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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】多重親水性を有する体外診断チップ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20240702BHJP
   B32B 3/26 20060101ALI20240702BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C12M1/34 Z
B32B3/26 Z
C12M1/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578098
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 KR2022008206
(87)【国際公開番号】W WO2022270802
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0081935
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519122725
【氏名又は名称】オプトレーン テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】OPTOLANE Technologies Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】チョ,スン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,アン・シク
(72)【発明者】
【氏名】クァク,ビョン・ジュ
(72)【発明者】
【氏名】オレクサンドロフ,セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェ・フン
【テーマコード(参考)】
4B029
4F100
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA27
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA12
4B029GA03
4B029GB10
4F100AK52C
4F100BA02
4F100BA05
4F100BA07
4F100DD01A
4F100GB66
4F100JB05B
4F100JC00
(57)【要約】
液体試料の流れ速度を差等的に制御して反応空間のコーナーやエッジ領域まで液体試料を均一に分布させることができる多重親水性を有する体外診断チップが開示される。多重親水性を有する体外診断チップは、複数のウェルを含むウェルアレイ;及びウェルアレイにコーティングされて試料の流れ速度を互いに異ならせて制御する多重親水性コーティング層;を含む。ウェルアレイの中央領域に対応して高親水性を有し、ウェルアレイの周辺領域に対応して低親水性を有するように親水性コーティング層をウェルアレイに形成することにより、反応空間におけるエアポケットの生成を遮断することができる。これにより、PCR試験結果でエアポケットによるエラーの発生を防止することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウェルを含むウェルアレイと、
前記ウェルアレイにコーティングされて試料の流れ速度を互いに異ならせて制御する多重親水性コーティング層と、を含むことを特徴とする、多重親水性を有する体外診断チップ。
【請求項2】
前記多重親水性コーティング層は、前記ウェルアレイの中央領域に対応して高親水性を有し、前記ウェルアレイの周辺領域に対応して低親水性を有することを特徴とする、請求項1に記載の多重親水性を有する体外診断チップ。
【請求項3】
チップハウジングと、
前記チップハウジングにインサートされて収納され、前記ウェルアレイを収納するインサーティング部材と、をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の多重親水性を有する体外診断チップ。
【請求項4】
前記インサーティング部材は、シリコンを含むことを特徴とする、請求項3に記載の多重親水性を有する体外診断チップ。
【請求項5】
前記チップハウジングは、1つ以上の嵌合ホールまたは嵌合溝が形成された側部を含み、
前記インサーティング部材は、前記嵌合ホールに挿入される1つ以上の嵌合突起が形成された側部を含むことを特徴とする、請求項3に記載の多重親水性を有する体外診断チップ。
【請求項6】
前記インサーティング部材は、底面を通じて前記チップハウジングの上面に結合され、
前記インサーティング部材の上面には、前記ウェルアレイが収容されるように収容溝が形成されたことを特徴とする、請求項3に記載の多重親水性を有する体外診断チップ。
【請求項7】
前記インサーティング部材の上面には、試料が注入されるサンプル注入口と、前記サンプル注入口から前記ウェルアレイに行くほど狭くなる幅を有するサンプル注入部と、前記ウェルアレイの外郭面と前記サンプル注入部の最大拡張部を連結するエアベントと、が形成されたことを特徴とする、請求項6に記載の多重親水性を有する体外診断チップ。
【請求項8】
前記チップハウジングには、前記サンプル注入口に対応してチップ注入口が形成され、前記サンプル注入口と前記チップ注入口は、連通することを特徴とする、請求項7に記載の多重親水性を有する体外診断チップ。
【請求項9】
前記チップ注入口を通じて前記サンプル注入口に挿入される栓突起が形成されたガイドキャップをさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載の多重親水性を有する体外診断チップ。
【請求項10】
前記エアベントは、前記ウェルアレイの一側部と前記サンプル注入部の一側部とを連結する第1エア通路と、前記ウェルアレイの他側部と前記サンプル注入部の他側部とを連結する第2エア通路と、を含むことを特徴とする、請求項7に記載の多重親水性を有する体外診断チップ。
【請求項11】
前記チップハウジングに収容され、チップ履歴管理のためのデータを保存するEEPROMをさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の多重親水性を有する体外診断チップ。
【請求項12】
前記ウェルアレイをカバーするフィルム類をさらに含み、
前記フィルム類は、エミッションフィルムを含むことを特徴とする、請求項3に記載の多重親水性を有する体外診断チップ。
【請求項13】
前記ウェルアレイをカバーするウェルカバーと、
前記ウェルカバーをカバーし、形成された中空ホールを通じて前記ウェルカバーの一部を露出するガイド部材と、をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の多重親水性を有する体外診断チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年6月23日付の大韓民国特許出願10-2021-0081935号に基づいた優先権の利益を主張し、当該大韓民国特許出願の文献に開示されたあらゆる内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、多重親水性を有する体外診断チップに係り、より詳細には、液体試料の流れ速度を差等的に制御して反応空間のコーナーやエッジ領域まで液体試料を均一に分布させることができる多重親水性を有する体外診断チップに関する。
【背景技術】
【0003】
遺伝子増幅器術は、分子診断において必須的な過程であって、試料内の微量のデオキシリボ核酸(Deoxyribonucleic Acid;DNA)またはリボ核酸(Ribonucleic Acid;RNA)の特定塩基配列を繰り返して複製して増幅する技術である。そのうち、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase chain reaction;PCR)は、代表的な遺伝子増幅技術であって、DNA変性段階(denaturation)、プライマー(Primer)結合段階(annealing)、DNA複製段階(extension)の3段階に構成されており、各段階は、試料の温度に依存されているので、試料の温度を繰り返して変更することにより、DNAを増幅することができる。
【0004】
従前、PCRは、一般的に96または384マイクロウェルプレート(micro well plates)で行われていた。さらに高い処理量が必要な場合、従来のマイクロプレートでのPCR方法は、試薬を多く使用しなければならないので、コストにおいて効果的または効率的ではない。一方、PCR反応容積を減少させれば、試薬の消費を減らし、反応容積の減少した熱質量(heat mass)で増幅時間を減らすこともできる。この戦略は、配列形式(mxn)で実現することもできるので、その結果、多数のさらに小さな反応容積を実現することもできる。また、ある配列を使用すれば、増加した定量感度、動的範囲と特異性を有する拡張可能及び高処理量分析が可能となる。
【0005】
非常に小さな反応容積の非常に多くの配列を使用すれば、デジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)を行うことができる。dPCRからの結果を使用して希少対立遺伝子(rare alleles)の濃度を検出及び定量化し、核酸試料の絶対定量化を提供し、また、低い核酸濃度も敏感に測定することができる。
【0006】
ほとんどの定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)プラットホームの配列形式は、試料別に分析実験のために設計され、ここで、PCR結果は、事後分析のためにアドレス可能でなければならない。しかし、dPCRは、それぞれのPCR結果の特定位置によって分析せず、単に試料当たりの陽性及び陰性目標複製(target copy)の数のみによって分析する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の技術的課題は、このような点に着眼したものであって、本発明の目的は、液体試料の流れ速度を差等的に制御して反応空間のコーナーやエッジ領域まで液体試料を均一に分布させることができる多重親水性を有する体外診断チップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記本発明の目的を実現するために、一実施形態による多重親水性を有する体外診断チップは、複数のウェルを含むウェルアレイ;及び前記ウェルアレイにコーティングされて試料の流れ速度を互いに異ならせて制御する多重親水性コーティング層;を含む。
【発明の効果】
【0009】
このような多重親水性を有する体外診断チップによれば、ウェルアレイの中央領域に対応して高親水性を有し、前記ウェルアレイの周辺領域に対応して低親水性を有するように親水性コーティング層をウェルアレイに形成することにより、反応空間におけるエアポケットの生成を遮断することができる。これにより、PCR試験結果でエアポケットによるエラーの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による多重親水性を有する体外診断チップを説明する斜視図である。
図2図1に示された多重親水性を有する体外診断チップでガイド部材とウェルカバーとを除去した斜視図である。
図3図1に示された多重親水性を有する体外診断チップを説明する分解斜視図である。
図4図3に示された多重親水性を有する体外診断チップの結合関係を説明する断面図である。
図5図3に示された多重親水性を有する体外診断チップの多重フィルム類を説明する分解斜視図である。
図6図3に示されたチップハウジングとインサーティング部材とを説明する分解斜視図である。
図7図3に示された多重親水性を有する体外診断チップに試料の投入とエアの放出とを概略的に説明する斜視図である。
図8図3に示されたウェルアレイにコーティングされた多重親水性コーティング層による試料の投入を順次に説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
前記本発明の目的を実現するために、一実施形態による多重親水性を有する体外診断チップは、複数のウェルを含むウェルアレイ;及び前記ウェルアレイにコーティングされて試料の流れ速度を互いに異ならせて制御する多重親水性コーティング層;を含む。
【0012】
一実施形態において、前記多重親水性コーティング層は、前記ウェルアレイの中央領域に対応して高親水性を有し、前記ウェルアレイの周辺領域に対応して低親水性を有しうる。
【0013】
一実施形態において、前記多重親水性を有する体外診断チップは、チップハウジング;及び前記チップハウジングにインサートされて収納され、前記ウェルアレイを収納するインサーティング部材;をさらに含みうる。
【0014】
一実施形態において、前記インサーティング部材は、シリコン(silicone)を含みうる。
【0015】
一実施形態において、前記チップハウジングは、1つ以上の嵌合ホールまたは嵌合溝が形成された側部を含み、前記インサーティング部材は、前記嵌合ホールに挿入される1つ以上の嵌合突起が形成された側部を含みうる。
【0016】
一実施形態において、前記インサーティング部材は、底面を通じて前記チップハウジングの上面に結合され、前記インサーティング部材の上面には、前記ウェルアレイが収容されるように収容溝が形成されうる。
【0017】
一実施形態において、前記インサーティング部材の上面には、試料が注入されるサンプル注入口と、前記サンプル注入口から前記ウェルアレイに行くほど狭くなる幅を有するサンプル注入部と、前記ウェルアレイの外郭面と前記サンプル注入部の最大拡張部を連結するエアベントと、が形成されうる。
【0018】
一実施形態において、前記チップハウジングには、前記サンプル注入口に対応してチップ注入口が形成され、前記サンプル注入口と前記チップ注入口は、連通することができる。
【0019】
一実施形態において、前記多重親水性を有する体外診断チップは、前記チップ注入口を通じて前記サンプル注入口に挿入される栓突起が形成されたガイドキャップをさらに含みうる。
【0020】
一実施形態において、前記エアベントは、前記ウェルアレイの一側部と前記サンプル注入部の一側部とを連結する第1エア通路と、前記ウェルアレイの他側部と前記サンプル注入部の他側部とを連結する第2エア通路と、を含みうる。
【0021】
一実施形態において、前記多重親水性を有する体外診断チップは、前記チップハウジングに収容され、チップ履歴管理のためのデータを保存するEEPROMをさらに含みうる。
【0022】
一実施形態において、前記多重親水性を有する体外診断チップは、前記ウェルアレイをカバーするフィルム類をさらに含み、前記フィルム類は、エミッションフィルムを含みうる。
【0023】
一実施形態において、前記多重親水性を有する体外診断チップは、前記ウェルアレイをカバーするウェルカバー;及び前記ウェルカバーをカバーし、形成された中空ホールを通じて前記ウェルカバーの一部を露出するガイド部材;をさらに含みうる。
【0024】
以下、添付した図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。本発明は、多様な変更を加え、さまざまな形態を有しうるので、特定実施形態を図面に例示し、本明細書で詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる、あらゆる変更、均等物または代替物を含むものと理解しなければならない。
【0025】
各図面を説明しながら類似の参照符号を類似の構成要素に対して使用した。添付図面において、構造物の寸法は、本発明の明確性を期するために実際よりも拡大して図示したものである。
【0026】
第1、第2などの用語は、多様な構成要素の説明に使われるが、前記構成要素は、前記用語によって限定されるものではない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使われる。例えば、本発明の権利範囲を外れずに、第1構成要素は、第2構成要素と名付けられ、同様に、第2構成要素も、第1構成要素と名付けられうる。単数の表現は、文脈上、取り立てて明示しない限り、複数の表現を含む。
【0027】
本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものが存在するということを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在、または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解しなければならない。
【0028】
また、取り立てての定義がない限り、技術的や科学的な用語を含み、ここで使われるあらゆる用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有している。一般的に使われる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上の意味と一致する意味を有すると解釈されなければならず、本明細書で明白に定義しない限り、理想的であるか、過度に形式的な意味として解釈されない。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態による多重親水性を有する体外診断チップを説明する斜視図である。図2は、図1に示された多重親水性を有する体外診断チップでガイド部材とウェルカバーとを除去した斜視図である。図3は、図1に示された多重親水性を有する体外診断チップを説明する分解斜視図である。図4は、図3に示された多重親水性を有する体外診断チップの結合関係を説明する断面図である。図5は、図3に示された多重親水性を有する体外診断チップの多重フィルム類を説明する分解斜視図である。
【0030】
図1図2図3図4及び図5を参照すれば、本発明の一実施形態による多重親水性を有する体外診断チップは、ベース部材110、チップハウジング120、インサーティング部材130、ウェルアレイ140、EEPROM150、フィルム類160、ウェルカバー170、チップカバー180、及びガイドキャップ190を含む。
【0031】
ベース部材110は、チップハウジング120の下面に配される。
【0032】
チップハウジング120の上部には、インサーティング部材130の挿入のためのホール、EEPROM150の挿入のための溝が形成される。インサーティング部材130の挿入のためのホールは、ベース部材110によってカバーされる。チップハウジング120の側部には、サンプル注入口に対応してチップ注入口が形成され、サンプル注入口とチップ注入口は、連通する。
【0033】
インサーティング部材130は、チップハウジング120の上部に形成されたホールに挿入され、ウェルアレイ140及びEEPROM150を収納する。インサーティング部材130は、シリコン材質を含みうる。インサーティング部材130の上面には、試料が注入されるサンプル注入口と、サンプル注入口からウェルアレイ140に行くほど狭くなる幅を有するサンプル注入部と、ウェルアレイ140の外郭面とサンプル注入部の最大拡張部を連結するエアベントと、が形成される。
【0034】
ウェルアレイ140は、複数のウェルを含み、インサーティング部材130に収容される。本実施形態において、ウェルの個数は、9個を図示するが、これに限定するものではない。ウェルアレイ140は、全体として四角状を有する。
【0035】
EEPROM150は、インサーティング部材130に形成された溝に収容され、チップ履歴管理のためのデータを保存する。このようなEEPROM150を通じて患者情報が変わらないようにサンプル採取しながらROMに直ちにライティングして患者情報を手記で記入するか、バーコードテープを貼り付ける煩わしさを除去することができる。また、EEPROMに保安キーを保存させることにより、体外診断チップが不法に複製されて使われることを防ぐことができて、チップ履歴管理を容易にする。
【0036】
フィルム類160は、ウェルアレイ140を収納するインサーティング部材130をカバーする。フィルム類160は、下部に配されたテープ161、弾性バッファー層162、OCAフィルム163、エミッションフィルム164、防湿保護膜165及び防湿保護膜保護用キャリア166を含む。本実施形態において、エミッションフィルム164は、光源(図示せず)から発生した励起光(Excitation Light)を遮断し、反応空間240内の試料から発生した放射光(Emission Light)を透過させる。
【0037】
エミッションフィルム164は、ベース媒質、半硬化フォトレジスト、及び顔料を含みうる。前記ベース媒質は、透明な材質の合成樹脂、ガラス、金属酸化物などが使われる。本実施形態において、前記ベース媒質は、蛍光やリン光を発生させず、生体親和的な特性を有するエポキシ樹脂、シリコン樹脂などを含みうる。前記半硬化フォトレジストは、前記ベース媒質内に分散され、熱硬化、乾燥、光硬化などによって固体状に固定されたフォトレジストを含む。例えば、前記半硬化フォトレジストは、ネガティブフォトレジストを含みうる。他の実施形態において、前記半硬化フォトレジストは、ポジティブフォトレジストを含みうる。
【0038】
理論によって、本発明の権利範囲を制限しようとするものではないが、本発明をより詳しく説明するために、本発明のエミッションフィルム164が特有の優れた光学特性を有する理由について説明すれば、次の通りである。
【0039】
一般的なカラーフィルターは、透明な媒質内に顔料を固定させて、顔料に一定の波長の光を吸収させ、他の波長の光を透過させる方式で光を選択的に透過させる。フォトレジストは、紫外線、青色光、緑色光などの波長が短い光に反応して化学的特性及び光学的特性が変更される特徴によって、前記半硬化フォトレジストがカラーフィルターに使われる場合、経時的に光学的特性が変更されるという問題点がある。したがって、従来のカラーフィルターには、紫外線、青色光、緑色光など波長が短い光に完全に飽和されるか、波長が短い光が照射されるにしても、何らの変動がない熱硬化性物質などが使われる。
【0040】
ところで、本発明のエミッションフィルム164は、長時間使用ではない使い捨て実験装備に使われるために、長時間同じ光学的特性を保持する必要がなく、比較的短い実験時間のみに一時的に光学特性を保持すれば良い。具体的に、前記半硬化フォトレジストは、紫外線、青色光、緑色光などの波長が短い光が照射されれば、一定時間波長が短い光を吸収するために、一時的に非常に優れた特性の光学フィルターとして機能しながら、経時的に波長が短い光に飽和されて光学フィルター機能をほとんど喪失するために、従来のカラーフィルターでは、長期的安定性に対して半硬化フォトレジストが使われることができなかった。
【0041】
本発明は、逆に前記半硬化フォトレジストが紫外線、青色光、緑色光などの波長が短い光に飽和されて安定化される過程で波長が短い光を吸収する特性を用いて、使い捨て実験装置で使える非常に優れた光学特性を有するエミッションフィルム164を実現した。すなわち、本発明では、前記顔料によって1次的に励起光を遮断し、前記半硬化フォトレジストによって2次的に励起光を遮断することにより、既存のカラーフィルターや干渉フィルターが実現することができなかった入射光の方向に無関係に優れた特性を有するエミッションフィルム164の製造に成功した。
【0042】
前記顔料は、一定の波長の光を吸収する物質であって、例えば、黄色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料などが使われる。本実施形態において、前記顔料は、黄色顔料を含む。黄色顔料としては、クロム酸鉛(lead chromate)、カルシウムイエロー(calcium yellow)、黄色酸化物(yellow oxides)、複合無機物染料(complex inorganic colour pigments)、ビスマスバナジウム酸塩(bismuth vanadate)などの無機物染料や、アリルアミド(arylamide)、ダイアリライド(diarylide)、ベンゾイミダゾロン(benzimidazolone)、ジスアゾ凝結体(disazo ondensation)、有機金属錯体(organic metal complexes)、イソインドリン(isoindoline)、キノフタロン(quinophthalone)、アントラピリミジン(anthrapyrimidine)、フラバントロン(flavanthrone)などの有機物染料を含みうる。
【0043】
ウェルカバー170は、ウェルアレイ140をカバーすることができるサイズを有してウェルアレイ140を収容するインサーティング部材130上に配されたフィルム類160上に配される。ウェルカバー170は、使用者の押圧動作などによってフィルム類160を加圧し、これにより、フィルム類160の下に配されたウェルアレイ140を加圧する。
【0044】
チップカバー180は、インサーティング部材130、ウェルアレイ140、EEPROM150、フィルム類160及びウェルカバー170が固定されるようにチップハウジング120に締結される。チップカバー180の中央部には、使用者によるウェルカバー170の押圧動作のために、ウェルカバー170を露出する円状のホールが形成される。
【0045】
ガイドキャップ190には、チップ注入口を通じてサンプル注入口に挿入される栓突起が形成される。
【0046】
図6は、図3に示されたチップハウジングとインサーティング部材とを説明する分解斜視図である。
【0047】
図6を参照すれば、チップハウジング120は、四角状を有する。チップハウジング120の側部には、第1嵌合ホール121、第2嵌合ホール122、及び第3嵌合ホール123が形成される。また、図示していないが、チップハウジング120の側部には、第1嵌合ホール121、第2嵌合ホール122、及び第3嵌合ホール123のそれぞれに対向する第4嵌合ホール、第5嵌合ホール、及び第6嵌合ホールが形成される。
【0048】
インサーティング部材130の側部には、チップハウジング120の第1嵌合ホール121に挿入される第1嵌合突起131、チップハウジング120の第2嵌合ホール122に挿入される第2嵌合突起132、及びチップハウジング120の第3嵌合ホール123に挿入される第3嵌合突起133が形成される。図示していないが、第1嵌合突起131、第2嵌合突起132、及び第3嵌合突起133のそれぞれに対向する第4嵌合突起、第5嵌合突起、及び第6嵌合突起が形成される。インサーティング部材130に形成された第4嵌合突起、第5嵌合突起、及び第6嵌合突起のそれぞれは、チップハウジングに形成された第4嵌合ホール、第5嵌合ホール、及び第6嵌合ホールに挿入される。
【0049】
インサーティング部材130の上面には、液体試料が注入されるサンプル注入口135と、サンプル注入口135からウェルアレイ140に行くほど狭くなる幅を有するサンプル注入部136と、ウェルアレイ140の外郭面とサンプル注入部136の最大拡張部を連結するエアベント137と、が形成される。
【0050】
図7は、図3に示された多重親水性を有する体外診断チップに試料の投入とエアの放出とを概略的に説明する斜視図である。図8は、図3に示されたウェルアレイにコーティングされた多重親水性コーティング層による試料の投入を順に説明する図面である。
【0051】
図7及び図8を参照すれば、サンプル注入口に投入された液体試料は、重力によって下向きに次第に拡散される。ウェルアレイの中心領域には、第1親水性コーティング層(HYD-H)がコーティングされ、ウェルアレイの第1周辺領域及び第2周辺領域には、前記第1親水性コーティング層(HYD-H)よりも親水性が低い第2親水性コーティング層(HYD-L)がコーティングされている。したがって、ウェルアレイの中心領域に流れる液体試料の流れる速度は、ウェルアレイの第1及び第2周辺領域に流れる液体試料の流れる速度よりも速い。
【0052】
具体的に、サンプル注入口に投入された液体試料は、上端列の中央ウェルに最も先に到達する。この際、上端列の中央ウェルに存在したエアは、上端列の左右側ウェル及び下側のウェルに移動する。
【0053】
引き続き、液体試料は、上端列の左右側ウェルと中間列の中央ウェルとに到達する。この際、上端列の左右側ウェルに存在したエア及び上端列の中央ウェルに存在したエアは、下側のウェルに移動する。
【0054】
引き続き、液体試料は、中間列の左右側ウェルと下端列の中央ウェルとに到達する。この際、中間列の左右側ウェルと下端列の中央ウェルとに存在したエアは、下側のウェルに移動する。
【0055】
引き続き、液体試料は、下端列の左右側ウェルに到達する。この際、下端列の左右側ウェルに存在したエアは、エアベントを通じて外部に放出される。
【0056】
このように、ウェルアレイの親水度の差によってエアが抜けることができる通路であるエアベントを通じて最後まで放出されるので、バブルトラップが防止される。
【0057】
前述したように、本発明によれば、ウェルアレイの中央領域に対応して高親水性を有し、前記ウェルアレイの周辺領域に対応して低親水性を有するように親水性コーティング層をウェルアレイに形成することにより、反応空間におけるエアポケットの生成を遮断することができる。これにより、PCR試験結果でエアポケットによるエラーの発生を防止することができる。
【0058】
以上、実施形態を参照して説明したが、当業者は、下記の特許請求の範囲に記載の本発明の思想及び領域から外れない範囲内で本発明を多様に修正及び変更させることができるということを理解できるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、生化学物質の検査を行う装置、血液検査装置、疾病検査装置などで研究用、医療用、災難防止用、畜産用、ペット治療用などに使われる産業上利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0060】
110:ベース部材
120:チップハウジング
130:インサーティング部材
135:サンプル注入口
136:サンプル注入部
137:エアベント
121、122、123:嵌合溝
131、132、133:嵌合突起
140:ウェルアレイ
150:EEPROM
160:フィルム類
170:ウェルカバー
180:チップカバー
190:ガイドキャップ
HYD-H:第1親水性コーティング層
HYD-L:第2親水性コーティング層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】