(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】粒状銅を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B22F 9/24 20060101AFI20240702BHJP
C22B 15/00 20060101ALI20240702BHJP
C22B 3/46 20060101ALI20240702BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240702BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20240702BHJP
【FI】
B22F9/24 B
C22B15/00 107
C22B3/46
B22F1/00 L
B22F1/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577899
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 CA2022050668
(87)【国際公開番号】W WO2022261745
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523472157
【氏名又は名称】デスティニー カッパー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】イアン デイビッド ブリンドル
(72)【発明者】
【氏名】モリーナ オードリー ロレイン シープウォッシュ
【テーマコード(参考)】
4K001
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K001AA09
4K001BA19
4K001DB18
4K017AA03
4K017BA05
4K017CA07
4K017EJ01
4K017FB01
4K017FB03
4K017FB08
4K018BA02
4K018BB04
(57)【要約】
還元金属の表面に銅粒を製造する方法。本方法は、銅(II)塩及びハロゲン化物を含む水溶液と還元金属とを接触させることを含み得る。ハロゲン化物と銅(II)塩中の銅(II)とのモル比は、少なくとも約3:1であり得る。粒状銅は、還元金属の表面に製造することができ、任意選択で、振盪、洗浄、及び/若しくはブラッシングによって、並びに/又は任意選択で水溶液の撹拌及び/若しくは循環により、還元金属の表面から除去される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状銅金属を製造する方法であって、還元金属と水溶液とを接触させることを含み、
前記水溶液が、
(i)銅(II)塩と、
(ii)ハロゲン化物と、を含み、
前記粒状銅が、前記還元金属の表面に製造される、方法。
【請求項2】
前記水溶液中の前記ハロゲン化物と前記銅(II)とのモル比が、少なくとも約3:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶液中の前記ハロゲン化物と前記銅(II)とのモル比が、約3:1~約5:1である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記還元金属が、鉄である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ハロゲン化物が、ナトリウム塩又はカルシウム塩の形態で前記水溶液に導入される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化物が、塩化物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記水溶液中の前記銅(II)塩の濃度が、少なくとも約0.5Mである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記水溶液中の前記銅(II)塩の濃度が、約0.5M~約0.9Mである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記水溶液が、CuSO
4又はCuCl
2と前記ハロゲン化物とを組み合わせることによって調製される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記銅(II)塩が、CuSO
4である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記還元金属と前記水溶液との前記接触が、少なくとも約1時間である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記還元金属と前記水溶液との前記接触が、約1時間~約3時間である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記水溶液が、約2~約3のpHを有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記水溶液のpHを酸を添加することによって調整することを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記水溶液が、酸を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記酸が、硫酸、塩酸、硝酸、及びそれらの混合物から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記酸が、硫酸である、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記水溶液のpHを塩基を添加することによって調整することを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記塩基が、無機塩基である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記塩基が、水酸化ナトリウムである、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記水溶液が、前記銅(II)塩を含む水溶液に前記ハロゲン化物の塩を添加することを含む方法によって調製される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記銅(II)塩を含む前記水溶液が、銅鉱石を浸出することを含む方法から得られる、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記銅鉱石が、硫酸で浸出される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
振盪、洗浄、及び/又はブラッシングによって前記還元金属の前記表面から前記粒状銅を除去することを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
スケーピングせずに前記還元金属の前記表面から前記粒状銅を除去することを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記水溶液を撹拌及び/又は循環させることを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
製造された前記粒状銅の約95%超が、約88μm超の粒子径を有する、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
製造された前記粒状銅の約75%超が、約250μm超の粒子径を有する、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年6月14日に出願された米国特許仮出願第63/202,486号に対する優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、ハロゲン化物の存在下で銅(II)塩を還元することを含む、粒状銅金属を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の段落は、その中で説明されているものが先行技術又は当業者の知識の一部であることを認めるものではない。
【0004】
元素鉄による硫酸銅溶液からの銅の置換の最初の記録は、Torburn Olof Bergmanによって1775年頃に発表されたものと思われ、彼は、「...(銅の硫酸塩の)溶液に添加された鉄は、銅色のペリクルで覆われていることがすぐに観察される。銅の還元に必要なフロギストンの一部が生成され、これによって可燃性の空気を排出することなくそれ自体が可溶性になるからである。1」と観察した。この記録では、銅は、硫酸銅溶液中に浸漬された鉄の表面の膜(ペリクル)として出現する。より最近の文献におけるこの出現は、銅が「セメント」として析出されることとして記載されており、その方法は「セメンテーション」として記載されている。
【0005】
塩化物に富む銅溶液からの銅の製造を記載する初期の特許は、米国特許第86,754号である。鉱石からの銅の製造における塩化物の使用は、2つの明確に独立した方法に基づく。広く使用されてきた第1の方法は、硫化鉱石に作用して銅を可溶化する、FeCl2、FeCl3、CuCl2、及びCuClなどの好適な浸出剤(lixiviant)の生成におけるものである。第2の方法は、Hunt及びDouglasによって上述の特許において最初に記載され、同じ著者によるその後の更新において記載された(米国特許第227,902号及び米国特許第364,174号)。米国特許第227,902号は、「溶解した銅1ポンドに対して塩2ポンドの割合で(すなわち、2:1をわずかに超える塩化物と銅とのモル比で)、食塩などの、いくつかの可溶性塩化物」を添加することを指示している。当該特許には、この量のNaClについての説明も正当性も提供されていない。
【0006】
米国特許第3,902,896号には、表面から剥がれ落ちる銅の析出物を製造するための添加剤の使用が開示されている。当該方法は、添加剤を、弱酸性溶液中で使用されるチオ硫酸塩であると特定している。
【0007】
国際公開第2009/007792(A1)号は、銅(II)塩を含有する溶液から銅を製造する手法を開示している。当該手法は、銅(II)塩の少なくとも一部を銅(I)塩に還元する第1の工程と、銅(I)塩を可溶化して可溶性銅(I)錯体を(任意選択で、可溶性ハロゲン化物の存在下で)製造することと、第2の還元工程において可溶性銅(I)錯体を銅に還元することと、を含む。亜硫酸塩の使用は、Cu(I)を生成するための最初の部分還元反応のために提案されている。Cu(0)を生成するその後の還元は、溶液中の全ての銅が金属に還元されるまで、還元されるべき更なるCu(l)を生成するため、この最初の部分還元は、触媒量のCu(l)のみを生成する。可溶化工程は、塩化物との錯体形成と同時に行うことができる。錯化形成反応には、「過剰な」塩化物の添加が含まれると提案されており、過剰な塩化物が、CuCl4
3-を生成するのに必要であることを示唆している。
【0008】
還元反応によって製造される銅の特性に対する塩化物の影響は、塩化物濃度に依存することが報告されており、低濃度では、塩化物の存在がめっきされ得る銅の明度を高めることが報告されているが、高い塩化物濃度は、全体的な表面粗化をもたらす。業界では、表面粗化は望ましくないと考えられており、この問題について報告する出版物は、通常、最大2.5Mの塩化物濃度でこの粗化効果が出現することを記載している。例えば、Kaoら2は、塩化物の存在が、還元中に銅の表面にCuClの沈殿を引き起こすことを報告している。この現象は、最大2.5Mの塩化物濃度で観察されたが、この濃度では、当該効果は小さかった。高いレベルの塩化物(9M LiCl)では、銅の可溶性高次錯体(例えば、CuCl2又はCuCl2-)の形成は、CuClのいかなる蓄積も防止し、銅の完全な還元を可能にする。
【0009】
何人かの著者は、析出された銅の表面形態におけるアニオン濃度の重要性について論評した。3,4,5例えば、Carnevalらは、塩化物イオン濃度を60~80ppmに制御することが重要であり、30ppm未満では、析出物は光沢がなく、縞があり、粗く、ステップめっきされ、120ppm超では、析出物は粗粒化され、光沢がなく、アノードが分極してめっきを停止させることを教示している。Carnevalらは、また、各場合での銅析出物の伸びが、10mgL-1範囲の塩化物添加について劇的に上昇することが見出されたことに注目した。Carnevalらは、更に、ハロゲン化物の中で、Clが、応力をゼロ値(null value)に維持するのに広範囲の濃度(40~150mgL-1)にわたって最も有効であること、約50mgL-1の塩化物の存在が、内部応力を上昇させることなく微小硬度の増加を可能にするのに最適であること、塩化物イオンが、均一電着性に影響を及ぼさないことを教示している。
【0010】
銅結晶は、塩化ナトリウムの存在下で硫酸銅(II)水溶液から還元金属として鉄を使用して析出されている。例えば、Rychkovらは、硫酸銅、塩化ナトリウム、濾紙、及び鉄源の連続層を塩化ナトリウムの飽和溶液に浸漬したシステムを使用した銅結晶の形成を報告している。6同様に、Mathurらは、硫酸銅(II)結晶がジャーの底に置かれ、この層が塩化ナトリウム粉末で覆われ、濾紙が塩上に置かれ、鉄プレートが紙の上に置かれ、次いでジャーが鉄プレートの約1.5インチ上まで塩化ナトリウムの飽和溶液で満たされるシステムを使用して銅金属の結晶が形成される実験を開示している。7これらの例の両方では、銅結晶の形成を説明することが目的であった。いずれの場合も、著者らは、巨視的な結晶銅の生成以外のいかなる目的でも反応を調査しなかった。Rychovらによる論文は、高校生向けの演習を記載しており、この演習では、反応のパラメータを変更し、次いで銅結晶について結晶学的測定を行うように学生に依頼した。第2のケースでは、審美的な目的であると思われる。当該論文における方法の記載は、結晶サイズ及び収率のいずれの最適化も記載しておらず、使用された試薬の量について報告された情報もない。
【発明の概要】
【0011】
序論
以下は、読者に以下の詳細な説明を紹介することを意図しており、特許請求される主題を定義することも限定することも意図していない。
【0012】
還元金属表面からの銅金属の除去及び収集を容易にする、還元金属表面上への粒状銅金属の析出のための方法、例えば銅浸出方法が引き続き必要とされている。そのような湿式冶金方法は、かなりの温室効果ガス排出を伴う従来のより大規模な乾式冶金方法を利用して開発するには非経済的であると以前は考えられていた、銅抽出のためのより小さな孤立した析出物を解放することができる。リサイクルされた鉄に蓄えられたエネルギーが化学抽出方法では効果的に再利用されるため、エネルギー使用量が大幅に低減される。
【0013】
銅は、銅、硫酸及びハロゲン化物(NaCl)を含有する溶液から単一工程で粒状金属銅に有利に還元された。本明細書に記載される方法の利点は、還元金属の表面で生成された粒状銅が、表面に弱く付着することができ、したがって、振盪、洗浄、及び/又は金属のブラッシングなどの手法によって表面から除去されることができ、及び/又は水溶液の撹拌及び/又は循環によって補助されることができることである。したがって、鉄表面の弱く結合した銅は、容易に収集され、上澄み溶液をきれいに洗浄されて、その後、好適な形態に、例えば、電解槽内に配置されてロンドン金属取引所(London Metal Exchange)での取引に許容される形態のカソード銅を生成することができる銅アノードとしての形態に溶融される。この方法は、溶液中の銅が主に水和カチオンとして存在する場合に起こるセメンテーション方法とは異なる。この場合、銅は、表面により強く保持される傾向があり、「膜(skin)」又はセメントとして説明されており、より積極的な削り取りによって除去されなければならない。
【0014】
したがって、本開示は、粒状銅金属を製造する方法を含み、本方法は、
還元金属と水溶液とを接触させることを含み、水溶液は、
(i)銅(II)塩と、
(ii)ハロゲン化物と、を含み、
水溶液中のハロゲン化物と銅(II)とのモル比は、少なくとも約3:1であり、粒状銅は、還元金属の表面に製造され、任意選択で、振盪、洗浄、及び/若しくはブラッシングによって、並びに/又は任意選択で水溶液の撹拌及び/若しくは循環により、還元金属の表面から除去される。
【0015】
本明細書に開示される教示の他の態様及び特徴は、本開示の特定の例の以下の説明を検討すると、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本明細書に含まれる図面は、本開示の装置及び手法の様々な例を示すためのものであり、決して教示されるものの範囲を限定することを意図するものではない。
【0017】
【
図1】左列から右列に向かって30、60、90、120、及び150分の時点における、0.8371MのCuSO
4を含み、NaClを含まない(一番上の行)酸性(pH2)溶液からの鉄棒上の銅析出物と比較した、本開示の例による0.8371MのCuSO
4と様々な量のNaCl(上から2番目の行から最終行に向かって2、3、4、及び5当量)とを含む弱酸性(pH2)溶液からの鉄棒上の銅析出物の例示的な写真を示す。
【
図2】2時間後の、0.8388MのCuSO
4を含み、NaClを含まない(上の行の左画像)溶液からの鉄棒上の銅析出物と比較した、本開示の例による0.8388MのCuSO
4と様々な量のNaCl(3又は5当量)とを含む溶液からの鉄棒上の銅析出物(それぞれ、上の行の中央及び右の写真)、並びに銅析出物の除去後の鉄棒(下の画像、左から右に向かって0、3、及び5当量のNaCl)の例示的な写真を示す。
【
図3】本開示の例による銅粒を調製するための大規模方法と比べて小規模方法から得られた、左から右に向かって860μm超、250~860μm、88~250μm、及び88μm未満のサイズを有する銅粒のパーセンテージを示すプロットである。
【
図4】本開示の例による4.1当量のNaClを用いた二重試験と比べて3.5当量を使用した銅粒を調製するための方法から得られた、左から右に向かって860μm超、250~860μm、及び88~250μmのサイズを有する銅粒のパーセンテージを示すプロットである。
【
図5】本開示の例による5当量のNaClを使用するCuSO
4のストック溶液から銅粒を調製するための方法の反応時間の関数としての粒径分布及び反応収率を示すプロットである。値は、3回の実験の平均である。
【
図6】本開示の例による5当量のNaClを使用するCuSO
4のストック溶液と比較した、エキゾチック銅鉱石浸出溶液から銅粒を調製するための方法の反応時間の関数としての粒径分布及び反応収率を示すプロットである。
【
図7】120分後の、左から右に、0.1432M、0.2772M、0.3867M、及び0.5100MのCuSO
4と4.5当量のNaClとを含む本開示の例による溶液からの鉄棒上の銅析出物の例示的な写真を示す。
【
図8A】例示的な4:1の塩化物と銅との初期比から生成された銅金属を示す。
【
図8B】比較の1:1の塩化物と銅との初期比から生成された銅金属を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
特許請求される各発明の実施形態の例を提供するために、様々な装置又は手法が以下に説明される。以下に説明される実施形態は、特許請求される発明を限定するものではなく、任意の特許請求される発明は、以下に説明されるものとは異なる装置及び手法を包含してもよい。特許請求される発明は、以下に説明される任意の1つの装置又は手法の特徴の全てを有する装置及び手法に限定されず、以下に説明される装置又は手法の複数又は全てに共通の特徴にも限定されない。以下に説明される装置又は手法は、特許請求される発明の実施形態ではない可能性がある。本書で特許請求されていない、以下に説明される装置又は手法において開示される任意の発明は、別の保護手段、例えば継続特許出願の主題であってもよく、出願人、発明者、及び/又は所有者は、本文書におけるその開示によって、任意のそのような発明を断念、放棄、又は公衆に提供することを意図していない。
【0019】
I.定義
別段の指示がない限り、本セクション及び他のセクションに記載される定義及び例は、当業者によって理解されるように、それらが好適である、本明細書に記載される本開示の全ての例及び態様に適用できることが意図される。
【0020】
本開示の範囲の理解において、本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語及びその派生語は、述べられた特徴、要素、成分、群、整数、及び/又は工程の存在を指定する非制限的用語であることが意図され、他の述べられていない特徴、要素、成分、群、整数、及び/又は工程の存在を除外しない。上記は、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの派生語など、同様の意味を有する単語にも適用される。本明細書で使用される場合、「からなる(consisting)」という用語及びその派生語は、述べられた特徴、要素、成分、群、整数、及び/又は工程の存在を指定する制限的用語であることが意図され、他の述べられていない特徴、要素、成分、群、整数、及び/又は工程の存在を除外する。本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、述べられた特徴、要素、成分、群、整数、及び/又は工程の存在、並びに特徴、要素、成分、群、整数、及び/又は工程の基本的で新規な特性に実質的に影響しないものの存在を指定することを意図している。
【0021】
本明細書で使用される場合、「実質的に(substantially)」、「約(about)」、及び「およそ(approximately)」などの程度の用語は、最終結果が大幅に変更されないような修飾された用語の妥当な量の偏差を意味する。この偏差が、修飾する単語の意味を否定しない場合、これらの程度の用語は、修飾された用語の少なくとも±5%の偏差を含むと解釈されるべきである。
【0022】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、列挙された品目が個別に又は組み合わせて存在する又は使用されることを意味する。事実上、この用語は、列挙された品目の「うちの少なくとも1つ」又は「1つ以上」が使用される又は存在することを意味する。
【0023】
本開示で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容が明確に別段の指示をしない限り、複数の言及を含む。
【0024】
本明細書で使用される場合、「好適な」という用語は、特定の試薬又は条件の選択が、実行される反応及び所望の結果に依存するが、それでも、全ての関連情報を知れば、当業者によって一般的に行われ得ることを意味する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「還元金属」という用語は、本開示の方法において銅(II)を銅(0)に還元する金属を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「ハロゲン化物」という用語は、ハロゲンアニオンを指し、クロロ及びブロモを含む。
【0027】
本明細書で使用される場合、「粒(granule)」という用語は、一般的に不規則な形状を有する任意のサイズの粒子を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「結晶」という用語は、その構成要素(原子、分子、又はイオンなど)が高度に秩序化された微視的構造で配置されて、全方向に延びる結晶格子を形成している固体材料を指す。
【0029】
II.方法
銅は、銅、硫酸及びハロゲン化物(NaCl)を含有する溶液から単一工程で粒状金属銅に有利に還元された。この一工程還元は、例えば、Cu(l)からCu(0)への還元の前に銅が+2から+1の酸化状態に還元される中間工程に依存しないため、他の方法よりも有利である。本開示の方法では、銅鉱石は、いくつかの例において、硫酸によって浸出されて、銅(II)塩を含む溶液が得られ、その後、塩化ナトリウム又は塩化ナトリウムを含有する硫酸が添加され得る。両方の場合において、塩化物濃度は、貴液中の本質的に全ての銅がCuCl4
2-の形態であることを保証にするために十分に高い濃度、例えば、銅(II)塩を含む溶液中の銅(II)のモル濃度の約3~5倍のモル濃度で存在する。例えば、約3:1のモル濃度では、反応開始時にかなりの部分がCuCl3-である可能性が高いことが理解されるであろう。銅が沈殿するにつれて、主な種は、CuCl4
2-となる。銅(II)塩を含む溶液を、これらの例では鉄棒であった還元金属に曝露した。温度は、周囲温度であった。これらの条件下で、銅は、いくつかの例では1mmを超えるサイズに成長した、目に見える粒の形態で鉄の表面に製造された。88μmを超える粒子径を有する銅粒は、銅の99%を占め、79%は、250μmを超える粒子径を有した。本明細書に記載される方法の利点は、還元金属表面の表面で生成された粒状銅が、表面に弱く付着し、したがって、振盪、洗浄、及び/又は金属のブラッシングなどの手法によって表面から、及び/又は任意選択で水溶液の撹拌及び/又は循環によって、除去されることができる。
【0030】
したがって、本開示は、粒状銅金属を製造する方法を含み、本方法は、
還元金属と水溶液とを接触させることを含み、水溶液は、
(i)銅(II)塩と、
(ii)ハロゲン化物と、を含み、
水溶液中のハロゲン化物と銅(II)とのモル比は、少なくとも約3:1であり、粒状銅は、還元金属の表面に製造され、任意選択で、振盪、洗浄、及び/若しくはブラッシングによって、並びに/又は任意選択で水溶液の撹拌及び/若しくは循環により、還元金属の表面から除去される。
【0031】
いくつかの例では、水溶液中のハロゲン化物と銅(II)とのモル比は、約3:1である。いくつかの例では、水溶液中のハロゲン化物と銅(II)とのモル比は、少なくとも3:1である。いくつかの例では、水溶液中のハロゲン化物と銅(II)とのモル比は、約3:1~約5:1である。
【0032】
還元金属は、任意の好適な還元金属であり得る。例えば、当業者は、ナトリウム(Na)及びカリウム(K)金属は、本方法にとって反応性が高すぎて、例えば、水溶液中の水と反応することを容易に理解するであろう。したがって、ナトリウム、カリウム及び同様の金属は、本開示の方法に好適な還元金属であるとは理解されないであろう。対照的に、鉄(Fe)は、低コストであるという利点を有し、本開示の例では、金属の表面への粒状銅の付着が弱く、好適な巨視的粒状銅を形成することが観察された。したがって、鉄は、例えば、その後の後処理(work-up)のために扱いやすい粒子として銅を供給するために、望ましく反応性である。したがって、いくつかの例では、還元金属は鉄である。本出願の方法において有用であり得る他の還元金属は、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)及び/又はマグネシウム(Mg)である。したがって、いくつかの例では、還元金属は、鉄、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの例では、還元金属は、好適な合金に含まれる。例えば、鉄の好適な合金としては、鋼(鉄、炭素及び任意選択で他の元素を含み、炭素が、合金の総重量に基づいて約2重量%以下の量で存在する合金)及び鋳鉄(鉄、炭素、ケイ素及び任意選択で他の元素を含み、炭素が、合金の総重量に基づいて2重量%超の量で存在する合金)が挙げられる。
【0033】
還元金属は、任意の好適な形態であり得る。例えば、高い表面積を有する形態が有利であり得る。好適な形態としては、板、ロッド、棒、ビーム、スクラップ又はそれらの組み合わせが挙げられる。したがって、いくつかの例では、還元金属は、板、ロッド、棒、ビーム、スクラップ又はそれらの組み合わせの形態である。いくつかの例では、還元金属は、実質的に平坦な表面を有するプレートの形態である。
【0034】
ハロゲン化物は、任意の好適なハロゲン化物である。例えば、臭化銅は、塩化銅と同様に反応することが当業者によって予想される。いくつかの例では、ハロゲン化物は、塩化物、臭化物又はそれらの組み合わせである。いくつかの例では、ハロゲン化物は、塩化物である。
【0035】
いくつかの例では、ハロゲン化物は、粒状化促進量で存在する。いくつかの例では、粒状化促進量は、望ましくは表面に弱く付着する、還元金属の表面における銅粒の製造をもたらす量である。対照的に、粒状化促進量よりも少ない量は、例えば、還元金属の表面における銅の「セメンチング」をもたらす。いくつかの例では、ハロゲン化物が塩化物である場合の粒状化促進量のハロゲン化物は、銅(II)塩と塩化物とを含む水溶液中の銅の少なくとも実質的に全てがCuCl4
2の形態であるように十分に高い量であり、例えば、水溶液中の銅(II)のモル濃度の少なくとも約3倍である濃度の塩化物である。繰り返しになるが、反応の開始時には、かなりの部分がCuCl3であってもよく、反応が進行するにつれて、主な種はCuCl4
2-となる。
【0036】
ハロゲン化物は、任意の好適な手段によって水溶液に導入され、その選択は、当業者によって行うことができる。いくつかの例では、ハロゲン化物は、好適なアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の形態で水溶液に導入される。いくつかの例では、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、ナトリウム塩又はカルシウム塩であり、すなわち、ハロゲン化物は、ナトリウム塩又はカルシウム塩の形態で水溶液に導入される。いくつかの例では、例えば、塩化カルシウム、又は別の塩化物源が、本開示の方法における塩化物源である場合、カルシウム及び他のそのような「傍観イオン(spectator ion)」の存在は、副反応、例えば、石膏(CaSO4)としての硫酸塩の沈殿を引き起こし得る。そのような例では、当業者は、そのような副反応に対処するために他の薬剤を添加してもよいことを理解するであろう。例えば、沈殿剤を添加してカルシウムを特に除去することができる。
【0037】
水溶液中の銅(II)塩の濃度は、任意の好適な濃度である。例えば、好適な濃度は、銅(II)塩の溶解限度よりも低い。当業者は、特定の条件下での特定の銅(II)塩の溶解限度を容易に決定することができるであろう。いくつかの例では、水溶液中の銅(II)塩の濃度は、少なくとも約0.5Mである。いくつかの例では、水溶液中の銅(II)塩の濃度は、約0.5M~約0.9Mである。
【0038】
水溶液を調製するために使用される銅(II)塩は、任意の好適な銅(II)塩である。いくつかの例では、水溶液は、CuSO4(硫酸銅(II))又はCuCl2(塩化銅(II))とハロゲン化物とを組み合わせることによって調製される。いくつかの例では、水溶液を調製するのに使用される銅(II)塩は、CuSO4(硫酸銅(II))である。
【0039】
水溶液は、任意の好適な手段によって調製され、その選択は、当業者によって行うことができる。いくつかの例では、水溶液は、銅(II)塩を含む水溶液にハロゲン化物の塩を添加することを含む方法によって調製される。
【0040】
いくつかの例では、銅(II)塩を含む水溶液は、銅鉱石を浸出することを含む方法から得られる。そのような方法は、当該技術分野で周知であり、好適な方法の選択は、当業者によって行うことができる。好適な方法の選択は、例えば、銅鉱石が酸化銅鉱石又は硫化銅鉱石を含むかどうかに依存し得る。例えば、酸化銅鉱石は、例えば硫酸などの酸の希薄溶液で、容易に酸浸出可能である。したがって、いくつかの例では、銅鉱石は、酸化銅鉱石であり、硫酸で浸出される。いくつかの例では、銅鉱石は、孔雀石(malachite)、藍銅鉱(azurite)、赤銅鉱(cuprite)、珪孔雀石(chrysocolla)、又はそれらの組み合わせを含む。対照的に、輝銅鉱(chalcocite)、銅藍(covellite)、斑銅鉱(bornite)、黄銅鉱(chalcopyrite)又はそれらの組み合わせなどの硫化銅鉱石は、また、銅塩(II)を含む水溶液を製造するのに有用であり得るが、限定されないが、予備焙焼(すなわち、硫酸などの酸で容易に浸出可能な酸化銅を生成するため)、加圧浸出、粉砕、及び/又はバイオ浸出などの処理条件なしでは容易に酸浸出可能ではない。したがって、本開示の方法において銅(II)塩を含む水溶液を製造するために酸化銅鉱石を使用することの利点は、エネルギー集約的であり、二酸化硫黄などの潜在的に汚染性の化合物を生成するであろう予備焙焼などの高価な処理工程の使用を回避し得ることである。
【0041】
いくつかの例では、水溶液は、酸を更に含む。いくつかの例では、酸は、硫酸、塩酸及び硝酸、又はそれらの混合物から選択される。いくつかの例では、酸は、硫酸である。いくつかの例では、本方法は、銅(II)塩を含む水溶液に酸を添加することを含み得る。いくつかの例では、例えば、銅(II)塩が銅鉱石を浸出することを含む方法から得られる場合、硫酸は、浸出条件の結果として銅(II)塩を含む水溶液中に既に存在する。
【0042】
いくつかの例では、水溶液は、約1~約4、約2~約3、約2又は約3のpHを有する。低いpH(すなわち、2未満)では、水溶液は、鉄を攻撃して水素ガスを製造し得る。これにより、微量のヒ化水素が生成され、還元金属の表面で粒状銅中に元素ヒ素が形成され得る。このヒ素による銅の汚染は、導電性に悪影響を及ぼし得る。しかし、高いpH(すなわち、3を超える)では、固体Fe(III)が、水溶液から沈殿し得る。本発明者らは、pH2~3が最適であり得ると考える。
【0043】
試薬を調整して、本方法のための所望の初期pHを確立することができる。いくつかの例では、本方法は、銅(II)塩を含む水溶液に酸を添加して所望のpHを得ることを含むことができる。上述したように、酸は、硫酸であり得る。
【0044】
いくつかの例では、本方法は、銅(II)塩を含む水溶液に塩基を添加して所望のpHを得ることを含むことができる。いくつかの例では、水溶液は、無機塩基を更に含む。いくつかの例では、塩基は、水酸化ナトリウムである。
【0045】
いくつかの例では、Norman Toroら8に概説されているように、ハロゲン化物が塩化物であり、塩化物が硫酸と組み合わされる場合、塩化物並びに続いてCu(l)Cl及び/又はCuCl2は、補助的な浸出剤として作用し、銅の抽出及び硫黄の沈殿をもたらし得る。
【0046】
いくつかの例では、還元金属と水溶液との接触は、少なくとも約1時間の時間である。いくつかの例では、時間は、約1時間~約3時間又は約2時間である。
【0047】
いくつかの例では、粒状銅は、振盪、洗浄、及び/又はブラッシングによって還元金属の表面から除去される。いくつかの例では、粒状銅は、還元金属の表面から除去されるために、削り取り又は他のそのような手段を必要としない。
【0048】
いくつかの例では、製造された粒状銅の約90%超は、約88μm超の粒子径を有する。いくつかの例では、製造された粒状銅の約95%超は、約88μm超の粒子径を有する。いくつかの例では、製造された粒状銅の約99%は、約88μm超の粒子径を有する。
【0049】
いくつかの例では、製造された粒状銅の約70%超は、約250μm超の粒子径を有する。いくつかの例では、製造された粒状銅の約75%超は、約250μm超の粒子径を有する。いくつかの例では、製造された粒状銅の約79%は、約250μm超の粒子径を有する。
【0050】
いくつかの例では、製造された粒状銅は、銅結晶である。
【0051】
いくつかの例では、還元金属の表面からの粒状銅の除去は、水溶液を撹拌及び/又は循環させることによって補助することができる。そのような例では、粒状銅は、また、物理的に除去されるための削り取り又は他のそのような手段を必要としなくてもよい。代わりに、銅粒は、重力によって還元金属の表面から除去され、還元金属の近傍の溶液の流れによって補助されるのに十分なサイズに達するまで、還元金属の表面で成長することができる。乱流を発生させずに水溶液を撹拌及び/又は循環させることによっても、還元金属における反応速度が増加する。
【0052】
いくつかの例では、接触中の温度は、約4℃~約40℃である。いくつかの例では、接触中の温度は、周囲温度、例えば、約15℃~約25℃の温度である。
【0053】
本開示の教示は、いくつかの環境上の利益をもたらすことができる。本明細書の方法は、主に化学ポテンシャルに依存し、そのエネルギー必要量は、同様に顕著な汚染を発生させ得る、製錬又は他の湿式冶金方法(そのような溶媒抽出及び電解採取)を含む、銅製造の他の手法と比較して、非常に低くすることができる。上述したように、エネルギー集約的であり、及び/又は二酸化硫黄などの化合物を生成し得る、予備焙焼などの処理工程は、回避することができる。本明細書の方法は、また、尾鉱池(tailing pond)及び廃棄物の山(waste heap)からの回収を含む、銅源のある鉱床又は他の場所において現場で実施することができる。現場での粒状銅の製造は、得られる生成物の輸送及び貯蔵要件を低減することができ、それによって、高価値で高純度な銅とは対照的に、低価値の銅濃縮物の長距離輸送から生じる温室効果ガス排出量を更に低減することができる。
【0054】
本開示の以下の実施例は、例示的であるが非限定的であることが意図される。
【実施例】
【0055】
実施例1:銅析出に対するNaCl濃度の影響
(a)0.8371MのCuSO
4溶液を5つの100mLビーカーのそれぞれに添加した(各50mL)。各ビーカーに、NaClを以下のように溶解した。溶液番号1-0g(0当量)、溶液番号2-4.627g(1.9当量)、溶液番号3-7.266g(3.0当量)、溶液番号4-9.755g(4.0当量)、溶液番号5-12.146g(5.0当量)。H
2SO
4で溶液のpHを2に調整した。鉄棒を斜めにビーカーに入れた。反応を30分間隔で確認して、析出した粒の相対的な質及び量を決定した(
図1)。全体として、銅粒径は、120分間にわたるNaCl濃度の増加とともに増加するようであった。その時点の後、粒は、重くなりすぎて鉄から溶液中に落ちたか、又は表面で不明瞭に成長し始めた(濃度依存性)。NaClを含まない溶液は、鉄に銅がめっきされており、除去するのが非常に困難であった。他の全ての溶液では、溶液中で鉄棒を単に振るか、又はビーカーの側面を軽く叩くことによって、銅が容易に除去された。全ての溶液の収率は、24時間放置後に同様であった(番号1:81%、番号2:88%、番号3:76%、番号4:89%、番号5:91%)。
【0056】
(b)3.0(7.216g)、4.0(9.693g)及び5.0(12.187g)当量のNaClを添加した0.8331MのCuSO4溶液(3つのビーカーのそれぞれに50mL)を用いて、(a)に記載の反応を繰り返した。この反応についてはpHを調整しなかった。この反応を2時間後に停止した。全体として、溶液番号3(5当量)から析出した銅粒が最大であった。収率は同様であったが、溶液番号1(3当量)が65%で最も高い収率を有した(番号2:53%、番号3:58%)。
【0057】
(c)3つのビーカーのそれぞれにおいて、50mLの0.8388M CuSO
4溶液を用いて、(b)に記載の反応を繰り返した。第1の溶液(0当量、番号1)には、NaClを添加しなかった。他の2つの溶液には、7.326g(3.0当量、番号2)及び12.208g(5.0当量、番号3)のNaClを溶解した。H
2SO
4で溶液のpHを2に調整した。反応を2時間の時点で停止した(
図2、上の画像)。最初の実験のように、NaClを含まない溶液は、鉄に銅めっきをもたらし、除去するのが困難であった(
図2、下の画像)。結果として、この反応については収率は得られなかった。溶液番号3(5当量)からの粒径は、溶液番号2のものより大きかった(
図2、上の画像)。両方の収率は、同様であった(それぞれ88%及び85%)。
【0058】
(d)この反応(実施例2(a)により詳細に記載)は、3.5及び4.1当量のNaClを有する溶液をより大規模(それぞれ、250mLの0.8308M及び0.8303MのCuSO4溶液)に比較した。4.1当量の溶液は、3.5当量の溶液よりも大きな粒を有するようであった。
【0059】
一般に、表面の銅粒径は、NaCl濃度の増加とともに増加するようであった。銅析出物の全体的な収率は、NaCl濃度によって大きく影響されるようには見えなかった。鉄から銅を除去できる有効性は、特に、NaClが添加されていない溶液と比較した場合に顕著である。少なくとも3当量に相当するNaClの濃度は、同様に良好な質の粒の製造をもたらした。
【0060】
実施例2:銅粒径の決定
(a)2つの反応を同時に行った。第1の溶液は、0.8308MのCuSO4と3.5当量のNaClとを含有していた。第2の溶液は、0.8303MのCuSO4と4.1当量(上限のバランス)のNaClを含有していた。各溶液を、水平なFe棒を並べた容器に注いだ。反応を2時間放置して、最適な粒径を得た。反応の後処理に続いて、銅を一連の3つの篩(860μm、250μm、及び88μm)に通して、製造された粒のサイズ分布を決定した。溶液番号1の粒径分布は、以下の通り、59%が、860μm超、24%が、250~860μm、16%が、88~250μm、1%未満が、88μm未満であった。溶液番号2の粒分布は、47%が、860μm超、29%が、250~860μm、21%が、88~250μm、約3%が、88μm未満であった。
【0061】
(b)0.8306MのCuSO4溶液及び4.1当量のNaClを用いて、(a)に記載の反応を繰り返した。粒のサイズ分布は、以下の通り、54%が、860μm超、25%が、250~860μm、21%が、88~250μm、1%未満が、88μm未満であった。
【0062】
(c)エキゾチック銅鉱石試料から得られた0.76MのCuSO4浸出溶液及び5当量(55g)のNaClを用いて、(a)に記載の反応を完了させた。試料は、銅粘土、銅曹長石(copper albite)及び銅シリカであると記載されていた。しかし、本発明者らは、それが少量の孔雀石を有する主に珪孔雀石を有するエキゾチック銅鉱石であると特定した。粒径分布は、18%が、860μm超、49%が、250~860μm、33%が、88~250μm、1%未満が、88μm未満と決定された。
【0063】
(d)実施例3(a)、3(b)及び3(c)により詳細に記載される実験は、粒の質に対する反応時間の影響を試験するために設計されたが、粒径分布も同様に測定された。比較のために、120分間実行された溶液からのデータのみを使用する。実験は、それぞれ4.8、4.9、及び4.9当量のNaClを添加した、50mLの0.8541M、0.8310M、及び0.8342MのCuSO4を用いて実行した。銅の粒径分布は、以下の通り、平均で1.5%(0.6%、2%、2%)が、860μm超、平均で54%(54%、58%、49%)が、250~860μm、平均で36%(35%、34%、39%)が、88~250μm、平均で9%(11%、6%、11%)が、88μm未満であった。
【0064】
全体として、より大規模な実験は、概して、より大きな割合の860μmを超える粒を生成し、粒の80%超は250μmより大きかった(
図3)。これに対する例外は、粒の大部分が250~860μmであった(ほぼ70%は、依然として250μm超であったが)エキゾチック銅鉱石浸出溶液であった。理論によって限定されることを望むものではないが、これは、濃度差に起因する可能性がある(下記参照)。小規模反応は、250~860μmの範囲において最大量の粒を生成したが、およそ90%は、88~860μmであった。これは、大きな粒(860μm超)がはるかに高いパーセンテージであり、より低い範囲(88~250μm)ではより少なかった、大規模反応とは異なる。最大粒径は、NaCl濃度の増加とともに増加するようであったが、上記で決定された全体的なサイズ分布は、NaCl濃度の変化による影響をそれほど受けないようである(
図4)。しかし、これらの反応は、完了まで実行されなかった。理論によって限定されることを望むものではないが、溶液が非生産的になるまで放置された場合、120分後に小さな粒が増加するため、粒の比率は変化する可能性がある。理論によって限定されることを望むものではないが、銅粒の質がCuSO
4濃度に依存することが示されており、より低い濃度ではより小さい粒が見られるため、これはCuSO
4濃度に起因する可能性がある。
【0065】
実施例3:粒径及び収率に対する反応時間の影響
(a)0.8541MのCuSO
4及び5当量のNaClの溶液を4つのビーカーに分けた(各50mL)。反応をそれぞれ30、60、90及び120分で後処理した。反応の収率は、溶液中の初期CuSO
4に基づいて、44%、72%、75%、及び92%であった。各反応の効率は、消費された鉄の量に基づいて、78%、90%、96%、及び97%であった。次いで、各溶液の固体を上記の篩に通した。粒径分布の結果は、以下の表1の通りであった。
【表1】
【0066】
これらの条件下で、より大きなサイズ範囲で最も高いパーセンテージの粒を製造した反応時間は、120分であった。
【0067】
(b)5当量のNaClを有する0.8310MのCuSO
4溶液を用いて、実施例3(a)に記載の反応を繰り返した。今度は、反応を30、60、90、120及び150分後に後処理した。使用したCuSO
4に基づく収率は、それぞれ34%、59%、78%、93%、及び87%であった。消費された鉄に基づく反応の効率は、それぞれ77%、87%、91%、94%、及び90%であった。粒径分布の結果は、以下の表2の通りであった。
【表2】
【0068】
結果は、実施例3(a)のものと概ね一致する。
【0069】
(c)0.8342MのCuSO
4溶液及び5当量のNaClを用いて、実施例3(a)に記載の実験を繰り返した。実施例3(b)と同様に、反応を30、60、90、120及び150分後に後処理した。反応の収率は、それぞれ31%、59%、81%、85%及び92%であった。反応のパーセント効率は、それぞれ70%、87%、93%、93%、及び94%であった。粒径分布の結果は、以下の表3の通りであった。
【表3】
【0070】
この実験の結果は、実施例3(b)ではそうではなかったが、収率が120分よりも150分で改善されたことを除いて、実施例3(a)及び3(b)の実験と概ね一致する。
【0071】
(d)5当量のNaClを添加したエキゾチック銅鉱石浸出溶液(0.6107M)を用いて、実施例3(a)~(c)と同様の反応を行った。反応物を90、120及び150分後に後処理した。収率は、それぞれ57%、65%及び76%であった。反応のパーセント効率は、それぞれ89%、89%及び94%であった。粒径分布は、以下の表4の通りであった。
【表4】
【0072】
収率は、ストック溶液よりも顕著に低かったが、粒径分布は、90分後に大きな影響を受けないようであり、ストック溶液の結果と同等であった。反応を延長した場合、収率は同等であった。
【0073】
(e)0.6055Mのストック溶液及び5当量のNaClを用いて、実施例3(d)からの反応を繰り返した。収率は、90、120及び150分でそれぞれ70%、78%及び83%であることがわかった。効率は、それぞれ92%、95%及び96%であった。粒径分布は、以下の表5の通りであった。
【表5】
【0074】
結果は、ストック溶液を使用した実施例3(a)~3(c)の実験とよく一致した。
【0075】
図5は、塩化物と銅との比が5:1である反応の
図4よりも詳細な分析を示す。このプロットは、反応時間の関数としての粒径分布及び反応収率を示す。全体として、ストック溶液における収率及び粒の質の両方において有利な値をもたらした反応時間は、120分であった。粒径分布は、90分後にかなり一貫しているようであった。浸出溶液については、ストック溶液において見られる収率と同じ収率を達成するためには、150分のわずかに長い時間又は更に長い時間が有用であり得る。この実験における粒子径の分布は、塩化物と銅との比が4:1である反応と同様である。
【0076】
実施例4:CuSO
4濃度の効果
(a)4.5当量のNaClと0.1432M、0.2772M、0.3867M及び0.5100MのCuSO
4濃度とを用いて4つの50mL溶液を調製した。反応を120分間進行させた。反応収率は、CuSO
4濃度が最大0.3867Mまで増加するのに伴って増加し、その後、収率は、実質的に一定のままであった(番号1:59%、番号2:67%、番号3:75%、番号4:73%)。理論によって限定されることを望むものではないが、粒径は、0.51M溶液について定性的に最高であり、CuSO
4濃度の減少とともに減少した(
図7)。
【0077】
(b)5当量のNaClを有する、0.1757M、0.2748M、0.3762M及び0.5120MのCuSO4の溶液を用いて、実施例4(a)の反応を繰り返した。この場合の収率は、[CuSO4]の増加とともに増加した(番号1:54%、番号2:73%、番号3:75%、番号4:78%)。粒径に関して実施例4(a)と同様の結果が得られた。0.51M未満の濃度では、良質な粒が得られないようであった。
【0078】
(c)3.5当量のNaClと0.1432M、0.2544M、0.3942M、及び0.5193MのCuSO4濃度とを用いて、実験を繰り返した。溶液番号4(0.5193MのCuSO4)は最良の固体をもたらしたが、どの溶液も良質な粒を製造しなかった。収率は、[CuSO4]が最大0.3942Mまで増加するのに伴って増加し、そこで実質的に横ばいになった(番号1:62%、番号2:76%、番号3:86%、番号4:85%)。
【0079】
全体として、収率は、一般に最大約0.38MまでのCuSO4濃度の増加とともに増加した。0.51MのCuSO4未満では、析出した銅は、非粒状であるようだった。この実施例で使用したNaClの濃度は、これらの結果に影響を与えないようであった。
【0080】
実施例5:粒の外観及び様々なハロゲン化物:銅の比の比較
実施例1(a)に記載のものと同様の手法を使用して、
図8Aに示されるように、塩化物と銅との初期モル比(4:1)の高い比で、銅を粗い塊状の結晶粒として沈殿させた。塩化物と銅との低い初期モル比(1:1)では、沈殿した銅は、
図8Bに示されるように、樹枝状結晶になる傾向がより強い。
【0081】
検討
本方法では、銅(II)の前還元は不要であり、還元はスムーズに進行し、溶液中のCu(II)は粒状金属銅にスムーズに還元される。理論によって限定されることを望むものではないが、実行時の酸化還元体制は、以下の酸化還元反応に基づく。
CuClx
n-+2e-1<->Cu0+xCI-1、ここで、x=3又は4、n=1又は2である。 (1)
【0082】
対照的に、国際公開第2009/007792(A1)号において提案されている酸化還元反応式は、以下の通りである。
Cu+1+e-1<->Cu E0=0.52V (2)
Cu2++2e-1<->Cu E0=0.34V (3)
【0083】
反応式2及び3では、Cu1+及びCu2+の濃度は平衡から決定され、ここで、ほんのわずかの銅のみが、多量の塩化物を含有する溶液中で錯体を形成していないイオンとして存在する。
Cu+1+4Cl-<->CuCl4
-3 (4)
Cu+2+4CI-<->CuCl4-2 (5)
【0084】
国際公開第2009/007792(A1)号の方法では、予備還元は、実際には、テトラクロロ銅酸塩(II)9のテトラクロロ銅酸塩(I)への還元に基づくことになるが、この反応の電位の値は報告されていない。
CuCl4
-2+e-1<->CuCl4
-3 (6)
【0085】
様々な平衡についての文献値がない場合、反応の進行に対する錯体形成の影響の重要性を予測することは困難である。しかし、十分な量のNaClの使用を含む本開示の例では、予備還元は必要とされない。銅はスムーズに析出し、CuClの形跡は見られなかった。高いレベルの塩化物は、この反応の過程に顕著な影響を与えた。他の好適なハロゲン化物は、銅の付着及び生成物の純度の両方に関して、この還元の結果に同様に顕著な効果を有する可能性がある。例えば、臭化銅は、塩化銅と同様に反応すると予想される。
【0086】
上記の説明は、1つ以上の装置又は手法の例を提供するが、他の装置又は手法が添付の特許請求の範囲内にあり得ることが理解されるであろう。
【0087】
本明細書で参照されている文献の完全な引用
1Jack T.Gentry Bachelor of Science in Metallurgical engineering thesis,Montana School of Mines 1950による引用
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【国際調査報告】