書で使用される場合、「検出する」という用語は、固体支持体に共有結合した標識分子の存在、非存在及び/又は量を、前記標識分子の物理的、化学的、物理化学的及び/又は生物学的特性を測定することによって同定することに関する。検出可能な標識は、典型的には、測定され得るシグナルを生成することが理解されよう。シグナル強度及び/又は持続時間は、典型的には、固体支持体上に存在する検出可能な標識分子の量を示す。検出可能な標識の化学的性質に応じて、シグナルは、光又は他の放射線の放射などの能動シグナルであってもよく、又は受動シグナル、すなわち、電磁場、放射線などを印加するなどの外部刺激に対する応答として誘発されるシグナルであってもよい。当業者は、検出可能な標識分子によって誘発されるそのようなシグナルの測定がどのようにして行われ得るかを十分に承知しており、本発明の方法に従って使用される検出方法は、使用される検出可能な標識に依存することが理解されよう。本発明による好ましい測定方法はまた、化学発光測定、蛍光測定、FRET測定、電気化学発光測定、質量分析を含む質量測定、例えばChemFET又は他の電極配置を使用した磁場又は電場ベースの測定、ラジオイムノアッセイ測定、解離促進ランタニドフルオロイムノアッセイ(DELFIA)測定、シンチレーション近接アッセイ測定、量子ドット技術測定、比濁測定又はネフェロメトリー測定を含む。
【0051】
検出可能な標識はまた、間接的に、すなわち固体支持体上の固定化された検出可能な標識に特異的に結合することができる更なる標識化分子を使用することによって検出され得る。このような更なる標識化分子は、工程(a)が行われた後、工程(b)の前に固体支持体に適用され得る。固体支持体上の検出可能な標識(複数可)への前記更なる標識分子の1つ以上の特異的結合時に、前記更なる標識化分子は、前記標識化分子の物理的、化学的、物理化学的及び/又は生物学的特性を測定することによって工程(b)で検出され得ることが理解されよう。さらに、固定化された検出可能な標識に特異的に結合することができる更なる分子は、他の標識化分子のアダプターとしても役立ち得る。更なる標識化分子又はアダプター分子として機能し得る適切な分子はまた、本明細書の他の箇所に記載されるような標的の特異的結合を可能にする抗体、アプタマー又は他の分子であり得る。そのような更なる分子に適した標識は、本明細書の他の箇所で検出可能な標識について記載されているものである。
【0052】
本発明の方法において、第1及び第2の結合剤は、異なる被験物質を決定するために使用され得る。そのような場合、そのような異なる被験物質に対する複合体が形成されると、各複合体は異なる検出可能な標識を有さなければならないことが理解されよう。前記異なる検出可能な標識は、好ましくは、前記検出可能な標識間で異なる検出可能な物理的、化学的、物理化学的及び/又は生物学的特性を使用することによって検出され得る。
【0053】
本発明の方法の特定の実施形態において、前記固体支持体は、ウェル又は所定の細分された検出領域である。好ましくは、各ウェル又は所定の細分された検出領域は、所定量の第2の結合剤をその上に固定化している。前記方法は、被験物質を決定するのに特に有用であり、前記被験物質の量を決定することを含む。典型的には、前記量は、複合体が形成されたウェル又は所定の細分された検出領域を計数することによって決定される。この特定の実施形態によれば、被験物質の存在若しくは非存在又は量は、各ウェル又は所定の細分された領域について検出される。その後、陽性ウェル又は所定の細分された領域の数が決定される。陽性ウェル又は所定の細分された領域は、所定の強度又は持続時間を有する本明細書の他の箇所に記載されているような適切な複合体形成のための特徴的なシグナル、例えば、所定の強度閾値を超える及び/又は所定の時間窓にわたって測定可能なシグナルを示すものである。陽性ウェル又は所定の細分された領域及び前記ウェル又は所定の細分された領域のそれぞれに固定化された所定量の第2の結合剤に基づいて、被験物質の量を、例えば計算によって決定することができる。例えば、各ウェル又は所定の細分された領域が理想的に1つの第2の結合剤を含有する場合、試料中の1分子の被験物質の存在は、1つの複合体を生成する。したがって、ウェル内又は所定の細分された領域上の複合体の存在が決定された場合、この存在は試料中に存在する1つの被験物質の存在を反映する。したがって、ウェル又は任意の他の所定の細分された領域などの単離された物品に対して所定量の第2の結合剤を使用することにより、試料中に存在する被験物質分子の定量的又は半定量的決定が可能になる。この技術は、「デジタル」検出とも呼ばれる。
【0054】
有利には、本発明によれば、サンドイッチアッセイ形式で脂質層などのアンカー層に会合することによって本質的に二次元への移動が制限された第1の結合剤を使用すると、感度が改善され、望ましくないバックグラウンドノイズが抑制されることが見出された。本発明によれば、第1の結合剤、例えば抗体、決定される被験物質、第2の結合剤、例えば抗体を含む免疫複合体は、特定の速度論で形成され、特定の時間窓にわたって持続し、特定の速度論で溶解する(「ロックオン、ロックオフ」原理)。また、用いる分子構成によっては、ある程度の強度のシグナルが期待できる。したがって、本発明の方法では、錯体形成及び錯体溶解の速度論的測定は、単一の形成事象ではなく決定される。これは、動的なリアルタイム測定を可能にし、洗浄工程及び他の処理を不要にすることさえあり得る。アンカー層の使用により、固体支持体上のノイズを引き起こす事象も低減される。検出器の性質に応じて、複合体形成事象を本質的に単離することが可能である。例えば、被験物質分子の存在下で複合体形成を開始する単一の第2の結合剤に関連して磁気応答検出器又は共焦点検出器が適用される場合、複合体形成は試料中に存在する前記被験物質分子を表すものであることが理解されよう。そのようなデジタル形式では、個々の検出器によって受信されたシグナルの数を使用して、試料中に存在する被験物質分子を計数してもよい。
【0055】
本発明のおかげで、感度及び特異性が改善された試料中の分被験物質の決定が可能である。さらに、単一分子事象さえも決定され得る。
【0056】
本発明はまた、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための装置であって、
(i)固体支持体上に存在するアンカー層と、
(ii)前記アンカー層に固着され、少なくとも1つの検出可能な標識を含む、前記被験物質に特異的に結合することができる、第1の結合剤と、
(iii)前記第1の結合剤と結合したとき前記被験物質と特異的に結合することができる、前記固体支持体に固定化された、第2の結合剤と
を備えるセンサ素子を備える、装置に関する。
【0057】
本明細書で使用される場合「装置」という用語は、本発明の方法による被験物質の決定を可能にするように互いに動作可能に連結された上述の成分を含むシステムに関する。
【0058】
本発明によるセンサ素子は、装置に含まれる反応ゾーンに配置され得る。反応ゾーンは、試料適用を直接的に可能としてもよく、又は試料が適用されるローディングゾーンに接続されていてもよい。後者の場合、試料は、ローディングゾーンと反応ゾーンとの間の接続を介して反応ゾーンに能動的に又は受動的に輸送され得る。さらに、反応ゾーンはまた、検出器に接続される。適切な検出器及び検出技術は、本明細書の他の箇所に詳細に記載されている。反応ゾーンと検出器との間の接続は、検出器が固体支持体に共有結合した検出可能な標識を検出できるようなものでなければならない。適切な接続は、検出可能な標識(複数可)の存在又は量を測定するために使用される技術に依存する。例えば、光学的な検出のために、光の伝播が検出器と反応ゾーンとの間に要求されることがあり、電気化学的決定のために、流体接続が、例えば、反応ゾーンと電極との間に、必要とされることがある。本発明による装置は、好ましくは、検出可能な標識によって誘発されるシグナルを検出するための検出器を更に含み、前記検出器は固体支持体の下方に配置される。
【0059】
本発明は、概して、前記試料内で、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための本発明の上述の装置の使用に関する。
【0060】
さらに、本発明は、本発明の装置を含む、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するためのキットを提供する。
【0061】
本明細書で使用される場合、「キット」という用語は、本発明の装置を含む本発明の方法を実施するために必要な構成要素の集合を指す。典型的には、キットの構成要素は、別個の容器又は単一の容器内に提供される。容器はまた、典型的には、本発明の方法を実施するための説明書も含む。これらの説明書は、マニュアルの形式であってもよく、又はコンピュータ若しくはデータ処理装置上で実行されるときに本発明の方法において言及される被験物質の決定を実行若しくはサポートすることができるコンピュータプログラムコードにより提供されてもよい。コンピュータプログラムコードは、データストレージ媒体若しくは装置、例えば光学ストレージ媒体(例えば、コンパクトディスク)上に若しくは直接的にコンピュータ若しくはデータ処理装置上に提供されてもよく、又はダウンロードフォーマット、例えばアクセス可能なサーバー若しくはクラウドへのリンクにおいて提供されてもよい。さらに、キットは、通常、較正若しくは検証のための標準化された量又は他の基準量を有する被験物質溶液を含み得る。本発明によるキットはまた、検出可能な標識の検出に必要な洗浄液、溶媒及び/又は試薬などの本発明の方法を実施するために必要な更なる構成要素を含み得る。さらに、それは、本発明の装置を部分的に又は全体的に含んでもよい。
【0062】
以下の実施形態は、本発明に従って想定される特定の好ましい実施形態である。全ての定義は、上記の用語の説明を準用する。
【0063】
実施形態1.試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための方法であって、
(a)前記試料を、センサ素子であって、
(i)固体支持体上に存在するアンカー層と、
(ii)前記アンカー層に固着され、少なくとも1つの検出可能な標識を含む、前記被験物質に特異的に結合することができる、第1の結合剤と、
(iii)前記第1の結合剤と結合したとき前記被験物質と特異的に結合することができる、前記固体支持体に固定化された、第2の結合剤と
を備える、センサ素子と、前記試料中に存在すると疑われる前記被験物質の前記第1の結合剤への特異的結合及び前記第2の結合剤の前記第1の結合剤に結合した前記被験物質への特異的結合を可能にする時間及び条件下で、接触させることと、
(b)第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体の形成を検出し、それによって前記被験物質が決定される、複合体の形成を検出することと
を含む、方法。
【0064】
実施形態2.第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の前記複合体の前記形成が、前記少なくとも1つの検出可能な標識によって誘発されるシグナルの強度及び/又は持続時間を測定することによって検出される、実施形態1に記載の方法。
【0065】
実施形態3.前記シグナルが、所定の特徴的な期間にわたって検出され得る、実施形態2に記載の方法。
【0066】
実施形態4.前記被験物質が、タンパク質、ペプチド、ウイルス、細菌細胞又は小分子である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
実施形態5.前記アンカー層が、脂質層又は脂質二重層である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
実施形態6.前記第1の結合剤が、アンカー分子を介して前記アンカー層に固着される、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0069】
実施形態7.前記アンカー分子が脂質である、実施形態6に記載の方法。
【0070】
実施形態8.前記アンカー分子が、リンカー分子、好ましくは環状DNA分子を介して少なくとも1つの第1の結合剤に連結される、実施形態6又は7に記載の方法。
【0071】
実施形態9.前記第1の結合剤の量が、前記第2の結合剤の量を10倍~100倍、20倍~80倍、30倍~70倍又は40倍~60倍超える、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
実施形態10.前記第1の結合剤が、抗体又はその断片、アプタマー、受容体分子又はその断片、及びリガンド分子又はその断片からなる群から選択される、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
実施形態11.前記第2の結合剤が、抗体又はその断片、アプタマー、受容体分子又はその断片、及びリガンド分子又はその断片からなる群から選択される、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0074】
実施形態12.前記被験物質を決定することが、前記被験物質の存在、非存在、又は量を決定することを含む、実施形態1又は11のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
実施形態13.前記検出可能な標識が、蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、磁気標識、及び電気化学標識からなる群から選択される、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
実施形態14.前記センサ素子が、前記検出可能な標識によって誘発されるシグナルを検出するための検出器を備え、前記検出器が、前記固体支持体の下方に配置され、前記検出器が、前記第2の結合素子に直接近接したシグナルを選択的に検出することができる、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
実施形態15.前記試料が、生物学的試料、好ましくは体液又は生検試料である、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
実施形態16.試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための装置であって、
(i)固体支持体上に存在するアンカー層と、
(ii)前記アンカー層に固着され、少なくとも1つの検出可能な標識を含む、前記被験物質に特異的に結合することができる、第1の結合剤と、
(iii)前記第1の結合剤と結合したとき前記被験物質と特異的に結合することができる、前記固体支持体に固定化された、第2の結合剤と
を備えるセンサ素子を備える、装置。
【0079】
実施形態17.前記装置が、前記検出可能な標識によって誘発されるシグナルを検出するための検出器を更に備え、前記検出器が、前記固体支持体の下方に配置される、実施形態16に記載の装置。
【0080】
実施形態18.前記試料内で、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するための、実施形態16又は17に記載の装置の使用。
【0081】
実施形態19.実施形態16又は17に記載の装置を含む、試料中に存在すると疑われる被験物質を決定するためのキット。
【0082】
本明細書で引用された全ての参考文献は、その全体の開示内容及び本明細書で具体的に言及された開示内容に関して、参照により本明細書で組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図1】センサ装置の概略図。左側には、第1の結合剤、被験物質及び第2の結合剤の複合体を特徴とするロック状態が示されている。検出可能な標識によって誘発されたシグナルは、暗視野励起によって測定することができる。そのようなシグナルは、特徴的なロックオン、ロックオフのシグネチャを有するものとする。右側には、バックグラウンドノイズの原因が示されている。バックグラウンドノイズは、アンカー層内に浮遊し、既に被験物質分子に結合していてもいなくてもよい第1の結合剤から生じる。バックグラウンドシグナルは、典型的にはそれほど強くなく、かなりの時間窓にわたって持続しないものとする。
【
図2】環状I-DNA分子の概略図が示されており、環状I-DNA分子は、それに付着した3つのアンカー分子を介してアンカー層、例えば脂質層に固着され、本発明による第1の結合剤として3つの抗体断片を含み、前記抗体及び環状I-DNAに7つの検出可能な標識、例えば蛍光標識に付着している。
【国際調査報告】