(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】セマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩を含む徐放性製剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/26 20060101AFI20240702BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240702BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240702BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240702BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240702BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240702BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240702BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240702BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240702BHJP
A61P 23/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A61K38/26
A61P3/10
A61K9/14
A61K47/34
A61P3/04
A61P1/16
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/14
A61P23/00 171
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579126
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 KR2022008984
(87)【国際公開番号】W WO2022270956
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】10-2022-0077146
(32)【優先日】2022-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505404220
【氏名又は名称】ペプトロン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】チャン, セウン グ
(72)【発明者】
【氏名】チョ, ジャエ ピョング
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジ ヒャング
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン, ユン セオ
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ホ イル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA94
4C076BB11
4C076CC21
4C076EE24M
4C076FF31
4C076FF65
4C076GG09
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
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4C084BA23
4C084DB35
4C084MA05
4C084MA43
4C084MA66
4C084NA12
4C084ZA02
4C084ZA15
4C084ZA16
4C084ZA36
4C084ZA70
4C084ZC35
(57)【要約】
本発明は、薬物の初期過剰放出(initial burst)がなく、長期間持続放出が可能でありながらも、放出遅滞(Lag phase)がなく、生体利用率に優れた、セマグルチド(semaglutide)又はその薬学的に許容可能な塩を含む徐放性微粒球、及びそれを含む徐放性製剤組成物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩とポリ(ラクチド-コ-グリコリド)とを含む徐放性微粒球を含み、
前記セマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩は、前記徐放性微粒球の3重量%以上9重量%未満で含まれ、
前記ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)は、固有粘度が0.14~0.24dL/gの低粘度PLGAと、固有粘度が0.32~0.44dL/gの高粘度PLGAとの混合物である、徐放性製剤組成物。
【請求項2】
前記混合物における前記低粘度PLGAと前記高粘度PLGAとの重量比は1:0.2~5である、請求項1に記載の徐放性製剤組成物。
【請求項3】
前記高粘度PLGAのラクチド対グリコリドのモル比が50:45~55である、請求項1に記載の徐放性製剤組成物。
【請求項4】
前記徐放性微粒球は、前記セマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩と前記ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)とを氷酢酸に溶解し、超音波噴霧ノズルを用いて噴射した後、乾燥空気を用いて溶媒を揮発させて製造する、請求項1に記載の徐放性製剤組成物。
【請求項5】
前記超音波噴霧ノズルの周波数は60kHzである、請求項4に記載の徐放性製剤組成物。
【請求項6】
SDラットに投与された後、前記セマグルチドが24時間以内に5%未満で放出され、2週間以内に30%以上または4週間以内に60%以上放出される、請求項1に記載の徐放性製剤組成物。
【請求項7】
対象に1ヶ月~3ヶ月の間隔で投与される、請求項1に記載の徐放性製剤組成物。
【請求項8】
前記ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)は、前記徐放性微粒球の91~97重量%である、請求項1に記載の徐放性製剤組成物。
【請求項9】
前記徐放性微粒球は、平均粒度が15~25μmである、請求項1に記載の徐放性製剤組成物。
【請求項10】
糖尿病、肥満、非アルコール性脂肪肝炎または退行性脳疾患の治療用である、請求項1に記載の徐放性製剤組成物。
【請求項11】
前記退行性脳疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、ルーゲーリッグ病、クロイツフェルト・ヤコブ病、脳卒中および多発性硬化症からなる群より選択されるいずれかである、請求項10に記載の徐放性製剤組成物。
【請求項12】
セマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩とポリ(ラクチド-コ-グリコリド)とを有機溶媒に溶解して混合溶液を製造するステップと、
前記混合溶液を乾燥して微粒球を得るステップとを含み、
前記ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)は、固有粘度が0.14~0.24dL/gの低粘度PLGAと、固有粘度が0.32~0.44dL/gの高粘度PLGAとの混合物である、徐放性製剤組成物の製造方法。
【請求項13】
前記混合物における前記低粘度PLGAと前記高粘度PLGAとの重量比は1:0.2~5である、請求項12に記載の徐放性製剤組成物の製造方法。
【請求項14】
前記高粘度PLGAのラクチド対グリコリドのモル比が50:45~55である、請求項12に記載の徐放性製剤組成物の製造方法。
【請求項15】
前記混合溶液の乾燥は、噴霧乾燥法によって行われる、請求項12に記載の徐放性製剤組成物の製造方法。
【請求項16】
請求項1~10のいずれかに記載の徐放性製剤組成物を対象に投与するステップを含む、糖尿病、肥満、非アルコール性脂肪肝炎または退行性脳疾患の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、徐放性製剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト(Glucagon-like peptide receptor agonist, GLP-1 RA)は、2型糖尿病の治療に使用される薬物群であり、血糖値を下げるのに非常に効果的である。GLP-1 RAは、スルホニルウレア又はメグリチニドのような古いインスリン分泌促進薬に比べて低血糖を引き起こすリスクが低い利点があるが、作用時間が短い欠点がある。
【0003】
2型糖尿病のような慢性疾患の治療には長期間にわたる投与が必要であるため、患者の負担を軽減できる持効性(long-acting)の医薬品が望まれており、医薬品の投与間隔が長いほど、より多く使用される傾向がある。最初のGLP-1 RA医薬品である「バイエッタ」は1日2回(twice-a-day)投与する注射剤であり、その後1日1回(once-a-day)投与する注射剤が開発されて市場を主導していたが、現在は1週1回の注射剤がほとんどの市場を占めている。
【0004】
GLP-1 RA医薬品の大きな成功と普及に後押しされて、薬効持続時間がさらに延長された1ヶ月1回(once-a-month)又はそれ以上である医薬品の需要が増加しており、その開発が求められている状況である。しかし、技術的な限界のため、1週1回よりも投与間隔が長い持効性(long-acting)の医薬品はまだ出ていないのが実情である。
【0005】
一方、長期間の持続放出効果を実現するために、生分解性高分子を用いた徐放性製剤が開発されているが、この製剤の場合は、薬物放出期間(duration)の延長および初期過剰放出を防止するために、薬物放出が遅い生分解性高分子を使用している。このため、投与後のかなりの期間(短くは2~3週間、長くは1ヶ月以上)薬物が出ないか、または薬物の累積放出率が30%以下と低い放出遅滞現象が現れ、薬効の空白期が生じる問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、薬物の初期過剰放出(initial burst)がなく、長期間持続放出が可能でありながらも放出遅滞(Lag phase)がなく、生体利用率に優れた徐放性微粒球を含む徐放性製剤を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、薬物の初期過剰放出(initial burst)がなく、長期間持続放出が可能でありながらも放出遅滞(Lag phase)がなく、生体利用率に優れた徐放性微粒球を含む徐放性製剤組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1.セマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩とポリ(ラクチド-コ-グリコリド)とを含む徐放性微粒球を含み、
前記セマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩は、前記徐放性微粒球の3重量%以上9重量%未満で含まれ、
前記ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)は、固有粘度が0.14~0.24dL/gの低粘度PLGAと、固有粘度が0.32~0.44dL/gの高粘度PLGAとの混合物である、徐放性製剤組成物。
【0009】
2.前記項目1において、前記混合物における前記低粘度PLGAと前記高粘度PLGAとの重量比は1:0.2~5である、徐放性製剤組成物。
【0010】
3.前記項目1において、前記高粘度PLGAのラクチド対グリコリドのモル比が50:45~55である、徐放性製剤組成物。
【0011】
4.前記項目1において、前記徐放性微粒球は、前記セマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩と前記ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)とを氷酢酸に溶解し、超音波噴霧ノズルを用いて噴射した後、乾燥空気を用いて溶媒を揮発させて製造する、徐放性製剤組成物。
【0012】
5.前記項目4において、前記超音波噴霧ノズルの周波数は60kHzである、徐放性製剤組成物。
【0013】
6.前記項目1において、SDラットに投与された後、前記セマグルチドが24時間以内に5%未満で放出され、2週間以内に30%以上または4週間以内に60%以上放出される、徐放性製剤組成物。
【0014】
7.前記項目1において、対象に1ヶ月~3ヶ月の間隔で投与される、徐放性製剤組成物。
【0015】
8.前記項目1において、前記ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)は、前記徐放性微粒球の91~97重量%である、徐放性製剤組成物。
【0016】
9.前記項目1において、前記徐放性微粒球は、平均粒度が15~25μmである、徐放性製剤組成物。
【0017】
10.前記項目1において、糖尿病、肥満、非アルコール性脂肪肝炎または退行性脳疾患の治療用である、徐放性製剤組成物。
【0018】
11.前記項目10において、前記退行性脳疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、ルーゲーリッグ病、クロイツフェルト・ヤコブ病、脳卒中および多発性硬化症からなる群より選択されるいずれかである、徐放性製剤組成物。
【0019】
12.セマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩とポリ(ラクチド-コ-グリコリド)とを有機溶媒に溶解して混合溶液を製造するステップと、
前記混合溶液を乾燥して微粒球を得るステップとを含み、
前記ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)は、固有粘度が0.14~0.24dL/gの低粘度PLGAと、固有粘度が0.32~0.44dL/gの高粘度PLGAとの混合物である、徐放性製剤組成物の製造方法。
【0020】
13.前記項目12において、前記混合物における前記低粘度PLGAと前記高粘度PLGAとの重量比は1:0.2~5である、徐放性製剤組成物の製造方法。
【0021】
14.前記項目12において、前記高粘度PLGAのラクチド対グリコリドのモル比が50:45~55である、徐放性製剤組成物の製造方法。
【0022】
15.前記項目12において、前記混合溶液の乾燥は、噴霧乾燥法により行われる、徐放性製剤組成物の製造方法。
【0023】
16.前記項目1~10のいずれかに記載の徐放性製剤組成物を対象に投与するステップを含む、糖尿病、肥満、非アルコール性脂肪肝炎または退行性脳疾患の治療方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明の徐放性製剤組成物は、薬物の初期過剰放出がなく、長期間持続放出が可能である。また、放出遅滞現象がなく、生体利用率に優れる。
【0025】
本発明の徐放性製剤組成物は、1ヶ月以上の間隔で対象に投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の徐放性微粒球を皮下注射した後のセマグルチドの放出の様子を簡略に示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施例3、6と比較例1~4の製剤の徐放性微粒球のインビトロ(in vitro)初期放出評価の結果(6時間経過後)を示す。
【
図3】
図3は、SDラットにセマグルチドと実施例3の製剤の徐放性微粒球(PT403)を皮下注射した後の線形時間依存性ブドウ糖低下効果を示す。血糖値は、注射後28日間アキュチェック(Accu-Chek)を用いて測定した。
【
図4】
図4は、SDラットにセマグルチドと実施例3の製剤の徐放性微粒球(PT403)を皮下注射した後の体重変化を示す。
【
図5】
図5は、セマグルチド含有量(Loading Capacity、LC)がそれぞれ3、4、6重量%である実施例3、4及び6の製剤を、それぞれ、8週齢の雄SDラットに4mpkの同じ量で投与した後の時間による血中薬物濃度を示す。
【
図6】
図6は、セマグルチド含有量(Loading Capacity、LC)がそれぞれ3、4、6重量%である実施例3、4及び6の製剤を、それぞれ、8週齢の雄SDラットに4mpkの同じ量で投与した後の時間によるセマグルチド累積放出率を示す。
【
図7】
図7は、実施例3の製剤を雄ビーグルに4mpkで投与した後の時間による血中薬物濃度を示す。
【
図8】
図8は、実施例3の製剤を雄ビーグルに4mpkで投与した後の時間によるセマグルチド累積放出率を示す。
【
図9】
図9は、有効成分として、リラグルチドが含有された比較例13及び14の製剤の微粒球を8週齢の雄SDラットに4mpkで投与した後の時間による血中薬物濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、薬物の初期過剰放出(initial burst)がなく長期間持続放出が可能でありながらも、放出遅滞(Lag phase)がなく、生体利用率に優れたセマグルチド(semaglutide)又はその薬学的に許容可能な塩を含む徐放性微粒球、及びそれを含む組成物に関する。
【0028】
本発明は、セマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩とポリ(ラクチド-コ-グリコリド)とを含む徐放性微粒球を含む、徐放性製剤組成物を提供する。
【0029】
セマグルチドは、WO2006/097537の実施例4に記載されているように製造できるGLP-1受容体アゴニストであり、N6,26-{18-[N-(17-カルボキシヘプタデカンオイル)-L-γ-グルタミル]-10-オキソ-3,6,12,15-テトラオキサ-9,18-ジアザオクタデカンオイル}-[8-(2-アミノ-2-プロパン酸),34-L-アルギニン]ヒトグルカン様ペプチド1(7-37)としても知られている。
【0030】
セマグルチドの構造は下記化学式1に示す通りである。
【0031】
【0032】
本発明の「薬学的に許容可能な塩」とは、患者に比較的非毒性で無害な有効作用を有する濃度の塩であり、この塩に起因する副作用がセマグルチドの有益な効果を低下させない任意の塩を意味し、酸付加塩または塩基付加塩であってもよい。セマグルチドの薬学的に許容可能な塩において、酸付加塩は、例えば、セマグルチドの塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩または重炭酸塩であってもよい。
【0033】
前記セマグルチドの薬学的に許容可能な塩において、塩基付加塩は、例えば、セマグルチドのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または第4級アンモニウム塩であってもよい。
【0034】
本発明のセマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩と、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)とを含む徐放性微粒球の重量は、20mg~6000mg、20mg~4000mg、100mg~6000mg、100mg~4000mg、500mg~6000mg、500mg~4000mg、1000mg~6000mg、1000mg~4000mg、1500mg~6000mg、1500mg~4000mg、2000mg~6000mg、2000mg~4000mg、2400mg~6000mg、2400mg~4000mg、または2400mg~3600mgであってもよい。
【0035】
本発明の徐放性微粒球に含まれるセマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩は、徐放性微粒球の全重量に対して9重量%未満で含まれ、好ましくは、3重量%以上9重量%未満、3重量%以上8.8重量%以下、3重量%以上8.5重量%以下、3重量%以上8.2重量%以下、3重量%以上8重量%以下、または3重量%以上6重量%以下で含まれていてもよい。セマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩の含有量が3重量%以上10重量%以下であると、生体利用率に優れるが、セマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩の含有量が9重量%以上であると、初期放出量が急激に増加する。従って、セマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩は、徐放性微粒球の全重量に対して3重量%以上9重量%未満で含まれることが好ましい。
【0036】
本発明の徐放性微粒球に含まれるポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(Polylactide-co-glycolide,PLGA)は、固有粘度が0.14~0.24dL/gの低粘度PLGAと、固有粘度が0.32~0.44dL/gの高粘度PLGAとの混合物であってもよい。前記低粘度PGLAと高粘度PLGAとの混合物における、固有粘度が0.14~0.24dL/gの低粘度PLGAと固有粘度が0.32~0.44dL/gの高粘度PLGAとの重量比は、1:0.2~5、1:0.2~3、1:0.3~5、1:0.3~3、1:0.5~5、1:0.5~3、1:0.5~2、1:1~5、1:1~3、1:1~2.5、1:1.5~2.5、または1:1.8~2.2であってもよく、好ましくは1:1.8~2.2であってもよい。
【0037】
徐放性微粒球に含まれるポリ(ラクチド-コ-グリコリド)が、低粘度PLGAのみからなる場合には、セマグルチドの初期放出量が多くなりすぎ、高粘度PLGAのみからなる場合には、セマグルチドの初期放出量は少ないが、放出遅滞(Lag phase)が発生することがあり、全体的な放出量が少なくなって生体利用率が低くなる問題がある。
【0038】
本発明の徐放性微粒球は、固有粘度が0.14~0.24dL/gの低粘度PLGAと、固有粘度が0.32~0.44dL/gの高粘度PLGAとが混合されたポリ(ラクチド-コ-グリコリド)混合物を含むことにより、好ましくは、低粘度PLGAと高粘度PLGAとを1:0.2~5の重量比で混合することにより、より好ましくは、低粘度PLGAと高粘度PLGAとを1:1.8~2.2の重量比で混合することにより、セマグルチドの初期過剰放出が発生しないとともに、放出遅滞(Lag phase)がなく、生体利用率に優れる。
【0039】
本発明のポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(Polylactide-co-glycolide、PLGA)の固有粘度(Intrinsic Viscosity、IV)とは、クロロホルムに0.1%(W/V)の濃度で溶解した後、25℃においてウベローデ粘度計を用いて測定した粘度である。
【0040】
固有粘度が0.14~0.24dL/gの低粘度PLGAは、ラクチドとグリコリドのモル比が80~45:50、80~70:50、75~50:50、70~45:50、65~50:50、または55~45:50であってもよく、好ましくは55~45:50であってもよい。市販の物質のうち、固有粘度が0.14~0.24dL/gの低粘度PLGAの例としては、エボニック(Evonik)社のRG502、RG502H、RG752H、RG752Sなどがある。
【0041】
固有粘度が0.32~0.44dL/gの高粘度PLGAは、ラクチドとグリコリドのモル比が80~45:50、75~50:50、70~45:50、65~50:50または55~45:50であってもよく、好ましくは55~45:50であってもよい。市販の物質のうち、固有粘度が0.32~0.44dL/gの高粘度PLGAの例としては、エボニック(Evonik)社のRG503、RG503H、RG653H、RG752H、RG753Sなどがある。
【0042】
本発明の徐放性微粒球に含まれる、固有粘度が0.14~0.24dL/gの低粘度PLGAと固有粘度が0.32~0.44dL/gの高粘度PLGAとが混合されたポリ(ラクチド-コ-グリコリド)の混合物は、微粒球の全重量に対して80重量%以上または90重量%以上含まれていてもよく、より具体的には、90~99重量%、90~97重量%、90~96重量%、91~99重量%、91~97重量%、91~96重量%、92~99重量%、92~97重量%、92~96重量%、93~99重量%、93~97重量%、93~96重量%、94~99重量%、94~97重量%、または94~96重量%含まれていてもよい。
【0043】
本発明の徐放性微粒球は、例えば、3重量%以上9重量%未満のセマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩、90~97重量%または91~97重量%のポリ(ラクチド-コ-グリコリド)が含まれていてもよく、付加的にコーティング物質、添加剤または賦形剤などがさらに含まれていてもよい。
【0044】
本発明の徐放性微粒球が含まれた徐放性製剤組成物は、スプラーグドーリーラット(Sprague Dawley Rat、SD Rat、SDラット)に投与された後、前記セマグルチドが24時間以内に5%以下で放出され、2週間以内に30%以上、または4週間以内に60%以上放出され得る。
【0045】
本発明の一実施形態では、本発明の徐放性微粒球をSDラットに投与した後、セマグルチドが24時間以内に5%以下で放出され、2週間以内に30%以上、4週間以内に60%以上放出されることを確認した(
図6及び表7を参照)。また、ビーグル(Beagle Dog)においても、セマグルチドが24時間以内に5%以下で放出され、2週間以内に30%以上、4週間以内に60%以上放出されることを確認した(
図8、表8)。
【0046】
本発明の徐放性微粒球は、リシンでコーティングされていてもよい。徐放性微粒球にコーティングされたリシンは、コーティング前の徐放性微粒球の100重量部に対して、0.01~5、0.01~3、0.01~1、0.1~1重量部、0.2~0.8または0.4~0.6重量部含まれていてもよい。
【0047】
本発明の徐放性微粒球が含まれた徐放性製剤組成物は、投与対象により1回投与で3週間または1ヶ月以上薬効を持続することができ、本発明の徐放性製剤組成物は、対象に1ヶ月~3ヶ月、1ヶ月~2ヶ月、1ヶ月~1.5ヶ月、または1ヶ月間隔で投与することができる。
【0048】
本発明の一実施形態では、本発明の徐放性微粒球をラットに投与した場合、3週間以上(T last=35日)持続的にセマグルチドが放出されることを確認した。また、ビーグル(Beagle Dog)に投与した場合、4週間以上(T last=63日)持続的にセマグルチドが放出されることを確認した。一般に、投与対象となる動物種により、個体サイズが大きい種であるほど、薬物の吸収、分布、代謝過程などの時間とそれによる薬物の放出及び持続時間が長くなることが知られているように(allometric scaling)、本発明の一実施形態においてもラットよりもビーグルにおいてセマグルチドの薬効持続期間が長いことを確認した。同じ理由で、個体サイズがより大きいヒトに投与した場合には、ビーグルに投与した場合よりも薬効持続期間が長い。したがって、ヒトを対象として投与する場合、1回投与で1ヶ月以上薬効を持続することができ、より具体的には、1ヶ月~3ヶ月、1ヶ月~2ヶ月、または1ヶ月~1.5ヶ月間薬効を持続することができる。
【0049】
本発明の徐放性微粒球は、微粒球の平均粒度が5~50μm、5~40μm、5~30μm、10~50μm、10~40μm、10~30μm、10~25μm、15~50μm、15μm~40μm、15μm~30μm、または15~25μmであってもよい。本明細書で「平均粒度(D50)」とは、粒度分布曲線における体積%の50%に相当する粒度を意味する。
【0050】
本発明の徐放性微粒球のスパン値(Span value)は2以下であり、より具体的には、0.1~2、0.1~1.8、0.3~2、0.3~1.8、0.5~2、0.5~1.8、0.8~2、0.8~1.8、1~2、1~1.8または1~1.6である。
【0051】
本発明の徐放性微粒球またはそれを含む徐放性製剤組成物は、本発明の属する技術分野における薬剤の製剤化に通常使用される添加剤および賦形剤をさらに含むことができる。
【0052】
本発明の徐放性微粒球は、ポリビニルアルコール、アルブミン、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等からなる群より選択される1種以上の保護コロイドをさらに含むことができる。前記保護コロイド物質は、セマグルチドが含まれた微粒球の間の凝集を防止し、分散性を改善する役割を果たす。前記保護コロイドは、徐放性微粒球の全重量に対して0.02~1.0重量%であることが好ましい。
【0053】
本発明による徐放性微粒球が含まれた徐放性製剤組成物は、糖尿病、肥満、非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic Steatohepatitis、NASH)または退行性脳疾患の治療に用いることができる。
【0054】
前記退行性脳疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、ルーゲーリッグ病、クロイツフェルト・ヤコブ病、脳卒中および多発性硬化症からなる群より選択されるいずれかであってもよい。
【0055】
本発明の徐放性微粒球は、前記セマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩と前記ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)を氷酢酸に溶解し、超音波噴霧ノズルを用いて噴射した後、乾燥空気を用いて溶媒を揮発させて製造することができる。
【0056】
本発明は、薬物の初期過剰放出(initial burst)がなく、長期間持続放出が可能でありながらも放出遅滞(Lag phase)がなく、生体利用率に優れた徐放性微粒球の製造方法を提供する。
【0057】
本発明の徐放性製剤組成物の製造方法は、セマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩とポリ(ラクチド-コ-グリコリド)を有機溶媒に溶解して混合溶液を製造するステップと、前記混合溶液を乾燥して微粒球を得るステップとを含む。
【0058】
本発明の徐放性製剤組成物の製造方法において、セマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩と共に溶解するポリ(ラクチド-コ-グリコリド)の種類は、本発明の徐放性微粒球について説明した通りである。
【0059】
本発明の徐放性製剤組成物の製造方法において、有機溶媒に溶解させるセマグルチドとポリ(ラクチド-コ-グリコリド)との重量比は、製造される徐放性微粒球中のセマグルチド含有量が9重量%未満となるように、好ましくは3重量%以上9重量%未満、3重量%以上8.8重量%以下、3重量%以上8.5重量%以下、3重量%以上8.2重量%以下、3重量%以上8重量%以下、または3重量%以上6重量%以下となるように適宜調整することができる。
【0060】
前記有機溶媒は、クロロホルム、酢酸エチル、メチレンクロリド、メチルエチルケトン、炭素数1~5のアルコール、氷酢酸、蟻酸、ジメチルスルホキシド、およびn-メチルピロリドンからなる群より選択される1つまたはこれらの混合溶媒であってもよく、好ましくは氷酢酸であってもよい。
【0061】
本発明の徐放性製剤組成物の製造方法では、前記混合溶液を乾燥して微粒球を得る方法として噴霧乾燥法を用いることができる。
【0062】
噴霧乾燥法は、前記セマグルチド又はその薬学的に許容可能な塩とポリ(ラクチド-コ-グリコリド)とが溶解した混合溶液を噴霧乾燥機に5~20mL/min、5~15mL/minまたは5~10mL/minの流速で供給し、100~200℃、100~150℃又は120~150℃の乾燥空気を供給して行うことができる。また、噴霧乾燥機の周波数は、40~80kHz、50~70kHZまたは55~75kHzであってもよく、好ましくは60kHZであってもよい。
【0063】
本発明の製剤組成物の製造方法は、前記混合溶液を乾燥して微粒球を得るステップの後に、前記乾燥した微粒球をリシン塩酸塩が溶解した水溶液に懸濁してリシンコーティングするステップをさらに含むことができる。
【0064】
前記リシン塩酸塩が溶解した水溶液中のリシン塩酸塩の濃度は、0.01M~1Mであってもよく、好ましくは0.1M~0.6Mであってもよい。リシン塩酸塩の濃度が0.01Mよりも低いと、微粒球の表面にリシンを十分にコーティングできず、1Mよりも高いと、リシン塩酸塩が過飽和になるため非効率的である。
【0065】
また、前記リシン塩酸塩が溶解した水溶液は、1%(W/V)ポリビニルアルコールがさらに含んでいてもよい。
【0066】
本発明は、本発明による徐放性微粒球が含まれた徐放性製剤組成物を対象に投与するステップを含む、糖尿病、肥満、非アルコール性脂肪肝炎または退行性脳疾患の治療方法を提供する。
【0067】
前記退行性脳疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、ルーゲーリッグ病、クロイツフェルト・ヤコブ病、脳卒中および多発性硬化症からなる群より選択されるいずれかであってもよい。
【0068】
本発明の徐放性微粒球が含まれた徐放性製剤組成物は、経口または非経口の経路で投与することができ、好ましくは、静脈投与、皮下投与、筋肉投与、腹腔内投与などの非経口経路で投与することができる。
【0069】
本発明による徐放性製剤組成物の有効投与量は、患者の年齢、疾患の種類及び程度、患者の状態等によって適宜調節できる。例えば、有効成分量を基準として0.1~10mg/weekであってもよい。前記分量を一度に投与するか、または分けて投与することができる。
【0070】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
【0071】
製造例.徐放性微粒球の製造および製造された微粒球の粒度
1)徐放性微粒球の製造(実施例1~6及び比較例1~12)
GLP-1アゴニストであるセマグルチドと生分解性高分子であるポリ(ラクチド-コ-グリコリド、PLGA)またはポリ乳酸(Poly(lactic acid)、PLA)を氷酢酸(glacial acetic acid)に完全に溶解して混合溶液を得た後、スプレー乾燥(Spray drying)工程により微粒球を製造した。微粒球の製造に用いた生分解性高分子の種類は下記表1に示す通りであり、セマグルチドを含有する様々な微粒球の製造組成は表2に示す通りである。PLGAはエボニック(Evonik)社の市販のResomerを使用し、下記表1に示すように、PLGA75A、PLGA75B、PLGA65B、PLGA50A、PLGA50Bは、それぞれ順にエボニック(Evonik)社の市販のResomerであるRG752H、RG753H、RG653H、RG502H、RG503Hを用いた。
【0072】
【0073】
スプレー乾燥工程は、製造された混合溶液を、液体蠕動ポンプ(Master flex, Peristaltic pump)を用いて、超音波ノズル(Sonictopia, 60kHz)付き噴霧乾燥機(EIN System)に7.5mL/minの流速で供給し、発振器(Sonictopia, 60kHz)のパワーを50~75%の間で調整し、135℃の乾燥空気を供給することによって行った。スプレー乾燥工程により製造された微粒球を保護コロイドとして1%(W/V)ポリビニルアルコール(Mitsubish Chemical Corporation)、0.5M L-リシン塩酸塩(Merck)を含有する水溶液に分散して3時間撹拌する。その後、ろ過及び蒸留水洗浄過程を経て微粒球を回収し、10%D-マンニトール(ROQUETTE)、0.5% L-リシン塩酸塩(Merck)溶液を添加して懸濁した後、凍結乾燥して、本発明の徐放性微粒球を得た。表2は、徐放性微粒球製剤別の生分解性高分子の種類及び配合比を示す。
【0074】
【0075】
表3は、噴霧乾燥法による徐放性微粒球の製造に使用した生分解性高分子(PLGA及びPLA)、薬物(セマグルチド)及び溶媒の量を示す。
【0076】
【0077】
2)製造された微粒球の粒度の測定
製造された微粒球の平均粒度および分布図を定量的に測定した。50mLのコニカルチューブに微粒球180mgと1%PVA10mLを投入し、1分間超音波発生器に入れて分散した後、粒度分析装置(CILAS、Fench)に入れて粒度を測定した。粒度サイズの均一性の指標としてのスパン値は下記数学式1により求めた。
【0078】
[数学式1]
スパン値(Span Value)=(D90-D10)/D50
【0079】
表4は、製造された微粒球の平均粒度およびスパン値を示す。
【0080】
【0081】
実験例1.微粒球の初期放出量の測定(In vitro release)
セマグルチド100μgを含む微粒球量を取り、3mL放出液0.5%PVA+0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を入れたガラス容器で懸濁し、水が漏れないように密封した後、容器を37℃に予熱した水中に入れて20rpmの速度で回転を行った。一定時間が経過した後、サンプルを取ってHPLC分析を行った。その結果、薬物ローディング量、および生分解性高分子の種類と配合比によって異なる初期放出率を示すことを確認した。
【0082】
全般的に、薬物含有量が高くなるほど初期放出が漸進的に増加し、薬物含有量が9%を超えると、初期放出が急激に増加した(
図2参照)。このことから、急激な初期放出なしに微粒球内に薬物を最大限にローディングできる量は9%(w/w)未満であると判断した。
【0083】
表5は、薬物(セマグルチド)のローディング量による初期放出の変化(インビトロ放出試験、6時間及び24時間経過後)を示す。
【0084】
【0085】
低粘度高分子のみを使用した場合、または粘度の低い高分子2種を混合して使用した場合には、初期放出が高かった(比較例5、6、9、11、12)。これに対して、高粘度高分子を使用した場合には、初期放出が低く(比較例7、8、10)、高粘度高分子と低粘度高分子とを混合した場合も初期放出が低かった(実施例1、2、3)。表6は、高分子の種類及び配合による初期放出の変化(インビトロ放出試験、24時間経過後)を示す。
【0086】
【0087】
前記表6に示すように、高粘度高分子からなる微粒球の場合は、初期放出は低かったが、放出遅滞(Lag phase)が長くなり、全体の放出量が低くて生体利用率が低下する欠点があった。そのため、本発明が目指す、i)初期過剰放出(initial burst)がなく、ii)長期間持続放出が可能でありながらも、iii)放出遅滞(Lag phase)がなく、iv)生体利用率に優れた徐放性製剤の成分としては適切ではなかった。これに対して、高粘度高分子と低粘度高分子とを混合して使用した場合には、初期過剰放出を防止できることを確認した。これと同時に、放出遅滞を抑制できるかどうかを確認するために、後述のようにラットでのPKプロファイルを確認した(実験例3を参照)。
【0088】
実験例2.セマグルチドを含む徐放性微粒球の血糖調節および体重減少効果の実験(インビボ実験)
本発明のセマグルチドが含まれた徐放性微粒球の血糖降下効果を確認するために、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行った。まず、8週齢のSDラットの18匹(各群あたり6匹)を合計3つの群に分けて実験を行った。陰性対照群(Control)、陽性対照群(API)、実施例3製剤投与群(PT403)に分け、陽性対照群(API)ではセマグルチドを0.123mpkで1回皮下注射し、実施例3製剤投与群(PT403)では、実施例3の製剤を4mpkで皮下注射した。
【0089】
薬物投与後、合計5回(1、7、16、21及び28日目)のOGTTを行い、18時間絶食したSDラットに2g/kgのグルコースを経口投与した。グルコースの投与直後、そして15分、30分、60分、90分、120分、180分後に尾から血液を採取して血糖を測定した。
【0090】
図3に示すように、実施例3製剤投与群(PT403)は時間依存的にグルコースレベルの減少を誘導し、特に、血糖降下効果が約21日目まで持続した。これに対して、陽性対照群(API)では1日目には血糖降下効果があったが、7日目には元に戻った(
図3)。また、OGTTの分析と並行して各ラットの体重を時間により測定した。実施例3製剤投与群(PT403)では、陽性対照群(API)のみならず、陰性対照群と比較して、統計的に有意な約10%の体重減少効果を示した(
図4)。
【0091】
このことから、本発明のセマグルチドを含む徐放性製剤組成物は、単回投与だけでも長時間効果を維持できる製剤であることが分かる。
【0092】
実験例3.ラットにおけるセマグルチド含有量による徐放性微粒球の薬動学プロファイル(実施例3、4及び6の製剤)
8週齢のSDラットにセマグルチドが含有された微粒球を投与して一定時間間隔で採血し、血中薬物の濃度を評価し、体内における微粒球内の薬物の放出パターンを評価しようとした。PK試験では、実施例3、4及び6の製剤を使用した。ラットに投与する薬物(セマグルチド)の量は、製剤に関係なく同様に4mpkとした。
【0093】
実施例3、4及び6の製剤を8週齢の雄SDラットに皮下注射(S.C)した後、時間によるセマグルチドの血中濃度を観察した。注射後1時間、3時間、6時間、24時間、3日、5日、7日、9日、11日、14日、16日、18日、21日、24日、28日、31日及び35日目に、頸静脈から血液を0.5mlずつ採取し、-80℃で保存した。その後、LC-MS/MS分析を行った。
【0094】
時間による血中濃度曲線から曲線下面積(AUC、area under the curve)を求めて相対的な生体利用率を比較した結果(
図5)、含有された薬物含有量が増加するほど生体利用率が増加することを確認した。特に、含有されたセマグルチドの含有量が6重量%である実施例6の微粒球が、最も優れた生体利用率を示すことを確認した。
【0095】
表7は実施例3、4及び6のSDラットにおけるPKパラメータを示し、表8はセマグルチドの累積放出率を示す。
【0096】
【0097】
【0098】
実験例4.ビーグルにおけるセマグルチド含有徐放性微粒球の薬動学プロファイル(実施例3の製剤)
ラットに続いてビーグル(beagle dog)のPK試験では、実施例3の製剤を使用した。投与した薬物の量は、実験例3と同様に4mpkとした。
【0099】
実施例3の製剤を雄ビーグルに皮下注射(S.C)した後、時間によるセマグルチド血中濃度を観察した。注射後1時間、3時間、6時間、24時間、3日、5日、7日、9日、11日、14日、16日、18日、21日、23日、25日、28日、31日、35日、38日、42日、45日、49日、56日、63日及び70日目に頸静脈から血液を1mlずつ採取し、-80℃で保存した。その後、LC-MS/MS分析を行った。
【0100】
時間による血中濃度曲線から曲線下面積を求めて相対的な生体利用率を比較した結果(
図7)、SDラットと比較してビーグルの場合には、セマグルチドの放出持続期間がさらに増えたことを確認することができた。
【0101】
表9はビーグルにおける実施例3の製剤のPKパラメータを示し、表10はセマグルチドの累積放出率を示す。
【0102】
【0103】
【0104】
実験例5.ラットにおけるリラグルチド含有徐放性微粒球の薬動学プロファイル
前記実験例3と同様に行う一方、セマグルチドを含有する実施例3の製剤の代わりに、リラグルチドを含有する比較例13及び14の製剤をラットに皮下注射(S.C)した後、時間によるリラグルチド血中濃度を観察した。
【0105】
表11は、比較例13及び14の製剤の成分を示す。
【0106】
【0107】
注射後1時間、3時間、24時間、3日、5日、7日、9日、11日、14日、17日、21日、24日及び28日目に頸静脈から血液を0.5mlずつ採取し、-80℃で保存した。その後、LC-MS/MS分析を行い、時間による血中濃度曲線から曲線下面積(AUC、area under the curve)を求めて相対的な生体利用率を比較した(
図9)。
【0108】
その結果、リラグルチドは、本発明のセマグルチドと類似した構造の同じGLP-1 RA系のペプチドであるにもかかわらず、薬物の放出自体がほとんど見られなかった。このことから、同じ条件の生分解性高分子を使用しても含有するペプチドの種類が異なると、どのような効果を示すかを予測しにくいことが分かる。
【国際調査報告】