(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】バルーンモジュールを含む医療機器
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20240702BHJP
A61F 2/24 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A61M25/10 510
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577964
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 IB2022055595
(87)【国際公開番号】W WO2022264083
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523473394
【氏名又は名称】フープ メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マッジ、エドワード チャールズ
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097BB01
4C097SB00
4C267AA06
4C267AA07
4C267AA08
4C267AA55
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB12
4C267BB27
4C267CC09
4C267CC19
4C267DD01
(57)【要約】
本発明は、人体内で使用するための医療機器(10)であって、遠位端および近位端を有するカテーテルチューブ(12)と、カテーテルチューブ内に画定され出口(32)を有する膨張通路(30)と、出口を囲むようにカテーテルチューブと係合する第1の端部(40)および第2の端部(42)を有し、第1の端部(40)と第2の端部(42)との間に外壁(50)、閉じた周囲部(44)、および内壁(52)が配置されて膨張エンクロージャ(55)を画定する少なくとも1つのバルーンモジュール(38)と、内壁内に画定された空洞(53)とを含み、入口を通って膨張エンクロージャ内に膨張流体が流入することによって、バルーンコンポーネントは、収縮状態から膨張状態に膨張可能であり、バルーンは、内部で内壁が外壁に直接結合されている少なくとも1つの結合ゾーン(54)を有し、膨張状態において、外壁と、内壁の少なくとも一部とが、カテーテルの長手軸線に対して相対的に半径方向外側に移動して空洞の拡大を引き起こし、閉じた周囲部をカテーテルの長手軸線から半径方向に間隔を置いて配置する、医療機器(10)を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体内で使用するための医療機器であって、
遠位端および近位端を有するカテーテルチューブと、
前記カテーテルチューブ内に画定され出口を有する膨張通路と、
前記出口を囲むようにカテーテルチューブと係合する第1の端部および第2の端部を有し、前記第1の端部と前記第2の端部との間に外壁、内壁、および前記外壁と前記内壁の間の縁部が配置されて膨張エンクロージャを画定する少なくとも1つのバルーンモジュールと、
内部で前記内壁が前記外壁に直接結合されている少なくとも1つの結合ゾーンと、
前記内壁内に画定された空洞と
を含み、
入口を通って前記膨張エンクロージャ内に膨張流体が流入することによって、バルーンコンポーネントが収縮状態から膨張状態に膨張可能になっている、前記医療機器において、
前記縁部は、前記バルーンコンポーネントが前記収縮状態から前記膨張状態に移動するときに、前記外壁と、前記内壁の少なくとも一部とが、カテーテルの長手軸線に対して相対的に半径方向外側に移動して前記空洞の拡大を引き起こすように、前記カテーテルの長手軸線から半径方向に間隔を置いて配置されることを特徴とする、医療機器。
【請求項2】
前記縁部は、前記外壁と前記内壁との間の境界または移行部を画定する湾曲または屈曲した縁部または領域である、請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記縁部は円周経路をたどる、請求項2に記載の医療機器。
【請求項4】
前記縁部は、ギザギザ、波線状、正弦波状、または王冠状である、請求項3に記載の医療機器。
【請求項5】
前記縁部は、留め継ぎの合い口となっている、面取りされているか、または傾面になっている、請求項3または4に記載の医療機器。
【請求項6】
前記カテーテルチューブは、少なくとも1つの作業通路を有する、請求項5に記載の医療機器。
【請求項7】
前記カテーテルチューブは、内部に前記少なくとも1つの作業通路が画定される導管を含む、請求項6に記載の医療機器。
【請求項8】
前記第1の端部は、前記カテーテルチューブと係合し、前記第2の端部は、前記導管と係合する、請求項7に記載の医療機器。
【請求項9】
前記第1の端部は、前記導管と係合し、前記第2の端部は、前記カテーテルチューブと係合する、請求項7に記載の医療機器。
【請求項10】
前記導管は、遠位端に配置された、または遠位端に向かって配置された入口を有する、請求項7~9のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項11】
前記導管は、拡張セクションとして前記バルーンコンポーネントの縁部を越えて延在する、請求項7~10のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項12】
前記バルーンモジュールは、複数のテザーを含み、前記テザーの各々は、前記縁部と前記拡張セクションとの間に延在する、請求項11に記載の医療機器。
【請求項13】
前記テザーは、互いに円周方向に等間隔に配置されている、請求項12に記載の医療機器。
【請求項14】
前記テザーは、前記縁部と前記拡張セクションとの間で斜め方向に延在する、請求項13に記載の医療機器。
【請求項15】
前記テザーは、前記拡張セクションの外面に結合されるように適合された管状首部で収束している、請求項14に記載の医療機器。
【請求項16】
前記縁部と前記拡張セクションとの間に延在する円錐形フィルタを含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項17】
前記少なくとも1つの結合ゾーンは、円周方向に連続するバンドである、請求項1~16のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項18】
少なくとも1つの前記円周方向に連続するバンドは、前記縁部である、請求項17に記載の医療機器。
【請求項19】
複数の結合ゾーンを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項20】
各々の結合ゾーンは、細長いか、または円形である、請求項19に記載の医療機器。
【請求項21】
各々の結合ゾーンは、長手方向、円周方向、螺旋状、または渦巻き状に構成されている、請求項19または20に記載の医療機器。
【請求項22】
細長い結合ゾーンは、真っ直ぐであるか、またはV字形、W字形、もしくは山形の形状をとる、請求項20または21に記載の医療機器。
【請求項23】
一対の細長い結合ゾーンが交差または結合して、X字形結合ゾーン、またはジグザグ結合ゾーン、またはS字形結合ゾーン、または正弦波結合ゾーンを提供する、請求項20~22のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項24】
前記バルーンコンポーネントは、前記結合ゾーン間に画定された複数の膨張可能なポケットを含む、請求項19~23のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項25】
前記膨張可能なポケットのうちの少なくとも1つは、前記縁部に隣接する円周方向に連続する膨張可能なポケットである、請求項24に記載の医療機器。
【請求項26】
前記バルーンコンポーネントは、前記第1の端部および前記第2の端部と前記縁部との間の円錐部分を備えて構成される、請求項1~25のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項27】
前記バルーンコンポーネントは、円錐部分と、前記円錐部分と前記縁部との間の円筒部分とを備えて構成される、請求項1~26のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項28】
少なくとも1つの結合ゾーンが、前記空洞を前記外壁の外部に開く開口部を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項29】
前記バルーンモジュールは、前記開口部を横切って延在するフィルタを含む、請求項28に記載の医療機器。
【請求項30】
前記外壁および前記内壁は、それぞれ第1の材料および第2の材料で作られている、請求項1~29のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項31】
前記第1の材料は、前記第2の材料よりも柔らかく弾性のある材料である、請求項30に記載の医療機器。
【請求項32】
前記第2の材料は、前記第1の材料よりも硬い材料である、請求項30に記載の医療機器。
【請求項33】
前記第1の材料は、前記第2の材料よりも大きい摩擦係数を有するか、または前記第2の材料よりも小さい摩擦係数を有する、請求項30~32のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項34】
前記第1の材料は、前記第2の材料よりも大きい摩擦係数を有する、請求項33に記載の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、膨張状態と非膨張状態との間で作動可能な中空バルーンコンポーネントまたはモジュールを含む、バルーンカテーテル、イントロデューサシースまたはインプラントなどの人体内で使用するための医療装置に関する。膨張管腔によって膨張または収縮した状態を維持し、多くの医療用途に使用できる構成を提供する。
【背景技術】
【0002】
医療用バルーンコンポーネントは、多様な病状を治療するために、多くの異なる種類の医療機器に組み込まれており、これらのバルーンコンポーネントは、様々な形状および形態をとる。
【0003】
以下、「コンポーネント」および「モジュール」という用語は、個別に膨張可能なバルーンユニットを指すために同じ意味で使用される。
【0004】
典型的なバルーンカテーテルにはバルーンコンポーネントが含まれており、バルーンコンポーネントは、膨張すると、拡張して経皮アクセスを介して人体内で有用な作動を行う。バルーンカテーテルは、比較的小さな直径を有する(そのため、例えば、鼠径部内でイントロデューサシースを通して人体に容易に挿入できる)非膨張または収縮状態と、より大きな直径を有する膨張または配備状態との間で、流体注入によって操作または作動できるバルーンコンポーネントを備えている。バルーンコンポーネントは、完全に膨張または配備した状態に到達することで機能を発揮する。例えば、バルーンコンポーネントは、圧縮/圧着された金属ステントまたはインプラントの内側部分に半径方向外向きの力を与えて、そのインプラントをその配備状態に拡張することができる。これらのより典型的なバルーンカテーテルの例には、PTA(経皮経管血管形成術)バルーンカテーテル、フォーリーバルーンカテーテル、およびTAVI(経カテーテル大動脈弁移植術)バルーンカテーテルが含まれる。
【0005】
バルーンコンポーネントは、非膨張または収縮状態におけるバルーンの交差プロファイルを最小限に抑えるために、バルーンコンポーネントに長手方向のプリーツまたは折り目が誘導され、その後、カテーテルシャフトの周りに巻き付けられる、プリーツ・アンド・ラップ(Pleat and Wrap)プロセスを受けることもある。
【0006】
バルーンコンポーネントは、腹腔鏡手術中にバルーンコンポーネントを利用して人体との固定を提供する、例えばアプライドメディカル社のKiiバルーンブラントチップアクセスシステムのようなイントロデューサシース/ポートでも使用されることがある。
【0007】
バルーンコンポーネントまたはバルーンコンポーネントアセンブリを含む多くの機器では、バルーンコンポーネントは、カテーテルシャフトの遠位端の近くまたは遠位端に取り付けられる。しかしながら、バルーンコンポーネントは、アプライドメディカル社のKiiアクセスシステムの事例のように、シャフトに沿った任意の中間点に取り付けることもできる。カテーテルシャフトは通常、ある程度の長さ(通常は、10cm~120cm)で動作し、カテーテルシャフトの近位端または近位端付近に膨張ポートがある。この膨張ポートは、バルーンコンポーネントと流体連通している。低侵襲医療機器業界の機器に精通している人には理解されるように、カテーテルシャフトは、多くの場合、ガイドワイヤー管腔および/または作業チャネルを含む。
【0008】
バルーンコンポーネントは、非膨張の状態で人体内に挿入される。直径が小さいため、切開またはアクセスルートを小さくすることができ、明らかな医学的利点が得られる。バルーンコンポーネントは、多くの場合、カテーテルの全長にわたって延びる膨張管腔を介して膨張手段(例えば、シリンジまたは自動膨張器)に接続される。バルーンコンポーネントが所定の位置に前進すると、膨張手段が作動し、膨張ポート、膨張管腔、およびバルーンコンポーネント内の圧力が増加する。この圧力の増加は、作業を行うために使用される。作業は、「コンプライアントバルーン」コンポーネントに関しては、血管または開口部(例えば、フォーリーカテーテル)を閉塞することであり、「非コンプライアント」コンポーネントに関しては、ステントを配備するか、または狭窄した動脈を拡張することである。この用途の例は、PTAカテーテルである。
【0009】
多くのバルーンカテーテルは、体内に短期間しか留まらない。PTA、PTCA(経皮経管冠動脈形成術)、およびTAVIバルーンカテーテルは、通常、体内に数分間留まる例である。フォーリーカテーテルまたは大動脈内バルーンポンプ(IABP)カテーテルのような他のバルーンカテーテルは、数週間またはさらには数か月にわたって人体内に留まる可能性がある。
【0010】
バルーンカテーテルの設計者およびエンジニアは、バルーンコンポーネントを「コンプライアント」、「セミコンプライアント」、「ノンコンプライアント」と呼ぶことがよくある。これら3つのグループは、バルーンコンポーネントがますます大きな圧力で膨張するにつれて、またはバルーンコンポーネントがますます大量の膨張流体(例えば、生理食塩水または空気)で膨張するにつれて、直径がどのように変化するかを説明することを目的としている。
【0011】
コンプライアントバルーンコンポーネントは、膨張すると直径が大幅に増加する。コンプライアントバルーンコンポーネントは、一般的に、シリコーン、ラテックス、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、または熱可塑性エラストマー(TPE)など、ショアデュロメータ硬度が20A~90Aの範囲の比較的柔らかく弾性のあるポリマーまたはゴム材料で作られている。これらの弾性材料は、バルーンコンポーネント内にさらに多くの膨張流体が追加されると、大幅に伸びるか、または歪む可能性がある。これらの比較的柔らかい材料で作られたバルーンコンポーネントは、通常、約3psi~20psiを超える圧力まで膨張すると、大部分が丸い球形または長球形の形状を呈するように膨張する。コンプライアントバルーンは通常、3psi~20psiの範囲のかなり小さい圧力で膨張する。実際、この種のバルーンコンポーネントに使用される材料の中には、極限伸び値が約500%(TPUなど)~約1500%(TPEおよびラテックスなど)のものもある。したがって、コンプライアントバルーンは、比較的小さい膨張圧力で、非膨張状態の約3mmから膨張状態の約20mmまで、破裂することなく直径を成長させることができる。この機能は、バルーンコンポーネントによる閉塞または機械的固定が必要な用途に役立つ可能性がある。また、これは、例えばフォーリーカテーテルのような尿道バルーンカテーテルのように、バルーンコンポーネントがターゲットの解剖学的構造または機器に比較的小さい力を加えて配備される間に、ターゲットの解剖学的構造または機器と接触することを必要とする用途にも役立つ可能性がある。
【0012】
一方、ノンコンプライアントバルーンコンポーネントは、より大きな圧力で膨張しても直径が大幅に増加しない。これらのバルーンコンポーネントを製造する強力で比較的硬い材料は、バルーンコンポーネント内により多くの膨張流体が追加されても、大幅に伸びたり歪んだりすることはない。その結果、より多くの流体が追加されると、バルーンコンポーネント内の圧力が大幅に増加するが、バルーンの直径は、それほど増加しない。これは、例えばバルーン拡張可能なTAVIステント留置心臓弁の配備など、比較的大きい力(および大きい圧力)が必要で特定の目標直径を達成する必要があるターゲットの解剖学的構造または機器の拡張などの用途に役立つ可能性がある。ノンコンプライアントバルーンコンポーネントは、多くの場合、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やナイロン12(PA12)など、ショアデュロメータ硬度が70D~90Dの範囲の比較的硬く、非弾性的で強度の大きい(極限引張強度の大きい)ポリマー材料で作られていることが多い。これらの比較的硬い材料で作られたバルーンコンポーネントは、通常、4atm~40atmの範囲の比較的大きい圧力に膨張させた場合でも、その形状と直径を保持する。
【0013】
セミコンプライアントバルーンコンポーネントは、コンプライアントグループとノンコンプライアントグループの中間のグループに分類されるコンポーネントである。セミコンプライアントバルーンコンポーネントは、より大きい圧力まで膨張すると、ノンコンプライアントバルーンコンポーネントよりも直径が大きくなる。セミコンプライアントバルーンは通常、1atm~20atmの範囲の圧力を保持する。これらは、比較的大きい圧力で成長するように構成されている場合もある可能性があり、したがって、通常、使用説明書内で機器の製造元が提供する直径対圧力のチャートまたは表を使用して、臨床医がバルーンを膨張させたいと思う直径を(通常はかなり狭い範囲内で)選択できる「フリーサイズ」タイプの機器を提供するために使用できる。
【0014】
標準的な形状のバルーンコンポーネント(例えば、PTAまたはPTCA処置で使用されるものなど)は、第1の首部または遠位首部(「脚部」または「尾部」としても知られている、大部分が管状または中空の円筒形の部分)を含む幾何学的特徴を有するものとして説明でき、第1の首部または遠位首部は、第1の円錐部分または近位円錐部分(首部から円錐への移行部分でより小さい直径を有し、円錐から中間部分への移行部分でより大きな直径を有する円錐形または半球状の領域)へと移行し、第1の円錐部分または近位円錐部分は、より幅広にテーパ状になって、バルーンの中間部分または「作動長」(典型的には、略円筒形の外面を有し、膨張時にバルーンコンポーネントの最大直径を有する領域である)へと移行する。遠位方向では、中間部分は、第1の首部と同様に大部分が管状である第2の首部または遠位首部までより狭くテーパ状になる(または先細りになる)第2の円錐部分または遠位円錐部分へと移行する。
【0015】
第1および第2の首部は、典型的には1つまたは複数のカテーテルシャフトに結合するバルーンコンポーネントの部分である。
【0016】
円錐状バルーンコンポーネントは、上記の標準的なバルーン形状に似た形状をしているが、中間部分または「作動長」がない。
【0017】
球状バルーンコンポーネントは、互いに接続された2つの半球状円錐セクションを有するものとして説明できる。したがって、円錐状および球状バルーンの場合、円錐部分は、バルーンの作動長として説明でき、これは、円錐部分がカテーテルシャフトに結合または固定されていないバルーンの唯一の部分であるためである。
【0018】
長球状バルーンコンポーネントは、球状バルーンコンポーネントに似ているが、半球状の円錐の間に円筒状の作動長または中間部分が配置されている。言い換えると、長球状バルーンコンポーネントは、標準形状のバルーンコンポーネントに似ているが、丸い円錐または半球状の円錐を備えている。
【0019】
例えば、コンプライアントバルーンコンポーネントは、非膨張状態と膨張状態の間で形状を大きく変化させることができる。例えば、コンプライアントバルーンは、部分的に(0.1psi~0.5spiのような低圧まで)膨張すると標準形状になり、完全に膨張すると成長して球形に変化する。
【0020】
拡張バルーンコンポーネントは、閉塞または狭窄した血管または圧着された金属ステント留置インプラントなどのターゲットを拡張または広げるためにしばしば使用される。場合によっては、ターゲットを拡張するために必要な力がかなり大きくなり、高圧耐性のあるノンコンプライアントバルーンコンポーネントが必要となる。
【0021】
拡張バルーンは、多くの場合、上記で「ノンコンプライアント」または「セミコンプライアント」として説明したような、比較的硬く非弾性で強力な(極限引張強度が大きい)ポリマー材料で作られている。これらの比較的硬い材料で作られたバルーンは、通常、6atm~30atmの範囲の比較的高圧に膨張させたときにその形状を保持し、これらの高圧に耐えることができるため、通常、バルーンコンポーネントから半径方向外向きの中程度から大きい力を必要とする拡張用途により適している。
【0022】
閉塞バルーンは、人体内の血管または開口部を遮断または閉塞するために使用される。閉塞バルーンは、多くの場合、全体的に球形または長球形の形状をしている。これらのタイプのバルーンの「円錐部」は、例えば0.3psiなどの非常に小さい圧力で加圧されると、円錐形となるように形成されていることがある。しかしながら、閉塞バルーンに使用される材料は、柔らかく柔軟な性質があるため、通常、より大きい圧力(例えば、5psi~20psiなど)に膨張させると形状が失われ、「丸くなって」しまう。長球状バルーンは、標準バルーンに似た形状をしているが、作動長の両端に丸い半球状の「円錐部」を有する。球状バルーンには通常、円筒形の中央部分がなく、各々の円錐部が他の円錐部に直接移行する。
【0023】
閉塞バルーンは、上記のコンプライアントバルーンの説明で詳述したように、比較的柔らかく弾性のあるポリマーまたはゴム材料から作られることが多い。これらの比較的柔らかい材料で作られたバルーンは、通常、約5psi~20psiを超える圧力まで膨張されると、大部分が円形または球形または長球形を呈するように成長する。別の言い方をすると、閉塞バルーンは通常、膨張中にその形状定義を保持せず、元の形状のよりも丸いバージョンに向かって拡張する。
【0024】
やや変わった形状または構成のバルーンコンポーネントを備えた、他のより風変わりなバルーンカテーテルも存在する。例えば、弁形成術用バルーンコンポーネント(心臓弁を拡張または放射状に拡張するために使用される)は、バルーンがターゲットの解剖学的構造(この例では心臓弁)内によりぴったりとフィットできるようにする(バルーンの作動部分に直径が小さい中央の「ウエスト」領域が含まれている)砂時計の形状をしていることがある。
【0025】
冷凍アブレーションバルーンカテーテルには、2つのバルーンコンポーネントが取り付けられる場合があり、内側バルーンは外側バルーンから半径方向内側に位置する。換言すれば、内側バルーンは、外側バルーン内に位置する。Arctic Frontシステムは、ここで説明されるような2つのバルーンを含むバルーンカテーテルの一例である。
【0026】
一部の機器には、内反または外反した領域を備えたバルーンコンポーネントが含まれている。Cook子宮頸管拡張バルーンは、この一例である。バルーンコンポーネントの一端(例えば、遠位首部)を内反させることによって、好ましい形状のバルーンアセンブリまたはバルーンモジュールを達成することができ、医療機器の機能性を改善することができる。
【0027】
実際には、標準形状のバルーンコンポーネントの近位首部は、近位バルーン首部を外側カテーテルシャフトに結合し、遠位バルーン首部をより小さい直径の内側カテーテルシャフトに結合できるようにするために、遠位首部よりも直径が大きい場合がある。内側シャフトと外側シャフトの間の環状空間は、バルーンコンポーネントを膨張させるための膨張管腔としてよく使用される。
【0028】
バルーンカテーテルの設計および製造の技術に精通している人は、他の例では、バルーンカテーテルのバルーンコンポーネントが、同じまたは類似の直径を有する近位首部および遠位首部を有することができ、同様の直径を有する近位首部および遠位首部を収容することができるマルチ管腔カテーテルシャフトに取り付けられ得ることを理解するであろう。マルチ管腔シャフト内の管腔の1つは、バルーンコンポーネント用の膨張管腔として使用される。膨張管腔は、多くの場合、バルーンコンポーネントの近位首部と遠位首部との間にある位置で1つまたは複数の「スカイブ」または切り込みまたは穴によって露出され、バルーンコンポーネントの内側部分が、膨張ポートと流体連通する膨張管腔と流体連通するようになっている。
【0029】
中空漏斗を提供する円錐形または球形のバルーンコンポーネントの潜在的な使用例としては、従来技術で議論されている、すなわち、人体内の血管および開口部の閉塞用、および/または人体内からの機器または老廃物または塞栓の回収用のものが挙げられる。
【0030】
従来技術で知られているように、標準形状のバルーンコンポーネント(1つの首部および1つの円錐、およびおそらく作動長の一部を含む)の一端を内反または外反させることにより、漏斗に類似した形状を有する中空バルーンコンポーネントを実現することができる。実際には、この従来技術は、良く言えば限定的であり、悪く言えば根本的に欠陥がある。
【0031】
実際には(コンプライアント内反バルーンまたは外反バルーンを試作した人には知られているように)、上記したようなコンプライアントまたは薄壁閉塞バルーンは、遠位端の周りで内側に潰れる。
【0032】
従来技術には、特許文献1(Gore)に記載されているような、少なくとも1つの内反/外反した首部領域を有する漏斗形状のバルーンが含まれる。この文書は、血管形成術、ステント留置術、または外科的処置中に塞栓を除去するための方法および装置について説明している。この装置は、カテーテルの遠位端に配置された均一な厚さの漏斗形の閉塞バルーンを有するカテーテルを備える。閉塞バルーンは、遠位端に融合されており、カテーテルの作動管腔内への実質的にシームレスな流れの移行を提供する。また、閉塞バルーンの遠位縁部は、カテーテル内への血流を促進し、塞栓を効率的に除去するために、血管の内壁に近接するように構成されている。
【0033】
Goreの装置の問題点は、バルーンを膨張させると、遠位のテーパ部が丸くなることである。バルーンは、柔軟な(または薄壁の)バルーンであるため、膨張時に円錐形になる可能性はほとんどない。この避けられない「丸くなる」ことは、機器または塞栓をより容易に内部へ後退させることができる漏斗形状を可能にする円錐形の遠位テーパである意図された設計からの逸脱を表している。
【0034】
あまり一般的ではないが、バルーンが内部で膨張している間に機器が血管を通って灌流できるように、並列に組み立てられた複数のバルーンコンポーネントを利用するバルーンカテーテルもある。これらの例には、TAVI弁の移植前に大動脈弁を事前拡張するために使用されるBard True Flowバルーンカテーテル、胸部腹部大動脈内で自己拡張型ステントグラフトを「再モデル化」または「後拡張」するために使用されるGore Tri-Lobeバルーンカテーテル、および最近では、気管を拡張するために使用される Disa Medinotec Trachealator気道拡張バルーンが含まれる。これらの機器はすべて、膨張するとバルーンモジュールまたはバルーンアセンブリが半径方向外側に拡張し、(標準的な拡張タイプのバルーンと同様に)内部から半径方向外側に力を加えることによってターゲットの解剖学的構造またはターゲット機器を拡張するが、同時に流体または血液が膨張したバルーンモジュールまたはバルーンアセンブリの少なくとも部分的に中空セクションを通って流れることを依然として可能にし、したがって使用中の灌流を許容するように設計されている。
【0035】
並列に組み立てられた複数のバルーンコンポーネントを備える機器を有することには、2つの重要な欠点がある。バルーンコンポーネントによって拡張される構造体は、配備される関連機器または患者の解剖学的構造の一部のいずれかであり、多くの場合、略円筒形であるため、複数の並列バルーンを備える機器は、望ましくない可能性のあるいくつかの離散的な線または接触領域に沿ってその円筒と接触することになる。例えば、(Gore Tri-Lobe バルーンカテーテルの場合のように)3つのバルーンが並列に位置している場合、ターゲットインプラントは、望まれるようなより円形の形状ではなく、(断面で見たときに)丸みを帯びた三角形に強いられる可能性がある。さらに、マルチバルーンモジュールを構成する個々のバルーンコンポーネントは、通常、かなり高価な部品である。例えば、標準的なPTAバルーンカテーテル機器では、バルーンコンポーネントのコストが、(カテーテルシャフト、膨張ルアー/ポートを含む)他の部品を組み合わせたものよりも高くなる可能性がある。したがって、複数のコンポーネントの使用に依存する設計では、通常、部品のコストが大幅に高くなり、商業的に望ましくない可能性がある。
【0036】
他の従来技術は、中空潅流バルーンモジュールを形成するために円管状に巻かれた螺旋状バルーンを示している。これらの中空螺旋灌流バルーンには、弁形成術、ステントの配備、バルーン拡張型TAVI弁の配備などのバルーン拡張用途を含む用途を有することが示されており、これらの作動は、螺旋の巻線内の中央部分が中空になっているおかげで灌流を維持しながら可能である。これらの螺旋バルーンの一部の欠点の1つは、大きな抵抗力にさらされる場合にコイルが潰れたり崩れたりするのを防ぐために、通常、各々の螺旋コイルの各々の巻線間に構造的な結合を作るために別個のフレームまたはコネクタが必要であることである(例えば、非配備金属ステントなど)。これらの追加コンポーネントにより、バルーンモジュールアセンブリの材料と容積が増加する。さらに、フレームなどの追加の構造コンポーネント自体は、そのフレームを拡張するために螺旋バルーンからの一定の拡張力を必要とする可能性があり、これは有用な作動を行うために利用できる外向きの半径方向の力の非効率または損失を表している。
【0037】
1つの標準形状のバルーンコンポーネントを別のバルーンコンポーネントの内側に配置し、両方のバルーンの半径方向内側に位置する内側支持部材を含むことによって、バルーンが膨張している間に灌流を可能にする中空のバルーンコンポーネントが実現される。このような発明は、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】加国特許出願公開第2492020号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第20200179116号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
本発明は、例えばバルーンカテーテル、イントロデューサシース、またはインプラントなどの医療機器を提供し、この医療機器は、中空のバルーンコンポーネントを含み、バルーンモジュールが取り付けられるカテーテル内に含まれる膨張管腔によって、膨張状態と非膨張または収縮状態との間で作動させることができる。
【0040】
より具体的には、本発明は、一実施形態では少なくとも1つの円錐形セクションを有し、別の一実施形態では円錐形セクションと円筒形作動セクションと、円錐形セクション、または円錐形セクションおよび円筒形セクションの半径方向内側に間隔をあけた空洞とを有する本体を有するバルーンコンポーネントの新規な構成を提供する。
【0041】
膨張状態では、バルーンモジュールの本体は、第1の首部領域を有する(背景技術のセクションで説明したような)標準形状のバルーンコンポーネントであって、第1の首部領域は第1の円錐領域へと移行し、第1の円錐領域は第1の作動領域へと移行し、第1の作動領域は第2の円錐領域へと移行し、第2の円錐領域は第2の首部領域へと移行する標準形状のバルーンコンポーネントか、または第1の首部領域を有する(従来技術で説明されているような)漏斗形状のバルーンコンポーネントであって、第1の首部領域は第1の円錐領域へと移行し、第1の円錐領域は任意選択で作動領域へと移行する漏斗形状のバルーンコンポーネントのいずれかとほぼ同様の全体形状を呈することができる。
【0042】
バルーンモジュールは、カテーテル上に取り付けられるか、カテーテルに固定されるか、またはカテーテルに結合されるように構成される。
【0043】
カテーテルは、膨張管腔および/または作業通路または作業チャネルを含むことができる。
【0044】
バルーンコンポーネントの本体は、外層または外壁と、内層または内壁とから構成することができ、それらの間に膨張可能なエンクロージャが画定され、このエンクロージャは、バルーンモジュールが取り付けられるカテーテルの膨張管腔と流体連通している。
【0045】
膨張可能なエンクロージャは、膨張管腔に沿って通過する膨張媒体の進入によって膨張して、非膨張状態から膨張状態に動かすことができる。
【0046】
従来技術とは異なり、内壁の少なくとも一部分は、例えば熱結合または熱溶接などの任意の適切な方法によって、外壁の少なくとも一部分に直接結合されて、少なくとも1つの結合ゾーンを提供することができる。
【0047】
本発明の目的は、内壁と外壁との間の膨張可能なエンクロージャの膨張時に、少なくとも1つの結合ゾーンが内壁の半径方向内側への膨張を防止または制限して、有利には、膨張状態で開いたままであり、拡張するかまたは潰れる内壁の進入によって影響を受けない内壁の半径方向内側に位置する空洞を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0048】
第1の観点から、本発明は、
外側首部壁部と内側首部壁部とを備え、各々がカテーテルシャフトに係合してカテーテルシャフトの膨張通路への出口を囲むように適合されている第1の首部セクションと、
外側首部壁部の拡張部としての外側円錐壁部と、内側首部壁部の拡張部である内側円錐壁部とを備える第1の円錐セクションと、
周囲に外側円錐壁部および内側円錐壁部が密閉可能に接続される閉じた周囲部と、
外側円錐壁部と内側円錐壁部との間の膨張エンクロージャとを有し、
内側円錐壁部の少なくとも一部は、任意の適切な方法によって、外側円錐壁部の少なくとも一部に直接結合されて、少なくとも1つの結合ゾーンを提供するバルーンモジュールを含む医療機器を提供する。
【0049】
内側円錐壁部は、空洞が円錐領域内に完全に画定され、内側円錐壁部から半径方向内側に位置するように、閉じた周囲部に沿って外側円錐壁部に接続することができる。
【0050】
あるいはまた、バルーンモジュールは、外側円錐壁部の拡張部としての外側作動壁部と、内側円錐壁部の拡張部としての内側作動壁部とを備える作動セクションを含むことができる。
【0051】
この代替例における膨張エンクロージャは、外側円錐壁部、内側円錐壁部、外側作動壁部、および内側作動壁部の間にあることができる。
【0052】
作動セクション領域は、大部分が円筒形、球形、または樽形の外形をとることができる。カテーテルは、内側首部壁部から内側円錐壁部への移行部付近で終端を迎えることができる作業通路を含むことができる。あるいはまた、作業通路は、首部領域を越えて遠位方向に延在することができる。あるいはまた、作業通路は、作動領域を越えて延在することができる。
【0053】
外側作動壁部は、閉じた周囲部の周りで連続的に内側作動壁部に接続することができる。
【0054】
作業通路は、内側首部壁部から内側円錐壁部への移行部付近で終端を迎えることができる。
【0055】
あるいはまた、バルーンモジュールは、外側円錐壁部の拡張部としての外側作動壁部と、内側円錐壁部の拡張部としての内側作動壁部とを備える作動セクションを含むことができる。
【0056】
さらに代替的に、バルーンモジュールは、作動セクションから延在して第2の首部セクションで終端を迎える第2の円錐セクションを含むことができる。外側作動壁部が閉じた周囲部の周りで連続的に内側作動壁部に接続されているため、第2の円錐セクションおよび第2の首部セクションは膨張可能ではなく、単一の壁部から構成することができる。
【0057】
好ましくは、作業通路は、第2の首部セクションの遠位で終端を迎える。
【0058】
第1の円錐セクションは、バルーンモジュールが膨張しているときに流体の流れもしくは灌流が通過できるように、または例えばガイドワイヤー、ガイドカテーテル、もしくはデリバリーカテーテルなどの他の機器が通過できるように構成された少なくとも1つの開口部を含むことができる。
【0059】
少なくとも1つの開口部は、外側円錐壁部を内側円錐壁部に結合することによって、それぞれの周囲部の周りで密閉することができる。
【0060】
バルーンモジュールは、少なくとも1つの開口部を覆うか、または少なくとも1つの開口部を横切って延在する可撓性のメッシュ、フィルタ、または織物を含むことができ、少なくとも1つの開口部は、例えばTAVI処置からのカルシウム片などのより大きな粒子がこの可撓性フィルタを通過するのを防ぎながら、血液などの流体が少なくとも1つの開口部を通って流れることを可能にするように適合されている。
【0061】
代替的または追加的に、作動セクションは、上記のように少なくとも1つの開口部を含むことができる。
【0062】
また、第2の円錐領域は、機器が配備されて膨張したときに、流体の流れもしくは灌流がそこを通過できるように、または例えばガイドワイヤー、ガイドカテーテル、もしくはデリバリーカテーテルなどの他の機器がそこを通過できるように適合された少なくとも1つの窓の切欠きを含むことができる。
【0063】
少なくとも1つの窓の切り欠きは、例えばTAVI処置からのカルシウム片などのより大きな粒子がこの可撓性フィルタを通過するのを防止しながら、例えば血液などの流体がそこを通って流れることを可能にするように構成された可撓性メッシュ、フィルタ、または織物がまたぐことができる。
【0064】
1つの代替例では、非膨張性の第2の円錐セクションは、上記のように適合された可撓性メッシュまたはフィルタで完全に作ることができる。
【0065】
バルーンモジュールは、第1の円錐領域が第1の首部領域の遠位に位置する状態でカテーテルに取り付けることができる。
【0066】
あるいはまた、バルーンモジュールは、第1の円錐領域が第1の首部領域の近位に位置する状態でカテーテルに取り付けることができる、すなわちバルーンモジュールを逆に取り付けることができる。
【0067】
第2の観点から、本発明は、人体内で使用するための医療機器であって、
遠位端および近位端を有するカテーテルチューブと、
カテーテルチューブ内に画定され出口を有する膨張通路と、
出口を囲むようにカテーテルチューブと係合する第1の端部および第2の端部を有し、第1の端部と第2の端部との間に外壁、閉じた周囲部、および内壁が配置されて膨張エンクロージャを画定する少なくとも1つのバルーンモジュールと、
内壁内に画定された空洞とを含み、
入口を通って膨張エンクロージャ内に膨張流体が流入することによって、バルーンコンポーネントが収縮状態から膨張状態に膨張可能であり、
バルーンは、内壁が外壁に直接結合される少なくとも1つの結合ゾーンを有し、
膨張状態において、外壁と、内壁の少なくとも一部とが、カテーテルの長手軸線に対して半径方向外側に移動して、空洞の拡大を引き起こし、閉じた周囲部をカテーテルの長手軸線から半径方向に離間させるように、カテーテルの長手軸線から半径方向に間隔を置いて配置される、医療機器を提供する。
【0068】
少なくとも1つの結合ゾーンは、膨張時に内側壁部を外側壁部とともに半径方向外側に移動させて空洞を拡張させることができる。
【0069】
バルーンコンポーネントは、カテーテルの配備方向または挿入方向(以下、遠位方向)に拡張することができる。この代替例では、バルーンコンポーネントは、第1の端部が第2の端部に対して近位に位置する状態でカテーテルチューブと係合する(以下、「前方拡張バルーン」と呼ぶ)。
【0070】
バルーンコンポーネントは、カテーテル後退方向(以下、近位方向)に拡張してもよい。この代替例では、バルーンコンポーネントは、第1の端部が第2の端部に対して遠位に位置する状態でカテーテルチューブと係合する(以下、「後方拡張バルーン」と呼ぶ)。
【0071】
閉じた周囲部は、外壁と内壁との間の境界または移行部を画定する湾曲または屈曲した縁部または領域であり得る(以下、「縁部」と呼ぶ)。縁部は、略円周経路を描くことができる。あるいはまた、縁部は、ギザギザ、波線状、正弦波状、または王冠状とすることができるか、または留め継ぎの合い口または楔状の形状(例えば、皮下注射針の鋭い先端に似た形状)を有することができる。
【0072】
出口は、カテーテルチューブに沿った任意の位置に配置することができる。好ましくは、出口は、遠位端に配置されるか、または遠位端に向かって配置される。
【0073】
カテーテルチューブは、少なくとも1つの作業通路または作業チャネルを有することができる。
【0074】
ガイドワイヤーは、少なくとも1つの作業通路に沿って、または少なくとも1つの作業通路中に通すことができる。
【0075】
カテーテルチューブは、内部に少なくとも1つの作業通路が画定される導管を含むことができる。
【0076】
バルーンコンポーネントの第1の端部は、カテーテルチューブと係合し、第2の端部は、導管と係合することができる。
【0077】
あるいはまた、バルーンコンポーネントの第1の端部は、導管と係合し、第2の端部は、カテーテルチューブと係合することができる。
【0078】
導管は、遠位端に配置された、または遠位端に向かって配置された入口を有することができる。
【0079】
カテーテルが内部に配備される血管に沿った改善された誘導または追跡が必要な用途では、導管は、拡張セクションとしてバルーンコンポーネントの縁部を越えて延在することができる。導管は、非外傷性先端部および放射線不透過性マーカーバンドを含むことができる。
【0080】
バルーンモジュールは、複数のテザーを含むことができ、テザーの各々は、縁部と拡張セクションとの間に延在する。
【0081】
テザーは、互いに円周方向に等間隔に配置することができる。
【0082】
複数のテザーは、縁部と拡張セクションとの間で斜め方向に延在することができる。複数のテザーは、拡張セクションの外面に結合されるように適合された管状首部で収束することができる。
【0083】
医療機器は、縁部と拡張セクションとの間に延在し、縁部または作動部分と拡張セクションとに密閉可能に接続される可撓性円錐形フィルタを含むことができる。可撓性フィルタまたは織物またはメッシュは、例えばTAVI処置からのカルシウム片などのより大きな粒子がこの可撓性フィルタを通過するのを防ぎながら、例えば血液などの流体がそこを通って流れることを可能にするように構成される。
【0084】
バルーンコンポーネントは、第1および第2の端部と縁部との間に円錐部分を備えて構成することができる。
【0085】
少なくとも1つの結合ゾーンは、円周方向に連続したバンドとすることができる。
【0086】
少なくとも1つの円周方向に連続するバンドは、縁部に隣接することができる。
【0087】
少なくとも1つの結合ゾーンは、任意の適切な方法を使用して、内壁部を外壁部に直接密閉係合させることによって形成することができる。
【0088】
あるいはまた、バルーンコンポーネントは、複数の結合ゾーンを有することができる。
【0089】
各々の結合ゾーンは、細長いか、円形とすることができる。細長い結合ゾーンは、長手方向、円周方向、螺旋状、または渦巻き状に構成することができる。細長い結合ゾーンは、真っ直ぐであるか、またはV字型、W字型、もしくは山形の形状をとることができる。一対の細長い結合ゾーンが交差または結合して、X字形結合ゾーン、またはジグザグ結合ゾーン、またはS字形結合ゾーン、または正弦波結合ゾーンを提供することができる。
【0090】
本発明の範囲内において、結合ゾーンは、上述の形状のうちの任意の1つ以上の組み合わせを含む形状をとり得ることが予想される。
【0091】
バルーンコンポーネントは、結合ゾーン間に画定された複数の膨張可能なポケットを含むことができる。
【0092】
膨張可能ポケットのうちの少なくとも1つは、縁部に隣接する円周方向に連続する膨張可能ポケットとすることができる。
【0093】
バルーンコンポーネントが円錐部分のみで構成される代わりとして、バルーンコンポーネントは、円錐部分と、円錐部分と縁部との間の円筒部分とを含むように構成されてもよい。
【0094】
複数の結合ゾーンは、円筒部分(または作動領域もしくは作動長)上、円錐部分上、または円筒部分と円錐部分の両方の上にあってもよい。
【0095】
非閉塞的なまたは灌流の実施形態では、少なくとも1つの結合ゾーンは、中空の空間または空洞を外壁部の外側に開いて、例えば血液などの流体、またはガイドワイヤーまたはガイドカテーテルなどの他の機器を、バルーンの円錐部分または円筒部分または作動部分を通して通過可能にする開口部を含むことができる。
【0096】
非閉塞的な実施形態では、外壁部および内壁部のうちの1つまたは複数を薬剤含有層でコーティングすることができる。
【0097】
好ましくは、複数の結合ゾーンは、開口部を含むことができる。複数の開口部は、円錐部分、円筒部分、または円錐部分と円筒部分上の結合ゾーンを貫通していてもよい。
【0098】
1つまたは複数の開口部は、例えばTAVI処置からのカルシウム片などのより大きな粒子がこの可撓性フィルタを通過するのを防止しながら、例えば血液などの流体がそこを通って流れることを可能にするように構成された可撓性フィルタまたは織物メッシュで密閉可能に覆われることができる。
【0099】
外壁および内壁は、それぞれ第1の材料および第2の材料で作ることができる。
【0100】
第1の材料は、空洞の形状を維持しながら、カテーテルが内部に配備される血管に対するシールの形成を助けるために、第2の材料よりも柔らかく、より弾性のある材料とすることができる。
【0101】
代替的または追加的に、内壁部の内側への膨張を制限するために、第2の材料は、第1の材料より硬くすることができる。
【0102】
さらに代替的に、第1の材料は、第2の材料よりも大きい摩擦係数を有することができるか、またはより小さい摩擦係数を有することができる。
【0103】
第1の材料がより大きい摩擦係数を有し、第2の材料がより潤滑性がある場合、管腔内での本体または機器の動きを容易にしながら、カテーテルを血管内に固定することを可能にすることができる。
【0104】
本発明は、
遠位端と近位端を有するカテーテルチューブと、カテーテルチューブ内に画定された膨張通路と、それぞれ上記したような前方拡張バルーンおよび後方拡張バルーンを含む、カテーテルチューブ上のバルーンカプセルとを含み、
前方拡張バルーンおよび後方拡張バルーンは、それぞれの縁部に沿って互いに係合する、バルーンカプセルカテーテルにも及ぶ。
【0105】
カテーテルの略遠位部分、好ましくは外側チューブの遠位部分は、ハブまたはその付近に取り付けられたプルワイヤーおよびハンドルによって、あるいは操縦可能なカテーテルに一般的に使用される他の方法によって操縦可能とすることができる。
【0106】
カテーテルは、バルーンが収縮状態にあるときにバルーンモジュール上にわたって滑るように適合された外側シースを含み得る。これは、バルーンを体内に挿入したり、ターゲット治療部位に向かう途中の狭い血管系に挿入したりするのに役立つ。
【0107】
本発明は、添付の図面を参照しながら、例によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【
図1A】1つ以上のバルーンモジュールを備える医療機器の様々な実施形態を概略的に示す。
【
図1B】1つ以上のバルーンモジュールを備える医療機器の様々な実施形態を概略的に示す。
【
図1C】1つ以上のバルーンモジュールを備える医療機器の様々な実施形態を概略的に示す。
【
図1D】1つ以上のバルーンモジュールを備える医療機器の様々な実施形態を概略的に示す。
【
図1E】1つ以上のバルーンモジュールを備える医療機器の様々な実施形態を概略的に示す。
【
図1F】1つ以上のバルーンモジュールを備える医療機器の様々な実施形態を概略的に示す。
【
図2】円錐形または漏斗形構成の単一のバルーンモジュールを示す、第1の実施形態に係る医療機器の立面図である。
【
図3】等角縦断面図で示された
図2の医療機器である。
【
図3A】
図1の医療機器のバルーンモジュールの結合領域または首部を概略的に示す。
【
図4】円錐構成の単一のバルーンモジュールを示す、本発明の第2の実施形態に係る医療機器の縦断面等角図である。
【
図6】円錐部分と円筒形の作動長部分を備えた単一のバルーンモジュールを示す、本発明の第3の実施形態に係る医療機器の縦断面等角図である。
【
図8】円錐形部分および円筒形部分内の単一のバルーンモジュールを示す、本発明の第4の実施形態に係る医療機器の一端からの等角図である。
【
図10】医療機器の第5の単一バルーンの実施形態を等角図で示す。
【
図11】医療機器の第6の単一バルーンの実施形態を等角図で示す。
【
図12】本発明の第7の単一バルーンの実施形態に係る医療機器の等角図である。
【
図13】本発明の第8の単一バルーンの実施形態に係る医療機器の等角図である。
【
図14】本発明の第9の単一バルーンの実施形態に係る医療機器の等角図である。
【
図14A】複数の遠位端テザーを有する本発明の第10の単一バルーンの実施形態に係る医療機器の等角図である。
【
図15】複数の遠位端テザーを有する本発明の第11の単一バルーンの実施形態に係る医療機器の等角図である。
【
図16】一対のバルーンモジュールを備える本発明の第11の実施形態に係る医療機器の等角図である。
【
図17】第12の単一バルーン後方拡張実施形態に係る医療機器の縦断面図である。
【
図18】第13の単一バルーンの実施形態に係る医療機器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0109】
図1A~
図1Eは、本発明に係る医療機器10の様々な実施形態および構成を示す。
【0110】
医療機器10は、近位端14と遠位端16との間に延在する細長い可撓性のカテーテルチューブ12を含む。チューブは通常、PEBAX、ポリウレタン、ナイロン12などの押出ポリマーチューブ、または多層または編組強化押出成形品から作られ、通常100mm~1200mmの長さを有する。カテーテルは、近位端に少なくともYコネクタまたはハブ20(1つまたは複数のルアーフィッティングを含む)を持っている。ハブ20は、少なくとも2つのポート、すなわち作動ポートまたはガイドワイヤーポート22と膨張ポート24とを含む。ハブは、止血弁(イントロデューサシースでは一般的である)、および血液またはその他の体液の漏出を最小限に抑え、空気の侵入を維持しながら、他の機器を作業通路に挿入したり、作業通路を介して回収したりできるようにする脱気ポートなどの追加の機構またはコンポーネントを収容するか、または備えることができる。ハブは、収縮時にバルーンモジュールを包み込むように構成されたシースを前進および後退させるための作動機構を備えることもできる。ハブは、操縦可能なカテーテル用の作動機構を含むこともでき、これにより、カテーテルチューブ12の遠位端を真っ直ぐな状態から幾分丸まった状態または曲がった状態に作動させて、バルーンモジュールを体内に配置するのを助長することができる。
【0111】
カテーテルチューブは、外側チューブ26と略同心の内側チューブ28とを備える。膨張通路30(
図3および
図4を参照)は、外側チューブと内側チューブとの間の環状空間によって画定される。膨張通路は、遠位端またはその近くに出口32を有する。膨張通路は、膨張ポート24と出口32との間を流体連通する。
【0112】
同軸膨張構成が図に示されているが、一般的な慣行であり、バルーンカテーテル設計および製造の技術に精通している人々にはよく知られているように、バルーンモジュールを膨張させる別の方法は、多管腔押出成形を使用することであることに留意すべきである。したがって、同軸構成は、本発明を限定することを意図しておらず、出口の遠位端の位置も本発明を限定することを意図していない。
【0113】
内側チューブ28内には、作業通路34が画定されている。この通路は、近位端14上の作動ポート22を作業通路開口部36と連通させる。作業通路34は、ガイドワイヤー管腔として使用することができる。作業通路開口部36は、ガイドワイヤーの近位端を受け入れるように構成することができ、作業通路は、そのガイドワイヤーが近位端14を越えてガイドワイヤーポート22の近位端を越えて延在するまで、ガイドワイヤーが近位方向に送られることができるように構成することができる。作業通路開口部36は、本発明のバルーンモジュールの第2の(小さいバージョン)がそこを通って並進移動できるように構成することができ、その結果、第2のバルーンモジュールが第1のバルーンモジュールに対してスライド可能かつ回転的に作動することができる。
【0114】
図1A、
図1B、および
図2に示されるように、機器10は、カテーテルチューブ12の遠位端に単一のバルーンモジュール38を有する。しかしながら、バルーンモジュールがカテーテルチューブ12の近位端と遠位端(14、16)の間の任意の点に配置することができることは本発明の範囲内であると考えられる。この点については、
図1Cを参照されたい。さらに、バルーンモジュールは、カテーテルシャフトに前向きまたは逆向きで取り付けることができる。
【0115】
カテーテルチューブ上のバルーンモジュールの位置、バルーンモジュールの向き、バルーンモジュールの形状、およびバルーンモジュールの数が、本発明を限定しないことを示すために、
図1A~
図1Eを参照されたい。
図1Dには、単一バルーンモジュール38.1と複合バルーンモジュール38.2の2つのバルーンモジュールが示されている。
図1Cには、2つの単一バルーンモジュールを備える複合バルーンモジュール38.3が示されている。
図1Dでは、単一のバルーンモジュール38.1は、後向きのモジュールである。後向きバルーンモジュール38.1は、前向きバルーンモジュール38.2の遠位に配置され、単一のバルーンモジュール38.1は、後向きモジュールである。
図1Eにおいて、第1の機器10.1は、第1のカテーテルチューブ12.1および第1の複合バルーンモジュール38.3を含み、第1の機器10.1は、第1の通路開口部36.1で遠位に終端を迎える。第1の通路開口部36.1からさらに遠位に突出するのは、第2のカテーテルチューブ12.2(第1のカテーテルチューブ12.1内で近位方向または遠位方向に滑動可能に、かつ回転可能に移動するように構成されている)と、第2の複合バルーンモジュール38.4と、第2の通路開口部36.2とを含む第2の機器10.2である。第1の機器10.1および第2の機器10.2の両方は、それぞれのカテーテルチューブ内に、例えばプルワイヤーを使用する操縦可能なカテーテルを含み、各々のカテーテルチューブを作動させ、経皮ガイドカテーテルおよびデリバリーシステムの分野で慣例であるような曲がりくねった解剖学的構造を通した機器のナビゲーションを可能にすることができる。
【0116】
図3、
図3A、および
図18に最もよく示されているように、バルーンモジュールは、第1および第2の端部(それぞれ40および42で示される)、閉じた周囲部44(いくつかの実施形態では屈曲縁部であり、他の実施形態では湾曲したリムまたは丸いリムである)、第1の端部と周囲部との間の外壁部50、および周囲部と第2の端部との間の内壁部52を有する。管腔、中空領域、または空洞53が内壁部内に画定される。
【0117】
バルーンモジュール38は、第1の端部40と第2の端部42の両方でカテーテルに密閉可能に固定され、膨張通路30への出口32を包む。実施例では、第1の端部は、外側チューブ26の外面46にバンド状に円周方向に固定され(以下、「首部」と呼ぶ)、第2の端部は、内側チューブ28の外面48にバンド状に円周方向に固定されている。このようにして、環状の出口が包まれる。バルーンモジュールは、
図3Aに示されるように、近位端部14に向かって両方の固定ゾーンで円錐形状から管状形状に移行する。しかしながら、
図18では、内側チューブが外側チューブを大幅に超えて延在しており、第2の端部の周囲の固定ゾーンは、遠位端16に向かって延在する。
【0118】
図18に示されるようにバルーンモジュールを構成すると、カテーテル上に組み立てる前に第2の端部42を内反させたり、第1の端部40を外反させたりする必要がなくなり、特にバルーンモジュールが、例えばPETまたはナイロン12などの比較的硬い材料で作られている場合、大きな課題をもたらす可能性のある仕事を回避するため、製造が容易になる可能性がある。
【0119】
生理食塩水(または生理食塩水に硫酸バリウムなどの造影剤を加えたものを生理食塩水と混合して、X線または蛍光透視下でバルーンモジュールを視覚化可能にすることができる)、水、空気、窒素、または二酸化炭素などの膨張媒体または流体を膨張ポート24内に導入し、これが膨張通路30に沿って流れ、出口32からバルーンモジュールの内部(膨張エンクロージャ55)に流出することにより、バルーンモジュールを収縮状態から膨張状態に膨張させることができる。通常の医療用バルーンの場合と同様に、収縮状態は膨張状態に比べて体積が大幅に小さくなる(または直径が小さくなる)。したがって、バルーンモジュールは、膨張状態にあるときよりも直径が実質的に小さく、変位量が少ない収縮状態に作動させることができる。この機能は、標準的なバルーンコンポーネントと同様であり、医療機器10を(通常、イントロデューサシースまたはポートを介して)人体内に挿入し、収縮した状態で人体内のターゲット位置に操作できるという点で同じ利点を有する。バルーンモジュールがターゲット位置に配置されると、バルーンモジュールを膨張させて有用な作業を実行できる。
【0120】
しかしながら、本発明の医療機器10の特徴的な構成は、バルーンモジュール38の外壁部50が少なくとも1つの結合ゾーン54内で内壁部52に結合されていることである。最初の実施例として、バルーンが円錐形状をとる、
図2および
図3に示される第1の実施形態では、少なくとも1つの結合ゾーンは、閉じた周囲部44に隣接する円周方向に連続するバンド54.1である。
【0121】
バルーンモジュール38は、例えばポリウレタン、ナイロン12、PEBAX、PET(ポリエチレンテレフタレート)、またはTHV(例えばテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびフッ化ビニリデンを含むポリマー)などのポリマーから作製することができる。ポリマーには、より大きい膨張圧力での耐衝撃性または破裂性を向上させるために繊維強化材を含めることもできる。バルーンモジュールは、ポリウレタン、Pebax、または熱可塑性エラストマー(TPE)などのコンプライアントまたはセミコンプライアントの医療用バルーン材料、またはPET(ポリエチレンテレフタレート)またはナイロン12などのノンコンプライアントの医療用バルーン材料を使用して作製できる。バルーンモジュールは、外壁部50に1つの材料を使用し、内壁部52に別の材料を使用して作製することもできる。
【0122】
バルーンモジュール38は、ブロー成形プロセス、浸漬注型もしくは浸漬成形プロセス、または射出成形プロセスを使用して作られたバルーンコンポーネントまたは要素を使用して製造することができる。外壁部50の内壁部52への結合は、熱結合(heat bonding)、熱結合(thermal bonding)、超音波溶接、接着剤、リベット、ステープル、クリップ、フープ、織り目または織り糸、または前述のものの任意の組み合わせを使用して達成することができる。
【0123】
膨張すると、収縮状態から膨張状態へと移り、バルーンは、内壁52内に中空領域または空洞を維持しながら、バルーンカテーテルが内部に配備されている体腔または血管の壁部に測定可能な外向きの半径方向の力を生成する膨張した形状をとる。
【0124】
外壁部50を内壁部52に固定する、接合する、または結合することによって、内壁部が伸びたり、しわになったり、座屈したり、または内側に折れたりすることが大幅に防止される(内腔、中空領域、または空洞53の閉塞を防止する)。このように接続されると、外壁部50は、バルーンモジュールの膨張時に半径方向外向きの力を生成し、それによって内壁部52を半径方向外向きに引っ張る。バルーンが膨張すると、正味の外向きの半径方向の力は、膨張圧力に外壁部の面積(「外向きの面積」)から内壁部の面積(「内向きの面積」)を引いたものを掛けた値にほぼ等しくなる。バルーンコンポーネントは、通常、内向きの面積よりも大きい外向きの面積を提供するように構成されるため、正圧で膨張させたときに本発明によって生成される正味の力は、半径方向の外向きの力である。この半径方向の外向きの力は、血管の内径に対するシールを形成するため、および/または、経皮的低侵襲手技によって動脈瘤を治療するための、例えばステントまたはバルーン拡張型TAVI弁またはステントグラフトなどの血管またはステント留置したインプラントを開くまたは拡張するために有用であろう。
【0125】
本発明の医療機器10は、例えば、脳保護システムのように人体からカルシウム沈着物や断片を濾過除去または捕捉または回収または除去する回収装置として、例えばバルーンカテーテルなどの他の医療機器を回収するために、または膨張状態にあるときに灌流を維持しながら(弁形成術を採用するような)人体内の血管または(バルーン拡張可能なTAVI処置を採用するような)インプラントに半径方向外向きの力を提供するための拡張灌流バルーンとして、 または、バルーンモジュール38の外壁部が薬剤でコーティングされ、バルーンモジュールの膨張時にこの壁部が例えば血管のようなターゲット解剖学的構造物に接触して、膨張状態で灌流を維持しながらターゲット解剖学的構造物に薬剤を供給する薬剤供給機器としてなどの多くの医療的治療用途に使用することができる。
【0126】
作業通路34は、洗浄流体または加圧流体または造影流体を導入するために、または例えば、いくつか例を挙げると、ガイドワイヤーまたは血管内スネアシステム(体腔内の異物を回収し、操作するように設計されている)または別のバルーンカテーテルなど、他の機器が通過できる作業チャネルまたは導管として、使用することができる。
【0127】
図2および
図3に示される第1の実施形態10Aに戻ると、ここでは、外壁部50は、連続的な円周バンド54.1内で内壁部52に連続的に密閉可能に接続されており、このバンドの後ろに膨張可能領域56が配置されている。この実施形態のバルーンは、(背景技術で説明したように)円錐形の医療用バルーンの一方の首部を内反または外反して、バルーンモジュールの第1の端部40または第2の端部42を形成することによって製造することができる。
【0128】
バルーンモジュールに円周バンド54.1を設けることには、バルーンモジュールを作製するために使用されるバルーンコンポーネントの一部を内反させたり外反させたりして外壁部と内壁部を設ける必要がないという利点がある。両方の壁部は、ブロー成形するか、またはバルーンコンポーネントとして個別に作製し、その後、作動領域上またはその近くで円周方向に切断し、
図2、
図3、
図4、
図9、
図11、
図12、
図14、
図15、
図16、および
図17に示す向きで組み立てることができ、その後、外壁および内壁(それぞれ50および52)をバンド54.1に沿って共に接続または結合することができる。
【0129】
バルーンが、Pebax、ナイロン12、およびPETなどのより硬い材料で作られている場合、バルーンを内反または外反させるのは容易ではなく、場合によっては不可能であるため、バルーンモジュール38をこのように製造することは有益である。さらに、この製造方法により、外壁部と内壁部に異なる材料を使用することが可能になり、以下に説明する利点がある。
【0130】
バルーン38をこのように作製することにより、より硬くて強い材料の導入が可能となり、例えば狭窄した血管を開く、ステントを配備する、ステントを後拡張する、またはステント留置した心臓弁を配備または後拡張するために大きな外向きの半径方向の力が必要な場合など、高圧バルーンの用途に有益である。さらに、この製造方法は、各々の壁部(50、52)を別個の材料から形成することを可能にし、例えば、外膜をPebax 72D材料から作ることができ、一方、内膜をより柔らかく、より弾性のあるPebax 63D材料から作ることができる。ここでの利点は、各々の表面を最適化して機能の向上を促進できることである。例えば、内壁部51は、異物(以前に配備された医療機器など)を内部に容易に引き入れることができるように、THVのような潤滑性の材料から作製することができ、一方、外壁部50は、血管内での固定を促進するために、ポリウレタンのようなより大きい摩擦係数の材料から作製することができる。
【0131】
あるいはまた、内壁部52をより強くて硬い材料(ナイロン12またはPebax 72Dなど)で作製することができ、膨張圧力下で内側に潰れる可能性が低くなり、一方、外壁部50を標準コンプライアントバルーンコンポーネントのように圧力下で外側に拡張するのにより適しているより柔らかく弾性のある材料(ショア硬度70A~80AのポリウレタンまたはPebax 35Dなど)で作製することもできる。これにより、管腔53の内部の中空形状を損なうことなく、外壁部が伸長して、その中で膨張するターゲットの血管または機器またはインプラントとのより包括的なシールを形成することが可能になる。
【0132】
図4に示される第2の実施形態10Bでは、バルーンは、複数の結合ゾーンを有する。これは、上記の付随する利点を備えた円周バンド54.1と、通路開口部36からバンド54.1まで放射状に広がる実質的に長手方向に整列した一連の細長い結合線(54.2、54.3、…54.N)とを有する。
【0133】
このパターンは、本発明を限定するものではなく、同様に、結合ゾーンを円周状、螺旋状、渦巻き状に向けることができ、各々のゾーンは、直線状、V字形、W字形、W字形、X字形、または山形、S字形、ジグザグ形状、または円形状、またはそれらの任意の組み合わせを呈する。
【0134】
図5に示される第3の実施形態10Cは、前述の実施形態と同様であるが、周方向バンドシール54.1を有さない点で異なる。ここで、閉じた周囲部44の領域は結合されておらず、この実施形態では完全に円周方向に連続している膨張可能なポケット56.1を形成しており、この特徴は、カテーテル10Cが内部に配備される血管との密閉を促進するか、または血管またはインプラントに外向きの半径方向の拡張力を及ぼすことを促進する。
【0135】
膨張可能ポケット56.1に加えて、長手方向に整列した結合ゾーン(54)の間に、出口312と膨張可能なポケット56.1との間の流体連通を可能にする複数の膨張可能ポケット(それぞれ56.2、56.3、56.Nで示される)がある。
【0136】
第4の実施形態10Dが
図6および
図7に示されている。前述の実施形態とは異なり、この実施形態は、円錐形ではない。首部40から現れるバルーンは、第1の円錐形部分58と円筒形部分60を有し、円筒形部分60は、作動長または作動領域を画定する。円筒部分は、閉じた周囲部44で終端を迎える。この実施形態は、同じ円筒部分の直径と同様の長さを有する円筒部分で示されている。しかしながら、円筒部分の長さが円筒部分の直径よりも著しく大きいことが有利である可能性がある。作動長(円筒部分の長さ)を値「L」とし、円筒部分の膨張時の外径を値「D」(膨張したバルーンモジュールの外径)とすると、長いバルーンモジュールは、D<L<300Dとなるように構成できる。これは、例えば長いバルーンカテーテルなどの長い機器を回収するのに有利である可能性がある。
【0137】
この実施形態では、バルーンは、円周方向に連続する膨張可能なポケット56.1と、円筒部分60上に形成される長手方向に整列した複数の結合ゾーン(54.2~54.N)とを備えて構成される。
【0138】
図8および
図9は、本発明の第5の実施形態10Eを示す。ここでは、結合ゾーン54.Nは、バルーンの円錐部分58に沿って分岐して上昇し、円錐部分58の周囲で弧を描き、結合ゾーン54.1、54.2、54.3、および54.4は、円筒部分60の周りで円周方向だが不連続に延在する。不連続であるということは、ポケット56が相互に接続されているか、または流体連通しているため、加圧することができるということである。ポケット56が円周状であるため、膨張可能なアーチ状構造を形成し、これは、拡張用途に適した、より大きな半径方向外向きの力を及ぼすことができる構造的に優れた構成を提供する。
【0139】
円錐部分の結合ゾーン内に、切り欠きまたは開口部62が形成される。これらの窓の切り欠きには2つの重要な機能がある。すなわち、バルーンを内部で膨らませた血管を閉塞させることなく、バルーンを膨らませることができる(これは、感知した血管または弁を拡張するため(弁形成術)、または動脈瘤治療のためのステント、ステント留置した心臓弁、またはステントグラフトを、血流を閉塞させることなく配備するために使用できる)ことと、バルーンモジュールから材料を除去することで必要な材料の総量を減らし、それによってバルーンが収縮した際に小さなスペースに収まることができるように改良され、例えば内視鏡のような別の機器のガイドカテーテル、シース、ポート、または作業チャネルを介して挿入する際に有利になる。
【0140】
さらに、この特定の非閉塞的な実施形態(
図8、
図9、
図14、および
図15を参照)は、薬剤供給機構として使用することができる。バルーン38の少なくとも外壁部50は、カテーテル10が内部に配備される血管によるターゲット供給部位への薬剤の局所塗布のために、薬剤含有層(図示せず)でコーティングすることができる。例えば、開口部を有するカテーテル10E、10J、および10Kは、血液の灌流を可能にし、したがって、これらの実施形態を比較的長期間にわたる薬剤供給に使用することを可能にする。これらのカテーテルの完全に膨張したバルーンモジュール38が、特定の薬剤の兆候に応じて、1分~24時間、血管内に配備されたままであれば、血流閉塞の危険性はほとんどない。そして、薬剤含有層が少なくとも外壁部上にあり、外壁部が血管壁と接触することにより、灌流を維持しながら、位置特異的かつ効率的な方法で、薬剤を血管壁に供給し、血管壁を通して供給することができる。
図10は、実施形態10Fを示す。ここで、接続された領域は、円錐領域の底部または底部付近から始まり長手方向に延び、バルーンモジュールの遠位端のすぐ手前で終端を迎える。これにより、1つまたは複数の長手方向の膨張可能なポケットと、遠位端に円周方向の膨張可能なポケットがもたらされる。この実施形態の構成により、流体がより容易にバルーンモジュールに出入りすることが可能になる。また、血液循環系内で膨張させる必要があるバルーン機器またはバルーンカテーテルではよく行われることであるバルーンモジュールの「脱気」も改善できる。適切な脱気とは、バルーンモジュールの偶発的な破損または破裂によって空気が侵入しないことを意味する。エアポケットまたは気泡は、血流内で重篤な合併症を引き起こす可能性がある。
【0141】
円周方向の膨張可能なポケット56.1の代わりに、この構成は、用途に応じて、円周バンド54.1と置き換えることができる。
【0142】
図11は、実施形態10Gを示す。ここで、結合ゾーン(54.2、54.3、および54.4)は、円錐領域の底部または底部付近から始まり螺旋状に延び、バルーンモジュールの閉じた周囲部44で終端を迎える。バルーンモジュールの遠位端には全周結合ゾーン54.1もある。これにより、1つまたは複数の螺旋状の膨張可能なポケット(56.1、56.2、...、56.N)がもたらされる。この実施形態の構成は、実施形態10Dの場合と同様に、流体がバルーンモジュールに出入りするのを容易にできる一方、構造的に優れたアーチ状の膨張可能ポケット56にさらに近似し、したがって妥協案またはハイブリッド案を提供する。
【0143】
実施形態10Hを
図12に示す。ここで、結合ゾーンは、円形の形状であり、円錐形領域の底部または底部付近、または首部が円錐部と交わる場所またはその付近から始まり、バルーンモジュールの閉じた周囲部44のすぐ手前で終端を迎える。このバルーンモジュールは、閉じた周囲部44に隣接する単一の円周結合ゾーン(バンド)54.1を有する。これらの円形の結合ゾーンは、灌流を提供するための窓または切り欠き62を含むことができる。これらの窓は、円錐領域上または作動長(円筒)領域上またはこれらの両方の領域上に配置できる。
【0144】
実施形態10Iを
図13に示す。この実施形態は、結合ゾーンの形状が円形であり、円錐形領域の底部または底部付近、または首部40が円錐部と交わる場所またはその付近から始まり、膨張可能なポケット56.1の一部を形成する丸い閉じた周囲部44のすぐ手前で終端を迎えるという点で、前述の実施形態と類似している。この実施形態は、バルーンモジュールの全長にわたって延びる結合部63を含む。この結合部は、ジグザグの形状を持つことも、バルーンモジュールの周りを螺旋状に包み込むパターンをとることもできる。結合部62は、このバルーンモジュールの製造に使用される製造プロセスの特徴であり、ポリマー材料の単一シートが最初に折り畳まれて内層および外層または内壁部および外壁部が形成され、次に結合部63に沿ってシールされたシートの長手軸線および縁部の周りに巻き上げられて、バルーンモジュールを提供する。
【0145】
別の一実施形態10Jが
図14に示されている。この実施形態では、閉じた周囲部44は、シールされるが、前の実施形態とは異なり、シールが円周バンドではなく、むしろ円周方向の王冠形を呈する。この実施形態の結合部は、バルーンモジュールが膨張するときに結合部が屈曲し、それによって周方向に伸びることを可能にするために、山形、またはS字形、またはジグザグ形状、または部分的に円周方向の王冠形を呈することができる。これにより、バルーンモジュールが膨張するにつれてバルーンモジュールの外径が増加することが可能になる。この特徴により、より「コンプライアント」な(背景技術の定義を参照)バルーンモジュールの製造を提供する。この実施形態の円錐上の窓の切り欠きは、収縮状態のバルーンモジュールの挿入または除去の際に有利となり得るダイヤモンド形状を有する。これは、ダイヤモンド形状が、例えばイントロデューサシースのような狭い通路を通過することが困難である可能性のある支持されていない周縁部を回避するためである。
【0146】
図14Aは、
図14と同様のバルーンモジュールを示すが、閉じた周囲部44を越えて両方向に延在する内側チューブ28を含むことを示すように描かれている。この内側チューブは、X線または蛍光透視下でバルーンモジュールの作動部分102または作動長を画定するためにその上に配置されたマーカーバンド67を有する。閉じた周囲部には複数のテザー65が接続されており、テザー65は、ダイヤモンド形の切り欠きまたは開口部62が第2の円錐領域103と、円筒部分60としても知られる作動領域102の一部とに含まれるように構成されている。これらのテザーは、内側チューブ28に結合される第2の首部領域104(この図では遠位に描かれている)の首部で収束する。これは、内側チューブ28またはその中に位置するガイドワイヤーに対してバルーンモジュールの遠位端を中心に置くのに役立つ。これらのテザーは、導入ポートを通したバルーンモジュールの挿入を改善するのにも役立つ。ダイヤモンド形の切り欠きは、王冠形の閉じた周囲部およびテザーとともに、人体への機器の挿入または人体からの取り出しの際に困難を引き起こす可能性がある、大きくて支持されていない周縁部を回避する。
【0147】
図14Aは、
図14と同様のバルーンモジュールを示すが、閉じた周囲部44を越えて両方向に延在する内側チューブ28を示すように描かれている。この内側チューブは、X線または蛍光透視下でバルーンモジュールの作動部分102または作動長を画定するためにその上に位置するマーカーバンド67を有する。閉じた周囲部には複数のテザー65が接続されており、ダイヤモンド形の切り欠きまたは開口部が第2の円錐領域103と、作動領域102の一部(円筒部分60としても知られることがある)とに含まれるように構成されている。これらのテザーは、内側チューブ28に結合される第2の首部領域104(この図では遠位に描かれている)で収束する。これは、内側チューブ28またはその中に配置されたガイドワイヤーに対してバルーンモジュールの遠位端を中心に置くのに役立つ。これらのテザーは、導入ポートを通したバルーンモジュールの挿入を改善するのにも役立つ。ダイヤモンド形の切り欠き62は、王冠形の閉じた周囲部およびテザーとともに、人体への機器の挿入または人体からの機器の取り出しの際に困難を引き起こす可能性がある、大きくて支持されていない周縁部を回避する。
【0148】
図14Bは、
図14Aと同様のバルーンモジュールを示すが、遠位円錐領域103および遠位首部領域104を含み、これらは、小さな穿孔69(視覚化のために拡大されており、実際には肉眼では見えない可能性がある)を有するように示された可撓性メッシュまたはフィルタまたは織物から作られた同じ部品68から形成されている。この円錐形フィルタ68は、バルーンモジュールの閉じた周囲部または縁部に結合され、また、内側チューブ28の外面にも結合される。この円錐形の可撓性フィルタは、流体(例えば、血液など)がそこを通って流れることを可能にする一方、より大きな粒子(例えば、TAVI処置からのカルシウム片など)がこの可撓性フィルタを通過するのを防ぐように構成することができる。この追加の特徴により、血液のような体液が第1の円錐領域101に位置する窓の切り欠きまたは開口部を介して中空の空間または空洞53に自由に流入できるように、バルーンモジュールを配置することができる。中空の空間または空洞に入ると、それは上流の圧力によって強制的にフィルタを通過する。したがって、フィルタを通過できないほど大きすぎる粒子は、バルーンモジュール内の中空の空間または空洞内に捕捉されたままになる。処置が完了すると、バルーンモジュールは、収縮した状態に戻り、濾過された微粒子とともに回収される。
図14Cは、
図14Bに示されているのと同じ実施形態の側面図であるが、本発明の一般的な領域を説明することを目的としている。この実施形態は、第1の首部領域100、第1の円錐領域101、作動領域102、第2の円錐領域103、および第2の首部領域104を含む。すべての実施形態は、領域100および101を含むが、一部の実施形態のみが、領域102、103、104を含む。
【0149】
図15は、
図8および
図9に示されるものと同様のバルーンモジュールを示すが、この実施形態10Kは、作業通路開口部36が閉じた周囲部44の遠位に位置するように構成される。これにより、放射線不透過性マーカーバンド67を内側チューブ28に配置、接続、または結合することが可能となる。これらのマーカーバンドは、バルーンモジュールの円筒部分60(作動領域102としても知られる)の近位端および遠位端と位置合わせすることができる。これにより、多くのバルーンカテーテルで一般的であるように、バルーンモジュールの膨張前にX線または蛍光透視法によってバルーンモジュールを適切に配置することが可能になる。この実施形態は、複数の引張要素またはテザー65(
図14Aに示されるように、灌流用の窓の切り欠きを備えた第2の円錐の形態をとることもできる)をさらに含むことができ、その両方が、内側チューブ28に対して、したがってその内側チューブを通って延びるガイドワイヤーに対して、作動領域102または円筒領域60の遠位端を安定させて中心に置くのに役立つであろう。さらに、これらのテザーまたは第2の円錐部は、バルーンモジュールの円筒部分が潰れたり折り畳まれたりするのを防ぐため、イントロデューサシースへの挿入およびそこからの回収中にバルーンモジュールをより堅牢にするのにも役立つ可能性がある。
【0150】
図16に示される別の一実施形態10Lでは、実施形態10Eで具体化されるタイプの2つのバルーンモジュール(それぞれ10.1および10.2で示される)が、非閉塞的な拡張バルーンカテーテルを形成するように構成されている。具体的には、2つのバルーンモジュールは、それぞれの閉じた周囲部44で互いに結合または接続されている(これを示す
図16の挿入図を参照)。
【0151】
この実施形態は、両方のバルーンモジュールが同じ圧力源から同時に膨張できるように(図示の場合)、または2段階の膨張プロトコルで個別に膨張できるように構成することができる。この2段階膨張プロトコルは、内側チューブ28をカテーテルの近位端またはハブ20まで延ばすことによって達成され、それによって第2の膨張管腔または第2の環状膨張空間を作り出すことができる。これにより、外側カテーテルシャフトと中央カテーテルシャフトの間の環状管腔を独立して加圧することができ、それにより、遠位バルーンモジュールではなく近位バルーンモジュールを膨張させることができる。特にインプラントを配備する場合、バルーンモジュールが遠位側だけでなく近位側からも膨張することが有益となり得る。この機能は、バルーンが各々の端部から同時に膨張すると、インプラントの近位端と遠位端の両方が共に拡張することによって、インプラントの均一な配備を支援することができる。
【0152】
実施形態10Kの非膨張性テザー65と同様に、この実施形態の遠位バルーンモジュール10.2は、閉じた周囲部44を内側チューブ28に接続するという点で、近位バルーンモジュール10.1に対する膨張性テザーとして機能し、段落0146で上述した利点を有する。
【0153】
ガイドワイヤー66は、内側カテーテルシャフトを通過し、先端を通過して機器の遠位端から出ることができる。放射線不透過性マーカーバンド67を中央カテーテルシャフトに追加して、X線画像誘導下でターゲット部位内に機器を位置決めできるようにすることができる。
【0154】
前述のすべての実施形態において、すべてのバルーンモジュール38は、端部(40、42)から縁部またはリム44までのバルーン38の拡張方向がカテーテルの配備または前方向であるという点で、前方に拡張するバルーンを含むように示されている。しかしながら、
図17に示されるように、一実施形態10Mは、後方に拡張するバルーンモジュールを含む。この実施形態では、端部40および42から閉じた周囲部44までのバルーンの延長方向は、カテーテルの後退方向にある。この実施形態では、外壁50は、第2の端部42と閉じた周囲部44との間に画定され、内壁52は、第1の端部40と閉じた周囲部との間に画定される。この実施形態は、解剖学的構造が他のものよりも容易にこの構成を受け入れるように形作られている状況で有用である。この実施形態はまた、バルーンモジュールをこの逆の向きに向けて、イントロデューサシースまたは作業チャネルなどの狭い通路を通してバルーンモジュールをより容易に挿入できるようにするために使用することもできる。
【0155】
本発明の医療機器の潜在的な用途には、とりわけ、脳保護、経カテーテル大動脈弁置換術、バルーン弁形成術、および気管バルーン拡張術などの処置における使用が含まれる。
【国際調査報告】