IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハー.ツェー.スタルク タングステン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特表2024-524934湿式冶金処理による電池材料のリサイクルプロセス
<>
  • 特表-湿式冶金処理による電池材料のリサイクルプロセス 図1
  • 特表-湿式冶金処理による電池材料のリサイクルプロセス 図2
  • 特表-湿式冶金処理による電池材料のリサイクルプロセス 図3
  • 特表-湿式冶金処理による電池材料のリサイクルプロセス 図4
  • 特表-湿式冶金処理による電池材料のリサイクルプロセス 図5
  • 特表-湿式冶金処理による電池材料のリサイクルプロセス 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】湿式冶金処理による電池材料のリサイクルプロセス
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20240702BHJP
   C22B 5/00 20060101ALI20240702BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20240702BHJP
   C22B 26/12 20060101ALI20240702BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20240702BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20240702BHJP
   C22B 3/12 20060101ALI20240702BHJP
   C22B 3/26 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B5/00
C22B1/00 101
C22B26/12
C22B23/00 102
C22B47/00
C22B3/12
C22B3/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577699
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2022066855
(87)【国際公開番号】W WO2022268797
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】21181175.7
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】318010867
【氏名又は名称】ハー.ツェー.スタルク タングステン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【住所又は居所原語表記】Nymphenburger Strase 84, 80335 Munchen GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メーゼ-マルクトシエフエル, ユリアネ
(72)【発明者】
【氏名】オルブリッヒ, アルミン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ツォイグナー, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】エーゲベルグ, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】セウベルリッヒ, ティーノ
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA07
4K001AA16
4K001AA19
4K001AA34
4K001BA22
4K001CA01
4K001CA02
4K001CA03
4K001CA04
4K001CA05
4K001CA07
4K001CA09
4K001DB08
4K001DB26
4K001HA01
4K001HA02
4K001HA03
4K001HA05
4K001HA09
4K001HA10
4K001HA12
(57)【要約】
本発明は、電池材料、特にリチウムイオン/ポリマー電池をリサイクルするプロセスに関し、また本発明による前記プロセスにより回収された有用な材料のその後の使用法に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LIB材料をリサイクルする方法であって、
a)リチウム(I)含有組成物を水性または有機懸濁媒体に懸濁する工程と、
b)前記懸濁液を還元剤で処理して、固体還元材料とリチウム(I)含有溶液とを同時に得る工程と、
c)前記リチウム(I)含有溶液から前記固体還元材料を分離する工程
を備える方法。
【請求項2】
工程b)が、前記懸濁液を還元剤で処理することにより、可溶性Li(I)種およびNi、CoとMnを備える固体還元材料の現場製造を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記懸濁液の温度が、20℃~300℃、好ましくは90℃~250℃、より好ましくは90℃~250℃、特に200℃~250℃、または90℃~120℃に調整されることを特徴とする請求項1または2の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項4】
前記リチウムの前記分離が、ニッケル、コバルトおよびマンガンの前記分離の前に行われることを特徴とする請求項1から3の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物および/または前記還元材料、特に前記還元材料が、粉末の形態であることを特徴とする請求項1から4の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、前記LIBの製造、特に前記電極材料の製造において生じる使用済みLIB、製造廃棄物および二次産出物から得られるか、またはそれらからなることを特徴とする請求項1から5の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が黒色塊であることを特徴とする請求項1から6の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、前記組成物の総重量に基づいて、1重量%~20重量%、好ましくは2重量%~20重量%、より好ましくは2重量%~15重量%、特に3重量%~15重量%の量のリチウムを含有することを特徴とする請求項1から7の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、好ましくはM=Ni、Co、Mnおよび/またはAlを有するLiMO層構造、特にLiCo酸化物(LCO)、Li(Ni/Co)酸化物(LNCO)、Li(Ni/Co/Mn)酸化物(LNCMO)、Li(Ni/Co/Al)酸化物(LNCAO)、Li(Ni/Al)酸化物(LNAO)、Li(Ni/Mn)酸化物(LNMO)、または好ましくはM=Ni、Coおよび/またはMnであり、場合によりAlを不純物として含んだLiMスピネル構造、または純粋なもしくは不純物を含んだLiFeリン酸塩、またはそれらの任意の混合物からなる群から選択される化合物の少なくとも1つを含有するか、または好ましくは前記化合物の少なくとも1つから熱分解によって得られることを特徴とする請求項1から8の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、LCO、特にLiCoO、NMC、特にx+y+z=1であるLiNiMnCo、x+y+z=1であるLiNiCoAlを有するNCA、特にLiNi0.8Co0.15Al0.05、ならびにLiMnスピネル構造およびLFP、特にLiFePOからなる群から選択される化合物の少なくとも1つを含有するか、または前記化合物の少なくとも1つから得られることを特徴とする請求項1から9の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が前処理に供されることを特徴とする請求項1から10の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項12】
前記前処理が、加熱、乾燥、破砕、粉砕、選別、ふるい分け、分級、酸化、沈降、浮遊、洗浄および濾過またはそれらの組合せであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記還元剤が、前記組成物の成分であり、および/または現場で製造されることを特徴とする請求項1から12の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項14】
前記還元剤が、硫黄が酸化状態+IVである硫黄化合物、アルミニウム、リチウム、鉄、鉄が酸化状態+IIである鉄化合物、亜鉛、ヒドラジン、水素またはその混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1から13の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項15】
前記還元剤が、アルコール、アミン、ケトンおよびアルデヒドからなる群から選択されることを特徴とする請求項1から14の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項16】
前記還元剤が黒鉛であることを特徴とする請求項1から15の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項17】
前記還元剤が、前記硫黄が酸化状態+IVにある化合物、特にSO、LiSO、LiHSO、NaSO、NaHSO、KSO、KHSO、(NHSOおよびNHHSOからなる群から選択されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記還元剤がアルミニウム、好ましくは細断された電池筐体からのものであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記還元剤が亜鉛であり、好ましくは食品産業からの亜鉛めっき容器の廃棄物からのものであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項20】
水素が還元剤として使用され、それによって前記還元が好ましくは高圧蒸気滅菌器内で高圧で実施されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記還元剤がSOまたはヒドラジンであることを特徴とする、請求項14から20の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項22】
前記固体還元材料が、ニッケル金属、コバルト金属、Ni(II)化合物、Co(II)化合物および/またはMn(II)化合物からなる群から選択される化合物の1つ以上を含有し、それによって酸化アルミニウムおよび/または水酸化アルミニウムをさらに含むことができることを特徴とする請求項1から21の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項23】
前記分離工程c)が、濾過、遠心分離、または沈降に基づく方法であり、溶解したリチウムをその中に含有する液相および固体残渣が得られることを特徴とする請求項1から22の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項24】
前記リチウムが、沈殿によって、好ましくは炭酸化によって前記液相から抽出されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記液相に溶解したリチウムおよびアルミニウムが、COによる処理によって互いに分離されることを特徴とする請求項23または24の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項26】
前記固体残渣が、ニッケル、コバルト、マンガン、それらの合金、それらの酸化物、それらの水酸化物またはこれらの混合物からなる群から選択される元素のうちの1つ以上を含有し、それによって前記元素が混合酸化物および混合水酸化物の形態で存在することもできることを特徴とする請求項23から25の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項27】
前記固体残渣が、
・酸化状態+IIおよび/または0、好ましくは酸化状態0のニッケル
・酸化状態+IIおよび/または0、好ましくは酸化状態0のコバルト
・酸化状態+IIのマンガン
・必要に応じて、酸化状態+IIIのアルミニウム
を備えることを特徴とする請求項23から26の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項28】
前記残渣が、金属形態のニッケルおよびコバルトならびにその酸化物および/または水酸化物の形態のマンガンを含有するか、またはそれらからなることを特徴とする請求項23から27の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項29】
前記残渣が、鉱酸による処理、磁気分離法、沈降、濾過、溶媒抽出またはpH制御沈殿からなる群から選択される方法の少なくとも1つによってさらに処理されることを特徴とする請求項23から28の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項30】
前記残渣を鉱酸で処理し、得られた溶液を好ましくはpH2~pH5、特にpH3~pH4に調整して、アルミニウムをその水酸化物の形態で順番に沈殿させ、得られた沈殿物を分離し、残りの液相を溶媒抽出に供することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記残渣を鉱酸で処理し、得られた溶液を好ましくはpH2~pH5、特にpH3~pH4に調整して、アルミニウムをその水酸化物の形態で順番に沈殿させ、得られた沈殿物を分離し、液相を酸化剤、好ましくはHで処理し、pH値を維持しながら、マンガンを順番に分離し、得られた沈殿物を分離し、得られた液相をさらに処理してニッケルおよびコバルトをさらに分離することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記残渣が、鉱酸での処理によって好ましくは水性懸濁液に変換され、前記元素のニッケルおよびコバルトをそれらの金属の形態で分離することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記残渣がアルカリ浸出に供されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項34】
リチウム電池、充電式リチウム電池および蓄電池、充電式リチウムイオン電池およびリチウムイオン蓄電池および/または充電式リチウムポリマー電池およびリチウムポリマー蓄電池および他のリチウム含有電気化学セルの製造における請求項1に記載の方法により得られるリチウムの使用法。
【請求項35】
前記リチウムを、リチウム金属および/またはリチウム酸化物の製造に使用することを特徴とする請求項34に記載の使用法。
【請求項36】
前記リチウムを、ガラスおよびセラミック産業において、アルミニウム製造における溶融添加剤として、エナメル質製造および/または抗うつ剤の製造における溶剤として、使用することを特徴とする請求項34または35の少なくとも一項に記載の使用法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池材料、特にリチウムイオン/ポリマー電池のリサイクル方法、および本発明による方法によって回収された有価材料のさらなる使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロモビリティは、再生可能エネルギーをベースとした持続可能で気候にやさしい交通システムの中心的な要素と考えられており、世界的なメガトレンド「アドバンスドモビリティ」に属しており、社会や政治で集中的に議論されているだけでなく、現在では業界にも存在している。エレクトロモビリティには、電動自転車、オートバイ、フォークリフト、フェリー、スポーツボート、ハイブリッド車、プラグイン車、完全電気自動車から電気バス、およびハイブリッドまたは完全電気トラックまで、あらゆる種類の電気自動車が含まれる。現在のところ、電池、特にいわゆるリチウムイオン/ポリマー蓄電池(以下、LIBと称する)は、このような状況におけるエネルギー貯蔵装置としての地位を確立している。
【0003】
電気自動車の需要が高まるにつれて、対応する駆動システムやエネルギー貯蔵システムの必要性も高まるだけではない。これらのシステムをクリーンで循環的な経済にどのように統合できるかという問題も生じるが、これは持続可能性の観点から将来的に確実に重要性を増し続けるであろう。したがって、これらのシステムのリサイクルの戦略的関連性は、モビリティという世界的なメガトレンドのバリューチェーン全体において不可欠な要素であり、したがって気候変動目標の達成に向けた国際的な取り組みにおいて欠くことのできないものである。したがって、環境にやさしく、エネルギーとコスト効率に優れ、社会的に適合性のあるリサイクルプロセスを通じて、エレクトロモビリティの主要材料をできるだけ早く供給できるようにすることが絶対に必要である。革新的なリサイクルプロセスを開発し、大規模に実施することで、電池関連材料の古典的な一次原料回収から、持続可能で経済的な取り扱いへの解放が、世界的にますます前面に出てくるだろう。
【0004】
LIBに金属の形またはその化合物の形で使用される代表的な元素は、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、リチウム(Li)、および様々に変化した黒鉛であり、これらは主に筐体の一部、電気供給ライン、また特に電極材料を構成し、電池の種類、電池モデル、および電池の設計によっては、マイナーな電解質およびセパレータ材料に加えて、多種多様な割合で存在し得る。これらの原材料の中には、社会的・環境的に多大な影響を及ぼす不安定な条件下で回収されるものも少なくない。このような状況では、例えばコバルトの手掘り採掘における児童労働の存在や、砂漠地帯や高原地帯の水収支に対するリチウム回収の環境面からの極めて疑わしい影響などに注意を払う必要がある。
【0005】
これらの戦略的原材料の需要が着実に増加していることに伴う社会的・生態学的影響の大きさを考慮すると、LIBと関連システムのリサイクルは、上記で説明したように、代替エネルギー貯蔵システムへの持続可能な移行において重要な役割を果たす。材料組成物の複雑さ、発がん性物質として分類される物質や混合物の使用、電気的・化学的エネルギー含有量のため、LIBのリサイクルは純粋に技術的な課題であるだけでなく、管理すべき多くの健康、安全、環境リスクを伴う。
【0006】
LIBのクローズド・サイクルを確立しようとした初期の試みの結果、様々なリサイクルプロセスが生み出されたが、それは今のところ世界中の数少ない産業プラントでしか実施されていない。これらの方法はすべて、長くコストのかかるプロセスチェーンを特徴とし、機械的および/または熱的および/または乾式冶金的および湿式冶金的プロセス工程の組合せに基づいている。一般的なプロセスの概要は、Metals 2020,10,1107に掲載されたL.Brucknerらの総説「リチウムイオン電池の産業リサイクル-冶金学的プロセス経路の重要なレビュー」に記載されている。
【0007】
以下の記述および本発明の枠内では、リチウム電池、充電式リチウム電池およびリチウム蓄電池、充電式リチウムイオン電池およびリチウムイオン蓄電池、充電式リチウムポリマー電池およびリチウムポリマー蓄電池を区別しない。これにより、すべての系は、明示的に別段の定めがない限り、互いに同義であり、「LIB」という呼称の下に要約されるものとする。
【0008】
現在、LIBをリサイクルする2つの変形例が確立されている。1つ目は乾式冶金処理と湿式冶金処理の組合せに基づいており、2つ目は実際の湿式冶金によるさらなる処理の前に、場合によっては上流または下流の熱段階を使用した機械的処理に基づいている。
【0009】
使用済みLIBまたは電池製造の残渣を乾式冶金処理する場合、説明した第1の変形例で実施されるように、Co、Cu、Niを含む溶融合金(金属相)、Al、Mn、Liを含む液体スラグ、およびフライアッシュが現れる。その後、金属相とスラグは、多段プロセスを通じて既知の方法で個々の金属を得るために、さらに湿式冶金的に処理することができる。
【0010】
説明した2番目の変形例の枠組み内では、LIBは最初に機械的に処理され、これにより、通常、AlやCu精鉱などの磁性金属および非磁性金属精鉱、および活性電極材料、いわゆる黒色塊を含む画分が現れる。制御された方法でエネルギー含有量を低減し、有機成分およびハロゲン化物を標的化された方法で除去するために、機械的処理の前に、任意で熱処理を行うことができる。特に大型の走行用電池の場合、LIBの上流側での残留放電も安全上の理由から有利になる可能性がある。これらのプロセスから得られた黒色塊は、その後、説明した第1の変形例に従って乾式冶金処理に供され得るか、あるいは、好ましいのは、直接湿式冶金処理に供されるかのいずれかである。黒色塊の組成物と、それぞれの場合に実施される上流処理手順によっては、この時点で存在する有機成分やハロゲン化物を除去し、金属含有量を増加させるために、熱処理を行うことも有利になり得る。湿式冶金処理では、Co、Li、Mn、Ni、そして可能であれば黒鉛を回収することができる。
【0011】
以下は、本技術の状態で知られているように、第2の変形例に基づく使用済みLIBの処理の一例である。
【0012】
使用されなくなったLIBの機械的処理は、通常、LIBの成分を放出するための破砕から始まる。電気駆動装置からの大型電池では、深放電が有利である。その後、粒径、形状、密度、電気的・磁気的特性などの物理的特性によって成分を選別することができる。通常、破砕プロセスでは、さらなる冶金プロセスのための精鉱が生産される。
【0013】
乾式冶金には、金属の分離、回収、精錬のための焙焼や溶融などの高温プロセスが含まれる。焙煎という用語は、一般に、鉱石や二次原材料を、より加工しやすい他の化学物質や混合物に変換することができる気固反応などのプロセスを意味すると理解されており、これにより、好ましくない成分の一部がガス状で除去されることが多い。冶金中、熱と化学的還元剤の助けを借りて、鉱石または二次原材料から金属が抽出され、それによって鉱石または二次原材料が分解され、他の元素がガスの形で排出されるか、捕獲されるか、スラグに蓄積され、合金または最良の場合には純金属が得られる。
【0014】
「湿式冶金」は、乾式冶金とは対照的に、溶液中で比較的低温で行われる金属回収および精製の方法全体を指す。湿式冶金方法は、通常、いくつかの工程を含む。第1の工程では、金属はまず、通常、酸、塩基、または塩の助けを借りて、浸出によって溶液化される。次の工程では、例えば、イオン交換反応および沈殿などの液体/固体反応、または溶媒抽出などの液体/液体反応の助けを借りて洗浄が行われる。最終工程において、最初に溶液中にある有価材料元素は、例えば結晶化、イオン沈殿、ガスによる還元、電気化学的還元または電解還元によって、多くの場合塩形態で、金属としてまたは化学化合物として直接沈殿する。
【0015】
他の電池タイプと同様に、LIBは、通常、カソード、アノード、電解質、およびセパレータで構成され、それにより、成分は、電池タイプおよび製造業者によって変化する可能性があり、したがって、可能なリサイクルプロセスに大きな影響を及ぼす。
【0016】
LIB中の市販の高性能カソード材料は、通常、LiMO層構造(M=Ni、Coおよび/またはMn)の形態のLiCo酸化物(LCO)、Li(Co/Ni)酸化物(LCNO)、Li(Ni/Co/Mn)酸化物(LNCMO)、Li(Ni/Co/Al)酸化物(LNCAO)もしくはLi(Ni/Al)酸化物(LNAO)であり、場合によってこれらは安定化用にAlを不純物として含むことができるが、またはLiMスピネル構造の形態のLi(Ni/Mn)酸化物であり、これにより供給エンジニアリングおよび経済の観点からの回収に不可欠な主成分のみがここで言及される。また、電池またはカソード材料の製造業者および充電式電池のそれぞれの用途に応じて、希土類元素を含む様々な他の亜族金属だけでなく周期系の主族元素にまで及ぶ様々な他の不純物元素も存在する。
さらに、同様に様々に不純物を含んだ形態の構造のLiMPO(M=Fe、Mn、Co、Ni)であるLi-金属-リン酸塩を使用することができるが、それらは通常価値の低い鉄およびリンの含有量が多いため、所望のリサイクルプロセスにおける主成分LiFePOは下位の役割しか果たさない。
【0017】
文献から知られている最も一般的なカソード材料は、スピネル構造LiMnおよびオリビン構造を有するLFP(LiFePO)同様に、層構造のLCO(LiCoO)、NMC(x+y+z=1であるLiNiMnCo)、NCA(x+y+z=1であるLiNiCoAl、特にLiNi0.8Co0.15Al0.05)であり、それによってオリビン((Mg、Fe)SiO)内のSiO四面体の場所はPO四面体によって占められる。
【0018】
主に筐体に由来するアルミニウムの含有量が高く、Co、NiまたはCuの回収に使用されるため、古典的な冶金プロセスの出発材料としての有意な量のリチウムおよび有機化合物の量が限られているため、特にリチウムは炉を攻撃することで知られているように、リサイクルされるべきいわゆる使用済みLIBまたはLIB製造(規格外)からの廃棄物が適している。別の問題は、確立されたプロセスがCo、CuおよびNiの回収に集中し、リチウムがアルミニウムおよびマンガンと共にスラグの形態で低濃度でのみ発生し、そこから除去することが困難であることである。
【0019】
これらの問題に対処するために、特にLIBの処理に焦点を当てたいくつかのプロセスが開発されてきた。これらのプロセスでは、リチウムがスラグ中に蓄積し、高度に腐食性のある材料向けに設計された特別な炉を使用することが可能となる。
【0020】
これに関連して、米国特許第7,169,206号明細書は、CoまたはNiの回収のための方法を記載しており、この方法では、鉄、スラグ形成剤、およびニッケルまたはコバルトのいずれかまたは両方を含む処理作業での冶金装入物がシャフト炉に持ち込まれ、溶融され、それによってCo/Ni合金、鉄スラグ、および気相が生じる。その処理作業では、少なくとも30重量%の電池またはそのスクラップを含み、シャフト炉の酸化還元電位は、スラグが処理作業の少なくとも20重量%の鉄および最大20重量%のニッケルおよび/またはコバルトを含むように選択される。LIBが適切な出発材料として言及されているが、リチウムが回収され得るかどうかおよびどの程度の量で回収され得るかについてさらなる詳細は与えられていない。
【0021】
欧州特許第2480697号明細書はまた、AlおよびCも含有するLiイオン電池からCoを回収するための方法であって、Oを注入するための手段を備えた浴炉を提供し、Liイオン電池と少なくとも15重量%のスラグ形成剤とを含む冶金装入物を提供し、Oを注入して炉に冶金的装入物を供給し、それにより、金属相中のCoの少なくとも一部が還元されて回収され、スラグを金属相から分離し、それによってそのプロセスが、冶金学的負荷の重量%で表すと、153%-3.5(Al%+0.6C%)以上(Al%およびC%は電池内のAlおよびCの重量%)の、Liイオン電池割合を添加することにより自己生成条件下で実施される、工程を含む方法を記載している。実施例から、得られたスラグはLiも含有していたが、リチウムを単離するためのスラグのさらなる処理は記載されていないことが分かる。
【0022】
国際公開第2011/141297号には、リチウム含有金属スクラップを溶融して金属相およびリチウム含有スラグを得、スラグを金属相から分離し、スラグを冷却によって固化し、次いでスラグを1mm未満の粒径D90を有する粉末に加工する、リチウム含有コンクリートの製造方法が記載されている。次いで、望ましくないASR(アルカリシリカ反応)を防ぐために粉砕スラグをコンクリートまたはモルタルに添加し、それによってリチウムが最終的に材料サイクルから抽出される。
【0023】
さらなる研究では、回収されたスラグのリチウム含有量が、リチウム含有ブラインに加えて、リチウムを含有する一次原材料の分野における最大の商業的リチウム源であるスポジュメン精鉱のリチウム含有量に匹敵することを示している。様々な研究作業の枠組みの中で、異なる組成物のスラグからリチウムを抽出する方法が開発されている。最初の工程では、スラグをマイクロメーターのスケールで粉末に粉砕し、次いで80℃でHSOまたはHClで浸出させ、約10g/Lの酸濃度が有利であることが判明した。次いで、アルミニウムを分離するために、浸出溶液のpH値をpH5に調整し、水酸化アルミニウムを沈殿させた。濾過および浸出溶液中のリチウム含有量の濃縮後、次いで、リチウムをNaCOの助けを借りてpH9~pH10で炭酸リチウムとして沈殿させた。最適化された条件下で、60%から70%のリチウム収率を達成することができた。しかしながら、この方法では、スラグ中のリチウム含有量が低いと廃棄物の割合が高くなり、得られたLiCOが高レベルの不純物を有するという欠点を示す。
【0024】
LIBの代替的なリサイクル方法は、機械的処理と乾式冶金および/または湿式冶金処理との組合せに基づいており、特定の画分、いわゆる黒色塊が前景にある。任意の前処理において、エネルギー含有量を制御された様式で減少させ、有機成分を除去するために、LIBは熱処理、例えば熱分解に供される。得られた材料が粉砕された後、ふるい分け、選別または磁気的に分離することができ、これにより、典型的な画分として、Al/Cu箔、アルミニウムまたは銅などの非磁性金属片または粉末形態、磁性金属および黒色塊として知られる画分であって、本質的に電池の活性材料、すなわちNi、Co、Mn、AlおよびLiを主成分とするカソード材料、ならびに場合によりアノード材料からの黒鉛で作られる画分を単離することができる。黒色塊を除いて、得られたすべての画分を従来の処理プロセスに供給することができる。
そのアルミニウム含有量が既に減少しているため、黒色塊は、LIBよりも従来の乾式冶金プロセスに適している。リチウムの腐食特性、ならびにリチウム含有スラグの高価な再処理、および再処理中のリチウムの高い損失のために、このようなリチウムの効率的な回収の問題は未解決のままである。
【0025】
国際公開第2017/121663号は、3重量%から20重量%のLiO、1重量%から7重量%のMnO、38重量%から65重量%のAl、55重量%未満のCaOおよび45重量%未満のSiOを示すリチウム含有スラグに関する。リチウム含有スラグは、金属相と共に得られる電池材料を溶融することによって得ることができる。この目的のために、使用済みリチウムイオン電池を酸素の存在下で石灰石(CaCO)および砂(SiO)と共に炉に添加する。電池中の金属アルミニウムおよび炭素の含有量が高いため、1400から1700℃の温度に達する。得られた合金溶融物およびスラグは分離され、リチウムはスラグから単離される。リチウムの50%超がスラグ中に蓄積するはずであるが、リチウムの一部が排ガスと共に排出されることを防止することはできなかった。実施例に従って使用された電池材料の量によれば、専門家はスラグ中の12.42%のLiOの含有量を予想するであろうが、実際には、表1は8.4%の回収されたリチウムの含有量しか示しておらず、使用されたリチウムの32.4%の損失を記録することになる。
【0026】
湿式冶金の側では、現在、2つの選択肢に焦点が当てられている。浸出および沈殿によって中間生成物を得るための第1の代替の試みでは、Ni/Coおよびマンガンおよびリチウムを既存の精製装置で互いに別々に精製することができる。第2の代替案では、より複雑な製品の直接製造を提供する。両者の方法では、マンガン、コバルトおよびニッケルが次々に分離され、最後の工程でリチウムがLiCOの形態で単離される、段階的な元素の分離を提供する。図1および図2は、2つの方法の概要を示す。
【0027】
国際公開第2018/184876号には、リチウムおよびアルミニウム含有冶金組成物からリチウムを回収する方法が記載されており、以下の工程を含む。冶金組成物をpH3以下の硫酸水溶液と接触させることによって冶金組成物を浸出させ、それによって不溶性化合物と、リチウムおよびアルミニウムを含む第1の浸出液とを含有する残渣を得る工程と、リチウムおよびアルミニウムを含む第1の浸出液を2~4のpHに任意に中和し、それによってアルミニウムの第1の部分を含む残渣を沈殿させ、リチウムを含む第2の浸出液を得る工程と、リチウムおよびアルミニウムを含む第1の浸出液にリン酸イオン源を添加するか、または第1の浸出液の任意の中和が行われることを条件として、リチウムおよびアルミニウムを含む第2の浸出液にリン酸イオン源を添加し、それによってアルミニウムの第2の部分を含む残渣を沈殿させ、リチウムを含む第3の浸出液を得る工程と、リチウムおよびアルミニウムを含む第3の浸出液をpH3~pH4に任意に中和し、それによりアルミニウムの第3の部分を含む残渣を沈殿させ、リチウムを含む第4の浸出液を得る工程と、アルミニウムの第2の部分を含む残渣を濾過によって第3の浸出液から分離する工程、または第3の浸出液の任意の中和が行われることを条件として、アルミニウムの第3の部分を含む残渣を濾過によって第4の浸出液から分離する工程。次いで、リチウムは、古典的な炭酸塩沈殿など既知の方法の助けを借りて、LiCOの形態で得ることができる。このようにして、アルミニウムとリチウムのより良好な分離が達成され、回収されるリチウムの含有量が増加することになる。
【0028】
国際公開第2019/149698号は、リチウム電池のリサイクル方法であって、(a)リチウム電池の電極が粉砕した成分を含有する粉砕材料を、少なくとも100℃の消化温度(AT)で濃硫酸により消化して、排気ガスおよび消化材料を生じさせる工程、(b)排気ガスの除去、および(c)消化材料の少なくとも1つの金属成分の少なくとも湿式化学抽出を含む方法に関する。
【0029】
国際公開第2020/109045号には、遷移金属材料を浸出剤で処理し、ニッケルおよびコバルトの可溶性塩を抽出することを含む電池からの遷移金属の回収プロセスが記載されており、これは水素を添加することによって後続の工程で還元することができる。可溶性リチウム塩は、上流の洗浄工程で遷移金属材料から分離することができる。
【0030】
中国特許第111519031は、使用済みリチウムイオン電池からニッケル、コバルト、マンガンおよびリチウムをリサイクルする方法を開示しており、使用済み電池は最初に放電して粉砕され、そうして得られた材料はその後水に懸濁される。懸濁後、SOを導入すると同時に、pH1からpH2に達するまで濃硫酸を添加する。これにより、すべての金属化合物が溶解する。続いて、アルカリ化合物を添加してpHを上昇させて遷移金属化合物を析出させ、リチウム(I)含有溶液を得る。その後、遷移金属化合物を鉱酸で再び溶解しなければならない。
【0031】
L.SunおよびK.Qiuは、Waste Management 32(2012)の1575-1582において刊行した彼らの論文「使用済みリチウムイオン電池から有価金属を回収するための浸出剤および沈殿剤としての有機シュウ酸塩」において、使用済み電池からコバルトおよびリチウムを回収するプロセスを説明しているが、このプロセスでは、処理済み電池廃棄物を真空熱分解に供し、続いてシュウ酸塩およびHを添加してコバルトをCoC*2HOとして回収する。
【0032】
Environ.Sci.Technol.2017,51の1662~1669、「使用済みリチウムイオン電池のカソードスクラップからの炭酸リチウム回収:クローズトループプロセス」において、W.Gaoらは、Hの存在下でギ酸を使用してリチウムを浸出させる、電池からのリチウム回収プロセスを提案している。
【0033】
Hydrometallurgy 150(2014)の192-208における論文「前処理、浸出および分離による一次源および二次源からのリチウムの抽出:包括的レビュー」では、鉱物などの一次源、および使用済みリチウム電池などの二次源からリチウムを抽出する一般的な方法の概説を提供している。
【0034】
技術の現状において説明される方法では、これまで回収されたリチウムの割合が比較的低く、リチウムが最後の元素として分離されるだけであるという欠点を示しており、一方では大きな損失をもたらし、他方では、先行する方法の工程においてリチウムからの干渉を排除することができない。したがって、黒色塊からのリチウムの早期抽出は非常に興味深い。
【0035】
さらに、現在のところ、LIBからリチウムの効率的な回収を可能にする利用可能な大規模な方法はない。
【0036】
従来の乾式冶金プロセスは、合金溶融物中のCo、CuおよびNiの高収率を達成している。しかしながら、リチウムは、リチウムがスラグ中に濃縮されることが必要となる特別な方法でしか回収することができない。その結果、現在使用されているニッケル、銅、および特にコバルトの有価金属の回収プラントでは、LIBのリサイクルの法的根拠を規制する指令2006/66/ECの改正後に予想されるように、リチウムの一定の回収率が法律で規定されている場合、大きな欠点を有する。
【0037】
湿式冶金プロセスでは、Co、CuおよびNiについてわずかな損失しか観察されないが、対応するプロセスはリチウムに対しては利用できない。文献では、スラグからのLiの可能な回収率は約90%で与えられているが、国際公開第2017/121663号にも記載されているように、乾式冶金でリチウムが部分的に煙化されると仮定されるため、全Li回収率はより低い可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
この背景に対して、本発明は、元素、特にカソード活性材料、特に使用済みリチウムのより良好な回収を可能にするLIBのリサイクル方法を提供するという任務に基づいている。特に、本発明による方法は、リチウムがプロセスチェーン全体を通して運ばれずに済むように、再処理プロセスの開始時にリチウムの分離を可能としなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0039】
驚くべきことに、本発明は、通常の溶融相を形成することなく、Li(I)含有組成物の還元処理によって、従来の方法とは対照的に、リチウムを第1の元素の1つとして分離することによって、LIBからのリチウムの回収における以前の問題を大部分克服することができることを示した。
【0040】
処理および分離プロセス全体を通してリチウムを引きずる代わりに、本発明による方法は、プロセスチェーンの開始時に他の金属、ニッケル、コバルトおよびマンガンからリチウムを分離する。これは、Li(I)含有組成物が、通常とは異なり、通常1000℃をはるかに超える温度を必要とし、液体金属相および液体スラグを提供するといった従来の乾式冶金処理を施さず、スラグ形成剤を添加せずに固体状態で還元処理するという事実によって達成することができる。この点において、本発明による方法は、例えば粉末形態の固体Li(I)含有組成物が還元処理に供され、それによってリチウム(I)含有溶液および再び固体で還元材料が得られる点において、区別される。このようにして、回収されるリチウムの量を著しく増加させることができた。
【0041】
したがって、本発明の第1の主題は、LIB材料リサイクル方法であって、
a)リチウム(I)含有組成物を水性または有機懸濁媒体に懸濁する工程と、
b)前記懸濁液を還元剤で処理し、固体還元材料とリチウム(I)含有溶液とを同時に得る工程と、
c)前記リチウム(I)含有溶液から前記固体還元材料を分離する工程、
を含む。
【発明の効果】
【0042】
本発明の枠組み内で、驚くべきことに、還元処理は、懸濁媒体中の組成物に含まれるリチウム化合物を蓄積することができるが、ニッケル、マンガンおよびコバルトなどのLIBの他の成分は、固体還元材料中に残ることが見出された。次いで、リチウム(I)含有溶液および還元材料を互いに別々に分離および再処理することができる。先行技術とは対照的に、遷移金属は、本発明によるプロセスにおいてリチウムと共に溶解されず、固体還元材料中に残る。例えば、中国特許第111519031号に記載されている、遷移金属を分離する別の沈殿工程は省略され、その結果、補助剤および原材料の消費および中性塩の生成も大幅に低減することができる。
【0043】
したがって、本発明による方法は、技術の現状で説明したような、ニッケル、コバルトおよびマンガンの分離プロセス全体を通してリチウムを運ぶ代わりに、リサイクルプロセスの開始時にリチウムを他の成分から分離する可能性を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の枠組みの中で、組成物とは、特に明記しない限り、リチウム(I)含有組成物を意味するものと理解する。
【0045】
本発明の意味の範囲内で、還元剤とは、電子を供与することによって他の物質を還元することができ、それ自体はプロセス中に酸化される、すなわちその酸化数が増加する物質または化合物を意味するものと理解する。これは、酸化状態を変化させることなく溶媒によって固体から物質を溶解することを意味すると理解される浸出とは、対照的である。
【0046】
本発明の枠組み内では、元素および一般名称でのリチウム、ニッケル、コバルト、マンガンなどは、特に明記しない限り、通常の一般名称として理解するが、それは本発明による方法の枠組み内で生じる酸化数に関するすべてにおいての元素を含む。例えば、「ニッケル」という言葉は、例えばLi(Ni、Co、Mn)Oで起こるような酸化状態+IIIのニッケル、例えばNiOまたはNi(OH)で起こるような酸化状態+IIのニッケル、およびニッケル金属の形態のままである酸化状態0のニッケルを含む。
【0047】
本発明による方法では、従来の方法とは異なり、スラグおよび合金溶融物の形態で液相は形成されない。むしろ、本発明による方法は、出発材料として使用される組成物および得られた還元材料の両方が粉末形態であることを特徴とし、これにより、それらの取り扱いが著しく単純化される。したがって、好ましい実施形態では、組成物および/または還元材料、特に還元材料は、ASTM B822に従って決定された、好ましくは粒径500μm未満、好ましくは250μm未満、より好ましくは200μm未満、特に100μm未満を有する粉末形態である。
【0048】
さらに、本発明による方法の枠組み内では、従来の方法で使用されるようなスラグ形成剤または溶剤の使用を有利に省くことができる。したがって、好ましい実施形態は、本方法がスラグ形成剤および/または溶剤の添加なしに実施されることを特徴とする。
【0049】
本発明による方法は、特に、リチウムが最初に分離されるという事実によって区別される。ニッケル、コバルト、マンガンおよび場合によりアルミニウムの元素は、リチウムから分離された後でのみ、いくつかの群にさらに分離され、最終的には個々の元素の純粋な化合物のみになる。したがって、ニッケル、コバルト、マンガンおよび場合によりアルミニウムを分離する前にリチウムを組成物から分離する実施形態が好ましい。リチウムは、好ましくは、ニッケル、マンガンおよびコバルトの元素の少なくとも1つを固体成分として含有する懸濁液から分離される。
【0050】
本発明による方法は、主に、該当する寿命を迎える電池、ならびに規格外材料、実際の電池製品からの副生成物および廃棄物の両方からLIBをリサイクルするために開発された。したがって、組成物が使用済みLIB、製造廃棄物、およびLIBの製造、特に電極材料の製造において生じる二次産出物から得られるか、またはそれらからなる実施形態が好ましい。
【0051】
さらに好ましい実施形態では、組成物は使用済みLIBから、好ましくは熱分解によって得られる。特に好ましい実施形態では、組成物はリチウムカソード材料、リチウムカソード材料の製造からの製造廃棄物、およびリチウム電池/蓄電池、特にリチウムイオン/ポリマー電池の製造からの製造廃棄物であり、それによって材料は好ましくは熱分解される。
【0052】
さらに好ましい実施形態では、組成物は黒色塊である。
【0053】
本発明の枠組みの中で、黒色塊とは、使用済みLIB、特にリチウム電池/蓄電池、特にリチウムイオン/ポリマー電池、LIB製造または原材料成分からの廃棄物の機械的および場合によっては熱分解再処理で得られ、カソード材料、すなわち通常はリチウムとCo、Niおよび/またはマンガンとの化合物およびそれらの熱分解生成物、ならびにアノード材料基材として黒鉛を本来含有する留分を意味するものと理解する。カソード材料の通常組成物は、Mが例えばNi、Coおよび/またはMnであり、場合によってはAlを不純物として含んだLiMO層構造形態のLiCo酸化物(LCO)、Li(Co/Ni)酸化物(LCNO)、Li(Ni/Co/Mn)酸化物(LNCMO)、Li(Ni/Co/Al)酸化物(LNCAO)、もしくはLi(Ni/Al)酸化物(LNAO)、またはLiMスピネル構造形態のLi(Ni/Mn)酸化物、またはLi金属リン酸塩LiMPO(M=Fe、Mn、Co、Ni)である。特に一般的なカソード材料は、LCO(LiCoO)、NMC(x+y+z=1であるLiNiMnCo)、NCA(x+y+z=1であるLiNiCoAl、特にLiNi0.8Co0.15Al0.05)およびスピネル構造のLiMn、ならびにオリビン構造を有するLFP(LiFePO)である。
【0054】
好ましい実施形態では、組成物は、リチウムまたはその化合物の少なくとも1つを、組成物の総重量に基づいて、1重量%~20重量%、好ましくは2重量%~20重量%、より好ましくは2重量%~15重量%、特に3重量%~15重量%の量で含有する。リチウムは、好ましくは、組成物中で+Iの酸化状態にある。
【0055】
さらに、組成物がリチウムに加えて他の元素の少なくとも1つを有する実施形態も好ましい。
・アルミニウム、好ましくは酸化状態+III
・コバルト、好ましくは酸化状態+IIおよび/または+III
・マンガン、好ましくは酸化状態+IIおよび/または+III
・ニッケル、好ましくは酸化状態+IIおよび/または+III
それにより元素は、これらの酸化物の形態および/または互いの混合酸化物の形態で存在する。
【0056】
好ましい実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは酸化状態+IIIで、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも8重量%のコバルトを有する。
【0057】
好ましい実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは酸化状態+IIIで、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%のニッケルを有する。
【0058】
好ましい実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは酸化状態+IIIで、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも8重量%のマンガンを有する。
【0059】
特に、本発明により使用される組成物は、好ましくはM=Ni、Co、Mnおよび/またはAlを有するLiMO層構造、特にLiCo酸化物(LCO)、Li(Ni/Co)酸化物(LNCO)、Li(Ni/Co/Mn)酸化物(LNCMO)、Li(Ni/Co/Al)酸化物(LNCAO)、Li(Ni/Al)酸化物(LNAO)、Li(Ni/Mn)酸化物(LNMO)、または好ましくはM=Ni、Coおよび/またはMnであり、場合によりAlを不純物として含んだLiMスピネル構造、または純粋なもしくは不純物を含んだLiFeリン酸塩、またはそれらの任意の混合物からなる群から選択される化合物の少なくとも1つを含有するか、または好ましくはその化合物の少なくとも1つから熱分解によって得られる。
【0060】
組成物は、特に好ましくは、LCO、特にLiCoO、NMC、特にx+y+z=1であるLiNiMnCo、x+y+z=1であるLiNiCoAlを有するNCA、特にLiNi0.8Co0.15Al0.05、ならびにLiMnスピネル構造およびLFP、特にLiFePOからなる群から選択される化合物の少なくとも1つを含有するか、またはその化合物の少なくとも1つから得られる。
【0061】
好ましい実施形態では、組成物はまた、それぞれ組成物の総重量に基づいて、好ましくは60重量%以下、より好ましくは45重量%以下、特に10重量%~45重量%、特に好ましくは20重量%~40重量%の量の黒鉛を含有する。
【0062】
代替的に好ましい実施形態では、組成物は本来黒鉛を含まないため、組成物中の黒鉛の割合は、それぞれ組成物の総重量に基づいて、好ましくは5重量%未満、特に好ましくは2重量%未満、特に1重量%未満である。
【0063】
電池技術では、意図した用途に応じて、周期系の主族および亜族の様々な元素にわたって広がるいくつかの不純物元素が存在する。したがって、組成物がドーピング元素、特にアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム)、スカンジウム、イットリウム、チタン系(チタン、ジルコニウム、ハフニウム)、バナジウム系(バナジウム、ニオブ、タンタル)、ランタノイドの群またはそれらの組合せからのドーピング元素も有する実施形態が好ましい。
【0064】
組成物の個々の成分のより良好な分離を達成するために、本発明により提供される還元の前に、例えば電解質残渣を除去するために、または黒鉛を除去するために前処理を施すことができる。
【0065】
そのため、組成物に前処理を施す実施形態が好ましい。このようにして、例えば、電解質残渣または黒鉛残渣を除去することができる。前処理は、好ましくは、加熱、乾燥、破砕、粉砕、選別、ふるい分け、分級、酸化、沈降、浮遊、洗浄および濾過またはそれらの組合せである。
【0066】
好ましい実施形態では、前処理は洗浄からなる。特に、このようにして電解質残渣を除去することができる。
【0067】
リチウム(I)含有組成物を洗浄する際の洗浄媒体としては、水または水溶液を用いることが好ましい。特に、このようにして電解液を除去することができる。基本的な洗浄が特に効率的であることは、証明されている。したがって、好ましくは塩基性水溶液が使用されるが、ここで洗浄媒体のpHは、好ましくは、塩基性反応無機化合物、好ましくはアルカリおよび/またはアルカリ土類水酸化物、より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、またはアンモニアを添加することによって調整される。
【0068】
洗浄媒体は、好ましくは5を超えるpHを有し、より好ましくは洗浄媒体のpHは5から14の範囲である。洗浄は、10℃~120℃の温度で実施することが好ましく、10℃~70℃の温度で実施することがより好ましい。
【0069】
また好ましい実施形態では、洗浄後、好ましくは60℃~200℃、より好ましくは80℃~150℃の温度での乾燥工程が続く。
【0070】
好ましい実施形態では、洗浄された組成物は、フッ素含有化合物および/またはリンの化合物を本来含まず、好ましくも含まない。好ましくは、組成物中のフッ素含有化合物の含有量は、組成物の総重量に基づいて、それぞれ2重量%未満、より好ましくは1重量%未満、特に0.5重量%未満である。さらに好ましい実施形態では、組成物中のリン化合物の含有量は、組成物の総重量に基づいて、それぞれ0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満である。
【0071】
同様に好ましい実施形態では、前処理は乾燥からなる。
【0072】
さらに好ましい実施形態では、前処理は酸化処理からなる。特に、このようにして、組成物に含まれる黒鉛を除去することができる。代替的または追加的に、黒鉛は、浮選および/または沈降によって組成物から分離することもできる。したがって、前処理として浮選および/または沈降を実施するさらなる実施形態が好ましい。
【0073】
また、本発明による方法の範囲内で、いくつかの前処理を組み合わせてもよい。
【0074】
組成物は、好ましくは粉末の形態である。したがって、組成物が、ASTM B822により決定される、好ましくは200μm未満、特に好ましくは100μm未満の粒径に粉砕される実施形態が好ましい。
【0075】
本発明による方法の枠組み内で、組成物は、水性または有機懸濁媒体中で還元剤と一緒にされるが、そのため有機懸濁媒体としてはアルコールが特に好ましい。水が特に好ましく使用される。懸濁液の温度は、好ましくは20℃~300℃、好ましくは90℃~250℃、より好ましくは90℃~250℃、特に200℃~250℃または20℃~120℃に設定する。選択された懸濁媒体に応じて、還元は、従来の撹拌反応器または撹拌装置を備えた高圧蒸気滅菌器で実施することができる。
【0076】
本発明による方法は、好ましくは温和な条件下で実施される。好ましい実施形態では、懸濁液は2より高い、特に4より高いpHを有する。
【0077】
驚くべきことに、従来の方法で必要な難溶性遷移金属化合物を沈殿させるための沈殿剤の添加を省略できることが分かった。したがって、遷移金属の還元およびリチウムの浸出が同じプロセス工程で行われる本発明による方法の実施形態が好ましく、ここで、遷移金属は、追加の化学量論量の沈殿剤を添加することなく、消化媒体または懸濁媒体に難溶性であるそれらの酸化物および/または水酸化物の形態のままで残る。還元とは対照的に、「浸出」とは、溶媒自体が変化することなく、特にその酸化状態に関して、固体から金属化合物を溶解することができる溶媒による処理を意味する。
【0078】
本発明による方法の枠組み内で、組成物は還元剤で処理される。理論に束縛されるものではないが、還元剤による処理は、懸濁媒体に可溶性のあるLi(I)種を生成するが、コバルト、ニッケルおよびマンガンなどの他の金属は固体還元材料の形態のままであると仮定される。基本的なプロセスは、+IIIの酸化状態のM=Co、Ni、Mnを有する以下の全体的な化学式による、還元剤として酸化状態+IVの硫黄についての例示的な方法に、限定されることなく、様々な変形例についての例示的な方法で、説明することができる。
【0079】
2LiMO+SO→LiSO+2MO (1)
2LiMO+LiHSO→LiSO+LiOH+2MO (2)
Mが二価水酸化物に変換される場合、その反応は、以下の反応式によって例示的に表すことができると考えられる。
2LiMO+SO+2HO→LiSO+2M(OH) (3)
2LiMO+LiHSO+2HO→LiSO+LiOH+2M(OH) (4)
【0080】
したがって、本発明による方法は、すべての元素が最初に溶解し、金属がその後の工程で再び沈殿するという、先行技術では一般的である手順を、克服する。したがって、本発明による方法の範囲内で、追加の沈殿工程は省略されてもよく、追加の沈殿試薬の使用は省略可能である。したがって、好ましい実施形態では、本発明による方法の工程b)は、懸濁液を還元剤で処理することにより、可溶性Li(I)種およびNi、CoおよびMnを含む固体還元材料ついての現場製造を含む。
【0081】
アルコール、アルデヒド、アミンまたはケトンなどの有機化合物だけでなく、還元ガスも還元剤として使用することができる。
【0082】
好ましい実施形態では、還元剤は、硫黄が酸化状態+IVである硫黄化合物、アルミニウム、リチウム、鉄、鉄が酸化状態+IIである鉄化合物、亜鉛、ヒドラジン、水素またはその混合物からなる群から選択される。
【0083】
硫黄が酸化状態+IVである硫黄化合物は、特に、SO、LiSO、LiHSO、NaSO、NaHSO、KSO、KHSO、(NHSOおよびNHHSOからなる群から選択される。
【0084】
列挙された硫黄化合物の中で、SOが特に効率的であることが判明しているので、還元剤がSOである実施形態が特に好ましい。
【0085】
還元剤として使用することができる金属は、好ましくは回収され、再処理された金属である。このようにして、持続可能性および原材料の再利用にさらに貢献することができる。
【0086】
したがって、還元剤がアルミニウム、好ましくは細断された電池筐体からのものである実施形態が好ましい。
あるいは、還元剤が亜鉛、好ましくは食品産業からの亜鉛めっき容器の廃棄物である実施形態が好ましい。
【0087】
硫黄化合物および金属に加えて、他の化合物も還元剤として使用することができる。したがって、還元剤がアルコール、アミン、ケトンおよびアルデヒドからなる群から選択される実施形態が好ましい。特に、アルコール類の使用は、これらが還元剤および懸濁媒体の両方として使用できるという利点を提供し、その結果、これが持続可能で資源を節約するプロセスへのもう一つの貢献である。
【0088】
本発明の枠組み内で、驚くべきことに、還元剤としてヒドラジンを使用すると、ニッケルおよびコバルトが金属形態で存在する還元材料が得られ、特にマンガンの分離が著しく促進されることが見出された。したがって、還元剤としてヒドラジンを用いる実施形態が特に好ましい。
【0089】
さらに好ましい実施形態では、水素が還元剤として使用され、この場合、還元は好ましくは高圧蒸気滅菌器内で高圧で実施される。
【0090】
還元は、ローラーカソードセル内で実施することもできる。
好ましい実施形態では、還元剤は組成物の成分であり、および/または現場で生成することができる。これは、特に、組成物が黒鉛を含む場合に好ましく、黒鉛は、それ自体またはその反応生成物の形態で還元剤として働くことができる。したがって、還元剤として黒鉛を採用する実施形態が好ましい。
【0091】
本発明による組成物を還元することにより、含有するリチウムは懸濁媒体、好ましくは水中に蓄積するが、コバルト、ニッケルおよびマンガンなどの他の元素は固体還元材料中に残る。
【0092】
好ましい実施形態では、固体還元材料は、ニッケル金属、コバルト金属、Ni(II)化合物、Co(II)化合物および/またはMn(II)化合物からなる群から選択される化合物の1つ以上を含み、それによってさらに酸化アルミニウムおよび/または水酸化アルミニウムを含むことができる。
【0093】
本発明による方法によれば、固体還元材料およびリチウム(I)含有溶液が得られ、これはさらなる過程で互いに別々にさらに処理することができる。したがって、本発明による方法は、溶解したリチウムを含有する液相および固体濾過残渣が得られる分離工程をさらに含む。
【0094】
前記分離工程は、溶解したリチウムを含有する液相と固体残渣が得られる濾過、遠心分離または沈降法が好ましい。
【0095】
したがって、本発明による方法は、リチウム化合物を残りの残渣とは別にさらに処理することができ、その結果、比較的高濃度のリチウム含有化合物を達成することができ、それにより一方では、リチウムの回収を非常に経済的に行うことができ、他方では、残渣を洗浄および分離するための後続の方法工程全体を通してリチウムを引きずることがないという利点を提供する。
【0096】
以下では、液相と残渣の別々の再処理についてより詳細に論じる。
【0097】
i)液相
リチウムは、好ましくは、水溶性化合物の形態、特に水酸化リチウム、炭酸水素リチウムおよび硫酸リチウムからなる群から選択される形態で液相中に存在する。
【0098】
使用される組成物および方法に応じて、液相は、リチウム化合物に加えて、液相に可溶なアルミニウム化合物を含有することができる。したがって、液相もアルミニウム化合物を含有する実施形態が好ましい。
【0099】
好ましい実施形態では、液相にさらなる処理を施してリチウムを単離する。リチウムは、好ましくは沈殿によって、好ましくは炭酸化によって液相から抽出する。炭酸化は、好ましくはNaCOまたはCOとの反応によって実施する。
【0100】
液相中に存在する任意のアルミニウム化合物は、それに応じてpHを調整することによって水酸化アルミニウムの形態で沈殿させることが好ましい。
【0101】
好ましい実施形態では、液相に溶解したリチウムおよびアルミニウムは、COによる処理によって互いに分離する。
【0102】
好ましい実施形態では、そのリチウムは、少なくとも部分的に、その水酸化物およびアルミン酸リチウムとして存在する任意のアルミニウムの形態である。これらの場合、液相をCOで処理することにより、リチウムとアルミニウムとを分離することが好ましい。このようにして、その方法が適切に実施された場合、アルミニウムは、第1の工程において水酸化アルミニウムの形態で沈殿させることができるが、リチウムは、炭酸水素リチウムの形態で溶液中に残る。次いで、これを次の工程で炭酸リチウムの形態で単離することができる。驚くべきことに、LiCOの著しい損失が観察されることなく、このように分離を行うことができた。
【0103】
代替的に好ましい実施形態では、そのリチウムは、少なくとも部分的に、好ましくは硫酸塩としての鉱酸塩と、Al(SOとして存在する任意のアルミニウムの形態である。これらの場合、そのアルミニウムは、最初に部分中和またはpH値の適切な調整によってAl(OH)として沈殿し、次いでこのようにしてリチウムから分離および洗浄し、分離されることが好ましい。
【0104】
ii)残渣
特に、コバルト、ニッケル、マンガン、および場合によってはアルミニウムの元素は、固体残渣として残る。したがって、残渣が、ニッケル、コバルト、マンガン、それらの合金、それらの酸化物およびそれらの水酸化物ならびにそれらの混合物からなる群から選択される元素の1つ以上を含有し、それによって元素が混合酸化物または混合水酸化物の形態であってもよい実施形態が好ましい。
【0105】
残渣の中に残っている元素を単離するために、好ましい実施形態では、残渣をその成分に分離するために、残渣をさらなる分離プロセスに供する。さらなる再処理は、元素が残渣中に存在する形態に依存し、それによって様々な方法を互いに組み合わせることもできる。専門家は、残渣が以下に記載される実施形態に限定されず、これらが、残渣中に残留するニッケル、コバルト、マンガン、および場合によってはアルミニウムの元素をどのように抽出することができるかについての有利な教示を専門家に提供することのみを意図していると認識している。
【0106】
好ましい実施形態では、残渣は、ニッケル、コバルト、マンガン、それらの合金、それらの酸化物、それらの水酸化物またはそれらの混合物からなる群から選択される元素の1つ以上を含有する。
【0107】
好ましい実施形態では、残渣は以下を含む。
・酸化状態+IIおよび/または0、特に好ましくは酸化状態0のニッケル
・酸化状態+IIおよび/または0、特に好ましくは酸化状態0のコバルト
・酸化状態+IIのマンガン
・必要に応じて、酸化状態+IIIのアルミニウム
【0108】
さらに好ましい実施形態では、残渣は、それぞれ残渣の総重量に基づいて、好ましくは5重量%未満のリチウム、特に好ましくは1重量%未満のリチウム、特に0.5重量%未満のリチウム、非常に特に0.1重量%未満のリチウムを有する。
【0109】
特に好ましい実施形態では、残渣は、金属形態のニッケルおよびコバルト、ならびにその酸化物および/または水酸化物の形態のマンガンを含有するか、またはそれらからなる。
【0110】
好ましい実施形態では、残渣は、鉱酸による処理、磁気分離法、沈降、濾過、溶媒抽出またはpH制御沈殿からなる群から選択される方法の少なくとも1つの助けを借りてさらに処理される。
【0111】
元素が本来それらの水酸化物の形態で存在する場合、残渣を鉱酸で処理することが有利であることが証明されている。このようにして、元素をそれらの対応する塩の形態で溶液にし、そうして抽出することができる。鉱酸は、好ましくは塩酸または硫酸である。したがって、濾過残渣が鉱酸で処理される実施形態が好ましい。このようにして得られた溶液から、アルミニウムは、それに応じてpHを調整することによってその水酸化物の形態で沈殿および分離することができるが、他の元素であるニッケル、コバルトおよびマンガンは溶液中に残る。次いで、残りの元素を、例えば溶媒抽出によって分離することができる。したがって、残渣を鉱酸で処理し、アルミニウムをその水酸化物の形態で沈殿させるために、得られる溶液を好ましくはpH2~pH5、特にpH3~pH4に調整し、得られた沈殿物を分離し、残りの液相を溶媒抽出に供する実施形態が好ましい。
【0112】
代替的に好ましい実施形態では、得られた液相は、pH値を観察しながら、酸化剤、好ましくはHでさらに処理する。このようにして、液相に含まれるマンガンを分離することができるが、ニッケルおよびコバルトの元素は溶液中に残る。マンガンを分離した後に残っているニッケルおよびコバルトの元素は、さらなる工程で分離し、純粋なニッケル化合物およびコバルト化合物を製造するために使用することができ、またはリチウム電池、特にLIB用のカソード材料を製造するための水酸化物または炭酸塩前駆体を沈殿させるために使用することができる。したがって、その水酸化物の形態でアルミニウムを沈殿させるために、残渣を鉱酸で処理し、得られた溶液を好ましくはpH2~pH5、特にpH3~pH4に調整し、得られた沈殿物を分離し、残りの液相を酸化剤、好ましくはHで処理し、pH値を観察しながら、マンガンを分離するために、得られた沈殿物を分離し、残りの液相をさらに処理してニッケルおよびコバルトをさらに分離する実施形態が好ましい。
【0113】
ニッケルおよびコバルトの元素が残渣中にそれらの金属形態で存在し、マンガンおよびアルミニウムがそれらの酸化物および/または水酸化物の形態で存在する場合、残渣を好ましくは水性懸濁液に変換することが有利であることが証明されており、そこからニッケルおよびコバルトの元素が金属形態でAl含有溶液およびMn含有溶液から分離される。次いで、溶液中に残存するマンガンおよびアルミニウムの元素を、既知の方法を用いて抽出することができる。したがって、残渣が鉱酸による処理によって懸濁液、好ましくは水性懸濁液に変換され、ニッケルおよびコバルトの元素が濾過残渣中に金属形態で残り、続いてより強い酸性条件下で鉱酸にも完全に溶解する実施形態が好ましい。
【0114】
アルミニウムがその水酸化物の形態で残渣中に存在する場合、アルカリ浸出によってアルミニウムを抽出し、金属を分離することが有利であることが証明されている。したがって、残渣をアルカリ浸出に供する実施形態が好ましい。
【0115】
本発明による方法では、高濃度溶液中に存在することのできるその塩または水酸化物の形態でリチウムを得る。これに対応して、本発明による方法の助けを借りて得られたリチウムは、さらなる使用のために材料サイクルに供給することができる。したがって、本発明はまた、リチウム電池、充電式リチウム電池およびリチウム蓄電池、充電式リチウムイオン電池およびリチウムイオン蓄電池および/または充電式リチウムポリマー電池およびリチウムポリマー電池ならびに他のリチウム含有電気化学セルの製造において、本発明により得られたリチウムの使用を提供する。
【0116】
リチウム金属および/またはリチウム酸化物の製造のための、本発明による方法の助けを借りて得られたリチウムの使用も好ましい。
【0117】
本発明による方法の助けを借りて得られるリチウムの別の好ましい使用法は、ガラスおよびセラミック産業において、アルミニウム製造における溶融添加剤として、および/またはエナメル質製造ならびに抗うつ剤製造における溶剤としての使用法である。
【実施例
【0118】
本発明は、以下の実施例および以下の図を使用して説明されるべきであり、これらは決して本発明の概念を制限するものとして理解されるべきではない。
【0119】
以下の実施例の範囲内で、以下の分析方法が記述されている通りに使用される。
誘導結合プラズマ発光分光分析:Li
熱加水分解、電位差測定:F
燃焼分析:C
キャリアガス熱抽出:O
蛍光X線分析:Al、Co、Cu、Fe、Mn、Ni、P
【0120】
[実施例1]
粉末形態の例示的な冶金組成物であるLiNi1/3Co1/3Mn1/3の1000gを水に懸濁し、SOを流した。さらなる水を懸濁液に添加し、リチウムが完全に溶液中に入るまで混合物を撹拌し、それによってpHを4より上に維持した。結果を表1にまとめた。比較のために、表1の右側の「従来」列は、例えば図1に示すような、従来の方法を用いて得られた値を示す。括弧内の値は、M=Ni、Co、Mnで示される各場合の不溶性残渣を示す。
【0121】
【表1】
【0122】
表での比較では、本発明による方法が従来の方法を超える明らかな改善を示す。したがって、従来の方法によれば、遷移金属はリチウムと共に溶液中にあるが、本発明による方法では、遷移金属が固体の形態で分離でき、一方、リチウムは溶液中に残ることが、明確に分かる。表はまた、本発明による方法で達成された増加分のLi濃度を示している。従来の方法では、Li濃度は5倍低く、当然遷移金属は、出発化合物に対応して、Liに対し1対1のモル比で存在する。
【0123】
[実施例2]
工程a)懸濁
水で洗浄し、組成物の総重量に基づいて、Li(3.32重量%)、Al(1.12重量%)、Co(3.65重量%)、Cu(1.36重量%)、Fe(<0.1重量%)、Mn(2.15重量%)、Ni(22.64重量%)、P(<0.01重量%)、F(1.4重量%)、C(45.20重量%)である組成物を有する黒色塊の150gを1100mlの完全脱塩水中で室温の高圧蒸気滅菌器内で撹拌しながら、懸濁した。
【0124】
工程b)懸濁液を還元剤の存在下で処理する工程
追加の還元剤を添加することなく、黒色塊に既に含まれている炭素を唯一の還元剤として利用した。懸濁液を220℃で90分以内に加熱した。温度を設定点に制御し、30分間一定に保った。約23バールの圧力は、この保持時間にわたって変化しなかった。得られた懸濁液を、90分以内にジャケット冷却によって50℃まで冷却した。
【0125】
工程c)固形還元材料の分離
工程b)で得られた冷却懸濁液を濾過し、残渣を合計約600mlの完全脱塩水で洗浄した。濾液と洗浄水を合わせ、2000mlまで充填した。得られた濾過ケーキの211.31gを重量が一定になるまで105℃で乾燥し、乾燥残渣138.47gを得た。
得られた濾液は1.82g/lのLiを含有し、得られた残渣のLi含有量は0.79重量%であった。これらの分析に基づくと、濾液中および残渣中のLi含有量に基づき、それぞれ73.1%または78.0%のLi溶解収率が得られる。
【0126】
[実施例3]
工程a)懸濁
組成物の総重量に基づいて、Li(7.44重量%)およびCo(59.94重量%)と分析された組成物を有する20gのLiCoOを、986mlの完全脱塩水中で、室温の高圧蒸気滅菌器内で撹拌しながら、懸濁した。
【0127】
工程b)懸濁液を還元剤で処理する工程
工程a)で得られた懸濁液を224.78gの4.04%LiHSO溶液と混合した。懸濁液を90分以内に220℃に加熱した。温度を設定点に制御し、18時間一定に保った。約23バールの圧力は、この保持時間にわたって変化しなかった。得られた懸濁液を、90分以内にジャケット冷却によって50℃まで冷却した。
【0128】
工程c)固形還元材料の分離
工程b)で得られた冷却懸濁液を濾過し、残渣を合計約600mlの完全脱塩水で洗浄した。濾液と洗浄水を合わせ、2000mlまで充填した。得られた濾過ケーキ19.21gを重量が一定になるまで105℃で乾燥し、乾燥残渣15.9gを得た。
得られた濾液は1.08g/lのLiを含有し、得られた残渣のLi含有量は0.1重量%であった。これらの分析に基づくと、濾液中および残渣中のLi含有量に基づき、それぞれ97.0%または98.9%のLi溶解収率が得られる。
【0129】
[実施例4]
水で洗浄し、組成物の総重量に基づいて、Li(3.32重量%)、Al(1.12重量%)、Co(3.65重量%)、Cu(1.36重量%)、Fe(<0.1重量%)、Mn(2.15重量%)、Ni(22.64重量%)、P(<0.01重量%)、F(1.4重量%)、C(45.20重量%)である組成物を有する黒色塊の150gを470mlの完全脱塩水中で室温の高圧蒸気滅菌器内で撹拌しながら、懸濁した。
【0130】
工程b)懸濁液を還元剤の存在下で処理する工程
工程a)で得られた懸濁液を731.1gの4.04%LiHSO溶液と混合した。懸濁液を90分以内に220℃に加熱した。温度を設定点に制御し、90分間一定に保った。約23バールの圧力は、この保持時間にわたって変化しなかった。得られた懸濁液を、90分以内にジャケット冷却によって50℃まで冷却した。
【0131】
工程c)固形還元材料の分離
工程b)で得られた冷却懸濁液を濾過し、残渣を合計約600mlの完全脱塩水で洗浄した。濾液と洗浄水を合わせ、2000mlまで充填した。得られた濾過ケーキ237.07gを重量が一定になるまで105℃で乾燥し、乾燥残渣143.78gを得た。
【0132】
得られた濾液は、3.66g/lのLi、ならびに<0.01g/lのCo、<0.01g/lのNi、<0.01g/lのMnを含有し、得られた残渣は<0.01重量%のLi含有量を有していた。これらの分析に基づくと、濾液中のLi含有量に基づいてほぼ定量的なLi溶解収率が得られ、残渣中にはLi含有量に基づく99.7%が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
図1】電池廃棄物の再処理、特にコバルト、ニッケル、マンガンおよびリチウムの元素の回収に使用される従来の分離方法の概略シーケンスを示す。まず、冶金組成物をHSOによる酸消化によって溶解させ、元素を次々に沈殿させる。概要から分かるように、コバルトおよびニッケルの元素は、継ぎの沈殿で抽出され、続いてマンガンおよびリチウムが抽出される。この方法では、リチウムが最後の元素として分離され、したがって以前の沈殿物中に干渉元素として存在するという欠点を有する。
図2】電池廃棄物の再処理、特にコバルト、ニッケル、マンガンおよびリチウムの元素の回収に使用される従来の分離方法の概略シーケンスを示す。まず、冶金組成物をHSOによる酸消化によって溶解させ、マンガン、コバルトおよびニッケルの元素を連続的な溶媒抽出によって分離する。ここで、リチウムはまた、以前の反応の残渣から抽出されるが、これは収率の著しい低下をもたらす。
図3】リチウムがLiSOの形態で溶液中に入るように、例示的な組成物を水に懸濁し、SOで還元する、本発明による方法の例示的な実施形態の概略図を示す。固体の濾過により、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含有する残渣Iと、溶解したLiSOを含有する濾液IIとが得られる。これを、NaCOを添加することによってその炭酸塩の形態で沈殿させる。リチウムを分離した後、リチウムの破壊的影響なしに、ニッケル、コバルトおよびマンガンのさらなる処理および分離を行うことができる。 図3に記載されているように、本発明による方法は、有価材料を有価材料サイクルに戻すことができる様々な出発点を提供する。例えば、硫酸リチウム溶液(濾液II)は、Li製造装置でLiOH溶解液および希硫酸に電解分解することができる。次いで、Li製造装置は、カソード材料、特にNCAカソード材料の製造に再利用するためにLiOH溶解液から固体のLiOH*HOを抽出し、硫酸を遷移金属の処理装置に戻す。このようにして、持続可能なサイクルを確立することができる。
図4】ヒドラジン(N)を還元剤として使用した、対応する化学量論を有する本発明による方法の別の例示的な実施形態のさらなる概略図を示す。本発明による実施例の枠組み内で、組成物を水に懸濁し、ヒドラジンを添加する。さらに水を添加して濾過した後、溶解形態の水酸化リチウムおよびアルミン酸リチウムを含有する濾液Iが得られるが、分離された残渣Iは、金属形態のニッケルおよびコバルトならびにその水酸化物形態のマンガンを含有する。したがって、既に第1の分離工程において、リチウムおよびアルミニウムを組成物の他の成分から効果的に分離することができる。さらなる工程では、濾液Iを順番に硫酸と混合して、アルミニウムをその水酸化物の形態で沈殿させる。こうして、単純な濾過により、例えばLIBの製造のために有価材料サイクルに再導入することができる硫酸リチウム(濾液II)の溶液、およびさらなる目的にも使用することができる固体形態の水酸化アルミニウム(残渣II)を提供する。残渣Iを硫酸で処理することにより、水酸化マンガンは可溶性硫酸マンガンに変換され、その結果、さらなる濾過により、金属形態のニッケルおよびコバルト(残渣III)ならびに別のさらなる処理のために添加することができる硫酸マンガンを含む溶液(濾液III)が得られる。
図5】浸出後に得られた水性濾液の例示的な再処理を示し、例えば、図4に記載のプロセスで得られる通りに、リチウムはその水酸化物の形態で存在し、アルミニウムはアルミン酸リチウム(濾液I)の形態で存在する。濾液Iを適量のCOが不足した状態で混合し、形成された炭酸リチウムを分離して(残渣II)、それにより濾液IIを得る。より多くのCOを添加することによって、濾液II中に残っている水酸化リチウムおよびアルミン酸リチウムが分離され、それによって、アルミン酸塩がその水酸化物の形態で沈殿し、次いで濾過される(残渣III)のに対して、リチウムは炭酸水素リチウム(濾液III)の形態で溶液中に残り、これが加熱によって炭酸リチウムに変換され、そうして沈殿するように、添加が制御される。得られたCOは、そのサイクルにフィードバックすることができる。このようにして、濾液Iからのリチウムおよびアルミニウムの効率的でかつ簡単な分離が達成される。
図6】本発明によって得られた濾液Iからのアルミニウムおよびリチウムの代替抽出法を示す。濾液Iは過剰のCOと混合され、その結果、アルミニウムはその水酸化物(残渣II)の形態で沈殿し、一方、リチウムは炭酸水素リチウム(濾液II)の形態で溶液中に残る。水酸化アルミニウムを濾別した後、残りの溶液を加熱して、それにより、炭酸水素リチウムを炭酸リチウムに変化させて沈殿させることができる。得られたCOは、そのサイクルにフィードバックすることができる。 図に明確に示されるように、本発明による方法は、使用済み電池の活性材料から様々な有価材料を回収する簡単で持続可能な方法を提供する。したがって、液体金属相およびスラグの高価な取り扱いはもはや必要ではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-02-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LIB材料をリサイクルする方法であって、
a)リチウム(I)含有組成物を水性または有機懸濁媒体に懸濁する工程と、
b)前記懸濁液を還元剤で処理して、固体還元材料とリチウム(I)含有溶液とを同時に得る工程と、
c)前記リチウム(I)含有溶液から前記固体還元材料を分離する工程
を備える方法。
【請求項2】
工程b)が、前記懸濁液を還元剤で処理することにより、可溶性Li(I)種およびNi、CoとMnを備える固体還元材料の現場製造を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記懸濁液の温度が、20℃~300℃、好ましくは90℃~250℃、より好ましくは90℃~250℃、特に200℃~250℃、または90℃~120℃に調整されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記リチウムの前記分離が、ニッケル、コバルトおよびマンガンの前記分離の前に行われることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物および/または前記還元材料、特に前記還元材料が、粉末の形態であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、前記LIBの製造、特に前記電極材料の製造において生じる使用済みLIB、製造廃棄物および二次産出物から得られるか、またはそれらからなることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が黒色塊であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、前記組成物の総重量に基づいて、1重量%~20重量%、好ましくは2重量%~20重量%、より好ましくは2重量%~15重量%、特に3重量%~15重量%の量のリチウムを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、好ましくはM=Ni、Co、Mnおよび/またはAlを有するLiMO層構造、特にLiCo酸化物(LCO)、Li(Ni/Co)酸化物(LNCO)、Li(Ni/Co/Mn)酸化物(LNCMO)、Li(Ni/Co/Al)酸化物(LNCAO)、Li(Ni/Al)酸化物(LNAO)、Li(Ni/Mn)酸化物(LNMO)、または好ましくはM=Ni、Coおよび/またはMnであり、場合によりAlを不純物として含んだLiMスピネル構造、または純粋なもしくは不純物を含んだLiFeリン酸塩、またはそれらの任意の混合物からなる群から選択される化合物の少なくとも1つを含有するか、または好ましくは前記化合物の少なくとも1つから熱分解によって得られることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、LCO、特にLiCoO、NMC、特にx+y+z=1であるLiNiMnCo、x+y+z=1であるLiNiCoAlを有するNCA、特にLiNi0.8Co0.15Al0.05、ならびにLiMnスピネル構造およびLFP、特にLiFePOからなる群から選択される化合物の少なくとも1つを含有するか、または前記化合物の少なくとも1つから得られることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が前処理に供されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
前記前処理が、加熱、乾燥、破砕、粉砕、選別、ふるい分け、分級、酸化、沈降、浮遊、洗浄および濾過またはそれらの組合せであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記還元剤が、前記組成物の成分であり、および/または現場で製造されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記還元剤が、硫黄が酸化状態+IVである硫黄化合物、アルミニウム、リチウム、鉄、鉄が酸化状態+IIである鉄化合物、亜鉛、ヒドラジン、水素またはその混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
前記還元剤が、アルコール、アミン、ケトンおよびアルデヒドからなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記還元剤が黒鉛であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
前記還元剤が、前記硫黄が酸化状態+IVにある化合物、特にSO、LiSO、LiHSO、NaSO、NaHSO、KSO、KHSO、(NHSOおよびNHHSOからなる群から選択されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記還元剤がアルミニウム、好ましくは細断された電池筐体からのものであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記還元剤が亜鉛であり、好ましくは食品産業からの亜鉛めっき容器の廃棄物からのものであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項20】
水素が還元剤として使用され、それによって前記還元が好ましくは高圧蒸気滅菌器内で高圧で実施されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記還元剤がSOまたはヒドラジンであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記固体還元材料が、ニッケル金属、コバルト金属、Ni(II)化合物、Co(II)化合物および/またはMn(II)化合物からなる群から選択される化合物の1つ以上を含有し、それによって酸化アルミニウムおよび/または水酸化アルミニウムをさらに含むことができることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項23】
前記分離工程c)が、濾過、遠心分離、または沈降に基づく方法であり、溶解したリチウムをその中に含有する液相および固体残渣が得られることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項24】
前記リチウムが、沈殿によって、好ましくは炭酸化によって前記液相から抽出されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記液相に溶解したリチウムおよびアルミニウムが、COによる処理によって互いに分離されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記固体残渣が、ニッケル、コバルト、マンガン、それらの合金、それらの酸化物、それらの水酸化物またはこれらの混合物からなる群から選択される元素のうちの1つ以上を含有し、それによって前記元素が混合酸化物および混合水酸化物の形態で存在することもできることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記固体残渣が、
・酸化状態+IIおよび/または0、好ましくは酸化状態0のニッケル
・酸化状態+IIおよび/または0、好ましくは酸化状態0のコバルト
・酸化状態+IIのマンガン
・必要に応じて、酸化状態+IIIのアルミニウム
を備えることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記残渣が、金属形態のニッケルおよびコバルトならびにその酸化物および/または水酸化物の形態のマンガンを含有するか、またはそれらからなることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記残渣が、鉱酸による処理、磁気分離法、沈降、濾過、溶媒抽出またはpH制御沈殿からなる群から選択される方法の少なくとも1つによってさらに処理されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記残渣を鉱酸で処理し、得られた溶液を好ましくはpH2~pH5、特にpH3~pH4に調整して、アルミニウムをその水酸化物の形態で順番に沈殿させ、得られた沈殿物を分離し、残りの液相を溶媒抽出に供することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記残渣を鉱酸で処理し、得られた溶液を好ましくはpH2~pH5、特にpH3~pH4に調整して、アルミニウムをその水酸化物の形態で順番に沈殿させ、得られた沈殿物を分離し、液相を酸化剤、好ましくはHで処理し、pH値を維持しながら、マンガンを順番に分離し、得られた沈殿物を分離し、得られた液相をさらに処理してニッケルおよびコバルトをさらに分離することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記残渣が、鉱酸での処理によって好ましくは水性懸濁液に変換され、前記元素のニッケルおよびコバルトをそれらの金属の形態で分離することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記残渣がアルカリ浸出に供されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項34】
リチウム電池、充電式リチウム電池および蓄電池、充電式リチウムイオン電池およびリチウムイオン蓄電池および/または充電式リチウムポリマー電池およびリチウムポリマー蓄電池および他のリチウム含有電気化学セルの製造における請求項1に記載の方法により得られるリチウムの使用法。
【請求項35】
前記リチウムを、リチウム金属および/またはリチウム酸化物の製造に使用することを特徴とする請求項34に記載の使用法。
【請求項36】
前記リチウムを、ガラスおよびセラミック産業において、アルミニウム製造における溶融添加剤として、エナメル質製造および/または抗うつ剤の製造における溶剤として、使用することを特徴とする請求項34または35に記載の使用法。
【国際調査報告】