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  • 特表-増殖の速い微生物からの抽出物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】増殖の速い微生物からの抽出物
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/30 20060101AFI20240702BHJP
   C12P 7/6409 20220101ALI20240702BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240702BHJP
   C12P 13/04 20060101ALI20240702BHJP
   C12P 21/00 20060101ALI20240702BHJP
   C12P 19/32 20060101ALI20240702BHJP
   C12P 13/14 20060101ALI20240702BHJP
   A23L 33/13 20160101ALI20240702BHJP
   A23L 33/175 20160101ALI20240702BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20240702BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20240702BHJP
   C07K 2/00 20060101ALI20240702BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240702BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20240702BHJP
   A61K 35/742 20150101ALI20240702BHJP
   A23K 10/12 20160101ALI20240702BHJP
   A23K 20/142 20160101ALI20240702BHJP
   A23K 20/153 20160101ALI20240702BHJP
   A23K 20/158 20160101ALI20240702BHJP
【FI】
C12P19/30
C12P7/6409
C12N1/21
C12P13/04
C12P21/00 C
C12P19/32 Z
C12P13/14 Z
A23L33/13
A23L33/175
A23L33/18
C12N1/20 A
C12N1/20 E
C07K2/00
A61P1/00
A61K35/74 D
A61K35/742
A23K10/12
A23K20/142
A23K20/153
A23K20/158
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578792
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2022066931
(87)【国際公開番号】W WO2022268842
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】21180714.4
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523477082
【氏名又は名称】マイクロハーベスト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクタ ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴダール ティボー
(72)【発明者】
【氏名】リズク マゼン
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B064
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AA06
2B150AA08
2B150AB10
2B150AC02
2B150AC30
2B150AC36
2B150AC37
2B150AD19
2B150BB04
2B150BD01
2B150BE01
2B150CJ07
2B150DA46
2B150DA58
2B150DC19
2B150DD12
2B150DD14
2B150DD20
2B150DD21
2B150DD22
2B150DD26
2B150DE01
4B018MD85
4B018ME02
4B018ME14
4B064AD88
4B064AE03
4B064AE19
4B064AF23
4B064AF24
4B064AF27
4B064AG01
4B064CA19
4B064CA20
4B065AA15X
4B065AA17X
4B065AA99X
4B065AB01
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA44
4B065CA46
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC31
4C087BC64
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA66
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA01
4H045BA54
4H045CA11
4H045EA01
4H045EA15
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む組成物の製造方法、並びに上記方法に従って取得可能な、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む組成物に関する。本発明の方法は、少なくとも0.85h-1のプロセス中の増殖速度を特徴とする少なくとも1つの微生物株を培養することによってバイオマスを得ることを伴う。本発明の組成物は、動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、栄養補助食品、医薬品、診断薬、RNA若しくはDNA、又は風味増強剤の製造に特に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも15%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む組成物の製造方法であって、
(a)少なくとも0.85h-1のプロセス中の増殖速度を特徴とする少なくとも1つの微生物株を培養することによってバイオマスを提供する工程と、
(b)工程(a)の前記バイオマスに存在する細胞を溶解する工程と、
(c)工程(b)の溶解物中に存在する核酸をヌクレオチドに変換し、任意に(b)の前記溶解物中に存在するタンパク質をアミノ酸及びペプチドに変換する工程と、
を含み、%は、NaClを除く乾燥質量の重量/重量%と理解される、製造方法。
【請求項2】
少なくとも15%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む前記組成物が、少なくとも18%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも15%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む前記組成物が、少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)の前記少なくとも1つの微生物株が、少なくとも1.1h-1、好ましくは少なくとも1.2h-1、より好ましくは少なくとも1.4h-1のプロセス中の増殖速度を特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)の前記少なくとも1つの微生物株が、少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも22%、更により好ましくは少なくとも25%、更により好ましくは少なくとも28%の核酸含量を特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)の前記少なくとも1つの微生物株が、細菌株、好ましくは好塩菌又は好熱菌を含み、好ましくは細菌株が、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、更により好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも55%のゲノムG/C含量を特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)の前記少なくとも1つの微生物株が、ビタミンB12独立栄養生物である微生物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)が、少なくとも0.85h-1、好ましくは少なくとも1.1h-1、より好ましくは少なくとも1.2h-1、更により好ましくは少なくとも1.4h-1の希釈速度で連続プロセスとして行われ、工程(a)の前記少なくとも1つの微生物株の各々のプロセスにおける前記増殖速度が、前記希釈速度によって制限され、任意に、前記少なくとも1つの微生物株が、非滅菌条件下で培養される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)の前記少なくとも1つの微生物株が、2つの微生物株、好ましくは2つの細菌株であり、更に好ましくは、少なくとも1つの細菌株が、ビタミンB12独立栄養生物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの微生物株が、ビブリオ種、特にビブリオ・ナトリエゲンス、ジオバチルス種、特にジオバチルスLC300、及びバチルス種、特にバチルス・メガテリウムから選択される微生物株を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの微生物株が、オメガ3脂肪酸を合成することができる微生物を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの微生物株が、遺伝子組換え微生物を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)が、70℃~180℃の温度で、及び/又は10分~360分間の時間行われる熱前処理、続いて好ましくは40℃~100℃、より好ましくは45℃~70℃の温度、及び/又は3.0~9.0、より好ましくは5.0~7.0のpHで、及び/又は0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたる、プロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を伴う、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(b)が、機械的ホモジナイズによって行われ、任意に、70℃~180℃の温度で、及び/又は10分~360分の時間行われる熱前処理を伴う、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程(c)が、好ましくは40℃~100℃、より好ましくは45℃~70℃の温度、及び/又は3.0~9.0、より好ましくは5.0~7.0のpHで、及び/又は0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたる、ヌクレアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を伴う、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程(c)が、好ましくは40℃~100℃、より好ましくは45℃~70℃の温度、及び/又は3.0~9.0、より好ましくは5.0~7.0のpHで、及び/又は0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたる、デアミナーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程(c)が、好ましくは40℃~100℃、より好ましくは45℃~70℃の温度、及び/又は3.0~9.0、より好ましくは5.0~7.0のpHで、及び/又は0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたる、プロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の方法に従って取得可能な、少なくとも15%のヌクレオチドと、少なくとも40%のタンパク質及び/又はアミノ酸及びペプチドとを含む、組成物。
【請求項19】
少なくとも18%のヌクレオチドを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
少なくとも22%のヌクレオチドを含む、請求項18又は19に記載の組成物。
【請求項21】
少なくとも11%、好ましくは少なくとも13%、更により好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも17%のIMP/GMP含量を特徴とする、請求項18~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
少なくとも6%(重量/重量)、好ましくは少なくとも8%(重量/重量)、より好ましくは少なくとも12%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも14%(重量/重量)、最も好ましくは少なくとも16%(重量/重量)のグルタミン酸含量を更に含む、請求項18又は21に記載の組成物。
【請求項23】
動物飼料、ペットフード、発酵培地若しくはサプリメント、食品、栄養補助食品、医薬品、診断薬、DNA若しくはRNA、又は風味増強剤の製造における、請求項18~22のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項24】
請求項18~22のいずれか一項に記載の組成物を含む、動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、栄養補助食品、医薬品、診断薬、DNA若しくはRNA、又は風味増強剤。
【請求項25】
グルタミン酸ナトリウム代替品として、又は抗生物質代替品としての/抗生物質代替品における、請求項18~22のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項26】
請求項1~17のいずれか一項に記載の方法の工程(a)において取得可能な、バイオマス。
【請求項27】
前記グルタミン酸含量が、少なくとも5%、好ましくは少なくとも6%(重量/重量)、より好ましくは少なくとも7%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも8%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも9%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも10%(重量/重量)、最も好ましくは少なくとも12%(重量/重量)である、請求項26に記載のバイオマス。
【請求項28】
請求項26又は27に記載のバイオマスを含む、単細胞タンパク質。
【請求項29】
更に熱処理を経た、請求項28に記載の単細胞タンパク質。
【請求項30】
動物飼料、ペットフード又は食品、好ましくは動物飼料の製造における請求項28又は29に記載の単細胞タンパク質の使用。
【請求項31】
請求項1~17のいずれか一項に記載の方法の工程(b)において取得可能な、細胞溶解物。
【請求項32】
請求項31に記載の細胞溶解物の分離により、好ましくは限外濾過により取得可能なヌクレオチドを含む、組成物。
【請求項33】
項目32に記載の細胞溶解物の分離により、好ましくは限外濾過により取得可能なアミノ酸及びペプチドを含む、組成物。
【請求項34】
動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、栄養補助食品、医薬品、診断薬、DNA若しくはRNA、又は風味増強剤の製造における、請求項32に記載の組成物又は請求項33に記載の組成物の使用。
【請求項35】
請求項32に記載の組成物又は請求項33に記載の組成物を含む、動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、栄養補助食品、医薬品、診断薬、DNA若しくはRNA、又は風味増強剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む組成物の製造方法、並びに上記方法に従って取得可能な、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む組成物に関する。本発明の方法は、少なくとも0.85h-1のプロセス中の増殖速度を特徴とする少なくとも1つの微生物株を培養することによってバイオマスを得ることを伴う。本発明の組成物は、動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、化粧品、医薬品、診断薬、DNA若しくはRNA、栄養補助食品、又は風味増強剤の製造に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
細菌、例えば、ヨーグルト及びチーズ等の発酵乳製品、又はソーセージに含まれる乳酸菌は、食品製造に広く使用されているが、それらは、今のところ、ヒト又は動物が消費する直接的な食品原料として使用され始めたばかりである。しかしながら、これを変更することは、発酵槽で増殖させた微生物タンパク質が大豆等の耕作地で栽培されたタンパク質又は魚粉等の収穫されたタンパク質に取って代わることで、水、肥料、及び農薬の消費量、並びに温室効果ガスの排出量を削減できるため、環境に大きなプラスの影響を与える。また、土地利用の減少にもつながる可能性がある。必須の飼料及び食品原料であるタンパク質に次いで、細菌、特に増殖の速い細菌は、驚くほど大量の核酸を含有する。核酸は高濃度のヌクレオチドに変換できるため、食品及び飼料の製造、並びに関連する用途に使用することができる。ヌクレオチドは、準必須の飼料原料であることが示されている。特に、ストレス条件下では、ヌクレオチドを生成する生物の能力は限られているため、この栄養素の外部供給源が必要である。ヌクレオチドは、免疫系の調節及び飼料摂取にプラスの影響を与える。さらに、飼料用途では、ヌクレオチドが抗生物質の少なくとも一部に取って代わることができる。より具体的には、ヌクレオチドは、当業者には抗生物質よりも効果が低いことが知られている抗微生物溶液の有効性を向上させることができる。
【0003】
さらに、5’-リボヌクレオチド、より具体的には5’-イノシン一リン酸(5’-IMP)及び5’-グアニン一リン酸(5’-GMP)は、単独で、又はグルタミン酸と組み合わせると、より強い旨味(umami note)を提供することにより、飼料及び食品の味を改善することが示されている。飼料の味の改善は、飼料の摂取に一役買っており、すなわち飼料の有効性を高め、コストを削減する可能性があることに留意されたい。より強い旨味は、多くの食品(例えば、熟成チーズ、肉、醤油、又は味噌ペースト)において自然に発生するか、ヌクレオチドとグルタミン酸を加えて旨味を高める場合(スープ及びソース等の風味豊かな製品等)に発生する。これは酵母抽出物で何十年にもわたって推進されてきており、風味豊かな製品に含まれる食品添加物として選ばれるようになった。ヒトでは、ヌクレオチドはほとんどの場合、エネルギーを消費する反応カスケードで新規合成され、細胞分裂又はタンパク質合成の間に必要なRNA/DNA生合成、代謝調節、及び細胞シグナル伝達等の中心的な代謝機能に関与する。食事によるヌクレオチドの補給は、腸の発達及び胃腸機能に有益であることが示されており、他にもいくつかのプレバイオティクス効果が報告されている。注目すべきは、最近になって、5’-リボヌクレオチドの使用により、糖分及び塩分を減らすという有望な可能性も示されていることである。5’-リボヌクレオチドは、運動後の回復力を高めるスポーツドリンクの調製にも使用することができる。
【0004】
ヌクレオチドを含む既存の添加物の欠点の1つは、ヌクレオチドの濃度が限られているため、用途によっては大量に添加する必要があることであり、これにより、ヌクレオチドが原因ではなく、ヌクレオチド以外の成分が原因である可能性のあるオフフレーバー(off-flavours)、つまり望ましくない及び/又は不快な味がする、又は濃縮ヌクレオチド溶液を得るためにコストのかかる処理工程を課する可能性がある。
【0005】
特許査定を受けた特許文献1は、少なくとも55%(重量/重量)(塩化ナトリウムを含まない乾物重量に対して)の5’-リボヌクレオチドを含む組成物及びその製造プロセスに関する。
【0006】
特許文献2は、自己消化プロセスを用いて好気性単細胞タンパク質を製造する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第1587947号
【特許文献2】国際公開第2016/161549号
【発明の概要】
【0008】
本発明は、食品、動物飼料、及び発酵培地への添加物として有用な、高濃度のタンパク質及びヌクレオチド、詳しくはヌクレオチド、特に5’-リボヌクレオチドを含む環境に優しい抽出物の製造に関する。上記抽出物は、従来の増殖培地、若しくは好ましくは水性培地、又は農工業の副流から得られる抽出物を用いて発酵槽内で増殖した増殖の速い細菌から製造される。本発明は、核酸含量が極めて高い(最大40%)細菌の特定の用途にも関し、従来の酵母若しくは藻類の抽出物、又は現在入手可能な細菌抽出物と比較して、5’-リボヌクレオチドが豊富な抽出物の製造に大きな利点をもたらす。本発明は更に、当該技術分野で知られている発酵プロセスから得られる増殖速度が少なくとも0.85h-1、好ましくは1.1h-1よりも大きい細菌の使用のみならず、他の微生物による汚染を回避し、プロセス効率とコスト効率の両方を更に高めるために、現在知られているどのプロセスよりも高い希釈速度D(h-1)での連続プロセスを使用することにも焦点を当てている。他の細菌、又は藻類若しくは酵母等の供給源からの抽出物と比較して、それらは、味の向上、糖分若しくは塩分の削減、飼料の抗生物質代替品、又は高性能発酵添加物等の用途に有益であるようである。特に興味深いのは、使用する微生物の独自の組成と増殖速度であり、これにより、製造コストを抑え、他の微生物による汚染の可能性を大幅に減らすことができる。
【0009】
ヌクレオチド含量の高い組成物を製造するための改良された手段及び方法を提供することは、本発明の対象となる技術的課題であった。
【0010】
本明細書に記載される課題は、以下に記載され、請求項で特徴付けられる実施の形態によって解決される。
【0011】
本発明は、以下の態様に要約される。
【0012】
第1の態様において、本発明は、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む組成物の製造方法であって、(a)少なくとも0.85h-1のプロセス中の増殖速度を特徴とする少なくとも1つの微生物株を培養することによってバイオマスを提供する工程と、(b)工程(a)のバイオマスに存在する細胞を溶解する工程と、(c)工程(b)の溶解物中に存在する核酸をヌクレオチドに変換し、任意に(b)の溶解物中に存在するタンパク質をアミノ酸及びペプチドに変換する工程とを含み、%は、NaClを除く乾燥質量の重量/重量%と理解される、製造方法に関する。
【0013】
特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法は、工程(a)の少なくとも1つの微生物株が、少なくとも1.1h-1、好ましくは少なくとも1.2h-1、より好ましくは少なくとも1.4h-1のプロセス中の増殖速度を特徴とする実施の形態に関する。
【0014】
更に特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法は、工程(a)の少なくとも1つの微生物株が、少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%、より好ましくは少なくとも25%、更により好ましくは少なくとも28%の核酸含量を特徴とする実施の形態に関する。
【0015】
繰り返すが、更に特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法は、工程(a)の少なくとも1つの微生物株が、細菌株、好ましくは好塩菌又は好熱菌を含み、好ましくは細菌株が、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、更により好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも55%のゲノムG/C含量を特徴とする実施の形態に関する。
【0016】
繰り返すが、更に特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法は、工程(a)の少なくとも1つの微生物株が、ビタミンB12独立栄養生物である微生物を含む実施の形態に関する。
【0017】
繰り返すが、更に特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法は、工程(a)が、少なくとも0.85h-1、好ましくは少なくとも1.1h-1、より好ましくは少なくとも1.2h-1、更により好ましくは少なくとも1.4h-1の希釈速度で連続プロセスとして行われ、工程(a)の少なくとも1つの微生物株の各々のプロセスにおける増殖速度が、希釈速度によって制限され、任意に、少なくとも1つの微生物株が、非滅菌条件下で培養される実施の形態に関する。
【0018】
繰り返すが、更に特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法は、工程(a)の少なくとも1つの微生物株が、2つの微生物株、好ましくは2つの細菌株であり、更に好ましくは、少なくとも1つの細菌株が、ビタミンB12独立栄養生物である実施の形態に関する。
【0019】
繰り返すが、更に特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法は、少なくとも1つの微生物株が、ビブリオ(Vibrio)種、特にビブリオ・ナトリエゲンス(Vibrio natriegens)、ジオバチルス(Geobacillus)種、特にジオバチルスLC300、及びバチルス(Bacillus)種、特にバチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)から選択される微生物株を含む実施の形態に関する。
【0020】
繰り返すが、更に特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法は、少なくとも1つの微生物株が、オメガ3脂肪酸を合成することができる微生物を含む実施の形態に関する。
【0021】
繰り返すが、更に特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法は、少なくとも1つの微生物株が、遺伝子組換え微生物を含む実施の形態に関する。
【0022】
繰り返すが、更に特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法は、工程(b)が、70℃~180℃の温度で、及び/又は10分~360分間の時間行われる熱前処理、続いて好ましくは40℃~100℃、より好ましくは45℃~70℃の温度、及び/又は3.0~9.0、より好ましくは5.0~7.0のpHで、及び/又は0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたる、プロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を伴う実施の形態に関する。
【0023】
繰り返すが、更に特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法は、工程(b)が、機械的ホモジナイズによって行われ、任意に、70℃~180℃の温度で、及び/又は10分~360分の時間行われる熱前処理を伴う実施の形態に関する。
【0024】
繰り返すが、更に特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法は、工程(c)が、好ましくは40℃~100℃、より好ましくは45℃~70℃の温度、及び/又は3.0~9.0、より好ましくは5.0~7.0のpHで、及び/又は0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたる、ヌクレアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を伴う実施の形態に関する。
【0025】
繰り返すが、更に特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法は、工程(c)が、好ましくは40℃~100℃、より好ましくは45℃~70℃の温度、及び/又は3.0~9.0、より好ましくは5.0~7.0のpHで、及び/又は0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたる、デアミナーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を更に含む実施の形態に関する。
【0026】
繰り返すが、更に特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法は、工程(c)が、好ましくは40℃~100℃、より好ましくは45℃~70℃の温度、及び/又は3.0~9.0、より好ましくは5.0~7.0のpHで、及び/又は0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたる、プロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を更に含む実施の形態に関する。
【0027】
更なる態様において、本発明は、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法に従って取得可能な、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のタンパク質及び/又はアミノ酸及びペプチドとを含む組成物に関する。
【0028】
特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のタンパク質及び/又はアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物は、組成物が、少なくとも11%、好ましくは少なくとも13%、更により好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも17%のIMP/GMP含量を特徴とする実施の形態に関する。
【0029】
更に特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のタンパク質及び/又はアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物は、組成物が、少なくとも6%(重量/重量)、好ましくは少なくとも8%(重量/重量)、より好ましくは少なくとも10%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも12%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも14%(重量/重量)、最も好ましくは少なくとも16%(重量/重量)のグルタミン酸含量を更に含む実施の形態に関する。
【0030】
更なる態様において、本発明は、動物飼料、ペットフード、発酵培地若しくはサプリメント、食品、栄養補助食品、医薬品、診断薬、DNA若しくはRNA、又は風味増強剤の製造において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のタンパク質及び/又はアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の使用に関する。
【0031】
繰り返すが、更なる態様において、本発明は、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のタンパク質及び/又はアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物を含む動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、栄養補助食品又は風味増強剤に関する。
【0032】
更なる態様において、本発明は、グルタミン酸ナトリウム代替品としての、又は抗生物質代替品としての/抗生物質の代替品における、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のタンパク質及び/又はアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の使用に関する。
【0033】
繰り返すが、更なる態様において、本発明は、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物を製造する方法の工程(a)で取得可能なバイオマスに関する。
【0034】
特定の態様において、本発明のバイオマスは、グルタミン酸含量が少なくとも5%(重量/重量)、好ましくは少なくとも6%(重量/重量)、より好ましくは少なくとも7%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも8%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも9%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも10%(重量/重量)、最も好ましくは少なくとも12%である実施の形態に関する。さらに、本発明のバイオマスは、好ましくは少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも22%(重量/重量)、より好ましくは少なくとも25%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも28%(重量/重量)の核酸含量を有する。
【0035】
更なる態様において、本発明は、本発明のバイオマスを含む単細胞タンパク質に関する。
【0036】
特定の態様において、本発明の単細胞タンパク質は、単細胞タンパク質が更に熱処理を受けた、実施の形態に関する。
【0037】
更なる態様において、本発明は、動物飼料、ペットフード又は食品、好ましくは動物飼料の製造における本発明の単細胞タンパク質の使用に関する。
【0038】
更に別の態様において、本発明は、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法の工程(b)で取得可能な細胞溶解物に関する。
【0039】
繰り返すが、更なる態様において、本発明は、本発明の細胞溶解物の、好ましくは限外濾過による分離工程を含むプロセスにおいて取得可能なヌクレオチドを含む組成物に関する。
【0040】
繰り返すが、更なる態様において、本発明は、本発明の細胞溶解物の好ましくは限外濾過による分離工程を含むプロセスにおいて取得可能なアミノ酸及びペプチドを含む組成物に関する。
【0041】
繰り返すが、更なる態様において、本発明は、動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、栄養補助食品、診断薬、医薬品、DNA若しくはRNA、又は風味増強剤の製造における、本発明の細胞溶解物の好ましくは限外濾過による分離工程を含むプロセスにおいて取得可能なヌクレオチドを含む組成物、又は本発明の細胞溶解物の分離により、好ましくは限外濾過により取得可能なアミノ酸及びペプチドを含む組成物の使用に関する。
【0042】
繰り返すが、更なる態様において、本発明は、本発明の細胞溶解物の好ましくは限外濾過による分離工程を含むプロセスで取得可能なヌクレオチドを含む組成物、又は本発明の細胞溶解物の分離により、好ましくは限外濾過により取得可能なアミノ酸及びペプチドを含む組成物を含む、動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、栄養補助食品、診断薬、医薬品、DNA若しくはRNA、又は風味増強剤に関する。
【0043】
定義
プロセス中の増殖速度は、本明細書では、発酵条件下で達成可能な増殖速度として定義される。言い換えれば、微生物が本発明の方法内での使用に適しているためには、発酵条件、特に特定の増殖培地上で、本明細書で定義される増殖速度で微生物を培養することが可能でなければならない。本明細書で定義されるプロセス中の増殖速度は、特に明記されていない限り、特定の微生物の増殖速度を指す。2以上の微生物を共培養する場合、増殖速度とは、培養中の全ての微生物の複合増殖速度を指し、経時的な複合バイオマスの増加を表す場合がある。
【0044】
当業者にはわかるように、プロセス中の増殖速度は、バイオマス量のln(自然対数)を時間の関数としてプロットし、線形回帰を使用して指数関数的増殖期に対応する線形範囲の傾きを計算することによって決定することが好ましい。
【0045】
このプロセス中の増殖速度は、μ(h-1)と呼ばれることもある。
【0046】
本明細書で理解されるように、特定の培養環境、特に液体培地を含む培養物の希釈速度D(h-1)は、単位時間(好ましくは1時間)当たりの培地の流れ(培養物の流出に等しい新鮮な培地の流入)を反応器内の培養量で割ったものと定義される。
【0047】
本明細書で理解されるオメガ3脂肪酸は、その化学構造において末端メチル基から3原子離れたところに二重結合が存在することを特徴とする多価不飽和脂肪酸である。特に、この用語は、アルファ-リノール酸、エイコサペンタエノイン酸、及びドコサヘキサエン酸を包含する。
【0048】
本明細書で理解される核酸としては、ポリマーのサイズに特に制限されることなく、ポリデオキシリボヌクレオチド及び/又はポリリボヌクレオチドとしても理解されるデオキシリボ核酸(DNA)及び/又はリボ核酸(RNA)が挙げられる。核酸はヌクレオチドから形成されていることに留意されたい。
【0049】
本明細書で理解されるヌクレオチドとは、重合時にポリデオキシリボヌクレオチド及び/又はポリリボヌクレオチドをそれぞれ形成するモノマーであるデオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドを指す。また、この用語は、修飾ヌクレオチド、例えば、イノシン塩基を含むIMPも包含することに留意されたい。好ましくは、組成物のヌクレオチド含量を指す場合、組成物のヌクレオチド、ヌクレオシド、及び核酸塩基(ピリミジン又はプリン)の含量を指し、更により好ましくは、組成物のヌクレオチド及びヌクレオシドの含量を指す。したがって、例えば、少なくとも22%のヌクレオチドを含む組成物であって、その%がNaClを除く乾燥質量の重量/重量%と理解される組成物は、少なくとも22%(NaClを除く乾燥質量の重量/重量%と理解される)のヌクレオチド、ヌクレオシド、及び核酸塩基を含むと理解されることが好ましく、より好ましくは、少なくとも22%(NaClを除く乾燥質量の重量/重量%と理解される)のヌクレオチド及びヌクレオシドを含むと理解され、すなわちヌクレオチド、ヌクレオシド、及び核酸塩基が総量で組成物の少なくとも22%を構成することが好ましく、ここで、%はNaClを除く乾燥質量の重量/重量%と理解され、ヌクレオチド及びヌクレオシドが総量で組成物の少なくとも22%を構成することがより好ましく、ここで%はNaClを除く乾燥質量の重量/重量%と理解される。
【0050】
ヌクレオシドは、リン酸部分を欠くヌクレオチドとして当業者に知られている。
【0051】
本明細書では、好ましくは、核酸塩基はピリミジン塩基及びプリン塩基を含むと理解され、核酸塩基はアデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシルであることがより好ましい。
【0052】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」("protein" or "proteins")という用語は、タンパク質、ペプチド、及びポリペプチドを対象としており、上記タンパク質、ペプチド又はポリペプチドは、翻訳後に修飾されている場合と修飾されていない場合がある。翻訳後修飾は、例えば、リン酸化、メチル化、グリコシル化であり得る。「タンパク質」という用語は、本明細書で定義されるタンパク質を含む画分又は組成物を指して使用されることが好ましい。プロテアーゼ(複数の場合もある)、つまりペプチド結合の加水分解を触媒できる酵素で酵素処理すると、タンパク質中のペプチド結合が加水分解され、大きなポリペプチドはより小さなポリペプチド及び/又はアミノ酸に変わる。したがって、「アミノ酸及びペプチド」という用語は、タンパク質、ペプチド(ポリペプチド又はオリゴペプチドと呼ばれることもある)、及びアミノ酸を含む組成物を指すものとし、本明細書では「タンパク質」のプロテアーゼ処理の産物として理解することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】A.糖蜜及びB.グルコースでのビブリオ・ナトリエゲンスの増殖について得られた増殖曲線である。本明細書におけるCDWは、細胞乾燥重量を指す。プロセス中の増殖速度を計算することができる線形回帰(μで表される)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明の手段及び方法について以下に説明する。本明細書に記載された特徴のあらゆる可能な組合せも想定されるということを理解されたい。
【0055】
第1の態様において、本発明は、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む組成物の製造方法に関する。好ましくは本明細書で理解されるように、ヌクレオチドへの言及は、任意に、ヌクレオシド及び核酸塩基(ピリジン又はプリン)も包含する場合があり、更により好ましくは、ヌクレオチドへの言及は、ヌクレオチド及びヌクレオシドを包含する場合がある。本明細書で理解されるように、「40%のアミノ酸及びペプチド」の言及は、本明細書で定義されるように、任意に、タンパク質を包含する場合がある。本明細書では、組成物は、塩化ナトリウム含量(NaCl)を更に除いた乾燥質量(水分を除去した時)を指すものと理解される。本明細書で理解されるように、「%」はパーセンテージで表される重量/重量比を指す(一般に重量/重量%と呼ばれる)。本明細書で言及される組成物(本明細書では本発明の抽出物と呼ばれることもある)は、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチド、更により好ましくは少なくとも25%のヌクレオチド、更により好ましくは少なくとも28%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチド、好ましくは少なくとも45%のアミノ酸及びペプチド、最も好ましくは少なくとも50%のアミノ酸及びペプチドとを含む。本明細書で理解されるように、本明細書で定義される本発明の組成物は、本発明の方法に従って取得可能である。
【0056】
本発明の方法は、(a)少なくとも0.85h-1のプロセス中の増殖速度を特徴とする少なくとも1つの微生物株を培養することによってバイオマスを提供する工程、(b)工程(a)のバイオマス中に存在する細胞を溶解する工程、及び(c)工程(b)の溶解物中に存在する核酸をヌクレオチドに変換し、任意に、(b)の溶解物中に存在するタンパク質をアミノ酸及びペプチドへ変換する工程を含む。
【0057】
本発明の方法の最初の工程(a)は、少なくとも0.85h-1のプロセス中の増殖速度を特徴とする少なくとも1つの微生物株を培養することによってバイオマスを提供することである。本発明の方法では、増殖の速い細菌株(プロセス中の増殖速度(増殖速度とも呼ばれる)は0.9h-1超である)を使用することが好ましい。工程(a)の少なくとも1つの微生物株は、少なくとも1.1h-1、好ましくは少なくとも1.2h-1、より好ましくは少なくとも1.4h-1のプロセス中の増殖速度を特徴とすることが好ましい。また、本発明には、工程(a)の少なくとも1つの微生物株が、少なくとも2h-1、少なくとも3h-1、又は少なくとも4h-1のプロセス中の増殖速度を特徴とする実施形態も包含される。本明細書で理解される増殖速度は、特に明記されていない限り、本明細書で定義されるプロセス中の増殖速度である。当業者にはわかるように、プロセス中の増殖速度は増殖培地によって異なる場合があり、当業者に理解されているように、最小培地と富栄養培地では異なる場合がある。
【0058】
本明細書で定義されるように、速く増殖する微生物は、一般に、比較的ゆっくりと増殖する微生物と比較して、核酸含量が高いことを特徴とする。本発明者らは驚くべきことに、核酸含量の高い微生物を用いることで、核酸とタンパク質を分離する高価な工程を省略することができるため、抽出物の製造を簡素化し、コストを削減できることを見出した。当業者にも知られているように、これまでのところ、少なくとも22%のヌクレオチドのレベルは、例えば酵母抽出物を使用する場合に、従来技術で実証されているように、細胞溶解後に更に核酸分離及び/又は濃縮工程を含めることによってのみ達成可能であった。さらに、当業者にも知られているように、これまでのところ、少なくとも15%のヌクレオチドのレベルは、例えば酵母抽出物を使用する場合に、従来技術で実証されているように、細胞溶解後に更に核酸分離及び/又は濃縮工程を含めることによってのみ達成可能であった。したがって、本発明の方法では、工程(a)の少なくとも1つの微生物株は、好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、更により好ましくは少なくとも22%、更により好ましくは少なくとも25%、更により好ましくは少なくとも28%の核酸含量を特徴とする。好ましくは、本発明の方法において、工程(a)の少なくとも1つの微生物株は、核酸含量が少なくとも22%、好ましくは少なくとも25%、更により好ましくは少なくとも28%であることを特徴とする。酵母抽出物の場合、酵母の核酸含量はより低く、典型的には約10%であり、最終抽出物のヌクレオチド含量が本発明の方法に従って到達可能なものに匹敵するヌクレオチド含量に達するためには、事前に分離して更に処理する必要がある。
【0059】
好適な例としては、ビブリオ・ナトリエゲンス株、ジオバチルス株、及びバチルス株が挙げられる。したがって、本発明の方法では、少なくとも1つの微生物株は、ビブリオ種、特にビブリオ・ナトリエゲンス、ジオバチルス種、特にジオバチルスLC300、及びバチルス種、特にバチルス・メガテリウムから選択される微生物株を含むことが好ましい。好ましくは、少なくとも1つの微生物株は、ビブリオ種、特にビブリオ・ナトリエゲンスから選択される。ジオバチルス種の更なる好適な例は、ジオバチルス・ウラリカス(GeoBacillus uralicus)、及びジオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacilus stearothermophilus)を含み得る。バチルス種の更なる好適な例は、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、及びバチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)を含み得る。
【0060】
本明細書で定義される工程(a)の少なくとも1つの微生物株は、細菌株を含むことが好ましい。細菌株は、極限環境細菌であり得る。細菌株は、好塩菌又は好熱菌であることが好ましい。好塩菌は、本明細書では、増殖及び生存のために高濃度の塩分、特にNaClを必要とする生物、本明細書では特に微生物と定義される。軽度の好塩菌は、少なくとも0.3Mで0.8Mを超えないNaCl濃度で増殖することが好ましい。中程度の好塩菌は、少なくとも0.8Mで3.4Mを超えないNaCl濃度で増殖することが好ましい。高度好塩菌は、少なくとも3.4Mで5.1Mを超えないNaCl濃度で増殖することが好ましい。或る特定の実施形態において、本明細書に記載の好塩菌は高度好塩菌である。さらに、或る特定の生物、特に微生物は、生存のために高い塩濃度を必要としないが、かかる条件に耐えることができることに留意されたい。かかる微生物は、耐塩性生物と呼ばれることもある。本発明の少なくとも1つの微生物株は、耐塩性生物を含み得る。工程(a)の少なくとも1つの微生物が好塩菌又は耐塩性生物である実施形態においては、培養工程(a)用培地の調製に、地下水、水道水又は蒸留水の代わりに海水を使用することができることに留意されたい。或る特定の実施形態において、上記好塩性又は耐塩性の生物は、他の微生物よりも速く増殖し、したがってそれらを過剰に増殖させる可能性がある。そのため、或る特定の実施形態において、海水を更に滅菌、濾過、及び/又は低温殺菌することなく使用できる。本明細書で定義される細菌株は、好熱菌であってもよい。好熱菌は、本明細書では、高温、つまり好ましくは41℃~122℃で増殖することが好ましい生物、特に微生物として理解される。好塩性微生物及び/又は好熱性微生物の使用は、他の微生物による汚染のリスクを大幅に低減するため、有利であることに留意されたい。
【0061】
極限環境微生物である細菌株、特に好塩菌又は好熱菌は、典型的には、ゲノムG/C含量が高いことを特徴とする。ゲノムG/C含量は、本明細書において、上記生物のDNA中の核酸塩基の総量に対する、上記生物のDNA中のG及びCヌクレオチドの量の比率として定義される。本明細書で理解されるように、本発明の細菌株、好ましくは好塩菌又は好熱菌は、ゲノムG/C含量が少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、更により好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも55%であることを特徴とする。上で指摘したように、Gは風味豊かな味の増強特性、特に強い旨味に大きく寄与する唯一の天然核酸塩基である。したがって、G/C含量の増加は、本発明の抽出物中の5’-グアニン一リン酸(5’-GMP)の存在量の増加に直接変換でき、本発明の抽出物においてより強い旨味を得ることができる。さらに、本発明の抽出物のより強い旨味を得るために必要な酵素、特にデアミナーゼが少なくて済むため、コスト削減にもつながる。
【0062】
本発明の少なくとも1つの微生物株は、ビタミンB12独立栄養生物である微生物を含み得る。食品にはビタミンB12の存在が必要であり、特にビーガン食及び/又はビーガン食に適した製品の場合は望ましい。ビタミンB12独立栄養生物である微生物は、バチルス・メガテリウムであることが好ましい。ビタミンB12独立栄養生物は、有機農業産業におけるビタミンB12の天然源として興味深いと考えられていることに留意されたい。
【0063】
本明細書において、本発明の範囲内では、少なくとも1つの微生物株が必ずしも単一の微生物株に限定される必要はないことに留意されたい。本発明の方法の範囲内では、少なくとも1つの微生物株は、2株、3株、4株、又はそれ以上の菌株であってもよい。或る特定の好ましい実施形態において、工程(a)の少なくとも1つの微生物株は、2つの微生物株、好ましくは2つの細菌株である。少なくとも1つの微生物株が2つの細菌株である或る特定の好ましい実施形態において、少なくとも1つの細菌株はビタミンB12独立栄養生物、好ましくはバチルス・メガテリウムである。
【0064】
本発明の或る特定の実施形態において、少なくとも1つの微生物株は、遺伝子組換え微生物を含むことが好ましい。上記遺伝子組換え生物は、特に限定されるものではなく、増殖速度、バイオマス収量を改善し、及び/又は或る特定の化学物質の生産を誘導するための遺伝子組換えを含み得る。本発明の或る特定の実施形態において、少なくとも1つの微生物株は、オメガ3脂肪酸を合成することができる微生物を含む。
【0065】
本発明によれば、本発明のバイオマスは、少なくとも0.85h-1のプロセス中の増殖速度を特徴とする少なくとも1つの微生物株を培養することによって取得可能である。本明細書で理解されるように、少なくとも1つの微生物株は基質上で培養される。当業者は、本発明で用いられる少なくとも1つの微生物株に対して、特定の培地(複数の場合もある)を選択、調整及び/又は適用することができる。使用する基質は、炭素源及び窒素源、並びに微量元素及びビタミンを含む、任意の市販の培地であり得る。基質は、熱的方法及び/又は酵素的方法により抽出されたもの、又は発酵に直接使用され、タンパク質、C5糖、C6糖、若しくはそれらの組合せのいずれかを含む、産業からの1つ又は幾つかの副流であることが好ましい。次いで、1つ以上の副流に他の化合物を補充して、適切な増殖培地(例えば、炭素源としての追加の糖分、又は酵母抽出物等の窒素源、並びにビタミン及び微量元素)を得ることができる。工業用発酵プロセスに精通している当業者に知られているように、発酵槽の植菌前に培地を滅菌することが好ましい。
【0066】
当業者に知られているように、発酵はバッチプロセス、フェッドバッチプロセス、又は(半)連続プロセスとして実行され得る。
【0067】
バッチプロセスは、発酵容器への材料の流入がないことを特徴とする。バッチプロセスでは、培養の開始時に全ての栄養素が提供され、その後のバイオプロセスでそれ以上添加されることはない。バイオプロセス全体を通して、気体、酸、及び塩基を除いて、追加の栄養素は添加されない。或る特定の実施形態においては、消泡剤を添加してもよい。次いで、バイオプロセスは、増殖に必要な栄養素の1つが制限されるまで続く。この戦略は、菌株の特性評価又は栄養培地の最適化等の迅速な実験に適している。この便利な方法の欠点は、バイオマスと生成物の収量が限られていることである。通常、炭素源及び/又は酸素移動が制限要因であるため、微生物は長い間指数関数的増殖期にはない。バッチモードでのバイオプロセスの実行が終了すると、バイオマス又は培地のみが採取され、適切に処理されて所望の製品が得られる。バイオリアクターの観点から見ると、洗浄工程と必要な場合は滅菌工程によってプロセスが繰り返し中断され、バイオマスは段階的にしか生産されない。
【0068】
フェドバッチプロセスでは、基質、栄養素、及びその他の物質を(好ましくは、濃縮溶液の形で)発酵容器に添加して、中でも、可能な培養時間を延長するか、又は収量を増やす場合がある。培養中に供給することの利点は、全体としてより多くの生成物量を達成できることである。特定の増殖条件下では、微生物及び/又は細胞は常に倍増するため、指数関数的な増殖曲線に従う。したがって、或る特定の実施形態においては、供給速度を指数関数的に増加させることもできる。一般に、基質は供給ボトル(又は供給タンク)から、例えばシリコンチューブ(又は滅菌可能な配管)を介して培養容器に送られる。ユーザーはいつでも供給を手動で設定(線形、指数関数、パルス単位)することもでき、又は特定の条件が満たされたとき(或る特定のバイオマス濃度に達したとき又は栄養素が枯渇したとき等)に栄養素を追加することもできる。フェッドバッチプロセスは幅広い制御戦略を提供し、高度に専門化されたアプリケーションにも適している。ただし、処理時間が長くなり、有毒な副産物が蓄積して阻害につながる可能性がある。細胞密度が高いと、気相からの酸素移動が制限されることによる制約も発生する可能性がある。
【0069】
本発明の方法では、液中発酵を連続プロセスとして行うことが好ましい。バッチ増殖期の後、特定の成分に関して平衡が確立される(定常状態とも呼ばれる)。これらの条件下では、取り出された分だけ新鮮な培地を加える(ケモスタット)。これらのバイオプロセスは連続培養と呼ばれ、栄養素が過剰になると酸又はエタノールの蓄積又は過剰な加熱等が原因で阻害される場合に特に適している。この方法のその他の利点としては、生成物の阻害が少なく、時空間収率が向上することが挙げられる。培地を取り出すと細胞が回収されるため、流入速度と流出速度は微生物の倍増時間未満でなければならない。或いは、細胞を様々な方法(例えば、スピンフィルター)で保持することもでき、これは灌流と呼ばれる。連続プロセスでは、バイオリアクターの時空間収率は、フェッドバッチプロセスと比較して更に改善され得る。ただし、培養期間が長いと、汚染及び培養物の長期的な変化のリスクも高まる。連続培養の最も一般的な3つのタイプは、ケモスタット(単一の増殖制限基質の添加速度が細胞増殖を制御する)、タービドスタット(細胞数(濁度又は光学密度)の間接的な測定であり、追加のセンサーを必要とするが、リアルタイムのフィードバックによって駆動され、液体の添加及び除去を制御する)、及び灌流(このタイプの連続バイオプロセシングモードは、細胞をバイオリアクターに保持するか、細胞をバイオリアクターにリサイクルすることに基づき、新鮮な培地が提供され、無細胞上清も同じ速度で除去される)である。
【0070】
したがって、工程(a)は連続的なプロセスとして行われることが好ましい。好ましくは、プロセスは、少なくとも0.85h-1、好ましくは少なくとも1.1h-1、より好ましくは少なくとも1.2h-1、更により好ましくは少なくとも1.4h-1の希釈速度で行われ、工程(a)の少なくとも1つの微生物株の各々のプロセス中の増殖速度は希釈速度によって制限される。希釈速度が速いため、ほとんどの潜在的な汚染物質の増殖速度を上回っている。潜在的な汚染物質である可能性のあるほとんどの微生物の増殖速度よりも希釈速度が速いため、それらが発酵槽内で増殖する前に、発酵槽から自動的に洗い流される。結果として、培養は非無菌条件下で行われてもよい。したがって、本発明の或る特定の実施形態においては、工程(a)は連続的に行われる。好ましくは、プロセスは、少なくとも0.85h-1、好ましくは少なくとも1.1h-1、より好ましくは少なくとも1.2h-1、更により好ましくは少なくとも1.4h-1の希釈速度で行われ、工程(a)の少なくとも1つの微生物株の各々のプロセス中の増殖速度は希釈速度によって制限され、任意に、少なくとも1つの微生物株は非滅菌条件下で培養される。本明細書では、非滅菌条件は、発酵槽がオートクレーブ処理等で滅菌されていない状態、及び/又は培地がオートクレーブ、濾過、若しくは当業者が知っている任意の他の方法によって滅菌されていない状態と理解される。本明細書で理解されるように、或る特定の実施形態においては、培地を滅菌又は低温殺菌してもよいが、発酵槽は滅菌せずに使用してもよい。さらに、これらの条件下では、他の微生物(本発明の少なくとも1つの微生物株以外)は増殖できるが、本発明の少なくとも1つの微生物株がそれらに勝る(又はそれらよりも増殖する)ことにも留意されたい。
【0071】
一実施形態において、工程(a)は、少なくとも1つの微生物株の連続発酵として行われ、少なくとも0.85h-1、好ましくは少なくとも1.1h-1、より好ましくは少なくとも1.2h-1、更により好ましくは少なくとも1.4h-1の希釈速度で行われ、少なくとも1つの微生物株は、ビブリオ・ナトリエゲンス株又はジオバチルス株を含む。一実施形態において、工程(a)は、少なくとも1つの微生物株の連続発酵として行われ、少なくとも0.85h-1、好ましくは少なくとも1.1h-1、より好ましくは少なくとも1.2h-1、更により好ましくは少なくとも1.4h-1の希釈速度で行われ、少なくとも1つの微生物株は、ビタミンB12独立栄養生物、好ましくはバチルス・メガテリウムを含む。
【0072】
一実施形態において、工程(a)は、少なくとも1つの微生物株の細胞をリサイクルすることを伴う。
【0073】
或る特定の実施形態において、本発明の工程(a)は、2以上の微生物株の共培養を伴う場合があり、その場合、少なくとも1つの菌株は、少なくとも0.85h-1のプロセス中の増殖速度を示さない。かかる実施形態は、少なくとも1つの微生物株のプロセス中の増殖速度が少なくとも0.85h-1、好ましくは少なくとも1.1h-1、より好ましくは少なくとも1.2h-1、更により好ましくは少なくとも1.4h-1である場合にのみ、本発明の範囲に包含される。2以上の微生物を共培養する場合、増殖速度とは、培養中の全ての微生物の複合増殖速度を指し、経時的な複合バイオマスの増加を表す場合がある。
【0074】
培養が完了すると、当業者に知られている方法に従ってバイオマスを回収する。バイオマスの回収は、分離及び/又は洗浄を含み得る。技術水準の分離技術は、タンジェンシャルフローフィルトレーション又は工業用(ノズル又は遠心)セパレーターを採用する。本明細書に記載のとおり取得可能なバイオマスは、10%~25%(パーセントで表される重量対重量比で定義される、%(重量/重量))の乾燥質量を有する。
【0075】
本明細書で取得可能なバイオマスは、本発明の方法の工程(b)において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む組成物を製造するために使用される。しかしながら、上記バイオマスは、当業者が考えられる限り、他のプロセス及び用途にも使用することができる。したがって、別の態様において、本発明は、本明細書で取得可能なバイオマスに関することに留意されたい。
【0076】
少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む組成物を製造する本発明の方法の工程(b)は、工程(a)のバイオマス中に存在する細胞を溶解することを含む。本明細書では、当業者に知られている工業的に適用可能な方法であればいずれも使用することができる。本発明の範囲に包含される抽出物の製造は、例えば、機械的又は化学的な破壊の後に多様な酵素処理を行い、多様な酵素による酵素処理の前にバイオマスを不活性化することによって行うことができる。
【0077】
或る特定の実施形態において、特に少なくとも1つの微生物株がグラム陰性細菌である場合には、ビーズミル又はPEFのような機械的破壊法が使用される。細胞を分解する化学的方法も本発明の範囲内で使用することができる。本明細書で検討される細胞を溶解する方法は、微生物に基づいて適合され得ることに留意されたい。例えば、単数又は複数のグラム陰性細菌を使用する場合、グラム陽性細菌、例えば、ジオバチルス株又はバチルス・メガテリウムの場合よりも溶解しやすくなる。さらに、酵母抽出物又は植物細胞と比較して、細菌は細胞壁が薄く、溶解プロセスで壊れやすい(特に、ビブリオ・ナトリエゲンスのようなグラム陰性細菌に当てはまる)。かかる細胞の溶解は、酵母又は植物細胞の溶解よりも効率的であることに留意されたい。
【0078】
細胞を破壊する化学的方法としては、限定されるものではないが、塩(複数の場合もある)、塩基性試薬(複数の場合もある)、洗浄剤(複数の場合もある)、及び/又は界面活性剤(複数の場合もある)による処理が挙げられる。化学的方法、特にアルカリ試薬(複数の場合もある)とも呼ばれる塩基性試薬(複数の場合もある)を使用する方法は、核酸の部分分解、例えばRNAの分解、2’-リボヌクレオチド及び3’-リボヌクレオチドの形成につながる可能性があることに留意されたい。
【0079】
任意に、バイオマスの熱前処理を溶解又はホモジナイズの前に行うことができる。熱前処理は、典型的には、70℃~180℃の温度で及び/又は10分~360分の時間で行われる。当業者は、問題となるバイオマス及び実験環境に合わせて熱前処理の条件を調整することができる。熱前処理が必要かどうかは、予定されている更なる処理によって異なる。本明細書に記載されるように、バイオマスを機械的ホモジナイズによって溶解する場合、熱前処理を行うことが好ましい。理論に拘束されることを望むものではないが、熱前処理の目的は、少なくとも1つの微生物株の酵素を不活性化することであることに留意されたい。バイオマスを機械的ホモジナイズによって溶解する場合、熱前処理工程は短く、好ましくは30分未満、より好ましくは15分未満に抑えることが好ましい。本明細書で理解されるように、熱前処理の時間は長くなる。
【0080】
したがって、特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法は、工程(b)が機械的ホモジナイズによって行われ、任意に70℃~180℃の温度で及び/又は10分~360分間行われる熱前処理を伴う実施形態に関する。
【0081】
或いは、細胞溶解は自己消化によって行われ得る。自己消化は、温度が最適温度よりも高くなると、微生物が自らを破壊するプロセスである。このプロセスでは、例えば高温で変性したタンパク質又はその他の成分を破壊する特定の酵素の微生物による産生を伴う。
【0082】
自己消化を伴う経路では、バイオマスは45℃~200℃の温度で0.1時間~48時間の熱処理によって誘発される自己分解のプロセスを経る。微生物の自己消化技術に精通している者であれば、温度とインキュベーションを上記微生物の性質に応じて選択する必要があることは明らかであり、例えば、好熱菌と中温性細菌は異なる自己消化温度を有し、グラム陽性細菌とグラム陰性細菌は細胞壁の構造が異なるため、異なるインキュベーション時間を必要とする。同様に、同じバイオマスを異なる時間又は異なる温度で処理すると、組成が異なる抽出物が生成される。
【0083】
好ましくは、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法において、工程(b)における細胞溶解は自己消化によって行われない。
【0084】
機械的破壊又は化学的破壊とそれに続く多様な酵素処理を伴う経路の場合、最初の工程でバイオマスを機械的破壊又は化学的破壊に供して細胞壁を破壊し、次いで、得られた細胞成分をタンパク質分解酵素、ヌクレアーゼ、AMPデアミナーゼ、又はそれらの組合せを含む酵素カクテルで直接処理する。
【0085】
本明細書で理解されるように、本発明の組成物は、或る特定の実施形態において、細胞壁を含み得る。しかしながら、当業者に知られている方法に従って、組成物から細胞壁を除去した組成物も本発明によって包含される。細胞壁の除去は、本発明の方法の工程(b)と一緒に行うか、又はその後に行うことが好ましい。
【0086】
当業者に知られているように、工程(b)及び工程(c)は、工程(a)のバイオマスに含まれる少なくとも1つの微生物株の細胞の自己消化を伴う場合があり、自己消化は、40℃~200℃の温度及び/又は3.0~9.0のpHで、及び/又は10分~72時間にわたって行われることが好ましい。或る特定の実施形態において、工程(b)及び工程(c)が、工程(a)のバイオマスに含まれる少なくとも1つの微生物株の細胞の自己消化を伴う本発明の組成物の製造方法は、少なくとも1.5%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも2.5%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも3.5%のヌクレオチド、更により好ましくは少なくとも5%のヌクレオチドを含む組成物をもたらし得る。最終的なヌクレオチド含量は、とりわけ、工程(a)のバイオマスのヌクレオチド含量に依存する。工程(b)及び工程(c)が、工程(a)のバイオマスに含まれる少なくとも1つの微生物株の細胞の自己消化を伴う場合、熱前処理工程は不要であることが理解される。したがって、これらの実施形態においては、本明細書に開示される熱前処理工程を行わないことが好ましい。
【0087】
本発明の或る特定の実施形態においては、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法において、工程(b)は、熱前処理と、続くプロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を含む。本明細書で理解されるように、熱前処理工程は、70℃~180℃の温度で、及び/又は10分~360分の時間行われることが好ましい。プロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理は、40℃~100℃の温度、より好ましくは45℃~70℃の温度で行われることが好ましい。プロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理は、更に、3.0~9.0、より好ましくは5.0~7.0のpHで行われることが好ましい。プロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理は、0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間で行われることが好ましい。本明細書に記載のように、熱前処理後に酵素処理を行うことが好ましいことに留意されたい。当業者に知られている任意のプロテアーゼ酵素を、本明細書に記載されるプロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理に使用することができる。当業者は、プロテアーゼ(proteases)とも呼ばれる適切なプロテアーゼ又はプロテアーゼカクテルを選択することができ、またプロテアーゼ(複数の場合もある)の最適な添加量を決定することもできる。バイオマスの総重量に対してプロテアーゼを0.01%~5%(重量/重量)で使用することが好ましい。
【0088】
細胞内のRNAが、一部、タンパク質(とりわけRNAポリメラーゼ及びシグマ因子)と複合体を形成することは、当業者に知られている。したがって、全てのRNAがヌクレアーゼに容易に利用可能というわけではなく、RNAからヌクレオチド及びヌクレオシドへの完全な変換が妨げられている可能性がある。ヌクレアーゼ酵素処理の前にプロテアーゼで適切に処理すると、RNA-タンパク質複合体が分解され、ヌクレオチド収量が向上する可能性がある。
【0089】
さらに、熱前処理とそれに続くプロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理の際に、細胞壁が反応混合物中に残り、好ましくは分離する必要があることに留意されたい。分離を、機械的及び/又は物理的な分離によって行うことができる。理論に拘束されることを望むものではないが、熱前処理に続いてプロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を行うと、細胞溶解につながることが本明細書で理解される。
【0090】
本発明者らは驚くべきことに、本発明に用いられる微生物株(複数の場合もある)、特に細菌における核酸含量が非常に高いため、核酸を他の細胞成分から分離してヌクレオチドが豊富な抽出物を製造する必要がないことを見出した。言い換えると、本発明者らは、核酸含量の高い微生物株(複数の場合もある)を使用することにより、そうでない場合には核酸の分離及び/又は濃縮の工程(複数の場合もある)を含むプロセスでしか得ることができないヌクレオチド含有量を有する抽出物が得られることを実証した。
【0091】
本発明の或る特定の実施形態において、本発明の方法の任意の工程として、得られた抽出物/溶解物の他の成分からの核酸、及び任意にタンパク質の分離を行うことができる。好ましくは、カットオフが10kD~50kDの技術水準の限外濾過法を用いて上記分離を行うことができる。或いは、磁気ビーズを使用して、更に高いヌクレオチド濃度の抽出物又は純粋な目的のヌクレオチドを製造することもできる。
【0092】
両方の実施形態において、核酸は保持液中で回収されるが、後者の場合、核酸はビーズに特異的に結合し、後に溶出されるため、高純度の核酸画分を得ることにつながる。限外濾過の場合、当業者に知られているように、追加の精製工程を行うことで回収された核酸の純度を高めることが予想され得る。或る特定の代替的な実施形態において、クロマトグラフィー、特にイオン交換クロマトグラフィーにより、更に高いヌクレオチド濃度の抽出物又は実質的に純粋な目的のヌクレオチドを得ることができる。或る特定の実施形態において、活性炭処理時に不純物を除去することにより、更に高いヌクレオチド濃度の抽出物を得ることができる。或る特定の代替的な実施形態において、結晶化によって、更に高いヌクレオチド濃度の抽出物又は実質的に純粋な目的のヌクレオチドを得ることができる。或る特定の実施形態において、上記に開示された手段の組合せを伴う手段により、更に高いヌクレオチド濃度の抽出物、又は実質的に純粋な目的のヌクレオチドを得ることができる。
【0093】
繰り返すが、更に特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法は、工程(c)が、ヌクレアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を伴う実施形態に関する。ヌクレアーゼによる上記酵素処理は、好ましくは40℃~100℃の温度、より好ましくは45℃~70℃の温度で行われる。上記ヌクレアーゼによる酵素処理は、好ましくは3.0~9.0、より好ましくは5.0~7.0のpHで行われる。上記ヌクレアーゼによる酵素処理は、好ましくは0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたって行われる。本明細書に記載されるように、当業者に知られている任意のヌクレアーゼ酵素をヌクレアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理に使用することができる。当業者は、ヌクレアーゼ(nucleases)とも呼ばれる適切なヌクレアーゼ又はヌクレアーゼカクテルを選択し、ヌクレアーゼ(複数の場合もある)の最適な添加量を決定することもできる。ヌクレアーゼは、溶解物の総重量に対して0.01~5%(重量/重量)の添加量で使用することが好ましい。
【0094】
繰り返すが、更に特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法は、工程(c)が、デアミナーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を更に含む実施形態に関する。デアミナーゼ(複数の場合もある)による酵素処理は、40℃~100℃の温度、より好ましくは45℃~70℃の温度で行われることが好ましい。デアミナーゼ(複数の場合もある)による酵素処理は、3.0~9.0のpH、より好ましくは5.0~7.0のpHで行われることが好ましい。デアミナーゼ(複数の場合もある)による酵素処理は、好ましくは0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたって行われる。本明細書に記載されているように、当業者に知られている任意のデアミナーゼ酵素を、デアミナーゼ(複数の場合もある)による酵素処理に使用することができる。当業者は、デアミナーゼ(deaminases)とも呼ばれる適切なデアミナーゼ又はデアミナーゼカクテルを選択することができる。デアミナーゼは、溶解物の総重量に対して0.01~5%(重量/重量)の添加量で使用することが好ましい。
【0095】
本発明によれば、ヌクレアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理の工程とデアミナーゼ(複数の場合もある)による酵素処理の工程は、別々に、連続的に、又は一緒に行うことができる。連続適用の場合、当業者に知られているように、第2の酵素を添加する前に、最初に使用した酵素を熱的に失活させるという追加の工程を任意に含めることができる。好ましくは、ヌクレアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理の工程と、デアミナーゼ(複数の場合もある)による酵素処理の工程とは一緒に行われる。かかる処理を、ヌクレアーゼ(複数の場合もある)及びデアミナーゼ(複数の場合もある)による処理と呼ぶことができる。特定のヌクレアーゼ(複数の場合もある)及びデアミナーゼ(複数の場合もある)の選択は、処理条件下で酵素が特定の活性を示し、好ましくは非特異的活性を示し得ないように、当業者によって実行される。本明細書で検討されるように、ヌクレアーゼ(複数の場合もある)及びデアミナーゼ(複数の場合もある)による処理は、好ましくは40℃~100℃の温度、より好ましくは45℃~70℃の温度で行われる。ヌクレアーゼ(複数の場合もある)及びデアミナーゼ(複数の場合もある)による処理は、好ましくは3.0~9.0のpH、より好ましくは5.0~7.0のpHで行われる。さらに、ヌクレアーゼ(複数の場合もある)及びデアミナーゼ(複数の場合もある)による処理、デアミナーゼ(複数の場合もある)による酵素処理は、好ましくは0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたって行われる。例えば、3%(重量/重量)超、5%(重量/重量)、7%(重量/重量)超、又は9%(重量/重量)超の高塩濃度(例えばNaCl)に耐える酵素であることが特に好ましい。
【0096】
エンドウ豆、大豆、又は小麦等の様々な供給源からの植物性タンパク質は、動物性タンパク質の代替品として、ヒトによる消費及び動物飼料の両方として導入されているが、いくつかの欠点がある。第1に、ほとんどの植物材料には完全なタンパク質が含まれておらず(FAOの定義に従って理解される、www.fao.org, https://en.wikipedia.org/wiki/Complete_protein、2021年3月11日にアクセス)、多くの場合、反栄養化合物(サポニン等)を含有する。不完全なタンパク質及び反栄養素は、飼料の有効性を低下させ、又は動物飼料において魚若しくはホエイ等の動物性タンパク質を補う必要が生じる。ヒトの食品では、ビーガンベースの食事でアミノ酸欠乏症を引き起こす可能性がある。第2に、植物のタンパク質濃度は比較的低く(5%~30%)、タンパク質は堅い植物細胞構造に含まれている。そのため、タンパク質画分を分離し、生きたタンパク質含量の80%まで濃縮するためには、ジェット分級機又は空気分級機等、エネルギー需要の高い機器が必要である。本発明は、高濃度の完全タンパク質(40%以上)を含み、細胞壁がより薄い増殖の速い微生物、特に細菌を培養することにより、これらの課題を克服している。
【0097】
繰り返すが、更に特定の態様において、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法は、工程(c)が、プロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を更に含む実施形態に関する。プロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理は、好ましくは40℃~100℃の温度、より好ましくは45℃~70℃の温度で行われる。プロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理は、好ましくは3.0~9.0のpH、より好ましくは5.0~7.0のpHで行われる。さらに、プロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理は、好ましくは0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたって行われる。本明細書に記載されているように、当業者に知られている任意のプロテアーゼ酵素を、プロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理に使用することができる。当業者は、プロテアーゼ(proteases)とも呼ばれる適切なプロテアーゼ又はプロテアーゼカクテルを選択することができる。本明細書で定義されるプロテアーゼ(複数の場合もある)は、アルカラーゼ及び/又はパパインを含むことが好ましい。さらに、当業者はプロテアーゼ(複数の場合もある)の最適な添加量を決定することもでる。プロテアーゼは、溶解物の総重量に対して0.01%~5%(重量/重量)で使用することが好ましい。
【0098】
当業者に知られているように、工程(c)の生成物は更に追加のプロセスを経てもよい。この組成物を、更に他の組成物及び/又はサプリメント、タンパク質、核酸、ビタミンと配合してもよい。当業者に知られている方法に従って、臭気中和を行う必要がある場合もある。そのための適切な技術は、活性炭フィルターによる組成物又は組成物の溶液の濾過である。組成物を、当業者に知られているように、例えばパルス電界を印加することによって更に滅菌してもよい。一実施形態において、組成物を更に低温殺菌することができ、例えば、高圧低温殺菌を経てもよい。本発明の組成物は、例えば、噴霧乾燥、バンド乾燥、又はドラム乾燥によって、更に乾燥及び水分除去を経てもよい。
【0099】
更なる態様において、本発明はまた、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法に従って取得可能な、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のタンパク質及び/又はアミノ酸及びペプチドとを含む組成物を指す。好ましくは、上記組成物は、少なくとも11%、好ましくは少なくとも13%、更により好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも17%のIMP/GMP含量を特徴とする。IMP及びGMPは、本発明の組成物の味覚特性及び/又は味覚増強特性に寄与する主要なヌクレオチドである。
【0100】
或る特定の実施形態において、組成物は、本発明の組成物の味覚特性及び/又は味覚増強特性に寄与し得る更なる化合物を更に含む。当業者に知られているかかる化合物の1つは、グルタミン酸である。本明細書では、グルタミン酸は、この定義に包含されるグルタミン酸又はその塩の任意の形態として理解される。本明細書では、グルタミンが「グルタミン酸」という用語に含まれることも理解される。したがって、本明細書で理解されるように、グルタミン酸という用語は、グルタミン酸若しくはその塩、又はグルタミン若しくはその塩を指す。したがって、或る特定の実施形態において、組成物は更に、少なくとも6%(重量/重量)、好ましくは少なくとも8%(重量/重量)、より好ましくは少なくとも10%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも12%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも14%(重量/重量)、最も好ましくは少なくとも16%(重量/重量)のグルタミン酸含量を含む。理論に拘束されることを望むものではないが、グルタミン酸の主な供給源は、本発明の組成物中に存在するアミノ酸及びペプチドであることに留意されたい。
【0101】
少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のタンパク質及び/又はアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物は、食品を含む更なる製品の製造に有用である。食品又は飼料製品は、本明細書では、経口摂取に適した任意の製品、好ましくは食品、飼料、飲料、又は食品若しくは飼料のサプリメントとして定義される。したがって、食品又は飼料製品は、対象となる動物種に受け入れられる味を有することが好ましい。したがって、本発明の組成物は、動物飼料、ペットフード、発酵培地若しくはサプリメント、食品、栄養補助食品、医薬品、診断薬、DNA若しくはRNA、又は風味増強剤の製造に有用である。
【0102】
少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のタンパク質及び/又はアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物は、動物飼料又はペットフードの製造に有用である。動物飼料は、本明細書では、好ましくは飼育動物、特に家畜の栄養を目的とした食品として定義される。例えば、固体形態、例えばペレットの形で、又は動物に給餌するのに適した任意の他の形態で製造することができる。本明細書で定義されるペットフードは、イヌ、ネコ、マウス、モルモット、家鳥、観賞魚等の小型飼育動物を対象とする。ただし、このリストは制限を何ら意図するものではない。
【0103】
少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のタンパク質及び/又はアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物は、発酵培地又はサプリメントの製造に有用である。本明細書では、発酵培地は、微生物株(複数の場合もある)が増殖可能な基質又は栄養源として理解されており、特に、実験室又はバイオテクノロジーの目的で制御された方法で培養することができる。本明細書では、発酵サプリメントは、発酵培地に添加される製品として理解されるが、微生物株の増殖を単独で支えることができる必要はない。
【0104】
少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のタンパク質及び/又はアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物は、栄養補助食品の製造に有用である。本明細書で理解されるように、機能性食品とも呼ばれる栄養補助食品は、単なる栄養にとどまらず、宿主の健康及び/又は幸福を改善し、及び/又は宿主の病的状態を予防するための少なくとも1つの特定の標的作用を有する任意の食品として定義される。
【0105】
繰り返すが、更なる態様において、本発明は、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のタンパク質及び/又はアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物を含む動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、栄養補助食品又は風味増強剤に関する。言い換えれば、本発明は、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のタンパク質及び/又はアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物を使用して製造される動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、栄養補助食品又は風味増強剤に関する。
【0106】
更なる態様において、本発明は、グルタミン酸ナトリウム代替品としての、又は抗生物質代替品としての/抗生物質の代替品における、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のタンパク質及び/又はアミノ酸及びペプチドとを含む組成物の使用に関する。
【0107】
更なる態様において、本発明は、医薬品、診断薬、DNA又はRNAの製造のための、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のタンパク質及び/又はアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の使用に関する。
【0108】
更に別の態様において、本発明は、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物を製造する方法の工程(a)で取得可能なバイオマスにも関する。本明細書で理解されるように、本発明のバイオマスは、少なくとも0.85h-1のプロセス中の増殖速度を特徴とする少なくとも1つの微生物株を培養することによって取得可能である。好ましくは、工程(a)の少なくとも1つの微生物株は、少なくとも1.1h-1、好ましくは少なくとも1.2h-1、より好ましくは少なくとも1.4h-1のプロセス中の増殖速度を特徴とする。本明細書で理解される増殖速度は、特に明記されていない限り、本明細書で定義されているプロセス中の増殖速度である。本明細書で理解されるように、或る特定の実施形態において、培養はプロセスとして行われる。好ましくは、プロセスは、少なくとも0.85h-1、好ましくは少なくとも1.1h-1、より好ましくは少なくとも1.2h-1、更により好ましくは少なくとも1.4h-1の希釈速度で行われ、少なくとも1つの微生物株の各々のプロセス中の増殖速度は希釈速度によって制限される。適切な微生物株としては、限定されるものではないが、ビブリオ・ナトリエゲンス株、ジオバチルス株及びバチルス株が挙げられる。したがって、本発明のバイオマスは、ビブリオ・ナトリエゲンス株、ジオバチルス株及びバチルス株から選択された微生物株を含むことが好ましい。更に好ましい実施形態において、グルタミン酸含量は少なくとも5%(重量/重量)、好ましくは少なくとも6%(重量/重量)、より好ましくは少なくとも7%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも8%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも9%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも10%(重量/重量)、最も好ましくは少なくとも12%(重量/重量)である。
【0109】
更なる態様において、本発明は、本発明のバイオマスを含む単細胞タンパク質に関する。バイオマスは本明細書及び上記で定義されているとおりである。本明細書で理解されるように、単細胞タンパク質は食用微生物、好ましくは単細胞微生物を指す。本発明の単細胞タンパク質は、動物飼料、ペットフード又は食品、好ましくは動物飼料の製造に有用である。本明細書で定義される単細胞タンパク質は、本明細書に記載されるように、更に熱処理を受けることができる。理論に拘束されることを望むものではないが、熱前処理を行うことで、核酸の含量を食品の製造又は食品としての消費に許容可能なレベルまで低減できることに留意されたい。或る特定の実施形態において、熱処理は、本明細書に記載されるように、単細胞タンパク質を形成する細胞に自己消化を誘導することとして理解され得る。
【0110】
更に別の態様において、本発明は、少なくとも15%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む本発明の組成物の製造方法の工程(b)で取得可能な細胞溶解物に関する。
【0111】
或る特定の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の方法で取得可能な細胞溶解物に関し、工程(b)及び工程(c)は、工程(a)のバイオマスに含まれる少なくとも1つの微生物株の細胞の自己消化を伴う。
【0112】
繰り返すが、更なる態様において、本発明は、本発明の細胞溶解物の分離により、好ましくは限外濾過により取得可能なヌクレオチドを含む組成物に関する。好ましくは、ヌクレオチドを含む組成物は、少なくとも22%のヌクレオチド、好ましくは少なくとも25%のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも30%のヌクレオチドを含む。好ましくは、本明細書で定義されるヌクレオチドを含む組成物は、IMP/GMP含量が少なくとも11%、好ましくは少なくとも13%、更により好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも17%であることを特徴とする。
【0113】
繰り返すが、更なる態様において、本発明は、本発明の細胞溶解物の分離によって、好ましくは限外濾過によって、又は磁気ビーズを使用して、より好ましくは限外濾過によって取得可能なアミノ酸及びペプチドを含む組成物に関する。或る特定の態様において、本明細書で理解されるように、分離工程は濃縮工程と理解され得る。
【0114】
繰り返すが、更なる態様において、本発明は、動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、栄養補助食品、医薬品、診断薬、DNA若しくはRNA、又は風味増強剤の製造における、本発明の細胞溶解物の好ましくは限外濾過による分離工程を含むプロセスにおいて取得可能なヌクレオチドを含む組成物、又は本発明の細胞溶解物の好ましくは限外濾過による分離工程を含むプロセスにおいて取得可能なアミノ酸及びペプチドを含む組成物の使用に関する。本明細書で理解されるように、分離工程は、本発明の方法の工程(b)の生成物である溶解物にそれぞれ含まれる核酸及びタンパク質の分離に関し、典型的には、(c)工程(b)の溶解物に存在する核酸をヌクレオチドに変換し、任意に(b)の溶解物に存在するタンパク質をアミノ酸及びペプチドに変換する工程が続く。本明細書で理解されるように、分離工程は濃縮工程としても理解され得る。好ましくは、本明細書で定義されるヌクレオチドを含む組成物は、IMP/GMP含量が少なくとも11%、好ましくは少なくとも13%、更に好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも17%であることを特徴とする。IMP及びGMPは、本発明の組成物の味覚特性及び/又は味覚増強特性に寄与する主要なヌクレオチドである。さらに、或る特定の実施形態において、本明細書に記載のヌクレオチドを含む組成物、並びに本明細書に記載のアミノ酸及びペプチドを含む組成物は、動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、栄養補助食品、医薬品、診断薬、DNA若しくはRNA、又は風味増強剤の製造に共に使用され得ることも留意されたい。
【0115】
繰り返すが、更なる態様において、本発明は、本発明の細胞溶解物の好ましくは限外濾過による若しくは磁気ビーズによる、より好ましくは限外濾過による分離工程を含むプロセスにおいて取得可能なヌクレオチドを含む組成物、又は本発明の細胞溶解物の好ましくは限外濾過による若しくは磁気ビーズによる、より好ましくは限外濾過による分離工程を含むプロセスにおいて取得可能なアミノ酸及びペプチドを含む組成物を含む、動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、栄養補助食品、又は風味増強剤に関する。分離工程を含むプロセスは、上記のとおりである。本明細書で理解されるように、分離工程は、本発明の方法の工程(b)の生成物である溶解物にそれぞれ含まれる核酸及びタンパク質の分離に関し、典型的には、(c)工程(b)の溶解物に存在する核酸をヌクレオチドに変換し、任意に(b)の溶解物に存在するタンパク質をアミノ酸及びペプチドに変換する工程が続く。
【0116】
本発明の更なる態様及び/又は実施形態は、以下の番号が付された項目に開示される。
【0117】
1.少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む組成物の製造方法であって、
(a)少なくとも0.85h-1のプロセス中の増殖速度を特徴とする少なくとも1つの微生物株を培養することによってバイオマスを提供する工程と、
(b)工程(a)のバイオマスに存在する細胞を溶解する工程と、
(c)工程(b)の溶解物中に存在する核酸をヌクレオチドに変換し、任意に(b)の溶解物中に存在するタンパク質をアミノ酸及びペプチドに変換する工程と、
を含み、%は、NaClを除く乾燥質量の重量/重量%と理解される、製造方法。
【0118】
2.工程(a)の少なくとも1つの微生物株が、少なくとも1.1h-1、好ましくは少なくとも1.2h-1、より好ましくは少なくとも1.4h-1のプロセス中の増殖速度を特徴とする、項目1に記載の方法。
【0119】
3.工程(a)の少なくとも1つの微生物株が、少なくとも22%、好ましくは少なくとも25%、更により好ましくは少なくとも28%の核酸含量を特徴とする、項目1又は2に記載の方法。
【0120】
4.工程(a)の少なくとも1つの微生物株が、細菌株、好ましくは好塩菌又は好熱菌を含み、好ましくは細菌株が、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、更により好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも55%のゲノムG/C含量を特徴とする、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0121】
5.工程(a)の少なくとも1つの微生物株が、ビタミンB12独立栄養生物である微生物を含む、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0122】
6.工程(a)が、少なくとも0.85h-1、好ましくは少なくとも1.1h-1、より好ましくは少なくとも1.2h-1、更により好ましくは少なくとも1.4h-1の希釈速度で連続プロセスとして行われ、工程(a)の少なくとも1つの微生物株の各々のプロセスにおける増殖速度が、希釈速度によって制限され、任意に、少なくとも1つの微生物株が、非滅菌条件下で培養される、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0123】
7.工程(a)の少なくとも1つの微生物株が、2つの微生物株、好ましくは2つの細菌株であり、更に好ましくは、少なくとも1つの細菌株が、ビタミンB12独立栄養生物である、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0124】
8.少なくとも1つの微生物株が、ビブリオ種、特にビブリオ・ナトリエゲンス、ジオバチルス種、特にジオバチルスLC300、及びバチルス種、特にバチルス・メガテリウムから選択される微生物株を含む、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0125】
9.少なくとも1つの微生物株が、オメガ3脂肪酸を合成することができる微生物を含む、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0126】
10.少なくとも1つの微生物株が、遺伝子組換え微生物を含む、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0127】
11.工程(b)が、70℃~180℃の温度で、及び/又は10分~360分間の時間行われる熱前処理、続いて好ましくは40℃~100℃、より好ましくは45℃~70℃の温度、及び/又は3.0~9.0、より好ましくは5.0~7.0のpHで、及び/又は0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたる、プロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を伴う、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0128】
12.工程(b)が、機械的ホモジナイズによって行われ、任意に、70℃~180℃の温度で、及び/又は10分~360分の時間行われる熱前処理を伴う、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0129】
13.工程(c)が、好ましくは40℃~100℃、より好ましくは45℃~70℃の温度、及び/又は3.0~9.0、より好ましくは5.0~7.0のpHで、及び/又は0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたる、ヌクレアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を伴う、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0130】
14.工程(c)が、好ましくは40℃~100℃、より好ましくは45℃~70℃の温度、及び/又は3.0~9.0、より好ましくは5.0~7.0のpHで、及び/又は0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたる、デアミナーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を更に含む、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
【0131】
15.工程(c)が、好ましくは40℃~100℃、より好ましくは45℃~70℃の温度、及び/又は3.0~9.0、より好ましくは5.0~7.0のpHで、及び/又は0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたる、プロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を更に含む、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
【0132】
16.項目1~15のいずれか一項に記載の方法に従って取得可能な、少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のタンパク質及び/又はアミノ酸及びペプチドとを含む、組成物。
【0133】
17.少なくとも11%、好ましくは少なくとも13%、更により好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも17%のIMP/GMP含量を特徴とする、項目16に記載の組成物。
【0134】
18.少なくとも6%(重量/重量)、好ましくは少なくとも8%(重量/重量)、より好ましくは少なくとも12%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも14%(重量/重量)、最も好ましくは少なくとも16%(重量/重量)のグルタミン酸含量を更に含む、項目16又は17に記載の組成物。
【0135】
19.動物飼料、ペットフード、発酵培地若しくはサプリメント、食品、栄養補助食品、医薬品、診断薬、DNA若しくはRNA、又は風味増強剤の製造における、項目16~18のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【0136】
20.項目16~18のいずれか一項に記載の組成物を含む、動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、栄養補助食品、医薬品、診断薬、DNA若しくはRNA、又は風味増強剤。
【0137】
21.グルタミン酸ナトリウム代替品として、又は抗生物質代替品としての/抗生物質代替品における、項目16~18のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【0138】
22.項目1~15のいずれか一項に記載の方法の工程(a)において取得可能な、バイオマス。
【0139】
23.グルタミン酸含量が、少なくとも5%、好ましくは少なくとも6%(重量/重量)、より好ましくは少なくとも7%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも8%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも9%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも10%(重量/重量)、最も好ましくは少なくとも12%(重量/重量)である、項目22に記載のバイオマス。
【0140】
24.項目22又は23に記載のバイオマスを含む、単細胞タンパク質。
【0141】
25.更に熱処理を経た、項目24に記載の単細胞タンパク質。
【0142】
26.動物飼料、ペットフード又は食品、好ましくは動物飼料の製造における項目24又は25に記載の単細胞タンパク質の使用。
【0143】
27.項目1~15のいずれか一項に記載の方法の工程(b)において取得可能な、細胞溶解物。
【0144】
28.項目27に記載の細胞溶解物の分離により、好ましくは限外濾過により取得可能なヌクレオチドを含む、組成物。
【0145】
29.項目27に記載の細胞溶解物の分離により、好ましくは限外濾過により取得可能なアミノ酸及びペプチドを含む、組成物。
【0146】
30.動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、栄養補助食品、医薬品、診断薬、DNA若しくはRNA、又は風味増強剤の製造における、項目28に記載の組成物又は項目29に記載の組成物の使用。
【0147】
31.項目28に記載の組成物又は項目29に記載の組成物を含む、動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、栄養補助食品、医薬品、診断薬、DNA若しくはRNA、又は風味増強剤。
【0148】
本発明の更なる実施例及び実施形態は、以下の番号が付された項に開示される。
【0149】
1.少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のアミノ酸及びペプチドとを含む組成物の製造方法であって、
(a)少なくとも0.85h-1のプロセス中の増殖速度を特徴とする少なくとも1つの微生物株を培養することによってバイオマスを提供する工程と、
(b)工程(a)のバイオマスに存在する細胞を溶解する工程と、
(c)工程(b)の溶解物中に存在する核酸をヌクレオチドに変換し、任意に(b)の溶解物中に存在するタンパク質をアミノ酸及びペプチドに変換する工程と、
を含み、%は、NaClを除く乾燥質量の重量/重量%と理解される、製造方法。
【0150】
2.工程(a)の少なくとも1つの微生物株が、少なくとも1.1h-1、好ましくは少なくとも1.2h-1、より好ましくは少なくとも1.4h-1のプロセス中の増殖速度を特徴とする、及び/又は、
工程(a)の少なくとも1つの微生物株が、少なくとも22%、好ましくは少なくとも25%、更により好ましくは少なくとも28%の核酸含量を特徴とする、及び/又は、
工程(a)の少なくとも1つの微生物株が、細菌株、好ましくは好塩菌又は好熱菌を含み、好ましくは細菌株が、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、更により好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも55%のゲノムG/C含量を特徴とする、項1に記載の方法。
【0151】
3.工程(a)の少なくとも1つの微生物株が、ビタミンB12独立栄養生物である微生物を含む、又は、
工程(a)の少なくとも1つの微生物株が、2つの微生物株、好ましくは2つの細菌株であり、更に好ましくは少なくとも1つの細菌株が、ビタミンB12独立栄養生物である、項1又は2に記載の方法。
【0152】
4.工程(a)が、少なくとも0.85h-1、好ましくは少なくとも1.1h-1、より好ましくは少なくとも1.2h-1、更により好ましくは少なくとも1.4h-1の希釈速度で連続プロセスとして行われ、工程(a)の少なくとも1つの微生物株の各々のプロセスにおける増殖速度が、希釈速度によって制限され、任意に、少なくとも1つの微生物株が、非滅菌条件下で培養される、項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0153】
5.少なくとも1つの微生物株が、ビブリオ種、特にビブリオ・ナトリエゲンス、ジオバチルス種、特にジオバチルスLC300、及びバチルス種、特にバチルス・メガテリウムから選択される微生物株を含む、項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0154】
6.少なくとも1つの微生物株が、オメガ3脂肪酸を合成することができる微生物を含む、
及び/又は、
少なくとも1つの微生物株が、遺伝子組換え微生物を含む、項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0155】
7.工程(b)が、70℃~180℃の温度で、及び/又は10分~360分間の時間行われる熱前処理、続いて好ましくは40℃~100℃、より好ましくは45℃~70℃の温度、及び/又は3.0~9.0、より好ましくは5.0~7.0のpHで、及び/又は0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたる、プロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を伴う、
及び/又は、
工程(b)が、機械的ホモジナイズによって行われ、任意に、70℃~180℃の温度で、及び/又は10分~360分の時間行われる熱前処理を伴う、
及び/又は、
工程(c)が、好ましくは40℃~100℃、より好ましくは45℃~70℃の温度、及び/又は3.0~9.0、より好ましくは5.0~7.0のpHで、及び/又は0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたる、ヌクレアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を伴う、
好ましくは、工程(c)が、好ましくは40℃~100℃、より好ましくは45℃~70℃の温度、及び/又は3.0~9.0、より好ましくは5.0~7.0のpHで、及び/又は0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたる、デアミナーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を更に含む、
好ましくは、工程(c)が、好ましくは40℃~100℃、より好ましくは45℃~70℃の温度、及び/又は3.0~9.0、より好ましくは5.0~7.0のpHで、及び/又は0.5時間~72時間、より好ましくは0.5時間~10時間にわたる、プロテアーゼ(複数の場合もある)による酵素処理を更に含む、項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0156】
8.項1~7のいずれか一項に記載の方法に従って取得可能な、少なくとも22%のヌクレオチドと、少なくとも40%のタンパク質及び/又はアミノ酸及びペプチドとを含む、
好ましくは、少なくとも11%、好ましくは少なくとも13%、更により好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも17%のIMP/GMP含量を特徴とする、
好ましくは、少なくとも6%(重量/重量)、好ましくは少なくとも8%(重量/重量)、より好ましくは少なくとも12%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも14%(重量/重量)、最も好ましくは少なくとも16%(重量/重量)のグルタミン酸含量を更に含む、組成物。
【0157】
9.動物飼料、ペットフード、発酵培地若しくはサプリメント、食品、栄養補助食品、医薬品、診断薬、DNA若しくはRNA、又は風味増強剤の製造における、項8に記載の組成物の使用。
【0158】
10.項8に記載の組成物を含む、動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、栄養補助食品、医薬品、診断薬、DNA若しくはRNA、又は風味増強剤。
【0159】
11.グルタミン酸ナトリウム代替品として、又は抗生物質代替品としての/抗生物質代替品における、項8に記載の組成物の使用。
【0160】
12.項1~7のいずれか一項に記載の方法の工程(a)において取得可能な、好ましくは、グルタミン酸含量が、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも6%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも7%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも8%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも9%(重量/重量)、更により好ましくは少なくとも10%(重量/重量)、最も好ましくは少なくとも12%(重量/重量)である、バイオマス。
【0161】
13.好ましくは、バイオマスが熱処理を経た、項12に記載のバイオマスを含む単細胞タンパク質。
【0162】
14.動物飼料、ペットフード又は食品、好ましくは動物飼料の製造における項13に記載の単細胞タンパク質の使用。
【0163】
15.項1~7のいずれか一項に記載の方法の工程(b)において取得可能な、細胞溶解物。
【0164】
16.項15に記載の細胞溶解物の分離により、好ましくは限外濾過により取得可能なヌクレオチドを含む、組成物。
【0165】
17.項15に記載の細胞溶解物の分離により、好ましくは限外濾過により取得可能なアミノ酸及びペプチドを含む、組成物。
【0166】
18.動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、栄養補助食品、医薬品、診断薬、DNA若しくはRNA、又は風味増強剤の製造における、項16に記載の組成物又は項17に記載の組成物の使用。
【0167】
19.項16に記載の組成物又は項17に記載の組成物を含む、動物飼料、ペットフード、食品、発酵培地若しくはサプリメント、栄養補助食品、医薬品、診断薬、DNA若しくはRNA、又は風味増強剤。
【0168】
本発明の様々な変更及び変形は、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者に明らかとなる。本発明を特定の好ましい実施形態に関して記載したが、特許請求の範囲の本発明が、かかる具体的な実施形態に過度に限定されるべきではないことが理解されなければならない。実際、関連する分野の当業者に明らかな記載される本発明を実施するための形態の様々な変更は、本発明によって包含されることが意図される。
【0169】
本発明を以下の実施例を用いて説明するが、これらは限定的なものとして解釈されることを意図するものではない。
【実施例
【0170】
一般的な実験プロトコル
I.発酵条件
後に抽出物を製造するために使用されるV.ナトリエゲンス(V. natriegens)からバイオマスを製造するために、3×100mLの前培養フラスコを、Harwood and Cutting(Harwood and Cutting, 1990, Molecular Biological Methods for Bacillus. New York, NY: Wiley)に由来し、5g L-1のビート糖蜜由来の糖又はグルコース、1g L-1のNHCl、3g L-1のKHPO、0.5g L-1のNaCl、6.7g L-1のNaHPO、1mg L-1のMnCl・4HO、1.7mg L-1のZnCl、430μg L-1のCuCl・2HO、328μg L-1のCoCl、600μg L-1のNaMoO・2HO、11.1mg L-1のCaCl、30mg L-1の3,4-ジヒドロキシ安息香酸(3,4-DHB)、13.5mg L-1のFeCl、及び120mg L-1のMgSOを含む、5mLの改変M9培地を用いて調製した。培養物を37℃及び270rpmで一晩インキュベートし、次いで15mLのfalconチューブに収集し、その後遠心分離した(10分、4500rpm、4℃)。上清を除去し、ペレットを無菌の0.9%NaClで洗浄し、次いで、再懸濁した細胞懸濁液を使用して、作業量10Lの同じ培地を含む15L発酵槽に接種した。発酵槽を37℃の一定温度で稼働させ、25%のアンモニアを使用して発酵過程の間pHを7に調整した。同様に、給気速度と撹拌速度を、開始時にそれぞれ1.5VVM及び400rpmに設定したが、その後、発酵の全過程で溶存酸素(DO)を30%に保つために上げた。発酵後、培地を直接10℃~15℃に冷却し、バイオマスを遠心分離(4500rpm、10分、4℃)で分離し、0.9%NaClで洗浄し、再び遠心分離した。その後、バイオマスを、更に処理する前に4℃で保存した。
【0171】
II.自己消化
自己消化では、得られたバイオマスを水で希釈して、乾燥質量が正確に16%の懸濁液を得た。次いで、この懸濁液100mLを49℃及び150rpmのウォーターバスで14時間インキュベートした後、温度を56℃に上げて更に6時間自己消化を行った。次いで、得られた溶液を遠心分離して細胞壁の破片を取り除き、上清(生成された抽出物)をチューブに移し、凍結乾燥して粉末を得た。抽出物の組成を、本明細書に記載されている方法に従って分析した。
【0172】
III.機械的溶解とそれに続く酵素処理
機械的溶解とそれに続く酵素処理は、特に指示がない限り、以下のように行うことが好ましい。機械的溶解では、バイオマスを水に再懸濁して9%~10%の最終乾燥質量を得て、その後1500バールでホモジナイズした。プロセス全体を通して、核酸の安定性を確保するために、懸濁液及びホモジナイザーを4℃に保った。ホモジナイズ後、得られた抽出物を分析するために、懸濁液の一部を凍結乾燥した。抽出物の他の部分を様々な酵素処理に供して、先の抽出物からのタンパク質と核酸をアミノ酸、ペプチド、及びヌクレオチドに変換した。そのため、天野エンザイム株式会社(日本)の0.4%ヌクレアーゼE7を懸濁液に加え、その後65℃で16時間インキュベートした。その後、0.2%プロテアーゼMを加え、懸濁液を50℃でインキュベートしてタンパク質をアミノ酸に変換した。
【0173】
或いは、機械的溶解とそれに続く酵素処理を以下のように行ってもよい。機械的溶解では、バイオマスを水に再懸濁して19%~20%の最終乾燥質量を得て、その後1500バールでホモジナイズした。プロセス全体を通して、核酸の安定性を確保するために、懸濁液及びホモジナイザーを4℃に保った。ホモジナイズ後、細胞壁を遠心分離(4500rpm、10分、4℃)により廃棄し、得られた抽出物を分析するために、上清の一部を凍結乾燥した。抽出物の他の部分を様々な酵素処理に供して、前の抽出物からのタンパク質と核酸をアミノ酸、ペプチド、及びヌクレオチドに変換した。そのため、天野エンザイム株式会社(日本)の0.1%(重量/重量)のDeamizyme T、0.2%のヌクレアーゼE7、及び0.05%YL-T Lを懸濁液に加え、その後65℃で4時間インキュベートした。その後、0.1%Prote AXHを加え、懸濁液を50℃でインキュベートしてタンパク質をアミノ酸に変換した。
【0174】
分析方法
I.タンパク質含量の決定
まず、試料中の窒素含量をケルダール(Kjeldahl)法(ASU法 L 06.00-7 (2014/08))を使用して決定し、その後、食品業界で典型的に適用される係数6.25を掛け、最後に、窒素も含むため核酸含量を差し引いてタンパク質含量に変換した。総タンパク質含量を、消化されたアミノ酸含量の分析でも確認することができた。
【0175】
II.アミノ酸含量の分析
抽出物にα-アミノ酪酸を最終濃度200μMまで添加したため、α-アミノ酪酸を内部標準として使用することができた。調製した試料中のアミノ酸濃度を、最終的に、固定相として逆相カラムGemini 5μ C18 110 A(150×4.6mm、ドイツ国アシャッフェンブルクのPhenomenex社)を備えたAgilent 1200 HPLCシステム(ドイツ国ヴァルトブロンのAgilent technologies社)を使用して蛍光検出によって測定した。異なるタンパク質を構成するアミノ酸の分離は、明確に定義された勾配プロファイルに従って、溶離液A(40mM NaHPO、pH7.8)と溶離液B(45%メタノール、45%アセトニトリル、10%水)を別々に混合することで、測定を通して移動相組成を徐々に変化させることに依拠した。さらに、カラム分離を40℃で流量1mL 分-1で操作した。さらに、プレカラム(Gemini C18、MAX、RP、4×3mm、ドイツ国アシャッフェンブルクのPhenomenex社)を使用してカラムの寿命を延ばした。蛍光検出は、o-フタルアルデヒド(OPA)及び9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)によるプレカラム誘導体化と、励起波長及び発光波長の変更によって達成された(表1)。
【0176】
【表1】
【0177】
III.リボ核酸(RNA)含量の分析
核酸含量を測定するため、Benthin et al.(1991)から採用されたプロトコルを使用した。簡潔には、細胞を最初に700mM HClOで洗浄し、その後、300mM KOHを用いて37℃及び300min-1で80分間消化した。溶解後、得られた懸濁液を冷却し、3M HClOで中和した。次いで、上清を遠心分離(4500rpm、4℃、10分)によって収集し、残りの細胞破片を500mM HClOで再度洗浄して残りの核酸を回収し、沈殿したKClOを除去した。全ての上清を混合し、最終溶液の核酸含量を最終的にNanoDrop 1000(商標)(米国マサチューセッツ州ウォールサムのThermo Fisher Scientific社)による分光測定によって定量した。
【0178】
IV.デオキシリボ核酸(DNA)含量濃度の決定
細胞壁を破壊するために、細胞ペレットを2mLチューブで560μLのDNA溶解バッファー(表2参照)を使用して30℃、350分-1で30分間インキュベートし、その後、FastPrep-24(商標)内でガラスビーズ(20%(体積/体積)、0.038mm~0.045mm)で機械的溶解に供し、細胞が完全に溶解したことを確認した。次に、得られた抽出物を4℃及び13200分-1で5分間遠心分離し、細胞質ゾル化合物を含む上清を収集し、60μg L-1 RNaseを含む140μLの溶液で処理して、試料中のリボ核酸を完全に消化した。その後、700μLのRoti-フェノール・クロロホルム-イソアミルアルコールによる最初の分離工程を使用して、試料からのDNAを精製し、続いて700μLのクロロホルムで2番目の分離工程を行った。次いで、遠心分離後に得られた上清に、65μLの3M酢酸ナトリウム(pH5.5)及び氷冷した純粋なDNAを補充し、DNAの沈殿を誘導した。遠心分離後、上清を捨て、得られたDNAペレットを70%エタノールで洗浄した。最後に、エタノールを蒸発により除去し、DNAペレットを100μLの超純水で再懸濁した後、Nanodrop 1000(商標)を使用して濃度を測定した。
【0179】
【表2】
【0180】
V.ヌクレオチド濃度の決定
製造された抽出物中のヌクレオチド含量(好ましくは、本明細書ではヌクレオチド、ヌクレオシド、及び核酸塩基の含量、より好ましくはヌクレオチド及びヌクレオシドの含量として理解される)を、Agilent 1100システムを用いたイオン対逆相高速液体クロマトグラフィー(IPRP-LC)と、それに続く254nmでのダイオードアレイ検出(DAD)によって決定した。Synergy Hydrocolumnを固定相として、50mMのリン酸緩衝液(pH5.8)とメタノールとの混合物からなる移動相を流量0.4mL/分、温度20℃で使用して分離を行った。分析対象物の適切な分離を達成するために、移動相の組成を実行中に次の勾配に従って変化させた:50%メタノールで0分~3分、0%~50%メタノールで3分~12分、最後に50%メタノールで12分~13.5分。
【0181】
実施例1-V.ナトリエゲンスのバイオマスの増殖
V.ナトリエゲンスのバイオマスを、本明細書に記載されるように、炭素源としての糖蜜又はグルコースで増殖させることによって調製した。増殖曲線を図1に示す。
【0182】
実施例2-V.ナトリエゲンスのバイオマスの組成
糖蜜で増殖させた実施例1のバイオマスを用いて、上記の方法を使用して、総タンパク質含量、アミノ酸プロファイル、並びにDNA及びRNA含量を決定した。結果を表3に要約する。入手可能な全ての核酸(RNA及びDNA)の90%はRNAであった。
【0183】
【表3】
【0184】
得られたバイオマスの組成、すなわちアミノ酸プロファイルに関する更なる情報は、表4に含まれる。
【0185】
【表4】
【0186】
実施例3-V.ナトリエゲンスからの自己消化物の組成
糖蜜で増殖させた実施例1のバイオマスを、本明細書で定義されているように自己消化に供した。総タンパク質含量、アミノ酸プロファイル、及びRNA含量を、上記の方法を使用して決定した。
【0187】
得られた自己消化物は、2%(重量/重量)のヌクレオチド、3%のヌクレオシド、及び1%の核酸塩基を含んだ。RNAも3%存在した。これは核酸とその誘導体の合計8%(重量/重量)であった。利用可能な全てのアミノ酸の合計として得られる総タンパク質含量は54%(重量/重量)である。得られた自己消化物のアミノ酸プロファイルに関する情報は、表5に含まれる。
【0188】
【表5】
【0189】
実施例4-単細胞タンパク質の組成
糖蜜上で増殖させた実施例1のバイオマスを熱処理に供し、そこで不活化して更に乾燥させた。総タンパク質含量、アミノ酸プロファイル、及びRNA含量を、上記の方法を使用して決定した。単細胞タンパク質の製造のために溶解工程も酵素加水分解工程も行われなかったことから、ヌクレオチド含量は決定されなかった。
【0190】
得られた単細胞タンパク質は、25%のRNA(重量/重量、NaClを除く乾燥重量)を含んだ。利用可能な全てのアミノ酸の合計として得られる総タンパク質含量は55%である(重量/重量、NaClを除く乾燥重量)。得られた単細胞タンパク質のアミノ酸プロファイルに関する情報は、表6に含まれる。単細胞タンパク質に対するグルタミン酸含量は8%(重量/重量、NaClを除く乾燥重量)であった。
【0191】
【表6】
【0192】
実施例5-機械的ホモジナイズ後の溶解物の組成
糖蜜で増殖させた実施例1のバイオマスを、本明細書で定義されているように機械的ホモジナイズに供した。
【0193】
得られたホモジネートは、上記の方法を用いて決定したところ、23%のRNA(重量/重量、NaClを除く乾燥重量)を含んだ。溶液中のヌクレオチド、ヌクレオシド、及び核酸塩基の総含量は0.5%(重量/重量、NaClを除く乾燥重量)であった。
【0194】
実施例6-機械的ホモジナイズから得られた溶解物から製造された酵素抽出物の組成
糖蜜で増殖させた実施例1のバイオマスを機械的にホモジナイズし、続いて、上記で定義したように更に酵素処理に供した。総タンパク質含量、アミノ酸プロファイル、及びRNA含量を、上記の方法を使用して決定した。
【0195】
酵素抽出物は、本明細書で定義されているように、15%(重量/重量、NaClを除く乾燥重量)のヌクレオチド、3%のヌクレオシド、及び0.2%の核酸塩基を含み、合計で18%(重量/重量、NaClを除く乾燥重量)の遊離ヌクレオチドを含んだ。懸濁液中にはまだ6%のRNAが残っており、これは核酸及びその誘導体の合計が約24%(重量/重量、NaClを除く乾燥重量)であることを意味する。
【0196】
利用可能な全てのアミノ酸の合計として得られる総タンパク質含量は53%(重量/重量)であった。得られた抽出物のアミノ酸プロファイルに関する更なる情報は、表7に含まれる。酵素抽出物に対するグルタミン酸含量は、7%(重量/重量、NaClを除く乾燥重量)であった。
【0197】
【表7】
図1
【国際調査報告】