(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】腸内ディスバイオシスを調節するための手段および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20240702BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20240702BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240702BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240702BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240702BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240702BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240702BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240702BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240702BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
A61K48/00 ZNA
A61K38/46
A61P1/04
A61P31/00
A61P43/00 111
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/713
C12N15/113 130Z
C12N15/09 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577892
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2022066746
(87)【国際公開番号】W WO2022263678
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514185600
【氏名又は名称】ブイアイビー ブイゼットダブリュ
【氏名又は名称原語表記】VIB VZW
【住所又は居所原語表記】Suzanne Tassierstraat 1,9052 Gent,Belgium
(71)【出願人】
【識別番号】514185611
【氏名又は名称】ユニベルシテイト ゲント
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITEIT GENT
【住所又は居所原語表記】Sint-Pietersnieuwstraat 25, B-9000 Gent, Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィチャンドラン,コディマンガラム
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,クリストファー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA44
4C084DC22
4C084NA14
4C084ZA66
4C084ZB32
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZB32
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、特にIBD、大腸炎、化学療法、および食物媒介細菌性感染症などの腸内アポトーシスの条件下における、微生物増殖、より具体的には微生物過剰増殖、更により具体的にはEnterobacteriaceaeの過剰増殖の分野に関する。本発明は、Enterobacteriaceaの過剰増殖を調節するために使用することができる、細菌性標的であるピルビン酸ギ酸リアーゼの阻害剤を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピルビン酸ギ酸リアーゼの機能発現の阻害剤であって、阻害剤が、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ギャップマー、shRNA、siRNA、CRISPR、TALEN、またはジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される、前記ピルビン酸ギ酸リアーゼの機能発現の阻害剤。
【請求項2】
医薬品として使用するための、請求項1に記載のピルビン酸ギ酸リアーゼの機能発現の阻害剤。
【請求項3】
過剰なアポトーシスが起こる腸疾患を処置するために使用するための、請求項1に記載のピルビン酸ギ酸リアーゼの機能発現の阻害剤。
【請求項4】
腸疾患が、大腸炎、炎症性腸疾患、化学療法誘導性粘膜炎、または細菌感染症に関連する、請求項3に記載の使用のための阻害剤。
【請求項5】
細菌感染症が、腸内細菌感染症である、請求項4に記載の使用のための阻害剤。
【請求項6】
腸内細菌感染症が、食物媒介感染症である、請求項5に記載の使用のための阻害剤。
【請求項7】
腸内細菌性食物媒介感染症が、Klebsiella種、Escherichia種、またはSalmonella種に起因する、請求項6に記載の使用のための阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、特にIBD、大腸炎、化学療法、および食物媒介細菌性感染症などの疾患適応症に起因する腸内のアポトーシス細胞死の条件下における、微生物増殖、より具体的には微生物ディスバイオシスまたは微生物過剰増殖、更により具体的にはEnterobacteriaceaeの過剰増殖の分野に関する。本発明は、IBD、大腸炎、化学療法、および食物媒介細菌性感染症の条件におけるEnterobacteriaceaの過剰増殖を調節するために使用することができる、細菌性標的であるピルビン酸ギ酸リアーゼの遺伝子阻害剤を提供する。
【発明の概要】
【0002】
本発明の序論
調節された細胞死は生命の不可欠な部分であり、これは、生物の発生およびホメオスタシスに広範な影響を及ぼす1。瀕死細胞のクリアランスを包含する調節された細胞死プロセス内の機能不全は、胃腸管などの様々な組織全体にわたって多様な範囲の病態で現れ得る2。アポトーシスは、発達最中の調節された細胞死およびホメオスタシスの主要な形態であるが3、溶解性パイロトーシスおよびネクロトーシスを包含する細胞死の追加的な形態は、様々な疾患の文脈において実質的な役割を有する4、5。胃腸管の病態、哺乳動物細胞死、および腸内細菌の間には、興味深いが緩く定義された関係が存在する6~8。例えば、Salmonella enterica(Salmonella)の非チフス性血清型を包含する多くの食物媒介細菌性病原体は、哺乳動物細胞死のアポトーシス形態およびパイロトーシス形態を誘導する直接的および間接的な機序を有する9。追加的に、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)に罹患しているペイシェントは、疾患の再発最中により高い腸管アポトーシス細胞死を示し10、かつEnterobacteriaceae(Escherichia coliを包含)の増加を伴う「ディスバイオシス」を呈する11。更に、細胞傷害性がん化学療法薬は、ペイシェントに実質的な胃腸管毒性および粘膜炎を引き起こし12、かつ細菌感染症を発生するリスクを増加させ13、これは、化学療法誘導性好中球減少症によって複雑化される14。(Enterobacteriaceaeを包含する)Proteobacteriaの増加と、ヒトペイシェントにおけるIBDおよび腸管がんなどの疾患との間に明確な関係が存在するが15、しかし、瀕死の哺乳動物細胞と、その後の細菌成長との間の直接的な関連は未調査のままである。興味深いことに、調節された細胞死を受けている哺乳動物細胞は、タンパク質16、脂質17、およびヌクレオチド(ATPなど)18の選択されたセットを放出する。そのうえ、死依存性代謝産物は、隣接細胞へのシグナルとして作用して、瀕死の死骸のクリアランスを促進し、かつ炎症の消散を助けることができる19、20。哺乳動物細胞死と細菌中心性病態との間の密接な関係を考慮して、本発明者らは、アポトーシス哺乳動物細胞から放出された分子が(例えば、食物媒介感染症、腸炎症、またはがん治療法の最中に)細菌増殖のための直接的な推進を提供する可能性があるかどうかを試験した。腸内ディスバイオシスを調節するために阻害することができる細菌性標的、特にEnterobacteriacea標的を同定する必要がある。本発明は、この必要性を満たし、かつ腸内ディスバイオシスを調節するための新規標的としての細菌ピルビン酸ギ酸リアーゼを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図面の凡例
【
図1-1】調節された哺乳動物細胞死が細菌増殖を増強する。
図1Aは、異なるマウス株由来の初代結腸細胞における細胞死誘導アプローチの概略図である。
図1Bは、対になった試料からの自動化スライドスキャン画像分析を用いて定量化した、C57BL/6結腸外植片由来のTUNEL陽性細胞である。生(DMSO処置)またはスタウロスポリン(2μM)試料をex vivoで8時間にわたり処置した。
*p≦0.05、対応t検定。n=4の結腸細胞外植片。
図1Cは、DMSO(生、上部)およびスタウロスポリン(下)処置試料の切断型カスパーゼ3染色である。
図1Dは、C57BL/6結腸外植片の活性化カスパーゼ3単位(比色アッセイ)である。生(DMSO処置)またはスタウロスポリン(2μM)試料は、ex vivoで8時間にわたり処置された。
*p≦0.05、対応t検定。n=3の独立した結腸外植片。
図1Eは、生菌(ビヒクル処置)またはスタウロスポリン処置C57BL/6結腸外植片から収集した新鮮な培地または上清中における、9時間の好気性増殖後のSalmonellaのコロニー形成単位(Colony forming unit:CFU)である。結腸外植片は、パンカスパーゼ阻害剤QVD単独、スタウロスポリン単独、またはQVDとスタウロスポリンとを一緒に用いてのいずれかで処置された(条件当たりn=5~10)。
*p≦0.05、テューキーの多重比較検定による一元配置分散分析。
【
図1-2】
図1Fは、(Eにおけるような)Vil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/fl結腸外植片の上清における、9時間の好気性増殖後のSalmonella CFUである。結腸外植片は、上清収集の前にスタウロスポリンでまたはスタウロスポリンなしで処置された(条件当たりn=7~8)。ns p>0.05、非対応スチューデントt検定。
図1Gは、C57BL/6結腸外植片の活性化カスパーゼ3単位(比色アッセイ)である。生(水処置)またはドキソルビシン(20μg/mL)試料は、ex vivoで6時間にわたり処置された。
*p≦0.05、対応t検定、n=3の独立した結腸外植片。
図1Hは、ex vivoでの20μg/mLのドキソルビシン処置後の、新鮮培地+20μg/mLのドキソルビシンまたはC57BL/6結腸外植片上清における、9時間の好気性増殖後のSalmonellaのCFUである。n=3。中央値が示される。
*p≦0.05、非対応スチューデントt検定。
図1Iは、ドキソルビシンを伴うまたはドキソルビシンを伴わない培地中で9時間の好気性増殖の後の、SalmonellaおよびE.coli(HS株)の、CFUである。
***p≦0.0005、テューキーの多重比較検定による二元配置分散分析。
図1Jは、Vil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flまたは同腹仔対照結腸外植片の上清中での9時間の好気性増殖後のSalmonella CFU(左);培地、RIPK1キナーゼデッド(RIPK1
KD)、MLKL
-/-、または対照結腸外植片(中央);ガスダーミンD
-/-、カスパーゼ1/11
-/-、または対照結腸外植片(右)である。結腸外植片は、上清収集の前に、ex vivoで6時間にわたり、ドキソルビシンでまたはドキソルビシンなしで処置された(n=5~14の独立した外植片)。ns p>0.05、
**p≦0.005、
***p≦0.0005、テューキーの多重比較検定による一元配置分散分析(中央、右)、または非対応スチューデントt検定(左)。
【
図2】死トリガーは細菌増殖を誘導する。
図2Aは、in vitro細胞株アプローチの図解である。
図2Bは、フローサイトメトリーによって測定される、CT26細胞死である。CT26:死誘導から5時間後のQVD(左、条件当たりn=5)による、カスパーゼ阻害を伴うまたは伴わないFADD細胞死。600mJ cm
-2のUV処置から24時間後のCT26細胞死(中心、n=4)。スタウロスポリン(スタウロ)処置から24時間後のCT26細胞死(右、n=3)。平均±平均値の標準誤差(standard error of the mean:s.e.m)が示される。
***p≦0.0005、テューキーの多重比較検定による一元配置分散分析(左)、スチューデントt検定(中央、右)。
図2Cは、好気性増殖から8時間後のSalmonellaコロニー形成単位(CFU)(左、条件当たりn=9~10)である。
**p≦0.005、
***p≦0.0005、テューキーの多重比較検定による一元配置分散分析。
図2Dは、9時間の好気性増殖後のSalmonella、E.coli(HS株)、またはKlebsiella(中央、右、条件当たりn=4)の細菌CFUである。
*p≦0.05、
**p≦0.005、
***p≦0.0005、複数のスチューデントt検定。
図2Eは、9時間の好気性増殖後のヒト由来E.coli単離物(右、条件当たりn=4)の細菌CFUである。
*p≦0.05、
**p≦0.005、
***p≦0.0005、複数のスチューデントt検定。
【
図3-1】哺乳動物細胞死は時間依存性細菌成長を誘導する。
図3Aにおいて、CT26:FADD細胞がドキシサイクリンで一晩処置されることで、構築物発現が誘導され、次いで、パンカスパーゼ阻害剤(QVD)有りまたは無しで、B/B二量体化因子(dimerizer)で処置され、上清が収集された。定期的なSalmonella好気性増殖測定はOD
600によって行われた。条件当たりn=5。平均+s.e.m.が示される。
***p≦0.0005、テューキーの多重比較検定による二元配置分散分析。
図3Bは、RPMI細胞培地を用いた600mJ cm
-2UV照射を伴うまたは伴わないCT26上清中における(左)、もしくはDMSOビヒクル、スタウロスポリン、QVD、またはスタウロスポリン+QVDを有する培地(右)におけるSalmonella好気性増殖である。細菌増殖は、表記されるように、CFUまたは反復OD
600測定によって評価された。平均+s.e.m.が示される。
*p≦0.05、
**p≦0.005、テューキーの多重比較検定による二元配置分散分析。
図3Cは、50μM Pac-1(アポトーシス誘導物質)による24時間の処置後の、フローサイトメトリーによって決定した際のCT26細胞死(左)、およびOD
600値によって測定した際のこれらの上清中におけるSalmonella好気性増殖(右)である。平均+s.e.m.が示される。
*p≦0.05、テューキーの多重比較検定による二元配置分散分析。
【
図3-2】
図3Dは、600mJ cm
-2のUV照射から24時間後のCT26細胞上清中における細菌好気性増殖である。OD
600を介して測定した際のSalmonella(左)、E.coli株HS(中央)、およびKlebsiella(右)の増殖。平均+s.e.m.が示される。
*p≦0.05、
**p≦0.005、
***p≦0.0005、テューキーの多重比較検定による二元配置分散分析。
図3Eは、1μMスタウロスポリン処置から24時間後のCT26細胞上清中の細菌好気性増殖である。Salmonella(左)、E.coli株HS(中央)、およびKlebsiella(右)の増殖は、OD
600で測定された。平均+s.e.m.が示される。
*p≦0.05、
**p≦0.005、
***p≦0.0005、テューキーの多重比較検定による二元配置分散分析。
【
図3-3】
図3Fは、CT26細胞死(左)、およびOD
600を介して測定した1μMのスタウロスポリン処置から24時間後のCT26細胞上清中のSalmonella好気性増殖(右)である。CT26細胞は、1時間にわたり前処置され、かつ表記されるように30μM QVDで維持された。平均+s.e.m.が示される。
**p≦0.005、
***p≦0.0005、テューキーの多重比較検定による二元配置分散分析。
図3Gは、600mJ cm
-2のUV照射から24時間後のHCT116細胞の総細胞死(左)である。OD
600によって測定された際のHCT116上清中における、対応するSalmonella好気性増殖(右)。条件当たりn=3。平均+s.e.m.が示される。***p≦0.0005、スチューデントt検定(細胞死)、またはテューキーの多重比較検定による二元配置分散分析(細菌増殖曲線)。
図3Hは、1μMスタウロスポリン処置から24時間後のHCT116細胞の総細胞死(左)である。OD
600によって測定された際のHCT116上清中における、対応するSalmonella好気性増殖(右)。条件当たりn=3。平均+s.e.m.が示される。
**p≦0.005、
***p≦0.0005、スチューデントt検定(細胞死)、またはテューキーの多重比較検定による二元配置分散分析(細菌増殖曲線)。
【
図3-4】
図3Iは、150mJ cm
-2のUV照射から4時間後の、フローサイトメトリーによって測定した際のJurkat細胞死の特性評価である。膜の完全性の定量化(左)、n=3、平均+s.e.m.が示される。対応するSalmonella好気性CFU(右、n=6~7)。
*p≦0.05、非対応スチューデントt検定。
図3Jは、フローサイトメトリーによって測定された際の、3サイクルの凍結融解後のCT26細胞死である。凍結融解条件(OD
600)の上清における、定量化(左)、および対応するSalmonella好気性増殖が示される(右、n=4)。
【
図4-1】哺乳動物の死亡駆動の細菌増殖はタンパク質非依存性である。
図4Aは、細菌増殖の増強に関与するタンパク質を除外したアポトーシス誘導後の上清操作の概略図である。
図4Bは、BCA総タンパク質アッセイによって決定される際の表記されたプロテイナーゼKまたは濾過戦略後の、FBSの有りまたは無しでの、スタウロスポリン処置の24時間後の培地またはCT26上清中の総タンパク質レベルである。条件当たりn=4。平均+s.e.m.が示される。
図4Cは、スタウロスポリン処置後の、FBSを有しない培地対照またはCT26上清中のSalmonellaのCFUである。培地およびCT26上清は、表記されたフィルタサイズを用いて順次濾過された。フィルタサイズ当たりn=3、9時間の好気性増殖。中央値が示される。
**p≦0.005、
***p≦0.0005、複数のスチューデントt検定。
図4Dは、スタウロスポリン処置後の、FBSを有しない培地対照またはCT26上清中のSalmonellaのCFUである。収集後、培地およびCT26上清は、10kD未満まで順次濾過され、プロテイナーゼKで処置または未処置され、かつプロテイナーゼKは、3kDフィルタで除去された。条件当たりn=6~8、9時間の好気性増殖。
***p≦0.0005、多重比較検定による一元配置分散分析。
図4Eは、スタウロスポリン処置後の、FBSを有しない培地対照または表記されたCT26上清中のSalmonellaのCFUである。収集後、培地およびCT26上清が、煮沸される、または室温で放置された。条件当たりn=5、9時間の好気性増殖。
***p≦0.0005、テューキーの多重比較検定による一元配置分散分析。
【
図4-2】
図4Fは、スタウロスポリンで処置された10%FBSを含有する、培地または表記されたCT26細胞上清中における9時間の好気性増殖後のSalmonellaのCFUである。培地および上清は、(パネルcのように)3kD未満まで順次濾過された。条件当たりn=5。*p≦0.05、非対応スチューデントt検定。
図4Gは、培地またはフェノールレッドフリー培地中でFBSなしで培養された、表記されたCT26細胞上清における9時間の好気性増殖後のSalmonellaのCFUである。***p≦0.0005、非対応スチューデントt検定。
【
図5-1】哺乳動物細胞死栄養素はSalmonellaにおけるpflB発現および増殖を促進する。
図5Aは、Salmonella RNAseq分析を実施するために行われる工程の概略図である。
図5Bにおいて、ベン図は、2つの異なるRNAseq実験における差次的に調節されたSalmonella遺伝子、および2つのデータセット間で共有された8つの調節された遺伝子のリストを示す。
図5Cは、培地またはスタウロスポリン処置後に収集されたCT26上清中における9時間の好気性増殖後の、野生型またはΔcadBA突然変異Salmonella(CJA042)のCFUである。条件当たりn=4。ns p>0.05、テューキーの多重比較検定による二元配置分散分析。
【
図5-2】
図5Dは、表記された細胞死トリガー後の表記された哺乳動物細胞株上清システムにおける、qPCRによって測定されるSalmonella cadB発現である。条件当たりn=3~4。平均+s.e.m.が示される。
*p≦0.05、
**p≦0.005、
***p≦0.0005、テューキーの多重比較検定による一元配置分散分析。
図5Eは、表記された細胞死トリガー後の表記された哺乳動物細胞株上清システムにおける、qPCRによって測定されるSalmonella pflB発現である。条件当たりn=3~8。平均+s.e.m.が示される。
*p≦0.05、
**p≦0.005、
***p≦0.0005、テューキーの多重比較検定による一元配置分散分析。
【
図5-3】
図5Fは、培地またはスタウロスポリン処置後のCT26上清中における9時間の好気性増殖後の野生型またはΔpflB突然変異Salmonella(CJA071)のCFUである。条件当たりn=4。ns p>0.05、
*p≦0.05、テューキーの多重比較検定による二元配置分散分析。
図5Gは、培地またはスタウロスポリン処置後のCT26上清中における9時間の嫌気性増殖後の野生型またはΔpflB突然変異Salmonella(CJA071)のCFUである。条件当たりn=4。ns p>0.05、
***p≦0.0005、テューキーの多重比較検定による二元配置分散分析。
図5Hは、ピルビン酸塩の培地濃度+/-10%FBS、生(QVD処置)上清、アポトーシス(スタウロスポリンもしくはUV照射後)上清、または壊死(凍結融解)上清である。条件当たりn=4~13。
***p≦0.0005、テューキーの多重比較検定による一元配置分散分析。
図5Iは、生(QVD処置)細胞、スタウロスポリン処置細胞、UV照射細胞、または凍結融解CT26細胞に由来する上清中におけるギ酸塩濃度である。条件あたりn=4~7。ns p>0.05、テューキーの多重比較検定による一元配置分散分析。
図5Jは、生(QVD処置)上清、UV照射上清、またはUV照射+シコニン上清のピルビン酸塩濃度である。条件当たりn=4。データは生上清に対して正規化された。
*p≦0.05、ダネットの多重比較検定による一元配置分散分析。
図5Kは、フローサイトメトリーによって測定される、CT26細胞死である。UV照射、またはスキノニン(Skinonin)を用いるまたは用いないスタウロスポリン(スタウロ)処置から24時間後のCT26細胞死。平均±s.e.m.が示される。条件当たりn=3~4。
【
図5-4】
図5Lは、シコニン処置ありまたはなしでのUV照射後のCT26上清中における9時間の嫌気性増殖後の野生型SalmonellaのCFUである。条件当たりn=7~9。**p≦0.005、非対応t検定。
図5Mは、スキノニン(Skinonin)処置およびピルビン酸塩補充を伴うまたは伴わない、スタウロスポリン処置後のCT26上清中における9時間の嫌気性増殖後の野生型SalmonellaのCFUである。条件当たりn=8~12。ns p>0.05、
*p≦0.05、
***p≦0.0005、テューキーの多重比較検定による一元配置分散分析。
図5Nは、ピルビン酸塩補充を伴うまたは伴わない、スキノニン処置を伴うスタウロスポリン処置後のCT26上清中における9時間の嫌気性増殖後の野生型またはΔpflB突然変異Salmonella(CJA071)のCFUである。条件当たりn=5~6。ns p>0.05、*p≦0.05、シダックの多重比較検定による二元配置分散分析。
【
図6-1】Pannexin-1依存性代謝産物はEnterobacteriaceaeの増殖を増強する。
図6Aは、UV照射後の対照またはPanx1-DN発現Jurkat細胞における、アポトーシス率(アネキシンV染色による)およびPanx1チャネルの活性化率(ToPo3色素取り込みによる)(左)である。n=4、ns p>0.05、
***p≦0.0005、シダックの多重比較検定による二元配置分散分析。新鮮な培地対照または表記されたアポトーシスJurkat上清における、9時間の嫌気性増殖後の野生型またはΔpflB(CJA071)Salmonella CFU(右)。条件あたりn=11~12、ns p>0.05、
***p≦0.0005、シダックの多重比較検定による二元配置分散分析。
【
図6-2】
図6Bは、「MeMix-6」代謝産物の表記された希釈液を補充した培地中における9時間の嫌気性増殖後のSalmonella CFUである。条件当たりn=4~14。
***p≦0.0005、培地対照と比較した、ダネットの多重比較検定による一元配置分散分析。使用した「MeMix-6」製剤:スペルミジン(3.0nM);FBP:フルクトース1,6-ビスホスファート(5nM);DHAP:ジヒドロキシアセトンリン酸(0.36μM);UDG-グルコース(20nM);GMP:グアノシン一リン酸(21nM);IMP:イノシン一リン酸(33nM)。1倍濃度は、アポトーシス上清中における表記された代謝産物の以前に同定された濃度に基づいた。右、9時間の嫌気性増殖後の野生型またはpflB突然変異体(CJA071)CFU。ns p>0.05、
***p≦0.0005、シダックの多重比較検定による二元配置分散分析。
図6Cは、qPCRによって測定された、MeMixの非存在下または存在下におけるSalmonella pflBまたはcadB遺伝子発現である。条件当たりn=4。ns p>0.05、シダックの多重比較検定による二元配置分散分析。
図6Dは、空のベクターを有する野生型のUDPgおよびFBP(野生型)、空のベクターを有するpflB突然変異体(ΔpflB)、または0.2%アラビノースを有するまたは有しない9時間の嫌気性増殖後の補完pflB突然変異体(pflB+)を補充した培地における、9時間の嫌気性増殖後のCFUである。ns p>0.05、
*p≦0.05、
**p≦0.005、
***p≦0.0005のテューキーの多重比較検定による二元配置分散分析。
【
図6-3】
図6Eは、UDPgおよびFBPで補充したまたは補充しない培地での7時間の嫌気性増殖後の、表記されたE.coli株(LF82、CCR20、UTI189、HS)のCFUである。
*p≦0.05、
***p≦0.0005、シダックの多重比較検定による二元配置分散分析。
図6Fは、新鮮な培地中、または生(QVD処置)もしくはスタウロスポリン処置CT26細胞に由来する上清中のフルクトース1,6-ビスホスファート濃度である。条件当たりn=4。
***p≦0.0005、テューキーの多重比較検定による一元配置分散分析。
【
図7-1】PflBは食物媒介感染症の間のSalmonella適合性を促進する。
図7Aは、競合的感染のための食物媒介Salmonella感染モデルの概略図である。無菌マウスは、経口ストレプトマイシン処置を受けず、かつ1e6CFU/マウスで感染させられた。
【
図7-2】
図7Bは、感染後4日目のC57BL/6従来の特異的病原体フリー(specific pathogen free:SPF)マウスの表記された組織における野生型(黒色)またはΔcadBA(CJA033、緑)のSalmonella負荷である。点線で接続された野生型および突然変異Salmonellaは、同じマウスに起源をもつ。競合指数の中央値(野生型/ΔcadBA)は、各組織の下に列挙される。2つのコホートからのn=7の雌マウス。総株負荷量または突然変異株負荷量のいずれかが検出限界を下回った場合、組織試料は除外された。ns p>0.05、
*p≦0.05、各マウスからの計算された競合指数を用いた理論中央値1のウィルコクソン符号順位検定。
図7Cは、感染後4日目の非感染(ストレプトマイシン処置)または野生型Salmonella感染C57BL/6の従来のSPFマウスからの新鮮な管腔試料中のピルビン酸濃度である。3つのコホートからの条件当たりn=4~7のマウス。
*p≦0.05、マン・ホイットニー検定。
図7Dは、感染後4日目のC57BL/6の従来のSPFマウスの表記された組織における野生型(黒色)またはΔpflB(CJA057、青色)のSalmonella負荷である。点線で接続された野生型および突然変異Salmonellaは、同じマウスに起源をもつ。競合指数の中央値(野生型/ΔpflB)は、各組織の下に列挙される。2つのコホートからのn=8の雌マウス。
*p≦0.05、各マウスからの計算された競合指数を用いた理論中央値1を有するウィルコクソン符号順位検定。
【
図7-3】
図7Eは、感染後2日目のC57BL/6の従来のSPFマウスにおける野生型(黒色)またはΔpflB(CJA057、青色)のSalmonella負荷である。競合指数の中央値(野生型/ΔpflB)は、各組織の下に列挙される。2つのコホートからのn=6の雌マウス。
*p≦0.05、競合指数は、各マウスについての理論中央値1のウィルコクソン符号順位検定を用いて計算された。
図7Fは、感染後2日目のC57BL/6の無菌マウスの表記された組織における野生型(黒色)またはΔpflB(CJA057、青色)のSalmonella負荷である。競合指数の中央値(野生型/ΔpflB)は、各組織の下に列挙される。2つのコホートからのn=9の雌マウス。総株負荷量または突然変異株負荷量のいずれかが検出限界を下回った場合、組織試料は除外された。
*p≦0.05、
**p≦0.005、各マウスからの計算された競合指数を用いた理論中央値1のウィルコクソン符号順位検定。
図7Gは、感染後4日目のC57BL/6 SPFマウスの表記された組織における、野生型(黒色)、ΔSPI-1ΔSPI-2(CJA077、オレンジ色)、またはΔpflB(CJA057、青色)のSalmonella負荷である。4つのコホートからの株当たりn=7~15。ns p>0.05、
**p≦0.005、ダンの多重比較検定を伴うクラスカル・ウォリス。
【
図7-4】
図7Hは、ΔpflB(CJA057)と比較した野生型Salmonella(黒色)またはΔSPI-1ΔSPI-2ΔpflB(CJA081)と比較したΔSPI-1ΔSPI-2(CJA077)(オレンジ色)のいずれかの、感染後4日目の競合指数である。4つのコホートからのn=14の雌マウス。ns p>0.05、
*p≦0.05、マン・ホイットニー検定。
図7Iは、感染後4日目のカスパーゼ1/11
-/-の従来のSPFマウスの表記された組織における野生型(黒色)またはΔpflB(CJA057、青色)のSalmonella負荷である。2つのコホートからのn=8の雄マウスおよび雌マウス。
図7Jは、カスパーゼ1/11 KO SPFマウスにおける野生型(黒色)またはΔpflB(CJA057、青色)のSalmonella負荷である。点線で接続された野生型および突然変異Salmonellaは、同じマウスからのものである。競合指数の中央値は、以下に列挙される。2つのコホートからのn=7の雄マウスおよび雌マウス。
*p≦0.05、各マウスからの計算された競合指数を用いた理論中央値1を有するウィルコクソン符号順位検定。
【
図7-5】
図7Kは、感染後4日目のカスパーゼ3/7
fl/fl対照またはVil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウスの表記された組織におけるSalmonella負荷である。3つのコホートからの、n=11の雌カスパーゼ3/7
fl/fl対照マウス、n=7の雌Vil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウス。
図7Lは、感染後4日目のカスパーゼ3/7
fl/fl対照マウスまたはVil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウスの表記された組織における、ΔpflB(CJA057)と比較した野生型Salmonellaの競合指数である。2つのコホートからの、n=8の雌のカスパーゼ3/7
fl/fl対照マウス、n=5の雌Vil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウス。ns p>0.05、
*p≦0.05、各組織を別々に分析したマン・ホイットニー検定。
図7Mは、感染後4日目のVil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flの従来のSPFマウスの表記された組織における、野生型(黒色)またはΔpflB(CJA057、青色)のSalmonella負荷である。2つのコホートからのn=5の雌マウス。
図7Nは、感染後4日目のカスパーゼ3/7
fl/fl対照マウスまたはVil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウスの回腸における、ΔpflB(CJA057)と比較した野生型Salmonellaの競合指数である。2つのコホートからの、n=8の雌のカスパーゼ3/7
fl/fl対照マウス、n=5の雌Vil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウス。*p≦0.05、マン・ホイットニー検定。
【
図8-1】TNFおよびA20依存性細胞死はEnterobacteriaceaeの増殖を増強する。
図8Aは、A20ノックアウトHCT116細胞を用いるためのin vitroアプローチの概略図である。
図8Bは、100ng/mLのヒトTNF刺激から24時間後の対照またはA20 KO HCT116細胞の総細胞死、およびQVD処置によるアポトーシスの阻害である。条件当たりn=4。平均+s.e.m.が示される。ns p>0.05、
***p≦0.0005、シダックの多重比較検定による一元配置分散分析。
図8Cは、100ng/mLのヒトTNF処置の有りまたは無しでの、対照またはA20 KO HCT116細胞上清中において9時間の好気性増殖後のSalmonella CFUである。条件当たりn=9~13。ns p>0.05、
***p≦0.0005、テューキーの多重比較検定による一元配置分散分析。
図8Dは、表記されるHCT116細胞上清中における対数中期(mid-log)の好気性増殖後のSalmonella pflB遺伝子発現である。pflB発現は、100ng/mLのヒトTNFを有するおよび有しない対照HCT116上清において1に正規化した。条件当たりn=7。平均+s.e.m.が示される。ns p>0.05、
***p≦0.0005、シダックの多重比較検定による一元配置分散分析。
図8Eは、100ng/mLのヒトTNF処置を伴う対照またはA20 KO HCT116細胞から収集した上清中において、9時間の好気性増殖後に測定した、E.coli(HS株)およびKlebsiellaのCFUである。株当たりの条件当たりn=7。
*p≦0.05、
***p≦0.0005非対応スチューデントt検定。
【
図8-2】
図8Fは、表記されているHCT116細胞上清中における対数中期増殖後の、qPCRによって測定されるSalmonella cadB遺伝子発現である。cadB発現は、100ng/mLのヒトTNFを有するおよび有しない対照HCT116上清中において1に正規化した。条件当たりn=7。平均+s.e.m.が示される。ns p>0.05、
***p≦0.0005、シダックの多重比較検定による一元配置分散分析。
図8Gは、腸管上皮細胞においてA20を欠くマウスに対する対照マウスにおけるin vivo感染の概略図である。
図8Hにおいて、A20
fl/fl対照またはVil-Cre
+/-A20
fl/flマウスが、感染させられた(上記の通り)。毎日の体重が記録され、各マウスの0日目の体重に基づいて%体重が計算された。n=12の雄および雄のA20
fl/fl対照マウス。2つのコホートからのn=6の雄および雌のVil-Cre
+/-A20
fl/flマウス。平均+s.e.m.が示される。
***p≦0.0005、シダックの多重比較検定による二元配置分散分析。
図8Iは、A20
fl/fl対照マウスまたはVil-Cre
+/-A20
fl/flマウスを用いた感染後の2日目または3日目の回腸における活性化カスパーゼ3単位である。2日目:2つのコホートからの、n=4の雄A20
fl/fl対照マウス、n=6の雄Vil-Cre
+/-A20
fl/flマウス。3日目:2つのコホートからの、n=4の雌A20
fl/fl対照マウス、n=4の雌Vil-Cre
+/-A20
fl/flマウス。ns p>0.05、
*p≦0.05、シダックの多重比較検定による二元配置分散分析。
図8Jは、感染後2日目または3日目のA20
fl/fl対照マウスまたはVil-Cre
+/-A20
fl/flマウスの回腸におけるSalmonella負荷である。2日目:2つのコホートからの、n=6の雄および雌A20
fl/fl対照マウス、n=7の雄および雌Vil-Cre
+/-A20
fl/flマウス。3日目:2つのコホートからの、n=9の雄および雌のA20
fl/fl対照マウス、n=4の雄および雌のVil-Cre
+/-A20
fl/flマウス。ns p>0.05、
**p≦0.005、マン・ホイットニー検定。
図8Kは、A20
fl/fl対照マウスまたはVil-Cre
+/-A20
fl/flマウスの回腸における野生型Salmonella対ΔpflB(CJA057)の競合指数である。2日目:2つのコホートからの、n=6の雄および雌A20
fl/fl対照マウス、n=7の雄および雌Vil-Cre
+/-A20
fl/flマウス。3日目:2つのコホートからの、n=7の雄および雌のA20
fl/fl対照マウス、n=4の雄および雌のVil-Cre
+/-A20
fl/flマウス。ns p>0.05、
*p≦0.05、マン・ホイットニー検定。
【
図9-1】腸管上皮細胞アポトーシスはin vivoでのSalmonella増殖を推進する。
図9Aは、ドキソルビシン処置と、それに続くSalmonella感染のin vivoモデルの概略図である。
図9Bは、in vivoでのドキソルビシン(ドキソ)処置と、それに続くE.coli感染の概略図である。
図9Cは、左:ビヒクル対照(水)処置マウスまたはドキソルビシンを与えたマウスの結腸長(cm)、および結腸短縮の代表的な画像である。3つのコホートからの、n=7の雌C57BL/6およびカスパーゼ3/7
fl/fl対照マウス、n=12の雌C57BL/6およびカスパーゼ3/7
fl/flマウス+ドキソルビシン、n=6の雌Vil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウス+ドキソルビシン。
**p≦0.005、テューキーの多重比較検定による一元配置分散分析。右:ビヒクル処置(水)対照マウスまたはドキソルビシンを与えたマウスの盲腸重量(グラム)。3つのコホートからの、n=15の雌C57BL/6およびカスパーゼ3/7
fl/fl対照マウス、n=25の雌C57BL/6および対照カスパーゼ3/7
fl/flマウス+ドキソルビシン、n=8の雌Vil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウス+ドキソルビシン。
**p≦0.005、
***p≦0.0005、テューキーの多重比較検定による一元配置分散分析。
図9Dは、感染後1日目の、ビヒクル(水)処置対照またはドキソルビシン処置のいずれかのC57BL/6マウスの表記された組織におけるSalmonella負荷である。2つのコホートからの条件当たりn=8の雌マウス。
***p≦0.0005、各組織を別々に分析したマン・ホイットニー検定。
図9Eは、感染後1日目の、ドキソルビシンで処置したカスパーゼ3/7
fl/fl対照またはVil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウスのいずれかの表記された組織におけるSalmonella負荷である。3つのコホートからの、n=16の雌の対照カスパーゼ3/7
fl/fl、n=9の雌のVil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウス。
*p≦0.05、各組織を別々に分析したマン・ホイットニー検定。
【
図9-2】
図9Fは、処置の2日後の、ドキソルビシン処置を伴うまたは伴わない非感染C57BL/6マウスの盲腸重量である。2つのコホートからの、n=4の雌C57BL/6、n=7の雌C57BL/6マウス+ドキソルビシン。
*p≦0.05、非対応スチューデントt検定。
図9Gは、処置の2日後の、ドキソルビシン処置を伴うまたは伴わない非感染C57BL/6マウスの結腸長である。2つのコホートからの、n=4の雌C57BL/6、n=7の雌C57BL/6マウス+ドキソルビシン。
***p≦0.0005、非対応スチューデントt検定。
図9Hは、処置の2日後に、組織のグラム当たり正規化された非感染マウスのドキソルビシン処置を伴うまたは伴わないC57BL/6マウスの回腸における、活性化カスパーゼ3単位である。2つのコホートからの、n=4の雌C57BL/6、n=7の雌C57BL/6マウス+ドキソルビシン。
**p≦0.005、非対応スチューデントt検定。
図9Iは、処置の2日後の、ドキソルビシン処置を伴うまたは伴わない非感染C57BL/6マウスの表記された組織における内因性Enterobacteriaceae CFUのCFUである。2つのコホートからの、n=4の雌C57BL/6、n=7の雌C57BL/6マウス+ドキソルビシン。
*p≦0.05、各組織を別々に分析したマン・ホイットニー検定。
【
図9-3】
図9Jは、感染後1日目の、対照、またはVil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウスの表記された組織における野生型Salmonella対ΔpflB(CJA057)の競合指数である。3つのコホートからの、n=14の雌C57BL/6およびカスパーゼ3/7
fl/fl「対照」マウス、n=23の雌C57BL/6およびカスパーゼ3/7
fl/fl「対照+ドキソルビシン」、n=9の雌Vil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウス+ドキソルビシン。総株負荷量または突然変異株負荷量のいずれかが検出限界を下回った場合、組織試料が除外された。ns p>0.05、
*p≦0.05、
**p≦0.005、
***p≦0.0005、各組織を別々に分析したクラスカル・ウォリス検定。
図9Kは、感染後1日目の、対照マウス、またはビヒクルを与えたVil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウスのいずれかの表記された組織におけるSalmonella負荷である。2つのコホートからの、n=4のカスパーゼ3/7
fl/fl対照マウス、n=4の雌のVil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウス。ns p>0.05、各組織を別々に分析したマン・ホイットニー検定。
図9Lは、ビヒクル処置(水)対照マウスまたはドキソルビシンを与えられたマウスの盲腸重量(g)である。6つのコホートからのn=12の雌の対照Panx1
+/+、n=18の雌の対照Panx1
+/++ドキソルビシン、n=11の雌のPanx1
-/-+ドキソルビシンマウス。
【
図9-4】
図9Mは、感染後1日目の、Panx1
+/+対照マウスまたはドキソルビシンで処置されたPanx1
-/-マウスのいずれかの表記された組織におけるSalmonella負荷である。6つのコホートからの、n=8の雌の対照Panx1
+/+マウス、n=11の雌のPanx1
-/-マウス。ns p>0.05、
***p≦0.0005、各組織を別々に分析したマン・ホイットニー検定。
図9Nは、感染後1日目の、Panx1
+/+対照マウスまたはドキソルビシンで処置したPanx1
-/-マウスのいずれかの表記された組織における、野生型Salmonella対ΔpflB(CJA057)の競合指数である。4つのコホートからの、n=7の雌の対照Panx1
+/+マウス、n=6の雌のPanx1
-/-マウス。ns p>0.05、
***p≦0.0005、各組織を別々に分析したマン・ホイットニー検定。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明の詳細な説明
明細書および特許請求の範囲を通して、以下の用語は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、本明細書に明示的に関連する意味をとる。本明細書で使用される「一実施形態では」という語句は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らないが、そうである可能性がある。更に、本明細書で使用される「別の実施形態では」という語句は、必ずしも異なる実施形態を指すものではないが、そうである可能性がある。このようにして、以下に記載されるように、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明の様々な実施形態は容易に組み合わせられる可能性がある。
【0005】
本技術の理解を容易にするために、いくつかの用語および語句が以下に定義される。追加的な定義は、詳細な説明を通して記載される。
【0006】
定義
本明細書で使用される場合、「対象」および「ペイシェント」という用語は、イヌ、ネコ、トリ、ブタ、ウマ、ウシ、家畜、好ましくはヒトなどの哺乳動物などのあらゆる動物を指す。
【0007】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、組成物を治療的使用に特に好適なものにする、活性剤と、不活性または活性の担体との組合せを指す。
【0008】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という用語は、対象へ投与された場合、有害反応、例えば、毒性、アレルギー、または免疫学的反応を実質的に生じない組成物を指す。
【0009】
本明細書で使用される場合、「処置すること(treating)」という用語は、本技術の治療組成物を対象の体内または対象の身体上へとあらゆる手法で導入することによって、疾患または障害の少なくとも1つの有害作用または症状を低減または緩和することを包含する。「処置(Treatment)」とは、治療的処置および予防的(prophylactic)措置または未然防止的(preventative)措置の両方を指し、ここで、目的とは、標的病態的状態または障害を予防未然防止または減速(例えば、最小化または減少)することである。処置を必要とする相手は、既に障害を有する相手、ならびに障害を有する傾向がある相手、または障害を未然防止すべき相手が包含する。
【0010】
別の分子に「特異的に結合する」分子または別の分子に「特異的な」分子は、あらゆる他の分子に実質的に結合することなくその特定の分子へと結合する分子である。
【0011】
本明細書で使用される場合、「in vitro」という用語は、人工環境、および人工環境内で起こるプロセスまたは反応を指す。In vitro環境は、試験管および細胞培養物を包含してもよいが、これらに限定されない。「in vivo」という用語は、自然環境(例えば、動物または細胞)、および自然環境内で起こるプロセスまたは反応を指す。
【0012】
本明細書で使用される場合、「投与」という用語は、薬物、プロドラッグ、アンチセンスオリゴヌクレオチド、または治療的処置を、生理システム(例えば、対象、またはin vivo、in vitro、もしくはex vivoの細胞、組織、および器官)に与える作用を指す。人体への例示的な投与経路は、眼(点眼)、口(経口)、皮膚(経皮)、鼻(経鼻)、肺(吸入)、口腔粘膜(頬側)、耳、注射(例えば、静脈内、皮下、腫瘍内、腹腔内など)などによるものであり得る。
【0013】
本明細書で使用される場合、「担体」とは、採用される投与量および濃度で曝露される細胞または哺乳動物に対して非毒性である、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤を包含する。多くの場合、生理学的に許容される担体は、pH緩衝水溶液である。生理学的に許容される担体の例は、緩衝剤、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸など;アスコルビン酸を包含する抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなど;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドンなど;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジンなど;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを包含する、他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTAなど;糖アルコール、例えば、マンニトールもしくはソルビトールなど;塩形成対イオン、例えばナトリウムなど;ならびに/または、非イオン性界面活性剤を包含する。
【0014】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」という用語は、ペプチド結合を介して連結したアミノ酸を含む分子を指す。概して、「ペプチド」は、20個以下のアミノ酸の配列を指すために使用され、「ポリペプチド」は、20個を超えるアミノ酸の配列を指すために使用される。
【0015】
本明細書で使用される場合、「合成ポリペプチド」、「合成ペプチド」、および「合成タンパク質」という用語は、組換えプロセス(すなわち、生物、宿主細胞、もしくは無細胞システムにおけるペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質をコードする、外因性核酸の発現)によって、または化学合成によって産生される、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質を指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、タンパク質に関して使用される場合の「ネイティブ」(または野生型)という用語は、合成タンパク質を産生するように操作されたもの以外の、細胞、組織、または生物のゲノムによってコードされるタンパク質を指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、「ドメイン」(典型的には、3個以上、概して5個または7個以上のアミノ酸の配列)は、分子の他の部分と構造的および/または機能的に異なり、かつ同定可能である、分子の部分、例えばタンパク質またはコード核酸などを指す。例えば、ドメインは、1以上の構造モチーフで構成されたタンパク質内に独立して折り畳まれた構造を形成することができ、および/またはタンパク質分解活性などの機能活性によって認識される、ポリペプチド鎖の部分を包含する。そのようなものとして、ドメインは、タンパク質の残りの部分とは独立してその三次構造を保持する、折り畳まれたタンパク質構造を指す。概して、ドメインは、タンパク質の個別の機能的特性を担い、多くの場合、タンパク質の残りの部分および/またはドメインの機能を失うことなく、他のタンパク質へ添加、除去、または転移されてもよい。
【0018】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、in vitroまたはin vivo(例えば、トランスジェニック生物中)に配置されるかどうかにかかわらず、あらゆる真核生物細胞(例えば、哺乳動物細胞、鳥類細胞、両生類細胞、植物細胞、魚類細胞、昆虫細胞、酵母細胞)、および細菌細胞などを指す。「宿主細胞」という用語は、異種遺伝子を複製および/または転写および/または翻訳することが可能なあらゆる細胞を指す。このようにして、「宿主細胞」は、in vitroまたはin vivoに配置されるかどうかにかかわらず、あらゆる真核生物細胞または原核生物細胞を指す。例えば、宿主細胞はトランスジェニック動物に配置されてもよい。
【0019】
本明細書で使用される場合、「細胞培養物」という用語は、細胞のあらゆるin vitroの培養物を指す。この用語には、連続細胞株(例えば、不死化表現型を有する)、初代細胞培養物、有限細胞株(例えば、非形質転換細胞)、ならびに卵母細胞および胚を包含するin vitroで維持されるあらゆる他の細胞集団が包含される。
【0020】
「単離した(isolated)」という用語は、核酸またはポリペプチドもしくはタンパク質に関連して使用される場合、その自然源において通常付随している少なくとも1つの混入核酸またはポリペプチドもしくはタンパク質から同定および分離された、核酸またはポリペプチドもしくはタンパク質配列を指す。単離された核酸またはポリペプチドもしくはタンパク質は、それらが自然界で見出される形態または状況とは異なる形態または環境で存在する分子である。対照的に、単離されていない核酸またはポリペプチドもしくはタンパク質は、それらが自然界に存在する状態で見出される。
【0021】
「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合を介して連結したアミノ酸を含む化合物を指し、かつ互換的に使用される。遺伝子によってコードされる「タンパク質」または「ポリペプチド」は、遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に限定されず、タンパク質の翻訳後修飾を包含する。
【0022】
「アミノ酸配列」という用語がタンパク質分子のアミノ酸配列を指すために本明細書で列挙される場合、「アミノ酸配列」および「ポリペプチド」または「タンパク質」などの同様の用語は、列挙されたタンパク質分子に関連した完全なネイティブアミノ酸配列に、アミノ酸配列を限定することを意味しない。更に、タンパク質をコードする核酸配列から「アミノ酸配列」が推定されることができる。
【0023】
「部分」という用語は、タンパク質に関して使用される場合(「所与のタンパク質の一部」におけるような)、そのタンパク質のフラグメントを指す。フラグメントのサイズは、4アミノ酸残基から、全アミノ配列マイナス1アミノ酸(例えば、サイズの範囲は、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、または11個を包含し、全アミノ酸配列マイナス1アミノ酸までのアミノ酸)までの範囲にわたってもよい。
【0024】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」の単数形は、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、単数および複数両方の指示対象を包含する。
【0025】
本明細書で使用される「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」、および「構成される(comprised of)」という用語は、「包含すること(including)」、「包含する(includes)」、または「含有すること(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、かつ包括的またはオープンエンドであり、かつ追加的な列挙されていない部材、要素、または方法工程を除外しない。この用語はまた、「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を包括し、これらは特許用語において充分に確立された意味を有する。
【0026】
端点による数値範囲の列挙は、それぞれの範囲内に包摂される全ての数および分数、ならびに列挙された端点を包含する。これは、「…から…まで(from… to…)」という表現または「…と…との間(between… and…)」という表現または別の表現によって導入されるかどうかにかかわらず、数値範囲に適用される。
【0027】
パラメータ、量、持続時間などの測定可能な値を指す場合に本明細書で使用される「約(about)」または「およそ(approximately)」という用語は、開示された発明において実行するのにそのような変動が適切である限り、指定された値の+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、更により好ましくは+/-0.1%以下の変動などの、指定された値の変動および指定された値からの変動を包括することを意味する。「約(about)」または「およそ(approximately)」という修飾語が指す値自体もまた具体的に、好ましくは開示されていることを理解されたい。
【0028】
本明細書における本発明の背景の議論は、本発明の文脈を説明するために包含される。これは、言及された材料のいずれかが、特許請求の範囲のいずれかの優先日にいずれかの国において、公開された、知られている、または共通の一般知識の一部であることが認めるものと解釈されるべきではない。この開示を通して、様々な刊行物、特許、および公開された特許明細書は、特定の引用によって参照される。本明細書で引用される全ての文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。特に、本明細書で具体的に言及されるそのような文書の教示またはセクションは、参照により組み込まれる。
【0029】
他に定義されない限り、技術用語および科学用語を包含する、本発明の開示で使用される全ての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。更なる指針によって、本発明の教示をよりよく理解するために用語定義が包含される。本発明の特定の態様または本発明の特定の実施形態と関連して特定の用語が定義される場合、そのような暗示的意味または意味は、特に定義されない限り、この明細書全体にわたって、すなわち本発明の他の態様または実施形態の文脈においてもまた適用されることを意味する。
【0030】
以下の節では、本発明の異なる態様または実施形態がより詳細に定義される。そのように定義された各態様または実施形態は、反対のことが明確に表記されていない限り、あらゆる他の態様(複数可)または実施形態(複数可)と組み合わせられる可能性がある。特に、好ましいまたは有利であると表記されたあらゆる特徴は、好ましいまたは有利であるものと示されたあらゆる他の1つの特徴または複数の特徴と組み合わせられる可能性がある。
【0031】
この明細書を通じた「一実施形態」、「実施形態」への言及は、実施形態に関して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に包含されることを意味する。このようにして、この明細書全体の様々な箇所における「一実施形態では」または「実施形態では」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではないが、そうである可能性がある。更に、特定の特徴、構造、または特性は、1以上の実施形態において、この開示から当業者に明らかであるように、あらゆる好適な様式で組み合わせられる可能性がある。更に、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、他の実施形態に包含されるいくつかの特徴を包含するが他の特徴は包含せず、一方で、異なる実施形態の特徴の組合せは、本発明の範囲内であり、かつ当業者によって理解されるように、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、添付の特許請求の範囲において、特許請求される実施形態のいずれもが、あらゆる組合せで使用されることができる。
【0032】
専門家は、特に、当該技術分野の定義および用語については、Sambrook et al.「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第4版、Cold Spring Harbor Press、Plainsview、New York(2012);および、Ausubel et al.「current Protocols in Molecular Biology」(Supplement 100)、John Wiley&Sons、New York(2012年)を参照されたい。本明細書で提供される定義は、当業者によって理解される範囲よりも小さい範囲を有するものと解釈されるべきではない。
【0033】
調節された哺乳動物細胞死は、組織のホメオスタシスおよび多くの病態的状態に大きな影響を及ぼす。細胞死と、根底にある微生物構成成分を伴う胃腸管病態との間には、長く認識されているが決定的に定義された関係が存在するものの、細菌増殖に対する瀕死哺乳動物細胞の直接的な影響は不明である。ここで、in vitroおよびin vivoアプローチの組合せを用いて、本発明者らは、ペイシェント由来の臨床単離物を包含するいくつかのEnterobacteriaceaeが、瀕死の腸上皮細胞から放出される可溶性因子を利用する効率的な増殖戦略を有するという概念を進展させる。カスパーゼ3/7依存性アポトーシス後に放出された哺乳動物栄養素は、3つのEnterobacteriaceaeファミリーメンバーの増殖をブーストする。アポトーシス上清中の細菌増殖促進活性は、初代マウス結腸組織、マウスおよびヒト細胞株、複数のアポトーシストリガーを用いて、ならびに従来のマウスおよびin vivoで無菌マウスにおいて観察される。哺乳動物細胞死栄養素は、病原性Salmonellaにおいてコア転写応答を誘導し、本発明者らは、pflB遺伝子をコードするピルビン酸ギ酸リアーゼを細菌コロニー形成の重要なドライバとして同定する。細菌増殖に対する腸上皮細胞アポトーシスの機能的なin vivo関連性を、カスパーゼ3/7欠損マウスおよびpflB突然変異細菌を介して、3つの文脈で明らかにした:食物媒介感染症モデル、TNF、およびA20依存性細胞死モデル、ならびに化学療法誘導性粘膜炎モデル。これらの知見は、死滅誘導性栄養素放出(本発明者らはDINNRと称する)が腸管細菌の推進源として作用する、複雑な宿主-病原体相互作用へと新規層を導入し、これは、腸の炎症性疾患および細胞傷害性化学療法処置に影響を及ぼす。
【0034】
本出願は、腸細胞のアポトーシスの条件下におけるEnterobacteriaceaの細菌種においてピルビン酸ギ酸リアーゼの特異的誘導性発現を示す最初のものであり、ピルビン酸ギ酸リアーゼの阻害は、腸内のEnterobacteriaceaの増殖を阻害するように使用されることができる。したがって、本発明の目的は、ピルビン酸ギ酸リアーゼ遺伝子の機能発現の阻害剤を提供することである。そのような阻害剤は、DNAレベル、またはRNA(すなわち、遺伝子産物)レベルで作用することができる。
【0035】
ピルビン酸ギ酸リアーゼの「機能発現」とは、機能的遺伝子産物の転写および/または翻訳を意味する。ピルビン酸ギ酸リアーゼのようなタンパク質コード遺伝子では、「機能発現」とは、少なくとも2つのレベルで調節解除されることができる。第1に、DNAレベルでは、例えば遺伝子の非存在もしくは破壊、または転写の欠如が起こる(両方の実例でも、関連する遺伝子産物の合成を未然防止する)。転写の欠如は、例えば、機能突然変異の喪失によって引き起こされることができる。本明細書で使用される「機能喪失型」または「LOF」突然変異は、増強された活性または新規活性をタンパク質に付与する機能獲得型突然変異とは対照的に、遺伝子産物の機能を未然防止、低減、または消失させる突然変異である。LOFは、遺伝子全体または遺伝子の一部の欠失、スプライス部位突然変異、小さな挿入および欠失によって引き起こされるフレームシフト突然変異、ナンセンス突然変異、必須アミノ酸を置き換えるミスセンス突然変異、および産物の正しい細胞局在化を未然防止する突然変異を包含するが、これらに限定されない、広範囲の突然変異型によって引き起こされることができる。これらが遺伝子機能に干渉する場合、ピルビン酸ギ酸リアーゼ遺伝子のプロモータまたは調節領域における突然変異もまたこの定義に包含される。ヌル突然変異は、遺伝子産物の機能を完全に消失させるLOF突然変異である。1つの対立遺伝子におけるヌル突然変異は、典型的には発現レベルを50%低減させるが、遺伝子産物の機能に深刻な影響を及ぼす可能性がある。機能発現はまた、タンパク質に新規活性を付与することによって、機能獲得型突然変異のために調節解除されることができ:タンパク質の正常な機能が調節解除され、機能的に活性の低いタンパク質が発現されることに留意されたい。逆に、機能発現は、例えば遺伝子重複を通じて、またはDNAメチル化の欠如によって増加されることができる。
【0036】
第2に、RNAレベルでは、例えば、効率的な翻訳を欠くことによって、例えば、mRNAの(例えば、UTRバリアントによる)不安定化のために、転写物から翻訳が生じる前に分解される。または、例えば突然変異が新規スプライシングバリアントを導入するために、効率的な転写が欠如している。
【0037】
酵素ピルビン酸ギ酸リアーゼ(本明細書では更にpflBと省略)は、酵素クラスEC2.3.1.54に属する。この酵素の代替名は、ギ酸C-アセチルトランスフェラーゼ、ギ酸アセチルトランスフェラーゼ、ピルビン酸ギ酸リアーゼである。酵素は、トランスフェラーゼのファミリー、具体的には、アミノアシル基以外の基を転移するアシルトランスフェラーゼに属する。この酵素クラスの系統名はアセチル-CoA:ギ酸C-アセチルトランスフェラーゼである。
【0038】
ピルビン酸ギ酸リアーゼは、Enterobacteriaceae属、および藻類のようないくつかの他の生物に見られるが、哺乳動物には見られない。ピルビン酸ギ酸リアーゼは、嫌気性グルコース代謝を調節するのに役立つ。ラジカル非レドックス化学を用いて、酵素は、ピルビン酸および補酵素-Aのギ酸およびアセチル-CoAへの可逆的変換を行う。反応は、以下のスキームに描写されるように起こる:
【化1】
【0039】
当業者は、GenBankにおける検索に基づいて、または配列番号1とのホモロジー検索に基づいて、ピルビン酸ギ酸リアーゼファミリーのメンバー、特に腸内細菌ピルビン酸ギ酸リアーゼ酵素のメンバーを容易に認識/同定することができる。配列番号1は、GenBankエントリSL1344_0910(また、CBW17006.1とも表記)に対応し、配列番号1は、Salmonella enterica subsp.enterica serovar Typhimurium str.SL1344に由来するアミノ酸配列である。
【0040】
【0041】
このようにして、第1の実施形態では、本発明は、腸内細菌ピルビン酸ギ酸リアーゼの機能発現の阻害剤を提供し、ここで、阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ギャップマー、shRNA、siRNA、CRISPR、TALEN、またはジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される。
【0042】
別の実施形態では、本発明は、配列番号1に描写される腸内細菌ピルビン酸ギ酸リアーゼ、および配列番号1と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の配列番号1の全長のアミノ酸同一性を有するEnterobacteriacea属のオルソロガス配列の機能発現の阻害剤を提供する。
【0043】
更に別の実施形態では、本発明は、医薬品として使用するための、本明細書で前に定義されるピルビン酸ギ酸リアーゼの機能発現の阻害剤を提供する。
【0044】
更に別の実施形態では、本発明は、過剰なアポトーシスが起こる腸疾患を処置するために使用するための、本明細書で前に定義されるピルビン酸ギ酸リアーゼの機能発現の阻害剤を提供する。
【0045】
特定の実施形態では、本出願はまた、過剰なアポトーシスが起こる腸疾患を処置するために使用するための、ピルビン酸放出および/またはピルビン酸産生の阻害剤を提供する。
【0046】
腸細胞において過剰なアポトーシスを有することが知られている腸疾患(または腸条件)は、例えば、大腸炎、炎症性腸疾患、化学療法誘導性粘膜炎、または細菌感染症、例えば、食物媒介感染症などである。
【0047】
阻害がDNAレベルで達成されるべきである場合、これは、標的遺伝子をノックアウトまたは破壊するために遺伝子治療法を用いて行われてもよい。本明細書で使用される場合、「ノックアウト」とは、遺伝子ノックダウンであり得るか、または、レトロウイルス遺伝子転移を包含するがこれに限定されない、当技術分野で公知の技術による突然変異、例えば、点突然変異、挿入、欠失、フレームシフト、もしくはミスセンス突然変異などによって遺伝子がノックアウトされ得る。遺伝子がノックアウトされ得る別の手法は、ジンクフィンガーヌクレアーゼの使用によるものである。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ジンクフィンガーDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合することによって生成される人工の制限酵素である。ジンクフィンガードメインは、ジンクフィンガーヌクレアーゼが複雑なゲノム内の特有の配列を標的化することを可能にする、所望のDNA配列を標的化するように遺伝子操作されることができる。内因性DNA修復機構を利用することにより、これらの試薬が使用されることで、Enterobacteriaceaのゲノムを正確に改変されることができる。遺伝子をノックアウトするために使用され得るゲノムカスタマイズのための他の技術は、メガヌクレアーゼおよびTALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN、Cellectis bioresearch)である。TALEN(登録商標)は、二本鎖切断(double strand break:DSB)を導入するエンドヌクレアーゼの触媒ドメインに融合された配列特異的認識のためのTALE DNA結合ドメインから構成される。TALEN(登録商標)のDNA結合ドメインは、大きな認識部位(実例としては、17bp)を高精度で標的化することが可能である。メガヌクレアーゼは、細菌、酵母、藻類、およびいくつかの植物オルガネラなどの多種多様な単一細胞生物に起源をもつ、自然に存在する「DNAハサミ」である配列特異的エンドヌクレアーゼである。メガヌクレアーゼは12~30塩基対の長い認識部位を有する。自然メガヌクレアーゼの認識部位は、ネイティブゲノムDNA配列(内因性遺伝子など)を標的とするために修飾されることができる。
【0048】
別の最近のゲノム編集技術はCRISPR/Casシステムであり、これは、RNAガイドゲノム工学を達成するために使用されることができる。CRISPR干渉は、原核生物細胞および真核生物細胞における遺伝子発現の配列特異的制御を可能にする、遺伝子技術である。CRISPR干渉は、細菌免疫システム由来のCRISPR(クラスター化された規則的な間隔のパリンドローム反復)経路に基づく。
【0049】
遺伝子不活性化、すなわち遺伝子の機能発現の阻害はまた、実例としては、アンチセンスRNAを発現するトランスジェニック生物の作製を通じて、またはアンチセンスRNAを対象へ投与することによって達成されてもよい。アンチセンス構築物は、例えば、発現プラスミドとして送達されることができ、これは、細胞内で転写された場合、細胞のピルビン酸ギ酸リアーゼの少なくとも特有の部分に相補的なRNAを産生する。
【0050】
遺伝子発現の阻害のためのより迅速な方法は、DNAからなるより短いアンチセンスオリゴマー、またはホスホロチオアート、2'-0-アルキルリボヌクレオチドキメラ、ロックド核酸(locked nucleic acid:LNA)、ペプチド核酸(peptide nucleic acid:PNA)、もしくはモルホリノなどの他の合成構造型の使用に基づく。RNAオリゴマー、PNA、およびモルホリノを除いて、他の全てのアンチセンスオリゴマーは、RNase H媒介標的切断の機序を介して真核生物細胞において作用する。PNAおよびモルホリノは、相補的なDNAおよびRNA標的に高い親和性および特異性で結合し、このようにしてRNA翻訳機構の単純な立体的遮断を通じて作用し、かつヌクレアーゼ攻撃に対して完全に抵抗性であるように見える。「アンチセンスオリゴマー」とは、少なくとも約10ヌクレオチド長のオリゴマーを含むアンチセンス分子または抗遺伝子剤を指す。実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、少なくとも15個、18個、20個、25個、30個、35個、40個、または50個のヌクレオチドを含む。アンチセンスアプローチは、ピルビン酸ギ酸リアーゼのポリヌクレオチド配列によってコードされるRNAに相補的な、オリゴヌクレオチド(DNAもしくはRNA、またはそれらの誘導体のいずれか)の設計に関与する。アンチセンスRNAは、細菌細胞へと導入されて、それに対する塩基対形成、および翻訳機構の物理的妨害によって相補的mRNAの翻訳が阻害されてもよい。それゆえに、この効果は化学量論的である。絶対的な相補性は、好ましいが、必要とされてはいない。本明細書で言及されるRNAの一部分に対する配列「相補性」とは、RNAとハイブリダイズすることが可能であり、安定な二重鎖を形成するのに充分な相補性を有する配列を意味し、このようにして、二本鎖アンチセンスポリヌクレオチド配列のケースでは、二重鎖DNAの一本鎖が試験されてもよく、または三重鎖形成がアッセイされてもよい。ハイブリダイズする能力は、相補性の程度およびアンチセンスポリヌクレオチド配列の長さの両方に依存する。概して、ハイブリダイズするポリヌクレオチド配列が長いほど、それが含有する可能性があるRNAとの塩基ミスマッチが多くなり、それでもなお安定な二重鎖(または、三重鎖の可能性がある)を形成する。当業者は、ハイブリダイズした複合体の融点を決定するための標準的な手順を使用することによって、許容可能な程度のミスマッチを確認することができる。アンチセンスオリゴマーは、少なくとも10ヌクレオチド長であるべきであり、かつ好ましくは15ヌクレオチド長~約50ヌクレオチド長の範囲にわたるオリゴマーである。ある実施形態では、オリゴマーは、少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも18ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも30ヌクレオチド、少なくとも35ヌクレオチド、少なくとも40ヌクレオチド、または少なくとも50ヌクレオチド長である。関連する方法は、アンチセンスRNAの代わりにリボザイムを使用する。リボザイムは、特異的RNA配列を標的とするように設計されることができる酵素様切断特性を有する触媒RNA分子である。リボザイムを用いた、時間的および組織特異的な遺伝子不活性化を包含する標的遺伝子不活性化の成功は、マウス、ゼブラフィッシュ、およびショウジョウバエにおいて報告されている。RNA干渉(RNA interference:RNAi)は、転写後遺伝子サイレンシングの一形態である。RNA干渉の現象は、Caenorhabditis elegansで最初に観察および記載され、ここでは、外因性二本鎖RNA(double-stranded RNA:dsRNA)が、標的RNAの急速な分解を誘導する機構を通じて相同配列を含有する遺伝子の活性を特異的かつ強力に破壊することが示された。いくつかの報告は、植物(Arabidopsis thaliana)、原生動物(Trypanosoma bruceii)、無脊椎動物(Drosophila melanogaster)、および脊椎動物種(Danio rerioおよびXenopus laevis)を包含する、遺伝子不活性化の空間的制御および/または時間的制御を実証する実験を包含する、他の生物における同じ触媒現象について記載している。配列特異的メッセンジャーRNA分解のメディエータは、より長いdsRNAからリボヌクレアーゼIII切断によって生成される低分子干渉RNA(small interfering RNA:siRNA)である。概して、siRNAの長さは、20~25ヌクレオチドである(Elbashir et al.(2001年)、Nature、411, 494 498)。siRNAは、典型的には、標準的なワトソン・クリック塩基対形成相互作用(本明細書中以下、「塩基対形成」)によって一緒にアニーリングされた、センスRNA鎖および相補的アンチセンスRNA鎖を含む。センス鎖は、標的mRNA内に含有される標的配列と同一の核酸配列を含む。本発明のsiRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、2つの相補的な一本鎖RNA分子を含むことができ、または2つの相補的な部分が塩基対形成され、かつ一本鎖「ヘアピン」区域(しばしば、shRNAと称される)によって共有結合している、単一分子を含むことができる。「単離された」という用語は、ヒトの介入によって自然状態から改変または除去されることを意味する。例えば、生きている動物中に自然に存在するsiRNAは「単離され」ていないが、合成siRNA、または共存材料のその自然状態から部分的または完全に分離されたsiRNAは、「単離され」ている。単離されたsiRNAは、実質的に精製された形態で存在することができるか、または非ネイティブ(non-native)的環境(例えば、siRNAが送達された細胞など)で存在することができる。
【0051】
本発明のsiRNAは、部分的に精製されたRNA、実質的に純粋なRNA、合成RNA、または組換え産生されたRNA、ならびに1以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換、および/または改変によって自然に存在するRNAとは異なる改変RNAを含み得る。そのような改変は、ヌクレアーゼ消化してsiRNA抵抗性とさせる修飾を包含する、siRNAの末端(両端)またはsiRNAの1以上の内部ヌクレオチドなどへの非ヌクレオチド材料の付加を包含し得る。
【0052】
本発明のsiRNAの一方または両方の鎖は、3'オーバーハングもまた含むことができる。「3'オーバーハング」は、RNA鎖の3'末端から延びる少なくとも1つの不対ヌクレオチドを指す。このようにして、一実施形態では、本発明のsiRNAは、1ヌクレオチド長~約6ヌクレオチド長(リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドを包含する)、好ましくは1ヌクレオチド長~約5ヌクレオチド長、より好ましくは1ヌクレオチド長~約4ヌクレオチド長、特に好ましくは約1ヌクレオチド長~約4ヌクレオチド長の、少なくとも1つの3'オーバーハングを含む。
【0053】
siRNA分子の両方の鎖が3'オーバーハングを含む実施形態では、オーバーハングの長さは、各鎖について同じまたは異なることができる。最も好ましい実施形態では、3'オーバーハングは、siRNAの両方の鎖に存在し、かつ2ヌクレオチド長である。本発明のsiRNAの安定性を増強するために、3'オーバーハングはまた、分解に対して安定化され得る。一実施形態では、オーバーハングは、プリンヌクレオチド、例えば、アデノシンまたはグアノシンヌクレオチドなどを包含することによって安定化される。
【0054】
あるいは、修飾類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば、3'オーバーハング中のウリジンヌクレオチドの2'デオキシチミジンによる置換は、許容され、かつRNAi分解の有効性に影響を及ぼさない。特に、2'デオキシチミジンに2'ヒドロキシルが非存在であることが、組織培養培地中の3'オーバーハングのヌクレアーゼ抵抗性を有意に増強する。
【0055】
本発明のsiRNAは、標的ピルビン酸ギ酸リアーゼRNA配列(「標的配列」)のいずれかの中のおよそ19~25個の連続するヌクレオチドのあらゆるストレッチを標的とされることができ、その例は、本出願に与えられている。siRNAの標的配列を選択する技術は当技術分野で周知である。このようにして、本siRNAのセンス鎖は、標的mRNA中の約19~約25ヌクレオチドのあらゆる連続ストレッチと同一のヌクレオチド配列を含む。
【0056】
本発明のsiRNAは、当業者に公知のいくつかの技術を用いて得られることができる。例えば、siRNAは、当技術分野で公知の方法を用いて化学合成または組換え産生されることができる。好ましくは、本発明のsiRNAは、適切に保護されたリボヌクレオシドホスホラミダイトおよび従来のDNA/RNA合成機を用いて化学的に合成される。siRNAは、2つの別個の相補的RNA分子として、または2つの相補的領域を有する単一のRNA分子として合成されることができる。合成RNA分子または合成試薬の市販供給業者は、Proligo(Hamburg、Germany)、Dharmacon Research(Lafayette、Colo.、USA)、Pierce Chemical(Perbio Scienceの一部門、Rockford,Ill.、USA)、Glen Research(Sterling,Va.、USA)、ChemGenes(Ashland,Mass.、USA)、およびCruachem(Glasgow、UK)を包含する。
【0057】
あるいは、siRNAはまた、あらゆる好適なプロモータを用いて、組換え環状または線状DNAプラスミドから発現させられることができる。本発明のsiRNAをプラスミドから発現させるための好適なプロモータは、例えば、U6またはH1 RNA pol IIIプロモータ配列およびサイトメガロウイルスプロモータを包含する。他の好適なプロモータの選択は当技術分野の範囲内である。本発明の組換えプラスミドはまた、特定の細胞内環境におけるsiRNAの発現のための誘導性プロモータまたは調節性プロモータを包含することができる。
【0058】
本明細書で使用される場合、siRNAの「有効量」とは、標的mRNAのRNAi媒介分解を引き起こすのに充分な量、または対象の腸内細菌細胞増殖を阻害するのに充分な量である。標的mRNAのRNAi媒介性分解は、上記のようにmRNAまたはタンパク質を単離および定量化するための標準的な技術を用いて、対象の細菌細胞中の標的mRNAまたはタンパク質のレベルを測定することによって検出されることができる。
【0059】
当業者は、対象のサイズおよび重量などの因子;疾患浸透の程度;対象の年齢、健康状態、および性別;投与経路;ならびに、投与が領域性または全身性かどうかを考慮することによって、所与の対象へと投与される本発明のsiRNAの有効量を容易に決定することができる。概して、本発明のsiRNAの有効量は、約1ナノモル(nM)~約100nM、好ましくは約2nM~約50nM、より好ましくは約2.5nM~約10nMの細胞内濃度を含む。より多いまたはより少ない量のsiRNAが投与されることができるものと考えられる。
【0060】
最近、ゼブラフィッシュおよびカエルにおけるモルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチドは、RNase Hの低ストリンジェンシー要件によって引き起こされる他のmRNA分子の非標的特異的切断に起因する多数の非特異的効果を包含する、RNase H適格性アンチセンスオリゴヌクレオチドの限界を克服することが示されている。それゆえに、モルホリノオリゴマーは、重要な新規クラスのアンチセンス分子を表す。本発明のオリゴマーは、当技術分野で公知の標準的な方法によって合成されてもよい。例として、ホスホロチオアートオリゴマーは、Stein et al.(1988)(Nucleic Acids Res.16, 3209 3021)の方法によって合成されてもよく、メチルホスホナートオリゴマーは、制御細孔ガラスポリマー支持体(Sarin et al.(1988) Proc.Natl.Acad.Sci.USA., 85, 7448-7451)を使用することによって調製されることができる。モルホリノオリゴマーは、SummertonおよびWellerの米国特許第5,217,866号および第5,185,444号の方法によって合成されてもよい。
【0061】
アンチセンスRNA戦略の別の特別な形態はギャップマーである。ギャップマーとは、RNase H切断を誘導するのに充分な長さのデオキシヌクレオチドモノマーの中心ブロックを含有する、キメラアンチセンスオリゴヌクレオチドである。ギャップマーの中心ブロックは、2'-O修飾リボヌクレオチドのブロック、またはヌクレアーゼ分解から内部ブロックを保護する架橋核酸(bridged nucleic acid:BNA)などの他の人工的に修飾されたリボヌクレオチドモノマーに隣接する。ギャップマーは、ホスホロチオアート連結の数を低減させながら、標的RNAのRNase-H媒介性切断を得るために使用されてきた。ホスホロチオアートは、未修飾DNAと比較してヌクレアーゼに対する抵抗性の増加を保有している。しかしながら、ホスホロチオアートはいくつかの欠点を有する。これらは、相補的核酸に対する低い結合能力、およびその適用を制限する毒性副作用を引き起こすタンパク質に対する非特異的結合を包含する。非特異的結合がオフターゲット効果を一緒に引き起こす毒性副作用の発生は、毒性副作用を呈さずにin vivoで効率的かつ特異的なアンチセンス活性を提供する、修飾オリゴヌクレオチドの開発のための新規人工核酸の設計を刺激した。RNase Hを動員することによって、ギャップマーは標的オリゴヌクレオチド鎖を選択的に切断する。この鎖の切断はアンチセンス効果を開始させる。このアプローチは、遺伝子機能の阻害における強力な方法であることを証明しており、かつアンチセンス治療薬の一般的なアプローチとして浮上している。ギャップマーは商業的に提供され、例えば、ExiqonによるLNA longRNA GapmeR、またはIsis pharmaceuticalsによるMOEギャップマーが提供される。MOEギャップマーまたは「2'MOEギャップマー」は、15~30ヌクレオチドのアンチセンスホスホロチオアートオリゴヌクレオチドであり、ここで、骨格連結の全てが非架橋酸素(ホスホロチオアート)に硫黄を付加することによって修飾され、少なくとも10個の連続するヌクレオチドのストレッチが修飾されないままであり(デオキシ糖)、残りのヌクレオチドは2'位(MOE)にO'-メチルO'-エチル置換を含有する。
【0062】
更なる態様によれば、ピルビン酸ギ酸リアーゼの機能発現の阻害剤は、医薬品として使用するために提供される。
【0063】
阻害剤の性質は、それがピルビン酸ギ酸リアーゼ遺伝子の機能発現を阻害する限り、本発明にとって不可欠ではない。具体的な実施形態によれば、阻害剤は、阻害性RNA技術(ギャップマー、shRNA、siRNAなど)、CRISPR、TALEN、もしくはジンクフィンガーヌクレアーゼから選択されるか、または遺伝子阻害剤である。
【0064】
Pannexin-1膜阻害
調節された哺乳動物細胞死は、組織のホメオスタシスおよび多くの病態的状態に大きな影響を及ぼす。細胞死と、根底にある微生物構成成分を伴う胃腸管病態との間には、長く認識されているが決定的に定義された関係が存在するものの、細菌増殖に対する瀕死哺乳動物細胞の直接的な影響は不明である。ここで、in vitroおよびin vivoアプローチの組合せを用いて、本発明者らは、ペイシェント由来の臨床単離物を包含するいくつかのEnterobacteriaceaeが、瀕死の腸上皮細胞から放出される可溶性因子を利用する効率的な増殖戦略を有するという概念を進展させる。カスパーゼ3/7依存性アポトーシス後に放出された哺乳動物栄養素は、3つのEnterobacteriaceaeファミリーメンバーの増殖をブーストする。アポトーシス上清中の細菌増殖促進活性は、初代マウス結腸組織、マウスおよびヒト細胞株、複数のアポトーシストリガーを用いて、ならびに従来のマウスおよびin vivoで無菌マウスにおいて観察される。本出願は、哺乳動物膜Pannexin-1チャネルの阻害が、腸内のEnterobacteriaceaの過剰増殖を阻害するために使用されることができるということを示す最初のものである。そのような過剰増殖(または同等の用語であるディスバイオシス)は、腸細胞のアポトーシスの条件下において起こり、そのような条件は、概して、炎症性腸疾患(IBD)、大腸炎、食物媒介感染症、および化学療法誘導性粘膜炎として知られている。
【0065】
Pannexinファミリーは、Pannexin-1、Pannexin-2、およびPannexin-3からなる。Pannexinの組織分布は、偏在性からパラログに依存する非常に限定された区域にまでの範囲にわたり、かつその分布は、多くの場合、いくつかの所与の組織内で細胞型特異的であり、かつ/または発生的に調節される。Pannexin-1は、脳、心臓、肺、肝臓、小腸、膵臓、脾臓、結腸、骨格筋、皮膚、精巣、卵巣、胎盤、胸腺、前立腺、血液内皮、および赤血球などのヒト組織において遍在的に発現される。Pannexin-1はまた、小脳、皮質、水晶体、網膜、錐体細胞、新皮質および海馬の介在ニューロン、黒質、扁桃体、嗅球、ニューロン、ならびにグリア細胞を包含する、中枢神経システムにおいて発現されることが見出されている。Pannexin-2の発現は、小脳、大脳皮質、後頭極、前頭葉、髄質、側頭葉、および被殻を包含する、中枢神経システムにより制限される。しかしながら、Pannexin-2の低発現はまた、甲状腺、腎臓、および肝臓の組織でもまた見られる。Pannexin-2タンパク質発現は、ラット蝸牛システムの血管条の基底細胞およびらせん神経節ニューロンにおいて更に同定される。Pannexin-3は、骨芽細胞、滑膜線維芽細胞、マウスの足の全関節、および内耳からの軟骨において発現されることが見出されている。Pannexin-3はまた、多くの培養細胞株において発現される。
【0066】
膜Pannexin-1チャネルを阻害する作用機序として有することが知られているいくつかの医薬品が市販されている。
【0067】
とりわけ商品名Aldactoneで販売されているスピロノラクトンは、心不全、肝臓の瘢痕化、または腎臓疾患に起因する体液の蓄積を処置するために主に使用される薬物療法である。スピロノラクトンはまた、高血圧、補充によって改善されない低血中カリウム、少年の早期思春期、女性の座瘡および過剰な発毛の処置において、ならびにトランスジェンダー女性のトランスジェンダーホルモン治療法の一部として使用される。スピロノラクトンは、通常、経口的に摂取される。興味深いことに、スピロノラクトンはまた、膜Pannexin-Iチャネル阻害剤としても記載されている(Good ME et al(2018年)「Circ.Res.」、第122巻(第4号):第606~615頁を参照されたい)。
【0068】
テノホビルジソプロキシル(テノホビルのプロドラッグ)は、とりわけ商品名Vireadで販売されており、慢性B型肝炎を処置し、かつHIV/AIDSを未然防止および処置するために使用される薬物療法である。薬物は特許されておらず、かつ経口で生物学的に利用可能である。テノホビルの別のプロドラッグは、テノホビルアラフェノミドとして知られている。本発明において、テノホビルは、2つの異なるプロドラッグを指すために使用される。テノホビルは、膜Pannexin-1チャネルを阻害する薬剤として文献に記載されている(Feig JL et al(2017年)、「PLoS One」第12巻(第11号):第e0188135を参照されたい。
【0069】
プロベネシドはまた、商品名Probalanでも販売されており、尿中の尿酸排泄を増加させる薬物療法である。プロベネシドは主に痛風および高尿酸血症の処置に使用される。プロベネシドはまた、膜Pannexin-1チャネル阻害剤として作用することも記載されている(Silverman W et al(2008年)、「Am J Physiol Cell Physiol.」、第295巻(第3号):第C761-7を参照されたい。
【0070】
トロバフロキサシン(商品名であるTrovanおよびTurvelとして販売)は、DNAジャイレースおよびトポイソメラーゼIVの活性をブロックすることによって様々な細菌におけるスーパーコイル状DNAの巻き戻しを阻害する、広域スペクトル抗生物質である。肝毒性のリスクに起因して市場から撤退した。これは、フルオロキノロンよりも良好なグラム陽性細菌被覆率および少ないグラム陰性細菌被覆率を有していた。トロバフロキサシンは、膜Pannexin-1チャネル阻害剤として記載されている(Poon IKH et al(2014年)、「Nature」、第507巻(第7492号):第329~34頁を参照されたい)。
【0071】
既知のPannexin-1チャネル阻害剤は、Enterobacteriaceaの過剰増殖を矯正する目的で、過剰なアポトーシスを伴う腸疾患の処置に再利用されることができる。
【0072】
一実施形態では、本発明は、過剰なアポトーシスが起こる腸疾患を処置するために使用するための膜チャネルPannexin-Iの阻害剤を提供する。
【0073】
特定の実施形態では、腸疾患は、例えば、大腸炎、炎症性腸疾患、化学療法誘導性粘膜炎、または細菌感染症である。
【0074】
特定の実施形態では、細菌感染症は、食物媒介感染症に起因する。
【0075】
別の特定の実施形態では、本発明は、過剰なアポトーシスが起こる腸疾患の処置のための、スピロノラクトン、テノホビル、プロベネシド、またはトロバフロキサシンを提供する。
【0076】
Pannexin-1膜チャネル阻害剤の用量および投与:
本明細書に引用される疾患の治療に有用な化合物を評定するために公知の標準的な実験室技術、標準的な毒性試験、および哺乳動物において上記で同定された状態の処置を決定するための標準的な薬理学的アッセイ、ならびにこれらの結果とこれらの状態を処置するために使用される既知の医薬品の結果との比較に基づいて、この発明の化合物の有効投与量は、本明細書に引用される適応症の治療のために容易に決定されることができる。処置において投与される活性成分の量は、採用される特定の化合物および投与量単位、投与方式、治療期間、処置されるペイシェントの年齢および性別、ならびに処置される状態の性質および程度などの考慮事項に従って広く変化することができる。
【0077】
投与される活性成分の総量は、概して、約0.001mg/kg~約200mg/kg体重/日、好ましくは約0.01mg/kg~約50mg/kg体重/日の範囲となる。臨床的に有用な投与スケジュールは、1日に1回~3回の投与から4週間に1回の投与までの範囲となる。加えて、ペイシェントが一定期間薬物を投与されない「休薬期間」は、薬理学的効果と許容性との間の全体的なバランスに有益である可能性がある。単位投与量は、約0.5mg~約1500mgの活性成分を含有する可能性があり、かつ1日に1回以上、または1日に1回未満投与されることができる。静脈内、筋肉内、皮下、および非経口注射を包含する注射による投与、ならびに注入技術の使用のための平均1日投与量は、好ましくは、0.01~200mg/kgの総体重となる。平均1日直腸投与レジメンは、好ましくは、0.01~200mg/kgの総体重となる。平均1日膣投与レジメンは、好ましくは、0.01~200mg/kgの総体重となる。平均1日局所投与レジメンは、好ましくは、1日に1回~4回投与される0.1~200mgとなる。経皮濃度は、好ましくは、0.01~200mg/kgの1日用量を維持するために必要とされるものとなる。平均1日吸入投与レジメンは、好ましくは、総体重の0.01~100mg/kgとなる。平均1日経口投与レジメンは、好ましくは、0.01~100mg/kgの総体重となる。平均1日髄腔内投与レジメンは、好ましくは、0.01~100mg/kgの総体重となる。
【0078】
各ペイシェントに対する特定の初期および継続的な投与レジメンが、担当診断医によって決定される状態の性質および重症度、採用される特定の化合物の活性、ペイシェントの年齢および全身状態、投与時間、投与経路、薬物の排泄速度、薬物の組合せなどに従って変化することは、当業者にとって明らかである。本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルもしくは組成物の所望の処置方式および投与回数は、従来の処置試験を用いて当業者によって確認されることができる。
【0079】
要するに、本発明は、以下の(1)~(6)のいずれか1つおよび全てに記載の主題を提供する:
(1)過剰なアポトーシスが起こる腸疾患を処置するために使用するためのPannexin-I膜チャネルの阻害剤。
(2)腸疾患が、大腸炎、炎症性腸疾患、化学療法誘導性粘膜炎、または細菌感染症に関連する、(1)に記載の使用のための阻害剤。
(3)細菌感染症が、腸内細菌感染症である、(2)に記載の使用のための阻害剤。
(4)腸内細菌感染症が、食物媒介感染症である、(3)に記載の使用のための阻害剤。
(5)食物媒介感染症が、Klebsiella種、Salmonella種、またはEscherichia種に起因する、(4)に記載の使用のための阻害剤。
(6)Pannexin-I膜チャネル阻害剤が、スピロノラクトン、テノホビル、プロベネシド、およびトロバフロキサシンから選択される、(1)~(5)のいずれか1つに記載の使用のための阻害剤。
【0080】
特定の実施形態、特定の構成、ならびに材料および/または分子が、本発明による細胞および方法について本明細書で論じられているが、この発明の範囲および精神から逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更または修正が行われる可能性があることを理解されたい。以下の例は、特定の実施形態をよりよく説明するために提供されており、これらは本出願を限定するものと見なされるべきではない。本出願は特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0081】
例
例1.初代結腸細胞のカスパーゼ依存性アポトーシスはSalmonella増殖を促進する
哺乳動物細胞から放出された死依存性可溶性因子が細菌増殖を増大することができるという仮説の最初の試験として、本発明者らは、初代結腸細胞培養外植片を確立し、かつスタウロスポリン処置によってアポトーシス細胞死を誘導した(
図1Aの概略図を参照されたい)。結腸外植片は、絨毛および下にある粘膜固有層を包含する一般的な組織構造を維持していた(データ示さず)。TUNEL染色(
図1B)、切断型カスパーゼ3染色(
図1C)、およびカスパーゼ活性化アッセイ(
図1D)によって初代結腸細胞死を検証した後、本発明者らは、アポトーシス上清のSalmonella増殖誘導の能力を試験した。生(ビヒクル処置)結腸細胞上清と比較して、スタウロスポリン処置アポトーシス上清は、約10倍大きいSalmonella増殖を誘導した(
図1E、左)。特に、新鮮な培地対照と比較して、瀕死の初代結腸細胞上清に見られるSalmonella増殖の増加は、生細胞が単に増殖培地から栄養素を消費するのではなく、死細胞が細菌増殖を増強する培地へと因子を能動的に「分泌」することを示唆している。生きている上清の対照レベルまでSalmonella増殖をパンカスパーゼ阻害剤QVDが制限したので、瀕死の結腸細胞上清におけるSalmonella増殖の増強は、カスパーゼ活性化に依存していた(
図1E、右)。初代結腸外植片システムは、CD45
+骨髄細胞を包含する非上皮細胞を含有した;しかし、総CD45
+画分およびCD45
+TUNEL
+集団は、スタウロスポリン処置後に増加しなかった(データ示さず)。カスパーゼ依存性上皮細胞アポトーシスをより直接的に試験するために、本発明者らは、Vil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウスからの結腸外植片を利用し、ここで、カスパーゼ3およびカスパーゼ7は両方とも、絨毛-Cre
21を介して上皮細胞区画において特異的に欠失されている。対照C57BL/6マウス(
図1E)とは対照的に、スタウロスポリン処置Vil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/fl結腸細胞は、生結腸細胞対照よりもSalmonella増殖を増強することができなかった(
図1F)。本発明者らは、結腸外植片を細胞傷害性化学療法ドキソルビシン(ドキソ)で処置した場合に同様の効果を観察した。ドキソルビシン処置はカスパーゼ3活性化を誘導し(
図1G)、これらの上清はSalmonella成長を直接増強した(
図1H)。Enterobacteriaceaeに対するドキソルビシンの直接的な抗菌作用にもかかわらず細菌成長が起こるので、これは特に顕著である(
図1I)。ドキソルビシン誘導Salmonella成長は、腸管上皮細胞内の実行型カスパーゼ3および実行型カスパーゼ7に依存しており(
図1J左)、これは、アポトーシスの必要性を示唆した。最近の研究は、異なる調節された細胞死経路の相互接続性を強調している
22、23ので、本発明者らはまた、ネクロトーシス機構またはパイロトーシス機構の特定の構成成分を欠くマウスを試験した。アポトーシス欠損結腸細胞とは対照的に、RIPK1
キナーゼデッドおよびMLKL
KOを包含する、ネクロトーシス細胞死を欠損したマウスのドキソルビシン処置結腸外植片は、同腹仔対照と比較してSalmonella増殖を制限しなかった(
図1J、中心);同様に、パイロトーシス実行型ガスダーミンDおよびカスパーゼ1/11を欠くマウスからの結腸細胞のドキソルビシン処置もまた、Salmonella増殖の増強を制限しなかった(
図1J、右)。これらの知見は、これらの初代結腸外植片上清におけるSalmonella増殖の促進におけるカスパーゼ依存性腸管上皮細胞アポトーシスの必要性および特異性を実証する。
【0082】
例2.調節された哺乳動物細胞死はEnterobacteriaceae増殖を増強する
細菌増殖の増強を促進する際の腸管上皮細胞アポトーシスの詳細を更に調べるために、本発明者らは上皮細胞株に注目した。本発明者らは、マウスまたはヒト結腸上皮細胞株において異なるアポトーシス刺激を用いてアポトーシス細胞死を誘導し、無細胞上清を収集し、それらを細菌増殖研究で試験した(
図2Aの概略図を参照されたい)。最初に、本発明者らは、カスパーゼ依存性アポトーシス細胞死の厳密に制御されたin vitroシステムであるドキシサイクリン誘導性FADD二量体化構築物(CT26:FADD)
24で形質転換されているマウス結腸CT26細胞を使用し、かつCT26::FADD細胞の細胞死の増加を確認した(
図2B、左)。アポトーシスCT26:FADD細胞からの上清は、未処置の生細胞対照または新鮮培地からの上清と比較して、Salmonella増殖の有意な増加を促進した(
図2C)。CT26:FADD細胞をパンカスパーゼ阻害剤QVDで処置すると、細胞死(
図2B、左)およびアポトーシスカスパーゼ活性化が低減し(データ示さず)、かつ培地および生細胞上清対照に戻るSalmonella増殖が低減したので、Salmonella増殖の増加はカスパーゼ活性を必要とした(
図2C)。アポトーシス誘導の2つの追加的な方式について、本発明者らは、UV照射またはスタウロスポリンのいずれかで野生型CT26細胞においてアポトーシスを誘導し(
図2B、中央および右)、これらのアポトーシス細胞の上清は、対照処置と比較してSalmonella増殖を強く誘導した(
図2D)。瀕死CT26細胞上清はまた、Escherichia coli
25(E.coli)のヒト腸管内共生株(大腸菌)および腸管内共生であるが全身性病原体Klebsiella pneumoniae
26(Klebsiella)を包含する、Enterobacteriaceaeファミリーの追加的なメンバーの増殖も増強したので、細菌増殖を促進するアポトーシス哺乳動物細胞上清の能力は、Salmonellaに限定されなかった(
図2D)。重要なことに、E.coliのいくつかの臨床単離株は、アポトーシス上清において同様の増強された増殖を表示した。クローン病(LF82
27)、結腸直腸がん(CCR20
28)、および尿路感染症(UTI189
29)のペイシェントから得られたE.coli単離株において、増殖の増強が観察された(
図2E)。複数の分析により、増強された細菌増殖が、アポトーシスCT26細胞の上清中に放出された細胞死構成成分の直接的な影響であったことが確立され、これは以下を包含した:(i)Enterobacteriaceaeファミリーのいくつかのメンバーについて経時的に細菌増殖の増加が見られた(
図3A、
図3D、
図3E);(ii)細菌増殖は哺乳動物培養培地選択または死トリガー自体によって影響されなかった(
図3B);(iii)カスパーゼ3活性化剤Pac-1で処置した細胞からの上清で細菌増殖の増強が観察された(
図3C)、および(iv)哺乳動物カスパーゼ阻害剤の添加によって増殖効果が抑制された(
図2C;
図3A、
図3F)。UVおよびスタウロスポリン誘導細胞死の両方に応答して、ヒト結腸上皮細胞株HCT116を用いて同様の結果が得られた(
図3G~
図3H)。CT26およびHCT116などの結腸細胞株は、膜透過性についてそれらの細胞死プロファイルにおいて不均一性を表示するが(データ示さず)、一方で、不死化ヒトTリンパ球細胞株であるJurkat細胞は、UV照射に応答して二次的壊死を伴わずにより均一なアポトーシス細胞死を表示する(データ示さず)。アポトーシスJurkat上清はSalmonella増殖の増加を刺激し(
図3I)、これは、細菌増殖の促進に関与した因子が異なる哺乳動物細胞型にわたって保存されており、かつ膜透過性または二次壊死にあまり依存しないことを示唆した。驚くべきことに、アポトーシストリガーを伴わない反復凍結融解サイクルによる強制壊死は、CT26細胞を完全に溶解したが、Salmonella増殖を増強せず(
図3J)、これは、このプロセスにおける調節されたアポトーシスの必要性を表記している。次いで、本発明者らは、アポトーシス細胞上清内のどの型の因子が細菌増殖を促進するかに疑問を呈し、数多くのアプローチは、タンパク質が役割を果たさないことが示唆された(
図4A)。第1に、以前の知見と一致して
16、アポトーシス細胞からの上清は、未処置の生細胞上清と同様のレベルの総タンパク質を含有していた(
図4B)。第2に、細胞外小胞ならびに上清タンパク質の大部分を除去するための厳密な順次濾過戦略は、アポトーシス上清中のサイズが3kDa未満の可溶性因子がSalmonella増殖を有意に増強するのに充分であることを実証した(
図4C)。第3に、プロテイナーゼK処置とカップリングされたこの濾過戦略は、同様の結果をもたらした(
図4D)。最後に、Salmonella増殖を増強する放出された哺乳動物因子は、温度変性に対して非感受性であり(
図4E)、血清とは無関係であり(
図4F)、かつ培養培地中のフェノールレッドとは無関係であった(
図4G)。まとめると、これらのデータは、アポトーシス結腸細胞から放出されたサイズが3kDa未満の小分子または代謝産物が、病原性(SalmonellaおよびE.coli LF82/CCR20/UTI189)、共生(E.coli HS)、および日和見性(Klebsiella)Enterobacteriaceaeの増殖を増大させる栄養素として作用することを示唆した;本発明者らは、このプロセスを「
death-
induced
nutrient
release」(DINNR)と称する。
【0083】
例3.DINNRはSalmonellaにおいて特異的な転写応答を誘導する
哺乳動物のアポトーシス栄養素が細菌増殖をどのように促進する可能性があるかに対処するために、本発明者らは、本発明者らのモデル生物として病原性Salmonellaに注目することを選択した。本発明者らは、アポトーシス上清、新鮮培地、または生細胞上清対照において対数増殖期中期(増殖表現型の直前)まで増殖させたSalmonellaのRNAseq分析を行った(
図5Aに概略的に示す)。生物学的に有意な標的遺伝子を同定する可能性を最大にするために、本発明者らは、アポトーシスの2つの異なるトリガー(それぞれ、FADDおよびUV)である2つの異なる哺乳動物細胞株(CT26およびHCT116)を使用し、かつ本発明者らは、1.0超の絶対値を有するlog
2倍変化を有する差次的に調節されたSalmonella遺伝子に分析を集中させた。本発明者らは、CT26:FADDシステムを用いて126個の差次的に調節されるSalmonella遺伝子、およびHCT116システムにおいて288個の遺伝子を同定した(
図5B)。
【0084】
CT26およびHCT116データセットを比較すると、2つのシステム間で同様に調節された8つのSalmonella遺伝子にリストが絞り込まれた(
図5B)。これらの8つのSalmonella遺伝子の中には、瀕死の哺乳動物細胞上清における細菌増殖の増強に直接寄与する見込みの高い2つの標的遺伝子が存在した。第1のcadB(SL1344_2520)は、共転写されたリジンデカルボキシラーゼCadA
30と共に細菌のサイトゾルpH調節に関与する、リジン/カダベリン対向輸送体をコードする。第2のpflB(SL1344_0910)は、ピルビン酸
31からアセチル-CoAおよびギ酸を産生するピルビン酸ギ酸リアーゼである。以下の理論的根拠のために、本発明者らは、残りの6つの標的遺伝子ではなくcadBおよびpflBに焦点を合わせることを選択した:3つは未知の機能の遺伝子として注釈が付けられ、3つの追加的な遺伝子(fljA、adiY、soxS)は、この表現型に(複数の他の遺伝子の調節を介して)間接的に影響を及ぼすことができた転写調節因子として注釈が付けられている。FADD、スタウロスポリン、およびUVトリガーを用いたCT26細胞およびHCT116細胞の両方に由来するアポトーシス上清は、SalmonellaにおけるcadB(
図5D)およびpflB(
図5E)の発現を有意に増加させた(qPCRによる)。cadBおよびpflB遺伝子のアップレギュレーションの機能的関連性を試験するために、本発明者らは、Salmonellaの欠失株を構築した。cadBAオペロンの欠失は、アポトーシス上清の増殖に影響を及ぼさなかった(
図5C)。対照的に、ΔpflB株の増殖は、in vitroでの好気性増殖条件(
図5F)および嫌気性増殖条件(
図5G)の両方の下において、アポトーシス上清において部分的であるが有意に低減された。これらの知見は、PflBがアポトーシス上清中のSalmonella増殖に直接寄与するが、単独ではその原因ではないことを示唆している。
【0085】
PflBはピルビン酸ギ酸リアーゼであるので、本発明者らは次に、アポトーシス細胞がPflB機能に関連した代謝産物のいずれかを放出したかどうかを試験した。スタウロスポリンまたはUV照射のいずれかでトリガーされたCT26細胞は、生細胞上清または新鮮培地対照と比較して有意に高いレベルのピルビン酸を放出した(
図5H)。重要なことに、調節されない壊死を介して死滅するように誘導された細胞は、有意な量のピルビン酸塩を放出せず(
図5H)、これは、細胞死中のピルビン酸塩の合成および放出が調節されたプロセスである可能性が高いことを示唆した。ピルビン酸とは対照的に、生細胞、アポトーシス細胞、または壊死細胞の上清内のギ酸塩濃度に差はなかった(
図5I)。哺乳動物産生ピルビン酸塩がSalmonella増殖に必要であるかどうかを試験するために、本発明者らは、CT26細胞をピルビン酸キナーゼM2(PKM2)阻害剤シコニンで処置した
32。アポトーシス細胞をシコニンで処置すると、細胞死を阻害することなく(
図5K)、分泌されたピルビン酸塩の量が有意に低減したことを確認した後(
図5J)、本発明者らは、これらの上清をSalmonella増殖の増強について試験した。驚くべきことに、哺乳動物細胞をシコニンで処置すると、野生型Salmonellaの増殖が有意に低減した(
図5L)。更に、PflB依存性Salmonella増殖は、シコニンで処置した細胞からのアポトーシス上清で消失し(
図5N)、これは、外因性ピルビン酸塩の添加回収によって救済することができた(
図5M)。まとめると、これらの結果は、SalmonellaにおけるPflB依存性増殖の直接的な寄与体として、アポトーシス中の哺乳動物産生ピルビン酸塩を同定する。
【0086】
最近、一群の6つの代謝産物(イノシン一リン酸(IMP)、グアノシン一リン酸(GMP)、スペルミジン、ジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)、UDPグルコース、およびフルクトース1,6-ビスリン酸)が、種々のアポトーシストリガーに応答して、(細胞型全体にわたって)瀕死の哺乳動物細胞から放出されることが示された
19。その放出がPannexin-1(Panx1)膜チャネルを必要とするこれらの6つの代謝産物は、哺乳動物の細胞間コミュニケーションに大きな影響を及ぼす
19。次に、本発明者らは、Enterobacteriaceaeが細菌増殖のためにこれらの代謝産物を利用できるかどうかに疑問を呈した。この仮説の最初の試験として、本発明者らは、Panx1カスパーゼ切断部位に突然変異を有するPanx1チャネルのドミナントネガティブ形態(「Panx1-DN」)を発現するJurkat細胞を利用した
33。これらの細胞は、対照Jurkat細胞に匹敵するアポトーシスを受けるが、Panx1チャネルを開くことができない(TOPRO-3色素取り込みによって測定)
19(
図6A、左)。興味深いことに、Panx1チャネルを開くことができないPanx1-DN発現細胞からのアポトーシス上清中の野生型Salmonellaの増殖は、対照細胞からのアポトーシス上清と比較して有意に鈍い(
図6A、右)。追加的、PflBによって駆動される増殖は、アポトーシスPanx1-DN上清において特異的に消失し(
図6A)、これは、Panx1依存性代謝産物とSalmonella PflBとの関連性を示唆している。原理証明実験において、本発明者らは、細菌増殖に対する6つのPanx1依存性代謝産物(MeMix
6)の混合物を試験した。MeMix
6は、アポトーシス上清中に検出された濃度で培地に添加した場合、Salmonella増殖を強力に促進するのに充分であった
19(
図6B)。個々の代謝産物の必要性を試験するその後の実験では、2つの代謝産物-UDP-グルコース(UDPg)およびフルクトース1,6-ビスホスファート(FBP)-の特定の組合せは、MeMix
6と同様のレベルで堅牢な成長を促進するのに充分であった(
図6B、左)。Panx1-DN上清と同様に、pflB突然変異体の増殖は、精製代謝産物の存在下において有意に鈍化した(
図6B)。これらのアッセイにおけるPflBの必要性は、ΔpflB株においてpflBをトランスで再発現させることによって更に確認された(
図6D)。最後に、E.coliの病原性株および共生株は、Panx1依存性代謝産物の存在下において同様の増殖増強を表示し(
図6E)、Enterobacteriaceaeのメンバーにわたるこれらの代謝産物の保存された利用を強調した。本発明者らはまた、アポトーシス上皮細胞によるフルクトース1,6-ビスホスファートの放出を検出することができた(
図6F)。まとめると、これらのデータは、アポトーシスの3つのトリガー(FADD、UV、スタウロスポリン)および2つの結腸細胞株システム(CT26、HCT116)にわたって保存されている哺乳動物アポトーシス上清によって誘導されるコアSalmonella転写プログラムを同定し、かつ細菌増殖を促進するための重要な構成成分としてPflBを明らかにする。機構的には、Salmonellaは哺乳動物由来のピルビン酸を利用し、かつ増殖のために哺乳動物Panx1依存性アポトーシス代謝産物を活用することができ、これは、Enterobacteriaceaeの複数の種で更に観察される。
【0087】
例4.死応答遺伝子はin vivoでSalmonellaのコロニー形成を促進する
食物媒介Salmonella感染モデルにおけるcadBAオペロンおよびpflBの関連性を試験するために、本発明者らは、ストレプトマイシン前処置マウスモデルを利用した
34。これらのマウスは、Salmonella感染ペイシェントおよび他の実験動物モデルにおける臨床症状のいくつかの態様を再現する、腸炎および下痢性疾患を表示する
34。感染中、Salmonella負荷は、組織特異的な様式で常在微生物叢
34、結腸細胞依存性因子
35、および腸管炎症
36によって大きく影響される。Salmonellaは、このモデルにおける炎症および罹患の主な原因であるSalmonella病原性アイランド(SPI)1およびSPI-2内にコードされる、2つの3型分泌システム(T3SS)を利用する
34。本発明者らのRNAseqで同定されたSalmonella遺伝子の重要性を試験するために、本発明者らは、等しい数の野生型株およびSalmonellaの突然変異株をマウスに感染させ、次いで、各Salmonella株の相対比(すなわち、コロニー形成適合性)を比較する、競合感染を採用した(
図7Aに概略的に示す)。ΔcadBA株は、腸管内で野生型Salmonellaよりも有意に適合性が低く、ΔcadBA株と比較して回腸、盲腸、および結腸で野生型Salmonella株の中央値5倍濃縮されていた(
図7B)(in vivoのSalmonellaでのCadBAシステムに関する以前の研究と一致する
37)。管腔ピルビン酸塩の濃度を測定した場合、本発明者らは、非感染対照と比較して感染マウスの有意な増加に注目し(
図7C)、PflBの潜在的な必要性を示唆した。実際、ΔpflB株の適合性欠損は、野生型Salmonellaと比較した場合に顕著であり(
図7D)、結腸では800倍の差異があった。in vitro状況と比較してΔpflB株で観察されたより大きなin vivo表現型は、in vitroで定義された培養培地と比べて、複雑なin vivo環境における、pflB活性化シグナルの増加またはこの経路へのより強い依存に関連することができた。Salmonellaは、PflBに依存するのではなく、in vivoで微生物叢産生産物を利用する可能性が示唆されている
38。これを試験するために、本発明者らは、SPFマウスおよび無菌マウスにおいて野生型対ΔpflB競合的感染を繰り返したが、無菌マウスは感染に対して過敏であり、実験を停止しなければならなかったので、2日目に動物を分析した。感染のこの初期段階でさえ、野生型Salmonellaは、SPFマウスおよび無菌マウスの両方において、全ての組織を通してΔpflB株よりも有意に適合していた(
図7E~
図7F)。重要なことに、野生型Salmonellaの濃縮度中央値のレベルは、SPFマウスおよび無菌マウスの回腸において類似していたが;一方で、野生型Salmonellaの濃縮中央値は、SPFマウスと比較して、無菌マウスの大腸で減少された。このようにして、これらのデータは、PflB依存性Salmonellaのコロニー形成が微生物叢依存性および独立した因子によって影響されることを暗示する。あるいは、無菌マウス内の微生物競合体の欠如は、感染中にSalmonellaによって利用される代謝ニッチを改変させる可能性がある。この考えは、pflB突然変異体が、単一株感染中に野生型株と等しいレベルでコロニー形成するという本発明者らの知見によって支持され(
図7G)、これは、この状況ではPflBが腸管ニッチ内の細菌競合および適合性にとって最も重要であることを示唆している。更に、これらのデータは、感染中において、宿主由来構成成分、特に回腸内の成分への依存性を示唆する。次に、本発明者らは、Salmonella病毒性がPflB駆動の適合性に影響を及ぼすかどうかを評価した。これを行うために、本発明者らは、SPI-1(ΔinvA)およびSPI-2(ΔssaV)内でコードされたT3SSに欠損のある株を構築した。この無病毒性「ΔSPI-1ΔSPI-2」株は、対応するpflB突然変異体(ΔSPI-1ΔSPI-2ΔpflB)と競合された。興味深いことに、競合指数は、回腸内のSalmonella病毒性の非存在下では有意に低減したが、大腸内では低下しなかった(
図7H)。洗練された研究は、細胞死の型、Salmonella感染に対して生成されたその後の炎症誘発性応答、およびこの炎症性応答が腸管感染を促進することができる手法に焦点を当てている
36、39~42。Salmonellaは、哺乳動物細胞において、アポトーシスならびにカスパーゼ1およびカスパーゼ11依存性パイロトーシスを包含する、SPI-1およびSPI-2依存性調節細胞死を誘導することができる
43~45。本発明者らは、感染マウスの回腸および結腸におけるアポトーシスのレベルを評価した場合、本発明者らは、野生型感染マウスの回腸における切断型カスパーゼ3のレベルの増加を観察した(データ示さず)。対照的に、切断型カスパーゼ3は、感染マウスの結腸内では検出可能ではなかった(データ示さず)。重要なことに、回腸切断型カスパーゼ3は、SPI-1/SPI-2病毒性機構に依存した(データ示さず)。PflB依存性の増殖および発現は、in vitroおよびin vivoでは、パイロトーシス型カスパーゼ1およびカスパーゼ11とは無関係であった(
図7I~
図7J)。Vil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウスは、同腹仔対照と比較して同様のレベルの罹患率および細菌負荷を表示するが(
図7K~
図7L、データ示さず)、一方で、ΔpflB突然変異株を野生型Salmonellaが打ち負かす能力は、Vil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウスの回腸で完全に消失し、競合指数は1に戻った(
図7M~
図7N)。まとめると、本発明者らのデータは、Salmonella病毒性因子依存性上皮細胞アポトーシスがPflB駆動適合性のための組織特異的ニッチを作製することを実証している。まとめると、これらのデータは、(i)細菌において誘導されるアポトーシス依存性転写応答のin vivo関連性、および食物媒介Salmonella感染モデルにおけるpflB遺伝子の関連性;ならびに、(ii)Salmonella誘導大腸炎の間のPflB依存性細菌成長が感染症全体を通して重要であること、およびカスパーゼ3/7依存性上皮細胞アポトーシスがin vivoでこの重要な適合性戦略に影響を及ぼすこと、を明らかにする。
【0088】
例5.TNF関連哺乳動物細胞死はEnterobacteriaceae増殖を増強する
微生物ディスバイオシスと炎症性腸疾患(IBD)との間には密接な関連が存在する。IBDの再発を有するペイシェントは、典型的には、腸管アポトーシスのレベルの増加を表示し
10、Enterobacteriaceaeの成長は、症状の悪化に関連している
46。TNFは、腸管炎症(例えば、IBD)を促進する重要なサイトカインであり、抗TNF治療法は、ペイシェントの腸上皮細胞アポトーシスの有病率を回復することができる
47。TNF誘導性上皮細胞死がEnterobacteriaceaeの成長に影響を及ぼす可能性があるかどうかに対処するために、本発明者らは、TNF誘導性炎症に対する「ブレーキ」として機能する既知のIBD感受性遺伝子である、A20に注目した
48。マウスモデルでは、腸上皮細胞におけるA20の標的化された欠失(Vil-Cre
+/-A20
fl/flマウスにおける)は、TNF誘導性腸炎中の回腸病態の増加をもたらし、これは、TNF誘導性アポトーシスに対するA20ノックアウト腸管上皮細胞の感受性の増加と相関する
49。第1の工程として、本発明者らは、A20ノックアウトHCT116細胞を生成し、かつ細菌成長に対するTNF誘導性細胞死の影響を評価した(
図8Aに概略的に示す)。TNF処置は、カスパーゼ依存性であったA20ノックアウト細胞において、アポトーシスカスパーゼ活性化および細胞死を誘導した(
図8B)。TNFで処置したA20ノックアウトHCT116細胞の上清は、TNFで処置した対照HCT116細胞と比較して、Salmonella増殖を有意に促進した(
図8C)。更に、これはSalmonella pflB(
図8D)およびcadB(
図8F)転写の誘導と相関していた。追加的に、TNF誘導死は、代替的なEnterobacteriaceae種の同様の5~10倍の増殖増加を促進し(
図8E)、炎症誘導性アポトーシスがin vitroで細菌成長を駆動することができることを示唆した。
【0089】
TNF誘導性腸管上皮細胞死がin vivoで細菌増殖を増強するかどうかを評価するために、本発明者らは、有意なTNF発現を誘導し、かつ腸管内のTNFの内因性供給源を提供する
50、Salmonella感染のモデル(
図7Aのような)を選択した(
図8Gに概略的に示す)。追加的には、Vil-Cre
+/-A20
fl/flマウスはTNF駆動性回腸アポトーシス
49を表示し、それによって、アポトーシスのレベルの増加がSalmonella増殖をブーストするかどうかを試験するためのモデルシステムを提供する。Vil-Cre
+/-A20
fl/flマウスは、同腹仔対照と比較してSalmonella感染の経過中に有意に多くの体重を失い(
図8H)、これらは、3日目までに安楽死を必要とする。感染の経過にわたって、Vil-Cre
+/-A20
fl/flマウスの回腸は、カスパーゼ3活性化の増加(
図8I)、総Salmonella負荷量の増加(
図8J)、およびPflB依存性Salmonellaコロニー形成の増加(
図8K)の間の顕著な相関を示した。A20欠損は、大腸に、および脾臓への全身播種に追加的な影響を及ぼした(データ示さず)。これらの知見は、臨床的に記載されたTNF誘導性アポトーシスとグラム陰性Enterobacteriaceaeの拡大との間の新規実験的関連性を提供し、かつ実質的な腸管上皮細胞死に関連した疾患状況が宿主を感染に対してより感受性にし得ることを示唆する。
【0090】
例6.化学療法誘導性アポトーシスはin vivoでのEnterobacteriaceae増殖を推進する
IBDペイシェントデータと同様に、細胞傷害性化学療法もまた、がんペイシェントにおけるProteobacteriaの濃縮
51、および感染症を発症する有意に高いリスク
13に関連している。化学療法誘導性好中球減少症は感染に対する感受性に明らかに影響を及ぼすことができるが、一方で、感染のリスクは、好中球減少症の大きさおよび持続期間とは無関係に、胃腸管毒性および粘膜炎を有するペイシェントにおいてより高い
13。これらの臨床知見は、(好中球減少症を超えて)感染に対する感受性を高める追加的な寄与因子を示唆する
14。本発明者らの知見が化学療法誘導性胃腸管アポトーシスのin vivo状況内での感染に対する感受性の増加に寄与することができるどうかを試験するために、本発明者らは、細菌による経口感染前のドキソルビシン誘導性胃腸管毒性のモデルを利用した(
図9A~
図9Bに概略的に示す)。マウスはドキソルビシンの単回全身用量を与えられ、その1日後に、SalmonellaまたはE.coliのいずれかで経口感染させた。細菌胃管栄養法の前にマウスのストレプトマイシン前処置がなかったので、これにより、本発明者らは、Salmonella誘導大腸炎の合併症なしにドキソルビシン誘導性上皮アポトーシスの影響に対処することができた
34。ドキソルビシン処置は実質的な腸管病態を誘導し、これは、盲腸重量の有意な低減および結腸の短縮として定量化されることができた(データ示さず)。腸管上皮細胞アポトーシスの関連性に直接対処するために、本発明者らは、Vil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウスを利用した。Vil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウスは、対照マウスと比較して、ドキソルビシン誘導性腸管損傷から有意に保護された(
図9C)。腸管損傷と併せて、ドキソルビシン処置は、Salmonella(
図9D)またはE.coliによる感染後に細菌負荷の顕著な増加をもたらし(データ示さず)、C57BL/6マウスにおける外因性Enterobacteriaceae感染に対する一般的な感受性の有意な増加を実証した。常在微生物叢に対するドキソルビシンの潜在的な抗細菌効果を考えると(
図1I)、外因性Enterobacteriaceaeは、新たに占有されていないニッチを満たすために強力に増殖する可能性がある。しかしながら、Vil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウスは、同腹仔対照と比較してドキソルビシン処置後に有意に低減したSalmonellaのレベルを有し(
図9E)、腸管上皮細胞アポトーシスがin vivoで外因性Enterobacteriaceae感染に対する感受性を増強することを実証した。本発明者らは次に、ドキソルビシン処置が、ペイシェントにおいてしばしば観察される内因性Enterobacteriaceaeの拡大に寄与することができたかどうかを尋ねた。ドキソルビシン処置単独は、非感染マウスの盲腸および結腸への損傷(
図9F~
図9G)、ならびに回腸におけるカスパーゼ3活性化(
図9H)を誘導するのに充分であり、これらの病態がこのモデルにおける外因性感染源によって駆動されなかったことを表記した。ペイシェントのマイクロバイオームデータと一致して、本発明者らは、非感染ドキソルビシン処置動物における内因性Enterobacteriaceaeの強力な拡大、未処置動物ではほぼ検出不可能であった微生物群を観察した(
図9I)。最後に、ドキソルビシン誘導性アポトーシスとSalmonellaの死依存性増殖応答との関連を試験するために、本発明者らは、野生型およびΔpflB突然変異Salmonella株による競合的感染を実施し、かつ2つの重要な発見を行った。第1に、ドキソルビシン処置後の対照マウスでは、ΔpflB突然変異体と比較して、野生型Salmonellaが有意に濃縮された(
図9J)。重要なことに、野生型およびΔpflB突然変異Salmonellaは、未処置対照マウス(ドキソルビシンなし、ストレプトマイシンなしの前処置)においてほぼ1:1のレベルで回収され(
図9J)、これは、PflBが他の点では健康な動物におけるSalmonella複製に劇的に寄与しないことを表記した。第2に、Vil-Cre
+/-カスパーゼ3/7
fl/flマウスにおける腸管上皮アポトーシスの喪失は、回腸、盲腸、および脾臓におけるドキソルビシン処置後のPflB依存性Salmonella増殖を有意に低減させたが(
図9J)、化学療法の非存在下においては低減させなかった(
図9K)。Panx1依存性代謝産物とin vitroでのPflB駆動細菌増殖との関連を考慮して、本発明者らは、ドキソルビシン処置後の対照マウスとPanx1
-/-マウスを比較した。類似の大きさのドキソルビシン誘導性疾患を発症したにもかかわらず(
図9L)、Panx1
-/-マウスは、同腹仔対照と比較して、Salmonella負荷およびPflB依存性適合性を有意に低減した(
図9M~
図9N)。これらのデータは、化学療法誘導性損傷それ自体ではなく、ドキソルビシン誘導性アポトーシスに応答して放出される代謝産物が、感染に対する感受性の重要なドライバであることを暗示している。本発明者らの知見は、細菌感染症に対する化学療法誘導性感受性に複雑性の新規層を追加し、ここで、ドキソルビシンによって誘導される腸管上皮細胞アポトーシスおよび下流代謝産物放出は、腸管内のEnterobacteriaceaeの外因性および内因性源の成長を促進することができる。
【0091】
考察
プログラム細胞死は、組織ホメオスタシスを維持するのに役立つ多くの重要な機能を有する。特に、瀕死細胞は、細胞クリアランス1、代謝20、および免疫応答39、41、42に影響を及ぼす細胞間哺乳動物コミュニケーションを可能にする可溶性因子を放出する。ここに提示されるデータは、アポトーシス依存性細胞間コミュニケーションに関与する可溶性因子が腸管内細菌によって活用されるという新規概念を前進させる洞察を提供する。第1に、プログラムされた哺乳動物の死滅誘導性栄養素放出(death-induced nutrient release:DINNR)は、細菌増殖、いくつかのアポトーシストリガーにわたって保存された特徴、および試験した6つのEnterobacteriaceaeファミリー単離物を直接推進することができる。本発明者らの知見はまた、細菌拡大の促進における上皮細胞アポトーシスの必要性および充分性の両方を実証する。この作業は胃腸管上皮細胞および腸管内Enterobacteriaceaeに焦点を当てているが、本発明者らは、これらの概念のより広い関連性を示唆する哺乳動物細胞型(すなわち、上皮細胞およびリンパ球)にわたる概念的保存を示す。第2に、この作業は、食物媒介感染症、TNF関連炎症、および感染症に対する化学療法誘導性感受性のモデルにおける上皮細胞アポトーシスに応答した、哺乳動物宿主内の適応のための重要な遺伝子として、Salmonella pflBを機構的に同定した。第3に、アポトーシス細胞死に対する特有の細菌転写応答は、様々な形態の調節された哺乳動物細胞死と、それらが細菌の成長に影響を及ぼす可能性があるその後の影響との間の差異を示唆している。そのうえ、Enterobacteriaceae(例えば、Salmonella対E.coli)内のメンバー間の転写応答の差異は、所与の細胞死様相に対する細菌応答内の特異性の付加層を反映する。最後に、これらのデータは、哺乳動物細胞死と微生物合併症との複雑な関係に新規次元を追加し、すなわち、アポトーシス腸管上皮細胞によって放出された可溶性因子は、その後の外因性感染のために宿主を刺激したままにするか、または内因性Enterobacteriaceaeのディスバイオティクス成長を促進する。これらの知見はまた、細胞傷害性化学療法を受けているペイシェントまたはTNF関連再発中の細菌増殖を抑制するのに役立つ可能性がある支持治療法を開発するための概念的な窓を開く。
【0092】
材料および方法
試薬
この作業の異なる部分に使用される試薬は、以下のように表記された供給業者から得られた:Doxycycline(Sigma D-9891)。B/Bホモ二量体化剤(Clonetech AP20187)。QVD(Sigma SML0063)。スタウロスポリン(Abcam ab120056)。TUNEL(Sigma 12156792910)。CD45抗体(Abcam ab10558)。カスパーゼ3活性キット(Sigma APT131、AssayGenie RG BN00018)。カスパーゼ8活性キット(Sigma APT129)。アネキシンV-APC(Biolegend 640941)。アネキシンV-Pac Blue(Biolegene 640917)。TO-PRO-3ヨウ化物(Thermo Fisher T3605)、7AAD(Invitrogen A1310)。Yoyo-1(Thermo Fisher Y3601)。Sytox blue(Thermo Fisher S34857)。Pac-1(Selleckchem S2738)。ドキソルビシン(Sigma D-1515)。プロテイナーゼK(GC Biotech BIO-37037)。RiboPure RNA精製キット(Thermo Fisher AM1925)。SensiFast cDNA合成キット(GC Biotech BIO-650504)。組換えヒトTNF(VIB Protein Core)。IMP(Sigma 57510)。DHAP(Sigma 37442)。GMP(Sigma G8377)。UDPグルコース(Abcam ab120384)。スペルミジン(Sigma S2626)。FBP(Sigma F6803)。In Situ細胞死検出キット、TUNEL(Sigma 12156792910)。アネキシンV結合緩衝剤(BD 556454)。シコニン(MedChemExpress HY-N0822)。ピルビン酸検出キット(Merck MAK071)。ギ酸検出キット(Sigma MAK059)。フルクトース1,6-ビスホスファート検出キット(Biovision K2036)。
【0093】
ウエスタンブロット用抗体
カスパーゼ152、カスパーゼ3(CST #9662)、切断型カスパーゼ3(CST #9664)、カスパーゼ7(CST #8438)、切断型カスパーゼ7(Abcam #ab255818)、カスパーゼ8(Abnova #MAB3429)、切断型カスパーゼ8(CST #9429)、カスパーゼ8(CST #9746)、P-MLKL Ser345(Abcam #ab196436)、MLKL(Sigma-Aldrich #MABC604)、P-RIPK3 Thr231/232(CST #91702)、チューブリンHRP(Abcam #ab21058)、ヒツジ抗マウスIgG HRP(Cytiva #NA931)、ヤギ抗ラットIgG HRP(Cytiva #NA935)、ヤギ抗ウサギIgG HRP(Cayman Chemical #10004301)。
【0094】
哺乳動物細胞培養
全ての哺乳動物細胞培養作業は、Summerlin Scientificからのウシ胎児血清を用いて行われた。無血清条件は、該当する場合、図面の凡例に表記されている。
【0095】
CT26細胞(ATCC CRL-2638)は、10%FBS、1倍ピルビン酸ナトリウム、および10%FBSを含有する1倍グルタミンまたはRPMI-1640を補充したDMEM(4.5gグルコース/L)中で日常的に培養された。CT26:FADDクローンは以前に生成された24。HCT116細胞(ATCC CCL-247)は、10%FBS、1倍ピルビン酸ナトリウム、および1倍グルタミンを補充したMcCoy's 5A中で日常的に培養された。Jurkat細胞(ATCC TIB-152)は、10%FBSを含有するRPMI-1640中で培養された。
【0096】
A20欠損HCT116細胞は、CRISPR-Cas9遺伝子標的化によって生成された。手短に言えば、sgRNAは、CRISPRscanツール(A20-1:GGAGCTTGTCAGTACATGTG)を用いて設計され、かつpx458ベクター(Addgeneプラスミド#48138)にクローニングした。トランスフェクションの前日に、2e106細胞は、10cm細胞培養皿に播種された。翌日、製造業者の指示に従って、細胞は、20μgプラスミドでトランスフェクトされた(jetPEI)。トランスフェクションの2日後、GFP陽性単一細胞は、96ウェルプレートで選別された。最後に、トランスフェクションの7日後に、所望のA20 KOクローンを選択するために、クローンが増殖され、ウエスタンブロット分析を用いてスクリーニングされた。
【0097】
哺乳動物細胞死誘導アッセイ
全ての哺乳動物細胞は5×105細胞/mLで培養された。細胞は、1倍PBSで洗浄された後、表記された培地中で細胞死を誘導した。Jurkat細胞は、5×105細胞/mLの懸濁液で培養された。細胞死の誘導後、上清は、収集され、330rcfで5分間回転させられて、細胞残屑が除去された。特に明記しない限り、得られた上清は、0.2μmシリンジフィルタを用いて濾過され、直ちに使用されるかまたは後で使用するために-20℃で凍結されたかのいずれかであった。細胞は、APCまたはPac BlueにコンジュゲートしたアネキシンV(AV)、およびSytox blue、Yoyo-1、または7AAD(DNA結合色素)のいずれかにより、アネキシンV結合緩衝剤(BD)中において、室温で15分間にわたり染色された。フローサイトメトリーは、Attune NxT(Invitrogen)、FACS Calibur(BD)、LSR Fortessa(BD)、またはLSRII(BD)を用いて行われた。データはFlowJo v.10ソフトウェアを用いて分析された。示されている全ての独立した実験値は、技術的複製の平均値である。「%アネキシンV+」細胞は、アネキシンV+DNA色素およびアネキシンV+DNA色素+細胞集団を包含する。
【0098】
FADD依存性アポトーシス:CT26:FADDクローンは、1μg/mLドキシサイクリンと共に16時間にわたりインキュベートされて、構築物の発現が誘導された。ドキシサイクリンが洗浄された後、10nM B/Bホモ二量体化剤を5時間にわたり添加されて、死が誘導された。カスパーゼ阻害研究のために、細胞は、B/B投与の前に30μM QVDと共に1時間にわたりインキュベートされ、QVDは、培地中で維持された。
【0099】
UV誘導性アポトーシス:HCT116またはCT26細胞は、600mJ cm-2UV-C照射に曝露された(Stratalinker)。HCT116またはCT26細胞は、UV照射後24時間にわたりインキュベートされた。Jurkat細胞は、150mJ cm-2に曝露され、次いで、UV照射後4時間にわたりインキュベートされた。培地対照については、新鮮なDMEMは、600mJ cm-2のUVに曝露されるか、または未曝露のままにされた。
【0100】
スタウロスポリン誘導性アポトーシス:HCT116またはCT26細胞は、1μMまたはDMSOビヒクル対照と24時間にわたりインキュベートされた。
【0101】
PAC-1誘導性アポトーシス:CT26細胞は、50μMまたはDMSOビヒクル対照と24時間にわたりインキュベートされた。
【0102】
TNF誘導性アポトーシス:HCT116細胞は、100ng/mLの組換えヒトTNFで24時間にわたり処置された。
【0103】
サルモネラ誘導性細胞死:HCT116細胞は、100個の野生型Salmonellaと1個のHCT116細胞との比率で感染させられ、300rcfで1分間回転させられて、細菌:上皮細胞の接触が最大化され、1時間にわたり感染させられた。1時間後、細胞は、1倍PBSで2回洗浄された後、100μg/mLのゲンタマイシンを含有する培地と30分間インキュベートされて、あらゆる細胞外細菌が殺傷された。次いで、培地は、低用量のゲンタマイシン(50μg/mL)と24時間にわたり置き換えられた後、細胞死がフローサイトメトリーで定量化された。
【0104】
凍結融解:CT26細胞は、3サイクルの凍結融解に供された。各サイクルについて、細胞は、ドライアイス上で固体に凍結され、次いで、37℃の水浴で融解された。対照試料は室温のままであった。上清収集のために、細胞残屑は除去され、上清は上記のように濾過された。
【0105】
シコニン:CT26細胞は、5μMシコニン(またはDMSOビヒクル対照)で1時間にわたり前処置された。次いで、細胞は、PBSで1回洗浄された後、細胞死の表記されたトリガー+/-5μMシコニンを含有する新鮮な培地と置き換えされた。
【0106】
免疫ブロット法
CT26またはHCT116細胞は、6ウェルプレートに400,000細胞/ウェルの濃度で播種された。細胞死は、30μMのQVDによる前処置の有りまたは無しで上記のように誘導された。表記された細胞死誘導時間(2時間、5時間、または24時間)の後、細胞は、収集され、試料緩衝剤中で直接溶解された。タンパク質変性後、SDS-PAGEは、8%または4~12%勾配のBis-Trisゲルを用いて実施された(12%Tris-Glycine gelsでのカスパーゼ1検出)。一次抗体は、一晩のインキュベーションのために使用され、続いて二次抗体との1時間のインキュベーションおよび化学発光検出が行われた。
【0107】
上清の収集および処置
表記されたトリガーで細胞死を誘導した後、無細胞上清が収集され、330rcfで5分間にわたり回転させられて、細胞残屑が除去された。得られた上清は、0.2μmのシリンジフィルタを用いて濾過された。培地対照は、マッチする回転および0.2μmの濾過を受けた。その後、上清または培地対照は、増殖研究のために細菌を直接接種されるか、または後の使用のために-20℃で凍結された。
【0108】
代謝産物検出:ピルビン酸塩、ギ酸塩、またはフルクトース1,6-ビスホスファート濃度は、製造業者の指示に従って適切な検出キットを用いて決定された。これらの実験のために、哺乳動物細胞は、10%FBSを補充したフェノールレッドを含まないDMEM中で培養された。
【0109】
アポトーシス細胞の上清は細菌増殖に対する効果のためにそのまま使用されることが多いが、一方で具体的な実例では、上清は、以下に表記されように処置された。
【0110】
順次濾過:スタウロスポリン誘導性アポトーシスの後、CT26上清は、収集され、濾過された(「>300kD」)。上清は、製造業者の指示に従って最大速度で10~30分間紡糸することによって、表記されたサイズのAmicon(登録商標)Ultra(Merck Millipore)フィルタでの順次濾過に供された。アリコートは各濾過工程の間に除去され、その後の使用のために新鮮状態で使用されるかまたは-20℃で凍結されるかのいずれかであった。
【0111】
プロテイナーゼK処置:上清は、上記のように10kD未満まで順次濾過された。次いで、10kD未満の上清は、50μg/mLプロテイナーゼKで処置され、37℃で1時間にわたりインキュベートされた。対照試料は37℃で未処置のままにされた。処置後、プロテイナーゼKは、その後の3kD未満の濾過によって除去された。上清は、直ちに使用されるか、またはその後の使用のために-20℃で凍結された。
【0112】
タンパク質定量化:培地、生細胞、またはアポトーシス上清中の総タンパク質は、製造業者の指示に従ってPierce(商標)BCA Protein Assay Kit(Thermo)を用いて決定された。タンパク質濃度(μg/mL)はアルブミン標準希釈から計算された。培地中の+/-FBS、+/-3kD濾過(上記の通り)、または+/-プロテイナーゼK処置(上記の通り)の濃度が決定された。
【0113】
温度変性:0.2μm濾過した上清は、室温で放置されるか、または100℃で15分間にわたりインキュベートされた。インキュベーション後、上清は、室温まで冷却され、直ちに使用されるか、またはその後の使用のために-20℃で凍結された。
【0114】
初代結腸細胞の抽出および殺傷
全長結腸(盲腸から直腸まで)は、マウスの表記された遺伝子型から切除され、長手方向に切開されて結腸を広げられた。開いた結腸は、滅菌1×PBS中で2~3回ボルテックスされて、糞便内容物が除去された。次いで、結腸は、5~7mmの長さの小片へと水平に切断され、DMEM+10%FBS中、ならびにアンピシリン(100μg/mL)、クロラムフェニコール(20μg/mL)、カナマイシン(50μg/mL)、およびストレプトマイシン(100μg/mL)を含有する抗生物質カクテル中において、5%CO2により37℃で2時間にわたりインキュベートされた。次いで、結腸小片は、滅菌1×PBS中で3回洗浄されて、一切の抗生物質カクテルが除去された。次いで、個々の結腸小片は、500μLのDMEM+10%FBS+/-2μMスタウロスポリンまたは+/-20μg/mLドキソルビシンを含有する1.5mLエッペンドルフチューブ内で、8時間または6時間にわたりインキュベートされた。カスパーゼ阻害のために、30μM QVDは、2時間の抗生物質処置工程に添加され、かつ死誘導を通して維持された。死滅誘導後、結腸外植片は、卓上遠心分離機を用いて最大速度で5分間にわたり回転され、上清が収集された。未濾過の上清が、直ちに使用されるか、またはその後の使用のために-20℃で凍結された。各結腸は、典型的には9~10個の個々の外植片を生じた。その後の全ての実験(細胞死、細菌増殖)は、最低3匹のマウスから抽出された外植片を利用した。
【0115】
カスパーゼ3活性化:上清を除去した後、カスパーゼ3比色活性アッセイキット、DEVD(Sigma)を介して、製造業者の指示に従って、カスパーゼ3活性について外植外植片が評価された。比色値が、iMark(商標)マイクロプレートリーダ(BioRad)を用いて405nmで得られて、提供されたpNA標準を用いて標準曲線から任意単位が計算された。
【0116】
顕微鏡検査:結腸外植片試料は、4%パラホルムアルデヒド中で一晩固定され、パラフィンに包埋され、5μmの厚さで切断された。その後、切片は、ヘマトキシリンおよびエオシン、またはTUNEL/CD45/DAPI共染色で染色された。TUNELアッセイは、製造業者の指示(In situ細胞死検出キット、TMR red-Roche)に従って行われ、続いて、DAPIおよびウサギCD45(Abcam ab10558)抗体と共に4℃で一晩インキュベートされた。Dylight633にカップリングされた抗ウサギ二次抗体を用いてCD45が可視化された。
【0117】
切断型カスパーゼ3染色のために、組織は、4%中性緩衝剤ホルマリン中で一晩固定され、パラフィンに包埋され、5μm切片へと切断された。スライドは、脱パラフィンされ、一連のアルコールで再水和され、Dakoクエン酸緩衝剤(Agilent、S169984-2)を用いて抗原回復のために圧力調理器で25分間にわたり処理された。内因性ペルオキシダーゼ活性はDako REALパーオキシダーゼのブロッキング溶液(Agilent S202386-2)を用いて20分間にわたりブロックされた後、PBSで3回洗浄された(各5分間)。切片は、5%ヤギ血清(Agilent、X090710-8)を補充したDako REAL抗体希釈剤(Agilent、S202230-2)において30分間にわたりブロックされた。切断型カスパーゼ3抗体(Cell Signaling Technology、9664S、1:1,500)とのインキュベーションは、ブロッキング緩衝剤中において4℃で一晩行われた。切片は、PBSで3回(各5分間)洗浄され、SignalStain Boost IHC Detection Reagent(Cell Signaling Technology、8114S)と30分間にわたりインキュベートされた。シグナルは、ImmPACT DAB基質(Vector Laboratories、SK-4105)、続いてヘマトキシリン対比染色、脱水、およびEntellan new(Merck Millipore、107906)による開始を用いて展開された。
【0118】
スライドは、Axio Scan.Z1(Zeiss、Jena、Germany)で、10倍Plan-Apochromat 0.45 NA(0.650μm/ピクセル)およびHamamatsu Orca Flashカメラを用いて画像化された。HXP照明源を用いて、以下が取得に使用された:DAPI(BP 445/50)、HE GFP(BP 525/50)、HE DsRed(BP 605/70)、およびCy5(BP 690/50)。画像分析はQuPath(バージョン0.1.2)を用いて行われた。
【0119】
細菌増殖実験
表記された生物の一晩培養物は、LBブロス中で200rpmの撹拌(好気性)を用いて37℃で日常的に増殖された。一晩培養した後(およそ16時間)、1mLの細菌培養物がペレット化され、培地が除去された。培養物は1×PBS中に再懸濁された。
【0120】
OD
600
測定:4mLの上清または培地対照は、1~2×107CFU/mLの表記された細菌種で接種された。培養物は、200rpmの撹拌(好気性)で37℃にて増殖され、細菌増殖は、表記された時点でUltrospec 10(VWR)を用いてOD600測定によって定量化された。感染上清中のゲンタマイシン抵抗性Salmonellaの増殖は、8×107CFU/mLの出発接種材料を使用した。全ての独立した実験値は技術的複製の平均値である。
【0121】
CFU/mL値:500μLの上清または培地対照は、1×103CFUの表記された株を接種された。培養物は、200rpmの撹拌(好気性)で37℃にて増殖され、1×PBSで連続希釈により、LB寒天(in vitro上清)またはMacConkey寒天(ex vivo初代結腸細胞上清)上にプレーティングしてCFU/mL値を得ることによって、増殖は、表記された時間に評価された。
【0122】
「MeMix6」補充:代謝産物混合物「MeMix6」は、スペルミジン、FBP、DHAP、GMP、IMP、およびUDP-グルコース
19から構成されていた。各代謝産物の表記の濃度(
図6B)を含有する単一の混合物は、1×PBS中で新鮮に調製され、10%FBSを有するDMEM中で表記の最終濃度まで希釈された。各代謝産物の表記された濃度は、以前に公開された標的化メタボロミクス研究に基づいた
19。
【0123】
細菌突然変異誘発
Salmonella突然変異株が、表2に列挙され、かつ表2および表353に列挙されたLRプライマおよびプラスミドを用いて前述のようにラムダレッド相同組換えを用いて構築された。正しい極性挿入、抗生物質抵抗性プロファイル、ならびにpCP20形質転換およびフリッパーゼ活性後のその後の非極性欠失は、表1に列挙したプライマを用いて検証された。同様のアプローチが使用され、ゲンタマイシン抵抗性Salmonellaをわずかに修飾して生成された。ヘルパープラスミドpKD4の代わりに、ゲンタマイシン抵抗性遺伝子は、必須遺伝子glmSの下流領域と相同性の隣接領域を有するプラスミドpRGD(Addgene #74106)から増幅された。ここでの染色体挿入は、充分な発現を確実にすることが示されている54。pflB突然変異体はプラスミドpLK003で補完された。プラスミドに基づく補完は、アラビノース誘導性pBAD24ベクター、表1に列挙されたプライマを用いたSalmonellaゲノムDNAの増幅、ならびにEcoR1およびHindIII制限酵素を用いて達成された。対照として、野生型株およびΔpflB株は、空のpBAD24ベクターで形質転換された。
【0124】
細菌遺伝子発現
プライマ配列が表1に列挙される。全ての遺伝子発現研究について、細菌培養物は、対数増殖期中期(OD600=0.4~0.6)まで増殖され、最大速度でスピンダウンされ、次いで、即時抽出のためにTRIzol(商標)試薬(ThermoFisher)に再懸濁されるか、または-80℃で凍結された。細菌RNAは抽出され、RiboPure RNA Purification Kit(Thermo Fisher)を用いて記載のようにDNAが除去された。RNAseq実験のために、Ribo-zeroキット(Illumina)を用いてリボソームRNAが除去された。全てのRNAseqデータについて、試料群が四連で分析され、読み取りデータが、Salmonella Typhimurium SL1344参照ゲノム(ASM21085v2、EnsEMBL 39)にマッピングされた。
【0125】
RNAシーケンシングおよび分析:HCT116+/-UVデータについては、Illumina NextSeqプラットフォーム上のVIB Nucleomics Core(www.nucleomics.be)によって、産生および分析が行われた。TruSeq Stranded mRNAキット(Illumina)を用いてmRNAライブラリが構築され、NextSeq High Outputを用いてシーケンシングが行われ、edgeR(Bioconductor)により差次的遺伝子発現および統計学的有意性が決定された。CT26:FADDデータが産生しされ、かつNovogeneによって分析された。mRNAライブラリは、IllumniのNEBNext Ultra RNA Library Prep Kit(NEB)を用いてrRNA枯渇後に構築され、シーケンシングがIllumina PE150プラットフォームで行われ、差次的な遺伝子発現および有意性が、HTSeqソフトウェアを用いて決定された。
【0126】
qPCR:SensiFast cDNA合成キット(GC Biotech)を用いてcDNA合成が行われた。NCBI Primer Blastを用いてqPCRプライマが設計された。各独立した生物学的複製物のΔΔCT値は、最初にSalmonellaハウスキーピング遺伝子gmk55を用いて、次いでハウスキーピング遺伝子strB56を用いて2回計算され、かつ2つのΔΔCT値が平均された。表記された対照の平均が1に等しくなるように、相対倍率発現が計算された。HS E.coli試料の内因性対照は、gmkおよびrpoA57であった。示されている全ての独立した実験値は、技術的複製の平均値である。
【0127】
動物研究
全ての動物作業は、the University of Virginia、the VIB-UGent Center for Inflammation Research、およびthe University of Ghent ethical committeesによって承認された。野生型C57BL/6マウスはJanvier Labsから購入された。グローバルカスパーゼ1/11 KOは、Mo Lamkanfiからの贈り物であった。Vil-Cre+/-カスパーゼ3/7fl/fl、Vil-Cre+/-A20fl/fl、RIPK1KD、MLKO-/-、ガスダーミンD-/-、およびPanx1-/-マウスは、以前に記載されており、かつVIB-UGent Center for Inflammation Researchに収容された21、49、58~60。全ての突然変異マウス遺伝子型について、fl/fl Cre陰性マウスは、適切な場合には同腹仔対照として役立った。発症中、Vil-Cre+/-マウスが、Vil-Cre-/-対照と共収容され、各実験の開始時にのみ遺伝子型が分離された。実験まで、Panx1-/-マウスは、対照Panx1+/+マウスと同様に共収容された。無菌実験は、University of Ghentの無菌施設で行われた。全てのマウスは感染時に7~14週齢であり、かつ雄マウスと雌マウスの両方が、表記したように使用された。
【0128】
Salmonella誘導性大腸炎。大腸炎のSalmonellaモデルを用いて、同腹仔、性別、および年齢が一致するマウスが感染させられた34。特異的病原体フリー(SPF)マウスは、感染の1日前に、経口胃管栄養法によって20mgのストレプトマイシンの単回用量(水中に溶解された200mg/mLストレプトマイシン100μL)を与えられた。マウスは、経口胃管栄養法により1×PBSに再懸濁されたマウス1匹当たり1×107CFUが感染させられた。競合的感染のために、染色体に挿入されたカナマイシン抵抗性遺伝子を含有する極性欠失が使用された56。マウスは、マウス1株当たり1×107CFUで、100μL中マウス総接種材料当たり2×107CFUを感染させられた。無菌マウスは、マウス当たり2×106CFU(1株当たり1×106CFU)を感染させられ、かつストレプトマイシンは投与されなかった。ストレプトマイシンを含有する寒天プレート(全接種材料)およびストレプトマイシン+カナマイシンを含有する寒天プレート(突然変異株)に感染用量をプレーティングすることによって、各株のインプット比が計算された。このようにして、野生型Salmonellaは、(全接種材料)-(変異接種材料)として計算され、投入比は、1に等しい所望の投入量で(野生型Salmonella)/(突然変異Salmonella接種材料)として計算された。マウス体重は毎日測定され、かつ「体重%」は、(1日体重)/(0日目の開始体重)として計算された。感染後の表記日に、腸管組織(回腸、盲腸、結腸)および脾臓が採取された。細菌負荷測定および切断型カスパーゼ3染色のために、回腸(小腸の遠位端の最後5~6cm)および結腸の管腔内容物が除去された。管腔内容物は全ての盲腸試料で保持された。あらゆる付着しているリンパ組織が、腸管組織から除去された後、1mLの1×PBS中で均質化された。組織1グラム当たりのCFUは、ストレプトマイシンを含有するMacConkey寒天上、ならびにストレプトマイシンおよびカナマイシンを含有するMacConkey寒天上に組織ホモジネートの連続希釈物をプレーティングすることによって計算された。単一株感染組織ホモジネートは、ストレプトマイシンを含有するMacConkey寒天上にのみプレーティングされた。
【0129】
無菌マウス。純培養/無菌マウスは、陽圧可撓性フィルムアイソレーター(North Kent Plastics)に収容された。感染実験の開始の1週間前に、純培養マウスは、個別に換気したIsocage-Pケージ(陽圧Isocages-Techniplast)に移された。全ての実験はC57BL/6J遺伝的背景のマウスで実施された。純培養マウスに対する全ての実験は、施設内(ethical committee for animal experimentation Ghent University-Faculty Medicine and Health Sciences)、国内、および欧州の動物規制に従って実施された。
【0130】
ドキソルビシン処置。ドキソルビシンは、15mg/kgマウス体重の単回腹腔内(ip)注射として与えられ、一方で、ビヒクル対照(水)は、同様の体積(およそ300μL体積の水または1mg/mLドキソルビシン溶液)で与えられた。翌日、マウスは、1×109CFUのSalmonella(上記の競合的感染のいずれかの単一株)または1×109CFUのE.coliに感染させられた。組織は、感染後1日目に採取され、体重減少、総Salmonella負荷、および競合指数は上記のように計算された。E.coliを包含する総Enterobacteriaceae負荷は、抗生物質を有しないMacConkey寒天上に組織溶解物をプレーティングすることによって評価された。非感染対照は、細菌の代わりに経口胃管栄養法によって1×PBSが与えられ、内因性Enterobacteriaceae負荷は、抗生物質を有しないMacConkey寒天上に組織溶解物をプレーティングすることによって評価された。
【0131】
統計分析
全ての箱およびひげのプロットは、全ての独立した反復が包含される最小から最大の値を示し、かつ箱内の水平線は中央値を描写する。図面の凡例に表記すように、GraphPad Prismバージョン8を用いて、統計試験が実施された。異常値データ点は、Q=1%でROUT法を用いて同定された。
【0132】
表
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表2】
【表3】
【0133】
参照
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【配列表】
【国際調査報告】